以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。本発明は、関節の手術において用いられる手術器具として、広く適用することができる。
[手術器具の概略]
図1は、本発明の一実施の形態に係る手術器具1を示す斜視図である。手術器具1は、関節の手術において用いられ、本実施形態では、関節を人工関節に置換する人工関節手術において用いられる。より具体的には、手術器具1は、膝関節に異常が認められた患者に対してその膝関節を人工膝関節に置換する手術である人工膝関節置換術として構成される人工関節手術において用いられる。
人工膝関節置換術においては、患者の脛骨の近位側の端部及び大腿骨の遠位側の端部において、それらの一部がそれぞれ切除され、インプラントの設置面が形成される。人工膝関節は、脛骨用のインプラントと大腿骨用のインプラントとにより構成される。そして、脛骨の近位側の端部の設置面に脛骨用のインプラントが設置され、大腿骨の遠位側の端部の設置面に大腿骨用のインプラントが設置される。これにより、患者の膝関節が人工膝関節に置換される。尚、「近位側」とは、体幹により近い側であり、「遠位側」とは、体幹からより遠い側である。
上述の通り、人工膝関節置換術においては、脛骨の近位側の端部に脛骨用のインプラントの設置面が形成される。脛骨の近位側の端部にインプラントの設置面が形成される際には、脛骨の近位側の端部の骨切り(骨の切断)が行われる。即ち、ボーンソー等の骨切り具によって、脛骨の近位側の端部の一部が切除され、脛骨の近位側の端部の骨切りが行われる。そして、脛骨の近位側の端部の骨切りが行われる際に、手術器具1が用いられる。
図2は、手術器具1の使用形態を模式的に示す図であって、手術器具1を脛骨100とともに示す斜視図である。尚、図2においては、患者の人体の要素については脛骨100のみが模式的に示されており、患者の人体の他の骨及び筋肉等の軟部組織の図示は全て省略されている。また、図2においては、脛骨100の表面において、脛骨100の表面形状を模式的に示すようにメッシュ状に描画した線を図示している。また、図2においては、手術器具1を用いた脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが完了した脛骨100の状態を図示している。また、図2においては、患者の人体の上下方向については、両端矢印X1で示し、患者の人体の内外側(ないがいそく)方向については、両端矢印X2で示し、患者の人体の前後方向については、両端矢印X3で示している。尚、患者の人体の内外側方向は、患者の人体の左右方向に対応している。
尚、脛骨100の近位側の端部100aの骨切りを行う際、術者は、患者の足に対して手術器具1を脛骨100に沿って設置する。そして、術者は、手術器具1を用い、脛骨100の近位側の端部100aに形成するインプラントの設置面100bの位置を特定するための骨切りラインを決定する。骨切りラインを決定すると、術者は、その骨切りラインに沿って、手術器具1と骨切り具を用い、脛骨100の近位側の端部100aの骨切りを行う。脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが完了すると、脛骨100の近位側の端部100aにインプラントの設置面100bが形成される。
図3及び図4は、図1に示す手術器具1の一部を拡大して示す図であって、手術器具1の一部の斜視図である。図1乃至図4に示すように、手術器具1は、骨切りガイド部11、支持部12、ベースハウジング13、一対のアンクルアーム(14a、14b)、中心位置標識部43、幅測定部15、支持部位置指標部18、等を備えて構成されている。尚、図3は、手術器具1における骨切りガイド部11とその近傍とを拡大して示す斜視図である。図4は、手術器具1におけるベースハウジング13及び一対のアンクルアーム(14a、14b)とその近傍とを拡大して示す斜視図である。また、図5は、手術器具1における一部の分解斜視図であって、ベースハウジング13及び一対のアンクルアーム(14a、14b)を含む部分を示す分解斜視図である。図5に示すように、手術器具1は、骨切りガイド部11、支持部12、ベースハウジング13、一対のアンクルアーム(14a、14b)、中心位置標識部43、幅測定部15、支持部位置指標部18に加え、更に、連動機構16、一対のバネ部(17a、17b)、等も備えて構成されている。
[骨切りガイド部]
図1乃至図3に示す骨切りガイド部11は、骨である脛骨100の切断方向をガイドする部材として構成されている。より具体的には、骨切りガイド部11は、脛骨100の近位側の端部100aの切断方向をガイドするスリット11aが設けられた部材として構成されている。即ち、脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが行われる際には、骨切りガイド部11のスリット11aにより、骨切り具による脛骨100の近位側の端部100aの切断方向がガイドされる。
また、骨切りガイド部11は、脛骨100の近位側の端部100aの外周の一部に沿って湾曲するように延びる本体部分11bを有している。スリット11aは、本体部分11bを貫通するとともに本体部分11bの湾曲方向に沿って開口するように設けられている。脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが行われる際には、スリット11aに骨切り具が挿入される。そして、骨切り具が操作され、骨切り具がスリット11aに沿って移動しながら、脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが行われる。即ち、スリット11aによって、骨切り具による脛骨100の近位側の端部100aの切断方向がガイドされながら、骨切り具が操作され、脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが行われる。
また、骨切りガイド部11は、後述の支持部12の長手方向における一端側において支持部12に支持されている。尚、支持部12は、その長手方向が脛骨100に沿って延びた状態で、脛骨100の近傍に配置される。即ち、支持部12は、支持部12の長手方向が脛骨100の長手方向に沿って(即ち、患者の人体の上下方向に沿って)延びた状態で、脛骨100の近傍に配置される。そして、支持部12が脛骨100に沿って延びて配置された状態で、支持部12の一端側に支持された骨切りガイド部11が、脛骨100の近位側の端部100aに対向する位置に配置される。
[支持部]
図1乃至図3に示す支持部12は、長手方向を有し、脛骨100に沿って配置される機構として設けられている。そして、支持部12は、長手方向における一端側において骨切りガイド部11を支持するとともに、長手方向における他端側において後述のベースハウジング13が取り付けられている。
また、支持部12は、揺動角度調整機構12a、位置調整機構12b、第1ロッド12c、第2ロッド12d、長さ調整機構12e、連結機構12f、等を備えて構成されている。第1ロッド12c及び第2ロッド12dは、直列に並んで配置され、第1ロッド12c及び第2ロッド12dが並ぶ方向が支持部12の長手方向を構成している。そして、支持部12の長手方向における一端側に揺動角度調整機構12a及び位置調整機構12bが設けられ、支持部12の長手方向における他端側に連結機構12fが設けられ、第1ロッド12cと第2ロッド12dとの間に長さ調整機構12eが設けられている。
揺動角度調整機構12aは、骨切りガイド部11を第1ロッド12c側に対して揺動自在に支持するとともに、骨切りガイド部11の第1ロッド12c側に対する揺動角度を調整するための機構として設けられている。
尚、揺動角度調整機構12aは、例えば、揺動アーム21、角度固定操作部22、支持台部23、等を備えて構成されている。揺動アーム21は、第1ロッド12cの端部に設けられた位置調整機構12bに対して揺動自在に支持されている。角度固定操作部22は、揺動アーム21の位置調整機構12bに対する揺動角度位置を揺動角度方向における任意の位置で固定可能な操作部として設けられている。支持台部23は、揺動アーム21に固定されるとともに骨切りガイド部11が固定されて支持される台座として設けられている。術者は、骨切りガイド部11及び支持台部23とともに揺動アーム21を位置調整機構12bに対して所望の角度位置まで揺動させる。そして、角度固定操作部22を操作し、骨切りガイド部11等の位置調整機構12bに対する角度位置を上記の所望の角度位置に固定する。
位置調整機構12bは、第1ロッド12cに対する揺動角度調整機構12a及び骨切りガイド部11の相対位置を調整する機構として設けられている。位置調整機構12bは、例えば、スライド軸部24、位置固定操作部25、等を備えて構成されている。スライド軸部24は、揺動角度調整機構12aが取り付けられるとともに、第1ロッド12cに対して第1ロッド12cの長手方向に沿ってスライド移動自在に支持される部材として設けられている。位置固定操作部25は、第1ロッド12cに対してスライド移動するスライド軸部24の第1ロッド12cに対する相対位置をスライド方向における任意の位置で固定可能な操作部として設けられている。術者は、スライド軸部24を第1ロッド12cに対してスライド移動させながら、骨切りガイド部11及び揺動角度調整機構12aを第1ロッド12cに対して所望の位置まで相対変位させる。そして、位置固定操作部25を操作し、骨切りガイド部11等の第1ロッド12cに対する位置を上記の所望の位置に固定する。
