以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。各図は模式的に示すものであって、各部材の相対的な大きさや板厚等は図示する寸法に限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る道路構造100の模式図である。図2は、図1の道路構造100のA-A部の断面構造の説明図である。図3は、図1の道路構造100のB-B部の断面構造の説明図である。図4は、図1の道路構造100のC-C部の断面構造の説明図である。図5は、図1の道路構造100の第1桁部材41の配置の説明図である。図6は、道路構造100の上部の構造の一例を示す斜視図である。道路構造100は、山間部等の起伏が大きい地盤に設置されるものである。道路構造100は、例えば、山間部の斜面に沿って道路を設ける場合、斜面に沿って設けられた既設道路を拡幅する場合、又は山間部の沢部を跨いで道路を通す場合等に用いられる構造である。実施の形態1においては、人工地盤構造物の一例として山間部の斜面に沿って設置された道路構造100について説明する。なお、図1に示すy方向は、道路構造100が延伸する方向であり、z方向は、支持杭10が延びる方向である。ただし、道路構造100は直線状に延びるものに限定されず、例えば図5に示すように上面視において曲線状に延びるものであっても良い。また、人工地盤構造物は、例えば山間部等の起伏が大きい地盤90において人工的な平地を構築するためのものであり、道路構造100以外にも、例えばヘリポート、道路に接続された待避所及びドローンポートなどにも適用できる。人工地盤構造物は、その上面に建屋などの施設を構築することもできる。
図2~図4に示すように、道路構造100は、地盤90に打設された複数の鋼管杭20を備える。鋼管杭20は、地盤90に設けられた孔に、杭頭21が地盤90の表面94から突出するように建てられる。地盤90は、ダウンザホールハンマ等によって堆積層92を貫通し、支持層93まで削孔されている。地盤90に設けられた孔に鋼管杭20を建て込み、孔にコンクリート又はモルタル等の充填材が充填されることにより、鋼管杭20は、地盤90に立設される。図2などに示されているx方向は、道路構造100が延伸するy方向及び支持杭10が延びるz方向に垂直な方向である。
鋼管杭20は、道路として形成された人工地盤が延びる方向である第1方向に並列して地盤90に複数打設される。図5に示される様に、第1桁部材41が例えば斜面などに沿って曲がって配置されており、道路は、その第1桁部材41の上に道路床版99を設置して構成される。実施の形態においては、第1方向は、この道路に沿った方向である。また、道路床版99は、単に床版と称する場合がある。例えば人工地盤構造物がヘリポートとして使用される場合は、床版の上面にヘリコプターが着陸する。また、床版の上に建屋などの施設が構築される場合がある。
道路構造100の複数の鋼管杭20は、第1鋼管杭20aと第2鋼管杭20bとを含む。第1鋼管杭20aは、上方に鋼管支柱30が接合される。鋼管支柱30は、道路床版99及び第1桁部材41が設置される地盤90の表面94からの高さに応じて、第1鋼管杭20aの上端に接合される。図1~図4中に示されている三角形の記号は、第1鋼管杭20aと鋼管支柱30との接合部11を示している。接合部11においては、第1鋼管杭20aと鋼管支柱30とが例えば溶接により接合されている。ただし、接合部11は、偏心接合部材60b(図11参照)が、地盤90側に位置する第1鋼管杭20aとの上方に接合される鋼管支柱30とを接合している構造であっても良い。なお、地盤90に立設された柱状の構造を支持杭10と称する場合がある。特に、上述した第1鋼管杭20aと鋼管支柱30とを接合した構造は、支持杭10aと称する場合がある。
鋼管支柱30は、第1鋼管杭20aの杭頭21aと接合され上方に延びている。鋼管支柱30の杭頭12には上端格点部50aが接合されている。上端格点部50aは、偏心接合部材60を用いて鋼管支柱30の杭頭12と接合されている。
上端格点部50aは、第1方向において隣り合う上端格点部50aと第1桁部材41により連結されている。第1方向に沿って設置されている第1桁部材41を特に縦桁41aと呼ぶ。
図2~図4に示される様に、上端格点部50aは、第1方向に交差する第2方向に並列して隣り合う上端格点部50aと第1桁部材41により連結されている。第2方向に沿って設置されている第1桁部材41を特に横桁41bと呼ぶ。
実施の形態1においては、図2~図4に示される様に、鋼管杭20は、第1方向に交差する第2方向に沿って2本並べられている。横桁41bは、第2方向に並べられた杭頭12に接合された上端格点部50aを連結している。つまり、第1桁部材41は、第1方向及び第2方向に沿って設置され、それぞれ支持杭10の杭頭12同士を、上端格点部50aを介して連結している。第1桁部材41及び上端格点部50aの上面には、床版固定部材42が設置されている。道路床版99は、床版固定部材42を介して第1桁部材41及び上端格点部50aに固定される。なお、鋼管杭20は、第1方向に交差する第2方向に2本以上並べられていても良い。
縦桁41aは、第1方向に並べられている支持杭10の杭頭12に接合された上端格点部50aを連結している。上端格点部50aは、縦桁41aが接続される2つの縦桁仕口52a(図7参照)を備える。図5に示す様に、道路構造100が斜面などに沿って曲げられて配置されている場合は、1つの上端格点部50aに接続された2つの縦桁41aは、長手方向が互いに交差するように延びる。したがって、上端格点部50aに設けられている2つの縦桁仕口52aも互いに交差するように延びている。
また、縦桁41aは、第2方向において並列されている第1の縦桁41aaと第2の縦桁41abとを含む。図5において、第1の縦桁41aaは、第1方向に並んで配置された支持杭10の杭頭12に設置された第1の上端格点部50aaと第2の上端格点部50abとの間を接続する。また、第2の縦桁41abは、第1方向に並んで配置された支持杭10の杭頭12に設置された第3の上端格点部50acと第4の上端格点部50adとの間を接続する。例えば、図5に示されるように、平面視において、山間部の斜面に沿って道路構造100が曲線状に設置されている場合、第1の縦桁41aaは、曲がって配置された道路構造100の内側に位置し、第2の縦桁41abは、曲がって配置された道路構造100の外側に位置する。このとき、第1の上端格点部50aaと第2の上端格点部50abとの間隔は、第3の上端格点部50acと第4の上端格点部50adとの間隔よりも短い。また、第1の縦桁41aaは、第2の縦桁41abよりも短い。なお、第1の縦桁41aaと第2の縦桁41abとは、互いに平行になる様に配置されていても良い。
図5に示すように、横桁41bは、中央部に連結部43を備える。連結部43には縦桁41aが接続されている。連結部43に接続されている縦桁41aは、第1方向において隣り合う横桁41bの連結部43同士を接続している。横桁41bは、第1の上端格点部50aaと第3の上端格点部50acとを接続している。また、横桁41bは、第2の上端格点部50abと第4の上端格点部50adとを接続している。実施の形態1において横桁41bは、2つの上端格点部50aを一体にするように構成されている。さらに、横桁41bは、中央部に連結部43を備える。第1方向において隣合って配置されている横桁41bの中央部の連結部43同士は、第3の縦桁41acによって接続されている。なお、図5に示されている様に、第3の縦桁41acの第1方向における長さは、第1の縦桁41aaよりも長く第2の縦桁41abよりも短い。また、実施の形態1においては図5に示すように桁部材41が第2方向において3列並んでいる場合を説明したが、2列であってもよく、さらに多数の桁部材41が並列されていても良い。また、道路構造100は、平面視において曲線状に設置するものに限定されず、直線状に配置されていても良いし、直線と曲線とが複合された形状に設置されていても良い。
図1に戻り、第2鋼管杭20bは、上方に上端格点部50aが接続されている。上端格点部50aは、偏心接合部材60を用いて第2鋼管杭20bの杭頭12と接合されている。第2鋼管杭20bに接合されている上端格点部50aは、支持杭10aに接合されている上端格点部50aと同様に、第1方向及び第2方向に隣り合う上端格点部50aと連結されている。なお、上方に鋼管支柱30が接合されていない第2鋼管杭20bは、支持杭10bと称する場合がある。
図1に示される様に、支持杭10aには中間格点部50bが設けられている。実施の形態1において、中間格点部50bは、支持杭10aのうち鋼管支柱30の中央部に設置されている。つまり、中間格点部50bは、道路構造100のうち、地盤90からの突出長さが多大な支持杭10aに設けられている。中間格点部50bは、隣り合う鋼管支柱30に設けられた中間格点部50bと第2桁部材40により連結されている。第1方向に沿って設置されている第2桁部材40を、特に縦桁40aと呼ぶ。
図4に示される様に、中間格点部50bは、第1方向に交差する第2方向において隣り合う支持杭10に設置された中間格点部50bと第2桁部材40により連結されている。第2方向に沿って設置されている第2桁部材40を、特に横桁40bと呼ぶ。
第2桁部材40は、図1及び図3に示される様に傾斜して設置されていても良いし、図4に示される様に水平に設置されていても良い。図3に示されている第2桁部材40は、支持杭10が打設されている地盤90の斜面に沿って傾斜されている。つまり、斜面の山側に打設された支持杭10に設けられた中間格点部50bは、斜面の谷側に打設された支持杭10に設けられた中間格点部50bよりも高い位置に配置されている。このように構成されていることにより、中間格点部50bが設置されている位置が地盤90の表面94から過剰に離れることがなく、支持杭10の地盤90から突出している部分の水平方向変位δが部分的に過度に大きくなるのを抑制し、振動による支持杭10の破壊を抑制できる。また、中間格点部50bは、図1及び図4に示される様に鋼管支柱30に設置されるものに限定されず、図3に示される様に第2鋼管杭20bに設置されていても良い。
(上端格点部50a)
図7は、実施の形態1に係る道路構造100の上端格点部50a周辺の断面構造の一例の説明図である。図8は、図7に示す上端格点部50aの上面図である。上端格点部50aと支持杭10とは、偏心接合部材60aにより接合される。偏心接合部材60aは、上端格点部50aの一部であり、支持杭10の杭頭12と組み合わさり、杭頭12に対する上端格点部50aの位置を調整するためのものである。即ち、上端格点部50aは、偏心接合部材60aにより、支持杭10と中心軸の位置がずれた状態であっても、支持杭10に接合することができる。
実施の形態1において、偏心接合部材60aは、少なくとも上端格点部50aを構成する筒体である鋼管部材51aと支持部材55aとから構成される。実施の形態1においては、鋼管部材51aは、円筒形状になっている。鋼管部材51aの内部の上部には支持部材55aが設置されている。支持部材55aは、円筒形状である鋼管部材51aの中心軸Cを通り、板状の部材を十字形状に組み合わせて形成されている。なお、鋼管部材51aは、円筒形状に限定されるものではなく、矩形又は多角形等の断面形状の筒体であってもよい。
上端格点部50aは、第1桁部材41が接続される縦桁仕口52a及び横桁仕口53aを備える。縦桁仕口52a及び横桁仕口53aと第1桁部材41とは、添接板44により縦桁仕口52a又は横桁仕口53aの端部と第1桁部材41の端部とを挟みこみ、ボルト及びナットを用いて添接板44とそれぞれの部材の端部とを固定して接続される。
上端格点部50aは、上部に板状の部材が取り付けられており、上面57aが平坦になっている。上面57aは、道路の傾斜に合わせて傾斜していてもよい。上面57aには、板状の部材を貫通する充填孔56aが開口されている。充填孔56aは、杭頭12と鋼管部材51aとの間の空間に充填材80を注入するための孔であり、外部と鋼管部材51aの内部の空間とを連通する。
支持部材55aは、下面に支持杭10a又は10bの杭頭12の端面14が当接する。支持部材55aの下面と杭頭12の端面14とが当接することにより、上端格点部50aは、支持杭10の中心軸方向の位置、即ち高さ方向の位置が決まる。鋼管部材51aは、支持杭10の上端部の外周面を包囲している。充填材80が充填される前においては、鋼管部材51aの内側面と支持杭10の外側面との間には隙間が形成されており、上端格点部50aは、その隙間の分だけ支持杭10に対し、水平方向に移動させることができる。図6及び図7に示されるように、支持部材55aは、板状の部材を十字に組み合わせて形成されているが、その他の形態をとることもできる。支持部材55aは、上端格点部50aを杭頭12の端面14上に保持でき、充填材80の注入の際に障害にならなければその他の構造であってもよい。
支持杭10は、杭頭12の位置が想定した位置からずれる場合がある。地盤90の表面94からの突出量が多大である場合には、鋼管杭20及び鋼管支柱30の単品の精度及び接合精度により、杭頭12の位置誤差が大きくなる場合がある。例えば、上端格点部50aの鋼管部材51aが円筒形状であり、杭頭12が円柱形状である場合、鋼管部材51aの内径を杭頭12の外径より200mm大きく設定する。これにより、上端格点部50aは、例えば杭頭12に最大で100mmの水平方向の位置の誤差があっても正しい位置に設置でき、充填材80の充填性も確保することができる。
充填材80は、上端格点部50aの上面57aに開口している充填孔56aから鋼管部材51aと杭頭12との隙間に充填される。鋼管部材51aは、下方が開口されている。そのため、充填材80の充填工程において、下方から充填材80が漏れ出ないように、型枠治具70(図13参照)を鋼管部材51aの下端面に当接させて開口を塞ぐ。型枠治具70については、別途説明する。充填材80が充填される鋼管部材51aと杭頭12との隙間を形成する鋼管部材51aの内側面及び杭頭12の外側面は、突起54及び13が設けられている。突起54及び13が固化した充填材80と噛み合うため、充填材80は、鋼管部材51aの内側面及び杭頭12の外側面に沿った方向にずれることがなく、上端格点部50aと支持杭10との間の荷重伝達を向上させることができる。
突起13及び54は、鉄筋や棒鋼を曲げて溶接にて固定することにより形成してもよい。又は、鋼管部材51a及び支持杭10は、突起付き鋼板材により形成されていてもよい。例えば、鋼管部材51a及び支持杭10は、鋼板表面に縦横に突起を有する縞鋼板、高さ2mm程度の突起が並行して並ぶリブ付き鋼板により形成されたリブ付き鋼管を用いてもよい。縞鋼板又はリブ付き鋼管を使用することによって、鋼管部材51aに突起54を、及び支持杭10に突起13を溶接接合するための工費や工程を削減することができる。また、あらかじめ一体に形成されている突起13及び54がずれ止め突起の固定強度を向上させるため、上端格点部50aの鋼管部材51aは、高さ方向の寸法を縮小することが可能である。
(中間格点部50b)
