JP7243013B2 - 耐欠損性にすぐれた表面被覆切削工具 - Google Patents
耐欠損性にすぐれた表面被覆切削工具 Download PDFInfo
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Description
例えば、特許文献1では、超硬合金基材側から被覆膜のTiN層側にかけてのCおよびCoの拡散量を調整し、所望の濃度勾配を有することにより、密着性の向上を図ることが記載されており、また、特許文献2では、WC基超硬合金基材側より硬質被覆層側の第一層であるチタン炭化物皮膜におけるCo含有量、および、Co含有量に対するCr含有量比を規定することにより、前記チタン炭化物皮膜の密着性の向上を図ることが記載されている。
また、特許文献3では、WC超硬合金基体の表面に被覆されるTiN層中のCr濃度を高めることにより、WC超硬合金基体とその表面に被覆されるTiN層の密着性を向上させることが記載されている。
そこで、前記特許文献1乃至特許文献3では、被覆工具において、基体成分もしくは基体表面の成分を密着層中に拡散させることにより、工具基体上にTi系の密着性にすぐれた密着層を形成し、欠損の発生を回避することが提案された。
しかしながら、これらのCVD-AlTiN皮膜においては、元素拡散により密着性向上効果は認められるものの、元素の拡散により密着層自体の硬さが過度に上昇し、加工中に硬さの高いCVD-AlTiN皮膜表面から発生したクラックが内部まで進展し、皮膜粒子の脱落などによる工具の欠損が生じるという問題を有していた。
「(1)結合相成分としてCo、Crを含有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体の表面に、硬質被覆層を有してなる表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、前記工具基体最表面に直接接してなる下部層と、該下部層に直接接してなる上部層との少なくとも二層を有し、前記硬質被覆層の全平均層厚は、0.6~20.0μmであり、
(b)前記下部層は、TiおよびCrの炭窒化物からなり、その平均層厚は、0.2~1.6μmであり、
(b-1)前記下部層は、前記基体最表面から層厚が0.1μmまでの範囲において、
最大Cr濃度値を有し、前記最大Cr濃度値の90%以上のCr濃度を有する最大Cr濃度領域のCr濃度値が、下部層の全平均Cr濃度に対して1.2倍以上であって、かつ、0.5原子%以上、5.0原子%以下であり、前記最大Cr濃度領域の領域幅は、0.02μm以上であり、また、
(b-2)前記下部層は、前記基体最表面から層厚が0.1μmを超え上部層との境界までの範囲において、最大C濃度値を有し、前記最大C濃度値の90%以上のC濃度を有する最大C濃度領域のC濃度値が、下部層の全平均C濃度に対して1.2倍以上であって、かつ、7.0原子%以上、25.0原子%以下であり、前記最大C濃度領域の領域幅は、0.02μm以上であり、
また、
(c)前記上部層は、AlとTiとの複合窒化物または複合炭窒化物を含む層であり、その平均層厚は、0.4~18.4μmであり、
組成式:(AlXTi1-X)(CYN1-Y)で表した場合、前記複合窒化物または複合炭窒化物層のTiとAlの合量に対してAlが占める平均含有割合Xavgおよび前記複合窒化物または複合炭窒化物層のCとNの合量に対してCが占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavg はいずれも原子比)が、それぞれ、0.75≦Xavg≦0.90、0≦Yavg<0.05を満足し、NaCl型の面心立方晶構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物層からなることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記TiおよびCrの炭窒化物からなる下部層について、X線回折を行った際に、以下の式(A)にて表わされる、立方晶(200)面における配向性指数TC(200)が、0.5≦TC(200)≦4.5を満たすことを特徴とする(1)に記載された表面被覆切削工具。
式(A) TC(200)=[I(200)/I0(200)]
