JP7235463B2 - 硫化物系無機固体電解質材料、固体電解質、固体電解質膜およびリチウムイオン電池 - Google Patents
硫化物系無機固体電解質材料、固体電解質、固体電解質膜およびリチウムイオン電池 Download PDFInfo
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Description
すなわち、従来の硫化物系無機固体電解質材料には、大気中に曝した際のリチウムイオン伝導性の低下を抑制するという観点において改善の余地があった。
リチウムイオン伝導性を有し、かつ、構成元素としてLi、PおよびSを含む硫化物系無機固体電解質材料であって、
下記の方法で測定される、硫化水素の発生量が20ppm以下である硫化物系無機固体電解質材料が提供される。
(方法)
アルゴンガスで置換したガラス製密閉容器内に当該硫化物系無機固体電解質材料を配置し、次いで、上記ガラス製密閉容器の上部から上記硫化物系無機固体電解質材料に水を滴下してから5分後に、上記ガラス製密閉容器内に発生した硫化水素ガス量を測定する。
上記硫化物系無機固体電解質材料を含む固体電解質が提供される。
上記固体電解質を主成分として含む固体電解質膜が提供される。
正極活物質層を含む正極と、電解質層と、負極活物質層を含む負極とを備えたリチウムイオン電池であって、
上記正極活物質層、上記電解質層および上記負極活物質層のうち少なくとも一つが、上記硫化物系無機固体電解質材料を含むリチウムイオン電池が提供される。
はじめに、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料について説明する。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を有し、かつ、構成元素としてLi、PおよびSを含む硫化物系無機固体電解質材料であって、下記の方法で測定される、硫化水素の発生量が20ppm以下、好ましくは15ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。硫化水素の発生量の下限値は特に限定されないが、例えば1ppm以上、好ましくは0.1ppm以上である。
(方法)
アルゴンガスで置換したガラス製密閉容器内に当該硫化物系無機固体電解質材料を配置し、次いで、上記ガラス製密閉容器の上部から上記硫化物系無機固体電解質材料に水を滴下してから5分後に、上記ガラス製密閉容器内に発生した硫化水素ガス量を測定する。
この理由については必ずしも明らかではないが、以下の理由が推察される。
硫化水素の発生量が上記上限値以下である硫化物系無機固体電解質材料は、大気中に含まれる水分と反応し難い構造を有しているからだと考えられる。
したがって、上記の方法で測定される、硫化水素の発生量が上記上限値以下であることは、従来の代表的な硫化物系無機固体電解質材料とは異なる新規な構造が形成されていることを表していると考えられる。
本実施形態において、硫化水素の発生量が上記上限値以下である硫化物系無機固体電解質材料は、硫化物系無機固体電解質材料の組成比率を高度に制御するとともに、せん断応力および圧縮応力を組み合わせた粉砕装置を用いて、原料である無機組成物をガラス化する工程およびアニール処理する工程を連続的におこない、従来よりも強力なせん断力および圧縮力をかけて硫化物系無機固体電解質材料を製造すること等により実現することが可能である。
これにより、電気化学安定性を良好に維持しつつ、リチウムイオン伝導性を向上させることができる。
IB/IAの値を上記下限値以上とすることにより、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
また、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料において、IB/IAの値の上限値は特に限定されないが、例えば30.0以下、好ましくは20.0以下、さらに好ましくは15.0以下、特に好ましくは13.0以下である。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の上記IB/IAの値は、硫化物系無機固体電解質材料の組成比率を調整することや、原料である無機組成物をガラス化する工程やアニール処理する工程を、せん断応力および圧縮応力を組み合わせた粉砕装置を用いて連続的におこなうこと等により実現することが可能である。
また、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料において、IC/IAの値の上限値は特に限定されないが、例えば20.0以下、好ましくは15.0以下、さらに好ましくは10.0以下、特に好ましくは8.0以下である。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の上記IC/IAの値は、硫化物系無機固体電解質材料の組成比率を調整すること等により実現することが可能である。
また、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料において、ID/IAの値の上限値は特に限定されないが、例えば30.0以下、好ましくは15.0以下、さらに好ましくは13.0以下、特に好ましくは10.5以下である。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の上記ID/IAの値は、硫化物系無機固体電解質材料の組成比率を調整すること等により実現することが可能である。
これにより、電気化学安定性を良好に維持しつつ、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
この理由については必ずしも明らかではないが、以下の理由が推察される。