第1ロッド12cは、筒状に延びる部材として形成されるとともに、長手方向が直線状に延びる部材として構成されている。そして、第1ロッド12cは、手術器具1が脛骨100に沿って設置された状態において、第1ロッド12cの長手方向が人体の上下方向に沿って延びるように、配置される。第1ロッド12cの一端側の端部には、位置調整機構12bが設けられている。よって、第1ロッド12cの一端側には、位置調整機構12bを介して揺動角度調整機構12a及び骨切りガイド部11が設けられている。また、第1ロッド12cの他端側の端部には、長さ調整機構12eが設けられている。
第2ロッド12dは、軸状或いは柱状に延びる部材として形成されるとともに、長手方向が直線状に延びる部材として構成されている。そして、第2ロッド12dは、手術器具1が脛骨100に沿って設置された状態において、第2ロッド12dの長手方向が人体の上下方向に沿って延びるように、配置される。
また、第2ロッド12dは、その一端側において、長さ調整機構12eを介して、第1ロッド12cに連結されている。尚、第2ロッド12dは、その一端側の端部が第1ロッド12cの他端側の端部から第1ロッド12cの内側に挿入された状態で、第1ロッド12aに連結されている。そして、長さ調整機構12eを介して連結された第1ロッド12cと第2ロッド12dとは、同一軸心の直線方向に沿って延びるように配置されている。更に、第2ロッド12dは、第1ロッド12cに対して、長手方向に沿ってスライド移動可能な状態で挿入され、連結されている。このため、第2ロッド12dは、第1ロッド12cに対して、長手方向に沿って相対変位可能に、連結されている。また、第2ロッド12cの他端側の端部には、スライド支持機構12fが設けられている。そして、第2ロッド12dの他端側には、スライド支持機構12fを介して後述のベースハウジング13が取り付けられている。
長さ調整機構12eは、第1ロッド12cに対する第2ロッド12dの相対位置を調整し、支持部12の長手方向の寸法である長さ寸法を調整するための機構として設けられている。尚、直列に連結された第1ロッド12c及び第2ロッド12dとは、支持部12の長手方向に沿って配置されている。このため、長さ調整機構12eによって、第1ロッド12cに対する第2ロッド12dの相対位置が調整されることで、支持部12の長さ寸法が調整されることになる。
尚、長さ調整機構12eは、第1ロッド12cに対してスライド移動する第2ロッド12dの第1ロッド12cに対する相対位置をスライド方向における任意の位置で固定可能に操作される機構として設けられている。術者は、第2ロッド12dを第1ロッド12cに対してスライド移動させながら、支持部12が所望の長さとなるように、第2ロッド12dを第1ロッド12cに対して所望の位置まで相対変位させる。そして、長さ調整機構12eを操作し、第2ロッド12dの第1ロッド12cに対する位置を上記の所望の位置において固定する。
図1、図2、図4、図5に示す連結機構12fは、支持部12において、ベースハウジング13に対して連結されて取り付けられる部分として設けられている。更に、連結機構12fは、支持部12を後述のベースハウジング13に対してスライド移動自在に連結して取り付けるための機構として設けられている。具体的には、連結機構12fは、連結ブロック26、連結軸27、スライダ28、等を備えて構成されている。
連結ブロック26は、第2ロッド12dの他端側の端部が固定されたブロック状の部材として設けられている。更に、連結ブロック26は、連結軸27に対してスライド移動自在に取り付けられている。連結軸27は、軸状或いは柱状に延びる部材として形成され、連結ブロック26がスライド移動自在に取り付けられる部材として設けられている。尚、連結ブロック26には、貫通孔が設けられており、この貫通孔を連結軸27が貫通した状態で、連結ブロック26が、連結軸27に対してスライド移動自在に取り付けられている。また、連結軸27は、手術器具1が脛骨100に沿って設置された状態において、連結軸27の長手方向が人体の前後方向に沿って延びるように、配置される。
また、連結ブロック26には、位置固定ボタン26aが設けられている。位置固定ボタン26aは、連結軸27に対してスライド移動する連結ブロック26の連結軸27に対する相対位置をスライド方向における任意の位置で固定可能な操作部として設けられている。術者は、連結ブロック26を連結軸27に対してスライド移動させながら、連結ブロック26とともに移動する第2ロッド12d、第1ロッド12c、骨切りガイド部11等が連結軸27に対して所望の位置に位置するように、連結ブロック26を連結軸27に対して所望の位置まで相対変位させる。そして、位置固定ボタン26aを操作し、連結ブロック26の連結軸27に対する位置を上記の所望の位置において固定する。
スライダ28は、連結軸27の一方の端部が固定されるとともに、ベースハウジング13に対してスライド移動自在に支持される部材として設けられている。連結軸27は、スライダ28に対して、一方の端部において、片持ち状に支持された状態で、固定されている。また、スライダ28は、ベースハウジング13に設けられたスライドレール29に対してスライド移動自在に取り付けられていることで、ベースハウジング13に対してスライド移動自在に支持されている。尚、スライドレール29は、ベースハウジング13において、ベースハウジング13に対してスライド移動自在に装着される後述の一対のアンクルアーム(14a、14b)のスライド移動方向と平行な方向に沿って延びるレールとして設けられている。これにより、スライダ28は、ベースハウジング13に対して、後述のアンクルアーム(14a、14b)のスライド移動方向と平行な方向に沿って、スライド移動自在に取り付けられている。
尚、ベースハウジング13は、手術器具1が脛骨100に沿って設置された状態において、その長手方向が人体の内外側方向と平行な方向に沿って延びるように配置されるとともに、足首の近傍に配置される。そして、スライドレール29は、ベースハウジング13の長手方向に沿って延びるように設けられている。これにより、ベースハウジング13に対してアンクルアーム(14a、14b)のスライド移動方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に取り付けられたスライダ28は、手術器具1が脛骨100に沿って設置された状態において、足首の内外側方向と平行な方向に沿ってスライド移動するように構成される。そして、支持部12は、スライダ28がベースハウジング13に対してスライド移動すると、スライダ28とともにベースハウジング13に対してスライド移動する。このため、支持部12は、ベースハウジング13に対して、アンクルアーム(14a、14b)のスライド移動方向と平行な方向に沿って、スライド移動自在に取り付けられている。そして、支持部12は、手術器具1が脛骨100に沿って設置された状態において、ベースハウジング13に対して足首の内外側方向と平行な方向に沿ってスライド移動自在に取り付けられた状態となる。
また、連結軸27及びスライダ28には、位置固定操作部30が設けられている。位置固定操作部30は、ベースハウジング13に対してスライド移動する連結軸27及びスライダ28のベースハウジング13に対する相対位置をスライド方向における任意の位置で固定可能な操作部として設けられている。術者は、連結軸27及びスライダ28をベースハウジング13に対してスライド移動させながら、連結軸27及びスライダ28とともに移動する連結ブロック26、第2ロッド12d、第1ロッド12c、骨切りガイド部11等がベースハウジング13に対して所望の位置に位置するように、連結軸27及びスライダ28をベースハウジング13に対して所望の位置まで相対変位させる。そして、位置固定操作部30を操作し、連結軸27及びスライダ28のベースハウジング13に対する位置を上記の所望の位置において固定する。
[ベースハウジング]
図6及び図7は、手術器具1における一部の斜視図であって、ベースハウジング13及び一対のアンクルアーム(14a、14b)を含む部分を示す斜視図である。尚、図6と図7とにおいては、ベースハウジング13に対する一対のアンクルアーム(14a、14b)の相対位置が異なる状態が図示されている。
図1、図2、図4乃至図7に示すベースハウジング13は、支持部12がスライド移動自在に支持されるとともに、連動機構16及び一対のバネ部(17a、17b)を収納する筐体状の部材として設けられている。更に、ベースハウジング13には、連動機構16を介して、一対のアンクルアーム(14a、14b)がスライド移動自在に装着されている。また、ベースハウジング13は、長手方向を有する直方体状の基本外形を有しており、直方体状の6つの面のうちの1つの面31であって長手方向に沿った一つの面31において、開口31aが設けられ、開口している。
