JP7260840B2 - ホットスタンプ部材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ホットスタンプ部材およびその製造方法に関する。
本願は、2020年07月14日に、日本に出願された特願2020-120494号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本願は、2020年07月14日に、日本に出願された特願2020-120494号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、環境保護及び地球温暖化の防止のために、化学燃料の消費を抑制することが要請されている。このような要請は、例えば、移動手段として日々の生活や活動に欠かせない自動車についても例外ではない。このような要請に対し、自動車では、車体の軽量化などによる燃費の向上等が検討されている。自動車の構造の多くは、鉄、特に鋼板により形成されているので、この鋼板を薄くして重量を低減することが、車体の軽量化にとって効果が大きい。しかしながら、単純に鋼板の厚みを薄くして鋼板の重量を低減すると、構造物としての強度が低下し、安全性が低下することが懸念される。そのため、鋼板の厚みを薄くするためには、構造物の強度を低下させないように、使用される鋼板の機械的強度を高くすることが求められる。
よって、鋼板の機械的強度を高めることにより、以前使用されていた鋼板より薄くしても機械的強度を維持又は高めることが可能な鋼板について、研究開発が行われている。このような鋼板に対する要請は、自動車製造業のみならず、様々な製造業でも同様になされている。
よって、鋼板の機械的強度を高めることにより、以前使用されていた鋼板より薄くしても機械的強度を維持又は高めることが可能な鋼板について、研究開発が行われている。このような鋼板に対する要請は、自動車製造業のみならず、様々な製造業でも同様になされている。
一般的に、高い機械的強度を有する材料は、曲げ加工等の成形加工において、形状凍結性が低い傾向にあり、複雑な形状に加工する場合、加工そのものが困難となる。この成形性についての問題を解決する手段の一つとして、いわゆる「熱間プレス法(ホットプレス法、高温プレス法、ダイクエンチ法)」が挙げられる。この熱間プレス法では、成形対象である材料を一旦高温(鋼であればオーステナイト域温度)に加熱して、加熱により軟化した材料に対して、プレス加工を行って成形した後に、または成形と同時にプレス金型との接触による抜熱を利用して、材料を急速冷却することでマルテンサイト変態させ、高い機械的強度を得ることができる。
この熱間プレス法によれば、材料を一旦高温に加熱して軟化させ、材料が軟化した状態でプレス加工するので、材料を容易にプレス加工することができる。従って、この熱間プレス加工により、良好な形状凍結性と高い機械的強度とを両立したプレス成形品が得られる。特に材料が鋼の場合、成形と同時または成形後に行う冷却による焼入れ効果により、プレス成形品の機械的強度を高めることができる。
このような熱間プレス法は、高強度の部材を成形する方法として有望であるが、通常は大気中で鋼板を加熱する工程を有しており、鋼板の表面に酸化物(スケール)が生成する。そのため、これをショットブラストや酸洗等の後工程で除去する必要があった。ところがショットブラストでは完全にスケールを排除することが難しく、またショットによる鋼板の変形の可能性があった。また、酸洗の場合には廃水処理等をする必要があり、環境負荷の観点から対応策を講じる必要がある場合があった。したがって、ショットブラストや酸洗を行う場合、製造コストアップに繋がるという課題があった。
このような課題に対し、鋼板にAlめっきを施した、いわゆる、Alめっき鋼板を使用することで加熱時の酸化抑制を図る技術が提案されている。例えば、特許文献1には、鋼板表面にアルミニウム被覆を有し、熱処理時のベース金属の酸化を防止することで高い耐食性を有する被覆鋼板が開示されている。また、この被覆は、熱処理時には鉄合金に変態し600HVを超え得る高い硬度を有することが示されている。また、特許文献2には、基礎鋼がアルミニウムプレコートまたはアルミニウム合金プレコートで被覆され、前記被覆が基礎鋼から外側へ順々に、相互拡散層、中間層、金属間化合物層、表面層からなる、被覆鋼製品が開示されている。また、この中間層、表面層は900~1000HVの硬度を有することが示されている。また、特許文献3には、鋼成分として質量%でC:0.05~0.7%、Si:0.1~1%、Mn:0.7~2%、P:0.003~0.1%、S:0.003~0.1%を含有する鋼にAlを主体とするめっきを施した鋼板を使用して自動車部材を熱間プレス法で製造する方法と、それによって得られる、表面にFeAl2、Fe2Al5、FeAl3、FeAl、Al固溶α-Feの2種以上から成る合金層を有する鋼部品であって、この合金層の組織が3層構造で、最表層はFeAl2を主成分とした層であることを特徴とする、高強度自動車部品が開示されている。
このような課題に対し、鋼板にAlめっきを施した、いわゆる、Alめっき鋼板を使用することで加熱時の酸化抑制を図る技術が提案されている。例えば、特許文献1には、鋼板表面にアルミニウム被覆を有し、熱処理時のベース金属の酸化を防止することで高い耐食性を有する被覆鋼板が開示されている。また、この被覆は、熱処理時には鉄合金に変態し600HVを超え得る高い硬度を有することが示されている。また、特許文献2には、基礎鋼がアルミニウムプレコートまたはアルミニウム合金プレコートで被覆され、前記被覆が基礎鋼から外側へ順々に、相互拡散層、中間層、金属間化合物層、表面層からなる、被覆鋼製品が開示されている。また、この中間層、表面層は900~1000HVの硬度を有することが示されている。また、特許文献3には、鋼成分として質量%でC:0.05~0.7%、Si:0.1~1%、Mn:0.7~2%、P:0.003~0.1%、S:0.003~0.1%を含有する鋼にAlを主体とするめっきを施した鋼板を使用して自動車部材を熱間プレス法で製造する方法と、それによって得られる、表面にFeAl2、Fe2Al5、FeAl3、FeAl、Al固溶α-Feの2種以上から成る合金層を有する鋼部品であって、この合金層の組織が3層構造で、最表層はFeAl2を主成分とした層であることを特徴とする、高強度自動車部品が開示されている。
しかしながら、特許文献1~2に開示された技術では、めっき中に硬質な層を有し、熱間プレス時に強く衝撃を受けるとめっきが剥離する場合があり、成形品の耐食性が低下するという問題があった。また、特許文献3に記載される部品では、FeAl2、FeAl3、Fe2Al5は硬質であるため、合金層がいずれの構造を有する場合でも、めっきが剥離する場合があり、成形品の耐食性が低下する問題があった。
特許文献4には、素地鋼板の表面に溶融アルミニウムめっき層が形成され、このめっき層はAl固溶されたα-Feからなる単一の軟質拡散層のみで構成されることを特徴とする、ホットプレス成形部材が開示されている。
しかしながら、この特許文献4で開示された技術では、成形時に鋼板が圧延され、板厚が減少するような非常に厳しい成形を受けた場合、単一の軟質な拡散層のみでは成形時の衝撃に耐えられず、疵やめっき剥離が発生し、成形品の耐食性が低下する問題があった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされた。本発明は、成形時に鋼板の板厚が減少するような厳しい成形を行った後でも、成形部耐食性に優れるホットスタンプ部材及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、加熱時の酸化抑制を図るためにAlを含むめっき鋼板をホットスタンプしてホットスタンプ部材を得る場合を前提として、ホットスタンプ後に得られるホットスタンプ部材の成形部耐食性をより向上させる手法について検討を行った。特に、成形時に鋼板の板厚が減少するような厳しい成形を行った後でも、優れた成形部耐食性が得られる手法について検討した。
検討の結果、ホットスタンプ部材の成形部耐食性の低下は、母材鋼板の表面に形成されたFe-Al系めっき層について、1)熱間成形時のめっき剥離、2)めっき中のSi含有量とAl含有量との比、の2点が原因であることが分かった。本発明者らは、さらに検討を行った結果、1)、2)のそれぞれに対し、以下の対策を実施することで成形部耐食性が向上することを見出した。
具体的には、1)のめっき剥離の対策として、Fe-Al系の相の中でも硬質な化合物であるFeAl2、FeAl3、Fe2Al5(Al:40~65質量%)の生成を抑制するため、ホットスタンプ加熱後のめっき組成(めっき層の化学組成)について、Al含有量(WAl、質量%)を0.5%以上30.0%以下、Si含有量(WSi、質量%)を0.1%以上6.0%以下、Fe含有量(質量%)を64.0%以上99.4%以下、にすることが有効であることを見出した。特に、Fe2Al5はビッカース硬度HV900~1000にもなる。前記Fe-Al系の相とは、Fe-Alの2元系相に加え、Siを含有したFe-Al-Siの3元系相および前記2元系相、前記3元系相にFe、Al、Si以外の元素が固溶された相も含む。
また、Fe-Al系めっき層の構造は、FeAl2、FeAl3、Fe2Al5(Al:40~65質量%)に比べて軟質なFeAl層およびAl固溶フェライト層の2つの層(FeAl層、Al固溶フェライト層のビッカース硬度は、例えばHV300~700である)からなり、さらに、Al固溶フェライト層よりも硬質なFeAl層が表面側に存在する、2層構造とすることが、プレス成形で金型からの耐疵付き性を向上させ、めっき剥離を抑制することも分かった。
また、一般にSiはFeよりも貴な元素であり、めっきによる母材の犠牲防食を阻害し耐食性を低下させる元素である。一方で、Siは、溶融アルミめっき浴への浸漬時にめっきと母材との界面で形成される硬質な合金層の過剰な成長を抑制し、調質圧延や加工時のめっき剥離現象を抑制する元素でもある。そのため、溶融アルミめっき鋼板の製造工程中のアルミめっき浴には一般にSiが含有されている。本発明者らは、Siを含有したAl系めっきであっても、ホットスタンプ加熱工程中にめっき層の合金化を進めることで、部品とするホットスタンプ後にはめっき中におけるSi含有量を低減できること、さらに、AlがFeよりも卑な元素である点から、めっき中のSi含有量とAl含有量との比について、めっき中のSi含有量(WSi、質量%)をAl含有量(WAl、質量%)に対し、式(1)に示す範囲に抑制することができれば、成形部耐食性を向上させることができることを見出した。
5×WSi≦WAl ・・・式(1)
検討の結果、ホットスタンプ部材の成形部耐食性の低下は、母材鋼板の表面に形成されたFe-Al系めっき層について、1)熱間成形時のめっき剥離、2)めっき中のSi含有量とAl含有量との比、の2点が原因であることが分かった。本発明者らは、さらに検討を行った結果、1)、2)のそれぞれに対し、以下の対策を実施することで成形部耐食性が向上することを見出した。
具体的には、1)のめっき剥離の対策として、Fe-Al系の相の中でも硬質な化合物であるFeAl2、FeAl3、Fe2Al5(Al:40~65質量%)の生成を抑制するため、ホットスタンプ加熱後のめっき組成(めっき層の化学組成)について、Al含有量(WAl、質量%)を0.5%以上30.0%以下、Si含有量(WSi、質量%)を0.1%以上6.0%以下、Fe含有量(質量%)を64.0%以上99.4%以下、にすることが有効であることを見出した。特に、Fe2Al5はビッカース硬度HV900~1000にもなる。前記Fe-Al系の相とは、Fe-Alの2元系相に加え、Siを含有したFe-Al-Siの3元系相および前記2元系相、前記3元系相にFe、Al、Si以外の元素が固溶された相も含む。
また、Fe-Al系めっき層の構造は、FeAl2、FeAl3、Fe2Al5(Al:40~65質量%)に比べて軟質なFeAl層およびAl固溶フェライト層の2つの層(FeAl層、Al固溶フェライト層のビッカース硬度は、例えばHV300~700である)からなり、さらに、Al固溶フェライト層よりも硬質なFeAl層が表面側に存在する、2層構造とすることが、プレス成形で金型からの耐疵付き性を向上させ、めっき剥離を抑制することも分かった。
また、一般にSiはFeよりも貴な元素であり、めっきによる母材の犠牲防食を阻害し耐食性を低下させる元素である。一方で、Siは、溶融アルミめっき浴への浸漬時にめっきと母材との界面で形成される硬質な合金層の過剰な成長を抑制し、調質圧延や加工時のめっき剥離現象を抑制する元素でもある。そのため、溶融アルミめっき鋼板の製造工程中のアルミめっき浴には一般にSiが含有されている。本発明者らは、Siを含有したAl系めっきであっても、ホットスタンプ加熱工程中にめっき層の合金化を進めることで、部品とするホットスタンプ後にはめっき中におけるSi含有量を低減できること、さらに、AlがFeよりも卑な元素である点から、めっき中のSi含有量とAl含有量との比について、めっき中のSi含有量(WSi、質量%)をAl含有量(WAl、質量%)に対し、式(1)に示す範囲に抑制することができれば、成形部耐食性を向上させることができることを見出した。
5×WSi≦WAl ・・・式(1)
本発明は、上記の知見に基づいてなされ、その要旨は以下の通りである。
[1]本発明の一態様に係るホットスタンプ部材は、母材鋼板と、前記母材鋼板の片面または両面の表面に形成されたFe-Al系めっき層とを有し、前記Fe-Al系めっき層が、質量%で、Fe:64.0%以上99.4%以下、Al:0.5%以上30.0%以下、Si:0.1%以上6.0%以下、を含有し、前記Fe-Al系めっき層の、質量%での、Si含有量をWSi、Al含有量をWAlとしたとき、前記WSiと前記WAlとが以下の式(1)を満足し、前記Fe-Al系めっき層が、表面側から順に、FeAl層、Al固溶フェライト層の2層からなり、前記Fe-Al系めっき層の厚さが、5μm以上80μm以下である。
5×WSi≦WAl ・・・式(1)
[2]上記[1]に記載のホットスタンプ部材は、前記FeAl層の厚みD1と、前記Al固溶フェライト層の厚みD2との比D2/D1が、0.8以上2.5以下であってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載のホットスタンプ部材は、前記Fe-Al系めっき層が、ボイドを含有し、前記ボイドの直径が、5μm以上15μm以下であってもよい。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載のホットスタンプ部材は、前記Fe-Al系めっき層のAl含有量の最大値が、質量%で30.0%以下であってもよい。
[5][1]~[4]のいずれかに記載のホットスタンプ部材は、前記母材鋼板の化学組成が、質量%で、C :0.10%以上0.50%以下、Si:0.01%以上2.00%以下、Mn:0.30%以上5.00%以下、B :0.0002%以上0.0100%以下、Al:1.00%以下、P :0.100%以下、S :0.100%以下、N :0.0100%以下、Cr:0%以上2.00%以下、W :0%以上3.0%以下、Mo:0%以上3.0%以下、Co:0%以上3.0%以下、V :0%以上2.0%以下、Ti:0%以上0.50%以下、Nb:0%以上1.00%以下、Ni:0%以上5.0%以下、Cu:0%以上3.0%以下、Sn:0%以上0.10%以下、Sb:0%以上0.10%以下、Mg:0%以上0.0100%以下、Ca:0%以上0.0100%以下、Zr:0%以上0.0100%以下、REM:0%以上0.0100%以下、O :0%以上0.0070%以下、を含有し、残部がFe及び不純物であってもよい。
[6]本発明の別の一態様に係るホットスタンプ部材の製造方法は、上記[1]に記載のホットスタンプ部材を製造する方法であって、母材鋼板と前記母材鋼板の上に形成されたAl系めっき層とを有するAl系めっき鋼板を、ブランキングするブランキング工程と、前記ブランキング工程後の前記Al系めっき鋼板を加熱する加熱工程と、前記加熱工程後の前記Al系めっき鋼板に、成形及び冷却を行う成形工程と、を有し、前記Al系めっき層の、片面当たりの付着量が、5g/m2以上100g/m2以下であって、前記Al系めっき層が、質量%で、Al:83.0%以上95.0%以下、Si:5.0%以上12.0%以下、Fe:0%以上5.0%以下、を含有し、前記加熱工程における、単位℃での最高加熱温度をTMax、前記加熱工程において前記TMaxから(TMax-10℃)の間に前記Al系めっき鋼板を保持する時間を単位分でt、前記付着量をWとしたとき、前記TMax、前記t、および前記Wが以下の式(2)を満足し、前記TMaxは850℃以上であり、前記加熱工程の終了から前記成形工程の前記冷却の開始との間が15秒以下である。
