以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[実施形態1]
図1から図22は本発明の実施形態1を示したものであり、図1は撮像装置1の構成を示すブロック図である。
撮像装置1は、被写体像を撮像して撮像データを生成するものであり、例えばデジタルカメラとして構成されている。特に本実施形態の撮像装置は、例えば一眼カメラ(ミラーレス一眼カメラ、または一眼レフレックスカメラなど)として構成されていて、カメラ本体3と、カメラ本体3に対して着脱可能な撮影レンズ2と、を備えている。ただし、撮像装置1は、一眼カメラに限定されるものではなく、いわゆるコンパクトタイプのカメラであっても構わないし、デジタルビデオカメラ、撮影機能付き通信機器、撮影機能付き顕微鏡、内視鏡、監視カメラなどの各種の撮像機能を備える装置であってもよい。
撮影レンズ2は、被写体像を結像するものであり、図1においては、特にレンズ内に手ぶれ補正機能(レンズIS(L-IS:Lens Image Stabilization))を備える例を示している。
すなわち、撮影レンズ2は、レンズ21と、絞り22と、手ぶれ補正光学素子23と、手ぶれ補正制御部24と、絞り制御部25と、レンズ制御部26と、手ぶれ検出部27と、操作部28と、通信制御部29と、を備えている。
レンズ21は、被写体像を結像する光学系であり、1枚以上(一般的には複数枚)のレンズを組み合わせて構成されている。レンズ21は、フォーカス位置を調整可能となっていて、フォーカス位置を調整するためのフォーカスレンズを例えば備えている。
絞り22は、レンズ21を通過する光束の通過範囲を制御する光学絞りである。絞り22の開口径を変化させると、被写体像の明るさが変化し、ボケの大きさなども変化する。
手ぶれ補正光学素子23は、例えばレンズ21の光軸に垂直な方向に移動することで、手ぶれによる被写体像のぶれを補正するものである。
なお、図1ではレンズ21と絞り22と手ぶれ補正光学素子23とが別体であるように模式的に示しているが、実際には、絞り22および手ぶれ補正光学素子23がレンズ21の内部に組み込まれていても構わない。
手ぶれ補正制御部24は、手ぶれ検出部27により検出された手ぶれによる被写体像の移動を打ち消すように、手ぶれ補正光学素子23を制御して駆動する。
絞り制御部25は、カメラ本体3から指令に基づいて、絞り22の開口径を変化させる。
レンズ制御部26は、カメラ本体3から指令に基づいて、レンズ21を含む撮影レンズ2のフォーカス位置を調整する。
手ぶれ検出部27は、ジャイロセンサ等の角速度センサを備え、撮影レンズ2に生じている手ぶれを検出する。
操作部28は、撮影レンズ2に係る操作を行うためのものである。操作部28は、例えば、手ぶれ補正光学素子23および手ぶれ補正制御部24によるレンズISのオン/オフを切り替えるためのISスイッチを備えている。
通信制御部29は、カメラ本体3の後述するレンズ通信部37と通信を行い、カメラ本体3からの指令を受信し、撮影レンズ2に係る各種の情報をカメラ本体3へ送信する。
カメラ本体3は、メカニカルシャッタ30と、撮像部31と、A/D変換部32と、メモリ33と、画像処理部34と、撮像駆動制御部35と、シャッタ制御部36と、レンズ通信部37と、手ぶれ検出部38と、露出制御部39と、AF処理部40と、不揮発性メモリ41と、外部メモリ42と、表示部43と、操作部44と、電源制御部45と、電源部46と、フラッシュ部47と、システム制御部48と、を備えている。
メカニカルシャッタ30は、撮影レンズ2からの光束が撮像部31へ到達する時間を制御するものであり、例えば遮光機能を有するシャッタ幕を走行させる光学シャッタとして構成されている。
撮像部31は、被写体像を撮像して撮像信号(撮像データ)を出力する撮像素子(イメージセンサ)と、撮像素子を撮影レンズ2の光軸に垂直な方向に移動する手ぶれ補正機能(ボディIS(B-IS:Body Image Stabilization)と、を備えている。なお、ボディISとしては、撮像部31の機構的な構成により撮像素子を移動する光学手ぶれ補正以外にも、画像処理部34により画像データを電子的にデジタル演算処理する電子手ぶれ補正がある。
ここに、撮影レンズ2の光軸をz軸、z軸に垂直な撮像面31の直交2軸をx軸(横軸)およびy軸(縦軸)としたときに、本実施形態の撮像部31による光学手ぶれ補正は、後述するように、x軸周り(ピッチ(Pitch)方向)の角度ぶれ、y軸周り(ヨー(Yaw)方向)の角度ぶれ、z軸周り(ロール(Roll)方向)の回転ぶれ、x軸方向へのシフトぶれ、y軸方向へのシフトぶれを補正することができる構成となっている。
A/D変換部32は、撮像部31から出力されるアナログの撮像信号をデジタルの撮像信号に変換する。
メモリ33は、A/D変換部32から出力された撮像データを記憶すると共に、画像処理部34により処理された画像データを記憶し、さらにシステム制御部48のワークメモリ等としても用いられるようになっている。
画像処理部34は、メモリ33に記憶された撮像データを読み出して、撮像データに各種の画像処理を行い、表示用の画像データ、および記録用の画像データを生成し、生成した画像データをメモリ33に記憶させる。また、画像処理部34は、撮像データの画角を、所定のデジタルテレコンバータ倍率に基づき制限することで、画像拡大を行うデジタルテレコンバータ設定部(デジタルテレコンバータ設定回路)として機能するようになっている。
撮像駆動制御部35は、撮像素子の画素リセット、露光開始(電荷蓄積開始)、および露光終了(画素からの読み出しによる電荷蓄積終了)などを制御する。ここに、露光開始タイミングおよび露光終了タイミングを制御することで、いわゆる電子シャッタとして機能することが可能となっている。
さらに、撮像駆動制御部35は、手ぶれ検出部38により検出された手ぶれによる被写体像の移動を打ち消すように、撮像部31のボディISを制御して駆動する。
シャッタ制御部36は、メカニカルシャッタ30の開閉を制御する。例えば、ライブビュー画像を撮影するとき、電子シャッタにより深度合成撮影(複数枚の画像が自動的に撮影されるために、自動深度合成撮影ともいう)を行うときなどには、メカニカルシャッタ30は開状態に維持されるように制御される。
そして、撮像素子の露光時間は、例えば、メカニカルシャッタ30による露光開始および露光終了と、電子シャッタによる露光開始および露光終了と、電子シャッタによる露光開始およびメカニカルシャッタ30による露光終了(先幕電子シャッタと呼ばれる)と、の何れかの組み合わせにより制御される。
レンズ通信部37は、撮影レンズ2の上述した通信制御部29と通信を行い、撮影レンズ2の情報(レンズID(レンズ種類名、レンズシリアル番号など)、焦点距離、最至近フォーカス位置、現在のフォーカス位置等)を取得するレンズ情報取得部である。
手ぶれ検出部38は、ジャイロセンサ等の角速度センサ、および平行移動を検出する加速度センサを備え、カメラ本体3に生じている手ぶれを検出する。
露出制御部39は、メモリ33に記憶された撮像データに基づいて、撮像素子に結像される被写体像が適切な明るさとなるように、露出条件、具体的には、露光時間(シャッタ速度)、絞り22の絞り値、ISO感度(撮像信号の増幅率)などを制御する。
AF処理部40は、例えば撮像データに基づいてAF(オートフォーカス)処理を行い、被写体における目標部分が合焦するようにフォーカス位置を調整するための制御信号を生成する。この制御信号は、システム制御部48、レンズ通信部37、および通信制御部29を経由してレンズ制御部26へ送信され、レンズ制御部26によりレンズ21内のフォーカスレンズが駆動制御される。
不揮発性メモリ41は、例えばフラッシュメモリにより構成されていて、システム制御部48により実行される処理プログラム(撮像装置1の制御プログラム)、撮像装置1に係る各種のデータ、ユーザにより設定された設定値などを不揮発に記録する記録媒体である。
外部メモリ42は、画像処理部34により画像処理されメモリ33に記憶されている記録用の画像データを記録する記録媒体である。外部メモリ42は、例えばカメラ本体3に対して着脱可能なメモリカードにより構成されているために、撮像装置1に固有の構成でなくても構わない。