×[(1/n)×Σ(I(hkl)/I0(hkl)]-1
ただし、
I(200);(200)面におけるX線回折ピーク強度の測定値
I0(200);
ICDDカード00-038-1420に記載のTiNの結晶面の(200)面における標準X線回折ピーク強度の平均値
Σ(I(hkl)/I0(hkl));
(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(400)の6面のそれぞれの面の([X線回折ピーク強度の測定値]/[ICDDカードに掲載されている、TiNの標準回折ピーク強度の平均値])の値の合計値
(3) (1)または(2)において、前記TiおよびCrの炭窒化物からなる下部層における皮膜残留応力の値が、-500~500MPaを満たすことを特徴とする表面被覆切削工具。
(4) 前記上部層について、X線回折を行った際に、以下の式(B)にて表される、立方晶(111)面における配向性指数TC(111)が、2.0≦TC(111)≦4.0を満たすことを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一つに記載された表面被覆切削工具。
式(B) TC(111)=[I(111)/I0(111)]
×[(1/6)×Σ(I(hkl)/I0(hkl)]-1
ただし、
I(111);(111)面におけるX線回折ピーク強度の測定値
I0(111);
ICDDカード00-046-1200に記載のAlNの結晶面の(111)面における標準X線回折ピーク強度の平均値
Σ(I(hkl)/I0(hkl));
(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(400)の6面のそれぞれの面の([X線回折ピーク強度の測定値]/[ICDDカードに掲載されている、AlNの標準回折ピーク強度の平均値])の値の合計値
(5) 前記上部層について、X線回折を行った際に、立方晶(111)面の回折線強度に対する立方晶(200)面における回折線強度の値、I(111)/I(200)が、0.9≦I(111)/I(200)の関係を満たすことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか一つに記載された表面被覆切削工具。」に特徴を有するものである。
なお、本明細書中において、数値範囲を示す際に、「~」あるいは「-」を用いる場合は、その数値範囲の下限および上限を含むことを意味する。
工具基体としては、炭化タングステン基超硬合金を用いる。本発明は、硬質被覆層の異なる領域においてCrおよびCがそれぞれ含有量の最大濃度を有することを特徴とするものであるが、例えば、所定量のCrおよびCを工具基体に含有させておき、特定の条件にて、成膜中にこれらの成分を硬質被覆層中に拡散させることにより、所望の濃度分布を有する硬質被覆層を形成することができる。
硬質被覆層は、下部層と上部層を含んでなり、その他の層として、上部層の上に最上層を設けてもよい。
硬質被覆層の平均層厚は、0.6μm未満では、密着性および耐摩耗性を長期の使用に亘って十分に確保することはできないため、0.6μm以上とする。一方、その平均層厚が、20.0μmを超えると、剥離あるいは欠損が生じ易くなることから、20.0μm以下とすることが望ましい。
<平均層厚>
下部層は、TiとCrの複合炭窒化物からなり、工具基体の直上に直接接して設けられる。下部層の平均層厚は、0.2μm未満では、十分な密着性が得られないため、下限は0.2μm以上とする。他方、1.6μmを超えると得られた皮膜の変形が顕著となり、切削加工の早期段階にて基材からの剥離が生じ易くなるため、上限は、1.6μm以下とした。
前記下部層は、前記基体最表面から層厚が0.1μmまでの範囲(以下、下部層の「基体近接領域」ともいう。)において、下部層の全構成元素の合量に対するCr含有量の最大Cr濃度値を有し、前記最大Cr濃度値の90%以上のCr濃度を有する最大Cr濃度領域のCr濃度値が、下部層の全平均Cr濃度に対して1.2倍以上であって、かつ、0.5原子%以上5.0原子%以下であり、前記最大Cr濃度領域の領域幅は、0.02μm以上と規定した。