700≦(TMax-850)2×(t/W)≦4000・・・式(2)
[7]上記[6]に記載のホットスタンプ部材の製造方法は、前記Al系めっき層の、片面当たり付着量である前記Wが、10g/m2以上80g/m2以下であってもよい。
[8]上記[6]または[7]に記載のホットスタンプ部材の製造方法前記TMax、前記t、および前記Wが、以下の式(3)を満足してもよい。
1000≦(TMax-850)2×(t/W)≦3000・・・式(3)
[9]上記[6]~[8]のいずれかに記載のホットスタンプ部材の製造方法は、前記母材鋼板の化学組成が、質量%で、C :0.10%以上0.50%以下、Si:0.01%以上2.00%以下、Mn:0.30%以上5.00%以下、B :0.0002%以上0.0100%以下、Al:1.00%以下、P :0.100%以下、S :0.100%以下、N :0.0100%以下、Cr:0%以上2.00%以下、W :0%以上3.0%以下、Mo:0%以上3.0%以下、Co:0%以上3.0%以下、V :0%以上2.0%以下、Ti:0%以上0.50%以下、Nb:0%以上1.00%以下、Ni:0%以上5.0%以下、Cu:0%以上3.0%以下、Sn:0%以上0.10%以下、Sb:0%以上0.10%以下、Mg:0%以上0.0100%以下、Ca:0%以上0.0100%以下、Zr:0%以上0.0100%以下、REM:0%以上0.0100%以下、O :0%以上0.0070%以下、を含有し、残部がFe及び不純物であってもよい。
[10]上記[6]~[9]のいずれかに記載のホットスタンプ部材の製造方法は、前記Al系めっき鋼板において、前記母材鋼板と、前記Al系めっき層との間に界面合金層が存在してもよい。
[1]本発明の一態様に係るホットスタンプ部材は、母材鋼板と、前記母材鋼板の片面または両面の表面に形成されたFe-Al系めっき層とを有し、前記Fe-Al系めっき層が、質量%で、Fe:64.0%以上99.4%以下、Al:0.5%以上30.0%以下、Si:0.1%以上6.0%以下、を含有し、前記Fe-Al系めっき層の、質量%での、Si含有量をWSi、Al含有量をWAlとしたとき、前記WSiと前記WAlとが以下の式(1)を満足し、前記Fe-Al系めっき層が、表面側から順に、FeAl層、Al固溶フェライト層の2層からなり、前記Fe-Al系めっき層の厚さが、5μm以上80μm以下である。
5×WSi≦WAl ・・・式(1)
[2]上記[1]に記載のホットスタンプ部材は、前記FeAl層の厚みD1と、前記Al固溶フェライト層の厚みD2との比D2/D1が、0.8以上2.5以下であってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載のホットスタンプ部材は、前記Fe-Al系めっき層が、ボイドを含有し、前記ボイドの直径が、5μm以上15μm以下であってもよい。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載のホットスタンプ部材は、前記Fe-Al系めっき層のAl含有量の最大値が、質量%で30.0%以下であってもよい。
[5][1]~[4]のいずれかに記載のホットスタンプ部材は、前記母材鋼板の化学組成が、質量%で、C :0.10%以上0.50%以下、Si:0.01%以上2.00%以下、Mn:0.30%以上5.00%以下、B :0.0002%以上0.0100%以下、Al:1.00%以下、P :0.100%以下、S :0.100%以下、N :0.0100%以下、Cr:0%以上2.00%以下、W :0%以上3.0%以下、Mo:0%以上3.0%以下、Co:0%以上3.0%以下、V :0%以上2.0%以下、Ti:0%以上0.50%以下、Nb:0%以上1.00%以下、Ni:0%以上5.0%以下、Cu:0%以上3.0%以下、Sn:0%以上0.10%以下、Sb:0%以上0.10%以下、Mg:0%以上0.0100%以下、Ca:0%以上0.0100%以下、Zr:0%以上0.0100%以下、REM:0%以上0.0100%以下、O :0%以上0.0070%以下、を含有し、残部がFe及び不純物であってもよい。
[6]本発明の別の一態様に係るホットスタンプ部材の製造方法は、上記[1]に記載のホットスタンプ部材を製造する方法であって、母材鋼板と前記母材鋼板の上に形成されたAl系めっき層とを有するAl系めっき鋼板を、ブランキングするブランキング工程と、前記ブランキング工程後の前記Al系めっき鋼板を加熱する加熱工程と、前記加熱工程後の前記Al系めっき鋼板に、成形及び冷却を行う成形工程と、を有し、前記Al系めっき層の、片面当たりの付着量が、5g/m2以上100g/m2以下であって、前記Al系めっき層が、質量%で、Al:83.0%以上95.0%以下、Si:5.0%以上12.0%以下、Fe:0%以上5.0%以下、を含有し、前記加熱工程における、単位℃での最高加熱温度をTMax、前記加熱工程において前記TMaxから(TMax-10℃)の間に前記Al系めっき鋼板を保持する時間を単位分でt、前記付着量をWとしたとき、前記TMax、前記t、および前記Wが以下の式(2)を満足し、前記TMaxは850℃以上であり、前記加熱工程の終了から前記成形工程の前記冷却の開始との間が15秒以下である。
700≦(TMax-850)2×(t/W)≦4000・・・式(2)
[7]上記[6]に記載のホットスタンプ部材の製造方法は、前記Al系めっき層の、片面当たり付着量である前記Wが、10g/m2以上80g/m2以下であってもよい。
[8]上記[6]または[7]に記載のホットスタンプ部材の製造方法前記TMax、前記t、および前記Wが、以下の式(3)を満足してもよい。
1000≦(TMax-850)2×(t/W)≦3000・・・式(3)
[9]上記[6]~[8]のいずれかに記載のホットスタンプ部材の製造方法は、前記母材鋼板の化学組成が、質量%で、C :0.10%以上0.50%以下、Si:0.01%以上2.00%以下、Mn:0.30%以上5.00%以下、B :0.0002%以上0.0100%以下、Al:1.00%以下、P :0.100%以下、S :0.100%以下、N :0.0100%以下、Cr:0%以上2.00%以下、W :0%以上3.0%以下、Mo:0%以上3.0%以下、Co:0%以上3.0%以下、V :0%以上2.0%以下、Ti:0%以上0.50%以下、Nb:0%以上1.00%以下、Ni:0%以上5.0%以下、Cu:0%以上3.0%以下、Sn:0%以上0.10%以下、Sb:0%以上0.10%以下、Mg:0%以上0.0100%以下、Ca:0%以上0.0100%以下、Zr:0%以上0.0100%以下、REM:0%以上0.0100%以下、O :0%以上0.0070%以下、を含有し、残部がFe及び不純物であってもよい。
[10]上記[6]~[9]のいずれかに記載のホットスタンプ部材の製造方法は、前記Al系めっき鋼板において、前記母材鋼板と、前記Al系めっき層との間に界面合金層が存在してもよい。
本発明の上記態様によれば、成形部耐食性に優れたホットスタンプ部材(ホットスタンプによって得られた成形部材)及びその製造方法を提供することができる。
このようなホットスタンプ部材を自動車の部品に適用すれば、自動車の衝突安全性の向上や、自動車の軽量化による燃費向上とCO2等の排ガスの削減とに繋がる。
このようなホットスタンプ部材を自動車の部品に適用すれば、自動車の衝突安全性の向上や、自動車の軽量化による燃費向上とCO2等の排ガスの削減とに繋がる。
図1に示す通り、本発明の一実施形態に係るホットスタンプ部材(本実施形態に係るホットスタンプ部材)1は、母材鋼板2と、前記母材鋼板2の表面に形成されたFe-Al系めっき層と、を有し、前記Fe-Al系めっき層が、質量%で、64.0%以上99.4%以下のFeと、0.1%以上6.0%以下のSiと、0.5%以上30.0%以下のAlとを含有し、前記Fe-Al系めっき層の、質量%での、Si含有量をWSi、Al含有量をWAlとしたとき、5×WSi≦WAlを満足する。また、本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層は、表面側から順に、FeAl層4A,4B、Al固溶フェライト層3A,3Bの2層からなり、前記Fe-Al系めっき層の厚さが5μm以上80μm以下である。
図1では、Fe-Al系めっき層は、母材鋼板の両面に形成されているが、片面にのみ形成されていてもよい。
図1では、Fe-Al系めっき層は、母材鋼板の両面に形成されているが、片面にのみ形成されていてもよい。
以下、本実施形態に係るホットスタンプ部材について、詳細に説明する。以下、特に断りの無い限り、含有量の%は、質量%を意味する。
<Fe-Al系めっき層>
本実施形態に係るホットスタンプ部材は、母材鋼板2の片面または両面に形成されたFe-Al系めっき層を有する。本実施形態において、Fe-Al系めっき層とは、Fe-Alの2元系相、Siを含有したFe-Al-Siの3元系相および前記2元系相、前記3元系相にFe、Al、Si以外の元素が固溶された相であって、Feを30%以上含み、FeとAlとを合計で50%以上を含む層を意味する。Fe、Al、Si以外に含み得る元素として、母材鋼板や溶融Alめっき設備から混入する元素、Alめっき浴のインゴット中の不純物などがある。例えばC、Mn、B、Al、P、S、N、Cr、W、Mo、V、Ti、Nb、Ni、Cu、Sn、Sb、Mg、Ca、O、Znが挙げられ、それぞれFe-Al系めっき層中に0%以上5.0%以下含有される場合がある。
本実施形態に係るホットスタンプ部材は、母材鋼板2の片面または両面に形成されたFe-Al系めっき層を有する。本実施形態において、Fe-Al系めっき層とは、Fe-Alの2元系相、Siを含有したFe-Al-Siの3元系相および前記2元系相、前記3元系相にFe、Al、Si以外の元素が固溶された相であって、Feを30%以上含み、FeとAlとを合計で50%以上を含む層を意味する。Fe、Al、Si以外に含み得る元素として、母材鋼板や溶融Alめっき設備から混入する元素、Alめっき浴のインゴット中の不純物などがある。例えばC、Mn、B、Al、P、S、N、Cr、W、Mo、V、Ti、Nb、Ni、Cu、Sn、Sb、Mg、Ca、O、Znが挙げられ、それぞれFe-Al系めっき層中に0%以上5.0%以下含有される場合がある。
(質量%で、64.0%以上99.4%以下のFeと、0.1%以上6.0%以下のSiと、0.5%以上30.0%以下のAlとを含有する)
上述したように、ホットスタンプ部材の成形部耐食性が低下する原因は、熱間成形時のめっき剥離、およびめっき中に存在する(母材より)貴な元素であるSiと、(母材より)卑な元素であるAlとを含むめっき組織の存在にあると考えられる。
ホットスタンプ後のFe-Al系めっき層のAl含有量(WAl、質量%)が30.0%以下となるようにすることで、FeAl2、FeAl3、及び/またはFe2Al5等の硬質な金属間化合物の生成を抑制することができる。Fe-Al系めっき層のAl含有量が30.0%超であると、硬質な金属間化合物が生成し、成形によってめっき層が剥離しやすくなる。そのため、Al含有量は30.0%以下とする。Al含有量は、好ましくは28.0%以下である。
一方、Alは、フェライトフォーマー元素であり、Al固溶フェライト層の形成を促進する作用を有する。またAlは、卑な元素であるため、めっきによる母材の犠牲防食作用を有し、成形部耐食性を向上させる。Al含有量が0.5%未満ではその向上効果が得られない。そのため、Al含有量を0.5%以上にする。Al含有量は、好ましくは1.0%以上である。
また、Siは貴な元素であり、ホットスタンプ後のFe-Al系めっき層のSi含有量(WSi、質量%)が6.0%超では、めっきの犠牲防食作用を阻害することに加え、比較的硬質な3元系合金相であるAl2Fe3Si3(τ1、化学量論的な組成とならない場合もある)の生成が促進される。この場合、めっき剥離が生じるおそれがある。そのため、Si含有量を6.0%以下にする。Si含有量は、好ましくは5.5%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは4.5%、4.0%、または3.8%以下である。
一方、Si含有量が0.1%未満では、ホットスタンプ前のAl系めっき鋼板で過度にSiが少なくなり、調質圧延や加工時のめっき剥離が生じ、ホットスタンプ部材での成形部耐食性の低下にも繋がる。また、SiはAlと同じくフェライトフォーマー元素であり、Al固溶フェライト層の形成を促進し、合金層を軟質化させるので、Si含有量を過度に低減するとめっきが脆性となり成形部耐食性が低下する。そのため、Si含有量は0.1%以上である。Si含有量は、好ましくは0.2%以上である。
また、Fe-Al系めっき層のAl、Si以外の残部は、Feおよび不純物である。Fe含有量は、64.0%以上99.4%以下である。
不純物元素として、母材鋼板や溶融Alめっき設備、Alめっき浴のインゴット中のなどからめっき中に含有される、例えばC、Mn、B、Al、P、S、N、Cr、W、Mo、V、Ti、Nb、Ni、Cu、Sn、Sb、Mg、Ca、O、Znが挙げられる。これらの不純物は、合計で5.0%以下であれば、実質的な悪影響を及ぼさない。
上述したように、ホットスタンプ部材の成形部耐食性が低下する原因は、熱間成形時のめっき剥離、およびめっき中に存在する(母材より)貴な元素であるSiと、(母材より)卑な元素であるAlとを含むめっき組織の存在にあると考えられる。
ホットスタンプ後のFe-Al系めっき層のAl含有量(WAl、質量%)が30.0%以下となるようにすることで、FeAl2、FeAl3、及び/またはFe2Al5等の硬質な金属間化合物の生成を抑制することができる。Fe-Al系めっき層のAl含有量が30.0%超であると、硬質な金属間化合物が生成し、成形によってめっき層が剥離しやすくなる。そのため、Al含有量は30.0%以下とする。Al含有量は、好ましくは28.0%以下である。
一方、Alは、フェライトフォーマー元素であり、Al固溶フェライト層の形成を促進する作用を有する。またAlは、卑な元素であるため、めっきによる母材の犠牲防食作用を有し、成形部耐食性を向上させる。Al含有量が0.5%未満ではその向上効果が得られない。そのため、Al含有量を0.5%以上にする。Al含有量は、好ましくは1.0%以上である。
また、Siは貴な元素であり、ホットスタンプ後のFe-Al系めっき層のSi含有量(WSi、質量%)が6.0%超では、めっきの犠牲防食作用を阻害することに加え、比較的硬質な3元系合金相であるAl2Fe3Si3(τ1、化学量論的な組成とならない場合もある)の生成が促進される。この場合、めっき剥離が生じるおそれがある。そのため、Si含有量を6.0%以下にする。Si含有量は、好ましくは5.5%以下、より好ましくは5.0%以下、更に好ましくは4.5%、4.0%、または3.8%以下である。
一方、Si含有量が0.1%未満では、ホットスタンプ前のAl系めっき鋼板で過度にSiが少なくなり、調質圧延や加工時のめっき剥離が生じ、ホットスタンプ部材での成形部耐食性の低下にも繋がる。また、SiはAlと同じくフェライトフォーマー元素であり、Al固溶フェライト層の形成を促進し、合金層を軟質化させるので、Si含有量を過度に低減するとめっきが脆性となり成形部耐食性が低下する。そのため、Si含有量は0.1%以上である。Si含有量は、好ましくは0.2%以上である。
また、Fe-Al系めっき層のAl、Si以外の残部は、Feおよび不純物である。Fe含有量は、64.0%以上99.4%以下である。
不純物元素として、母材鋼板や溶融Alめっき設備、Alめっき浴のインゴット中のなどからめっき中に含有される、例えばC、Mn、B、Al、P、S、N、Cr、W、Mo、V、Ti、Nb、Ni、Cu、Sn、Sb、Mg、Ca、O、Znが挙げられる。これらの不純物は、合計で5.0%以下であれば、実質的な悪影響を及ぼさない。