表示部43は、画像処理部34により画像処理されメモリ33に記憶されている表示用の画像データに基づき画像を表示する表示デバイスである。ここに、画像は、ライブビュー、静止画撮影後の画像確認、外部メモリ42に記憶されている画像の再生、などの際に表示される。従って、表示部43は、ライブビューディスプレイであって、撮像データに基づきライブビューを表示するライブビュー表示部となっている。
また、表示部43の画像には各種の情報を重畳することが可能となっており、後述するような深度合成画像の画角範囲を示す表示(具体例としては、画角制限枠など)も重畳される。従って、表示部43は、深度合成画角範囲ディスプレイであって、深度合成画像の画角範囲をライブビュー上に表示する深度合成画角範囲表示部となっている。
操作部44は、撮像装置1に対する各種の操作入力を行うためのものであり、例えば、ボタン、スイッチ、タッチパネルなどのデバイスにより構成されている。操作部44は、撮像装置1の電源をオン/オフするための電源ボタンや、その他の操作ボタンを含んでいる。その他の操作ボタンの幾つかの例については、後で図2を参照して説明する。この操作部44に対して操作が行われると、操作内容に応じた信号がシステム制御部48へ出力される。
電源制御部45は、電源部46を制御するものである。
電源部46は、電源制御部45の制御に応じて、撮像装置1内の各部へ電力を供給する。
フラッシュ部47は、システム制御部48の制御に基づいて、被写体へ照明光を照射する。フラッシュ部47の発光は、深度合成撮影においても、必要に応じて適宜行われる。
システム制御部48は、カメラ本体3内の各部を制御すると共に、レンズ通信部37を経由して通信制御部29へ指令を送信し、撮影レンズ2内の各部を制御するものである。従って、システム制御部48は、撮像装置1を統括的に制御する制御部となっている。システム制御部48は、ユーザにより操作部44から操作入力が行われると、不揮発性メモリ41に記憶されている処理プログラムに従って、不揮発性メモリ41から処理に必要なパラメータを読み込んで、操作内容に応じた各種シーケンスを実行する。
また、システム制御部48は、深度合成用フォーカス位置決定部(深度合成用フォーカス位置決定回路)として機能し、深度合成撮影における近点のフォーカス位置および遠点のフォーカス位置を決定して出力する。
さらに、システム制御部48は、撮像制御部(撮像制御回路)として機能し、深度合成撮影の本撮影において、レンズ制御部26に指令を送信して撮影レンズ2のフォーカス位置を、近点のフォーカス位置と遠点のフォーカス位置との間で所定量ずつ移動させながら、撮像駆動制御部35に指令を送信して撮像部31に繰り返し撮像させ、複数の撮像データを出力させる。
次に、図2は、撮像装置1の外観を背面側から示す斜視図である。
撮像装置1は、撮影レンズ2とカメラ本体3とを、電気接点を有するレンズマウント等を用いて着脱可能に接続して構成されている。
カメラ本体3の背面には、表示部43を構成する背面モニタ43aが配置されている。背面モニタ43aには、操作部44を構成するタッチパネルが設けられている。さらに、背面モニタ43aの上部には、表示部43を構成する電子ビューファインダ(EVF)43bが配置されている(すなわち、図2では撮像装置1がミラーレス一眼カメラである例を示している)。
電子ビューファインダ43bの右側となるカメラ本体3の上面には、レリーズボタン44a、フロントダイヤル44b、リアダイヤル44c、撮影モードダイヤル44d、動画ボタン44j、および拡大ボタン44kが配置されている。
レリーズボタン44aは、画像の撮影開始を指示するためのボタンであり、例えば、1st(ファースト)レリーズスイッチおよび2nd(セカンド)レリーズスイッチを有する2段式操作ボタンとなっている。
フロントダイヤル44bおよびリアダイヤル44cは、例えば、撮影モードに応じた各種のパラメータを調整する際に用いられる。
撮影モードダイヤル44dは、撮影モードの選択に用いられる。
動画ボタン44jは、動画の撮影開始指示、および動画の撮影終了指示に用いられる。
拡大ボタン44kは、画像の拡大表示に用いられる。
背面モニタ43aの右側となるカメラ本体3の背面には、十字ボタン44e、OKボタン44f、AFボタン44g、および情報ボタン44hが配置されている。
十字ボタン44eは、背面モニタ43aに表示されるメニューの項目の選択に用いられる。
OKボタン44fは、背面モニタ43aに表示されているメニューの選択項目の確定に用いられる。
AFボタン44gは、常時AF、シングルAF(S-AF)、コンティニュアスAF(C-AF)、マニュアルフォーカス(MF)、S-AFとMFの併用(S-AF+MF)などのAF方式の選択に用いられる。
情報ボタン44hは、背面モニタ43aおよび/または電子ビューファインダ43bにおける情報表示の有無、および表示する情報の選択などに用いられる。
また、カメラ本体3の背面側右上角部には、深度合成ボタン44iが設けられている。深度合成ボタン44iは、通常撮影モードから深度合成撮影モードへの移行、深度合成撮影モードから通常撮影モードへの移行、深度合成撮影モードにおける深度合成タイプの設定などに用いられる。ここに、深度合成タイプは、例えば、第1オンタイプがライブビュー上で1点指示することにより近点および遠点が自動的に設定されるタイプ、第2オンタイプがライブビュー上で近点および遠点の2点を指示するタイプ、オフタイプが深度合成撮影しないタイプとなっている。
次に、図3は、撮影対象までの距離が変化したときの実効焦点距離の変化の一例を示す線図である。
撮影対象までの距離(撮像素子の撮像面から撮影対象までの光軸に沿った距離)が遠距離側から近距離側に変化すると、一定の距離、図3の例では無限遠から400mm程度の距離までは、撮影レンズ2の実効焦点距離がほぼ一定(図3の例では85mm程度の公称焦点距離f)に維持される。
撮影対象までの距離が400mm程度よりもさらに近距離側に変化すると、撮影レンズ2の実効焦点距離が公称焦点距離fよりも次第に短くなる(短くなった焦点距離をΔfにより示している)。そして、図3の例では、最至近(撮影対象までの距離が300mm程度)において、撮影レンズ2の実効焦点距離が70mm程度にまでなっている。
すなわち、図3の例は、近距離撮影時に、撮影レンズ2の画角が広角側に変化する例となっている。このような実効焦点距離の変化が生じるレンズとしては、インナーフォーカスレンズ(IF(Inner Focus)レンズ)として構成されたマクロレンズが一例として挙げられる。また、実効焦点距離の変化が生じるレンズの他の例としては、リアフォーカスレンズ、前玉繰り出し方式のレンズなどが挙げられる。なお、実効焦点距離の変化が生じないレンズの例としては、全群繰出し方式のレンズが挙げられる。
本実施形態において、深度合成画像の画角範囲を示す表示を行う対象となる撮影レンズ2は、図3に示すように、撮影対象までの距離が変化すると(つまり、フォーカス位置が変化すると)、実効焦点距離が変化するように構成されたレンズとなっている。
また、図4は、撮影対象までの距離が変化したときの像倍率の変化の例を、実効焦点距離が変化するときと変化しないときとで対比して示す線図である。
像倍率Mは、撮影対象までの距離Lと、公称焦点距離fとを用いて、
M=f/(L-f)
により表される。上記式が示すように、像倍率Mは撮影対象までの距離Lの関数であり、Lが短いほど大きく、最短撮影距離の場合において最大となる。
しかし、図3に示したように、近距離撮影時には、撮影レンズ2の焦点距離が広角側にΔfだけ変化して、実効焦点距離は(f-Δf)となる。従って、近距離撮影時の像倍率Mは、
M=(f-Δf)/{L-(f-Δf)}
により表される。
図4のグラフはこのような像倍率Mの変化を表しており、もし実効焦点距離が変化しない場合には、近距離撮影時に点線に示すような仮想の像倍率Mとなる。これに対して、フォーカス位置に応じて実効焦点距離が変化する本実施形態の撮影レンズ2の場合には、実線で示すようになり、つまり近距離側における像倍率Mが、実効焦点距離が変化しない場合の仮想の像倍率Mよりも小さくなっている。ここで注意すべきは、仮想の像倍率は実際には合焦範囲外であるので意味がないということである。実効焦点距離が変化しない場合の合焦可能な最短撮影可能距離は図4に示すB点であり、実効焦点距離の変化を許容した場合の最短撮影可能距離は図4に示すA点となる。すなわち、実効焦点距離が変化するもののA点の像倍率の方がB点の像倍率よりも大きくとれることになり、実用的には、こちらの方が好ましい。しかしながら、深度合成撮影範囲がB点以遠の範囲でない場合には問題が生じる。
