以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の深さ方向をZ軸とする。
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタ化した不純物の濃度を指す。本明細書において、ドナーおよびアクセプタの濃度差をドーピング濃度とする場合がある。また、ドーピングされた領域におけるドーピング濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該ドーピング領域におけるドーピング濃度としてよい。ドーピングされた領域におけるドーピング濃度がほぼ均一な場合等においては、当該ドーピング領域におけるドーピング濃度の平均値をドーピング濃度としてよい。
図1aは、本実施形態に係る半導体装置100の上面の一例を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70およびダイオード部80を備える半導体チップである。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。ダイオード部80は、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含む。トランジスタ部70およびダイオード部80は、半導体基板の上面の所定の配列方向(本例ではY軸方向)に並んで配置されている。図1aの例では、トランジスタ部70およびダイオード部80は、配列方向に沿って交互に配置されている。トランジスタ部70およびダイオード部80は、配列方向において接していてよく、離れていてもよい。トランジスタ部70は、境界部90を有してよい。図1aの例では、トランジスタ部70のうち、ダイオード部80との境界に位置する領域が、境界部90である。図1aにおいてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
また、図1aにおいては半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
本例の半導体装置100は、半導体基板の内部に設けられ、且つ、半導体基板の上面に露出するゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。エミッタ電極52およびゲート金属層50は互いに分離して設けられる。
エミッタ電極52およびゲート金属層50と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図1aでは省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。
また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25と半導体基板の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が設けられる。
ゲート金属層50は、コンタクトホール49を通って、ゲートランナー48と接触する。ゲートランナー48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲートランナー48は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲートランナー48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部まで設けられる。ゲートランナー48と半導体基板の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が設けられる。ゲートトレンチ部40の先端部においてゲート導電部は半導体基板の上面に露出しており、ゲートランナー48と接触する。
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよく、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、所定の配列方向(本例ではY軸方向)に沿って所定の間隔で配列される。ゲートトレンチ部40は、半導体基板の上面に平行であって配列方向と直交する延伸方向(本例ではX軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分39と、2つの延伸部分39を接続する接続部分41を有してよい。接続部分41の少なくとも一部は曲線状に設けられることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分39の端部を接続することで、延伸部分39の端部における電界集中を緩和することができる。本明細書では、ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分39を、一つのゲートトレンチ部40として扱う場合がある。ゲートランナー48は、ゲートトレンチ部40の接続部分41において、ゲート導電部と接続してよい。
少なくとも一つのダミートレンチ部30が、ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分39の間に設けられてよい。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に半導体基板の上面においてU字形状を有してもよい。即ち、本例のダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分29と、2つの延伸部分29を接続する接続部分31を有してもよい。
また、少なくとも一つのダミートレンチ部30は、長手方向が半導体基板の上面において延伸方向(X軸方向)である直線形状であってもよい。図1aの例では、ダイオード部80および境界部90においてU字形状のダミートレンチ部30が設けられ、トランジスタ部70の少なくとも一部において直線形状のダミートレンチ部30が設けられている。
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。ウェル領域11は第2導電型である。本例のウェル領域11は、一例としてP+型である。ウェル領域11は、ゲート金属層50が設けられる側の活性領域の端部から、予め定められた範囲に設けられる。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の下端よりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域は、ウェル領域11に設けられる。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域11に覆われてよい。
トランジスタ部70において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。ダイオード部80において、コンタクトホール54は、ベース領域14の上方に設けられる。いずれのコンタクトホール54も、X軸方向両端に配置されたベース領域14およびウェル領域11の上方には配置されていない。
半導体基板の上面と平行な方向において、Y軸方向に各トレンチ部に隣接するメサ部が設けられる。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板の部分であって、半導体基板の上面から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。各トレンチ部の延伸部分を1つのトレンチ部としてよい。即ち、2つの延伸部分に挟まれる領域をメサ部としてよい。
トランジスタ部70においては、境界部90を除き、各トレンチ部に接して第1メサ部60が設けられる。境界部90には、各トレンチ部に接して第2メサ部62が設けられる。また、ダイオード部80においては、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域に、ダミートレンチ部30に接して第3メサ部64が設けられる。第1メサ部60、第2メサ部62および第3メサ部64のX軸方向における両端部には、一例としてベース領域14が設けられている。なお、図1aにおいては、X軸方向の一方の端部のみを示している。
第1メサ部60の上面には、ゲートトレンチ部40と接して第1導電型のエミッタ領域12が設けられる。本例のエミッタ領域12は、一例としてN+型である。また、第1メサ部60の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。第1メサ部60において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40の延伸方向に交互に設けられてよい。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、互いに接して設けられてよい。
第1メサ部60の上面において、エミッタ領域12はダミートレンチ部30と接して設けられてよく、離れて設けられてもよい。図1aの例におけるエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接して設けられている。
第1メサ部60の上面において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、第1メサ部60の上面において、第1メサ部60を挟む一方のトレンチ部から他方のトレンチ部にわたり、Y軸方向に連続して設けられている。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、第1メサ部60を挟む2本のトレンチ部の双方に接していてよい。図1aの例において第1メサ部60を挟む2本のトレンチ部は、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30である。
