実施の形態.
図1は、本実施の形態に係る圧縮機1の一例を概略的に示す縦断面図である。本実施の形態に係る圧縮機1の構成について図1を用いて説明する。なお、圧縮機1は、空気調和装置等の冷凍サイクル装置に用いられるものであり、冷凍サイクル装置の冷媒回路を構成する要素となる。
なお、図1を含む以下の図面では、冷媒回路、並びに、例えば、放熱器、蒸発器、減圧装置、及び油分離器等の冷媒回路を構成する他の構成要素については図示していない。また、以下の図面では各構成部材の寸法の関係及び形状が、実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面では、同一又は類似の部材又は部分には、同一の符号を付すか、又は、符号を付すことを省略している。また、以下の説明における圧縮機1の各々の構成部材同士の位置関係、例えば上下関係等の位置関係は、原則として、圧縮機1を使用可能な状態に設置したときの位置関係とする。なお、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上、そのように記載しているだけであって、装置あるいは部品の配置及び向きを限定するものではない。
[圧縮機1の構成]
圧縮機1は、ローリングピストン型のシングルロータリー式圧縮機であり、圧縮機1の内部に吸入した低圧のガス冷媒を、高圧のガス冷媒として吐出する流体機械である。圧縮機1の筐体は、シリンダ形状に形成された鉄製の圧力密閉容器2によって構成されている。圧力密閉容器2は、中空円筒形状の胴体部2aと、縦断面がU字形状の底部2bと、縦断面が逆U字形状の蓋部2cとにより構成され、底部2b及び蓋部2cの開口部の外側面は、胴体部2aの開口部の内側面に固定されている。胴体部2aと底部2bとの固定部分、及び、胴体部2aと蓋部2cとの固定部分は、例えばアーク溶接又は抵抗溶接等によって接合されている。なお、圧縮機1の胴体部2aを構成する円筒体の製造方法の詳細については、後述する。
圧力密閉容器2の胴体部2aの外側には、サクションマフラ3の筐体3aが配置されている。図1を含む以下の図面では図示しないが、サクションマフラ3の筐体3aは、圧力密閉容器2の外側面に配置された支持部材を介して圧力密閉容器2の胴体部2aに固定されている。サクションマフラ3の筐体3aの頂部には、流入管3bが筐体3aを貫通して固定されている。流入管3bは、低圧のガス冷媒又は乾き度の高い二相冷媒をサクションマフラ3の筐体3aの内部に流入させる冷媒配管である。また、サクションマフラ3の筐体3aの底部には、吸入管4の一端が貫通して固定されており、吸入管4の他端は、圧力密閉容器2の胴体部2aの側面部を貫通して固定されている。
サクションマフラ3は、流入管3bから流入する冷媒により発生する騒音を低減又は除去する消音器である。また、サクションマフラ3は、アキュムレータ機能も有しており、余剰冷媒を貯留する冷媒貯留機能と、運転状態が変化する際に一時的に発生する液冷媒を滞留させることによる気液分離機能とを有している。サクションマフラ3の気液分離機能により、圧力密閉容器2の内部に大量の液冷媒が流入し、圧縮機1で液圧縮が行われるのを防ぐことができる。
吸入管4は、低圧のガス冷媒をサクションマフラ3から圧力密閉容器2の内部に吸入させる冷媒配管である。圧力密閉容器2の胴体部2aに設けられた吸入穴5には、固定部材6が配置されており、吸入管4は、吸入穴5に配置された固定部材6を介して、圧力密閉容器2の胴体部2aに固定されている。なお、図1を含む以下の図面では図示しないが、吸入管4は、側面部に油戻し穴が設けられて、冷凍サイクル装置の油分離器において分離された高圧のガス冷媒に含まれる潤滑油成分が、吸入管4を介して圧力密閉容器2の内部に戻るように構成されてもよい。
固定部材6は、例えば、接続管6aと、リング6bとを有する。接続管6aは、一端側が吸入穴5に挿入されており、圧力密閉容器2の内部と連通している。吸入管4は、接続管6aの他端側に挿入されている。リング6bは、吸入穴5に接合されており、接続管6aの外側面及び圧力密閉容器2に接合され、吸入管4と吸入穴5との間の隙間を密封している。圧縮機1は、固定部材6によって、圧力密閉容器2の内部の気密性が確保されている。
圧力密閉容器2の蓋部2cの上面には、吐出管7が貫通して固定されている。吐出管7は、高圧のガス冷媒を圧力密閉容器2の外部に吐出させる冷媒配管である。吐出管7と蓋部2cとの固定部分は、例えばろう付け又は抵抗溶接等によって接合されている。
更に、圧力密閉容器2の蓋部2cの上面には、ガラス端子8が配置されている。ガラス端子8は、外部電源と接続されるインタフェースを提供している。外部電源は、圧縮機1に電力を供給する電源装置であり、交流周波数が50Hz又は60Hzの一般商用交流電源、又は交流周波数を変化させることが可能なインバータ電源が用いられる。周波数を変更できるインバータ電源を用いた場合、圧縮機1の回転数を変化させることができるため、圧縮機1では高圧のガス冷媒の吐出管7からの吐出量を制御することができる。なお、以降の説明において、図1を含む以下の図面では、ガラス端子8に接続される外部電源は図示していない。
圧力密閉容器2の内部には、電動機部10と、シャフト20と、圧縮機構部30とが収容されている。電動機部10は、圧力密閉容器2における固定部材6の配置位置より上方に配置されている。シャフト20は、圧力密閉容器2の中心部において、電動機部10と圧縮機構部30との間に配置され、電動機部10と圧縮機構部30との間を上下方向に延びるように設けられている。圧縮機構部30は、圧縮機構部30の内部が吸入管4と連通するように配置されている。すなわち、圧力密閉容器2の内部においては、圧縮機構部30の上方に電動機部10が配置されている。また、圧力密閉容器2の内部の中空空間は、圧縮機構部30で圧縮された高圧のガス冷媒で満たされている。
電動機部10は、外部電源から供給された電力を用いてシャフト20に回転駆動力を発生させ、シャフト20を介して圧縮機構部30に回転駆動力を伝達するモータとして構成される。電動機部10は、上面視において中空円筒形状の外観を有する固定子12と、固定子12の内側面の内側に回転自在に配置された円筒状の回転子14とを備えている。固定子12は、焼きばめ等により圧力密閉容器2の胴体部2aの内側面に固定され、導線16を介してガラス端子8に接続されている。電動機部10は、外部電源から供給される電力が、固定子12を構成する巻回されたコイルに導線16を介して供給されることにより、固定子12の内側面の内側で回転子14を回転させることができる。圧縮機1においては、例えばDCブラシレスモータ等が電動機部10として用いられる。
回転子14の中心部には、シャフト20が回転子14を貫通して固定されている。シャフト20は、シャフト20の外側面の一部である固定面20aにて回転子14を固定し、圧縮機構部30に回転子14の回転駆動力を伝達する回転軸である。シャフト20は、固定面20aから上下方向、すなわち、圧力密閉容器2の蓋部2cの方向と圧力密閉容器2の底部2bの方向とに延びるように設けられている。
また、シャフト20は、固定面20aの下方に位置し、圧縮機構部30の内部においてシリンダ31と対応する位置に配置される偏心部24を有している。偏心部24の外周には、偏心部24の外側面に沿って回転自在に取り付けられた略円筒状のピストン26が配置されている。ピストン26は、電動機部10によってシャフト20が回転すると、シリンダ31内をその内周面に沿って回転する。