図5は、上述したような実効焦点距離の変化を伴う深度合成撮影を行うときの深度合成撮影方向と、そのフォーカス位置に応じた画角の変化の様子を示す図である。図中の斜線部はピントが合っている部分を示している。また、遠点における手ぶれ補正のオン/オフに応じた画角制限の表示例も併せて示している。
図5において、第1の深度合成撮影方向の場合には、フォーカス位置を近点から遠点まで移動しながら、複数枚の画像を取得することになり、遠点側では画角が狭く、近点側では画角が広い。
従って、最初に近点側から深度合成撮影を開始すると、画角が広いライブビュー画像を見ながらレリーズボタン44aを押下することになり、レリーズボタン44a押下時よりも画角が狭い深度合成画像が生成されることになってしまう。
具体的に、近点画像I1においては狙いとする被写体の後方に他の被写体が写っているが、フォーカス位置が遠点方向に移動して得られる画像I2では他の被写体が画像内からより外れた位置となり、さらに遠点方向に移動した画像I3および遠点画像I4では他の被写体が写っていない。そして、深度合成画像は、最も画角が狭い遠点画像I4に画角を合わせて生成されるために、深度合成画像には他の被写体が写っていないことになる。
図5における第2の深度合成撮影方向の場合には、逆に、遠点から深度合成撮影を開始して、近点側へ向けて順次撮影を行うことになり、レリーズボタン44aを押下する時点では画角が最も狭いライブビュー画像を見ていることになる。このため、特にライブビュー上に画角制限表示をしないでも、ユーザは、レリーズボタン44a押下時に狙いとした画角の深度合成画像を得ることができる。
なお、ユーザが手持ち撮影を行っている場合であって、手ぶれ補正機能がオフになっている場合には、図5の下段の画像I4nisに示すように、手ぶれにより複数の画像において共通する画角範囲が狭くなることを示す枠を示すとよい。一方、手ぶれ補正機能がオンになっていて、手ぶれ補正の可動範囲内で手ぶれを有効に補正することができる場合には、画像I4isに示すように、画角範囲が狭くなることを示す枠は表示しなくても構わない。
図6は、撮像装置1におけるメイン処理を示すフローチャートである。
撮像装置1の電源がオンされると、この図6に示す処理が開始される。
電源オンに伴う各種の初期化が行われた後に、レンズ情報取得処理が行われる(ステップS1)。ここでは、レンズ通信部37およびレンズマウントの電気接点を経由して、システム制御部48が、通信制御部29から撮影レンズ2に係る各種の情報を取得する。
そして、システム制御部48が、撮像装置1に設定されている深度合成フラグをチェックする(ステップS2)。この深度合成フラグは、後で図7を参照して説明するように、カメラ本体3に装着されている撮影レンズ2が深度合成可能なレンズ(深度合成対象レンズ)であって、かつ、深度合成撮影モードに設定されている場合は「1」(オン)になる。また、撮影レンズ2が深度合成対象レンズでないか、または深度合成対象レンズであっても深度合成撮影モードに設定されていない場合は「0」(オフ)になる。
なお、深度合成撮影モードの設定は、表示部43に表示されるメニューにより、または深度合成ボタン44iの押下により行われる。
ここで、深度合成フラグが「0」であると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づいて、表示部43が深度合成撮影用以外の撮影用ライブビュー表示を行う(ステップS3)。
また、ステップS2において、深度合成フラグが「1」であると判定された場合には、システム制御部48が深度合成撮影連動設定の処理を行う(ステップS4)。この深度合成撮影連動設定は、図8、図9に示されるように深度合成撮影の設定前の撮影設定に基づいて、深度合成撮影に適した撮影設定に変更する処理である。後述するように、連動設定には、固定的な撮影設定と、ユーザが選択可能な撮影設定と、の2種類がある。
続いて、システム制御部48の制御に基づいて、表示部43が深度合成撮影用ライブビュー表示を行う(ステップS5)。
ステップS3またはステップS5の処理を行ったら、操作部44の操作部材として、レリーズボタン44aが操作されたか否かをシステム制御部48が判定する(ステップS6)。
ここで、レリーズボタン44a以外のその他の操作部材が操作されたと判定された場合には、操作された操作部材からの信号に応じた処理(操作部材処理)をシステム制御部48が行う(ステップS7)。
操作部材処理としては、例えば、レンズ取外ボタンの押下を検出(つまり、撮影レンズ2の交換を検出)したときの新たなレンズ情報の取得および表示更新フラグの設定、ズーム操作を検出したときのレンズ情報の取得および表示更新フラグの設定、深度合成ボタン44iの押下を検出したときの深度合成ボタン押下処理、フォーカス操作を検出したときのフォーカス処理および表示更新フラグの設定、タッチパネル操作を検出したときのタッチ操作処理、ライブビュー表示開始を検出したときの表示更新フラグの設定、撮影距離変更を検出したときのAFおよび表示更新フラグの設定などがある。
ここに、深度合成ボタン押下処理は、上述したように、操作態様に応じた、通常撮影モードと深度合成撮影モードとの移行、深度合成タイプの設定、深度合成撮影時のパラメータの設定などを行う処理である。ここに、深度合成タイプは、ユーザによる撮影開始点、撮影終了点の何れかの1点の指示に基づいて深度合成のピント範囲を設定するタイプ(第1オンタイプ)と、撮影開始点、撮影終了点の2点の指示に基づいて深度合成のピント範囲を設定するタイプ(第2オンタイプ)と、を含む。深度合成撮影時のパラメータとしては、例えば、深度合成撮影を近点から遠点へ向けて行うかまたは遠点から近点へ向けて行うか(ピント移動方向)、深度合成撮影における遠点側の撮影枚数および近点側の撮影枚数、フォーカスステップなどがある。なお、フォーカスステップは、ピント移動量の単位であり、例えば、最小錯乱円の直径δに撮影レンズ2の絞り値Fを乗算した値Fδに対して、1以下の分数を乗算して設定される。従って、フォーカスステップの変更は、Fδに乗算する1以下の分数を変更することにより行われる。
また、タッチ操作処理は、深度合成フラグが「0」であるときには通常のタッチ操作処理が行われ、深度合成フラグが「1」であるときには深度合成のタッチ操作処理が行われる。ここに、深度合成のタッチ操作処理は、深度合成撮影における近点と遠点を確定する処理である。
深度合成タイプが上述した第2オンタイプであるときの近点と遠点の設定は、タッチパネルの2点を同時タッチする、タッチパネルの1点をタッチしてなぞる、タッチパネルを2回タッチするなどにより行われる。そして、第2オンタイプの場合には、近点側でタッチされた点のピント位置から「近点側の撮影枚数」(つまり近点側のマージン枚数)だけ近点側にピント移動した点が本当の近点に設定され、遠点側でタッチされた点のピント位置から「遠点側の撮影枚数」(つまり遠点側のマージン枚数)だけ遠点側にピント移動した点が本当の遠点に設定される。
一方、深度合成タイプが上述した第1オンタイプであるときの近点と遠点の設定は、タッチパネルの1点タッチに基づいてメニュー設定(上述したように、タッチされた1点を基準とした遠点側の撮影枚数および近点側の撮影枚数、フォーカスステップなどの設定)を参照して行われる。すなわち、タッチされた1点のピント位置から「近点側の撮影枚数」だけ近点側にピント移動した点が近点に設定され、タッチされた1点のピント位置から「遠点側の撮影枚数」だけ遠点側にピント移動した点が遠点に設定される。
タッチ操作処理における近点と遠点の確定は、2点間のAFスキャンを行って、AFスキャンが成功したとき、すなわち、上記設定された近点と遠点において合焦したときになされる。また、近点と遠点が確定した後に、撮影枚数が所定値以内であるか否かを判定して、所定値を超える場合にはフォーカスステップを粗くすることで撮影枚数が所定値以内に収まるように修正される。また、AFスキャンが成功しない場合、またはフォーカスステップを粗くしても撮影枚数が所定値以内に収まらない場合には、警告表示を行って、タッチ操作処理で指定された近点および遠点が無効とされる。
上述したステップS6において、レリーズボタン44aが操作されたと判定された場合には、1stレリーズスイッチがオンであるか否かをシステム制御部48が判定する(ステップS8)。
