JP7187989B2 - 電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用導電部品及び端子 - Google Patents
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また、上述のCu-Zn系合金からなる電子・電気用導電部品においては、使用用途に応じて、Cu-Zn系合金からなる基材の表面に、各種金属めっきが施されることがある。例えば、コネクタなどの端子の場合、相手側の導電部材との接触の信頼性を高めるため、Cu-Zn系合金からなる基材の表面に錫(Sn)めっきが形成されることがある。
また、上述の電子・電気機器用導電部品においては、その使用環境によっては応力腐食割れが生じてしまうおそれがあることから、電子・電気機器用導電部品に用いられる電子・電気機器用銅合金には、耐応力腐食割れ特性の向上が求められることがある。
特許文献1においては、Cu-Zn-Sn系合金の平均結晶粒径を3μm以下とするとともに、Snが濃化した第2相が無い組織とすることによって、耐応力腐食割れ特性と曲げ加工性の両立を図っている。
また、特許文献2においては、Cu-Zn系合金にNiとSiを添加することで耐応力腐食割れ特性の向上が可能になる旨が記載されている。
そこで、上述のCu-Zn系合金においては、耐応力腐食割れ特性と曲げ加工性を両立されることができるとともに、安定して製造可能であることが強く望まれている。
また、本発明においては、母相の結晶粒のアスペクト比を制御するとともに、0.2%耐力を制御することによって、耐応力腐食割れ特性および曲げ加工性を両立しているので、成分組成や鋳造時の冷却条件等を厳密に制御する必要がなく、工業的に安定して製造することができる。
この場合、SnおよびNiを上述の範囲で含有することにより、強度を向上させることができるとともに、耐応力緩和特性のさらなる向上を図ることができる。また、電子・電気機器用部品においては、その表面にSnめっきやNiめっきが施されることがあるため、これらSnめっきやNiめっきが施されたCu-Zn系合金のスクラップを原料として使用することができ、リサイクル性が向上することになる。
この場合、上述のようにCo,Mn,Mg,Ti,Al,Si,Cr,Zr,Au,Ag,Pから選択される一種又は二種以上の元素を添加することによって、各種特性を向上させることが可能となる。このため、要求特性に応じて、上述の元素を適宜選択して添加してもよい。
このような曲げ加工性を有する電子・電気機器用銅合金によれば、曲げ加工性に特に優れており、曲げ加工によって各種形状の電子・電気機器用導電部品を成形することが可能となる。
このような構成の電子・電気機器用銅合金薄板は、コネクタ、その他の端子、電磁リレーの可動導電片、リードフレーム、などに好適に使用することができる。
この場合、電子・電気機器用銅合金薄板の表面に金属めっきが施されているので、使用用途に応じて適した表面特性を付与することができる。なお、金属めっきとしては、Sn、Ni、Cu、Zn、Cr、Ag、Auおよびその合金のめっき等を適用することができ、使用用途に応じて適宜選択することができる。
また、本発明の端子は、上述の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴としている。
さらに、本発明の電子・電気機器用導電部品は、上述の電子・電気機器用銅合金薄板からなることを特徴としている。
また、本発明の端子は、上述の電子・電気機器用銅合金薄板からなることを特徴としている。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金は、Znを7mass%超えて36.5mass%未満の範囲で含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有する。
Znは、本実施形態で対象としている銅合金において基本的な合金元素であり、強度およびばね性の向上に有効な元素である。また、ZnはCuより安価であるため、銅合金の材料コストの低減にも効果がある。
ここで、Znの含有量が7mass%以下では、材料コストの低減効果が十分に得られない。一方、Znの含有量が36.5mass%以上では、耐食性が低下するとともに、冷間圧延性も低下してしまう。
したがって、本実施形態では、Znの含有量を7mass%超え36.5mass%未満の範囲内とした。
なお、Znの含有量の下限は、8mass%超えとすることが好ましい。また、Znの含有量の上限は、35mass%以下とすることが好ましく、25mass%以下とすることがさらに好ましく、20mass%以下とすることがより好ましく、さらには18mass%未満とすることが好ましく、15mass%以下とすることが最適である。
