本発明は多くの異なる形態で具体化できるが、本明細書に開示されているのはその特別な説明用の実施態様であり、そこには本発明の原理が例示されている。本発明が、例示した特定の実施態様に限定されないことは、強調されるべきである。さらに、本明細書で用いられているあらゆる項目の見出しは、構成を整えることだけを目的としており、記載されている主題を制限すると見なしてはならない。
特に断わらない限り、本発明との関連で用いられている科学技術用語は、当業者が一般に理解している意味を持つものとする。さらに、文脈からそうでないことが必要とされるのでなければ、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含む。より具体的には、本明細書と添付の請求項で用いられている単数形の「1つの」と「その」は、分脈から明らかに異なることがわかる場合を除いて複数を含む。したがって例えば「1つのタンパク質」への言及は複数のタンパク質を含み、「1個の細胞」への言及は複数個の細胞を含み、といった具合である。本出願では、「または」の使用は「および/または」を意味するが、それとは異なる記載がある場合は別である。さらに、「含んでいる」という用語と、「含む」、「含まれる」などの他の形態は、含むものを限定していない。それに加え、本明細書と添付の請求項に提示されている範囲は、2つある端点の両方と、これら端点の間のあらゆる点を含む。
一般に、本明細書に記載されている細胞と組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質と核酸の化学、ハイブリダイゼーションの関連で用いられている用語法とこれらに関する技術は、本分野で周知かつ一般に使用されている用語法と技術である。本開示の方法と技術は、一般に、本分野で周知であって本明細書全体を通じて引用され議論されているさまざまな一般的な参考文献とより具体的な参考文献に記載されている従来からの方法に従って実施されるが、そうでないことが示されている場合は別である。例えばAbbas他、『Cellular and Molecular Immunology』、第6版、W.B. Saunders Company社(2010年); Sambrook J.とRussell D.『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州(2000年);Ausubel他、『Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology』、Wiley, John & Sons, Inc.社(2002年);HarlowとLane『Using Antibodies: A Laboratory Manual』、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州(1998年);Coligan他、『Short Protocols in Protein Science』、Wiley, John & Sons, Inc.社(2003年)を参照されたい。本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学、医薬化学に関係して用いられている用語法と、これらに関する実験室での手続きと技術は、本分野で周知であって一般に使用されている。さらに、本明細書で用いられている項目のどの見出しも構成を整えることだけを目的としており、記載されている主題を制限すると解釈してはならない。
定義
本発明をよりよく理解するため、関連する用語の定義と説明を以下に提示する。
「抗体」または「Ab」という用語は、本明細書では、一般に、共有ジスルフィド結合と非共有相互作用によって互いに結合した2本の重(H)ポリペプチド鎖と2本の軽(L)ポリペプチド鎖を含むY字形の四量体タンパク質を意味する。抗体の軽鎖はκ軽鎖とλ軽鎖に分類することができる。重鎖はμ、δ、γ、α、εに分類することができ、これらは抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、IgEとして規定している。軽鎖と重鎖では、可変領域が、約12個以上のアミノ酸からなる「J」領域を介して定常領域に連結されており、重鎖は、約3個以上のアミノ酸からなる「D」領域を含んでいる。それぞれの重鎖は重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2、CH3)からなる。それぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)からなる。VH領域とVL領域はさらに複数の超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に分割することができ、これら超可変領域は、比較的保存された領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)によって隔てられている。それぞれのVHとVLは3つのCDRと4つのFRからなり、これらがN末端からC末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番で並んでいる。それぞれの重/軽鎖ペアの可変領域(VHとVL)はそれぞれ抗原結合部位を形成する。さまざまな領域またはドメインの中のアミノ酸の分布は、「免疫学的に興味あるタンパク質のKabat配列」(国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州(1987年と1991年))またはChothiaとLesk(1987年)J. Mol. Biol. 第196巻:901~917ページ;Chothia他(1989年)Nature第342巻:878~883ページ)の定義に従う。抗体として異なる抗体アイソタイプのものが可能であり、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4というサブタイプ)、IgA(例えばIgA1、IgA2というサブタイプ)、IgD、IgE、IgMという抗体がある。
抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合断片」という用語は、本出願の文脈では交換可能に用いることができ、完全長抗体の断片を含むポリペプチドを意味し、このポリペプチドは、完全長抗体が特異的に結合する抗原に特異的に結合する能力を保持している、および/または同じ抗原への結合が完全長抗体と競合する。一般に、『Fundamental Immunology』、第7章(Paul, W.編、第2版、Raven Press社、ニューヨーク(1989年)を参照されたい(あらゆる目的で参照によって本明細書に組み込まれている)。抗体の抗原結合断片は、組み換えDNA技術によって、または完全な抗体の酵素による切断または化学的切断によって生成させることができる。いくつかの条件下では、抗原結合断片に、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(例えばscFv)、キメラ抗体、ディアボディが含まれるとともに、抗体の少なくとも一部を含んでいて、その部分が特異的な抗原結合能力を与えるのに十分であるようなポリペプチドが含まれる。抗体の抗原結合断片は、所与の抗体(例えば本出願に提示されているモノクローナル抗ヒトTIM-3抗体)から当業者に知られている従来の技術(例えば組み換えDNA技術、酵素で切断する方法、化学的に切断する方法)によって得ることができ、特異性に関するスクリーニングを、完全な抗体をスクリーニングするのと同様にして実現することができる。
「モノクローナル抗体」または「mAb」という用語は、本明細書では、分子組成が単一である抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性と親和性を示す。
「ヒト化抗体」という用語は、その抗体に含まれる別の哺乳動物種(マウスなど)の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を意味することが想定されている。フレームワーク領域の追加の改変をヒトフレームワーク配列の中で実施することができる。
「キメラ抗体」という用語は、本明細書では、可変領域の配列が1つの種に由来し、定常領域の配列が別の種に由来する抗体を意味する。それは例えば、可変領域の配列がマウス抗体に由来し、定常領域の配列がヒト抗体に由来する抗体である。
「組み換え抗体」という用語は、本明細書では、組み換え手段によって調製される抗体、発現される抗体、作製される抗体、単離される抗体のいずれかを意味し、その例は、別の種の免疫グロブリン遺伝子を導入したトランスジェニック動物から単離された抗体、または宿主細胞にトランスフェクトした組み換え発現ベクターを用いて発現させた抗体、または組み換えコンビナトリアルライブラリから単離した抗体、または免疫グロブリン配列を他のDNA配列に接合することを含む任意の他の手段によって調製するか、発現させるか、作製するか、単離した抗体である。
「抗TIM-3抗体」または「TIM-3抗体」または「TIM-3に対する抗体」という用語は、本明細書では、TIM-3受容体(例えばヒトTIM-3受容体)に結合することのできる本明細書で定義した抗体を意味する。
「TIM-3」、「TIM-3受容体」、「TIM-3タンパク質」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、TIMファミリーの1つのメンバーであり、IFNγを分泌する活性化されたTh1細胞および細胞傷害性CD8 T細胞と、樹状細胞(DC)と、単球と、NK細胞の表面で選択的に発現する。「TIM-3」は、V型のN末端Igドメインの後に、潜在的なグリコシル化部位を含むムチンドメインを有するI型膜貫通タンパク質である。
「Ka」という記号は、本明細書では、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を意味することが想定されているのに対し、「Kd」という記号は、本明細書では、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を意味することが想定されている。抗体のKd値は、本分野でよく確立されている方法を用いて求めることができる。「KD」という記号は、本明細書では、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を意味することが想定されていて、Kaに対するKdの比(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表わされる。抗体のKdを求めるための好ましい1つの方法は、表面プラズモン共鳴を利用する方法であり、バイオセンサーシステム(Biacore(登録商標)システムなど)を用いることが好ましい。
IgG抗体に関する「高親和性」という用語は、本明細書では、標的抗原(例えばTIM-3受容体)に対するKDが1×10-7 M以下、より好ましくは5×10-8 M以下、より一層好ましくは1×10-8 M以下、より一層好ましくは5×10-9 M以下、より一層好ましくは1×10-9 M以下の抗体を意味する。
本明細書で用いられている「EC50」という記号は、「半数効果濃度」とも呼ばれており、指定された曝露時間の後にベースラインと最大値の間の中間の応答を誘導する薬、抗体、毒素いずれかの濃度を意味する。本出願の文脈では、EC50は「nM」を単位として表わされる。
「結合が競合する」という表現は、本明細書では、1つの結合標的に結合する際の2つの抗体の相互作用を意味する。第1の抗体が第2の抗体と結合が競合するのは、第1の抗体によるこの第1の抗体のコグネイトエピトープへの結合が、第2の抗体の存在下では、第2の抗体なしでの第1の抗体の結合と比べて検出可能な程度に減少する場合である。その代わりに第2の抗体によるこの第2の抗体のエピトープへの結合も第1の抗体の存在下で検出可能な程度に減少する場合がありうるが、必ずしもそうとは限らない。すなわち第1の抗体は、第2の抗体がこの第2の抗体のエピトープに結合することを抑制できるが、第2の抗体は、第1の抗体がこの第1の抗体のそれぞれのエピトープに結合することを抑制はしない。しかしそれぞれの抗体が、他方の抗体がこの抗体のコグネイトエピトープに結合するのを、同じ程度にであれ、より大きな程度にであれ、より小さな程度にであれ、検出可能に抑制する場合、これらの抗体は、これら抗体それぞれのエピトープへの結合に関して互いに「交差競合する」と言われる。
「結合を抑制する」能力という表現は、本明細書では、抗体またはその抗原結合断片が2個の分子の結合を任意の検出可能なレベルまで抑制する能力を意味する。いくつかの実施態様では、2個の分子の結合を抗体またはその抗原結合断片によって少なくとも50%抑制することができる。いくつかの実施態様では、そのような抑制効果は、60%超、または70%超、または80%超、または90%超である可能性がある。
「エピトープ」という用語は、本明細書では、抗原の表面にあって免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する部分を意味する。「エピトープ」は「抗原決定基」としても知られる。エピトープまたは抗原決定基は一般に分子(アミノ酸、炭水化物、糖側鎖など)の化学的に活性な表面基からなり、一般に特定の三次元構造と特定の電荷特性を持つ。例えばエピトープは一般に少なくとも3個、または4個、または5個、または6個、または7個、または8個、または9個、または10個、または11個、または12個、または13個、または14個、または15個の連続しているか不連続のアミノ酸を独自の立体配置で含んでおり、その立体配置は「直線状」または「立体的」である可能性がある。例えば『Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology』、第66巻、G.E. Morris編(1996年)を参照されたい。直線状エピトープでは、タンパク質と相互作用分子(例えば抗体)の間のあらゆる相互作用部位が、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線状に存在する。立体的エピトープでは、相互作用部位は、タンパク質の中で互いに離れているアミノ酸残基にまたがる。抗体は、当業者に知られている従来からの技術により、同じエピトープへの結合の競合性に応じてスクリーニングすることができる。例えば競合または交差競合に関する研究を実施して、抗原(例えばRSV融合タンパク質)への結合が互いに競合または交差競合する抗体を取得することができる。同じエピトープに結合する抗体を得るためのハイスループット法は交差競合に基づいており、国際特許出願WO 03/48731に記載されている。
「単離された」という用語は、本明細書では、天然の状態から人工的手段によって得られた状態を意味する。ある「単離された」物質または成分が自然界に存在している場合、その自然環境が変化するという理由と、その物質が自然環境から単離されるという理由の一方または両方でそれが可能である。例えば単離されていないあるポリヌクレオチドまたはポリペプチドが生きているある動物の体内に存在しているとき、そのような天然の状態から高純度で単離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドと呼ばれる。「単離された」という用語から除外されるのは、人工物質または合成された物質の混合物や、単離された物質の活性に影響を与えない他の不純な物質である。
「単離された抗体」という用語は、本明細書では、異なる抗原特異性を持つ他の抗体を含まない抗体を意味することが想定されている(例えばTIM-3に特異的に結合する単離された抗体は、TIM-3タンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を含まない)。しかしヒトTIM-3タンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(他の種からのTIM-3タンパク質など)との交差反応性を有する可能性がある。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化合物を含まないようにすることができる。
