以下に図面を用いて本開示に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下において、特に断らない限り、エレベーターとは、乗りかごと乗場を主とした乗客運搬装置を示し、エレベーターのドアリオープン制御システムとは、乗場ボタンに関連するドアリオープン制御を含むエレベーターの制御システムを示す。エレベーターのドアリオープン制御システムは、乗場ボタンに関連するドアリオープン制御の他に、エレベーターの昇降制御、エレベーターのドア開閉制御、セフティドアリオープン制御等を含む制御システムである。
以下において、エレベーターのドアリオープン制御システムが設けられる建物を5階とし、3台のエレベーターが並行して昇降するものとするが、これは説明のための例示である。例えば、高層の建物で、より多くのエレベーターで構成されてもよい。
以下で述べる形状、個数等は説明のための例示であって、エレベーターのリオープン制御システムの仕様等に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に、エレベーターのドアリオープン制御システム10の全体構成を示す。以下では、特に断らない限り、エレベーターのドアリオープン制御システム10を、制御システム10と呼ぶ。
制御システム10は、5階建ての建物12に設けられた3台のエレベーター14,16,18を1つの制御装置20で運行制御するマルチカーエレベーターの制御システムである。
制御システム10は、建物12を上下方向に貫通する図示しない昇降路を用い、各階の乗場からの乗客を乗りかご22に乗せ、乗客の要求に応じて昇降路の中を昇降させて、所望の乗場に着床して乗客を降ろすエレベーター14,16,18の制御システムである。
図1では、5階建ての建物12の2階、3階、4階における3台のエレベーター14,16,18の乗場24,26,28を示す。
各階の乗場24,26,28は同じ構成であるので、主として3階の乗場26について述べる。3階の乗場26には、3台のエレベーター14,16,18のそれぞれに対応して3つの乗降口が設けられる。各乗降口は同じ構成であるので、主として、エレベーター18に対応する乗降口について述べる。エレベーター18に対応する乗降口は、建物12の図示しない昇降路を覆う壁部30から後退して乗降口の左右と上を区画する三方枠32が設置される。壁部30には、各階を示す表示板25,27,29が掲示される。例えば、3階の乗場26の壁部30には、数字「3」が記された表示板27が掲示される。同様に、2階の乗場24の壁部30には、数字「2」が記された表示板25が掲示され、4階の乗場28の壁部30には、数字「4」が記された表示板29が掲示される。
壁部30の背後は、3台のエレベーター14,16,18のそれぞれの乗りかご22が昇降する昇降路である。エレベーター18は、建物12の上層階側と下層階側との間で昇降路内を昇降するが、その昇降経路に沿って各階の乗場24,26,28にそれぞれ三方枠32が設置される。エレベーター14が各階の乗場24,26,28に着床する位置は、三方枠32の設置位置である。乗場床面と三方枠32とで区画された矩形の開口部には、乗場扉34が設けられる。乗場扉34は、左右開きの2枚扉である。
3台のエレベーター14,16,18を区別して、エレベーター14を1号機、エレベーター16を2号機、エレベーター18を3号機と呼ぶ。エレベーター14のための各階の乗場扉34には、数字「1」が記された表示板15が貼付される。同様に、エレベーター16のための各階の乗場扉34には、数字「2」が記された表示板17が貼付され、エレベーター18のための各階の乗場扉34には、数字「3」が記された表示板19が貼付される。