ここで、前記最大Cr濃度値の90%以上の濃度を有する最大Cr濃度領域のCr濃度値を下部層の全平均Cr濃度に対して1.2倍以上とする理由は、前記Cr濃度値が、1.2倍に満たない場合には、Cr濃度勾配が不十分でCr拡散による下部層の基体との界面における粒界靱性向上効果が十分ではない、または、下部層の基体近接領域全体で硬さ低下が顕著となり、上部層との硬度差が大きくなり層間での剥離が生じ易くなるためである。
また、前記最大Cr濃度領域のCr濃度値を0.5原子%以上5.0原子%以下の範囲に規定した理由は、Cr含有量が0.5原子%未満であるとCr拡散による下部層の基体との界面における粒界靭性向上効果が十分ではなく、基体からの皮膜剥離が生じやすくなり、他方、Cr含有量が5.0原子%を超えると下部層へのCr拡散による下部層の基体との界面における硬さ低下が顕著となり、上部層との硬さの差が大きくなり層間での剥離が生じ易くなるためである。
また、前記下部層では、前記基体最表面から層厚が0.1μmまでの領域を超え上部層との境界までの範囲(以下、下部層の「上部領域」ともいう。)において、下部層の全構成元素の合量に対するC含有量の最大C濃度値を有し、前記最大C濃度値の90%以上のC濃度を有する最大C濃度領域の濃度値が、下部層の全平均C濃度に対して1.2倍以上であって、かつ、7.0原子%以上25.0原子%以下であり、前記最大C濃度領域の領域幅は、0.02μm以上と規定した。
ここで、下部層の全平均C濃度値に対して最大C濃度領域の濃度値が1.2倍に満たない場合は、C濃度勾配が不十分であり、基材からのCの拡散が不十分で所望の密着性が得られない、または下部層全体の硬さの増加が顕著となり、層中での脆性破壊が生じ易くなるためである。
C含有量を7.0原子%以上25.0原子%以下の範囲に規定した理由は、Cが、7.0原子%未満では、基材からのCの拡散が不十分であるため、下部層の基体との界面における所望の密着性が得られず、基材からの皮膜剥離が生じ易くなり、他方、25.0原子%を超えるとCの拡散が過多となり、下部層の基体との界面における硬さの増加が過度となり、層中での脆性破壊が生じ易くなるためである。
また、Cr、Cそれぞれの最大濃度領域の領域幅を、0.02μm以上と規定した理由は、0.02μm未満では領域幅が不十分であり、所望の効果を発揮できないためである。
下部層を構成するTiCr複合炭窒化物は、NaCl型の面心立方構造(以下、単に「立方晶構造」ともいう。)をとることにより硬さを向上させることができる。
下部層の立方晶(200)面における配向性指数TC(200)は、0.5以上とすることにより、Crの拡散が十分に促進される結果、さらに均一なCrの拡散状態が得られ、密着層の粒界靱性効果が向上し、一方、4.5以下とすることにより、Crの偏析が抑制され、粒界を起点とする密着層の内部破壊が生じにくくなるため、0.5≦TC(200)≦4.5とすることが望ましい。
下部層の皮膜残留応力値は、-500MPa以上とすることにより、加工中における耐剥離効果を高めることができ、また、500MPa以下とすることにより、加工中における皮膜外部から発生するクラックの進展抑制効果を高め、耐欠損性を改善できる効果を有するため、-500~500MPaとすることが好ましい。
<平均層厚>
上部層は、TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物からなり、前記下部層の直上に直接接して設けられる。上部層の平均層厚は、0.4μm未満では、皮膜全体における硬質層が不十分であり、耐摩耗性に劣るため、0.4μm以上とする。他方、平均層厚が、18.4μmを超えると、硬質層の層厚が、過多となり加工中に突発欠損が生じ易くなるため、18.4μm以下とした。
上部層は、Al、Tiの複合窒化物層(AlTiN層)または複合炭窒化物層(AlTiCN層)にて構成され、層全体に亘り、均質な耐摩耗性と耐熱性や靱性を示し、Ti成分によって、高温強度を向上させ、Al成分によって、高温硬さと耐熱性を補完するため、高温切削条件下においても、低摩耗係数が維持され、すぐれた耐熱性を発揮することができる。
前記Al、Tiの複合窒化物層または複合炭窒化物層を構成する複合窒化物または複合炭窒化物は、具体的には、組成式:(AlXTi1-X)(CYN1-Y)にて表すことができるが、Alの平均含有割合Xavg(原子比)の値が0.75未満になると、高温硬さが不足し耐摩耗性が低下するようになり、一方、Xavg(原子比)の値が0.90を超えると、相対的なTi含有割合の減少により、(AlXTi1-X)(CYN1-Y)層自体の高温強度が低下し、チッピング、欠損を発生しやすくなるため、Alの平均含有割合Xavg(原子比)の値は、最大硬さに近く、特に高い効果が得られる、0.75以上0.90以下の範囲に規定した。
