以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。無線LANの規格書として知られているIEEE Std 802.11(TM)-2012およびIEEE Std 802.11ac(TM)-2013と、次世代無線LAN規格であるIEEE Std 802.11ax用の仕様フレームワーク文書(Specification Framework Document)である2015年9月22日付けのIEEE 802.11-15/0132r9は、本明細書においてその全てが参照によって組み込まれる(incorporated by reference)ものとする。
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施形態に係る無線通信装置の機能ブロック図を示す。この無線通信装置は、無線通信基地局(以下、基地局またはアクセスポイント)、または基地局と通信する無線通信端末(以下、端末)に実装されることができる。基地局は、主に中継機能を有する点を除いて、基本的に端末と同様の通信機能を有するため、無線通信端末の一形態である。機能ブロックの動作は、基本的に両者で共通するが、基地局と非基地局の端末とで異なる部分もある。以下の説明で無線通信端末または端末と言うときは、特に両者を区別する必要がない限り、基地局を指してもよい。
本実施形態に係る無線通信システムは、図1の無線通信装置を実装した基地局と複数の端末を備える。本システムでは、マルチユーザ通信(多重通信)として、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続方式)が可能である。アップリンクのOFDMAはUL-OFDMAと記述する。ダウンリンクのOFDMAは、DL-OFDMAと記述する。本実施形態のシステムでは、少なくともUL-OFDMAが実施可能である。以下、OFDMAについて説明する。
OFDMAでは、1つまたは複数のサブキャリアを含むリソースユニットを端末に割り当て、リソースユニットベースで、基地局と複数の端末との間で送受信を同時に行う。リソースユニットは、通信を行うリソースの最小単位となる周波数成分である。
図2に、1つのチャネル(ここではチャネルMと記述している)の連続した周波数領域内に確保したリソースユニット(RU#1、RU#2、・・・RU#K)を示す。チャネルMには、互いに直交する複数のサブキャリアが配置されており、1つまたは複数のサブキャリアを含む複数のリソースユニットがチャネルM内に定義されている。リソースユニット間には、1つ以上のサブキャリア(ガードサブキャリア)が配置されてもよいが、ガードサブキャリアは必須ではない。チャネル内の各リソースユニットまたは各サブキャリアには、リソースユニットまたはサブキャリアを識別するための識別情報が設定されていてもよい。1つのチャネルの帯域幅は、一例として、20MHz、40MHz、80MHz、160MHzなどであるが、これらに限定されない。20MHzの複数のチャネルをまとめて1つのチャネルとしてもよい。帯域幅に応じてチャネル内のサブキャリア数またはリソースユニット数が異なってもよい。複数の端末がそれぞれ異なるリソースユニットを同時に用いることで、OFDMA通信が実現される。
リソースユニットの帯域幅(あるいはサブキャリア数)は、各リソースユニットで共通でもよいし、リソースユニットごとに帯域幅(あるいはサブキャリア数)が異なってもよい。図3に、1つのチャネル内におけるリソースユニットの配置パターン例を模式的に示す。紙面に沿って横方向が周波数領域方向に対応する。図3(A)は、同じ帯域幅の複数のリソースユニット(RU#1、RU#2、・・・RU#K)を配置した例を示す。図3(B)は、図3(A)より大きな帯域幅の複数のリソースユニット(RU#11-1、RU#11-2、・・・、RU#11-L)を配置した例を示す。図3(C)は3種類以上の帯域幅のリソースユニットを配置した例を示す。リソースユニット(RU#12-1、RU#12-2)が最も大きな帯域幅を有し、リソースユニットRU#11-(L-1)は図3(B)のリソースユニットと同じ帯域幅、リソースユニット(RU#K-1、RU#K)は図3(A)のリソースユニットと同じ帯域幅を有する。
一例として、20MHzチャネル幅全体を使う場合、20MHzチャネル幅内に配置される256個のサブキャリア(トーン)に対し、リソースユニットが26個で設定できる。つまり、20MHzチャネル幅では9つのリソースユニットが設定され、リソースユニットの帯域幅としては2.5MHz幅より小さくなる。40MHzチャネル幅では、一例として、リソースユニットは18個設定される。80MHzチャネル幅では、一例として、リソースユニットは、37個設定される。これを発展させると、例えば160MHzチャネル幅または80+80MHzチャネル幅では、74個のリソースユニットが設定される。もちろんリソースユニットの幅は特定の値に制限されず、様々なサイズのリソースユニットを配置することもできる。
なお、各端末が使用するリソースユニット数は、特定の値に制限されず、1つまたは複数のリソースユニットを用いてもよい。端末が複数のリソースユニットを用いる場合、周波数的に連続する複数のリソースユニットをボンディングして1つのリソースユニットとして用いてもよいし、離れた箇所にある複数のリソースユニットを用いることを許容してもよい。図3(B)のリソースユニット#11-1は、図3(A)のリソースユニット#1と#2をボンディングしたリソースユニットの一例と考えても良い。
1つのリソースユニット内のサブキャリアは周波数領域で連続していてもよいし、非連続に配置された複数のサブキャリアからリソースユニットを定義してもよい。OFDMAで使用するチャネルは1つに限定されず、チャネルMに加えて、周波数領域で離れた位置に配置された別のチャネル(図2ではチャネルNを参照)内にも、チャネルMと同様にしてリソースユニットを確保し、チャネルMとチャネルNの両方内のリソースユニットを用いてもよい。チャネルMとチャネルNとでリソースユニットの配置方法は同じであっても、異なってもよい。1つのチャネルの帯域幅は、一例として、上述のように、20MHz、40MHz、80MHz、160MHzなどであるが、これらに限定されない。3つ以上のチャネルを用いることも可能である。なお、チャネルMとチャネルNをまとめて1つのチャネルとして考えることも可能である。
なお、OFDMAを実施する端末は、少なくとも後方互換の対象となるレガシー端末での基本チャネル幅(IEEE802.11a/b/g/n/ac規格対応端末をレガシー端末とするなら20MHzチャネル幅)のチャネルで、フレームを含む物理パケットを受信および復号(復調および誤り訂正符号の復号等を含む)できるものとする。キャリアセンスに関しては、基本チャネル幅の単位で行うものとする。
キャリアセンスは、CCA(Clear Channel Assessment)のビジー/アイドルに関する物理的なキャリアセンス(Physical Carrier Sense)と、受信したフレームの中に記載されている媒体予約時間に基づく仮想的なキャリアセンス(Virtual Carrier Sense)との両方を包含してもよい。後者のように、仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。なお、チャネル単位で行ったCCAまたはNAVに基づくキャリアセンス情報は、チャネル内の全リソースユニットに共通に適用してもよい。例えばキャリアセンス情報がアイドルを示すチャネルに属するリソースユニットは、すべてアイドルと判断してもよい。
なお、OFDMAは、上述したリソースユニットベースのOFDMA以外に、チャネルベースでのOFDMAも可能である。この場合のOFDMAを、特にMU-MC(Multi-User Multi-Channel)と呼ぶことがある。MU-MCでは、クセスポイントが複数のチャネル(1つのチャネル幅は例えば20MHzなど)を複数の端末に割り当て、当該複数のチャネルを同時に用いて、複数端末宛て同時送信もしくは複数端末からの同時受信を行う。以降に説明するOFDMAでは、リソースユニットベースのOFDMAを想定するが、以降の説明のリソースユニットをチャネルに読み替えるなど、必要な読み替えを行うことで、チャネルベースのOFDMAの実施形態も実現可能である。
以下の説明において、OFDMAを実施する能力を有する端末をOFDMA対応端末などと呼ぶことがある。当該能力を有さない端末をレガシー端末と呼ぶことがある。OFDMA通信を実施する能力を有効(Enable)または無効(Disable)に切り替え可能な場合、当該能力が有効になっている端末をOFDMA対応端末として考えればよい。
図1に示されるように、端末(非基地局の端末及び基地局)に搭載される無線通信装置は、上位処理部90、MAC処理部10、PHY(Physical:物理)処理部50、MAC/PHY管理部60、アナログ処理部70(アナログ処理部1~N)及びアンテナ80(アンテナ1~N)を含む。Nは1以上の整数である。図では、N個のアナログ処理部と、N個のアンテナが、一対ずつ接続されているが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えばアナログ処理部の個数が1つで、2つ以上のアンテナがこのアナログ処理部に共通に接続されてもよい。
MAC処理部10、MAC/PHY管理部60、及びPHY処理部50は、他の端末(基地局を含む)との通信に関する処理を行う制御部またはベースバンド集積回路の一形態に相当する。アナログ処理部70は、例えばアンテナ80を介して信号を送受信する無線通信部またはRF(Radio Frequency)集積回路の一形態に相当する。本実施形態に係る無線通信用集積回路は、当該ベースバンド集積回路(制御部)およびRF集積回路の少なくとも前者を含む。ベースバンド集積回路の機能は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。ソフトウェアはROM、RAM等のメモリ、ハードディスク、SSDなどの記憶媒体に格納してプロセッサにより読み出して実行してもよい。メモリはSRAM、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。
上位処理部90は、MAC(Medium Access Control:媒体アクセス制御)層に対して上位層のための処理を行う。上位処理部90は、MAC処理部10との間で信号をやり取りできる。上位層としては、代表的なものとしては、TCP/IPやUDP/IP、さらにその上層のアプリケーション層などが挙げられるが、本実施形態はこれに限定されない。上位処理部90は、MAC層と上位層との間でデータをやり取りするためのバッファを備えていてもよい。上位処理部90を介して有線インフラに接続するようになっていてもよい。バッファは、メモリでもよいし、SSD、ハードディスク等でもよい。バッファがメモリの場合、当該メモリはSRAM、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。
MAC処理部10は、MAC層のための処理を行う。前述のように、MAC処理部10は、上位処理部90との間で信号をやり取りできる。更に、MAC処理部10は、PHY処理部50との間で、信号をやり取りできる。MAC処理部10は、MAC共通処理部20と送信処理部30と受信処理部40を含む。
MAC共通処理部20は、MAC層での送受信に共通する処理を行う。MAC共通処理部20は、上位処理部90、送信処理部30、受信処理部40及びMAC/PHY管理部60と接続され、夫々との間で信号のやり取りをする。
送信処理部30及び受信処理部40は、相互に接続している。また、送信処理部30及び受信処理部40は、それぞれMAC共通処理部20及びPHY処理部50に接続している。送信処理部30は、MAC層での送信処理を行う。受信処理部40は、MAC層での受信処理を行う。
PHY処理部50は、物理層(PHY層)のための処理を行う。前述のように、PHY処理部50は、MAC処理部10との間で信号をやり取りできる。PHY処理部50は、アナログ処理部70を介してアンテナ80に接続されている。
MAC/PHY管理部60は、上位処理部90、MAC処理部10(より詳細には、MAC共通処理部20)及びPHY処理部50の夫々と接続されている。MAC/PHY管理部60は、無線通信装置におけるMAC動作及びPHY動作を管理する。
アナログ処理部70は、アナログ/デジタル及びデジタル/アナログ(AD/DA)変換器およびRF(Radio Frequency)回路を含み、PHY処理部50からのデジタル信号を所望の周波数のアナログ信号に変換してアンテナ80から送信、またアンテナ80から受信した高周波のアナログ信号をデジタル信号に変換する。なお、ここでは、AD/DA変換をアナログ処理部70で行っているが、PHY処理部50にAD/DA変換機能を持たせる構成も可能である。
本実施形態に係る無線通信装置は、1チップ内にアンテナ80を構成要素として含む(一体化する)ことで、このアンテナ80の実装面積を小さく抑えることができる。更に、本実施形態に係る無線通信装置は、図1に示されるように、送信処理部30及び受信処理部40が、N本のアンテナ80を共用している。送信処理部30及び受信処理部40がN本のアンテナ80を共用することにより、図1の無線通信装置を小型化できる。なお、本実施形態に係る無線通信装置は、図1に例示されたものと異なる構成を備えても勿論よい。
無線媒体からの信号受信に際して、アナログ処理部70は、アンテナ80が受信したアナログ信号を、PHY処理部50が処理可能な基底帯域(Baseband)の信号に変換し、さらにデジタル信号に変換する。PHY処理部50は、アナログ処理部70からデジタルの受信信号を受け取り、その受信レベルを検出する。検出した受信レベルを、キャリアセンスレベル(閾値)と比較し、受信レベルが、キャリアセンスレベル以上であれば、PHY処理部50は媒体(CCA:Clear Channel Assessment)がビジーであるということを示す信号を、MAC処理部10(より正確には、受信処理部40)へ出力する。受信レベルが、キャリアセンスレベル未満であれば、PHY処理部50は、媒体(CCA)がアイドルであるということを示す信号を、MAC処理部10(より正確には受信処理部40)へ出力する。
PHY処理部50は、受信信号に対し、復号(復調および誤り訂正符号の復号等を含む)処理、プリアンブルを含む物理ヘッダ(PHYヘッダ)を取り除く処理などを行って、ペイロードを抽出する。IEEE802.11規格ではこのペイロードをPHY側ではPSDU(physical layer convergence procedure (PLCP) service data unit)と呼んでいる。PHY処理部50は、抽出したペイロードを受信処理部40に渡し、受信処理部40はこれをMACフレームとして扱う。IEEE802.11規格では、このMACフレームを、MPDU(medium access control (MAC) protocol data unit)と呼んでいる。加えて、PHY処理部50は、受信信号を受信開始した際に、その旨を受信処理部40に通知し、また受信信号を受信終了した際に、その旨を受信処理部40に通知する。また、PHY処理部50は、受信信号が正常に物理パケット(PHYパケット)として復号できた場合(エラーを検出しなければ)、受信信号の受信終了を通知すると共に、媒体がアイドルであるということを示す信号を、受信処理部40に渡す。PHY処理部50は、受信信号にエラーを検出した場合には、エラー種別に即した適切なエラーコードをもって、受信処理部40にエラーを検出したことを通知する。また、PHY処理部50は、媒体がアイドルになったと判定した時点で、媒体がアイドルであることを示す信号を受信処理部40に通知する。
MAC共通処理部20は、上位処理部90から送信処理部30への送信データの受け渡し、及び受信処理部40から上位処理部90への受信データの受け渡しを、夫々仲介する。IEEE802.11規格では、このMACデータフレームの中のデータを、MSDU(medium access control (MAC) service data unit)と呼んでいる。また、MAC共通処理部20は、MAC/PHY管理部60からの指示を一旦受け取り、当該指示を送信処理部30及び受信処理部40に、それぞれ適したものに変換して出力する。
MAC/PHY管理部60は、例えばIEEE802.11規格におけるSME(Station Management Entity)に相当する。その場合、MAC/PHY管理部60とMAC共通処理部20との間のインターフェースは、IEEE802.11規格におけるMLME SAP(MAC subLayer Managament Entity Service Access Point)に相当し、MAC/PHY管理部60とPHY処理部50との間のインターフェースは、IEEE802.11無線LAN(Local Area Network)におけるPLME SAP(Physical Layer Management Entity Service Access Point)に相当する。
なお、図1において、MAC/PHY管理部60は、MAC管理のための機能部とPHY管理のための機能部とが一体であるかのように描かれているが、分けて実装されてもよい。
MAC/PHY管理部60は、管理情報ベース(Management Information Base:MIB)を保持する。MIBは、自端末の能力や各種機能が夫々有効か無効かなどの各種情報を保持する。例えば、自端末が、OFDMA対応か否か、また、OFDMA対応の場合にOFDMAを実施する能力の機能のオン/オフの情報も保持されていてもよい。MIBを保持・管理するためのメモリは、MAC/PHY管理部60に内包させてもよいし、MAC/PHY管理部60に内包せずに別に設けるようにしてもよい。MIBを保持・管理するためのメモリをMAC/PHY管理部60とは別に設ける場合に、MAC/PHY管理部60は、その別のメモリを参照でき、またメモリ内の書き換え可能なパラメータに関しては書き換えを行うことができる。メモリはSRAM、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、メモリでなく、SSDやハードディスク等の記憶装置でもよい。基地局では、非基地局としての他の端末のこれらの情報も、当該端末からの通知により、取得することができる。その場合、MAC/PHY管理部60は、他の端末に関する情報を参照・書き換えが可能になっている。あるいはこれらの他の端末に関する情報を記憶するためのメモリは、MIBとは別に保持・管理するようにしてもよい。その場合、MAC/PHY管理部60あるいはMAC共通処理部20が、その別のメモリを参照・書き換えが可能なようにする。また基地局のMAC/PHY管理部60は、OFDMA(UL-OFDMAまたはDL-OFDMA)の実施にあたり、非基地局としての端末に関する各種の情報、または端末からの要求に基づき、OFDMA用のリソースユニットを同時に割り当てる端末を選定する選定機能も備えていてもよい。また、MAC/PHY管理部60またはMAC処理部10は、送信するMACフレームおよび物理ヘッダに適用する伝送レートを管理してもよい。また基地局のMAC/PHY管理部60は、基地局がサポートするレートセットであるサポートレートセットを定義および管理してもよい。サポートレートセットは、基地局に接続する端末がサポートすることが必須であるレートと、オプションのレートを含んでもよい。
