JP7317200B2 - ヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤 - Google Patents
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Description
本発明は、ヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤に関する。さらには、その香味付与剤を含有する香料組成物、および新規ヒドロキシアルデヒド化合物に関する。
昨今、飲食品や香粧品における消費者の要求は高度化および多様化しているが、特に、香りに注目が集まっており、香りの特性が製品の訴求力に重要な要素となっている。例えば、配合によって、香味を改善すること、例えば、香りや味に持続性、天然感、ボリューム感などを付与または増強できる香料化合物への要求が高まっており、香りや風味を改善可能な新たな香料化合物の探索が行われている。
例えば、ヒドロキシアルデヒド類に属する化合物がいくつか知られている。Zhen Rohfritsch et al., J. Agric. Food Chem. 2019, 67, 12, 3511-3520には、ミルクパウダーから(E)-4-ヒドロキシ-2-ヘキセナールや(E)-4-ヒドロキシ-2-ノネナールが揮発性成分として同定されたと記載されている。また、(4E)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチルデカ-4,9-ジエナールが、Schulz, S. et al., Zeitschrift fuer Naturforschung, C: J. of Biosciences (1988), 43(1-2), 99-104に蝶の分泌物からの同定物質として、特開昭50-36651号公報(米国特許第3915901号明細書に相当)に合成中間体として記載されており、(4E,8E)-10-ヒドロキシ-4,8-ジメチルデカ-4,8-ジエナールが、Tucker, Samuel P.; Pretty, Jack R., Analyst (Cambridge, United Kingdom) (2005), 130(10), 1414-1424にタバコ煙中の酸化生成物の生成スキーム中の予想中間物質として記載されている。
本発明の課題は、既存の化合物では得られなかった優れた香味付与効果を奏する香味付与剤を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、驚くべきことに、分子中の特定位置に水酸基とアルキル基とを有するヒドロキシアルデヒド類が優れた香味付与効果を奏することを発見した。かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1] 下記式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、香味付与剤。
[式中、C4位およびC8位の破線はそれぞれ独立して単結合または二重結合であることを表し、かつ、二重結合の場合はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表し、
C8位が単結合である場合は、R1はOH基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であるか;R2およびR3が結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成するか;R2およびR3が一緒になってC9位の炭素との二重結合を有するメチリデン基を形成している;のいずれかであり、
C8位が二重結合である場合は、R1は存在せず、R2は水素または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R3はOH基またはCH2OH基である。]
[2] 下記式1-1~1-7で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、[1]に記載の香味付与剤。
C8位が単結合である場合は、R1はOH基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であるか;R2およびR3が結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成するか;R2およびR3が一緒になってC9位の炭素との二重結合を有するメチリデン基を形成している;のいずれかであり、
C8位が二重結合である場合は、R1は存在せず、R2は水素または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R3はOH基またはCH2OH基である。]
[2] 下記式1-1~1-7で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、[1]に記載の香味付与剤。
[式中、波線はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表す。]
[3] 前記ヒドロキシアルデヒド化合物のC4位とC5位との間が二重結合である、[1]または[2]に記載の香味付与剤。
[4] 前記ヒドロキシアルデヒド化合物のC4位とC5位との間の二重結合においてE体をとる、[3]に記載の香味付与剤。
[5] 下記式1-1-1(4E)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物および式1-2-1(4E,8E)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、[1]~[4]のいずれか1項に記載の香味付与剤。
[3] 前記ヒドロキシアルデヒド化合物のC4位とC5位との間が二重結合である、[1]または[2]に記載の香味付与剤。
[4] 前記ヒドロキシアルデヒド化合物のC4位とC5位との間の二重結合においてE体をとる、[3]に記載の香味付与剤。
[5] 下記式1-1-1(4E)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物および式1-2-1(4E,8E)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、[1]~[4]のいずれか1項に記載の香味付与剤。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の香味付与剤を含有する香料組成物。
[7] [1]~[5]のいずれか1項に記載の香味付与剤、または[6]に記載の香料組成物を配合してなる、消費財。
[8] [1]~[5]のいずれか1項に記載の香味付与剤を香料組成物に配合することを含む、香料組成物の香味改善方法。
[9] [1]~[5]のいずれか1項に記載の香味付与剤、または[6]に記載の香料組成物を消費財に配合することを含む、消費財の香味付与方法。
[10] 下記式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物。
[7] [1]~[5]のいずれか1項に記載の香味付与剤、または[6]に記載の香料組成物を配合してなる、消費財。
[8] [1]~[5]のいずれか1項に記載の香味付与剤を香料組成物に配合することを含む、香料組成物の香味改善方法。
[9] [1]~[5]のいずれか1項に記載の香味付与剤、または[6]に記載の香料組成物を消費財に配合することを含む、消費財の香味付与方法。
[10] 下記式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物。
[式中、破線は単結合または二重結合であることを表し、かつ、二重結合の場合はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表し、R2’およびR3’は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であるか、R2’およびR3’が結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成する。(ただし、破線が単結合であり、かつR2’およびR3’が水素である場合を除く。)]
[11] 下記式1-3~1-7で表される、[10]に記載のヒドロキシアルデヒド化合物。
[11] 下記式1-3~1-7で表される、[10]に記載のヒドロキシアルデヒド化合物。
[式中、波線はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表す。]
以下、本発明について、具体例を挙げつつさらに詳細に説明する。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は下限値(X)および上限値(Y)を含む範囲を意味し、「X以上Y以下」を意味する。濃度、%は特に断りのない限りそれぞれ質量濃度、質量%を表すものとし、比は特に断りのない限り質量比とする。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行ったが、この条件に限られるものではない。
(式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物および当該化合物からなる香味付与剤)
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物(式1の化合物と称することもある)は、本発明者らによって香味付与剤としての有用性が初めて確認されたものである。化合物の中には構造がわずかに異なる異性体では香りを呈さないものや不快な香りを呈するものもある中で、本発明は、この化合物群においては各類縁体が好ましい香気を呈し、有効量物品に配合することで物品に好ましい香味を付与することができる、という予想外の発見に基づく。したがって、本発明の一形態は、下記式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、香味付与剤である。本発明によれば、各種物品に香味を付与可能な新たな香味付与剤を提供できる。また、本発明の他の形態は、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を香味付与剤とした応用を提供する。
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物(式1の化合物と称することもある)は、本発明者らによって香味付与剤としての有用性が初めて確認されたものである。化合物の中には構造がわずかに異なる異性体では香りを呈さないものや不快な香りを呈するものもある中で、本発明は、この化合物群においては各類縁体が好ましい香気を呈し、有効量物品に配合することで物品に好ましい香味を付与することができる、という予想外の発見に基づく。したがって、本発明の一形態は、下記式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、香味付与剤である。本発明によれば、各種物品に香味を付与可能な新たな香味付与剤を提供できる。また、本発明の他の形態は、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を香味付与剤とした応用を提供する。
[式中、C4位とC5位との間およびC8位とC9位との間の破線はそれぞれ独立して単結合または二重結合であることを表し、かつ、二重結合の場合はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表し、
C8位とC9位との間が単結合である場合は、R1はOH基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であるか;R2およびR3が結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成するか;R2およびR3が一緒になってC9位の炭素原子との二重結合を有するメチリデン基を形成している;のいずれかであり、
C8位とC9位との間が二重結合である場合は、R1は存在せず、R2は水素または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R3はOH基またはCH2OH基である。]
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、C8位とC9位との間の破線が単結合である場合、(i)R1はOH基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基である形態;(ii)R1はOH基であり、R2およびR3が結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成する形態;(iii)R1はOH基であり、R2およびR3が一緒になってC9位の炭素原子との二重結合を有するメチリデン基を形成している形態;を含む。
C8位とC9位との間が単結合である場合は、R1はOH基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であるか;R2およびR3が結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成するか;R2およびR3が一緒になってC9位の炭素原子との二重結合を有するメチリデン基を形成している;のいずれかであり、
C8位とC9位との間が二重結合である場合は、R1は存在せず、R2は水素または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R3はOH基またはCH2OH基である。]
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、C8位とC9位との間の破線が単結合である場合、(i)R1はOH基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基である形態;(ii)R1はOH基であり、R2およびR3が結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成する形態;(iii)R1はOH基であり、R2およびR3が一緒になってC9位の炭素原子との二重結合を有するメチリデン基を形成している形態;を含む。
上記(i)~(iii)の形態は、以下の式(i)~(iii)によってそれぞれ表される。
[式(i)~(iii)中、C4位とC5位との間の破線は単結合または二重結合であることを表し、かつ、二重結合の場合はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表し、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。]
上記式1および式(i)~(iii)において、R2およびR3としての炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。また、OH基とはいわゆる水酸基であって、ヒドロキシ基、ヒドロキシル基とも称されるものである。
上記式1および式(i)~(iii)において、R2およびR3としての炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。また、OH基とはいわゆる水酸基であって、ヒドロキシ基、ヒドロキシル基とも称されるものである。
式1において、C4位とC5位との間、およびC8位とC9位との間の破線は、それぞれ独立して単結合であっても、二重結合であってもよいが、いずれかひとつは二重結合であると好ましい。すなわち、好ましくは、式1中、破線によって表される炭素-炭素間の二重結合は1箇所または2箇所であり、さらに好ましくは、少なくともC4位とC5位との間の破線が二重結合である。なお、本明細書中、C4位とC5位との間の破線が二重結合である形態を単に「C4位が二重結合である」と、C8位とC9位との間の破線が二重結合である形態を単に「C8位が二重結合である」と、略記することがある。
また、所期の効果をより得られやすくするという観点から、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、C4位とC5位との間の破線が二重結合である場合に、C4位とC5位との間の二重結合においてE体をとると好ましい。すなわち、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、4E体であると好ましい。実施例の項において詳述するように、本発明者らは、鋭意検討することにより、4E体は、4Z体と比較して香りが強く、よりスズラン生花に近い香りを有することを見出した。したがって、4E体は、香味付与剤として特に有用である。なお、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の立体配置(E体であるか、Z体であるか)は、主として高速液体クロマトグラフィ(HPLC)や核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR、13C-NMR)により決定することができる。
以下、本発明に係る香味付与剤の好ましい形態を説明する。
(a)C4位が二重結合であり、かつ、C8位が単結合である場合
低濃度であっても香りの拡散性および残香性を向上させられる香味付与剤を得る、という観点から、香味付与剤は、上記(i)および(iii)の形態(すなわち、上記式(i)および(iii)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物)であると好ましい。また、特にスズラン様香気について、生花を思わせる質の高い香気を付与することが可能となるという点で、香味付与剤は、上記(iii)の形態(すなわち、上記式(iii)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物)であると好ましい。上記(i)の形態において、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、メチル基、またはエチル基であると好ましく、水素またはメチル基であるとより好ましい。
低濃度であっても香りの拡散性および残香性を向上させられる香味付与剤を得る、という観点から、香味付与剤は、上記(i)および(iii)の形態(すなわち、上記式(i)および(iii)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物)であると好ましい。また、特にスズラン様香気について、生花を思わせる質の高い香気を付与することが可能となるという点で、香味付与剤は、上記(iii)の形態(すなわち、上記式(iii)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物)であると好ましい。上記(i)の形態において、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、メチル基、またはエチル基であると好ましく、水素またはメチル基であるとより好ましい。
(b)C4位およびC8位が二重結合である場合
C4位およびC8位がともに二重結合である式1の化合物は、特に、香りの天然感、拡散性および残香性をバランスよく向上させることができる。また、当該化合物は、特にスズラン様香気について、生花を思わせる質の高い香気を付与することが可能である。所期の効果をより向上させるという観点から、R2は水素またはメチル基であると好ましく、水素であるとより好ましい。同様に、R3はCH2OH基であると好ましい。
