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JP7318846B1 - 三相三脚巻鉄心およびその製造方法 - Google Patents

三相三脚巻鉄心およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

磁気特性の異なる2種類以上の素材を使用することなく、変圧器鉄損が小さい磁気特性に優れた三相三脚巻鉄心を提供する。方向性電磁鋼板を素材として構成された隣接する2つの内鉄心と前記2つの内鉄心を囲む1つの外鉄心からなる三相三脚巻鉄心であって、前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心は、それぞれ平面部と該平面部に隣接するコーナー部を有し、前記平面部にラップ部を有し、前記コーナー部に屈曲部を有し、前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心のコーナー部には、それぞれ2か所の屈曲部が設けられ、かつ、前記2か所の屈曲部の成す角の角度が55°以下であり、前記方向性電磁鋼板は、磁場の強さHが800A/mのときの磁束密度B8が1.92T以上1.98T以下である、三相三脚巻鉄心。

Description

本発明は、三相三脚巻鉄心およびその製造方法に関するものであり、特に、方向性電磁鋼板を素材として作製される、変圧器の三相三脚巻鉄心およびその製造方法に関するものである。
鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有する方向性電磁鋼板は、特に電力用変圧器の鉄心材料として用いられている。変圧器は、その鉄心構造から、積鉄心変圧器と巻鉄心変圧器に大別される。積鉄心変圧器とは、所定の形状に切断した鋼板を積層することによって鉄心を形成するものである。一方、巻鉄心変圧器は、鋼板を巻き重ねて鉄心を形成するものである。本発明では、特に図1で示すような、隣接する2つの内鉄心を、1つの外鉄心で囲んだ、いわゆるエバンス型の三相三脚巻鉄心について扱う。
変圧器鉄心として要求される項目は種々あるが、特に重要なのは鉄損が小さいことである。その観点で、鉄心素材である方向性電磁鋼板に要求される特性としても、鉄損が小さいことは重要である。また、変圧器における励磁電流を減らして銅損を低減するためには、磁束密度が高いことも必要である。この磁束密度は、磁化力800A/mのときの磁束密度B8(T)で評価され、一般に、Goss方位への方位集積度が高いほど、B8は大きくなる。磁束密度の大きい電磁鋼板は、一般にヒステリシス損が小さく、鉄損特性上でも優れる。また、鉄損を低減するためには、鋼板中の二次再結晶粒の結晶方位をGoss方位に高度に揃えることや、鋼成分中の不純物を低減することが重要となる。
しかし、結晶方位の制御や不純物の低減には限界があることから、鋼板の表面に対して物理的な手法で不均一性を導入し、磁区の幅を細分化して鉄損を低減する技術、すなわち磁区細分化技術が開発されている。たとえば、特許文献1や特許文献2には、鋼板表面に所定深さの線状の溝を設ける耐熱型の磁区細分化方法が記載されている。前記特許文献1には、歯車型ロールによる溝の形成手段が記載されている。また特許文献2には、エッチング処理によって鋼板表面に線状溝を形成する手段が記載されている。これらの手段は、巻鉄心形成時の歪み取り焼鈍など、熱処理を行っても鋼板に施した磁区細分化効果が消失せず、巻鉄心などにも適用可能であるという利点を有している。
変圧器鉄損を小さくする為には、一般には、鉄心素材である方向性電磁鋼板の鉄損(素材鉄損)を小さくすれば良いと考えられる。一方、素材鉄損と比べて変圧器における鉄損は大きくなることが多い。変圧器の鉄心として電磁鋼板が使用された場合の鉄損値(変圧器鉄損)を、エプスタイン試験等で得られる素材の鉄損値で除した値を、一般にビルディングファクタ(BF)またはディストラクションファクタ(DF)と呼ぶ。つまり、変圧器においてはBFが1を超えるのが一般的であり、BFを低減することができれば、変圧器鉄損を低減することができる。
一般的な知見として、エバンス型の三相三脚巻鉄心における変圧器鉄損が素材鉄損に比べて鉄損が増加する要因(BF要因)として以下の点が指摘されている。すなわち、磁路長の違いにより生じる内鉄心への磁束集中、三相励磁に起因する鉄心内の局所的な磁束波形歪み、鋼板接合部における面内渦電流損の発生、加工時の歪み導入による鉄損増加などである。
磁路長の違いにより生じる鉄心内側への磁束集中による鉄損増加について述べる。エバンス型の三相三脚巻鉄心の場合、内鉄心の磁路の方が外鉄心の磁路に比べて短いため、内鉄心に磁束が集中する。一般に磁性体の鉄損は、励磁磁束密度の増加に対し、飽和磁化に近づくにつれて非線形に急速に増加していく。さらに、内鉄心に磁束が集中すると、磁化が飽和するため磁束波形が歪み、さらに鉄損が増加する。よって、内鉄心に磁束が集中した場合、鉄心内側の鉄損が特異に大きくなり、結果として鉄心全体の鉄損が増加する。
三相励磁に起因する鉄心内の局所的な磁束波形歪みの発生について述べる。図2に示すのは、三相三脚巻鉄心(変圧器)の特定位相の瞬間の磁束の流れを、鉄心断面図で表したものである。左脚と中央脚が反対向きに励磁されており、右脚は励磁が0の瞬間である。内鉄心では、磁束(i)に表されるように、左脚と中央脚間を磁束が流れる。外鉄心では、一部の磁束は磁束(ii)に示されるように、外鉄心から内鉄心へと渡り、中央脚を流れて、再び内鉄心から外鉄心へと渡る磁束の流れとなるが、残りの磁束は(iii)に表されるように、右脚を流れることとなる。図2に示される瞬間は、巻き線により励磁される磁束は0であるが、右脚に流れ込む磁束(iii)の分、磁束は増加するため、局所的には磁束は0とならない。そのため、鉄心内の磁束波形は正弦波と比べて歪むこととなる。その為に、鉄損が局所的に増大する。