回折角2θ=26.6±0.4°の位置にさらに回折ピークを有する硫化物系無機固体電解質材料は、Li3PS4等の従来の代表的な硫化物系無機固体電解質材料とは大きく異なるX線回折プロファイルを示している(Li3PS4のXRDデーターベースであるJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)カードのNO.01-076-0973参照)。
そのため、回折角2θ=26.6±0.4°の位置にさらに回折ピークを有する硫化物系無機固体電解質材料は、従来の硫化物系無機固体電解質材料とは異なる新規な構造を有していると考えられる。このような新規な構造はリチウムイオンがより容易にホッピングするような構造であると考えられる。そのため、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は、リチウムイオンの拡散性に優れており、その結果、従来の代表的な硫化物系無機固体電解質材料よりも高いイオン伝導度を発現したと考えられる。
したがって、回折角2θ=17.2±0.5°の位置、回折角2θ=25.6±0.5°の位置、回折角2θ=26.6±0.4°および回折角2θ=29.2±0.8°の位置にそれぞれ回折ピークを有することは、従来の代表的な硫化物系無機固体電解質材料とは異なる新規な構造が形成されていることを表していると考えられる。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の上記X線回折プロファイルは、硫化物系無機固体電解質材料の組成比率を調整することや、原料である無機組成物をガラス化する工程やアニール処理する工程を、せん断応力および圧縮応力を組み合わせた粉砕装置を用いて連続的におこなうこと等により実現することが可能である。
IE/IAの値を上記下限値以上とすることにより、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
また、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料において、IE/IAの値の上限値は特に限定されないが、例えば15.0以下、好ましくは10.0以下、さらに好ましくは8.0以下、さらにより好ましくは6.5以下、特に好ましくは5.0以下である。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の上記IE/IAの値は、硫化物系無機固体電解質材料の組成比率を調整すること等により実現することが可能である。
ここで、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料中のLi、PおよびSの含有量は、例えば、ICP発光分光分析やX線分析により求めることができる。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料のリチウムイオン伝導度が上記下限値以上であると、電池特性により一層優れたリチウムイオン電池を得ることができる。さらに、このような硫化物系無機固体電解質材料を用いると、入出力特性により一層優れたリチウムイオン電池を得ることができる。
本実施形態に係る粒子状の硫化物系無機固体電解質材料は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50が、好ましくは1μm以上100μm以下であり、より好ましくは3μm以上80μm以下、さらに好ましくは5μm以上60μm以下である。
硫化物系無機固体電解質材料の平均粒子径d50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共にリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
硫化物系無機固体電解質材料の酸化分解電流の最大値が上記上限値以下であると、リチウムイオン電池内での硫化物系無機固体電解質材料の酸化分解を抑制することができるため好ましい。
硫化物系無機固体電解質材料の酸化分解電流の最大値の下限値は特に限定されないが、例えば、0.0001μA以上である。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料を適用した全固体型リチウムイオン電池の例としては、正極と、固体電解質層と、負極とがこの順番に積層されたものが挙げられる。
次に、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法は、従来の硫化物系無機固体電解質材料の製造方法とは異なるものである。すなわち、硫化水素の発生量が上記上限値以下である硫化物系無機固体電解質材料は、(1)硫化物系無機固体電解質材料の組成比率を高度に制御すること、(2)原料である無機組成物をガラス化する工程およびアニール処理する工程を連続的におこない、従来よりも強力なせん断力および圧縮力をかけて硫化物系無機固体電解質材料を製造すること等の製法上の工夫点を採用することによって初めて得ることができる。
ただし、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料は、上記2つの製法上の工夫点を採用することを前提に、例えば、各種原料の混合条件等の具体的な製造条件は種々のものを採用することができる。
以下、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法をより具体的に説明する。
工程(A):原料である2種以上の無機化合物を含む原料無機組成物を準備する工程
工程(B):せん断応力および圧縮応力を組み合わせた粉砕装置を用いて、原料無機組成物を機械的処理することにより、原料である無機化合物同士を化学反応させながらガラス化して、ガラス状態の硫化物系無機固体電解質材料を得る工程
工程(C)せん断応力および圧縮応力を組み合わせた上記粉砕装置を用いて、ガラス状態の硫化物系無機固体電解質材を機械的処理することによりアニール処理し、少なくとも一部を結晶化する工程