C4位およびC8位がともに二重結合である式1の化合物は、特に、香りの天然感、拡散性および残香性をバランスよく向上させることができる。また、当該化合物は、特にスズラン様香気について、生花を思わせる質の高い香気を付与することが可能である。所期の効果をより向上させるという観点から、R2は水素またはメチル基であると好ましく、水素であるとより好ましい。同様に、R3はCH2OH基であると好ましい。
式1の化合物はそれ自体、スズラン(ミューゲ、lily of the valleyともいう)、フローラル、グリーン、ウッディ、シトラス(柑橘)、ローズ、オゾン様などの香気を呈し、香料化合物のような香味付与剤として使用できるものである。
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の好ましい構造の具体例は、下記式1-1~1-7のいずれかで表される。すなわち、本発明に係る香味付与剤は、下記式1-1~1-7で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなると好ましい。
[式中、波線はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表す。]
なお、式1-1は、式1においてC8位とC9位との間の破線が単結合であり、R1がOH基であり、R2およびR3が一緒になってC9位の炭素との二重結合を有するメチリデン基を形成した場合(すなわち、上記(iii)の形態)であり、式1-7は、式1においてC8位とC9位との間の破線が単結合であり、R1がOH基であり、R2およびR3が、これらが結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成した場合(すなわち、上記(ii)の形態)である。
なお、式1-1は、式1においてC8位とC9位との間の破線が単結合であり、R1がOH基であり、R2およびR3が一緒になってC9位の炭素との二重結合を有するメチリデン基を形成した場合(すなわち、上記(iii)の形態)であり、式1-7は、式1においてC8位とC9位との間の破線が単結合であり、R1がOH基であり、R2およびR3が、これらが結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成した場合(すなわち、上記(ii)の形態)である。
より具体的には、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、下記式1-1-1(4E)または式1-2-1(4E,8E)で表されるものであってよい。これらのヒドロキシアルデヒド化合物は、特にスズラン生花に近い香りを感じさせ、香りが強いため、香味付与剤として特に有用である。すなわち、本発明の好ましい形態として、下記式1-1-1(4E)または式1-2-1(4E,8E)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる香味付与剤が提供される。
本明細書において、香味とは、香りによって刺激し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚と味覚などを含む感覚を意味する。本明細書において、用語「香味を付与」とは、前記香味を新たに加える、または増強することを含み、例えば、付与の結果香味が改善されるものであってよい。さらには、香味の付与の結果、嗅覚および味覚以外の感覚、例えば、冷感、温感、質感(のど越し、固さ、粘度など、テクスチャともいう)、炭酸や辛さなどの刺激感、などを増強、抑制、または改善するものであってもよい。
(式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物)
本発明のさらに他の形態は、下記式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を提供する。
本発明のさらに他の形態は、下記式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を提供する。
式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、上記式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物に含まれるものであり、従来文献に未記載の新規化合物である。式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、上記式1における(i)および(ii)の形態を含む。式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、それ自体、スズラン様、フローラル、グリーン、ウッディ、シトラス様、ローズ様、オゾン様などの香気を呈し、香料化合物のような香味付与剤として使用できるものである。
[式中、破線は単結合または二重結合であることを表し、かつ、二重結合の場合はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表し、R2’およびR3’はそれぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であるか、R2’およびR3’はこれらが結合するC9位の炭素原子と一緒になって三員環を形成している。(ただし、破線が単結合であり、かつR2’およびR3’が水素である場合を除く。)]
上記式1’において、R2’およびR3’としての炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基の具体例および好ましい形態は、上記式1における、R2およびR3としての炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基とそれぞれ同様である。
上記式1’において、R2’およびR3’としての炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基の具体例および好ましい形態は、上記式1における、R2およびR3としての炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基とそれぞれ同様である。
式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、好ましくは下記式1-3~1-7のいずれかで表される化合物である。
[式中、波線はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表す。]
(式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の製造例)
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を得る手段は特に限定されない。当該化合物は、例えば、下記の方法によって得ることができるが、これらに限定されない。
(A) 出発物質として、ヒドロキシ基を有し、かつ炭素鎖末端から2番目の位置(C2位とC3位との間)および6番目の位置(C6位とC7位との間)に二重結合を有する化合物を用意し、当該2番目の位置の二重結合を、エポキシ化を経てアルデヒド基に酸化する;
(B) 出発物質として、カルボニル基を有し、かつ炭素鎖末端から2番目の位置(C2位とC3位との間)および6番目の位置(C6位とC7位との間)に二重結合を有する化合物を用意し、当該カルボニル基をグリニャール試薬によってメチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基およびヒドロキシ基(すなわち第3級アルコール)とし、かつ、当該2番目の位置の二重結合を、エポキシ化を経てアルデヒド基に酸化する;
(C) (A)~(B)に記載の各反応の任意の組み合わせ。
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を得る手段は特に限定されない。当該化合物は、例えば、下記の方法によって得ることができるが、これらに限定されない。
(A) 出発物質として、ヒドロキシ基を有し、かつ炭素鎖末端から2番目の位置(C2位とC3位との間)および6番目の位置(C6位とC7位との間)に二重結合を有する化合物を用意し、当該2番目の位置の二重結合を、エポキシ化を経てアルデヒド基に酸化する;
(B) 出発物質として、カルボニル基を有し、かつ炭素鎖末端から2番目の位置(C2位とC3位との間)および6番目の位置(C6位とC7位との間)に二重結合を有する化合物を用意し、当該カルボニル基をグリニャール試薬によってメチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基およびヒドロキシ基(すなわち第3級アルコール)とし、かつ、当該2番目の位置の二重結合を、エポキシ化を経てアルデヒド基に酸化する;
(C) (A)~(B)に記載の各反応の任意の組み合わせ。
さらに、上記(A)~(C)により、C4位が二重結合であるヒドロキシアルデヒド化合物を得た後、当該非ドロキシアルデヒド化合物に対し、適宜触媒を用いた水素添加反応を行うことにより、C4位が単結合であるヒドロキシアルデヒド化合物(例えば、上記式1-4で表される化合物)を得ることができる。
上記の各反応に使用する試薬、溶媒、反応条件などは、目的物が得られる範囲で適宜選択してよい。例えば、二重結合のアルデヒド基への変換は、メタクロロ過安息香酸、過ヨウ素酸またはその塩などを用いて行うことができる。あるいは、N-ブロモスクシンイミド、炭酸カリウム、過ヨウ素酸二水和物などを用いて行うことができる。また、(B)において用いられるグリニャール試薬は、たとえば、ハロゲン化炭化水素と金属マグネシウムとの反応により得ることができる。
(香料組成物・香料組成物の香味改善方法)
本発明のさらに他の形態に係る香料組成物は、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤を含む。さらに、本発明のさらに他の形態は、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を香料組成物とした応用もまた提供する。かかる香料組成物は、香味の付与を目的として、各種物品に配合することができるものである。具体例としては、香粧品用香料組成物(フレグランス組成物ともいう)、飲食品用香料組成物(フレーバー組成物ともいう)が挙げられる。配合対象となる物品の例としては、上述のように、香粧品、飲食品、その他雑貨などの各種消費財が挙げられる。本発明の香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
本発明のさらに他の形態に係る香料組成物は、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤を含む。さらに、本発明のさらに他の形態は、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を香料組成物とした応用もまた提供する。かかる香料組成物は、香味の付与を目的として、各種物品に配合することができるものである。具体例としては、香粧品用香料組成物(フレグランス組成物ともいう)、飲食品用香料組成物(フレーバー組成物ともいう)が挙げられる。配合対象となる物品の例としては、上述のように、香粧品、飲食品、その他雑貨などの各種消費財が挙げられる。本発明の香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
また、本発明のさらに他の形態は、上記香味付与剤を香料組成物に配合することを含む、香料組成物の香味改善方法を提供する。上記香味付与剤の配合方法は特に制限されず、当業者に公知の手法を用いて配合されうる。
本発明の香料組成物中の式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度は、香料組成物の配合対象に応じて任意に決定できる。
当該濃度の例として、香粧品用香料組成物であれば、香料組成物の全体質量に対して、例えば0.0005%~60%、好ましくは0.001%~50%、より好ましくは0.01%~20%、さらにより好ましくは0.05~15%、特に好ましくは0.1%~10%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.0005%、0.001%、0.01%、0.05%、0.1%、1%、10%、20%、30%、40%のいずれかとし、上限値を60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、1%、0.1%、0.01%のいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。なお、香料組成物の処方や香調にも依存するが、香粧品用香料組成物中の式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度が0.0005%以上、さらには0.001%以上であると高い配合効果が感じられ、60%、さらには50%以下であると式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物由来の香りが強くなりすぎることがなく、配合対象の香粧品用香料組成物の香気特性に好ましくない変質を与えることを抑制することができる。しかしながら、配合対象の香粧品用香料組成物の香調などによっては前記下限を下回る濃度または前記上限を上回る濃度で配合してもよい。
飲食品用香料組成物であれば、香料組成物の全体質量に対して、例えば10ppb~10%、好ましくは100ppb~1%、より好ましくは1ppm~0.1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%、1%のいずれかとし、上限値を10%、1%、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。なお、香料組成物の処方や香調にも依存するが、香粧品用香料組成物中の式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度が10ppb以上であると高い配合効果が感じられ、10%以下であると式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物由来の香りが強くなりすぎることがなく、配合対象の飲食品用香料組成物の香味特性に好ましくない変質を与えることを抑制することができる。しかしながら、配合対象の飲食品用香料組成物の香調などによっては前記下限を下回る濃度または前記上限を上回る濃度で配合してもよい。
本発明の香料組成物は、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤を含むが、「含む」とは、所望の香気を発揮可能な量で含む態様を包含する。したがって、本発明の香料組成物は、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物のみを含有してもよいが、所望の香気を損なわない限りにおいて、他の香料成分や、溶剤等の他の添加剤などを含んでいてもよい。このような他の香料成分および他の添加剤は、当該香料組成物(および、当該組成物に含まれる式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物)が、被添加物中において、適切な濃度で、かつ均一に分散される目的で添加されうる。
そのような化合物または成分の例として、各種類の香料化合物または香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
合成香料化合物の具体例として、炭化水素化合物としては、α-ピネン、β-ピネン、γ-テルピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5-ウンデカトリエンなどが挙げられる。
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3-オクタノール、ヘキサノールなどの飽和アルカノール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、プレノール、2,6-ノナジエノールなどの不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、ボルネオールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、ヒドロキシシトロネラールなどの飽和アルデヒド、(E)-2-ヘキセナール、2,4-オクタジエナールなどの不飽和アルデヒド、シトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p-トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
ケトン化合物としては、2-ヘプタノン、2-ウンデカノン、1-オクテン-3-オン、アセトイン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン(メチルヘプテノン)などの飽和および不飽和ケトン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンなどのジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α-イオノン、β-イオノン、β-ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8-シネオールなどが挙げられる。
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸オクチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2-メチル酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ酪酸2-メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、カプリル酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルピニル、酢酸ネリルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3-メチル-2-フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
ラクトン化合物としては、γ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7-デセン-4-オリド、2-デセン-5-オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
酸化合物としては、酢酸、酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸、オクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-メチル-1-ブタンチオール、3-メルカプトヘキサノール、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、酢酸3-メルカプトヘキシル、p-メンタ-8-チオール-3-オンおよびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
