以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧装置について説明する。以下では、流体圧装置が、荷室4を覆う左右一対のウィング2,3を備えたトラック車1に搭載され、ウィング2,3を駆動するウィング開閉装置100である場合を説明する。
まず、図1及び図2を参照して、実施形態に係るウィング開閉装置100の全体構成について説明する。
図1に示すように、一対のウィング2,3は、それぞれ荷室4の上部に設けられる回動軸5を介して荷室4に回動自在に連結される。
左右のウィング2,3は、トラック車1に設けられる操作スイッチ(図示省略)が作業者によって操作されることにより、ウィング開閉装置100によってそれぞれ独立して上下に開閉される。左右のウィング2,3は同時に開閉されることはなく、どちらか一方のウィングの駆動中には他方のウィングは駆動されないように構成される。以下では、主に左側のウィング2の開閉について説明し、右側のウィング3の開閉については、同様の構成であるため図示及び詳細な説明を適宜省略する。
ウィング開閉装置100は、図2に示すように、電力供給によって回転する電動モータ10と、電動モータ10によって駆動されるポンプ11と、作動油を貯留するタンク12と、ポンプ11から吐出される作動流体としての作動油によって伸縮作動してウィング2を開閉する一対の流体圧アクチュエータとしての油圧シリンダ20と、一対の油圧シリンダ20に給排される作動油の流れを制御する流体圧制御装置30と、流体圧制御装置30を制御するためのコントローラ70と、を備える。
電動モータ10は、例えば、三相ブラスレスモータであり、電力供給によって駆動される。本実施形態では、電動モータ10は、一定の速度で回転する。
ポンプ11は、電動モータ10によって回転駆動され吐出通路13を通じて作動油を加圧して吐出する。ポンプ11は、例えば、ギヤポンプが用いられる。吐出通路13は、2つに分岐してそれぞれ一対の油圧シリンダ20に作動油を導く。
一対の油圧シリンダ20は、荷室4内の前後にそれぞれ設けられる(図1参照)。一対の油圧シリンダ20が同調して伸縮作動することにより、ウィング2が回動軸5を中心に回転して上下に開閉される。
ここで、一対の油圧シリンダ20は互いに同一の構成を有する。また、流体圧制御装置30において、吐出通路13の分岐部分から油圧シリンダ20までの間に設けられ油圧シリンダ20の作動を制御する構成(以下、それぞれ「制御部C1」、「制御部C2」とする。図2参照。)も互いに同一の構成を有するである。よって、以下では、一方の油圧シリンダ20及びこれの作動を制御する制御部C1についてのみ詳細に説明する。他方の油圧シリンダ20については対応する構成に同一の符号を付して説明を省略する。また、他方の制御部C2については、詳細な図示及び説明を省略する。
油圧シリンダ20は、円筒状のシリンダチューブ21と、シリンダチューブ21内に挿入されるピストンロッド22と、ピストンロッド22の端部に設けられシリンダチューブ21の内周面に沿って摺動するピストン23、を備える。
シリンダチューブ21の内部は、ピストン23によってロッド側室24とボトム側室25とに仕切られる。ロッド側室24室及びボトム側室25には、作動油が充填される。
流体圧制御装置30は、ポンプ11から油圧シリンダ20に供給される作動油の流れを制御して油圧シリンダ20の作動を制御する制御弁40と、ポンプ11から油圧シリンダ20に供給される作動油の流量を制御する比例電磁弁50と、を備える。制御弁40及び比例電磁弁50は、コントローラ70によって作動が制御される。
制御弁40は、分岐した吐出通路13に設けられる。制御弁40は、ソレノイド41a,41bの励磁によってポジションが切り換わる4ポート3ポジションの電磁切換弁である。制御弁40の一方側のポートには、ポンプ11に連通する吐出通路13とタンク12に連通する排出通路16とが接続される。切換弁の他方側のポートには、油圧シリンダ20のロッド側室24に連通するロッド側通路14と、油圧シリンダ20のボトム側室25に連通するボトム側通路15と、が接続される。