ここで、1stレリーズスイッチがオンであると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づいて、1stオン処理が行われる(ステップS9)。ここに、1stオン処理では、AF・測光処理が行われる。ただし、深度合成撮影においては、1stオン処理でAF処理を行わず、その他の適宜の操作ボタンの操作に応じてシングルAF(S-AF)を行うようにしてもよい。特に、深度合成タイプが第2オンタイプである場合や、第1オンタイプであっても1stオン処理以外の操作で、深度合成の遠点または近点が確定している場合は、1stオン処理でAF処理を行わず、測光処理のみ行うように構成することが望ましい。
続いて、2ndレリーズスイッチがオンであるか否かをシステム制御部48が判定する(ステップS10)。
ここで、2ndレリーズスイッチがオンであると判定された場合には、システム制御部48が、さらに深度合成フラグをチェックする(ステップS11)。
ここで、深度合成フラグが「0」であると判定された場合には、深度合成撮影モード以外の撮影モードに応じた静止画撮影処理が、システム制御部48の制御に基づき行われる(ステップS12)。
また、ステップS11において、深度合成フラグが「1」であると判定された場合には、深度合成撮影用静止画撮影(深度合成撮影の本撮影)の処理が、システム制御部48の制御に基づき行われる(ステップS13)。
そして、取得した複数枚の画像を、システム制御部48の制御に基づき画像処理部34が深度合成処理し(ステップS14)、システム制御部48が外部メモリ42への記録処理を行う(ステップS15)。
ステップS15の記録処理においては、画像記録モードがJPEGのみに設定されている場合にはJPEGファイルを外部メモリ42の現状のフォルダに記録する。また、画像記録モードがRAW+JPEGに設定されている場合には、RAW画像記録モードが、深度合成されたRAW画像のみに設定されているか、または深度合成されたRAW画像に加えてさらに深度合成する前の複数枚のRAW画像を記録する設定がなされているかを判定する。そして、深度合成されたRAW画像のみに設定されている場合には、JPEGファイルと深度合成RAW画像ファイルとを現状のフォルダに記録する。一方、深度合成する前の複数枚のRAW画像をさらに記録する設定がなされている場合には、記録するファイル数が多くなることから、深度合成用の新規フォルダを作成して、作成した新規フォルダに、JPEGファイルと、深度合成RAW画像ファイルと、深度合成前の複数枚のRAW画像ファイルを記録する。
ここで、画像記録モードとしてRAW+JPEGが設定されていて、さらに、深度合成する前の複数枚のRAW画像を記録する設定がなされている場合に、深度合成画像として生成されるJPEG画像および深度合成RAW画像は画角制限枠内の画像となるが、深度合成前の複数枚のRAW画像は表示部43全体に表示される画角の画像となる。従って、このような場合の深度合成撮影用ライブビュー表示(ステップS5)は、JPEG画像(または深度合成RAW画像)の画角範囲と深度合成前RAW画像の画角範囲の両方を確認することができる罫線表示または半透明表示を採用する方が、不透明表示を採用するよりも望ましい。一方、画像記録モードとしてJPEGのみが設定されている場合には、不透明表示を採用しても構わない。従って、画像記録モードの設定に応じて、画角制限枠の表示方法を異ならせてもよい。ちなみに、複数枚のRAW画像には、RAW現像による深度合成処理を行うことを考慮して、撮影時の実効焦点距離情報またはそれに基づく情報をExif情報として記録する。
ステップS15、ステップS12、またはステップS7の処理を行ったら、システム制御部48は、電源オフ操作が行われたか否かを判定する(ステップS16)。
ここで、電源オフ操作が行われていないと判定された場合、ステップS8において1stレリーズスイッチがオフであると判定された場合、またはステップS10において2ndレリーズスイッチがオフであると判定された場合には、ステップS1に戻って上述したような処理を行う。
また、ステップS16において電源オフ操作が行われたと判定された場合には、システム制御部48の制御に基づき、フォーカスレンズおよび手ぶれ補正光学素子23を初期位置に戻して表示部43をオフにする等の電源オフ処理が行われ(ステップS17)、その後にこの処理を終了する。
次に、図7は、図6のステップS1におけるレンズ情報取得処理を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、レンズ通信部37を経由して通信制御部29と通信を行う(ステップS21)。
そして、システム制御部48は、通信制御部29からレンズ基本情報を取得する(ステップS22)。ここで取得するレンズ基本情報は、例えば、レンズID(レンズ種類名、レンズシリアル番号など)、レンズF値(最小値から最大値まで)、最短撮影距離、公称焦点距離、レンズ色温度、無限遠(∞)から最至近までのレンズ繰り出しパルス量、などである。
次に、システム制御部48は、無限遠(∞)の実効焦点距離(特殊なレンズでない限り、公称焦点距離と一致する)を取得し(ステップS23)、最短撮影距離の実効焦点距離を取得し(ステップS24)、現在のフォーカス位置(ピント位置)における実効焦点距離を取得する(ステップS25)。
ただし、ステップS23~S25において取得するのは実効焦点距離に限るものではなく、実効撮影画角を取得してもよいし、実効撮影画角に相当するその他のパラメータを取得しても構わない。そして、ステップS23~S25において取得された情報に基づいて、ライブビューにおける「深度合成画角範囲」の表示が後述するように行われる。
また、実効焦点距離(実効撮影画角に相当するパラメータの1つ)は、撮影レンズ2から取得するに限定されるものではない。例えば、カメラ本体3の不揮発性メモリ41等に、フォーカス位置と実効焦点距離との関係を示すテーブルを、撮影レンズ2の種類毎に予め用意しておき、カメラ本体3に装着されている撮影レンズ2に係るテーブルに基づいて、テーブル参照することにより無限遠(∞)および最至近の実効焦点距離を取得し、さらに、現在のフォーカス位置に近いテーブルデータから現在のフォーカス位置における実効焦点距離を例えば補間演算するようにしても構わない。
続いて、システム制御部48は、深度合成対象レンズ情報を取得する(ステップS26)。この深度合成対象レンズ情報は、撮影レンズ2が深度合成対象レンズであるか否かを示す情報である。
なお、深度合成対象レンズ情報の取得は、撮影レンズ2が備える記憶部に、「深度合成対象レンズ」であることを示すフラグを予め記憶しておき、このフラグを読み出すことにより行ってもよい。
ここに、「深度合成対象レンズ」であることの条件は、カメラ本体3からのフォーカス位置を移動するコマンドを強制的に受け付けて深度合成に必要なフォーカスステップでピント移動可能なことである。すなわち、自動深度合成撮影においては、フォーカス位置を自動的に変更する必要がある。このために、フォーカス位置を手動のみで変更するマニュアルフォーカス専用のレンズは、深度合成対象レンズから除外される。また、MF/AFに設定可能なレンズで、MF設定状態は深度合成対象レンズではなく、AF設定状態では深度合成対象レンズというレンズもある。MF/AFに設定可能なレンズであっても、その設定に関わらず上記コマンドを受け付け可能なものもある。
また、深度合成対象レンズ情報は、撮影レンズ2から取得するに限定されるものではなく、カメラ本体3の不揮発性メモリ41に「レンズ種類名」と「深度合成対象レンズ」との対応を示すテーブルを予め用意しておき、撮影レンズ2から取得した「レンズ種類名」に基づいてテーブル参照することにより、深度合成対象レンズであるか否か判断するように構成してもよい。
そして、ステップS26において取得した深度合成対象レンズ情報に基づいて、システム制御部48は、カメラ本体3に装着されている撮影レンズ2が、深度合成対象レンズであるか否かを判定する(ステップS27)。
ここでシステム制御部48は、深度合成対象レンズであると判定された場合には深度合成レンズ装着フラグを1に設定し(ステップS28)、深度合成対象レンズでないと判定された場合には深度合成レンズ装着フラグを0に設定する(ステップS29)。
ステップS28を行った場合には、さらにシステム制御部48が、深度合成有効フラグをチェックする(ステップS30)。ここに、深度合成有効フラグは、深度合成撮影モードに設定されているか否かを示すフラグである。この深度合成有効フラグは、深度合成対象レンズが装着されている場合にのみ「1」(オン)に設定することが可能となっており、深度合成有効フラグが「0」(オフ)である場合には深度合成撮影を行うことができない。