第2メサ部62の上面には、ベース領域14よりドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。当該コンタクト領域15は、第2メサ部62のX軸方向における両端のベース領域14の間に設けられてよい。コンタクト領域15は、当該両端のベース領域14に挟まれた領域全体に設けられてよい。
第2メサ部62の上面において、コンタクト領域15は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。コンタクト領域15は、第2メサ部62の上面において、第2メサ部62を挟む一方のダミートレンチ部30から他方のダミートレンチ部30にわたり、Y軸方向に連続して設けられている。コンタクト領域15は、第2メサ部62を挟む2本のダミートレンチ部30の双方に接していてよい。
本例では、第3メサ部64の上面のうち、X軸方向の両端のベース領域14に挟まれた領域に、2つのコンタクト領域15が設けられる。それぞれのコンタクト領域15は、当該両端のベース領域14に接して配置されていてよい。第3メサ部64の上面のうち、当該コンタクト領域15に挟まれた領域にベース領域14が設けられる。ベース領域14は、当該コンタクト領域15に挟まれる領域全体に設けられてよい。
第3メサ部64の上面において、ベース領域14は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。ベース領域14は、第3メサ部64の上面において、第3メサ部64を挟む一方のダミートレンチ部30から他方のダミートレンチ部30にわたり、Y軸方向に連続して設けられている。ベース領域14は、2本のダミートレンチ部30の双方に接していてよい。
本例の半導体装置100は、ダイオード部80においてダミートレンチ部30が設けられる。本例では、ダイオード部80に配置されたそれぞれのダミートレンチ部30の直線状の延伸部分29が接続部分31で接続される。それぞれの延伸部分29に挟まれる領域に、第3メサ部64が設けられる。
第3メサ部64には、エミッタ領域12が設けられなくてよく、設けられてもよい。本例の第3メサ部64には、エミッタ領域12が設けられていない。第3メサ部64には、コンタクト領域15およびベース領域14が、第3メサ部64を挟む一方のダミートレンチ部30から、他方のダミートレンチ部30にわたって設けられている。即ち、半導体基板の上面において、第3メサ部64のY軸方向の幅と、第3メサ部64に設けられたコンタクト領域15またはベース領域14のY軸方向の幅は等しい。
ダイオード部80は、半導体基板の下面側において、第1導電型のカソード領域82を有する。図1aに、カソード領域82が設けられる領域を一点鎖線で示している。ダイオード部80は、カソード領域82を半導体基板の上面に投影した領域であってよい。カソード領域82を半導体基板の上面に投影した領域は、第3メサ部64のコンタクト領域15から、第3メサ部64の内側に離れて配置されていてよい。第3メサ部64の内側とは、X軸方向において、第3メサ部64の中央に近い側を指す。半導体基板の下面に隣接する領域においてカソード領域82が設けられていない領域には、第2導電型のコレクタ領域が設けられてよい。トランジスタ部70は、コレクタ領域を半導体基板の上面に投影した領域のうち、トレンチ部またはメサ部が設けられている領域であってよい。
半導体装置100は、半導体基板の内部において、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の蓄積領域16を有する。蓄積領域16のドーパントは、ドリフト領域のドーパントと同じ導電型である。蓄積領域16のドーパントは、ドリフト領域のドーパントよりも高い濃度で蓄積している。蓄積領域16は、ベース領域14の下方に配置されている。蓄積領域16は、それぞれのトレンチ部の下端よりも上方に配置されてよい。蓄積領域16は、ゲートトレンチ部40に接していてよい。蓄積領域16を設けることで、キャリアの注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。図1aにおいては、蓄積領域16が設けられる範囲を一点鎖線で示している。なお、図1aにおいては、各トレンチ部の領域も当該鎖線が横切っているが、蓄積領域16は各トレンチ部と重なる領域には形成されなくてよい。
第1メサ部60には、蓄積領域16の下方に、第2導電型のフローティング領域17が設けられる。フローティング領域17は、ゲートトレンチ部40に接している。本例のフローティング領域17は、一例としてP+型である。フローティング領域17のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度よりも高い。図1aにおいて、半導体基板の上面視で、フローティング領域17が設けられる範囲を破線で示している。なお、図1aにおいては、各トレンチ部の領域も当該破線が横切っているが、フローティング領域17は各トレンチ部と重なる領域には形成されなくてよい。
図1aに示すように、フローティング領域17は、半導体基板の上面視で、ゲートトレンチ部40の延伸方向に直交する配列方向(Y軸方向)において、第1メサ部60の一部分に設けられる。即ち、フローティング領域17は、Y軸方向において第1メサ部60の全幅にわたっては設けられておらず、Y軸方向において部分的に設けられている。図1aの例では、フローティング領域17は、ゲートトレンチ部40と接する位置から、第1メサ部60内のY軸方向の所定の位置まで連続して設けられている。フローティング領域17は、当該所定の位置よりもゲートトレンチ部40から離れた位置には設けられていない。
当該所定の位置とは、第1メサ部60を挟む2本のトレンチ部の間にあってよい。第1メサ部60を挟む2本のトレンチ部を、それぞれ第1トレンチ部および第2トレンチ部と称する。第1トレンチ部は、フローティング領域17に接するゲートトレンチ部40である。第2トレンチ部は、ダミートレンチ部30であってよく、ゲートトレンチ部40であってもよい。本例では、第2トレンチ部はダミートレンチ部30である。当該所定の位置は、第2トレンチ部から配列方向に離れた位置である。半導体基板の上面視で、配列方向におけるフローティング領域17の端を、フローティング領域端13と称する。フローティング領域端13は、当該所定の位置に位置してよい。すなわち、フローティング領域17は、第2トレンチ部から離れてよい。
第1メサ部60内のY軸方向における当該所定の位置は、半導体基板の上面視で、コンタクトホール54と重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。図1aは、当該所定の位置がコンタクトホール54と重ならない一例を示している。フローティング領域17は、Y軸方向において、コンタクトホール54よりもゲートトレンチ部40側に設けられてよい。
フローティング領域17は、第1メサ部60のX軸方向における両端に設けられるコンタクト領域15の一方から他方まで連続して設けられてよい。上述したように、フローティング領域17は、ゲートトレンチ部40に接して設けられてよい。
フローティング領域17のX軸方向における両端の位置は、蓄積領域16のX軸方向における両端の位置と一致していてよく、異なっていてもよい。図1aにおいては、フローティング領域17のX軸方向の端と、蓄積領域16のX軸方向の端を、異ならせて示している。
第1メサ部60において、フローティング領域17は、ダミートレンチ部30に接しなくてよい。第2メサ部62および第3メサ部64には、フローティング領域17が設けられなくてよい。
図1bは、図1aにおけるa-a'断面の一例を示す図である。a-a'断面は、第1メサ部60のエミッタ領域12および第2メサ部62のコンタクト領域15を通過するYZ面である。本例の半導体装置100は、a-a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面に設けられる。
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向(Z軸方向)と称する。
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板または酸化ガリウム基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。
半導体基板10は、第1導電型のドリフト領域18を備える。本例のドリフト領域18はN-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において、他のドーピング領域が設けられずに残存した領域であってよい。
半導体基板10の上面21には、1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達して設けられている。
ゲートトレンチ部40は、上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。即ち、ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
ゲート導電部44は、深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、上面21側に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。
ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えば、ダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は下方側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
第1メサ部60において、ドリフト領域18の上方には、一つ以上の第1導電型の蓄積領域16が設けられる。蓄積領域16は、ゲートトレンチ部40に接していてよい。蓄積領域16が複数設けられる場合、それぞれの蓄積領域16はZ軸方向に並んで配置される。それぞれの蓄積領域16の間には、ドリフト領域18が設けられてよい。蓄積領域16は、一例としてN+型である。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。蓄積領域16を設けることで、キャリアの注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
一つ以上の蓄積領域16は、第1メサ部60において、ダミートレンチ部30に接していてよいが、離れていてもよい。図1bは、蓄積領域16がダミートレンチ部30と接して設けられる一例を示している。なお、第2メサ部62および第3メサ部64には、蓄積領域16が設けられなくてよい。
第1メサ部60において、蓄積領域16の上方には、第2導電型のベース領域14が設けられる。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40に接していてよい。ベース領域14は、一例としてN-型である。第1メサ部60において、ベース領域14は、ダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
第1メサ部60には、a-a'断面において、半導体基板10の上面21に接してエミッタ領域12が設けられる。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40と接している。エミッタ領域12のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。第1メサ部60のコンタクト領域15を通過するYZ断面では、図1bに示したエミッタ領域12に代えて、コンタクト領域15が設けられている。コンタクト領域15は、半導体基板10の上面21に露出している。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30と接していてよい。
境界部90の第2メサ部62において、ドリフト領域18の上方には、第2導電型のベース領域14が設けられる。ベース領域14は、ダミートレンチ部30に接していてよい。
第2メサ部62において、半導体基板10の上面21に接してコンタクト領域15が設けられる。コンタクト領域15は、ダミートレンチ部30と接していてよく、離れていてもよい。図1bは、コンタクト領域15がダミートレンチ部30と接して設けられる一例を示している。
ダイオード部80の第3メサ部64において、ドリフト領域18の上方には、第2導電型のベース領域14が設けられる。第3メサ部64において、ベース領域14は上面21に接して設けられる。ベース領域14は、ダミートレンチ部30に接していてよい。
ドリフト領域18の下方には、第1導電型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20は、一例としてN+型である。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下方には、下面23に露出するP+型のコレクタ領域22が設けられる。ダイオード部80において、バッファ領域20の下方には、下面23に露出するN+型のカソード領域82が設けられる。境界部90において、バッファ領域20の下には、コレクタ領域22およびカソード領域82のいずれかが設けられる。本例の境界部90において、バッファ領域20の下は、コレクタ領域22が設けられる。
なお、ダイオード部80は、下面23に垂直な方向においてカソード領域82と重なる領域である。また、トランジスタ部70は、下面23に垂直な方向においてコレクタ領域22と重なる領域のうち、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を含む所定の単位構成が規則的に配置された領域である。
トランジスタ部70の第1メサ部60において、蓄積領域16の下方にはフローティング領域17が設けられる。フローティング領域17は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。フローティング領域17は、配列方向(Y軸方向)において第1メサ部60の一部分に設けられる。フローティング領域17は、ダミートレンチ部30には接しないで離れてよい。
フローティング領域17とダミートレンチ部30との間は、ドリフト領域18であってよい。また、フローティング領域17と蓄積領域16との間も、ドリフト領域18であってよい。フローティング領域17は、当該断面において、ゲートトレンチ部40およびドリフト領域18に囲まれていてよい。
境界部90の第2メサ部62におけるダミートレンチ部30には、フローティング領域17が設けられなくてよい。ダイオード部80の第3メサ部64におけるダミートレンチ部30には、フローティング領域17が設けられなくてよい。
フローティング領域17のドーピング濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度と略等しくてよく、コンタクト領域15のドーピング濃度よりも低くてよく高くてもよい。なおフローティング領域17のドーピング濃度は、ゲート導電部44にゲート電圧が印加された場合においても、ゲートトレンチ部40との界面に電子の反転層(チャネル)が形成されない程度に高い。一例としてフローティング領域17のドーピング濃度は、1×1017/cm-3以上5×1020/cm-3以下であってよい。
フローティング領域17は、コレクタ電極24およびエミッタ電極52のいずれにも、接していない。フローティング領域17は、ベース領域14とP型の領域でつながっていてよいが、つながっていなくてもよい。
図2aは、第1比較例の半導体装置150における電子電流および変位電流の経路を示す図である。第1比較例の半導体装置150は、トランジスタ部70の第1メサ部60において、蓄積領域16を一つ有する。第1比較例において、フローティング領域17は設けられない。図2aにおいては、ターンオン時の電流経路を示している。ターンオン時には、ゲート導電部44の電圧が、0[V]から徐々に立上る。これにより、ベース領域14のゲートトレンチ部40近傍には負電荷が誘起することでチャネルが形成される。
ターンオン時の初期における電流の主体は、正孔電流ではなく電子電流である。初期とは、ゲート電圧Vgが、閾値電圧に達する直前から、ほぼ閾値電圧の値でVgが一定となるミラー期間に入る前までの期間である。Vgが閾値電圧に近くなると、チャネルが開きかけ、電子のドリフト領域18への注入が始まる。
図2aの第1比較例において、チャネルから下方に向かう電子は、第1の蓄積領域16において一旦Y軸方向負側(ゲートトレンチ部40の近傍から第1メサ部60中央に向かう方向)に流れかける。ただし、第1の蓄積領域16よりも下方のドリフト領域18においては、ゲートトレンチ部40近傍は、電子の蓄積層が既に形成されているため(N型領域の電子の蓄積層が形成される閾値電圧は、P型領域の反転層の閾値電圧よりはるかに小さい)、ドリフト領域18よりも低インピーダンスである。このため、電子電流はゲートトレンチ部40近傍を主として流れる。
電子が裏面のコレクタ領域22に達すると、コレクタ領域22からバッファ領域20およびドリフト領域18にかけて、正孔の注入が開始する。これにより、トレンチ部の下端近傍に正孔が蓄積される。一例として、ゲートトレンチ部40の下端近傍から、第1の蓄積領域16よりも下方のダミートレンチ部30の側部にかけて、正孔が1×1016/cm-3以上5×1018/cm-3以下の濃度で存在する。
正孔は、ゲートトレンチ部40の下端と、ダミートレンチ部30の下端に蓄積する。特にダミー導電部34はエミッタ電極52と同電位であるため、ダミートレンチ部30の側壁には正孔の反転層が形成されやすい。コレクタ領域22から注入された正孔は、この正孔の反転層の近傍に集まる。正孔は、ダミートレンチ部30からゲートトレンチ部40の下端にかけて連続的に分布する。この正孔分布に起因して、ターンオン時に、ゲートトレンチ部40の下端近傍へ、大きな変位電流が流れる。
正孔の蓄積に起因する変位電流は、ゲート絶縁膜42を挟んで対向するゲート導電部44の充電を生じさせる。このゲート導電部44の充電が、ゲート電極Vgの瞬間的な増加を引き起こす。当該変位電流が大きいほど、ゲート導電部44が充電されるため、ゲート導電部44の電位がよりすばやく上昇する。その結果、ゲート導電部44の電位がゲート閾値を瞬間的に超える。
ゲート導電部44の電位がゲート閾値を瞬間的に超えると、電子と正孔の大量の注入が始まり、コレクタ電極24とエミッタ電極52との間に流れる電流(CE電流)が増加する。CE電流の増加による電流変化率に応じて、コレクタ電極24とエミッタ電極52との間の電圧(CE電圧)の電圧減少率(dVce/dt)が増加する。変位電流が大きいほど、(dVce/dt)が大きくなる。特に、蓄積された正孔がエミッタ電極52に流れないほど、変位電流は大きく、ゲート導電部44の電位の瞬間的な増加は大きくなる。このため、図2aの第1比較例においては、(dVce/dt)が大きくなり、電磁ノイズもまた大きくなる。