制御弁40は、各ポジションの切り換えによって、吐出通路13及び排出通路16に対するロッド側通路14及びボトム側通路15の連通と遮断を切り換える。具体的には、制御弁40は、吐出通路13とボトム側通路15とを連通すると共に排出通路16とロッド側通路14とを連通する上昇ポジション40Aと、吐出通路13とロッド側通路14とを連通すると共に排出通路16とボトム側通路15とを連通する下降ポジション40Bと、ロッド通路及びボトム側通路15の両方を排出通路16に連通する中立ポジション40Cと、を有する。制御弁40は、ソレノイド41a,41bの消磁時においては一対のリターンスプリング42a,42bによって中立ポジション40Cとなる。
ロッド側通路14には、ロッド側室24へ供給される作動油の流れのみを許容するオペレートチェック弁31が設けられる。ボトム側通路15には、ウィング2(負荷)の自重による急降下を防止するためのカウンタバランス弁35が設けられる。オペレートチェック弁31は、カウンタバランス弁35の上流側におけるロッド側通路14の作動油の圧力がパイロット圧として導かれることで開弁し、ロッド側室24から排出される作動油の流れを許容する。カウンタバランス弁35は、オペレートチェック弁31の上流側の圧力が外部パイロット圧として導かれることで開弁し、ボトム側室25から排出される作動油の流れを許容する。オペレートチェック弁31及びカウンタバランス弁35は、公知の構成を採用することができるため、より具体的な説明は省略する。
比例電磁弁50は、吐出通路13の分岐部分よりも上流側(ポンプ11側)において、吐出通路13に設けられる。比例電磁弁50は、ソレノイド51への通電量の増加に伴い、吐出通路13を遮断する遮断ポジション50Aから吐出通路13を開放する開放ポジション50Bへと切り換えられる。より具体的には、比例電磁弁50は、ソレノイド51への通電によって生じる電磁力と付勢部材であるスプリング52のばね力とが釣り合う位置に弁体(図示省略)が移動して、弁体の位置に応じた開口面積(開度)で開放ポジション50Bとなるように開弁する。比例電磁弁50は、ソレノイド51への通電量に応じて開口面積が変化することにより、通過する作動油の流量を制御する。比例電磁弁50は、ソレノイド51の消磁時においてはスプリング52の付勢力によって吐出通路13を遮断する遮断ポジション50Aとなるノーマルクローズ型である。比例電磁弁50は、ソレノイド51への通電量が大きくなるにつれて開度が増加し、開度が増加するのに伴い、比例電磁弁50を通過する作動油の圧力損失が小さくなって比例電磁弁50の前後差圧が小さくなる。
コントローラ70は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ70は、複数のマイクロコンピュータで構成されてもよい。コントローラ70は、少なくとも、各実施形態や変形例に係る制御のために必要な処理を実行可能となるようにプログラムされている。なお、コントローラ70は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態における各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
コントローラ70は、トラック車1に設けられる操作スイッチを通じて作業者により入力される操作入力に応じて、制御弁40、比例電磁弁50、及び電動モータ10の作動を制御する。
ウィング開閉装置100は、比例電磁弁50とポンプ11の間(言い換えれば比例電磁弁50の上流側)における吐出通路13から分岐してタンク12に連通するリリーフ通路17と、リリーフ通路17を開閉するリリーフ機構60と、をさらに備える。
リリーフ機構60は、2段階の作動圧(後述する設定圧及び設定差圧)によってリリーフ通路17を開放して、吐出通路13の作動油の一部をタンク12に排出する。
リリーフ機構60は、リリーフ通路17に設けられるリリーフ弁61と、比例電磁弁50の下流側の圧力をパイロット圧としてリリーフ弁61に導くパイロット通路62と、パイロット通路62から分岐してタンク12に連通するドレン通路63と、ドレン通路63に設けられパイロット通路62からタンク12への作動油の流れを許容するチェック弁64と、を有する。
パイロット通路62には、ドレン通路63が分岐する分岐点の上流側(吐出通路13に対する分岐点とドレン通路63が分岐する分岐点との間)において、通過する作動油の流れに抵抗を付与する絞り部としての絞り66が設けられる。また、ドレン通路63におけるチェック弁64の上流側(パイロット通路62に対するドレン通路63の分岐点とチェック弁64との間)には、絞り67が設けられる。絞り66,67によって、パイロット通路62とドレン通路63とにおける急激な圧力変動が抑制される。