MAC処理部10は、データフレーム、制御フレーム及び管理フレームの3種類のMACフレームを扱い、MAC層において規定される各種処理を行う。ここで、3種類のMACフレームについて説明する。
管理フレームは、他の端末との間の通信リンクの管理のために用いられる。管理フレームとしては、例えば、IEEE802.11規格におけるBasic Service Set(BSS)である無線通信グループを形成するために、グループの属性及び同期情報を報知するビーコン(Beacon)フレームがある。また、認証のためにまたは通信リンク確立のために交換されるフレームなどもある。なお、ある端末が、もう一台の端末と互いに無線通信を実施するために必要な情報交換を済ませた状態を、通信リンクが確立していると、ここでは表現する。必要な情報交換として、例えば、自端末が対応する機能(例えばOFDMA方式への対応や各種能力など)の通知や、方式の設定に関するネゴシエーションなどがある。管理フレームは、送信処理部30が、MAC/PHY管理部60からMAC共通処理部20を介して受けた指示に基づいて生成する。
管理フレームに関連して、送信処理部30は、他の端末に管理フレームを介して各種情報を通知する通知手段を有する。例えば。非基地局としての端末の通知手段は、OFDMA対応端末、IEEE802.11n対応端末、IEEE802.11ac対応端末のいずれに対応しているかの情報を、管理フレームに入れて送信することで、基地局に自端末の種別を通知してもよい。この管理フレームとしては、例えば端末が基地局との間で認証を行う手順の一つであるアソシエーションプロセスで用いられるAssociation Requestフレームや、あるいはリアエソシエーションプロセスで用いられるReassociation Requestフレームがある。基地局の通知手段は、非基地局の端末に、OFDMA通信への対応可否の情報を、管理フレームを介して通知してもよい。これに用いる管理フレームとしては、例えばBeaconフレームや、非基地局端末が送信したProbe Requestフレームに対する応答であるProbe Responseフレームがある。基地局は、自装置に接続している端末群をグループ化する機能を有していてもよい。基地局の上記の通知手段は、各端末にそれぞれが属するグループのグループ識別子であるグループIDを、管理フレームを介して通知してもよい。この管理フレームとしては、例えばGroup ID Managementフレームがある。グループIDは、例えばIEEE Std 802.11ac-2013でダウンリンクMU-MIMO(Multi-User Multi-Input Multi-Output)(DL-MU-MIMO)のために規定されたグループID(6ビット)をOFDMAの場合も包含するように拡張したものでもよいし、これとは別の方法で定義したグループIDでもよい。
ここでアソシエーションID(AID)について説明する。AIDは、端末が基地局に接続し、基地局下のBSSでデータフレーム交換が行えるようにするためのアソシエーションプロセスで、基地局から割り当てられる端末の識別子(端末識別子)である。アソシエーションプロセスは具体的には、端末から基地局宛てにAssociation Requestフレームを送信し、基地局から端末宛てにAssociation Responseフレームを送信し、Association Responseフレームの中の端末Status Codeフィールドが”0”すなわちsuccessである場合に成功するプロセスである。Association Requestフレーム、Association Responseフレームの双方には、送信端末の通信能力(Capability)が入れられており、それにより、受信した双方が相手の通信能力を把握する。Association Responseフレームの中の端末Status Codeフィールドが”0”すなわちsuccessである場合には、同フレーム中のAIDフィールド(16ビット)からAIDを抽出し、送信先端末のAIDとして使われることになる。すなわち、この時点で、基地局から端末にAIDが割り当てられたことになり、端末としてはAIDが有効の状態となる。当該基地局が端末との間で接続(Association)している状態では、端末のAIDが有効である。一方、基地局から当該端末にDisassociationフレームを送信し、当該端末が受信すると、あるいは当該端末から基地局にDisassociationフレームを送信すると、当該端末のAIDは無効(null)となる。どの基地局ともアソシエーションプロセスを経ていない状態の端末でも当然、AIDは無効である。AIDが無効の状態は、AIDが未指定の状態とも言うこともできる。
受信処理部40は、他の端末から管理フレームを介して各種情報を受信する受信手段を有する。一例として、基地局の受信手段は、非基地局としての端末からOFDMAの対応可否の情報を受信してもよい。また、当該非基地局としての端末がレガシー端末(IEEE802.11a/b/g/n/ac規格対応端末など)の場合に、対応可能なチャネル幅(利用可能な最大のチャネル幅)の情報を受信してもよい。当該端末の受信手段は、基地局からOFDMA対応可否の情報を受信してもよい。
上述した管理フレームを介して送受信する情報の例は、ほんの一例であり、その他種々の情報を、管理フレームを介して、端末(基地局を含む)間で送受信することが可能である。例えばOFDMA対応端末は、自身がUL-OFDMA送信で使用することを希望するリソースユニット、または、チャネル、またはこれらの両方を、キャリアセンスで非干渉のチャネル、または、非干渉のリソースユニット、またはこれらの両方から、選択してもよい。そして、選択したリソースユニットまたはチャネルまたはこれらの両方に関する情報を、基地局に通知してもよい。この場合、基地局は当該情報に基づき、UL-OFDMA通信のためのリソースユニット割り当てを各OFDMA対応端末に対して行ってもよい。なお、OFDMA通信で利用するチャネルは、無線通信システムとして利用可能な全てのチャネルであっても、一部(1つまたは複数)のチャネルであってもよい。
データフレームは、他の端末との間で通信リンクが確立した状態で、データを当該他の端末に送信するために用いられる。例えばユーザのアプリケーション操作によって、端末においてデータが生成され、当該データがデータフレームによって搬送される。具体的には、生成されたデータは、上位処理部90からMAC共通処理部20を介して送信処理部30に渡され、送信処理部30でデータをフレームボディフィールドに入れ、当該フレームボディフィールドにMACヘッダを付加してデータフレームが生成される。そして、PHY処理部50で、データフレームに物理ヘッダを付加して物理パケットが生成され、物理パケットが、アナログ処理部70及びアンテナ80を介して送信される。また、PHY処理部50で物理パケットを受信すると、物理ヘッダに基づき物理層の処理を行ってMACフレーム(ここではデータフレーム)を抽出し、データフレームを受信処理部40に渡す。受信処理部40は、データフレームを受けると(受信したMACフレームがデータフレームであると把握すると)、そのフレームボディフィールドの情報をデータとして抽出し、抽出したデータを、MAC共通処理部20を介して上位処理部90に渡す。この結果、データの書き込み、再生などのアプリケーション上の動作が生じる。
制御フレームは、管理フレーム及びデータフレームを、他の無線通信装置との間で送受信(交換)するときの制御のために用いられる。制御フレームとしては、例えば、管理フレーム及びデータフレームの交換を開始する前に、無線媒体を予約するために他の無線通信装置との間で交換するRTS(Request to Send)フレーム、CTS(Clear to Send)フレームなどがある。また、他の制御フレームとして、受信した管理フレーム及びデータフレームの送達確認のための送達確認応答フレームがある。送達確認応答フレームの例として、ACK(Acknowledgement)フレーム、BA(BlockACK)フレームなどがある。CTSフレームも、RTSフレームの応答として送信するため、送達確認応答を表すフレームであるとも言える。CF-Endフレームも、制御フレームの1つである。CF-Endフレームは、CFP(Contention Free Period)の終了をアナウンスするフレーム、つまり、無線媒体へのアクセスを許可するフレームである。これらの制御フレームは送信処理部30で生成される。受信したMACフレームへの応答として送信される制御フレーム(CTSフレームやACKフレーム、BAフレームなど)に関しては、受信処理部40で応答フレーム(制御フレーム)の送信の必要を判断して、フレーム生成に必要な情報(制御フレームの種別、RA(Receiver Address)フィールド等に設定する情報など)を送信指示とともに送信処理部30に出す。送信処理部30は、当該フレーム生成に必要な情報と送信指示に基づき、適切な制御フレームを生成する。
MAC処理部10は、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)に基づきMACフレームを送信する場合、無線媒体上でのアクセス権(送信権)を獲得する必要がある。送信処理部30は、受信処理部40からのキャリアセンス情報に基づいて、送信タイミングを計る。送信処理部30は、係る送信タイミングに従って、PHY処理部50に送信指示を与えて、さらにMACフレームを渡す。送信指示に加えて、送信処理部30は、送信に使用される変調方式及び符号化方式を合わせて指示してもよい。これらに加えて、送信処理部30は、送信電力を指示してもよい。MAC処理部10は、アクセス権(送信権)獲得後、媒体を占有可能な時間(Transmission Opportunity;TXOP)が得られると、QoS(Quality of Service)属性などの制限を伴うものの、他の無線通信装置との間でMACフレームを連続して交換できる。TXOPは、例えば、無線通信装置がCSMA/CAに基づき所定のフレーム(例えばRTSフレーム)を送信し、他の無線通信装置から応答フレーム(例えばCTSフレーム)を正しく受信した場合に、獲得される。この所定のフレームが、当該他の無線通信装置によって受信されると、当該他の無線通信装置は、最小フレーム間隔(Short InterFrame Space;SIFS)後に、上記応答フレームを送信する。また、RTSフレームを用いないでTXOPを獲得する方法として、例えば直接ユニキャストで、送達確認応答フレームの送信を要求するデータフレーム(後述のようにフレームが連接された形状のフレーム、またはペイロードが連接された形状のフレームであってもよい)あるいは管理フレームを送信し、それに対する送達確認応答フレーム(ACKフレームやBlockACKフレーム)を正しく受信する場合がある。あるいは、他の無線通信装置に送達確認応答フレームの送信を要求しないフレームであって、そのフレームのDuration/IDフィールドに当該フレームの送信に要する時間以上の期間を設定したものを送信した場合には、当該フレームを送信した段階からDuration/IDフィールドに記載された期間のTXOPを獲得したと解釈してもよい。
受信処理部40は、上述したキャリアセンス情報を管理する。このキャリアセンス情報は、PHY処理部50から入力される媒体(CCA)のビジー/アイドルに関する物理的なキャリアセンス(Physical Carrier Sense)情報と、受信フレームの中に記載されている媒体予約時間に基づく仮想的なキャリアセンス(Virtual Carrier Sense)情報との両方を包含する。いずれか一方のキャリアセンス情報がビジーを示すならば、媒体がビジーであるとみなされ、その間送信は禁止される。なお、IEEE802.11規格において、媒体予約時間は、MACヘッダの中のDuration/IDフィールドに記載される。MAC処理部10は、他の無線通信装置宛ての(自己宛てでない)MACフレームを受信した場合に、当該MACフレームを含む物理パケットの終わりから媒体予約時間に亘って、媒体が仮想的にビジーであると判定する。このような仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。媒体予約時間は無線媒体へのアクセスの抑制を指示する期間の長さ、すなわち無線媒体へのアクセスを延期させる期間の長さを表しているといえる。
ここで、データフレームは、複数のMACフレームもしくは複数のMACフレームのペイロード部分を連接するようになっていてもよい。前者はIEEE802.11規格ではA(Aggregated)-MPDU、後者はA(Aggregated)-MSDU(MAC service data unit)と呼ばれる。A-MPDUの場合は、PSDUの中に複数のMPDUが連接されることになる。またデータフレームのみならず、管理フレームや制御フレームも連接対象となる。A-MSDUの場合には、1つのMPDUのフレームボディ中に、複数のデータペイロードであるMSDUが連接されることになる。A-MPDU、およびA-MSDUのいずれも、複数のMPDUの連接、および複数のMSDUの連接を、受信側端末で適切に分離できるように、データフレームに区切り情報(長さ情報など)が格納されている。A-MPDUおよびA-MSDUの両方を組み合わせて用いてもよい。またA-MPDUは、複数のMACフレームではなく、1つのMACフレームのみを対象としてもよく、この場合も区切り情報をデータフレームに格納する。また、A-MPDUなどを受信した場合は、連接されている複数のMACフレームに対する応答をまとめて送信する。この場合の応答には、ACKフレームではなく、BA(BlockACK)フレームが用いられる。以降の説明および図では、MPDUの表記を用いることがあるが、これは、上述したA-MPDUまたはA-MSDUの場合も含むものとする。
IEEE802.11規格では、基地局が中心となり構成するBSS(これをインフラストラクチャ(Infrastructure)BSSと呼ぶ)に、非基地局の端末が加入し、BSS内でデータフレームの交換ができるようになるために経る手順(procedure)が、段階的に複数規定されている。例えば、アソシエーション(association)という手順があり、非基地局の端末から、当該端末が接続を要求する基地局に対して、アソシエーション要求(Association Request)フレームを送信する。基地局は、アソシエーション要求フレームに対するACKフレームを送信後、アソシエーション要求フレームに対する応答であるアソシエーション応答(Association Response)フレームを送信する。
端末はアソシエーション要求フレームに自端末の能力(capability)を格納し、それを送信することで基地局に自端末の能力の通知をすることができる。例えば、端末はアソシエーション要求フレームの中に、自端末が対応可能なチャネルまたはリソースユニットまたはこれらの両方や、自端末が対応する規格を特定するための情報を入れて送信してもよい。他の基地局へ再接続するための再アソシエーション(reassociation)という手順で送信するフレームにも、この情報を設定するようにしてもよい。この再アソシエーションの手順では、端末から、再接続を要求する他の基地局に対して、再アソシエーション要求(Reassociation Request)フレームを送信する。当該他の基地局は、再アソシエーション要求フレームに対するACKフレームを送信後、再アソシエーション要求フレームに対する応答である再アソシエーション応答(Reassociation Response)フレームを送信する。
管理フレームとして、アソシエーション要求フレームおよび再アソシエーション要求フレーム以外にも、ビーコンフレーム、プローブ応答(Probe Response)フレームなどを用いてもよい。ビーコンフレームは基本的に基地局が送信するもので、BSSの属性を示すパラメータとともに、基地局自身の能力を通知するパラメータも格納できる。そこで、この基地局自身の能力を通知するパラメータとして、基地局がOFDMAへの対応可否の情報を加えるようにしてもよい。また他のパラメータとして、基地局のサポートレート(Supported Rate)の情報を通知してもよい。サポートレートは、基地局が形成するBSSに参加する端末が対応必須のレートと、オプションのレートとを含んでもよい。プローブ応答フレームは、ビーコンフレームを送信する基地局が端末からプローブ要求(Probe Request)フレームを受信すると、それに応答して送信するフレームである。プローブ応答フレームは、基本的にはビーコンフレームと同一の内容を通知するものであるため、プローブ応答フレームを用いても基地局は、プローブ要求フレームを送信した端末に、自局の能力を通知することができる。OFDMA対応端末にこの通知を行うことで、端末が例えば自端末のOFDMA通信の機能を有効にするといった動作を行ってもよい。
なお、端末は自端末の能力について基地局へ通知する情報として、基地局のサポートレートのうち自端末が実行可能なレートの情報を通知してもよい。ただし、サポートレートのうち必須のレートについては、基地局へ接続する端末はその必須のレートを実行する能力を有するものとする。
なお、上記で扱った情報のうち、ある情報を通知することで、別の情報の内容が決まるものがあれば、通知を省略できる。例えば、ある新しい規格あるいは仕様に対応する能力を定義し、それに対応していれば自ずとOFDMA対応端末である、という場合を考える。この場合、上記ある情報として、規格あるいは仕様に対応する能力の有を通知し、上記別の情報として、OFDMA対応端末であることの通知を明示的に行わなくてもよい。
図4に、本実施形態に従った無線通信システムを示す。このシステムは、基地局(AP:Access Point)100と、複数の端末(STA:STAtion)1~8とを備える。基地局100と、配下の端末1~8により、BSS(Basic Service Set)1が形成される。このシステムは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)を用いるIEEE802.11規格に準じた無線LANシステムである。なお、BSS1内に本実施形態に係る端末(OFDMA対応端末)以外のレガシー端末(IEEE802.11a/b/g/n/ac規格対応端末など)が存在していてもかまわない。
図5(A)は、MACフレームの基本的なフォーマット例を示す。本実施形態に係るデータフレーム、管理フレームおよび制御フレームは、このようなフレームフォーマットをベースとする。本フレームフォーマットは、MACヘッダ(MAC header)、フレームボディ(Frame body)及びFCSの各フィールドを含む。MACヘッダは、図5(B)に示すように、Frame Control、Duration/ID、Address1、Address2、Address3, Sequence Control、QoS Control及び HT(High Throughput) controlの各フィールドを含む。
これらのフィールドは必ずしもすべて存在する必要はなく、一部のフィールドが存在しない場合もあり得る。例えばAddress3フィールドが存在しない場合もある。また、QoS ControlおよびHT Controlフィールドの両方または一方が存在しない場合もある。またフレームボディフィールドが存在しない場合もあり得る。また図5には示されていない他のフィールドが存在してもよい。例えば、Address4フィールドがさらに存在してもよい。後述するトリガーフレームの場合、共通情報フィールドおよび端末情報フィールドが、フレームボディフィールドまたはMACヘッダに存在してもよい。