工程(D):準備工程(A)とガラス化工程(B)との間に、工程(A)で準備した上記原料無機組成物を加熱することにより原料無機組成物を結晶化する工程
工程(E):得られた硫化物系無機固体電解質材料を粉砕、分級、または造粒する工程
はじめに、原料である硫化リチウム、硫化リン、窒化リチウム等の2種以上の無機化合物を特定の割合で含む原料無機組成物を準備する。ここで、原料無機組成物中の各原料の混合比は、得られる硫化物系無機固体電解質材料が所望の組成比になるように調整する。
各原料を混合する方法としては各原料を均一に混合できる混合方法であれば特に限定されないが、例えば、クラッシャー、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、打撃粉砕装置、ミキサー(パグミキサー、リボンミキサー、タンブラーミキサー、ドラムミキサー、V型混合器等)、ニーダー、2軸ニーダー、気流粉砕機等を用いて混合することができる。
各原料を混合するときの攪拌速度や処理時間、温度、反応圧力、混合物に加えられる重力加速度等の混合条件は、混合物の処理量によって適宜決定することができる。
ここで、本実施形態において、硫化リチウムには多硫化リチウムも含まれる。
本実施形態に係る窒化リチウムとしては特に限定されず、市販されている窒化リチウム(例えば、Li3N等)を使用してもよいし、例えば、金属リチウム(例えば、Li箔)と窒素ガスとの反応により得られる窒化リチウムを使用してもよい。高純度な固体電解質材料を得る観点および副反応を抑制する観点から、不純物の少ない窒化リチウムを使用することが好ましい。
つづいて、せん断応力および圧縮応力を組み合わせた粉砕装置を用いて、上記原料無機組成物を機械的処理することにより、2種以上の上記無機化合物を化学反応させながら上記無機組成物をガラス化するガラス化工程(B)をおこなう。次いで、このガラス化工程(B)に続いて、ガラス化工程(B)で用いた粉砕装置をそのまま用いて、ガラス状態の硫化物系無機固体電解質材料を機械的処理することによりアニール処理し、少なくとも一部を結晶化するアニール処理工程(C)をおこなう。
すなわち、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法では、せん断応力および圧縮応力を組み合わせた粉砕装置を用いて、ガラス化工程(B)およびアニール処理工程(C)を連続的におこなう。ここで、ガラス化工程(B)およびアニール処理工程(C)とは、明確に区別される必要はなく、ガラス化工程(B)からアニール処理工程(C)に徐々に変化していく場合も含まれる。
アニール処理工程(C)をおこなうことにより、ガラス化した硫化物系無機固体電解質材料の少なくとも一部が結晶化して、ガラスセラミックス状態の硫化物系無機固体電解質材料とすることができる。
また、本実施形態に係るロールミルは、隣接するロールの回転する向きが異なることが好ましい。これにより、ロール間に存在する無機組成物に対し、圧縮応力をより効果的に与えることができる。
金属材料としては、例えば、遠心チルド鋼、SUS、CrメッキSUS、Crメッキ焼入れ鋼等が挙げられる。
また、本実施形態に係るロールミルを構成するロールの少なくとも表面がセラミックス材料により構成されると、得られる硫化物系無機固体電解質材料にロール由来の不要な金属成分が混入してしまうことを抑制することができ、純度がより一層高い硫化物系無機固体電解質材料を得ることが可能となる。
このようなセラミックス材料としては、例えば、安定化ジルコニア、アルミナ、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド等が挙げられる。
これらの中でも比較的安価で高精度な大型部品を作製できるアルミナが好ましい。
3本ロールミルは、例えば、第一のロール、第二のロール、第三のロールおよびブレードにより構成される。
はじめに、2種以上の無機化合物を含む原料無機組成物を第一のロールおよび第二のロールとの隙間である第一のロール間に投入する。
第一のロール間に進入した原料無機組成物は、第一のロールおよび第二のロールにより圧縮される。ここで、第一のロールおよび第二のロールにおいて、異なる回転速度を採用することにより、第一のロール間に進入した原料無機組成物に対し、圧縮応力を与えつつ、より効果的にせん断応力を与えることができるため、無機組成物のガラス化およびアニール処理をより一層効率良く進めることができる。
第二のロール間を通過して得られた硫化物系無機固体電解質材料は第三のロールの表面に付着しており、例えばブレードによりそぎ落されて得ることができる。
また、第二のロール間を通過して得られた硫化物系無機固体電解質材料について、ガラス化またはアニール処理が不十分の場合は、第一のロール間および第二のロール間を通過させる上記処理を繰り返し行うことが好ましい。あるいは、ロールミルにおけるロールの数を4本以上とし、せん断応力および圧縮応力を組み合わせた機械的処理をさらに行うことが好ましい。
また、本実施形態に係るロールミルにおいて、無機組成物に対してより効果的にせん断応力を与える観点から、ロールの回転速度は20rpm以上1000rpm以下が好ましく、100rpm以上800rpm以下がより好ましい。
ただし、ロール間の距離およびロールの回転速度は無機組成物の種類や処理量、ロールの本数等によって適宜決定されるため、上記の範囲に限定されない。
また、上記非活性雰囲気下とは、真空雰囲気下または不活性ガス雰囲気下のことである。上記非活性雰囲気下では、水分の接触を避けるために露点が-50℃以下であることが好ましく、-60℃以下であることがより好ましい。上記不活性ガス雰囲気下とは、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下のことである。これらの不活性ガスは、製品への不純物の混入を防止するために、高純度である程好ましい。混合系への不活性ガスの導入方法としては、混合系内が不活性ガス雰囲気で満たされる方法であれば特に限定されないが、不活性ガスをパージする方法、不活性ガスを一定量導入し続ける方法等が挙げられる。