また、C成分には、硬さを向上させる作用があるが、C成分の平均含有割合Yavg(原子比)が0.05以上では、高温強度が低下するため、C成分の平均含有割合Yavg(原子比)は、0≦Yavg<0.05と規定した。
上部層を構成するAl、Tiの複合窒化物または複合炭窒化物(AlXTi1-X)(CYN1-Y)は、NaCl型の面心立方構造(以下、単に「立方晶構造」という場合もある。)をとることによって硬さを向上させることができる。
すなわち、立方晶構造の(111)面に高配向性を有する、Al、Tiの複合窒化物または複合炭窒化物層とすることにより、高硬度化することができる。
上部層の立方晶構造の(111)面における配向性指数TC(111)が、2.0以上では、加工中の結晶粒の脱落を抑制することができるため、さらに、硬質層としての効果を発揮でき、4.0以下では、下部層との密着性をより高めることにより、層間での剥離を抑制できるため、TC(111)は、2.0以上、4.0以下とすることが望ましい。
また、上部層における立方晶(111)面と立方晶(200)面の回折線強度の値、
I(111)/I(200)は、0.9以上であると、加工中に結晶粒の脱落が生じにくくなるため、I(111)/I(200)≧0.9であることが望ましい。
本発明においては、上部層である、前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層の上に必要に応じ、さらにα-Al2O3やκ-Al2O3などのAl酸化物からなる層や、Tiの窒化物層または炭窒化物層を耐摩耗性向上等の観点から、0.5~15.0μmの範囲にて設けることができる。
本発明において、Cr含有量およびC含有量について、それぞれ特定の濃度分布を有するとともに、特定範囲の膜厚を有するTiおよびCrの炭窒化物からなる下部層と、特定範囲の成分組成を有するAlとTiの複合窒化物または複合炭窒化物からなり、特定範囲の層厚、および、特定の結晶構造を有する上部層とを含み、すぐれた耐欠損性を発揮する硬質被覆層を備えてなる表面被覆切削工具は、例えば、CVD法(化学蒸着法)を用いて、以下の条件にて成膜を行なうことにより、形成することができる。
さらに、下部層および/または上部層において、それぞれ、特定の配向性指数を有し、それぞれ、特定の残留応力値を有する硬質被覆層を備えてなる表面被覆切削工具においても同様である。
本発明に係る下部層の成膜方法は、工具基体に対し、第1工程(Cr拡散工程)として、相対的に高温(800~900℃)にて、CVD法(ガス群A)を用いてTiCNを成膜した際には、工具基体からCrの拡散が促進され、次いで、第2工程(C拡散工程)として、相対的に低温(700~850℃)にて、CVD法(ガス群B)を用いてTiCNを成膜した際には、Cの拡散が促進され、その結果、工具基体表面から0.1μmまでの領域において、下部層における最大Cr濃度値を含む最大Cr濃度領域を有し、工具基体表面から0.1μmを超え上部層との境界までの領域において、下部層における最大C濃度値を含む最大C濃度領域を有する、すぐれた密着層をえることができる。
[成膜条件]
1)第1工程(Cr拡散工程)
処理方法;CVD法を用いた成膜
反応ガス組成(容量%):
ガス群A:TiCl4:0.01~0.04%、N2:1~10%、H2:残、
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa、
反応雰囲気温度:800~900℃
2)第2工程(C拡散工程)
処理方法;CVD法を用いた成膜
反応ガス組成(容量%):
ガス群B:TiCl4:0.01~0.04%、N2:1~10%、H2:残
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa、
反応雰囲気温度:700~850℃
次いで、本発明に係る上部層の成膜方法では、AlTi複合窒化物層またはAlTi複合炭窒化物層の成膜条件について、例えば、加熱温度の異なる二種類のNH3ガスを用い、高温のアンモニアガスにより核形成を抑制し、結晶化を促進させることにより、粗粒を得ることができる。