また、図1を含む以下の図面には図示していないが、シャフト20の中心部には、シャフト20の下端から上方に延在し、シャフト20の下端から吸い上げられた冷凍機油40である潤滑油が流動する油穴が設けられている。また、シャフト20の外側面には上述の油穴と連通し、圧縮機構部30に潤滑油を供給する複数の給油口が設けられている。
また、図1を含む以下の図面には図示していないが、シャフト20の油穴の下端部には遠心ポンプが配置された構成にできる。上述の遠心ポンプは、圧力密閉容器2の底部2bに貯留された冷凍機油40を吸い上げることができるように、例えば螺旋状の遠心ポンプとして構成されている。なお、冷凍機油40としては、例えば、鉱油系、アルキルベンゼン系、ポリアルキレングリコール系、ポリビニルエーテル系、ポリオールエステル系の潤滑油等が用いられる。
図2は、本実施の形態に係る圧縮機1の圧縮機構部30の内部構造の一例を示す図1のA-A断面における概略図である。次に、圧縮機1の圧縮機構部30の構造について、図1と共に図2を用いて説明する。
圧縮機構部30は、電動機部10から供給された回転駆動力により、吸入管4から圧力密閉容器2の低圧空間に吸入された低圧のガス冷媒を高圧のガス冷媒に圧縮し、圧縮した高圧のガス冷媒を圧縮機構部30の上方に吐出するものである。
圧縮機構部30は、一対の中空円板面31aと、一対の中空円板面31aの内縁部の間に延びるように設けられた内側面31bと、一対の中空円板面31aの外縁部の間に延びるように設けられた外側面31cとを有する中空円筒形状のシリンダ31を備えている。シリンダ31の外側面31cは、アークスポット溶接等のアーク溶接又は焼き嵌めによって、圧力密閉容器2の胴体部2aの内側面に固定されている。シリンダ31の中空部分310は、シリンダ31の内側面31bに取り囲まれた空間に構成され、シャフト20の偏心部24及びピストン26が収容されている。すなわち、シリンダ31は、シリンダ31の中空部分310において、シャフト20の回転により、シャフト20の偏心部24及びピストン26が偏心回転できるように構成されている。
シリンダ31には、吸入管4とシリンダ31の中空部分310との間を、接続管6aを介して連通し、低圧のガス冷媒を吸入管4からシリンダ31の中空部分310に流入させる吸入通路312が形成されている。この吸入通路312を介してサクションマフラ3が中空部分310に接続されている。また、シリンダ31の内側面には、上下方向に延在する半円形状の吐出通路314が設けられている。また、シリンダ31には、上面視において、シリンダ31の内側面31bとシリンダ31の外側面31cと間の半径方向に、ベーン溝316が形成されている。
シリンダ31のベーン溝316には、ベーン32が収容されている。ベーン32は、ピストン26の偏心運動によってベーン溝316の内部を半径方向に往復運動するように構成された摺動部材である。シリンダ31の中空部分310に配置されたベーン32の先端部32aは、ベーン溝316の内部に設けられたバネ等の弾性体33の復元力又は圧縮機構部30の上方の高圧部分からの圧力によって、常にピストン26の外側面に当接するように押しつけられている。図2に示すように、ピストン26の回転駆動中に、シリンダ31の中空部分310は、ベーン32とピストン26によって、吸入通路312と連通する低圧空間部310aと、吐出通路314と連通する高圧空間部310bとに仕切られる。低圧空間部310a及び高圧空間部310bは、後述する圧縮機構部30の圧縮室を構成する空間となる。なお、圧縮機構部30の圧縮室においては、低圧空間部310aは低圧室とも称され、高圧空間部310bは高圧室とも称される。
また、シリンダ31には、ベーン溝316と連通し、シリンダ31の一対の中空円板面31aを貫通するベーン溝開口部318が設けられている。圧縮機構部30では、ベーン溝開口部318を介して、圧縮機構部30の上方の高圧部分からの圧力を、ベーン32の末端部32bに加えることができる。また、圧縮機構部30は、ベーン溝開口部318によって、シリンダ31の外側面方向へのベーン32の移動を制限することができる。また、高圧のガス冷媒から分離された潤滑油は、ベーン溝開口部318によって、ベーン溝316とベーン32との間のクリアランスに供給され、ベーン32を円滑に往復運動させることができる。
図1を含む以下の図面では図示しないが、ベーン溝316とベーン32との間のクリアランスは、ベーン溝316とベーン32との間で摩擦が生じないように構成されている。一方、ベーン溝316とベーン32との間のクリアランスが大きくなると、シリンダ31の中空部分310で圧縮された冷媒ガスが、クリアランスとベーン溝開口部318とを介して、圧縮機構部30の外部に漏洩し、圧縮効率が低下する可能性がある。したがって、圧縮機構部30では、ベーン溝316とベーン32との間で摩擦が生じない程度にクリアランスを小さくすることにより、圧縮された冷媒ガスの漏れを抑制し、漏洩損失を低減し、圧縮効率の向上を図ることができる。
また、シリンダ31には、シリンダ31の外側面31cの側に位置し、一対の中空円板面31aを貫通する複数の開口部319が形成されている。高圧のガス冷媒から分離されて重力作用によりシリンダ31の上側の中空円板面31aに移動した潤滑油は、開口部319によって、圧力密閉容器2の底部2bに戻ることが可能となるため、圧縮機1は冷凍機油40の枯渇を防ぐことができる。
シリンダ31の上側の中空円板面31a、すなわち圧力密閉容器2の蓋部2cの側の中空円板面31aには、上軸受34が配置されている。シリンダ31の下側の中空円板面31a、すなわち圧力密閉容器2の底部2bの側の中空円板面31aには、下軸受35が配置されている。上軸受34、シリンダ31及び下軸受35には、シャフト20が貫通している。上軸受34及び下軸受35は、シャフト20を摺動自在に支持するすべり軸受けである。上軸受34及び下軸受35は、シャフト20を回転自在に支持している。
上軸受34は、シリンダ31の上面部に設けられており、中空部分310の上部開口を塞ぐ。下軸受35は、シリンダ31の下面部に設けられており、中空部分310の下部開口を塞ぐ。このように、上軸受34、シリンダ31及び下軸受35は、この順に積層され、中空部分310の上下開口を上軸受34と下軸受35とにより塞ぐことによって、中空部分310内の気密性が確保されている。
上軸受34は、上面視において中空円板状の形状を有している。上軸受34は、シリンダ31の上側の中空円板面31aに固定される固定部34aと、シャフト20の外側面を摺動自在に支持する軸受部34bとを有している。なお、上軸受34は、図1の縦断面図においては、2つのL字形状の部材として表示されている。また、上軸受34は、例えば、ボルト等によりシリンダ31の上側の中空円板面31aに固定されている。
下軸受35は、下面視において中空円板状の形状を有している。下軸受35は、シリンダ31の下側の中空円板面31aに固定される固定部35aと、シャフト20の外側面を摺動自在に支持する軸受部35bとを有している。なお、下軸受35は、図1の縦断面図においては、2つのL字形状の部材として表示されている。また、下軸受35は、例えば、ボルト等によりシリンダ31の下側の中空円板面31aに固定されている。
