以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るチャックテーブルによって保持可能なウェーハの構成例について説明する。図1(A)は、ウェーハ11を示す斜視図である。
ウェーハ11は、例えばシリコン等の材料によって円盤状に形成され、表面11a及び裏面11bを備える。ウェーハ11は、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)13によって複数の領域に区画されており、この領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。
ウェーハ11は、複数のデバイス15が形成された略円形のデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する環状の外周余剰領域19とを、表面11a側に備える。外周余剰領域19は、ウェーハ11の外周部に位置し、デバイス15が形成されていない領域に相当する。図1(A)では、デバイス領域17と外周余剰領域19との境界21を二点鎖線で示している。
なお、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えばウェーハ11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等の材料によって形成されていてもよい。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
ウェーハ11を分割予定ライン13に沿って分割することにより、デバイス15をそれぞれ含む複数のデバイスチップが得られる。なお、このデバイスチップの薄型化等を目的として、分割前のウェーハ11に対しては研削加工が施される。具体的には、ウェーハ11の裏面11b側が研削砥石で研削され、ウェーハ11が薄化される。
ウェーハ11の裏面11b側を研削する際は、まず、ウェーハ11の表面11a側に円形の保護部材23を貼付する。保護部材23としては、例えば樹脂等でなるフィルム状のテープが用いられる。図1(B)は、保護部材23が貼付されたウェーハ11を示す斜視図である。保護部材23によってウェーハ11の表面11a側が覆われ、複数のデバイス15が保護される。
次に、ウェーハ11の研削加工に用いられる研削装置の構成例について説明する。図2は、研削装置2を示す斜視図である。研削装置2は、ウェーハ11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)4と、ウェーハ11に対して研削加工を施す研削ユニット6とを備える。
チャックテーブル4の上面は、ウェーハ11の形状に対応して平面視で円形に形成されており、ウェーハ11を保持する保持面を構成する。この保持面は、チャックテーブル4の内部に形成された吸引路(不図示)を介して吸引源と接続されている。
チャックテーブル4はモータ等の回転駆動源(不図示)と接続されており、この回転駆動源はチャックテーブル4を鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転させる。また、チャックテーブル4の下方には移動機構(不図示)が設けられており、この移動機構はチャックテーブル4を水平方向に移動させる。
チャックテーブル4の上方には、研削ユニット6が配置されている。研削ユニット6は、昇降機構(不図示)によって支持された円筒状のハウジング8を備える。ハウジング8には円柱状のスピンドル10が収容されており、スピンドル10の下端部はハウジング8の外部に露出している。このスピンドル10の下端部には、円盤状の研削ホイール12が装着される。
研削ホイール12は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料で形成された円環状の基台14を備える。なお、基台14の直径は、チャックテーブル4によって保持されるウェーハ11のデバイス領域17(図1(A)参照)の直径よりも小さい。また、基台14の下面側には、直方体状に形成された複数の研削砥石16が基台14の外周部に沿って固定されている。
スピンドル10の上端側(基端側)にはモータ等の回転駆動源(不図示)が接続されており、研削ホイール12はこの回転駆動源で発生する力によって、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、研削ユニット6の内部又は近傍には、チャックテーブル4によって保持されたウェーハ11及び研削砥石16に純水等の研削液を供給するためのノズル(不図示)が設けられている。