図9は、実施の形態1に係る道路構造100の中間格点部50b周辺の断面構造の説明図である。図10は、実施の形態1に係る道路構造100の中間格点部50bの上面図である。中間格点部50bと支持杭10とは、偏心接合部材60bにより接合される。偏心接合部材60bは、中間格点部50bの一部であり、支持杭10と組み合わさり、支持杭10に対する中間格点部50bの位置を調整するためのものである。即ち、中間格点部50bは、偏心接合部材60bにより、支持杭10と中心軸の位置がずれた状態であっても、支持杭10に接合することができる。
実施の形態1において、偏心接合部材60bは、少なくとも中間格点部50bを構成する鋼管部材51bから構成される。鋼管部材51bは、筒体であり、実施の形態1においては円筒形状になっている。ただし、鋼管部材51bは、円筒形状に限定されるものではなく、矩形又は多角形等の断面形状の筒体であってもよい。支持杭10を包囲する筒体である鋼管部材51bは、中心軸が支持杭10の中心軸とずれた状態で接合可能であり、特に第2偏心接合部材と称する。
図10に示されるように、中間格点部50bは、第2桁部材40が接続される縦桁仕口52b及び横桁仕口53bを備える。縦桁仕口52b及び横桁仕口53bと第2桁部材40とは、第1桁部材41と同様に添接板44(図5、図6を参照)により縦桁仕口52b又は横桁仕口53bの端部と第2桁部材40の端部とを挟みこみ、ボルト及びナットを用いて添接板44とそれぞれの部材の端部とを固定して接続される。
中間格点部50bの鋼管部材51bは、筒体であるため上下方向の端部は開口されている。したがって、鋼管部材51bと支持杭10との隙間の上端が、充填口56bとなり鋼管部材51bと支持杭10との間の空間に充填材80を注入するための開口となり、外部と鋼管部材51aの内部の空間とを連通している。
充填材80が充填される前においては、鋼管部材51bの内側面と支持杭10の外側面との間には隙間が形成されており、中間格点部50bは、その隙間の分だけ支持杭10に対し、水平方向に移動させることができる。図9に示される構造の場合、中間格点部50bを上下方向に支持する構造が無いため、中間格点部50bを支持杭10に取り付ける際に中間格点部50bの下端面に型枠治具70(図13参照)を当接させて下側から中間格点部50bを支持する。型枠治具70は、充填材80を充填する際に下側の開口から充填材80が漏れ出ないようにする機能も有する。
支持杭10は、位置が想定した位置からずれる場合がある。地盤90の表面94からの突出量が多大である場合には、鋼管杭20及び鋼管支柱30の単品の精度及び接合精度により、支持杭10の位置誤差が大きくなる場合がある。例えば、中間格点部50bの鋼管部材51bが円筒形状であり、支持杭10が円柱形状である場合、鋼管部材51bの内径を支持杭10の外径より200mm大きく設定する。これにより、中間格点部50bは、支持杭10が最大で100mmの水平方向の位置の誤差を持っていても正しい位置に設置でき、充填材80の充填性も確保することができる。
充填材80が充填される鋼管部材51bと支持杭10との隙間を形成する鋼管部材51bの内側面及び支持杭10の外側面は、突起54及び13が設けられていても良い。突起54及び13が設けられている場合、固化した充填材80と噛み合うため、充填材80は、鋼管部材51bの内側面及び支持杭10の外側面に沿った方向にずれることがなく、中間格点部50bと支持杭10との間の荷重伝達を向上させることができる。
突起13及び54は、鉄筋や棒鋼を曲げて溶接にて固定することにより形成してもよい。又は、鋼管部材51b及び支持杭10は、突起付き鋼板材により形成されていてもよい。例えば、鋼管部材51b及び支持杭10は、鋼板表面に縦横に突起を有する縞鋼板、高さ2mm程度の突起が並行して並ぶリブ付き鋼板により形成されたリブ付き鋼管を用いてもよい。縞鋼板又はリブ付き鋼管を使用することによって、鋼管部材51bに突起54を、及び支持杭10に突起13を溶接接合するための工費や工程を削減することができる。また、あらかじめ一体に形成されている突起13及び54がずれ止め突起の固定強度を向上させるため、中間格点部50bの鋼管部材51bは、高さ方向の寸法を縮小することが可能である。
(中間格点部150b)
図11は、実施の形態1に係る道路構造100の中間格点部150b周辺の断面構造の説明図である。中間格点部150bは、鋼管部材51bの内部に支持部材55bを設置することにより、例えば第1鋼管杭20aと鋼管支柱30とを接合することができる。中間格点部150bは、鋼管部材51bの内部に上端格点部50aが備える支持部材55aと同様の構造の支持部材55bを備える。また、中間格点部150bは、中間格点部50bと同様に支持杭10の中間部において縦桁41a及び横桁41bにより隣り合う中間格点部50b又は150bと接続されても良い。
支持部材55bは、下面に第1鋼管杭20aの杭頭21aの端面22aが当接する。支持部材55aの下面と杭頭21aの端面22aとが当接することにより、中間格点部150bは、支持杭10の中心軸方向の位置、即ち高さ方向の位置が決まる。充填材80が充填される前においては、鋼管部材51bの内側面と第2鋼管杭20bの外側面との間には隙間が形成されており、中間格点部150bは、その隙間の分だけ第2鋼管杭20bに対し、水平方向に移動させることができる。図8に示される上端格点部50aと同じように、支持部材55aは、板状の部材を十字に組み合わせて形成されているが、その他の形態をとることもできる。支持部材55aは、中間格点部150bを杭頭12の端面14上に保持でき、充填材80の注入の際に障害にならなければその他の構造であってもよい。
支持部材55bは、上面に鋼管支柱30の端面31が載置される。支持部材55aの上面と鋼管支柱30の端面31とが当接することにより、鋼管支柱30は、支持杭10の中心軸方向の位置、即ち高さ方向の位置が決まる。充填材80が充填される前においては、鋼管部材51bの内側面と鋼管支柱30の外側面との間には隙間が形成されており、鋼管支柱30は、その隙間の分だけ鋼管部材51bに対し、水平方向に移動させることができる。以上より、中間格点部150bは、下方部材である第1鋼管杭20aと上方部材である鋼管支柱30とを中心軸を偏心させた状態で接合させることができる。中間格点部150bは、筒体である鋼管部材51bと支持部材55aとを備え、上方部材及び下方部材とを接合する。
中間格点部150bは、図11に示される様に、鋼管部材51bの外側から内部に向かってねじ込まれるボルト57を備えていても良い。ボルト57は、支持杭10を構成する下方部材及び上方部材の鋼管部材51bに対する位置を調整し、仮固定するものである。中間格点部50bの内部に充填材80が充填され固化した後は、ボルト57の頭は除去しても良い。
(道路構造100の施工方法)
次に、実施の形態1に係る道路構造100の施工方法について説明する。
図47は、実施の形態1に係る道路構造100の施工方法のフローである。道路構造100は、まず道路が延びる第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に並列して地盤90に鋼管杭20が打設される。この工程を鋼管杭打設工程と呼ぶ。鋼管杭打設工程は、まず地盤90にダウンザホールハンマなどを用いて削孔し、鋼管杭20を建て込む孔95(図12を参照)を形成する。図2~図4に示すように、孔95は、地盤90の表面94側にある堆積層92を貫通し、支持層93に達している。
図12は、孔95に鋼管杭20を建て込んだ状態の説明図である。図12の中心線から右側の部分は、鋼管杭20の中心軸を含む断面における構造を示している。鋼管杭20は、孔95の底面96に先端が達するように孔95に建て込まれる。そして、鋼管杭20の位置を決めた状態で、鋼管杭20の上端の開口から充填材80が注入される。充填材80は、例えばモルタル又はコンクリート等が用いられる。充填材80は、中空の筒形状である鋼管杭20を通り、孔95の底面96側の鋼管杭20の端部に設けられている貫通孔15から孔95と鋼管杭20の外側面との間の隙間97に流れ込む。
隙間97に流れ込んだ充填材80は、鋼管杭20の内部の空間が充填材80に満たされるに従い、隙間97を上昇する。充填材80が隙間97から地盤90の表面94から流出するのが確認できれば、鋼管杭20と孔95との間の隙間97が充填材80で満たされたことが確認できる。鋼管杭20と孔95との間の隙間97に地盤90の表面94から充填材80を直接充填した場合、鋼管杭20の周りに均等に充填材80を充填するのが困難である。また、地盤90の条件によっては、孔95の表面が円滑ではなく、充填材80に土砂が混入したり、底面96まで十分に充填材80が充填されない場合がある。しかし、図12に示されている構造を用いて鋼管杭打設工程を行うことにより鋼管杭20が地盤90に確実に打設される。
鋼管杭20は、道路構造100に複数用いられる。複数の鋼管杭20は、全て上記の鋼管杭打設工程により地盤90に打設される。なお、道路構造100の複数の鋼管杭20は、図12に示される孔95を備えるもので無くとも良い。
次に、複数の鋼管杭20のうち第1鋼管杭20aに鋼管支柱30が仮接合され、支持杭10aが仮組立される。また、支持杭10aの杭頭12及び複数の鋼管杭20のうち第2鋼管杭20bの杭頭21bに上端格点部50aが仮接合される。仮接合は、型枠治具70を用いることにより、一時的に鋼管支柱30、上端格点部50a、及び中間格点部50b、150bを、鋼管杭20に設置することである。これを仮接合工程と呼ぶ。特に、格点部50を杭頭12、21a又は21bに設置する工程を格点部設置工程、型枠治具70を格点部50に設置する工程を型枠設置工程、型枠治具70を用いて格点部50を杭頭に固定する工程を固定工程、格点部50のうち中間格点部150bに鋼管支柱30を設置する工程を鋼管支柱建て込み工程、と呼ぶ。格点部設置工程、型枠設置工程、固定工程及び鋼管支柱建て込み工程は、仮接合工程に含まれる。以下に仮接合工程の詳細について説明する。
図13は、実施の形態1の仮接合工程に用いられる型枠治具70の構造の説明図である。図13においては、上端格点部50aを鋼管杭20に設置する場合の図を示しているが、中間格点部50b、150bを設置する場合においても型枠治具70の使用方法は同じである。例えば、鋼管杭20の杭頭21に中間格点部150bを設置する際に、鋼管杭20の杭頭21に型枠治具70を用いる。
型枠治具70は、型枠板74を支持するブラケット71を備える。ブラケット71は、固定バンド73に接続されている。固定バンド73は、鋼管杭20の外側面を包囲する様にして鋼管杭20に着脱自在に固定され、ブラケット71の位置を固定する。固定バンド73により型枠治具70を鋼管杭20に設置する工程を特に型枠設置工程と呼ぶ。型枠設置工程は、仮接合工程に含まれる。
支持杭10が、図11に示される様に第1鋼管杭20aに鋼管支柱30を接合して構成される場合、まず、中間格点部150bが、鋼管杭20の杭頭21aの上に載置される。この工程を格点部設置工程又は中間格点部設置工程と呼ぶ。その後、中間格点部150bの仕口52に第2桁部材40が設置される。この工程を、桁部材設置工程と呼ぶ。中間格点部150bは、鋼管部材51bの下端面に型枠治具70の型枠板74を当接させるように設置される。この工程を型枠設置工程と呼ぶ。型枠板74は、中間格点部150bの内部に注入される充填材80が漏れ出ないように設置される。格点部設置工程、桁部材設置工程及び型枠設置工程は、仮接合工程に含まれる。また、格点部設置工程、桁部材設置工程及び型枠設置工程は、順番を入れ替えることもできる。
図13に上端格点部50a又は中間格点部50bに型枠治具70を設置した状態が示されている。図13に示す様に、格点部設置工程により杭頭12に中間格点部50bが設置された後に、中間格点部50bの下方に型枠治具70が設置される。なお、型枠治具70は、中間格点部150bに対しても同様に設置できる。ブラケット71は、調整ボルト75を備える。調整ボルト75の先端は、型枠板74の上に載置される中間格点部50bの鋼管部材51bの外周面に当接する。調整ボルト75は、ナット部材76と螺合しており、先端の位置を精度良く調整できるとともに、中間格点部50bの鋼管部材51bの位置を仮固定することができる。このように中間格点部50bの鋼管部材51bの水平位置を調整し固定する工程を固定工程と呼ぶ。固定工程は、仮接合工程に含まれる。
中間格点部150bが第1鋼管杭20aの杭頭21aに取り付けられた後に、中間格点部50bに鋼管支柱30が建て込まれる。これを鋼管支柱建て込み工程と呼ぶ。鋼管支柱建て込み工程は、仮接合工程に含まれる。これにより、図11に示す様に、第1鋼管杭20aの上に鋼管支柱30が立設される。
次に、第1鋼管杭20aに鋼管支柱30が接続されている支持杭10a及び第2鋼管杭20bの杭頭12に上端格点部50aが取り付けられる。この工程を、格点部設置工程又は上端格点部設置工程と呼ぶ。上端格点部50aの設置は、中間格点部50bを鋼管杭20の杭頭21に設置するのと同様に、格点部設置工程、型枠設置工程、及び固定工程により行われる。
中間格点部150bが設置された後に、第2桁部材40が設置される。また、上端格点部50aが設置された後に、第1桁部材41が設置される。これらの工程を桁部材設置工程と呼ぶ。桁部材設置工程は、仮接合工程に含めることができる。
実施の形態1に係る道路構造100は、上記のように型枠治具70を用いることにより、格点部50に充填材80を注入しない状態で支持杭10a及び10bを仮組立することができる。そのため、仮組立した支持杭10a及び10bの上に覆工版(図示せず)を設置し、その上部に杭設置用の重機や資材を載置することにより、道路に沿った第1方向に次々に支持杭10a及び10bを立設することができる。支持杭10a及び10bの上に覆工版を設置する工程を、覆工版設置工程と呼ぶ。覆工版設置工程は、仮接合工程に含めることができる。鋼管打設工程と仮接合工程とは、交互に繰り返され、道路全長分又は所定の道路の長さの分の複数の支持杭10a及び10bが建て終わるまで繰り返される。以上の工程をまとめて、支持杭立設工程と呼ぶ。
支持杭立設工程により、支持杭10a及び10bが建てられ、支持杭10a及び10aの杭頭12に上端格点部50aが仮固定された状態になったら、格点部50の内部に充填材80が注入される。この工程を注入固化工程と呼ぶ。なお、格点部50は、上端格点部50a及び中間格点部50bを総称したものである。注入固化工程は、道路全長分の仮組立状態の支持杭10a及び10bを立設した後に、全ての格点部50について実施すると良い。
型枠治具70を用いないで道路構造100を設置する場合、道路に沿った第1方向に最初の支持杭10を建て、格点部50に注入された充填材80を固化させた後に覆工版を支持杭10の上に設置する。これを覆工版設置工程と呼ぶ。そして、設置された覆工版の上に重機を載せ、次の支持杭10を建てる。このような工程の場合、支持杭10を建てるごとに充填材80の注入固化工程が必要となるため、工期が長くなってしまう。一方、道路構造100は、型枠治具70を用いることにより、充填材80の注入固化工程の回数を抑えることができるため、工期を短縮することができるという利点がある。
道路構造100は、注入固化工程が完了した後に覆工版が撤去される。これを覆工版撤去工程と呼ぶ。覆工版撤去工程の後に、道路床版99が設置される。これを床版設置工程と呼ぶ。