「ベクター」という用語は、本明細書では、ポリヌクレオチドを中に挿入することができる核酸担体を意味する。中に挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現がこのベクターによって可能になるとき、このベクターは発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、担持している遺伝材料エレメントを、宿主細胞の形質転換、宿主細胞への形質導入、宿主細胞へのトランスフェクションのいずれかによって宿主細胞の中で発現させることができる。ベクターは当業者には周知であり、その非限定的な例に含まれるのは、プラスミド、コスミド、人工染色体(酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、P1由来人工染色体(PAC)など)、ファージ(λファージ、M13ファージなど)、動物ウイルスである。ベクターとして使用できる動物ウイルスの非限定的な例に含まれるのは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(SV40など)である。ベクターは発現を制御するための多数のエレメントを含むことができ、そのようなエレメントの非限定的な例に含まれるのは、プロモータ配列、転写開始配列、エンハンサ配列、選択エレメント、レポータ遺伝子である。それに加え、ベクターは複製始点を含むことができる。
「宿主細胞」という用語は、本明細書では、興味あるタンパク質、タンパク質断片、ペプチドのいずれかを産生させるために操作することのできる細胞系を意味する。宿主細胞の非限定的な例に含まれるのは、培養された細胞、例えば齧歯類(ラット、マウス、モルモット、ハムスターのいずれか)に由来する哺乳動物の培養された細胞(CHO、BHK、NSO、SP2/0、YB2/0など);ヒト組織またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞、トランスジェニック動物または培養された組織の中に含まれる細胞である。この用語には、特定の対象の細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も含まれる。継承される世代では変異や環境の影響でいくつかの変更が生じる可能性があるため、そのような子孫は親細胞と完全に同じではない可能性があるが、それでも「宿主細胞」の用語の範囲に含まれる。
「一致」という用語は、本明細書では、2個以上のポリペプチド分子または2個以上の核酸分子の配列をアラインメントして比較することによって明らかになるそれら配列の間の関係を意味する。「パーセント一致」は、比較する分子内のアミノ酸またはヌクレオチドの間で一致している残基のパーセント値を意味し、比較している分子の最小サイズに基づいて計算される。こうした計算のため、アラインメントにおけるギャップ(存在する場合)は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって対処することが好ましい。アラインメントされた核酸またはポリペプチドの一致を計算するのに使用できる方法に含まれるのは、『Computational Molecular Biology』(Lesk, A. M.編)、1988年、ニューヨーク:Oxford University Press;『Biocomputing Informatics and Genome Projects』、(Smith, D. W.編)、1993年、ニューヨーク:Academic Press社;『Computer Analysis of Sequence Data, Part I』、(Griffin, A. M.とGriffin, H. G.編)、1994年、ニュージャージー州:Humana Press社;von Heinje, G.、1987年、『Sequence Analysis in Molecular Biology』、ニューヨーク:Academic Press社;『Sequence Analysis Primer』、(Gribskov, M.とDevereux, J. 編)、1991年、ニューヨーク:M. Stockton Press社;Carillo他、1988年、SIAMJ. Applied Math. 第48巻:1073ページに記載されている方法である。
「免疫原性」という用語は、本明細書では、生体内で特定の抗体または感作リンパ球の形成を促進する能力を意味する。この用語は、抗原が特定の免疫細胞の活性化と増殖と分化を促進して免疫学的エフェクタ物質(例えば抗体と感作リンパ球)を最終的に生成させる特性だけでなく、抗原を用いて生物を刺激した後にその生物の免疫系において抗体または感作Tリンパ球を形成することのできる特異的免疫応答も意味する。免疫原性は、抗原の最も重要な特性である。抗原が宿主の中で免疫応答の発生をうまく誘導できるかどうかは、3つの因子に依存する。すなわち抗原の特性と、宿主の反応性と、免疫化手段である。
「トランスフェクション」という用語は、本明細書では、核酸を真核細胞(特に哺乳動物の細胞)の中に導入するプロセスを意味する。トランスフェクションのプロトコルと技術の非限定的な例に含まれるのは、脂質トランスフェクション、化学的方法、物理的方法(電気穿孔など)である。多数のトランスフェクション技術が本分野において周知であり、本明細書に開示されている。例えばGraham他、1973年、Virology第52巻:456ページ;Sambrook他、2001年、『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、既出;Davis他、1986年、『Basic Methods in Molecular Biology』、Elsevier社;Chu他、1981年、Gene第13巻:197ページを参照されたい。本発明の特別な一実施態様では、ヒトTIM-3遺伝子を293F細胞にトランスフェクトした。
「ハイブリドーマ」という用語と「ハイブリドーマ細胞系」という用語は、本明細書では交換可能に用いることができる。「ハイブリドーマ」という用語と「ハイブリドーマ細胞系」という用語に言及するとき、これらの用語にサブクローンとハイブリドーマの子孫細胞も含まれる。
「SPR」または「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書では、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB社、ウプサラ、スウェーデン国と、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を用いてバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによってリアルタイムで生物特異的相互作用を分析することを可能にする光学的現象を意味するとともに、この光学的現象を含んでいる。さらに詳しい説明については、実施例5と、Jonsson, U.他(1993年)Ann. Biol. Clin. 第51巻:19~26ページ;Jonsson, U.他(1991年)Biotechniques 第11巻:620~627ページ;Johnsson, B. 他(1995年)J. Mol. Recognit. 第8巻:125~131ページ;Johnnson, B. 他(1991年)Anal. Biochem. 第198巻:268~277ページを参照されたい。
「蛍光活性化セルソーティング」または「FACS」という用語は、本明細書では、特別なタイプのフローサイトメトリーを意味する。生物細胞の異種混合物を、一度に細胞1個の割合で、各細胞の特別な光散乱と蛍光の特徴に基づいて2つ以上の容器に分類する方法を提供する(FlowMetric社、「Sorting Out Fluorescence Activated Cell Sorting」、2017年11月9日に取得)。FACSを実施するための装置は当業者に知られており、市販されている。そのような装置の例に含まれるのは、Becton Dickinson社(フォスター・シティ、カリフォルニア州)からのFACS Star Plus装置、FACScan装置、FACSort装置と、Coulter Epics Division社(ハイアリア、フロリダ州)からのEpics Cと、Cytomation社(コロラド・スプリングズ、コロラド州)からのMoFloである。
「抗体依存性細胞媒介細胞傷害」または「ADCC」という用語は、本明細書では、細胞傷害の1つの形態を意味する。このタイプの細胞傷害では、分泌されるIgがある種の細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ)の表面に存在するFc受容体(FcR)に結合してこれら細胞傷害性エフェクタ細胞が抗原を担持する標的細胞に特異的に結合し、その後、その標的細胞を細胞毒素で殺す。抗体は細胞傷害性細胞を「武装させている」ため、そのような殺傷に抗体は絶対に必要とされる。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞はFcγRIIIだけを発現するのに対し、単球は、FcγRIとFcγRIIとFcγRIIIを発現する。造血細胞の表面におけるFcRの発現が、RavetchとKinet、Annu. Rev. Immunol 第9巻:457~492ページ(1991年)の464ページの表3にまとめられている。興味ある分子のADCC活性を評価するため、インビトロADCCアッセイ(例えばアメリカ合衆国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されているようなアッセイ)を実施することができる。このようなアッセイに有用なエフェクタ細胞に含まれるのは、末梢血単球細胞(PBMC)とナチュラルキラー(NK)細胞である。その代わりに、またはそれに加えて、興味ある分子のADCC活性は、例えばClynes他、PNAS (USA) 第95巻:652~656ページ(1998年)に開示されている動物モデルにおいて生体内で評価することができる。
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」という用語は、本明細書では、補体の存在下での標的細胞の溶解を意味する。古典的な補体経路の活性化は、補体系の第1の補体(C1q)が(適切なサブクラスの)抗体に結合することによって開始され、この抗体は、この抗体のコグネイト抗原に結合する。補体活性化を評価するため、例えばGazzano-Santoro他、J. Immunol. Methods 第202巻:163ページ(1996年)に記載されているようなCDCアッセイを実施することができる。
「対象」という用語は、ヒトまたは非ヒト動物を含むが、ヒトが好ましい。
「がん」という用語は、本明細書では、腫瘍または悪性細胞増殖、増殖または転移による固形腫瘍と非固形腫瘍(白血病など)、病状の開始のいずれかを意味する。
本明細書で用いられている「治療」、または「治療している」、または「治療された」という用語は、ある状態の治療の文脈では、一般に、人または動物の治療と療法に関係しており、その治療と療法で何らかの望む治療効果が実現される。それは例えば状態の進行の抑制であり、その中には、進行速度の低下、進行の停止、状態の軽減、状態の改善、状態の治癒が含まれる。予防的手段としての治療(すなわち予防処置、予防)も含まれる。がんに関しては、「治療している」は、腫瘍または悪性細胞増殖、増殖または転移、またはこれらの何らかの組み合わせの減衰または遅延を意味することができる。腫瘍に関しては、「治療」は、腫瘍のすべてまたは一部の除去、腫瘍の増殖と転移の抑制または遅延、腫瘍の発症の予防または遅延、またはこれらの何らかの組み合わせを含む。
「有効な量」という用語は、本明細書では、望む治療計画に従い、活性化合物を投与するか、または活性化合物を含む材料、組成物、剤形のいずれかを投与するとき、何らかの望む治療効果を生じさせるのに有効で、合理的なベネフィット/リスク比に合致する量に関する。例えば「有効な量」は、TIM-3に関連した疾患または状態の治療に関して用いるときには、その疾患または状態の治療に有効な量または濃度の抗体またはその抗原結合部分を意味する。
「予防する」、または「予防」、または「予防している」という用語は、本明細書では、哺乳動物のある疾患状態に関し、その疾患の発症を予防するか遅延させること、またはその臨床症状または潜在的症状の出現を予防することを意味する。
「医薬として許容可能な」という用語は、本明細書では、ビヒクル、および/または希釈剤、および/または賦形剤、および/またはこれらの塩が、化学的および/または生理学的に製剤中の他の諸成分に適合し、かつレシピエントに生理学的に適合していることを意味する。
本明細書では、「医薬として許容可能な基剤および/または賦形剤」という用語は、対象と活性剤に薬学的および/または生理学的に適合している本分野で周知の基剤および/または賦形剤を意味し(例えば『Remington's Pharmaceutical Sciences』、Gennaro AR編、第19版、ペンシルヴェニア州:Mack Publishing Company社、1995年を参照されたい)、その非限定的な例に含まれるのは、pH調節剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤である。例えばpH調節剤の非限定的な例に含まれるのはリン酸塩バッファであり;界面活性剤の非限定的な例に含まれるのは、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤(例えばTween-80)であり;イオン強度増強剤の非限定的な例に含まれるのは塩化ナトリウムである。
本明細書では、「アジュバント」という用語は、非特異的免疫増強剤を意味する。非特異的免疫増強剤は、抗原とともに生物に送達されるとき、または前もって生物に送達されるとき、抗原に対する免疫応答を増強するか、免疫応答のタイプを変えることができる。多彩なアジュバントが存在しており、その非限定的な例に含まれるのは、アルミニウムアジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、フロイントアジュバント(例えば完全フロイントアジュバントと不完全フロイントアジュバント)、コリネバクテリウム・パルバム、リポ多糖、サイトカインなどである。フロイントアジュバントは、動物実験で現在最も一般的に用いられているアジュバントである。水酸化アルミニウムアジュバントは、臨床試験で非常に一般的に用いられている。
抗TIM-3抗体
いくつかの側面では、本発明は、単離された抗体またはその抗原結合部分を含んでいる。
本出願の文脈では、「抗体」に含めることができるのは、ポリクローナル抗体、マルチクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体と霊長類化抗体、CDRがグラフトされた抗体、ヒト抗体、組み換えで作製された抗体、イントラボディ、多重特異性抗体、二重特異性抗体、1価抗体、多価抗体、抗イディオタイプ抗体、合成抗体(その中には、変異タンパク質とそのバリアントが含まれる)と;これらの誘導体(Fc融合体と他の修飾が含まれる)と、TIM-3タンパク質への選択的な会合または結合を示す他の任意の免疫反応性分子である。さらに、文脈からの制約によって異なる記述がなされているのでなければ、この用語はさらに、抗体のあらゆるクラス(すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、IgM)と、あらゆるサブクラス(すなわちIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)を含んでいる。好ましい一実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。より好ましい一実施態様では、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体または完全ヒトモノクローナル抗体である。
モノクローナル抗体は、本分野で知られている多彩な技術を利用して調製することができ、そうした技術に含まれるのは、ハイブリドーマ技術、組み換え技術、ファージ提示技術、トランスジェニック動物(例えばXenoMouse(登録商標))のいずれか、またはこれらの何らかの組み合わせである。例えばモノクローナル抗体は、ハイブリドーマと本分野で認められている生化学的・遺伝学的操作技術を利用して作製することができる。そのような技術がより詳しく記載されているのは、An, Zhiqiang(編)『Therapeutic Monoclonal Antibodies: From Bench to Clinic』、John Wiley and Sons社、初版 2009年;Shire他(編)『Current Trends in Monoclonal Antibody Development and Manufacturing』、Springer Science社+Business Media LLC社、初版 2010年;Harlow他、『Antibodies: A Laboratory Manual』、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版 1988年;『Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas』の中のHammerling他、563~681ページ(Elsevier社、ニューヨーク、1981年)であり、そのそれぞれの全体が参照によって本明細書に組み込まれている。選択された結合配列をさらに変化させて例えば標的に対する親和性を改善すること、標的結合配列をヒト化すること、細胞培養物の中での生成を改善すること、生体内での免役原性を低下させること、多重特異性抗体を生成させることなどが可能であることと、変化した標的結合配列を含む抗体も本発明の抗体であることを理解すべきである。好ましい一実施態様では、抗ヒトTIM-3モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を利用して調製される。ハイブリドーマの生成は本分野で周知である。例えばHarlowとLane(1988年)『Antibodies, A Laboratory Manual』、Cold Spring Harbor Publications、ニューヨーク州を参照されたい。