ステップS30において深度合成有効フラグが「1」であると判定された場合には、システム制御部48が深度合成フラグを「1」に設定する(ステップS31)。
また、ステップS30において深度合成有効フラグが「0」であると判定された場合、またはステップS29の処理を行った場合には、システム制御部48が深度合成フラグを「0」に設定する(ステップS32)。
このように、システム制御部48は、撮影レンズ2の情報から、深度合成撮影が可能であるか否かを判断する深度合成可否判断部(深度合成可否判断回路)として機能するようになっている。
こうして、ステップS31またはステップS32の処理を行ったら、この処理からリターンする。
図8は、図6のステップS4における深度合成撮影連動設定の処理を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、手ぶれ補正連動メニューをチェックする(ステップS41)。手ぶれ補正は、手持ち撮影であるときに自動設定されるのが合理的であるが、手ぶれ補正機能が動作するのをユーザが好まない場合もある。例えば、L-ISの機能を備える撮影レンズにおいて、L-ISの機能をオフに設定しているにも関わらず深度合成撮影時に自動的にL-ISの機能がオンになる(または逆に、L-ISの機能をオンに設定しているにも関わらずL-ISの機能が自動的にオフになる)と、ユーザが違和感を覚えることがある。このために、本実施形態では、メニュー内に、深度合成撮影に手ぶれ補正を連動するか否かを選択するための項目を明示的に設けている。
ここで手ぶれ補正連動を行うと判定された場合には、システム制御部48が、手ぶれ補正連動処理を行う(ステップS42)。
ステップS42の処理を行うか、またはステップS41において連動しないと判定された場合には、システム制御部48がシャッタモード連動メニューをチェックする(ステップS43)。
ここでシャッタモード連動を行うと判定された場合には、現在のシャッタモードをシステム制御部48がチェックする(ステップS44)。
そして、現在、メカニカルシャッタが設定されていると判定された場合には、システム制御部48が、シャッタモードを電子シャッタに変更する(ステップS45)。
ここに、シャッタモードには、電子シャッタモードとメカニカルシャッタモードとの2種類があるが、メカニカルシャッタはシャッタチャージに時間を要することから連写速度が電子シャッタよりも遅い。これは、総撮影時間が長くなることを意味し、光学的な手ぶれ補正を行わないで、手持ち撮影を行う場合には、深度合成の撮影画角が不必要に狭まることを意味する。さらに、メカニカルシャッタはシャッタ幕を走行させる構成であるために、シャッタショックが発生し、連写速度が速くなるほどシャッタショックが大きくなり、それにより、1/100~1/250(秒)などの特定のシャッタ速度の撮影で解像力の低下を招くおそれがある。このために、シャッタモード連動を行う場合には、自動的に電子シャッタに設定するようにしている。ここに、電子シャッタは、電子ローリングシャッタと電子グローバルシャッタとの何れでも構わない。
ただし、フラッシュ部47により照明光を発光する場合には、現時点での同調速度は電子シャッタの1/60~1/100(秒)に対しメカニカルシャッタの方が、1/250~1/500(秒)と速いために、メニューでメカニカルシャッタを選択することができるようにしている。なお、メカニカルシャッタは、先幕および後幕の両方で物理的なシャッタ幕を走行させるタイプと、先幕を電子シャッタにより行い、後幕を物理的なシャッタ幕を走行させるハイブリットタイプ(先幕電子シャッタ)とがある。
このステップS45の処理を行うか、ステップS43においてシャッタモード連動を行わないと判定された場合、またはステップS44において電子シャッタが設定されていると判定された場合には、システム制御部48がシャッタスピード制限連動メニューをチェックする(ステップS46)。
ここで、シャッタスピード制限連動を行うと判定された場合には、撮像装置1が手持ち撮影の状態であるか否かを、手ぶれ検出部38が備える角速度センサや加速度センサなどの出力に基づきシステム制御部48が判定する(ステップS47)。
手持ち撮影の状態であると判定された場合には、シャッタスピードが所定のシャッタスピード以上となるように、低速側のシャッタスピードをシステム制御部48が制限する(ステップS48)。
深度合成撮影の連写スピードが高速になるほど、手ぶれによる画角制限を低減することができる。特に手持ち状態のブレの影響を低減するために、複数枚の連写によるトータルの撮影時間を短縮することが重要である。連写スピードの上限は、シャッタの幕速に依存するために、メカニカルシャッタと電子ローリングシャッタとでは異なる。シャッタの幕速は、メカニカルシャッタでは1/180~1/500(秒)が、電子ローリングシャッタでは1/30~1/120(秒)が、それぞれ目安となり、一般にシャッタの同調速度とも言われる。シャッタ速度が同調速度以下になると、連写スピードが低下しトータルの撮影時間が長くなるので、連写時のシャッタ速度は同調速度を下限に設定する。
ステップS46においてシャッタスピード制限連動を行わないと判定された場合、ステップS47において手持ち状態でなく三脚等に固定されていると判定された場合、またはステップS48の処理を行った場合には、次に、システム制御部48がフォーカスモードをチェックする(ステップS49)。
ここで、フォーカスモードが常時AFまたはコンティニュアスAF(C-AF)であると判定された場合には、システム制御部48が、常時AFを禁止し(ステップS50)、コンティニュアスAF(C-AF)を禁止して(ステップS51)、フォーカスモードをシングルAF(S-AF)、またはS-AFとMFの併用(S-AF+MF)に設定する(ステップS52)。
自動深度合成撮影の最終的な画角は、近点と遠点の実効焦点距離の差に依存する。このために、近点もしくは遠点のAF位置が常に変動していると、ライブビューに表示される最終画角範囲が細かく変動して、安定したフレーミングを行うことができない。このような理由から、常時AFやC-AFなどの、所定時間間隔でAFを更新する可能性のあるフォーカスモードは、自動深度合成撮影の設定に連動して禁止することが好ましい。そこでここではフォーカスモードを、S-AF、またはS-AF+MFに制限している。
なお、安定したフレーミングを行うことができるようにする方法は、フォーカスモードを制限する方法に限ったものではない。例えば、AFスタートボタンを有するレンズ種類では、フォーカスモードを制限しないで、レリーズボタン44aの半押し(1stレリーズスイッチのオフからオンへの変化:1stレリーズオン)によるAFを禁止し、AFスタートボタンを押下したしたときだけAF動作するように構成してもよい。この場合には、AFスタートボタンを離した時点でフォーカス位置がロックされるので、C-AFモードであっても画角確認時に画角が細かく変動することはない。
ステップS52の処理を行うか、またはステップS49において、フォーカスモードがシングルAF(S-AF)、マニュアルフォーカス(MF)、またはS-AFとMFの併用(S-AF+MF)であると判定された場合には、システム制御部48が連写モードをチェックする(ステップS53)。
ここで連写モードには、連写の1コマ目のAEを継続するAEロック連写と、連写コマ毎にAEを行うAE追従連写と、の2種類があるが、AE追従連写はAEロック連写に比べて連写スピードが低下する。また、AE追従連写を行うと、画角変動に影響されて各コマの明るさが一定に揃わないために、後段の合成処理において明るさを揃える処理を行う必要があり、より多くの処理時間を要する。このために、撮影時間の短縮、および撮影後の処理時間の短縮を図る観点から、AEロック連写の方が自動深度合成撮影の連写モードとして望ましい。
そこで、ステップS53においてAE追従連写であると判定された場合には、システム制御部48が連写モードをAEロック連写に変更する(ステップS54)。
ステップS54の処理を行うか、またはステップS53においてAEロック連写であると判定された場合には、システム制御部48が、ハイレゾショットがオンであるか否かを判定する(ステップS55)。