ウェーハ11の裏面11b側を研削する際は、まず、ウェーハ11の表面11a側(保護部材23側)とチャックテーブル4の保持面とが対向するように、ウェーハ11をチャックテーブル4上に配置する。そして、チャックテーブル4の保持面に吸引源の負圧を作用させる。これにより、ウェーハ11が保護部材23を介してチャックテーブル4によって吸引保持される。
次に、ウェーハ11を保持したチャックテーブル4を研削ユニット6の下方に移動させる。このときチャックテーブル4の位置は、複数の研削砥石16がウェーハ11のデバイス領域17(図1(A)参照)と重なり、且つ、ウェーハ11の外周余剰領域19(図1(A)参照)とは重ならないように調整される。
そして、チャックテーブル4と研削ホイール12とをそれぞれ回転させ、研削液をウェーハ11の裏面11b側に向かって供給しながらハウジング8を下降させる。例えば、チャックテーブル4は矢印Aで示す方向に所定の回転数(例えば300rpm)で回転し、研削ホイール12は矢印Bで示す方向に所定の回転数(例えば6000rpm)で回転する。ハウジング8の下降速度は、研削砥石16が適切な力でウェーハ11の裏面11b側に押し当てられるように調整される。
ハウジング8が下降し、複数の研削砥石16がウェーハ11に接触すると、ウェーハ11の裏面11b側が研削される。このとき複数の研削砥石16は、ウェーハ11の裏面11bのうちデバイス領域17に対応する(デバイス領域17と重なる)第1領域11cと接触し、且つ、外周余剰領域19に対応する(外周余剰領域19と重なる)第2領域11dとは接触しない。そのため、ウェーハ11の第1領域11cのみが研削砥石16によって研削され、薄化される。
ウェーハ11が所望の厚さまで薄化されると、ウェーハ11の研削加工が完了する。図3は、研削加工後のウェーハ11を示す斜視図である。研削加工後のウェーハ11の裏面11b側には、円形の凹部11eが形成されている。この凹部11eは、デバイス領域17(図1(A)参照)に対応する領域に形成されており、ウェーハ11の外周部11fに囲繞されている。なお、外周部11fには研削加工が施されておらず、外周部11fの厚さは研削加工前のウェーハ11の厚さと同一である。
仮に、ウェーハ11の裏面11b側の全体を研削すると、ウェーハ11の剛性が低下し、ウェーハ11に反りが発生しやすくなる。ウェーハ11に反りが生じると、ウェーハの研削後に所定の工程(ウェーハ11の搬送、ウェーハ11の裏面11b側を金属膜で被覆する工程等)を実施することが困難になる場合がある。
一方、上記のようにウェーハ11の裏面11bのうちデバイス領域17に対応する領域(第1領域11c)のみを研削すると、図3に示すようにウェーハ11の外周部11fは薄化されず、厚い状態に維持される。これにより、ウェーハ11の剛性の低下が抑えられ、ウェーハ11の反りの発生が抑制される。
次に、研削加工が施されたウェーハ11にレーザービームを照射することによって、ウェーハ11を加工する。レーザービームによってウェーハ11を加工する際には、まず、ウェーハ11が環状のフレームによって支持される。図4(A)はフレーム27によって支持されたウェーハ11を示す斜視図であり、図4(B)はフレーム27によって支持されたウェーハ11を示す断面図である。
ウェーハ11の裏面11b側には、ウェーハ11より径の大きい円形のテープ25が貼付される。例えばテープ25は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなる基材上に、ゴム系やアクリル系の粘着層(糊層)を形成することによって得られる柔軟なフィルムである。なお、図4(B)に示すように、テープ25はウェーハ11の外周部11fのみでなく、凹部11eの輪郭に沿って凹部11eの内部にも貼付される。
テープ25の外周部は、ウェーハ11より直径の大きい円形の開口27aを中央部に備える環状のフレーム27に貼付される。これにより、ウェーハ11は開口27aの内側に配置された状態で、テープ25を介してフレーム27によって支持される。そして、フレーム27によって支持されたウェーハ11は、レーザー加工装置に搬送され、加工される。
図5は、レーザー加工装置22を示す斜視図である。レーザー加工装置22は、レーザー加工装置22が備える各構成要素を支持する基台24を備える。また、基台24の後方には、直方体状の支持構造26がZ軸方向(鉛直方向、上下方向)に沿って配置されている。
基台24の前方の角部には、上方に向かって突出する突出部24aが設けられている。突出部24aの内部には開口が形成されており、この開口の内部には昇降機構(不図示)に接続されたカセットエレベータ28が設置されている。カセットエレベータ28の上面には、フレーム27によって支持された状態のウェーハ11(図4(A)及び図4(B)参照)を複数収容可能なカセット30が搭載される。