すなわち、本発明に係るAlTiN層およびAlTiCN層の成膜方法は、第3工程(初期核形成工程)、すなわち、AlTiN膜およびAlTiCN膜を形成するための初期核となるAlTiN結晶およびAlTiCN結晶を形成する工程と、第4工程(結晶成長工程)、すなわち、初期核である、前記AlTiN結晶およびAlTiCN結晶を成長させ、AlTiN膜およびAlTiCN膜を形成するための工程とを交互に繰り返すことにより、成膜を行うものである。
以下に、各成膜工程における成膜条件の概要を示すが、特に、第3工程における、微細なAlTiN結晶およびAlTiCN結晶の初期核の形成工程では、以下のガス群Cとガス群Dとを位相差を設けて交互に反応器に供給し成膜を行なう際に、高温(例えば、300~450℃)で予熱されたアンモニアガスを用いることにより、核形成を促進し、引き続いて実施する第4工程においては、以下のガス群Eとガス群Fとを位相差を設けて交互に反応器に供給し成膜を行なう際に、用いるアンモニアガスを低温(例えば、50~250℃)で予熱されたアンモニアガスに変更することにより、核形成を抑制し結晶化を促進し、さらに、これら前記第3工程と前記第4工程とを交互に30~120秒間ごとに繰り返し成膜することで結晶成長を図り、所望の結晶を得ることができる。
なお、前記第3工程と前記第4工程との繰り返し数は、目標膜厚に合わせて調整する。
1)第3工程(初期核形成工程)
処理方法;CVD法を用いた成膜
反応ガス組成(容量%):
ガス群C:TiCl4:0.01~0.04%、AlCl3:0.01~0.05%、
N2:0~10%、C2H4:0~0.5%、H2:残、
ガス群D:NH3:0.1~0.8%、H2:25~35%、
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa、
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:1~5秒、
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒、
ガス群Cの供給とガス群Dの供給の位相差:0.10~0.20秒
ガス群Dの予熱温度:300~450℃
処理方法;CVD法を用いた成膜
反応ガス組成(容量%):
ガス群E:TiCl4:0.01~0.04%、AlCl3:0.01~0.05%、
N2:0~10%、C2H4:0~0.5%、H2:残、
ガス群F:NH3:0.1~0.8%、H2:25~35%、
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa、
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:1~5秒、
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒、
ガス群Eの供給とガス群Fの供給の位相差:0.10~0.20秒
ガス群Fの予熱温度:50~250℃
なお、第3工程、および第4工程のそれぞれの反応ガス組成(容量%)における、各ガス成分の容量%は、第3工程においては、ガス群Cとガス群Dとの合計を100容量%として算出される各成分の容量%を示し、第4工程においては、ガス群Eとガス群Fとの合計を100容量%として算出される各成分の容量%を示す。
すなわち、まず、第1工程として、化学蒸着装置内に工具基体A~Cのいずれかを配置し、表2に示される形成条件(形成記号)A~Hに記載された、温度条件および圧力条件の下、表2に示される成分組成を有するガス群A(TiCl4、N2および残部H2)により、一定時間成膜を行なう。ガス群Aを用い、成膜温度を高温の800℃~900℃とすることにより、成膜速度が速く粗粒で、かつ、粒界が明瞭な結晶粒からなる蒸着層が形成される。この温度域では、Crの拡散が促進される結果、得られる蒸着膜は、Cr含有量の最大値を示す。
次いで、第2工程として、表2に示される形成条件(形成記号)A~Hに記載された、温度条件および圧力条件の下、表2に示される成分組成を有するガス群B(TiCl4、N2および残部H2)により、一定時間成膜を行なう。ガス群Bを用い、成膜温度を下げ、700℃~850℃とすることにより、炉内分圧が低く、成膜速度が非常に遅いため、微粒結晶からなる蒸着膜が形成される。この温度域においては、Crに代わり、Cの拡散が促進される結果、C含有量の最大値を示す。