図14は、覆工版399の一例を示す側面図である。覆工版399は、鋼管杭打設工程と仮接合工程とを繰り返している際に仮組立てされた支持杭10の上に載置されるものである。図14に示される覆工版399は、仮設の杭頭ブロック350aを備えている。そのため、道路構造100の上端格点部50aを設置せずに杭頭ブロック350aを杭頭12にはめ込み、覆工版399を設置できる様にしたものである。このような覆工版399を用いることにより、鋼管杭打設工程のみをまとめて実施することができるため、杭打機の拘束時間を短縮することができる。
(支持杭10)
実施の形態1に係る支持杭10は、一本の鋼管から構成される場合と、2本以上の鋼管を接合して構成される場合がある。図1に示されている支持杭10aは、図中の三角形の記号で示された接合部11において、地盤90に打設された第1鋼管杭20aの上方に鋼管支柱30を溶接により接合して形成されたものである。この場合、接合部11は、図9に示す中間格点部50bを備えていても良い。なお、接合部11は、図11に示す中間格点部150bを用いて第1鋼管杭20aと鋼管支柱30とを接合する構造であっても良い。また、図1に示されている支持杭10bは、第2鋼管杭20bのみから構成されている。
図15は、比較例に係る道路構造1000の断面構造の説明図である。図15は、道路が延びる方向である第1方向に垂直な断面を示している。比較例に係る道路構造1000は、地盤90中に複数の鋼管杭1010pが打設され、鋼管杭1010pの地表付近の部分にフーチング1091が設置されている。そして、フーチング1091の上方に鋼管杭1010pと比較して外径の大きい鋼管で構成された支柱1010が立設されている。
比較例に係る道路構造1000の鋼管杭1010pは、一般にJIS A 5525に規定されている鋼管ぐいが使用されている場合が多い。鋼管杭1010pは、例えばSKK400又はSKK490により構成され、直径400~600mm、板厚9~19mmのものが使用されていることが多い。
また、比較例に係る道路構造1000の支柱1010は、例えばプレス鋼材などを組み合わせて製作された鋼管柱であり、例えば直径3000mm以上のものが使用される。
比較例に係る鋼管杭1010pは、地盤90中にあり損傷を受けた場合に修復が困難であることから、一般的に大地震によって損傷を受けないように、地震による入力を受けた場合であっても材料の弾性変形範囲内となるように設計される。
また、比較例に係る鋼管杭1010pの杭頭に形成されたフーチング1091は、立設される支柱1010の基礎となるとともに、水平方向の投影面積が大きいため、地震による入力が加わった場合でも周囲の地盤90に支持される。これにより、鋼管杭1010pは、大地震によっても損傷を受けない。
比較例に係る支柱1010は、外径の比較的大きい製作管により構成されており、これも大地震による入力に対し次のように設計されている。支柱1010については、大地震時(レベル2地震動)においては、降伏点を超えて、塑性変形を許容し、塑性変形によるエネルギー吸収を考慮した設計が行われる。そして、支柱1010に使用される鋼管部材については、道路橋示方書(「道路橋示方書・同解説 II鋼橋・鋼部材編」、日本道路協会、2017年12月、p.10-11)によって次の特性が要求されている。
(1)シャルピー吸収エネルギー:JIS Z 2242 ≧27J
(ただし、鋼種SM400、SM490、SM490Y、SMA490で、鋼材の厚さが16mmを超え50mm以下の場合)
また、鋼道路橋設計便覧(「鋼道路橋設計便覧」、日本道路協会、2020年11月、p.41-48)では、構造用鋼材について塑性化を考慮する場合には降伏比についても検討を要することが記されており、JIS G 3475建築構造用炭素鋼鋼管では、溶接鋼管の場合は降伏比について次の特性が要求されている。
(2)降伏比=降伏応力/引張強度≦85%
上記の(1)及び(2)の特性を満たすことにより、比較例に係る支柱1010は、降伏後も耐力の増加が見込まれて、地震力に対する粘りが発揮される。
以上のような比較例に係る道路構造1000の場合、大地震による入力に対し損傷を抑えるように設計されているが、地盤90中に設置されるフーチング1091や、支柱1010のように大規模な構造が必要となり、例えば山の斜面に沿って設置される道路などに適用することが困難である。
一方、実施の形態1に係る道路構造100の場合、地盤90に打設された鋼管杭20を地盤90から突出させ、その上に上端格点部50a又は鋼管支柱30を接合することにより、地盤90からの突出量を大きくしている。また、支持杭10a及び10bは、上端格点部50a及び中間格点部50bを使用して第1鋼管杭20a又は第2鋼管杭20bに対し上端格点部50a及び鋼管支柱30を偏心させることにより、上端格点部50aの位置精度を確保している。一般的に、地盤90からの突出量が大きい場合、支持杭10a及び10bの杭頭12の位置精度は設計された位置に対し誤差を生じやすいが、実施の形態1に係る支持杭10a及び10bは、偏心接合構造を採用しているため、杭頭12及び上端格点部50aの位置精度も確保しやすい。
また、支持杭10a及び10bは、比較例で地盤90中に設置されている鋼管杭1010pとJIS A 5525に規定されている鋼管ぐいと同じ材料を使用している。つまり、鋼管ぐいSKK材又は一般構造用鋼管STK材が使用されている。したがって、実施の形態1に係る支持杭10a及び10bは、地盤90中の強度に関しては、十分に確保されている。しかし、JIS A 5525に規定されている鋼管ぐいの材料は、降伏後の塑性変形したときの強度については何ら規定されておらず、地盤90から突出した部分の強度を確保できないことが想定される。
そこで、実施の形態1に係る支持杭10a及び10bは、道路構造100において耐震性に適した鋼管により構成されている。具体的には、実施の形態1の道路構造100においては、下記に説明する溶接後熱処理された「ERW-T」を用いた支持杭10a及び10bが用いられる。
図16は、実施の形態1に係る支持杭10に用いられる鋼管について正負交番試験を実施した場合の履歴曲線である。図17は、正負交番試験の試験体の模式図である。実施の形態1に係る支持杭10に用いられる鋼管は、レベル2地震動を加えた正負交番試験を実施したときに得られる水平方向変位δ及び降伏時水平方向変位δyと水平荷重PHとの関係が、図16に示されるような安定した紡錘形状の履歴曲線により表される。
図17に示すように、支持杭10に用いられる鋼管についての試験体においては、下端部に示されている外管が上端格点部50a、内管が支持杭10、固定部が第1桁部材41又は第2桁部材40に相当する。なお、図16及び図17の試験体に用いた内管は、一般構造用鋼管STK400材で構成された電縫鋼管であり、母材の降伏強度は395N/mm2である。また、試験体の内管は、外径が508mm、板厚が19mmのものを用いた。
図16の履歴曲線を得た正負交番載荷試験においては、試験体の上端に一定の軸方向荷重Pvを加えつつ、水平方向に正負交番載荷を加えた。なお、水平方向の正負交番載荷は、鋼管の公称降伏ひずみ時の水平方向変位をδyとしたときに、水平方向変位δ=±5δyを最大として試験体の内管の上端に加えた。正負交番載荷の水平荷重PHは、正負交番載荷の1サイクルごとに増加させた。図16及び図17に示す試験において、水平荷重PHはレベル2地震動に相当する荷重を負荷している。レベル2地震動による最大荷重の計算値はPH=482kNであり、このときの鋼管の水平方向変位δは、δ/δy=2である。試験体の鋼管は降伏し、変位は降伏したときの変位の約2倍となっている。
図16に示すように、レベル2地震動の最大荷重を超えて載荷した場合、δ/δy=5まで安定した紡錘形の履歴曲線が得られている。δ/δy=5の時点において試験体の鋼管には、座屈及び破断の発生などの急激な破壊は発生していなかった。すなわち、この試験体の鋼管を用いている支持杭10は、レベル2地震動を受けても、鋼管が塑性変形して地震エネルギーを安定的に吸収することにより、座屈及び破断などの破壊が発生しない。
(支持杭10を構成する鋼管の製造について)
図18は、実施の形態1に係る支持杭10に用いられる電縫鋼管の溶接工程の説明図である。実施の形態1に係る支持杭10は、電縫鋼管が用いられている。図18の左から右へ鋼板がロールで曲げられながら移動していく。P-P断面では、鋼板がC字形に曲げられ、Q-Q断面では、曲げ板の端部同士が近接し、R-R断面で端部が接触する。この過程で、鋼板の両端に設置された給電接触子の間に高周波電流を流すことにより、R-R断面の接合部に電流を集中させる。接合部の表面層は、抵抗熱により急速に加熱することにより溶融し、S-S断面でスクイズロールによって曲げ板の端部同士が加圧されて接合される。曲げ板の端部同士が加圧されてできた溶接部は、電縫鋼管の面外に突出したビードが形成されている。T-T断面は、溶接部面外に突出したビードを切削除去する。
一般には、この状態で鋼管材として製造が完了するが、実施の形態1に係る支持杭10に用いる電縫鋼管は、溶接部に後熱処理を行ったものを使用する。電縫鋼管の溶接部の熱処理方法については、例えば特開2009-173995号公報に記載された方法がある。この方法では、外面ビードを切削除去するビード切断機の後工程において誘導加熱装置が設置されている。誘導加熱装置は、電縫鋼管の溶接部の外面側及び内面側にそれぞれ誘導コイルを複数スタンド配置したものであり、溶接部の外面側及び内面側を誘導加熱するものである。内面側の誘導コイル稼働条件は、内面温度がAc3変態点を超えるまでの前段スタンドではフルパワーに、後続のスタンドでは、内面温度がキュリー点超の所定内面温度に保持されるように設定される。外面側の誘導コイル稼働条件は、外面温度がAc3変態点を超えるスタンドまではゼロ超フルパワー未満のパワーに、それ以降のスタンドでは外面温度がキュリー点超の所定温度に保持されるように設定して、誘導加熱が行われる。上記の熱処理方法によれば、質量%で、0.05%C、0.2%Si、1.4%Mn系の熱延鋼帯(Ac3変態点:860°C)を用いて、外径600mm、板厚19.1mmの電縫鋼管に加工製造した材料について、シャルピー吸収エネルギーを向上できることが示されている。
図19は、実施の形態1に係る支持杭10に用いられる電縫鋼管の溶接部の断面図である。図19は、熱処理された電縫鋼管の溶接部を示しており、下側が鋼管外面、上側が鋼管内面である。溶接線は矢印で示した部分である。内外面に▽及び△で示した部分は、溶接の熱影響部の境界を示す。溶接の熱影響部の境界線は、鋼管内外面において、溶接線から左右それぞれ約2mmの位置から板厚中心に向かって狭くなるつづみ型の痕跡が確認できる。溶接後熱処理範囲は、熱処理中心位置から鋼管外面では左右にそれぞれ約20mm、鋼管内面では約7mmである。溶接線と熱処理中心付近は約4mmずれている。ただし、溶接線と熱処理中心とのずれは、製造ラインのシーム検出装置の精度によるものであり、ずれが0の場合もあり得る。図に示されるように、溶接による熱影響部は、溶接後熱処理範囲内にあり、上記の熱処理方法によって、溶接による熱影響部が溶接後に熱処理できていることが分かる。
(支持杭10の強度)
実施の形態1に係る支持杭10は、上記の製造方法により製造された電縫鋼管であり、特に溶接部を含めた各部の降伏比85%以下であり、シャルピー吸収エネルギーが27J以上に確保されたものである。支持杭10は、このように構成されることにより、レベル2地震動に対し、塑性変形して安定したエネルギー吸収ができる。
図20は、強度試験用の試験片を採取した電縫鋼管の外径、板厚、成分の表である。試験片を採取する電縫鋼管は、図18に示す製造方法で製造され溶接後熱処理された「ERW-T」と、化学成分がほぼ同等で熱処理されていない「ERW-N」の2種類である。それぞれ、これらの電縫鋼管は、JIS規格(JIS A 5525)を満足している。
(引張試験の結果)
図21は、試験片を用いて引張試験を行って得られた公称応力と公称ひずみとの関係図である。図22は、試験片を用いて引張試験を行って得られた結果を示している。引張試験片は、電縫鋼管の断面において、溶接部を基準として、0°、22.5°、90°、180°の4カ所について、鋼管軸方向にJIS 12C 号試験片を採取した。なお、図22においては、試験片の降伏応力σy、引張強さσu、降伏比YR=σy/σuの結果を示す。
図21(a)に示されるように、溶接後熱処理されていないERW-Nの試験結果において、溶接部を含まない母材から採取した試験片である22.5°、90°、180°のそれぞれの曲線は、ほぼ同じ曲線である。しかし、溶接部を含む0°の位置から採取した試験片は、母材から採取した試験片に対して降伏点及び引張強度が明らかに大きい。これに対して、図21(b)のERW-Tの場合は、溶接部を含む0°の位置から採取した試験片と、母材である22.5°、90°、180°の位置から採取した試験片との曲線の差異は小さくなっている。
図22に示されているように、溶接後熱処理されていないERW-Nの場合、溶接部である0°では降伏応力σy、引張強さσuともに母材部より大きな値となっており、降伏比YRは0.94を示している。一方、溶接後熱処理されているERW-Tでは、溶接部である0°について、降伏応力σy及び引張強さσuの値は母材のものとの差が小さく、降伏比YRについても0.85となっている。このことから、支持杭10を構成する電縫鋼管の溶接部の熱処理を行うことにより、溶接部の溶接による硬化を改善し、降伏点や引張強度を母材部と同等にでき、溶接部の降伏比YRを0.85以下に調整できる。
図23は、試験片を用いて引張試験を行って得られたシャルピー試験の結果を示す図である。試験片を採取した電縫鋼管は、支持杭10に用いられる図18に示す製造方法で製造され溶接後熱処理された「ERW-T」と、化学成分がほぼ同等で熱処理されていない「ERW-N」の2種類である。シャルピー試験の試験片は、上記の製造方法で道路橋示方書IIに規定されているJIS Z 2242のVノッチ試験片とし、管周方向に沿って採取した試験片と管軸方向に沿って採取した試験片とした。管周方向の試験片では、ノッチ位置の溶接線に対する距離が、0mm、1mm、3mmの3種類とした。管軸方向の試験片は、溶接線を含む管軸方向から採取した1種類である。合計4種類のそれぞれについて3つの試験片を用いてシャルピー試験を実施した。
図23においては、横軸を円周方向における溶接線の位置からの距離とし、距離による吸収エネルギーの分布を示している。熱処理を行っていないERW-Nについてみると、管周方向に沿って採取された試験片については、溶接線上で吸収エネルギーが小さく、シャルピー吸収エネルギーが27Jより小さな値となっている。一方で、熱処理を行ったERW-Tの場合は、管周方向に沿って採取された試験片、管軸方向に沿って採取された試験片ともにシャルピー吸収エネルギーが27Jより大きな値をとっている。
道路橋示方書では、橋脚に用いられる材料であるSM490B、適用板厚6mm≦t≦40mmにおいては、シャルピー吸収エネルギーが27J以上と規定されている。これに対し、図23に示す結果によれば、実施の形態1に係る支持杭10を構成するSKK材を用いた電縫鋼管は、上記に説明した製造方法及び溶接部の熱処理を行うことにより、シャルピー吸収エネルギーを27J以上にできる。したがって、実施の形態1に係る支持杭10は、JIS A 5525に規定された鋼管ぐい用のSKK材を用いつつ、大地震時の衝撃的な荷重に対して、橋脚として十分なエネルギー吸収能を発揮できる。
(上端格点部及び中間格点部の変形例)