SnおよびNiの添加は、強度向上に効果があり、さらに、これらを添加することで、耐応力緩和特性の向上にも寄与することが本発明者等の研究により判明している。このため、必要に応じて添加してもよい。
ここで、SnおよびNiの合計含有量が5mass%を超えれば、熱間加工性および冷間圧延性が低下し、熱間圧延や冷間圧延で割れが発生してしまうおそれがあり、さらには導電率も低下してしまう。
したがって、本実施形態では、SnおよびNiのいずれか一種又は二種を含有する場合には、SnおよびNiのいずれか一種又は二種の合計含有量を5mass%以下とすることが好ましい。
なお、SnおよびNiのいずれか一種又は二種の合計含有量の下限は、0.1mass%以上とすることが好ましく、0.3mass%以上とすることがさらに好ましい。また、SnおよびNiのいずれか一種又は二種の合計含有量の上限は、3mass%以下とすることが好ましく、2mass%以下とすることがさらに好ましい。
Co,Mn,Mg,Ti,Al,Si,Cr,Zr,Au,Ag,Pといった元素は、電子・電気機器用銅合金の各種特性を向上させる作用効果を有する。このため、要求特性に応じて、適宜選択して添加してもよい。
ここで、Co,Mn,Mg,Ti,Al,Si,Cr,Zr,Au,Ag,Pから選択される一種又は二種以上の合計含有量が0.001mass%未満では、これらの元素の作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Co,Mn,Mg,Ti,Al,Si,Cr,Zr,Au,Ag,Pから選択される一種又は二種以上の合計含有量が5mass%を超えると、コスト上昇を招くだけではなく、導電率を低下させるおそれがある。
したがって、本実施形態では、Co,Mn,Mg,Ti,Al,Si,Cr,Zr,Au,Ag,Pから選択される一種又は二種以上の元素を含有する場合には、Co,Mn,Mg,Ti,Al,Si,Cr,Zr,Au,Ag,Pから選択される一種又は二種以上の合計含有量を0.001mass%以上5mass%以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、Co,Mn,Mg,Ti,Al,Si,Cr,Zr,Au,Ag,Pから選択される一種又は二種以上の合計含有量の上限は、3mass%以下とすることが好ましく、2mass%以下とすることがさらに好ましい。また、Co,Mn,Mg,Ti,Al,Si,Cr,Zr,Au,Ag,Pから選択される一種又は二種以上の合計含有量の下限は、0.002mass%以上とすることが好ましい。
Sは溶解・鋳造、熱処理等の各工程でZnと反応しZnSを生成する。ZnSを生成すると、ZnS近傍で残留応力が生じやすくなること、また局部電池として作用するため、耐応力腐食割れ特性が劣化するおそれがある。
したがって、耐応力腐食割れ特性をさらに向上させるためには、Sの含有量を20massppm未満とすることが好ましい。
なお、Sの含有量の上限は、15massppm以下とすることがさらに好ましく、10massppm以下とすることがより好ましい。また、Sの含有量の下限については特に定めはないが、0.1ppm未満とすることは実質的にコスト増となるため0.1ppm以上とすることが好ましく、0.5ppm以上とすることがさらに好ましく、1ppm以上とすることがより好ましい。
上述のアスペクト比b/aが0.1以下となる結晶粒の測定面積に対する面積割合を、Area fractionで、40%以上に制御することによって、耐応力緩和特性を維持したまま、耐応力腐食割れ特性を向上させることができる。
圧延加工などを施した材料において、応力腐食割れは、一般的に長手方向と垂直な方向に粒界に沿って進展する。結晶粒の長径aは材料の長手方向と一致することになり、短径bは垂直方向と一致する。このためアスペクト比b/aが0.1以下になる結晶粒の面積がArea fractionで、40%以上になると、実質的に材料の長手方向の垂直方向に沿う粒界が少なくなる。このことによって応力腐食割れを抑制することが可能となる。