鋼板接合部における面内渦電流損の発生について述べる。一般的に変圧器用の巻鉄心においては、巻き線を挿入するためにカット部が設けられる。カット部から鉄心に巻き線を挿入した後は、鋼板同士はラップ部を設けて、接合される。図3に示すように、鋼板接合部ではラップした部分(ラップ部)において、隣接する鋼板へ、面直方向に磁束が渡るため、面内渦電流が生じる。その為に、鉄損が局所的に増大することとなる。
加工時の歪みの導入も、鉄損の増加要因となる。鋼板のスリット、鉄心加工時の折り曲げ等により歪みが導入されると、鋼板の磁気特性が劣化し、鉄損が増加する。なお、巻鉄心の場合は、鉄心加工後に歪みが解放される温度以上で焼鈍を行う、いわゆる歪み取り焼鈍が施されるのが一般的である。
こういった変圧器鉄損の増加要因を踏まえて、変圧器鉄損を低減させる方策として例えば以下のような提案がされている。
特許文献3では、磁路長が短い鉄心内周側に、鉄心外周側よりも磁気特性の劣る電磁鋼板を、磁路長が長い鉄心外周側には、鉄心内周側よりも磁気特性の優れた電磁鋼板を配置することが開示されている。これにより、鉄心内周側への磁束の集中を回避し、変圧器鉄損が効果的に低減されるとしている。また、前記特許文献3には、三相三脚巻鉄心においては、内鉄心と外鉄心それぞれの内周側と外周側で磁気特性の異なる材料を、内周側への磁束が集中するよう配置することで、変圧器鉄損が効果的に低減されることが開示されている。
特公昭62-53579号公報 特許第2895670号公報 特許第5286292号公報
特許文献3に開示されているように、内周部への磁束の集中を回避するために、内周部と外周部に異材を使用することで、効率的に変圧器特性を改善することができる。しかしこの方法は、磁気特性(鉄損)の異なる2種類の材料(素材)を適切に配置する必要があるため、変圧器の設計の煩雑さや、製造性を著しく落とすこととなる。
本発明は、磁気特性の異なる2種類以上の素材を使用することなく、変圧器鉄損が小さい磁気特性に優れた三相三脚巻鉄心を提供することを目的とする。
変圧器鉄損が小さい磁気特性に優れた三相三脚巻鉄心を得るためには、磁路長の違いにより生じる内鉄心への磁束集中を緩和する鉄心設計と、内鉄心に磁束が集中しても磁束波形が歪まず、鉄損の増加が抑制できる鉄心素材の選択が必要である。さらには、三相励磁に起因する鉄心内の局所的な磁束波形歪みを抑制することも併せて必要である。
磁束の集中を緩和するための鉄心設計として以下の2点が必要である。
(1)平面部と該平面部に隣接するコーナー部を有し、前記平面部にラップ部を有し、前記コーナー部に屈曲部を有する巻鉄心とすること
(2)磁場の強さHが800A/mのときの磁束密度B8が1.92T以上1.98T以下となる鉄心素材(方向性電磁鋼板)を使用すること
さらに、三相励磁に起因する鉄心内の局所的な磁束波形歪みを抑制するためには以下の設計が必要である。
(3)コーナー部(2つの内鉄心と1つの外鉄心のコーナー部)に2か所の屈曲部を有し、かつ、前記2か所の屈曲部の成す角が55°以下であること
また、磁束波形歪みが発生しても、鉄損の増加が抑制できる鉄心素材の選択としては以下を満たすことが好ましい。
(4)下記式で求められる高調波重畳下での鉄損劣化率が1.35以下
高調波重畳下での鉄損劣化率=(高調波重畳下における鉄損)/(高調波重畳がない場合の鉄損)
ここで、上記式中の高調波重畳下における鉄損および高調波重畳がない場合の鉄損は、それぞれ周波数50Hz、最大磁化1.7Tの条件で測定された鉄損(W/kg)である。かつ、前記高調波重畳下における鉄損は、励磁電圧における基本調波に対する3次高調波の重畳率40%、位相差60°の条件において測定された鉄損である。
それぞれの必要条件とその理由について詳細に説明する。
(1)平面部と該平面部に隣接するコーナー部で形成を有し、前記平面部にラップ部を有し、前記コーナー部に屈曲部を有する巻鉄心とすること
巻鉄心は、方向性電磁鋼板などの磁性体を巻き回してコアとする。巻鉄心の製造方法として、一般的には、鋼板を筒状に巻き取った後、コーナー部をある曲率となるようにプレスし、矩形状に成形する方法がとられる。一方、別の製造方法として、巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とする方法がある。この方法により形成された鉄心は、コーナー部に折り曲げ部(屈曲部)を有する。前者の方法により形成された鉄心はトランココア、後者の方法により形成された鉄心は、設けられる鋼板接合部の数によりユニコアあるいはデュオコアと一般的に称する。磁束の集中を緩和するためには、後者の方法により形成されたコーナー部に折り曲げ部(屈曲部)を設ける構造が適する。
以下実験的に、トランココアとユニコアの鉄心内の磁束の集中、及び磁束密度波形について調査した結果を示す。図4に示す形状の、三相三脚型のトランココア1個とユニコア2個の鉄心を、0.23mm厚の方向性電磁鋼板(磁束密度B8:1.94T、W15/60:0.77W/kg)を巻き回して成型した。そのうち、トランココアとユニコアの1個について、同じ条件で歪み取り焼鈍を行った。巻きコアの作製は50巻きの巻き線を施し、磁束密度1.5T、周波数60Hzの無負荷励磁を行った。図5に示す位置に、1巻きの探りコイルを配置し、鉄心内の磁束密度分布を調査した。図6に内鉄心の内周側から外鉄心の外周側にかけて各鉄心の1/2厚さにおける磁束密度の最大値を示す。トランココア(歪み取り焼鈍有)とユニコア(歪み取り焼鈍有、無)共に、内周側の方が磁束密度が大きく、内鉄心に磁束が集中していることがわかる。図7には、各磁束波形を時間微分した(dB/dt)の波形率を評価した結果を示す。トランココアとユニコアを比較すると、ユニコアの方が磁束の集中が小さく、波形率が小さい、つまり磁束波形歪みが抑制されていることが判明した。