なお、上軸受34の固定部34aの上面側には、圧縮機構部30における冷媒の圧縮時に発生する騒音を除去又は低減する消音器を配置することができる。消音器には、上軸受34に設けられた吐出口から流入する高圧のガス冷媒を圧力密閉容器2の内部に吐出させる複数の開口部を設けることができる。
圧縮機構部30においては、ピストン26、シリンダ31、ベーン32、上軸受34の固定部34a、及び下軸受35の固定部35aに囲まれた密閉自在な空間は、吸入管4から吸入された低圧のガス冷媒を圧縮する圧縮室を構成する。圧縮室で圧縮された高圧のガス冷媒は、上軸受34に設けられた吐出口から吐出される。なお、上軸受34に設けられた吐出口は、図1を含む以下の図面では図示していない。
本実施の形態では、圧縮機1を縦置型の圧縮機として構成しているが、横置型の圧縮機として構成してもよい。また、本実施の形態では、圧縮機1をローリングピストン型のロータリー式圧縮機として構成しているが、スイングベーン方式のスイング圧縮機として構成しても、スクリュ圧縮機又はスクロール圧縮機として構成してもよい。また、本実施の形態では、シングルロータリー式のロータリー圧縮機として構成しているが、ツインロータリ式のロータリー圧縮機として構成してもよい。また、本実施の形態では、圧縮機1を単段圧縮機とし、圧縮機構部30を1つのみ有する構成としているが、圧縮機1を多段圧縮機とし、複数の圧縮機構部30によって冷媒を順次圧縮する構成としてもよい。
[圧縮機1の動作]
次に、本実施の形態の圧縮機1の動作について説明する。電動機部10の駆動によりシャフト20が回転すると、シャフト20と共に、シリンダ31の内部に収容された偏心部24及びピストン26が偏心回転する。偏心部24及びピストン26の偏心回転により、ピストン26の外周面は、シリンダ31の中空部分310において、シリンダ31の内側面31bに接触して移動する。シリンダ31のピストン26の偏心回転と連動し、シリンダ31のベーン溝316の内部に配置されたベーン32がピストン運動する。吸入管4から吸入通路312を介して圧縮機構部30に流入した低圧のガス冷媒は、ピストン26、シリンダ31、ベーン32、上軸受34の固定部34a、及び下軸受35の固定部35aに囲まれた密閉空間である圧縮室に流入する。圧縮室の内部に流入した低圧のガス冷媒は、ピストン26の偏心回転による圧縮室の容積の減少に伴い、高圧のガス冷媒に圧縮される。高圧のガス冷媒は、上軸受34に設けられた吐出口を介して、圧縮機構部30の外部の圧力密閉容器2の内部の中空空間に吐出される。圧力密閉容器2の内部の中空空間に吐出された高圧のガス冷媒は、例えば、電動機部10の固定子12と回転子14との間の隙間等を通過し、吐出管7を介して圧力密閉容器2の外へと吐出される。
[圧縮機1の製造方法]
次に、本実施の形態の圧縮機1に係る製造方法及び製造装置について説明する。
図3は、圧力密閉容器2を構成する胴体部2aの製造方法の加工工程を示すフロー図である。圧力密閉容器2の胴体部2aは、鋼板50を成形加工することによって製造される。より詳細には、胴体部2aは、矩形状の鋼板50に対して巻き加工(ステップS1)、縮管加工(ステップS2)、突合せ溶接加工(ステップS3)、溶接ビード潰し加工(ステップS4)、及び、拡管加工(ステップS5)を行って製造される。ここではまず、巻き加工(ステップS1)、縮管加工(ステップS2)、突合せ溶接(ステップS3)の各加工工程について説明し、その後、本発明の特徴部分である溶接ビード潰し加工(ステップS4)について説明する。
図4は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程において、圧力密閉容器2の胴体部2aの製造工程で用いられる成形前の鋼板50の外観を概略的に示す斜視図である。図3に示すように、胴体部2aの製造には、表面及び裏面として、第1板状面部52a及び第2板状面部52bを有する矩形かつ平板状の鋼板50が用いられる。第1板状面部52a及び第2板状面部52bは、矩形形状の一対の板状面部52である。矩形状の鋼板50は、第1辺縁部54aと第2辺縁部54bとが短辺側の縁部を構成する。第1辺縁部54a及び第2辺縁部54bは、鋼板50において、互いに対辺の位置にある辺縁部である。また、矩形状の鋼板50は、第3辺縁部56aと第4辺縁部56bとが長辺側の縁部を構成する。第3辺縁部56a及び第4辺縁部56bは、鋼板50において、互いに対辺の位置にある辺縁部である。鋼板50の材料としては、例えばステンレス鋼又は炭素鋼等の鉄鋼材料が用いられる。
[巻き加工(ステップS1)]
図5は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程における、巻き加工前の鋼板50の構造及びロール装置100の一部の構造を示す概略図である。
図5に示すように、鋼板50の巻き加工では、例えば、第1ローラ100aと第2ローラ100bと第3ローラ100cとを有するロール装置100が用いられる。ロール装置100において、第1ローラ100aの直径は、第2ローラ100b及び第3ローラ100cの直径よりも大きい。鋼板50は、鋼板50の一方の板状面部52、例えば第2板状面部52bが第1ローラ100aに接触するように配置される。
図6は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程における、巻き加工の開始時の鋼板50の構造及びロール装置100の一部の構造を示す概略図である。図6では、巻き加工開始時における第2ローラ100b及び第3ローラ100cの鋼板50に対する押圧方向を矢印で示している。
図6に示すように、巻き加工の開始時においては、ロール装置100では、第2ローラ100b及び第3ローラ100cを鋼板50の第1板状面部52aに対して垂直に押圧させ、鋼板50を第1ローラ100aに向けて押圧させる動作が行われる。ロール装置100は、第2ローラ100b及び第3ローラ100cの鋼板50に対する押圧動作により、第2ローラ100b及び第3ローラ100cと第1ローラ100aとの間に鋼板50を挟むことができる。
図7は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程における、巻き加工中の鋼板50の構造及びロール装置100の一部の構造を示す概略図である。図7では、鋼板50の巻き加工中における第1ローラ100a、第2ローラ100b、及び第3ローラ100cの回転方向を矢印で示している。
図7に示すように、鋼板50の巻き加工中においては、第1ローラ100aでは、第2ローラ100b及び第3ローラ100cとは逆方向の回転動作が行われる。例えば、図7に示すように、ロール装置100においては、第1ローラ100aでは時計回りの回転動作が行われ、第2ローラ100b及び第3ローラ100cでは反時計回りの回転動作が行われる。ロール装置100は、第1ローラ100a、第2ローラ100b、及び第3ローラ100cの回転動作により、鋼板50を第1ローラ100aの回転方向に第1ローラ100aに沿って移動させ、鋼板50に対する巻き加工を行わせることができる。
図8は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程における、巻き加工終了時の鋼板50の構造及びロール装置100の一部の構造を示す概略図である。