Address1のフィールドには、受信先アドレス(Receiver Address;RA)が、Address2のフィールドには送信元アドレス(Transmitter Address;TA)が入り、Address3のフィールドにはフレームの用途に応じてBSSの識別子であるBSSID(Basic Service Set IDentifier)か、あるいはTAが入る。BSSIDは、全てのBSSIDを対象とするwildcard BSSID(全てのビットが1)の場合もある。
Frame Controlフィールドには、タイプ(Type)、サブタイプ(Subtype)という2つのフィールド等が含まれる。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別はSubtypeフィールドで行われる。例えば制御フレームには、BA(Block Ack)フレーム、BAR(Block Ack Request)フレーム、RTS(Request to Send)フレーム、CTS(Clear to Send)フレームといったフレームが存在するが、これらのフレームの識別はSubtypeフィールドで行われる。後述するトリガーフレームも、タイプおよびサブタイプの組み合わせで区別してもよい。一例としてトリガーフレームは制御フレーム(タイプが“制御”)に分類される。
Duration/IDフィールドは媒体予約時間を記載し、他の端末宛てのMACフレームを受信した場合に、当該MACフレームを含む物理パケットの終わりから媒体予約時間に亘って、媒体が仮想的にビジーであると判定する。このような仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、前述したように、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。QoSフィールドは、フレームの優先度を考慮して送信を行うQoS制御を行うために用いられる。HT Controlフィールドは、IEEE802.11nで導入されたフィールドである。
管理フレームでは、固有のElement ID(IDentifier)が割り当てられた情報エレメント(Information element;IE)をFrame Bodyフィールドに設定する。フレームボディフィールドには、管理フレームの種類に応じた固有のフィールドの後に、1つまたは複数の情報エレメントを設定できる。情報エレメントは、図6に示すように、Element IDフィールド、Lengthフィールド、情報(Information)フィールドの各フィールドを有する。情報エレメントは、Element IDで識別される。情報フィールドは、通知する情報の内容を格納し、Lengthフィールドは、情報フィールドの長さ情報を格納する。
FCSフィールドには、受信側でフレームの誤り検出のため用いられるチェックサム符号としてFCS(Frame Check Sequence)情報が設定される。FCS情報の例としては、CRC(Cyclic Redundancy Code)などがある。
図7に、本実施形態に係る基地局(AP)101と、端末(STA)1~端末(STA)8を含む複数の端末との動作シーケンス例を示す。端末1~8はOFDMA対応端末である。図7では、本実施形態に係る基本的な動作シーケンスを示し、本実施形態の特徴に係る動作については、後に別の動作シーケンス例(図14参照)で説明する。
本システムでは、前提として、基地局と端末1~8の一部または全部との間でCSMA/CAベースで個別に通信(シングルユーザ通信)が行われている。シングルユーザ通信では、例えば基本チャネル幅(例えば20MHz)の1チャネルで基地局および端末間で通信が行われている。シングルユーザ通信の例として、端末でアップリンク送信用のデータが保持されている場合、CSMA/CAに従って、無線媒体へのアクセス権を獲得する。このため、端末はDIFS/AIFS[AC]と、ランダムに決定したバックオフ時間とのキャリアセンス時間(待機時間)の間、キャリアセンスを行い、媒体(CCA)がアイドルと判断されると、例えば1フレームを送信するアクセス権を獲得する。端末は、送信するデータを含むデータフレーム(より詳細にはデータフレームを含む物理パケット)を送信し、基地局がこのデータフレームを正常に受信すると、データフレームの受信完了からSIFS時間後に、送達確認応答フレームであるACKフレーム(より詳細にはACKフレームを含む物理パケット)を返す。端末はACKフレームを受信することで、データフレームの送信が成功したと判断する。なお、基地局に送信するデータフレームはアグリゲーションフレーム(A-MPDU等)でもよく、基地局が応答する送達確認応答フレームはBAフレームでもよい(以下同様)。なお、DIFS/AIFS[AC]時間は、DIFSおよびAIFS[AC]のいずれか一方の時間を意味する。QoS対応でない場合はDIFS時間を指し、QoS対応の場合は、送信するデータのアクセスカテゴリ(AC:Access Category)(後述)に応じて決まるAIFS[AC]時間を指す。なお、物理パケットの基本的な構成は、後述する図8に示すように、データフィールドに格納されるMACフレームに、物理ヘッダを付加したものである。
基地局が、任意のタイミングでUL-OFDMAの開始を決定する。本例ではUL-OFDMA送信をシングルユーザ通信と同じチャネル(基本チャネル幅20MHzの1チャネル)で行う場合を想定する。つまり、基本チャネル幅20MHzのチャネル内に定義された複数のリソースユニットを用いてUL-OFDMA送信を行う場合を想定する。ただし、40MHz、80MHzなど、他のチャネル幅でUL-OFDMA送信を行うことも可能である。
基地局が、UL-OFDMAの開始を決定すると、UL-OFDMAのトリガーフレーム、より詳細には、ランダムアクセス用トリガーフレーム(より詳細にはランダムアクセス用トリガーフレームを含む物理パケット)501を送信する。
ランダムアクセス用トリガーフレーム501は、UL-OFDMAで使用可能な複数のリソースユニットの全てまたは少なくとも一部について、任意の端末または複数の端末の使用を許容する。当該リソースユニットには特定の端末を割り当てない(使用する端末を特定の端末に限定しない)。そのようなリソースユニット(RU)を“STA未指定RU”と呼ぶことがある。なお、STA未指定RU以外のリソースユニットに対しては、特定の端末を割り当ててもよく、その場合、そのリソースユニットについては当該特定の端末のみが使用する。つまり、STA未指定RUは、端末がランダムに選択して使用(アップリンク送信)することを許容するリソースユニットである。少なくとも一部のリソースユニットについてSTA未指定RUの指定を含むトリガーフレームを、ランダムアクセス用トリガーフレームと呼んでいる。ランダムアクセス用トリガーフレームを図では、“TF-R”と表現している。
ランダムアクセス用トリガーフレーム501を送信するにあたり、事前に基地局がCSMA/CAに従ってアクセス権を獲得しているものとする。ランダムアクセス用トリガーフレーム501は、シングルユーザ通信と同じチャネルの基本チャネル幅のチャネルで送信する。ランダムアクセス用トリガーフレームを含む物理パケットは、ランダムアクセス用トリガーフレームの先頭に物理ヘッダを付加したものである。物理ヘッダは、一例として、図8に示すように、IEEE802.11規格で定義されているL-STF(Legacy-Short Training Field)、L-LTF(Legacy-Long TrainingField)、L-SIG(Legacy Signal Field)、を含む。L-STF、L-LTF、L-SIGは、例えば、IEEE802.11aなどのレガシー規格の端末が認識可能なフィールド(レガシーフィールド)であり、それぞれ信号検出、周波数補正(伝搬路推定)、伝送速度などの情報が格納される。ここで述べた以外のフィールド(例えばレガシー規格の端末が認識できず、OFDMA対応端末が認識できるフィールド)が含まれていてもよい。なお、ランダムアクセス用トリガーフレーム501は、OFDMA対応端末の他、レガシー端末も受信および復号可能なフレームでよい。
図9にトリガーフレーム(ランダムアクセス用トリガーフレームの場合を含む)のフォーマット例を示す。図5に示した一般的なMACフレームのフォーマットをベースとしており、Frame Controlフィールド、Duration/IDフィールド、Address1フィールド、Address2フィールド、共通情報フィールド(Common Info.)フィールドと、複数の端末情報(STA Info.)フィールドと、FCSフィールドとを含んでいる。Frame ControlフィールドのTypeおよびSubtypeでトリガーフレームであることを指定する。Typeは、一例として“制御”であり、Subtypeはトリガーフレームに対応する新たな値を定義してもよい。ただし、Typeを“管理”または、“データ”にしたトリガーフレームを定義してもかまわない。なお、Subtypeとして新たな値に定義する代わりに、トリガーフレームであることを通知するフィールドをMACヘッダの予約フィールドを利用して表現してもよい。Address1フィールドには、RAとして、ブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスを設定すればよい。Address2フィールドにはTAとして、基地局のMACアドレス(BSSID)を設定すればよい。ただし、Address1フィールドまたはAddress2フィールドまたはこれらの両方が省略される場合もあり得る。共通情報フィールドには、複数の端末に共通に通知する情報を設定する。例えば端末情報フィールドのフォーマットを指定する情報、応答で送信するパケット長を指定する情報、トリガーフレームの目的を示す情報、応答で送信するフレームの種類を指定する情報を設定してもよい。また、端末情報フィールドの個数の情報を設定してもよい。複数の端末情報フィールドには、複数の端末に個々に通知する情報を設定する。端末情報フィールド1~nの詳細な構成例を、図10に示す。端末情報フィールド1~nは、それぞれRUフィールドとAIDフィールドとを含む。
端末情報フィールド1~nは、一例として、それぞれRUフィールド(RU_1~RU_n)とAIDフィールド(AID_1~AID_n)との対(組)を含む。RUフィールドには、使用可能なリソースユニットの識別子を設定する。AIDフィールドには、当該リソースユニットを割り当てる端末の識別子(AID)の設定、または特定の端末に使用を指定しないことを示す情報の設定を行う。本実施形態では、特定の端末に使用を指定しないことの情報を、未使用のAIDの値である“X”により表現する。Xはどの端末にも割り当てていないAIDの値であり、予めシステムまたは規格で定義された値、または基地局が任意に定めた値とする。Xの値は、ビーコンフレーム等の管理フレームで事前に基地局から各端末に通知されていてもよい。“X”が設定されたリソースユニットは、どの端末が使用してもよいリソースユニット、すなわち、ランダムアクセス用のリソースユニットである。
なお、いずれかのAIDフィールドで自端末の識別子が設定されている端末は、使用を指定されているリソースユニットに加えて、ランダムアクセス用のリソースユニットの使用を許可してもよいし、許可しなくてもよい。本実施形態では、端末は、使用を指定されているリソースユニットが存在する場合は、ランダムアクセス用のリソースユニットを使用しない形態を記述するが、これに限定される必要はない。
なお、ランダムアクセス用のリソースユニットの使用を、特定の端末群または特定のグループIDをもつグループに限定する構成も可能である。後者の場合、AIDフィールドにグループIDを設定するようにしてもよい。前者の場合、RUフィールドに関連づけて、複数のAIDを設定するようにしてもよい。ここで述べた以外の方法でもよい。
なお、n(RUフィールドとAIDフィールドの組の個数)は固定でもよいし、可変でもよい。可変の場合、nの値を共通情報フィールドに設定してもよいし、RU/AIDフィールドの終わりを通知するフィールドを設けてもよい。終わりを通知するフィールドは、リソースユニットの識別子とAIDの組み合わせにない特別な値を設定したフィールドでもよい。端末情報フィールドには、RUフィールドおよびAIDフィールド以外のフィールドが存在してもよい。例えば、端末が使用する送信電力、MCS等を指定する情報を設定するフィールドが存在してもよい。
以下では、このようなRU/AIDフィールドの構成を有するフレームフォーマットを利用して、複数の端末群にランダムにリソースユニットを選択させて、フレーム送信を行わせる例を示す。
基地局から送信されたランダムアクセス用トリガーフレーム(TF-R)501は端末1~8で受信される。本例では、ランダムアクセス用トリガーフレーム501では、4つのリソースユニット(RU#1、RU#2、RU#3、RU#4)が指定され、いずれのリソースユニットもAIDとして“X”が設定されているとする。すなわち、RU#1~RU#4は、STA未指定RUである。ただし、ランダムアクセス用トリガーフレーム501でより多くのリソースユニットが指定されていてもよいし、また一部のリソースユニットに特定の端末のAIDが指定されていてもよい。
端末1~8側では、ランダムアクセス用トリガーフレーム501を復号し、RU#1、RU#2、RU#3、RU#4の4つのリソースユニットのうち、自端末の使用が指定されているかものがあるかを検査し、ここでは、いずれかのリソースユニットにもAID“X”が設定されているため、すべてのリソースユニットがランダムアクセス用のリソースユニット(STA未指定RU)であると判断する。この判断は、MAC処理部10(例えば受信処理部30、またはMAC共通処理部20など)または、MAC/PHY管理部60が行う。
端末1~8は、UL-OFDMA用のコンテンションウィンドウ(Contention Window for UL-OFDMA:CWO)値以下の範囲からランダムに選択したバックオフ値(UL-OFDMA Backoff(OBO) Count)を保持している。より詳細には、0以上CWO値以下の値範囲から選択したバックオフ値を保持している。CWOは値範囲に関する情報に相当する。この例では、値範囲の大きさは、CWO-0=CWOである。ただし、値範囲の下限値は0でなくてもよい。ここで、CWOの最小値を、CWOmin、CWOの最大値をCWOmaxと記載する。CWOは、CWOmin以上かつCWOmax以下の範囲から選択されている。ここでは、予め定めた初期値のCWOとして“31”を選択しているとする。CWO、バックオフ値(OBO値)、CWOmin、CWOmaxは、MAC処理部10またはMAC/PHY管理部60等で管理すればよく、MAC処理部10またはMAC/PHY管理部60等からアクセス可能なメモリにこれらの値が記憶されてもよい。
端末1~8は、自端末のバックオフ値から、ランダムアクセス用トリガーフレーム501で指定されているSTA未指定RU数を減算することで、OBOを更新する。更新後のOBOが所定値に達した場合、選択権があるとして、STA未指定RUの選択を行う。これにより、選択したSTA未指定RUへのアクセス権を獲得する。本実施形態では所定値は0であるとする。減算の結果が0より小さくなる場合は、更新後のOBOを0に切り上げる。このように、更新後のOBO値が0に達した場合は、選択権を獲得する。換言すれば、ランダムアクセス用トリガーフレームを受信したときにOBO値から1を減算し(OBO値-1)、その値が、ランダムアクセス用トリガーフレームのSTA未指定RU数から1を減算した値(STA未指定RU数-1)以下であれば、選択権を獲得する。さらに言い換えれば、ランダムアクセス用トリガーフレームを受信したときのOBO値(減算前のOBO値)が、ランダムアクセス用トリガーフレームのSTA未指定RU数以下であれば、選択権を獲得する。OBOの更新および選択権の獲得判断は、MAC処理部10(例えばMAC共通処理部20、または受信処理部40など)、またはMAC/PHY管理部60が行う。
ここで端末1~8は、いずれもアップリンクの送信要求を有しているとする。当該送信要求を有している端末は、CWO値以下の範囲から選択したバックオフ値を、上述したように保持している。バックオフ値の最初の選択は、ランダムアクセス用トリガーフレーム501を受信する前に、送信要求が発生した時点で行ってもよいし、ランダムアクセス用トリガーフレーム501の受信を契機として行ってもよい。ランダムアクセス用トリガーフレーム501の受信の前に、別のランダムアクセス用トリガーフレームを受信しているときは、そのときの減算後のOBO値を、今回のランダムアクセス用トリガーフレーム501を受信したときのOBO値(減算前のOBO値)としてそのまま用いてもよい。
図11は、図7のシーケンスを説明するための補足図であり、紙面に沿って横方向は時間、縦方向は周波数に相当する。端末1~8(STA1~8)のOBO値はそれぞれ
STA 1 OBO =10
STA 2 OBO =3
STA 3 OBO =5
STA 4 OBO =4
STA 5 OBO =1
STA 6 OBO =8
STA 7 OBO =8
STA 8 OBO =10
であり、ランダムアクセス用トリガーフレーム501ではSTA未指定RU数は4であるため、それぞれから4を引いて、更新(減算)後のOBO値は、以下のようになる。0より小さい値は0に固定している。
STA 1 OBO =10-4=6
STA 2 OBO =3-4=-1(→0)
STA 3 OBO =5-4=1
STA 4 OBO =4-4=0
STA 5 OBO =1-4=-3(→0)
STA 6 OBO =8-4=4
STA 7 OBO =8-4=4
STA 8 OBO =10-4=6
更新後のOBO値が所定値(=0)に達したのは、端末2、4、5であるため、端末2、4、5が選択権を獲得する。端末2、4、5は、ランダムアクセス用トリガーフレーム501で指定されたSTA未指定RUであるRU#1~RU#4からそれぞれランダムにリソースユニットを選択する。ここでは端末2はRU#4、端末4はRU#3、端末5はRU#1を選択したとする。選択するリソースユニットは1つであるとするが、2つ以上選択することを許容してもよい。端末2、4、5以外の端末は、更新後のOBO値が0より大きいため、選択権を獲得できず、次に送信されるランダムアクセス用トリガーフレームを待機する。なお、リソースユニットの選択処理は、MAC処理部10(例えばMAC共通処理部20、受信処理部40、または送信処理部30など)、またはMAC/PHY管理部60が行えばよい。