ユニコア、つまり鉄心のコーナー部に屈曲部を設けることにより、磁束波形歪みが抑制されている原因については以下のように推定している。ユニコアのコーナー部の屈曲部は、歪み取り焼鈍を行ったとしても変形双晶などが残存し、他の部分と比較すると、局所的に透磁率が小さくなっている。このような透磁率が著しく小さい部分が存在すると、ある一定以上の磁束が通ることはできない。そのため、磁路長差があっても鉄心内側のみへの磁束の集中は起きにくい。図8に示すように、磁束の集中が起こると、その磁束が最大となる部分においては、磁束が飽和し、波形が台形状に歪む。つまり、その時間微分した(dB/dt)の波形率は大きくなる。ユニコアの内巻き部においては、透磁率が小さい屈曲部を有さないトランココアと比べて、磁束の集中が起きにくく、磁束波形の歪みも抑制されたと推定される。
なお、本発明では、コーナー部に屈曲部を有する三相三脚巻鉄心を対象とする。前記巻鉄心は、例えば図4に示されるユニコアのように、隣接する2つの内鉄心と、前記2つの内鉄心を囲む1つの外鉄心から構成される。(1)の要件は、前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心について、それぞれ平面部と該平面部に隣接するコーナー部を設け、前記平面部にラップ部を設け、前記コーナー部に折り曲げ部(屈曲部)を設けることで満たされる。
(2)磁場の強さHが800A/mのときの磁束密度B8が1.92T以上1.98T以下となる鉄心素材(方向性電磁鋼板)を使用すること
実験的に、ユニコアの鉄心内の磁束波形歪みに及ぼす、磁束密度B8の影響を調査した結果を示す。図4に示す形状の三相三脚のユニコア(2つの内鉄心および1つの外鉄心)を、表1に示す磁束密度B8の異なる0.23mm厚の方向性電磁鋼板で作製した。作製した各ユニコアに、50巻きの巻き線を施し、磁束密度1.5T、周波数60Hzの無負荷励磁を行った。図5に示す位置に、1巻きの探りコイルを配置し、鉄心内の磁束密度波形を調査し、各磁束波形を時間微分した(dB/dt)の波形率を評価した。図9に各材料における、内鉄心の内側1/2厚さ(位置(i))での磁束波形を時間微分した(dB/dt)の波形率を示す。磁束密度B8が大きいほど、波形率が小さくなる傾向にあるが、1.98Tより大きい領域では逆に、波形率は再び大きくなった。1.92T以上1.98T以下が磁束波形歪みを小さく抑えることができる好適範囲である。
素材である方向性電磁鋼板の磁束密度B8が大きいほど、鉄心としたときの内鉄心への磁束の集中が緩和する原因については以下のように推定している。鉄心素材の磁束密度B8が大きいと、一般的には磁束の飽和が起こりにくくなる。磁路長差により鉄心内側への磁束集中が起こっても、高い磁束密度まで飽和が起こらないため、前述のように台形状の磁束波形歪みは起こりにくいと考えられる。逆に鉄心素材の磁束密度B8が大きくなりすぎると、飽和磁化が大きいために磁路長差による磁束集中が過度となり、磁束波形歪みも大きくなることとなる。そのため、ある磁束密度B8範囲において、磁束波形歪みを小さく抑えることができるのではないかと推定する。
Figure 0007318846000001
次に、三相励磁に起因する鉄心内の局所的な磁束波形歪みを抑制する鉄心形状設計と理由について説明する。
(3)2つの内鉄心および1つの外鉄心のコーナー部に2か所の屈曲部を有し、かつ、前記2か所の屈曲部の成す角の角度が55°以下
前記したように、三相励磁における磁束流れにおいて、励磁が0となる脚(図2においては右脚)への磁束の流れ込みによって、局所的な磁束波形歪みが生じる。それを抑制するためには、内鉄心と外鉄心の間を渡る磁束を増加させることが大事である。本発明者らは、図10に示すユニコアの内鉄心と外鉄心の隙間部に生じる三角窓の大きさを制御することで、内鉄心と外鉄心の間を渡る磁束を制御できるのではないかと考えた。
図11は、図2で示した三相三脚巻鉄心(変圧器)の特定位相の瞬間の磁束の流れについて、三角窓の周辺部について模式的に示したものである。外鉄心を流れる磁束は、磁路長が短くなるように一部が内鉄心に流れ、中央脚へと向かう。それが内鉄心と外鉄心の間を渡る磁束である。三角窓が大きい場合、外鉄心から内鉄心へと渡る磁束は、三角窓を避けて流れる必要があり、その分三角窓が小さい場合と比べて、磁路長は増大する。内鉄心と外鉄心の間を渡る磁束は、磁路長が短いがために生じていたため、三角窓が大きい場合にはこれが抑制される。逆に、三角窓が小さい場合には、内鉄心と外鉄心の間を渡る磁束を増加させることができ、局所的な磁束波形歪みが小さくなるのではないかと考えた。
以下、実験により上記仮説を検証した。図12に示すように、ユニコアの三角窓は、コーナー部に存在する2か所の屈曲部(図12中の第1屈曲部、第2屈曲部)の成す角(以下、単に、屈曲部の成す角ともいう)の角度が大きいほど、大きくなる。図13と表2に示す、ユニコアの鉄心形状のコアを作製し、図13中のe、f、gの長さが変わり、屈曲部の成す角の角度が異なり、三角窓の大きさが異なるユニコアを、0.23mm厚の方向性電磁鋼板(磁束密度B8:1.94T、W15/60:0.77W/kg)にて作製した。作製した各ユニコアに50巻きの巻き線を施し(歪み取り焼鈍はなし)、磁束密度1.5T、周波数60Hzの無負荷励磁を行った。その際、図14に示す位置に1巻きの探りコイルを配し、鉄心内の磁束密度波形を調査し、各磁束波形を時間微分した(dB/dt)の波形率を評価した。さらに、探りコイル(i)と(ii)の位置の波形率の平均を局所的な磁束波形歪みと評価した。各設計の鉄心と、求めた局所的な磁束波形歪み(探りコイル(i)と(ii)の波形率の平均値)の関係を図15に示す。仮説通り、屈曲部の成す角の角度が小さくなり、三角窓が小さくなると局所的な磁束波形歪みは減少した。また、特に屈曲部の成す角の角度が55°以下である場合に、特に局所的な磁束波形歪みを抑制でき、好適であることを知見した。