図8に示すように、ロール装置100における第1ローラ100a、第2ローラ100b、及び第3ローラ100cの回転動作により、鋼板50は、第3辺縁部56aがC字形状となるように巻き加工され、ロール状に成形される。鋼板50に対する巻き加工終了後、ロール装置100においては、第2ローラ100b及び第3ローラ100cを鋼板50から離れる方向に移動させる動作が行われる。第2ローラ100b及び第3ローラ100cの移動後、ロール装置100においては、鋼板50が第1ローラ100aから取り外される。
以上、図5~図8に説明したように、本実施の形態の圧縮機1の製造工程においては、鋼板50に対する巻き加工によって、矩形状の鋼板50が、ロール状に成形される。
[縮管加工(ステップS2)]
図9は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程における、縮管加工の開始時の鋼板50及び縮管装置110の一部の構造を示す概略図である。
図9に示すように、ロール状の鋼板50に対する縮管加工では、例えば、半円形状の第1溝部112aを有する第1縮管金型112と、半円形状の第2溝部114aを有する第2縮管金型114とを有する縮管装置110が用いられる。縮管装置110においては、第1縮管金型112の第1溝部112aは第2縮管金型114の第2溝部114aと向き合って配置される。縮管加工の開始時においては、ロール状に巻き加工された鋼板50が、縮管装置110の第1溝部112aと第2溝部114aとの間に挟まれる。
図10は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程における、縮管加工中の鋼板50及び縮管装置110の構造を示す概略図である。図10では、鋼板50の縮管加工中における第2縮管金型114の押圧方向を矢印で示している。
図10に示すように、鋼板50の縮管加工中においては、縮管装置110では、第2縮管金型114を第1縮管金型112に向けて押圧させる動作が行われる。縮管装置110は、第2縮管金型114の押圧動作により、鋼板50の第1辺縁部54aと第2辺縁部54bとを接触させることができる。また、第2縮管金型114の押圧動作により、第1溝部112aと第2溝部114aとの間に挟まれた鋼板50が円筒形状に成形される。鋼板50に対する縮管加工の終了後、縮管装置110においては、第2縮管金型114を鋼板50から離れる方向に移動させる動作が行われる。第2縮管金型114の移動後、縮管装置110においては、鋼板50が第1縮管金型112から取り外される。
以上、図9及び図10に説明したように、本実施の形態の圧縮機1の製造工程においては、鋼板50に対する縮管加工によって、ロール状の鋼板50は、円筒形状の鋼板50に縮管加工される。これにより、鋼板50は、第1辺縁部54a及び第2辺縁部54bの対向する両端同士が当接した状態に成形される。
[突合せ溶接加工(ステップS3)]
図11は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程における、突合せ溶接加工時の鋼板50及び突合せ溶接装置120の一部の構造を示す概略図である。図11では、突合せ溶加工における突合せ溶接装置120の移動方向を矢印で示している。図11に示すように、縮管加工により円筒形状に成形された鋼板50の第1辺縁部54a及び第2辺縁部54bは、突合せ溶接装置120によって接合される。すなわち、突合せ溶接加工では、縮管加工によって当接した鋼板50の両端同士の継ぎ目が突合せ溶接装置120によって溶接される。
突合せ溶接装置120は、例えば、シーム溶接等の抵抗溶接用溶接装置、又はTIG溶接等のアーク溶接用溶接装置として構成できる。突合せ溶接装置120は、鋼板50の第1辺縁部54aと第2辺縁部54bとの溶接を行う溶接トーチ122を備えている。また、図11では図示しないが、突合せ溶接装置120は、例えば商用の交流電源から供給される交流電力を、溶接で用いられる電力に変換する溶接電源と、溶接電源から流れる電流を溶接用に増幅して溶接トーチ122に流す溶接変圧器とを備えている。溶接トーチ122の先端部122aには、溶接電極124が取り付けられている。溶接電極124は、例えば、純タングステン電極若しくは純モリブデン電極等の純金属電極、又は銅クロム合金電極又は銅アルミナ合金電極等の合金電極として構成できる。
なお、鋼板50の第1辺縁部54aと第2辺縁部54bとの接合は溶接により行うものとしたが、ろう付け等により接合してもよい。
本実施の形態の圧縮機1の製造工程においては、鋼板50の突合せ溶接により、円筒形状の圧力密閉容器2の胴体部2aを構成する巻き鋼管50aが形成される。すなわち、鋼板50は、巻き加工及び縮管加工等によって、鋼板50の板状面部52が円筒形に成形され、鋼板50の辺縁部である第3辺縁部56a及び第4辺縁部56bが円周形に成形される。そして、巻き鋼管50aは、突合せ溶接加工によって、鋼板50の対向する第1辺縁部54a及び第2辺縁部54bが溶接等により接合されることにより製造される。
図12は、鋼板50に対して巻き加工、縮管加工、及び突合せ溶接加工が施されて形成された巻き鋼管50aにおける断面の概略図である。図12に示すように、巻き鋼管50aの内周面には、溶接ビードである裏ビード131を凸形成させている。なお、溶接ビードとは、溶接加工によって発生する溶接痕の盛り上がりである。裏ビード131は、巻き鋼管50aの内側面50bから突出している。本実施の形態の圧縮機1の製造工程においては、以上の各工程を経て製造された巻き鋼管50aが、次工程の溶接ビード潰し加工(ステップS4)に供されることになる。
[溶接ビード潰し加工(ステップS4)]
図13は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程における、溶接ビード潰し加工時の溶接ビード潰し治具90の一部の構造を示す概略上面図である。図14は、本実施の形態の圧縮機1の製造工程における、溶接ビード潰し加工時の溶接ビード潰し治具90の一部の構造を示す概略上面図である。図13及び図14を用いて、溶接ビード潰し加工時に用いられる溶接ビード潰し治具90について説明する。なお、溶接ビード潰し治具90による溶接ビード潰し加工は、上記の突合せ溶接加工における溶接(溶融)直後の巻き鋼管50aに対してビードの除去処理を行うこともできるが、溶接加工が終了し冷却された後の巻き鋼管50aに対して冷却されたビードの除去処理を行うことができる点に特徴がある。
図13及び図14に示すように、溶接ビード潰し治具90は、上面視でかまぼこ形状の固定受け金型91と、固定受け金型91が固定されるハウジング92と、鼓形状の可動ローラ押し金型93と、を備えている。
固定受け金型91は、D字形状の断面が連続して延びるように形成された柱状の部材である。固定受け金型91は、外側に凸の円弧形状の曲面で形成されており、可動ローラ押し金型93と対向する側壁部91aを有する。側壁部91aは、固定受け金型91の一側面を構成する。側壁部91aは、柱状に形成された固定受け金型91の延びる方向に対する垂直断面において円弧形状に形成されている。