天然香料としてはジャスミンアブソリュート、ヒヤシンスアブソリュート、ローズアブソリュート、チュベローズアブソリュート、バニラアブソリュート、ガルバナムレジノイドなどが挙げられる。
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼおよび/またはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
さらに、上記以外にも、後述の(用途例)の項に記載された他の添加剤もまた、適宜用いることができる。なお、上記他の香料成分や他の添加剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
本発明の香料組成物は、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を公知の方法によって適切な溶媒や分散媒に配合して調製することができる。
本発明の香料組成物の形態としては、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物やその他成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、その他固体製剤(固形脂など)などが好ましい。
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
また、乳化製剤とするためには、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を水溶性溶媒および乳化剤とともに乳化して得ることができる。式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、加工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸およびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物1質量部に対し、約0.01~約100質量部、好ましくは約0.1~約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶媒液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を配合することができる。
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜配合することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
本発明の香料組成物はさらに、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどの香料保留剤を含有することができる。
(用途例)
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤またはそれを含有する香料組成物は、各種消費財などの任意の物品に配合してよい。すなわち、本発明のさらに他の形態は、上記香味付与剤または上記香料組成物を配合してなる消費財を提供する。上記香味付与剤および上記香料組成物は、消費財としての香粧品、飲食品などに好ましく使用され、特に香粧品に好ましく使用できる。
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤またはそれを含有する香料組成物は、各種消費財などの任意の物品に配合してよい。すなわち、本発明のさらに他の形態は、上記香味付与剤または上記香料組成物を配合してなる消費財を提供する。上記香味付与剤および上記香料組成物は、消費財としての香粧品、飲食品などに好ましく使用され、特に香粧品に好ましく使用できる。
また、本発明のさらに他の形態は、上記香味付与剤、または上記香料組成物を消費財に配合することを含む、消費財の香味付与方法を提供する。上記香味付与剤および/または上記香料組成物の配合方法は特に制限されず、当業者に公知の手法を用いて配合されうる。
消費財としての香粧品の例として、これらに限定されるものではないが、オーデコロン、オードトワレ、オードパルファム、パルファムなどの香水類;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマードなど)などのヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤などの化粧品類;制汗スプレー、デオドラントシート、デオドラントクリーム、デオドラントスティックなどのデオドラント製品;無機塩類系、清涼系、炭酸ガス系、スキンケア系、酵素系、生薬系などの入浴剤;サンタン製品、サンスクリーン製品などの日焼け化粧品;フェイス用石鹸や洗顔クリームなどの洗顔料、ボディー用石鹸やボディソープ、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤、柔軟剤、台所用洗剤、清掃用洗剤、殺菌剤、漂白剤、歯磨き粉、マウスウォッシュなどの洗浄用剤;ドライまたはウェットティッシュペーパー、トイレットペーパー、マスク、包帯、ばんそうこう、湿布などの保健衛生品または医薬部外品;室内や車内などの芳香消臭剤;などを挙げることができる。
また、香粧品の形態(剤型)としては、特に制限されない。例えば、液状、乳液状、クリーム状、ペースト状、固形状、多層状等の種々の形態に適用可能である。これらの他にも、シート剤、スプレー剤、ムース剤としても適用できる。
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤またはそれを含有する香料組成物を含むこのような香粧品は、当業者に公知の手法を用いて製造されうる。
本発明の一形態に係る香粧品は、所望の香気を損なわない限りにおいて、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤またはそれを含有する本発明の香料組成物が適切な濃度で、かつ均一に分散されるように、他の添加剤を含んでいてもよい。
他の添加剤としては、特に制限されず、公知のものが使用できるが、例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシル、酢酸フェニルエチル、酪酸フェニルエチル、ギ酸フェニルエチル、フェニル酢酸フェニルエチル、イソ酪酸フェニルエチル、安息香酸ベンジル、プロピオン酸フェニルエチル、酢酸フェニルプロピル等のエステル類;フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド等のアルデヒド類;オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類;ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸;リナロール、シトロネロール、バクダノール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、テルピネオール、テトラハイドロリナロール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルジメチルカルビノール、ヒドロキシシトロネラール等のアルコール類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類;インドール、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、リモネンチオール、1-p-メンテン-8-チオール、アントラニル酸ブチル、アントラニル酸シス-3-ヘキセニル、アントラニル酸フェニルエチル、アントラニル酸シンナミル、ジメチルスルフィド、8-メルカプトメントン等の含窒素および/または含硫化合物類;スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類;アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類;ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類;増粘・ゲル化剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;色剤;防腐剤;粉体等を挙げることができる。
また、これら以外にも、上記(香料組成物・香料組成物の香味改善方法)の項に挙げた他の香料成分もまた、香粧品における他の添加剤として用いることができる。なお、上記他の添加剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
香粧品の香調も特に限定されず、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤またはそれを含有する香料組成物によって香気を付与可能な任意の香調であってよいが、例えば、シトラス調、フローラル調、フゼア調、フルーティ調、グリーン調、ウッディ調、モス調、トロピカルフラワー調、スズラン調、オリエンタル調、シプレ調などに好適に使用することができる。より具体的には、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、ユズ、カボス、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、スズラン、ヒヤシンス、ライラック、プルメリア、パイナップル、マンゴー、ピーチなどが例示できるが、これらに限定されない。例えば、フローラル調、スズラン調、シトラス調、フゼア調、ウッディ調の香りを呈する香粧品に好ましく使用することができ、特にフローラル調、スズラン調の香りを呈する香粧品に好ましく使用できる。
本発明において、香粧品中の濃度は、これら製品の香気や所望の効果の程度などに応じて任意に決定できる。
例えば、香粧品の全体質量に対して、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度として例えば10ppb~10%、好ましくは1ppm~5%、より好ましくは100ppm(0.01%)~3%、特に好ましくは0.05%~2%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を10ppb、100ppb、1ppm、5ppm、10ppm、100ppm、0.05%、0.1%、1%、5%のいずれか、上限値を10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%、100ppm、10ppm、5ppm、1ppm、100ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、香粧品の全体質量に対して、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度として、例えば5ppm~4%、または5ppm~2%が挙げられ、香粧品の香気特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、香粧品の種類や香気にも依存するが、香粧品中の式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度が10ppb以上であると、高い配合効果が感じられ、10%以下であると、配合対象の香粧品に当該香味付与剤由来の香気が過剰に付与されることを抑制できる。しかしながら、香粧品の香気などによっては前記下限を下回る濃度または前記上限を上回る濃度で配合してもよい。
上記のように香粧品に式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤またはそれを含有する香料組成物を配合することで、例えば、香粧品の香りの残香性、持続性および/または拡散性の向上、スズラン調、フローラル調、および/またはシトラス調の香気の付与、フレッシュなみずみずしさ、グリーン感、天然感、透明感、ボリューム感などの付与、香粧品材料そのものの異臭のマスキングなどの効果のうち少なくとも1つを含む賦香効果を得ることができる。
消費財としての飲食品の例としては、これらに限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ガーリック、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;タマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの各種畜肉風味;マグロなどの赤身魚、サバ、タイ、サケ、アジなどの白身魚、アユ、マス、コイなどの淡水魚、サザエ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、エビ、カニなどの各種甲殻類、ワカメ、昆布などの各種海藻類、などの各種魚介や海藻風味;米、大麦、小麦、麦芽などの麦類などの各種穀物風味;牛脂、鶏油、ラードなどの畜肉の油脂や各種魚類の油などの各種油脂風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。特に柑橘風味、紅茶、マスカット風味の飲食品に好適に使用できる。なお、飲食品の風味は、上記風味の1種類のみを感じさせる飲食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる飲食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよく、例えば、前者の例としてフルーツ風味のうちバナナ、ピーチおよびアップル風味など複数のフルーツ風味を感じさせる(いわゆるミックスフルーツ風味)が挙げられ、後者の例として、レモンなどの柑橘風味および乳風味を感じさせるもの(シトラス風味の乳酸菌飲料など)や、ミント風味や柑橘風味およびコーラ風味を感じさせるもの(ミントまたはレモンフレーバーのコーラ飲料など)が挙げられる。
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、本みりん、新みりん(煮切りみりん)、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;ビール酵母、パン酵母などの各種酵母、乳酸菌など各種微生物発酵品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、コーラ飲料、炭酸飲料(柑橘香味など各種香味のサイダーなど)、乳酸菌飲料などの嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料、果汁飲料、乳飲料、ノンアルコールビールやいわゆる「第三のビール」などを含むビールテイスト飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料などの機能性飲料;各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、まあはこれらを含むアルコール飲料類;などを挙げることができる。
本発明において、飲食品中の式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度は、飲食品の香味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定できる。
当該濃度の例として、飲食品の全体質量に対して、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度として例えば10ppt~10ppm、より好ましくは100ppt~10ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれか、上限値を10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、飲食品の全体質量に対して、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度として例えば100ppt~1ppmまたは1ppb~100ppbが挙げられ、飲食品の風味特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、飲食品の種類や香味にも依存するが、飲食品中の式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤の濃度が10ppt以上であると、高い配合効果が感じられ、10ppm以下であると、式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤そのものの香気が突出して配合対象の飲食品の香味に好ましくない変質を与えることを抑制することができる。しかしながら、飲食品の香味などによっては前記下限を下回る濃度または前記上限を上回る濃度で配合してもよい。
上記のように飲食品に式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物からなる香味付与剤またはそれを含有する香料組成物を配合することで、例えば、飲食品の香味増強、果皮感などの苦み付与、果皮ワックスのような油脂感付与、ボリューム感付与、柑橘感付与などの少なくとも1つを含む賦香効果を得ることができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の合成
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の例として、式1-1~1-7で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を以下(1)~(7)の手順に従って合成した。そのうち、(3)~(7)で合成した式1-3~1-7で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物でもある。
式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の例として、式1-1~1-7で表されるヒドロキシアルデヒド化合物を以下(1)~(7)の手順に従って合成した。そのうち、(3)~(7)で合成した式1-3~1-7で表されるヒドロキシアルデヒド化合物は、式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物でもある。
(1)式1-1の化合物(8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,9-デカジエナール)の合成
(i)化合物1bの合成
化合物1a(E体とZ体との混合物)2.22g(9.98mmol)をジクロロメタン(70mL)に溶かし、0℃に冷却し、冷却した溶液にメタクロロ過安息香酸(mCPBA)(70%)2.96g(12.0mmol)を2.5時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1時間撹拌した。次いで、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(150mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質2.51gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 36cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、最初に無色油状の原料化合物1aを0.41g(1.8mmol)回収し、次いで無色油状の化合物1bを1.43g(6.00mmol)得た。