図2bは、第2比較例の半導体装置160における電子電流および変位電流の経路を示す図である。第2比較例の半導体装置160は、トランジスタ部70の第1メサ部60において、第1蓄積領域16-1および第2蓄積領域16-2を有する。第2蓄積領域16-2は、第1蓄積領域16-1の下方に設けられる。第2比較例の半導体装置160においては、第2蓄積領域16-2のドーピング濃度は、第1蓄積領域16-1のドーピング濃度よりも高く設けられる。また、第2比較例において、フローティング領域17は設けられない。
チャネルを通過した電子は、第1蓄積領域16-1において一旦Y軸方向負側(ゲートトレンチ部40の近傍から第1メサ部60中央に向かう方向)に流れかける。本例において、第1蓄積領域16-1よりも第2蓄積領域16-2の方が、ドーピング濃度が高く設けられるので、電子電流にとってのインピーダンスは、第1蓄積領域16-1の中央付近からゲートトレンチ部40近傍に戻って第2蓄積領域16-2に流れる経路よりも、第1蓄積領域16-1から第2蓄積領域16-2に直接流れる経路の方が低い。このため、電子電流は、第1蓄積領域16-1の中央付近からゲートトレンチ部40近傍に戻らず、第2蓄積領域16-2に流れやすい。
第1蓄積領域16の下方のうち、ゲートトレンチ部40に隣接するホール高濃度領域87には正孔が蓄積されやすい。また、電子電流がゲートトレンチ部40の近傍ではなく、第1メサ部60中央付近を流れることで、ホール高濃度領域87への正孔の蓄積が促進される。このため、電子電流が第1メサ部60中央付近に流れることが促進される。
電子電流が第1メサ部60の中央付近を流れると、第1メサ部60の底部近傍における正孔分布は、第1メサ部60中央付近で分断される。このため、電子電流の経路よりもダミートレンチ部30側の正孔は、ゲートトレンチ部40側には流れない。この第1メサ部60中央部における正孔分布の分断が、ゲートトレンチ部40の下端における正孔の蓄積を抑制する。その結果、変位電流を小さくすることできる。変位電流を小さくすることができるので、ゲート導電部44の充電も小さくなり、ゲート電極Vgの瞬間的な増加も抑制される。これにより、CE電圧の電圧減少率(dVce/dt)が抑制される。
蓄積領域16は、ベース領域14の近傍に設けられるので、ゲートとコレクタとの間における負性容量(CG容量)を生じる。第2比較例の半導体装置160は、上述の通り、CE電圧の電圧減少率(dVce/dt)を抑制することができるが、蓄積領域16が2つ設けられるので、CG容量が増加する場合がある。CG容量が増加すると、トランジスタ部70のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフが悪化してしまう。
図3は、本実施形態の半導体装置100における電子電流および変位電流の経路の一例を示す図である。図3は、ゲートトレンチ部40に接してフローティング領域17が設けられることによる電子電流および変位電流の経路の一例を示している。
本例の半導体装置100において、チャネルから下方に向かう電子は、第1の蓄積領域16において一旦Y軸方向負側(ゲートトレンチ部40の近傍から第1メサ部60中央に向かう方向)に流れかける。ただし、第1の蓄積領域16よりも下方のドリフト領域18においては、ゲートトレンチ部40近傍は、電子の蓄積層が既に形成されているため、ドリフト領域18よりも低インピーダンスである。このため、電子電流はゲートトレンチ部40近傍を主として、半導体基板10の下方に向かって流れる。
フローティング領域17は、ドリフト領域18よりも電子電流に対する抵抗が大きい。本例の半導体装置100は、蓄積領域16の下方にフローティング領域17を備えるので、ゲートトレンチ部40の近傍を半導体基板10の下方に向かって流れる電子電流は、フローティング領域17により経路を曲げられ、ゲートトレンチ部40近傍から第1メサ部60の中央付近に流れる経路をたどる。
電子電流が第1メサ部60の中央付近を流れると、第1メサ部60の底部近傍における正孔分布は、第1メサ部60中央付近で分断される。このため電子電流の経路よりもダミートレンチ部30側の正孔は、ゲートトレンチ部40側には流れない。この第1メサ部60中央付近における正孔分布の分断が、ゲートトレンチ部40の下端における正孔の蓄積を抑制する。その結果、変位電流を小さくすることできる。変位電流を小さくすることができるので、ゲート導電部44の充電も小さくなり、ゲート電極Vgの瞬間的な増加も抑制される。これにより、CE電圧の電圧減少率(dVce/dt)が抑制される。
さらに、本例の半導体装置100は、フローティング領域17を設けることで、蓄積領域16が一つであっても電子電流を第1メサ部60の中央付近に流すことができる。このため、第2比較例の半導体装置160のように蓄積領域16をZ軸方向に複数設けた場合よりも、CG容量の増加を防ぐことができる。即ち、本例の半導体装置100は、CE電圧の電圧減少率(dVce/dt)を抑制しつつ、CG容量の増加を抑制することができる。このため、本例の半導体装置100は、CE電圧の電圧減少率(dVce/dt)を抑制しつつ、ターンオン損失を減少させることができる。また、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを維持することができる。
なお、図2aから図3において説明した半導体装置の動作は、トランジスタ部70の動作であり、ダイオード部80を備えない半導体装置においても同様に動作するのは当然である。すなわち、半導体装置100がダイオード部80を備えなくとも、フローティング領域17を設けた効果は生じる。半導体装置100は、ダイオード部を備えなくてもよい。
図4aは、ターンオン時におけるゲート電圧VgおよびCE電圧Vceの時間波形の一例を示す図である。図4aにおいては、本例の半導体装置100の特性を実線で、第1比較例の半導体装置150の特性を破線で、第2比較例の半導体装置160の特性を一点鎖線で、それぞれ示している。なお、第1比較例150の波形については、VgおよびVceが時間に伴い遷移する箇所以外は、半導体装置100の波形と重なっている。
図4bは、図4aの時間波形において、ゲート電圧VgおよびCE電圧Vceの遷移波形を拡大した図である。ただし図4bでは、CE電圧Vceの電圧軸のスケールと位置を変更している。図4aおよび図4bに示すように、半導体装置100は、第1比較例の半導体装置150と比較して、ターンオン時のゲート電圧VgおよびCE電圧Vceの変動が緩やかである。このため、本例の半導体装置100は、第1比較例の半導体装置150よりも、ターンオン損失を低減することができる。また、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを維持することができる。
第2比較例の半導体装置160は、本例の半導体装置100よりも、ターンオン時のゲート電圧VgおよびCE電圧Vceの変動が、さらに緩やかになる。しかしながら、上述したとおり、第2比較例の半導体装置160は、CG容量が増加してしまう。CG容量が増加すると、トランジスタ部70のオン電圧とターンオフ損失のトレードオフが悪化してしまう。
図5aは、図1aにおけるb-b'断面の一例を示す図である。b-b'断面は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12を通過するYZ面である。本例の半導体装置100は、b-b'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面に設けられる。
本例の半導体装置100は、b-b'断面において、上面21に接してエミッタ領域12が設けられる。エミッタ領域12は、Y軸方向においてゲートトレンチ部40と接している。エミッタ領域12の下方には、ベース領域14が設けられる。ベース領域14は、Y軸方向においてゲートトレンチ部40と接している。ベース領域14の下方には、蓄積領域16が設けられる。蓄積領域16は、Y軸方向においてゲートトレンチ部40と接している。蓄積領域16の下方には、ドリフト領域18が設けられる。ドリフト領域18の下方にはバッファ領域20が設けられる。バッファ領域20の下方には、コレクタ領域22が設けられる。下面23にはコレクタ電極24が設けられる。
本例の半導体装置100は、ゲートトレンチ部40に接してフローティング領域17が設けられる。フローティング領域17は、蓄積領域16の下方に、蓄積領域16と離間して設けられてよい。半導体基板10の深さ方向におけるフローティング領域17の少なくとも一部は、ゲートトレンチ部40の底部と接して設けられてよい。ゲートトレンチ部40の底部については、図5bの説明において詳細に説明する。
幅Wgdは、上面21からゲートトレンチ部40の底部の端までのZ軸方向の幅、即ちゲートトレンチ部40の上面21からの深さである。幅Wfdは、上面21からフローティング領域17の上端までのZ軸方向の幅である。幅Wbは、トランジスタ部70におけるベース領域14のZ軸方向の幅である。幅Wbは、ゲートトレンチ部40に接する位置における、ベース領域14のZ軸方向の幅であってよい。幅Wbfは、ベース領域14の下端からフローティング領域17の上端までのZ軸方向の幅である。幅Wbfは、ゲートトレンチ部40に接する位置における、ベース領域14の下端からフローティング領域17の下端までのZ軸方向の幅であってよい。
幅Wmは、第1メサ部60のメサ幅である。幅Wmは、半導体基板10の上面21における第1メサ部60のメサ幅であってよい。幅Wfは、フローティング領域17のY軸方向の幅である。幅Wfは、フローティング領域17のY軸方向の幅の最大値であってよい。また、幅Wefは、フローティング領域17が設けられた深さにおける、ドリフト領域18のY軸方向の幅である。幅Wefは、フローティング領域17のY軸方向の先端から、ダミートレンチ部30までのY軸方向の幅であってよい。幅Wfvは、フローティング領域17のZ軸方向の幅、即ちフローティング領域17の厚みである。幅Wfvは、フローティング領域17のZ軸方向の幅の最大値であってよい。また、幅Wfvは、ゲートトレンチ部40に接する位置の、フローティング領域17のZ軸方向の幅であってもよい。幅Wfvは、一例として0.1μm以上、1.0μm以下である。幅Wfvは、0.3μm以上0.7μm以下であってもよい。