上記のFe-Al系めっき層の化学組成は、後述するように、Fe-Al系めっき層を、表面から母材方向に向かって10点を等間隔で分析して得られる平均組成である。しかしながら、硬質な金属間化合物が生成しないように、各測定点でのAl含有量のうち最大の値(最大Al含有量)が、質量%で30.0%以下であることが好ましい。
(質量%での、Si含有量をWSi、Al含有量をWAlとしたとき、5×WSi≦WAlを満足する)
本実施形態に係るホットスタンプ部材では、更に、Fe-Al系めっき層の、Si含有量をWSi、Al含有量をWAlとしたとき、5×WSi≦WAlを満足する。貴な元素であるSiの含有量を、卑な元素であるAlの含有量の1/5以下に抑制にすることで、Fe-Al系めっき層の成形部耐食性の効果を高めることができる。より好ましくは、6×WSi≦WAlの関係を満足する。
すなわち、本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層は、Al含有量とSi含有量とが、図6の網掛け部に示される範囲にある。
本実施形態に係るホットスタンプ部材では、更に、Fe-Al系めっき層の、Si含有量をWSi、Al含有量をWAlとしたとき、5×WSi≦WAlを満足する。貴な元素であるSiの含有量を、卑な元素であるAlの含有量の1/5以下に抑制にすることで、Fe-Al系めっき層の成形部耐食性の効果を高めることができる。より好ましくは、6×WSi≦WAlの関係を満足する。
すなわち、本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層は、Al含有量とSi含有量とが、図6の網掛け部に示される範囲にある。
Fe-Al系めっき層は、例えばAl系めっき層を母材鋼板の表面に有するAl系めっき鋼板が、ホットスタンプに際して加熱され、めっき層中にFeが拡散することで、形成される。Fe-Al系めっき層として形成され得る金属間化合物は、例えばFe3Al、FeAl、ε相(FeAl相と液相とから包晶反応により生成する相)、FeAl2(ζ相)、Fe2Al5(η相)、FeAl3(θ相)、またはAl固溶フェライトである。めっき層中にSiが含有されている場合には、Fe-Al系金属間化合物の一部に代えてFe-Al-Si系金属間化合物が生成する。Fe-Al-Si系金属間化合物とは、例えばAl2Fe3Si3(τ1)、Al3FeSi(τ2)、Al2FeSi(τ3)、Al3FeSi2(τ4)、Al8Fe2Si(τ5)、Al9Fe2Si2(τ6)、Al3Fe2Si3(τ7)、Al2Fe3Si4(τ8)、Al4Fe1.7Si(τ10)、τ11-Al5Fe2Si(τ11)等、またはAl、Si固溶フェライトである。
Al系めっき鋼板(Alめっき浴組成:Al-9.5%Si)に従来技術の条件でホットスタンプを行うと、めっき層の構造は、図4に示すような5層構造(表面側から順に第1層:Fe2Al5層、第2層:τ1またはFeAl層、第3層:Fe2Al5層、第4層:FeAlまたはτ1層、第5層:Al固溶フェライト)または、表面側から順に、Fe2Al5層(τ1またはFeAlが分散)、FeAl層またはτ1層、Al固溶フェライト層からなる3層構造となる。いずれの場合にも、硬質のFe2Al5層が形成される。
Al系めっき鋼板(Alめっき浴組成:Al-9.5%Si)に従来技術の条件でホットスタンプを行うと、めっき層の構造は、図4に示すような5層構造(表面側から順に第1層:Fe2Al5層、第2層:τ1またはFeAl層、第3層:Fe2Al5層、第4層:FeAlまたはτ1層、第5層:Al固溶フェライト)または、表面側から順に、Fe2Al5層(τ1またはFeAlが分散)、FeAl層またはτ1層、Al固溶フェライト層からなる3層構造となる。いずれの場合にも、硬質のFe2Al5層が形成される。
本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層は、上述のようにAl含有量及びSi含有量が制御された上で、後述のようにホットスタンプの製造条件が適正に制御されることによって、上述した形成され得る金属間化合物のうち、剥離の原因となる硬質な金属間化合物であるFeAl2、FeAl3、Fe2Al5(それぞれAl:40~60%、HV900~1000の値をとり得る)が生成しない。
本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層は、HV300~700の軟質なAl固溶フェライト層とFeAl層との2つの層からなるめっき層(いずれもAl:30.0質量%以下)である。また、Fe-Al系めっき層は、Al固溶フェライト層よりも硬質であるFeAl層が、表面側に形成された(表面側から順にFeAl層、Al固溶フェライト層となった)、2層構造である。Fe-Al系めっき層をこのような2層構造とすることで、成形部耐食性とともにプレス成形で金型からの耐疵付き性にも優れ、めっき剥離を抑制できるホットスタンプ部材が得られる。
本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層は、HV300~700の軟質なAl固溶フェライト層とFeAl層との2つの層からなるめっき層(いずれもAl:30.0質量%以下)である。また、Fe-Al系めっき層は、Al固溶フェライト層よりも硬質であるFeAl層が、表面側に形成された(表面側から順にFeAl層、Al固溶フェライト層となった)、2層構造である。Fe-Al系めっき層をこのような2層構造とすることで、成形部耐食性とともにプレス成形で金型からの耐疵付き性にも優れ、めっき剥離を抑制できるホットスタンプ部材が得られる。
図2にFe-Al系めっき層が、表面から順にFeAl層、Al固溶フェライト層の2層からなる場合の層構造を有するホットスタンプ部材の一例を示す。また、図4にFe-Al系めっき層が、Fe2Al5層(第1層、第3層)を含む5層構造からなる場合の一例を示す。
図2は、Al系めっき鋼板(片面当たりの付着量80g/m2)を1050℃で2分保持することで得られためっき層の断面図である(保持後、平板金型を用いて冷却してから観察)。図中の印「×」はFe-Al系めっき層の組成の分析点であり、表面から母材方向に向かって10点を等間隔で分析したことを示している。
図4は、Al系めっき鋼板(片面当たりの付着量80g/m2)を950℃で0.5分保持することで得られためっき層の断面図である(保持後、平板金型を用いて冷却してから観察)。
図2、図4それぞれのめっき層に対し熱間成形を行った後の、めっき層の断面写真を図5A、図5Bに示す。Fe2Al5層を含まず、FeAl層とAl固溶フェライト層との2層構造のめっき層(図5A)では、5層構造のめっき層(図5B)に比べてクラックの発生頻度が減少し、FeAl層よりも軟質なAl固溶フェライト層ではクラックの発生頻度が更に減少していることが分かる。
図2は、Al系めっき鋼板(片面当たりの付着量80g/m2)を1050℃で2分保持することで得られためっき層の断面図である(保持後、平板金型を用いて冷却してから観察)。図中の印「×」はFe-Al系めっき層の組成の分析点であり、表面から母材方向に向かって10点を等間隔で分析したことを示している。
図4は、Al系めっき鋼板(片面当たりの付着量80g/m2)を950℃で0.5分保持することで得られためっき層の断面図である(保持後、平板金型を用いて冷却してから観察)。
図2、図4それぞれのめっき層に対し熱間成形を行った後の、めっき層の断面写真を図5A、図5Bに示す。Fe2Al5層を含まず、FeAl層とAl固溶フェライト層との2層構造のめっき層(図5A)では、5層構造のめっき層(図5B)に比べてクラックの発生頻度が減少し、FeAl層よりも軟質なAl固溶フェライト層ではクラックの発生頻度が更に減少していることが分かる。
Fe-Al系めっき層の組成、及び層構造は、以下の方法で求めることができる。
Fe-Al系めっき層の組成は、ホットスタンプ部材を切り出し断面研磨した後、ナイタールエッチングを実施し、断面から電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて1000倍の倍率で組成像として観察し、Fe-Al系めっき層を元素分析することで求める。元素分析する時には、例えば図2(この図は光学顕微鏡の図である)の×印に示すように、めっき表面から母材方向に向かって各点の間を等間隔として10点分析し、1点目のFe、Al、Siの質量%(1点目:WFe1、WAl1、WSi2)、2点目のFe、Al、Siの質量%(2点目:WFe2、WAl2、WSi2)、・・・、10点目のFe、Al、Siの質量%(10点目:WFe10、WAl10、WSi10)をそれぞれ求め、WFe1、WFe2、・・・、WFe10の平均値をWFeとして、WAl1、WAl2、・・・、WAl10の平均値をWAlとして、WSi1、WSi2、・・・、WSi10の平均値をWSiとする。
また、同様にして式(1)を満たすかどうかの確認方法としては、得られたWSi、WAlを用いて、5×WSi≦WAlであるかどうかを確認する。ここで言うEPMAを用いた元素分析で質量%を求める際は、分析時の汚染(元素:C、O)の影響を除くため、検出された元素からC、Oの元素は除いて算出する。
また、Fe-Al系めっき層の層構造は、表面から母材方向に向かって等間隔で測定したAl含有量の分析結果(WAl1、WAl2、・・・、WAl10の値)のそれぞれが、質量%で、20.0%超30.0%以下である範囲をFeAl層、0.5%以上20.0%以下である範囲をAl固溶フェライト層と定義する。
組成以外のFeAl層の特定方法としては透過型電子顕微鏡(TEM)による構造解析による方法もあるが、本実施形態では、簡便な方法としてEPMAによるAl濃度の分析結果を用いる。
図2の例で言えば、めっき層のうち、ボイド付近にFe-Al層とAl固溶フェライト層との境界があり、表面側(図中上側)がFeAl層、母材側(図中下側)がAl固溶フェライト層である。
上記EPMA分析によれば、Fe-Al系めっき層の、Fe、Al、Si以外の含有量も測定できる。
Fe-Al系めっき層の組成は、ホットスタンプ部材を切り出し断面研磨した後、ナイタールエッチングを実施し、断面から電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて1000倍の倍率で組成像として観察し、Fe-Al系めっき層を元素分析することで求める。元素分析する時には、例えば図2(この図は光学顕微鏡の図である)の×印に示すように、めっき表面から母材方向に向かって各点の間を等間隔として10点分析し、1点目のFe、Al、Siの質量%(1点目:WFe1、WAl1、WSi2)、2点目のFe、Al、Siの質量%(2点目:WFe2、WAl2、WSi2)、・・・、10点目のFe、Al、Siの質量%(10点目:WFe10、WAl10、WSi10)をそれぞれ求め、WFe1、WFe2、・・・、WFe10の平均値をWFeとして、WAl1、WAl2、・・・、WAl10の平均値をWAlとして、WSi1、WSi2、・・・、WSi10の平均値をWSiとする。
また、同様にして式(1)を満たすかどうかの確認方法としては、得られたWSi、WAlを用いて、5×WSi≦WAlであるかどうかを確認する。ここで言うEPMAを用いた元素分析で質量%を求める際は、分析時の汚染(元素:C、O)の影響を除くため、検出された元素からC、Oの元素は除いて算出する。
また、Fe-Al系めっき層の層構造は、表面から母材方向に向かって等間隔で測定したAl含有量の分析結果(WAl1、WAl2、・・・、WAl10の値)のそれぞれが、質量%で、20.0%超30.0%以下である範囲をFeAl層、0.5%以上20.0%以下である範囲をAl固溶フェライト層と定義する。
組成以外のFeAl層の特定方法としては透過型電子顕微鏡(TEM)による構造解析による方法もあるが、本実施形態では、簡便な方法としてEPMAによるAl濃度の分析結果を用いる。
図2の例で言えば、めっき層のうち、ボイド付近にFe-Al層とAl固溶フェライト層との境界があり、表面側(図中上側)がFeAl層、母材側(図中下側)がAl固溶フェライト層である。
上記EPMA分析によれば、Fe-Al系めっき層の、Fe、Al、Si以外の含有量も測定できる。
(FeAl層の厚みD1(μm)と、Al固溶フェライト層の厚みD2(μm)の比D2/D1が、0.8以上2.5以下)
FeAl層、Al固溶フェライト層はいずれもFe2Al5よりも軟質であるため、板厚が減少するような非常に厳しい成形を受けた際の成形部耐食性の点で重要な層であり、D2/D1の比が0.8以上2.5以下であることが、成形部耐食性の向上の点から、好ましい。ここで言う厳しい成形とは、例えば、板厚比(=(1-(圧延後の板厚/圧延前の板厚))×100)が10%以上となるような圧延を受けることを指す。
D2/D1が0.8未満であると、より軟質なAl固溶フェライト層のFe-Al系めっき層に占める割合が少ないため、熱間成形時にめっき剥離が増加し成形部耐食性が低下する場合がある。そのため、D2/D1は0.8以上が好ましい。D2/D1はより好ましくは1.0以上である。一方、D2/D1が2.5超であると、FeAl層のFe-Al系めっき層に占める割合が少ないため、プレス成形時の金型から受ける疵付きが増加し、成形部耐食性が低下する場合がある。そのため、D2/D1は2.5以下が好ましい。より好ましくは、2.1以下である。
FeAl層の厚みD1、Al固溶フェライトD2の厚みは、ホットスタンプ加熱条件と加熱されるAl系めっき鋼板のめっき付着量よって制御され、ホットスタンプ時の保持時間が長い程または加熱温度が高い程、またはめっき付着量が多い程、D1、D2はそれぞれ増加する。
FeAl層、Al固溶フェライト層はいずれもFe2Al5よりも軟質であるため、板厚が減少するような非常に厳しい成形を受けた際の成形部耐食性の点で重要な層であり、D2/D1の比が0.8以上2.5以下であることが、成形部耐食性の向上の点から、好ましい。ここで言う厳しい成形とは、例えば、板厚比(=(1-(圧延後の板厚/圧延前の板厚))×100)が10%以上となるような圧延を受けることを指す。
D2/D1が0.8未満であると、より軟質なAl固溶フェライト層のFe-Al系めっき層に占める割合が少ないため、熱間成形時にめっき剥離が増加し成形部耐食性が低下する場合がある。そのため、D2/D1は0.8以上が好ましい。D2/D1はより好ましくは1.0以上である。一方、D2/D1が2.5超であると、FeAl層のFe-Al系めっき層に占める割合が少ないため、プレス成形時の金型から受ける疵付きが増加し、成形部耐食性が低下する場合がある。そのため、D2/D1は2.5以下が好ましい。より好ましくは、2.1以下である。
FeAl層の厚みD1、Al固溶フェライトD2の厚みは、ホットスタンプ加熱条件と加熱されるAl系めっき鋼板のめっき付着量よって制御され、ホットスタンプ時の保持時間が長い程または加熱温度が高い程、またはめっき付着量が多い程、D1、D2はそれぞれ増加する。
(Fe-Al系めっき層の厚さ:5μm以上80μm以下)
本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層の厚さは、5μm以上80μm以下である。Fe-Al系めっき層の厚さが5μm未満では成形部耐食性が低下する。Fe-Al系めっき層の厚さは、好ましくは7μm以上、より好ましくは10μm以上である。一方、Fe-Al系めっき層の厚さが80μm超では、プレス成形時にせん断応力や圧縮応力が強く掛り、めっきが容易に損傷し(パウダリング現象とも呼ばれる)、成形部耐食性が低下する。Fe-Al系めっき層の厚さは、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下である。
本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層の厚さは、5μm以上80μm以下である。Fe-Al系めっき層の厚さが5μm未満では成形部耐食性が低下する。Fe-Al系めっき層の厚さは、好ましくは7μm以上、より好ましくは10μm以上である。一方、Fe-Al系めっき層の厚さが80μm超では、プレス成形時にせん断応力や圧縮応力が強く掛り、めっきが容易に損傷し(パウダリング現象とも呼ばれる)、成形部耐食性が低下する。Fe-Al系めっき層の厚さは、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下である。