化合物1a(E体とZ体との混合物)2.22g(9.98mmol)をジクロロメタン(70mL)に溶かし、0℃に冷却し、冷却した溶液にメタクロロ過安息香酸(mCPBA)(70%)2.96g(12.0mmol)を2.5時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1時間撹拌した。次いで、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(150mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質2.51gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 36cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、最初に無色油状の原料化合物1aを0.41g(1.8mmol)回収し、次いで無色油状の化合物1bを1.43g(6.00mmol)得た。
(ii)化合物1cの合成
0.70gの化合物1b(2.94mmol)をテトラヒドロフラン(THF)と水との混合液(THF:水=1:1)(15.5mL)に懸濁し、3%過塩素酸水溶液1.7mL(ca.0.51mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。得られた反応液に飽和食塩水およびエーテルを加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質0.73gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 10cm L, トルエン:アセトン=5:1)で精製し、無色油状の化合物1cを0.41g(1.6mmol)得た。
0.70gの化合物1b(2.94mmol)をテトラヒドロフラン(THF)と水との混合液(THF:水=1:1)(15.5mL)に懸濁し、3%過塩素酸水溶液1.7mL(ca.0.51mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。得られた反応液に飽和食塩水およびエーテルを加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質0.73gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 10cm L, トルエン:アセトン=5:1)で精製し、無色油状の化合物1cを0.41g(1.6mmol)得た。
(iii)式1-1の化合物の合成
0.36gの化合物1c(1.4mmol)をテトラヒドロフラン(THF)と水との混合液(THF:水=1:1)(15mL)に溶かし、得られた溶液に過ヨウ素酸ナトリウム0.37g(1.7mmol)を2時間かけて少しずつ加え、さらに室温で4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム、水およびエーテルを加え、有機層を分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質0.27gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 5.5cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、無色油状の式1-1の化合物を0.25g(1.3mmol)得た。これはE体とZ体との混合物であった(4E:4Z=約1:1)。異性体比はガスクロマトグラフィ(GC)によって分離を行って算出した。GC条件を以下に記載する;
GC装置:GC-2025(株式会社島津製作所製)
カラム:TC-1、0.53mm I.D.×30m L,df 1.50μm(GL Sciences Inc.製)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
インジェクション温度:300℃
ディテクター温度:300℃
昇温条件:100℃→300℃(毎分20℃昇温)
線速度:60.0cm/S
GCの保持時間を測定し、それぞれのピーク面積の比を求め、異性体比とした。以降の実施例でも、異性体混合物の異性体比の測定は上記GC条件によって行った。
0.36gの化合物1c(1.4mmol)をテトラヒドロフラン(THF)と水との混合液(THF:水=1:1)(15mL)に溶かし、得られた溶液に過ヨウ素酸ナトリウム0.37g(1.7mmol)を2時間かけて少しずつ加え、さらに室温で4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム、水およびエーテルを加え、有機層を分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質0.27gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 5.5cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、無色油状の式1-1の化合物を0.25g(1.3mmol)得た。これはE体とZ体との混合物であった(4E:4Z=約1:1)。異性体比はガスクロマトグラフィ(GC)によって分離を行って算出した。GC条件を以下に記載する;
GC装置:GC-2025(株式会社島津製作所製)
カラム:TC-1、0.53mm I.D.×30m L,df 1.50μm(GL Sciences Inc.製)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
インジェクション温度:300℃
ディテクター温度:300℃
昇温条件:100℃→300℃(毎分20℃昇温)
線速度:60.0cm/S
GCの保持時間を測定し、それぞれのピーク面積の比を求め、異性体比とした。以降の実施例でも、異性体混合物の異性体比の測定は上記GC条件によって行った。
得られた式1-1の化合物の物性は以下の通りであった。
1H-NMR (400MHz,CDCl3)ppm:1.25(s,3H,C8-CH3),1.5~1.6(m,2H,7-H2),1.58(br.s,E-C4-CH3)/1.65(br.s,Z-C4-CH3)(3H),1.93~2.08(m,2H,6-H2),2.28(t,J=7.2Hz,E-3-H2)/2.32(t,J=7.2Hz,Z-3-H2)(2H),2.45~2.50(m,2H,2-H2),5.03(br.d,J=10.4Hz,1H,10-cis-H),5.13(br.t,J=7.6Hz,1H,5-H),5.18(br.d,J=17.2Hz,1H,10-trans-H),5.88(dd,J=10.4,17.2Hz,1H,9-H),9.72(t,J=1.8Hz)/9.74(t,J=1.8Hz)(1H,E/Z-CHO)
13C-NMR (100MHz,CDCl3)ppm:16.06(E-C4-CH3),22.47/22.62(E/Z-C6),23.03(Z-C4-CH3),24.21(Z-C3),27.86/27.91(E/Z-C8-CH3),31.74(E-C3),41.86/42.04/42.08/42.15(E/Z-C2,E/Z-C7),73.25/73.31(E/Z-C8),111.74/111.82(E/Z-C10),125.33(E-C5),126.46(Z-C5),133.18(Z-C4),133.32(E-C4),144.86/144.89(E/Z-C9),202.30(Z-C1),202.61(E-C1)
IR (neat)cm-1:3700~3110(br),2970,2930,2872,1720,1452,1412,1374,1110,996,920
得られた式1-1の化合物(異性体混合物)の香りは、軽やかで柔らかい印象のある、スズラン様、ローズ様、グリーン、フローラル、フルーティな香気であった。
1H-NMR (400MHz,CDCl3)ppm:1.25(s,3H,C8-CH3),1.5~1.6(m,2H,7-H2),1.58(br.s,E-C4-CH3)/1.65(br.s,Z-C4-CH3)(3H),1.93~2.08(m,2H,6-H2),2.28(t,J=7.2Hz,E-3-H2)/2.32(t,J=7.2Hz,Z-3-H2)(2H),2.45~2.50(m,2H,2-H2),5.03(br.d,J=10.4Hz,1H,10-cis-H),5.13(br.t,J=7.6Hz,1H,5-H),5.18(br.d,J=17.2Hz,1H,10-trans-H),5.88(dd,J=10.4,17.2Hz,1H,9-H),9.72(t,J=1.8Hz)/9.74(t,J=1.8Hz)(1H,E/Z-CHO)
13C-NMR (100MHz,CDCl3)ppm:16.06(E-C4-CH3),22.47/22.62(E/Z-C6),23.03(Z-C4-CH3),24.21(Z-C3),27.86/27.91(E/Z-C8-CH3),31.74(E-C3),41.86/42.04/42.08/42.15(E/Z-C2,E/Z-C7),73.25/73.31(E/Z-C8),111.74/111.82(E/Z-C10),125.33(E-C5),126.46(Z-C5),133.18(Z-C4),133.32(E-C4),144.86/144.89(E/Z-C9),202.30(Z-C1),202.61(E-C1)
IR (neat)cm-1:3700~3110(br),2970,2930,2872,1720,1452,1412,1374,1110,996,920
得られた式1-1の化合物(異性体混合物)の香りは、軽やかで柔らかい印象のある、スズラン様、ローズ様、グリーン、フローラル、フルーティな香気であった。
(2)式1-2の化合物(10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナール)の合成
(i)化合物2bの合成
化合物2a(E体とZ体との混合物)2.64g(9.98mmol)をジクロロメタン(70mL)に溶かし、0℃に冷却し、冷却した溶液にメタクロロ過安息香酸(mCPBA)(70%)2.96g(12.0mmol)を2時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1.5時間撹拌した。次いで、その溶液に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(180mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質2.92gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 35cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1~1:1)で精製し、n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1で無色油状の原料の酢酸ファルネシル(化合物2a)0.20g(0.76mmol)を回収し、n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1で無色油状の化合物2b(10,11-エポキシ体)と化合物2bの位置異性体(6,7-エポキシ体)との混合物(約3:1)1.58g(5.63mmol)を溶出した。
化合物2a(E体とZ体との混合物)2.64g(9.98mmol)をジクロロメタン(70mL)に溶かし、0℃に冷却し、冷却した溶液にメタクロロ過安息香酸(mCPBA)(70%)2.96g(12.0mmol)を2時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1.5時間撹拌した。次いで、その溶液に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(180mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質2.92gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 35cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1~1:1)で精製し、n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1で無色油状の原料の酢酸ファルネシル(化合物2a)0.20g(0.76mmol)を回収し、n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1で無色油状の化合物2b(10,11-エポキシ体)と化合物2bの位置異性体(6,7-エポキシ体)との混合物(約3:1)1.58g(5.63mmol)を溶出した。
(ii)化合物2cの合成
化合物2b(10,11-エポキシ体)と化合物2bとの位置異性体(6,7-エポキシ体)の混合物(約3:1)1.57g(5.60mmol)をテトラヒドロフラン(THF)と水との混合液(THF:水=1:1)(29.5mL)に懸濁し、3%過塩素酸水溶液3.2mL(ca.0.96mmol)を加え、室温で3.5時間撹拌した。攪拌後の液のエーテル抽出を行い、エーテル抽出で得た有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質1.65gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 22cm L,トルエン:アセトン=10:1~9:1)で精製し、トルエン:アセトン=10:1で無色油状物質である原料の混合物0.17g(0.61mmol)を回収し、続いて無色油状物質である6,7-ジヒドロキシ体0.33g(1.1mmol)を溶出し、さらに10:1~9:1で無色油状の化合物2c(10,11-ジヒドロキシ体)1.04g(3.49mmol)を溶出した。
化合物2b(10,11-エポキシ体)と化合物2bとの位置異性体(6,7-エポキシ体)の混合物(約3:1)1.57g(5.60mmol)をテトラヒドロフラン(THF)と水との混合液(THF:水=1:1)(29.5mL)に懸濁し、3%過塩素酸水溶液3.2mL(ca.0.96mmol)を加え、室温で3.5時間撹拌した。攪拌後の液のエーテル抽出を行い、エーテル抽出で得た有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質1.65gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 22cm L,トルエン:アセトン=10:1~9:1)で精製し、トルエン:アセトン=10:1で無色油状物質である原料の混合物0.17g(0.61mmol)を回収し、続いて無色油状物質である6,7-ジヒドロキシ体0.33g(1.1mmol)を溶出し、さらに10:1~9:1で無色油状の化合物2c(10,11-ジヒドロキシ体)1.04g(3.49mmol)を溶出した。
(iii)化合物2dの合成
1.00gの化合物2c(3.35mmol)をテトラヒドロフラン(THF)と水との混合液(THF:水=1:1)(30mL)に溶かし、過ヨウ素酸ナトリウム0.86g(4.0mmol)を2時間かけて少しずつ加え、さらに室温で4時間撹拌した。次いで、反応液に水およびエーテルを加えて沈殿物を溶解後、有機層を分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色油状物質0.81gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 10cm L,n-ヘキサン-酢酸エチル=20:1~5:1)で精製し、n-ヘキサン-酢酸エチル=20:1で無色油状の化合物2dを0.61g(2.6mmol)溶出した。
1.00gの化合物2c(3.35mmol)をテトラヒドロフラン(THF)と水との混合液(THF:水=1:1)(30mL)に溶かし、過ヨウ素酸ナトリウム0.86g(4.0mmol)を2時間かけて少しずつ加え、さらに室温で4時間撹拌した。次いで、反応液に水およびエーテルを加えて沈殿物を溶解後、有機層を分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色油状物質0.81gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 10cm L,n-ヘキサン-酢酸エチル=20:1~5:1)で精製し、n-ヘキサン-酢酸エチル=20:1で無色油状の化合物2dを0.61g(2.6mmol)溶出した。
(iv)式1-2の化合物の合成
0.58gの化合物2d(2.4mmol)をメタノール(50mL)に溶かし、炭酸カリウム1.01g(7.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。次いで、反応液に水(30mL)および食塩を加え、エバポレーターでメタノールを溜去し、酢酸エチルで2回抽出した。抽出で得た有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色シロップ様物質0.49gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 8.5cm L,トルエン:アセトン=15:1~5:1)で精製し、トルエン:アセトン=10:1で無色シロップ様の式1-2の化合物を0.45g(2.3 mmol)溶出した。これは4種の異性体の混合物であった(4E,8E:4E,8Z:4Z,8E:4Z,8Z=約10:5:5:2)。
0.58gの化合物2d(2.4mmol)をメタノール(50mL)に溶かし、炭酸カリウム1.01g(7.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。次いで、反応液に水(30mL)および食塩を加え、エバポレーターでメタノールを溜去し、酢酸エチルで2回抽出した。抽出で得た有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色シロップ様物質0.49gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 8.5cm L,トルエン:アセトン=15:1~5:1)で精製し、トルエン:アセトン=10:1で無色シロップ様の式1-2の化合物を0.45g(2.3 mmol)溶出した。これは4種の異性体の混合物であった(4E,8E:4E,8Z:4Z,8E:4Z,8Z=約10:5:5:2)。
得られた式1-2の化合物の物性は以下の通りであった。
1H-NMR (400MHz,CDCl3)ppm:1.56~1.71(6H,C4-CH3,C8-CH3),2.0~2.1(m,4H,6-H2,7-H2),2.30(m,2H,3-H2),2.48(m,2H,2-H2),4.07(br.d,J=7.2Hz)/4.12(br.d,J=7.2Hz)(2H,10-H2),5.07~5.16(m,1H,5-H),5.30~5.45(m,1H,9-H),9.69~9.75(m,1H,CHO)
13C-NMR(100MHz,CDCl3)ppm:16.06/16.10(C4-CH3),23.00/23.28(C8-CH3),25.90/26.12/26.31(C6),24.30/31.69/31.88(C3),39.20/39.48(C7),42.11/44.29(C2),59.01/59.34(C10),123.85/124.64/124.98/126.04(C5,C9),133.24(C4),138.97(C8),200.26/203.03(C1)