実施の形態1に係る道路構造100の上端格点部50a及び中間格点部150bの変形例について説明する。以下において説明する上端格点部550a、250a、中間格点部550b、250bは、上記に説明した道路構造100の上端格点部50a及び中間格点部150bと置換が可能である。
図24は、実施の形態1に係る道路構造100の上端格点部550a周辺の断面構造の説明図である。図24(b)は、図24(a)のE-E部の断面を示している。図25は、実施の形態1に係る道路構造100の上端格点部550aの上面図及び側面図である。図25に示すように、上端格点部550aと支持杭10とは、偏心接合部材560aにより接合される。偏心接合部材560aは、上端格点部550aの一部であり、支持杭10の杭頭12と組み合わさり、杭頭12に対する上端格点部550aの位置を調整するためのものである。即ち、上端格点部550aは、偏心接合部材560aにより、支持杭10と中心軸の位置がずれた状態で支持杭10に接合することができる。なお、上端格点部550aに用いられる偏心接合部材560aと中間格点部550bに用いられる偏心接合部材560bとを総称して、偏心接合部材560と総称する場合がある。
偏心接合部材560aは、円柱形状の差し込み部材61と差し込み部材61の外周面に接合され放射状に延びるリブ部材62とを有する。差し込み部材61とリブ部材62とは、上端格点部550aを構成する筒体である鋼管部材51aの内側に配置されており、下部が鋼管部材51aの下端から下方に突出している。
図26は、図25(b)のF-F部の断面図である。上端格点部550aの鋼管部材51aに接合されている下部プレート59は、鋼管部材51aの内部から差し込み部材61が突出する開口部59aを備える。開口部59aは、差し込み部材61が挿通される程度に開口されている。リブ部材62は、鋼管部材51aの内部に配置されている内部リブ部材62bと、下部プレート59の下方に接合されている外部リブ部材62aと、からなる。すなわち、リブ部材62は、鋼管部材51aの内部と鋼管部材51aの外部とにそれぞれ接合されている。なお、外部リブ部材62aと内部リブ部材62bとは、差し込み部材61の強度及び剛性によって設置されていなくともよい。
差し込み部材61及び内部リブ部材62bの上端は、上端格点部550aの上面57aを構成する上部プレート58に溶接により固定されている。また、内部リブ部材62bの下端は、下部プレート59に溶接により接合されている。内部リブ部材62bは、差し込み部材61の外周面にも接合されており、上部プレート58、下部プレート59及び差し込み部材61を連結し、強度及び剛性を確保するものである。
外部リブ部材62aは、下部プレート59の下方に配置され、下部プレート59の下面に接合されており、差し込み部材61の外周面にも接合されている。外部リブ部材62aは、下部プレート59と差し込み部材61とを連結し、強度及び剛性を確保するものである。
図25に示されるように、上端格点部50aの上部に接合されている上部プレート58は、板状の部材を貫通する充填孔56aが2か所開口されている。充填孔56aは、差し込み部材61を挟んで対称な位置に設けられている。また、図26に示されるように、下部プレート59も上部プレート58と同様に充填孔56aが2か所設けられている。充填孔56aは、差し込み部材61と杭頭12との間に形成された空間に充填材80を注入するための孔である。つまり、上端格点部50aが杭頭12の上方に載置された状態において、充填孔56aは、外部と鋼管部材51aの内部の空間と差し込み部材61及び杭頭12との間に形成される空間とを連通する。例えば、外部からコンクリート又はモルタル等の充填材を注入するにあたり、注入パイプ(図示なし)を上部プレート58の充填孔56aから内部に挿入し、下部プレート59の充填孔56aに充填材を注入する。充填材80は、上端格点部50aの一部である偏心接合部材560aが差し込まれた杭頭12の内部に充填され固化することにより、上端格点部50aと杭頭12とを接合する。
図24に示されるように、杭頭12は、先端が開口されており、内部の空間に充填材受け板16が設置されている。充填材受け板16は、杭頭12の内部に差し込まれた差し込み部材61の下端よりも下方に配置されている。充填材受け板16は、充填孔56aから注入された充填材80を支持し、杭頭12の内部に充填材を保持するための部材である。
杭頭12は、端面14が上端格点部50aの下部プレート59の下面に当接する。つまり、上端格点部50aは、支持杭10の端面14に載置されている。これにより、上端格点部550aは、高さ方向の位置が決まる。そして、上端格点部50aは、偏心接合部材560aと杭頭12の内面との隙間の分だけ水平方向にずらすことが可能である。これにより、支持杭10の中心軸の位置がずれた場合であっても、上端格点部50aを設計通りの位置に配置することが可能となる。
図26に示されるように、差し込み部材61は、円筒形状の鋼管である。ただし、差し込み部材61は、円筒形状の鋼管に限定されるものではなく、断面が矩形状、楕円形状、長円形状又は多角形状の鋼管であってもよい。差し込み部材61は、図26において紙面上下方向及び左右方向の強度及び剛性が等しいものが望ましい。実施の形態1に係る道路構造100は、差し込み部材61が円筒形状であり、全方向に強度及び剛性が等しい。道路構造100に必要とされる強度及び剛性に応じて差し込み部材61は適宜形状を変更することができる。
差し込み部材61は、下端が板材64で塞がれていても良い。板材64は、円筒形状の鋼管で構成された差し込み部材61の内部に充填材80が侵入するのを防ぐことにより、上端格点部50aと支持杭10との接合に必要な充填材80の量を抑制することができる。また、板材64の外形は、差し込み部材61の断面形状よりも大きく形成され、差し込み部材61の外周面よりも突出することにより、充填材80が固化した後に差し込み部材61が杭頭12から引き抜かれる方向についての強度が高くなる。
上記の差し込み部材61を用いた偏心接合部材560aは、中間格点部150bにも応用することができる。
図27は、実施の形態1に係る道路構造100の中間格点部550b周辺の断面構造の説明図である。中間格点部550bは、上端格点部550aと同様に偏心接合部材560bを備える。偏心接合部材560bは、上部プレート58及び下部プレート59の両方から突出するように設けられた差し込み部材61と、差し込み部材61と上部プレート58及び下部プレート59とを接合するリブ部材62と、を備える。差し込み部材61は、リブ部材62により上部プレート58及び下部プレート59と接合されている。
差し込み部材61は、鋼管部材51bの内側に配置されており、上部プレート58及び下部プレート59を貫通するように配置されている。なお、差し込み部材61は、上部プレート58及び下部プレート59と直接接合されていても良い。
また、差し込み部材61は、図27に示されるような上下に貫通する構成でなくともよく、上部プレート58の上面及び下部プレート59の下面にそれぞれ接合されて、上部プレート58の上面及び下部プレート59の下面のそれぞれから上下に延びるように構成されていても良い。
中間格点部550bの上方に延びる差し込み部材61は、上方部材である鋼管支柱30に挿入される。中間格点部550bの下方に延びる差し込み部材61は、下方部材である第1鋼管杭20aに挿入される。中間格点部550bから上下方向に延びる差し込み部材61は、それぞれ鋼管支柱30又は第1鋼管杭20aとの間に差し込まれた状態で充填材80が充填されて、鋼管支柱30、中間格点部550b及び第1鋼管杭20aを接合する。中間格点部550bの偏心接合部材560bは、上端格点部550aと同様に下方部材である第1鋼管杭20aの中心軸と中間格点部550bの中心軸とをずらした状態で接合できる。また、偏心接合部材560bは、中間格点部550bの中心軸と鋼管支柱30の中心軸とをずらした状態で接合できる。
また、鋼管支柱30及び第1鋼管杭20aには、それぞれ充填孔17が設けられており、ここから充填材80が充填される。充填材80は、固化することにより、中間格点部550bと鋼管支柱30及び第1鋼管杭20aとを接合する。
なお、図27のG-G部に示される、実施の形態1に係る中間格点部550bの鋼管部材51bの部分の断面構造は、図26と同様な構造である。ただし、G-G部で示される断面においては、充填孔56aは設けられていなくても良い。
次に、実施の形態1に係る道路構造100の上端格点部50a及び中間格点部150bの別の変形例について説明する。
図28は、実施の形態1に係る道路構造100の上端格点部50aの変形例である上端格点部250a周辺の断面構造の説明図である。図29は、図28の上端格点部250aの上面図である。上端格点部250aは、鋼管部材251aと縦桁41aを接続する縦桁仕口52aと横桁41bを接続する横桁仕口53aとを備え、上面57aが平坦になっている。
支持杭10の杭頭12の端面14には偏心接合部材260が接合されている。偏心接合部材260は、下端面が支持杭10の杭頭12に接合され、上端面が板部材261により形成されている。板部材261は、上面262が平坦になっており、上端格点部250aの鋼管部材251aの下端面254aを載置できる様に構成されている。板部材261は、上面262が鋼管部材251aの下端面254aよりも大きく形成されている。したがって、上端格点部250aの鋼管部材251aは、偏心接合部材260の上面262上において水平方向にずらして載置することができる。つまり、支持杭10と上端格点部250aとは、偏心接合部材260を用いて互いに中心軸を偏心させた状態で接合することができる。なお、変形例である偏心接合部材260を第3偏心接合部材260と呼ぶ場合がある。また、上面262を接合面と呼ぶ場合がある。
図30は、実施の形態1に係る道路構造100の中間格点部150bの変形例である中間格点部250b周辺の構造の側面図及び上面図である。偏心接合部材260は、中間格点部250bと第1鋼管杭20aとの接合に用いても良い。道路構造100は、中間格点部250bの鋼管部材251bが第1鋼管杭20aと同じ断面形状になっている。中間格点部250bは、鋼管部材251bと縦桁仕口52bと横桁仕口53bとから構成されている。変形例においては、中間格点部250bは、実施の形態1における鋼管支柱30と一体化されていても良い。このように構成されることにより、偏心接合部材260を用いて接合して形成された支持杭10aに桁部材40を設置することができる。
<道路構造100の変形例>
次に、実施の形態1に係る道路構造100の変形例について説明する。
図31は、実施の形態1に係る道路構造100の変形例の断面構造の説明図である。図2~図4に示されている様に、実施の形態1の道路構造100は、道路が延びる第1方向に交差する第2方向に2本の支持杭10が並列されているが、2本以上の支持杭10が並列されていても良い。また、道路構造100は、上端格点部50aと中間格点部50bとの間、又は2つの中間格点部50bの間を連結し、横桁41bに対し傾斜している斜め梁48を備えていても良い。斜め梁48は、支持杭10及び横桁41b又は横桁40bにより構成される矩形の構造の対角に位置する2つの格点部50を連結するものである。道路構造100は、斜め梁48によるトラス構造によって架構の変形が抑止され、部材応力が低減できる。さらには、斜め梁48は、第2方向に並んで設置されている斜め梁48a及び48bを含む。斜め梁48aは、道路構造100が設置される地盤90の山側に設置されており、斜め梁48bは、谷側に設置されている。山側に位置する斜め梁48aは、斜面に沿った方向に傾斜されていることが望ましい。また、図28においては、谷側の斜め梁48bは、山側の斜め梁48aと対称的な向きに傾斜しているが、同じ方向に傾斜させても良い。
上端格点部50aと横桁41bは、予め一体に製作されており、格点桁となっていても良い。また、中間格点部50bと横桁40bとは、予め一体に製作されており、格点桁となっている。これにより、格点部50は、個別に測量心出し設置する手間が省け、省力化、工程短縮が図れる。中間格点部50bも横桁40bと一体に製造されており、同様な効果をもつ。また、格点部50は斜材によって互いに接合されており、斜め梁48によるトラス構造によって架構の変形が抑止され、部材応力が低減できる。
また、実施の形態1においては、人工地盤構造物の一例として支持杭10の上端にのみ道路床版99を設けた道路構造100について説明したが、道路床版99は、支持杭10の軸方向において1層のみに限定されるものではなく、複数層の床版を有していても良い。例えば、支持杭10の中間部に道路床版99又はその他の用途に用いられる床版を設けても良い。この場合、中間格点部50b、150b、250b又は550bの上に道路床版99又はその他の用途に用いられる床版が設置される。複数の床版は、一部を道路床版99として使用し、その他を付帯設備を設置するための床版として使用される場合がある。
(実施の形態1に係る道路構造100の効果)
実施の形態1に係る道路構造100は、道路が延びる第1方向及び第1方向に交差する第2方向に並列して地盤に打設された支持杭10と、支持杭10のそれぞれの上端に設置された上端格点部50aと、隣り合う2つの上端格点部50aを接続する第1桁部材41と、上端格点部50a及び第1桁部材41の上方に設置される道路床版99と、を備える。支持杭10は、レベル2地震動を受けたときの水平方向変位と水平荷重との履歴曲線が紡錘形状となるものである。このように構成されることにより、道路構造100は、地盤90からの突出長さが多大な支持杭10においても、杭頭12の位置が調整でき、また、杭頭12に接合される上端格点部50aの位置及び第1桁部材41の位置の調整ができる。つまり、道路構造100を構成する鋼管杭20、鋼管支柱30、及び上端格点部50aのうち、下方に位置する下方部材と下方部材の上方に接合される上方部材との中心軸を誤差の分だけずらして位置調整ができる。そのため、支持杭10を地盤90に立設するにあたり、上端格点部50aの位置の精度を容易に確保できる。また、道路構造100は、地盤90からの突出量が長大な支持杭10を備えるが、支持杭10がレベル2地震動を受けた場合であっても塑性変形により安定してエネルギーを吸収できる様に構成されているため、耐震性に優れる。
また、実施の形態1に係る道路構造100によれば、支持杭10は、熱処理された電縫鋼管により構成され、溶接部を含めた各部の降伏比が85%以下であり、シャルピー吸収エネルギーが27J以上である。このように構成されることにより、支持杭10は、電縫鋼管で構成でき、かつエネルギー吸収性能が確保されている。
また、実施の形態1に係る道路構造100によれば、支持杭10は、鋼管製造時の溶接ビード切断の後工程において鋼管の内面又は外面に誘導コイルを設置した誘導加熱装置を用いて熱処理されている。そのため、支持杭10は、溶接後熱処理を加えた電縫鋼管で構成されるため、溶接部も他の母材部分と同等の性能を備え、エネルギー吸収性能が確保されている。
また、実施の形態1に係る道路構造100によれば、支持杭10は、鋼管ぐいSKK材又は一般構造用鋼管STK材を使用したものである。このように構成されることにより、道路構造100の支持杭10は、地盤90中における強度が従来どおり確保され、かつ地盤から突出した部分の耐震性も確保される。
実施の形態2.