リリーフ弁61は、弁体(図示省略)を閉弁方向に付勢する付勢部材としてのリリーフスプリング61aを有する。リリーフスプリング61aの付勢力によって、リリーフ弁61が開弁するリリーフ圧(設定差圧)が設定される。リリーフ弁61には、吐出通路13からリリーフ通路17を通じて導かれるポンプ11の吐出圧が内部パイロットとして導かれる。弁体は、ポンプ11の吐出圧によって開弁方向に付勢される。また、弁体は、パイロット通路62を通じて導かれる比例電磁弁50の下流側の圧力によって閉弁方向に付勢される。したがって、リリーフ弁61は、ポンプ11の吐出圧である比例電磁弁50の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧である前後差圧が、設定差圧を上回ると開弁する。リリーフ弁61が開弁することにより、ポンプ11から吐出される作動油の一部がリリーフ通路17からタンク12へと排出される。
チェック弁64は、弁体(図示省略)を閉弁方向に付勢するチェックスプリング65を有する。チェックスプリング65は、付勢力が可変となるように構成されており、チェックスプリング65の付勢力を調整することで、チェック弁64のクラッキング圧(設定圧)が調整される。チェック弁64は、絞り66を通じて導かれる比例電磁弁50の下流側の圧力がクラッキング圧に達すると開弁し、パイロット通路62の作動油をタンク12に排出する。
次に、ウィング開閉装置100の作動について説明する。
トラック車1が停止した状態で、作業者により起動スイッチ(図示省略)が押されると、コントローラ70は、電動モータ10に電流を供給して所定の回転速度で電動モータ10を駆動する。
作業者によってウィング2を開く操作入力があると、コントローラ70は、制御弁40の一方のソレノイド41aと比例電磁弁50のソレノイド51とにそれぞれ通電する。よって、制御弁40は、上昇ポジション40Aに切り換えられる。比例電磁弁50は、ソレノイド51への通電量に応じた開度で吐出通路13を開放する。なお、比例電磁弁50の制御については、後に詳細に説明する。
比例電磁弁50によって吐出通路13が開放され、制御弁40が上昇ポジション40Aに切り換えられると、ポンプ11から吐出される作動油は吐出通路13を通じてボトム側通路15に導かれる。ボトム側通路15に導かれた作動油は、カウンタバランス弁35を開弁して油圧シリンダ20のボトム側室25に供給される。また、ボトム側通路15に作動油が導かれると、ロッド側室24のオペレートチェック弁31が開弁し、油圧シリンダ20のロッド側室24からタンク12へ排出される作動油の流れが許容される。よって、油圧シリンダ20が伸長作動して、ウィング2が開かれる。
作業者によってウィング2を閉じる操作入力があると、コントローラ70は、制御弁40の他方のソレノイド41bと比例電磁弁50のソレノイド51にそれぞれ通電する。よって、制御弁40は、下降ポジション40Bに切り換えられ、比例電磁弁50は、ソレノイド51への通電量に応じた開度で吐出通路13を開放する。
比例電磁弁50によって吐出通路13が開放され、制御弁40が下降ポジション40Bに切り換えられると、ポンプ11から吐出される作動油は吐出通路13を通じてロッド側通路14に導かれる。ロッド側通路14に導かれた作動油は、オペレートチェック弁31を開弁して油圧シリンダ20のロッド側室24に供給される。また、ロッド側通路14に作動油が導かれると、ロッド側室24のカウンタバランス弁35が開弁し、油圧シリンダ20のボトム側室25からタンク12へ排出される作動油の流れが許容される。よって、油圧シリンダ20が収縮作動して、ウィング2が閉じられる。
次に、コントローラ70による比例電磁弁50の通電量の制御について説明する。
コントローラ70は、図3に示すように、ウィング2の開作動又は閉作動の操作入力の検知(T=0)から所定の時間T1が経過するまでの間、比例電磁弁50への通電率を初期通電量(本実施形態ではゼロ)から次第に増加させる。これにより、比例電磁弁50の開度が時間経過に伴い徐々に増加し、比例電磁弁50の開度の増加に伴って油圧シリンダ20に供給される作動油の流量も増加する。よって、操作入力の検知から所定時間T1が経過するまでは、油圧シリンダ20は、徐々に速度が増加するように伸縮作動する(加速工程)。これにより、ウィング2の開作動及び閉作動の始動が低速で行われる。