なお、本発明の三相三脚巻鉄心は、隣接する2つの内鉄心と前記2つの内鉄心を囲む1つの外鉄心から構成される。そして、図12に示すコーナー部における屈曲部(内鉄心の中央脚側のコーナー部における屈曲部)の成す角の角度と、それ以外のコーナー部における屈曲部の角度とはほぼ等しく構成される。すなわち、本発明では、2つの内鉄心のコーナー部(1つの内鉄心につき4か所)および1つの外鉄心のコーナー部(4か所)に、それぞれ2か所の屈曲部を設け、かつ、前記2か所の屈曲部の成す角の角度を55°以下とした場合に、特に局所的な磁束波形歪みを抑制でき好適である。
Figure 0007318846000002
次に、磁束波形歪みが発生しても、鉄損の増加が抑制できる鉄心素材選択の条件と理由について説明する。
(4)高調波重畳下での鉄損劣化率が1.35以下(好適条件)
前述のように鉄心内側に磁束が集中し、磁束波形が台形状に歪むと、鉄損が大きくなる。その原因は、磁束波形が台形状に歪むと、その台形の側辺にあたる瞬間で磁束の急峻な変化が起き、そのために渦電流損が大きくなってしまうためである。同様に、三相励磁に起因する鉄心内の局所的な磁束波形歪みによっても、磁束の急峻な変化が起き、そのために渦電流損が大きくなってしまう。
その磁束波形歪み及び渦電流損の増加を模擬するために、高調波を重畳させて意図的に磁束波形を歪ませた状態で鉄心素材の磁気測定を行った。様々な条件にて高調波を重畳させた条件を試したところ、励磁電圧における基本調波に対する3次高調波重畳率40%、位相差60°の条件での鉄損が、巻鉄心における渦電流損の増加を模擬することが判明した。
以下、上記好適範囲の根拠となった実験結果を示す。図4に示す形状の三相三脚のユニコア(2つの内鉄心および1つの外鉄心)を、表3に示す高調波重畳下での鉄損劣化率の異なる0.23mm厚の方向性電磁鋼板A~Kで作製した。高調波重畳下での鉄損劣化率の異なる素材(方向性電磁鋼板A~K)は、電磁鋼板表面に形成する絶縁被膜の被膜張力を変えることで作製した。被膜張力が大きくなる程、高調波重畳下での鉄損劣化率は減少した。作製したユニコアに50巻きの巻き線を施し、磁束密度1.5T、周波数60Hzの無負荷励磁を行い、鉄損を測定した。図16に、高調波重畳下での鉄損劣化率と変圧器鉄損の関係を示す。高調波重畳下での鉄損劣化率1.35以下の領域において、変圧器鉄損が小さくなった。
高調波重畳下での鉄損劣化率を基準に鉄心素材の選択を行うことで、磁束波形歪みが発生しても、鉄損増加をより抑制できる。
Figure 0007318846000003
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、以下の構成を有する。
[1]方向性電磁鋼板を素材として構成された隣接する2つの内鉄心と前記2つの内鉄心を囲む1つの外鉄心からなる三相三脚巻鉄心であって、
前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心は、それぞれ平面部と該平面部に隣接するコーナー部を有し、前記平面部にラップ部を有し、前記コーナー部に屈曲部を有し、
前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心のコーナー部には、それぞれ2か所の屈曲部が設けられ、かつ、前記2か所の屈曲部の成す角の角度が55°以下であり、
前記方向性電磁鋼板は、磁場の強さHが800A/mのときの磁束密度B8が1.92T以上1.98T以下である、三相三脚巻鉄心。
[2]前記方向性電磁鋼板は、下記式で求められる高調波重畳下での鉄損劣化率が1.35以下である、[1]に記載の三相三脚巻鉄心。
高調波重畳下での鉄損劣化率=(高調波重畳下における鉄損)/(高調波重畳がない場合の鉄損)
ここで、上記式中の高調波重畳下における鉄損および高調波重畳がない場合の鉄損は、それぞれ周波数50Hz、最大磁化1.7Tの条件で測定された鉄損(W/kg)であり、かつ、前記高調波重畳下における鉄損は、励磁電圧における基本調波に対する3次高調波の重畳率40%、位相差60°の条件において測定された鉄損である。
[3]前記方向性電磁鋼板は、非耐熱型の磁区細分化処理が施されたものである、[1]または[2]に記載の三相三脚巻鉄心。
[4]方向性電磁鋼板を素材として構成された隣接する2つの内鉄心と前記2つの内鉄心を囲む1つの外鉄心からなり、前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心は、それぞれ平面部と該平面部に隣接するコーナー部を有し、前記平面部にラップ部を有し、前記コーナー部に屈曲部を有する三相三脚巻鉄心の製造方法であって、
前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心のコーナー部に、それぞれ2か所の屈曲部を設け、かつ、前記2か所の屈曲部の成す角の角度を55°以下とし、
前記方向性電磁鋼板として、磁場の強さHが800A/mのときの磁束密度B8が1.92T以上1.98T以下である方向性電磁鋼板を用いる、三相三脚巻鉄心の製造方法。
[5]前記方向性電磁鋼板は、下記式で求められる高調波重畳下での鉄損劣化率が1.35以下である、[4]に記載の三相三脚巻鉄心の製造方法。