実施の形態2においては、実施の形態1に係る道路構造100などの人工地盤構造物の支持杭10上における中間格点部50b、150bの配置の詳細及び支持杭10の突出量の設定について説明する。実施の形態2に係る道路構造100の各部については、各図面において同一の機能を有するものは実施の形態1の説明で使用した図面と同一の符号を付して表示するものとする。
図32は、実施の形態2に係る道路構造100の一例を示す模式図である。図32は、道路構造100をx方向から見た模式図を示している。道路構造100は、図32のK部に示すように、地盤90の表面94から突出した部分の長さhが異なる2つの支持杭10の上端同士が第1桁部材41により接続されている構造を有する。また、道路構造100は、図32のL部に示すように、2つの支持杭10の上端同士が第1桁部材41により接続され、一方の支持杭10の中間部に中間格点部50bが設けられている構造を有する。さらに、道路構造100は、図32のM部に示すように、2つの支持杭10の上端同士が第1桁部材41により接続され、かつ2つの支持杭10の中間部にそれぞれ設けられた中間格点部50b同士が第2桁部材40により接続されている構造を有する。なお、中間格点部50bは、中間格点部150b、250b又は550bで置換することもできる。また、中間格点部50bは、偏心接合部材60、260を用いていない格点部50であっても良い。
道路構造100は、複数の支持杭10を備える。道路構造100が例えば山間部などの斜面や起伏がある地盤90に設置される場合、複数の支持杭10は、それぞれ地盤90からの突出する長さhが異なる場合がある。道路構造100が例えばレベル2地震動を受けた場合、地盤90の表面94から上に出ている部分は、水平方向(x方向及びy方向)に変位する。x方向又はy方向において隣り合う支持杭10に着目した場合、支持杭10に生じる曲げモーメントM及び応力σは、地盤90から突出する長さh及び中間部が第2桁部材40で接続されているか否かにより変わる。道路構造100は、支持杭10が塑性変形することにより地震動によるエネルギーを吸収し、耐震性を向上させるものである。したがって、隣り合って配置される2つの支持杭10は、一方の支持杭10に発生する応力が過大にならないように設定されるのが望ましい。
なお、図32においては、道路構造100が延伸するy方向に並んだ複数の支持杭10が示されているが、実際にはx方向(図32において紙面垂直方向)にも支持杭10が並列されており、隣り合って配置される2つの支持杭10は、y方向だけでなくx方向に並列された2つ支持杭10を含むものである。
道路構造100は支持杭10が第1桁部材41及び第2桁部材40により接続された構造であり、支持杭10は、地盤90の表面94と交差する部分である支点98、上端格点部50a及び中間格点部50b、150bを固定端とする両端固定梁としてモデル化することが可能である。以下において、道路構造100を構成する各支持杭10に発生する水平方向変位δ及び応力σについて説明する。
図33は、図32のK部の拡大図である。K部は、2つの支持杭10が上端で第1桁部材41により接続されている。そのため、地震動により道路床版99が水平方向にδだけ変位したときに、一方の支持杭10の上端における変位δ1と他方の支持杭10の上端における変位δ2とは同じになる(δ1=δ2)。なお、図33中に示す破線は、地盤90からの各高さにおける支持杭10の水平方向変位δを示している。
図33において、短い方の支持杭10を結節点間部材10Aと呼び、長い方の支持杭10を結節点間部材10Bと呼ぶ。一方の結節点間部材10Aの地盤90からの突出長さをh1とし、他方の結節点間部材10Bの地盤90からの突出長さをh2としたときに、h1<h2となっている。道路床版99が所定の水平方向変位δを受けたときに、支持杭10に発生する応力σは、固定端となる上端格点部50a及び支点98において最大値となる。ここで、軸が鉛直方向に延びる両端固定梁に発生する曲げモーメント、水平方向変位及び発生応力の各計算式は、下記のように表される。
M=P・h/2 ・・・(1)
δ=P・h3/(12E・I) ・・・(2)
σ=M/Z ・・・(3)
ここで、M:曲げモーメント、P:水平方向荷重、h:結節点間部材長さ、δ:水平方向変位、E:ヤング率、I:断面二次モーメント、σ:結節点間部材に発生する最大応力、Z:断面係数、である。
上記の式(1)~(3)を基に、水平方向変位δは以下の式で表される。
δ=2M/h×h3/(12E・I)=σZh2/(6E・I)
・・・(4)
また、図33の結節点間部材10Aに発生する応力σ1(以下、最大応力を単に応力称する場合がある)と結節点間部材10Bに発生する応力σ2との関係は、上記式(4)より次式(5)で表される。ただし、結節点間部材10A及び10Bは、材質及び断面形状が同じであり、ヤング率E、断面二次モーメントI、断面係数Z、降伏応力σyが同じである。また、図33に示すようにh2≧h1とし、結節点間部材10A及び10Bのそれぞれの水平方向変位δは等しく、δ=δ1=δ2で表され、これと上記式(4)とから、以下の式(5)が導かれる。
σ2/σ1=(h1/h2)2 ・・・(5)
つまり、図33の構造においては、突出長さが短い結節点間部材10Aは、長い方の結節点間部材10Bよりも発生する応力の最大値が大きくなる。
図34は、図32のうち中間格点部50b又は150bを備える支持杭10aの拡大図である。図34を用いて、支持杭10に中間格点部50b又は150bを設けた場合(2層の場合)の結節点間部材10C及び10Dのそれぞれに発生するσ3及びσ4の関係について説明する。支持杭10aは、支点98、中間格点部50b及び上端格点部50aが固定端としてモデル化できる。支点98から中間格点部50bまでを結節点間部材10Cとし、中間格点部50bから上端格点部50aまでを結節点間部材10Dとし、結節点間部材10Cの長さをh3とし、結節点間部材10Dの長さをh4とし、h3<h4となっている。なお、中間格点部50bが支持杭10の上端又は下端にある場合は、図33の支持杭10と同様に中間格点部50bが無い支持杭10と同じになる。
道路床版99が所定の水平方向変位δを受けたときに、支持杭10の結節点間部材10C及び10Dに発生する応力σは、固定端となる上端格点部50a、中間格点部50b及び支点98において最大値となる。また、道路床版99の水平方向変位がδであったとすると、結節点間部材10Cの水平方向変位δ3と結節点間部材10Dの水平方向変位δ4との関係は、δ=δ3+δ4で表される。
上記の式(4)を基に、図34に示された支持杭10aの結節点間部材10Cに発生する応力σ3及び結節点間部材10Dに発生する応力σ4との関係は、次式で表される。
σ4/σ3=h4/h3 ・・・(6)
つまり、図34の構造においては、長さの短い結節点間部材10Cのほうが長い方の結節点間部材10Dよりも発生する応力の最大値が小さい。
また、図34において中間格点部50bが支持杭10aの中央にある場合、つまりh3=h4=h/2である場合を考える。このとき、結節点間部材10C及び10Dのそれぞれの水平方向変位は、δ3=δ4=δ/2であり、結節点間部材10C及び10Dのそれぞれに発生する応力σ3及びσ4は、σ3=σ4である。従って、上記式(4)より、
δ=2σ3・Z×(h/2)2/(6E・I) ・・・(7)
と表される。
一方、図34において支持杭10aの中間格点部50bが無い場合(1層の場合)を想定する。このとき、支持杭10aの水平方向変位δは、次のように表される。
δ=σ・Z×h2/(6E・I) ・・・(8)
支持杭10aが1層の場合及び2層の場合であっても、上記式(7)及び式(8)の水平方向変位δは等しいから、上記式(7)及び式(8)から、σ3=2・σとなる。つまり、支持杭10aの中央に中間格点部50bを設けた場合(2層の場合)、結節点間部材10C及び10Dに生ずる応力σ3及びσ4は、中間格点部50bが設けられていない場合(1層の場合)の2倍になることを意味する。このことは図33において、結節点間部材10Aが塑性域にあり(降伏している)、結節点間部材10Bが降伏しない場合であっても、結節点間部材10Bに中間格点部50bを配置し2つの結節点間部材10C及び10Dを形成することにより、結節点間部材10C又は10Dに発生する応力を増加させて降伏させることが可能であることを意味している。この原理を利用して、支持杭10の突出量hが極めて大きくなった場合において、中間格点部50b又は150bを設置し2層構造とすることによって、基準となる1層の支持杭10と2層の支持杭10との両方が塑性域にあるように構成して、隣り合う2本の支持杭10の双方の塑性エネルギー吸収能を発揮させ、耐震性を向上させることが可能である。
図34に示されているように中間格点部50bを備える支持杭10の場合においても、結節点間部材10Cの長さh3及び結節点間部材10Dの長さh4が同じように設定されれば、結節点間部材10Cと結節点間部材10Dとが同時に塑性変形領域にあるため、より高いエネルギー吸収能力を発揮できる。
道路構造100は、地震動を受けた際に一部の結節点間部材10A~10Dに応力が集中しないようにするのが望ましく、より多くの結節点間部材10A~10Dがエネルギー吸収能を発揮することにより、優れた耐震性能を発揮する。
図35は、図32のL部の拡大図である。道路構造100は、設置される環境と道路床版99の高さによって、支持杭10の地盤90の表面94からの突出長さが決まるものであり、例えば図33に示す2つの結節点間部材10A及び10Bの長さh1、h2の差が大きくなってしまう場合が考えられる。しかし、このような場合であっても、図33に示す長い方の支持杭10に中間格点部50bを設置し、図34に示す支持杭10aと同じ構造にすることにより、図35に示されている短い方の支持杭10(結節点間部材10A)に生じる応力σ1と長い方の支持杭10aの結節点間部材10C及び10Dに生じる応力σ3及びσ4とを近い値に調節できる。
図36は、図32のM部の拡大図である。道路構造100の2つの支持杭10に着目したときに、2つの支持杭10の地盤90からの突出量が大きい場合には、2つの支持杭10の両方に中間格点部50bを設置し、互いに中間格点部50b同士を接続しても良い。この場合、各支持杭10における中間格点部50bの位置を調整することにより、各支持杭10が備える結節点間部材10Ca、10Da、10Cb及び10Dbに発生する応力σ3a、σ4a、σ3b及びσ4bの値を近い値に調整できる。
図37は、図33、図34、図35及び図36の各結節点間部材10A、10B、10C、10D、10Ca、10Da、10Cb及び10Dbの水平方向変位δ及び応力σの関係を模式的に表したものである。図37(a)は、例えば図33の結節点間部材10Aの長さh1と結節点間部材10Bの長さh2との差が比較的大きい場合の図であり、図37(b)は、図33の結節点間部材10Aの長さh1と結節点間部材10Bの長さh2との差が比較的小さい場合の図である。なお、図37において、水平方向変位δと応力σとの関係は比例するように表示されているが、これは説明のために簡略化したものである。図37の水平方向変位δと応力σとの関係は、図34、35及び図36に示されている2本の支持杭10が有する複数の結節点間部材10A、10B、10C、10D、10Ca、10Da、10Cb及び10Dbに当てはまるものである。実施の形態2に係る道路構造100は、隣り合う2本の支持杭10が有する結節点間部材10A、10B、10C、10D、10Ca、10Da、10Cb及び10Dbを図37(b)に示される関係になるように設定するものである。
図33に示されている2本の支持杭10を一例として、図37の水平方向変位δと応力σとの関係について説明する。図37(a)において、σ1で示されている線は、結節点間部材10Aの水平方向変位δに対する発生する応力σ1の最大値の変化を示しており、σ2で示されている線は、結節点間部材10Bの水平方向変位δに対する発生する応力σ2の最大値の変化を示している。また、図37(a)は、結節点間部材10Aと結節点間部材10Bとの長さの差が比較的大きい場合を示している。結節点間部材10A及び結節点間部材10Bは、0から降伏応力σyまでは弾性変形し、降伏応力σyから極限応力σuまでは塑性変形する。図33に示されている構造は、道路床版99が地震動によって水平荷重PHを受けて、水平方向にδだけ変位したとき、結節点間部材10Aの応力σ1は結節点間部材10Bの応力σ2より大きくなる。水平方向変位δが増加すると、結節点間部材10Aは降伏応力σyを超えて塑性化し、極限応力σuに達すると耐力の限界となる。
このとき、結節点間部材10Bはまだ降伏応力σyに達していない。このような場合、塑性変形によるエネルギー吸収は結節点間部材10Aに限定され、道路構造100の水平方向変位δを抑制する効果が少ない。すなわち、結節点間部材10Aに応力が集中して、この結節点間部材10Aの局所的な耐力限界により、道路構造100の耐震性が低く抑制される。つまり、結節点間部材10Aは、結節点間部材10Bよりも小さい水平方向変位δで降伏及び破断し、結節点間部材10Bがエネルギー吸収をする前に道路構造100が破損に至る。
図37(b)は、結節点間部材10Aと結節点間部材10Bとの長さの差が比較的小さい場合を示している。図33に示されている構造は、道路床版99が地震動によって水平荷重PHを受けて、水平方向にδだけ変位したとき、結節点間部材10Aの応力σ1は結節点間部材10Bの応力σ2より大きくなる。しかし、結節点間部材10Aの長さh1と結節点間部材10Bの長さh2との差が小さい場合は、地震動による水平方向変位δの増加によって、結節点間部材10Aの応力σ1及び結節点間部材10Bの応力σ2は同じように増加する。