操作入力の検知から所定時間T1が経過し比例電磁弁50への通電量が所定値A1に達すると、コントローラ70は、比例電磁弁50への通電量を当該所定値A1に維持する。これにより、油圧シリンダ20は、通電量A1に応じた速度によって一定速で伸縮作動する(定速工程)。
ウィング2が全開又は全閉となる付近まで移動すると、コントローラ70は、ウィング2が全閉又は全開となるまで比例電磁弁50への通電率を時間経過に伴い次第に減少させる。これにより、比例電磁弁50の開度が徐々に減少し、比例電磁弁50の開度の低下に伴って油圧シリンダ20に供給される作動油の流量も減少する。よって、油圧シリンダ20は、徐々に速度が低下するように伸縮作動する(減速工程)。これにより、ウィング2の開作動及び閉作動の停止が低速で行われる。
なお、全開又は全閉となる付近までのウィング2の移動は、例えば、トラック車1の荷室4に取り付けられる検出センサ(図示省略)によって検出される。検出センサの検出信号がコントローラ70に入力されると、コントローラ70は減速工程を開始する。
また、開閉作動中に作業者が操作スイッチを離し、操作入力が遮断された場合においても、コントローラ70は、比例電磁弁50への通電量を時間経過に伴い次第に減少させる。これにより、全開状態と全閉状態との間である中間位置において停止する場合でも、ウィング2を減速させて停止させることができる。
このように、ウィング開閉装置100では、ウィング2の開閉作動の始動時と停止時において、油圧シリンダ20が低速で作動される。これにより、ウィング2が動き始める際及び停止する際の衝撃を低減することができる。
本実施形態では、図3に示すように、比例電磁弁50への通電量は、開閉作動の始動時には時間経過に伴って比例的(線形的)に増加し、停止時には時間経過に伴って比例的に減少する。なお、これに限らず、比例電磁弁50への通電量の増加・減少割合は、それぞれ時間経過に伴い単調変化するものであればよい。例えば、時間に対する通電量の変化割合は、指数関数的に変化する等、非線形のものでもよい。
次に、リリーフ機構60の作動について説明する。
リリーフ機構60は、吐出通路13の圧力が急激に上昇してポンプ11、油圧シリンダ20、及びウィング開閉装置100の各構成において使用されるシール部材(図示省略)等の許容圧力を超えないように制限すると共に、比例電磁弁50によって油圧シリンダ20に供給される作動油の流量が制限される際のポンプ11の吐出圧の過度の圧力上昇を抑制するものである。なお、シール部材は、ポンプ11、油圧シリンダ20、制御弁40、及び比例電磁弁50等で使用され、各構成において作動油の漏れを防止するためのものである。
まず、比例電磁弁50が流量制御する際のポンプ11の吐出圧の上昇を抑制する機能について説明する。
比例電磁弁50では、開度が小さいほど通過する作動油に生じる圧力損失が大きく、ポンプ11が一定速で回転する場合、比例電磁弁50の開度が小さいほどポンプ11の吐出圧が大きくなる。つまり、比例電磁弁50が遮断ポジション50Aにある状態(開度がゼロ)や、ウィング2の開閉作動の始動時・停止時など比例電磁弁50の開度が比較的低く制御された状態では、ポンプ11の吐出圧が上昇し、比例電磁弁50の前後差圧が大きくなる。
比例電磁弁50の前後差圧が設定差圧(リリーフ弁61のリリーフ圧)よりも大きくなると、リリーフ弁61が開弁する。これにより、吐出通路13の作動油の一部がリリーフ通路17を通じてタンク12へと排出され、比例電磁弁50の前後差圧は設定差圧以下に保たれる。つまり、ポンプ11の吐出圧は、設定差圧を生じさせるような所定の圧力以下に保たれる。
比例電磁弁50の開度が増加すると、比例電磁弁50で生じる圧力損失が小さくなり、比例電磁弁50の前後差圧が小さくなる。比例電磁弁50の前後差圧がリリーフ弁61の設定差圧を下回ると、リリーフ弁61は閉弁する。
このように、ウィング開閉装置100では、比例電磁弁50による流量制御において、設定差圧を生じさせる圧力以上にポンプ11の吐出圧が上昇することを抑制することができる。
次に、吐出通路13の圧力がポンプ11等の許容圧力を超えないように制限する機能について説明する。