FeAl層の厚さD1、Al固溶フェライト層の厚さD2、及びFe-Al系めっき層の厚さ(D1+D2)は、例えば、断面を研磨したサンプルからEPMAを用いて1視野の大きさを100μm×100μmとして観察し、厚みを測定する。厚みを測定する際、隣り合う、Al含有量が0.5%以上20.0%以下である測定点とAl含有量が20.0%超30.0%以下である測定点との板厚方向の中点を、FeAl層とAl固溶フェライト層との境界とみなす。
(ボイドを含有し、ボイドの直径が、5μm以上15μm以下)
本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層にはボイドが含有され、ボイドの大きさが直径で5μm以上15μm以下であることが好ましい。ボイドはAl系めっき層のAlが母材鋼板に向かって拡散する内方拡散と、母材鋼板のFeがAl系めっき層に向かって拡散する外方拡散との、拡散速度差によって生じるカーケンダルボイド(Kirkendall void)と考えられる。カーケンダルボイドがFe-Al系めっき層に含有されることで、ホットスタンプの成形時にめっきに掛かる応力集中が緩和されてめっきの剥離が抑制される結果、成形部耐食性が向上する。この向上効果はボイドの大きさが、後述する方法にて定義される直径で、5μm未満の場合には得られない。このため、ボイドの大きさは直径で5μm以上である。好ましくは6μm以上、より好ましくは7μm以上、または8μm以上である。
また、ボイドの大きさは、直径で15μm以下であることが好ましい。直径が15μmを超えると、ボイドが逆にホットスタンプ成形時に形成されるクラックの起点となり、めっき剥離が増加する。ボイドの直径は、好ましくは14μm以下、より好ましくは13μm以下、または12μm以下である。
本実施形態に係るホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層にはボイドが含有され、ボイドの大きさが直径で5μm以上15μm以下であることが好ましい。ボイドはAl系めっき層のAlが母材鋼板に向かって拡散する内方拡散と、母材鋼板のFeがAl系めっき層に向かって拡散する外方拡散との、拡散速度差によって生じるカーケンダルボイド(Kirkendall void)と考えられる。カーケンダルボイドがFe-Al系めっき層に含有されることで、ホットスタンプの成形時にめっきに掛かる応力集中が緩和されてめっきの剥離が抑制される結果、成形部耐食性が向上する。この向上効果はボイドの大きさが、後述する方法にて定義される直径で、5μm未満の場合には得られない。このため、ボイドの大きさは直径で5μm以上である。好ましくは6μm以上、より好ましくは7μm以上、または8μm以上である。
また、ボイドの大きさは、直径で15μm以下であることが好ましい。直径が15μmを超えると、ボイドが逆にホットスタンプ成形時に形成されるクラックの起点となり、めっき剥離が増加する。ボイドの直径は、好ましくは14μm以下、より好ましくは13μm以下、または12μm以下である。
ボイドは、図3に例示するFe-Al系めっき層の内部に含まれるボイドである。ボイドは、図3に示すように、FeAl層と、Al固溶フェライト層の界面付近に形成されることが多いが、いずれの位置であっても効果は得られる。
ボイドの大きさの特定方法としては、ホットスタンプ部材を切り出して断面研磨した後、ナイタールエッチングを実施し、断面を、光学顕微鏡を用いて1000倍の倍率で観察する。ボイドは、めっきの空孔であるため光学顕微鏡では凹んで観察される。観察されたボイドを内包する最小の外接円を描き、その外接円の直径を、ボイドの直径として測定する。例えば図3の(a)ではボイドの直径が5.0μm、(b)ではボイドの直径が6.1μmとなる。本実施形態では、大きなボイドから順に10箇所のボイドの直径を測定し、平均した値をボイドの直径とする。ボイドは、通常は円形又は楕円形であり、ホットスタンプの加熱温度、保持時間、またはAlとFeとの拡散の影響を受け、場合によっては、複数のボイド同士が拡大する過程で接し、不定形となる場合がある。
ボイドの大きさの特定方法としては、ホットスタンプ部材を切り出して断面研磨した後、ナイタールエッチングを実施し、断面を、光学顕微鏡を用いて1000倍の倍率で観察する。ボイドは、めっきの空孔であるため光学顕微鏡では凹んで観察される。観察されたボイドを内包する最小の外接円を描き、その外接円の直径を、ボイドの直径として測定する。例えば図3の(a)ではボイドの直径が5.0μm、(b)ではボイドの直径が6.1μmとなる。本実施形態では、大きなボイドから順に10箇所のボイドの直径を測定し、平均した値をボイドの直径とする。ボイドは、通常は円形又は楕円形であり、ホットスタンプの加熱温度、保持時間、またはAlとFeとの拡散の影響を受け、場合によっては、複数のボイド同士が拡大する過程で接し、不定形となる場合がある。
<母材鋼板>
本実施形態に係るホットスタンプ部材が有する母材鋼板について、詳細に説明する。
本実施形態に係るホットスタンプ部材が有する母材鋼板について、詳細に説明する。
(化学組成)
本実施形態に係るホットスタンプ部材は、Fe-Al系めっき層が重要であり、母材鋼板については必ずしも限定されない。しかしながら、ホットスタンプ法は、金型によるプレス加工と焼入とを略同時に行う工法であることから、母材鋼板の化学組成は、焼入れ性の良い成分系として、以下の範囲であることが好ましい。以下の説明において、特に断りのない限り、成分についての「%」は、「質量%」を意味する。
本実施形態に係るホットスタンプ部材は、Fe-Al系めっき層が重要であり、母材鋼板については必ずしも限定されない。しかしながら、ホットスタンプ法は、金型によるプレス加工と焼入とを略同時に行う工法であることから、母材鋼板の化学組成は、焼入れ性の良い成分系として、以下の範囲であることが好ましい。以下の説明において、特に断りのない限り、成分についての「%」は、「質量%」を意味する。
本実施形態に係るホットスタンプ部材の母材鋼板の化学組成は、質量%で、C:0.10%以上0.50%以下、Si:0.01%以上2.00%以下、Mn:0.30%以上5.00%以下、B:0.0002%以上0.0100%以下、Al:1.00%以下、P:0.100%以下、S:0.100%以下、N:0.0100%以下、を含有し、任意に、Cr:2.00%以下、W:3.0%以下、Mo:3.0%以下、Co:3.0%以下、V:2.0%以下、Ti:0.50%以下、Nb:1.00%以下、Ni:5.0%以下、Cu:3.0%以下、Sn:0.10%以下、Sb:0.10%以下、Mg:0.0100%以下、Ca:0.0100%以下、Zr:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、及びO:0.0070%以下からなる群から選択される1種以上を含有し、残部が、Fe及び不純物であることが好ましい。
(C:0.10%以上0.50%以下)
炭素(C)は、焼入れ性を高める元素である。C含有量が0.10%未満では、焼入れ性が低下してホットスタンプ部材の強度が不足する。そのため、C含有量を0.10%以上とすることが好ましい。C含有量は、より好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.20%以上、0.25%以上、または0.28%以上である。
一方、C含有量が0.50%を超えると、鋼板の靭性が著しく低下し、加工性が低下する。そのため、C含有量は、0.50%以下とすることが好ましい。C含有量は、より好ましくは0.45%以下であり、さらに好ましくは、0.43%以下、または0.40%以下である。
炭素(C)は、焼入れ性を高める元素である。C含有量が0.10%未満では、焼入れ性が低下してホットスタンプ部材の強度が不足する。そのため、C含有量を0.10%以上とすることが好ましい。C含有量は、より好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.20%以上、0.25%以上、または0.28%以上である。
一方、C含有量が0.50%を超えると、鋼板の靭性が著しく低下し、加工性が低下する。そのため、C含有量は、0.50%以下とすることが好ましい。C含有量は、より好ましくは0.45%以下であり、さらに好ましくは、0.43%以下、または0.40%以下である。
(Si:0.01%以上2.00%以下)
ケイ素(Si)含有量が0.01%未満である場合、焼入れ性が低下し、ホットスタンプ部材の強度が低下する。また、疲労特性も低下する。そのため、Si含有量を0.01%以上とすることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上である。
一方、SiはFeよりも酸化されやすい元素(易酸化性元素)であり、連続焼鈍めっきラインにおいてSi含有量が2.00%を超えると、焼鈍処理中に安定なSi系酸化被膜が鋼板表面に形成されて、溶融Alめっきの密着性が阻害され、不めっきを生じる。そのため、Si含有量は、2.00%以下とすることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは1.50%以下であり、さらに好ましくは1.00%以下、0.50%以下、または0.10%以下である。
ケイ素(Si)含有量が0.01%未満である場合、焼入れ性が低下し、ホットスタンプ部材の強度が低下する。また、疲労特性も低下する。そのため、Si含有量を0.01%以上とすることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上である。
一方、SiはFeよりも酸化されやすい元素(易酸化性元素)であり、連続焼鈍めっきラインにおいてSi含有量が2.00%を超えると、焼鈍処理中に安定なSi系酸化被膜が鋼板表面に形成されて、溶融Alめっきの密着性が阻害され、不めっきを生じる。そのため、Si含有量は、2.00%以下とすることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは1.50%以下であり、さらに好ましくは1.00%以下、0.50%以下、または0.10%以下である。
(Mn:0.30%以上5.00%以下)
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高め、更に、Sに起因する熱間脆性を抑制可能な元素である。Mn含有量が0.30%未満である場合には、焼入れ性が低下して強度が不足する。そのため、Mn含有量を0.30%以上とすることが好ましい。Mn含有量は、より好ましくは0.40%以上、さらに好ましくは0.50%以上または0.60%以上である。
一方、Mn含有量が5.00%を超える場合には、焼入れ後のホットスタンプ部材の耐衝突特性が低下する。そのため、Mn含有量は5.00%以下とすることが好ましい。Mn含有量は、より好ましくは4.50%以下であり、さらに好ましくは4.00%以下または3.50%以下である。
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高め、更に、Sに起因する熱間脆性を抑制可能な元素である。Mn含有量が0.30%未満である場合には、焼入れ性が低下して強度が不足する。そのため、Mn含有量を0.30%以上とすることが好ましい。Mn含有量は、より好ましくは0.40%以上、さらに好ましくは0.50%以上または0.60%以上である。
一方、Mn含有量が5.00%を超える場合には、焼入れ後のホットスタンプ部材の耐衝突特性が低下する。そのため、Mn含有量は5.00%以下とすることが好ましい。Mn含有量は、より好ましくは4.50%以下であり、さらに好ましくは4.00%以下または3.50%以下である。
(B:0.0002%以上0.0100%以下)
ホウ素(B)は、焼入れ性の観点から有用な元素である。この効果を得るため、B含有量を、0.0002%以上とすることが好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0005%以上、さらに好ましくは0.0010%、0.0015%以上または0.0020%以上である。
一方、B含有量が0.0100%を超えると、上記の焼入れ性向上効果は飽和する上、鋳造欠陥や熱間圧延時の割れを生じさせるなど、製造性が低下する。そのため、B含有量を0.0100%以下とすることが好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0080%以下であり、さらに好ましくは0.0070%以下または0.0060%以下である。
ホウ素(B)は、焼入れ性の観点から有用な元素である。この効果を得るため、B含有量を、0.0002%以上とすることが好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0005%以上、さらに好ましくは0.0010%、0.0015%以上または0.0020%以上である。
一方、B含有量が0.0100%を超えると、上記の焼入れ性向上効果は飽和する上、鋳造欠陥や熱間圧延時の割れを生じさせるなど、製造性が低下する。そのため、B含有量を0.0100%以下とすることが好ましい。B含有量は、より好ましくは0.0080%以下であり、さらに好ましくは0.0070%以下または0.0060%以下である。
(P:0.100%以下)
リン(P)は、不純物として含有される元素である。P含有量が0.100%を超えると、靭性が低下するなどの悪影響が顕著になる。そのため、P含有量は、0.100%以下とすることが好ましい。P含有量は、より好ましくは0.080%以下、さらに好ましくは0.060%以下または0.050%以下である。
一方、P含有量の下限は、特に限定するものではなく、0%としてもよい。しかしながら、P含有量を0.001%未満とすることは、精錬限界の観点から経済的ではない。また、Pは固溶強化元素でもあり、比較的安価に鋼板の強度を上昇させることができる。そのため、P含有量を0.001%以上としてもよい。
リン(P)は、不純物として含有される元素である。P含有量が0.100%を超えると、靭性が低下するなどの悪影響が顕著になる。そのため、P含有量は、0.100%以下とすることが好ましい。P含有量は、より好ましくは0.080%以下、さらに好ましくは0.060%以下または0.050%以下である。
一方、P含有量の下限は、特に限定するものではなく、0%としてもよい。しかしながら、P含有量を0.001%未満とすることは、精錬限界の観点から経済的ではない。また、Pは固溶強化元素でもあり、比較的安価に鋼板の強度を上昇させることができる。そのため、P含有量を0.001%以上としてもよい。
(S:0.100%以下)
硫黄(S)は、不純物として含有される元素であり、MnSとして鋼中の介在物になる元素である。S含有量が0.100%を超える場合には、MnSが破壊の起点となり、延性及び靭性が低下して、加工性が低下する。そのため、S含有量は、0.100%以下とすることが好ましい。S含有量は、より好ましくは0.080%以下であり、さらに好ましくは0.050%以下または0.030%以下である。
一方、S含有量の下限は、特に限定するものではなく、0%としてもよい。しかしながら、S含有量を0.001%未満とすることは、精錬限界の観点から経済的ではない。そのため、S含有量を0.001%以上としてもよい。
硫黄(S)は、不純物として含有される元素であり、MnSとして鋼中の介在物になる元素である。S含有量が0.100%を超える場合には、MnSが破壊の起点となり、延性及び靭性が低下して、加工性が低下する。そのため、S含有量は、0.100%以下とすることが好ましい。S含有量は、より好ましくは0.080%以下であり、さらに好ましくは0.050%以下または0.030%以下である。
一方、S含有量の下限は、特に限定するものではなく、0%としてもよい。しかしながら、S含有量を0.001%未満とすることは、精錬限界の観点から経済的ではない。そのため、S含有量を0.001%以上としてもよい。
(Al:1.00%以下)