結節点間部材10Aが降伏後も変位が増加し、結節点間部材10Aは限界耐力に達する。結節点間部材10Bは、結節点間部材10Aにやや遅れて降伏し、塑性化する。図37(b)に示すように、結節点間部材10A及び結節点間部材10Bは、塑性変形領域が重なり合っており、範囲Wにおいてともに降伏点を超えて塑性化しエネルギー吸収効果を発揮する。これにより、図37(a)に示すように結節点間部材10Aと結節点間部材10Bとの長さの差が大きい場合においては、短い結節点間部材10Aに応力が集中していたのが、図37(b)に示すように結節点間部材10Aと結節点間部材10Bとの長さの差が小さい場合においては、短い結節点間部材10Aへの応力集中は緩和され、2つの結節点間部材10A及び10Bの両方が塑性変形によるエネルギー吸収能を発揮する。したがって、図33に示す構造は、塑性変形が進んだ後も結節点間部材10Aの限界耐力に到達せず、高い耐震性能を発揮する。
<図32の道路構造100のK部における支持杭10の長さ設定について>
例えば、図33に示される2本の支持杭10からなる構造の場合、短い方の支持杭10(結節点間部材10A)が降伏応力σyに達したときの水平方向変位(降伏変位)δ1yとする。このとき長い方の支持杭10(結節点間部材10B)の応力は、上記式(5)より、次のように表される。
σ2=σy(h1/h2)2 ・・・(9)
このとき、結節点間部材10Bの水平方向変位は、結節点間部材10Aと同じくδ1yである。よって、結節点間部材10Bが降伏応力σyに達したときの結節点間部材10Bの水平方向変位である降伏変位δ2yは、上記式(5)及び式(9)並びに図37に示されているσ2の弾性領域での比例関係より、次のように表される。
δ2y=δ1y×σy/σ2=δ1y×(h2/h1)2
・・・(10)
図33に示される2本の支持杭10からなる構造において、長い方の支持杭10(結節点間部材10B)の降伏変位δ2yが、短い方の支持杭10(結節点間部材10A)の降伏変位δ1y以上で、短い方の支持杭10の限界水平方向変位(限界耐力における水平方向変位)以下であれば、少なくとも2本の支持杭10は塑性変形領域が重なる(図37(b)に示されている範囲Wが確保できる)。言い換えると、長い方の支持杭10(結節点間部材10B)の降伏変位δ2yは、次の範囲にある場合に2本の支持杭10の塑性変形領域が重なる。
δ1y≦δ2y≦5・δ1y ・・・(11)
この式(11)と上記式(5)より、2本の支持杭10の突出量h1及びh2の関係は、1≦(h2/h1)2≦5となり、1≦h2/h1≦2.23と表される。つまり、図33に示されている2本の支持杭10のそれぞれの突出量h1及びh2を上記の範囲に設定することにより、少なくとも2本の支持杭10は塑性変形領域が重なる。
なお、限界耐力は、降伏後にさらに結節点間部材を塑性変形させたときに、結節点間部材の応力が低下する限界の応力をいう。例えば、結節点間部材は、地震等の振動により繰り返し荷重を受けたときに、降伏点を超えて塑性変形を繰り返すと変位の増加とともに応力が上昇するが、所定の変位を超えると応力が低下する。このような点を限界耐力とする。限界耐力は、例えば材質の引張応力であるが、これに限定されるものではない。ここで、上記式(11)の最大値である5・δ1yは、結節点間部材が地震時の繰り返し荷重を受けたときの限界水平方向変位として設定されたものである。例えば、上記においては、図16に示されている実験結果を基に、降伏変位δ1yの5倍を限界耐力における水平方向変位として設定している。ただし、限界水平方向変位は、結節点間部材の材質、断面形状及び長さによって異なる場合がある。
また、長い方の支持杭10(結節点間部材10B)の降伏変位δ2yは、次の範囲にある場合に2本の支持杭10の塑性変形領域が重なる範囲Wを2・δ1y以上の幅で確保できるため、十分な耐震性能を発揮できる。
δ1y≦δ2y≦3・δ1y ・・・(12)
この式(12)と上記式(5)より、2本の支持杭10の突出量h1及びh2の関係は、1≦(h2/h1)2≦3となり、つまり、1≦h2/h1≦1.73と表される。
<図32の道路構造100のL部における支持杭10aの中間格点部50bの位置について>
次に、図35に示されるように、2本の支持杭10のうち長い方の支持杭10aのみに中間格点部50bが設けられている構造について、長い方の支持杭10の突出量hの条件を求める。図33のように1層の支持杭10を連結した構造が前述の1≦h2/h1≦2.23又は1≦h2/h1≦1.73の条件に入らない場合などには、長い方の支持杭10に中間格点部50bが設けられる。中間格点部50bは、隣接する支持杭10と連結されており、桁部材40の軸直角方向の回転が拘束されている。そのため、中間格点部50bの上下の結節点間部材10C及び10Dは、両端固定梁としてモデル化できる。図35に示される支持杭10aは、突出量h=h3+h4、h3≧h4とする。h3は、地盤側の結節点間部材10Cの長さであり、h4は、上端側の結節点間部材10Dの長さである。
結節点間部材10Cの水平方向変位δ3及び結節点間部材10Dの水平方向変位δ4は、上記式(4)から、それぞれ次のように表される。
δ3=σ3・Z・h32/(6E・I) ・・・(13a)
δ4=σ4・Z・h42/(6E・I) ・・・(13b)
また、上記式(6)より、結節点間部材10Dの応力σ4は、結節点間部材10Cの応力σ3、結節点間部材10C及び10Dの長さh3及びh4を用いて次のように表される。
σ4=σ3・(h4/h3) ・・・(14)
よって、支持杭10aの水平方向変位δは、上記の式(13a)~(14)より、
δ=δ3+δ4=Z/(6E・I)×{σ3・h32+σ3(h4/h3)・h42}
=σ3・Z/(6E・I)×(h32+h43/h3) ・・・(15)
ここでh4=h-h3であるから、
δ=σ3・Z/(6E・I)×h2{h/h3-3+3(h3/h)}
=σ3・Z/(6E・I)×h2×G ・・・(16)
と表される。ここで、
G=h/h3-3+3(h3/h) ・・・(16a)
である。
一方、2本の支持杭10のうち短い方の支持杭10(結節点間部材10A)の水平方向変位は、式(4)から、δ=σ1・Z・h12/(6E・I)と表されるから、これと式(16)より、
σ3・Z/(6E・I)×h2×G =σ1・Z・h12/(6E・I)
・・・(16b)
であり、支持杭10aの応力の高い方の結節点間部材10Cの応力σ3と短い支持杭10の応力σ1との関係は次のように表される。
σ3/σ1=h12/(G・h2) ・・・(17)
上記式(17)によれば、図35に示されている短い方の支持杭10(結節点間部材10A)が、降伏応力σyに達したときに(σ1=σy)、Gが小さいほど、長い支持杭10の結節点間部材10Cの応力σ3が大きくなり、長い支持杭10は降伏しやすくなる。逆に、Gが大きくなるほど長い支持杭10は降伏しにくい。
図38は、図35に示される2本の支持杭10において、長い方の支持杭10aの突出量hに対する地盤側の結節点間部材10Cの長さh3の比と式(16)及び式(17)のGの値との関係を示すグラフである。上述したように、Gの値は小さいほど結節点間部材10Cは塑性変形しやすく、Gの値が最小値周辺となるように、結節点間部材10Cの長さを設定すれば、2つの支持杭10の両方が塑性変形によるエネルギー吸収能を発揮しやすくなる。図38によれば、0.5≦h3/h≦0.75の範囲において、0.464≦G≦0.583となっている。
上記の支持杭10aの下端側の結節点間部材10Cの長さh3とGとの関係は、上端側の結節点間部材10Dにおいても同様に成立する。つまり、0.5≦h4/h≦0.75(このとき、0.25≦h3/h≦0.5となる)において、G=h/h4-3+3(h4/h)で表され、Gの取る値の範囲は、0.464≦G≦0.583となる。この場合は、結節点間部材10Dのほうが結節点間部材10Cよりも塑性変形しやすくなる。
以上より、図35において、長い方の支持杭10aの結節点間部材10Cの長さh3は、0.25≦h3/h≦0.75に設定できる。支持杭10aの突出量hが大きく、もう一方の短い支持杭10(結節点間部材10A)よりも後に長い支持杭10aが降伏するとした場合、上記の条件の基で、結節点間部材10Cは、最も降伏しにくい条件であるG=0.583で降伏するように、2本の支持杭10の材質及び断面形状を設定しておけば、中間格点部50bの位置が仮に0.25≦h3/h≦0.75の範囲内で変動しても、2本の支持杭10は、少なくとも結節点間部材10A及び結節点間部材10Cの塑性変形領域が重なり、図37(b)に示す範囲Wにおいてエネルギー吸収性能を発揮できる。
上記の場合とは逆に、長い方の支持杭10aが先に降伏して、後から短い支持杭10が降伏する場合がある。この場合は、長い方の支持杭10aが最も降伏し易い条件であるG=0.464の条件において、短い方の支持杭10(結節点間部材10A)が降伏する条件を設計すればよい。すると、長い方の支持杭10aの中間格点部50bの位置が0.25≦h3/h≦0.75の範囲内で変動しても、短い支持杭10の降伏条件は、安全側に設定できる。つまり、2本の支持杭10は、0.25≦h3/h≦0.75の条件のもとでG=0.464として検討し、塑性変形領域が重なるように設計されると良い。
<図32の道路構造100のL部における支持杭10の長さh1について>
次に、図35に示されるように、2本の支持杭10のうち長い方の支持杭10aのみに中間格点部50bが設けられている構造について、短い方の支持杭10(結節点間部材10A)の突出量h1の条件を求める。図35示される支持杭10aは、突出量h=h3+h4、h3≧h4とする。h3は、地盤側の結節点間部材10Cの長さであり、h4は、上端側の結節点間部材10Dの長さである。
短い方の支持杭10(結節点間部材10A)が降伏応力σyに達したときの降伏変位をδ1yとすると、長い方の支持杭10aの結節点間部材10Cの応力は、上記式(17)から次のように表される。
σ3=σy{h12/(G・h2)}=σy(h1/h)2/G
・・・(18)
これより、結節点間部材10Cが降伏したときの支持杭10aの変位δ3yは、比例関係より、次のように表される。
δ3y=δ1y×σy/σ3=δ1y×σy/{σy(h1/h)2/G}
=δy1×(h/h1)2×G ・・・(19)
図35に示される2本の支持杭10からなる構造において、長い方の支持杭10a(結節点間部材10C)の降伏変位δ3yが、短い方の支持杭10(結節点間部材10A)の降伏変位δ1y以上で、短い方の支持杭10の限界水平方向変位(限界耐力における水平方向変位)以下であれば、少なくとも2本の支持杭10は塑性領域が重なる(図37(b)に示されている範囲Wが確保できる)。言い換えると、長い方の支持杭10a(結節点間部材10C)の降伏変位δ3yは、次の範囲にある場合に2本の支持杭10の塑性領域が重なる。
δ1y≦δ3y≦5・δ1y ・・・(20)
この式(20)と上記式(19)より、2本の支持杭10の突出量h1及びhの関係は、1≦(h/h1)2×G≦5、すなわち、
1/G≦(h/h1)2≦5/G ・・・(21)
となる。ここで、図38より求められた、望ましい結節点間部材10Cの長さh3の範囲である、0.25≦h3/h≦0.75において、結節点間部材10Cが最も塑性変形しにくいGの値である、G=0.583を上記式(21)に代入すると、
1.31≦h/h1≦2.92 ・・・(22)
と表される。
また、長い方の支持杭10aの結節点間部材10Cの降伏変位δ3yは、次の範囲にある場合に2本の支持杭10の塑性領域が重なる範囲Wが2・δ1y以上になり、十分な耐震性能を発揮できる。
δ1y≦δ3y≦3・δ1y ・・・(23)
この式(23)と上記式(19)より、
1/G≦(h/h1)2≦3/G ・・・(24)
であり、ここから2本の支持杭10のうち短い方の支持杭10の突出量h1と長い方の支持杭10aの突出量hとの関係は、
1.31≦h/h1≦2.26 ・・・(24a)
となる。
図39は、2本の支持杭10の結節点間部材10A及び結節点間部材10Cの水平方向変位δと応力σとの関係を示す図である。図39の線Aは、短い方の支持杭10(結節点間部材10A)の水平方向変位δと応力σとの関係を示しており、線Bは長い方の支持杭10aの結節点間部材10Cの水平方向変位δと応力σとの関係を示している。線Bに示されているように、降伏変位をδ3y≦3・δ1yに設定する、すなわち長さh及びh1の関係を1.31≦h/h1≦2.26に設定することにより、結節点間部材10A及び10Cの両方が塑性変形する範囲Wが2・δ1yの範囲で確保できる。
図33の構造において、例えばレベル2地震動などの所定の入力があった場合、2つの結節点間部材10A及び10Bは両者とも塑性変形するように設定されると良い。例えば図35の構造において、レベル2地震動などの所定の入力があった場合、2つの支持杭10が備える複数の結節点間部材10A、10C及び10Dのうち、少なくとも2つの結節点間部材が塑性変形するように設定されると良い。また、図36に構造においても支持杭10が備える複数の結節点間部材10Ca、10Da、10Cb及び10Dbのうち、少なくとも2つの結節点間部材が塑性変形するように設定されると良い。
また、図33、図34、図35及び図36に示す構造において、1つの結節点間部材が塑性変形するように設定された場合であっても、その他の降伏していない結節点間部材は、既に塑性変形領域にある1つの結節点間部材が限界耐力に達する前に降伏するように設定されると良い。
なお、隣り合う2つの支持杭10の複数の結節点間部材10A、10B、10C、10D、10Ca、10Da、10Cb及び10Dbのうち、所定の水平方向入力があった場合において塑性変形している結節点間部材を第1結節点間部材と呼び、第1結節点間部材が塑性変形しているときに未だ降伏していない結節点間部材を第2結節点間部材と呼ぶ場合がある。
道路構造100は、複数の支持杭10を備えており、複数の支持杭10から2つの隣り合う支持杭10を取り出すと、図32のK部、L部、M部の何れかの構造になっている。支持杭10の支点98、中間格点部50b、上端格点部50aのうち隣り合う何れか2つの間の部分を結節点間部材と定義したときに、2つの支持杭10は、少なくとも2つの結節点間部材10A、10B、10C、10D、10Ca、10Da、10Cb及び10Dbから構成されている。これらの複数の結節点間部材10A、10B、10C、10D、10Ca、10Da、10Cb及び10Dbは、例えばレベル2地震動が加わったときに少なくとも2つが塑性変形領域にあるように設定されると良い。さらには、塑性変形領域にある2つの結節点間部材以外の結節点間部材(降伏していない結節点間部材)は、すでに塑性変形領域にある2つの結節点間部材が限界耐力に達する前に降伏するように設定されると良い。