フローティング領域17は、Y軸方向において、第1メサ部60の一部分に設けられる。即ち、Wf<Wmである。図5aの例では、フローティング領域17は、第1メサ部60においてゲートトレンチ部40と接する位置からY軸方向の所定の位置まで、幅Wfにわたって設けられている。フローティング領域17は、当該所定の位置よりもゲートトレンチ部40から離れた位置には設けられていない。
幅Wbfは、幅Wbよりも大きくてよい。幅Wbfを幅Wbよりも大きくすることで、トランジスタ部70がオン状態の場合に、ベース領域14とドリフト領域18との接合面から半導体基板10の深さ方向に拡張する空乏層が、フローティング領域17に達しにくくなる。このため、本例の半導体装置100は、電子電流を遮断することなく、第1メサ部60の中央付近に流すことができる。幅Wbfは、幅Wbの2倍以上であってよい。幅Wbfは、一例として2.5μm以上3.5μm以下である。
フローティング領域17には高濃度に正孔が蓄積される。このため、フローティング領域17を蓄積領域16に対してZ軸方向に接して設けると、フローティング領域17に蓄積された正孔が、蓄積領域16を上方向に通過しやすくなる。これにより、蓄積領域16によるIE効果が低減してしまう。本例の半導体装置100は、フローティング領域17がZ軸方向に蓄積領域16と離間して設けられるので、当該IE効果の低減を抑制することができる。このため、トランジスタ部70のオン電圧Vonの増加を抑制することができる。
図5bは、図5aにおける領域Aの拡大図である。図5bは、ゲートトレンチ部40の底部89を拡大して示している。本例において、ゲートトレンチ部40の底部89とは、YZ平面内において、ゲートトレンチ部40の断面における外形を示す線が、下方(Z軸方向負側)に凸の曲線となる領域である。即ち、ゲートトレンチ部40の底部89は、図5bにおいてゲートトレンチ部40のうちY軸方向のs-s'線よりも下方の領域である。s-s'線は特異点Tを通る。特異点Tは、ゲートトレンチ部40の側壁43の断面形状が、ほぼ直線から曲線に変化する点である。特異点Tは、側壁43の傾きが変化し始める点であってもよい。また、ゲートトレンチ部40の最下端から上側(Z軸正側)に0.5μmの範囲を、ゲートトレンチ部40の底部89としてよく、ゲートトレンチ部40の最下端から上側に0.1×Wgdの範囲をゲートトレンチ部40の底部89としてもよい。
半導体基板10の深さ方向におけるフローティング領域17の少なくとも一部は、ゲートトレンチ部40の底部89と接して設けられてよい。即ち、フローティング領域17のZ軸方向における位置は、YZ平面内において、フローティング領域17の上端がs-s'線より上側(すなわち半導体基板10の上面21側)、且つ、フローティング領域17の下端がs-s'線より下側(すなわち半導体基板10の下面23側)となる位置であってよい。フローティング領域17の上端のZ軸方向における位置は、s-s'線と一致してもよい。フローティング領域17の下端のZ軸方向における位置は、s-s'線と一致してもよい。
図6aは、本例の半導体装置100における幅Wfdとオン電圧Vonとの関係の一例を示す図である。図6aにおいては、幅Wfdを幅Wgdに対する比率で示している。即ち、図6aにおける横軸は、Wfd/Wgd[%]である。また、半導体装置100のオン電圧Vonを第1比較例の半導体装置150のVonに対する比率で示している。即ち、図6aにおける縦軸は、半導体装置100のVon/半導体装置150のVon[%]である。図6aにおいて、ゲートトレンチ部40の底部89は、幅比Wfd/Wgd=90%~100%の範囲に位置する。また、フローティング領域17の幅Wfvは、図6aの横軸において10%程度に相当する幅である。
フローティング領域17をゲートトレンチ部40の底部89の近傍に配置することで、図6aに示すように、第1比較例のVonと比較してオン電圧Vonを、10%未満の増加に抑制することができる。一例として、フローティング領域17のZ軸方向における少なくとも一部が、ゲートトレンチ部40の底部89と接する深さに配置されてよい。この場合、フローティング領域17のZ軸方向における当該少なくとも一部以外の残部は、ゲートトレンチ部40の底部89よりも上方に配置されていてよい。フローティング領域17は、Z軸方向における全体がゲートトレンチ部40の底部89と接するように配置されていてもよい。
図6bは、本例の半導体装置100における、幅Wfdと、ターンオン時のゲート電流の積分値(電荷)Qgとの関係の一例を示す図である。図6bにおける横軸は、図6aと同様にWfd/Wgd[%]である。図6bにおいて、半導体装置100における電荷Qgを、第2比較例の半導体装置160における電荷Qgに対する比率で示している。即ち、図6bにおける縦軸は、半導体装置100のQg/半導体装置160のQg[%]である。
半導体装置においては、Qgが大きいほど、CG容量が大きいことを示している。図6bに示すように、フローティング領域17をいずれの深さに設けても、半導体装置100の電荷Qgを、第2比較例のQgと比較して約40%減少させることができる。つまり、半導体装置100のCG容量を小さくできる。
図6cは、本例の半導体装置100における、幅Wfdと、ターンオン時におけるCE電圧の電圧減少率(dVce/dt)との関係の一例を示す図である。図6cにおける横軸は、図6aと同様にWfd/Wgd[%]である。図6cにおいて、(dVce/dt)を第1比較例の(dVce/dt)に対する比率で示している。即ち、図6cにおける縦軸は、半導体装置100の(dVce/dt)/半導体装置150の(dVce/dt)[%]である。
本例の半導体装置100は、図6cに示すように、Wfd/Wgdが約70%(あるいは73%)より小さい区間と、95%より大きい区間で、電圧減少率(dVce/dt)が約80%以上の値を示す。これに対して、Wfd/Wgdが70%以上(あるいは73%以上)であって100%よりも小さい区間でdVce/dtが減少している。特にWfd/Wgdが95%以下の区間でdVce/dtが急激に減少している。また、Wfd/Wgdが概ね80%から92%までの範囲で、電圧減少率(dVce/dt)が約50%の極小となっている。dVce/dtが極小となるWfd/Wgdの範囲は、Z軸方向におけるフローティング領域17の少なくとも一部が、ゲートトレンチ部40の底部89に配置される範囲と概ね一致する。
フローティング領域17をゲートトレンチ部40の底部89の近傍に配置することで、電子電流をメサ部中央に流しやすくなる。このため、正孔が蓄積されているゲートトレンチ部40の底部89の近傍において、正孔が分布している領域を電子電流で分断しやすくなり、変位電流を抑制しやすくなる。このため、電圧減少率(dVce/dt)を小さくすることができる。一例として図6cに示すように、CE電圧の電圧減少率(dVce/dt)を第1比較例の電圧減少率(dVce/dt)と比較して、約50%減少させることができる。
フローティング領域17がゲートトレンチ部40の底部89よりも深い位置に配置される(図6cにおいてWfd/Wgdが100%より大きい領域)と、ゲートトレンチ部40とフローティング領域17とが離間してしまい、ゲートトレンチ部40とフローティング領域17との間を電子電流が流れる。このため、変位電流を抑制できなくなる。このため、図6cに示すように、Wfd/Wgdを100%より大きくすると、半導体装置100の電圧減少率(dVce/dt)は急激に大きくなり、第1比較例の電圧減少率(dVce/dt)と略同じ値を示す。以上より、Z軸方向におけるフローティング領域17の少なくとも一部をゲートトレンチ部40の底部89に接して設けると、CE電圧減少率を顕著に改善することができる。
以上より、Wfd/Wgdは、70%以上で100%未満であってよい。さらにWfd/Wgdは73%以上であってよく、80%以上であってもよい。Wfd/Wgdは、95%以下であってよく、92%以下であってよい。
図7は、図5aのc-c'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。図7において縦軸は対数軸であり、横軸は線形軸である。図7に示すように、本例の半導体装置100において、フローティング領域17のドーピング濃度は、蓄積領域16のドーピング濃度よりも高くてよい。フローティング領域17のドーピング濃度は、蓄積領域16のドーピング濃度よりも10倍以上高くてよく、100倍以上高くてもよい。蓄積領域16のドーピング濃度は、一例として1×1017/cm-3である。フローティング領域17のドーピング濃度は、1×1019/cm-3以上の濃度であってもよい。
図7に示すように、本例の半導体装置100において、フローティング領域17のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度よりも高くてよい。フローティング領域17のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度よりも10倍以上高くてよく、100倍以上高くてもよい。ベース領域14のドーピング濃度は、一例として3×1017/cm-3である。フローティング領域17のドーピング濃度は、1×1019/cm-3以上の濃度であってもよい。