また、ベースハウジング13は、ハウジング本体部13aと一対のバネ保持部(13b、13c)とを備えている。ハウジング本体部13aは、ベースハウジング13の長手方向に沿って延びるベースハウジング13の本体部分として設けられている。ハウジング本体部13aは、略角筒状の基本外形を有しており、開口31aが設けられる面31を構成する部分において、長手方向に沿って開口している。また、ハウジング本体部13aには、ベースハウジング13における面31と対向する面48を構成する部分において、スライドレール29が設けられている。ハウジング本体部13aの内部には、連動機構16及び一対のバネ部(17a、17b)が配置される。
一対のバネ保持部(13b、13c)は、ハウジング本体部13aに対して、ハウジング本体部13aの長手方向における両端部に配置され、後述の一対のバネ部(17a、17b)をベースハウジング13内に保持するための部材として設けられている。一対のバネ保持部(13b、13c)は、ハウジング本体部13a内に一対のバネ部(17a、17b)が配置された状態で、ハウジング本体部13aに対してその両端部のそれぞれにて取り付けられて固定される。また、一対のバネ保持部(13b、13c)は、ハウジング本体部13aに対してその両端部の開口を塞いだ状態で取り付けられて固定される。ハウジング本体部13aの両端部に一対のバネ保持部(13b、13c)が設けられていることにより、ベースハウジング13内に一対のバネ部(17a、17b)が保持され、更に、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力が支持される。
[アンクルアーム]
図1、図2、図4乃至図7に示すアンクルアーム(14a、14b)は、手術器具1において、一対で設けられている。一対のアンクルアーム(14a、14b)は、ベースハウジング13に対して、後述の連動機構16を介して、スライド移動自在に装着されている。そして、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、手術器具1が脛骨100に沿って設置された状態において、足首を両側から挟み込むように配置される。
一対のアンクルアーム(14a、14b)のそれぞれには、一対のアンクルアーム(14a、14b)が足首を挟み込む際に足首に当接する平板部32が設けられている。各アンクルアーム(14a、14b)の平板部32は、略長方形状の外形を有する平坦な板状の部分として設けられている。一対のアンクルアーム(14a、14b)は、それらの平板部32が互いに平行な面に沿って板状に延びた状態で、ベースハウジング13にスライド移動自在に装着されている。また、一対のアンクルアーム(14a、14b)の平板部32における互いに対向する面であって足首に当接する面には、複数の凹凸溝32aがそれぞれ設けられている。一対のアンクルアーム(14a、14b)は、平板部32における足首に当接する面において複数の凹凸溝32aが設けられていることで、より安定した状態で足首を挟み込むことができるように構成されている。
また、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、ベースハウジング13に対して、ベースハウジング13の長手方向に沿ってスライド移動自在に装着されている。尚、手術器具1が脛骨100に沿って設置された状態においては、ベースハウジング13は、その長手方向が人体の内外側方向と平行な方向に沿って延びた状態で足首の近傍に配置される。このため、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、手術器具1が脛骨100に沿って設置された状態においては、ベースハウジング13に対して、足首の内外側方向と平行な方向に沿ってスライド移動するように、配置される。そして、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、足首の内外側方向と平行な方向に沿ってスライド移動することで、足首を両側から挟み込むように構成されている。
[連動機構]
図5乃至図7に示す連動機構16は、ベースハウジング13に対して一対のアンクルアーム(14a、14b)を連動させてスライド移動させる機構として設けられている。そして、本実施形態では、連動機構16は、ベースハウジング13の内側に収納されるラックアンドピニオン機構16aを含んで構成されている。具体的には、連動機構16は、第1ラック33、第2ラック34、ピニオン35、ピニオン軸36を備えるラックアンドピニオン機構16aを含んで構成されている。
第1ラック33は、細長い板状の基本外形部分を有しており、直線状に延びる長手方向を有し、ピニオン35の外周歯に噛み合う複数の歯が直線状に並んだラック部材として設けられている。そして、第1ラック33は、その長手方向における一方の端部において、アンクルアーム14aが固定されている。また、第1ラック33は、ベースハウジング13の内側において、ベースハウジング13に対して、ベースハウジング13の長手方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。
尚、第1ラック33には、その長手方向と直交する幅方向における両縁部において、長手方向に沿って延びる段部が設けられている。そして、ベースハウジング13には、第1ラック33の幅方向の両縁部の段部がスライド移動自在に嵌まり込むレール部分が設けられている。これにより、第1ラック33は、ベースハウジング13に対してスライド移動自在に支持されている。
第2ラック34は、細長い板状の基本外形部分を有しており、直線状に延びる長手方向を有し、ピニオン35の外周歯に噛み合う複数の歯が直線状に並んだラック部材として設けられている。尚、第2ラック34において直線状に並ぶ複数の歯における隣り合う歯の間隔は、第1ラック33において直線状に並ぶ複数の歯における隣り合う歯の間隔と同じに設定されている。即ち、第1ラック33と第2ラック34とは、直線状に並ぶ歯が同じピッチで配置されている。
また、第2ラック34は、その長手方向における一方の端部において、アンクルアーム14bが固定されている。そして、第2ラック34は、ベースハウジング13の内側において、ベースハウジング13に対して、ベースハウジング13の長手方向に沿ってスライド移動自在に支持されている。尚、第2ラック34には、その長手方向と直交する幅方向における両縁部において、長手方向に沿って延びる段部が設けられている。そして、ベースハウジング13には、第2ラック34の幅方向の両縁部の段部がスライド移動自在に嵌まり込むレール部分が設けられている。これにより、第2ラック34は、ベースハウジング13に対してスライド移動自在に支持されている。
また、第1ラック33及び第2ラック34は、ベースハウジング13に対して、ベースハウジング13の長手方向に沿って平行に延びるとともに互いに対向する一対の壁部(37a、37b)において、それぞれスライド移動自在に支持されている。具体的には、第1ラック33は、ベースハウジング13の内側において、一対の壁部(37a、37b)のうちの一方の壁部37aに対してスライド移動自在に支持されている。そして、第2ラック34は、ベースハウジング13の内側において、一対の壁部(37a、37b)のうちの他方の壁部37bに対してスライド移動自在に支持されている。
また、第1ラック33に固定されるアンクルアーム14a及び第2ラック34に固定されるアンクルアーム14bには、固定部38a及び固定部38bがそれぞれ設けられている。即ち、アンクルアーム14aには、第1ラック33の長手方向における一方の端部に固定される固定部38aが設けられている。そして、アンクルアーム14bには、第2ラック34の長手方向における一方の端部に固定される固定部38bが設けられている。
アンクルアーム14aの固定部38aは、ベースハウジング13の内側において第1ラック33に固定されているとともに、ベースハウジング13の内側から開口31aを介して外側に突出するように配置されている。そして、ベースハウジング13の外側において、アンクルアーム14aの固定部38aは、アンクルアーム14aの平板部32と一体に設けられている。また、アンクルアーム14bの固定部38bは、ベースハウジング13の内側において第2ラック34に固定されているとともに、ベースハウジング13の内側から開口31aを介して外側に突出するように配置されている。そして、ベースハウジング13の外側において、アンクルアーム14bの固定部38bは、アンクルアーム14bの平板部32と一体に設けられている。