いくつかの特性を持つ抗TIM-3抗体
本開示の抗体は、抗体の特別な機能的特徴または機能的特性を特徴とする。いくつかの実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、以下の特性、すなわち
(a)ヒトTIM-3タンパク質とカニクイザルTIM-3タンパク質の両方に特異的に結合する;
(b)TIM-3がPtdSerに結合するのを阻止する;
(c)TCRシグナル伝達を増強する;
(d)ヒトCD4+T細胞の中でサイトカイン(例えばIl-2またはIFN-γ)の産生を誘導する
の1つ以上を有する。
本開示の抗体は、ヒトとカニクイザル両方のTIM-3に大きな親和性で結合する。TIM-3への本開示の抗体の結合は、本分野でよく確立された1つ以上の技術(例えばELISA)を利用して評価することができる。本開示の抗体の結合特異性も、TIM-3を発現している細胞への抗体の結合をモニタすることによって明らかにすることができる(例えばフローサイトメトリー)。例えば抗体は、フローサイトメトリーアッセイによって調べることができ、このアッセイでは、その抗体が、ヒトTIM-3を発現する細胞系(例えばトランスフェクトされて細胞表面にTIM-3を発現しているCHO細胞)と反応する。フローサイトメトリーアッセイで用いるのに適した他の細胞に含まれるのは、抗CD3で刺激した活性化CD4+ T細胞であり、この細胞はネイティブTIM-3を発現する。それに加え、またはその代わりに、抗体の結合は、結合の動力学(例えばKd値)を含め、BIAcore結合アッセイで調べることができる。さらに別の適切な結合アッセイに含まれるのは、例えば組み換えTIM-3タンパク質を使用するELISAアッセイである。例えば本開示の抗体は、ヒトTIM-3に1×10-9 M以下のKdで結合する、またはヒトTIM-3に5×10-10 M以下のKdで結合する、またはヒトTIM-3に2×10-10 M以下のKdで結合する、またはヒトTIM-3に1×10-10 M以下のKdで結合する、またはヒトTIM-3に5×10-11 M以下のKdで結合する、またはヒトTIM-3に3×10-11 M以下のKdで結合する、またはヒトTIM-3に2×10-11 M以下のKdで結合する。
さらに、本開示の抗体は、PtdSerへのTIM-3の結合を阻止することができる。TIM-3は、アポトーシスする細胞の表面に露出する傾向があるPtdSerと相互作用することが知られているため、免疫抑制を引き起こすことができる。PtdSer-TIM-3相互作用を例えば本明細書に記載されている抗TIM-3抗体を用いて阻止すると、免疫抑制を改善または克服することができる可能性がある。
CDRを含む抗TIM-3抗体
いくつかの実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、
A)(i)配列ID番号1を含むHCDR1と;
(ii)配列ID番号2と7からなるグループから選択されたアミノ酸配列の1つを含むHCDR2と;
(iii)配列ID番号3を含むHCDR3
からなるグループから選択された1つ以上の重鎖CDR(HCDR);または
B)(i)配列ID番号4を含むLCDR1と;
(ii)配列ID番号5を含むLCDR2と;
(iii)配列ID番号6を含むLCDR3
からなるグループから選択された1つ以上の軽鎖CDR(LCDR);または
C)A)の1つ以上のHCDRとB)の1つ以上のLCDR
を含んでいる。
抗体配列の中の可変領域とCDRは、本分野で開発された一般的な規則(上記のように例えばKabat番号付けシステム)に従って同定すること、または配列を既知の可変領域のデータベースに対してアラインメントすることによって同定することができる。これらの領域を同定する方法が記載されているのは、KontermannとDubel編、『Antibody Engineering』、Springer社、ニューヨーク、ニューヨーク州、2001年と、Dinarello他、『Current Protocols in Immunology』、John Wiley and Sons Inc.社、ホーボーケン、ニュージャージー州、2000年である。抗体配列の代表的なデータベースは、Retter他、Nucl. Acids Res., 第33巻(データベース号):D671~D674ページ(2005年)に記載されているように、www.bioinf.org.uk/absの(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの生化学・分子生物学部、ロンドン、イギリス国のA.C. Martinによって維持されている)「Abysis」ウェブサイトと、www.vbase2.orgのVBASE2 ウェブサイトに記載されており、これらのウェブサイトを通じてアクセスすることができる。好ましい配列は、KabatとIMGTとタンパク質データバンク(PDB)からの配列データをPDBからの構造データと統合したAbysisデータベースを用いて分析される。『Antibody Engineering Lab Manual』(編者:Duebel, S.とKontermann, R.、Springer-Verlag社、ハイデルベルク、ISBN-13: 978-3540413547、ウェブサイトbioinforg.uk/absでも入手可能)の中のAndrew C. R. Martin博士による「Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains」という章を参照されたい。Abysisデータベースのウェブサイトはさらに、CDRを同定するために開発された一般的な規則を含んでおり、それを本明細書の教示に従って使用することができる。特に断わらない限り、本明細書に記載されているすべてのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って導出される。
いくつかの実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、
A)(i)配列ID番号1に示されているHCDR1と;
(ii)配列ID番号2と7からなるグループから選択されたアミノ酸配列の1つに示されているHCDR2と;
(iii)配列ID番号3に示されているHCDR3
からなるグループから選択された1つ以上の重鎖CDR(HCDR);または
B)(i)配列ID番号4に示されているLCDR1と;
(ii)配列ID番号5に示されているLCDR2と;
(iii)配列ID番号6に示されているLCDR3
からなるグループから選択された1つ以上の軽鎖CDR(LCDR);または
C)A)の1つ以上のHCDRとB)の1つ以上のLCDR
を含んでいる。
特別な一実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、
重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含んでいて、
(a)VHは、
(i)配列ID番号1に示されているHCDR1と;
(ii)配列ID番号2に示されているHCDR2と;
(iii)配列ID番号3に示されているHCDR3を含み;
(b)VLは、
(i)配列ID番号4に示されているLCDR1と;
(ii)配列ID番号5に示されているLCDR2と;
(iii)配列ID番号6に示されているLCDR3を含む。
別の特別な一実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、
重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含んでいて、
(a)VHは、
(i)配列ID番号1に示されているHCDR1と;
(ii)配列ID番号7に示されているHCDR2と;
(iii)配列ID番号3に示されているHCDR3を含み;
(b)VLは、
(i)配列ID番号4に示されているLCDR1と;
(ii)配列ID番号5に示されているLCDR2と;
(iii)配列ID番号6に示されているLCDR3を含む。
重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む抗TIM-3抗体
いくつかの実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、
(A)(i)配列ID番号8と14からなるグループから選択されたアミノ酸配列を含むか;
(ii)配列ID番号8と14からなるグループから選択されたアミノ酸配列と少なくとも85%、または90%、または95%一致するアミノ酸配列を含むか;
(iii)配列ID番号8と14からなるグループから選択されたアミノ酸配列と比べて1又は数個のアミノ酸の付加、および/または欠失、および/または置換を持つアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および/または
(B)(i)配列ID番号10と12からなるグループから選択されたアミノ酸配列を含むか;
(ii)配列ID番号10と12からなるグループから選択されたアミノ酸配列と少なくとも85%、または90%、または95%一致するアミノ酸配列を含むか;
(iii)配列ID番号10と12からなるグループから選択されたアミノ酸配列と比べて1又は数個のアミノ酸の付加、および/または欠失、および/または置換を持つアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含んでいる。
2つのアミノ酸配列の間のパーセント一致は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. MeyersとW. Miller(Comput. Appl. Biosci. 第4巻:11~17ページ(1988年))のアルゴリズムを利用して、PAm120重み残基表を用い、ギャップ長のペナルティを12、ギャップのペナルティを4にして求めることができる。それに加え、2つのアミノ酸配列の間のパーセント一致は、GCGソフトウエアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)に組み込まれているNeedlemanとWunsch(J. Mol. Biol. 第48巻:444~453ページ(1970年)のアルゴリズムにより、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスを用い、ギャップの重みを16、14、12、10、8、6、4のいずれか、長さの重みを1、2、3、4、5、6のいずれかにして求めることができる。.
それに加え、またはその代わりに、本開示のタンパク質配列をさらに「質問配列」として用いて公開データベースで検索を実施することにより、例えば関係する配列を同定することができる。このような検索は、Altschul他(1990年)J. MoI. Biol. 第215巻:403~410ページのXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索をXBLASTプログラムでスコア=50、ワード長=3にして実施し、本開示の抗体分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較を目的としたギャップ付きアラインメントを得るため、ギャップ付きBLASTをAltschul他(1997年)Nucleic Acids Res. 第25巻(17):3389~3402ページに記載されているようにして用いることができる。BLASTプログラムとギャップ付きBLASTプログラムを用いるとき、それぞれのプログラム(例えばXBLASTとNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
特別な一実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、配列ID番号8に示されているアミノ酸配列を含むかこのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列ID番号10に示されているアミノ酸配列を含むかこのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含んでいる。
特別な一実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、配列ID番号14に示されているアミノ酸配列を含むかこのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列ID番号10に示されているアミノ酸配列を含むかこのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含んでいる。
特別な一実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、配列ID番号8に示されているアミノ酸配列を含むかこのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列ID番号12に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含んでいる。
特別な一実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、配列ID番号14に示されているアミノ酸配列を含むかこのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列ID番号12に示されているアミノ酸配列を含むかこのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含んでいる。
別の実施態様では、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、上に示されているそれぞれの配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかが一致する可能性がある。
さらに別のいくつかの実施態様では、単離された抗体またはその抗原結合部分は、重鎖および/または軽鎖の可変領域にアミノ酸の保存された置換または変更を含んでいる可能性がある。保存された配列の変更は、抗原の結合を失わずに実現できると本分野では理解されている。例えばBrummell他(1993年)Biochem 第32巻:1180~1188ページ;de Wildt他(1997年)Prot. Eng. 第10巻:835~841ページ;Komissarov他(1997年)J. Biol. Chem. 第272巻:26864~26870ページ;Hall他(1992年)J. Immunol. 第149巻:1605~1612ページ;KelleyとO’Connell(1993年)Biochem. 第32巻:6862~6835ページ;Adib-Conquy他(1998年)Int. Immunol. 第10巻:341~346ページ;Beers他(2000年)Clin. Can. Res. 第6巻:2835~2843ページを参照されたい。