壁部30において、三方枠32の左右枠には、乗場ボタン36がそれぞれ設けられる。乗場ボタン36は、乗場24,26,28にいる利用客8が乗りかご22をその階に呼ぶためのかご呼びボタンである。乗場ボタン36は、上層階側へ行く乗りかご22を呼ぶための上向き三角形形状を有するボタンと、下層階側へ行く乗りかご22を呼ぶための下向き三角形形状を有するボタンとの1組で構成される。例えば、3階の乗場26にいる利用客8が4階または5階に行きたい場合には、上向き三角形形状を有するボタンを押す。2階または1階に行きたい場合には、下向き三角形形状を有するボタンを押す。図1の例では、各階の乗場24,26,28にはそれぞれ4組の乗場ボタン36が設けられる。各階の利用客8は、いずれの組の乗場ボタン36を操作してもよい。各乗場ボタン36の操作信号は、乗場24,26,28の区別と、上層階側か下層階側かの区別を付して、適当な信号線を介して、制御装置20に伝送される。
壁部30において、三方枠32の上枠には、対応する1号機、2号機、3号機の乗りかご22の運行状況を表示する現在階表示板38と、昇降表示板40が設けられる。現在階表示板38は、乗りかご22の現在の昇降位置を建物階で表示するもので、1階から5階のそれぞれに対応する5つの点滅灯で構成される。昇降表示板40は、乗りかご22が昇階中を示す上向き三角形形状の点滅灯と、降階中を示す下向き三角形形状の点滅灯とで構成される。図1の例では、1号機は、現在2階に着床中で、これから1階に向けて運行予定であるので、各階の1号機用の三方枠32の昇降表示板40は下向き三角形形状の点滅灯が点灯し、現在階表示板38は2階を示す点滅灯が点灯する。2号機は、現在3階に着床中で、これから上層階に向けて運行予定であるので、各階の2号機用の三方枠32の昇降表示板40は上向き三角形形状の点滅灯が点灯し、現在階表示板38は3階を示す点滅灯が点灯する。3号機は、現在4階から5階の間を昇階中であるので、各階の3号機用の三方枠32の昇降表示板40は上向き三角形形状の点滅灯が点灯し、現在階表示板38は4階を示す点滅灯が点灯する。
上記の表示板25,27,29,15,17,19の形状や数字の書体、乗場ボタン36のボタンの形状、現在階表示板38の点滅灯の数や形状、昇降表示板40の点滅灯の形状等は、説明のための例示であって、上記以外の形状等であってもよい。また、制御システム10の仕様によっては、表示板15,17,19、現在階表示板38、昇降表示板40等の設置を省略してもよい。
1号機のエレベーター14、2号機のエレベーター16、3号機のエレベーター18は、同じ構成で、それぞれ乗りかご22を有する。乗りかご22は、利用客6を乗せて昇降路内を昇降する乗客運搬かごである。乗りかご22には、かご扉70が設けられる。乗場扉34が左右開きの2枚扉であるのに対応して、かご扉70も左右開きの2枚扉である。
乗場扉34とかご扉70が、左右開きの2枚扉であるのは、説明のための例示であって、制御システム10の仕様によっては、片開きの1枚扉でもよく、左右両開きの4枚扉であってもよい。以下では、特に断らない限り、扉の枚数に関わりなく、1つの三方枠32に対する開閉扉の一式を乗場扉34と呼び、1台の乗りかご22に対する開閉扉の一式をかご扉70と呼ぶ。かご扉70は乗りかご22に対して開閉するので、開閉ストロークの大きさに対応して、乗りかご22の幅寸法は、三方枠32の開口幅寸法よりも大きい。
乗りかご22が所望の乗場24,26,28に着床する場合には、乗場扉34とかご扉70がちょうど向かい合うように、乗りかご22の床面61(図2参照)が乗場床面と同じ高さ位置で停止する。例えば、乗場扉34に対し、昇降路の上層階側から乗りかご22が下降してくると、着床位置において、かご扉70と乗場扉34が係合して一体化して開閉するように、図示しない連動開閉機構がかご扉70と乗場扉34とに設けられる。このように、乗りかご22が所望の乗場24,26,28に着床すると、かご扉70と乗場扉34とは連動して開閉するので、以下では、特に断らない限り、かご扉70と乗場扉34を合わせて、ドア34,70と呼ぶ。例えば、ドアリオープンとは、かご扉70と乗場扉34とが連動してリオープンすることである。
乗りかご22には、利用客6が行先階を設定して登録できるかご操作盤63が設けられる(図2参照)。乗場24,26,28においては、ドア34,70が開いて全開状態になると、利用客6,8の乗降が行われる。利用客6,8の乗降が終わると所定条件の下でドア34,70が閉じて全閉状態になり、乗りかご22は、かご操作盤63によって登録された行先階に向けて昇降する。このときは、連動開閉機構の係合が外れ、かご扉70と乗場扉34は、それぞれ所定の付勢力で全閉状態に維持される。