ピニオン35は、第1ラック33及び第2ラック34に噛み合う外周歯が設けられた歯車部材として設けられている。ピニオン軸36は、ベースハウジング13の内側において、ハウジング本体部13aに対して固定され、ピニオン35を回転自在に支持する軸部材として構成されている。このため、ピニオン35は、ベースハウジング13の内側において、ハウジング本体部13aに対して、ピニオン軸36を介して回転自在に支持されている。尚、ピニオン35の中央には、ピニオン軸36が挿通される貫通孔が設けられている。そして、ピニオン軸36は、ピニオン35の中央の貫通孔に挿通された状態で、軸方向における一方の端部においてハウジング本体部13aに固定されている。また、ピニオン軸36における他方の端部には、ピニオン35の中央の貫通孔に挿通されたピニオン軸36からピニオン35が脱落することを防止するためのフランジ部が設けられている。
また、ピニオン35は、ベースハウジング13内の領域であって壁部37aと壁部37bとの間の領域において、ハウジング本体部13aに対してピニオン軸36を介して回転自在に支持されている。更に、ピニオン35は、ベースハウジング13の長手方向における中央部分において、ハウジング本体部13aに回転自在に支持されている。そして、壁部37aにスライド移動自在に支持された第1ラック33と壁部37bにスライド移動自在に支持された第2ラック34とは、ピニオン35に対して常時同時に噛み合う状態で、ベースハウジング13内に配置されている。このため、連動機構16は、ハウジング本体部13aに回転自在に支持されたピニオン35が回転すると、第1ラック33と第2ラック34とが、ベースハウジング13に対してその長手方向に沿って互いに逆方向にスライド移動するように構成されている。
また、連動機構16においては、ピニオン35の回転とともに第1ラック33と第2ラック34とがベースハウジング13の長手方向に沿って互いに逆方向にスライド移動するとともに、第1ラック33の歯と第2ラック34の歯とが同じピッチで設けられている。そして、第1ラック33にアンクルアーム14aが固定され、第2ラック34にアンクルアーム14bが固定されている。このため、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、ベースハウジング13に対してスライド移動する際、ベースハウジング13の長手方向における中央に配置されたピニオン35の軸心を中心として対称に変位するように構成されている。そして、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、ベースハウジング13の長手方向における中央に配置されたピニオン35の軸心からの距離が、ベースハウジング13の長手方向と平行な方向におけるどの位置においても、同じ距離となるように構成されている。
[バネ部]
図5に示すバネ部(17a、17b)は、手術器具1において、一対で設けられている。そして、一対のバネ部(17a、17b)は、ベースハウジング13に対して一対のアンクルアーム(14a、14b)を互いに接近させる方向に付勢するバネ部材として設けられている。本実施形態では、一対のバネ部(17a、17b)のそれぞれは、コイルバネとして構成されている。尚、図5においては、コイルバネとして構成された各バネ部(17a、17b)について、円柱状の外形で模式的に図示している。
一対のバネ部(17a、17b)は、ベースハウジング13の内側において、ベースハウジング13の長手方向における両端部側に、それぞれ配置されている。即ち、ベースハウジング13の内側において、バネ部17aが、ベースハウジング13の長手方向における一方の端部側に配置され、バネ部17bが、ベースハウジング13の長手方向における他方の端部側に配置されている。尚、図6及び図7においては、バネ部(17a、17b)の図示を省略している。
バネ部17aは、ベースハウジング13の内側において、アンクルアーム14aの固定部38aとベースハウジング13のバネ保持部13bとの間に配置されている。コイルバネとして構成されたバネ部17aは、螺旋状に延びるその長手方向に沿って伸張及び縮退するように構成されている。そして、バネ部17aは、バネ部17aの長手方向がベースハウジング13の長手方向に沿った状態で、アンクルアーム14aの固定部38aとベースハウジング13のバネ保持部13bとの間に配置されている。
尚、アンクルアーム14aの固定部38aには、ベースハウジング13の長手方向に沿ってバネ保持部13b側に向かって円柱状に突出する突出部39が設けられている。また、ベースハウジング13のバネ保持部13bには、ベースハウジング13の長手方向に沿って固定部38a側に向かって円柱状に突出する突出部40が設けられている。固定部38a側の突出部39とバネ保持部13b側の突出部40とは、同一軸心上で突出するとともに互いに向かって突出するように設けられている。
コイルバネとして構成されたバネ部17aは、長手方向における一方の端部が固定部38a側の突出部39に嵌まり込み、長手方向における他方の端部がバネ保持部13b側の突出部40に嵌まり込んだ状態で、ベースハウジング13内に配置されている。バネ部17aがベースハウジング13内に組み込まれる際には、バネ部17aの一方の端部が固定部38a側の突出部39に嵌め込まれた状態で、バネ保持部13b側の突出部40がバネ部17aの他方の端部に嵌め込まれるようにして、バネ保持部13bがハウジング本体部13aに固定される。これにより、ベースハウジング13内にバネ部17aが保持され、更に、バネ部17aのバネ力が、固定部38aとバネ保持部13bとによって支持される。
バネ部17bは、ベースハウジング13の内側において、アンクルアーム14bの固定部38bとベースハウジング13のバネ保持部13cとの間に配置されている。コイルバネとして構成されたバネ部17bは、螺旋状に延びるその長手方向に沿って伸張及び縮退するように構成されている。そして、バネ部17bは、バネ部17bの長手方向がベースハウジング13の長手方向に沿った状態で、アンクルアーム14bの固定部38bとベースハウジング13のバネ保持部13cとの間に配置されている。
尚、アンクルアーム14bの固定部38bには、ベースハウジング13の長手方向に沿ってバネ保持部13c側に向かって円柱状に突出する突出部39が設けられている。また、ベースハウジング13のバネ保持部13cには、ベースハウジング13の長手方向に沿って固定部38b側に向かって円柱状に突出する突出部40が設けられている。固定部38b側の突出部39とバネ保持部13c側の突出部40とは、同一軸心上で突出するとともに互いに向かって突出するように設けられている。尚、固定部38bの突出部39は、図5乃至図7においては表れていないが、固定部38aの突出部39と同様に形成されている。
コイルバネとして構成されたバネ部17bは、長手方向における一方の端部が固定部38b側の突出部39に嵌まり込み、長手方向における他方の端部がバネ保持部13c側の突出部40に嵌まり込んだ状態で、ベースハウジング13内に配置されている。バネ部17bがベースハウジング13内に組み込まれる際には、バネ部17bの一方の端部が固定部38b側の突出部39に嵌め込まれた状態で、バネ保持部13c側の突出部40がバネ部17bの他方の端部に嵌め込まれるようにして、バネ保持部13cがハウジング本体部13aに固定される。これにより、ベースハウジング13内にバネ部17bが保持され、更に、バネ部17bのバネ力が、固定部38bとバネ保持部13cとによって支持される。
上記のように、バネ部17aがアンクルアーム14aの固定部38aとバネ保持部13bとの間で支持され、バネ部17bがアンクルアーム14bの固定部38bとバネ保持部13bとの間で支持されている。このため、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力により、互いに接近する方向に、付勢されている。即ち、バネ部17aは、バネ保持部13bに対してアンクルアーム14aの固定部38aをベースハウジング13の長手方向の中央側に向かって付勢する。そして、バネ部17bは、バネ保持部13cに対してアンクルアーム14bの固定部38bをベースハウジング13の長手方向の中央側に向かって付勢する。これにより、一対のバネ部(17a、17b)は、一対のアンクルアーム(14a、14b)をベースハウジング13の長手方向に沿って互いに接近させる方向に付勢する。
図6は、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力によって、一対のアンクルアーム(14a、14b)が互いに最も接近した位置まで付勢された状態を示している。一方、図7は、一対のアンクルアーム(14a、14b)が、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力に抗して、図6に示す位置から離間した位置まで移動した状態を示している。尚、図6及び図7においては、前述の通り、バネ部(17a、17b)の図示が省略されている。