ウィング開閉装置100では、ピストンロッド22が収縮方向のストローク端に達して油圧シリンダ20が最収縮状態となると、ウィング2が全閉状態となる。また、ピストンロッド22が伸長方向のストローク端に達して油圧シリンダ20が最伸長状態となると、ウィング2が全開状態となる。油圧シリンダ20のピストンロッド22が伸長方向又は収縮方向のストローク端まで移動すると、吐出通路13の圧力が急激に上昇する。これに伴い、パイロット通路62に導かれる作動油の圧力も上昇する。
パイロット通路62の圧力がリリーフ機構60のチェック弁64のクラッキング圧に達すると、チェック弁64が開弁する。チェック弁64が開弁することで、パイロット圧としてリリーフ弁61に作用する比例電磁弁50の下流側の圧力がタンク12に排出され、比例電磁弁50の下流側の圧力が低下する。これにより、比例電磁弁50の前後差圧が大きくなり、比例電磁弁50の前後差圧がリリーフ弁61のリリーフ圧を上回ってリリーフ弁61が開弁する。よって、吐出通路13の圧力がリリーフ通路17を通じてタンク12に排出される。このように、油圧シリンダ20のピストンロッド22がストローク端まで移動しても、吐出通路13の圧力は、チェック弁64のクラッキング圧以下に保たれる。したがって、過大な圧力がポンプ11、油圧シリンダ20、及びウィング開閉装置100の各構成におけるシール部材に作用することが抑制される。
なお、チェック弁64のクラッキング圧は、ポンプ11や油圧シリンダ20が通常の動作において使用される圧力よりも大きく、ポンプ11や油圧シリンダ20の仕様上許容される圧力に設定される。つまり、ウィング開閉装置100の通常の動作時には、チェック弁64は開弁しないように設定される。また、チェック弁64のクラッキング圧は、比例電磁弁50の前後差圧が設定差圧となる際の比例電磁弁50の上流側の圧力よりも、比例電磁弁50の開度に関わらず高くなるように設定される。
ここで、リリーフ機構60の理解を容易にするために、図4に示す比較例について説明する。図4に示す比較例は、上記実施形態におけるリリーフ機構60、具体的には、パイロット通路62、ドレン通路63、及びチェック弁64が設けられない点において、上記実施形態とは相違する。つまり、比較例に係るリリーフ弁61は、比例電磁弁50の前後差圧に応じてリリーフ通路17を開放するものではなく、2段階の作動圧を有するものではない。
比較例に係るウィング開閉装置200では、リリーフ弁61のリリーフ圧は、ポンプ11や油圧シリンダ20の通常の作動圧力よりも大きな圧力(許容圧力)に設定される。比較例に係るウィング開閉装置200では、比例電磁弁50の前後差圧が高くなっても開弁せず、ポンプ11の吐出圧がリリーフ圧に達するまでは開弁しない。このため、比例電磁弁50の開度が小さく制御されポンプ11の吐出圧が上昇してもリリーフ弁61は速やかに作動せず、ポンプ11の吐出圧は、比較的高圧なリリーフ圧に達するまで上昇する。この場合、ポンプ11の負荷が大きく、その分電力消費も大きくなる。
これに対し、本実施形態では、ポンプ11の吐出圧が油圧シリンダ20の許容圧力である設定圧未満であっても、比例電磁弁50の前後差圧が設定差圧に達すると、リリーフ弁61が開弁する。このため、比例電磁弁50の開度を小さく制御しても、リリーフ弁61が速やかに作動してポンプ11の吐出圧の過度な圧力上昇を抑制し、ポンプ11の吐出圧が設定圧に達することを防止できる。
以上のように、ウィング開閉装置100では、比例電磁弁50のソレノイド51への通電量を制御して比例電磁弁50の開度を調整することにより、油圧シリンダ20の伸縮作動の速度が制御される。このため、ウィング2の開閉作動の始動と停止を低速で行うことができ、動き始めや停止時の衝撃を低減することができる。
また、比例電磁弁50によって流量制御する際、比例電磁弁50の前後差圧が設定差圧よりも大きければ、ポンプ11の吐出圧が油圧シリンダ20やウィング開閉装置100の各構成において使用されるシール部材の許容圧力である設定圧より小さい場合であっても、リリーフ弁61が開弁して吐出通路13の圧力がタンク12に排出される。このため、許容圧力を超えないようにポンプ11の吐出圧を制御してポンプ11や油圧シリンダ20を保護すると共に、比例電磁弁50によって流量制御しても、ポンプ11の負荷の増大を抑制し、省エネルギー化することができる。