可動ローラ押し金型93は、回転軸RSの軸方向の中央部分が円弧形状に凹むように形成された周壁面部93aを有する回転体である。より詳細には、可動ローラ押し金型93は、ローラの軸方向の中央が両端よりも径が縮小された形状である。可動ローラ押し金型93は、固定受け金型91と対向する周壁面部93aを有する。可動ローラ押し金型93の周壁面部93aは、回転軸RSにおける軸方向の両端の間の壁面が回転軸RSの軸方向に凹む円弧形状に形成されており、当該形状が回転軸RSを中心に周方向に連続した形状に形成されている。可動ローラ押し金型93の回転軸RSは、柱状に形成された固定受け金型91と直交した状態で交差する。
溶接ビード潰し治具90において、側壁部91aと、周壁面部93aの一部とは互いに対向する。溶接ビード潰し治具90は、凹形状に形成された周壁面部93aが、巻き鋼管50aを介して凸形状に形成された側壁部91aと嵌り合うように構成されている。なお、溶接ビード潰し治具90のハウジング92は、溶接ビード潰し設備(図示は省略)に固定されている。そのため、固定受け金型91は、ハウジング92を介して、溶接ビード潰し設備(図示は省略)に固定されている。
図15は、溶接ビード潰し加工前の溶接ビード潰し治具90及び巻き鋼管50aの概略化した上面図である。図16は、溶接ビード潰し加工前の溶接ビード潰し治具90及び巻き鋼管50aの概略化した側面図である。図15及び図16では、溶接ビード潰し加工における溶接ビード潰し治具90の移動方向を矢印で示している。次に、本実施の形態の圧縮機1の製造工程において、鋼板50の巻き加工、縮管加工、及び突合せ溶接加工により製造された巻き鋼管50aに対して、巻き鋼管50aに形成された溶接ビードを潰すための加工について説明する。図15及び図16に示すように、溶接ビード潰し加工では、固定受け金型91及びハウジング92が巻き鋼管50a内に挿入される。この状態で固定受け金型91は、巻き鋼管50aの内側面50b及び内側面50bに形成された裏ビード131と対向している。すなわち、固定受け金型91は、円筒形状に形成された巻き鋼管50aの中空部内に挿入され、側壁部91aが、巻き鋼管50aの内周面から突出するように形成された裏ビード131と対向するように配置される。当該状態において、巻き鋼管50aは、固定受け金型91と可動ローラ押し金型93との間に配置されている。なお、この際、裏ビード131は溶融直後でもよく、冷却されていてもよい。溶接ビード潰し治具90において、固定受け金型91及びハウジング92が巻き鋼管50a内に挿入されると、図15及び図16の矢印で示すように、可動ローラ押し金型93が、固定受け金型91に近づくように移動する。
図17は、溶接ビード潰し加工時の溶接ビード潰し治具90及び巻き鋼管50aの概略化した上面図である。図18は、溶接ビード潰し加工時の溶接ビード潰し治具90及び巻き鋼管50aの概略化した側面図である。図17及び図18に示すように、溶接ビード潰し治具90において、巻き鋼管50aは、可動ローラ押し金型93と固定受け金型91との間に挟み込まれる。そして、溶接ビード潰し治具90は、巻き鋼管50aを可動ローラ押し金型93で押圧し、可動ローラ押し金型93を巻き鋼管50aの軸方向に移動させる。図17及び図18では、可動ローラ押し金型93は回転しながら上方から下方に移動している。すなわち、可動ローラ押し金型93は、巻き鋼管50aを介して側壁部91aと対向して配置され、周壁面部93aが巻き鋼管50aを押圧し、回転しながら巻き鋼管50aの延びる方向に沿って移動する。可動ローラ押し金型93が巻き鋼管50aを押圧し、可動ローラ押し金型93が回転しながら巻き鋼管50aの延びる方向に沿って移動することで、巻き鋼管50aは裏ビード131が潰される。なお、可動ローラ押し金型93による巻き鋼管50aの押圧時、及び、可動ローラ押し金型93の巻き鋼管50aに沿う移動時には、固定受け金型91はハウジング92に固定されており移動することはない。
鋼板50は、鋼板50に対する巻き加工及び縮管加工等によって、鋼板50の板状面部52が円筒形に成形され、鋼板50の辺縁部である第3辺縁部56a及び第4辺縁部56bが円周形に成形される。そして、突合せ溶接加工によって、鋼板50の第1辺縁部54a及び第2辺縁部54bが溶接等により接合されることにより巻き鋼管50aが製造される。更に、巻き鋼管50aに対して溶接ビード潰し加工が施されることによって、巻き鋼管50aに形成された裏ビード131が潰されて、圧力密閉容器2の胴体部2aとなる円筒体が製造される。なお、胴体部2aの真円度を改善するための溶接ビード潰し加工における対策は後述する。
[拡管加工(ステップS5)]
図19は、本発明の実施の形態の圧縮機1の製造工程における、一次拡管加工を行う前の巻き鋼管50aの断面構造及び拡管治具70の一部の断面構造を示す概略図である。図20は、本発明の実施の形態の圧縮機1の製造工程における、一次拡管加工時の巻き鋼管50aの断面構造及び拡管治具70の一部の断面構造を示す概略図である。図20では、一次拡管加工中のロッド部72の移動方向がハッチング線付きのブロック矢印で示されており、ロッド部72の移動に伴う拡管金型部71の移動方向が白抜きのブロック矢印で示されている。
次に、本実施の形態の圧縮機1の製造工程において、鋼板50の巻き加工、縮管加工、突合せ溶接加工、及び溶接ビード潰し加工が施された巻き鋼管50aを拡管加工する工程について説明する。巻き鋼管50aを拡管加工する工程は、鋼板50の巻き加工、縮管加工、及び突合せ溶接により製造された圧力密閉容器2の胴体部2aの歪みを内壁面側から押圧し低減させるものであり、以降の説明では「一次拡管加工」と称する。
図19に示すように、拡管治具70は、巻き鋼管50aの一次拡管加工を行う拡管金型部71と、拡管金型部71を支持するケーシング部73とを備えている。また、拡管治具70は、拡管金型部71及びケーシング部73の内部に往復自在に配置されるロッド部72を備えている。
拡管金型部71は、円筒形状に形成されている。拡管金型部71は、周方向に分割して構成されている。すなわち、拡管金型部71は、複数に分割した各構成部分が周方向に組み合わされることによって構成されている。図19に示すように、拡管金型部71の内部には、拡管金型部71の第1内側面部71aによって取り囲まれた第1中空空間部76が形成されている。第1中空空間部76は、第1中空空間部76の開口面積がケーシング部73から離れるに従って小さくなる錐台形状の空間として構成される。
ケーシング部73には、ケーシング部73の第2内側面部73aによって取り囲まれた第2中空空間部77が形成されている。第2中空空間部77は、ケーシング部73の外部空間と第1中空空間部76とを連通する。第2中空空間部77は、例えば、第1中空空間部76よりも開口面積が大きい円柱形状の空間として形成されている。また、図19及び図20では図示しないが、ケーシング部73は、一次拡管加工時の安定性及び一次拡管加工における信頼性を確保するために支持台に固定されている。ケーシング部73の形状は、支持台に固定可能な形状であればよく、例えば立方体形状、円筒形状等の外観を有するように構成できる。
ロッド部72は、図19に示すように錐台形状の挿入部78を有している。すなわち、ロッド部72はテーパー状に形成されている。ロッド部72の挿入部78は、ケーシング部73の第2中空空間部77を介して、拡管金型部71の第1中空空間部76に収容されている。