上に説明したように、「保存された置換」という用語は、本明細書では、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの重要な特性に不利な影響を与えないか変化をもたらさないと考えられるアミノ酸置換を意味する。例えば保存された置換は、本分野で知られている標準的な技術(部位指定突然変異誘発、PCRを媒介とした突然変異誘発など)によって導入することができる。保存されたアミノ酸置換に含まれるのは、あるアミノ酸残基が、似た側鎖を持つ別のアミノ酸残基(例えば対応するアミノ酸残基と物理的または機能的に似た残基(例えば似たサイズ、形、電荷、化学的特性(共有結合または水素結合を形成する能力などが含まれる)を持つ残基))で置き換えられた置換である。似た側鎖を持つアミノ酸置換のファミリーは本分野で明確にされている。これらのファミリーに含まれるのは、アルカリ性側鎖を持つアミノ酸(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、帯電していない極性側鎖を持つアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンフェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖を持つアミノ酸(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)である。したがって対応するアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換されることが好ましい。保存されたアミノ酸置換を同定する方法は本分野で周知である(例えばBrummell他、Biochem. 第32巻:1180~1187ページ(1993年);Kobayashi他、Protein Eng. 第12巻(10):879~884ページ(1999年);Burks他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA第94巻:412~417ページ(1997年)を参照されたい。これらは参照によって本明細書に組み込まれている)。
ビニングとエピトープのマッピング
開示されている抗体は、選択された標的またはその断片によって提示される離散したエピトープまたは免疫原性決定基に会合または結合することがさらにわかる。いくつかの実施態様では、エピトープまたは免疫原性決定基は、分子の化学的に活性な表面基(アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、スルホニル基など)を含んでいる。いくつかの実施態様では、エピトープは、特定の三次元構造特性および/または特定の電荷特性を持つことができる。したがって本明細書で用いられている「エピトープ」という用語には、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合するか、別のやり方で分子と相互作用することのできるあらゆるタンパク質決定基が含まれる。いくつかの実施態様では、抗体が抗原に特異的に結合する(または免疫特異的に結合または反応する)と言われるのは、その抗体が、タンパク質および/または巨大分子の複合混合物の中の標的抗原を選択的に認識するときである。いくつかの実施態様では、抗体が抗原に特異的に結合すると言われるのは、平衡解離定数(KD)が10-6 M以下、または10-7 M以下、より好ましくはKDが10-8 M以下であるとき、より一層好ましくはKDが10-9 M以下のときである。
連続したアミノ酸(ときどき「直線状」エピトープまたは「連続」エピトープと呼ばれる)から形成されるエピトープは、典型的には、タンパク質が変性したときに保持される一方で、三次折り畳みによって形成されるエピトープは、典型的には、タンパク質が変性したときに失われる。いずれにせよ、抗体エピトープは、典型的には少なくとも3個、より一般的には少なくとも5個、または8~10個のアミノ酸を独自の空間配置で含んでいる。
この点に関し、いくつかの実施態様では、エピトープは、例えばTIM-3タンパク質の1つ以上の領域、またはドメイン、またはモチーフと会合すること、またはその中に存在することが可能であることがわかるであろう。同様に、本分野で認められている「モチーフ」という用語は一般的な意味で用いられ、一般に、タンパク質の短くて保存された領域を意味し、典型的には10~20個の連続したアミノ酸残基である。
いずれにせよ、抗原上の望むエピトープが明確になると、そのエピトープに対する抗体を生成させることが、例えば本開示に記載されている技術を利用してそのエピトープを含むペプチドで免疫化することによって可能になる。その代わりに、発見プロセスの間に抗体を生成させて特徴づけることによって特定のドメインまたはモチーフの中に位置する望ましいエピトープに関する情報を明らかにすることができる。この情報から、同じエピトープへの結合に関して抗体を競合的にスクリーニングすることが可能になる。これを実現する1つのアプローチは、競合研究を実施して結合が互いに競合する抗体を見いだすというものである。(すなわちこれらの抗体は抗原に対する結合が競合する)。抗体をその交差競合性に基づいてビニングするハイスループット法がWO 03/48731に記載されている。ビニングや、ドメインレベルまたはエピトープのマッピングのため酵母の表面での抗体の競合または抗原断片の発現を含む他の方法は本分野で周知である。
本明細書では、「ビニング」という用語は、抗体を、抗原への結合の特徴と競合に基づいてグループ化または分類するのに用いられる方法を意味する。この技術は本開示の抗体を明確にしてカテゴリー化するのに有用だが、ビンはエピトープと必ずしも直接相関していないため、エピトープへの結合に関するこのような最初の判断を、本分野で認められていて本明細書に記載されている他の方法によってさらに洗練させ、確認することができる。しかし抗体を個々のビンに経験的に割り当てると、開示されている抗体の治療能力を示している可能性のある情報が提供されることがわかるであろう。
より具体的には、選択された参照抗体(またはその断片)が同じエピトープに結合するか、結合を第2の試験抗体(すなわち同じビンの中にある)と交差競合するかどうかを、本分野で知られていて本明細書の実施例に記載されている方法を用いて明らかにすることができる。
適合した他のエピトープマッピング技術に含まれるのは、アラニン走査変異体分析、ペプチドブロット分析(Reineke(2004年)Methods Mol Biol 第248巻:443~463ページ)(その全体が参照によって具体的に本明細書に組み込まれている)、ペプチド切断分析である。それに加え、エピトープ切除、エピトープ抽出、抗原の化学的修飾などの方法を利用することができる(Tomer(2000年)Protein Science第9巻:487~496ページ)(その全体が参照によって具体的に本明細書に組み込まれている)。
本開示の抗体をコードする核酸分子
いくつかの側面では、本開示は、本明細書に開示されている単離された抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子に向けられている。
本開示の核酸分子は、分子生物学の標準的な技術を利用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば下により詳しく記載されているヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)が発現する抗体については、このハイブリドーマによって作られる抗体の軽鎖と重鎖をコードするcDNAを標準的なPCR増幅技術またはcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリから得られる抗体については、そのような抗体をコードする核酸を遺伝子ライブラリから回収することができる。
VH領域をコードする単離された核酸は、VHをコードする核酸を、重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3)をコードする別のDNA分子に機能可能に連結することによって完全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は本分野で知られており(例えばKabat他(1991年)、上記文献を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域として、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、IgDいずれかの定常領域が可能だが、IgG1またはIgG4の定常領域がより好ましい。
VL領域をコードする単離された核酸は、VLをコードする核酸を、軽鎖定常領域(CL)をコードする別のDNA分子に機能可能に連結することによって完全長軽鎖遺伝子(と、Fab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は本分野で知られており(例えばKabat他、上記文献を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。好ましい実施態様では、軽鎖定常領域として、カッパ定常領域またはラムダ定常領域が可能である。
VHセグメントとVLセグメントをコードするDNA断片が得られると、これらのDNA断片を標準的な組み換えDNA技術によってさらに操作して例えば可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に、またはFab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作では、VLまたはVHをコードするDNA断片は、別のタンパク質(例えば抗体定常領域または可撓性リンカー)をコードする別のDNA断片に機能可能に連結される。この文脈で用いられる「機能可能に連結される」という表現は、2つのDNA断片の接合が、これら2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に留まるようになされることを意味することが想定されている。
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に開示されている単離された抗体の重鎖可変領域をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子に向けられている。
いくつかの特別な実施態様では、単離された核酸分子は、単離された抗体の重鎖可変領域をコードしていて、
(A)配列ID番号8または14に示されていて重鎖可変領域をコードする核酸配列;または
(B)配列ID番号9または15に示されている核酸配列;または
(C)(A)または(B)の核酸配列の相補鎖と非常に厳しい条件下でハイブリダイズする核酸配列
からなるグループから選択された核酸配列を含んでいる。
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に開示されている単離された抗体の軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子に向けられている。
いくつかの特別な実施態様では、単離された核酸分子は、単離された抗体の軽鎖可変領域をコードしていて、
(A)配列ID番号10または12に示されていて軽鎖可変領域をコードする核酸配列;または
(B)配列ID番号11または13に示されている核酸配列;または
(C)(A)または(B)の核酸配列の相補鎖と非常に厳しい条件下でハイブリダイズする核酸配列
からなるグループから選択された核酸配列を含んでいる。
例えば核酸分子は、配列ID番号9または15からなる。あるいは核酸分子は、配列ID番号9または15と少なくとも80%(例えば少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれか)一致する配列を共有している。いくつかの特別な実施態様では、一致率は遺伝暗号の縮重から導出され、コードされるタンパク質配列は変化していない状態に留まる。
非常に厳しい条件の例に含まれるのは、5×SSPEと45%ホルムアミドの中の45℃でのハイブリダイゼーションと、0.1×SSCの中の65℃での最終洗浄である。同等な厳しい条件は、Ausubel他(編)、『Protocols in Molecular Biology』、John Wiley & Sons社(1994年)、6.0.3~6.4.10ページに記載されているように、温度とバッファを変化させること、または塩の濃度を変化させることを通じて実現できると本分野では理解されている。ハイブリダイゼーション条件の変更は、経験的に決めること、またはプローブのグアノシン/シトシン(GC)塩基対合に基づいて厳密に計算することができる。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrook他(編)、『Molecular Cloning: A laboratory Manual』、Cold Spring Harbor Laboratory Press:コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州(1989年)、9.47~9.51ページに記載されているようにして計算することができる。
宿主細胞
本開示に開示されている宿主細胞として、本開示の抗体を発現させるのに適した任意の細胞が可能であり、例えば哺乳動物の細胞がある。本開示の抗体を発現させるための哺乳動物宿主細胞に含まれるのは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(UrlaubとChasin(1980年)Proc. Natl. Acad. ScL USA 第77巻:4216~4220ページに記載されているdhfr CHO細胞が含まれ、例えばR. J. KaufmanとP. A. Sharp(1982年)J. MoI. Biol. 第159巻:601~621ページに記載されているようにDHFR選択マーカーとともに用いられる)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、SP2細胞である。特に、NSO骨髄腫細胞とともに用いるための別の発現系は、WO 87/04462、WO 89/01036、EP 338,841に開示されているGS遺伝子発現系である。抗体をコードする組み換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されるときには、抗体は、その宿主細胞を、この宿主細胞の中で抗体の発現をさせること、または宿主細胞を増殖させる培地の中に抗体を分泌させることを可能にするのに十分な期間にわたってこの宿主細胞を培養することによって作製される。抗体は、培地から標準的な精製法を利用して回収することができる。
医薬組成物
いくつかの側面では、本開示は、本明細書に開示されている少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片と、医薬として許容可能な基剤を含む医薬組成物に向けられている。
組成物の成分
医薬組成物は、場合によっては1つ以上の追加の医薬活性成分(別の抗体や薬など)を含むことができる。本開示の医薬組成物を併用療法で例えば別の免疫刺激剤、抗がん剤、抗ウイルス剤、ワクチンのいずれかとともに投与し、抗TIM-3抗体がワクチンに対する免疫応答を増強するようにすることもできる。医薬として許容可能な基剤に含めることができるのは、例えば医薬として許容可能な液体、ゲル、固体基剤のいずれか、水性媒体、非水性媒体、抗微生物剤、等張剤、バッファ、抗酸化剤、鎮痛剤、懸濁/分散剤、キレート剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤、非毒性の補助物質、諸成分に関して本分野で知られている他のさまざまな組み合わせである。
適切な成分に含めることができるのは、例えば、抗酸化剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、バッファ、保存剤、潤滑剤、香味剤、増粘剤、着色剤、乳化剤、安定剤のいずれかである(糖類、シクロデキストリンなど)。適切な抗酸化剤に含めることができるのは、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、メルカプトグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトソルビトール、ブチルメチルアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、および/または没食子酸プロピルである。本開示に開示されているように、本開示の抗体またはその抗原結合断片を含む溶媒の中では、組成物は1つ以上の抗酸化剤(メチオニンなど)を含んでいて、抗体またはその抗原結合断片が酸化されるのを減らしている。酸化を減らすことによって結合親和性の低下を阻止し、または減らし、そのことによって抗体の安定性を増大させ、保存期間を延ばすことができる可能性がある。したがっていくつかの実施態様では、本開示により、1つ以上の抗体またはその抗原結合断片と1つ以上の抗酸化剤(メチオニンなど)を含む組成物が提供される。本開示によりさらに、抗体またはその抗原結合断片を1つ以上の抗酸化剤(メチオニンなど)と混合し、その抗体またはその抗原結合断片が酸化されることを阻止する、および/または保存期間を延ばす、および/または活性を増大させることのできる多彩な方法が提供される。