図8aは、本例の半導体装置100における、フローティング領域17のドーピング濃度とオン電圧Vonとの関係の一例を示す図である。図8aにおいて、Z軸方向におけるフローティング領域17の少なくとも一部は、ゲートトレンチ部40の底部89に接して設けられている。図8aにおいて、フローティング領域17の各濃度におけるオン電圧Vonを、フローティング領域17の濃度が1×1014/cm-3の場合のオン電圧Vonに対する比率で示している。即ち、図8aにおける縦軸は、オン電圧Von/(フローティング領域17の濃度が1×1014/cm-3の場合のオン電圧Von)[%]である。
本例の半導体装置100のオン電圧Vonは、図8aに示すように、フローティング領域17のドーピング濃度が1×1017/cm-3を超えると増加し始める。ドーピング濃度が1×1020/cm-3から1×1021/cm-3の間において、Vonは104%から105%を示す。すなわち、フローティング領域17のドーピング濃度を103倍から104倍増加させても、オン電圧Vonは5%未満の増加に抑制することができることから、本例の半導体装置100のオン電圧Vonは、フローティング領域17のドーピング濃度に略影響を受けずに済むと言ってもよい。
図8bは、本例の半導体装置100における、フローティング領域17のドーピング濃度とCE電圧減少率(dVce/dt)との関係の一例を示す図である。図8bにおいて、Z軸方向におけるフローティング領域17の少なくとも一部は、ゲートトレンチ部40の底部89に接して設けられている。図8bにおいて、フローティング領域17の各濃度におけるCE電圧減少率(dVce/dt)を、フローティング領域17の濃度が1×1014/cm-3の場合のCE電圧減少率(dVce/dt)に対する比率で示している。即ち、図8bにおける縦軸は、CE電圧減少率(dVce/dt)/(フローティング領域17の濃度が1×1014/cm-3の場合のCE電圧減少率(dVce/dt))[%]である。
本例の半導体装置100のCE電圧減少率(dVce/dt)は、図8bに示すように、フローティング領域17のドーピング濃度が1×1016/cm-3、特に8×1016/cm-3を超えると減少し始める。ドーピング濃度が3×1017/cm-3に達すると、CE電圧減少率(dVce/dt)は、ドーピング濃度が1×1014/cm-3の場合のCE電圧減少率(dVce/dt)と比較して、約55%のCE電圧減少率(dVce/dt)を示す。さらに、ドーピング濃度が1×1018/cm-3を超えると、ドーピング濃度が1×1014/cm-3の場合のCE電圧減少率(dVce/dt)と比較して、約50%のCE電圧減少率(dVce/dt)を示す。即ち、本例の半導体装置100は、フローティング領域17のドーピング濃度を1×1018/cm-3以上にすると、CE電圧減少率(dVce/dt)を顕著に抑制することができる。
フローティング領域17のドーピング濃度は、8×1016/cm-3以上であってよく、3×1017/cm-3以上であってよく、1×1018/cm-3以上であってよく、1×1019/cm-3以上であってもよい。フローティング領域17のドーピング濃度は、3×1020/cm-3以下であってよく、3×1020/cm-3以下であってよく、3×1020/cm-3以下であってよく、3×1020/cm-3以下であってもよい。
一方、オン電圧の増加を約3%以下に抑える場合は、図8aより、フローティング領域17のドーピング濃度の上限値を、1×1019/cm-3以下(あるいは未満)としてもよい。この場合、フローティング領域17のドーピング濃度の下限値は、図8aより、1×1017/cm-3であってよい。
図9aは、本例の半導体装置100における、幅Wmに占める幅Wfの割合(Wf/Wm[%])とオン電圧Vonとの関係の一例を示す図である。図9aは、Z軸方向におけるフローティング領域17の少なくとも一部が、ゲートトレンチ部40の底部89に接して設けられている場合における、(Wf/Wm[%])とオン電圧Vonとの関係を示している。(Wf/Wm)が0%の場合とは、Wfがゼロの場合、即ちフローティング領域17が設けられない場合である。また、(Wf/Wm)が100%の場合とは、フローティング領域17がメサ幅全体にわたり設けられている場合である。図9aにおいて、オン電圧Vonを、(Wf/Wm)が0%の場合のオン電圧Vonに対する比率で示している。即ち、図9aにおける縦軸は、オン電圧Von/(Wf/Wm)が0%の場合のオン電圧Von[%]である。
(Wf/Wm)が約60%の場合、(Wf/Wm)が0%の場合と比較して、オン電圧Vonが約20%増加する。また、(Wf/Wm)が約85%の場合、(Wf/Wm)が0%の場合と比較してオン電圧Vonが約40%増加する。(Wf/Wm)が10%以上50%以下、即ち幅Wfがメサ幅Wmの0.1倍以上0.5倍以下の場合、オン電圧Vonの増加を20%未満に抑制することができる。
図9bは、本例の半導体装置100における、幅Wmに占める幅Wfの割合(Wf/Wm[%])と、ゲート電極に蓄積される電荷Qgとの関係の一例を示す図である。図9bは、Z軸方向におけるフローティング領域17の少なくとも一部が、ゲートトレンチ部40の底部89に接して設けられている場合における、(Wf/Wm[%])と電荷Qgとの関係を示している。図9bにおいて、電荷Qgを、(Wf/Wm)が0%の場合の電荷Qgに対する比率で示している。即ち、図9bにおける縦軸は、電荷Qg/(Wf/Wm)が0%の場合の電荷Qg[%]である。
(Wf/Wm)が約60%の場合、(Wf/Wm)が0%の場合と比較して、電荷Qgは約5%減少する。(Wf/Wm)が約60%を超えると電荷Qgは増加傾向にある。即ち、(Wf/Wm)が約60%の場合に、電荷Qgは極小値を示す。以上より、本例の半導体装置100のゲート電極に蓄積される電荷Qgは、フローティング領域17を設けることで低減できることが明らかである。
図9cは、本例の半導体装置100における、幅Wmに占める幅Wfの割合(Wf/Wm[%])と、CE電圧減少率(dVce/dt)との関係の一例を示す図である。図9cは、Z軸方向におけるフローティング領域17の少なくとも一部が、ゲートトレンチ部40の底部89に接して設けられている場合における、(Wf/Wm[%])とCE電圧減少率(dVce/dt)との関係を示している。図9cにおいて、CE電圧減少率(dVce/dt)を、(Wf/Wm)が0%の場合のCE電圧減少率(dVce/dt)に対する比率で示している。即ち、図9cにおける縦軸は、CE電圧減少率(dVce/dt)/(Wf/Wm)が0%の場合のCE電圧減少率(dVce/dt)[%]である。
本例の半導体装置100のCE電圧減少率(dVce/dt)は、(Wf/Wm)が約30%の場合に極小値を示す。(Wf/Wm)が約30%の場合に、(Wf/Wm)が0%の場合と比較して、CE電圧減少率(dVce/dt)を約50%に抑制することができる。図3において説明したように、フローティング領域17を設けることにより、電子電流はゲートトレンチ部40近傍から第1メサ部60の中央付近に流れる経路をたどる。第1メサ部60の中央付近に流れる電子電流が正孔分布を分断し、変位電流の抑制をもたらす。このため、CE電圧減少率(dVce/dt)を抑制することができる。
(Wf/Wm)が小さすぎると(例えば10%よりも小さい場合)、電子電流の経路が中央付近を十分に流れず、正孔分布の分断が不十分となるので、CE電圧減少率(dVce/dt)が十分に抑制されない。反対に、(Wf/Wm)が大きすぎても(例えば60%よりも大きい場合)、電子電流の経路が中央付近を十分に流れず、正孔分布の分断が不十分となるので、CE電圧減少率(dVce/dt)が十分に抑制されない。(Wf/Wm)が約30%の場合、電子電流の経路を中央付近にすることができるので、正孔分布が分断され、CE電圧減少率(dVce/dt)が極小値を示す。このことから、(Wf/Wm)は10%以上60%以下であることが好ましい。(Wf/Wm)は、20%以上であってよく、25%以上であってもよい。(Wf/Wm)は、50%以下であってよく、40%以下であってもよく、35%以下であってもよい。
幅Wfは幅Wefよりも小さいことが好ましい。幅Wfは、幅Wefの11%(幅Wefの1/9)以上50%以下であってよい。幅Wfは0.07μm以上0.35μm以下であってよい。
図10は、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図10に示す半導体装置100は、蓄積領域16が半導体基板10の深さ方向に複数設けられる点で、図5aに示す半導体装置100と異なる。蓄積領域16以外の構造は、図5aにおいて説明した半導体装置100と同一であってよい。本例の半導体装置100は、深さ方向に蓄積領域16-1、蓄積領域16-2および蓄積領域16-3を有する。蓄積領域16-1と蓄積領域16-2とのZ軸方向の間、および蓄積領域16-2と蓄積領域16-3とのZ軸方向の間には、それぞれドリフト領域18が設けられてよい。
第1メサ部60には、第3蓄積領域16-3の下方にフローティング領域17が設けられる。フローティング領域17は、ゲートトレンチ部40と接している。また、フローティング領域17は、第1メサ部60のY軸方向における一部分にだけ設けられている。即ち、フローティング領域17は、Y軸方向において第1メサ部60の全幅にわたっては設けられておらず、Y軸方向において部分的に設けられている。図10の例では、フローティング領域17は、ゲートトレンチ部40と接する位置から、第1メサ部60内のY軸方向の所定の位置まで連続して設けられており、当該所定の位置よりもゲートトレンチ部40から離れた位置には設けられていない。
図11は、図10のd-d'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。図11に示すように、本例の半導体装置100において、最も下方に設けられる第3蓄積領域16-3のドーピング濃度は、最も上方に配置される第1蓄積領域16-1のドーピング濃度よりも低くてよい。第1蓄積領域16-1、第2蓄積領域16-2および第3蓄積領域16-3のドーピング濃度は、下方に配置される第3蓄積領域16-3ほど低くてよい。