ここで、上述のアスペクト比b/aが0.1以下となる結晶粒の測定面積に対する面積割合は、50%以上であることが好ましく、55%以上であることがさらに好ましい。上限については特に定めはないが、アスペクト比b/aが0.1以下になる結晶粒の面積割合がArea fractionで80%を超えると実質的な圧延コストが増加するため、80%以下とすることが好ましい。より好ましくは75%以下である。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、塑性加工による加工硬化によって強度を向上させている。この加工硬化による強度の寄与が大きくなると実質的に加工組織となるため、延性や曲げ加工性といった加工性が低下する。このため、0.2%耐力を300MPa以上650MPa未満とすることで、アスペクト比b/aが0.1以下となる結晶粒の測定面積に対する面積割合を、Area fractionで40%以上に制御するとともに、強度と曲げ加工性を向上させることができる。
なお、0.2%耐力の下限は、320MPa以上であることが好ましく、350MPa以上であることがさらに好ましい。より好ましくは400MPa以上である。
まず、前述した成分組成の銅合金溶湯を溶製する。銅原料としては、純度が99.99mass%以上の4NCu(無酸素銅等)を使用することが望ましいが、スクラップを原料として用いてもよい。また、溶解には、大気雰囲気炉を用いてもよいが、添加元素の酸化を抑制するために、真空炉、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気とされた雰囲気炉を用いてもよい。
次いで、成分調整された銅合金溶湯を、適宜の鋳造法、例えば金型鋳造などのバッチ式鋳造法、あるいは連続鋳造法、半連続鋳造法、横型連続鋳造法などによって鋳造して鋳塊を得る。
その後、必要に応じて、鋳塊の偏析を解消して鋳塊組織を均一化するため、または介在物、析出物を固溶させるための均質化熱処理を行う。この均質化熱処理の条件は特に限定しないが、通常は600℃以上1000℃以下の温度において1時間以上24時間以下で加熱すればよい。熱処理温度が600℃未満、あるいは熱処理時間が1時間未満では、十分な均質化効果または溶体化効果が得られないおそれがある。一方、熱処理温度が1000℃を超えれば、偏析部位が一部溶解してしまうおそれがあり、さらに熱処理時間が24時間を超えることはコスト上昇を招くだけである。熱処理後の冷却条件は、適宜定めればよいが、通常は水焼入れすればよい。なお、熱処理後には、必要に応じて面削を行う。
次いで、粗加工の効率化と組織の均一化のために、鋳塊に対して熱間加工を行ってもよい。この熱間加工の条件は特に限定されないが、通常は、開始温度600℃以上1000℃以下、終了温度550℃以上850℃以下、加工率を50%以上とすることが好ましい。なお、熱間加工開始温度までの鋳塊加熱は、前述の均質化熱処理工程S02と兼ねてもよい。熱間加工後の冷却条件は、適宜定めればよいが、通常は水焼入れすればよい。なお、熱間加工後には、必要に応じて面削を行う。熱間加工の加工方法については、特に限定されないが、最終形状が板や条の場合は熱間圧延を適用すればよい。また最終形状が線や棒の場合には、押出や溝圧延を、また最終形状がバルク形状の場合には、鍛造やプレスを適用すればよい。
次に、均質化熱処理工程S02で均質化した鋳塊、あるいは熱間圧延などの熱間加工工程S03を施した熱間加工材に対して、粗塑性加工を施す。この粗塑性加工工程S04における温度条件は特に限定はないが、200℃未満とすることが好ましい。中間塑性加工の加工率も特に限定されないが、通常は10~99%程度とする。加工方法は特に限定されないが、最終形状が板、条の場合は、圧延を適用すればよい。また最終形状が線や棒の場合には、押出や溝圧延、さらに最終形状がバルク形状の場合には、鍛造やプレスを適用することができる。
粗塑性加工工程S04の次に、母相中のZnの偏析の低減、介在物および析出物を固溶させるための溶体化熱処理を実施する。通常は600℃以上1000℃以下の温度において0.1秒以上24時間以下で実施する。高温で熱処理する場合は短時間、低温で熱処理する場合は長時間実施する。溶体化熱処理後は300℃以下まで1℃/分以上の冷却速度で冷却することが好ましい。より好ましくは10℃/分以上である。なお溶体化の徹底のために、粗塑性加工工程S04と溶体化熱処理工程S05を繰り返してもよい。
次に、溶体化熱処理工程S05後に、中間塑性加工を施す。この中間塑性加工工程S06における温度条件は特に限定はないが、200℃未満とすることが好ましい。中間塑性加工の加工率も特に限定されないが、通常は10~99%程度とする。加工方法は特に限定されないが、最終形状が板、条の場合は、圧延を適用すればよい。また最終形状が線や棒の場合には、押出や溝圧延、さらに最終形状がバルク形状の場合には、鍛造やプレスを適用することができる。