端末2、4、5は、ランダムアクセス用トリガーフレーム501の受信完了から予め定めた時間(T1とする)後にそれぞれRU#4、RU#3、RU#1を用いて、フレーム512、514、515を送信する。送信するフレームは事前に定めた種類のものでもよいし、各端末が任意に決定したフレームでもよい。事前に定めた種類のフレームの例として、UL-OFDMAの割り当て要求フレーム(トリガーフレームでリソースユニットの割り当てを自端末用に受けてデータ送信をする要求があることを通知するフレーム)でもよい。この場合、固定長のフレームとすることで、各端末が送信するフレーム長(より詳細には、フレームを含む物理パケットのパケット長)を統一できる。また、ランダムアクセス用トリガーフレーム501の端末情報フィールドまたは共通情報フィールド等に端末毎のパケット長、MCS等のパラメータ情報を指定し、当該端末は当該パラメータ情報に従ってフレームを生成し、当該フレーム(より詳細にはフレームを含む物理パケット)を送信してもよい。当該パケット長が指定された値に満たない場合は、パディングデータを付加してパケット長を調整してもよい。なお、RU#2は、どの端末にも選択されなかったため、RU#2では送信は行われない。もしRU#1~RU#4以外のリソースユニットが存在して、当該リソースユニットがランダムアクセス用トリガーフレーム501で別の端末に指定されている場合は、当該端末は、指定されたリソースユニットでフレームを送信してもよい。この場合、当該端末と、端末2、4、5とが同時にアップリンク送信(UL-OFDMA送信)を行うことになる。なお、端末2、4、5が送信するフレームは、複数のデータフレーム等を集約したアグリゲーションフレーム(A-MPDU)でもよい。
なお、時間T1は、一例として、予め定義されたIFS時間[μs]を用いることができる。予め定義されたIFS時間は、IEEE802.11無線LANのMACプロトコル仕様で規定されているフレーム間のタイムインターバルであるSIFS時間(=16μs)でもよいし、これより大きな時間または小さな時間でもよい。時間T1の値をトリガーフレームの共通情報フィールドまたはMACヘッダ等に格納し、この値を端末が読み出して使用してもよい。その他、時間T1は、ビーコンフレームあるいはその他の管理フレームなど、別の方法で事前に通知されてもよい。
基地局は、RU#1、RU#3、RU#4で、端末5、4、2から送信されるフレーム515、514、512を受信および復号し、復号したフレームをFCS検査(CRC検査等)することでフレームの受信に成功したかを判断する。基地局は、各フレームの検査結果(受信の成功可否)に応じて、送達確認応答フレーム502を生成および送信(ダウンリンク応答)する。ここでは端末2、4、5のすべての送達確認を表す単一の送達確認応答フレーム502を送信する。このような送達確認応答フレームのフォーマットは新規に定義したものでもよいし、BA(Block Ack)フレームを流用したMulti-STA BAフレームを用いることも可能である。ここではMulti-STA BAフレームを送信するとする。
ここでMulti-STA BAフレームについて説明する。Multi-STA BAフレームは、複数の端末に対する送達確認を1フレームで行うためにBlock Ackフレーム(BAフレーム)を流用したものである。フレームタイプは、通常のBAフレームと同様、制御(Control)、フレームサブタイプはBlockAckとすればよい。図12(A)にMulti-STA BAフレームのフォーマット例を示す。図12(B)は、BAフレームにおけるBA Controlフィールドのフォーマットの例を示し、図12(C)は、BAフレームにおけるBA Informationフィールドのフォーマットの例を示す。BAフレームを再利用する場合、複数の端末に関する送達確認応答を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであるということを、BA Controlフィールドの中で示してもよい。例えばIEEE802.11規格では、Multi-TIDサブフィールドが1、かつCompressed Bitmapサブフィールドが0の場合が、現状予約(Reserved)になっている。これを複数の端末に関する送達確認応答を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであることを示すために用いるようにしてもよい。あるいは図12(B)ではビットB3-B8の領域が予約サブフィールドになっているが、この領域の一部または全てを、複数の端末に関する送達確認応答を通知するために拡張したBAフレームフォーマットであることを示すために定義してもよい。あるいは、このような通知を明示的に行わなくても良い。
BAフレームにおけるRAフィールドは、一例として、ブロードキャストアドレス、またはマルチキャストアドレスでもよい。BA ControlフィールドのMulti-Userサブフィールドには、BA Informationフィールドでレポートするユーザ数(端末数)を設定してもよい。BA Informationフィールドには、ユーザ(端末)ごとに、アソシエーションID用のサブフィールド、Block Ack開始シーケンスコントロール(Block Ack Starting Sequence Control)サブフィールドと、Block Ackビットマップ(Block Ack Bitmap)サブフィールドとを配置する。
アソシエーションIDサブフィールドにはユーザ識別を行うためAIDを設定する。より詳細には、図12(C)に示すように、一例として、Per TID Infoフィールドの一部を、アソシエーションID用のサブフィールドとして使う。現状、12ビット(B0からB11)が予約領域となっている。この先頭の11ビット(B0-B10)をアソシエーションID用のサブフィールドとして使う。Block Ack開始シーケンスコントロールサブフィールドおよびBlock Ackビットマップサブフィールドは、端末が送信するフレームが単一のデータフレームである場合(アグリゲーションフレームではない場合)は、省略すればよい。端末が送信するフレームがアグリゲーションフレームのときは、Block Ack開始シーケンスコントロールサブフィールドには、当該BlockAckフレームが示す送達確認応答の最初のMSDU(medium access control (MAC) service data unit)のシーケンス番号を格納する。Block Ackビットマップサブフィールドには、Block Ack開始シーケンス番号以降の各シーケンス番号の受信成功可否のビットからなるビットマップ(Block Ackビットマップ)を入れればよい。
Multi-STA BAフレーム502を受信した端末は、フレームコントロールフィールドのTypeおよびSubtypeを確認する。これらが、制御およびBlockAckであることを検出すると、次に、RAフィールドを確認し、この値がブロードキャストアドレス等であることから、自端末が送信したフレーム(アグリゲーションフレームの場合)内の各データフレームに対する送達確認応答(成功可否)の情報をBlock Ack Bitmapフィールドから特定し、各データフレームの送信成功の可否を判断する。例えば、自端末のAIDを格納しているTID Infoサブフィールドを、BA Informationフィールド内から特定し、特定したTID Infoサブフィールドに後続するBlock Ack Starting Sequence Controlサブフィールドに設定された値(開始シーケンス番号)を特定し、開始シーケンス番号以降の各シーケンス番号の送信成功の可否を、Block Ackビットマップから特定する。AIDのビット長は、TID Infoサブフィールド長より短くてよく、AIDは、例えば、上述したように、TID Infoサブフィールドの一部の領域(例えば2オクテット(16ビット)のうち先頭から11ビット(B0-B10))に格納されている。
複数の端末が、UL-OFDMAでアグリゲーションフレームではなく、単一のフレームを送信した場合(図7のシーケンスではこの場合を想定)、例えば以下のようにすればよい。図12(C)に示すように、各BA情報フィールドのTID Infoサブフィールドにおける1つのビット(例えば2オクテット(16ビット)のうち、先頭から12ビット目(先頭をB0とすれば、B11))を、ACKかBAかを示すビット(ACK/BAビット)として用い、当該ビットにACKを示す値を設定する。ACKを示す値を設定した場合に、Block Ack Starting Sequence ControlサブフィールドおよびBlock Ack Bitmapサブフィールドは省略する。
これにより、1つのBAフレームで、複数の端末のACKを通知できる。検査結果が失敗の端末については、ACKを通知する必要はないため、Multi-STA BAフレームでは当該端末に関する通知は行わなくてよい。受信側の端末は、自端末のACKがないため、送信に失敗したと判断できる。このように、複数の端末がアグリゲーションフレームおよび単一のフレームのいずれを送信する場合においても、BAフレームを流用した単一の送達確認応答フレームで、複数の端末に対する送達確認を行うことができる。
アクセスポイントは、Multi-STA BAフレーム502を送信する場合、例えばランダムアクセス用トリガーフレーム501またはUL-OFDMAと同じ周波数帯域、または20MHzの基本チャネル幅の帯域で、Multi-STA BAフレーム502を送信してもよい。
Multi-STA BAフレームを送信する以外の方法として、端末ごとに個別に送達確認応答フレーム(ACKフレームまたはBAフレーム等)を送信してもよい。この際、DL-OFDMAを利用して、複数の端末に同時に送達確認応答フレームを送信してもよい。
図13に、DL-OFDMAで複数の端末に送達確認応答フレームを送信する場合の物理パケットの構成例を示す。L-STF、L-LTF、L-SIGのフィールドは、一例として20MHzのチャネル幅で送信され、端末毎の送達確認応答フレームのいずれでも同じ値(同じシンボル)が設定される。SIG1フィールドは、複数の端末に対し共通の情報を設定し、例えば端末毎に受信に使用するリソースユニットを指定する。例えば、端末の識別子と、リソースユニットの番号(識別子)とを対応づけた情報を設定する。端末の識別子はアソシエーションID(AID)でもよいし、AIDの一部(Partial AID)でもよいし、MACアドレス等のその他の識別子でもよい。SIG1フィールドも、一例として、20MHzのチャネル幅で送信される。各端末のいずれもSIG1フィールドを復号可能である。SIG2フィールドはリソースユニット毎に個別に設定され、一例として、該当するデータフィールドの復号に必要なMCS等の情報が設定されてもよい。したがって、アクセスポイントからの信号を受信した各端末はSIG1フィールドを復号することで、自端末が復号すべきリソースユニットを把握できる。各端末は、それぞれ指定されたリソースユニットの信号を復号することで、送達確認応答フレームを受信する。なお、図13のフォーマット例では一例であり、1つまたは複数の他のフィールドがSIG2フィールドの前後、またはSIG1フィールドの前後に配置されてもよい。当該他のフィールドは、20MHz帯域幅でも、リソースユニット幅でもよい。当該他のフィールドの一部または全部は、L-STFおよびL-LTFと同様に、既知シンボルから構成されていてもよい。
DL-OFDMAで複数の端末に送達確認応答フレームを送信する以外の方法として、ダウンリンクMU-MIMOで、複数の端末に送達確認応答フレームを送信してもよい。DL-MU-MIMOは、ビームフォーミングと呼ばれる技術を用いることで、複数の端末に対して空間的に直交したビームを形成して送信を行う。DL-MU-MIMOについては、IEEE802.11ac規格で定められており、これに従って実行してもよい。
基地局は、Multi-STA BAフレーム502を送信した後、予め定めたタイミングまたは任意のタイミングで、ランダムアクセス用トリガーフレーム503を送信する。ランダムアクセス用トリガーフレーム503の構成は、ランダムアクセス用トリガーフレーム501と同様に、RU#1~RU#4をSTA未指定RUとして指定しているとする。Multi-STA BAフレーム502の送信と、ランダムアクセス用トリガーフレーム503の送信との間では、任意の通信が行われもよい。例えば、通常のトリガーフレーム(STA未指定RUの指定を含まないトリガーフレーム)を用いたUL-OFDMA通信が行われてもよい。
端末1~8は、前回のランダムアクセス用トリガーフレーム501の受信時に更新したOBO値(バックオフ値)を保持している。ただし、端末2、4、5については、ランダムアクセス用トリガーフレーム501に対して送信(ランダムアクセス)を行ったため、再度、0以上CWO以下の範囲からOBO値を取り直す。ここではCWO値は前回と同じ値31であるとする。そして、端末2、4、5は、[0、31]からそれぞれ23、7、18を選択したとする。したがって、端末1~8(STA1~8)の、OBO値はそれぞれ以下のようになる。
STA 1 OBO =6
STA 2 OBO =23
STA 3 OBO =1
STA 4 OBO =7
STA 5 OBO =18
STA 6 OBO =4
STA 7 OBO =4
STA 8 OBO =6
ランダムアクセス用トリガーフレーム503ではSTA未指定RU数は4であるため、各端末のOBO値からそれぞれから4を引いて、更新(減算)後のOBOは、以下のようになる。0より小さい値は0に固定している。
STA 1 OBO =6-4=2
STA 2 OBO =23-4=19
STA 3 OBO =1-4=-3(→0)
STA 4 OBO =7-4=3
STA 5 OBO =18-4=14
STA 6 OBO =4-4=0
STA 7 OBO =4-4=0
STA 8 OBO =6-4=2
更新後のOBO値が所定値(=0)に達したのは、端末3、6、7であるため、端末3、6、7が選択権を獲得する。端末3、6、7は、ランダムアクセス用トリガーフレーム503で指定されたSTA未指定RUであるRU#1~RU#4からそれぞれランダムにリソースユニットを選択する。ここでは端末3はRU#2、端末6はRU#4、端末7はRU#1を選択したとする。選択するリソースユニットは1つであるとするが、2つ以上選択することを許容してもよい。端末3、6、7以外の端末は、更新後のOBO値が0より大きいため、選択権を獲得できず、次に送信されるランダムアクセス用トリガーフレームを待機する。
端末3、6、7は、ランダムアクセス用トリガーフレーム503の受信完了から予め定めた時間後にそれぞれRU#2、RU#4、RU#1を用いて、フレーム523、526、527を送信する。送信するフレームは事前に定めた種類のものでもよいし、各端末が任意に決定したフレームでもよい。なお、RU#3は、どの端末にも選択されなかったため、RU#3では送信は行われない。もしRU#1~RU#4以外のリソースユニットがランダムアクセス用トリガーフレーム503で別の端末に指定されている場合は、当該端末は、指定されたリソースユニットでフレームを送信してもよい。この場合、当該端末と、端末3、6、7とが同時にアップリンク送信(UL-OFDMA送信)を行うことになる。なお、端末3、6、7が送信するフレームは、複数のデータフレーム等を集約したアグリゲーションフレーム(A-MPDU)でもよい。
基地局は、RU#1、RU#2、RU#4で、端末7、3、6から送信されるフレーム527、523、526を受信および復号し、復号したフレームをFCS検査(CRC検査等)することでフレームの受信に成功したかを判断する。基地局は、各フレームの検査結果(受信の成功可否)に応じて、送達確認応答フレームを生成および送信(ダウンリンク応答)する。前述同様ここでは端末3、6、7のすべての送達確認を表す単一の送達確認応答フレームとして、Multi-STA BAフレーム504を送信する。Multi-STA BAフレーム504を受信した端末の動作は、Multi-STA BAフレーム502の場合と同様である。
以上の説明を踏まえて、本実施形態の特徴に係る動作のシーケンスを説明する。図14に、本シーケンスの一例を示す。図7と同一または対応する要素には同一の符号を付してある。図15は、図14のシーケンスを説明するための補足図である。図7のシーケンス例では、STA未指定RUへの選択権を獲得した複数の端末がランダムにリソースユニットを選択する際、各端末で選択するリソースユニットが異なっていた。このため、各端末から送信するフレームは基地局で正常に受信された。これに対して、図14のシーケンス例では、複数の端末が同じリソースユニットを選択したため、基地局で当該複数の端末から送信されるフレームを正常に受信できない場合を想定する。このような場合、本実施形態では、送信に失敗した端末の選択権獲得の優先度を高くするように、CWO値を調整することを特徴の1つとする(図7のシーケンスではCWO値は31に固定されていた)。一例として、本シーケンスでは、送信に失敗した端末は、CWO値を前回のCWO値よりも小さくする。このような制御により、端末間の公平性を担保する。以下、図14のシーケンスについて詳細に説明する。図7との差分を中心に説明し、図7と重複する説明は省略する。
基地局が、UL-OFDMAの開始を決定すると、ランダムアクセス用トリガーフレーム(TF-R)501を送信する。ランダムアクセス用トリガーフレーム501では、4つのリソースユニット(RU#1、RU#2、RU#3、RU#4)が指定され、いずれのリソースユニットも、STA未指定RUとして、AIDフィールドにAID“X”が設定されている。
端末1~8は、ランダムアクセス用トリガーフレーム501を復号し、RU#1、RU#2、RU#3、RU#4の4つのリソースユニットのうち、自端末の使用が指定されているかものがあるかを判断し、ここでは、いずれかのリソースユニットにもAID“X”が設定されているため、すべてのリソースユニットがランダムアクセス用のリソースユニットであると判断する。
端末1~8は、0以上CWO値以下の範囲からランダムに選択したバックオフ値(OBO値)を保持している。CWOは、CWOminとCWOmaxとの範囲から選択されている。ここではいずれの端末も初期値CWOini(=31)を選択しているとする。端末1~8は、自端末のバックオフ値から、ランダムアクセス用トリガーフレーム501におけるSTA未指定RU数を減算することで、OBO値を更新する。更新後のOBO値が所定値(ここでは0)に達した場合、STA未指定RUへの選択権を獲得する。
ここでは端末1~8(STA1~8)の、OBO値はそれぞれ
STA 1 OBO =10
STA 2 OBO =3
STA 3 OBO =5
STA 4 OBO =4
STA 5 OBO =1
STA 6 OBO =8
STA 7 OBO =2
STA 8 OBO =10
であり、ランダムアクセス用トリガーフレーム501ではSTA未指定RU数は4であるため、それぞれから4を引いて、更新後のOBO値は、以下のようになる。0より小さい値は0に固定している。
STA 1 OBO =10-4=6
STA 2 OBO =3-4=-1(→0)
STA 3 OBO =5-4=1
STA 4 OBO =4-4=0
STA 5 OBO =1-4=-3(→0)
STA 6 OBO =8-4=4
STA 7 OBO =2-4=-2(→0)
STA 8 OBO =10-4=6
更新後のOBOが所定値(0)になったのは、端末2、4、5、7であるため、端末2、4、5、7が選択権を獲得する。端末2、4、5、7は、ランダムアクセス用トリガーフレーム501で指定されたSTA未指定RUであるRU#1~RU#4からそれぞれランダムにリソースユニットを選択する。ここでは端末2はRU#4、端末4と端末7はRU#3、端末5はRU#1を選択したとする。端末4と端末7が同じリソースユニットを選択している。端末2、4、5、7以外の端末は、更新後のOBO値が0より大きいため、選択権を獲得できず、次に送信されるランダムアクセス用トリガーフレームを待機する。