次に、巻き鋼管50aに対する一次拡管加工の加工例を説明する。まず、溶接ビード潰し加工後の巻き鋼管50aの中空内に拡管治具70が挿入される。次に、円筒形状の円周方向に複数に分割した拡管金型部71の中心部に配置されたロッド部72が軸方向に押し込まれることで、拡管金型部71が拡開する。そして、拡管金型部71が拡開することで、巻き鋼管50aが、拡管金型部71の外側面71bによって、その内径側から外径側に向けて押圧され、所望の内径まで拡管される。
巻き鋼管50aは、一次拡管加工が終了すると、両端加工に供される。両端加工では、一次拡管加工後の巻き鋼管50aの両端部の周縁部が、旋盤等の端面加工装置により切削される。巻き鋼管50aは、巻き鋼管50aの両端部に対する端面加工によって、例えば、圧縮機1の完成品における圧力密閉容器2の胴体部2aの両端部間の長さと同一となるように、両端部間の長さが所望の長さになるまで加工される。
巻き鋼管50aは、両端加工が終了すると、円周溶接加工に供される。円周溶接加工では、両端加工後の巻き鋼管50aの一端に底部2bが嵌め合わされ、巻き鋼管50aと底部2bとの嵌め合わされている部分が溶接により固定される。なお、巻き鋼管50aと圧力密閉容器2の底部2bとの接合は溶接により行うものとしたが、ろう付け等により接合してもよい。
巻き鋼管50aは、両端加工が終了すると、吸入孔加工に供される。吸入穴加工において、巻き鋼管50aには、ドリル等の穿孔装置により吸入穴5が形成される。更に、巻き鋼管50aに形成された吸入穴5には、接続管6a及びリング6bが溶接又はろう付け等により接合される。巻き鋼管50aにおいては、上述の吸入穴5の穿孔、更に接続管6a及びリング6bの溶接又はろう付け等による接合により巻き鋼管50aの内径に歪みが発生する。
本実施の形態の圧縮機1の製造工程においては、上述の歪みを低減し、圧力密閉容器2の胴体部2aの内径を均一にするために拡管治具(図示は省略)による拡管加工が行われる。なお、以降の説明では、拡管治具による拡管加工を「二次拡管加工」と称する。
図21は、比較例の胴体部2a1の拡管加工後の形状を示す図である。二次拡管加工では、吸入穴加工等で発生した巻き鋼管50aの内径歪を修正するために、巻き鋼管50aは、一次拡管加工と同構造の拡管治具70によって所望の内径まで拡管され、胴体部2aが製造される。但し、このとき、胴体部2aの内径形状は、巻き加工での巻き始めに生じる巻き痕、突合せ溶接加工で生じる溶接熱硬化等によって、拡管加工後も矯正しきれない場合があり、胴体部2aの内径の真円度が改善されない場合がある。例えば、図21に示すように、拡管加工後の比較例の胴体部2a1は雫形状に形成される場合がある。
本発明の実施の形態に係る圧縮機1の製造方法では、拡管加工後の胴体部2aが雫形状となることを抑制することを特徴としており、以下、胴体部2aの真円度を改善するための対策として、溶接ビード潰し加工における具体的な対策について説明する。
[胴体部2aの真円度を改善するための対策]
まず、本実施の形態の圧縮機1の製造工程に基づき巻き鋼管50aの試験製造が複数回行われる。そして、巻き鋼管50aの試験製造において、拡管加工後の胴体部2aが雫形状になる等、真円度が悪い為に、拡管加工後の胴体部2aの真円度を改善する対策として、溶接ビード潰し加工の段階に対策が施される。胴体部2aの真円度を改善するための対策として、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93は、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93のR形状と、巻き鋼管50a及び比較例の巻き鋼管50a1の外内周面におけるR形状との関係が、次の式を満たすように構成される。その式は、半径Riw<半径Ru≦半径Rie、半径Row<半径Rr≦半径Roe、半径Rr-半径Ru=t(tは鋼管の肉厚)である。また、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93は、固定受け金型91の幅Wu及び可動ローラ押し金型93の幅Wrと、巻き鋼管50aの溶接熱硬化及び巻き痕の範囲の幅Wwとの関係が、幅Wu≦幅Ww<幅Wrを満足するように構成される。なお、比較例の巻き鋼管50aの寸法は、圧縮機1の試験製造段階で導かれるものであり、巻き鋼管50aの複数回の試験製造で得られた値に基づいてR形状が特定され、全ての圧縮機1の実際の製造に利用される。以下、上記の各式の内容について具体的に説明する。
図22は、溶接ビード潰し治具90の可動ローラ押し金型93の概略図である。図23は、溶接ビード潰し治具90の固定受け金型91の概略図である。図22及び図23に示すように、上面視において、固定受け金型91の側壁部91aにおけるR形状の曲げ半径を半径Ruと定義する。また、上面視において、可動ローラ押し金型93の周壁面部93aにおけるR形状の曲げ半径を半径Rrと定義する。
図24は、溶接ビード潰し加工前の巻き鋼管50aと、二次拡管加工後の比較例の巻き鋼管50a1とを示す断面状の概略図である。巻き鋼管50aの一次拡管加工前、すなわち溶接ビード潰し加工前の巻き鋼管50aの内周面51におけるR形状の曲げ半径を半径Riwと定義し、外周面53におけるR形状の曲げ半径を半径Rowと定義する。そして、二次拡管加工後の、比較例の巻き鋼管50a1の内周面51aにおけるR形状の曲げ半径を半径Rieと定義し、外周面53aにおけるR形状の曲げ半径を半径Roeと定義する。
ここで、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93のR形状と、巻き鋼管50a及び比較例の巻き鋼管50a1の外内周面におけるR形状との関係は、半径Riw<半径Ru≦半径Rie、半径Row<半径Rr≦半径Roeを満足するものとする。また、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93のR形状は、半径Rr-半径Ru=t(tは鋼管の肉厚)を満足するものとする。
次に、回転軸RSの軸方向における、溶接ビード潰し治具90の幅について説明する。図22に示すように、可動ローラ押し金型93の上面視における、回転軸RSの軸方向の幅を幅Wrと定義する。幅Wrは、回転軸RSの軸方向において、可動ローラ押し金型93の両端部93b間の直線距離である。図23に示すように、固定受け金型91の上面視における、回転軸RSの軸方向の幅を幅Wuと定義する。幅Wuは、固定受け金型91の上面視における、側壁部91aの両端部91b間の直線距離である。図24に示すように、巻き鋼管50aの溶接熱硬化部及び巻き痕の範囲の幅を幅Wwとする。幅Wwは、巻き鋼管50aの軸方向に対する垂直断面において、また、巻き鋼管50aの外側面における巻き鋼管50aの周方向において、溶接熱硬化部及び巻き痕の範囲の両端部50e間の直線距離である。なお、幅Wwは、本実施の形態の圧縮機1の製造工程に基づき、巻き鋼管50aの複数回の試験製造で得られた値に基づいて特定されるものであり、圧縮機1の全ての製造に利用されるものである。
ここで、固定受け金型91の幅Wu及び可動ローラ押し金型93の幅Wrと、巻き鋼管50aの溶接熱硬化及び巻き痕の範囲の幅Wwとの関係は、幅Wu≦幅Ww<幅Wrを満足するものとする。