第2蓄積領域16-2のドーピング濃度は、第1蓄積領域16-1のドーピング濃度の1/3以上2/3以下であってよい。第3蓄積領域16-3のドーピング濃度は、第1蓄積領域16-1のドーピング濃度の1/10以上であってよい。第1蓄積領域16-3のドーピング濃度は、第1蓄積領域16-1のドーピング濃度の3/10以下であってよい。第1蓄積領域16-1のドーピング濃度は、8×1016/cm-3以上2×1017/cm-3以下であってよい。第1蓄積領域16-1のドーピング濃度は、一例として1×1017/cm-3である。第2蓄積領域16-2のドーピング濃度は、3×1016/cm-3以上7×1016/cm-3以下であってよい。第2蓄積領域16-2のドーピング濃度は、一例として5×1016/cm-3である。第3蓄積領域16-3のドーピング濃度は、1×1016/cm-3以上3×1016/cm-3以下であってよい。第3蓄積領域16-3のドーピング濃度は、一例として2×1016/cm-3である。
本例の半導体装置100は、蓄積領域16のドーピング濃度が、下方に配置される第3蓄積領域16-3ほど低い。従って、第1蓄積領域16-1、第2蓄積領域16-2および第3蓄積領域16-3のドーピング濃度を略等しく設けた場合、または下方に配置される第3蓄積領域16-3ほどドーピング濃度を高く設けた場合に比べて、半導体装置100は、CG容量の増加を抑制することができる。
本例の半導体装置100は、第3蓄積領域16-3の下方にフローティング領域17が設けられるので、電子電流は、図3に示したように第1メサ部60の中央付近を流れる。また第1メサ部60中央付近において正孔分布が分断されるので、ゲート導電部44が充電されることによる変位電流を抑制することができる。このため、CE電圧の電圧減少率(dVce/dt)を抑制することができる。即ち、本例の半導体装置100は、CE電圧の電圧減少率(dVce/dt)を抑制しつつ、CG容量の増加を抑制することができる。このため、本例の半導体装置100は、CE電圧の電圧減少率(dVak/dt)を抑制しつつ、ターンオン損失を減少させることができる。また、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを維持することができる。
図12aは、本実施形態に係る半導体装置100の他の上面の一例を部分的に示す図である。図12aに示す半導体装置100は、図1aに示す半導体装置100において、トランジスタ部70の第1メサ部60における蓄積領域16の下方に、ダミートレンチ部30に接してフローティング領域17が更に設けられる点で、図1aに示す半導体装置100と異なる。図12aにおいて、半導体基板10の上面視で、フローティング領域17が設けられる範囲を破線で示している。
フローティング領域17は、図12aに示すように、配列方向(Y軸方向)において、第1メサ部60の一部分に設けられる。即ち、フローティング領域17は、Y軸方向において第1メサ部60の全幅にわたっては設けられておらず、Y軸方向において部分的に設けられている。図12aの例では、第1メサ部60において、ダミートレンチ部30と接する位置から当該第1メサ部60内のY軸方向の所定位置まで、フローティング領域17が連続して設けられている。また、当該第1メサ部60において、ゲートトレンチ部40と接する位置から当該第1メサ部60内のY軸方向の所定位置まで、フローティング領域17が連続して設けられている。ゲートトレンチ部40と接するフローティング領域17の先端位置と、ダミートレンチ部30と接するフローティング領域17の先端位置は、Y軸方向において異なる。また、Y軸方向における2つのフローティング領域17の間には、別のフローティング領域17が設けられない。
各フローティング領域17のY軸方向における先端位置は、半導体基板の上面視で、コンタクトホール54と重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。図12aは、各フローティング領域17の先端位置が、共にコンタクトホール54と重ならない一例を示している。
ダミートレンチ部30に接するフローティング領域17は、第1メサ部60のX軸方向における両端に設けられるコンタクト領域15の一方から他方まで連続して設けられてよい。上述したように、フローティング領域17はダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
ダミートレンチ部30に接するフローティング領域17のX軸方向における両端の位置は、蓄積領域16のX軸方向における両端の位置と一致していてよく、異なっていてもよい。図12aにおいては、ダミートレンチ部30に接するフローティング領域17のX軸方向の端と、蓄積領域16のX軸方向の端を、異ならせて示している。
図12bは、図12aにおけるe-e'断面の一例を示す図である。フローティング領域17は、Y軸方向において、第1メサ部60の一部分に設けられる。即ち、Wf<Wmである。図12bの例では、ダミートレンチ部30に接するフローティング領域17が、当該ダミートレンチ部30と接する位置から幅Wfにわたって設けられている。また、ゲートトレンチ部40に接する別のフローティング領域17が、当該ゲートトレンチ部40と接する位置から幅Wfにわたって設けられている。
ダミートレンチ部30に接して設けられるフローティング領域17は、ゲートトレンチ部40に接して設けられるフローティング領域17と、Y軸方向において離間して配置される。即ち、同じ第1メサ部60内に設けられる、ダミートレンチ部30に接するフローティング領域17と、ゲートトレンチ部40に接する別のフローティング領域17とは、当該第1メサ部60内において接しない。
また、ダミートレンチ部30に接するフローティング領域17は、ゲートトレンチ部40に接する別のフローティング領域17と、略同じ深さに設けられてよい。Y軸方向において、ダミートレンチ部30に接するフローティング領域17と、ゲートトレンチ部40に接するフローティング領域17との間には、ドリフト領域18が設けられてよい。
本例の半導体装置100は、ダミートレンチ部30に接して設けられるフローティング領域17が、ゲートトレンチ部40に接して設けられるフローティング領域17と、Y軸方向において離間して配置されるので、図3と同様の作用により、電子電流はフローティング領域17の深さにおいて、第1メサ部60の中央付近を流れる。電子電流が第1メサ部60の中央付近を流れると、第1メサ部60の底部近傍における正孔分布が第1メサ部60の中央付近で分断されるので、ゲートトレンチ部40の下端における正孔の蓄積が抑制される。このため、変位電流を小さくすることできる。このため、CE電圧の電圧減少率(dVak/dt)を抑制することができる。
図12cは、図12aにおけるe-e'断面の他の一例を示す図である。図12cに示す半導体装置100は、図12bに示す半導体装置100において、蓄積領域16が複数設けられる点で、図12bに示す半導体装置100と異なる。蓄積領域16-1と蓄積領域16-2とのZ軸方向の間、および蓄積領域16-2と蓄積領域16-3とのZ軸方向の間には、それぞれドリフト領域18が設けられてよい。蓄積領域16-1、蓄積領域16-2および蓄積領域16-3のドーピング濃度は、それぞれ図10に示す半導体装置100における蓄積領域16-1、蓄積領域16-2および蓄積領域16-3のドーピング濃度と同じドーピング濃度に設けられてよい。
ダミートレンチ部30に接して設けられるフローティング領域17は、ゲートトレンチ部40に接して設けられるフローティング領域17と、Y軸方向において離間して配置される。ダミートレンチ部30に接して設けられるフローティング領域17は、ゲートトレンチ部40に接して設けられるフローティング領域17と、略同じ深さに設けられてよい。
本例の半導体装置100は、フローティング領域17がダミートレンチ部30に接して設けられ、且つ蓄積領域16が複数設けられる。このため、ダミートレンチ部30に接するフローティング領域17に蓄積された正孔が、ダミートレンチ部30近傍を上面21に向かって進んでも、当該フローティング領域17の上方に蓄積領域16が設けられているので、蓄積領域16に蓄積されやすい。このため、当該正孔がエミッタ電極52まで抜けてしまうことを抑制することができる。
また、本例の半導体装置100は、ダミートレンチ部30に接して設けられるフローティング領域17が、ゲートトレンチ部40に接して設けられるフローティング領域17と、Y軸方向において離間して配置されるので、図12bに示す半導体装置100と同様に、電子電流はフローティング領域17の深さにおいて、第1メサ部60の中央付近を流れる。このため、図12bに示す半導体装置100と同様に、CE電圧の電圧減少率(dVak/dt)を抑制することができる。
図13aは、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図13aに示す半導体装置100は、図10に示す半導体装置100において、第2蓄積領域16-2および第3蓄積領域16-3がゲートトレンチ部40と離間して設けられる点で、図10に示す半導体装置100と異なる。蓄積領域16-1と蓄積領域16-2とのZ軸方向の間、および蓄積領域16-2と蓄積領域16-3とのZ軸方向の間には、それぞれドリフト領域18が設けられてよい。
本例において、幅Ws1は、第2蓄積領域16-2のY軸方向の幅である、幅Ws2は、第3蓄積領域16-3のY軸方向の幅である。本例において、幅Ws1および幅Ws2は、共に幅Wmよりも小さい。