端末2、4、5、7は、ランダムアクセス用トリガーフレーム501の受信完了から予め定めた時間後にそれぞれRU#4、RU#3、RU#1、RU#3を用いて、フレーム512、514、515、517を送信する。端末4と端末7からは、同じリソースユニットでフレームが送信される(図15の斜線部分参照)。
基地局は、RU#1で端末5から送信されるフレーム515、RU#3で端末4、7から送信されるフレーム514、517、RU#4で端末2から送信されるフレーム512を受信および復号し、復号したフレームをFCS検査(CRC検査等)することでフレームの受信に成功したかを判断する。RU#1で受信した端末5のフレーム515と、RU#4で受信した端末2のフレーム512の受信に成功し、RU#3で受信した端末4、7のフレーム514、517の受信に失敗したとする。
基地局は、各フレームの検査結果(受信の成功可否)に応じて、送達確認応答フレームとして、端末2、5から送信されたフレーム512、515の受信に成功したことを含むMulti-STA BAフレーム507を送信する。端末4、7から送信されたフレーム514、517の受信には失敗したため、端末4、7に対するACKは、Multi-STA BAフレーム507には含めない。なお、端末4、7から複数のデータフレームを含むアグリゲーションフレームが送信された場合は、アグリゲートされているすべてのデータフレームの受信に失敗した場合に、端末4、7に対する応答はMulti-STA BAフレーム507には含めない。一部のデータフレームの受信に成功した場合は、Block Ack開始シーケンスコントロールサブフィールドおよびBlock Ackビットマップサブフィールドを介して一部受信に成功したデータフレームに関して通知を行えばよい。
Multi-STA BAフレーム507を受信した端末のうち端末2、4、5、7は、自端末が送信したフレーム512、514、515、517に対するACKがMulti-STA BAフレーム507に含まれているかを確認する。端末2、5は、自端末の送信したフレーム512、515のACKが含まれていることを検出したが、端末4、7は、自端末が送信したフレーム514、517のACKが確認できないため、送信に失敗したと判断する。ここで送信に失敗したとは、同じリソースユニットで複数の端末がフレームを送信した基地局で正常に受信できなかった場合(本例の場合)の他、あるリソースユニットでは1台の端末のみがフレームを送信したが、電波環境が悪いことに起因して当該フレームの受信に基地局が失敗した場合も含む。フレーム512、514、515、517の送信完了から一定時間(SIFS時間等)以内にMulti-STA BAフレーム等のダウンリンク応答フレームを受信しない場合に、送信に失敗したと判断してもよい。なお、端末が、複数のデータフレームをアグリゲートしたアグリゲーションフレームを送信し、一部のデータフレームの送信に成功した場合は、一例として、端末は送信(ランダムアクセス)に成功したと判断し、すべてのデータフレームの送信に失敗した場合は、送信(ランダムアクセス)に失敗したと判断すればよい。
基地局は、Multi-STA BAフレーム507を送信した後、予め定めたタイミング、または任意のタイミングで、ランダムアクセス用トリガーフレーム503を送信する。ランダムアクセス用トリガーフレーム503の構成は、ランダムアクセス用トリガーフレーム501と同様に、RU#1~RU#4をSTA未指定RUとして指定しているとする。なお、Multi-STA BAフレーム505後からランダムアクセス用トリガーフレーム503の送信前の間は、任意の通信が行われていてもかまわない。例えば通常のトリガーフレーム(ソースユニット毎に端末を指定したトリガーフレーム)を基地局が送信して、各端末が指定されたリソースユニットを用いてアップリンク送信(UL-OFDMA)を行う通信が行われてもかまわない。
端末1~8は、前回のランダムアクセス用トリガーフレーム501の受信時に更新したOBO値(バックオフ値)を保持している。ただし、端末2、4、5、7については、ランダムアクセス用トリガーフレーム501に対してランダムアクセスを行ったため、再度、OBO値を、0以上CWO以下の範囲から選択する。ただし、端末2、5は送信に成功し、端末4、7は送信に失敗した。そこで、本実施形態ではCWOの選択を以下のように行うことを特徴とする。
送信に失敗した端末4,7は、CWOminおよびCWOmaxの範囲で、前回(CWO=31)よりも小さいCWOを選択する。送信に失敗するごとにCWOをCWOminまで徐々に小さくする。送信に成功したら、初期CWOini(例えば31)に戻る。
一例としてCWOmin=1、CWOmax=31とし、初期CWOiniが、CWOmaxである31とする。送信に失敗するごとに、CWOを、31から1まで徐々に小さくしていく。失敗するごとに31から一定値ずつ累積的に減算してもよいし、失敗数が増えるほど大きな値を累積的に減算してもよい。後者の例として、1回目の失敗では1、2回目の失敗では2、3回目の失敗では3を減算してもよい。この場合、開始時のCWOが31であれば、最初の失敗後のCWOは30(=31-1)、2回目の失敗後は28(=30-2)、3回目の失敗後は25(=28-3)・・・となる。どれだけCWOの値を調整(ここでは減少)させるかの調整量は基地局から端末に通知しておいてもよい。通知の方向は後述する各種の通知方法と同様の方法を用いてもよい。
別の方法として、べき数部分Pを用いてCWOの計算式を、例えば“2^P-1”のように定義し、失敗を重ねるごとにPの値を小さくしてもよい。一例として、CWOmaxの場合P=5とすると、CWOmax=2^5-1=31となる。CWOmin=1の場合P=1とすると、CWOmin=2^1-1=1となる。開始時は、CWOはCWOmaxに一致するとする。この場合、失敗を重ねるごとに、以下のようにCWOは更新される。
開始時31(=2^5-1)
-<失敗時>→15(=2^4-1)
-<失敗時>→7(=2^3-1)
-<失敗時>→3(=2^2-1)
-<失敗時>→1(=2^1-1)
この更新の様子を図16に模式的に示す。送信に成功した場合は、CWOは、CWOmax=31に戻る。Pの値は基地局から端末に通知しておいてもよい。通知の方向は後述する各種の通知方法と同様の方法を用いてもよい。Pの値も調整量の一例である。
後者の方法を用いる場合、本シーケンスでは、端末4、7は、1回目の失敗であったとすると、それぞれCWOは、例えば15(=2^4-1)となる。端末2、5は送信に成功したため、依然として初期CWOini(=CWOmax)である31(=2^5-1)をCWOとして用いる。
端末4、7は[0、15]からランダムにOBO値(バックオフ値)を選択し、端末4は7、端末7は4を選択したとする(図15参照)。端末2、5は、[0、31]からランダムにOBO値(バックオフ値)を選択し、端末2は23、端末5は18を選択したとする(図15参照)。これら以外の端末は、現時点で保持しているOBO値をそのまま用いる。
したがって、端末1~8(STA1~8)の、OBO値はそれぞれ以下のようになる(結果的に、各端末のOBO値は、図7のシーケンス例の場合と同じになっている)。
STA 1 OBO =6
STA 2 OBO =23
STA 3 OBO =1
STA 4 OBO =7
STA 5 OBO =18
STA 6 OBO =4
STA 7 OBO =4
STA 8 OBO =6
ランダムアクセス用トリガーフレーム503ではSTA未指定RU数は4であるため、各端末のOBO値からそれぞれから4を引いて、更新後のOBO値は、以下のようになる。0より小さい値は0に固定している(結果的に、各端末のOBO値は、図7のシーケンス例の場合と同じになっている)。
STA 1 OBO =6-4=2
STA 2 OBO =23-4=19
STA 3 OBO =1-4=-3(→0)
STA 4 OBO =7-4=3
STA 5 OBO =18-4=14
STA 6 OBO =4-4=0
STA 7 OBO =4-4=0
STA 8 OBO =6-4=2
更新後のOBO値が所定値(0)に達したのは、端末3、6、7であるため、端末3、6、7が選択権を獲得する。端末3、6、7は、ランダムアクセス用トリガーフレーム503で指定されたSTA未指定RUであるRU#1~RU#4からそれぞれランダムにリソースユニットを選択する。ここでは端末3はRU#2、端末6はRU#4、端末7はRU#1を選択したとする。端末3、6、7以外の端末は、更新後のOBO値が0より大きいため、選択権を獲得できず、次に送信されるランダムアクセス用トリガーフレームを待機する。
端末3、6、7は、ランダムアクセス用トリガーフレーム503の受信完了から予め定めた時間後にそれぞれRU#2、RU#4、RU#1を用いて、フレーム523、526、527を送信する。なお、RU#3は、どの端末にも選択されなかったため、RU#3では送信は行われない。なお、端末3、6、7が送信するフレームは、複数のデータフレーム等を集約したアグリゲーションフレーム(A-MPDU)でもよい。
基地局は、RU#1、RU#2、RU#4で、端末7、3、6から送信されるフレーム527、523、526を受信および復号し、復号したフレームをFCS検査(CRC検査等)することでフレームの受信に成功したかを判断する。基地局は、各フレームの検査結果(受信の成功可否)に応じて、送達確認応答フレームを生成および送信(ダウンリンク応答)する。前述同様ここでは端末3、6、7のすべての送達確認を表す単一の送達確認応答フレームとして、Multi-STA BAフレーム504を送信する。Multi-STA BAフレーム504を受信した端末の動作は、Multi-STA BAフレーム502の場合と同様である。
CWOmax、CWOminの値は、ビーコンフレームまたはトリガーフレーム(ランダムアクセス用トリガーフレームを含む)等で基地局からBSSに属する端末群に通知してもよい。トリガーフレームで通知する場合、共通情報フィールドまたは端末情報フィールド等に、CWOmax、CWOminを設定するフィールドを設けてもよい。CWOの初期値(CWOini)も同様にして通知してもよいし、システムまたは規格で事前に定まっていてもよい。
本実施形態に係るCWO値の更新と、CSMA/CAのランダムバックオフ機構で用いるコンテンションウィンドウ(CW)の更新との違いについて説明する。ある端末が、CSMA/CAで、CWに基づく時間の間、バックオフ(キャリアセンス)を行い、キャリアセンスアイドルとして、送信したとする。この際、別の端末との送信がたまたま同一となった場合、当該端末は、ACK TimeoutによりACK応答がないことを判断し、CW値を指数的に増加させる。CW値の初期値はCWminであり、再送するにつれて、最大でCWmaxまで、CW値を増加させる。これは、競合する端末に対して使用したCW値では十分にばらつきを与えなかったという判断で、同時送信を回避するために、時間軸上でさらにばらつきを持たせるための措置である。これに対し、本実施形態のランダムアクセス用トリガーフレームの仕組みでは、同時に選択権を獲得した複数の端末で、STA未指定RUを獲得できる端末と、獲得できない端末との2種類が存在する(CSMA/CAのランダムバックオフ機構では同じ時刻で送信した端末は基本的にすべての端末の送信が失敗する(ACK応答がない))。この点が、時間軸上でのランダムバックオフ機構と異なる。その際に、STA未指定RUを獲得できた端末と獲得できなかった端末とで、次のランダムアクセス用トリガーフレームでのSTA未指定RUへの獲得に同じ条件を用いるのでは公平性を欠く。そこで、本実施形態では、獲得に失敗した端末のCWO値を、失敗を重ねるごとに小さくすることで、獲得に成功した端末よりも獲得の優先度を高くし、これにより端末間の公平性を確保する。
上述した実施形態では、送信に成功した(ランダムアクセスした)複数の端末に対するダウンリンク応答として送達確認応答フレーム(Multi-STA BAフレーム)を送信したが、送達確認応答フレームの送信に代えて、通常のトリガーフレームを送信する形態も可能である。この場合のシーケンス例を図17に示す。
図14のMulti-STA BAフレーム507、504が、トリガーフレーム541、542に代わっている。この場合のトリガーフレーム541、542では、リソースユニット毎に割り当てる端末を指定したものである。トリガーフレームのフォーマットは基本的に図9に示したものを用い、共通情報フィールドまたは端末情報フィールドまたはこれらの両方の構成を、ランダムアクセス用トリガーフレームと異ならせてもよい。当該トリガーフレーム541、542で指定された端末は、自端末に割り当てられたリソースユニットを用いて、トリガーフレーム541、542の受信完了から予め定めた時間後に、データフレーム等のフレームをアップリンク送信する。送信するフレームは、複数のデータフレーム等を集約したアグリゲーションフレームでもよい。
基地局は、トリガーフレーム541、542を送信する場合、ランダムアクセス用トリガーフレーム501、503に対するランダムアクセスで送信に成功した端末を指定するようにする。これにより、送信に成功した端末は、トリガーフレーム541、542で自端末が指定されることにより、ランダムアクセス用トリガーフレーム501、503に対するランダムアクセスが成功したことを把握できる。また、ランダムアクセスした端末のうち、トリガーフレーム541、542で指定されなかった端末は、自端末の送信が失敗したと判断できる。ランダムアクセスで送信するフレームは、トリガーフレーム541、542での割り当て要求を通知するフレームであってもよい。なお、ランダムアクセスしていない端末、または送信に失敗した端末をトリガーフレーム541、542で指定することも可能である。なお、トリガーフレーム541、542には、リソースユニットおよび端末を指定する情報の他に、端末が送信に必要な情報(パケット長、送信電力、またはMCS等)をさらに含めてもよい。なお、トリガーフレームで指定する端末の選定は、MAC処理部10(例えばMAC共通処理部20、受信処理部40、または送信処理部30など)またはMAC/PHY管理部60で行えばよい。
(CWO更新の変形例1)
上述した実施形態では、送信に失敗するごとにその端末のCWO値を小さくしたが、変形例1では、これに加えて、成功するごとにCWO値を大きくする、CWOの初期値(CWOini)を、CWOminとCWOmaxとの間に定義しておく。CWOinitの値は、ビーコンフレームまたはトリガーフレーム等で基地局から端末に通知してもよい。
変形例1の動作を模式的に図18に示す。最初は、CWOの値をCWOinitに設定する。この例では2^3-1=7であり、これは、CWOminとCWOmaxの中間値(べき乗部分の中間値)である。成功した場合は1段上げ(べき乗部分Pを1加算)、失敗した場合は1段前に戻す(べき乗部分Pを1減算)。具体例を以下に示す。
開始時7
-<送信成功>→15
-<さらに送信成功>→31
-<送信失敗>→7
-<送信失敗>→3
(CWO更新の変形例2)
初期CWOiniをCWOminから開始する。送信失敗の場合は、CWOを維持し、送信成功の場合は、CWOをCWOmaxまで徐々に増加させていく。変形例2に係る動作を模式的に図19に示す。
最初は、CWOの値をCWOminに設定する(この例では2^3-1=7)。成功した場合は1段上げ(べき乗部分Pを1加算)、CWO値を維持する(べき乗部分Pの値を維持)。具体例を以下に示す。
開始時7
-<送信成功>→15
-<さらに送信成功>→31
-<送信失敗>→15
-<送信失敗>→7
この方法は、前述したCSMA/CAのランダムバックオフ機構でのCWの決定方法と類似しているが、以下の点で異なる。本変形例2では、成功するごとにCWO値を大きくするのに対し、CSMA/CAのランダムバックオフ機構では、失敗するごとにCWを大きくする。したがって、両者は、失敗と成功での動作が逆になっている。
(CWO更新の変形例3)
変形例3は、上述した実施形態および第1~第2の変形例と組み合わせて用いる。変形例3では、N回連続で同じ判定(成功または失敗)になったときに、CWO値を変更する。そうでなければ、同じCWOを維持する。Nの値は、ビーコンフレームまたはトリガーフレーム等で、基地局からBSSに属する端末に通知する。一例としてNは2でもよいし、3以上でもよい。
例えば、本変形例3を、送信に失敗した場合にCWOを小さくする形態と組み合わせる場合、N回連続した失敗した場合に、CWO値を小さくする。N-1回目までに連続の失敗が途切れた(成功した)場合は、CWO値を変更しない。また、送信に成功した場合にCWO値を大きくする形態と組み合わせる場合、N回連続した成功した場合に、CWO値を大きくする。N-1回目までに連続の成功が途切れた(失敗した)場合は、CWO値を変更しない。
(CWO更新の変形例4)
基地局の動作として、ビーコンフレームで、次のランダムアクセス用トリガーフレーム(TF-R)の送信までの時間を、例えばtarget transmission timeとして通知する。当該次のランダムアクセス用トリガーフレームでは、さらに続けてランダムアクセス用トリガーフレームの送信があるかどうかを通知する。例えば、Frame Controlフィールドのmore dataフィールドをCascaded Incidation ビットとして利用し、後続のランダムアクセス用トリガーフレームが存在する(予定されている)ことを通知する場合は当該ビットを1にする。後続のランダムアクセス用トリガーフレームは存在しない(予定されていない)ことを通知する場合は、当該ビットを0にする。ランダムアクセス用トリガーフレームの共通情報フィールド、端末情報フィールドまたはMACヘッダの予約領域等に、Cascaded Incidation ビットを設けてもよい。
本変形例に係る基地局の動作のシーケンス例を図20に示す。ビーコンフレーム551で、次のランダムアクセス用トリガーフレーム561の開始までの時間を、target transmission timeとして通知する。例えばtarget transmission timeを通知する情報エレメントを新規に定義してもよい。ランダムアクセス用トリガーフレーム561では、後続のランダムアクセス用トリガーフレーム562の送信が予定されているため、Cascaded Incidation ビットを1にする。ランダムアクセス用トリガーフレーム562では、後続のランダムアクセス用トリガーフレーム563が予定されているため、Cascaded Incidation ビットを1にする。ランダムアクセス用トリガーフレーム563では、後続のランダムアクセス用トリガーフレームは予定されていないため、Cascaded Incidation ビットを0にする。なお、図20では、基地局が送信するその他のフレームの図示(例えばMulti-STA BAフレームの図示)は省略している。
このようなシーケンスにおいて、Cascaded Incidation ビットが1のランダムアクセス用トリガーフレームを受信した場合(次のランダムアクセス用トリガーフレームが後続する)は、端末は、CWO値をこれまでの実施形態または変形例に従って、必要に応じて更新する。Cascaded Incidation ビットが0のランダムアクセス用トリガーフレームを受信した場合(次のランダムアクセス用トリガーフレームの受信までの時間が長いと考えられる場合)は、CWO値をリセットして、初期値(CWOini)に戻す。このシーケンス例では、パワーセーブモードの端末が存在する場合に、ビーコンフレーム551を受信した当該端末は、次のランダムアクセス用トリガーフレーム561までの時間を把握し、当該時間の間、スリープモードに遷移してもよい。また、Cascaded Incidation ビットが0のランダムアクセス用トリガーフレーム563を受信した後に、必要に応じてランダムアクセスし、その後、スリープモードに遷移してもよい。なお、本変形例はパワーセーブモードでない通常の端末も対応可能である。本変形例は、上述した実施形態または他の変形例と組み合わせて用いることができる。