IR(neat)cm-1:3700~3080(br),2960,2930,2858,1720,1665,1445,1380,1112,1010
得られた式1-2の化合物(異性体混合物)の香りは、フルーティさ、甘さを感じさせつつもみずみずしい香気を含みつつ、フローラルでスズラン生花を感じさせる香りであった。
1H-NMR (400MHz,CDCl3)ppm:1.56~1.71(6H,C4-CH3,C8-CH3),2.0~2.1(m,4H,6-H2,7-H2),2.30(m,2H,3-H2),2.48(m,2H,2-H2),4.07(br.d,J=7.2Hz)/4.12(br.d,J=7.2Hz)(2H,10-H2),5.07~5.16(m,1H,5-H),5.30~5.45(m,1H,9-H),9.69~9.75(m,1H,CHO)
13C-NMR(100MHz,CDCl3)ppm:16.06/16.10(C4-CH3),23.00/23.28(C8-CH3),25.90/26.12/26.31(C6),24.30/31.69/31.88(C3),39.20/39.48(C7),42.11/44.29(C2),59.01/59.34(C10),123.85/124.64/124.98/126.04(C5,C9),133.24(C4),138.97(C8),200.26/203.03(C1)
IR(neat)cm-1:3700~3080(br),2960,2930,2858,1720,1665,1445,1380,1112,1010
得られた式1-2の化合物(異性体混合物)の香りは、フルーティさ、甘さを感じさせつつもみずみずしい香気を含みつつ、フローラルでスズラン生花を感じさせる香りであった。
(3)式1-3の化合物(8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-デセナール)の合成
(i)化合物3bの合成
500mL四つ口フラスコに、マグネシウム3.25g(134mmol)、エーテル60mLおよび少量のヨウ素、ジブロモエタンを加え、窒素雰囲気下、ヨウ化エチル20.87g(133.8mmol)のエーテル溶液(90mL)を少量加えドライヤーで加熱した。反応の進行を確認後、残りのエーテル溶液を、緩やかにエーテルが還流するくらいのスピードで70分かけて滴下し、グリニャール試薬を調製した。30分間室温で撹拌しながら冷却し、続いて化合物3a(E体とZ体との混合物)20.00g(102.9mmol)のエーテル溶液(15~20mL)をグリニャール試薬に45分かけて滴下し、さらに室温で30分撹拌した。続いて、得られた反応液を冷却した1~2mol/L塩酸水溶液中に注いで沈殿物を溶かし、次いでエーテル抽出を行った。エーテル層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、オフホワイト油状の22.59gを得た。これをシリカゲルカラム(46mm i.d. x 40cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、無色油状の化合物3bを20.05g(89.36mmol)得た。
500mL四つ口フラスコに、マグネシウム3.25g(134mmol)、エーテル60mLおよび少量のヨウ素、ジブロモエタンを加え、窒素雰囲気下、ヨウ化エチル20.87g(133.8mmol)のエーテル溶液(90mL)を少量加えドライヤーで加熱した。反応の進行を確認後、残りのエーテル溶液を、緩やかにエーテルが還流するくらいのスピードで70分かけて滴下し、グリニャール試薬を調製した。30分間室温で撹拌しながら冷却し、続いて化合物3a(E体とZ体との混合物)20.00g(102.9mmol)のエーテル溶液(15~20mL)をグリニャール試薬に45分かけて滴下し、さらに室温で30分撹拌した。続いて、得られた反応液を冷却した1~2mol/L塩酸水溶液中に注いで沈殿物を溶かし、次いでエーテル抽出を行った。エーテル層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、オフホワイト油状の22.59gを得た。これをシリカゲルカラム(46mm i.d. x 40cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、無色油状の化合物3bを20.05g(89.36mmol)得た。
(ii)化合物3cの合成
化合物3b(E/Z≒3:2)(89.09mmol)19.99gを1,2-ジメトキシエタン(90mL)と水(60mL)との混合溶媒に懸濁し、氷冷下、N-ブロモスクシンイミド(NBS)16.97g(95.35mmol)の1,2-ジメトキシエタン(240mL)溶液を40分かけて滴下し、0℃で4時間撹拌した。続いて、得られた反応液中に飽和食塩水(500mL)を加え、エーテル(1L)抽出を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色油状の化合物3cを30.42g得て、これ以上精製せずに次の反応に使用した。
化合物3b(E/Z≒3:2)(89.09mmol)19.99gを1,2-ジメトキシエタン(90mL)と水(60mL)との混合溶媒に懸濁し、氷冷下、N-ブロモスクシンイミド(NBS)16.97g(95.35mmol)の1,2-ジメトキシエタン(240mL)溶液を40分かけて滴下し、0℃で4時間撹拌した。続いて、得られた反応液中に飽和食塩水(500mL)を加え、エーテル(1L)抽出を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色油状の化合物3cを30.42g得て、これ以上精製せずに次の反応に使用した。
(iii)化合物3dの合成
30.42gの化合物3cをメタノール(400mL)に溶かし、得られた溶液に炭酸カリウム39.03g(282.4mmol)を加え、室温で一晩(13時間)撹拌した。続いてセライト濾過を行って固形物を除去し、メタノールでよく洗浄し、メタノールと濾液とを合わせてエバポレーターで1/2程度になるまで濃縮し、飽和食塩水(300mL)を加えた後、エーテル(700mL)抽出を行った。有機層を一度濾過して無色のゼラチン様のものを除去後、水、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、炭酸カリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色油状物質23.97gを得た。これをシリカゲルカラム(46mm i.d. x 42.5cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1~4:1)で精製し、n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~4:1で無色油状の化合物3d(E/Z≒2:1)3.77g(15.7mmol)を溶出した。
30.42gの化合物3cをメタノール(400mL)に溶かし、得られた溶液に炭酸カリウム39.03g(282.4mmol)を加え、室温で一晩(13時間)撹拌した。続いてセライト濾過を行って固形物を除去し、メタノールでよく洗浄し、メタノールと濾液とを合わせてエバポレーターで1/2程度になるまで濃縮し、飽和食塩水(300mL)を加えた後、エーテル(700mL)抽出を行った。有機層を一度濾過して無色のゼラチン様のものを除去後、水、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、炭酸カリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色油状物質23.97gを得た。これをシリカゲルカラム(46mm i.d. x 42.5cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1~4:1)で精製し、n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~4:1で無色油状の化合物3d(E/Z≒2:1)3.77g(15.7mmol)を溶出した。
(iv)式1-3の化合物の合成
3.77gの化合物3d(E/Z≒2:1)(15.7mmol)をエーテル(70mL)に溶かし、その溶液を氷冷下、過ヨウ素酸二水和物(HIO4・2H2O)4.02g(17.6mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(36mL)溶液を40分かけて滴下し、0℃で1時間撹拌した。続いて、反応液に水(75mL)を加え、有機層を分離し、水層からはエーテル(350mL)抽出を行った。分離した有機層およびエーテル抽出で得た有機層を合わせて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、黄色油状物質3.50gを得た。これをシリカゲルカラム(46mm i.d. x 18cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1~4:1)で精製し、n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1で微黄色油状物質2.13gを溶出した。これを再度シリカゲルカラム(33mm i.d. x 31cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~3:1)で精製し、オフホワイト油状の式1-3の化合物を1.97g(9.93mmol)得た。これはE体およびZ体の混合物であった(4E:4Z=約3:2)。
3.77gの化合物3d(E/Z≒2:1)(15.7mmol)をエーテル(70mL)に溶かし、その溶液を氷冷下、過ヨウ素酸二水和物(HIO4・2H2O)4.02g(17.6mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(36mL)溶液を40分かけて滴下し、0℃で1時間撹拌した。続いて、反応液に水(75mL)を加え、有機層を分離し、水層からはエーテル(350mL)抽出を行った。分離した有機層およびエーテル抽出で得た有機層を合わせて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、黄色油状物質3.50gを得た。これをシリカゲルカラム(46mm i.d. x 18cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=9:1~4:1)で精製し、n-ヘキサン:酢酸エチル=4:1で微黄色油状物質2.13gを溶出した。これを再度シリカゲルカラム(33mm i.d. x 31cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~3:1)で精製し、オフホワイト油状の式1-3の化合物を1.97g(9.93mmol)得た。これはE体およびZ体の混合物であった(4E:4Z=約3:2)。
得られた式1-3の化合物の物性値は以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:0.81(t,J=7.6Hz,E-10-H3)/0.82(t,J=7.6Hz,Z-10-H3)(3H),0.99(s,E-C8-CH3)/0.99(s,Z-C8-CH3)(3H),1.30~1.37(m,4H,7-H2,9-H2),1.42(br.s,E-C4-CH3)/1.49(d,J=1.2HzZ-C4-CH3)(3H),1.93~2.05(m,4H,2-H2,6-H2),2.04(t,J=7.4Hz,E-3-H2)/2.15(t,J=7.4Hz,Z-3-H2)(2H),5.07(qt,J=1.2,7.2Hz,E-5-H)/5.13(br.t,J=7.2Hz,Z-5-H)(1H),9.31(t,J=1.6Hz,Z-CHO)/9.33(t,J=1.6Hz,E-CHO)(1H)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:8.37(C-10),15.89(E-C4-CH3),22.64(Z-C6),22.79(E-C6),23.08(Z-C4-CH3),24.30(Z-C3),26.32(Z-C8-CH3),26.36(E-C8-CH3),31.94(E-C3),34.69(E-C9),34.73(Z-C9),41.44(E-C7),41.74(Z-C7),42.08(E-C2),42.14(Z-C2),71.97(Z-C8),71.99(E-C8),125.91(E-C5),127.12(Z-C5),133.02(Z-C4),133.14(E-C4),200.43/200.48/200.61/200.64(C1)
IR(neat)cm-1:3700~3100(br),2965,2935,2880,1722,1455,1372,1135,1058
得られた式1-3の化合物(異性体混合物)の香りは、フルーティさ、甘さ、グリーン、フローラル、スズラン様、パウダー様の香気を含み、上品でやわらかく、さわやかでみずみずしい香気であった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:0.81(t,J=7.6Hz,E-10-H3)/0.82(t,J=7.6Hz,Z-10-H3)(3H),0.99(s,E-C8-CH3)/0.99(s,Z-C8-CH3)(3H),1.30~1.37(m,4H,7-H2,9-H2),1.42(br.s,E-C4-CH3)/1.49(d,J=1.2HzZ-C4-CH3)(3H),1.93~2.05(m,4H,2-H2,6-H2),2.04(t,J=7.4Hz,E-3-H2)/2.15(t,J=7.4Hz,Z-3-H2)(2H),5.07(qt,J=1.2,7.2Hz,E-5-H)/5.13(br.t,J=7.2Hz,Z-5-H)(1H),9.31(t,J=1.6Hz,Z-CHO)/9.33(t,J=1.6Hz,E-CHO)(1H)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:8.37(C-10),15.89(E-C4-CH3),22.64(Z-C6),22.79(E-C6),23.08(Z-C4-CH3),24.30(Z-C3),26.32(Z-C8-CH3),26.36(E-C8-CH3),31.94(E-C3),34.69(E-C9),34.73(Z-C9),41.44(E-C7),41.74(Z-C7),42.08(E-C2),42.14(Z-C2),71.97(Z-C8),71.99(E-C8),125.91(E-C5),127.12(Z-C5),133.02(Z-C4),133.14(E-C4),200.43/200.48/200.61/200.64(C1)
IR(neat)cm-1:3700~3100(br),2965,2935,2880,1722,1455,1372,1135,1058
得られた式1-3の化合物(異性体混合物)の香りは、フルーティさ、甘さ、グリーン、フローラル、スズラン様、パウダー様の香気を含み、上品でやわらかく、さわやかでみずみずしい香気であった。
(4)式1-4の化合物(8-ヒドロキシ-4,8-ジメチルデカナール)の合成
式1-3の化合物(8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-デセナール)0.74g(3.7mmol)を酢酸エチル(30mL)に溶かし、酸化白金(IV)(PtO2)0.17gを加え、水素雰囲気下、室温で20時間撹拌した。反応終了後、触媒を濾別し、酢酸エチルでよく洗浄した後、濾液を合わせて、エバポレーターで溶媒を溜去し、オフホワイトの油状物質0.72gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 10cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、無色油状の化合物1-4を452mg(2.26mmol)得た。
得られた式1-4の化合物の物性値は以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:0.69(d,J=6.4Hz,3H,C4-CH3),0.83(t,J=7.4Hz,3H,10-H3),0.9~1.0(m)/1.05~1.2(m)(2H,5-H2),1.00(s,3H,C8-CH3),1.1~1.2(m,1H,4-H),1.1~1.2(m)/1.35~1.45(m)(2H,3-H2),1.15~1.4(m,4H,6-H2,7-H2),1.34(q,J=7.4Hz,2H,9-H2),1.85(m,2H,2-H2),9.34(t,J=1.8Hz,1H,CHO)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:8.39(C10),19.32(C4-CH3),21.38(C6),26.43/26.49(C8-CH3),28.96(C3),32.45(C4),34.64/34.72(C9),37.56(C5),41.58(C2),41.88(C7),72.11(C8),200.94(C1)
IR(neat)cm-1:3700~3130(br),2965,2938,2878,1722,1460,1380,1270,1185,1150
得られた式1-4の化合物の香りは、フローラル、樹脂様の甘い香り、軽いフルーティ、ローズ様、パウダー様、スズラン様の香りを含み、軽やかで甘い香りであった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:0.69(d,J=6.4Hz,3H,C4-CH3),0.83(t,J=7.4Hz,3H,10-H3),0.9~1.0(m)/1.05~1.2(m)(2H,5-H2),1.00(s,3H,C8-CH3),1.1~1.2(m,1H,4-H),1.1~1.2(m)/1.35~1.45(m)(2H,3-H2),1.15~1.4(m,4H,6-H2,7-H2),1.34(q,J=7.4Hz,2H,9-H2),1.85(m,2H,2-H2),9.34(t,J=1.8Hz,1H,CHO)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:8.39(C10),19.32(C4-CH3),21.38(C6),26.43/26.49(C8-CH3),28.96(C3),32.45(C4),34.64/34.72(C9),37.56(C5),41.58(C2),41.88(C7),72.11(C8),200.94(C1)
IR(neat)cm-1:3700~3130(br),2965,2938,2878,1722,1460,1380,1270,1185,1150
得られた式1-4の化合物の香りは、フローラル、樹脂様の甘い香り、軽いフルーティ、ローズ様、パウダー様、スズラン様の香りを含み、軽やかで甘い香りであった。
(5)式1-5の化合物(8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-ノネナール)の合成
(i)化合物5bの合成
300mL四つ口フラスコに、マグネシウム1.63g(67.1mmol)を加え、エーテル30mLおよび少量のヨウ素、ジブロモエタンを加えた。窒素雰囲気下、ヨウ化メチル9.50g(66.9mmol)のエーテル溶液(45mL)を少量加えドライヤーで加熱して反応の進行を確認後、残りの溶液を、緩やかにエーテルが還流するくらいのスピードで45分かけて滴下し、グリニャール試薬を調製した。そのまま30分撹拌しながら室温まで冷却し、続いて10.0gの化合物5a(51.5mmol)のエーテル溶液(10mL)を20分かけてグリニャール試薬に滴下し、さらに室温で1時間撹拌した。続いて、得られた反応液を冷却した1mol/Lの塩酸水溶液中(80mL)に注いで沈殿物を溶かした後、得られた液のエーテル抽出を行った。エーテル層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色の油状物質10.64を得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 36cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1~10:1)で精製し、無色油状の化合物5bを10.28g(48.9mmol)得た。