図2bにおいて説明したように、第1蓄積領域16-1の下方に設けられる第2蓄積領域16-2は、第1蓄積領域16-1の中央付近からゲートトレンチ部40に戻りかけた電子電流を、第1メサ部60の中央付近に流れやすくする。このため、第2蓄積領域16-2は、第1メサ部60のY軸方向における全体に設けられなくても、第1メサ部60の中央付近に設けられれば、電子電流の経路を第1メサ部60の中央付近にし得る。
第3蓄積領域16-3は、第2蓄積領域16-2により第1メサ部60の中央付近に流れやすくなった電子電流を、さらに第1メサ部60の中央付近に流れやすくする。第2蓄積領域16-2からゲートトレンチ部40に戻りかける電子電流は、第1蓄積領域16-1からゲートトレンチ部40に戻りかける電子電流よりも小さい。このため、幅Ws2は幅Ws1よりも小さくてよい。
幅Ws1および幅Ws2は、幅Wmの60%以上90%以下であってよい。幅Ws2は幅Ws1よりも小さくてよいが、大きくてもよい。図13aは、幅Ws2が幅Ws1よりも小さい一例を示している。
また、第2蓄積領域16-2および第3蓄積領域16-3は、ダミートレンチ部30に接していてよいが、離れていてもよい。図13aは、第2蓄積領域16-2および第3蓄積領域16-3が、ダミートレンチ部30に接する一例を示している。
図13bは、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図13bに示す半導体装置100は、図10に示す半導体装置100において、第2蓄積領域16-2および第3蓄積領域16-3がダミートレンチ部30と離間して設けられる点で、図10に示す半導体装置100と異なる。蓄積領域16-1と蓄積領域16-2とのZ軸方向の間、および蓄積領域16-2と蓄積領域16-3とのZ軸方向の間には、それぞれドリフト領域18が設けられてよい。
本例において、幅Ws1'は、第2蓄積領域16-2のY軸方向の幅である、幅Ws2'は、第3蓄積領域16-3のY軸方向の幅である。本例において、幅Ws1'および幅Ws2'は、共に幅Wmよりも小さい。
図2bにおいて説明したように、本例の半導体装置100において、電子電流は、ゲートトレンチ部40近傍から第1メサ部60の中央付近にかけて、半導体基板10の深さ方向に流れる。このため、第2蓄積領域16-2および第3蓄積領域16-3は、第1メサ部60の中央付近に設けられれば、ダミートレンチ部30と離間していてもよい。
幅Ws1'および幅Ws2'は、幅Wmの60%以上90%以下であってよい。幅Ws2'は幅Ws1'よりも小さくてよいが、大きくてもよい。図13aは、幅Ws2'が幅Ws1'よりも小さい一例を示している。
また、第2蓄積領域16-2および第3蓄積領域16-3は、ゲートトレンチ部40に接していてよいが、離れていてもよい。図13bは、第2蓄積領域16-2および第3蓄積領域16-3が、ゲートトレンチ部40に接する一例を示している。
図14は、図1aにおけるb-b'断面の他の一例を示す図である。図14に示す半導体装置100は、図5aに示す半導体装置100において、蓄積領域16が設けられない点で、図5aに示す半導体装置100と異なる。本例の半導体装置100において、幅Wm、幅Wf、幅Wef、幅Wgd、幅Wfd、幅Wbおよび幅Wbfは、図5aに示す半導体装置100と同じであってよい。
本例の半導体装置100においても、幅Wbfは幅Wbよりも大きくてよい。幅Wbfを幅Wbよりも大きくすることで、トランジスタ部70がオン状態の場合に、ベース領域14とドリフト領域18との接合面から半導体基板10の深さ方向に拡張する空乏層が、フローティング領域17に達しにくくなる。当該空乏層がフローティング領域17に達すると、電子電流が遮断されてしまう。本例の半導体装置100は、幅Wbfが幅Wbよりも大きいので、電子電流を遮断することなく、第1メサ部60の中央付近に流すことができる。幅Wbfは、幅Wbの2倍以上であってよい。幅Wbfは、一例として3μmである。
本例の半導体装置100は、蓄積領域16が設けられないので、電子電流は、半導体基板10の深さ方向に、ベース領域14のゲートトレンチ部40近傍におけるチャネルを通過した後、ゲートトレンチ部40の近傍を流れ続ける。ゲートトレンチ部40の近傍を半導体基板10の深さ方向に流れ続けた電子電流は、図3において説明したように、フローティング領域17により経路を曲げられ、ゲートトレンチ部40近傍から第1メサ部60の中央付近に流れる経路をたどる。
電子電流が第1メサ部60の中央付近を流れると、第1メサ部60の底部近傍における正孔分布は、第1メサ部60中央付近で分断されるので、ゲートトレンチ部40の下端における正孔の蓄積が抑制される。その結果、変位電流を小さくすることできる。本例の半導体装置100は、変位電流を小さくすることができるので、ゲート導電部44の充電も小さくなり、ゲート電圧Vgの瞬間的な増加も抑制される。これにより、CE電圧の電圧減少率(dVak/dt)が抑制される。
さらに、本例の半導体装置100は、ゲートトレンチ部40に接して蓄積領域16が設けられない。このため、本例の半導体装置100は、図5aに示す半導体装置100よりもCG容量の増加を防ぐことができる。即ち、本例の半導体装置100は、CE電圧の電圧減少率(dVak/dt)を抑制しつつ、CG容量の増加を抑制することができる。このため、本例の半導体装置100は、CE電圧の電圧減少率(dVak/dt)を抑制しつつ、ターンオン損失を減少させることができる。また、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを維持することができる。
図15は、第1メサ部60におけるフローティング領域17の他の配置例を示す図である。図15は、第1メサ部60の部分的な上面図である。図15においては、フローティング領域17が設けられている領域に、斜線のハッチングを付している。フローティング領域17以外の構造については、図1aから図14において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同一であってよい。例えば図15においては、フローティング領域17がゲートトレンチ部40に設けられ、ダミートレンチ部30には設けられていないが、ゲートトレンチ部40と同様のフローティング領域17が、ダミートレンチ部30にも設けられていてよい。
本例のフローティング領域17は、ゲートトレンチ部40の延伸方向(X軸方向)において、離散的に配置されている。つまり、複数のフローティング領域17が、X軸方向において間隔を有して配置されている。フローティング領域17のY軸方向における幅Wfは、図1aから図14において説明したいずれかの態様のフローティング領域17と同一である。
それぞれのフローティング領域17は、X軸方向において、エミッタ領域12よりも広い範囲に渡って設けられていてよい。つまり、それぞれのフローティング領域17は、X軸方向において、エミッタ領域12の全体を覆うように配置されていてよい。この場合、フローティング領域17のX軸方向における端部は、コンタクト領域15と重なる位置に配置されている。X軸方向において、2つのフローティング領域17の間の領域を間隙19とする。間隙19は、全体がコンタクト領域15と重なっていてよい。コンタクト領域15の下側には、フローティング領域17は形成されていなくてよい。特に、延伸方向に沿ったコンタクト領域15の中央の下側には間隙19が配置されて、フローティング領域17は形成されていない。
それぞれのコンタクト領域15のX軸方向の長さをLcとする。X軸方向において、1つのフローティング領域17が、1つのコンタクト領域15と重なる長さLfは、コンタクト領域15の長さLcの半分より小さい。長さLfは、長さLcの1/3以下であってよい。
図16は、半導体基板10の部分的な斜視断面図である。図16においては、エミッタ領域12を通過するYZ面、ゲートトレンチ部40に隣接する第1メサ部60のY軸方向における中央を通過するXZ面、および、半導体基板10の上面21の各面を示している。
また、XZ面において、エミッタ領域12と重なる範囲を破線で示している。それぞれのフローティング領域17は、X軸方向において、エミッタ領域12の全体およびコンタクト領域15の一部と重なるように配置されている。フローティング領域17を、エミッタ領域12を覆うように選択的に配置することで、オン電圧Vonの増加を抑えて、CE電圧の電圧減少率(dVce/dt)を小さくできる。また、オン電圧Vonと、ターンオフ損失のトレードオフを維持することができる。
X軸方向において、フローティング領域17とコンタクト領域15とが重なる長さLfは、Y軸方向におけるフローティング領域17の幅Wfに比べて、小さくてよい。長さLfは、幅Wfと同一であってよく、幅Wfより大きくてもよい。
フローティング領域17の近傍では、静電ポテンシャル分布は、正孔がフローティング領域17に集まりやすい分布となる。そのため、コンタクト領域15の下側にフローティング領域17があると、フローティング領域17を介して正孔がコンタクト領域15に分散されやすい。そのため、IE効果が減少し、オン電圧Vonが増加する場合がある。本例のように、コンタクト領域15の下側にフローティング領域17を形成しないことで、ホールをエミッタ領域12に集中しやすくでき、IE効果を維持してオン電圧Vonの増加を抑えることができる。
なお本例の半導体装置100は、Z軸方向に複数のバッファ領域20を有している。それぞれのバッファ領域20は、Z軸方向のドーピング濃度分布においてピークを有している。それぞれのバッファ領域20の間には、Z軸方向のドーピング濃度分布において谷が配置されていてよい。バッファ領域20の構造は、図1aから図14において説明した例と同様であってもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。