(CWO更新の変形例5)
基地局が、ランダムアクセス用トリガーフレームに対する応答(UL-OFDMA)で送信に失敗している端末が多いと判断した場合に、強制的にCWO値をCWOmaxあるいはCWOinitに戻す指示をしてもよい。例えば、ランダムアクセス用トリガーフレームに、その通知用のビット(フィールド)を定義し、そのビットで、CWO値をCWOmaxあるいは初期値(CWOinit)に戻す指示を行う。当該ビットは共通情報フィールドまたは端末情報フィールド内に設けてもよいし、既存のフィールドの予約領域を利用してもよい。当該指示を受けた端末は、送信に失敗しても、次のランダムアクセス用トリガーフレームで当該通知用のビットが1であった場合は、CWOを初期値またはCWOmaxに戻す(どちらに戻すかは事前に決められているか、どちらを選択するかのビットを追加してもよい)。CWO値をCWOmaxあるいはCWOinitに戻すタイミングは、次にCWO値を更新するタイミング(送信に成功または失敗したタイミング)でもよいし、即時に変更して、変更後のCWO値でバックオフ値(OBO値)を取り直しても良い。なお、別の例として、CWO値を下げることを端末に禁止する指示も考えられる。本変形例のようにしてCWO値を調整することで、端末のランダムアクセスのタイミングをばらつかせることができる。なお、CWO値をCWOmaxあるいはCWOini以外の値、例えばCWOmaxとCWOminの中間に戻す指示でもよい。CWO値をCWOmaxあるいはCWOini等に変更することの指示は、送信に失敗した端末および成功した端末共通に適用してもよいし、少なくともいずれか一方にのみ適用するようにしてもよい。後者の場合、送信に失敗した端末への通知用のフィールド(通知フィールド)と、送信に成功した端末用の通知フィールドを定義し、それぞれ別々にCWO値の変更の指示を設定してもよい。
ここで、基地局おいて送信に失敗している端末数が多いことの判断は、当該失敗した端末数または送信に失敗したリソースユニット数が、閾値以上の場合でもよい。または、ランダムアクセス用トリガーフレームで指定したSTA未指定RU数(または受信に成功および失敗したリソースユニットの合計数)に対する、受信に失敗したリソースユニット数の割合が閾値以上の場合でもよいし、その他の方法でもよい。本変形例は、上述した実施形態または他の変形例と組み合わせて用いることができる。
(CWO更新の変形例6)
端末が、ランダムアクセス用トリガーフレームに対する応答送信(ランダムアクセス)後に、基地局からダウンリンク応答(Multi-STA BAフレーム等の送達確認応答フレームの応答)がなかった場合は、CWOをCWOmaxあるいは初期値(CWOinit)に戻してもよい。このような場合は、送信に失敗している端末が多いと判断されるため、CWO値をこのように変更することで、端末のランダムアクセスのタイミングをばらつかせることができる。なお、CWO値を、CWOmaxあるいは初期値(CWOinit)にする代わりに、先のCWO値をそのまま維持してもよい。本変形例は、上述した実施形態または他の変形例と組み合わせて用いることができる。
なお、ダウンリンク応答として通常のトリガーフレーム(図17の541、542参照)の送信があったものの、当該通常のトリガーフレームでは、ランダムアクセス用トリガーフレームですでに指定された端末のみが指定されている場合も、端末は、基地局からダウンリンク応答がなかった場合に準じて動作するようにしてもよい。また、ランダムアクセス用トリガーフレームで指定された端末が存在しなかった場合、または当該指定された端末からのアップリンク送信がなかった場合は、基地局から通常のトリガーフレームの送信がない場合もある。このときも、ダウンリンク応答がなかった場合に準じて動作するようにしてもよい。
また端末は、以下のように動作してもよい。基地局からダウンリンク応答(Multi-STA BAフレーム等)があった場合に、STA未指定RUでの送信に成功した端末数を計数する。自端末の送信が失敗の場合において、当該成功した端末数が閾値以上のとき、あるいはSTA未指定RU数に対する成功した端末数の割合が閾値以上のときは、CWO値を例えば下げるようにしてもよい。もしくは、基地局から送信するダウンリンク応答のフレームに、CWO値を下げることを指示する通知ビットのフィールドを設け、当該ビットでCWO値を下げることを基地局が指示してもよい。この場合、端末は、当該ビットに従ってCWO値を下げる。CWOを下げる方法は、上述した実施形態または変形例に従えばよい。
(送信失敗時の動作の変形例)
端末は、STA未指定RUでの送信に失敗した時に用いたOBO値(STA未指定RU数を減算する前のOBO値)を、次回のランダムアクセス用トリガーフレームに対して維持して使用してもよい。
一方、基地局側では、ランダムアクセス用トリガーフレームに対する応答(UL-OFDMA)で送信に失敗している端末が多いかを判断し、多いと判断したときは、次回のランダムアクセス用トリガーフレームで、STA未指定RU数を増やすようにしてもよい。これは、新たに選択権を獲得する端末が追加的に発生する可能性を考慮したものである。もしくは、送信に失敗した端末のみをランダムアクセスの対象として指定するランダムアクセス用トリガーフレームを定義し、当該フレームを送信してもよい。例えば、送信に失敗した端末のみをランダムアクセスの対象として指定する通知ビットを、共通情報フィールド、端末情報フィールドまたはMACヘッダに設け、その通知ビットをオンにしたランダムアクセス用トリガーフレームを送信してもよい。通知ビットは、MACヘッダの任意のフィールドの予約領域を利用してもよいし、使用済みの領域をこの目的のために再利用してもよい。
(送信成功時の動作の変形例)
基地局は、送信に成功(ランダムアクセスに成功した)端末に対し、次回以降のランダムアクセス用トリガーフレームに応答できる(ランダムアクセスできる)ための待ち回数または待ち時間の制限を与えてもよい。
この制限の情報は、基地局がランダムアクセス用トリガーフレームに対する応答(UL-OFDMA)受信後のダウンリンク応答に、受信に成功した端末の情報ととともに、当該成功した端末用の通知フィールドを介して通知すればよい。通知フィールドは、ダウンリンク応答がBA形式の場合(Multi-STA BAフレームを用いる場合など)は、BA形式のフレームの予約領域を利用または使用済み領域を再利用して構成すればよい。ダウンリンク応答としてトリガーフレームを用いる場合は、共通情報フィールド、端末情報フィールドまたはMACヘッダ等に、当該通知フィールドを設ければよい。トリガーフレームでは、上記送信に成功した端末をUL-OFDMAの対象として指定しているものとする。
端末は、ダウンリンク応答のフレームで自端末のACKまたは自端末の指定等があることで送信に成功したことを検出した場合、ダウンリンク応答のフレームの通知フィールドから、待機回数または待ち時間の制約を検出し、当該制約が適用される間は、送信(ランダムアクセス)を控えるように動作する。
当該制約が待ち回数の場合、ランダムアクセス用トリガーフレームを受信するごとに、待ち回数をデクリメントし、0になったら、その後のランダムアクセス用トリガーフレームの受信から、ランダムアクセスに関する動作(OBO値からSTA未指定RU数を減算する処理等)を開始する。また、当該制約が待ち時間の場合は、指定された時間の間待機し、その後のランダムアクセス用トリガーフレームの受信からランダムアクセスに関する動作を開始する。
上記制約が適用されている間は、直前の送信に成功したときのOBO値(STA未指定RU数を減算する前のOBO値)を維持し、当該制約が解除された後のランダムアクセス用トリガーフレームの受信で、当該維持しているOBO値からSTA未指定RU数を減算し、0に達した場合は、選択権を獲得し、ランダムアクセスを行う。なお、OBO値を維持するのではなく、現在のCWOから新たにOBO値を取り直しても良い。
(基地局の応答方法についての変形例)
基地局は、ランダムアクセス用トリガーフレームに対する応答で送信に成功した端末の受信品質を、送信が行われたリソースユニットについて測定する。受信品質の例として、受信RSSI (Received Signal Strength Indicator)、または受信EVM (Error Vector Magnitude)などがあるが、これらに限定されない。例えば、SN比(Signal to Noise Ratio)でもよい。基地局は、使用する指標に応じて、測定値が一定値以下または一定値以上かを判断して、受信品質が、応答に必要な基準を満たすか否か(悪いか否か)を判断する。
基地局は、受信品質が悪い端末には、当該リソースユニットでの端末の電波環境が悪いと判断して、ダウンリンク応答しない(Multi-STA BAフレームに当該端末のACKを含めない、またはトリガーフレームで当該端末を指定しない等)。これにより、端末に、送信(ランダムアクセス)に失敗したと判断させる。なお、基地局は、受信品質が悪い端末にもダウンリンク応答するようにし、この際、受信品質を特定する情報を、ダウンリンク応答のフレームに追加してもよい。端末は、ダウンリンク応答のフレームに基づき、送信に成功したものの、基地局での受信品質が悪いと判断した場合は、次回は、別のリソースユニットの選択するようにしてもよい。基地局は、受信品質を特定する情報を、BA形式のフレームの予約領域を利用して通知してもよいし、当該フレーム内で使用済みの領域を、本目的のために再利用して通知してもよい。
ここで、端末が、基地局が受信に成功した場合には受信品質に拘わらず応答することを希望するか、受信品質が悪い場合は応答しないことを希望するかを、選択的に基地局に通知できるようにしてもよい。端末が送信するフレームのMACヘッダ等に、要求ビット(要求フィールド)を設け、受信品質が悪い場合は応答しないことを希望する場合はビットを1、受信品質に拘わらず応答を希望する場合はビットを0にしてもよい。ビットの1と0との関係は逆でもよい。基地局は、フレームに含まれる要求ビットに応じて、受信に成功した場合の応答動作を切り換えればよい。
(乱数の範囲指定と、STA未指定RUの選定についての変形例)
上述した実施形態または各変形例では、OBO値からSTA未指定RU数を減算した結果、OBO値が0以下になり、選択権を得た端末は、STA未指定RUの中から任意のリソースユニットを選択した。例えばランダムにリソースユニットを選択した。本変形例では、ランダムアクセス用トリガーフレーム待機時のOBO値に応じて、選択するリソースユニットを決定する。例えばOBO値が3の状態で、ランダムアクセス用トリガーフレームを受信し、STA未指定RU数が4であれば、OBO値は3-4=1(→0)になり選択権を獲得する。この場合、待機時のOBO値が3であったため、“3”に対応するリソースユニット(例えばRU#3)を選択する。OBOの値と、リソースユニットの対応付けは事前に定めておけばよい。1つの値に対して複数のリソースユニットが対応づけられてもよい。この場合、当該対応づけられた複数のリソースユニットの中からランダムに選択してもよい。
また別の例として、ランダムアクセス用トリガーフレームを受信するごとに、STA未指定RU数のM(Mは1以上の整数)倍のCWOを設定する。つまり、STA未指定RU数に応じてCWOを設定する。例えばSTA未指定RU数が4、Mが2であれば、CWO=8である。そして、0から(CWO-1)の範囲から、乱数(OBO値)を選択する。選択した乱数が、STA未指定RU数から1減算した値(すなわち“STA未指定RU数-1”)以下の値であれば、選択権を獲得し、STA未指定RUからリソースユニットを選択する。“STA未指定RU数-1”は一例であり、STA未指定RU数でもよいし、別の値でもよい。リソースユニットの選択は、OBO値とリソースユニットとを事前に対応付けておき、当該対応付けにしたがって行えばよい。ただし、ランダムに選択することも可能である。端末が選択したリソースユニットに基づき送信後、送信が成功したか成功したかに応じて、端末はMの値を初期値から調整してもよい。Mの値の最小値、最大値を定義し、その範囲内で調整してもよい。Mの調整方法は、上述した実施形態または各変形例においてCWOを変更するのと同様にして行えばよい。CWOを小さくする場合はMを小さくし、CWOを大きくする場合はMを大きくすることに相当する。なお、本段落で述べた、STA未指定RU数に応じてCWOを設定することは、他の変形例に適用してもよい。
なお、Mの値(初期値、最小値、および最大値の少なくとも1つ)は、ビーコンフレームまたはトリガーフレーム(ランダムアクセス用トリガーフレームを含む)等で端末に通知すればよい。ビーコンフレームに、Mの値を通知する情報エレメントを設定してもよいし、ビーコンフレームの任意のフィールドの予約領域を利用して、Mの値を設定してもよい。また、トリガーフレームの共通情報フィールドまたは端末情報フィールドにMの値を通知するフィールドを設けてもよいし、またはMACヘッダの予約領域を利用して、またはMACヘッダ内の使用済みの領域を再利用して、Mの値を通知するようにしてもよい。
(その他の変形例)
上述した実施形態また各変形例では、送信に失敗した端末は自律的な判断でCWO値を調整したが、CWO値の調整を基地局が端末に指示してもよい。一例としてトリガーフレーム(図14の541、542参照)に、リソースユニット毎に端末を指定する情報に加えて、送信に失敗した端末への通知フィールドおよび送信に成功した端末への通知フィールドの少なくとも一方に、CWOの調整方法に関する情報を設定する。調整方法には、CWOを小さくする、大きくする、初期値に戻す、最大値にする、最小値にするなどの指示を設定する。CWOを小さくする、または大きくすることを指示する場合、前述した端末の動作と同様にして調整方法を決定すればよい。通知フィールドは、トリガーフレームの共通情報フィールドまたは端末情報フィールドに設けてもよい。または、MACヘッダの任意のフィールドの予約領域等を利用して、またはMACヘッダの使用済み領域を再利用して、通知フィールドを構成してもよい。例えば、端末は、トリガーフレームで自端末が指定されていないことを検出した場合は、失敗した端末用の通知フィールドで指定された調整方法に従って、CWO値の更新を行う。
図21に、本発明の実施形態に係る端末の動作の一例のフローチャートを示す。端末は、基地局から、複数のSTA未指定RU(ランダムアクセス用のリソースユニット)を指定したトリガーフレーム(ランダムアクセス用トリガーフレーム)を受信する(S101)。当該フレームで、一部のリソースユニットに対して、特定の端末の使用を指定していても良い。端末は、CWO値以下の範囲から選択したバックオフ値(OBO値)から、当該ランダムアクセス用トリガーフレームで指定されているSTA未指定RU数を減算し、減算後の値が所定値(例えば0)に達したかを確認する(S102)。所定値に達した場合は、STA未指定RUへの選択権を獲得したと判断し(YES)、所定値に達していない場合は、当該選択権を獲得していないと判断する(NO)。なお、実際に減算を行う必要はなく、前述したように、例えば、ランダムアクセス用トリガーフレーム受信時のOBO値と、STA未指定RU数との大小関係から選択権を獲得したかを判断してもよい。端末は、選択権を獲得した場合は、STA未指定RUから選択した任意のリソースユニットを用いて、フレームを送信する(S104)。送信するフレームの種類は任意でもよいし、事前に定められた種類のもの(例えばアップリンク送信の要求有無を通知するフレーム等)でもよい。ここで述べた動作はあくまで一例であり、前述した実施形態および各変形例に応じて、様々な動作が可能である。
図22に、本発明の実施形態に係る基地局の動作の一例のフローチャートを示す。
基地局は、複数のSTA未指定RU(ランダムアクセス用のリソースユニット)を指定したトリガーフレーム(ランダムアクセス用トリガーフレーム)を送信する(S201)。当該フレームは、一部のリソースユニットについて、特定の端末の使用を指定していてもよい。基地局は、当該送信から一定時間内に、ランダムアクセス用トリガーフレームで指定したSTA未指定RUで、フレームが受信されたかを判断する(S202)。より詳細には、各STA未指定RUで受信された無線信号を復号し、フレームの検査を行うことで、フレームが正常に受信されたかを判断する。基地局は、フレームを正常に受信できた端末を指定する情報を含むフレームをダウンリンク送信する(S203)。当該フレームは、前述したようにMulti-STA BAフレームでもよいし、使用するリソースユニット毎に端末を割り当てたトリガーフレームでもよい。トリガーフレームの場合、正常に受信できた端末の指定を含めるものとする。ダウンリンク送信するフレームには、ランダムアクセス用トリガーフレームに対して端末が応答の可否(ランダムアクセス可否)の判断を制御するための値範囲(CWO値)の情報を含めてもよい。一例として、送信に成功した端末数(正常にフレームが受信されたリソースユニット数)を把握し、当該端末数(またはリソースユニット数)に応じて定めたCWO値に関する情報(初期値、最小値または最大値への設定指示など)を指定する情報を含めてもよい。CWO値に関する情報は、送信に成功した端末、失敗した端末用に別々に各々の通知フィールドに設定してもよいし、いずれか一方の端末みの通知フィールドを定義し、当該端末向けにのみ当該情報を設定してもよい。その他、ダウンリンク送信するフレームには、前述した各変形例に記載した情報を含めてもよい。
以上、本発明の実施形態によれば、ランダムアクセス用トリガーフレームに対する各端末の送信の失敗または成功に応じて、各端末のCWOを個別に調整することにより、端末間で公平な送信(ランダムアクセス)の機会を提供できる。
本実施形態では、ランダムアクセス用トリガーフレームに対してUL-OFDMAを行う場合のランダムアクセスについて説明したが、UL-OFDMAとアップリンクMU-MIMO(UL-MU-MIMO)とを組み合わせた通信方式(UL-OFDMA&UL-MU-MIMO)を行う場合のランダムアクセスの場合も可能である。UL-MU-MIMOは、複数の端末が同じタイミングで、それぞれ同一周波数帯でフレームを基地局に送信(空間多重送信)することで、アップリンク送信の高効率化を図るものである。複数の端末から送信するフレームの物理ヘッダに互いに直交するプリアンブル信号を含めることで、基地局ではこれらのプリアンブル信号に基づき各端末とのアップリンクの伝搬路応答を推定し、これらのフレームを分離できる。UL-OFDMA&MU-MIMOは、リソースユニット毎に、複数の端末が同じリソースユニットを利用して、MU-MIMO送信を行う。この際、同じリソースユニットを利用する複数の端末は、それぞれ異なるプリアンブル信号を用いて送信を行う。このような方式にも本実施形態は適用可能である。
(第2の実施形態)