図1の例では、1号機の乗りかご22は、2階の乗場24に着床中で、ドア34,70は全開状態である。2号機の乗りかご22は、3階の乗場26に着床中で、ドア34,70は、閉まりかけの状態である。3号機の乗りかご22は、4階と5階の間で上昇中であるので、かご扉70は全閉状態である。各乗りかご22には、かご内の利用客6を示す。3階の乗場26において2号機の乗りかご22はドア34,70が閉まりかけであるが、乗場26において走ってきた利用客8は、閉まりかけの乗りかご22に乗ろうと考えて、乗場ボタン36を押すところである。
図1において、各乗りかご22の上部の構成を示すため、乗場24,26,28の壁部30を一部破断して示す。各乗りかご22の上部には、ドア34,70の開閉を行うドア開閉部42,44,46が設けられる。各乗りかご22毎にドア開閉部42,44,46を区別する場合は、1号機ドア開閉部42、2号機ドア開閉部44、3号機ドア開閉部46と呼ぶ。各乗りかご22の上部には、さらに、乗場ボタン36に関するドアリオープン制御範囲を調整するドアリオープン調整部48が設けられる。ドアリオープン調整部48の詳細については後述する。1号機ドア開閉部42、2号機ドア開閉部44、3号機ドア開閉部46、及び乗りかご22のドアリオープン調整部48は、適当な信号線を介して、制御装置20と接続される。
制御装置20は、制御システム10の各要素の動作を統合的に制御する装置で、建物12の最上階の機械室に配置される。あるいは、制御システム10の仕様によっては、昇降路の最上部に設け、機械室レスの構成としてもよい。制御装置20は、各乗場24,26,28のそれぞれに設けられる複数の乗場ボタン36、各乗りかご22に設けられるかご操作盤63、ドア開閉部42,44,46、ドアリオープン調整部48、及び、図示しない各種センサ等と接続される。制御装置20は、昇降制御ブロック50と、ドア開閉制御ブロック52とを含む。昇降制御ブロック50は、各乗場ボタン36及び各かご操作盤63の操作状況と、複数の乗りかご22の運行状況とに応じて、最適の乗りかご22を割り当てて各乗場24,26,28に向かわせる機能を有する。ドア開閉制御ブロック52は、各ドア開閉部42,44,46と協働し、割り当てされた乗りかご22が所定の乗場に着床した場合にドア34,70を開き、利用客6が乗降した後にドア34,70を閉じる。
ドア開閉制御ブロック52は、さらに、セフティドアリオープン制御部54と、乗場ボタンドアリオープン制御部56とを含む。
セフティドアリオープン制御部54は、ドア34,70が閉まりかけの場合に、利用客6,8がドア34,70に挟まれる恐れがある場合に、ドア34,70をリオープンする。セフティドアリオープン制御は、周知の技術であるので、詳細な説明を省略するが、乗場ボタンドアリオープン制御とは独立に行われる。換言すれば、乗場ボタンリオープン制御において、ドアリオープンが禁止されてドア34,70が閉動作中であっても、利用客6がドア34,70に挟まれる恐れがある場合には、ドア34,70はリオープンする。
乗場ボタンドアリオープン制御部56は、ドア34,70が閉まりかけのときに乗場26の利用客8が乗場ボタン36を押した場合に、ドア34,70をリオープンするか否かに関する制御を行う。乗場ボタンドアリオープン制御部56は、エレベーターのドアリオープン制御システム10の特徴部分である。
図2は、1号機の乗りかご22の正面図である。図2を用いて、ドアリオープン調整部48の詳細な構成を説明する。図2に、乗りかご22に関する上下方向、幅方向、奥行方向を示す。上下方向は、乗りかご22が昇降する方向に平行な方向で、上層階側が上方側であり、下層階側が下方側である。幅方向は、乗場24側から昇降路側を見た場合に右方側が右側であり、左方側が左側である。奥行方向は、乗場24側から昇降路側に向かう方向である。図2は、奥行方向の乗場側から見た図に相当する。