さらに例示を続けると、医薬として許容可能な基剤に含めることができるのは、例えば水性ビヒクル(塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、等張デキストロース液、減菌水注射液、デキストロース、乳酸リンゲル液など)、非水性ビヒクル(植物起源の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ピーナツ油など)、静菌濃度または静真菌濃度の抗微生物剤、等張剤(塩化ナトリウム、デキストロースなど)、バッファ(リン酸塩バッファ、クエン酸塩バッファなど)、抗酸化剤(亜硫酸水素ナトリウムなど)、局所麻酔薬(プロカイン塩酸塩など)、懸濁剤と分散剤(ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど)、乳化剤(Polysorbate 80(TWEEN-80)など)、金属イオン封鎖剤またはキレート剤(EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、乳酸など)である。基剤として用いられる抗微生物剤を多数回投与容器の中の医薬組成物に添加することができる。抗微生物剤に含まれるのは、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウムである。適切な賦形剤に含めることができるのは、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールのいずれかである。適切な非毒性の補助物質に含めることができるのは、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、可溶性増強剤や、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、シクロデキストリンなどの薬剤である。
投与、製剤、用量
本開示の医薬組成物は、それを必要とする対象の生体内にさまざまな経路で投与することができる。経路の非限定的な例に含まれるのは、経口、静脈内、動脈内、皮下、非経口、鼻腔内、筋肉内、頭蓋内、心臓内、心室内、気管内、口腔、直腸、腹腔内、皮内、局所、経皮、髄腔内であり、そうでない場合には移植または吸入によって投与する。本開示の組成物は、固体、半固体、液体、気体のいずれかの形態の調製物に製剤化することができ、その非限定的な例に含まれるのは、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、浣腸、注射液、吸入剤、エアロゾルである。適切な製剤と投与経路は、目的とする用途と治療計画に従って選択することができる。
経腸投与に適した製剤に含まれるのは、硬質または軟質のゼラチンカプセル、ピル、錠剤(被覆錠剤が含まれる)、エリキシル、懸濁液、シロップのいずれかと、吸入剤とその制御放出形態である。
非経口投与(例えば注射による)に適した製剤に含まれるのは、水性または非水性の、等張性で、発熱物質を含まない減菌液体(例えば溶液、懸濁液)であり、その中には活性成分が、溶けているか、懸濁しているか、それ以外のやり方で(例えばリポソームまたはそれ以外のマイクロ粒子の中に入れて)提供されている。このような液体は、医薬として許容可能な他の諸成分(抗酸化剤、バッファ、保存剤、安定剤、静菌剤、懸濁剤、増粘剤、製剤を想定するレシピエントの血液(または他の関連する体液)と等張性にする溶質など)を追加して含有することができる。賦形剤の例に含まれるのは、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などである。このような製剤で用いるための適切な等張性基剤の例に含まれるのは、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、乳酸リンゲル液である。同様に、具体的な投与計画(用量、タイミング、頻度が含まれる)は、具体的な個人と、その個人の治療歴の他、薬物動態(例えば半減期、クリアランス率など)などの経験的考慮事項に依存するであろう。
投与の頻度は、治療期間全体にわたって決定して調節することができる。投与の頻度は、増殖性細胞または発がん性細胞の数を減らすこと、またはそのような新生物細胞の減少を維持すること、または新生物細胞の増殖を減らすこと、または転移の発生を遅延させることに基づく。いくつかの実施態様では、投与される用量を調節すること、または減らすことにより、可能性のある副作用および/または毒性を管理することができる。その代わりに、治療用組成物の連続的持続放出製剤が適切である可能性がある。
当業者は、適切な用量が患者ごとに異なる可能性があることを認識しているであろう。最適な用量を決定するには、一般に、治療の利益のレベルをあらゆるリスクまたは有害な副作用とバランスさせることが必要になる。選択される用量レベルは多彩な因子に依存することになろう。そのような因子の非限定的な例に含まれるのは、具体的な化合物の活性、投与経路、投与時刻、化合物の排泄速度、治療期間、組み合わせて用いる他の薬および/または化合物および/または材料、患者の状態の重症度、人種、性別、年齢、体重、状態、一般的な健康、以前の治療歴である。化合物の量と投与経路は、最終的には医師、獣医師、臨床医のいずれかの裁量になるであろうが、一般に用量は、実質的に有害な副作用を引き起こすことなく望む効果を実現する局所的濃度を作用部位で実現するように選択されることになる。
一般に、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、さまざまな範囲の量で投与することができる。その範囲に含まれるのは、1回の投与で体重1 kg当たり約5μg~約100 mg;1回の投与で体重1 kg当たり約50μg~約5 mg;1回の投与で体重1 kg当たり約100μg~約10 mgである。他の範囲に含まれるのは、1回の投与で体重1 kg当たり約100μg~約20 mg、1回の投与で体重1 kg当たり約0.5 mg~約20 mgである。いくつかの実施態様では、用量は、体重1 kg当たり少なくとも約100μg、体重1 kg当たり少なくとも約250μg、体重1 kg当たり少なくとも約750μg、体重1 kg当たり少なくとも約3 mg、体重1 kg当たり少なくとも約5 mg、体重1 kg当たり少なくとも約10 mg/kgである。
いずれにせよ、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、それを必要とする対象に必要に応じて投与されることが好ましい。投与頻度は、熟練者(例えば担当医師)が、治療する状態、治療する対象の年齢、治療する状態の重症度、治療する対象の一般的な健康状態などを考慮して決定することができる。
いくつかの好ましい実施態様では、本開示の抗体またはその抗原結合部分が関与する治療のコースは、選択された薬製品を数週間または数カ月の期間にわたって複数回投与することを含むことになる。より具体的には、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、毎日1回、2日に1回、4日に1回、毎週、10日ごと、2週間ごと、3週間ごと、毎月、6週間ごと、2ヶ月ごと、10週間ごと、3ヶ月ごとのいずれかで投与することができる。この点に関し、患者の反応と臨床の実態に基づいて用量を変えること、または間隔を調節することが可能であることがわかるであろう。
1回以上投与されたことのある個人では、開示されている治療用組成物の用量と計画を経験的に決定することもできる。例えば個人に、本明細書に記載されているようにして製造された治療用組成物の用量を徐々に増やして投与することができる。選択された実施態様では、用量は、経験的な判断または観察による副作用または毒性に基づき、徐々に増やすか、徐々に減少または低減させることができる。選択された組成物の効果を評価するため、具体的な疾患、または障害、または状態のマーカーを以前に記載されているようにして追跡することができる。がんについては、そうした追跡法に含まれるのは、触診または目視観察を通じた腫瘍サイズの直接的測定、またはX線やそれ以外のイメージング技術による腫瘍サイズの間接的測定;腫瘍サンプルの直接的な腫瘍生検と顕微鏡検査によって評価する改善;間接的な腫瘍マーカー(例えば前立腺がんのためのPSA)または本明細書に記載されている方法に従って同定された発がん性抗原の測定、疼痛または麻痺の減少;発話、視覚、呼吸や、腫瘍に関連する他の不自由さの改善;食欲の増加;受け入れられている試験によって測定される生活の質の向上、または生存期間の延長のいずれかである。用量が、個人、新生物のタイプ、新生物のステージ、新生物が個人の他の場所に転移し始めているかどうか、利用している過去と現在の治療法によって変化することは当業者には明らかであろう。
非経口投与(例えば静脈内注射)に適合した製剤は、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分を約10μg/ml~約100 mg/mlの濃度で含むことになろう。いくつかの選択された実施態様では、抗体またはその抗原結合部分の濃度は、20μg/ml、40μg/ml、60μg/ml、80μg/ml、100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/ml、600μg/ml、700μg/ml、800μg/ml、900μg/ml、1 mg/mlのいずれかになろう。他の好ましい実施態様では、抗体の濃度は、2 mg/ml、3 mg/ml、4 mg/ml、5 mg/ml、6 mg/ml、8 mg/ml、10 mg/ml、12 mg/ml、14 mg/ml、16 mg/ml、18 mg/ml、20 mg/ml、25 mg/ml、30 mg/ml、35 mg/ml、40 mg/ml、45 mg/ml、50 mg/ml、60 mg/ml、70 mg/ml、80 mg/ml、90 mg/ml、100 mg/mlのいずれかになろう。
本開示の応用
本開示の抗体、抗体組成物、方法は、インビトロと生体内での用途が多数あり、その中には例えばTIM-3の検出、または免疫応答の増強が含まれる。例えばこれらの分子を培養物の中の細胞、またはインビトロの細胞、または生体外の細胞、またはヒト対象(例えば生体内)に投与し、多彩な状況で免疫を増強することができる。免疫応答を変化させること、例えば増加させること、または刺激すること、または上方調節することができる。
例えば対象には、免疫応答を増強する必要があるヒト患者が含まれる。本開示の方法は、免疫応答(例えばT細胞を媒介とする免疫応答)を増大させることによって治療することが可能な障害を持つヒト患者の治療に特に適している。特別な一実施態様では、本開示の方法は生体内のがんの治療に特に適している。免疫の抗原特異的増強を実現するため、抗TIM-3抗体を、興味ある抗原とともに、または治療する対象(例えば腫瘍を持つ対象、またはウイルスを持つ対象)にすでに存在している可能性のある抗原とともに投与することができる。TIM-3に対する抗体を別の薬剤とともに投与するとき、その2つは順番に投与すること、または同時に投与することができる。
本開示によりさらに、サンプル中のヒトTIM-3抗原の存在を検出する方法、またはヒトTIM-3抗原の量を測定する方法がさらに提供され、この方法は、サンプルと対照サンプルを、ヒトTIM-3に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分と接触させる操作を、抗体またはその一部とヒトTIM-3の間の複合体形成を可能にする条件下で実施することを含んでいる。その後、複合体の形成を検出し、サンプルとの間では対照サンプルと比べて異なる複合体が形成されていると、サンプル中にヒトTIM-3抗原が存在することを示している。さらに、本開示の抗TIM-3抗体を用い、イムノアフィニティ精製を通じてヒトTIM-3を精製することができる。
がんを含む障害の治療
いくつかの側面では、本開示により、哺乳動物の障害または疾患を治療する方法が提供され、この方法は、治療を必要とする対象(例えばヒト)に、本明細書に開示されている抗体またはその抗原結合部分を治療に有効な量で投与することを含んでいる。障害または疾患の非限定的な例に含まれるのは、増殖性障害(がんなど)、免疫障害、炎症性疾患、感染性疾患である。例えば障害としてがんが可能である。
TIM-3が関与する多彩ながんを、悪性であれ良性であれ、原発性であれ二次的であれ、本開示によって提供される方法を利用して治療または予防することができる。がんとして、固形がんまたは血液悪性腫瘍が可能である。そのようながんの例に含まれるのは、気管支原性癌(例えば非小細胞肺がん、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌、腺癌)、肺胞細胞癌、気管支腺腫、軟骨性過誤腫(非がん性)、肉腫(がん性);心臓がん(粘液腫、線維腫、横紋筋肉腫など);骨がん(骨軟骨腫、軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、巨細胞腫、軟骨肉腫、多発性骨髄腫、骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、ユーイング腫瘍(ユーイング肉腫)、細網肉腫など);脳がん(神経膠腫(例えば多形性膠芽腫)、退形成性星細胞腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、髄芽腫、脊索腫、シュワン細胞腫、上衣腫、髄膜腫、下垂体腺腫、松果体腫、骨腫、血管芽腫、頭蓋咽頭腫、脊索腫、胚腫、奇形腫、類皮嚢胞、血管腫など); 消化系のがん(大腸がん、平滑筋肉腫、類表皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、胃腺癌、腸脂肪腫、腸神経線維腫症、腸線維腫、大腸のポリープ、結腸直腸がんなど);肝臓がん(肝細胞腺腫、血管腫、肝細胞癌、線維層板癌、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫など);腎臓がん(腎臓腺癌、腎細胞癌、副腎腫、腎盤の移行上皮癌など);膀胱がん;血液がん(急性リンパ性(リンパ眼球性)白血病、急性骨髄性(骨髄性(myelocytic)、骨髄性(myelogeneous)、骨髄芽球性、骨髄単球性)白血病、慢性リンパ性白血病(例えばセザリー症候群と有毛細胞白血病)、慢性骨髄性(骨髄性(myeloid)、骨髄性(myelogeneous)、顆粒球性)白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、菌状息肉症、骨髄増殖性障害(真性多血症、骨髄線維症、血小板血症、慢性骨髄性白血病などの骨髄増殖性障害が含まれる);皮膚がん(基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫、カポジ肉腫、パジェット病など);頭頸部がん;目に関係するがん(網膜芽細胞腫、眼内黒色腫など);男性生殖系のがん(良性前立腺肥大症、前立腺がん、精巣がん(例えば精上皮腫、奇形腫、胎児性癌、絨毛癌)など);乳がん;女性生殖系のがん(子宮がん(子宮内膜癌)、子宮頸がん(子宮頸癌)、卵巣のがん(卵巣癌)、陰門癌、膣癌、卵管がん、胞状奇胎など); 甲状腺がん (乳頭状がん、濾胞性がん、退形成性がん、髄様がんが含まれる);褐色細胞腫(副腎);非がん性の副甲状腺の増殖;膵臓がん;血液がん(白血病、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫など)である。特別な一実施態様では、がんは大腸がんである。別の特別な一実施態様では、がんはNSCLCである。
いくつかの実施態様では、がんの非限定的な例に含まれるのは、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL; 高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤性病変NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;ワルデンストレームマクログロブリン血症が含まれる);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)のほか、母斑症と、浮腫(例えば脳腫瘍に関連したもの)と、B細胞増殖性障害と、メイグス症候群に関係する異常な血管増殖である。より特殊な非限定的な例に含まれるのは、再発性または難治性のNHL、最前線低悪性度NHL、ステージIII/IVのNHL、化学療法耐性NHL、前駆Bリンパ芽球性白血病および/またはリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病、および/または前リンパ球性白血病、および/または小リンパ性リンパ腫、B細胞前リンパ性リンパ腫、免疫細胞腫および/またはリンパ形質細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、節外性辺縁帯MALTリンパ腫、節性辺縁帯リンパ腫、有毛細胞白血病、形質細胞腫および/または形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心リンパ腫(濾胞性)、中悪性度びまん性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、アグレッシブNHL (アグレッシブ最前線NH、アグレッシブ再発NHLが含まれる)、自家幹細胞移植の後に再発したNHL、自家幹細胞移植で難治性のNHL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤性病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆(末梢)性大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉症および/またはセザリー症候群、皮膚リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫である。