高調波重畳下での鉄損劣化率=(高調波重畳下における鉄損)/(高調波重畳がない場合の鉄損)
ここで、上記式中の高調波重畳下における鉄損および高調波重畳がない場合の鉄損は、それぞれ周波数50Hz、最大磁化1.7Tの条件で測定された鉄損(W/kg)であり、かつ、前記高調波重畳下における鉄損は、励磁電圧における基本調波に対する3次高調波の重畳率40%、位相差60°の条件において測定された鉄損である。
[6]前記方向性電磁鋼板は、非耐熱型の磁区細分化処理が施されたものである、[4]または[5]に記載の三相三脚巻鉄心の製造方法。
本発明により、変圧器鉄損が小さい磁気特性に優れた三相三脚巻鉄心を提供することができる。本発明によれば、磁気特性(鉄損)の異なる2種類以上の素材を使用しなくても、変圧器鉄損が小さい磁気特性に優れた三相三脚巻鉄心が得られる。
本発明によれば、磁気特性の異なる2種類以上の素材を使用した場合に必要となる素材の配置等の鉄心設計の煩雑さが低減され、鉄損が小さい磁気特性に優れた巻鉄心を、製造性高く得ることができる。
図1は、三相三脚巻鉄心の構成を模式的に示す図である。 図2は、三相三脚巻鉄心(変圧器)の特定位相の瞬間の磁束の流れを模式的に示す図である。 図3は、ラップ部において、鋼板の面直方向への磁束の渡りを説明する図である。 図4は、実験的に作製したトランココアとユニコアの形状を説明する図(側面図)である。 図5は、鉄心内の磁束密度分布を調査した際の探りコイルの配置について説明する図である。 図6は、トランココアとユニコアの鉄心内の磁束の集中について調査した結果を示す図である。 図7は、トランココアとユニコアの鉄心内の波形率を評価した結果を示す図である。 図8は、磁束の集中により生じる波形の歪みを説明する図である。 図9は、鉄心素材の磁束密度B8と、内鉄心の1/2厚さにおける波形率の関係を示す図である。 図10は、ユニコアの内鉄心と外鉄心の隙間部に生じる三角窓を説明する図である。 図11は、三相三脚巻鉄心(変圧器)の三角窓の周辺における特定位相の瞬間の磁束の流れを模式的に示す図である。 図12は、ユニコアの三角窓の大きさと、内鉄心のコーナー部に存在する2つの屈曲部の成す角の角度との関係を説明する図である。 図13は、実験的に作製したユニコアの鉄心形状を説明する図(側面図)である。 図14は、図13に示すユニコアの内鉄心と外鉄心間を渡る磁束を評価した際の探りコイルの配置について説明する図である。 図15は、図14に示す探りコイルで評価したユニコアに生じる局所的な磁束波形歪みと、屈曲部の成す角との関係を示す図である。 図16は、鉄心素材の高調波重畳下での鉄損劣化率と変圧器鉄損の関係を示す図である。 図17は、実施例で作製したトランココアの形状を説明する図(側面図)である。 図18は、実施例で作製したユニコアの形状を説明する図(側面図)である。
以下、本発明の詳細を説明する。
<三相三脚巻鉄心>
上述の通り、低鉄損となる変圧器巻鉄心を達成するには、以下の条件を満たす必要がある。
(A)平面部と該平面部に隣接するコーナー部を有し、前記平面部にラップ部を有し、前記コーナー部に屈曲部を有すること
(B)コーナー部(2つの内鉄心と1つの外鉄心のコーナー部)に2か所の屈曲部を有し、かつ、前記2か所の屈曲部の成す角の角度が55°以下であること
(A)は一般的にユニコアやデュオコアタイプと呼ばれる、変圧器用巻鉄心の製造手法を選択することで満たされる。具体的には、上述したように、(A)は、三相三脚巻鉄心を構成する隣接する2つの内鉄心および前記2つの内鉄心を囲む1つの外鉄心について、それぞれ平面部と該平面部に隣接するコーナー部を設け、前記平面部にラップ部を設け、前記コーナー部に屈曲部を設けることで満たされる。巻鉄心の製造方法は、公知の方法を採用することができる。より具体的には、AEM社製のユニコア製造機の使用が例示できる。この場合、設計サイズを製造機に読み込ませると、設計図通りのサイズに鋼板がせん断、屈曲部加工された加工済みの鋼板が1枚ずつ作製されるので、この加工済みの鋼板を積層させることで上記巻鉄心を作製することができる。
(B)の条件における、屈曲部とは、鉄心を側面視(鋼板を巻き回す方向に対して横から見る面)した場合に、コーナー部における鋼板の巻き回し方向が変化する部分を指す。また1つのコーナー部における、2つの屈曲部同士の成す角の内、小さい方の角(角度180°未満の角)を2か所の屈曲部の成す角と定義する(図12参照)。2か所の屈曲部の成す角の角度の上限は55°であることが必要である。下限は特性上では特には規定しないが、2か所の屈曲部の成す角の角度が小さくなると、2か所の屈曲部の距離が小さくなり、加工の精度を確保するのが難しくなるため、コーナー部における2か所の屈曲部の成す角の角度は20°以上が望ましい。
上記(A)、(B)の要件を本発明範囲内に制御すれば、(A)、(B)以外の、鋼板接合部の形式や鉄心サイズなどは特に限定されない。
<三相三脚巻鉄心(内鉄心および外鉄心)を構成する方向性電磁鋼板>
上述の通り、低鉄損となる三相三脚変圧器巻鉄心を達成するには、以下の(C)の条件を満たす必要がある。さらに、以下の(D)の条件を満たすことが好ましい。
(C)鉄心素材として、磁場の強さHが800A/mのときの磁束密度B8が1.92T以上1.98T以下である方向性電磁鋼板を用いること
磁気特性の測定は、エプスタイン試験により行う。エプスタイン試験はIEC規格あるいはJIS規格等の公知の方法で実施する。あるいは、非耐熱型の磁区細分化材など、エプスタイン試験による磁束密度B8の評価が困難な場合には、単板磁気測定試験(SST)による結果を代用しても良い。巻鉄心製造に関し、上記の磁束密度B8の好適範囲による選別を行う際には、方向性電磁鋼板コイルの代表特性を用いるべきである。具体的には、前記鋼板コイルの先尾端にて、試験サンプルを採取し、エプスタイン試験を行い磁束密度B8を測定し、その平均値を代表特性として採用する。あるいは、鋼材メーカが提供する鋼板の特性値(平均値及び保証値)を基に、素材の選別を行っても良い。前記磁束密度B8は、好ましくは1.94T以上である。また、前記磁束密度B8は、好ましくは1.96T以下である。