乗りかご22は、利用客6を収容するかご室21を構成するかご本体部60と、かご上部とを含む。かご上部には、1号機ドア開閉部42及びかご扉開閉機構(図示省略)等が搭載される。かご本体部60は、奥行方向の昇降路側の背面壁部、左右の側壁部、床面部及び天井部で囲まれ、奥行方向の乗場側が開口する箱体である。かご本体部60の乗場側の開口は、全面が開口せず、左右の袖壁部62L,62R、及び、天井側の上壁部64が設けられて、床面61と左右袖壁部62L,62Rと天井側の上壁部64で区画された乗降口の部分が開口する。乗りかご22におけるかご本体部60の乗降口の開口の大きさは、乗場24の三方枠32の開口の大きさに対応する。
左右の袖壁部62L,62Rには、かご室21内におけるかご操作盤63等の各種操作部、表示部等が設けられる。かご本体部60の床面部の乗場側の側面には、敷居板66が取り付けられ、敷居板66には、敷居溝67が設けられる。上壁部64の乗場側の側面には、幅方向に延びるドアレール68が設けられる。
かご扉70は、左右開きの2枚扉であり、2枚のそれぞれを区別する場合には、左側の方をかご扉70L、右側の方をかご扉70Rと呼ぶ。かご扉70Lとかご扉70Rは基本構成が同じであるので、以下では、主としてかご扉70Lについて述べる。
かご扉70Lは、かご本体部60の開口である乗降口を覆うパネル部材であるが、下端部にスライドシュー72Lが取り付けられる。スライドシュー72Lは、かご本体部60の敷居板66の敷居溝67に沿ってスライド移動可能に取り付けられ、かご扉70Lが幅方向に沿って開閉する場合の移動揺れを抑制する働きをする。かご扉70Lの上端部にはドアハンガー74Lが取り付けられ、ドアハンガー74Lは幅方向両端側に回転ローラ76Lを有する。回転ローラ76Lは、ドアレール68の上面を幅方向に沿って転動可能で、これによって、かご扉70Lは、幅方向に移動可能にドアレール68に吊り下げられる。同様に、かご扉70Rは、下端部にスライドシュー72Rが取り付けられ、上端部には幅方向両端側に回転ローラ76Rを有するドアハンガー74Rが取り付けられる。
かご扉70Lとかご扉70Rとは、中心線C-C線に対し左右対称に配置され、1号機ドア開閉部42及びかご扉開閉機構によって幅方向に沿って移動駆動される。かご扉70Lとかご扉70Rは、幅方向に沿って移動駆動される場合には、中心線C-C線に対し左右対称に連動して移動する。図2は、かご扉70が全開状態であるので、かご扉70Lは、かご本体部60の左側の袖壁部62Lとほぼ重なる位置まで左側に退避し、かご扉70Rは、かご本体部60の右側の袖壁部62Rとほぼ重なる位置まで右側に退避した状態である。
これに対し、かご扉70が全閉状態の場合は、かご扉70Lの右端部は中心線C-C線まで移動し、かご扉70Rの左端部は中心線C-C線まで移動して、かご扉70Lの右端部とかご扉70Rの左端部とは互いに突き合わされた状態となる。全閉状態において、かご扉70Lの左端部と、かご本体部60の左側の袖壁部62Lの右端部との間に重なり部があり、かご扉70Rの右端部と、かご本体部60の右側の袖壁部62Rの左端部との間に重なり部がある。この重なり部が生じるように、かご本体部60の左右の袖壁部62L,62Rの幅寸法と、かご扉70L,70Rの幅寸法とが設定される。
かご扉70Lは、全開状態から全閉状態の間において、幅方向に沿って左側から右側に閉まりかけの全範囲であるS0を移動する。同様に、かご扉70Rは、全開状態から全閉状態の間において、幅方向に沿って左側から右側に閉まりかけの全範囲であるS0を移動する。したがって、2枚扉のかご扉70の全体としては、全開状態から全閉状態の間において、閉まりかけの全範囲としての(2×S0)を移動する。
乗りかご22内に利用客6がおり、かご扉70が閉まりかけのときに乗場ボタン36が押された場合に、閉まり始めであればかご扉70をリオープンし、かなり閉まって全閉に近い場合にはかご扉70をリオープンせずにそのまま全閉状態に移行させることがよい。ドアリオープン調整部48は、かご扉70Lについて、閉まりかけの位置の全範囲S0の内で、かご扉70Lの開動作を禁止するリオープン禁止範囲S1の設定を調整する機構である。かご扉70を構成するかご扉Lとかご扉70Rとは連動して開閉し、かご扉70と乗場扉34も連動して開閉するので、ドアリオープン調整部48は、乗りかご22におけるドア34,70に関するリオープン禁止範囲(2×S1)の設定を調整する機構である。