通常は、線源としてCuKα線を用いたX線回折分析をしたとき、ガラス化工程(B)を行う前の無機組成物の回折ピークが消失または低下していたら、上記無機組成物はガラス化されていると判断することができる。また、通常は、線源としてCuKα線を用いたX線回折分析をしたとき、ガラス化工程(B)を行う前の無機組成物やアニール処理工程(C)を行う前の硫化物系無機固体電解質材料が有する回折ピークとは異なる新たな回折ピークが生成していたら、上記無機組成物はアニール処理されて、ガラスセラミックス状態になっていると判断することができる。
本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の製造方法において、準備工程(A)とガラス化工程(B)との間に、工程(A)で準備した上記原料無機組成物を加熱することにより原料無機組成物を結晶化する工程をさらにおこなってもよい。
すなわち、結晶化した上記原料無機組成物に対し、上記ガラス化工程(B)をおこなってもよい。
上記ガラス化工程(B)の前に結晶化工程(D)をおこなうことにより、原料無機組成物をガラス化する工程(B)を大幅に短縮することができ、その結果、硫化物系無機固体電解質材料の製造時間をより一層短縮することが可能である。この理由については明らかではないが、以下の理由が推察される。
まず、ガラス状態の無機組成物は準安定状態である。一方、結晶状態の無機組成物は安定状態にある。また、2種以上の無機化合物を含む無機組成物を加熱すると活性化エネルギー以上のエネルギーを簡単に与えることができるので、エネルギーの放出とともに低いエネルギー状態である結晶状態の無機組成物が短時間で得られる。そして、安定状態の自由エネルギーと準安定状態の自由エネルギーは近いため、より小さなエネルギーで安定状態の結晶状態から準安定状態のガラス状態にすることができる。
以上の理由から、上記無機組成物をガラス化する工程(B)の前に、無機組成物を結晶化する工程(D)をおこない、あらかじめ無機組成物を安定状態である結晶状態とすることにより、より小さなエネルギーで準安定状態のガラス状態にすることができ、無機組成物をガラス化する工程を大幅に短縮することができると考えられる。
本実施形態の硫化物系無機固体電解質材料の製造方法では、必要に応じて、得られた硫化物系無機固体電解質材料を粉砕、分級、または造粒する工程をさらにおこなってもよい。例えば、粉砕により微粒子化し、その後、分級操作や造粒操作によって粒子径を調整することにより、所望の粒子径を有する硫化物系無機固体電解質材料を得ることができる。上記粉砕方法としては特に限定されず、ミキサー、気流粉砕、乳鉢、回転ミル、コーヒーミル等公知の粉砕方法を用いることができる。また、上記分級方法としては特に限定されず、篩等公知の方法を用いることができる。
これらの粉砕または分級は、空気中の水分との接触を防ぐことができる点から、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下で行うことが好ましい。
つぎに、本実施形態に係る固体電解質について説明する。本実施形態に係る固体電解質は、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料を含む。
そして、本実施形態に係る固体電解質は特に限定されないが、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料以外の成分として、例えば、本発明の目的を損なわない範囲内で、上述した本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料を含んでもよい。
これらの中でも、リチウムイオン伝導性に優れ、かつ広い電圧範囲で分解等を起こさない安定性を有する点から、Li2S-P2S5材料が好ましい。ここで、例えば、Li2S-P2S5材料とは、少なくともLi2S(硫化リチウム)とP2S5とを含む無機組成物を機械的処理により互いに化学反応させることにより得られる固体電解質材料を意味する。
ここで、本実施形態において、硫化リチウムには多硫化リチウムも含まれる。
その他のリチウム系無機固体電解質材料としては、例えば、LiPON、LiNbO3、LiTaO3、Li3PO4、LiPO4-xNx(xは0<x≦1)、LiN、LiI、LISICON等が挙げられる。
さらに、これらの無機固体電解質の結晶を析出させて得られるガラスセラミックスも無機固体電解質材料として用いることができる。
ポリマー電解質としては、一般的にリチウムイオン電池に用いられるものを用いることができる。
次に、本実施形態に係る固体電解質膜について説明する。
本実施形態に係る固体電解質膜は、前述した本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料を含む固体電解質を主成分として含む。
本実施形態に係る固体電解質膜を適用した全固体型リチウムイオン電池の例としては、正極と、固体電解質層と、負極とがこの順番に積層されたものが挙げられる。この場合、固体電解質層が固体電解質膜により構成されたものである。
加圧成形体とすることにより、固体電解質同士の結合が起こり、得られる固体電解質膜の強度はより一層高くなる。その結果、固体電解質の欠落や、固体電解質膜表面のクラックの発生をより一層抑制できる。
本実施形態に係る固体電解質膜中の上記した本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料の含有量の上限は特に限定されないが、例えば、100質量%以下である。
これにより、固体電解質間の接触性が改善され、固体電解質膜の界面接触抵抗を低下させることができる。その結果、固体電解質膜のリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。そして、このようなリチウムイオン伝導性に優れた固体電解質膜を用いることにより、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性を向上できる。