アルミニウム(Al)は、脱酸剤として鋼中に含有される。Alは、Feよりも易酸化性元素であるため、Al含有量が1.00%を超える場合には、焼鈍処理中に安定なAl系酸化被膜が鋼板表面に形成されてしまい、溶融Alめっきの密着性が阻害され不めっきが生じる。そのため、Al含有量を1.00%以下とすることが好ましい。Al含有量は、より好ましくは0.50%以下であり、さらに好ましくは0.30%以下、0.20%以下または0.10%以下である。
一方、Al含有量の下限は、特に限定するものではなく、0%としてもよいいが、Al含有量を0.01%未満とする場合には精錬限界の観点から経済的ではない。そのため、Al含有量を0.01%以上としてもよい。
アルミニウム(Al)は、脱酸剤として鋼中に含有される。Alは、Feよりも易酸化性元素であるため、Al含有量が1.00%を超える場合には、焼鈍処理中に安定なAl系酸化被膜が鋼板表面に形成されてしまい、溶融Alめっきの密着性が阻害され不めっきが生じる。そのため、Al含有量を1.00%以下とすることが好ましい。Al含有量は、より好ましくは0.50%以下であり、さらに好ましくは0.30%以下、0.20%以下または0.10%以下である。
一方、Al含有量の下限は、特に限定するものではなく、0%としてもよいいが、Al含有量を0.01%未満とする場合には精錬限界の観点から経済的ではない。そのため、Al含有量を0.01%以上としてもよい。
(N:0.0100%以下)
窒素(N)は、不純物として含有される元素である。固溶Nは特性に悪影響を及ぼすので、Nは特性の安定化の観点からは介在物の状態とすることが望ましく、Ti、Nb、及びAl等と結合させることが好ましい。N含有量が増加すると、Nを介在物とし固定するために含有させる元素の含有量が多量となり、コストアップを招くことになる。そのため、N含有量は、0.0100%以下とすることが好ましい。N含有量は、より好ましくは0.0080%以下、さらに好ましくは0.0060%以下である。
一方、N含有量の下限は特に限定するものではなく、0%としてもよいが、N含有量を0.0010%未満にしようとすると、精錬限界の観点から経済的ではない。従って、N含有量は、0.0010%以上としてもよい。
窒素(N)は、不純物として含有される元素である。固溶Nは特性に悪影響を及ぼすので、Nは特性の安定化の観点からは介在物の状態とすることが望ましく、Ti、Nb、及びAl等と結合させることが好ましい。N含有量が増加すると、Nを介在物とし固定するために含有させる元素の含有量が多量となり、コストアップを招くことになる。そのため、N含有量は、0.0100%以下とすることが好ましい。N含有量は、より好ましくは0.0080%以下、さらに好ましくは0.0060%以下である。
一方、N含有量の下限は特に限定するものではなく、0%としてもよいが、N含有量を0.0010%未満にしようとすると、精錬限界の観点から経済的ではない。従って、N含有量は、0.0010%以上としてもよい。
本実施形態に係るホットスタンプ部材の母材鋼板では、上記の元素に加えてさらに、以下の元素(成分)を含有させることができる。以下に説明する元素を含まなくても、好ましい母材鋼板が得られるので、以下の元素の含有量の下限値は全て0%である。
(Cr:0%以上2.00%以下)
クロム(Cr)は、Mnと同様に、鋼の焼入れ性を高める効果を有する元素であるが、一般にMnよりも高価であるため含有させなくても(0%でも)良い。ただし、Mnだけでは焼き入れ性が不足する場合にはCrを含有することが好ましく、その場合、Cr含有量は0.01%以上とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは0.10%以上である。
一方、Crは、Feよりも酸化されやすい元素(易酸化性元素)であるため、Cr含有量が2.00%を超える場合には、CGLの焼鈍処理中に安定なCr系酸化被膜が鋼板表面に形成されてしまい、溶融Alめっきの密着性を阻害して不めっきを生じる。そのため、Cr含有量は、2.00%以下とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは1.60%以下、さらに好ましくは1.40%以下である。
クロム(Cr)は、Mnと同様に、鋼の焼入れ性を高める効果を有する元素であるが、一般にMnよりも高価であるため含有させなくても(0%でも)良い。ただし、Mnだけでは焼き入れ性が不足する場合にはCrを含有することが好ましく、その場合、Cr含有量は0.01%以上とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは0.10%以上である。
一方、Crは、Feよりも酸化されやすい元素(易酸化性元素)であるため、Cr含有量が2.00%を超える場合には、CGLの焼鈍処理中に安定なCr系酸化被膜が鋼板表面に形成されてしまい、溶融Alめっきの密着性を阻害して不めっきを生じる。そのため、Cr含有量は、2.00%以下とすることが好ましい。Cr含有量は、より好ましくは1.60%以下、さらに好ましくは1.40%以下である。
(W、Mo、Co:それぞれ0%以上3.0%以下)
タングステン(W)、モリブデン(Mo)及びコバルト(Co)は、それぞれ鋼の焼入れ性を向上させる元素である。この効果を得るため、W、Mo、Coはそれぞれ、0.01%以上含有させることが好ましく、0.1%以上含有させることがより好ましい。
一方、W、Mo、Coの含有量がそれぞれ3.0%を超える場合、上記効果は飽和し、また、コストも上昇する。そのため、W、Mo、Coの含有量は、それぞれ、3.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは、W、Mo、Coの含有量は、それぞれ1.0%以下である。
タングステン(W)、モリブデン(Mo)及びコバルト(Co)は、それぞれ鋼の焼入れ性を向上させる元素である。この効果を得るため、W、Mo、Coはそれぞれ、0.01%以上含有させることが好ましく、0.1%以上含有させることがより好ましい。
一方、W、Mo、Coの含有量がそれぞれ3.0%を超える場合、上記効果は飽和し、また、コストも上昇する。そのため、W、Mo、Coの含有量は、それぞれ、3.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは、W、Mo、Coの含有量は、それぞれ1.0%以下である。
(V:0%以上2.0%以下)
バナジウム(V)は、鋼の焼入れ性を向上させる元素である。この効果を得るためV含有量を0.01%以上とすることが好ましい。V含有量は、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上である。
一方、V含有量が2.0%を超えると、上記効果は飽和し、また、コストも上昇する。そのため、V含有量は2.0%以下とすることが好ましい。V含有量は、より好ましくは、1.0%以下である。
バナジウム(V)は、鋼の焼入れ性を向上させる元素である。この効果を得るためV含有量を0.01%以上とすることが好ましい。V含有量は、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上である。
一方、V含有量が2.0%を超えると、上記効果は飽和し、また、コストも上昇する。そのため、V含有量は2.0%以下とすることが好ましい。V含有量は、より好ましくは、1.0%以下である。
(Ti:0%以上0.50%以下)
チタン(Ti)は、Nを固定するために有効な元素である。そのため、含有させることが好ましい。特に、Nを固定する効果を得る場合、質量%にてN含有量の約3.4倍程度またはそれ以上含有させることがより好ましい。N含有量は、低減させたとしても10ppm(0.001%)程度となることが多いので、実際のTi含有量としては、0.005%以上であることがより好ましい。
一方、Ti含有量が過剰になると、焼入れ性が低下し、強度が低下する。このような焼き入れ性及び強度の低下は、Ti含有量が0.50%を超えると顕著となる。そのため、Ti含有量は、0.50%以下とすることが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.10%以下である。
チタン(Ti)は、Nを固定するために有効な元素である。そのため、含有させることが好ましい。特に、Nを固定する効果を得る場合、質量%にてN含有量の約3.4倍程度またはそれ以上含有させることがより好ましい。N含有量は、低減させたとしても10ppm(0.001%)程度となることが多いので、実際のTi含有量としては、0.005%以上であることがより好ましい。
一方、Ti含有量が過剰になると、焼入れ性が低下し、強度が低下する。このような焼き入れ性及び強度の低下は、Ti含有量が0.50%を超えると顕著となる。そのため、Ti含有量は、0.50%以下とすることが好ましい。Ti含有量は、より好ましくは0.10%以下である。
(Nb:0%以上1.00%以下)
ニオブ(Nb)は、Nを固定するために有効な元素である。そのため、含有させることが好ましい。特に、Nを固定する効果を得る場合、質量%にてN含有量の約6.6倍程度またはそれ以上含有させることがより好ましい。N含有量は、低減させたとしても10ppm(0.001%)程度となることが多いので、実際のNb含有量としては、0.01%以上であることがより好ましい。
一方、Nb含有量が過剰になると、焼入れ性が低下し、強度が低下する。このような焼き入れ性及び強度の低下は、Nb含有量が1.00%を超えると顕著となるので、Nb含有量は、1.00%以下とすることが好ましい。
ニオブ(Nb)は、Nを固定するために有効な元素である。そのため、含有させることが好ましい。特に、Nを固定する効果を得る場合、質量%にてN含有量の約6.6倍程度またはそれ以上含有させることがより好ましい。N含有量は、低減させたとしても10ppm(0.001%)程度となることが多いので、実際のNb含有量としては、0.01%以上であることがより好ましい。
一方、Nb含有量が過剰になると、焼入れ性が低下し、強度が低下する。このような焼き入れ性及び強度の低下は、Nb含有量が1.00%を超えると顕著となるので、Nb含有量は、1.00%以下とすることが好ましい。
また、母材鋼板の化学組成として、Ni、Cu、Sn、Sb等が含有されていても、本実施形態に係るホットスタンプ部材が目的とする効果は阻害されるものではない。
(Ni:0%以上5.0%以下)
ニッケル(Ni)は、焼入れ性の向上、及び耐衝撃特性改善に繋がる低温靭性の観点で有用な元素である。そのため、含有させることが好ましい。これらの効果を得る場合、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましい。Ni含有量は、より好ましくは0.1%以上である。
一方、Ni含有量が5.0%を超えると、上記のような効果は飽和する上、コストが上昇する。そのため、Ni含有量を5.0%以下とすることが好ましい。
ニッケル(Ni)は、焼入れ性の向上、及び耐衝撃特性改善に繋がる低温靭性の観点で有用な元素である。そのため、含有させることが好ましい。これらの効果を得る場合、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましい。Ni含有量は、より好ましくは0.1%以上である。
一方、Ni含有量が5.0%を超えると、上記のような効果は飽和する上、コストが上昇する。そのため、Ni含有量を5.0%以下とすることが好ましい。
(Cu:0%以上3.0%以下)
銅(Cu)は、焼入れ性に加え、靭性の観点で有用な元素であるため、含有させることが好ましい。この効果を得る場合Cu含有量を、0.01%以上とすることが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは0.1%以上である。
一方、Cu含有量が、3.0%を超えると、上記のような効果は飽和する上、コストが上昇する。また、過剰なCuは、鋳片性状の劣化や熱間圧延時の割れや疵の発生を生じさせる。そのため、Cu含有量を、3.0%以下とすることが好ましい。
銅(Cu)は、焼入れ性に加え、靭性の観点で有用な元素であるため、含有させることが好ましい。この効果を得る場合Cu含有量を、0.01%以上とすることが好ましい。Cu含有量は、より好ましくは0.1%以上である。
一方、Cu含有量が、3.0%を超えると、上記のような効果は飽和する上、コストが上昇する。また、過剰なCuは、鋳片性状の劣化や熱間圧延時の割れや疵の発生を生じさせる。そのため、Cu含有量を、3.0%以下とすることが好ましい。
(Sn、Sb:それぞれ0%以上0.10%以下)
スズ(Sn)及びアンチモン(Sb)は、いずれもめっきの濡れ性や密着性を向上させるのに有効な元素である。そのため、含有させることが好ましい。上記のような効果を得る場合、Sn又はSbの少なくとも一方を、0.005%以上含有させることが好ましい。より好ましくはSn又はSbの少なくとも一方の含有量が0.01%以上である。
一方、Sn又はSbの少なくとも一方を、0.10%を超えて含有させた場合、製造時に疵が発生しやすくなったり、また、靭性が低下したりする。そのため、Sn含有量、Sb含有量はそれぞれ、0.10%以下であることが好ましい。
スズ(Sn)及びアンチモン(Sb)は、いずれもめっきの濡れ性や密着性を向上させるのに有効な元素である。そのため、含有させることが好ましい。上記のような効果を得る場合、Sn又はSbの少なくとも一方を、0.005%以上含有させることが好ましい。より好ましくはSn又はSbの少なくとも一方の含有量が0.01%以上である。
一方、Sn又はSbの少なくとも一方を、0.10%を超えて含有させた場合、製造時に疵が発生しやすくなったり、また、靭性が低下したりする。そのため、Sn含有量、Sb含有量はそれぞれ、0.10%以下であることが好ましい。
(Mg、Ca、Zr、REM:それぞれ0%以上0.0100%以下)
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、希土類元素(REM;Rare Earth Metal)は、それぞれ0.0001%以上の含有量であれば、介在物の微細化に効果がある。そのため、Ca、Mg、Zr、REM含有量は、それぞれ0.0001%以上であることが好ましい。
一方、各元素の含有量が0.0100%を超える場合には、上記の効果が飽和する。そのため、Ca、Mg、Zr、REM含有量は、それぞれ0.0100%以下であることが好ましい。REMとは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、その少なくとも1種である。上記REMの含有量はこれらの元素の少なくとも1種の合計含有量を意味する。
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、希土類元素(REM;Rare Earth Metal)は、それぞれ0.0001%以上の含有量であれば、介在物の微細化に効果がある。そのため、Ca、Mg、Zr、REM含有量は、それぞれ0.0001%以上であることが好ましい。
一方、各元素の含有量が0.0100%を超える場合には、上記の効果が飽和する。そのため、Ca、Mg、Zr、REM含有量は、それぞれ0.0100%以下であることが好ましい。REMとは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、その少なくとも1種である。上記REMの含有量はこれらの元素の少なくとも1種の合計含有量を意味する。
(O:0%以上0.0070%以下)
酸素(O)は、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。Oは酸化物を形成し、ホットスタンプ部材の特性劣化をもたらす可能性のある元素である。例えば、鋼板表面の近傍に存在する酸化物は、表面疵の原因となる。酸化物が切断面に存在すると、端面に切り欠き状の疵を形成し、ホットスタンプ部材の特性劣化をもたらす。このため、O含有量は低ければ低いほどよい。特に、O含有量が0.0070%超で特性劣化が顕著となるため、O含有量は0.0070%以下とする。O含有量は好ましくは0.0060%以下であり、より好ましくは0.0050%以下である。O含有量は0%でもよいが、O含有量は精錬限界上の経済的なコストから、0.0001%以上であることが好ましい。