いくつかの実施態様では、がんの非限定的なさらなる例に含まれるのはB細胞増殖性障害であり、その非限定的な例にさらに含まれるのはリンパ腫(例えばB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL))とリンパ性白血病である。そのようなリンパ腫とリンパ性白血病に含まれるのは、例えばa)濾胞性リンパ腫、および/またはb)小型非切れ込み核細胞性リンパ腫/バーキットリンパ腫(風土性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫、非バーキットリンパ腫リンパ腫が含まれる)、および/またはc)辺縁帯リンパ腫(節外性辺縁帯B細胞リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫が含まれる)、および/またはd)マントル細胞リンパ腫(MCL)、および/またはe)大細胞型リンパ腫(B細胞性びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、肺B細胞リンパ腫が含まれる)、および/またはf)有毛細胞白血病、および/またはg)リンパ性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、および/またはh)急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞前リンパ球性白血病、および/またはi)形質細胞新生物、形質細胞骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、および/またはj)ホジキン病である。
別のいくつかの実施態様では、障害は自己免疫疾患である。抗体またはその抗原結合部分を用いて治療できる可能性のある自己免疫疾患の例に含まれるのは、自己免疫性脳脊髄炎、エリテマトーデス、関節リウマチである。抗体またはその抗原結合部分は、感染性疾患、炎症性疾患(アレルギー性喘息など)、慢性移植片対宿主病の治療または予防にも用いることができる。
免疫応答の刺激
いくつかの側面では、本開示により、対象の免疫応答を増強する(例えば刺激する)方法も提供され、この方法は、本開示の抗体またはその抗原結合部分を対象に投与してその対象で免疫応答を増強することを含んでいる。例えば対象は哺乳動物である。特別な一実施態様では、対象はヒトである。
「免疫応答を増強する」という表現、またはその文法的なバリエーションは、哺乳動物の免疫系のあらゆる応答を刺激すること、惹起すること、増加させること、改善すること、増大させることのいずれかを意味する。免疫応答として、細胞性応答(すなわち細胞を媒介とした応答、例えば細胞傷害性Tリンパ球を媒介とした応答)または液性応答(すなわち抗体を媒介とした応答)が可能であり、一次免疫応答または二次免疫応答が可能である。免疫応答の増強の例に含まれるのは、CD4+ヘルパーT細胞活性の増加と、細胞傷害性T細胞の生成である。免疫応答の増強は、当業者に知られている多数のインビトロ測定または生体内測定を利用して評価することができ、その非限定的な例に含まれるのは、細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、サイトカインの放出(例えばIL-2産生、またはIFN-γ産生)の測定、腫瘍の退縮の測定、腫瘍を持つ動物の生存期間の測定、抗体作製の測定、抗体産生の測定、免疫細胞の増殖の測定、細胞表面マーカーの発現の測定、細胞毒性の測定である。典型的には、本開示の方法は、哺乳動物による免疫応答を、未治療の哺乳動物(すなわち本明細書に開示されている方法を利用して治療していない哺乳動物)による免疫応答と比べて増強する。一実施態様では、抗体またはその抗原結合部分を用いて微生物病原体(ウイルスなど)に対するヒトの免疫応答を増強する。別の一実施態様では、抗体またはその抗原結合部分を用いてワクチンに対するヒトの免疫応答を増強する。一実施態様では、本開示の方法は、細胞性免疫応答、特に細胞傷害性T細胞の応答を増強する。別の一実施態様では、細胞性免疫応答はTヘルパー細胞の応答である。さらに別の一実施態様では、免疫応答は、サイトカインの産生、特にIFN-γの産生またはIL-2の産生である。抗体またはその抗原結合部分を用いて微生物病原体(ウイルスなど)またはワクチンに対するヒトの免疫応答を増強することができる。
抗体またはその抗原結合部分は、単剤療法として単独で用いること、または化学療法または放射線療法と組み合わせて用いることができる。
化学療法と組み合わせた利用
抗体またはその抗原結合部分は、抗がん剤、細胞毒性剤、化学療法剤のいずれかと組み合わせて用いることができる。
「抗がん剤」または「抗増殖剤」という用語は、がんなどの細胞増殖性障害の治療に使用できる任意の薬剤を意味し、その非限定的な例に含まれるのは、細胞毒性剤、細胞増殖抑制剤、抗血管新生剤、減量剤、化学療法剤、放射線療法剤、標的化抗がん剤、BRM、治療用抗体、がんワクチン、サイトカイン、ホルモン療法、放射線療法、抗転移剤、免疫療法剤である。上述のような選択された実施態様では、このような抗がん剤はコンジュゲートを含むことができ、投与前に、開示されている部位特異的抗体と会合させることができることがわかるであろう。より具体的には、いくつかの実施態様では、選択された抗がん剤は、操作された抗体のペアになっていないシステインに連結されて本明細書に記載されている操作されたコンジュゲートを提供する。したがってこのような操作されたコンジュゲートが本開示の範囲に含まれることを明示的に考慮する。別の実施態様では、開示されている抗がん剤は、上に示されているのとは異なる治療剤を含む部位特異的コンジュゲートと組み合わせて与えられる。
本明細書では、「細胞毒性剤」という用語は、細胞にとって毒性がある物質を意味し、細胞の機能を低下させるか抑制する、および/または細胞の破壊を引き起こす。いくつかの実施態様では、物質は、生きている生物に由来する天然の分子である。細胞毒性剤の非限定的な例に含まれるのは、小分子毒素または酵素で活性化される毒素で細菌に由来するもの(例えばジフテリア毒素、シュードモナスの内毒素と外毒素、ブドウ球菌腸毒素A)、真菌に由来するもの(例えばα-サルシン、レストリクトシン)、植物に由来するもの(例えばアブリン、リシン、モデッシン、ビスクミン、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリン、ゲロニン、モモルジン、トリコサンチン、オオムギ毒素、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、PAP-S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミテゲリン(mitegellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、ネオマイシン、トリコテセン類)、動物に由来するもの(例えば細胞傷害性RNアーゼ(細胞外膵臓RNアーゼ;DNアーゼIなどであり、その中には断片および/またはこれらのバリアントが含まれる)である。
本開示の目的のため、「化学療法剤」は、がん細胞の成長、および/または増殖、および/または生存を非特異的に低減させるか抑制する化合物(例えば細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤)を含んでいる。このような化学的薬剤は細胞の増殖または分裂に必要な細胞内プロセスに向けられることがしばしばあるため、一般に急速な増殖と分裂をするがん性細胞に対して特に効果的である。例えばビンクリスチンは微小管を脱重合化するため、細胞が有糸分裂に入るのを抑制する。一般に化学療法剤は、がん性細胞、またはがん性になるか発がん性子孫(例えばTIC)を生成させる可能性が大きい細胞を抑制するか、抑制する設計にされた任意の化学的薬剤を含むことができる。このような薬剤は、例えばCHOPまたはFOLFIRIなどの計画で組み合わせて投与されることがしばしばあり、非常に有効であることがしばしばある。
(部位特異的コンジュゲートの1つの構成要素として、またはコンジュゲートにならない状態で)本開示の部位特異的コンストラクトと組み合わせて使用できる抗がん剤の非限定的な例に含まれるのは、アルキル化剤、硫酸アルキル、アジリジン、エチレンイミンとメチラメラミン(methylamelamine)、アセトゲニン、カンプトテシン、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エロイテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンジスタチン、ナイトロジェンマスタード、抗生剤、エンジイン抗生物質、ダイネミシン、ビスホスホネート、エスペラミシン、色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝物質、エルロチニブ、ベムラフェニブ、クリゾチニブ、ソラフェニブ、イブルチニブ、エンザルタミド、葉酸類似体、プリン類似体、アンドロゲン、抗副腎剤、葉酸補充剤(フォリン酸など)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトレキサート、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン、ジアジクォン、エフロルニチン、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダミン、メイタンシノイド、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products社、ユージン、オレゴン州)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、アングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、クロラムブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar、CPT-11)、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン;レチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン;オキサリプラチン;細胞増殖を減らすPKC-アルファ阻害剤、Raf阻害剤、H-Ras阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF-A阻害剤;上記の任意のものの医薬として許容可能な塩、酸、誘導体のいずれかである。この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節または抑制する作用がある抗ホルモン剤(抗エストロゲン、選択的エストロゲン受容体調節剤、副腎でのエストロゲン産生を調節する酵素であるアロマターゼを抑制するアロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲンなど)のほか;トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム(例えばVEGF発現阻害剤とHER2発現阻害剤);ワクチン、PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビンとエスペラマイシン;上記の任意のものの医薬として許容可能な塩、酸、誘導体のいずれかも含まれる。
放射線療法と組み合わせた利用
本開示により、抗体またはその抗原結合部分と放射線療法(すなわち腫瘍細胞の中で局所的にDNAの損傷を誘導するあらゆる機構であり、ガンマ線照射、X線、UV照射、マイクロ波、電子線などがある)の組み合わせも提供される。放射性同位体を腫瘍細胞に向けて送達することを利用する併用療法も考えられ、開示されているコンジュゲートを標的化抗がん剤または他の標的化手段と組み合わせて用いることができる。典型的には、放射線療法は約1週間~約2週間の期間にわたってパルスで適用される。放射線療法は、頭頸部がんを持つ対象に約6~7週間にわたって適用することができる。場合によっては、放射線療法は単回投与、または複数回の逐次的投与で適用することができる。
診断
本開示により、増殖性障害を検出する、または診断する、またはモニタする方法と、患者からの細胞をスクリーニングして腫瘍細胞(発がん性細胞を含む)を同定する方法が提供される。このような方法は、治療のためにがんを持つ個体を同定すること、またはがんの進行をモニタすることを含んでいる。患者、または患者から得られたサンプル(生体内またはインビトロ)を本明細書に記載されている抗体と接触させ、サンプル中の標的分子に結合した抗体、または遊離している標的分子について、存在または不在、または会合のレベルを検出することを含んでいる。いくつかの実施態様では、抗体は、本明細書に記載されている検出可能な標識またはレポータ分子を含むことになろう。
いくつかの実施態様では、抗体がサンプル中の特定の細胞と会合するというのは、そのサンプルが発がん性細胞を含んでいる可能性があることを意味するため、がんを持つ個体が本明細書に記載されている抗体を用いて有効に治療できる可能性があることを示している。
サンプルは多数のアッセイによって分析することができ、その例は、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(例えばELISA)、競合結合アッセイ、蛍光イムノアッセイ、免疫ブロットアッセイ、ウエスタンブロット分析、フローサイトメトリーアッセイである。適切な生体内治療診断アッセイまたは生体内診断アッセイは、本分野で認められているイメージング技術またはモニタリング技術を含むことができ、その例は、当業者に知られているように、磁気共鳴イメージング、コンピュータトモグラフィ(例えばCAT走査)、ポジトロントモグラフィ(例えばPET走査)、X線撮影法、超音波などである。
医薬パックとキット
1回以上の用量の抗体またはその抗原結合部分を収容した1つ以上の容器を含む医薬パックとキットも提供される。いくつかの実施態様では単位用量が提供され、その単位用量は、例えば抗体またはその抗原結合部分を1つ以上の追加の薬剤とともに含むか、その薬剤なしで含む、あらかじめ決められた量の組成物を含有している。別の実施態様に関しては、そのような単位用量は、注射用に使い捨てプレフィルドシリンジに入れて供給される。さらに別の実施態様では、単位用量に含まれる組成物は、生理食塩水、スクロースなどと;バッファ(リン酸塩など)を含むこと;および/または安定かつ有効なpH範囲で製剤化することができる。その代わりにいくつかの実施態様では、コンジュゲート組成物は、適切な液体(例えば減菌水または生理食塩水)を添加して再構成することのできる凍結乾燥させた粉末として提供することができる。いくつかの好ましい実施態様では、組成物はタンパク質の凝集を抑制する1つ以上の物質を含んでおり、その非限定的な例に含まれるのはスクロースとアルギニンである。容器表面の標識、または容器に付随する標識はすべて、収容されているコンジュゲート組成物が選択された新生物疾患状態の治療用であることを示す。
本開示により、部位特異的コンジュゲートと場合によっては1つ以上の抗がん剤の単回投与ユニットまたは多数回投与ユニットを製造するためのキットも提供される。キットは、容器と、その容器の表面の標識、またはその容器に付随するパッケージ挿入物を含んでいる。適切な容器に含まれるのは、例えばボトル、バイアル、注射器などである。容器は多彩な材料(ガラス、プラスチックなど)から形成することができ、医薬として有効な量の本開示のコンジュゲートをコンジュゲート形態または非コンジュゲート形態で収容している。別の好ましい実施態様では、容器は、殺菌アクセスポートを備えている(例えば容器として、皮下注射針で穴を開けることが可能なストッパを有する静脈内溶液用のバッグまたはバイアルが可能である)。このようなキットは一般に、適切な1つの容器の中に操作されたコンジュゲートの医薬として許容可能な製剤を収容し、場合によっては、同じか異なる容器の中に1つ以上の抗がん剤を収容することになる。キットは、医薬として許容可能な他の製剤も診断用または併用療法用に含むことができる。例えばこのようなキットは、本開示の抗体またはその抗原結合部分に加え、任意の1つ以上のある範囲の抗がん剤を含むことができ、その例は、化学療法薬または放射線療法薬;および/または抗血管新生剤;および/または抗転移剤;および/または標的化抗がん剤;および/または細胞毒性剤;および/または他の抗がん剤である。