一対のアンクルアーム(14a、14b)の間に患者の足首が挟まれておらず、また、一対のアンクルアーム(14a、14b)に外力も加えられていない状態では、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力によって、互いに最も接近した位置まで付勢されている(図6を参照)。尚、ベースハウジング13のハウジング本体部13aの面31には、ベースハウジング13の長手方向における中央部分において、凸状に形成されたストッパ44が設けられている。一対のバネ部(17a、17b)のバネ力によって、互いに最も接近した位置まで付勢された一対のアンクルアーム(14a、14b)は、それぞれにおける固定部(38a、38b)の端面において、ストッパ44に当接する。これにより、一対のアンクルアーム(14a、14b)が、ストッパ44によって規制された位置よりも接近して互いに当接してしまうことが防止されている。
手術器具1が用いられる際には、一対のアンクルアーム(14a、14b)が最も接近した状態(図6に示す状態)において、術者による操作が行われる。具体的には、一対のアンクルアーム(14a、14b)が最も接近した状態において、術者によって、一対のアンクルアーム(14a、14b)に対して、ベースハウジング13の長手方向と平行な方向に沿ってベースハウジング13の両端部側に向かう力が加えられる。そうすると、一対のアンクルアーム(14a、14b)が、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力に抗して、互いに離間する位置まで移動する(図7を参照)。この状態で、一対のアンクルアーム(14a、14b)の間に患者の足首が配置され、一対のアンクルアーム(14a、14b)に対して術者によって加えられた力が解除される。そうすると、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力によって付勢され、一対のアンクルアーム(14a、14b)が、それらの平板部32において足首に当接する位置まで移動する。これにより、一対のアンクルアーム(14a、14b)によって、足首が両側から挟み込まれることになる。
[中心位置標識部、幅測定部]
図8は、図4の一部を拡大して示す図であって、ベースハウジング13とその近傍とを拡大して示す斜視図である。図9は、ベースハウジング13及び一対のアンクルアーム(14a、14b)を示す平面図である。尚、図9は、ベースハウジング13に支持部12が取り付けられていない状態を図示している。
図1、図2、図4乃至図9に示す中心位置標識部43は、ベースハウジング13に設けられている。そして、中心位置標識部43は、アンクルアーム(14a、14b)のスライド移動方向における一対のアンクルアーム(14a、14b)間の中心位置を示す標識として設けられている。
中心位置標識部43は、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面において、ベースハウジング13に表示されており、ベースハウジング13の長手方向における中央位置に表示されている。また、中心位置標識部43は、手術器具1が脛骨100に沿って設置されてベースハウジング13が足首の近傍に配置されるとともに一対のアンクルアーム(14a、14b)が足首を挟み込んだ状態において、足首の内外側方向の中心位置に一致して対応する位置に表示されている。また、本実施形態では、中心位置標識部43は、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面において、刻印された1本の目印線として設けられている。中心位置標識部43は、例えば、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に対してレーザーマーキングにより刻印されることにより設けられている。
図1、図2、図4乃至図9に示す幅測定部15は、一対のアンクルアーム(14a、14b)で挟まれた足首の内外側方向の寸法である幅寸法を測定するための機構として設けられている。幅測定部15は、一対のアンクルアーム(14a、14b)間の距離に基づいて足首の幅寸法を測定可能に構成されている。そして、幅測定部15は、目盛部41と指標部42とを含んで構成されている。
目盛部41は、ベースハウジング13に設けられている。尚、本実施形態では、目盛部41が、ベースハウジング13のハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に設けられた形態を例示している。また、目盛部41は、第1目盛部41aと第2目盛部41bとを含んで構成されている。第1目盛部41a及び第2目盛部41bは、いずれも、ベースハウジング13のハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に設けられている。
第1目盛部41aは、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面において、中心位置標識部43に対して、ベースハウジング13の長手方向における一方側に設けられている。また、第1目盛部41aは、ベースハウジング13の長手方向に沿って等間隔に配置された複数の目盛線を含んで構成されている。そして、本実施形態では、第1目盛部41aにおける複数の目盛線は、1mm(ミリメートル)ピッチでベースハウジング13の長手方向に沿って等間隔に並んだ線として構成されている。尚、第1目盛部41aの各目盛線は、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に刻印された目印線として設けられている。第1目盛部41aの各目盛線は、例えば、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に対してレーザーマーキングにより刻印されることにより設けられている。
また、第1目盛部41aにおける各目盛線は、中心位置標識部43からの距離寸法を表すための線として構成されている。そして、第1目盛部41aにおける複数の目盛線のうちの一部の目盛線であって所定の間隔で配置された目盛線に対して、中心位置標識部43からの距離寸法を数字で表した刻印が、それらの目盛線に対応した位置に設けられている。本実施形態では、第1目盛部41aにおける複数の目盛線のうち10mmの間隔で配置された目盛線に対して、中心位置標識部43からの距離寸法を数字で表した刻印が、それらの目盛線に対応した位置に設けられている。より具体的には、中心位置標識部43から20mm、30mm、40mm、50mmの距離寸法の位置に対応する目盛線に対応する位置に、「20」、「30」、「40」、「50」の数字がそれぞれ刻印された形態が例示されている。
第2目盛部41bは、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面において、中心位置標識部43に対して、ベースハウジング13の長手方向における他方側に設けられている。即ち、第2目盛部41bは、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面において、中心位置標識部43に対して、ベースハウジング13の長手方向における第1目盛部41aとは反対側に設けられている。
また、第2目盛部41bは、ベースハウジング13の長手方向に沿って等間隔に配置された複数の目盛線を含んで構成されている。そして、本実施形態では、第2目盛部41bにおける複数の目盛線は、1mm(ミリメートル)ピッチでベースハウジング13の長手方向に沿って等間隔に並んだ線として構成されている。尚、第2目盛部41bの各目盛線は、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に刻印された目印線として設けられている。第2目盛部41bの各目盛線は、例えば、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に対してレーザーマーキングにより刻印されることにより設けられている。
また、第2目盛部41bにおける各目盛線は、中心位置標識部43からの距離寸法を表すための線として構成されている。そして、第2目盛部41bにおける複数の目盛線のうちの一部の目盛線であって所定の間隔で配置された目盛線に対して、中心位置標識部43からの距離寸法を数字で表した刻印が、それらの目盛線に対応した位置に設けられている。本実施形態では、第2目盛部41bにおける複数の目盛線のうち10mmの間隔で配置された目盛線に対して、中心位置標識部43からの距離寸法を数字で表した刻印が、それらの目盛線に対応した位置に設けられている。より具体的には、中心位置標識部43から20mm、30mm、40mm、50mmの距離寸法の位置に対応する目盛線に対応する位置に、「20」、「30」、「40」、「50」の数字がそれぞれ刻印された形態が例示されている。
指標部42は、一対のアンクルアーム(14a、14b)に設けられている。そして、指標部42は、一対のアンクルアーム(14a、14b)が足首を挟んだ際に目盛部41における足首の幅寸法に対応する位置を指標するように構成されている。また、指標部42は、第1指標部42aと第2指標部42bとを含んで構成されている。