突出部24aの後方には、ウェーハ11を仮置きするための仮置き機構32が設けられている。仮置き機構32は、Y軸方向(割り出し送り方向、前後方向)に概ね平行に配置された一対のガイドレール32a,32bを備える。ガイドレール32a,32bは、互いに平行な状態を維持しながら接近及び離隔するように、X軸方向(加工送り方向、左右方向)に沿って移動する。なお、ガイドレール32a,32bはそれぞれ、フレーム27(図4(A)及び図4(B)参照)を支持する支持面と、支持面に概ね垂直な側面とを備える。
仮置き機構32の上方には、ウェーハ11を搬送する搬送機構34が設けられている。搬送機構34の突出部24a側には、ウェーハ11を支持するフレーム27を把持する把持部34aが設けられている。また、搬送機構34の下面側には、ウェーハ11又はフレーム27を吸引して保持する複数の吸着パッド(不図示)が設けられている。
カセット30に収容されたウェーハ11は、把持部34aでフレーム27を把持した搬送機構34によってカセット30から引き出され、ガイドレール32a,32b上に配置される。また、ガイドレール32a,32bは互いに接近するように移動してウェーハ11を挟み込み、ウェーハ11のX軸方向における位置合わせを行う。
基台24の中央部には、移動機構36が設けられている。移動機構36は、Y軸方向と概ね平行に配置された一対のY軸ガイドレール38を備える。Y軸ガイドレール38には、Y軸移動テーブル40がスライド可能に取り付けられている。
Y軸移動テーブル40の裏面側(下面側)にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール38と概ね平行に配置されたY軸ボールネジ42が螺合されている。Y軸ボールネジ42の一端部には、Y軸パルスモータ44が連結されている。Y軸パルスモータ44でY軸ボールネジ42を回転させると、Y軸移動テーブル40がY軸ガイドレール38に沿ってY軸方向に移動する。
Y軸移動テーブル40の表面(上面)には、X軸方向と概ね平行に配置された一対のX軸ガイドレール46が設けられている。X軸ガイドレール46には、X軸移動テーブル48がスライド可能に取り付けられている。
X軸移動テーブル48の裏面側(下面側)にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール46と概ね平行に配置されたX軸ボールネジ50が螺合されている。X軸ボールネジ50の一端部には、X軸パルスモータ(不図示)が連結されている。X軸パルスモータでX軸ボールネジ50を回転させると、X軸移動テーブル48がX軸ガイドレール46に沿ってX軸方向に移動する。
X軸移動テーブル48の表面側(上面側)には、柱状のテーブルベース52が設けられている。テーブルベース52の上部には、ウェーハ11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)54が配置されている。また、チャックテーブル54の周囲には、ウェーハ11を支持するフレーム27(図4(A)及び図4(B)参照)を固定する4つのクランプ56が設けられている。
テーブルベース52は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されている。回転駆動源でテーブルベース52を回転させると、チャックテーブル54がZ軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、移動機構36でX軸移動テーブル48をX軸方向に移動させると、テーブルベース52及びチャックテーブル54がX軸方向に移動する(加工送り)。さらに、移動機構36でY軸移動テーブル40をY軸方向に移動させると、テーブルベース52及びチャックテーブル54がY軸方向に移動する(割り出し送り)。
チャックテーブル54の上面は、ウェーハ11を保持する保持面54aを構成する。また、保持面54aは、チャックテーブル54の内部に形成された吸引路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)に接続されている。なお、チャックテーブル54の構造の詳細については後述する(図6(A)、図6(B)等参照)。
また、支持構造26は、前方に向かって突出する支持アーム26aを備える。この支持アーム26aの先端部には、下方に向かってレーザービームを照射するレーザー照射ユニット58が配置されている。また、レーザー照射ユニット58に隣接する位置には、ウェーハ11を撮像する撮像ユニット(カメラ)60が設置されている。
レーザー照射ユニット58は、例えばウェーハ11に吸収される波長のレーザービーム(ウェーハ11に対して吸収性を有する波長のレーザービーム)をパルス発振するレーザー発振器(不図示)を備える。例えば、ウェーハ11がシリコン等の半導体材料でなり、ウェーハ11に対してアブレーション加工を施す場合には、波長が355nmのレーザービームをパルス発振するNd:YAG等のレーザー媒質を備えたレーザー発振器を用いることができる。