なお、「バインダー樹脂を実質的に含まない」とは、本実施形態の効果が損なわれない程度には含有してもよいことを意味する。また、固体電解質層と正極または負極との間に粘着性樹脂層を設ける場合、固体電解質層と粘着性樹脂層との界面近傍に存在する粘着性樹脂層由来の粘着性樹脂は、「固体電解質膜中のバインダー樹脂」から除かれる。
上記固体電解質を加圧する方法は特に限定されず、例えば、金型のキャビティ表面上に粒子状の固体電解質を堆積させた場合は金型と押し型によるプレス、粒子状の固体電解質を基材表面上に堆積させた場合は金型と押し型によるプレスやロールプレス、平板プレス等を用いることができる。
固体電解質を加圧する圧力は、例えば、10MPa以上500MPa以下である。
固体電解質を加熱する温度は、例えば、40℃以上500℃以下である。
図1は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池100の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係るリチウムイオン電池100は、例えば、正極活物質層101を含む正極110と、電解質層120と、負極活物質層103を含む負極130とを備えている。そして、正極活物質層101、負極活物質層103および電解質層120の少なくとも一つが、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料を含有する。また、正極活物質層101、負極活物質層103および電解質層120のすべてが、本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料を含有していることが好ましい。なお、本実施形態では特に断りがなければ、正極活物質を含む層を正極活物質層101と呼ぶ。正極110は、必要に応じて、正極活物質層101に加えて集電体105をさらに含んでもよいし、集電体105を含まなくてもよい。また、本実施形態では特に断りがなければ、負極活物質を含む層を負極活物質層103と呼ぶ。負極130は、必要に応じて、負極活物質層103に加えて集電体105をさらに含んでもよいし、集電体105を含まなくてもよい。
本実施形態に係るリチウムイオン電池100の形状は特に限定されず、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状が挙げられる。
正極110は特に限定されず、リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用することができる。正極110は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、正極活物質を含む正極活物質層101をアルミ箔等の集電体105の表面に形成することにより得ることができる。
正極活物質層101の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
正極活物質としては特に限定されず一般的に公知のものを使用することができる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、固溶体酸化物(Li2MnO3-LiMO2(M=Co、Ni等))、リチウム-マンガン-ニッケル酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)、オリビン型リチウムリン酸化物(LiFePO4)等の複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子;Li2S、CuS、Li-Cu-S化合物、TiS2、FeS、MoS2、Li-Mo-S化合物、Li-Ti-S化合物、Li-V-S化合物、Li-Fe-S化合物等の硫化物系正極活物質;硫黄を含浸したアセチレンブラック、硫黄を含浸した多孔質炭素、硫黄と炭素の混合粉等の硫黄を活物質とした材料;等を用いることができる。これらの正極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、より高い放電容量密度を有し、かつ、サイクル特性により優れる観点から、硫化物系正極活物質が好ましく、Li-Mo-S化合物、Li-Ti-S化合物、Li-V-S化合物から選択される一種または二種以上がより好ましい。
また、Li-Ti-S化合物は構成元素としてLi、Ti、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるチタン硫化物および硫化リチウムを含む無機組成物を機械的処理により互いに化学反応させることにより得ることができる。
Li-V-S化合物は構成元素としてLi、V、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるバナジウム硫化物および硫化リチウムを含む無機組成物を機械的処理により互いに化学反応させることにより得ることができる。
本実施形態に係るバインダー樹脂はリチウムイオン電池に使用可能な通常のバインダー樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン・ブタジエン系ゴム、ポリイミド等が挙げられる。これらのバインダーは一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極130は特に限定されず、リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用することができる。負極130は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、負極活物質を含む負極活物質層103を銅等の集電体105の表面に形成することにより得ることができる。