次に、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93と、巻き鋼管50a及び比較例の巻き鋼管50a1との関係を、半径Riw<半径Ru≦半径Rie、半径Row<半径Rr≦半径Roe、半径Rr-半径Ru=t(tは鋼管の肉厚)を満足するものした理由について説明する。
図25は、第1の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Aの概念図である。図26は、第1の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Aにより溶接ビード潰し加工を行い、その後の拡管加工を行った後の巻き鋼管50a2の断面概念図である。第1の比較例の構成は、溶接ビード潰し治具90Aにおいて、溶接ビード潰し加工前の巻き鋼管50aの半径Riw及び半径Rowよりも、固定受け金型91の半径Rus及び可動ローラ押し金型93の半径Rrsが小さい場合の構成である。さらに、第1の比較例の構成は、溶接ビード潰し治具90Aにおいて、固定受け金型91の半径Rusが半径Ruよりも小さく、可動ローラ押し金型93の半径Rrsが半径Rrよりも小さい構成である。
溶接ビード潰し加工において、第1の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Aを用いた場合、図26に示すように、拡管加工後の巻き鋼管50a2の形状は、溶接ビード潰し加工による加工部56が凸形状となってしまう。溶接ビード潰し加工において、第1の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Aを用いた場合、巻き鋼管50a2の溶接熱硬化部及び巻き痕の矯正はできるが、拡管加工を経ても溶接ビード潰し加工に基づく巻き鋼管50aの変形を矯正できずにいる。
図27は、第2の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Bの概念図である。図28は、第2の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Bにより溶接ビード潰し加工を行い、その後の拡管加工を行った後の巻き鋼管50a3の断面概念図である。第2の比較例の構成は、溶接ビード潰し治具90Bにおいて、固定受け金型91の半径Rul及び可動ローラ押し金型93の半径Rrlが、二次拡管加工後の巻き鋼管50a1の半径Rie及び半径Roeよりも大きい場合の構成である。さらに、第2の比較例の構成は、溶接ビード潰し治具90Bにおいて、固定受け金型91の半径Rulが半径Ruよりも大きく、可動ローラ押し金型93の半径Rrlが半径Rrよりも大きい構成である。
溶接ビード潰し加工において、第2の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Bを用いた場合、図28に示すように、拡管加工後の巻き鋼管50a3の形状は、溶接ビード潰し加工による加工部57が平坦形状となってしまう。溶接ビード潰し加工において、第2の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Bを用いた場合でも、巻き鋼管50a3の溶接熱硬化部及び巻き痕の矯正はできるが、拡管加工を経ても溶接ビード潰し加工に基づく巻き鋼管50aの変形を矯正できずにいる。
図29は、第3の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Cの概念図である。図30は、第3の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Cにより溶接ビード潰し加工を行い、その後の拡管加工を行った後の巻き鋼管50a4の断面概念図である。第3の比較例の構成は、溶接ビード潰し治具90Cにおいて、固定受け金型91の半径Rudが可動ローラ押し金型93の半径Rrdよりも大きい場合の構成である。例えば、半径Rudが半径Ruよりも大きく、半径Rrdが半径Rrよりも小さい場合の構成である。
溶接ビード潰し加工において、第3の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Cを用いた場合、図30に示すように、拡管加工後の巻き鋼管50a4の形状は、溶接ビード潰し加工による加工部58が山形状となってしまう。これは、固定受け金型91に対して可動ローラ押し金型93が両端部93bの2点で巻き鋼管50aを押し潰し加工した状態が、拡管加工を経ても矯正できずにいる状態である。
図31は、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93のR形状と、巻き鋼管50a及び比較例の巻き鋼管50a1の外内周面との関係をまとめた図である。第1の比較例~第3の比較例に示す上記理由により、巻き鋼管50aの拡管後の内径形状を良くし、巻き鋼管50aの内径真円度を良くするために溶接ビード潰し治具90は半径Ru及び半径Rrが上記式を満たす必要がある。すなわち、溶接ビード潰し治具90のR形状は、半径Riw<半径Ru≦半径Rie、半径Row<半径Rr≦半径Roe、及び、半径Rr-半径Ru=t(tは鋼管の肉厚)の式を満たす必要がある。
次に、固定受け金型91の幅Wu及び可動ローラ押し金型93の幅Wrと、巻き鋼管50aの溶接熱硬化及び巻き痕の範囲の幅Wwとの関係が、幅Wu≦幅Ww<幅Wrを満足するものとする理由について説明する。
図32は、第4の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Dの概念図である。図33は、第4の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Dにより溶接ビード潰し加工を行い、その後の拡管加工を行った後の巻き鋼管50a5の断面概念図である。なお、図32では、固定受け金型91の図示を省略している。第4の比較例の構成は、溶接ビード潰し治具90Dにおいて、巻き鋼管50aの溶接熱硬化及び巻き痕の範囲の幅Wwよりも、可動ローラ押し金型93の幅Wrが小さい場合の構成である。
溶接ビード潰し加工において、第4の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Dを用いた場合、図33に示すように、拡管加工後の巻き鋼管50a5の形状は、溶接ビード潰し加工による加工部59がハート形状となってしまう。これは、溶接ビード潰し加工において、巻き鋼管50a5の溶接部132の両脇部分が矯正されずに膨らんでしまっている状態であり、拡管加工を経ても矯正できずにいる状態である。
図34は、第5の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Eの概念図である。なお、図34では、可動ローラ押し金型93の図示を省略している。第5の比較例の構成は、溶接ビード潰し治具90Eにおいて、固定受け金型91の幅Wuが、巻き鋼管50aの溶接熱硬化及び巻き痕の範囲の幅Wwよりも大きい場合の構成である。