また、レーザー照射ユニット58は、レーザー発振器からパルス発振されたレーザービームを集光する集光器(不図示)を備える。この集光器は、チャックテーブル54によって保持されたウェーハ11の所定の位置にレーザービームを集光する。レーザー照射ユニット58でレーザービームを照射しながらチャックテーブル54を移動させることにより、ウェーハ11が加工される。
なお、チャックテーブル54の動作は、加工の内容に応じて適宜設定される。例えば、ウェーハ11をX軸方向又はY軸方向に沿って移動させることにより、ウェーハ11がX軸方向又はY軸方向に沿って加工される。また、チャックテーブル54を回転させることにより、ウェーハ11がチャックテーブル54の回転方向に沿って環状に加工される。
仮置き機構32に仮置きされたウェーハ11は、搬送機構34によってチャックテーブル54に搬送された後、レーザー照射ユニット58によって加工される。そして、加工後のウェーハ11は、例えば搬送機構34によって保持され、仮置き機構32に配置される。
なお、ウェーハ11をチャックテーブル54から仮置き機構32に搬送する途中で、ウェーハ11を洗浄ユニット(不図示)に搬送し、ウェーハ11の洗浄を行ってもよい。そして、仮置き機構32に配置されたウェーハ11は、ガイドレール32a,32bによって挟み込まれて位置合わせが行われた後、搬送機構34によってカセット30に収容される。
仮置き機構32、搬送機構34、移動機構36、チャックテーブル54、レーザー照射ユニット58、撮像ユニット60等の各構成要素は、それぞれ、制御ユニット(不図示)に接続されている。この制御ユニットは、ウェーハ11の加工に必要な一連の工程に合わせて、レーザー加工装置22の各構成要素の動作を制御する。
図4(A)及び図4(B)に示すウェーハ11の表面11a側をレーザー加工装置22で加工する際は、まず、チャックテーブル54でウェーハ11を支持する。具体的には、ウェーハ11の裏面11b側(テープ25側)と保持面54aとが対向するようにウェーハ11をチャックテーブル54上に配置するとともに、クランプ56でフレーム27を固定する。この状態で、保持面54aに吸引源の負圧を作用させると、ウェーハ11がテープ25を介してチャックテーブル54によって吸引保持される。
ただし、ウェーハ11の裏面11b側には凹部11e(図4(B)参照)が形成されており、テープ25も凹部11eに沿って貼付されている。そのため、仮にチャックテーブル54の保持面54aが水平に形成されていると、チャックテーブル54上にウェーハ11を配置した際にテープ25と保持面54aとの間に隙間が形成され、ウェーハ11がチャックテーブル54によって適切に保持されない場合がある。
そこで、本実施形態では、テーブル基台と、テーブル基台に固定されるポーラス板とを備えるチャックテーブル54を用いる。このポーラス板は、上面側がテーブル基台の上面から上方に突出するように配置されており、ウェーハ11は、ウェーハ11の裏面11b側に形成された凹部にポーラス板の上面側が挿入されるように配置される。
これにより、ウェーハ11の凹部11eがポーラス板によって支持され、凹部11eを備えるウェーハ11がチャックテーブル54によって適切に保持される。以下、チャックテーブル54の具体的な構成例について説明する。
図6(A)はチャックテーブル54を示す平面図であり、図6(B)はチャックテーブル54をA-A´線で切断したときの断面図である。チャックテーブル54は、円盤状のテーブル基台70を備える。テーブル基台70は、例えばSUS等の金属、セラミックス、樹脂等を用いて形成される。また、テーブル基台70は、レーザー照射ユニット58(図5参照)から照射されるレーザービームに対して透過性を有する透明な材質(ガラス等)によって構成されていてもよい。
テーブル基台70の表面70a側には、上方に突出する円形の凸部70bが設けられている。この凸部70bの上面70cは、テーブル基台70の上面に相当し、ウェーハ11の外周部11fを保持する保持面を構成する(図9参照)。
また、テーブル基台70はその上面側(凸部70bの上面70c側)に収容凹部70dを備える。収容凹部70dは、凸部70bの上面70cからテーブル基台70の下面側に向かって平面視で円形に形成されている。この収容凹部70dの側面によって、テーブル基台70の内壁が構成される。なお、収容凹部70dの直径は凸部70bの直径よりも小さく、凸部70bと収容凹部70dとは同心円状に配置されている。
また、収容凹部70dの底部には、吸引路70eが形成されている。吸引路70eは、収容凹部70dの底からテーブル基台70の裏面(下面)側に向かって形成されており、バルブ98を介して吸引源100に接続される。この吸引路70eによって、収容凹部70dが吸引源100に接続される。