負極活物質層103の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
上記負極活物質としては、リチウムイオン電池の負極に使用可能な通常の負極活物質であれば特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素質材料;リチウム、リチウム合金、スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、ガリウム、ガリウム合金、インジウム、インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を主体とした金属系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー;リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti5O12)等が挙げられる。これらの負極活物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
負極活物質層103中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途等に応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
次に、電解質層120について説明する。電解質層120は、正極活物質層101および負極活物質層103の間に形成される層である。
電解質層120とは、セパレーターに非水電解液を含浸させたものや、固体電解質を含む固体電解質層が挙げられる。
上記電解質としては、公知のリチウム塩がいずれも使用でき、活物質の種類に応じて選択すればよい。例えば、LiClO4、LiBF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、CF3SO3Li、CH3SO3Li、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等が挙げられる。
本実施形態に係る固体電解質層における固体電解質の含有量は、所望の絶縁性が得られる割合であれば特に限定されるものではないが、例えば、10体積%以上100体積%以下の範囲内、中でも、50体積%以上100体積%以下の範囲内であることが好ましい。特に、本実施形態においては、固体電解質層が本実施形態に係る硫化物系無機固体電解質材料を含む固体電解質のみから構成されていることが好ましい。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
はじめに、以下の実施例および比較例における測定方法を説明する。
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー3000)を用いて、レーザー回折法により、実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料の粒度分布を測定した。測定結果から、硫化物系無機固体電解質材料について、重量基準の累積分布における50%累積時の粒径(D50、平均粒子径)を求めた。
ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルメント社製、SPS3000)を用いて、ICP発光分光分析法により測定し、実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料中のLi、PおよびSの質量%をそれぞれ求め、それに基づいて、各元素のモル比をそれぞれ計算した。
X線回折装置(リガク社製、RINT2000)を用いて、X線回折分析法により、実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料の回折スペクトルをそれぞれ求めた。なお、線源としてCuKα線を用いた。ここで、回折角2θ=35.0±0.1°の位置における最大回折強度をバックグラウンド強度IAとし、回折角2θ=17.2±0.5°の位置に存在する回折ピークの最大回折強度をIBとし、回折角2θ=25.6±0.5°の位置に存在する回折ピークの最大回折強度をICとし、回折角2θ=29.2±0.8°の位置に存在する回折ピークの最大回折強度をIDとし、回折角2θ=26.6±0.4°の位置に存在する回折ピークの最大回折強度をIEとした。また、IB/IA、およびIC/IA、ID/IAおよびIE/IAをそれぞれ求めた。
実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料に対して、交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度の測定をおこなった。また、実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料1.0gを25℃の大気中に10分間それぞれ暴露した後にも、硫化物系無機固体電解質材料のリチウムイオン伝導度の測定をそれぞれおこなった。
リチウムイオン伝導度の測定はバイオロジック社製、ポテンショスタット/ガルバノスタットSP-300を用いた。試料の大きさは直径9.5mm、厚さ1.2~2.0mm、測定条件は、印加電圧10mV、測定温度27.0℃、測定周波数域0.1Hz~7MHz、電極はLi箔とした。
ここで、リチウムイオン伝導度測定用の試料としては、プレス装置を用いて、実施例および比較例で得られた粉末状の硫化物系無機固体電解質材料150mgを270MPa、10分間プレスして得られる直径9.5mm、厚さ1.2~2.0mmの板状の硫化物系無機固体電解質材料を用いた。
プレス装置を用いて、実施例および比較例で得られた粉末状の硫化物系無機固体電解質材料120~150mgを270MPa、10分間プレスして直径9.5mm、厚さ1.3mmの板状の硫化物系無機固体電解質材料(ペレット)を得た。次いで、得られたペレットの一方の面に参照極・対極としてLi箔を、18MPa、10分間の条件でプレス圧着し、もう一方の面に作用極としてSUS314箔を密着した。