酸素(O)は、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。Oは酸化物を形成し、ホットスタンプ部材の特性劣化をもたらす可能性のある元素である。例えば、鋼板表面の近傍に存在する酸化物は、表面疵の原因となる。酸化物が切断面に存在すると、端面に切り欠き状の疵を形成し、ホットスタンプ部材の特性劣化をもたらす。このため、O含有量は低ければ低いほどよい。特に、O含有量が0.0070%超で特性劣化が顕著となるため、O含有量は0.0070%以下とする。O含有量は好ましくは0.0060%以下であり、より好ましくは0.0050%以下である。O含有量は0%でもよいが、O含有量は精錬限界上の経済的なコストから、0.0001%以上であることが好ましい。
(その他の成分について)
その他の成分については、特に規定するものではないが、As等の元素がスクラップから混入する場合がある。しかしながら、混入量が通常の範囲であれば、本実施形態に係るホットスタンプ部材の特性には影響しない。
母材鋼板の化学組成の残部はFe及び不純物である。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石若しくはスクラップ等のような原料から、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に係るホットスタンプ部材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
その他の成分については、特に規定するものではないが、As等の元素がスクラップから混入する場合がある。しかしながら、混入量が通常の範囲であれば、本実施形態に係るホットスタンプ部材の特性には影響しない。
母材鋼板の化学組成の残部はFe及び不純物である。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石若しくはスクラップ等のような原料から、又は製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本実施形態に係るホットスタンプ部材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本実施形態に係るホットスタンプ部材の母材鋼板の化学組成は、表面のFe-Al系めっき層を除いた部分の化学組成をいうものとし、以下の方法で測定できる。
まず、ホットスタンプ部材から分析試料を切り出し、表面研削によって、表面のFe-Al系めっき層を除去する。その後、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析法などの元素分析を行うことによって化学組成を分析する。
まず、ホットスタンプ部材から分析試料を切り出し、表面研削によって、表面のFe-Al系めっき層を除去する。その後、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析法などの元素分析を行うことによって化学組成を分析する。
ホットスタンプの前後では、母材の化学組成は変化しないので、本実施形態に係るホットスタンプ部材の母材鋼板において上述した化学組成を得る場合、ホットスタンプに供するめっき鋼板の母材鋼板の化学組成を上記の範囲とすればよい。
(金属組織)
本実施形態に係るホットスタンプ部材が備える母材鋼板は、自動車の耐衝突特性を高めるホットスタンプ部材として用いるため、金属組織が、マルテンサイトを有することが好ましい。マルテンサイトは、面積率で、50%以上であることが好ましい。
母材鋼板の硬度は限定されないが、耐衝突特性に優れる部材として、ビッカース硬度(荷重1kgf)で300HV以上であることが好ましい。
本実施形態に係るホットスタンプ部材が備える母材鋼板は、自動車の耐衝突特性を高めるホットスタンプ部材として用いるため、金属組織が、マルテンサイトを有することが好ましい。マルテンサイトは、面積率で、50%以上であることが好ましい。
母材鋼板の硬度は限定されないが、耐衝突特性に優れる部材として、ビッカース硬度(荷重1kgf)で300HV以上であることが好ましい。
母材鋼板の硬度を測定する場合、母材鋼板の板厚方向断面が測定面となるようにサンプルを採取し、サンプルの測定面の、表面から板厚の1/4の位置に対し、JISZ2244:2009に準じ、荷重を1kgfとし、硬度を測定する。
<ホットスタンプ部材の製造方法>
本実施形態に係るホットスタンプ部材は、以下の工程を含む製造方法によって得られる。
(i)母材鋼板と母材鋼板の上に形成されたAl系めっき層とを有するAl系めっき鋼板を、ブランキングするブランキング工程
(ii)ブランキング工程後のAl系めっき鋼板を加熱する加熱工程
(iii)加熱工程後のAl系めっき鋼板に、成形及び冷却を行う成形工程
以下、各工程の好ましい条件について説明する。
本実施形態に係るホットスタンプ部材は、以下の工程を含む製造方法によって得られる。
(i)母材鋼板と母材鋼板の上に形成されたAl系めっき層とを有するAl系めっき鋼板を、ブランキングするブランキング工程
(ii)ブランキング工程後のAl系めっき鋼板を加熱する加熱工程
(iii)加熱工程後のAl系めっき鋼板に、成形及び冷却を行う成形工程
以下、各工程の好ましい条件について説明する。
(ブランキング工程)
ブランキング工程では、母材鋼板と母材鋼板の上に形成されたAl系めっき層とを有するAl系めっき鋼板を、ブランキングする。ブランキング方法としては特段限定されないが、金型による打ち抜き、せん断、またはレーザー切断などの方法が挙げられる。
ブランキングに供するAl系めっき鋼板は、上述した化学組成を有する母材鋼板に溶融Alめっきを行うことによって得られる。母材鋼板の製造方法は限定されず、公知の条件で製造すればよい。例えば、製鋼工程で化学組成を調整した後、連続鋳造することでスラブ(母材)を製造し、その後、得られたスラブ(母材)に対し、熱間圧延、酸洗、冷間圧延を行って冷延鋼板とし、得られた冷延鋼板に対し、溶融めっきラインにて再結晶焼鈍、溶融アルミめっき処理(溶融アルミめっき浴への鋼板浸漬とガスワイピングによる溶融アルミめっきの付着量の調整)を連続的に行うことでAl系めっき鋼板が得られる。
ブランキング工程では、母材鋼板と母材鋼板の上に形成されたAl系めっき層とを有するAl系めっき鋼板を、ブランキングする。ブランキング方法としては特段限定されないが、金型による打ち抜き、せん断、またはレーザー切断などの方法が挙げられる。
ブランキングに供するAl系めっき鋼板は、上述した化学組成を有する母材鋼板に溶融Alめっきを行うことによって得られる。母材鋼板の製造方法は限定されず、公知の条件で製造すればよい。例えば、製鋼工程で化学組成を調整した後、連続鋳造することでスラブ(母材)を製造し、その後、得られたスラブ(母材)に対し、熱間圧延、酸洗、冷間圧延を行って冷延鋼板とし、得られた冷延鋼板に対し、溶融めっきラインにて再結晶焼鈍、溶融アルミめっき処理(溶融アルミめっき浴への鋼板浸漬とガスワイピングによる溶融アルミめっきの付着量の調整)を連続的に行うことでAl系めっき鋼板が得られる。
上記のAl系めっき層の片面当りの付着量は、5g/m2以上100g/m2以下とする。付着量が5g/m2未満では成形部耐食性が低下する。そのため、付着量は5g/m2以上とする。Al系めっき層の付着量はホットスタンプ部材のFeAl層を増加させる点でも重要であり、好ましくは10g/m2以上である。付着量は、より好ましくは12g/m2以上、更に好ましくは15g/m2以上である。
一方、Al系めっき層の付着量が100g/m2超では硬質なFe2Al5がホットスタンプ部材に形成され成形部耐食性が低下する。そのため、付着量は100g/m2以下とする。また、付着量が大きいAl系めっき層の厚み(μmでの厚みは、付着量/3でおよそ整理される)も大きくなり、プレス成形時のせん断応力や圧縮応力が強く掛かることとなる。そのため、付着量は、好ましくは80g/m2以下であり、より好ましくは75g/m2以下であり、更に好ましくは70g/m2以下である。
一方、Al系めっき層の付着量が100g/m2超では硬質なFe2Al5がホットスタンプ部材に形成され成形部耐食性が低下する。そのため、付着量は100g/m2以下とする。また、付着量が大きいAl系めっき層の厚み(μmでの厚みは、付着量/3でおよそ整理される)も大きくなり、プレス成形時のせん断応力や圧縮応力が強く掛かることとなる。そのため、付着量は、好ましくは80g/m2以下であり、より好ましくは75g/m2以下であり、更に好ましくは70g/m2以下である。
上記のAl系めっき層は、質量%で、Al:83.0%以上95.0%以下、Si:5.0%以上12.0%以下、Fe:0%以上5.0%以下を含有する。
Alは、ホットスタンプの加熱時の耐酸化性及び成形部耐食性の向上のために必要な元素であり、Al含有量が83.0%未満である場合には、ホットスタンプ部材とした際のめっきの耐食性に劣る。一方、Al含有量が95.0%を超える場合には、ホットスタンプの成形時にめっきが剥離しやすくなり、成形部耐食性が劣る。
Alは、ホットスタンプの加熱時の耐酸化性及び成形部耐食性の向上のために必要な元素であり、Al含有量が83.0%未満である場合には、ホットスタンプ部材とした際のめっきの耐食性に劣る。一方、Al含有量が95.0%を超える場合には、ホットスタンプの成形時にめっきが剥離しやすくなり、成形部耐食性が劣る。
Siは、ホットスタンプ部材の成形部耐食性を向上させるために必要な元素である。Siを含有することで、AlとFeとの合金化反応が抑制されるため、硬質なAl-Fe合金層の形成が抑制され、成形部耐食性に優れる。Si含有量が5.0%未満である場合には、成形部耐食性に劣り、Si含有量が12.0%を超える場合には、めっき中に含まれる貴な元素の量が過剰になり成形部耐食性が低下する。そのため、Si含有量は5.0%以上であり、好ましくは7.0%以上である。更には、Si含有量は12.0%以下であり、好ましくは11.0%以下である。
Feは、溶融アルミめっき浴中に母材鋼板を浸漬した際のFeの溶出によって不可避的に含まれる。下限は特に定めず0%であるが、0.01%未満とすることは工業的なコストが掛かるので、0.01%を下限とすることが好ましい。Fe含有量が5.0%を超える場合、Alめっき浴中のFeの溶解限度を超えるため合金の析出物(ドロス)がめっき浴中に形成され、このドロスがめっき層に付着することとなる。この場合、プレス成形時に押疵となり外観品位が損なわれる。このため、Fe含有量を5.0%以下とする。
Al、Si、Fe以外にAl系めっき層に含み得る元素として、母材鋼板や溶融アルミめっき設備から混入する元素やアルミめっき浴のインゴット中の不純物などの元素が挙げられる。このような元素として、例えばC、Mn、B、Al、P、S、N、Cr、W、Mo、V、Ti、Nb、Ni、Cu、Sn、Sb、Mg、Ca、O、Znが挙げられ、Al系めっき層中に、合計で0%以上5.0%以下含有される場合がある。
上記のAl系めっき層を溶融アルミめっき処理によって製造した場合、母材鋼板とAl系めっき層との間には溶融アルミめっき浴浸漬時に、界面合金層(一般にはAl8Fe2Si(τ5)や、FeAl3(θ)で構成された1μm~5μmの層)が形成され得る。本実施形態で言うAl系めっき層の付着量、組成は、この界面合金層を含まない値を指す。
上記のAl系めっき層の付着量の特定方法としては、例えば、水酸化ナトリウム-ヘキサメチレンテトラミン・塩酸はく離重量法が挙げられる。具体的には、JIS G 3314:2011に記載のとおり、所定の面積S(m2)(例えば50mm×50mm)の試験片を準備し、重量w1(g)を測定しておく。その後、水酸化ナトリウム水溶液、ヘキサメチレンテトラミンを添加した塩酸水溶液に順次、発泡が収まるまで浸漬した後、直ちに水洗し、再び重量w2(g)を測定する。この時、試験片両面でのAl系めっき層の付着量(g/m2)は、(w1-w2)/Sより求めることができる。この方法は、水酸化ナトリウム水溶液によってAl、Si、及び固溶されるFeなどは溶解するが、Feを含んだ界面合金層や母材は溶解しない性質を利用した方法である。
また、上記のAl系めっき層の組成(Al、Si、Feの含有量)の特定方法としては、めっき層を溶解させ、溶解液を高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法を用いて定量分析する方法が挙げられる。Al系めっき層の溶解方法としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液へ浸漬する方法が挙げられる。具体的には、JIS G 3314:2011に記載の通り、水酸化ナトリウム(JIS K8576)2gに対し、水8mLの割合で溶解して調整した水溶液を85℃以上に熱し、供試材を浸漬し、めっきの溶解に起因した発泡が収まるまで浸漬することでAl系めっき層を溶解させることができる。この方法は、水酸化ナトリウム水溶液によってAl、Si、及び固溶されるFeなどは溶解するが、Feを含んだ界面合金層や母材は溶解しない性質を利用した方法である。
(加熱工程)
加熱工程では、ブランキング工程後のAl系めっき鋼板を加熱する。加熱工程では、最高加熱温度TMAX(℃)、およびTMAXから(TMAX-10℃)の間にAl系めっき鋼板を保持する時間(保持時間)t(分)、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の片面当たりの付着量W(g/m2)が、式(2)を満足するように加熱する。ただし、TMAXは850℃以上とする。
700≦(TMAX-850)2×(t/W)≦4000 ・・・式(2)
(TMAX-850)2×(t/W)が700未満では、保持時間が短い場合や最高加熱温度が低い場合があり、Fe2Al5やFeAl2、FeAl3が形成されて、Fe-Al系めっき層にFe2Al5やFeAl2、FeAl3が残存する場合や、Fe-Al系めっき層が3層構造、5層構造になる場合や、Si含有量が多くなる場合がある。この場合、成形部耐食性が低下する。このため、(TMAX-850)2×(t/W)は700以上であり、好ましくは800以上、より好ましくは900以上である。
また、最高加熱温度TMAXが、850℃未満では、母材鋼板のオーステナイト域温度に達しない場合があり、所望の機械的強度を得られない場合がある。また、母材鋼板とAl系めっき層との合金化反応が不十分となり、めっき層中に純Alが残存し耐食性が低下する場合がある。
一方、(TMAX-850)2×(t/W)が4000超では、過剰な加熱により、Fe-Al系めっき層中のFeAl層が少なくなって、耐疵付き性に劣る場合がある。また、Fe-Al系めっき層の厚みが過剰に厚くなる場合や、Al固溶フェライトのみの単層構造になりAl含有量が少なくなる場合がある。この場合、成形部耐食性が劣る。このため、(TMAX-850)2×(t/W)は、4000以下、好ましくは3800以下、3600以下である。
最高加熱温度TMAXは、上限について好ましくは1050℃であり、より好ましくは980℃である。下限について好ましくは880℃であり、より好ましくは900℃である。また、TMAXから(TMAX-10℃)の間の保持時間tは、上限について好ましくは18.0分であり、より好ましくは12.0分である。下限について、好ましくは1.0分、より好ましくは2.0分である。
また、式(3)を満足するように加熱することで、FeAl層とAl固溶フェライト層とに含有されるボイドのサイズが制御され、成形部耐食性が向上する。このため、加熱工程では、式(3)を満足するように加熱することが好ましい。
1000≦(TMAX-850)2×(t/W)≦3000 ・・・式(3)
加熱工程では、ブランキング工程後のAl系めっき鋼板を加熱する。加熱工程では、最高加熱温度TMAX(℃)、およびTMAXから(TMAX-10℃)の間にAl系めっき鋼板を保持する時間(保持時間)t(分)、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の片面当たりの付着量W(g/m2)が、式(2)を満足するように加熱する。ただし、TMAXは850℃以上とする。
700≦(TMAX-850)2×(t/W)≦4000 ・・・式(2)