ハイレゾショット(ハイレゾリューション撮影)モードは、画素ずらしして撮影を行うことを複数回繰り返し、複数枚の画素ずらし画像から1枚の高精細画像を生成する撮影モードである。深度合成撮影モードは、ピントをずらす毎に撮影を行うことを複数回繰り返す撮影モードであるために、ハイレゾショットモードと深度合成撮影モードとが同時に設定されてしまうと、撮影回数が掛け算で増加してトータル撮影時間が飛躍的に増大し、手持ち撮影において大きな手ぶれを招いてしまう。また、撮影枚数が多いために、撮影後の合成処理に要する時間も長くなり、ユーザの使い勝手が低下するだけでなく、バッファ容量の不足も招いてしまう(もしくは、バッファ容量が不足しないようにするためには、極めて大容量のバッファが必要になり、コスト増を招いてしまう)。
そこで、ステップS55において、ハイレゾショットがオンであると判定された場合には、システム制御部48が、深度合成に最適なハイレゾショット連動処理を行う(ステップS56)。
ハイレゾショット連動処理の第1の例は、ハイレゾショットモードが、三脚ハイレゾショットであるか、手持ちハイレゾショットまたは自動切り替えであるかを判定して、手持ちハイレゾショットまたは自動切り替えである場合にはトータル撮影時間が長くなるのを抑制するために、画素ずらし回数を通常よりも少なくするものである。具体的には、画素ずらし回数を4回以下、例えば4回または2回となるように自動的に設定する。
ハイレゾショット連動処理の第2の例は、第1の例と同様の判定を行い、ハイレゾショットモードが手持ちハイレゾショットまたは自動切り替えである場合には、ハイレゾショットモードを自動的に三脚ハイレゾショットに切り替えるものである。これにより、深度合成撮影がオンになっているときのハイレゾショットが、三脚ハイレゾショットに限定される。
ハイレゾショット連動処理の第3の例は、深度合成撮影がオンになっているときには、ハイレゾショットを禁止するものである。
ハイレゾショット連動処理の第4の例は、深度合成撮影がオンになっているときにハイレゾショットをオンにすると、深度合成撮影を禁止するものである。
ステップS56の処理を行うか、またはステップS55においてハイレゾショットがオフであると判定された場合には、システム制御部48が、デジタルテレコン(デジタルテレコンバータ)連動メニューをチェックする(ステップS57)。
ここで連動すると判定された場合には、システム制御部48が、デジタルテレコンをオンに変更する(ステップS58)。
デジタルテレコンは、像倍率を大きくとることができ、さらにワーキングディスタンスも十分に取ることができるため、マクロ撮影に適しているので、マクロ撮影を行うユーザが好んで使用している。このため、マクロ撮影が主たる深度合成撮影においてもデジタルテレコンを連動させることが望ましい。
続いて、システム制御部48が、デジタルテレコン倍率(デジタルテレコンバータ倍率)を設定する(ステップS59)。
デジタルテレコン倍率は、適切な倍率に設定すると深度合成の画角制限枠を表示させる必要がなくなる。ただし、画質の顕著な劣化を防ぐためには、デジタルテレコン倍率はできるだけ小さい方が望ましく、例えば2.0倍以下に抑制するとよい。
具体的には、デジタルテレコンの表示領域が、深度合成画角制限枠の内側になるようなデジタルテレコン倍率の内の、最も小さな倍率を選ぶとよく、具体的な数値例は1.1倍~1.4倍程度である。
こうした適切な倍率が、デジタルテレコン倍率の系列値として予め定められている倍率(具体例を挙げれば、1.4倍、1.7倍、2.0倍、2.8倍などの系列値)の中にない場合には、系列値外の値を別途に採用するように構成してもよい。
ステップS59の処理を行うか、ステップS57において連動しないと判定された場合には、システム制御部48が、AF操作部材連動メニューをチェックする(ステップS60)。
ここで連動すると判定された場合には、システム制御部48が、1stレリーズオンによるAFを禁止して(ステップS61)、AFボタンをシングルAF(S-AF)に設定する(ステップS62)。
ステップS62の処理を行うか、またはステップS60において連動しないと判定された場合には、この処理からリターンする。
図9は、図8のステップS42における手ぶれ補正連動処理を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、手持ち撮影であるか否かをチェックする(ステップS71)。なお、三脚状態などの非手持ち状態でも、過補正になることがない手ぶれ補正機構の場合には、ステップS71の判定を省略しても構わない。
ここで、手持ち撮影であると判定された場合には、システム制御部48が、さらにカメラ本体3に装着されている撮影レンズ2が、IS(Image Stabilization)スイッチ付きの手ぶれ補正レンズであるか、それ以外(非手ぶれ補正レンズ、またはISスイッチなしの手ぶれ補正レンズ)であるかをチェックする(ステップS72)。
なお、ISスイッチ付きの手ぶれ補正レンズでは、レンズIS優先となる。また、ISスイッチなしの手ぶれ補正レンズの場合には、メニューにより、レンズIS優先とするか、またはボディIS優先とするかが設定される。さらに、非手ぶれ補正レンズでは、ボディIS優先が自動的に設定される。
ここでISスイッチ付きの手ぶれ補正レンズであると判定された場合には、システム制御部48が制御して、ボディISの回転手ぶれ補正およびシフトぶれ補正をオンする(ステップS73)。
上述したように、手ぶれとしては、撮像装置1がヨー(Yaw)方向とピッチ(Pitch)方向とに傾くことによる2種類の角度ぶれと、撮像装置1が撮像部31の撮像面の2軸(x軸およびy軸)方向に平行シフトすることによる2種類のシフトぶれと、撮像装置1がロール(Roll)方向(撮影レンズ2の光軸周りの方向)に回転することによる回転ぶれと、の5種類がある。そして、ボディISは、これらの5種類の手ぶれを何れも補正することができる。
これに対して、レンズISは、2種類の角度ぶれを補正することができるが、回転ぶれを補正することはできず、2種類のシフトぶれは補正することができる場合とできない場合があるが一般的には補正できない場合が多い。そこで、ステップS73においては、回転手ぶれ補正およびシフトぶれ補正をボディIS側で補完して行うように設定している。
また、ステップS72において、それ以外であると判定された場合には、システム制御部48が、レンズ手ぶれ補正優先をオフに設定する(ステップS74)。これにより、ボディIS優先となる。ここで、深度合成撮影時のボディISでは必ず回転手ぶれ補正およびシフトぶれ補正が行われる。
さらに、ステップS71において、手持ち撮影でないと判定された場合には、システム制御部48が、手ぶれ補正モードをオフに設定する(ステップS75)。ここでは手ぶれを原因とする画角制限は発生しない。
ステップS73またはステップS74の処理を行ったら、システム制御部48が、手ぶれ補正モードを全ての方向の手ぶれ補正を行うS-IS1またはS-IS_AUTOに設定する(ステップS76)。
ここに、手ぶれ補正モードには、撮像装置1の動きと手ぶれを検出して自動で最適な方向の手ぶれ補正を行うS-IS_AUTOと、全ての方向の手ぶれ補正を行うS-IS1と、撮像装置1の上下方向の手ぶれ補正のみを行うS-IS2と、撮像装置1の左右方向の手ぶれ補正のみを行うS-IS3と、手ぶれ補正を行わないS-ISOFFと、がある。なお、S-ISは静止画手ぶれ補正(Still-Image Stabilizer)を意味し、動画手ぶれ補正はM-IS(Moving-Image Stabilizer)となる。
続いて、システム制御部48が、連写中手ぶれ補正モードを連写速度優先に設定する(ステップS77)。
ここに、連写中手ぶれ補正モードとしては、連写速度優先と手ぶれ補正優先の2つのモードを選択することができるようになっている。
図10は連写速度優先の手ぶれ補正の動作例と撮像画像の例を示すタイミングチャート、図11は手ぶれ補正優先の手ぶれ補正の動作例と撮像画像の例を示すタイミングチャートである。
なお、図10および図11は、深度合成撮影における連写中の撮像装置1のぶれを時間tに沿って模式的に表している。すなわち、実際には撮像装置1がぶれているのであるが、表現するのが困難なために、被写体が上下に変動しているものとしてそれを撮像素子が追いかけている様子を示している。