次いで、バイオロジック社製、ポテンショスタット/ガルバノスタットSP-300を用いて、温度25℃、掃引電圧範囲0~5V、電圧掃引速度5mV/秒の条件で、硫化物系無機固体電解質材料の酸化分解電流の最大値を求め、以下の基準で評価した。
◎:0.03μA以下
〇:0.03μA超過0.50μA以下
×:0.50μA超過
アルゴンガスで置換したグローボックス内で、実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料(100mg)をプラスチック容器に入れ、そのプラスチック容器をガラス製密閉容器(容量1L)内の底に配置した。次いで、ガラス製密閉容器を室温の大気中に取り出し、ガラス製密閉容器の上部から、プラスチック容器内の硫化物系無機固体電解質材料にイオン交換水(1mL)を滴下した。次いで、イオン交換水を滴下してから5分後にガラス製密閉容器に取り付けたゴム製のガス吸収袋(岡野製作所社製、製品名:OG-3F-D)を10回萎めることでガラス製密閉容器内部のガス雰囲気を均一にした後、検知管(ガステック社製、製品名:No.4LL)を用いて図4に示す測定位置にて硫化水素ガスの濃度を測定した。
<実施例1>
硫化物系無機固体電解質材料を以下の手順で作製した。
原料には、Li2S(古河機械金属社製、純度99.9%)、P2S5(関東化学社製)およびLi3N(古河機械金属社製)を使用した。
次いで、グローブボックス内で、クラッシャーを用いて、Li2S粉末とP2S5粉末とLi3N粉末(Li2S:P2S5:Li3N=71.1:23.7:5.3(モル%))合計80gを混合することにより、原料無機組成物を調製した。
次いで、原料無機組成物80gを3本ロールミル(アイメックス社製BR-100V)にてメカノケミカル処理し、硫化物系無機固体電解質材料を得た。ここで、第一のロール~第三のロールの通過を1回とし、合計で70回通過させた。また、各ロールはジルコニア(ZrO2)製で直径が63.5mmのものを用い、ロール間の距離は20μmとした。また、第一のロールの回転速度:第二のロールの回転速度:第三のロールの回転速度=1:2.5:6とし、第三のロールの回転速度を700rpmとした。
第一のロール~第三のロールの通過を70回おこなった後に試料の一部をそれぞれサンプリングし、各物性をそれぞれ評価した。得られた結果を表1に示す。
第一のロール~第三のロールの通過の回数を40回に変更した以外は実施例1と同様の方法により硫化物系無機固体電解質材料を作製し、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
第一のロール~第三のロールの通過の回数を60回に変更した以外は実施例1と同様の方法により硫化物系無機固体電解質材料を作製し、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
Li2S粉末とP2S5粉末とLi3N粉末との混合比をLi2S:P2S5:Li3N=72.6:24.2:3.2(モル%)に変更した以外は実施例1と同様の方法により硫化物系無機固体電解質材料を作製し、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
Li2S粉末とP2S5粉末とLi3N粉末との混合比をLi2S:P2S5:Li3N=73.8:24.6:1.6(モル%)に変更した以外は実施例1と同様の方法により硫化物系無機固体電解質材料を作製し、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
第一のロール~第三のロールの通過の回数を10回に変更した以外は実施例1と同様の方法により硫化物系無機固体電解質材料を作製した。次いで、得られたガラス状態の硫化物系無機固体電解質材料をカーボンるつぼに移し、グローブボックス内に設置したオーブンで270℃、2時間のアニール処理をおこない、硫化物系無機固体電解質材料を得た。各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
硫化物系無機固体電解質材料を以下の手順で作製した。
原料には、Li2S(古河機械金属社製、純度99.9%)、P2S5(関東化学社製)およびLi3N(古河機械金属社製)を使用した。
次いで、グローブボックス内で、クラッシャーを用いて、Li2S粉末とP2S5粉末とLi3N粉末(Li2S:P2S5:Li3N=71.1:23.7:5.3(モル%))合計80gを混合することにより、原料無機組成物を調製した。
つづいて、グローブボックス内のアルミナ製のポット(内容積400mL)の内部に、原料無機組成物2gと直径10mmのZrO2ボール500gとを投入し、ポットを密閉した。
次いで、グローブボックス内から、アルミナ製のポットを取り出し、乾燥した大気雰囲気下に設置したボールミル機にアルミナ製のポットを取り付け、120rpmで300時間メカノケミカル処理し、原料無機組成物のガラス化をおこなった。24時間混合する毎にグローブボックス内でポットの内壁についた粉末を掻き落とし、密封後、乾燥した大気雰囲気下でミリングを継続した。
ここで、メカノケミカル処理を36時間行った後にポットを開けてみたところ、ポットの内壁には無機組成物の固まりが付着していた。そのため24時間ごとにポットの内壁に付着した無機組成物の固まりをそぎ落とす操作が必要であった。
次いで、グローブボックス内にアルミナ製のポットを入れ、得られた粉末をZrO2ボールと分離して、アルミナ製のポットからカーボンるつぼに移し、グローブボックス内に設置したオーブンで270℃、2時間のアニール処理をおこない、硫化物系無機固体電解質材料を得た。得られた硫化物系無機固体電解質材料について、各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