300mL四つ口フラスコに、マグネシウム1.63g(67.1mmol)を加え、エーテル30mLおよび少量のヨウ素、ジブロモエタンを加えた。窒素雰囲気下、ヨウ化メチル9.50g(66.9mmol)のエーテル溶液(45mL)を少量加えドライヤーで加熱して反応の進行を確認後、残りの溶液を、緩やかにエーテルが還流するくらいのスピードで45分かけて滴下し、グリニャール試薬を調製した。そのまま30分撹拌しながら室温まで冷却し、続いて10.0gの化合物5a(51.5mmol)のエーテル溶液(10mL)を20分かけてグリニャール試薬に滴下し、さらに室温で1時間撹拌した。続いて、得られた反応液を冷却した1mol/Lの塩酸水溶液中(80mL)に注いで沈殿物を溶かした後、得られた液のエーテル抽出を行った。エーテル層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色の油状物質10.64を得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 36cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1~10:1)で精製し、無色油状の化合物5bを10.28g(48.9mmol)得た。
(ii)化合物5cの合成
8.41gの化合物5b(E/Z≒3:2)(40.0mmol)をジクロロメタン(160mL)に溶かし、0℃に冷却し、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)(70%)11.83g(48.0mmol)を3時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1時間撹拌した。攪拌後の反応液に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(30mL)を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(200mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色油状物質13.23gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 35cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~3:1)で精製し、無色油状の化合物5cを4.47g(19.7mmol)得た。
8.41gの化合物5b(E/Z≒3:2)(40.0mmol)をジクロロメタン(160mL)に溶かし、0℃に冷却し、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)(70%)11.83g(48.0mmol)を3時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1時間撹拌した。攪拌後の反応液に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(30mL)を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(200mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色油状物質13.23gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 35cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~3:1)で精製し、無色油状の化合物5cを4.47g(19.7mmol)得た。
(iii)式1-5の化合物の合成
2.05gの化合物5c(9.06mmol)をエーテル(35mL)に溶かし、氷冷下、過ヨウ素酸二水和物(HIO4・2H2O)2.31g(10.1mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(20mL)溶液を40分かけて滴下し(滴下に伴い無色の沈殿物が生成)、0℃で1時間撹拌した。攪拌後の反応液に水を加え、有機層を分離し、水層からはエーテル(100~200mL)抽出を行った。分離した有機層とエーテル抽出で得た有機層とを合わせて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色油状物質1.64gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 24cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~4:1)で精製し、無色油状の式1-5の化合物を0.71g(3.9mmol)得た。これはE体とZ体との混合物であった(4E/4Z=約10:9)。
2.05gの化合物5c(9.06mmol)をエーテル(35mL)に溶かし、氷冷下、過ヨウ素酸二水和物(HIO4・2H2O)2.31g(10.1mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(20mL)溶液を40分かけて滴下し(滴下に伴い無色の沈殿物が生成)、0℃で1時間撹拌した。攪拌後の反応液に水を加え、有機層を分離し、水層からはエーテル(100~200mL)抽出を行った。分離した有機層とエーテル抽出で得た有機層とを合わせて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色油状物質1.64gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 24cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1~4:1)で精製し、無色油状の式1-5の化合物を0.71g(3.9mmol)得た。これはE体とZ体との混合物であった(4E/4Z=約10:9)。
得られた式1-5の化合物の物性値は以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:1.06(s)/1.07(s)(6H,C8-CH3,9-H3),1.37(m,2H,7-H2),1.41(br.s,E-C4-CH3)/1.49(d,J=0.8Hz,Z-C4-CH3)(3H),1.93~1.99(m,2H,2-H2),2.0~2.1(m,2H,6-H2),2.03(t,J=6.8Hz,E-3-H2)/2.15(t,J=7.6Hz,Z-3-H2)(2H),5.06(br.t,J=7.0Hz,E-5-H)/5.12(br.t,J=7.2Hz,Z-5-H)(1H),9.31(t,J=1.4Hz,Z-CHO)/9.32(t,J=1.6Hz,E-CHO)(1H)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:15.88(E-C4-CH3),23.07(Z-C6),23.09(Z-C4-CH3),23.21(E-C6),24.28(Z-C3),29.37/29.40(C8-CH3,C9),31.92(E-C3),42.06(Z-C2),42.10(E-C2),43.81(E-C7),44.09(Z-C7),70.00(Z-C8),70.05(E-C8),125.86(E-C5),127.08(Z-C5),133.00(Z-C4),133.12(E-C4),200.71(Z-C1),200.82(E-C1)
IR(neat)cm-1:3700~3100(br),2970,2930,2860,1720,1448,1378,1200,1150,1122
得られた式1-5の化合物(異性体混合物)の香りは、スズラン様、酸臭、クリーミー、フローラル、ウォータリーな香りを感じさせ、また、冷感や若干の辛さのような刺激感を感じさせる香気であった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:1.06(s)/1.07(s)(6H,C8-CH3,9-H3),1.37(m,2H,7-H2),1.41(br.s,E-C4-CH3)/1.49(d,J=0.8Hz,Z-C4-CH3)(3H),1.93~1.99(m,2H,2-H2),2.0~2.1(m,2H,6-H2),2.03(t,J=6.8Hz,E-3-H2)/2.15(t,J=7.6Hz,Z-3-H2)(2H),5.06(br.t,J=7.0Hz,E-5-H)/5.12(br.t,J=7.2Hz,Z-5-H)(1H),9.31(t,J=1.4Hz,Z-CHO)/9.32(t,J=1.6Hz,E-CHO)(1H)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:15.88(E-C4-CH3),23.07(Z-C6),23.09(Z-C4-CH3),23.21(E-C6),24.28(Z-C3),29.37/29.40(C8-CH3,C9),31.92(E-C3),42.06(Z-C2),42.10(E-C2),43.81(E-C7),44.09(Z-C7),70.00(Z-C8),70.05(E-C8),125.86(E-C5),127.08(Z-C5),133.00(Z-C4),133.12(E-C4),200.71(Z-C1),200.82(E-C1)
IR(neat)cm-1:3700~3100(br),2970,2930,2860,1720,1448,1378,1200,1150,1122
得られた式1-5の化合物(異性体混合物)の香りは、スズラン様、酸臭、クリーミー、フローラル、ウォータリーな香りを感じさせ、また、冷感や若干の辛さのような刺激感を感じさせる香気であった。
(6)式1-6の化合物(8-ヒドロキシ-4,8,9-トリメチル-4-デセナール)の合成
(i)化合物6bの合成
300mL四つ口フラスコに、マグネシウム1.63g(67.1mmol)を加え、エーテル30mLおよび少量のヨウ素、ジブロモエタンを加えた。窒素雰囲気下、ヨウ化イソプロピル(i-PrI)11.72g(68.95mmol)のエーテル溶液(45mL)を少量加えドライヤーで加熱して反応の進行を確認後、残りのi-PrIのエーテル溶液を、緩やかにエーテルが還流するくらいのスピードで45分かけて滴下し、グリニャール試薬を調製した。そのまま30分撹拌しながら室温まで冷却し、続いて10.1gの化合物6a(52.0mmol)のエーテル溶液(10mL)を40分かけてグリニャール試薬に滴下し、さらに室温まで冷却しながら1時間撹拌した。得られた反応液を冷却した1mol/L塩酸水溶液中(70mL)に注いで沈殿物を溶かした後、得られた液のエーテル抽出(200mL)を行った。エーテル層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色の油状物質10.81gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 28cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、微黄色油状の化合物6bを5.54g(23.2mmol)得た。
300mL四つ口フラスコに、マグネシウム1.63g(67.1mmol)を加え、エーテル30mLおよび少量のヨウ素、ジブロモエタンを加えた。窒素雰囲気下、ヨウ化イソプロピル(i-PrI)11.72g(68.95mmol)のエーテル溶液(45mL)を少量加えドライヤーで加熱して反応の進行を確認後、残りのi-PrIのエーテル溶液を、緩やかにエーテルが還流するくらいのスピードで45分かけて滴下し、グリニャール試薬を調製した。そのまま30分撹拌しながら室温まで冷却し、続いて10.1gの化合物6a(52.0mmol)のエーテル溶液(10mL)を40分かけてグリニャール試薬に滴下し、さらに室温まで冷却しながら1時間撹拌した。得られた反応液を冷却した1mol/L塩酸水溶液中(70mL)に注いで沈殿物を溶かした後、得られた液のエーテル抽出(200mL)を行った。エーテル層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色の油状物質10.81gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 28cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、微黄色油状の化合物6bを5.54g(23.2mmol)得た。
(ii)化合物6cの合成
5.43gの化合物6b(E/Z≒2:1)(22.8mmol)をジクロロメタン(100mL)に溶かし、0℃に冷却し、冷却した溶液にメタクロロ過安息香酸(mCPBA)(70%)6.74g(27.3mmol)を2時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1時間撹拌した。続いて、攪拌後の反応液に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(100mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質6.07gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 27cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、無色油状の化合物6cを2.46g(9.67mmol)得た。
5.43gの化合物6b(E/Z≒2:1)(22.8mmol)をジクロロメタン(100mL)に溶かし、0℃に冷却し、冷却した溶液にメタクロロ過安息香酸(mCPBA)(70%)6.74g(27.3mmol)を2時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1時間撹拌した。続いて、攪拌後の反応液に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(100mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色の油状物質6.07gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 27cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、無色油状の化合物6cを2.46g(9.67mmol)得た。
(iii)式1-6の化合物の合成
2.42gの化合物6c(9.51mmol)をエーテル(40mL)に溶かし、氷冷下、過ヨウ素酸二水和物(HIO4・2H2O)2.80g(10.1mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(24mL)溶液を1時間かけて滴下し(滴下に伴い無色の沈殿物が生成)、0℃で1時間撹拌した。次いで、得られた反応液に氷水を加え、有機層を分離し、水層からはエーテル(100mL)抽出を行った。分離した有機層とエーテル抽出で得た有機層とを合わせて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色油状物質2.24gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 32.5cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、微黄色油状の式1-6の化合物0.67g(3.2mmol)を得た。これはE体とZ体との混合物であった(4E/4Z=約5:4)。
2.42gの化合物6c(9.51mmol)をエーテル(40mL)に溶かし、氷冷下、過ヨウ素酸二水和物(HIO4・2H2O)2.80g(10.1mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(24mL)溶液を1時間かけて滴下し(滴下に伴い無色の沈殿物が生成)、0℃で1時間撹拌した。次いで、得られた反応液に氷水を加え、有機層を分離し、水層からはエーテル(100mL)抽出を行った。分離した有機層とエーテル抽出で得た有機層とを合わせて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、微黄色油状物質2.24gを得た。これをシリカゲルカラム(33mm i.d. x 32.5cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、微黄色油状の式1-6の化合物0.67g(3.2mmol)を得た。これはE体とZ体との混合物であった(4E/4Z=約5:4)。
得られた式1-6の化合物の物性値は以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:0.80(d,J=6.8Hz)/0.80(d,J=6.8Hz)/0.87(d,J=6.8Hz)/0.87(d,J=6.8Hz)(6H,C9-CH3,10-H3),0.93(s,E-C8-CH3)/0.94(s,Z-C8-CH3)(3H),1.3~1.4(m,2H,7-H2),1.43(br.s,E-C4-CH3)/1.50(d,J=1.2HzZ-C4-CH3)(3H),1.5~1.7(m,1H,9-H),1.9~2.05(m,2H,2-H2),1.95~2.1(m,2H,6-H2),2.04(br.t,J=7.0Hz,E-3-H2)/2.16(br.t,J=7.0Hz,Z-3-H2)(2H),5.07(qt,J=1.2,7.2Hz,E-5-H)/5.13(br.t,J=7.2Hz,Z-5-H)(1H),9.31(t,J=1.6Hz,Z-CHO)/9.32(t,J=1.6Hz,E-CHO)(1H)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:15.92(E-C4-CH3),17.11/17.67(C9-CH3,C10),22.24(Z-C6),22.38(E-C6),23.02(Z-C4-CH3),23.10(C8-CH3),24.30(Z-C3),31.94(E-C3),37.18(E-C9),37.26(Z-C9),39.74(E-C7),40.00(Z-C7),42.08(E-C2),42.14(Z-C2),73.95(C8),126.00(E-C5),127.23(Z-C5),133.01(Z-C4),133.16(E-C4),200.53/200.66(C1)
IR(neat)cm-1:=3700~3130(br),2965,2939,2878,1722,1450,1382,1090