(D)鉄心素材として、下記式で求められる高調波重畳下での鉄損劣化率が1.35以下である方向性電磁鋼板を用いること(好適条件)
高調波重畳下での鉄損劣化率=(高調波重畳下における鉄損)/(高調波重畳がない場合の鉄損)
上記の式中で定義される、高調波重畳下における鉄損、高調波重畳がない場合の鉄損は同一のエプスタイン試験機又は単板磁気測定装置にて周波数50Hz、最大磁化1.7Tの条件にて測定される鉄損(W/kg)であり、かつ、前記高調波重畳下における鉄損は、励磁電圧における基本調波に対する3次高調波の重畳率40%、位相差60°の条件において測定される鉄損である。高調波重畳は、一次巻き線の印加電圧に対して重畳される。一次巻き線の印加電圧に対する高調波重畳方法は、特に規定しないが、例えば波形発生器において高調波重畳した電圧波形を発生させ、それを電力アンプにて増幅させて、励磁電圧(一次巻き線に印加される電圧)とする方法がある。本発明における高調波重畳条件は、励磁電圧における基本調波に対する3次高調波の重畳率40%、位相差60°の条件である。すなわち、本発明における高調波重畳条件下での電圧波形は、基本調波となる50Hz正弦波に対し、その3次高調波である150Hz正弦波を、基本調波の振幅の40%の振幅にて、位相差60°遅らせて重畳させた波形となる。本発明では、上述のように、鉄心素材として、前記高調波重畳下での鉄損劣化率が1.35以下である方向性電磁鋼板を用いることが好ましい。前記高調波重畳下での鉄損劣化率は、1.15以下がより好ましい。なお、前記高調波重畳下での鉄損劣化率の下限は特に限定されない。一例として、前記高調波重畳下での鉄損劣化率は、1.00以上である。
上記(C)の要件を本発明範囲内に制御すれば、(C)以外の方向性電磁鋼板の特性や、成分、製造方法等は特に限定されるものではない。
本発明によれば、上記(A)~(C)の要件を本発明範囲内に制御すればよく、磁気特性の異なる2種類以上の素材を使用しなくても、変圧器鉄損が小さい磁気特性に優れた三相三脚巻鉄心が得られる。そのため、本発明によれば、磁気特性の異なる2種類以上の素材を使用した場合に必要となる鉄心素材の配置等の鉄心設計の煩雑さが低減され、鉄損が小さい磁気特性に優れた三相三脚巻鉄心を、製造性高く得ることができる。
以下に、本発明の三相三脚巻鉄心の素材として好適な方向性電磁鋼板の成分、製造方法について述べる。
[成分組成]
本発明において、方向性電磁鋼板用スラブの成分組成は、二次再結晶が生じる成分組成であればよい。また、インヒビターを利用する場合、例えばAlN系インヒビターを利用する場合であればAlおよびNを、またMnS・MnSe系インヒビターを利用する場合であればMnとSeおよび/またはSを適量含有させればよい。勿論、両インヒビターを併用してもよい。この場合におけるAl、N、SおよびSeの好適含有量はそれぞれ、Al:0.010~0.065質量%、N:0.0050~0.0120質量%、S:0.005~0.030質量%、Se:0.005~0.030質量%である。
さらに、本発明は、Al、N、S、Seの含有量を制限した、インヒビターを使用しない方向性電磁鋼板にも適用することができる。この場合には、Al、N、SおよびSe量はそれぞれ、Al:100質量ppm以下、N:50質量ppm以下、S:50質量ppm以下、Se:50質量ppm以下に抑制することが好ましい。
上記方向性電磁鋼板用スラブの基本成分および任意添加成分について具体的に述べると次のとおりである。
C:0.08質量%以下
Cは、熱延板組織の改善のために添加をする。しかしながら、C含有量が、0.08質量%を超えると製造工程中に磁気時効の起こらない50質量ppm以下までCを低減することが困難になるため、C含有量は0.08質量%以下とすることが好ましい。なお、C含有量の下限に関しては、Cを含まない素材でも二次再結晶が可能であるので特に設ける必要はない。すなわち、C含有量は0質量%であってもよい。
Si:2.0~8.0質量%
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を改善するのに有効な元素である。Si含有量が2.0質量%以上であると、鉄損低減効果がより高められる。一方、Si含有量が8.0質量%以下であると、加工性の低下を抑制しやすくなり、また磁束密度の低下も抑制しやすくなる。そのため、Si含有量は2.0~8.0質量%の範囲とすることが好ましい。
Mn:0.005~1.000質量%
Mnは、熱間加工性を良好にする上で必要な元素である。Mn含有量が0.005質量%以上であると、その添加効果が得られやすくなる。一方、Mn含有量が1.000質量%以下であると製品板の磁束密度の低下を抑制しやすくなる。そのため、Mn含有量は0.005~1.000質量%の範囲とすることが好ましい。
Cr:0.02~0.20質量%
Crは、フォルステライト被膜と地鉄との界面に、緻密な酸化被膜形成を促進する元素である。Crを含有しなくても酸化被膜形成は可能であるが、Crを0.02質量%以上含有することによって他成分の好適範囲の拡大などが期待できる。また、Cr含有量が0.20質量%以下であると、酸化被膜が厚くなりすぎるのを抑制でき、耐コーティング剥離性の劣化を抑制しやすくなる。そのため、Cr含有量は0.02~0.20質量%の範囲とすることが好ましい。