また、凸部70bの上面70c側には、収容凹部70dの側面(テーブル基台70の内壁)と、凸部70bの外周面(テーブル基台70の側面)とを接続する複数の大気開放溝70fが形成されている。大気開放溝70fは後述のように、チャックテーブル54でウェーハ11を保持した際に、収容凹部70dをチャックテーブル54の外部と連通させ、大気開放するために設けられる。なお、図6(A)には4つの大気開放溝70fが凸部70bの周方向に沿って概ね等間隔に形成されている例を示すが、大気開放溝70fの数及び配置に制限はない。
収容凹部70dには、ウェーハ11を吸引保持する円盤状の吸引部72が収容される。吸引部72は、多孔質材料でなり上面から下面に連通する多数の貫通孔を備えるポーラス板74を備える。ポーラス板74は、レーザー照射ユニット58(図5参照)から照射されるレーザービームに対して透過性を有する材質でなる。すなわち、レーザー照射ユニット58から照射された光はポーラス板74を透過する。このポーラス板74の上面74aは、ウェーハ11の凹部11eを保持する保持面を構成する(図9参照)。
例えば、ポーラス板74は多孔質ガラスでなる。多孔質ガラスの材料としては、ソーダガラス(ソーダ石灰ガラス)、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等を用いることができる。特に、石英ガラスは耐熱性が高いため、ポーラス板74に用いる材料として好ましい。
なお、ポーラス板74の厚さは、収容凹部70dの深さよりも大きい。そのため、吸引部72を収容凹部70dの内部に配置すると、ポーラス板74の下面側が収容凹部70dに挿入されるとともに、ポーラス板74の上面74a側がテーブル基台70の上面(凸部70bの上面70c)から上方に突出する。
ポーラス板74の側面には、シール部材76が設けられている。シール部材76は、樹脂等でなり、ポーラス板74を囲繞するように形成される。なお、吸引部72の直径が収容凹部70dの直径よりも小さい場合、収容凹部70dに吸引部72を配置すると、図6(B)に示すように凸部70bとシール部材76との間に隙間78が形成される。
また、チャックテーブル54は、ポーラス板74をテーブル基台70に固定する押し当て固定部80を備える。押し当て固定部80は、テーブル基台70の表面70aに固定される固定部82と、ポーラス板74を押圧する押圧部84とを備える。固定部82と押圧部84とは、付勢部材86を介して互いに接続されている。
付勢部材86は、押圧部84を付勢することが可能な部材でなり、例えば弾性力によって押圧部84を押圧可能な弾性部材(ばね等)によって構成される。本実施形態では、付勢部材86としてばねを用いている。付勢部材86の一端側は固定部82に固定され、他端側は押圧部84に固定されている。
図6(B)に示すように、凸部70bの下部側の一部には、収容凹部70dの側面(テーブル基台70の内壁)から凸部70bの外周面(テーブル基台70の側面)に至る貫通孔70gが形成されている。また、押圧部84は、貫通孔70gに挿入可能な形状及び大きさで形成されている。なお、押圧部84の固定部82とは反対側に位置する側面は、ポーラス板74の側面の形状に対応して曲面状に形成されており、ポーラス板74を押圧する押圧面84aを構成する。
また、図6(A)に示すように、固定部82には、固定部82を上下に貫通する複数の長孔82aが形成されている。長孔82aは、長手方向が固定部82とテーブル基台70の中心とを結ぶ直線に沿うように形成されている。この長孔82aには、固定部82をテーブル基台70に固定するためのねじ88が挿入される。
図7は、押し当て固定部80の一部を拡大して示す断面図である。テーブル基台70の表面70a側には、ねじ88の先端部が挿入されるねじ溝70hが形成されている。長孔82aとねじ溝70hとが重なるように固定部82を配置した状態で、ねじ88を長孔82aに挿入してねじ溝70hにねじ込むと、固定部82がねじ88の頭部88aによってテーブル基台70に押し付けられ、テーブル基台70に固定される。
ポーラス板74をテーブル基台70に固定する際は、まず、収容凹部70dの内部にポーラス板74を配置した状態で、貫通孔70gに押圧部84を挿入するとともに、固定部82をテーブル基台70の表面70a上に配置する。そして、固定部82を収容凹部70d側に押圧することにより、押圧部84の押圧面84aをポーラス板74の側面側(シール部材76)に接触させるとともに、ばねで構成される付勢部材86を自然長未満に縮める。