得られた式1-6の化合物(異性体混合物)の香気は、スズラン様、パウダー様、若干の酸臭、フローラル、リリアール(3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール)様、キュウリ様、アルコール様、ウッディ、グリーン、オゾン様の香りを含み、みずみずしさ、冷感、刺激感(辛さを想起させる)を感じさせる香気であった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:0.80(d,J=6.8Hz)/0.80(d,J=6.8Hz)/0.87(d,J=6.8Hz)/0.87(d,J=6.8Hz)(6H,C9-CH3,10-H3),0.93(s,E-C8-CH3)/0.94(s,Z-C8-CH3)(3H),1.3~1.4(m,2H,7-H2),1.43(br.s,E-C4-CH3)/1.50(d,J=1.2HzZ-C4-CH3)(3H),1.5~1.7(m,1H,9-H),1.9~2.05(m,2H,2-H2),1.95~2.1(m,2H,6-H2),2.04(br.t,J=7.0Hz,E-3-H2)/2.16(br.t,J=7.0Hz,Z-3-H2)(2H),5.07(qt,J=1.2,7.2Hz,E-5-H)/5.13(br.t,J=7.2Hz,Z-5-H)(1H),9.31(t,J=1.6Hz,Z-CHO)/9.32(t,J=1.6Hz,E-CHO)(1H)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:15.92(E-C4-CH3),17.11/17.67(C9-CH3,C10),22.24(Z-C6),22.38(E-C6),23.02(Z-C4-CH3),23.10(C8-CH3),24.30(Z-C3),31.94(E-C3),37.18(E-C9),37.26(Z-C9),39.74(E-C7),40.00(Z-C7),42.08(E-C2),42.14(Z-C2),73.95(C8),126.00(E-C5),127.23(Z-C5),133.01(Z-C4),133.16(E-C4),200.53/200.66(C1)
IR(neat)cm-1:=3700~3130(br),2965,2939,2878,1722,1450,1382,1090
得られた式1-6の化合物(異性体混合物)の香気は、スズラン様、パウダー様、若干の酸臭、フローラル、リリアール(3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール)様、キュウリ様、アルコール様、ウッディ、グリーン、オゾン様の香りを含み、みずみずしさ、冷感、刺激感(辛さを想起させる)を感じさせる香気であった。
(7)式1-7の化合物(8-シクロプロピル-8-ヒドロキシ-4-メチル-4-ノネナール)の合成
(i)化合物7bの合成
300mL四つ口フラスコに、マグネシウム1.63g(67.1mmol)を加え、エーテル30mLおよび少量のヨウ素、ジブロモエタンを加えた。そこに、窒素雰囲気下、ブロモシクロプロパン8.09g(66.9mmol)のエーテル溶液(45mL)を少量加えドライヤーで加熱して反応の進行を確認後、残りのブロモシクロプロパンのエーテル溶液を、緩やかにエーテルが還流するくらいのスピードで45分かけて滴下し、グリニャール試薬を調製した。そのまま30分撹拌しながら室温まで冷却し、続いて10.00gの化合物7a(51.5mmol)のエーテル溶液(10mL)を40分かけてグリニャール試薬に滴下し、さらに室温まで冷却しながら30分撹拌した。得られた反応液を冷却した2mol/L塩酸水溶液中に注いで沈殿物を溶かした後、得られた液のエーテル抽出(150mL)を行った。エーテル層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、黄色の油状物質11.66gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 32cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、微黄色油状の化合物7bを8.31g(35.2mmol)得た。
300mL四つ口フラスコに、マグネシウム1.63g(67.1mmol)を加え、エーテル30mLおよび少量のヨウ素、ジブロモエタンを加えた。そこに、窒素雰囲気下、ブロモシクロプロパン8.09g(66.9mmol)のエーテル溶液(45mL)を少量加えドライヤーで加熱して反応の進行を確認後、残りのブロモシクロプロパンのエーテル溶液を、緩やかにエーテルが還流するくらいのスピードで45分かけて滴下し、グリニャール試薬を調製した。そのまま30分撹拌しながら室温まで冷却し、続いて10.00gの化合物7a(51.5mmol)のエーテル溶液(10mL)を40分かけてグリニャール試薬に滴下し、さらに室温まで冷却しながら30分撹拌した。得られた反応液を冷却した2mol/L塩酸水溶液中に注いで沈殿物を溶かした後、得られた液のエーテル抽出(150mL)を行った。エーテル層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、黄色の油状物質11.66gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 32cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、微黄色油状の化合物7bを8.31g(35.2mmol)得た。
(ii)化合物7cの合成
8.29gの化合物7b(E/Z≒5:3)(35.1mmol)をジクロロメタン(150mL)に溶かし、0℃に冷却し、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)(65%)11.17g(42.1mmol)を2.5時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1時間撹拌した。攪拌後の反応液に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(150mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色油状物質9.90gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 41cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、無色油状の化合物7cを4.39g(17.4mmol)得た。
8.29gの化合物7b(E/Z≒5:3)(35.1mmol)をジクロロメタン(150mL)に溶かし、0℃に冷却し、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)(65%)11.17g(42.1mmol)を2.5時間かけて少しずつ加え、さらに0℃で1時間撹拌した。攪拌後の反応液に飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて過剰の酸化剤を分解し、エーテル(150mL)を加えた後、有機層を分離した。有機層を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、無色油状物質9.90gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 41cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、無色油状の化合物7cを4.39g(17.4mmol)得た。
(iii)式1-7の化合物の合成
4.32gの化合物7c(17.1mmol)をエーテル(74mL)に溶かし、氷冷下、過ヨウ素酸二水和物(HIO4・2H2O)4.52g(19.8mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(40mL)溶液を1時間かけて滴下し、0℃で1時間撹拌した。攪拌後の反応液に氷水を加え、有機層を分離し、水層からはエーテル(200mL)抽出を行った。分離した有機層とエーテル抽出で得た有機層とを合わせて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、オフホワイトの油状物質4.02gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 23cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、微黄色油状の式1-7の化合物1.24 g (5.90 mmol)を得た。これはE体とZ体との混合物であった(4E/4Z=約11:10)。
4.32gの化合物7c(17.1mmol)をエーテル(74mL)に溶かし、氷冷下、過ヨウ素酸二水和物(HIO4・2H2O)4.52g(19.8mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(40mL)溶液を1時間かけて滴下し、0℃で1時間撹拌した。攪拌後の反応液に氷水を加え、有機層を分離し、水層からはエーテル(200mL)抽出を行った。分離した有機層とエーテル抽出で得た有機層とを合わせて、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、オフホワイトの油状物質4.02gを得た。これをシリカゲルカラム(48mm i.d. x 23cm L,n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、微黄色油状の式1-7の化合物1.24 g (5.90 mmol)を得た。これはE体とZ体との混合物であった(4E/4Z=約11:10)。
得られた式1-7の化合物の物性値は以下の通りであった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:0.21~0.25(m,2H)/0.29~0.35(m,1H)/0.39~0.47(m,1H)(2xcyclopropyl-CH2),0.62~0.70(m,1H,cyclopropyl-CH),1.02(s,E-9-H3)/1.03(s,Z-9-H3)(3H),1.44(br.s,E-C4-CH3)/1.50(br.s,Z-C4-CH3)(3H),1.4~1.55(m,2H,7-H2),1.9~2.0(m,2H,2-H2),2.04(br.t,J=7.0Hz,E-3-H2)/2.15(br.t,J=6.6Hz,Z-3-H2)(2H),2.05~2.2(m,2H,6-H2),5.09(qt,J=1.2,7.2Hz,E-5-H)/5.16(br.t,J=7.2Hz,Z-5-H)(1H),9.31(t,J=1.6Hz,Z-CHO)/9.32(t,J=1.6Hz,E-CHO)(1H)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:0.38/0.75(2xcyclopropyl-CH2),15.92(E-C4-CH3),21.24/21.31cyclopropyl-CH),22.82(Z-C6),22.97(E-C6),23.11(Z-C4-CH3),24.29(Z-C3),26.75(Z-C9),26.79(E-C9),31.93(E-C3),42.07(E-C2),42.14(Z-C2),43.37(E-C7),43.63(Z-C7),70.03/70.06(C8),126.02(E-C5),127.21(Z-C5),133.02(Z-C4),133.15(E-C4),200.74/200.88(C1)
IR(neat)cm-1:3700~3140(br),3000,2970,2925,2855,1720,1450,1385,1374,1110,1050,1020
得られた式1-7の化合物(異性体混合物)の香気は、フローラル、若干の酸臭、ナルシンス(Narcinth,ジメチルベンジルカルビノール)様のグリーンなリナロール様、ロザリーナ(ラベンダーティーツリーとも呼ばれる)様、スズラン様、グリーン、ウッディ、アルデヒド様の香りを含み、爽やかな残香を感じさせるものであった。
1H-NMR(400MHz,C6D6)ppm:0.21~0.25(m,2H)/0.29~0.35(m,1H)/0.39~0.47(m,1H)(2xcyclopropyl-CH2),0.62~0.70(m,1H,cyclopropyl-CH),1.02(s,E-9-H3)/1.03(s,Z-9-H3)(3H),1.44(br.s,E-C4-CH3)/1.50(br.s,Z-C4-CH3)(3H),1.4~1.55(m,2H,7-H2),1.9~2.0(m,2H,2-H2),2.04(br.t,J=7.0Hz,E-3-H2)/2.15(br.t,J=6.6Hz,Z-3-H2)(2H),2.05~2.2(m,2H,6-H2),5.09(qt,J=1.2,7.2Hz,E-5-H)/5.16(br.t,J=7.2Hz,Z-5-H)(1H),9.31(t,J=1.6Hz,Z-CHO)/9.32(t,J=1.6Hz,E-CHO)(1H)
13C-NMR(100MHz,C6D6)ppm:0.38/0.75(2xcyclopropyl-CH2),15.92(E-C4-CH3),21.24/21.31cyclopropyl-CH),22.82(Z-C6),22.97(E-C6),23.11(Z-C4-CH3),24.29(Z-C3),26.75(Z-C9),26.79(E-C9),31.93(E-C3),42.07(E-C2),42.14(Z-C2),43.37(E-C7),43.63(Z-C7),70.03/70.06(C8),126.02(E-C5),127.21(Z-C5),133.02(Z-C4),133.15(E-C4),200.74/200.88(C1)
IR(neat)cm-1:3700~3140(br),3000,2970,2925,2855,1720,1450,1385,1374,1110,1050,1020
得られた式1-7の化合物(異性体混合物)の香気は、フローラル、若干の酸臭、ナルシンス(Narcinth,ジメチルベンジルカルビノール)様のグリーンなリナロール様、ロザリーナ(ラベンダーティーツリーとも呼ばれる)様、スズラン様、グリーン、ウッディ、アルデヒド様の香りを含み、爽やかな残香を感じさせるものであった。
[実施例2]E体とZ体との分離および各香気
実施例1(1)~(3)、(5)~(7)で得られた化合物はE体とZ体との混合物であったので、これらの混合物について、下記の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)条件でE体およびZ体の分離を行った;
カラム:Inertsil diol(250mmL.×4.6mmI.D.,5μm)
移動相:ヘキサン/エタノール=95/5
流量:1mL/min
検出:UV205nm
その結果と得られた各異性体の香気は以下の通りであった。
実施例1(1)~(3)、(5)~(7)で得られた化合物はE体とZ体との混合物であったので、これらの混合物について、下記の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)条件でE体およびZ体の分離を行った;
カラム:Inertsil diol(250mmL.×4.6mmI.D.,5μm)
移動相:ヘキサン/エタノール=95/5
流量:1mL/min
検出:UV205nm
その結果と得られた各異性体の香気は以下の通りであった。
(式1-1の化合物)
実施例1(1)で得た式1-1の8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,9-デカジエナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて(4E)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,9-デカジエナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,9-デカジエナール(4Z体ともいう)とを分離した。
実施例1(1)で得た式1-1の8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,9-デカジエナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて(4E)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,9-デカジエナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,9-デカジエナール(4Z体ともいう)とを分離した。
4E体および4Z体は、実施例1(1)で得た4E体と4Z体との混合物と同様、スズラン様、ローズ様、グリーン、フルーティなどを含む香りを感じさせるものであった。したがって当該4E体および4Z体はそれぞれ単独でも香味付与剤として使用し得る。4E体はそれのみでもスズランの生花を感じさせる香りであり、かつ4Z体よりも香りが強く、香味付与剤として特に有用と考えられた。
(式1-2の化合物)
実施例1(2)で得た式1-2の10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E,8E)-10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナール(4E,8E体ともいう)、(4E,8Z)-10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナール(4E,8Z体ともいう)、(4Z,8E)-10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナール(4Z,8E体ともいう)、(4Z,8Z)-10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナール(4Z,8Z体ともいう)の各異性体を分離した。
実施例1(2)で得た式1-2の10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E,8E)-10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナール(4E,8E体ともいう)、(4E,8Z)-10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナール(4E,8Z体ともいう)、(4Z,8E)-10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナール(4Z,8E体ともいう)、(4Z,8Z)-10-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4,8-デカジエナール(4Z,8Z体ともいう)の各異性体を分離した。
これら4種の異性体はすべて、実施例1(2)で得た異性体混合物と同様、スズラン様、フローラル、みずみずしさ、フルーティ、甘さなどを含む香りを感じさせるものであった。したがってこれら4種の異性体はそれぞれ単独でも香味付与剤として使用し得る。4種の異性体のうち、「4E,8E体」は、この化合物だけでスズラン生花を感じさせる香りを呈していた。一方で、その他3種の異性体(すなわち「4E,8Z体」、「4Z,8E体」、および「4Z,8Z体」)はスズラン生花の香りを呈しつつもウリ様の香りも含み、「4E,8E体」と同様の香味またはさらに別の香りを含む香味を各種物品に付与できると考えられた。また、「4E,8E体」は上記その他3種の異性体より香りが強く、香味付与剤として特に有用であると考えられた。
(式1-3の化合物)
実施例1(3)で得た式1-3の8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-デセナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-デセナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-デセナール(4Z体ともいう)とを分離した。