引き続き、第4工程(結晶成長工程)として、表4に示される形成条件(形成記号)A~Hに記載された、ガス群Eとガス群Fの供給条件、および、ガス反応条件(圧力、温度、工程時間(秒))に基づき、一定時間成膜を行ない、表6および表7に示す本発明被覆工具1~3、6、7を得た。
また、本発明被覆工具4、5および8については、前記表4に示される形成条件(形成記号)D、E、Hにて成膜後、さらに、最上層として、それぞれ、κ-Al2O3層、l-TiCN層またはα-Al2O3層を表5に示される形成条件にて成膜することにより、表6および表7に示す本発明工具4、5および8として得た。
また、表2、表3および表4に示される形成条件d、e、hにて成膜を行なった後、最上層として、それぞれ、κ-Al2O3層、l-TiCN層またはα-Al2O3層を表5に示される形成条件にて成膜することにより、表9に示す比較例工具4、5および8を得た。
下部層については、目標平均層厚、形成膜の種類、全平均Cr濃度、全平均C濃度、基体近接領域(基体最表面から厚み方向0.1μmまでの領域)における最大Cr濃度値の90%以上の濃度を有する最大Cr濃度領域の濃度値、前記最大Cr濃度領域の領域幅、上部領域(基体最表面から厚み方向0.1μmを超え上部層までの領域)における最大C濃度値の90%以上の濃度を有する最大C濃度領域の濃度値、前記最大C濃度領域の領域幅、形成膜の結晶特性(結晶構造、配向性指数(TC(200)))、
上部層(AlXTi1-X)(CYN1-Y)については、目標平均層厚、平均Al含有割合(Xavg)、平均C含有割合(Yavg)、結晶特性(結晶構造、配向性指数(TC(111)))、
最上層については、化合物の種類および目標平均層厚の測定結果を示す。
比較例被覆工具1~8の硬質被覆層についても同様である。
すなわち、工具基体に垂直な方向の断面が露出するように研磨を施し、5000~20000倍の視野にて各層を観察し、観察視野内の5点の層厚を測った平均値を平均層厚として、本発明被覆工具1~8については、表6および表7に、比較例被覆工具1~8については、表8および表9に示した。
また、上部層のAlTiNまたはAlTiCNのAlの平均含有割合Xavg(原子比)およびC成分の平均含有割合Yavg(原子比)については、電子線マイクロアナライザ(EPMA,Electron-Probe-Micro-Analyser)を用い、表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均から求めた。本発明被覆工具1~8については表7に、比較例被覆工具1~8については表9に、XavgおよびYavgの値を示す。
下部層に含まれるCr、Cの含有量の最大点および最大値についての測定は、下記の方法で実施した。
TEMに備え付けたEDS検出器により基体最表面より硬質被覆層の表面方向に4nm毎の間隔でラインスキャンを実施して、含有元素の分布を取得し、下部層全域におけるCrおよびCの含有量を下部層中の平均含有量、下部層中のCr、Cの含有量の最大値を示す点を中心とし、それぞれの元素の最大含有量とし、さらに基体表面からの距離を最大点とした。最大点を中心として基体側2点、表面側2点以上(すなわち20nm領域)の範囲で-10%以内のズレ量である際に最大濃度、その領域を最大濃度領域とする。
そして、取得された、(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(400)の各面におけるX線回折ピーク強度の測定値I(hkl)とICDDカード00-046-1200に記載のAlNの結晶面の前記各面における標準X線回折ピーク強度の平均値I0(hkl)とより、立方晶の(111)面における配向性指数TC(111)、(200)面の回折ピーク強度I(200)に対する(111)面の回折ピーク強度I(111)の比であるI(111)/I(200)を得ることができる。
切削試験 :乾式正面フライス、センターカット切削加工、
被削材 :JIS・SUS316L
幅100mm、長さ400mmの穴付きブロック材
(直径50mmの穴が50mm間隔にて4個)
切削速度 :150m/min.