溶接ビード潰し加工において、第5の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Eを用いた場合も、図33に示すように、拡管加工後の巻き鋼管50a5の形状は、溶接ビード潰し加工による加工部59がハート形状となってしまう。これは、溶接ビード潰し加工において、巻き鋼管50a5の溶接部132の両脇部分が矯正されずに膨らんでしまっている状態であり、拡管加工を経ても矯正できずにいる状態である。
図35は、第6の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Fの概念図である。図36は、第6の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Fにより溶接ビード潰し加工を行い、その後の拡管加工を行った後の巻き鋼管50a6の断面概念図である。第5の比較例の構成は、溶接ビード潰し治具90Fにおいて、固定受け金型91の幅Wuが、可動ローラ押し金型93の幅Wrよりも大きい場合の構成である。
溶接ビード潰し加工において、第6の比較例の構成に基づく溶接ビード潰し治具90Fを用いた場合も、図36に示すように、拡管加工後の巻き鋼管50a6の形状は、溶接ビード潰し加工による加工部59がハート形状となってしまう。これは、溶接ビード潰し加工において、巻き鋼管50a6の溶接部132の両脇部分が矯正されずに膨らんでしまっている状態であり、拡管加工を経ても矯正できずにいる状態である。
図37は、固定受け金型91の幅Wu及び可動ローラ押し金型93の幅Wrと、巻き鋼管50aの溶接熱硬化及び巻き痕の範囲の幅Wwとの関係をまとめた図である。第4の比較例~第6の比較例に示す上記理由により、巻き鋼管50aの拡管後の内径形状を良くし、巻き鋼管50aの内径真円度を良くするために溶接ビード潰し治具90は幅Wu及び幅Wrが上記式を満たす必要がある。すなわち、溶接ビード潰し治具90は、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93が、巻き鋼管50aとの関係において、幅Wu≦幅Ww<幅Wrの式を満たす必要がある。
固定受け金型91の側壁部91aが、巻き鋼管50aの内周面から突出するように形成された裏ビード131と対向するように配置される。また、可動ローラ押し金型93の周壁面部93aが、巻き鋼管50aを介して側壁部91aと対向して配置され、周壁面部93aが巻き鋼管50aを押圧し、回転しながら巻き鋼管50aの延びる方向に沿って移動する。そのため、巻き鋼管50aの内周面から突出するように形成された裏ビード131が、周壁面部93aと側壁部91aとに挟まれ、巻き鋼管50aの内径形状に沿って、また、巻き鋼管50aの延びる方向に沿って押圧されていく。したがって、溶接ビード潰し治具90、当該溶接ビード潰し治具90を用いた圧縮機1の製造方法、及び圧縮機1は、内周面から突出した部分の溶接ビードを胴体部2aの内径形状に合った形状に安定して形成することができ、且つ、切粉処理の手間が発生しない。
また、突合せ溶接加工で生じる溶接部近傍の熱硬化部、あるいは、巻き加工の巻き始めで生じる巻き痕等により、胴体部2aの内径真円度が悪化する恐れがある。これに対し、可動ローラ押し金型93の周壁面部93aが、巻き鋼管50aを介して側壁部91aと対向して配置され、周壁面部93aが巻き鋼管50aを押圧し、回転しながら巻き鋼管50aの延びる方向に沿って移動する。そのため、圧力密閉容器2の胴体部2aにおいて、突合せ溶接加工で生じる溶接部近傍の熱硬化部、及び巻き加工の巻き始めで生じる巻き痕を矯正することができ、胴体部2aの内径精度を改善することができる。
また、一般的に胴体部2aは、突合せ溶接加工において、溶接ビードを胴体部2aの内径側に凹形成させているものがある。当該構成の胴体部2aは、減肉した溶接部から冷媒等の漏れが発生する恐れがあり、溶接品質悪化の要因となる恐れがある。これに対し、固定受け金型91の側壁部91aが、巻き鋼管50aの内周面から突出するように形成された裏ビード131と対向するように配置される。また、可動ローラ押し金型93の周壁面部93aが、巻き鋼管50aを介して側壁部91aと対向して配置され、周壁面部93aが巻き鋼管50aを押圧し、回転しながら巻き鋼管50aの延びる方向に沿って移動する。そのため、巻き鋼管50aの内周面から突出するように形成された裏ビード131が、周壁面部93aと側壁部91aとに挟まれ、巻き鋼管50aの内径形状に沿って、また、巻き鋼管50aの延びる方向に沿って押圧されていく。そのため、胴体部2aは、突合せ溶接加工において減肉した溶接部を有することがなく、溶接部からの冷媒の漏れを抑制することができる。その結果、溶接ビード潰し治具90、当該溶接ビード潰し治具90を用いた圧縮機1の製造方法、及び圧縮機1は、胴体部2aにおける溶接品質が改善させている。
また、溶接ビード潰し加工において、受け金型と押し金型を共に可動ローラで巻き鋼管50aの全周を挟むようにする態様が考えられる。しかし、受け金型と押し金型とが共に可動式の金型では溶接ビード潰し加工が安定せずに巻き鋼管50aが変形してしまう恐れがある。これに対し、可動ローラ押し金型93の周壁面部93aが、巻き鋼管50aを介して側壁部91aと対向して配置され、周壁面部93aが巻き鋼管50aを押圧し、回転しながら巻き鋼管50aの延びる方向に沿って移動する。すなわち、固定受け金型91は、溶接ビード潰し加工の加工時において、固定されており側壁部91aの位置が移動していない。したがって、溶接ビード潰し治具90、当該溶接ビード潰し治具90を用いた圧縮機1の製造方法、及び圧縮機1は、内周面から突出した部分の溶接ビードを胴体部2aの内径形状に合った形状に安定して形成することができる。
また、溶接ビード潰し加工は、側壁部91aが、冷却された裏ビード131と対向するように配置される。そして、溶接ビード潰し加工は、冷却された裏ビード131に対してビードの除去処理を行うことができる。そのため、溶接ビード潰し加工は、巻き鋼管50aの溶接(溶融)直後に溶接ビードを除去する必要がない。その結果、溶接ビード潰し加工は、巻き鋼管50aの溶接(溶融)から時間を空けてビードの除去処理ができるため、製造工程の場所的制約及び時間的制約がない。
また、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93のR形状と、巻き鋼管50a及び比較例の巻き鋼管50a1の外内周面におけるR形状との関係は、半径Riw<半径Ru≦半径Rie、半径Row<半径Rr≦半径Roe、半径Rr-半径Ru=t(tは鋼管の肉厚)を満足する。また、固定受け金型91の幅Wu及び可動ローラ押し金型93の幅Wrと、巻き鋼管50aの溶接熱硬化及び巻き痕の範囲の幅Wwとの関係は、幅Wu≦幅Ww<幅Wrを満足する。すなわち、溶接ビード潰し治具90は、巻き鋼管50aの拡管形状に合わせて、固定受け金型91及び可動ローラ押し金型93の対向面のR形状と、金型の幅形状とを定めている。そのため、溶接ビード潰し治具90、当該溶接ビード潰し治具90を用いた圧縮機1の製造方法、及び圧縮機1は、更に突合せ溶接の熱硬化部と巻き加工の巻き痕を安定して矯正できる。また、当該構成及び当該方法により胴体部2aの内径精度が向上するので、圧縮機1の組立性が改善され、更には圧縮機1の電動機部10及び圧縮機構部30の組立精度も向上されて圧縮機1の性能が向上する。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。