より具体的には、キットは、開示されている抗体またはその抗原結合部分を追加成分とともに収容するか、追加成分なしで収容した単一の容器を持つこと、または望むそれぞれの薬剤のための別々の容器を持つことができる。併用療法がコンジュゲートのために提供される場合には、同じモル数の組み合わせで、または一方の成分を他方よりも過剰にしてあらかじめ混合し、単一の溶液にすることができる。その代わりに、キットのコンジュゲートとオプションの任意の抗がん剤は、患者に投与する前は異なる容器の中に別々に保持することができる。キットは、医薬として許容可能な減菌バッファまたは他の希釈剤(注射用の静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)、リンゲル溶液、デキストロース溶液など)を収容するための第2/第3の容器手段も含むことができる。
キットの諸成分が1つ以上の溶液で提供されるとき、その溶液は水溶液であることが好ましく、減菌された水溶液または生理食塩水が特に好ましい。しかしキットの諸成分は乾燥粉末として提供することができる。試薬または成分が乾燥粉末として提供されるとき、その粉末は適切な溶媒を添加することによって再構成することができる。溶媒は別の容器に入れて提供できることも考えられる。
上に簡単に示したように、キットは、抗体またはその抗原結合部分と任意のオプションの成分を患者に投与する手段も含むことができ、その例は、1つ以上の針、I.V.バッグ、注射器、それどころか点眼薬、ピペットや、製剤を動物に注射または導入すること、または身体の疾患領域に適用することのできる他の同様の装置である。本開示のキットは、典型的には、バイアルなどとそれ以外の構成要素を市販用に密閉した状態で収容するための手段も含むことになろう。その手段は、例えば射出成型またはブロー成型したプラスチック製容器であり、その中に望むバイアルと他の装置が配置されて保持される。
配列リストのまとめ
本出願には、多数の核酸配列とアミノ酸配列を含む配列リストが添付されている。以下の表A、表B、表Cに、含まれている配列のまとめが示されている。
本明細書に開示されている3つの代表的な抗体は抗TIM-3モノクローナル抗体であり、それぞれ、「W3405-2.61.21」、「W3405-2.61.21 (V87E)」(「W3405-2.61.21-uAb-hIgG4.SPK (V87E)」または「W3405」とも呼ばれる)、「W3405-2.61.21-uAb-p1」(「W3405-2.61.21-uAb-
p1-hIgG4.SPK」とも呼ばれる)と表記される。「W3405-2.61.21」は親抗TIM-3抗体として機能し、「W3405-2.61.21 (V87E)」は、親抗体に基づいて発現が最適化された抗体であり、「W3405-2.61.21-uAb-p1」は、PTM(「翻訳後修飾」)が除去された最終的なリード抗体である。
このように一般的に記述した本開示は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。なお実施例は説明のために提示されているのであり、本開示を制限する意図はない。実施例は、以下の実験が実施されたすべての実験であることを表わしているとか、以下の実験だけが実施されたことを表わしているわけではない。
実施例1:材料と、ベンチマーク抗体と、細胞系の調製
1.1 材料の調製
実施例で使用される市販の材料に関する情報を表1に示す。
1.2 抗原の作製
切断されている(ECDと膜貫通)か完全長のヒトTIM-3(GenBankアクセッション番号NM_032782.3)と、マウスTIM-3(GenBankアクセッション番号NM_134250.2)と、カニクイザルTIM-3(GenBankアクセッション番号EHH54703.1)をコードするDNA配列をSangon Biotech社(上海、中国)で合成した後、C末端にさまざまなタグ(6×his、AVI-6×his、ヒトFc、マウスFcなど)を有する改変されたpcDNA3.3発現ベクターに入れてサブクローニングした。これら発現ベクターを精製して使用した。
Expi293細胞に精製した発現ベクターをトランスフェクトした。細胞を5日間培養した後、上清を回収し、Ni-NTAカラム、プロテインAカラム、プロテインGカラムのいずれかを用いてタンパク質を精製した。得られたヒトTIM-3.ECD.MBPAVIHISとマウスTIM-3.ECD.mFcをSDS-PAGEと SECによって分析した後、-80℃で保管した。
1.3 ベンチマーク抗体の作製
2つのベンチマーク抗体を作製し、実施例において陽性対照として利用した。1つのベンチマーク抗体はアメリカ合衆国特許第9605070 B2号で「ABTIM3-hum11」と呼ばれている抗体であり、本開示では「WBP340-BMK8」または「W340.BMK8」または「W340.BMK8.uIgG4」と呼ぶ。第2のベンチマーク抗体はアメリカ合衆国特許出願第20160200815 A1号で「mAb15」と呼ばれている抗体であり、本開示では「WBP340-BMK6」または「WBP340-BMK6.IgG4」と呼ぶ。ABTIM3-hum11(WBP340-BMK8)とmAb15(WBP340-BMK6)の可変領域をコードするDNA配列をSangon Biotech社(上海、中国)で合成した後、ヒトIgG4(S228P)の定常領域を有する改変されたプラスミドpcDNA3.3に入れてサブクローニングした。
VH遺伝子とVL遺伝子を含むこれらプラスミドをExpi293細胞に同時にトランスフェクトした。細胞を5日間培養した後、上清を回収し、プロテインAカラムまたはプロテインGカラムを用いてタンパク質を精製した。得られた抗体をSDS-PAGEと SECによって分析した後、-80℃で保管した。
1.4 細胞プール/系の生成
リポフェクタミン2000を用いてCHO-K1細胞または293F細胞に、完全長のヒトTIM-3、マウスTIM-3、カニクイザルTIM-3のいずれかをコードする遺伝子を含む発現ベクターをトランスフェクトした。適切な選択マーカーを含む培地の中で細胞を培養した。限界希釈の後、ヒトTIM-3の高発現安定細胞系(本明細書では「W340-CHO-K1.hPro1.G2」と呼ぶ)と、より低発現安定細胞系(本明細書では「W340-CHO-K1.hPro1.H1」と呼ぶ)、マウスTIM-3の高発現安定細胞系(本明細書では「WBP340.CHO-K1.mPro1.D3」と呼ぶ)、カニクイザルTIM-3の高発現安定細胞系(本明細書では「W340-293F.cynoPro1.FL-17」と呼ぶ)と、より低発現安定細胞系(本明細書では「W340-293F.cynoPro1.FL-4」と呼ぶ)を選択した。
SE細胞系4D-Nucleofector(登録商標)Xキットを製造者のプロトコルに従って使用することにより、Jurkat E6-1細胞にプラスミドIL-2P Lucをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、ハイグロマイシンを細胞培養物に添加し、IL-2P Lucを安定にトランスフェクトされたJurkat E6-1細胞(本明細書では「Jurkat E6-1.IL-2P細胞」と呼ぶ)を選択した。次いで同じ方法を利用して完全長ヒトTIM-3(「hTIM-3」)を含むプラスミドをJurkat E6-1.IL-2P細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、ブラスチシジンSを細胞培養物に添加し、Jurkat E6-1.IL-2P.hTIM-3の安定な細胞プールを発達させた。安定な細胞系を限界希釈によって取得した。
実施例2:抗体ハイブリドーマの生成
2.1 免役化
25μg/ラットのhTIM-3.ECD.mFc または25μg/ラットのmTIM-3.ECD.mFc を含むアジュバントを交互に足蹠と皮下に注射することにより、10~11週齢のOMTラット(アメリカ合衆国特許第8,907,157 B2号に記載されているようにしてこの特許の中で作製された組み換え免疫グロブリン遺伝子座を持つトランスジェニックラット)を毎週免疫化した。
2.2 血清力価の検出
4回目の免役化の後、免疫化されたOMTラットから血清サンプルを回収し、2週間ごとに調べた。血清サンプル中の抗hTIM-3抗体と抗mTIM-3抗体の力価をELISAによって求めた。簡単に述べると、hTIM-3.ECD.HisまたはmTIM-3.ECD.Hisで被覆したプレートを、希釈したラット血清(最初に体積で1:100、次いで2%BSA/PBSの中で3倍に希釈)とともに2時間にわたってインキュベートした。ヤギ抗ラットIgG-Fc-HPRを二次抗体として使用した。100μlのTMB基質を注ぐことによって発色させた後、100μlの2N HClによって停止させた。マイクロプレート分光光度計を用いて吸光度を450 nmで読み取った。
ヒトTIM-3とマウスTIM-3に対する免疫化されたOMTラットの血清力価をそれぞれ表2と表3に示す。
2.3 ハイブリドーマの生成
血清抗体力価が十分に大きいとき、OMTラットに、ヒトとマウスのTIM-3 ECDタンパク質を含むD-PBSをアジュバントなしで用いて最終ブーストを与えた。融合の当日、免疫化されたOMTラットからリンパ節を減菌条件で回収し、単細胞懸濁液を調製した。次に、単離された細胞を骨髄腫細胞SP2/0と1:1の比で混合した。BTX 2001 Electro細胞マニピュレータを製造者の指示に従って用いて電気細胞融合を実施した。次に、細胞を96ウエルのプレートに1×104個の細胞/ウエルの密度で播種し、スクリーニングまで37℃、5%CO2で培養した。
2.4 抗体のスクリーニング
ヒトTIM-3結合ELISAを最初のスクリーニング法として利用してヒトTIM-3タンパク質に対するハイブリドーマ上清の結合を調べた。簡単に述べると、ハイブリドーマ上清サンプルと、陽性対照と、陰性対照を、hTIM-3.ECD.Hisであらかじめ被覆したプレートに添加し、2時間にわたって培養した。ヤギ抗ラットIgG-Fc-HRPを二次抗体として用いてプレートへのラット抗体の結合を検出した。50μlのTMB基質を注ぐことによって発色させた後、50μlの2N HClによって停止させた。マイクロプレート分光光度計を用いて吸光度を450 nmで読み取った。A450が0.2以上のサンプルを陽性hTIM-3結合剤と見なした(NC:0.05~0.06)。
最初の結合結果を確認するため、WBP340.CHO-K1.hPro1.G2を用いて陽性ハイブリドーマ系をFACSによってさらに調べた。すなわちハイブリドーマ上清を細胞に添加し、Alexa647で標識したヤギ抗ラット抗体によって細胞の表面へのラット抗体の結合を検出した。MFIをフローサイトメータによって評価し、FlowJoによって分析した。親CHO-K1への抗体の結合を陰性対照として用いた。
一次結合スクリーニングと二次結合スクリーニングを通じて10個の陽性細胞系がサブクローニングのため選択された。
2.5 ハイブリドーマのサブクローニング
最初のスクリーニングと確認スクリーニングを通じて特異的な結合が確認されると、半固形培地アプローチを利用して陽性ハイブリドーマ系をサブクローニングしてモノクローナル抗hTIM-3抗体を得た。上に記載したようにして陽性クローンをヒトTIM-3に対する結合ELISAとFACSによって確認した。選択された単クローンの疲弊した上清を回収してハイブリドーマ抗体を精製した。
2.6 ハイブリドーマのスクリーニング
RNeasy Plus Miniキットを用いて全RNAをハイブリドーマ細胞から単離した後、第1鎖cDNAを以下のようにして調製した。
Ig可変配列の上流シグナル配列コード領域と相補的な3'定常領域縮重プライマーと5'縮重プライマーのセットを用いて抗体のVH遺伝子とVL遺伝子をcDNAから増幅した。PCR反応を以下のようにして実施した。
PCR産物(10μl)をpMD18-Tベクターに連結し、この連結産物を10μl、形質転換のためTop10コンピテントセルに入れた。形質転換された細胞を2-YT+Cabプレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。15個の陽性クローンをランダムに採取し、Shanghai Biosune Biotech Co., Ltd.社でシークエンシングした。
一連のスクリーニングアッセイを通じて1つのハイブリドーマリード抗体「W3405-2.61.21」が選択され、それを以下の最適化のための親抗体として使用した。
実施例3:抗体の最適化
3.1 完全ヒト抗体の構築
適切な制限部位を含むクローニングプライマーを用いてW3405-2.61.21 のVH遺伝子とVL遺伝子を再増幅した。C末端にヒトIgG4軽鎖を有するW3405-2.61.21 の軽鎖可変領域をコードするDNA配列を改変されたpcDNA3.3発現ベクターに入れてクローニングした。C末端にヒトIgG4(S228P)重鎖の定常領域を有するW3405-2.61.21 の重鎖可変領域をコードするDNA配列を改変されたpcDNA3.3発現ベクターに入れてクローニングし、完全ヒト抗体を発現させた。その完全ヒト抗体を本明細書では「W3405-2.61.21-uAb-hIgG4K」または「W3405-2.61.21-uAb-hIgG4.SPK」と名づけた。
3.2 発現レベルを改善するための最適化
抗体W3405-2.61.21-uAb-hIgG4Kは、Expi293細胞の中で一過性に発現させたとき、顕著に低い発現レベルを示した。図1は、350 mlのExpi293細胞の中で一過性に発現したW3405-2.61.21-uAb-hIgG4Kの上清のSDS-PAGEの結果を示しており、正しい分子量の位置には非常に薄いバンドしか観察されなかった。プロテインA精製の後の抗体の収量はわずかに12 mg/lであり、これはExpi293一過性発現で生成した正規のモノクローナル抗体の収量(100 mg/l超)よりもはるかに少なかった。
抗体W3405-2.61.21-uAb-hIgG4.SPKの発現レベルを改善するため、W3405-2.61.21のVHとVLのアミノ酸配列を分析した。Discovery Studioソフトウエアによって精査された抗体データベースを用いることにより、それぞれの残基位置における全20種類のアミノ酸の出現傾向に関する統計的分析を実施した。非常に稀なタイプのアミノ酸が存在する位置が同定された。2つは重鎖可変領域に存在していた。すなわちA7(Kabat:7)とP11(Kabat:11)である。1つは軽鎖可変領域に存在していた。すなわちV87(Kabat:81)である。異常アミノ酸は突然変異誘発プライマーによって高出現傾向タイプに変異した。軽鎖ではVal 87(Kabat:81)がGluに置換され、重鎖ではAla 7(Kabat:7)とPro 11(Kabat:11)がSerとLeuにそれぞれ置換された。
3つのバリアント、変異体_1、変異体_2、変異体_3を設計した。変異体_1は、3個の残基がすべて、対応する一般的なタイプのアミノ酸(A7S、P11L、V87E)で置換され、変異体_2は重鎖の2個の残基が置換され(A7SとP11L)、変異体_3は、軽鎖の1個の残基が置換されただけであった(V87E)。W3405-2.61.21-uAb-hIgG4.SPKの可変遺伝子を鋳型として用いた。変異はシークエンシングによって確認した。Expi293発現系キットを製造者の指示に従って用い、変異プラスミドと、コドン最適化プラスミドと、親プラスミドをExpi293細胞に同時にトランスフェクトした。トランスフェクションの5日後、上清を回収して非還元SDS-PAGEによって分析した。100~300 mlまでの大規模トランスフェクションは線形スケールであった。
具体的には、これら3つの変異体のほか、野生型抗体W3405-2.61.21-uAb-hIgG4.SPKを5 mlのスケールのExpi293細胞の中で一過性に発現させ、並べて比較した。図2の上清のSDS-PAGEに示されているように、変異体_1と変異体_3は発現力価の明白な増加を示したのに対し、変異体_2改変重鎖は効果を示さなかった。これらの結果から、軽鎖V87(Kabat:81)が、抗体が適切に産生されることを阻止する唯一の決定的に重要な残基であることが確認された。この発見は、より大きなスケールの産生実験(一過性トランスフェクション120 ml Expi293細胞)からのデータによってさらに確認され、変異体_3の収量はプロテインA精製の後に252.5 mg/lに達した。これは、以前に作製された野生型抗体の収量と比べて約21倍の増加であった。