ドアリオープン調整部48は、ドア34,70の閉まりかけの位置の全範囲S0の内で、ドア34,70の開動作を禁止するリオープン禁止範囲S1を設定するリオープン禁止範囲設定部90を含む。さらに、ドア34,70の閉まりかけの位置を検出し、検出した位置がリオープン禁止範囲S1内である場合に、リオープン禁止信号を出力するドア位置出力部100を含む。
ドア34,70の閉まりかけの位置の全範囲は、図2の例では、2×S0であるが、かご扉70L,70Rは連動して開閉するので、かご扉70L,70Rのいずれか一方の閉まりかけの位置の全範囲S0に関してリオープン禁止範囲S1を設定すれば済む。以下では、左側のかご扉70Lの閉まりかけの位置の全範囲であるS0について、リオープン禁止範囲S1を定める。図2において、タイミング板90は、かご本体部60の中心線C-C線の左側の上壁部64において幅方向に所定の長さで延びるリオープン禁止範囲設定部である。リミットスイッチ100は、かご扉70Lのドアハンガー74Lに取り付けられたドア位置出力部100である。
タイミング板90は、長手方向に延びる取付調整用長穴92を有する細長い板部材である。かご本体部60の上壁部64には幅方向に沿って取付調整用長穴92の全長の範囲内の適当な間隔で配置された2つのめねじ部が設けられる。そこで、タイミング板90の取付調整用長穴92に2つのボルト94の軸部を通し、それぞれの先端おねじ部を上壁部64の2つのめねじ部にそれぞれねじ込み、2つのボルト94の頭部でタイミング板90を押さえ込む。これによって、取付調整用長穴92の全長の範囲内で配置位置を調整しながら、タイミング板90をかご本体部60の上壁部64に固定できる。
タイミング板90の長手方向の下面はリミットスイッチ100が接触する位置検出面96である。図2に示すタイミング板90の配置位置の場合、位置検出面96の左端部98は、かご扉70Lが全閉位置から右方向に移動する閉まりかけの過程で、リミットスイッチ100の作用点が最初に接触する位置である。これがタイミング板90におけるリオープン禁止範囲S1の始点となる。リオープン禁止範囲S1の終点は、かご扉70Lがかご本体部60の中心線C-C線の位置まで移動した場合のリミットスイッチ100の作用点がタイミング板90に接触する位置で、図2の場合は、タイミング板90の位置検出面96の右端部99である。
図3は、リミットスイッチ100の詳細図である。リミットスイッチ100は、かご扉70Lのドアハンガー74Lに取り付けられた本体部102、一端が本体部102の支持部104に揺動可能に支持される揺動アーム部106を有する。揺動アーム部106の他端には、タイミング板90に向かい合って配置されてタイミング板90の位置検出面96に接触可能な作用点としてのローラ部108が設けられる。揺動アーム部106には、自由状態でローラ部108が上方側に向かう方向に付勢力が付される。ドアハンガー74Lに対するリミットスイッチ100の配置位置は、ローラ部108が付勢力に抗して下方側に下がった場合の作用点の位置がかご扉70Lの右端部になるように設定される。
タイミング板90の位置検出面96の上下方向に沿った高さ位置は、ローラ部108の自然状態の高さ位置よりも下方側に設定される。したがって、ローラ部108がタイミング板90の位置検出面96に接触する場合には、図3において二点鎖線で示すように、揺動アーム部106は、支持部104を揺動中心として付勢力に抗して下方側に回転する。揺動アーム部106にはアーム側接点110が設けられ、本体部102には本体側接点112が設けられる。ローラ部108がタイミング板90の位置検出面96に接触していない自然状態では、アーム側接点110と本体側接点112は接触していない。ローラ部108がタイミング板90の位置検出面96に接触した状態では、アーム側接点110と本体側接点112は接触する。
例えば、アーム側接点110の信号線aを適当な電流制限抵抗を介して「L」レベルの電位とし、本体側接点112の信号線bを「H」レベルの電位とする。ここで、ローラ部108がタイミング板90に接触すると、自然状態で「L」レベルのアーム側接点110の信号線aの電位は「H」レベルになる。したがって、アーム側接点110の信号線aの電位を検出することで、かご扉70Lの閉まりかけの位置がリオープン禁止範囲S1内か否かを検出できる。この例では、アーム側接点110の信号線aがリオープン禁止信号出力線で、信号線aが「H」レベルを出力する場合がリオープン禁止状態を示し、「L」レベルを出力する場合がリオープン許容状態を示す。