図10に示す連写速度優先の手ぶれ補正は、連写中の手ぶれ補正を連続的に行うことで、コマ間の画角変動を最小限に抑えるモードである。つまり、連写コマ毎に撮像素子の基準位置へのリセットを行わないために、何れかのコマを露光中にぶれ補正の可動範囲SR端に突き当たる可能性が手ぶれ補正優先よりも大きいが、ぶれ補正の可動範囲SRを超える手ぶれが発生しない限り、連写コマ間の画角変動はない。こうして連写速度優先では、動体撮影で重要になる連写速度と被写体の捕らえ易さを両立している。
一方、図11に示す手ぶれ補正優先の手ぶれ補正は、1コマを撮影する毎に撮像素子を基準位置へリセットするモードである。従って、ぶれ補正の可動範囲SR端に突き当たる可能性は連写速度優先よりも低く、高い手ぶれ補正の性能を保証することができる。しかし、図11の撮像画像で示されるように連写コマ間に画角変動が発生する。またさらに基準位置へリセットするのに時間を要するために、連写速度が連写速度優先の場合よりも遅くなり、その分トータルの撮影時間が伸びてしまう。
通常、図10および図11に示すように、連写中の手ぶれは低周波振動であるので、変動量が小さい期間に連写が全て終了するように、できるだけ高速に連写が行われることが望ましい。このために、連写コマを合成することが前提となる深度合成撮影においては、ステップS77において強制的に連写速度優先を設定している。
ステップS75またはステップS77の処理を行ったら、この処理からリターンする。
図12は、図6のステップS5における深度合成撮影用ライブビュー表示処理の第1の例を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、表示更新フラグをチェックする(ステップS81)。
ここで、表示更新フラグが「1」(オン)であると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づいて、深度合成画角範囲の特定処理が行われる(ステップS82)。
次に、システム制御部48の制御に基づいて、深度合成画角範囲の表示更新処理が行われる(ステップS83)。
その後、システム制御部48が、表示更新フラグを「0」(オフ)にリセットする(ステップS84)。
ステップS84の処理を行うか、またはステップS81において表示更新フラグが「0」であると判定された場合には、この処理からリターンする。
図13は、図6のステップS5における深度合成撮影用ライブビュー表示処理の第2の例を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、深度合成撮影における遠点が確定しているか否かを判定する(ステップS91)。
ここで遠点が確定していると判定された場合には、システム制御部48が、現在のピント位置(フォーカス位置)が遠点の近傍であるか否かを判定する(ステップS92)。
なお、遠点近傍とは、遠点を含み、実効焦点距離が遠点とほぼ同等のフォーカス位置のことを指す。撮影待機時のライブビューのフォーカス位置が遠点近傍であれば、ライブビューが深度合成撮影における最も狭い画角で行われていることになるために、実効焦点距離による画角制限範囲をライブビューに表示する必要がなくなる。
ステップS92において、遠点の近傍でないと判定された場合には、システム制御部48の制御に基づいて、レンズ制御部26がフォーカス位置を遠点または遠点の近傍に移動する(ステップS93)。
すなわち、レンズ制御部26は、フォーカス位置設定部(フォーカス位置設定回路)として機能して、深度合成撮影の本撮影を待機する状態において、深度合成用フォーカス位置決定部(深度合成用フォーカス位置決定回路)として機能するシステム制御部48により決定された遠点のフォーカス位置付近にライブビューのフォーカス位置を設定する。
これにより上述したように、実効焦点距離による画角制限範囲をライブビューに表示する必要がなくなる。
そして、システム制御部48の制御に基づいて、深度合成画角範囲の特定処理が行われ(ステップS94)、深度合成画角範囲の表示更新処理が行われる(ステップS95)。
ステップS95の処理を行うか、ステップS91において遠点が確定していないと判定された場合、またはステップS92において現在のフォーカス位置が遠点の近傍であると判定された場合には、この処理からリターンする。
なお、上述した図12の処理と図13の処理における動作は、メニュー設定により選択することができるようになっている。
図14は、図12のステップS82および図13のステップS94における深度合成画角範囲の特定処理の第1の例を示すフローチャートである。
この第1の例は、現時点のフォーカス位置(基準点)のライブビューの実効焦点距離と、深度合成撮影における遠点の実効焦点距離とが確定したときに、深度合成画角範囲を計算する例となっている。ここに、深度合成画角範囲は、撮影レンズ2の種類、現時点のフォーカス位置における実効焦点距離、ピント移動方向、ユーザが設定する深度合成撮影の近点から遠点の範囲条件に応じて変化する。
この処理に入るとシステム制御部48は、深度合成撮影における遠点のピント位置(フォーカス位置)を取得し(ステップS101)、遠点のフォーカス位置の実効焦点距離ffarを取得する(ステップS102)。
さらにシステム制御部48は、現時点のフォーカス位置の実効焦点距離fbaseを取得する(ステップS103)。
そしてシステム制御部48は、遠点のフォーカス位置の実効焦点距離ffarと、現時点のフォーカス位置の実効焦点距離fbaseとの実効焦点距離比率Rを、
R=(fbase/ffar)×100
により演算する(ステップS104)。
続いてシステム制御部48は、手ぶれ補正が有効であるか否かを判定する(ステップS105)。
ここで、ユーザにより深度合成撮影に手ぶれ補正が連動しないように設定され、さらに手持ち撮影であるにも関わらず手ぶれ補正がオフに設定されているような場合には、手ぶれ補正が有効でないと判定され、システム制御部48が、実効焦点距離比率Rに、手ぶれ補正分に相当する比率ΔRを考慮した補正を行い、R-ΔRを補正後の実効焦点距離比率Rとする(ステップS106)。
具体的には、無限遠点での画像に対して、画像の縦方向および横方向共に、経験値として14%~20%程度の値となるようにΔRを設定するとよい。
ステップS106の処理を行うか、またはステップS105において手ぶれ補正が有効であると判定された場合には、この処理からリターンする。
なお、ここでは手ぶれ補正がオン(有効)になっている場合にΔRによる補正を行わなかったが、手ぶれ補正の補正性能を勘案し、必要に応じてΔRを数%(例えば2~3%)程度に設定し補正を行うようにしてもよい。
こうして、図14の処理を行った場合には、図12のステップS83または図13のステップS95の処理において、深度合成画角範囲表示部(深度合成画角範囲ディスプレイ)である表示部43が、撮影レンズ2の情報と、深度合成用フォーカス位置決定部(深度合成用フォーカス位置決定回路)として機能するシステム制御部48の出力内容と、撮影距離との内の少なくとも1つの変更に応じて、ライブビューを表示するときの実効焦点距離と、遠点のフォーカス位置にしたときの実効焦点距離とに基づき深度合成画像の画角範囲の表示を更新する。
図15は、図12のステップS82および図13のステップS94における深度合成画角範囲の特定処理の第2の例を示すフローチャートである。
この第2の例は、カメラ本体3に装着された撮影レンズ2における、ライブビュー画像と深度合成画像との画角が最も大きく異なる場合の深度合成画角範囲を計算して、計算した深度合成画角範囲を固定的に表示する例となっている。この処理を行うと、表示される深度合成画角範囲が必要以上に狭くなる場合があるが、表示範囲は撮影レンズ2の種類にのみ依存して変化し、ユーザによる設定条件(現時点のフォーカス位置、ピント移動方向、近点および遠点の位置など)に依存してめまぐるしく変化することがないために、理解し易く使い易い利便性をユーザに与えることができる例である。
この処理に入るとシステム制御部48は、無限遠(∞)点のピント位置(フォーカス位置)の実効焦点距離f∞を取得する(ステップS111)。
さらにシステム制御部48は、最至近点のフォーカス位置の実効焦点距離fnearestを取得する(ステップS112)。
そしてシステム制御部48は、無限遠点のフォーカス位置の実効焦点距離f∞と、最至近点のフォーカス位置の実効焦点距離fnearestとの実効焦点距離比率Rを、
R=(fnearest/f∞)×100
により演算する(ステップS113)。