図23は、第2の実施形態に係る基地局(アクセスポイント)400の機能ブロック図である。このアクセスポイントは、通信処理部401と、送信部402と、受信部403と、アンテナ42A、42B、42C、42Dと、ネットワーク処理部404と、有線I/F405と、メモリ406とを備えている。アクセスポイント400は、有線I/F405を介して、サーバ407と接続されている。通信処理部401は、第1の実施形態で説明した制御部101と同様な機能を有している。送信部402および受信部403は、第1の実施形態で説明した送信部102および受信部102と同様な機能を有している。ネットワーク処理部404は、第1の実施形態で説明した上位処理部と同様な機能を有している。ここで、通信処理部401は、ネットワーク処理部404との間でデータを受け渡しするためのバッファを内部に保有してもよい。このバッファは、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401とのデータ交換、メモリ406とのデータ書き込み・読み出し、および、有線I/F405を介したサーバ407との通信を制御する。ネットワーク処理部404は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理やアプリケーション層の処理を行ってもよい。ネットワーク処理部の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
一例として、通信処理部401は、ベースバンド集積回路に対応し、送信部402と受信部403は、フレームを送受信するRF集積回路に対応する。通信処理部401とネットワーク処理部404とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。送信部402および受信部403のデジタル領域の処理を行う部分とアナログ領域の処理を行う部分とが異なるチップで構成されてもよい。また、通信処理部401が、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を実行するようにしてもよい。また、アンテナの個数はここでは4つであるが、少なくとも1つのアンテナを備えていればよい。
メモリ406は、サーバ407から受信したデータや、受信部402で受信したデータの保存等を行う。メモリ406は、例えば、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、SSDやHDD、SDカード、eMMC等であってもよい。メモリ406が、基地局400の外部にあってもよい。
有線I/F405は、サーバ407とのデータの送受信を行う。本実施形態では、サーバ407との通信を有線で行っているが、サーバ407との通信を無線で実行するようにしてもよい。この場合、無線I/Fが、有線I/F405の代わりに用いればよい。
サーバ407は、データの送信を要求するデータ転送要求を受けて、要求されたデータを含む応答を返す通信装置であり、例えばHTTPサーバ(Webサーバ)、FTPサーバ等が想定される。ただし、要求されたデータを返す機能を備えている限り、これに限定されるものではない。PCやスマートフォン等のユーザが操作する通信装置でもよい。また、基地局400と無線で通信してもよい。
基地局400のBSSに属するSTAが、サーバ407に対するデータの転送要求を発行した場合、このデータ転送要求に関するパケットが、基地局400に送信される。基地局400は、アンテナ42A~42Dを介してこのパケットを受信し、受信部403で物理層の処理等を、通信処理部401でMAC層の処理等を実行する。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401から受信したパケットの解析を行う。具体的には、宛先IPアドレス、宛先ポート番号等を確認する。パケットのデータがHTTP GETリクエストのようなデータ転送要求である場合、ネットワーク処理部404は、このデータ転送要求で要求されたデータ(例えば、HTTP GETリクエストで要求されたURLに存在するデータ)が、メモリ406にキャッシュ(記憶)されているかを確認する。メモリ406には、URL(またはその縮小表現、例えばハッシュ値や、代替となる識別子)とデータとを対応づけたテーブルが格納されている。ここで、データがメモリ406にキャッシュされていることを、メモリ406にキャッシュデータが存在すると表現する。
メモリ406にキャッシュデータが存在しない場合、ネットワーク処理部404は、有線I/Fを405介して、サーバ407に対してデータ転送要求を送信する。つまり、ネットワーク処理部404は、STAの代理として、サーバ407へデータ転送要求を送信する。具体的には、ネットワーク処理部404は、HTTPリクエストを生成し、TCP/IPヘッダの付加などのプロトコル処理を行い、パケットを有線I/F405へ渡す。有線I/F405は、受け取ったパケットをサーバ407へ送信する。
有線I/F405は、データ転送要求に対する応答であるパケットをサーバ407から受信する。ネットワーク処理部404は、有線I/F405を介して受信したパケットのIPヘッダから、STA宛のパケットであることを把握し、通信処理部401へパケットを渡す。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A~42Dから送信する。ここで、ネットワーク処理部404は、サーバ407から受信したデータを、URL(またはその縮小表現)と対応づけて、メモリ406にキャッシュデータとして保存する。
メモリ406にキャッシュデータが存在する場合、ネットワーク処理部404は、データ転送要求で要求されたデータをメモリ406から読み出して、このデータを通信処理部401へ送信する。具体的には、メモリ406から読み出したデータにHTTPヘッダ等を付加して、TCP/IPヘッダの付加等のプロトコル処理を行い、通信処理部401へパケットを送信する。このとき、一例として、パケットの送信元IPアドレスは、サーバと同じIPアドレスに設定し、送信元ポート番号もサーバと同じポート番号(通信端末が送信するパケットの宛先ポート番号)に設定する。したがって、STAから見れば、あたかもサーバ407と通信をしているかのように見える。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A~42Dから送信する。
このような動作により、頻繁にアクセスされるデータは、メモリ406に保存されたキャッシュデータに基づいて応答することになり、サーバ407と基地局400間のトラフィックを削減できる。なお、ネットワーク処理部404の動作は、本実施形態の動作に限定されるものではない。STAの代わりにサーバ407からデータを取得して、メモリ406にデータをキャッシュし、同一のデータに対するデータ転送要求に対しては、メモリ406のキャッシュデータから応答するような一般的なキャッシュプロキシであれば、別の動作でも問題はない。
本実施形態の基地局(アクセスポイント)を、第1の実施形態の基地局として適用することが可能である。上述の第1の実施形態で使ったフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行してもよい。また、第1の実施形態の基地局が受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。第1の実施形態において、アクセスポイントが送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えば端末宛のデータの有無の情報、データのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。
本実施形態では、キャッシュ機能を備えた基地局について説明を行ったが、図23と同じブロック構成で、キャッシュ機能を備えた端末(STA)を実現することもできる。ここでいう端末は、非基地局の端末である(前述したように基地局も無線通信端末の一形態である)。この場合、有線I/F405を省略してもよい。上述の第1の実施形態における端末によるフレーム、データまたはパケットの送信を、メモリ406に保存されたキャッシュデータを用いて実行してもよい。また、第1の実施形態の端末が受信したフレーム、データまたはパケットで得られた情報を、メモリ406にキャッシュしてもよい。第1の実施形態において、端末が送信するフレームは、キャッシュされたデータまたは当該データに基づく情報を含んでもよい。データに基づく情報は、例えば送信するデータの有無の情報、データのサイズに関する情報、データの送信に必要なパケットのサイズに関する情報でもよい。またデータの送信に必要な変調方式等の情報でもよい。
(第3の実施形態)
図24は、端末(非基地局の端末)または基地局の全体構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。端末または基地局は、1つまたは複数のアンテナ1~n(nは1以上の整数)と、無線LANモジュール148と、ホストシステム149を備える。無線LANモジュール148は、第1の実施形態に係る無線通信装置に対応する。無線LANモジュール148は、ホスト・インターフェースを備え、ホスト・インターフェースで、ホストシステム149と接続される。接続ケーブルを介してホストシステム149と接続される他、ホストシステム149と直接接続されてもよい。また、無線LANモジュール148が基板にはんだ等で実装され、基板の配線を介してホストシステム149と接続される構成も可能である。ホストシステム149は、任意の通信プロトコルに従って、無線LANモジュール148およびアンテナ1~nを用いて、外部の装置と通信を行う。通信プロトコルは、TCP/IPと、それより上位の層のプロトコルと、を含んでもよい。または、TCP/IPは無線LANモジュール148に搭載し、ホストシステム149は、それより上位層のプロトコルのみを実行してもよい。この場合、ホストシステム149の構成を簡単化できる。本端末は、例えば、移動体端末、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等でもよい。
無線LANモジュール148(または無線通信装置)は、IEEE802.11に加え、LTE(Long Term Evolution)またはLTE-Advanced(standards for mobile phones)のような他の無線通信規格の機能を備えていてもよい。
図25は、無線LANモジュールのハードウェア構成例を示す。この構成は、無線通信装置が非基地局の端末および基地局のいずれに搭載される場合にも適用可能である。つまり、図1に示した無線通信装置の具体的な構成の一例として適用できる。この構成例では、アンテナは1本のみであるが、2本以上のアンテナを備えていてもよい。この場合、各アンテナに対応して、送信系統(216、222~225)、受信系統(217、232~235)、PLL242、水晶発振器(基準信号源)243およびスイッチ245のセットが複数配置され、各セットがそれぞれ制御回路212に接続されてもよい。PLL242または水晶発振器243またはこれらの両方は、本実施形態に係る発振器に対応する。
無線LANモジュール(無線通信装置)は、ベースバンドIC(Integrated Circuit)211と、RF(Radio Frequency)IC221と、バラン225と、スイッチ245と、アンテナ247とを備える。
ベースバンドIC211は、ベースバンド回路(制御回路)212、メモリ213、ホスト・インターフェース214、CPU215、DAC(Digital to Analog Conveter)216、およびADC(Analog to Digital Converter)217を備える。
ベースバンドIC211とRF IC221は同じ基板上に形成されてもよい。また、ベースバンドIC211とRF IC221は1チップで構成されてもよい。DAC216およびADC217の両方またはいずれか一方が、RF IC221に配置されてもよいし、別のICに配置されてもよい。またメモリ213およびCPU215の両方またはいずれか一方が、ベースバンドICとは別のICに配置されてもよい。
メモリ213は、ホストシステムとの間で受け渡しするデータを格納する。またメモリ213は、端末または基地局に通知する情報、または端末または基地局から通知された情報、またはこれらの両方を格納する。また、メモリ213は、CPU215の実行に必要なプログラムを記憶し、CPU215がプログラムを実行する際の作業領域として利用されてもよい。メモリ213はSRAM、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ホスト・インターフェース214は、ホストシステムと接続するためのインターフェースである。インターフェースは、UART、SPI、SDIO、USB、PCI Expressなど何でも良い。
CPU215は、プログラムを実行することによりベースバンド回路212を制御するプロセッサである。ベースバンド回路212は、主にMAC層の処理および物理層の処理を行う。ベースバンド回路212、CPU215またはこれらの両方は、通信を制御する通信制御装置、または通信を制御する制御部に対応する。
ベースバンド回路212およびCPU215の少なくとも一方は、クロックを生成するクロック生成部を含み、当該クロック生成部で生成するクロックにより、内部時間を管理してもよい。
ベースバンド回路212は、送信するフレームに、物理層の処理として、物理ヘッダの付加、符号化、暗号化、変調処理など行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。
DAC216は、ベースバンド回路212から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DAC216はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、デジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。複数のアンテナを備え、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDAC等を設けてもよい。
RF IC221は、一例としてRFアナログICあるいは高周波IC、あるいはこれらの両方である。RF IC221は、フィルタ222、ミキサ223、プリアンプ(PA)224、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)242、低雑音増幅器(LNA)、バラン235、ミキサ233、およびフィルタ232を備える。これらの要素のいくつかが、ベースバンドIC211または別のIC上に配置されてもよい。フィルタ222、232は、帯域通過フィルタでも、低域通過フィルタでもよい。
フィルタ222は、DAC216から入力されるアナログI信号およびアナログQ信号のそれぞれから所望帯域の信号を抽出する。PLL242は、水晶発振器243から入力される発振信号を用い、発振信号を分周または逓倍またはこれらの両方を行うことで、入力信号の位相に同期した、一定周波数の信号を生成する。なお、PLL242は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を備え、水晶発振器243から入力される発振信号に基づき、VCOを利用してフィードバック制御を行うことで、当該一定周波数の信号を得る。生成した一定周波数の信号は、ミキサ223およびミキサ233に入力される。PLL242は、一定周波数の信号を生成する発振器の一例に相当する。
ミキサ223は、フィルタ222を通過したアナログI信号およびアナログQ信号を、PLL242から供給される一定周波数の信号を利用して、無線周波数にアップコンバートする。プリアンプ(PA)は、ミキサ223で生成された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号を、所望の出力電力まで増幅する。バラン225は、平衡信号(差動信号)を不平衡信号(シングルエンド信号)に変換するための変換器である。RF IC221では平衡信号が扱われるが、RF IC221の出力からアンテナ247までは不平衡信号が扱われるため、バラン225で、これらの信号変換を行う。
スイッチ245は、送信時は、送信側のバラン225に接続され、受信時は、受信側のバラン234またはRF IC221に接続される。スイッチ245の制御はベースバンドIC211またはRF IC221により行われてもよいし、スイッチ245を制御する別の回路が存在し、当該回路からスイッチ245の制御を行ってもよい。
プリアンプ224で増幅された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号は、バラン225で平衡-不平衡変換された後、アンテナ247から空間に電波として放射される。
アンテナ247は、チップアンテナでもよいし、プリント基板上に配線により形成したアンテナでもよいし、線状の導体素子を利用して形成したアンテナでもよい。
RF IC221におけるLNA234は、アンテナ247からスイッチ245を介して受信した信号を、雑音を低く抑えたまま、復調可能なレベルまで増幅する。バラン235は、低雑音増幅器(LNA)234で増幅された信号を、不平衡-平衡変換する。ミキサ233は、バラン235で平衡信号に変換された受信信号を、PLL242から入力される一定周波数の信号を用いてベースバンドにダウンコンバートする。より詳細には、ミキサ233は、PLL242から入力される一定周波数の信号に基づき、互いに90°位相のずれた搬送波を生成する手段を有し、バラン235で変換された受信信号を、互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In-phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad-phase)信号とを生成する。フィルタ232は、これらI信号とQ信号から所望周波数成分の信号を抽出する。フィルタ232で抽出されたI信号およびQ信号は、ゲインが調整された後に、RF IC221から出力される。
ベースバンドIC211におけるADC217は、RF IC221からの入力信号をAD変換する。より詳細には、ADC217はI信号をデジタルI信号に変換し、Q信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もあり得る。
複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のADCを設けてもよい。ベースバンド回路212は、デジタルI信号およびデジタルQ信号に基づき、復調処理、誤り訂正符号処理、物理ヘッダの処理など、物理層の処理等を行い、フレームを得る。ベースバンド回路212は、フレームに対してMAC層の処理を行う。なお、ベースバンド回路212は、TCP/IPを実装している場合は、TCP/IPの処理を行う構成も可能である。
上述した各部の処理の詳細は、図1の説明から自明であるため、重複する説明は省略する。
(第4の実施形態)
図26(A)および図26(B)は、それぞれ第4の実施形態に係る無線端末の斜視図である。図26(A)の無線端末はノートPC301であり、図26(B)の無線端末は移動体端末321である。ノートPC301および移動体端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきた無線端末に搭載されていた無線通信装置、または基地局11に搭載されていた無線通信装置、またはこれらの両方を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線端末は、ノートPCや移動体端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置、自動車等にも搭載可能である。