上記方向性電磁鋼板用スラブは上記の成分を基本成分とすることが好ましい。前記スラブは、上記の基本成分以外に、次に述べる元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.03~1.50質量%、Sn:0.010~1.500質量%、Sb:0.005~1.500質量%、Cu:0.02~0.20質量%、P:0.03~0.50質量%、およびMo:0.005~0.100質量%のうちから選んだ少なくとも1種
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるために有用な元素である。Ni含有量が0.03質量%以上であると磁気特性の向上効果がより高められる。Ni含有量が1.50質量%以下であると、二次再結晶が不安定になるのを抑制でき、製品板の磁気特性が劣化するおそれを低減しやすくなる。そのため、Niを含有する場合、Ni含有量は0.03~1.50質量%の範囲とするのが好ましい。
また、Sn、Sb、Cu、PおよびMoはそれぞれ磁気特性の向上に有用な元素であり、いずれも上記した各成分の下限以上であると磁気特性の向上効果がより得られやすくなる。一方、上記した各成分の含有量の上限以下であると、二次再結晶粒の発達が阻害されるおそれを低減しやすくなる。そのため、Sn、Sb、Cu、P、Moを含有する場合、前記各元素の含有量は、それぞれ上記範囲とすることが好ましい。
なお、上記成分以外の残部は、製造工程において混入する不可避的不純物およびFeである。
次に、本発明の三相三脚巻鉄心の素材として好適な方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
[加熱]
上記成分組成を有するスラブを、常法に従い加熱する。加熱温度は、1150~1450℃が好ましい。
[熱間圧延]
上記加熱後に、熱間圧延を行う。鋳造後、加熱せずに直ちに熱間圧延を行ってもよい。薄鋳片の場合には、熱間圧延を行うこととしてもよく、あるいは、熱間圧延を省略してもよい。熱間圧延を実施する場合は、粗圧延最終パスの圧延温度を900℃以上、仕上げ圧延最終パスの圧延温度を700℃以上で実施することが好ましい。
[熱延板焼鈍]
その後、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。このとき、ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度として800~1100℃の範囲が好適である。熱延板焼鈍温度が800℃未満であると、熱間圧延でのバンド組織が残留し、整粒した一次再結晶組織を実現することが困難になり、二次再結晶の発達が阻害されるおそれがある。一方、熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎるために、整粒した一次再結晶組織の実現が困難となるおそれがある。
[冷間圧延]
その後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施す。中間焼鈍温度は800℃以上1150℃以下が好適である。また、中間焼鈍時間は、10~100秒程度とすることが好ましい。
[脱炭焼鈍]
その後、脱炭焼鈍を行う。脱炭焼鈍では、焼鈍温度を750~900℃とし、酸化性雰囲気PHO/PHを0.25~0.60とし、焼鈍時間を50~300秒程度とすることが好ましい。
[焼鈍分離剤の塗布]
その後、焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤は、主成分をMgOとし、塗布量を8~15g/m程度とすることが好適である。
[仕上げ焼鈍]
その後、二次再結晶およびフォルステライト被膜の形成を目的として仕上げ焼鈍を施す。焼鈍温度は1100℃以上とし、焼鈍時間は30分以上とすることが好ましい。
[平坦化処理および絶縁コーティング]
その後、平坦化処理(平坦化焼鈍)および絶縁コーティングを施す。なお、絶縁コーティングを施す際の絶縁コーティングの塗布・焼き付け処理にて平坦化処理も同時に行い、形状を矯正することも可能である。平坦化焼鈍は、焼鈍温度を750~950℃とし、焼鈍時間10~200秒程度で実施するのが好適である。本発明では、平坦化焼鈍前または後に、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことができる。ここでの絶縁コーティングとは、鉄損低減のために、鋼板に張力を付与するコーティング(張力コーティング)を意味する。張力コーティングとしては、シリカを含有する無機系コーティングや物理蒸着法、化学蒸着法等によるセラミックコーティング等が挙げられる。
一般的には、高調波重畳下における鉄損劣化率は、表面被膜(フォルステライト被膜及び絶縁コーティング)による鋼板への引張り張力が大きい方が減少する。被膜張力を大きくするためには、張力コーティングの厚みを増加させればよいが、占積率の悪化が懸念される。占積率を悪化させることなく、強い張力を得るためには、シリカを含有する無機系コーティングの場合には、焼き付け温度を上げることによるガラス結晶化の促進などの方策がある。またセラミックコーティングなどの低熱膨張率の被膜の付与も、強い張力を得るのに有効である。
[磁区細分化処理]
鋼板の鉄損を低減させるために、磁区細分化処理を施すことは好適である。磁区細分化技術とは、鋼板の表面に対して物理的な手法で不均一性を導入することにより、磁区の幅を細分化して鉄損を低減する技術である。磁区細分化技術は大きく分けて、歪み取り焼鈍において効果が損じない耐熱型の磁区細分化と、歪み取り焼鈍により効果が減じる非耐熱型の磁区細分化に分けられる。本発明においては、磁区細分化処理がされていない鋼板、耐熱型の磁区細分化処理が施された鋼板、非耐熱型の磁区細分化処理が施された鋼板いずれにも適用することができる。