(TMAX-850)2×(t/W)が700未満では、保持時間が短い場合や最高加熱温度が低い場合があり、Fe2Al5やFeAl2、FeAl3が形成されて、Fe-Al系めっき層にFe2Al5やFeAl2、FeAl3が残存する場合や、Fe-Al系めっき層が3層構造、5層構造になる場合や、Si含有量が多くなる場合がある。この場合、成形部耐食性が低下する。このため、(TMAX-850)2×(t/W)は700以上であり、好ましくは800以上、より好ましくは900以上である。
また、最高加熱温度TMAXが、850℃未満では、母材鋼板のオーステナイト域温度に達しない場合があり、所望の機械的強度を得られない場合がある。また、母材鋼板とAl系めっき層との合金化反応が不十分となり、めっき層中に純Alが残存し耐食性が低下する場合がある。
一方、(TMAX-850)2×(t/W)が4000超では、過剰な加熱により、Fe-Al系めっき層中のFeAl層が少なくなって、耐疵付き性に劣る場合がある。また、Fe-Al系めっき層の厚みが過剰に厚くなる場合や、Al固溶フェライトのみの単層構造になりAl含有量が少なくなる場合がある。この場合、成形部耐食性が劣る。このため、(TMAX-850)2×(t/W)は、4000以下、好ましくは3800以下、3600以下である。
最高加熱温度TMAXは、上限について好ましくは1050℃であり、より好ましくは980℃である。下限について好ましくは880℃であり、より好ましくは900℃である。また、TMAXから(TMAX-10℃)の間の保持時間tは、上限について好ましくは18.0分であり、より好ましくは12.0分である。下限について、好ましくは1.0分、より好ましくは2.0分である。
また、式(3)を満足するように加熱することで、FeAl層とAl固溶フェライト層とに含有されるボイドのサイズが制御され、成形部耐食性が向上する。このため、加熱工程では、式(3)を満足するように加熱することが好ましい。
1000≦(TMAX-850)2×(t/W)≦3000 ・・・式(3)
(成形工程)
成形工程では、加熱工程後のAl系めっき鋼板に対し、成形と同時に、または成形した後に、冷却を行う。
冷却は、加熱工程の終了(加熱炉からの抽出完了)から15秒以内に開始し、例えば成形と同時に金型との接触による抜熱により行われる。
加熱工程後、冷却開始(冷却と成形とが同時の場合には、冷却及び成形の開始)までの時間が15秒超であると、マルテンサイト組織が得られず部品の耐衝突特性が低下することに加え、鋼板の成形時の温度低下によるFe-Al系めっき層の硬化により、金型から成形時に強く衝撃を受けることでめっき剥離が助長され、ホットスタンプ部材の成形部耐食性が低下する。
また、成形工程の冷却では、平均冷却速度が50℃/秒以上で、200℃以下まで冷却することが好ましい。平均冷却速度が50℃/秒未満であると、母材鋼板の焼き入れ性が低下し、部品としても耐衝突特性が低下する。一方、平均冷却速度の上限を限定する必要はないが、金型での抜熱による冷却や、水を利用した冷却などの限界として1000℃/秒以下とすることが好ましい。
また、冷却停止温度が200℃超では、母材鋼板の焼き入れ性が低下し部品としても耐衝突特性が低下する。
鋼板温度の測定方法としては、サーモカメラでの撮影することで間接的に測定する方法や、鋼板の端部に熱電対を点溶接(プレス成形時に金型を疵付けない位置)することで直接的に測定する方法が挙げられる。
成形工程では、加熱工程後のAl系めっき鋼板に対し、成形と同時に、または成形した後に、冷却を行う。
冷却は、加熱工程の終了(加熱炉からの抽出完了)から15秒以内に開始し、例えば成形と同時に金型との接触による抜熱により行われる。
加熱工程後、冷却開始(冷却と成形とが同時の場合には、冷却及び成形の開始)までの時間が15秒超であると、マルテンサイト組織が得られず部品の耐衝突特性が低下することに加え、鋼板の成形時の温度低下によるFe-Al系めっき層の硬化により、金型から成形時に強く衝撃を受けることでめっき剥離が助長され、ホットスタンプ部材の成形部耐食性が低下する。
また、成形工程の冷却では、平均冷却速度が50℃/秒以上で、200℃以下まで冷却することが好ましい。平均冷却速度が50℃/秒未満であると、母材鋼板の焼き入れ性が低下し、部品としても耐衝突特性が低下する。一方、平均冷却速度の上限を限定する必要はないが、金型での抜熱による冷却や、水を利用した冷却などの限界として1000℃/秒以下とすることが好ましい。
また、冷却停止温度が200℃超では、母材鋼板の焼き入れ性が低下し部品としても耐衝突特性が低下する。
鋼板温度の測定方法としては、サーモカメラでの撮影することで間接的に測定する方法や、鋼板の端部に熱電対を点溶接(プレス成形時に金型を疵付けない位置)することで直接的に測定する方法が挙げられる。
上記の製造方法によれば、本実施形態に係るホットスタンプ部材が得られる。
以下、実施例を用いて、本発明に係るホットスタンプ部材及びその製造方法について、更に具体的に説明する。以下に示す実施例は、本発明に係るホットスタンプ部材及びその製造方法のあくまでも一例にすぎず、本発明に係るホットスタンプ部材及びその製造方法が下記の例に限定されるものではない。
まず、表1のA1~A20に示すような化学組成を有する母材鋼板(板厚1.4mm)を、通常の製鋼工程、熱延工程、酸洗工程、冷延工程を経て製造し、供試材として用いた。続いて、この母材鋼板に対し、ゼンジミア型溶融めっきラインにて焼鈍、溶融アルミめっき処理を連続的に施して、Al系めっき鋼板を作製した。Al系めっき層の付着量をガスワイピングで3~110g/m2の間で適宜調整すると共に、溶融アルミめっき浴の組成についても、Si:1~20%、Fe:1~8%、残部Al組成の中で、適宜調整した。得られたAl系めっき鋼板のAl系めっき層の組成を、前述したICPで定量することで測定した。結果を表2に示す。
この得られたAl系めっき鋼板(表2)をシャーせん断にてブランキングし(ブランキング工程)、200×300mmサイズのAl系めっき鋼板のブランクを作製した。作製したAl系めっき鋼板のブランクを、表2に示すように、電気炉にて最高到達温度750℃~1150℃の各種条件で加熱した(加熱工程)。保持時間は、最高到達温度から(最高到達温度-10℃)の間の時間が1.0分~18分となるよう処理した。このブランクを、電気炉から取り出し後、6~30秒の間に板厚比(=(1-(圧延後の板厚/圧延前の板厚))×100)が15%となるように圧延を開始し、さらに圧延した直後、平板金型で200℃以下まで急冷した(成形工程)。その後、70mm×150mmサイズに切断して得られたものをホットスタンプ部材の試験片とした。
この試験片について、以下の要領でFe-Al系めっき層を調査した。また、成形部耐食性を評価した。
この試験片について、以下の要領でFe-Al系めっき層を調査した。また、成形部耐食性を評価した。
FeAl層及びAl固溶フェライト層の厚さ、Fe-Al系めっき層中のAl含有量、Si含有量、Fe含有量、Fe-Al系めっき層の層構造について以下の方法で評価した。また、母材鋼板の組織も観察した。
(Fe-Al系めっき層の厚さ)
試験片から15mm×20mmのサイズの試料を切り出し、埋め込み研磨、ナイタールエッチングを施した後、SEMでFe-Al系めっき層の断面を観察することで測定した。
試験片から15mm×20mmのサイズの試料を切り出し、埋め込み研磨、ナイタールエッチングを施した後、SEMでFe-Al系めっき層の断面を観察することで測定した。
(Fe-Al系めっき層中のAl含有量(WAl)、Si含有量(WSi)、Fe含有量(WFe))
前述した断面からEPMAで分析し、表面から母材の方向に向かって等間隔で10点のAl含有量、Si含有量を測定し、それぞれの平均値をWAl、WSiとした。めっき層の残部はFeであったため、(100-WAl-WSi)をWFeとした。結果を表3に示す。表3には、10点のうち、最大のAl含有量も示す。
前述した断面からEPMAで分析し、表面から母材の方向に向かって等間隔で10点のAl含有量、Si含有量を測定し、それぞれの平均値をWAl、WSiとした。めっき層の残部はFeであったため、(100-WAl-WSi)をWFeとした。結果を表3に示す。表3には、10点のうち、最大のAl含有量も示す。
(Fe-Al系めっき層の層構造、並びにFeAl層及びAl固溶フェライト層の厚さ)
前述のFe-Al系めっき層の厚さ方向に等間隔で10箇所をEPMAで分析した測定点の内、Al含有量が0.5%以上20.0%以下である範囲をAl固溶フェライト層とし、20.0%超30.0%以下である範囲をFeAl層とした。また、Al含有量が40.0%以上65.0%以下である範囲をFe2Al5の層とし、Al含有量が30.0%超40.0%未満かつSi含有量が2%以上15%以下である範囲をτ1の層とした。本実施例ではこれら以外の層は確認されなかった。
表中「2層」とは、表面側から順に、FeAl層、Al固溶フェライト層の2層構造であったことを示す。また、それぞれの厚みは、FeAl層、Al固溶フェライト層を特定した上で、EPMAを用いて1視野の大きさを100μm×100μmの範囲として3視野観察し、その3視野で測定した厚さの平均値として求めた)。
厚みの測定に際し、隣り合う測定点が、分析結果に基づいて異なる層であると判断された場合には、これらの測定点の厚さ方向の中点に層の境界があるとみなした。
表中「5層」とは、表面から順にFe2Al5の層、τ1の層、Fe2Al5の層、FeAl層、Al固溶フェライト層であったことを示す。「1層」とは、Al固溶フェライト層の単一層であったことを示す。
前述のFe-Al系めっき層の厚さ方向に等間隔で10箇所をEPMAで分析した測定点の内、Al含有量が0.5%以上20.0%以下である範囲をAl固溶フェライト層とし、20.0%超30.0%以下である範囲をFeAl層とした。また、Al含有量が40.0%以上65.0%以下である範囲をFe2Al5の層とし、Al含有量が30.0%超40.0%未満かつSi含有量が2%以上15%以下である範囲をτ1の層とした。本実施例ではこれら以外の層は確認されなかった。
表中「2層」とは、表面側から順に、FeAl層、Al固溶フェライト層の2層構造であったことを示す。また、それぞれの厚みは、FeAl層、Al固溶フェライト層を特定した上で、EPMAを用いて1視野の大きさを100μm×100μmの範囲として3視野観察し、その3視野で測定した厚さの平均値として求めた)。
厚みの測定に際し、隣り合う測定点が、分析結果に基づいて異なる層であると判断された場合には、これらの測定点の厚さ方向の中点に層の境界があるとみなした。
表中「5層」とは、表面から順にFe2Al5の層、τ1の層、Fe2Al5の層、FeAl層、Al固溶フェライト層であったことを示す。「1層」とは、Al固溶フェライト層の単一層であったことを示す。
(ボイドの直径)
試験片から10mm×20mmの試料を切り出し、板厚方向の断面を観察面として研磨した後、ナイタールエッチングを実施し、この観察面を光学顕微鏡で100μm×100μmの範囲を観察し、ボイドを内包する最小の外接円の直径からボイドの直径を求めた。10箇所のボイドを測定した平均値をその試験片のボイドの直径とした。
試験片から10mm×20mmの試料を切り出し、板厚方向の断面を観察面として研磨した後、ナイタールエッチングを実施し、この観察面を光学顕微鏡で100μm×100μmの範囲を観察し、ボイドを内包する最小の外接円の直径からボイドの直径を求めた。10箇所のボイドを測定した平均値をその試験片のボイドの直径とした。
(母材鋼板の組織)
試験片から15×20mmのサイズの試料を切り出し、埋め込み研磨、ナイタールエッチングを施した後、光学顕微鏡で母材鋼板の板厚断面の、母材鋼板の表面から板厚の1/4の位置を観察することで特定した。
試験片から15×20mmのサイズの試料を切り出し、埋め込み研磨、ナイタールエッチングを施した後、光学顕微鏡で母材鋼板の板厚断面の、母材鋼板の表面から板厚の1/4の位置を観察することで特定した。
(成形部耐食性)
試験片を化成処理及び耐食塗装した後、塗膜にカッターで傷をいれて金属面を露出させた試験片を用いて腐食試験を行った。具体的には、日本パーカライジング(株)製化成処理液PB-SX35で化成処理を施し、その後、日本ペイント(株)製カチオン電着塗料パワーニクス110を約15μm厚みで塗装した。その後、カッターで電着塗膜にクロスカットの傷を入れ、自動車技術会で定めた複合腐食試験(JASO M610-92)を180サイクル(60日)行い、クロスカット部の板厚減少量を測定した。
このとき、合金化溶融亜鉛めっき鋼板GA(付着量片面45g/m2)の板厚減少量を上回れば耐食性をNG(No Good)とし、下回れば耐食性をG(Good)、更には3/4以下に抑制されれば耐食性をVG(Very Good)、1/2以下に抑制されれば耐食性をVG2(More Very Good)とした。
試験片を化成処理及び耐食塗装した後、塗膜にカッターで傷をいれて金属面を露出させた試験片を用いて腐食試験を行った。具体的には、日本パーカライジング(株)製化成処理液PB-SX35で化成処理を施し、その後、日本ペイント(株)製カチオン電着塗料パワーニクス110を約15μm厚みで塗装した。その後、カッターで電着塗膜にクロスカットの傷を入れ、自動車技術会で定めた複合腐食試験(JASO M610-92)を180サイクル(60日)行い、クロスカット部の板厚減少量を測定した。
このとき、合金化溶融亜鉛めっき鋼板GA(付着量片面45g/m2)の板厚減少量を上回れば耐食性をNG(No Good)とし、下回れば耐食性をG(Good)、更には3/4以下に抑制されれば耐食性をVG(Very Good)、1/2以下に抑制されれば耐食性をVG2(More Very Good)とした。
評価結果を表3に示す。
表3に示す本願の発明例である水準B1~B20については、優れた成形部耐食性を有するホットスタンプ部材が得られた。特に、B1、B5の成形部耐食性の評価結果がGなのに対し、B2~B4の、ホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層のD2/D1が0.8以上2.5以下を満足する場合、成形部耐食性の評価結果はVGと、良好であった。更に、B9~B20の、ホットスタンプ部材のボイドの大きさが、直径で5μm以上15μm以下を満足する場合、成形部耐食性の評価結果はVG2と、更に良好であった。また、母材鋼板の組織はいずれもマルテンサイトであった。
表3に示す本願の比較例であるB21~B35については、成形部耐食性の評価結果がNGとなり劣っていた。これは、Fe-Al系めっき層の厚さ、Al含有量WAl、Si含有量WSi、Fe含有量、式(1)、層構造の少なくとも1つが、所定の条件を満足しなかったからである。