図4から図6を用いて、かご扉70Lの閉まりかけの状態と、信号線aの出力レベルの関係を示す。これらの図は、乗りかご22の上方部分を抜き出した図である。これらの図において、乗りかご22の上壁部64に対するタイミング板90の配置位置は同じである。
図4は、かご扉70Lが全開状態の場合で、図1の1号機及び図2の状態である。この場合は、リミットスイッチ100は、タイミング板90と接触していないので、信号線aは「L」レベルを出力する。この状態で乗場ボタン36が押されると、ドア34,70はリオープンする。
図5は、かご扉70Lが閉まりかけの場合で、図1の2号機の状態である。図5では、かご扉70Lの閉まりかけの位置の全範囲S0の(2/5)だけ閉まり、かご扉70Lとかご扉70Rとの間の開口長さは、{2×(3/5)S0}の場合を示す。この場合は、リミットスイッチ100は、タイミング板90と接触し始め、信号線aは「H」レベルを出力する。この状態で乗場ボタン36が押されても、ドア34,70はリオープンせず、そのまま全閉状態に移行する。
図6は、かご扉70Lが全閉の場合で、図1の3号機の状態である。この場合も、リミットスイッチ100は、タイミング板90と接触しているので、信号線aは「H」レベルを出力する。この状態で乗場ボタン36が押されても、ドア34,70はリオープンせず、全閉状態を維持する。
図7は、タイミング板90の配置位置を調整した例を示す図である。ここでは、ボルト94を一旦緩める。そして、乗りかご22の上壁部64に対するタイミング板90の配置位置を図4~図6の場合に対し右側に(1/5)S0だけ移動させて、リオープン禁止範囲S1の始点である左端部98の位置を調整する。そして、再びボルト94を締め付けて固定する。図7は、かご扉70Lが、閉まりかけの位置の全範囲S0の(3/5)だけ閉まり、かご扉70Lとかご扉70Rとの間の開口長さが、{2×(2/5)S0}の場合を示す。この状態でリミットスイッチ100は、タイミング板90と接触し始め、信号線aは「H」レベルを出力する。この状態で乗場ボタン36が押されても、ドア34,70はリオープンせず、そのまま全閉状態に移行する。図5は、ドア34,70が{2×(2/5)S0}閉まりかけた段階でリオープン禁止状態が始まるが、図7では、ドア34,70が{2×(3/5)S0}閉まりかけた段階でリオープン禁止状態が始まる。その時間差だけ、乗場の利用客8は、ドア34,70が閉まりかけの乗りかご22に乗り込むことが可能になる。
建物12におけるエレベーターの台数、エレベーターの利用客6,8の多寡等は、建物12に特有の特性であるので、その特性の差に応じて、乗りかご22に関するドア34,70のリオープン制御を設定したい場合が生じる。上記構成によれば、そのような場合に、乗りかご22の上壁部64に対するタイミング板90の配置位置を移動させて、リオープン禁止範囲S1の始点を調整することが可能になる。
上記では、タイミング板90をかご本体部60の上壁部64に設け、リミットスイッチ100をかご扉70Lのドアハンガー74Lに設けたが、これは説明のための例示である。タイミング板90とリミットスイッチ100は、協働して、リオープン禁止範囲(2×S1)を設定し、ドア34,70の閉まりかけの位置がリオープン禁止範囲(2×S1)内である場合にリオープン禁止信号を出力するものであればよい。
したがって、タイミング板90の設置個所と、リミットスイッチ100の設置個所は、相対的なものであって、タイミング板90をドアハンガー74Lに設け、リミットスイッチ100をかご本体部60の上壁部64に設けてもよい。
また、リオープン禁止範囲S1が始まるかご扉70Lの閉まりかけの位置が同じであれば、リミットスイッチ100とタイミング板90の設置位置を共に変更してもよい。上記では、リミットスイッチ100のローラ部108が上下に移動する作用点の位置はかご扉70Lの右端部としたが、一例を挙げると、リミットスイッチ100の作用点の位置を、かご扉70Lの幅方向の中央部に設定してもよい。その例の場合には、タイミング板90の設置位置をかご扉70Lの幅方向の長さの(1/2)だけ左側にずらせばよい。