これにより、ポーラス板74が押圧部84によって側面側から押圧され、テーブル基台70の内壁のうち押し当て固定部80とは反対側に位置する領域にポーラス板74が押し当てられる。この状態で、ねじ88を固定部82の長孔82aに挿入してねじ溝70hにねじ込み、固定部82をテーブル基台70の表面70aに固定する。その結果、ポーラス板74はテーブル基台70の内壁と押圧部84とによって挟まれた状態で、テーブル基台70に固定される。
一方、ポーラス板74をテーブル基台70から取り外す際は、ねじ88を緩めて押し当て固定部80を取り外す。これにより、押し当て固定部80によるポーラス板74の押圧が解除され、ポーラス板74を収容凹部70dから取り出すことが可能となる。図8は、テーブル基台70とポーラス板74とが分離された状態のチャックテーブル54を示す断面図である。このように、ポーラス板74は押し当て固定部80によって、テーブル基台70に着脱自在に固定される。
また、凸部70bの大気開放溝70fが形成されていない領域には、複数の発光部90が形成されている。発光部90は、凸部70bの上面70c側に形成された凹部70iの内部に配置された光源92を備える。光源92はLED(Light Emitting Diode)等でなり、配線94を介して光源92に電圧を供給する電源(不図示)に接続されている。また、光源92を収容する凹部70iの上部は、透明な部材でなるカバー96によって覆われている。
配線94を介して光源92に所定の電圧を供給すると、光源92が発光する。そして、光源92が発する光は、カバー96を介してチャックテーブル54の上方に向かって照射される。例えば発光部90は、撮像ユニット60(図5参照)でウェーハ11を撮影する際、ウェーハ11の外周部11fを照らすライトとして用いられる。
上記のチャックテーブル54によって、裏面11b側に凹部11eが形成されたウェーハ11(図4(B)参照)が保持される。図9は、ウェーハ11を保持するチャックテーブル54を示す断面図である。
チャックテーブル54でウェーハ11を保持する際は、まず、ウェーハ11の裏面11b側(テープ25側)とポーラス板74の上面74aとが対向するように、ウェーハ11をチャックテーブル54上に配置する。このときウェーハ11は、凹部11eがポーラス板74と重なるように位置付けられる。また、ウェーハ11を支持するフレーム27をクランプ56(図5参照)で固定する。
ここで、ポーラス板74の厚さは、テーブル基台70の上面(凸部70bの上面70c)とポーラス板74の上面74aとの高さの差(ポーラス板74の突出量)が、ウェーハ11の凹部11eの深さに対応するように設定される。具体的には、ポーラス板74の突出量と凹部11eの深さとは概ね同一である。また、ポーラス板74の直径は、凹部11eの直径よりも小さくなるように設定される。
そのため、ウェーハ11をチャックテーブル54上に配置すると、ポーラス板74の上面74a側がウェーハ11の凹部11eに挿入される。そして、ウェーハ11の凹部11eがテープ25を介してポーラス板74の上面74aによって支持され、ウェーハ11の外周部11fがテープ25を介して凸部70bの上面70cによって支持される。
なお、ウェーハ11の保持に支障がない範囲で、ポーラス板74の突出量と凹部11eの深さとは異なっていてもよい。この場合、ポーラス板74の突出量と凹部11eの深さと差は100μm以下であることが好ましい。
また、上記のように、ポーラス板74の直径や厚さは、ウェーハ11の直径や凹部11eの深さ等に応じて設定される。そのため、予め寸法の異なる複数のポーラス板74を準備しておくことが好ましい。これにより、チャックテーブル54で保持されるウェーハ11の寸法に応じてポーラス板74を交換できる。なお、ポーラス板74の交換は、押し当て固定部80の着脱によって容易に実施できる。
次に、バルブ98を開いて吸引路70eに吸引源100の負圧を作用させる。このとき、ポーラス板74の上面74aはウェーハ11の凹部11eで覆われ、ポーラス板74の側面はシール部材76で覆われている。そのため、バルブ98を開くと吸引路70eが吸引源100によって容易に減圧され、ポーラス板74の上面74aに負圧が作用する。これにより、ウェーハ11がテープ25を介してチャックテーブル54によって吸引保持される。
なお、ウェーハ11をチャックテーブル54上に配置した際、図9に示すようにシール部材76とテープ25との間に隙間102が形成されることがある。仮にこの隙間102が密閉された状態でバルブ98を開くと、シール部材76の上面とテープ25との間の隙間等を介して隙間102に吸引源100の負圧が作用し、隙間102が減圧されることがある。その結果、ウェーハ11の外周部11fがシール部材76側に引き寄せられてウェーハ11が変形し、破損する恐れがある。
一方、上記のチャックテーブル54は、凸部70bに形成された大気開放溝70fを備えており、隙間102はこの大気開放溝70fを介して大気開放される。そのため、バルブ98を開いても隙間102が減圧されにくく、ウェーハ11の変形が生じにくい。これにより、ウェーハ11の破損が防止される。