B21は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の付着量が少なく、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が小さかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の厚さが十分でなく、また、Fe-Al系めっき層において、Al含有量とSi含有量とは式(1)を満たさなかった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B22は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の付着量が少なく、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が小さかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の厚さが十分でなく、また、Fe-Al系めっき層において、Al含有量とSi含有量とは式(1)を満たさなかった。また、めっき層が、Al固溶フェライト層の1層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B23は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の付着量が少なく、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が大きかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層のAl含有量が少なく、Al含有量とSi含有量とが式(1)を満たさなかった。また、Feの過剰な拡散により、Fe-Al系めっき層が多かった。また、めっき層が、Al固溶フェライト層の1層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B24は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の付着量が多かった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の厚さが過剰であった。また、めっき層が5層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B25は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の付着量が多く、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が大きかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の厚さが過剰であった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B26、B27、B29は、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が小さかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の組成が本発明範囲を外れた。また、めっき層が5層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B28は、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が大きかった。また、めっき層が、Al固溶フェライト層の1層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B30は、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が小さかった。そのため、めっき層が5層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B31は、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が大きかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の厚さが過剰であった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B32は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層のAl含有量が少なく、Si含有量が多かった。そのため、ホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層において、Si含有量が本発明範囲を外れるとともに式(1)を満たさなかった。また、めっき層が5層からなるめっき層であった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B33は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層のAl含有量が多く、Si含有量が少なかった。そのため、ホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層において、Si含有量が本発明範囲を外れた。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B34は、加熱後、成形開始までの時間が長かった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層のAl含有量とSi含有量とが式(1)を満たさなかった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B35は、加熱工程において最高加熱温度が低かった。そのため、母材鋼板とAl系めっき層との合金化反応が不十分となり、FeAl層とAl固溶フェライト層はいずれも形成されず、めっき層中に純Alが残存し、Al含有量が過剰になった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B22は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の付着量が少なく、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が小さかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の厚さが十分でなく、また、Fe-Al系めっき層において、Al含有量とSi含有量とは式(1)を満たさなかった。また、めっき層が、Al固溶フェライト層の1層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B23は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の付着量が少なく、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が大きかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層のAl含有量が少なく、Al含有量とSi含有量とが式(1)を満たさなかった。また、Feの過剰な拡散により、Fe-Al系めっき層が多かった。また、めっき層が、Al固溶フェライト層の1層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B24は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の付着量が多かった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の厚さが過剰であった。また、めっき層が5層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B25は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層の付着量が多く、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が大きかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の厚さが過剰であった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B26、B27、B29は、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が小さかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の組成が本発明範囲を外れた。また、めっき層が5層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B28は、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が大きかった。また、めっき層が、Al固溶フェライト層の1層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B30は、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が小さかった。そのため、めっき層が5層からなるめっき層となった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B31は、ホットスタンプの際の(TMax-850)2×(t/W)の値が大きかった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層の厚さが過剰であった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B32は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層のAl含有量が少なく、Si含有量が多かった。そのため、ホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層において、Si含有量が本発明範囲を外れるとともに式(1)を満たさなかった。また、めっき層が5層からなるめっき層であった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B33は、Al系めっき鋼板のAl系めっき層のAl含有量が多く、Si含有量が少なかった。そのため、ホットスタンプ部材のFe-Al系めっき層において、Si含有量が本発明範囲を外れた。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B34は、加熱後、成形開始までの時間が長かった。そのため、ホットスタンプ部材において、Fe-Al系めっき層のAl含有量とSi含有量とが式(1)を満たさなかった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B35は、加熱工程において最高加熱温度が低かった。そのため、母材鋼板とAl系めっき層との合金化反応が不十分となり、FeAl層とAl固溶フェライト層はいずれも形成されず、めっき層中に純Alが残存し、Al含有量が過剰になった。その結果、十分な成形部耐食性が得られなかった。
B21~B33の母材鋼板の組織はいずれもマルテンサイトであり、B34の組織はベイナイト、B35はフェライト、パーライトの複合組織であった。
本発明によれば、成形部耐食性に優れたホットスタンプ部材、及びその製造方法が提供できる。このようなホットスタンプ部材を自動車部材に適用することで、自動車衝突安全性の向上や、自動車軽量化による燃費向上とCO2等の排ガスの削減に繋がる。
1 ホットスタンプ部材
2 母材鋼板
3A,3B Al固溶フェライト層
4A,4B FeAl層
2 母材鋼板
3A,3B Al固溶フェライト層
4A,4B FeAl層
Claims (10)
- 母材鋼板と、
前記母材鋼板の片面または両面の表面に形成されたFe-Al系めっき層と
を有し、
前記Fe-Al系めっき層が、質量%で、
Fe:64.0%以上99.4%以下、
Al:0.5%以上30.0%以下、
Si:0.1%以上6.0%以下、
を含有し、
前記Fe-Al系めっき層の、質量%での、Si含有量をWSi、Al含有量をWAlとしたとき、前記WSiと前記WAlとが以下の式(1)を満足し、
前記Fe-Al系めっき層が、表面側から順に、FeAl層、Al固溶フェライト層の2層からなり、
前記Fe-Al系めっき層の厚さが、5μm以上80μm以下である、
ことを特徴とする、ホットスタンプ部材。
5×WSi≦WAl ・・・式(1) - 前記FeAl層の厚みD1と、前記Al固溶フェライト層の厚みD2との比D2/D1が、0.8以上2.5以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載のホットスタンプ部材。 - 前記Fe-Al系めっき層が、ボイドを含有し、前記ボイドの直径が、5μm以上15μm以下である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のホットスタンプ部材。 - 前記Fe-Al系めっき層のAl含有量の最大値が、質量%で30.0%以下である、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のホットスタンプ部材。 - 前記母材鋼板の化学組成が、質量%で、
C :0.10%以上0.50%以下、
Si:0.01%以上2.00%以下、
Mn:0.30%以上5.00%以下、
B :0.0002%以上0.0100%以下、
Al:1.00%以下、
P :0.100%以下、
S :0.100%以下、
N :0.0100%以下、
Cr:0%以上2.00%以下、
W :0%以上3.0%以下、
Mo:0%以上3.0%以下、
Co:0%以上3.0%以下、
V :0%以上2.0%以下、
Ti:0%以上0.50%以下、
Nb:0%以上1.00%以下、
Ni:0%以上5.0%以下、
Cu:0%以上3.0%以下、
Sn:0%以上0.10%以下、
Sb:0%以上0.10%以下、
Mg:0%以上0.0100%以下、
Ca:0%以上0.0100%以下、
Zr:0%以上0.0100%以下、
REM:0%以上0.0100%以下、
O :0%以上0.0070%以下、
を含有し、残部がFe及び不純物である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のホットスタンプ部材。 - 請求項1に記載のホットスタンプ部材を製造する方法であって、
母材鋼板と前記母材鋼板の上に形成されたAl系めっき層とを有するAl系めっき鋼板を、ブランキングするブランキング工程と、
前記ブランキング工程後の前記Al系めっき鋼板を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後の前記Al系めっき鋼板に、成形及び冷却を行う成形工程と、
を有し、
前記Al系めっき層の、片面当たりの付着量が、5g/m2以上100g/m2以下であって、
前記Al系めっき層が、質量%で、
Al:83.0%以上95.0%以下、
Si:5.0%以上12.0%以下、
Fe:0%以上5.0%以下、
を含有し、
前記加熱工程における、単位℃での最高加熱温度をTMax、前記加熱工程において前記TMaxから(TMax-10℃)の間に前記Al系めっき鋼板を保持する時間を単位分でt、前記付着量をWとしたとき、前記TMax、前記t、および前記Wが以下の式(2)を満足し、前記TMaxは850℃以上であり、
前記加熱工程の終了から前記成形工程の前記冷却の開始との間が15秒以下である
ことを特徴とする、ホットスタンプ部材の製造方法。
700≦(TMax-850)2×(t/W)≦4000・・・式(2) - 前記Al系めっき層の、片面当たり付着量である前記Wが、10g/m2以上80g/m2以下である
ことを特徴とする、請求項6に記載のホットスタンプ部材の製造方法。 - 前記TMax、前記t、および前記Wが、以下の式(3)を満足する
ことを特徴とする、請求項6または7に記載のホットスタンプ部材の製造方法。
1000≦(TMax-850)2×(t/W)≦3000・・・式(3) - 前記母材鋼板の化学組成が、質量%で、
C :0.10%以上0.50%以下、
Si:0.01%以上2.00%以下、
Mn:0.30%以上5.00%以下、
B :0.0002%以上0.0100%以下、
Al:1.00%以下、
P :0.100%以下、
S :0.100%以下、
N :0.0100%以下、
Cr:0%以上2.00%以下、
W :0%以上3.0%以下、
Mo:0%以上3.0%以下、
Co:0%以上3.0%以下、
V :0%以上2.0%以下、
Ti:0%以上0.50%以下、
Nb:0%以上1.00%以下、
Ni:0%以上5.0%以下、
Cu:0%以上3.0%以下、
Sn:0%以上0.10%以下、
Sb:0%以上0.10%以下、
Mg:0%以上0.0100%以下、
Ca:0%以上0.0100%以下、
Zr:0%以上0.0100%以下、
REM:0%以上0.0100%以下、
O :0%以上0.0070%以下、
を含有し、残部がFe及び不純物である、
ことを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載のホットスタンプ部材の製造方法。 - 前記Al系めっき鋼板において、前記母材鋼板と、前記Al系めっき層との間に界面合金層が存在する、
ことを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載のホットスタンプ部材の製造方法。
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