上記では、かご扉70Lの閉まりかけの位置の全範囲S0の内で、リオープン禁止範囲S1の長さを有するタイミング板90を用いた。これに代えて、かご扉70Lの閉まりかけの位置の全範囲S0の内で、リオープン許容範囲(S0-S1)の長さを有する別のタイミング板を用いてもよい。この場合には、リミットスイッチ100のローラ部108が(S0-S1)の長さを有するタイミング板に接触している期間がリオープン許容期間で、ローラ部108が(S0-S1)の長さを有するタイミング板から外れると、リオープン禁止信号が出力される。リミットスイッチ100の信号線aの電位レベルは、リオープン許容期間が「H」レベルとなり、「L」レベルの信号がリオープン禁止信号となる。
上記では、かご扉70Lの側にタイミング板90とリミットスイッチ100を設けたが、かご扉70Rの側にタイミング板90とリミットスイッチ100を設けてもよい。また、リミットスイッチ100の揺動アーム部106の一端である支持部104は、他端であるローラ部108に対し、幅方向の左側に配置されているが、支持部104がローラ部108に対し、幅方向の右側に配置してよい。また、リミットスイッチ100は、ドアハンガー74Lの上面に取り付けられるが、ドアハンガー74Lのいずれかの側面に取付けてもよい。また、リミットスイッチ100は揺動アーム部106を有するタイプとしたが、上下移動型作用子を有するタイプでもよい。
上記では、リオープン禁止範囲設定部をタイミング板90とし、ドア位置出力部をリミットスイッチ100としたが、これは説明のための例示である。ドア34,70のリオープン禁止信号を出力するときのかご扉70Lの閉まりかけの位置を調整できる構成であればよい。例えば、タイミング板90に代えて適当な形状を有するカム板を用い、カム板とリミットスイッチ100の組合せとしてもよい。あるいは、リミットスイッチ100に代えて適当な位置検出センサを用い、タイミング板90と位置検出センサの組合せとしてもよい。
次に、エレベーターのドアリオープン制御システム10の制御装置20の作用について、特に、乗場ボタンドアリオープン制御部56の作用について、図8を用いて詳細に説明する。図8は、制御装置20が実行するドアリオープン制御手順を示すフローチャートである。ここでは、図1の三台のエレベーター14,16,18の内、2号機のエレベーター16を例として述べる。
2号機は、建物12の下層階側から昇階して3階に着床する(S10)。この手順は、制御装置20の昇降制御ブロック50の機能により実行される。着床すると、ドア34,70が全閉状態から開き始める(S12)。そして、ドア34,70が全開状態(S14)となると、利用客6の乗降が行われる(S16)。そして、適当な時間経過またはかご操作盤63によって「ドア閉」の操作がなされると、ドア34,70が全開状態から閉まりはじめ、閉まりかけ状態に移行する(S18)。S12からS18までのドア34,70の開閉は、制御装置20のドア開閉制御ブロック52の制御の下で、2号機ドア開閉部44の機能によって実行される。図1の乗場26における2号機は、S18の状態である。
次に、建物12の3階の乗場26における乗場ボタン36が押されたか否かが判定される(S20)。S20の判定が否定される場合は、S26に進み、ドア34,70はそのまま閉まり続け全閉状態となる。S20の判定が肯定されると、次に、リオープン禁止信号を受け取ったか否かが判定される(S22)。リオープン禁止信号を受け取ったか否かは、2号機の乗りかご22に設けられたリミットスイッチ100の信号線aの電位レベルによって判定される。
信号線aの電位レベルが「L」の場合はリオープン禁止信号を受け取ってないのでS22の判定が否定され、乗場ボタン36のかご呼び信号に応じて、ドア34,70はリオープン(S24)して、S14に進み、ドア34,70は全開する。これにより、図1の3階で乗場ボタン36を押した利用客8は、2号機の乗りかご22に乗り込むことができる(S16)。