3.3 PTM除去
潜在的なPTM部位「NG」がVH-CDR2領域で同定された。QuickChange突然変異誘発キット(Agilent Genomics 社)を製造者のプロトコルに従って用いてPTM部位除去変異を導入した。アンチセンス変異誘発ヌクレオチドを設計してN→Q、G→Aという変異を導入した。W3405-2.61.21-uAb-hIgG4.SPK (V87E)を鋳型として用いた。変異はシークエンシングによって確認した。PTMが除去されたバリアントを発現させ、精製し、ヒトTIM-3への結合親和性をSPRによって調べた。
p1バリアント(N→Q)はヒトTIM-3に対してW3405-2.61.21-uAb-hIgG4.SPK (V87E)と同等の親和性を示した(表4)ため、インビトロでの特徴づけのための最終的なリードとして選択した。PTMが除去された最終的なW3405リード抗体であるW3405-2.61.21-uAb-p1-
hIgG4.SPKの配列は、表A、表B、表Cに示されている。
3.4 ヒトTIM-3に対する親和性(SPR)
ヒトTIM-3に対するW3405-2.61.21-uAb-hIgG4.SPK (V87E)またはW3405-2.61.21-uAb-p1-
hIgG4.SPKの結合親和性を、Biacore 8Kを用いたSPRアッセイによって検出した。それぞれの抗体が、抗ヒトIgG Fc抗体が固定化されたCM5センサーチップの表面に捕獲された。さまざまな濃度のhTIM-3.ECD.MBPHisを含むランニングバッファ(0.9 mM CaCl2を含有する)を会合相の120秒間にわたってセンサーチップの上に流速30μl/分で注いだ後、3600秒間の解離相を続けた。ブランク表面とバッファチャネルのセンソグラムを試験センソグラムから差し引いた。実験データは、ラングミュア分析を利用して1:1モデルによってフィットさせた。
実施例4:インビトロでの特徴づけ
4.1 ヒトTIM-3への結合(FACS)
W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1と、陽性対照と、陰性対照をさまざまな濃度でhTIM-3発現トランスフェクタント細胞に添加した後、PE標識したヤギ抗ヒトIgG-Fc抗体によって細胞の表面へのこれら抗体の結合を検出した。細胞のMFIをフローサイトメータによって測定し、FlowJoによって分析した。
ヒトTIM-3をトランスフェクトされた細胞の表面へのW3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKの結合が図3に示されている。この抗体は細胞表面のヒトTIM-3に強く結合し、EC50は0.13 nMであった。
4.2 休止しているCD4+ T細胞と活性化されたヒトCD4+ T細胞への結合
インビトロで活性化した後のヒトCD4+ T細胞の表面にTIM-3の発現を誘導できることが知られている[14]。W3405リード抗体が天然のヒトTIM-3に結合できるかどうかを調べるため、新たに精製されたヒトCD4+ T細胞を活性化してTIM-3の発現を誘導した。
Ficoll-Paque PLUS勾配遠心分離を利用してヒト末梢血単球細胞(PBMC)を健康なドナーから新たに単離した。Human CD4+ T Cell Enrichment Kitを製造者のプロトコルに従って用いてヒトCD4+ T細胞を単離した。精製したヒトCD4+ T細胞を3日間にわたってPHAで刺激するか刺激なしで放置した。さまざまな濃度のリード抗体と陰性対照を休止しているヒトCD4+ T細胞または活性化されたヒトCD4+ T細胞に添加した後、ヒトCD4+ T細胞の表面への抗体の結合を、PE標識したヤギ抗ヒトIgG-Fc抗体によって検出した。細胞のMFIをフローサイトメータによって測定し、FlowJoによって分析した。
図4に示されているように、W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKは、活性化されたヒトCD4+ T細胞には結合したが、休止しているヒトCD4+ T細胞には結合しなかった。図4Aは、活性化されたCD4+ T細胞と活性化されていないCD4+ T細胞へのリード抗体の結合を示している。活性化されたCD4+ T細胞へのリード抗体の結合曲線が図4Bに示されている。
4.3 パラログの結合(ELISA)
リード抗体はヒトTIM-3に特異的に結合するが、TIMファミリーの他のメンバーと交差反応することがないかどうかを調べるため、ヒトTIM-1とヒトTIM-4に対するW3405リード抗体の結合をELISAによって調べた。ヒトTIM-1またはヒトTIM-4であらかじめ被覆したプレートに、リード抗体と、陽性対照抗体と、陰性対照抗体を添加した。プレートへの抗体の結合は、HRPで標識した対応する二次抗体によって検出した。
図5に示されているように、W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKは、ヒトTIM-3に特異的に結合する(図5A)が、交差反応によるヒトTIM-1との結合(図5B)またはヒトTIM-4との結合(図5C)はない。
4.4 種を超えた結合(FACS)
カニクイザルTIM-3へのリード抗体の結合をFACSによって調べた。リード抗体と、陽性対照と、陰性対照をさまざまな濃度でカニクイザルTIM-3発現トランスフェクタント細胞に添加した後、細胞の表面へのこれら抗体の結合を、PEで標識したヤギ抗ヒトIgG-Fc抗体によって検出した。細胞のMFIをフローサイトメータによって測定し、FlowJoによって分析した。
カニクイザルTIM-3へのW3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKの結合の結果が図6に示されている。この抗体はカニクイザルTIM-3への強い結合を示し、EC50は0.99 nMであった。
4.5 カニクイザルTIM-3に対するアビディティ(SPR)
カニクイザルTIM-3へのW3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKの結合アビディティを、Biacore 8Kを用いたSPRアッセイによって検出した。cynoTIM-3.ECD.Fc をCM5センサーチップ(GE社)に固定化した。さまざまな濃度の試験抗体をセンサーチップの上に30μl/分の流速で会合相の200秒間にわたって注入した後、2400秒間の解離相を続けた。ブランク表面とバッファチャネルのセンソグラムを試験センソグラムから差し引いた。実験データは、ラングミュア分析を利用して1:1モデルによってフィットさせた。結果を表5に示す。
4.6 PtdSer(ホスファチジルセリン)競合アッセイ
PtdSer の阻止が、実証された機能的効果を持つ抗TIN-3抗体に共有されている特性であることが、Sabatos-Peytonらによって提案されている[15]。W3405リード抗体がヒトTIM-3とPtdSerの間の結合を阻止できるかどうかを調べるため、Jurkat E6-1細胞のアポトーシスを誘導した。アポトーシスするJurkat細胞の表面へのヒトTIM-3の結合を、さまざまな濃度のW3405リード抗体の存在下で調べた。
Jurkat E6-1細胞をパクリタキセルで2日間処理してアポトーシスを誘導した。リード抗体と、陽性対照と、陰性対照をさまざまな濃度でmFcタグ付きヒトTIM-3とあらかじめ混合した後、アポトーシスするJurkat細胞に添加した。アポトーシスするJurkat細胞へのヒトTIM-3の結合をPEで標識した抗マウスIgG Fc抗体によって検出した。細胞のMFIをフローサイトメータによって測定し、PE陽性率をFlowJoによって分析した。
図7に示されているように、W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKは用量に依存してPtdSer-TIM-3相互作用を阻止することを明確に示しており、IC50は20 nMである。
4.7 レポータ遺伝子アッセイ
TIM-3は、少なくとも急性条件ではTCRシグナル伝達を増強することによってT細胞疲弊に寄与する可能性があることがFerrisらによって示唆されている[16]。W3405リード抗体がT細胞応答の調節においてTIM-3の役割を機能的に阻止できるかどうかを調べるため、IL-2ルシフェラーゼレポータ遺伝子が安定に組み込まれたJurkat E6-1細胞にヒトTIM-3をトランスフェクトして発現させた。さまざまな濃度の試験抗体の存在下でTIM-3+ Jurkat細胞を37℃、5%CO2にて抗体CD28抗体と抗CD3抗体によって一晩活性化した。インキュベーションの後、再構成されたルシフェラーゼ基質を添加し、ルシフェラーゼの強度をマイクロプレート分光光度計によって測定した。
Ferrisの知見と一致するように、TIM-3を過剰発現しているJurkat細胞は、抗CD3/CD28で刺激した後にIL-2レポータ遺伝子シグナルの増加を示した。図8に示されているように、W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKは、TIM-3がJurkat細胞のIL-2産生に及ぼす効果を用量に依存して阻止することができる。
4.8 同種異系混合リンパ球反応(MLR)
上に記載されているようにしてPMBCとヒトCD4+T細胞を単離し、精製した。CD14 マイクロビーズを製造者の指示に従って用いて単球を単離した。GM-CSFとIL-4を含む培地の中で細胞を5~7日間培養して樹状細胞(DC)を生成させた。精製したCD4+ T細胞を同種異系成熟DC(mDC)とさまざまな濃度のリード抗体とともに96ウエルプレートの中で培養した。5日目、培養物の上清を回収してIFNγを調べた。
図9に示されている結果は、W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKがヒトCD4+ T細胞によるIFNγの産生を用量に依存して増強できることを実証している。
4.9 T細胞疲弊予防アッセイ
Ozkazanc D.らによって報告されているように、ヒトCD4+ T細胞は、骨髄性白血病細胞とともに培養すると機能が疲弊するに至った[17]。W3405リード抗体がTHP-1によって誘導されるヒトCD4+ T細胞の疲弊を阻止できるかどうかを調べるため、新たに単離したヒトCD4+T細胞をTHP-1細胞とともに抗CD3抗体の存在下で4~5日間培養し、疲弊を誘導した。リード抗体またはアイソタイプ対照をさまざまな濃度で培養物に添加してT細胞の疲弊を防止した。5日目、細胞を回収し、PMA/イオノマイシンとゴルジ-ストップで6時間にわたって刺激した。IL-2の産生を細胞内染色によって調べた。
結果が図10に示されている。W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKは、THP-1細胞とともに培養したCD4+ T細胞がIL-2を産生しなくなるのを阻止できる。
4.10 エピトープビニング
抗ヒトTIM-3参照抗体WBP340-BMK8とWBP340-BMK6をそれぞれアメリカ合衆国特許第9,605,070 B2号とアメリカ合衆国特許出願第20160200815 A1号に公開されている配列に従って作製した。さまざまな濃度の試験抗体を、ある量のビオチニル化したWBP340-BMK8とWBP340-BMK6のそれぞれと混合した。その後、これら混合物を、ヒトTIM-3タンパク質であらかじめ被覆したプレートに添加した。プレートへのWBP340-BMK8とWBP340-BMK6の結合をSA-HRPによって検出した。
図11に示されているように、W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKは、ヒトTIM-3への結合がWBP340-BMK8と競合する(図11A)が、WBP340-BMK6とは競合しない(図11B)。
4.11 ADCCアッセイ
ヒトCD56マイクロビーズを製造者のプロトコルに従って用いてNK細胞を単離した。ヒトTIM-3を発現するCHO細胞とさまざまな濃度の試験抗体を96ウエルのプレートの中で30分間あらかじめインキュベートした後、NK細胞をエフェクタ:標的の比を5:1にして添加した。プレートを5%CO2インキュベータの中で4~6時間にわたって37℃に維持した。標的細胞の溶解をLDHに基づく細胞傷害性検出キットによって調べた。SKBR-3細胞に対してハーセプチンが誘導するADCC効果を陽性対照として利用した。
4.12 CDCアッセイ
ヒトTIM-3を発現するCHO細胞とさまざまな濃度の試験抗体を96ウエルのプレートの中で混合した。ヒト補体を1:50の最終希釈度で添加した。プレートを5%CO2インキュベータの中で2~3時間にわたって37℃に維持した。標的細胞の溶解をCellTiter-Gloによって調べた。リツキサン(登録商標)が誘導するRaji細胞の溶解を陽性対照として利用した。
ADCCアッセイの結果(図12)とCDCアッセイの結果(図13)は、W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKがhTIM-3発現細胞にADCC活性またはCDC活性を伝えないため、患者の治療にこのリード抗体を使用するときTIM-3陽性細胞に対する潜在的な損傷を回避できることを示唆している。
4.13 血清中の安定性
試験抗体を新たに回収したヒト血清の中で1:10に希釈し、アリコートに分け、5%CO2インキュベータの中で37℃にて培養した。指定された時点で試験抗体のアリコートを培養物から採取し、瞬間凍結させ、上に説明したFACSによる滴定試験の準備ができるまで-20℃に維持した。
図14は、W3405リード抗体W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKが37℃のヒト血清の中で少なくとも14日間にわたって安定であることを示唆している。
実施例5:生体内特徴づけ
5.1 NOGマウスHCC827 MiXeno(商標)モデルにおける効果の研究
W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKの治療効果を、NOGマウスを用いたHCC827 MiXeno(商標)モデルで評価した。0日目、5×106個のヒト非小細胞肺がんHCC827細胞をNOGマウス(6~8週齢、雌、Beijing Vital River社)の皮下に移植した。腫瘍が約280 mm3に達したとき、マウスをランダム化し、2.5×106個の活性化されたヒトT細胞を輸液した(静脈内)。T細胞を輸液した後、マウスにW3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKまたはアイソタイプ対照抗体(10 mg/kg)を注入した(腹腔内、毎週×4週間)。腫瘍のサイズを週に少なくとも2回測定した。腫瘍の体積とTGIを以下のようにして計算した。キャリパーを用いて腫瘍のサイズを2つの次元について毎週2回測定し、体積を式:V=0.5 a×b2(aとbは、それぞれ腫瘍の長径と短径である)を用いてmm3を単位として表現した。TGIは、式:TGI(%)=[1-(Ti-T0)/ (Vi-V0)]×100を用いてそれぞれの群について計算した。この式において、Tiは、所与の日における治療群の腫瘍の平均体積であり、T0は、治療開始日における治療群の腫瘍の平均体積であり、Viは、Tiと同じ日のアイソタイプ対照群の腫瘍の平均体積であり、V0は、治療開始日におけるアイソタイプ対照群の腫瘍の平均体積である。
図15に示されているように、0日目から16日目まで、W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKで治療したマウスは、アイソタイプで治療したマウスと比べて腫瘍進行の遅延を示した。3回目の治療後、W3405-2.61.21-uAb-p1-hIgG4.SPKを用いた治療を受けたマウスは、有意かつ持続性のある腫瘍の退縮を示し始めた。28日目、すなわち最後の投与から7日目、治療群のマウスは平均TGIが131.4%に達し、7/10のマウスは治療開始から少なくとも40%の腫瘍縮小を示した。
当業者は、本開示を、その精神または中心的な属性から逸脱することなく別の具体的な形態で実現できることがさらにわかるであろう。本開示の上記の説明にはその代表的な実施態様だけが開示されているため、他のバリエーションが本開示の範囲内で考えられることを理解すべきである。したがって本発明が本明細書に詳細に記載した特定の実施態様に限定されることはない。本発明の範囲と内容を示すものとして、むしろ添付の請求項を参照すべきである。
参考文献
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