第1指標部42aは、アンクルアーム14aの固定部38aにおいて、ベースハウジング13の壁部37aの外表面と同じ方向を向いた所定の端面(即ち、壁部37aの外表面と法線方向が同じ所定の端面)に設けられている。また、第1指標部42aは、固定部38aの所定の端面において、アンクルアーム14aの平板部32における足首に当接する面に対応する位置に設けられている。更に、第1指標部42aは、固定部38aの所定の端面において、アンクルアーム14aの平板部32における足首に当接する面に沿って延びる直線状の1本の目印線として設けられている。第1指標部42aは、例えば、固定部38aの所定の端面に対してレーザーマーキングにより刻印されることにより設けられている。
第2指標部42bは、アンクルアーム14bの固定部38bにおいて、ベースハウジング13の壁部37aの外表面と同じ方向を向いた所定の端面(即ち、壁部37aの外表面と法線方向が同じ所定の端面)に設けられている。また、第2指標部42bは、固定部38bの所定の端面において、アンクルアーム14bの平板部32における足首に当接する面に対応する位置に設けられている。更に、第2指標部42bは、固定部38bの所定の端面において、アンクルアーム14bの平板部32における足首に当接する面に沿って延びる直線状の1本の目印線として設けられている。第2指標部42bは、例えば、固定部38bの所定の端面に対してレーザーマーキングにより刻印されることにより設けられている。
幅測定部15によって足首の幅寸法が測定される際には、まず、術者の操作によって一対のアンクルアーム(14a、14b)が十分に離間した状態で、一対のアンクルアーム(14a、14b)の間に患者の足首が配置される。そして、一対のアンクルアーム(14a、14b)に対して術者によって加えられた力が解除される。これにより、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力によって、一対のアンクルアーム(14a、14b)が、それらの平板部32において足首に当接する位置まで、ベースハウジング13に対してスライド移動しながら、付勢される。これにより、一対のアンクルアーム(14a、14b)によって、足首が両側から挟み込まれることになる。
上記のように一対のアンクルアーム(14a、14b)が足首を両側から挟んだ状態においては、第1指標部42aは、足首にアンクルアーム14aが当接した位置に対応する第1目盛部41aにおける所定の位置を指標する。同様に、第2指標部42bは、足首にアンクルアーム14bが当接した位置に対応する第2目盛部41bにおける所定の位置を指標する。
そして、術者によって、第1指標部42aが指標した第1目盛部41aにおける目盛線によって特定される中心位置標識部43からの距離寸法と、第2指標部42bが指標した第2目盛部41bにおける目盛線によって特定される中心位置標識部43からの距離寸法とが、読み取られる。術者は、読み取った上記の2つの距離寸法を合計することで(即ち、読み取った上記の2つの距離寸法の和を求めることで)、足首の幅寸法の測定結果を把握することができる。即ち、第1指標部42aによって指標された距離寸法と第2指標部42bによって指標された距離寸法とを合計した寸法値が、測定された足首の幅寸法となる。このように、幅測定部15は、一対のアンクルアーム(14a、14b)間の距離に基づいて足首の幅寸法を測定可能に構成されている。
尚、前述のように、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、ベースハウジング13の長手方向における中央に配置されたピニオン35の軸心の位置に対応する中心位置標識部43を中心として対称に変位する。そして、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、ベースハウジング13の長手方向における中央に配置されたピニオン35の軸心からの距離(即ち、中心位置標識部43からの距離)が、ベースハウジング13の長手方向と平行な方向におけるどの位置においても、同じ距離となる。このため、術者は、第1指標部42aによって指標された距離寸法と第2指標部42bによって指標された距離寸法とを合計せず、いずれか一方の距離寸法を2倍にした寸法数値を足首の幅寸法の測定結果として利用してもよい。
[支持部位置指標部]
図1、図2、図4乃至図9に示す支持部位置指標部18は、ベースハウジング13及び支持部12に設けられている。そして、支持部位置指標部18は、一対のアンクルアーム(14a、14b)で挟まれた足首の内外側方向における中心位置に対する支持部12の相対位置を指標するように構成されている。そして、支持部位置指標部18は、ベースハウジング13に設けられた相対位置目盛45と、支持部12に設けられた相対位置指示線46と、を含んで構成されている。
相対位置目盛45は、ベースハウジング13のハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に設けられている。そして、相対位置目盛45は、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面において、中心位置標識部43を中心としてベースハウジング13の長手方向における両側に設けられている。尚、相対位置目盛45は、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面において、幅測定部15の目盛部41が設けられている側の縁部分とは逆側の縁部分に沿って設けられている。
また、相対位置目盛45は、中心位置標識部43を中心としてその両側のそれぞれにおいてベースハウジング13の長手方向に沿って等間隔に配置された複数の目盛線を含んで構成されている。そして、本実施形態では、相対位置目盛45における複数の目盛線は、1mm(ミリメートル)ピッチでベースハウジング13の長手方向に沿って等間隔に並んだ線として構成されている。よって、相対位置目盛45における複数の目盛線は、中心位置標識部43からベースハウジング13の長手方向の一方側に向かって等間隔に並んで設けられるとともに、中心位置標識部43からベースハウジング13の長手方向の他方側にも向かって等間隔に並んで設けられている。尚、相対位置目盛45の各目盛線は、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に刻印された目印線として設けられている。相対位置目盛45の各目盛線は、例えば、ハウジング本体部13aの壁部37aの外表面に対してレーザーマーキングにより刻印されることにより設けられている。
また、相対位置目盛45における各目盛線は、中心位置標識部43からの距離寸法を表すための線として構成されている。そして、相対位置目盛45における複数の目盛線のうちの一部の目盛線であって所定の間隔で配置された目盛線に対して、中心位置標識部43からの距離寸法を数字で表した刻印が、それらの目盛線に対応した位置に設けられている。本実施形態では、相対位置目盛45における複数の目盛線のうち10mmの間隔で配置された目盛線に対して、中心位置標識部43からの距離寸法を数字で表した刻印が、それらの目盛線に対応した位置に設けられている。より具体的には、中心位置標識部43から10mm、20mmの距離寸法の位置に対応する目盛線に対応する位置に、「10」、「20」の数字がそれぞれ刻印された形態が例示されている。尚、相対位置目盛45に対応して設けられた距離寸法の刻印の一部は、幅測定部15の目盛部41に対応して設けられた距離寸法の刻印の一部と兼用されている。
相対位置指示線46は、支持部12の連結機構12fのスライダ28に設けられている。そして、相対位置指示線46は、スライダ28において、ベースハウジング13の壁部37aの外表面と同じ方向を向いた所定の端面(即ち、壁部37aの外表面と法線方向が同じ所定の端面)に設けられている。また、相対位置指示線46は、スライダ28の所定の端面において、ベースハウジング13の長手方向に直交する方向と平行な方向に沿って延びる直線状の1本の目印線として設けられている。また、相対位置指示線46は、長手方向を有する支持部12の中心軸線方向と直交する方向に沿って延びる目印線として設けられている。尚、支持部12の中心軸線方向は、第1ロッド12c及び第2ロッド12dの中心軸線方向として構成されている。また、相対位置指示線46は、例えば、スライダ28の所定の端面に対してレーザーマーキングにより刻印されることにより設けられている。
支持部位置指標部18が用いられる際には、まず、手術器具1が脛骨100に沿って設置され、一対のアンクルアーム(14a、14b)によって足首が両側から挟み込まれる。一対のアンクルアーム(14a、14b)は中心位置標識部43を中心として対称な位置に位置するため、一対のアンクルアーム(14a、14b)によって足首が挟まれた状態では、中心位置標識部43は、足首の内外側方向における中心位置に一致して対応する位置に位置している。