また、無線端末または基地局11、またはこれらの両方に搭載されていた無線通信装置は、メモリーカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリーカードに搭載した例を図27に示す。メモリーカード331は、無線通信装置355と、メモリーカード本体332とを含む。メモリーカード331は、外部の装置(無線端末または基地局11、またはこれらの両方等)との無線通信のために無線通信装置335を利用する。なお、図27では、メモリーカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インターフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インターフェース部は、バスを介して外部メモリ(バッファ)と接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。ファームウエアが動作するプロセッサ部は、本実施形態に係る制御部または制御部の処理を行うプロセッサであってもよいし、当該処理の機能拡張または変更に係る処理を行う別のプロセッサであってもよい。ファームウエアが動作するプロセッサ部を、本実施形態に係る基地局あるいは無線端末あるいはこれらの両方が備えてもよい。または当該プロセッサ部を、基地局に搭載される無線通信装置内の集積回路、または無線端末に搭載される無線通信装置内の集積回路が備えてもよい。
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置)の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、例えば無線通信装置における制御部と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、送信部または受信部または制御部またはこれらのうちの複数と接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、例えば無線通信装置における制御部と接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、ディスプレイを含む。ディスプレイは、図示しないバスを介して、無線通信装置の制御部に接続されてもよい。このようにディスプレイを備える構成とし、無線通信装置の動作状態をディスプレイに表示することで、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第13の実施形態)
本実施形態では、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別
一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、前述したように、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。IEEE802.11規格では、フレーム種別の識別は、MACフレームのフレームヘッダ部にあるFrame Controlフィールドの中のType、Subtypeという2つのフィールドで行う。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば管理フレームの中のBeaconフレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。応答フレームは、例えばACKフレームやBlockACKフレームである。またRTSフレームやCTSフレームも制御フレームである。
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、IEEE802.11規格(前述のIEEE Std 802.11ac-2013などの拡張規格を含む)では接続確立の手順の1つとしてアソシエーション(association)プロセスがあるが、その中で使われるAssociation RequestフレームとAssociation Responseフレームが管理フレームであり、Association RequestフレームやAssociation Responseフレームはユニキャストの管理フレームであることから、受信側無線通信端末に応答フレームであるACKフレームの送信を要求し、このACKフレームは上述のように制御フレームである。
[2]無線通信装置間の接続切断の手法
接続の切断(リリース)には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続を確立している無線通信装置間のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。IEEE802.11規格ではDeauthenticationフレームがこれに当たり、管理フレームに分類される。通常、接続を切断するフレームを送信する側の無線通信装置では当該フレームを送信した時点で、接続を切断するフレームを受信する側の無線通信装置では当該フレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、非基地局の無線通信端末であれば通信フェーズでの初期状態、例えば接続するBSS探索する状態に戻る。無線通信基地局がある無線通信端末との間の接続を切断した場合には、例えば無線通信基地局が自BSSに加入する無線通信端末を管理する接続管理テーブルを持っているならば当該接続管理テーブルから当該無線通信端末に係る情報を削除する。例えば、無線通信基地局が自BSSに加入する各無線通信端末に接続をアソシエーションプロセスで許可した段階で、AIDを割り当てる場合には、当該接続を切断した無線通信端末のAIDに関連づけられた保持情報を削除し、当該AIDに関してはリリースして他の新規加入する無線通信端末に割り当てられるようにしてもよい。
一方、暗示的な手法としては、接続を確立した接続相手の無線通信装置から一定期間フレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、接続を切断するフレームの受信を期待できないからである。
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマーを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマー(例えばデータフレーム用の再送タイマー)を起動し、第1のタイマーが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマーは止められる。
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマーが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。第1のタイマーと同様、第2のタイマーでも、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。
あるいは、接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマーを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマーを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマーが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。この場合も、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。この場合も、接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマーは、ここでは第2のタイマーとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマーを用いるようにしてもよい。
[3]無線LANシステムのアクセス方式
例えば、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11無線LANではCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)をアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
[4]無線LANのフレーム間隔
IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)などがある。
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするため、このような定義になっているといえる。
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category:AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した(受信したフレームがエラーであると判定した)場合に起動されるフレーム間隔である。
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図28に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。なお、キャリアセンスの結果、媒体がビジーではない、つまり媒体がアイドル(idle)であると認識した場合には、キャリアセンスを開始した時点から固定時間のAIFSを空けて、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功し、かつ当該データフレームが応答フレームの送信を要求するフレームであるとそのデータフレームを内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたW_ACK1を内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BEST EFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、基本的にはSIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。なお効率的なEIFSの取り方ができる無線通信装置では、EIFSを起動した物理パケットへの応答フレームを運ぶ物理パケットの占有時間長を推定し、SIFSとDIFSとその推定時間の和とすることもできる。
なお、各実施形態で記載されているフレームは、Null Data Packetなど、IEEE802.11規格または準拠する規格で、パケットと呼ばれるものを指してもよい。
また、複数の端末が多重送信するフレームは、異なる内容のフレームであっても、同一の内容のフレームでもよい。一般的な表現として、複数の端末が第Xのフレームを送信または受信すると表現するとき、これらの第Xのフレームの内容は同じであっても、異なってもよい。Xは任意の値である。
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路 (PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。また、回路は、単一チップに配置された複数の回路でもよいし、複数のチップまたは複数の装置に分散して配置された1つ以上の回路でもよい。
また本明細書において“a,bおよびcの少なくとも1つ”は、a,b,c,a-b, a-c,b-c,a-b-cの組み合わせだけでなく、a-a,a-b-b,a-a-b-b-c-cなどの同じ要素の複数の組み合わせも含む表現である。また、a-b-c-dの組み合わせのように、a,b,c以外の要素を含む構成もカバーする表現である。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
以下、原出願の親出願の特許出願時における特許請求の範囲の記載を付記する。
[項目1]
少なくとも1つのアンテナと、
前記アンテナに結合され、フレームを受信する受信部と、
前記アンテナに結合され、フレームを送信する送信部と、
前記受信部および前記送信部に結合された通信処理部と、
前記通信処理部に結合され、前記通信処理部へデータを送信し、別の装置からデータを受信する、ネットワーク処理部と、
前記ネットワーク処理部に結合され、第1データをキャッシュする、メモリと、
を備え、
前記送信部は、前記アンテナを介して、複数の周波数成分を指定する情報を含む第1フレームを送信し、
前記通信処理部は、前記複数の周波数成分のそれぞれで第2フレームが受信されたかを判断し、
前記送信部は、前記第1フレームへの応答可否を判断するために用いられる、前記第2フレームが受信された前記周波数成分の個数に応じた第1の値範囲に関する第1情報を含む第3フレームを、前記アンテナを介して、送信し、
前記第1フレームまたは前記第3フレームは、前記メモリにキャッシュされている前記第1データまたは前記第1データに基づく情報を含む
無線通信端末。
[項目2]
前記第1情報は、前記第1の値範囲の大きさを初期値に設定することの指示を含む
項目1に記載の無線通信端末。
[項目3]
前記初期値は、前記第1の値範囲の最小値と最大値との中間値である
項目2に記載の無線通信端末。
[項目4]
前記第1情報は、前記第1の値範囲の大きさを最大値に設定することの指示を含む
項目1に記載の無線通信端末。
[項目5]
前記第1情報は、前記第1の値範囲の最小値と最大値の少なくとも一方を指定する情報を含む
項目1ないし4のいずれか一項に記載の無線通信端末。
[項目6]
前記第1情報は、前記第1の値範囲の調整量を指示する情報を含む
項目1に記載の無線通信端末。
[項目7]
前記第3フレームは、前記第2フレームが受信されなかった端末への通知用の第1フィールドを含み、
前記第1情報は、前記第3フレームにおける前記第1フィールドに設定される
項目1ないし6のいずれか一項に記載の無線通信端末。
[項目8]
前記第3フレームは、前記第2フレームが受信された端末への通知用の第2フィールドを含み、
前記第1情報は、前記第3フレームにおける前記第2フィールドに設定される
項目1ないし7のいずれか一項に記載の無線通信端末。
[項目9]
前記通信処理部は、前記第2フレームが受信された前記周波数成分の個数に応じて、次に送信する前記第1フレームで指定する周波数成分の個数を調整する
項目1ないし8のいずれか一項に記載の無線通信端末。
[項目10]
前記第3フレームは、前記第2フレームが受信された端末への通知用の第3フィールドを含み、
前記通信処理部は、前記第1フレームへの応答を待機する前記第1フレームの受信回数または前記第1フレームへの応答を待機する時間を指定する第2情報を、前記第3フレームにおける前記第3フィールドに設定する
項目1ないし9のいずれか一項に記載の無線通信端末。
[項目11]
前記通信処理部は、前記第2フレームの通信品質を測定し、
前記第3フレームは、前記通信品質が基準を満たす前記第2フレームを送信した端末の識別子を含み、前記通信品質が基準を満たさない前記第2フレームを送信した端末の識別子を含まない
項目1ないし10のいずれか一項に記載の無線通信端末。
[項目12]
前記第1フレームは、特定の1台の端末が使用することを指定した少なくとも1つの第2周波数成分と、前記複数の周波数成分が任意の端末によって使用されることが許容されることを指定する情報を含む、
項目1ないし11のいずれか一項に記載の無線通信端末。
[項目13]
IEEE802.11規格に従って通信を制御する
項目1ないし12のいずれか一項に記載の無線通信端末。
[項目14]
基地局である項目1ないし13のいずれか一項に記載の無線通信端末。
[項目15]
無線通信端末による無線通信方法であって、
第1データをメモリにキャッシュし、
複数の周波数成分を指定する情報を含む第1フレームを送信し、
前記複数の周波数成分のそれぞれで第2フレームが受信されたかを判断し、
前記第1フレームへの応答可否を判断するために用いられる、記第2フレームが受信された前記周波数成分の個数に応じた第1の値範囲に関する第1情報を含む第3フレームを送信し、
前記第1フレームまたは前記第3フレームは、前記メモリにキャッシュされている前記第1データまたは前記第1データに基づく情報を含む
無線通信方法。
以下、原出願の拒絶査定時における特許請求の範囲の記載を付記する。
[項目1]
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)ランダムアクセス用の複数の周波数成分を指定する情報を含むトリガーフレームである第1フレームを複数の端末に送信する送信部と、
前記第1フレームの前記情報で指定された前記複数の周波数成分のうちの少なくとも1つを介して送信される少なくとも1つの第2フレームを受信する受信部と、
第1の値範囲を決定するために用いられる最小値及び最大値を更新する制御部と、を備え、
前記第1の値範囲は、前記複数の周波数成分のうちの1つで送信を行うかを決定するために用いられる第1値を決定するために用いられ、前記第1値は、前記第1の値範囲からランダムに選択され、
前記最小値及び前記最大値は、前記第2フレームの送信の成功又は失敗の結果状態を管理する前記端末によって用いられ、
前記送信部は、前記最小値及び前記最大値を含む第3フレームを送信し、
前記送信部は、前記OFDMAランダムアクセス用の複数の周波数成分を指定する情報を含むトリガーフレームである第4フレームを送信し、
前記第4フレームを受信した前記端末では、前記最小値及び前記最大値と、前記第2フレームの送信の成功又は失敗の前記結果状態と、に基づいて更新された前記第1の値範囲から選択された第2値に基づいて、前記第4フレームに応答するための送信権が獲得される
無線通信装置。
[項目2]
少なくとも1つのアンテナを備えた
項目1に記載の無線通信装置。
[項目3]
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)ランダムアクセス用の複数の周波数成分を指定する情報を含むトリガーフレームである第1フレームを複数の端末に送信し、
前記第1フレームの前記情報で指定された前記複数の周波数成分のうちの少なくとも1つを介して送信される少なくとも1つの第2フレームを受信し、
第1の値範囲を決定するために用いられる最小値及び最大値を更新し、
前記第1の値範囲は、前記複数の周波数成分のうちの1つで送信を行うかを決定するために用いられる第1値を決定するために用いられ、前記第1値は、前記第1の値範囲からランダムに選択され、
前記最小値及び前記最大値は、前記第2フレームの送信の成功又は失敗の結果状態を管理する前記端末によって用いられ、
前記最小値及び前記最大値を含む第3フレームを送信し、
前記OFDMAランダムアクセス用の複数の周波数成分を指定する情報を含むトリガーフレームである第4フレームを送信し、
前記第4フレームを受信した前記端末では、前記最小値及び前記最大値と、前記第2フレームの送信の成功又は失敗の前記結果状態と、に基づいて更新された前記第1の値範囲から選択された第2値に基づいて、前記第4フレームに応答するための送信権が獲得される
無線通信方法。