その中では、耐熱型の磁区細分化処理を施された鋼板よりも、非耐熱型の磁区細分化処理を施された鋼板が好適である。非耐熱型の磁区細分化処理は、一般的には高エネルギービーム(レーザー等)を二次再結晶後の鋼板に照射し、その照射による鋼板表層に高転位密度領域の導入及びそれに付随する応力場の形成により、磁区細分化する処理である。非耐熱型の磁区細分化材(非耐熱型の磁区細分化処理が施された鋼板)では、鋼板最表面に高転位密度領域の導入による強い引っ張り応力場が形成されることで、高調波重畳による渦電流損の増加を回避することができる。非耐熱型の磁区細分化処理の方法については、鋼板表面に高エネルギービーム(レーザー、電子ビーム、プラズマジェット等)を照射する等の公知の技術を適用することができる。
実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例は、本発明の好適な一例を示すものであり、本発明は、該実施例によって何ら限定されるものではない。本発明の実施形態は、本発明の趣旨に適合する範囲で適宜変更することが可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
図17および表4、図18および表5に示す鉄心形状と、表6に示す鉄心素材にて、三相三脚のトランココア及びユニコアを作製した。条件1~12には成型後800℃で2時間の歪み取り焼鈍を行い焼鈍後に、条件13~50には歪み取り焼鈍を行わずに、接合部より鉄心を巻きほぐし、50Turn(50巻き)の巻き線コイルを挿入した。そして、励磁磁束密度(Bm)1.5T、周波数(f)60Hzの条件で、変圧器鉄損を測定した。同条件での、鉄心素材のエプスタイン試験結果(非耐熱型の磁区細分化の場合は単板磁気測定結果)を素材鉄損とし、その素材鉄損に対する変圧器鉄損における鉄損増加率BFを求めた。
Figure 0007318846000004
Figure 0007318846000005
結果を表6中に示す。本発明の適合例および最適例においては、比較例と比べて変圧器鉄損が小さく、かつBFが良好であり、非常に優れた磁気特性を示すことが判明した。特に高調波重畳下での鉄損劣化率が1.35以下かつ非耐熱型の磁区細分化材を用いた最適例は、変圧器鉄損が特に小さかった。
Figure 0007318846000006

Claims (6)

  1. 方向性電磁鋼板を素材として構成された隣接する2つの内鉄心と前記2つの内鉄心を囲む1つの外鉄心からなる三相三脚巻鉄心であって、
    前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心は、それぞれ平面部と該平面部に隣接するコーナー部を有し、前記平面部にラップ部を有し、前記コーナー部に屈曲部を有し、
    前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心のコーナー部には、それぞれ2か所の屈曲部が設けられ、かつ、前記2か所の屈曲部の成す角の角度が55°以下であり、
    前記方向性電磁鋼板は、磁場の強さHが800A/mのときの磁束密度B8が1.92T以上1.98T以下である、三相三脚巻鉄心。
  2. 前記方向性電磁鋼板は、下記式で求められる高調波重畳下での鉄損劣化率が1.35以下である、請求項1に記載の三相三脚巻鉄心。
    高調波重畳下での鉄損劣化率=(高調波重畳下における鉄損)/(高調波重畳がない場合の鉄損)
    ここで、上記式中の高調波重畳下における鉄損および高調波重畳がない場合の鉄損は、それぞれ周波数50Hz、最大磁化1.7Tの条件で測定された鉄損(W/kg)であり、かつ、前記高調波重畳下における鉄損は、励磁電圧における基本調波に対する3次高調波の重畳率40%、位相差60°の条件において測定された鉄損である。
  3. 前記方向性電磁鋼板は、非耐熱型の磁区細分化処理が施されたものである、請求項1または2に記載の三相三脚巻鉄心。
  4. 方向性電磁鋼板を素材として構成された隣接する2つの内鉄心と前記2つの内鉄心を囲む1つの外鉄心からなり、前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心は、それぞれ平面部と該平面部に隣接するコーナー部を有し、前記平面部にラップ部を有し、前記コーナー部に屈曲部を有する三相三脚巻鉄心の製造方法であって、
    前記2つの内鉄心および前記1つの外鉄心のコーナー部に、それぞれ2か所の屈曲部を設け、かつ、前記2か所の屈曲部の成す角の角度を55°以下とし、
    前記方向性電磁鋼板として、磁場の強さHが800A/mのときの磁束密度B8が1.92T以上1.98T以下である方向性電磁鋼板を用いる、三相三脚巻鉄心の製造方法。
  5. 前記方向性電磁鋼板は、下記式で求められる高調波重畳下での鉄損劣化率が1.35以下である、請求項4に記載の三相三脚巻鉄心の製造方法。
    高調波重畳下での鉄損劣化率=(高調波重畳下における鉄損)/(高調波重畳がない場合の鉄損)
    ここで、上記式中の高調波重畳下における鉄損および高調波重畳がない場合の鉄損は、それぞれ周波数50Hz、最大磁化1.7Tの条件で測定された鉄損(W/kg)であり、かつ、前記高調波重畳下における鉄損は、励磁電圧における基本調波に対する3次高調波の重畳率40%、位相差60°の条件において測定された鉄損である。
  6. 前記方向性電磁鋼板は、非耐熱型の磁区細分化処理が施されたものである、請求項4または5に記載の三相三脚巻鉄心の製造方法。
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