また、一般に、油圧シリンダに供給される作動油の流量を制御して油圧シリンダの伸縮作動の速度を制御するには、電動モータの回転数を制御(変更)してポンプの吐出流量を制御することも考えられる。しかしながら、電動モータの回転数の制御では、回転する電動モータやポンプの慣性力やウィングの重力による負荷圧力等の影響を受ける。このため、所望の回転数となるように電動モータに電力を供給しても、応答遅れが生じ電動モータの回転数を直ちに所望の回転数に制御することは困難である。
これに対し、ウィング開閉装置100では、比例電磁弁50の開度を制御することで、油圧シリンダ20の伸縮作動が制御される。比例電磁弁50は、ポンプ11等の慣性や負荷圧力の影響を受けにくいため、油圧シリンダ20の伸縮作動を応答性よく速度制御することができる。
また、電動モータ10の回転数を変更する構成ではないため、ウィング開閉装置100では、電動モータ10は、電流の供給によって一定速で作動する、いわゆる一定速モータを利用できる。一般に、高精度の制御性を有する電動モータは、一定速モータと比較して、構造が複雑であるため耐久性が低く、製造コストも高い。よって、電動モータ10に一定速モータを利用することにより、ウィング開閉装置100の製造コストを低減できると共に、複雑な構造を必要としないため、耐久性を向上させることができる。なお、電動モータ10は一定速モータに限定されるものではなく、回転数制御が可能なモータであってもよい。一般に、ギヤポンプ等のポンプは、低速で回転するほど、ポンプ効率が低下する。よって、電動モータ10が一定速モータではない場合であっても、電動モータ10の回転数を一定に制御することが望ましい。これによれば、電動モータ10の回転数変化によるポンプ効率の変化を抑制できるため、油圧シリンダ20を安定して作動させることができる。
また、電動モータを回転制御する場合には、回転数制御に伴い電動モータの故障のリスクが増加し、電動モータが故障すると、ウィングの開閉作動ができなくなる。これに対し、ウィング開閉装置100では、電動モータ10の回転数を制御する構成ではないため、回転数制御に伴う電動モータ10の故障のリスクが低減される。また、仮に、比例電磁弁50の制御に伴い比例電磁弁50が故障しても、手動で比例電磁弁50を切り換える手段を設けることで、ウィング2の開閉作動を行うことができる。よって、比例電磁弁50が故障したとしても、ウィング2が中間位置で停止したままの状態が継続することも防止できる。そのものには影響しない。よって、電動モータ10を一定速で回転させ、比例電磁弁50によって油圧シリンダ20の作動を制御する構成とすることで、ウィング開閉装置100を安定して作動させることができる。
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
ウィング開閉装置100では、電動モータ10の回転数を制御する構成ではなく、比例電磁弁50の開度を調整することで、油圧シリンダ20の伸縮作動が制御される。比例電磁弁50は、電動モータ10の回転数を制御する場合と比較してポンプ11等の慣性や負荷圧力の影響を受けにくいため、油圧シリンダ20の伸縮作動を応答性よく速度制御することができる。また、一般に、比例電磁弁50のポジションの切り換えに要する電力量は、電動モータ10の回転数制御に要する電力量よりも小さい。このため、ウィング開閉装置100では、電動モータ10を回転数制御する場合と比較して、省エネルギー化することができる。
また、ウィング開閉装置100では、吐出通路13の圧力がチェック弁64のクラッキング圧に達すると、リリーフ弁61が開弁してポンプ11から吐出される作動油の一部はタンク12に排出される。これにより、ポンプ11の吐出圧が急激に上昇してポンプ11に過大な負荷がかかることが抑制される。また、比例電磁弁50の前後差圧がリリーフ弁61のリリーフ圧に達すると、吐出通路13の圧力がチェック弁64のクラッキング圧未満であっても、リリーフ弁61が開弁してポンプ11から吐出される作動油の一部がタンク12に排出される。このように、吐出通路13の圧力がチェック弁64のクラッキング圧に達するよりも前にポンプ11から吐出される作動油を排出できるため、油圧シリンダ20の低速作動時におけるポンプ11の吐出圧の上昇が抑制でき、省エネルギー化することができる。