さらに望ましくは、3つ以上の複数の結節点間部材10A、10B、10C、10D、10Ca、10Da、10Cb及び10Dbが塑性変形領域にあるように設定されると良い。さらには、同時に塑性変形領域にある複数の結節点間部材以外の結節点間部材(降伏していない結節点間部材)は、すでに塑性変形領域にある複数の結節点間部材が限界耐力に達する前に降伏するように設定されると良い。
<道路構造100全体の基準となる支持杭10の設定について>
上記の説明において、図35に示す2本の支持杭10のうち、長い方の支持杭10aの中間格点部50bの位置を0.25≦h3/h≦0.75の範囲に設定することが望ましいとしたが、支持杭10aのうち下方の結節点間部材10Cは、上方の結節点間部材10Dよりも長くすると、さらに望ましい。道路構造100の場合、地震などによる損傷が道路床版99を支える上部の桁部材41付近で発生しない方が良い。これは、損傷や変形が道路構造100の下部で発生しても、上部の道路床版99や桁部材41が健全であれば、緊急時の車両等を通行させることが可能であるからである。このことを考慮すると、図35に示す支持杭10aのように2層構造の支持杭10では、塑性化する結節点間部材は下方の結節点間部材10Cに限定しておいて、上方の結節点間部材10Dにおいて損傷及び変形が生じないようにすることが望ましい。つまり、図35に示す構造において、支持杭10aの長さhに対する結節点間部材10Cの長さh3は、0.5≦h3/h≦0.75とするのがより望ましい。言い換えると、支持杭10aの長さをhとしたときに、支点98から中間格点部50bまでの長さは、0.5h以上0.75h以下とするのがより望ましい。
さらに、0.5<h3/h≦0.667に設定することにより、図38のグラフにおいて、Gの取る値の範囲は、0.464≦G≦0.5となる。よって、支持杭10aにおける中間格点部50bによる応力低減効果が向上し、長い方の支持杭10aが短い方の支持杭10に対して遅れて降伏する場合において、支持杭10aの突出量hの範囲をより広く取ることができる。つまり、上記式(23)において、G=0.5を代入すると、1.31≦h/h1≦2.45となり、支持杭10aの長さhの取れる範囲が広がる。
上記の説明においては、2本の支持杭10がともに1層である場合(図33を参照)は、突出長が長い方の支持杭10が短い方の支持杭10の長さの1.73倍を超えると、短い方の支持杭10が降伏した後、限界変位に達するまでに、長い方の支持杭10が降伏してともに塑性エネルギー吸収性能を発揮できる範囲Wが2δ1yよりも小さくなり、十分な塑性エネルギー吸収性能を発揮できない。また、突出長が長い方の支持杭10が短い方の支持杭10の長さの2.23倍を超えると、短い方の支持杭10が降伏した後、限界変位に達するまでに、長い方の支持杭10が降伏せず塑性エネルギー吸収性能が発揮できない。さらに、支持杭10の突出量が7mより低い場合は、たわみ性が極度に小さくなり、特別に降伏点が高い材質を用いるか、又は板厚を厚くするなどの対応が必要になり、支持杭10の塑性エネルギー吸収性能を期待することが困難である。よって、道路構造100の全体の耐震性を検討する場合に、基準とする支持杭10の突出量h0を、次のように設定する。なお、基準とする支持杭10を基準杭と称する場合がある。
(条件1)突出量h0は、7m以上である1層の支持杭10のうち最も突出量が小さいものの突出量とする。
上記(条件1)より、基準となる支持杭10を設定し、これと比較する支持杭10の突出量をhとすると、比較する支持杭10のhと基準となる支持杭10の突出量h0の関係は、上記式(11)から、下記式(25)のように設定すると良い。なお、比較する支持杭10を比較杭と称する場合がある。
1≦h/h0≦1.73 ・・・(25)
また、比較する支持杭10が2層の場合には、比較する支持杭10の突出量をhとし、中間格点部50bの地盤90からの高さをhtとすると、比較する支持杭10の突出量hと基準となる支持杭10の突出量h0の関係は、式(24)より、下記のように設定すると良い。ただし、比較する支持杭10の中間格点部50bの位置であるhtの範囲は、0.25h≦ht≦0.75hであることを前提とする。
1.31≦h/h0≦2.26 ・・・(26)
基準となる支持杭10(基準杭)に対し、上記の式(25)及び式(26)の範囲となるように比較する支持杭10(比較杭)を設定することにより、基準杭と上記式(25)又は式(26)の範囲に設定された比較杭は、塑性変形領域が重なる。
上記の条件は、基準となる支持杭10の突出量h0が、比較する支持杭10の突出量hよりも短い場合を前提としているが、次に基準となる支持杭10のほうが比較する支持杭10よりも短い場合について説明する。
比較する支持杭10が1層の場合であって、比較する支持杭10が基準となる支持杭10よりも長い場合は、比較する支持杭10のhと基準となる支持杭10の突出量h0の関係は、上記式(25)のhとh0とを入れ替え、1≦h0/h≦1.73より、以下のように設定すると良い。
0.58≦h/h0≦1 ・・・(27)
そして、上記式(25)及び式(27)の2つの条件を組み合わせて、比較する支持杭10のhと基準となる支持杭10の突出量h0の関係は、次のように表される。
0.58≦h/h0≦1.73 ・・・(28)
比較する支持杭10が2層の場合であって、比較する支持杭10が基準となる支持杭10よりも長い場合は、比較する支持杭10のhと基準となる支持杭10の突出量h0の関係は、次のように表される。
0.86≦h/h0≦2.26 ・・・(29)
なお、上記の式(29)は、以下のように求められる。
図40は、図32のL部の拡大図であり、図35に対し支持杭10aを短く変更した場合の図である。図41は、図40の長い方の支持杭10と短い方の支持杭10aの水平方向変位δ及び応力σの関係を模式的に表したものである。図40及び図41を用いて、上記の式(29)の導出について説明する。図40のように2層の支持杭10aの突出量hが1層の支持杭10の突出量h1よりも短い場合、1層の支持杭10の応力σ1は、上記式(17)より次のように表される。
σ1=σy・(G・h2/h12)
=σy・(h/h1)2・G ・・・(30)
よって、長い方の1層の支持杭10が降伏応力σyに達したときの水平方向変位である降伏変位δ1yは、比例関係より、次のように求められる。
δ1y=δ3y・σy/σ1
=δ3y・σy/(σy・(h/h1)2・G)
=δ3y・(h1/h)2/G ・・・(31)
図40に示される2本の支持杭10及び10aにおいて、長い方の1層の支持杭10の降伏変位δ1yが次の範囲であれば、支持杭10及び10aは、両方とも塑性変形しており、エネルギー吸収性能を発揮している。
δ3y≦δ1y≦5・δ3y ・・・(32)
これに式(31)を代入すると、
G≦(h1/h)2≦5G ・・・(33)
となる。
ここで、図38より求められた、望ましい結節点間部材10Cの長さh3の範囲である0.25≦h3/h≦0.75において、Gが小さいほど上記式(30)のσ1が小さくなる。ここで、図40の長い方の1層の支持杭10が降伏しにくい条件とするため、G=0.464を選択し、上記式(33)に代入すると、長い方の1層の支持杭10(結節点間部材10A)の長さh1と2層の支持杭10aの突出量hとの関係は、0.681≦h1/h≦1.523より、
0.66≦h/h1≦1.46 ・・・ (34)
となる。
また、長い方の1層の支持杭10の結節点間部材10Aの降伏変位δ1yは、次の範囲にある場合に2本の支持杭10、10aの塑性領域が重なる範囲Wが2・δ3y以上になり、十分な耐震性能を発揮できる。
δ3y≦δ1y≦3・δ3y ・・・ (35)
この式(35)と上記式(31)より、
G≦(h1/h)2≦3G ・・・ (36)
であり、図40の長い方の1層の支持杭10が降伏しにくい条件とするため、G=0.464を式(36)に代入し、長い方の1層の支持杭10(結節点間部材10A)の長さh1と2層の支持杭10aの突出量hとの関係は、0.681≦h1/h≦1.17より、
0.86≦h/h1≦1.46 ・・・ (37)
となる。
一方、図35のように支持杭10aの方が長い場合は、2本の支持杭10のうち短い方の支持杭10の突出量h1と長い方の支持杭10aの突出量hとの関係は、上記式(24a)と同様に、
1.31≦h/h1≦2.26 ・・・ (38)
となる。よって、比較する支持杭10が2層の場合において、比較する支持杭10のhと基準となる支持杭10の突出量h0の関係は、式(37)及び式(38)の条件を併せて、上記式(29)に示したように0.86≦h/h0≦2.26となる。
上記の式(28)及び式(29)の条件は、道路構造100の基準となる支持杭10(基準杭と呼ぶ)及び比較する支持杭10(比較杭)が両方とも塑性変形領域が重なるようになるための条件であるが、必ずしも基準杭よりも長い比較杭と基準杭よりも短い比較杭との塑性変形領域が重なるわけではない。つまり、比較杭同士の間で、図41において示されている範囲w1が必ずしも存在する訳ではない。しかし、複数の支持杭10の塑性変形領域の差を少なくし、複数の支持杭10の塑性化の性状を近いものにし、結節点間部材の長さも考慮して限界変位の設定を適切に設定することによって、基準杭よりも長い比較杭及び基準杭よりも短い比較杭の塑性エネルギー吸収性能を発揮する範囲が重なるように設定することも可能である。したがって、比較杭が上記の式(28)及び式(29)の条件に適合しているかを評価することは、道路構造100の全体的な耐震性を評価する指標として利用できる。
<支持杭10の材質及び断面係数Zの設定>
道路構造100の支持杭10は、材質及び断面係数によって強度にばらつきがでる。例えば、支持杭10の材質がSKK400の場合、降伏応力は235N/mm2であるが、SKK490の場合、降伏応力は325N/mm2である。つまり、支持杭10の材質がSKK490の場合は、SKK400の場合に対し降伏応力が1.38倍大きくなる。
また、支持杭10の外径が500mmの場合、板厚が9mm、12mm、14mmになると、それぞれ断面係数が167×10-5m3、219×10-5m3、253×10-5m3となる。なお、支持杭10の外径は、400mm~600mmの範囲に設定することができる。
図42は、基準杭及び比較杭の材質の降伏応力が同じ場合と異なる場合の水平方向変位δ及び応力σの関係を模式的に表したものである。図42において実線は、基準杭の水平方向変位δ及び応力σの関係を示している。一点鎖線及び破線は、比較杭の水平方向変位δ及び応力σの関係を示している。破線は、比較杭の降伏応力が基準杭の降伏応力と同じσyの場合であり、このとき降伏変位は基準杭の降伏変位δ0の3倍である。このとき基準杭は、限界変位5・δ0に対し余裕を持った状態であり、基準杭と比較杭とは2・δ0の幅で塑性変形領域が重なっており、ともに塑性エネルギー吸収性能を発揮できる状態になっている。
これに対して、図42において一点鎖線で示されるように、比較杭の降伏応力が大きく、σcである場合を考える。このとき、比較杭は降伏しにくくなる。基準杭が限界変位5・δに達する前に降伏して、ともに塑性変形領域が重なるようになる条件は、基準杭の降伏応力をσ0yとしたときに、比較杭の弾性域の比例関係より、σ0y≦σc<5/3・σ0y、すなわち
σ0y≦σc<1.66・σ0y ・・・ (39)
である。
よって、比較杭の降伏応力が基準杭の降伏応力の1.66倍未満であれば、基準杭と比較杭は塑性変形領域が重なり、ともに塑性エネルギー吸収性能を発揮する。例えば、一般に使用される杭の材質は、SKK400(σy=235N/mm2)及びSKK490(σy=325N/mm2)等である。SKK490の降伏応力は、SKK400の1.38倍であるため、比較杭の材質がSKK490で基準杭の材質がSKK400であっても、比較杭の降伏応力σyは、上記式(39)の条件の範囲に十分入っているので、両材質とも支持杭10として適用可能である。
図43は、基準杭及び比較杭の外径が異なる場合の水平方向変位δ及び応力σの関係を模式的に表したものである。図43において実線は、基準杭の水平方向変位δ及び応力σの関係を示している。一点鎖線及び破線は、比較杭の水平方向変位δ及び応力σの関係を示している。破線で示されている比較杭の降伏変位は基準杭の降伏変位δ0yの3倍である。このとき基準杭は、限界変位5・δ0に対し余裕を持った状態であり、基準杭と比較杭とは2・δ0の幅で塑性変形領域が重なっており、ともに塑性エネルギー吸収性能を発揮できる状態になっている。
破線で示されている比較杭に対し、外径又は杭を構成する板厚が異なる場合を検討する。外径がdであり、内径がd1の円筒形の鋼管杭である場合、
水平方向変位:上記式(8)よりδ=σ・Z×h2/(6E・I)
断面係数:
Z=0.0982×(d4-d14 )/d ・・・(40)
断面2次モーメント:
I=0.0491×(d4-d14 ) ・・・(41)
であるから、
δ=σ・h2/(6E・d)×2 ・・・(42)
と表される。つまり、比較杭は、外径dと応力σが比例し、外径dが小さくなると応力σも小さくなる。比較杭の外径が小さくなった場合は、比較杭が降伏しにくくなるが、比較杭の外径と基準杭の外径との比の逆数が1.66倍以下であれば、比較杭の降伏変位δcは、基準杭の降伏変位δ0の3倍~5倍の範囲内にある。例えば、基準杭の外径D0が600mmであり、比較杭の外径Dが400mmの場合は、D0/D=600/400=1.5≦1.66となり、基準杭と比較杭とは2・δ0の幅で塑性変形領域が重なっており、ともに塑性エネルギー吸収性能を発揮できる状態になっている。
<道路構造100の支持杭10の条件のまとめ>