そして、上記の状態で、術者が、ベースハウジング13に対して支持部12を足首の内外側方向と平行な方向に沿って所望の位置までスライド移動させる。即ち、長手方向が足首の内外側方向と平行な方向に沿って延びるベースハウジング13に対して、ベースハウジング13の長手方向に沿ってスライダ28とともに支持部12が術者の所望の位置までスライド移動される。術者は、支持部12をベースハウジング13に対してスライド移動させることで、骨切りガイド部11を脛骨の近位側の端部100aに対して所望の位置に移動させる。
支持部12のベースハウジング13に対するスライド移動が完了した状態では、相対位置指示線46は、相対位置目盛45における所定の位置を指示する。相対位置指示線46によって指示された相対位置目盛45における所定の位置は、足首の内外側方向の中心位置に対応する位置に位置する中心位置標識部43に対する支持部12の相対位置となる。術者は、相対位置指示線46が指示した相対位置目盛45における所定の位置の目盛線によって特定される中心位置標識部43からの距離寸法を読み取ることで、足首の内外側方向における中心位置に対する支持部12の相対位置を把握することができる。このように、支持部位置指標部18は、足首の内外側方向における中心位置に対する支持部12の相対位置を指標するように構成されている。
[手術器具の使用形態]
手術器具1は、人工膝関節置換術において脛骨100の近位側の端部100aの骨切り(骨の切断)が行われる際に使用される。脛骨100の近位側の端部100aの骨切りの際には、手術器具1が、脛骨100に沿って設置され、脛骨100の骨切りラインが決定される。そして、手術器具1と骨切り具とが用いられ、決定された骨切りラインに基づいて、脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが行われる。
上記の骨切りに際して、患者の足に対して脛骨100に沿って手術器具1が設置される際には、まず、術者の操作によって一対のアンクルアーム(14a、14b)が十分に離間した状態で、一対のアンクルアーム(14a、14b)の間に患者の足首が配置される。そして、一対のアンクルアーム(14a、14b)に対して術者によって加えられた力が解除される。これにより、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力によって、一対のアンクルアーム(14a、14b)が、ベースハウジング13に対してスライド移動する。そして、一対のアンクルアーム(14a、14b)によって、足首が両側から挟み込まれる。
一対のアンクルアーム(14a、14b)によって足首が両側から挟まれた状態においては、指標部42によって目盛部41における足首の幅寸法に対応する位置が指標される。目盛部41における足首の幅寸法に対応する位置の指標部42による指標結果に基づいて、足首の幅寸法が測定される。
また、術者は、支持部12の連結機構12f、長さ調整機構12e、位置調整機構12b、及び揺動角度調整機構12aの操作を行う。更に、術者は、ベースハウジング13に対して支持部12をスライド移動させる操作を行う。これらの操作により、術者は、骨切りガイド部11のスリット11aを脛骨100の近位側の端部100aに対して所望の位置に位置させ、前額面において脛骨100の関節中心と所定の目標位置とを結ぶラインに直交するように脛骨100の骨切りラインを決定する。
尚、連結機構12fの操作においては、術者は、連結ブロック26を連結軸27に対して所望の位置まで相対変位させ、位置固定ボタン26aを操作し、連結ブロック26の連結軸27に対する位置を上記の所望の位置において固定する。長さ調整機構12eの操作においては、術者は、支持部12が所望の長さとなるように、第2ロッド12dを第1ロッド12cに対して所望の位置まで相対変位させ、第2ロッド12dの第1ロッド12cに対する位置を上記の所望の位置において固定する。位置調整機構12bの操作においては、術者は、スライド軸部24を第1ロッド12cに対してスライド移動させ、骨切りガイド部11及び揺動角度調整機構12aを第1ロッド12cに対して所望の位置まで相対変位させる。そして、位置固定操作部25を操作し、骨切りガイド部11等の第1ロッド12cに対する位置を上記の所望の位置に固定する。揺動角度調整機構12aの操作においては、術者は、骨切りガイド部11及び支持台部23とともに揺動アーム21を位置調整機構12bに対して所望の角度位置まで揺動させる。そして、角度固定操作部22を操作し、骨切りガイド部11等の位置調整機構12bに対する角度位置を上記の所望の角度位置に固定する。
ベースハウジング13に対して支持部12をスライド移動させる操作においては、術者は、ベースハウジング13に対して支持部12を足首の内外側方向と平行な方向に沿って所望の位置までスライド移動させる。このとき、術者は、脛骨100の骨切りラインを特定することになる骨切りガイド部11のスリット11aが延びる方向が、患者の前額面において脛骨100の関節中心と所定の目標位置とを結ぶラインに直交するように、ベースハウジング13に対して支持部12を足首の内外側方向と平行な方向に沿って所望の位置までスライド移動させる操作を行う。また、このとき、術者は、幅測定部15を用いた測定結果に基づいて、上記の所定の目標位置を特定し、ベースハウジング13に対して支持部12を足首の内外側方向と平行な方向に沿って所望の位置までスライド移動させる操作を行う。また、このとき、術者は、支持部位置指標部18による指標結果に基づいて、ベースハウジング13に対して支持部12を足首の内外側方向と平行な方向に沿って所望の位置までスライド移動させる操作を行う。即ち、術者は、足首の内外側方向における中心位置に対する支持部12の相対位置についての支持部位置指標部18による指標結果を参照しながら、ベースハウジング13に対して支持部12を所望の位置までスライド移動させる。
上記のように、術者は、幅測定部15を用いた測定結果に基づいて、更に、支持部位置指標部18による指標結果にも基づいて、前額面において脛骨100の関節中心と所定の目標位置とを結ぶラインに直交するように脛骨100の骨切りラインを決定する際のその所定の目標位置を設定することができる。
具体的には、術者は、脛骨100の骨切りラインを決定する際の上記の所定の目標位置として、足首の内外側方向の寸法である幅寸法に基づいて特定される位置を容易に選択することができる。例えば、上記の所定の目標位置として、足首の幅寸法に対する所定の比率の寸法だけ足首の幅方向の中心位置から内外側方向にずれた位置、或いは、足首の幅寸法との関係で決定される所定の寸法だけ足首の幅方向の中心位置から内外側方向にずれた位置、等の種々の位置を容易に選択することができる。更に例示すると、例えば、上記の所定の目標位置として、足首の幅寸法に対する5%の比率の寸法だけ足首の幅方向の中心位置から内外側方向における内側にずれた位置、或いは、足首の幅寸法が成人の平均の足首幅寸法から所定の範囲内に収まる場合であれば足首の幅方向の中心位置から内外側方向における内側に4mmずれた位置、などの種々の位置を容易に選択することができる。
上記のように、幅測定部15を用いた測定結果、及び、支持部位置指標部18による指標結果に基づいて、脛骨100の骨切りラインを決定する際の上記の所定の目標位置が設定され、脛骨100の骨切りラインが決定される。そして、骨切りガイド部11のスリット11aが脛骨100の近位側の端部100aに対して術者の所望の位置に位置し、脛骨100の骨切りラインが決定されると、骨切りガイド部11の脛骨100の近位側の端部100aに対する位置が固定される。
尚、支持部12には、支持部12における骨切りガイド部11が支持されている側の端部において、位置固定用ロッド47が設けられている(図1乃至図3を参照)。脛骨100に対して刺し込まれて係合するピン部材が、位置固定用ロッド47に取り付けられるとともに脛骨100に対して刺し込まれることで、支持部12の端部の脛骨100の近位側の端部100aに対する位置が固定されるとともに、骨切りガイド部11の脛骨100の近位側の端部100aに対する位置が固定される。
脛骨100の骨切りラインが決定されて、骨切りガイド部11の脛骨100の近位側の端部100aに対する位置が固定されると、骨切りガイド部11によって切断方向がガイドされながら、脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが行われる。即ち、骨切りガイド部11のスリット11aに骨切り具が挿入され、その状態で骨切り具が操作される。そして、骨切り具がスリット11aに沿って移動しながら、即ち、スリット11aによって骨切り具による脛骨100の近位側の端部100aの切断方向がガイドされながら、脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが行われる。
脛骨100の近位側の端部100aの骨切りが完了すると、脛骨100の近位側の端部100aにインプラントの設置面100bが形成される(図2を参照)。インプラントの設置面100bが形成されると、手術器具1が患者の足から取り外され、インプラントの設置作業が行われることになる。