信号線aの電位レベルが「H」の場合はリオープン禁止信号を受け取っているのでS22の判定が肯定され、乗場26の乗場ボタン36からのかご呼び信号を無効化し、所定のドア開閉手順に従いドア34,70をそのまま閉め続け全閉状態に移行させる(S26)。S20からS26の手順は、制御装置20のドア開閉制御ブロック52の乗場ボタンドアリオープン制御部56の機能によって実行される。S26の後は、2号機における登録行先階へ昇階が行わわれ(S28)、その後S10へ戻る。S28の手順は、制御装置20の昇降制御ブロック50の機能により実行される。
上記のように、まず、ドア34,70の閉まりかけの位置の全範囲(2×S0)の内で、ドア34,70の開動作を禁止するリオープン禁止範囲(2×S1)を設定する。そして、ドア34,70の閉まりかけの位置を検出して検出した位置がリオープン禁止範囲(2×S1)内である場合に、リオープン禁止信号を出力する。そして、リオープン禁止信号を受け取った場合には乗場ボタン36からのかご呼び信号を無効化して所定のドア開閉手順に従ってドア34,70を全閉状態に移行させる。これによって、ドア34,70がリオープン禁止範囲(2×S1)まで閉まりかかると、その状態で乗場ボタン36を押しても、ドア34,70はリオープンすることなく、そのまま閉じる。したがって、駆け込み等を防止して安全性が向上し、エレベーターの稼働効率が向上する。
図9は、図8の変形例を示すフローチャートである。ここでは、乗りかご22は、かご内積載荷重を検出して所定の乗客制限荷重を超える場合に満員状態信号を出力する満員状態検出部を備える。この場合には、S22におけるリオープン禁止信号を受け取ったか否かの判定が否定されリオープン禁止信号を受け取っていない場合に、満員状態信号を受け取ったか否かの判定が行われる(S30)。S30の判定が肯定される場合には、リオープン禁止信号を受け取っていなくても、S26に進み、かご呼び信号を無効化して所定のドア開閉手順に従ってドア34,70を全閉状態に移行させる。S30の判定が否定される場合には、S24に進み、乗場ボタン36のかご呼び信号に応じて、ドア34,70はリオープンする。S30の手順は、制御装置20のドア開閉制御ブロック52の乗場ボタンドアリオープン制御部56の機能によって実行される。
図9の制御手順によれば、リオープン禁止信号を受け取っていない場合であっても乗りかご22の満員状態信号を受け取った場合には、かご呼び信号を無効化して所定のドア開閉手順に従ってドア34,70を全閉状態に移行させる。これにより、満員状態の乗りかご22への駆け込み等を防止して安全性が向上し、エレベーターの稼働効率が向上する。
図10は、図9の変形例を示すフローチャートである。図9では、S22の判定が否定されると、S30において満員状態信号を受け取ったか否かの判定が行われ、判定が否定されるとS24に進みドア34,70をリオープンさせる。図10では、S30の判定が否定されると、2号機の乗りかご22以外の他の乗りかご22に対し、すでに3階の乗場26に向かわせる割り当てを行っているか否かが判定される(S32)。S32の手順は、制御装置20の昇降制御ブロック50の機能により実行される。S32の判定が肯定されると、すでに他の乗りかご22が3階に向かっているので、S26に進み、3階の乗場ボタン36のかご呼び信号を無効化して所定のドア開閉手順に従ってドア34,70を全閉状態に移行させる。S32の判定が否定される場合には、S24に進み、乗場ボタン36のかご呼び信号に応じて、ドア34,70はリオープンする。
図10の制御手順によれば、一の乗りかご22についてリオープン禁止信号を受け取っておらず、満員状態信号を受け取っていない場合であっても、他の乗りかご22に対しすでに3階の乗場26に向かわせる割り当てを行っている場合には、かご呼び信号を無効化させる。これにより、一の乗りかご22の閉まりかけのドア34,70について全閉状態に移行させても、他の乗りかご22が3階の乗場26に向かっているので、乗場26で乗場ボタン36を押した利用客8を他の乗りかご22に誘導できる。したがって、駆け込み等を防止して安全性が向上し、エレベーターの稼働効率が向上する。