ここで、実施例および比較例で得られた硫化物系無機固体電解質材料のX線回折スペクトルを図2および図3にそれぞれ示す。
101 正極活物質層
103 負極活物質層
105 集電体
110 正極
120 電解質層
130 負極
Claims (17)
- リチウムイオン伝導性を有し、かつ、構成元素としてLi、PおよびSを含む硫化物系無機固体電解質材料であって、
下記の方法で測定される、硫化水素の発生量が0.1ppm以上20ppm以下であり、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて回折角2θ=17.2±0.5°の位置、回折角2θ=25.6±0.5°の位置および回折角2θ=29.2±0.8°の位置にそれぞれ回折ピークを有する硫化物系無機固体電解質材料。
(方法)
アルゴンガスで置換したガラス製密閉容器内に当該硫化物系無機固体電解質材料を配置し、次いで、前記ガラス製密閉容器の上部から前記硫化物系無機固体電解質材料に水を滴下してから5分後に、前記ガラス製密閉容器内に発生した硫化水素ガス量を測定する。 - 請求項1に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて回折角2θ=35.0±0.1°の位置における最大回折強度をバックグラウンド強度IAとし、回折角2θ=17.2±0.5°の位置に存在する回折ピークの最大回折強度をIBとしたとき、IB/IAの値が2.0以上である硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1または2に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて回折角2θ=35.0±0.1°の位置における最大回折強度をバックグラウンド強度IAとし、回折角2θ=25.6±0.5°の位置に存在する回折ピークの最大回折強度をICとしたとき、IC/IAの値が2.0以上である硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて回折角2θ=35.0±0.1°の位置における最大回折強度をバックグラウンド強度IAとし、回折角2θ=29.2±0.8°の位置に存在する回折ピークの最大回折強度をIDとしたとき、ID/IAの値が2.0以上である硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて回折角2θ=26.6±0.4°の位置にさらに回折ピークを有し、
回折角2θ=35.0±0.1°の位置における最大回折強度をバックグラウンド強度IAとし、回折角2θ=26.6±0.4°の位置に存在する回折ピークの最大回折強度をIEとしたとき、IE/IAの値が2.2以上である硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
当該硫化物系無機固体電解質材料中の前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比Li/Pが1.0以上5.0以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比S/Pが2.0以上6.0以下である硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
27.0℃、印加電圧10mV、測定周波数域0.1Hz~7MHzの測定条件における交流インピーダンス法による前記硫化物系無機固体電解質材料のリチウムイオン伝導度が2.2×10-4S・cm-1以上である硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
温度25℃、掃引電圧範囲0~5V、電圧掃引速度5mV/秒の条件で測定される、前記硫化物系無機固体電解質材料の酸化分解電流の最大値が0.50μA以下である硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
ガラスセラミックス状態である硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
前記硫化物系無機固体電解質材料の形状は粒子状であり、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における、粒子状の前記硫化物系無機固体電解質材料の平均粒子径d50が1μm以上100μm以下である硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料において、
リチウムイオン電池に用いられる硫化物系無機固体電解質材料。 - 請求項1乃至11のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料を含む固体電解質。
- 請求項12に記載の固体電解質を主成分として含む固体電解質膜。
- 請求項13に記載の固体電解質膜において、
粒子状の前記固体電解質の加圧成形体である固体電解質膜。 - 請求項13または14に記載の固体電解質膜において、
当該固体電解質膜中のバインダー樹脂の含有量が、前記固体電解質膜の全体を100質量%としたとき、0.5質量%未満である固体電解質膜。 - 請求項13乃至15のいずれか一項に記載の固体電解質膜において、
当該固体電解質膜中の前記硫化物系無機固体電解質材料の含有量が、前記固体電解質膜の全体を100質量%としたとき、50質量%以上である固体電解質膜。 - 正極活物質層を含む正極と、電解質層と、負極活物質層を含む負極とを備えたリチウムイオン電池であって、
前記正極活物質層、前記電解質層および前記負極活物質層のうち少なくとも一つが、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の硫化物系無機固体電解質材料を含むリチウムイオン電池。
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