また、ウィング開閉装置100では、リリーフ機構60がリリーフ弁61及びチェック弁64を備えることにより、2段階の作動圧によってリリーフ通路17を開放するように構成される。このため、本実施形態によれば、2つのリリーフ通路をそれぞれ2つのリリーフ弁によって開放することで2段階の作動圧を実現するような形態と比較して、装置構成をコンパクト化すると共に製造コストを低減することができる。
また、ウィング開閉装置100では、上述のように電力消費を抑制して省エネルギー化することができるため、電動モータ10等を駆動するためのバッテリ(図示省略)は、容量が小さくコンパクトなものを使用することができる。これにより、ウィング開閉装置100全体としての重量を軽くできると共に、ウィング開閉装置100を小型化することができる。このようにウィング開閉装置100が軽量化及び小型化される分、ウィング開閉装置100が搭載されるトラック車1の積載重量を増やすことができると共にトラック車1の積荷スペースを増加させることができる。
また、ウィング開閉装置100では、電動モータ10の回転数を制御する構成ではないため、電動モータ10に一定速モータを利用することで、ウィング開閉装置100の製造コストを低減できると共に、耐久性を向上させることができる。また、一定速モータを利用しない場合であっても、電動モータ10の回転数は一定に制御すればよいため、電動モータ10の回転数変化によるポンプ効率の変化を抑制でき、油圧シリンダ20を安定して作動させることができる。さらに、電動モータ10の回転数を変更する必要がないため、回転数制御に伴う電動モータ10の故障のリスクが低減される。
また、一般に、ウィング開閉装置では、ウィングの開閉作動中にウィングが風などの外力を受けることで、油圧シリンダが意図せず伸縮作動するおそれがある。これに対し、ウィング開閉装置100では、リリーフ機構60は、パイロット通路62に設けられる絞り66と、ドレン通路63に設けられる絞り67と、を有する。よって、意図せず伸縮するような外力が油圧シリンダ20に作用しても、絞り66,67による抵抗により、パイロット通路62及びドレン通路63の圧力変動が緩和される。このため、リリーフ弁61及びチェック弁64が意図せず作動することが抑制される。より具体的には、外力によるパイロット通路62及びドレン通路63の圧力変動に起因したリリーフ弁61及びチェック弁64のチャタリングやハンチングの発生が抑制される。したがって、ウィング開閉装置100の作動を安定させることができると共に、リリーフ弁61やチェック弁64の故障を抑制することができる。
次に、本発明の変形例について説明する。
上記実施形態では、比例電磁弁50は、ノーマルクローズ型である。これに対し、比例電磁弁50は、ノーマルオープン型であってもよい。しかしながら、ウィング2を停止する状態では、油圧シリンダ20(より具体的には、制御弁40)に対して作動油の供給を停止することが望ましい。よって、比例電磁弁50が、ノーマルオープン型であると、油圧シリンダ20に作動油の供給を停止するには、ソレノイド51へ通電して吐出通路13を遮断する必要がある。よって、比例電磁弁50は、消磁時において、油圧シリンダ20に作動油が供給されない構成、具体的には、ノーマルクローズ型とすることが望ましい。これによれば、油圧シリンダ20への作動油の供給を停止するためにソレノイド51へ通電する必要がないため、比例電磁弁50の制御が容易になると共に、省エネルギー化することができる。
また、上記実施形態では、流体圧装置がウィング開閉装置100である場合について説明した。これに限らず、流体圧装置は、その他の装置に対して適用されるものでもよい。また、上記実施形態では、流体圧アクチュエータは、作動油の給排によって伸縮作動する油圧シリンダ20である。これに限らず、流体圧アクチュエータは、例えば作動油の給排によって回転駆動される油圧(流体圧)モータなど、その他のものであってもよい。
また、上記実施形態では、リリーフ機構60は、2段階の作動圧を有する。これに対し、リリーフ機構60が2段階の作動圧を有する構成は必須ではなく、リリーフ機構60は、少なくとも比例電磁弁50の前後差圧に応じて作動するものであればよい。また、リリーフ機構60が2段階の作動圧を有する場合であっても、上記実施形態におけるリリーフ機構60の構成に限定されるものではない。図示は省略するが、例えば、リリーフ機構60は、上記実施形態におけるチェック弁64に代えて、吐出通路13から分岐する第2リリーフ通路に設けられリリーフ弁61のリリーフ圧よりも大きなリリーフ圧で開弁する第2リリーフ弁を有する構成でもよい。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