(1)道路構造100は、地盤90からの突出量が最も大きい支持杭10の突出量hmax、最も突出量が小さい支持杭10の突出量hminとしたときに、hmax≧2×hminである複数の支持杭10によって構成されている。
(2)基準杭の選定
基準杭は、中間格点部50b又は150bを有さない支持杭10であり、突出量h0が7m以上である支持杭10のうち最も突出量が小さいものとする。
(3)比較杭の条件1
基準杭に対し比較対象となる支持杭10を比較杭と称し、比較杭が中間格点部50bを有さない1層構造である場合は、比較杭の突出量hは、
1≦h/h0≦1.73
を満たす。また、比較杭が中間格点部50bを有する2層構造である場合は、地盤90から中間格点部50bまでの高さをhtとしたときに、0.25h≦ht≦0.75hであることを条件に、比較杭の突出量hは、
1.31≦h/h0≦2.26
を満たす。
なお、比較杭が基準杭よりも遅れて降伏する場合と早く降伏する場合の両方を考慮すると、比較杭が1層構造である場合は、比較杭の突出量hは、
0.58≦h/h0≦1.73
を満たし、比較杭が2層構造である場合は、
0.86≦h/h0≦2.26
を満たす。
(4)比較杭の条件2
基準杭の降伏応力をσ0、比較杭の降伏応力をσx、基準杭の外径をD0、比較杭の外径をDx、K1=σx/σ0、K2=D0/Dxとしたときに
1≦K1×K2≦1.66
を満たす。また、なお、比較杭が基準杭よりも遅れて降伏する場合と早く降伏する場合の両方を考慮する場合は、
0.6≦K1×K2≦1.66
を満たす。
(5)道路構造100を構成する複数の支持杭10について、上記(1)~(4)の条件が満たされている支持杭10が、その全数のうち1/3以上、又は1/2以上含まれていることが望ましい。つまり、道路構造100を構成する複数の支持杭10について、全てが上記(1)~(4)の条件を満たしていなくとも良い。
(実施の形態2の道路構造100の効果)
図44は、実施の形態2に係る道路構造100の説明図である。図44の道路構造100は、道路延伸方向であるy方向(紙面左右方向)に支持杭10が並べられているだけでなく、紙面奥側を山側、手前側を谷側とし、山側と谷側に支持杭10が2列に並べられている。道路構造100は、道路延伸方向に並んでいる複数の支持杭10の突出量がそれぞれ異なっているだけでなく、斜面方向(x方向)に並んでいる支持杭10も斜面の傾斜に応じて突出量が異なっている。図44の地盤90の表面94は、複数の線により表されているが、点線が最も谷側に位置する支持杭10が打設されている地盤90の表面94を示しており、実線が山側に位置する支持杭10が打設されている地盤90の表面94を示している。図44の支持杭10は、左側から順にNo.1~No.11まで番号を振っている。
表1は、図44の複数の支持杭10の仕様とそれが上記の条件に当てはまっているかについての判定が記載された表である。表1には、No.1~No.11の支持杭10の突出量と、基準杭の突出量に対する各支持杭10の突出量の比とが記載され、上記条件(3)の1≦h/h0≦1.73又は1.31≦h/h0≦2.26に当てはまるかどうかが記載されている。表1においては、比較杭が基準杭よりも遅れて降伏する場合のみの条件で判定しており、条件に適合する支持杭10は、全ての支持杭10の1/2である。よって、図44の道路構造100は、上記の条件(5)を満たすものである。また、上記条件(2)に基づき表1に示す道路構造100においては、No.2の谷側にある支持杭を基準杭としている。
表2は、図44の複数の支持杭10の仕様とそれが上記の条件に当てはまっているかについての判定が記載された表である。表2には、表1と同じくNo.1~No.11の支持杭10の突出量と、基準杭の突出量に対する各支持杭10の突出量の比とが記載され、上記条件(3)の0.58≦h/h0≦1.73又は0.86≦h/h0≦2.26に当てはまるかどうかが記載されている。表2においては、比較杭が基準杭よりも遅れて降伏する場合及び比較杭が基準杭よりも早く降伏する場合の両方を考慮した条件で判定しており、条件に適合する支持杭10は、22本のうち17本で、全ての支持杭10の1/1.3である。よって、図44の道路構造100は、上記の条件(5)を満たすものである。
以上のように、図44に示されている道路構造100は、山間部に設置され、複数の支持杭10の長さが大きく異なるものであるが、上記の条件(1)~(5)の要件を満たしている。これにより、道路構造100は、例えばレベル2地震動を受けた際に、支持杭10のうち少なくとも1/2以上が塑性変形し振動によるエネルギーを吸収することにより、耐震性を発揮できる。
<結節点間部材の長さの制御>
図45は、実施の形態2に係る道路構造100の支持杭10の拡大図である。結節点間部材10Pの長さは、支持杭10の中間格点部50bの位置で決定するものであるが、支持杭10が打設された地盤90内の構造でも調整が可能である。
道路構造100の支持杭10は、地盤90に削孔された孔95内に建て込まれ、孔95と支持杭10の地中部18aとの間にコンクリート等の充填材82が流し込まれ固定される。図45においては、孔95の上部にある地中部18は、ウレタン又は発泡スチロール等の軟質材で構成された充填材81が流し込まれている。これにより、結節点間部材10Pの長さは、見た目上においては支点98から上部の部分の長さであるが、強度検討においては仮想支点98aから上部の部分の長さになる。支持杭10は、地盤90の内部において強度の高い充填材82を充填する高さを調整することにより、結節点間部材10Pの長さを調整でき、他の支持杭10と塑性変形領域を合わせることも可能となる。また、一般に地盤90の支点98を移動させるには、盛り土又は掘削を行う必要があるが、図45の構造によれば、孔95に充填する充填材82を変更するだけで、結節点間部材10Pの長さの調整が可能となる。なお、下側に位置する充填材82を第1充填材、充填材82の上に充填される充填材81を第2充填材と称する場合がある。第1充填材82は、第2充填材81よりも強度及び剛性が高い。
図46は、実施の形態2に係る道路構造100のy方向に垂直な断面の説明図である。道路構造100において、山間部の傾斜が大きい場合には、谷側の支持杭10と山側の支持杭10との突出量の差が大きい場合がある。この場合、谷側の支持杭10及び山側の支持杭10に中間格点部50bを設け桁部材40で接続すると、山側の支持杭10は、結節点間部材の長さが極端に短くなり、ともにエネルギー吸収性能を発揮できない場合が考えられる。このような場合には、谷側の支持杭10は2層で、山側の支持杭10は1層になるように桁部材40を配置する。つまり、桁部材40は、中間格点部50bと上端格点部50aとを接続するように設置されている。山側の支持杭10の上端格点部50aと谷側の支持杭10の中間格点部50bとを接続する桁部材40は、斜面に沿って傾斜している。なお、この桁部材40を第3桁部材と称する場合がある。
なお、実施の形態2においては、複数の支持杭10のうち少なくとも一部が2層の支持杭10である道路構造100について説明したが、複数の支持杭10のうち少なくとも一部が3層以上であっても良い。
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。特に構成要素の組み合わせは、実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、適宜変更することができる。また、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
上記に説明した道路構造100を含む人工地盤構造物は、以下の付記1~20に示す各特徴の組み合わせも含み得るものである。その組み合わせについて下記に示す。
[付記1]
人工地盤が延びる第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に並列して地盤に打設された支持杭と、
前記支持杭の上端に設置された上端格点部と、
隣り合う2つの前記上端格点部を接続する第1桁部材と、
前記上端格点部及び前記第1桁部材の上方に設置される床版と、を備え、
前記支持杭は、
レベル2地震動を受けたときの水平方向変位と水平荷重との履歴曲線が紡錘形状となるように設定されている、人工地盤構造物。
[付記2]
前記支持杭は、
熱処理された電縫鋼管により構成され、溶接部を含めた各部の降伏比が85%以下であり、シャルピー吸収エネルギーが27J以上である、付記1に記載の人工地盤構造物。
[付記3]
人工地盤が延びる第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に並列して地盤に打設された支持杭と、
前記支持杭の上端に設置された上端格点部と、
隣り合う2つの前記上端格点部を接続する第1桁部材と、
前記上端格点部及び前記第1桁部材の上方に設置される床版と、を備え、
前記支持杭は、
熱処理された電縫鋼管により構成され、溶接部を含めた各部の降伏比が85%以下であり、シャルピー吸収エネルギーが27J以上である、人工地盤構造物。
[付記4]
前記支持杭は、複数の支持杭を含み、
前記支持杭と前記地盤の表面とが交わる支点及び前記上端格点部を結節点とし、隣り合う前記結節点の間の前記支持杭の一部を結節点間部材としたときに、
前記複数の支持杭のうち前記第1方向又は前記第2方向に隣り合って前記地盤に打設された2つの支持杭は、複数の結節点間部材を備え、
前記複数の結節点間部材は、
レベル2地震動を受けたときに、塑性変形する第1結節点間部材と、降伏していない第2結節点間部材と、を備え、
前記第2結節点間部材は、
前記第1結節点間部材が限界耐力に達する前に降伏するように長さが設定されている、付記1~3の何れか1つに記載の人工地盤構造物。
[付記5]
前記支持杭の中間部に設置される中間格点部と、
隣合う2つの前記中間格点部を接続する第2桁部材と、を更に備える、付記1~3の何れか1つに記載の人工地盤構造物。
[付記6]
前記第2桁部材は、
前記地盤の傾斜に沿った方向に傾斜している、付記5に記載の人工地盤構造物。
[付記7]
前記中間格点部を有する前記支持杭の長さをhとしたときに、
前記支持杭と前記地盤の表面とが交わる支点から前記中間格点部までの長さは、
0.5h以上0.75h以下に設定される、付記5又は6に記載の人工地盤構造物。
[付記8]
前記中間格点部は、
前記支持杭の外側面を包囲して設置される筒体を備え、
前記支持杭の中心軸に対し偏心させた状態で設置可能な構造である、付記5~7の何れか1つに記載の人工地盤構造物。
[付記9]
前記支持杭は、
前記地盤に打設された第1鋼管杭の上方に鋼管支柱を接合して形成され、
前記第1鋼管杭と前記鋼管支柱との接合部は、
前記中間格点部の前記筒体が前記第1鋼管杭の上端部と前記鋼管支柱の下端部とにまたがって配置され、
前記中間格点部は、
前記第1鋼管杭及び前記鋼管支柱を偏心させた状態で接合可能な構造である、付記8に記載の人工地盤構造物。
[付記10]
前記中間格点部は、
前記筒体の内部に前記第1鋼管杭の上端面が下方から当接する支持部材を備え、
前記鋼管支柱は、
下端面が前記支持部材の上面に当接し、前記支持部材の上方に立設される、付記9に記載の人工地盤構造物。
[付記11]
前記支持杭は、複数の支持杭を含み、
前記支持杭と前記地盤の表面とが交わる支点、前記中間格点部及び前記上端格点部を結節点とし、隣り合う前記結節点の間の前記支持杭の一部を結節点間部材としたときに、
前記複数の支持杭のうち前記第1方向又は前記第2方向に隣り合って前記地盤に打設された2つの支持杭は、複数の結節点間部材を備え、
前記複数の結節点間部材は、
前記2つの支持杭に所定の水平方向変位が生じたときに、塑性変形する第1結節点間部材と、降伏していない第2結節点間部材と、を備え、
前記第2結節点間部材は、
前記第1結節点間部材が限界耐力に達する前に降伏するように長さが設定されている、付記5~10の何れか1つに記載の人工地盤構造物。
[付記12]
前記複数の結節点間部材は、
複数の第1結節点間部材を備える、付記11に記載の人工地盤構造物。
[付記13]
前記第1結節点間部材の降伏変位をδ1y、前記第2結節点間部材の降伏変位をδ2yとしたときに、前記第2結節点間部材の降伏変位δ2yが、δ1y≦δ2y≦3・δ1yとなるように前記第1結節点間部材及び前記第2結節点間部材の長さが設定された、付記11又は12に記載の人工地盤構造物。
[付記14]
前記上端格点部は、
前記支持杭の外側面を包囲して設置される筒体を備え、
前記支持杭の中心軸に対し偏心させた状態で設置可能な構造である、付記1~13の何れか1つに記載の人工地盤構造物。
[付記15]
前記支持杭は、
鋼管製造時の溶接ビード切断の後工程において鋼管の内面又は外面に誘導コイルを設置した誘導加熱装置を用いて熱処理されている、付記1~14の何れか1つに記載の人工地盤構造物。
[付記16]
前記支持杭は、
鋼管ぐいSKK材又は一般構造用鋼管STK材を使用した、付記1~15の何れか1つに記載の人工地盤構造物。
[付記17]
前記地盤に掘削され、前記支持杭が立設された孔と、
前記支持杭と前記孔との隙間に充填された第1充填材及び第2充填材とを備え、
前記第1充填材は、
前記第2充填材よりも下方に充填され、固化した後の強度が前記第2充填材よりも高い、付記1~16の何れか1つに記載の人工地盤構造物。
[付記18]
前記支持杭の中間部に設置される中間格点部と、
隣合う2つの支持杭に設置された前記中間格点部と前記上端格点部とを接続する第3桁部材と、を更に備える、付記1~17の何れか1つに記載の人工地盤構造物。
[付記19]
前記複数の支持杭は、
地盤からの突出量がh0である1本の基準となる基準杭と、
地盤からの突出量がhである比較杭と、を備え、
0.58≦h/h0≦1.73の条件を満たしている、付記4に記載の人工地盤構造物。
[付記20]
前記複数の支持杭は、
地盤からの突出量がh0である1本の基準となる基準杭と、
地盤からの突出量がhであり、前記中間格点部を有する比較杭と、を備え、
0.86≦h/h0≦2.26の条件を満たしている、付記11に記載の人工地盤構造物。