実施例1(3)で得た式1-3の8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-デセナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-デセナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-デセナール(4Z体ともいう)とを分離した。
4E体および4Z体は、実施例1(3)で得た4E体と4Z体との混合物と同様、スズラン様、フローラル、グリーン、フルーティ、甘さ、パウダー様などを含む香りを感じさせるものであった。したがって当該4E体および4Z体はそれぞれ単独でも香味付与剤として使用し得る。4E体は4Z体に比べて香りが強く、よりスズラン生花に近い香りを感じさせるものであり、4E体は香味付与剤として特に有用と考えられた。
(式1-5の化合物)
実施例1(5)で得た式1-5の8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-ノネナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-ノネナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-ノネナール(4Z体ともいう)とを分離した。
実施例1(5)で得た式1-5の8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-ノネナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-ノネナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-ヒドロキシ-4,8-ジメチル-4-ノネナール(4Z体ともいう)とを分離した。
4E体および4Z体は、実施例1(5)で得た4E体と4Z体との混合物と同様、スズラン様、フローラル、酸臭、クリーミー、ウォータリーなどを含む香りを感じさせるものであった。したがって当該4E体および4Z体はそれぞれ単独でも香味付与剤として使用し得る。4E体は4Z体に比べて、よりスズラン生花に近い香気であり、かつ香りも強かった。4E体は香味付与剤として特に有用であると考えられた。
(式1-6の化合物)
実施例1(6)で得た式1-6の8-ヒドロキシ-4,8,9-トリメチル-4-デセナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E)-8-ヒドロキシ-4,8,9-トリメチル-4-デセナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-ヒドロキシ-4,8,9-トリメチル-4-デセナール(4Z体ともいう)とを分離した。
実施例1(6)で得た式1-6の8-ヒドロキシ-4,8,9-トリメチル-4-デセナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E)-8-ヒドロキシ-4,8,9-トリメチル-4-デセナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-ヒドロキシ-4,8,9-トリメチル-4-デセナール(4Z体ともいう)とを分離した。
4E体および4Z体は、実施例1(6)で得た4E体と4Z体との混合物と同様、スズラン様、パウダー様、酸臭、フローラル、キュウリ様、アルコール様、ウッディ、グリーン、オゾン様などを含む香りを感じさせるものであった。したがって当該4E体および4Z体はそれぞれ単独でも香味付与剤として使用し得る。4E体は4Z体に比べて、よりスズラン生花に近い香気であり、かつ香りも強かった。4E体は香味付与剤として特に有用であると考えられた。
(式1-7の化合物)
実施例1(7)で得た式1-7の8-シクロプロピル-8-ヒドロキシ-4-メチル-4-ノネナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E)-8-シクロプロピル-8-ヒドロキシ-4-メチル-4-ノネナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-シクロプロピル-8-ヒドロキシ-4-メチル-4-ノネナール(4Z体ともいう)とを分離した。
実施例1(7)で得た式1-7の8-シクロプロピル-8-ヒドロキシ-4-メチル-4-ノネナールの異性体混合物から、上記HPLC条件にて、(4E)-8-シクロプロピル-8-ヒドロキシ-4-メチル-4-ノネナール(4E体ともいう)と(4Z)-8-シクロプロピル-8-ヒドロキシ-4-メチル-4-ノネナール(4Z体ともいう)とを分離した。
4E体および4Z体は、実施例1(7)で得た4E体と4Z体との混合物と同様、スズラン様、フローラル、酸臭、グリーン、ロザリーナ様、ウッディ、アルデヒド様などを含む香りを感じさせるものであった。したがって当該4E体および4Z体はそれぞれ単独でも香味付与剤として使用し得る。4E体は4Z体に比べて、よりスズラン生花に近い香気であり、かつ香りも強かった。4E体は香味付与剤として特に有用であると考えられた。
[実施例3]式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の香気評価
下記表1の通り、スズラン様基本調合香料組成物を調製した。
下記表1の通り、スズラン様基本調合香料組成物を調製した。
そして、実施例1(1)~(7)で得られた式1-1~1-7のヒドロキシアルデヒド化合物を、本発明の香味付与剤として上記スズラン様基本調合香料組成物に下記表2の通りに配合して本発明の香料組成物を調製し、その効果を官能評価で確認した。官能評価では、本発明の香料組成物を匂い紙に含浸させて、14名の経験年数10年以上のよく訓練された調香師に香りを評価させた。下記の評価基準に基づいて点数付けさせるとともに、香気の質についてコメントさせた。
(評価基準)
4点:スズラン生花様のさわやかな香りが大きく増強された
3点:スズラン生花様のさわやかな香りが増強された
2点:スズラン生花様のさわやかな香りがやや増強された
1点:スズラン様の何かしらの香りがやや増強された
0点:スズランとは異質な香りがする
(評価基準)
4点:スズラン生花様のさわやかな香りが大きく増強された
3点:スズラン生花様のさわやかな香りが増強された
2点:スズラン生花様のさわやかな香りがやや増強された
1点:スズラン様の何かしらの香りがやや増強された
0点:スズランとは異質な香りがする
このように、式1-1~1-7のヒドロキシアルデヒド化合物はいずれも、香味付与剤としてスズラン様香気に優れた特徴ある香りを付与でき、生花を思わせる質の高い香気を創造できる優れた効果を奏するものであることが確認された。
[実施例4]幾何異性体の香気評価
下記表3に記載の本発明のヒドロキシアルデヒド化合物のそれぞれを、実施例3で調製したスズラン様基本調合香料組成物に1%の濃度(対スズラン基本調合香料組成物全量)となるように配合して本発明のスズラン様香料組成物を調製し、官能評価を行った。官能評価では、本発明の香料組成物を匂い紙に含浸させて、7名の経験年数10年以上のよく訓練された調香師に、スズラン様香気の質について実施例3と同様に点数付けさせた。官能評価の平均的な結果を下記表3に示す。
下記表3に記載の本発明のヒドロキシアルデヒド化合物のそれぞれを、実施例3で調製したスズラン様基本調合香料組成物に1%の濃度(対スズラン基本調合香料組成物全量)となるように配合して本発明のスズラン様香料組成物を調製し、官能評価を行った。官能評価では、本発明の香料組成物を匂い紙に含浸させて、7名の経験年数10年以上のよく訓練された調香師に、スズラン様香気の質について実施例3と同様に点数付けさせた。官能評価の平均的な結果を下記表3に示す。
表3に示すように、式1-1の化合物および式1-2の化合物はE体とZ体との混合物でも優れた香気を付与する効果を奏する(実施例3も参照)が、式1-1の4E体、式1-2の4E,8E体が特に優れた効果を奏することが確認された。
[実施例5]香粧品への配合例1
実施例1(1)~(7)で得られた式1-1~1-7の各ヒドロキシアルデヒド化合物を、本発明の香味付与剤として、スズラン調香気の市販のハンドソープに50ppm、0.1%、1%の濃度(対ハンドソープ全量)となるように配合して本発明のハンドソープを調製して、市販の空のプッシュ式ハンドソープボトルに詰めた。そして、経験年数10年以上のよく訓練された調香師5名に、密閉した実験室内にて、ハンドソープボトルの1プッシュ分(約1mL)を用いて、ぬるま湯(約35℃)で手洗いをさせ、実験室内に漂う香りと手洗い後の手の香りについて官能評価を行わせた。官能評価では、本発明の香味付与剤を配合していない上記市販のハンドソープと比べたスズラン香の天然感、実験室空間への香り拡散性、および肌への残香性の各観点について、非常に高まった=4点、高まった=3点、やや高まった=2点、変化なし=1点、劣化した=0点という基準で点数付けさせた。なお、スズラン香の天然感とは、スズラン生花を思わせるようなややグリーンを帯びたさわやかな香りが感じられることを意味するものとした。調香師5名の平均点数を表4に記載する。
実施例1(1)~(7)で得られた式1-1~1-7の各ヒドロキシアルデヒド化合物を、本発明の香味付与剤として、スズラン調香気の市販のハンドソープに50ppm、0.1%、1%の濃度(対ハンドソープ全量)となるように配合して本発明のハンドソープを調製して、市販の空のプッシュ式ハンドソープボトルに詰めた。そして、経験年数10年以上のよく訓練された調香師5名に、密閉した実験室内にて、ハンドソープボトルの1プッシュ分(約1mL)を用いて、ぬるま湯(約35℃)で手洗いをさせ、実験室内に漂う香りと手洗い後の手の香りについて官能評価を行わせた。官能評価では、本発明の香味付与剤を配合していない上記市販のハンドソープと比べたスズラン香の天然感、実験室空間への香り拡散性、および肌への残香性の各観点について、非常に高まった=4点、高まった=3点、やや高まった=2点、変化なし=1点、劣化した=0点という基準で点数付けさせた。なお、スズラン香の天然感とは、スズラン生花を思わせるようなややグリーンを帯びたさわやかな香りが感じられることを意味するものとした。調香師5名の平均点数を表4に記載する。
このように式1-1~1-7の各ヒドロキシアルデヒド化合物は、香味付与剤として使用することで、天然感という香りの質に限らず、拡散性や残香性も向上可能な優れた効果を奏するものであることが確認された。
[実施例6]香粧品への配合例2
実施例1(1)~(7)で得られた式1-1~1-7の各ヒドロキシアルデヒド化合物を、本発明の香味付与剤として、市販のレモン調の香水、マンゴー調の香水、オゾン系男性用香水に、香水全量に対して300ppmの濃度となるように配合して本発明の香粧品を得た。そして、本発明の香粧品について、経験年数10年以上のよく訓練された調香師7名による官能評価を行った。官能評価では、本発明の香味付与剤を配合していない上記市販の各香水を対照品として、本発明の香味付与剤を配合したことによる香気の変化について、レモン調香水については果皮感および果汁感、マンゴー調香水については果肉感とボリューム感、オゾン系香水についてはオゾン感とボリューム感について、対照品と比べて非常に高まった=4点、高まった=3点、やや高まった=2点、変化なし=1点、劣化した=0点という基準で点数付けさせた。ここで、ボリューム感とはまとまりがあり強く感じられる香りであり香りが長く感じられることを意味するものとする。7名のパネラーの平均的結果を下記表5に示す。
実施例1(1)~(7)で得られた式1-1~1-7の各ヒドロキシアルデヒド化合物を、本発明の香味付与剤として、市販のレモン調の香水、マンゴー調の香水、オゾン系男性用香水に、香水全量に対して300ppmの濃度となるように配合して本発明の香粧品を得た。そして、本発明の香粧品について、経験年数10年以上のよく訓練された調香師7名による官能評価を行った。官能評価では、本発明の香味付与剤を配合していない上記市販の各香水を対照品として、本発明の香味付与剤を配合したことによる香気の変化について、レモン調香水については果皮感および果汁感、マンゴー調香水については果肉感とボリューム感、オゾン系香水についてはオゾン感とボリューム感について、対照品と比べて非常に高まった=4点、高まった=3点、やや高まった=2点、変化なし=1点、劣化した=0点という基準で点数付けさせた。ここで、ボリューム感とはまとまりがあり強く感じられる香りであり香りが長く感じられることを意味するものとする。7名のパネラーの平均的結果を下記表5に示す。
このように、式1-1~1-7のヒドロキシアルデヒド化合物は、香味付与剤として多様な香気を顕著に改善できることが確認された。
[実施例7]飲食品への配合例
実施例1(1)~(7)で得られた式1-1~1-7の各ヒドロキシアルデヒド化合物を、本発明の香味付与剤として、それぞれ市販の果汁50%のレモネードに1ppbの濃度(対レモネード全量)となるように配合して、本発明の飲料を調製した。そして、本発明の香味付与剤を添加していない上記市販のレモネードと比べた本発明の飲料の風味について、経験年数10年以上のパネラー5名にコメントさせた。その結果、パネラー5名全員が、式1-1~1-7の各ヒドロキシアルデヒド化合物はいずれも、対照品である市販のレモネードに対してレモン様の果皮感、果汁感を増強し、果実搾りたてのようなジューシーでボリュームのある香味になったとコメントした。
実施例1(1)~(7)で得られた式1-1~1-7の各ヒドロキシアルデヒド化合物を、本発明の香味付与剤として、それぞれ市販の果汁50%のレモネードに1ppbの濃度(対レモネード全量)となるように配合して、本発明の飲料を調製した。そして、本発明の香味付与剤を添加していない上記市販のレモネードと比べた本発明の飲料の風味について、経験年数10年以上のパネラー5名にコメントさせた。その結果、パネラー5名全員が、式1-1~1-7の各ヒドロキシアルデヒド化合物はいずれも、対照品である市販のレモネードに対してレモン様の果皮感、果汁感を増強し、果実搾りたてのようなジューシーでボリュームのある香味になったとコメントした。
このように本発明の香味付与剤は飲食品に対して特徴ある風味を付与することができ、飲食品用香料化合物としても有用であることが確認された。
本出願は、2020年2月21日に出願された日本特許出願番号2020-028029号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
Claims (11)
- 下記式1で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、香味付与剤。
[式中、C4位およびC8位の破線はそれぞれ独立して単結合または二重結合であることを表し、かつ、二重結合の場合はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表し、
C8位が単結合である場合は、R1はOH基であり、R2およびR3は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であるか;R2およびR3が結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成するか;R2およびR3が一緒になってC9位の炭素原子との二重結合を有するメチリデン基を形成している;のいずれかであり、
C8位が二重結合である場合は、R1は存在せず、R2は水素または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、R3はOH基またはCH2OH基である。] - 下記式1-1~1-7で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、請求項1に記載の香味付与剤。
[式中、波線はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表す。] - 前記ヒドロキシアルデヒド化合物のC4位とC5位との間が二重結合である、請求項1または2に記載の香味付与剤。
- 前記ヒドロキシアルデヒド化合物のC4位とC5位との間の二重結合においてE体をとる、請求項3に記載の香味付与剤。
- 下記式1-1-1(4E)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物および式1-2-1(4E,8E)で表されるヒドロキシアルデヒド化合物の少なくとも1種からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の香味付与剤。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の香味付与剤を含有する香料組成物。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の香味付与剤、または請求項6に記載の香料組成物を配合してなる、消費財。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の香味付与剤を香料組成物に配合することを含む、香料組成物の香味改善方法。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の香味付与剤、または請求項6に記載の香料組成物を消費財に配合することを含む、消費財の香味付与方法。
- 下記式1’で表されるヒドロキシアルデヒド化合物。
[式中、破線は単結合または二重結合であることを表し、かつ、二重結合の場合はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表し、R2’およびR3’は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~3の直鎖もしくは分岐のアルキル基であるか;R2’およびR3’が結合するC9位の炭素原子とともに三員環を形成する。(ただし、破線が単結合であり、かつR2’およびR3’が水素である場合を除く。)] - 下記式1-3~1-7で表される、請求項10に記載のヒドロキシアルデヒド化合物。
[式中、波線はシス型もしくはトランス型、またはシス型とトランス型との任意の割合の混合物であることを表す。]
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TAKAYANAGI, H. et al.,Highly stereoselective synthesis of trisubstituted γ,δ-unsaturated acid and aldehyde via ketal Claisen rearrangement,Chemistry Letters,(1995), vol.7,pp.565-566,DOI 10.1246/cl.1995.565 |
TUCKER, S. P. et al.,Identification of oxidation products of solanesol produced during air sampling for tobacco smoke by electrospray mass spectrometry and HPLC,Analyst,(2005), vol.130, no.10,pp.1414-1424,DOI 10.1039/ b505328e |
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