冷間もしくは温間での中間塑性加工工程S06の後に、再結晶処理のため中間熱処理を施す。この中間熱処理は、通常は、300℃以上800℃以下の温度で、1秒以上24時間時間保持する条件とすればよい。なお、上述の添加元素を添加した場合には、析出により化合物が生成しないような熱処理条件を適宜選択すればよい。さらに、結晶粒径は、耐応力腐食割れ特性にある程度の影響を与えるから、中間熱処理による再結晶粒を測定して、加熱温度、加熱時間の条件を適切に選択することが望ましい。すなわち、熱処理温度が高温の場合は、熱処理時間を短時間に、熱処理温度が低温の場合は、熱処理時間を長時間にする。なお、中間熱処理およびその後の冷却は、最終的な平均結晶粒径に影響を与えるから、これらの条件は、母相の平均結晶粒径が0.5μm以上20μm以下の範囲内となるように選定することが好ましく、1μm以上15μm以下の範囲内となるように選定することがさらに好ましい。
中間熱処理後の冷却条件は、特に限定しないが、通常は2000℃/秒~100℃/時間程度の冷却速度で冷却すればよい。
なお、必要に応じて、上記の中間塑性加工工程S06と中間熱処理工程S07を、複数回繰り返してもよい。
中間熱処理工程S07の後には、最終寸法、最終形状まで仕上げ加工を行う。加工方法は特に限定されないが、最終製品形態が板や条である場合には、圧延(冷間圧延)を適用すればよい。その他、最終製品形態に応じて、鍛造やプレス、溝圧延などを適用してもよい。仕上げ塑性加工の加工率はアスペクト比b/aが0.1以下となる結晶粒の測定面積に対する面積割合が、Area fractionで、40%以上となるのに重要な工程である。加工率が70%以下ではアスペクト比b/aが0.1以下となる結晶粒の測定面積に対する面積割合が十分に増加しない。また加工率が98%以上になると圧延コストが増加する。このため加工率は70%を超え98%の範囲内が好ましい。より好ましくは75%以上98%未満である。アスペクト比b/aが0.1以下となる結晶粒の測定面積に対する面積割合を確実に高めるためには、圧延方向に対して1MPa以上の張力をかけるとよい。
仕上げ塑性加工後には、残留ひずみの除去による耐応力腐食割れ特性の向上および曲げ加工性の向上を目的として、仕上げ熱処理工程S09を行う。この仕上げ熱処理は、200℃以上800℃以下の範囲内の温度で、1秒以上24時間以下で行うことが望ましい。仕上げ熱処理の温度が200℃未満、または仕上げ熱処理の時間が1秒未満では、十分な歪み取りの効果が得られなくなるおそれがあり、一方、仕上げ熱処理の温度が800℃を超える場合は再結晶のおそれがあり、さらに仕上げ熱処理の時間が24時間を超えることは、コスト上昇を招くだけである。
そして、この仕上げ熱処理工程S09において、仕上げ塑性加工工程S08後の常温でのビッカース硬度Hv_CRと、仕上げ熱処理工程S09後の常温でのビッカース硬度をHv_HTとしたとき、その硬度差ΔHv=Hv_CR-Hv_HTを5Hv以上とすることでアスペクト比b/aが0.1以下となる結晶粒の測定面積に対する面積割合を低減させずに、0.2%耐力を300MPa以上650MPa未満の範囲内となるように、さらには延性および曲げ加工性の向上を図る。
ここで、ΔHv=Hv_CR-Hv_HTの値が5Hv未満の場合には、曲げ加工性が低下するおそれがある。一方、ΔHv=Hv_CR-Hv_HTの値が30Hvを超える場合には、アスペクト比b/aが0.1以下となる結晶粒の面積割合が40%未満となるおそれがあり、耐応力腐食割れ特性が劣化する可能性がある。
なお、ΔHv=Hv_CR-Hv_HTの下限は、7Hv以上とすることが好ましい。また、ΔHv=Hv_CR-Hv_HTの上限は、25Hv未満とすることが好ましく、20Hv未満とすることがさらに好ましい。
また、加工方法として圧延を適用した場合、板厚0.05mm以上1.0mm以下の電子・電気機器用銅合金薄板(条材)を得ることができる。このような薄板は、これをそのまま電子・電気機器用導電部品に使用してもよいが、板面の一方、もしくは両面に、膜厚0.1~10μm程度の金属めっきを施し、金属めっき付き銅合金条として、コネクタその他の端子などの電子・電気機器用導電部品に使用するのが通常である。この場合の金属めっきの方法は特に限定されない。また、場合によっては電解めっき後にリフロー処理を施してもよい。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、0.2%耐力が300MPa以上650MPa未満に調整されており、優れた機械特性と優れた曲げ加工性を有するので、例えば電磁リレーの可動導電片あるいは端子のばね部のごとく、特に高強度が要求される導電部品に適している。