チャックテーブル54によってウェーハ11を保持した後、チャックテーブル54をレーザー照射ユニット58(図5参照)の下に移動させる。そして、レーザー照射ユニット58からウェーハ11の表面11a側に向かってレーザービームを照射する。これにより、ウェーハ11の表面11a側に所定の加工が施される。
なお、ウェーハ11の加工の内容に制限はない。例えば、アブレーションによってウェーハ11の表面に溝を形成する加工や、ウェーハを分割する際の起点となる改質層をウェーハ11の内部に形成する加工等が行われる。
ウェーハ11にレーザービームを照射する前に、ウェーハ11の表面11a側に保護膜を形成してもよい。保護膜は、例えばウェーハ11の表面11a側に塗布された水溶性の液状樹脂を硬化させることによって形成される。水溶性の樹脂としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)等を用いることができる。
この保護膜により、レーザービームでウェーハ11を加工した際に生じる加工屑(デブリ)がウェーハ11の表面11aに付着することを防止できる。なお、水溶性の樹脂でなる保護膜は、レーザービームによる加工が完了した後、ウェーハ11の表面11a側に純水を供給する等の方法によって除去される。
また、ウェーハ11にレーザービームを照射する前には、チャックテーブル54によって保持されたウェーハ11の外周部11fを撮像ユニット60(図5参照)で撮影し、ウェーハ11の位置を確認しておくことが好ましい。例えば、撮像ユニット60によってウェーハの外周縁を3箇所以上撮影し、撮影によって得られた画像に基づいて、ウェーハ11の外周縁の座標及び中心座標を取得する。このようにして得られたウェーハ11の位置情報に基づいてレーザービームの照射位置を制御することにより、例えば、レーザービームが意図せずウェーハ11の外側に照射される等の不都合を回避できる。
撮像ユニット60によってウェーハ11をする際は、テーブル基台70の凸部70bに設けられた複数の発光部90(図6(A)等参照)を発光させることが好ましい。これにより、発光部90がバックライトして機能して鮮明な画像を得ることができ、ウェーハ11の位置を正確に把握することが可能となる。
以上の通り、本実施形態に係るチャックテーブル54は、テーブル基台70に固定されるポーラス板74を備え、ポーラス板74の上面74a側はテーブル基台70の上面(凸部70bの上面70c)から上方に突出している。そして、ウェーハ11は、ウェーハ11の裏面11b側に形成された凹部11eにポーラス板74の上面74a側が挿入されるように配置される。これにより、ウェーハ11の凹部11eがポーラス板74によって支持され、凹部11eを備えるウェーハ11がチャックテーブル54によって適切に保持される。
また、ポーラス板74は、レーザー照射ユニット58から照射されるレーザービームに対して透過性を有する材質で構成されている。そのため、例えばレーザービームがウェーハ11を透過してポーラス板74に照射されても、レーザービームによるポーラス板74の加工が生じにくい。これにより、ポーラス板74の損傷が抑制される。
さらに、ポーラス板74は、押し当て固定部80によってテーブル基台70に着脱自在に固定される。そのため、仮にポーラス板74がレーザービームの照射によって加工されてしまい、ポーラス板74の交換が必要となっても、交換作業を素早く行うことができる。また、ポーラス板74が破損した際にチャックテーブル54をテーブル基台70ごと交換する必要がないため、コストの削減を図ることができる。同様に、ウェーハ11の寸法(ウェーハ11の直径や凹部11eの深さ等)に応じてポーラス板74を交換する際も、押し当て固定部80の着脱によって交換作業を円滑に行うことができる。
なお、本実施形態では、押し当て固定部80によってポーラス板74をテーブル基台70に固定する形態について説明したが、ポーラス板74の固定方法に制限はない。例えば、ポーラス板74の交換を頻繁に行わない場合等には、接着剤を用いてポーラス板74をテーブル基台70に固定してもよい。これにより、ポーラス板74がテーブル基台70に強固に固定される。
また、本実施形態で説明したチャックテーブル54の細部の構造は、凹部11eを備えるウェーハ11を保持可能な範囲内で適宜変更できる。図10は、第1の変形例に係るチャックテーブル(保持テーブル)110を示す断面図である。チャックテーブル110は、図6(B)に示す発光部90に代えて発光部112を備える点において、チャックテーブル54と異なる。その他のチャックテーブル110の構造及び機能は、チャックテーブル54を同様である。