ウィング開閉装置100は、電動モータ10によって駆動されるポンプ11から吐出される作動油によって伸縮作動してウィング2を開閉する油圧シリンダ20と、ポンプ11から油圧シリンダ20に供給される作動油の流量を制御する比例電磁弁50と、ポンプ11から吐出される作動油を導くと共に比例電磁弁50が設けられる吐出通路13と、比例電磁弁50よりも上流側において吐出通路13から分岐してタンク12に連通するリリーフ通路17と、リリーフ通路17を開閉するリリーフ機構60と、を備え、リリーフ機構60は、比例電磁弁50の前後差圧が所定の設定差圧に達するとリリーフ通路17を開放する。
この構成では、油圧シリンダ20に供給される作動油の流量を比例電磁弁50によって制御することで、油圧シリンダ20が速度制御される。比例電磁弁50の前後差圧がリリーフ機構60の設定差圧に達すると、リリーフ通路17が開放されてポンプ11から吐出される作動油の一部がタンク12に排出される。このように、比例電磁弁50の前後差圧に応じてリリーフ機構60が作動するため、比例電磁弁50による流量制御に起因してポンプ11の吐出圧が上昇しても、リリーフ機構60が速やかに作動してポンプ11の吐出圧の上昇を抑制することができる。したがって、ウィング開閉装置100における電力消費が抑制され、省エネルギー化することができる。
また、ウィング開閉装置100では、リリーフ機構60が、リリーフ通路17に設けられるリリーフ弁61と、リリーフ通路17を閉じるように付勢力を発揮するパイロット圧として比例電磁弁50の下流側の圧力をリリーフ弁61に導くパイロット通路62と、パイロット通路62に設けられ通過する作動油の流れに抵抗を付与する絞り66と、を有する。
この構成では、油圧シリンダ20が意図せず伸縮するような外力が作用しても、絞り66が付与する抵抗によって、パイロット通路62を通じてリリーフ弁61に導かれる圧力の変動が抑制される。これにより、リリーフ弁61が意図せず作動することを抑制することができる。
また、ウィング開閉装置100では、リリーフ機構60は、吐出通路13の圧力が所定の設定圧に達するとリリーフ通路17を開放するように構成され、設定圧は、設定差圧よりも大きい。
この構成では、吐出通路13の圧力が設定圧に達すると、リリーフ機構60によってリリーフ通路17が開放されポンプ11から吐出される作動油の一部はタンク12に排出される。これにより、ポンプ11の吐出圧が急激に上昇してポンプ11に過大な負荷がかかることが抑制される。また、比例電磁弁50の前後差圧が設定差圧に達すると、吐出通路13の圧力が設定圧未満であっても、リリーフ通路17が開放されてポンプ11から吐出される作動油の一部がタンク12に排出される。吐出通路13の圧力が設定圧に達するよりも前にポンプ11から吐出される作動油を排出できるため、油圧シリンダ20の低速作動時におけるポンプ11の吐出圧の上昇が抑制できる。よって、ポンプ11及び電動モータ10への過負荷を抑制しつつ、電力消費を抑制することができ、ウィング開閉装置100をより一層省エネルギー化することができる。
また、ウィング開閉装置100では、リリーフ機構60が、パイロット通路62から分岐してタンク12に連通するドレン通路63と、ドレン通路63に設けられパイロット通路62からタンク12に向かう作動油の流れのみを許容するチェック弁64と、をさらに有し、設定圧は、チェック弁64が開弁するクラッキング圧であり、設定差圧は、リリーフ弁61が開弁するリリーフ圧である。
この構成では、設定圧であるクラッキング圧を有するチェック弁64が、パイロット通路62から分岐してタンク12に連通するドレン通路63に設けられる。これにより、リリーフ機構60が設定圧で開弁する安全弁としての機能を有するため、別途、安全弁を設ける必要がなくなる。さらに、安全弁を設ける通路も必要ないため、ウィング開閉装置100における通路構成を簡素化できる。よって、ウィング開閉装置100をよりコンパクト化することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。