また、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、上述のように、母相の結晶粒のアスペクト比を制御するとともに、0.2%耐力を制御することによって、耐応力腐食割れ特性および曲げ加工性を両立しているので、成分組成や鋳造時の冷却条件等を厳密に制御する必要がなく、工業的に安定して製造することができる。
また、表面に金属めっきを施した場合には、使用用途に適した表面特性とすることが可能となるため、使用用途に応じて各種金属めっきを施してもよい。
例えば、製造方法の一例を挙げて説明したが、これに限定されることはなく、最終的に得られた電子・電気機器用銅合金が、本発明の範囲内の組成であり、CuおよびZnを含有する母相のアスペクト比、及び、0.2%耐力が、本発明の範囲内に設定されていればよい。
続いて各鋳塊について、均質化処理として、N2ガス雰囲気中において、表2に記載の温度で所定時間保持後、水焼き入れを実施した。
具体的には圧延率約20%以上の冷間圧延を行った後、表2に記載の温度で1時間から4時間の間で所定の時間、溶体化熱処理し、水焼入れした。
溶体化熱処理後、切断及び表面研削を実施後、70%以上の圧延率で冷間加工を行い、表2に記載の温度で1分から4時間の間で中間熱処理を実施した。中間熱処理後、切断し、酸化被膜を除去するために表面研削を実施した。また中間熱処理後のサンプルから結晶粒径を測定し、いずれの本発明例および比較例も平均粒径が3~10μmの範囲内であることを確認した。
圧延の幅方向に対して直交する面、すなわちTD(Transverse Direction)面を観察面とし、鏡面研磨、エッチングを行ってから、光学顕微鏡にて、圧延方向が写真の横になるように撮影し、1000倍の視野(約300×200μm2)で観察を行った。そして、結晶粒径をJIS H 0501の切断法に従い、写真の縦、横の所定長さの線分を5本ずつ引き、完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を平均結晶粒径として算出した。
最後に、表2に記載の温度で仕上げ熱処理を1分間から4時間実施した後、水焼入れし、切断および表面研磨を実施した後、厚さ0.25mm×幅約160mmの特性評価用条材を製出した。
このとき、仕上げ熱処理前の圧延面、すなわちND面(Normal Direction)の硬度Hv_CR、および、仕上げ熱処理後のND面の硬度Hv_HTを測定し、その硬度差ΔHv=Hv_CR-Hv_HTを算出した。なお、ビッカース硬さは、JIS-Z2248に規定されている微小硬さ試験方法に準拠し、試験加重1.96N(=0.2kgf)もしくは0.98N(=0.1kgf)で測定した。硬度差ΔHvを表2に示す。
圧延の幅方向に対して直交する面、すなわちTD面(Transverse direction)を観察面として、耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Analysis ver.7.3.1)によって、電子線の加速電圧20kV、測定間隔0.03μmステップで200μm2以上の測定面積で、CI値が0.1以下である測定点を除いて各結晶粒(双晶を含む)の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を粒界として、各結晶粒の結晶粒径の長径をa、短径をbとしたとき、b/aであらわされるアスペクト比のArea Fractionを測定した。また、アスペクト比の測定ではEBSD上のGrain Sizeとして、Grain Tolerance Angleを5°、Minimum Grain Sizeを2ピクセルとして測定した。
特性評価用条材から幅10mm×長さ60mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。また、マイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして、測定した電気抵抗値と体積とから、導電率を算出した。なお、試験片は、その長手方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。
特性評価用条材からJIS Z 2201に規定される13B号試験片を採取し、JIS Z 2241のオフセット法により、0.2%耐力σ0.2を測定した。なお、試験片は、引張試験の引張方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。