切り込み :2.0mm、
一刃送り量:0.3mm/刃、
加工長 :刃先が欠損に至るまで加工(最大加工長8.0mで評価終了)
Claims (5)
- 結合相成分としてCo、Crを含有する炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体の表面に、硬質被覆層を有してなる表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、前記工具基体最表面に直接接してなる下部層と、該下部層に直接接してなる上部層との少なくとも二層を有し、前記硬質被覆層の全平均層厚は、0.6~20.0μmであり、
(b)前記下部層は、TiおよびCrの炭窒化物からなり、その平均層厚は、0.2~1.6μmであり、
(b-1)前記下部層は、前記基体最表面から層厚が0.1μmまでの範囲において、
最大Cr濃度値を有し、前記最大Cr濃度値の90%以上の濃度を有する最大Cr濃度領域の濃度値が、下部層の全平均Cr濃度に対して1.2倍以上であって、かつ、0.5原子%以上、5.0原子%以下であり、前記最大Cr濃度領域の領域幅は、0.02μm以上であり、また、
(b-2)前記下部層は、前記基体最表面から層厚が0.1μmを超え上部層との境界までの範囲において、最大C濃度値を有し、前記最大C濃度値の90%以上の濃度を有する最大C濃度領域の濃度値が、下部層の全平均C濃度に対して1.2倍以上であって、かつ、7.0原子%以上、25.0原子%以下であり、前記最大C濃度領域の領域幅は、0.02μm以上であり、
また、
(c)前記上部層は、AlとTiとの複合窒化物または複合炭窒化物を含む層であり、その平均層厚は、0.4~18.4μmであり、
組成式:(AlXTi1-X)(CYN1-Y)で表した場合、複合窒化物または複合炭窒化物層のTiとAlの合量に対してAlが占める平均含有割合Xavgおよび複合窒化物または複合炭窒化物層のCとNの合量に対してCが占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavg はいずれも原子比)が、それぞれ、0.75≦Xavg≦0.90、0≦Yavg<0.05を満足し、NaCl型の面心立方晶構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物層からなることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記TiおよびCrの炭窒化物からなる下部層について、X線回折を行った際に、以下の式(A)にて表わされる、立方晶(200)面における配向性指数TC(200)が、0.5≦TC(200)≦4.5を満たすことを特徴とする請求項1に記載された表面被覆切削工具。
式(A) TC(200)=[I(200)/I0(200)]
×[(1/n)×Σ(I(hkl)/I0(hkl)]-1
ただし、
I(200);(200)面におけるX線回折ピーク強度の測定値
I0(200);
ICDDカード00-038-1420に記載のTiNの結晶面の(200)面における標準X線回折ピーク強度の平均値
Σ(I(hkl)/I0(hkl));
(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(400)の6面のそれぞれの面の([X線回折ピーク強度の測定値]/[ICDDカードに掲載されている、TiNの標準回折ピーク強度の平均値])の値の合計値 - 請求項1または請求項2において、前記TiおよびCrの炭窒化物からなる下部層における皮膜残留応力の値が、-500~500MPaを満たすことを特徴とする表面被覆切削工具。
- 前記上部層について、X線回折を行った際に、以下の式(B)にて表わされる、立方晶(111)面における配向性指数TC(111)が、2.0≦TC(111)≦4.0を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載された表面被覆切削工具。
式(B)TC(111)=[I(111)/I0(111)]
×[(1/6)×Σ(I(hkl)/I0(hkl)]-1
ただし、
I(111);(111)面におけるX線回折ピーク強度の測定値
I0(111);
ICDDカード00-046-1200に記載のAlNの結晶面の(111)面における標準X線回折ピーク強度の平均値
Σ(I(hkl)/I0(hkl));
(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(400)の6面のそれぞれの面の([X線回折ピーク強度の測定値]/[ICDDカードに掲載されている、AlNの標準回折ピーク強度の平均値])の値の合計値 - 前記上部層について、X線回折を行った際に、立方晶(111)面の回折線強度値に対する立方晶(200)面における回折線強度値、I(111)/I(200)が、0.9≦I(111)/I(200)の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載された表面被覆切削工具。
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