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の手術器具1によると、骨切りガイド部11を支持する支持部12に対してベースハウジング13が取り付けられ、ベースハウジング13に対して、足首を両側から挟むように配置される一対のアンクルアーム(14a、14b)がスライド移動自在に装着される。更に、手術器具1には、一対のアンクルアーム(14a、14b)を連動させてスライド移動させる連動機構16と、アンクルアーム(14a、14b)のスライド移動方向における一対のアンクルアーム(14a、14b)間の中心位置を示す中心位置標識部43と、が備えられている。このため、一対のアンクルアーム(14a、14b)を足首の内外側方向と平行な方向に沿って対称的に均等に変位させることができる。これにより、骨切りガイド部11によって脛骨の近位側の端部の切断方向をガイドする際の脛骨の骨切りラインの決定に際し、手術を行う術者は、アンクルアーム(14a、14b)間の中心位置を示す中心位置標識部43を用いて、足首の幅方向すなわち内外側方向の中心位置を容易に確認することができる。そして、術者は、前額面において脛骨の関節中心と所定の目標位置とを結ぶラインに直交するように脛骨の骨切りラインを決定する際のその所定の目標位置を種々の位置に容易に設定することができる。即ち、前額面において脛骨の関節中心と所定の目標位置とを結ぶラインに直交するように脛骨の骨切りラインを決定する際の上記の所定の目標位置として、第二中足骨だけではなく、足首の幅方向すなわち内外側方向の中心位置から内外側方向に所定の寸法だけずれた位置、等の位置を容易に選択することができる。
以上説明したように、本実施形態によると、前額面において脛骨100の関節中心と所定の目標位置とを結ぶラインに直交するように脛骨100の骨切りラインを決定する際のその所定の目標位置を種々の位置に容易に設定することを可能にする手術器具1を提供することができる。
また、本実施形態によると、手術器具には、一対のアンクルアーム(14a、14b)で挟まれた足首の内外側方向の寸法である幅寸法を測定するための幅測定部15が備えられている。これにより、骨切りガイド部11によって脛骨100の近位側の端部100aの切断方向をガイドする際の脛骨100の骨切りラインの決定に際し、手術を行う術者は、幅測定部15を用いて、ベースハウジング13にスライド移動自在に装着された一対のアンクルアーム(14a、14b)で挟まれた足首の内外側方向の寸法である幅寸法を測定することができる。そして、術者は、幅測定部15を用いた測定結果に基づいて、前額面において脛骨100の関節中心と所定の目標位置とを結ぶラインに直交するように脛骨100の骨切りラインを決定する際のその所定の目標位置を種々の位置に容易に設定することができる。即ち、前額面において脛骨100の関節中心と所定の目標位置とを結ぶラインに直交するように脛骨100の骨切りラインを決定する際の上記の所定の目標位置として、第二中足骨だけではなく、足首の内外側方向の寸法である幅寸法に基づいて特定される位置を容易に選択することができる。例えば、上記の所定の目標位置として、足首の幅寸法に対する所定の比率の寸法だけ足首の幅方向の中心位置から内外側方向にずれた位置、或いは、足首の幅寸法との関係で決定される所定の寸法だけ足首の幅方向の中心位置から内外側方向にずれた位置、等の種々の位置を容易に選択することができる。
また、本実施形態によると、ベースハウジング13にスライド移動自在に装着された一対のアンクルアーム(14a、14b)が足首を挟み込んだ際におけるその一対のアンクルアーム(14a、14b)間の距離に基づいて足首の幅寸法が測定される。このため、一対のアンクルアーム(14a、14b)で足首を挟むとともに同時に足首の幅寸法を測定できる簡素な構成により、容易に、足首の幅寸法を測定することができる。
また、本実施形態によると、一対のアンクルアーム(14a、14b)が足首を挟んだ際に一対のアンクルアーム(14a、14b)側の指標部42がベースハウジング13側の目盛部41における足首の幅寸法に対応する位置を指標することで、足首の幅寸法が測定される。このため、ベースハウジング13に目盛部41を設けるとともに、一対のアンクルアーム(14a、14b)に指標部42を設けた簡素な構成により、足首の幅寸法を測定するための幅測定部15を構成することができる。
また、本実施形態によると、術者は、足首を挟み込む一対のアンクルアーム(14a、14b)が装着されたベースハウジング13に対して支持部12をアンクルアーム(14a、14b)のスライド移動方向と平行な方向に移動させることで、支持部12ベースハウジング13に対して足首の内外側方向と平行な方向に沿ってスライド移動させることができる。そして、術者は、ベースハウジング13及び支持部12に設けられた支持部位置指標部18によって、足首の内外側方向における中心位置に一致している中心位置標識部43に対する支持部12の相対位置を把握することができる。このため、脛骨100の骨切りラインの決定の際に、術者は、骨切りガイド部11を支持する支持部12をベースハウジング13に対してスライド移動させた際におけるその支持部12の足首内外側方向中心位置に対する相対位置も容易に考慮することができる。よって、前額面において脛骨100の関節中心と所定の目標位置とを結ぶラインに直交するように脛骨100の骨切りラインを決定する際のその所定の目標位置を種々の位置に更に容易に設定することができる。
また、本実施形態によると、脛骨100の骨切りラインの決定の際に支持部12の足首内外側方向中心位置に対する相対位置を術者が容易に考慮することができるための支持部位置指標部18の構成を、ベースハウジング13に相対位置目盛45を設け、支持部12に相対位置指示線46を設けた簡素な構造によって、実現することができる。
また、本実施形態によると、ベースハウジング13に対して一対のアンクルアーム(14a、14b)を付勢する一対のバネ部(17a、17b)によって、一対のアンクルアーム(14a、14b)が互いに接近する方向に付勢される。このため、足首の挟み込み動作の際に、一対のバネ部(17a、17b)のバネ力によって、一対のアンクルアーム(14a、14b)が自動的に足首を挟み込むように、一対のアンクルアーム(14a、14b)を作動させることができる。
また、本実施形態によると、一対のアンクルアーム(14a、14b)を足首の内外側方向と平行な方向に沿って対称的に均等に変位させる連動機構16を、ラックアンドピニオン機構16aを用いた簡素な構成によって容易に実現することができる。
また、本実施形態によると、一対のアンクルアーム(14a、14b)のそれぞれにおいて、足首に当接する面に複数の凹凸溝32aが設けられている。このため、一対のアンクルアーム(14a、14b)は、複数の凹凸溝32aにおいて足首に係止し、より安定した状態で足首を挟み込むことができる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)前述の実施形態においては、幅測定部が、ベースハウジングに設けられた目盛部と、一対のアンクルアームに設けられて一対のアンクルアームが足首を挟んだ際に目盛部における足首の幅寸法に対応する位置を指標する指標部と、を含んで構成された形態を例示したが、この通りでなくてもよい。例えば、一対のアンクルアーム間の距離を検出する検出部と、検出部での検出結果に基づいて足首の幅寸法を表示する表示部と、を含んで構成された幅測定部の形態が実施されてもよい。上記の検出部としては、例えば、一対のアンクルアーム間の距離を検出する接触式又は非接触式の距離センサが用いられてもよい。また、上記の表示部としては、検出部での検出結果に基づいて足首の幅寸法を演算する演算部と、この演算部での演算結果を表示するモニタと、を有する形態が実施されてもよい。また異なる方式の複数の幅測定部が併存して設けられる形態が実施されてもよい。
(2)前述の実施形態においては、ベースハウジングに対して一対のアンクルアームを連動させてスライド移動させる連動機構として、ラックアンドピニオン機構を含んで構成された形態を例示したが、この通りでなくてもよい。例えば、ベースハウジングに対して軸心回りに回転自在に支持された回転軸部と、この回転軸部の回転運動をベースハウジングの長手方向に平行な方向の直線運動に変換して一対のアンクルアームに伝達するとともに一対のアンクルアームを互いに接近する方向又は離間する方向に駆動する直線駆動部と、を含んで構成された連動機構の形態が実施されてもよい。上記の直線駆動部としては、例えば、回転軸部の外周に設けられた一対の螺旋溝と、一対の螺旋溝のそれぞれに対して摺動自在に嵌め込まれるとともに一対のアンクルアームのそれぞれに対して取り付けられる一対の摺動部材と、を含んだ形態が実施されてもよい。
(3)前述の実施形態においては、連動機構と一対のバネ部とを有する手術器具の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、バネ部は一対ではなく少なくとも一つであってもよい。また例えば、連動機構を備えているが一対のバネ部を備えていない手術器具の形態が実施されてもよい。