発光部112は、凸部70bに形成されテーブル基台70の上面から下面に貫通する複数の投光貫通孔70jを備える。投光貫通孔70jの下端側は、テーブルベース52の外周部の表面(上面)側に形成された傾斜面52aに向かって開口している。
また、チャックテーブル110の外側には、LED等でなる光源114が設けられている。この光源114が発する光は、テーブルベース52の傾斜面52aで反射し、投光貫通孔70jを介してチャックテーブル110の上方に向かって照射される。このように、発光部112を構成する光源114は、チャックテーブル110の外部に設けられていてもよい。
発光部112は、例えば図6(A)に示す発光部90と同様の位置に配置される。ただし、発光部90の数及び配置に制限はない。
図11は、第2の変形例に係るチャックテーブル(保持テーブル)120を示す断面図である。チャックテーブル120は、テーブル基台122を備える。なお、以下で説明する事項を除き、テーブル基台122の構造及び材質等はテーブル基台70(図6(B)、図10参照)と同様である。
テーブル基台122は、下部基台124と、下部基台124の上面124a側に固定された上部基台126とを備える。この上部基台126は、チャックテーブル54(図6(B)参照)の凸部70bに対応する。すなわち、チャックテーブル120は、チャックテーブル54(図6(B)参照)の凸部70bがテーブル基台70とは異なる部材で構成された変形例に相当する。
上部基台126は、上面126aから下面126bに貫通する円形の開口126cを備えている。この開口126cは、チャックテーブル54(図6(B)参照)の収容凹部70dに対応する。下部基台124の開口126cと重なる領域には、バルブ98を介して吸引源100と接続される吸引路124bが形成されている。また、上部基台126は、その上面126a側に開口126cの半径方向内側(中央側)に向かって突出する庇状の押さえ部(庇部)126dを備える。
開口126cには、ポーラス板130及びシール部材132を備える吸引部128が収容される。ポーラス板130は、上面130a側の直径が下面側の直径よりも小さくなるように構成されている。そのため、ポーラス板130の側面には段差部130bが形成されている。吸引部128のその他の構造や材質は、チャックテーブル54(図6(B)参照)の吸引部72と同様である。
また、上部基台126は、大気開放溝126e及び切り欠き部126fを備える。大気開放溝126e及び切り欠き部126fの構造は、チャックテーブル54(図6(B)参照)の大気開放溝70f及び貫通孔70gと同様である。
上部基台126は、下部基台124に着脱自在に固定される。具体的には、上部基台126はその外周部に、上下に貫通する貫通孔126gを備える。また、下部基台124の上面124側aには、貫通孔126gと重なる位置にねじ溝124cが形成されている。下部基台124上に上部基台126を配置した状態で、ねじ134を貫通孔126gに挿入してねじ溝124cにねじ込むことにより、上部基台126が下部基台124に固定される。
ポーラス板130をテーブル基台122に固定する際は、まず、下部基台124と上部基台126が分離された状態で、上部基台126の下面126b側からポーラス板130を開口126cに挿入し、上部基台126とポーラス板130とを下部基台124上に配置する。このとき、ポーラス板130の側面に形成された段差部130bが、上部基台126の押さえ部126dによって下部基台124側に押圧される。
次に、ねじ134によって下部基台124と上部基台126とを固定する。そして、押し当て固定部80によってポーラス板130を上部基台126に固定する。なお、押し当て固定部80によるポーラス板130の固定方法は、チャックテーブル54(図6(B)参照)を用いる場合と同様である。
上記のように、ポーラス板130の固定に上部基台126を用いると、ポーラス板130の段差部130bが上部基台126の押さえ部126dによって下部基台124側に押圧される。これにより、例えばウェーハ11の加工や搬送等を行う際、ポーラス板130が上部基台126の上面126a側から外れることを防止できる。
なお、チャックテーブル120上にウェーハ11(図4(B)参照)を配置すると、ウェーハ11に貼付されたテープ25によって、上部基台126とシール部材132との間に形成された隙間136が覆われる。しかしながら、上部基台126には大気開放溝126eが形成されており、開口126cは大気開放溝126eを介して大気開放される。そのため、バルブ98を開いても隙間136が減圧されにくく、ウェーハ11の変形は生じにくい。
図5に示すレーザー加工装置22には、チャックテーブル54に代えて、チャックテーブル110又はチャックテーブル120を搭載してもよい。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。