耐応力腐食割れ特性は、D.H.THOMPSON(Materials、Res.and Stds.1(1961)、P108-111)の応力腐食割れ試験法に準じて調査した。すなわち、圧延方向と平行に幅10mm、長さ60mmの試験片を採取し、長さ方向の中心部を曲率半径R:2mmで曲げた後、両端部を結んでループ状に拘束し、応力を付与し、室温で24時間保持した後、一旦拘束を外した後、初期の変位量δ0を測定し、再度両端部を拘束し、これを1Lの約5%アンモニア水を貯留した10Lの容積のデシケータ中に入れ、気相中にループ状に拘束した試験片を配置し、25℃で保持して、Zn量が7mass%以上15mass%以下の時は96時間経過後、Zn量が15mass%超え36.5mass%未満の時には24時間経過後、にループ状の拘束を外して試験片の変位量δ1を測定した。測定した、初期の変位量δ0および変位量δ1を用いて以下の式から残留応力率(%)を算出した。
残留応力率(%)=(1-δ1/δ0)×100
n=5で測定して、その平均残留応力率が、80%以上のものを「◎」、50%以上80%未満のものを「○」、50%未満ものを「×」と評価した。
JCBA(日本伸銅協会技術標準)T307-2007の4試験方法に準拠して曲げ加工を行った。曲げの軸が圧延方向に対して直交するようにW曲げした。特性評価用条材から幅10mm×長さ30mm×厚さ0.25mmの試験片を複数採取し、曲げ角度が90度、曲げ半径が0.25mmのW型の治具(板厚tと曲げ半径Rの比、R/tが1となるW型の治具)を用い、W曲げ試験を行った。
それぞれ3つのサンプルで割れ試験を実施し、各サンプルの4つの視野においてクラックが観察されなかったものを「○」、1つの視野以上でクラックが観察されたものを「×」と評価した。
0.2%耐力が706MPaとされた比較例2においては、耐応力腐食割れ特性については良好であったが、曲げ加工性が不十分であった。
アスペクト比が0.1以下の結晶粒の割合が40%未満とされた比較例3、4においては、耐応力腐食割れ特性が不十分であった。このため、曲げ加工性は評価しなかった。
以上のことから、本発明例によれば、耐応力腐食割れ特性が確実かつ十分に優れているとともに、曲げ加工性にも優れた電子・電気機器用銅合金を提供可能であることが確認された。
Claims (10)
- Znを7mass%超えて36.5mass%未満の範囲で含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、Sの含有量が20massppm未満とされており、
圧延の幅方向に対して直交する面を観察面として、CuおよびZnを含有する母相を、EBSD法により200μm2以上の測定面積を測定間隔0.03μmステップで測定して、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて解析したとき、結晶粒径(双晶を含む)の長径aと短径bで表されるアスペクト比b/aが0.1以下となる結晶粒の面積割合が、Area fractionで、測定した面積全体の40%以上とされているとともに、
0.2%耐力が300MPa以上650MPa未満であることを特徴とする電子・電気機器用銅合金。 - さらに、SnおよびNiのいずれか一種又は二種を含有し、SnおよびNiの合計含有量が5mass%以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の電子・電気機器用銅合金。
- さらに、Co,Mn,Mg,Ti,Al,Si,Cr,Zr,Au,Ag,Pから選択される一種又は二種以上を含有し、これらの元素の合計含有量が0.001mass%以上5mass%以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子・電気機器用銅合金。
- 板厚tと曲げ半径Rの比、R/tが1となるW型の治具を用い、W曲げ試験を実施してもクラックが発生しないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金の圧延材からなり、厚みが0.05mm以上1.0mm以下の範囲内にあることを特徴とする電子・電気機器用銅合金薄板。
- 請求項5に記載の電子・電気機器用銅合金薄板において、
表面に金属めっきが施されていることを特徴とする電子・電気機器用銅合金薄板。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする電子・電気機器用導電部品。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする端子。
- 請求項5または請求項6に記載の電子・電気機器用銅合金薄板からなることを特徴とする電子・電気機器用導電部品。
- 請求項5または請求項6に記載の電子・電気機器用銅合金薄板からなることを特徴とする端子。
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