従って、システム制御部48は、最大画角変動量決定部(最大画角変動量決定回路)として機能して、撮影レンズ2の情報に基づき、撮影レンズ2のフォーカス位置の移動可能範囲内における最大画角変動量(実効焦点距離の最大値および最小値から求められる最大画角変動量)を決定する。
続いてシステム制御部48は、現時点のフォーカス位置の実効焦点距離fbaseを取得する(ステップS114)。なお、ここで実効焦点距離fbaseを取得したのは、深度合成画像の最終画角を後段で決定する際に使用するからである。ここに、この図15の処理において最終的に決定される実効焦点距離比率Rに実効焦点距離fbaseを乗算した値(fbase×R)に対応する画角が、ライブビューに表示される画角制限枠の画角となる。従って、現時点のフォーカス位置が最至近~無限遠(∞)のどの位置にあっても、ライブビューに表示される画角制限枠は一定の実効焦点距離比率Rの枠表示となる。
その後にシステム制御部48は、手ぶれ補正が有効であるか否かを判定する(ステップS115)。
ここで、手ぶれ補正が無効であると判定された場合には、システム制御部48が、実効焦点距離比率Rに、手ぶれ補正分に相当する比率ΔRを考慮した補正を行い、R-ΔRを補正後の実効焦点距離比率Rとする(ステップS116)。
ステップS116の処理を行うか、またはステップS115において手ぶれ補正が有効であると判定された場合には、この処理からリターンする。
なお、比率ΔRの経験値や手ぶれ補正がオン(有効)になっている場合にΔRによる補正を行ってもよいことは、上述と同様である。
こうして、図15の処理を行った場合には、図12のステップS83または図13のステップS95の処理において、深度合成画角範囲表示部(深度合成画角範囲ディスプレイ)である表示部43が、最大画角変動量に基づいた深度合成画像の画角範囲をライブビュー上に表示することになる。
図16は、図12のステップS82および図13のステップS94における深度合成画角範囲の特定処理の第3の例を示すフローチャートである。
この第3の例は、カメラ本体3に装着可能な、深度合成対象となる複数の撮影レンズ2(深度合成対象レンズ群)における、ライブビュー画像と深度合成画像との画角が最も大きく異なる場合の深度合成画角範囲を固定的に表示する例となっている。この処理を行うと、表示される深度合成画角範囲が図15の例よりもさらに狭くなる場合があるが、表示範囲は撮影レンズ2の種類に依存して変化することがなく、ユーザによる設定条件(現時点のフォーカス位置、ピント移動方向、近点および遠点の位置など)に依存して変化することもないために、さらに理解し易く使い易い利便性をユーザに与えることができる例である。
この処理に入るとシステム制御部48は、深度合成対象レンズ群に含まれる各撮影レンズ2に対する実効焦点距離比率R(この実効焦点距離比率Rは、図15の処理で算出される値である)の中の、最小値をRに決定する(ステップS121)。
こうして、最大画角変動量決定部(最大画角変動量決定回路)として機能するシステム制御部48は、深度合成撮影が可能であると判断される複数の撮影レンズ2でなるレンズ群に対して、レンズ群に含まれる撮影レンズ2の最大画角変動量の内の、最も変動量が大きいレンズ群最大画角変動量(ステップS121で決定した実効焦点距離比率Rの最小値に対応する)を決定する。
次にシステム制御部48は、手ぶれ補正が有効であるか否かを判定する(ステップS122)。
ここで、手ぶれ補正が無効であると判定された場合には、システム制御部48が、実効焦点距離比率Rに、手ぶれ補正分に相当する比率ΔRを考慮した補正を行い、R-ΔRを補正後の実効焦点距離比率Rとする(ステップS123)。
ステップS123の処理を行うか、またはステップS122において手ぶれ補正が有効であると判定された場合には、この処理からリターンする。
なお、比率ΔRの経験値や手ぶれ補正がオン(有効)になっている場合にΔRによる補正を行ってもよいことは、上述と同様である。
こうして、図16の処理を行った場合には、図12のステップS83または図13のステップS95の処理において、深度合成画角範囲表示部(深度合成画角範囲ディスプレイ)である表示部43が、レンズ群に含まれる何れの撮影レンズ2に対しても、レンズ群最大画角変動量に基づいた深度合成画像の画角範囲をライブビュー上に表示することになる。
なお、上述した図14~図16の処理は、例えばメニュー設定により選択することができるようになっている。
図17は、図12のステップS83および図13のステップS95における深度合成画角範囲の表示更新処理を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、デジタルテレコン(デジタルテレコンバータ)がオンに設定されているか否かを判定する(ステップS131)。
ここで、デジタルテレコンが設定されていないと判定された場合には、システム制御部48が、実効焦点距離比率Rが98%未満であるか否かを判定する(ステップS132)。
そして、98%未満であると判定された場合には、システム制御部48が制御して、実効焦点距離比率Rに基づきライブビュー画像に画角制限枠を表示する(ステップS133)。
一方、ステップS132において、実効焦点距離比率Rが98%以上であると判定された場合には、画角制限枠の表示を行わない。
ここでは、100%との誤差程度であるとみなせるから、あえて画角制限枠表示を行う必要がないと判定する基準として98%を例に挙げたが、これに限るものではなく、実用上は97~100%の範囲内を目安とすればよい。
なお、98%以上であると判定される場合の例としては、撮影レンズ2が全群繰出し方式のレンズであり実効焦点距離に変化がない場合、被写体と撮像装置1とのワーキングディスタンスが十分であり公称焦点距離からの実効焦点距離の変化が近点において微小である場合、自動深度合成撮影を待機するライブビューが撮影前から連写撮影中を通して常に遠点である場合、などが挙げられる。
また、画角制限枠の表示例としては、画角制限枠を示す四角の罫線(罫線の色は、黒、赤、緑等の適宜の色を用いて構わない)を描画する罫線表示、画角制限枠の外側の画像を半透明とする半透明表示、画角制限枠の外側の画像を不透明とする不透明表示、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、記録画像が画角制限枠内の画像のみである場合には罫線表示、半透明表示、不透明表示の何れを採用してもよいが、記録画像として表示部43全体に表示される画角の画像が含まれる場合には罫線表示または半透明表示を採用する方が望ましいことは上述した通りである。
一方、ステップS131において、デジタルテレコンが設定されていると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づき、テジタルテレコン表示処理が行われる(ステップS134)。ここに、テジタルテレコン表示には、テジタルテレコン倍率に応じた画像部分を拡大して表示する拡大ライブビュー表示と、拡大することなくライブビュー上にテジタルテレコン倍率に応じた画像範囲を示す制限枠を表示する制限枠表示とがあり、メニーにより何れの表示を行うかを選択することができるようになっている。
ステップS133またはステップS134の処理を行った場合、もしくはステップS132において実効焦点距離比率Rが98%以上であると判定された場合には、この処理からリターンする。
なお、上述では深度合成画像の画角範囲の表示として画角制限枠を挙げたが、これに限らず、画角制限枠内の画像を拡大して表示部43に表示することで、深度合成画像の画角範囲の表示を行うようにしても構わない。画像記録モードとして、JPEGが設定されている場合にこの拡大表示は好ましいが、RAW+JPEGが設定されている場合には上述したように、罫線表示または半透明表示を用いるほうが好ましい。
また、撮像装置1において、画像の横方向と縦方向との比を示すアスペクト比(および、アスペクト比毎の画素数など)をメニュー等のアスペクト比設定部により設定することも可能である。ここに、設定可能なアスペクト比の例としては、4:3、3:2、16:9、1:1、3:4などが挙げられる。また、撮像部31の撮像素子のアスペクト比が例えば4:3であるものとする。このときには、4:3以外のアスペクト比が設定された場合には、深度合成の画角制限範囲内において、設定されたアスペクト比に応じた画角制限枠を表示することになる。
図18は、図17のステップS134におけるデジタルテレコン表示処理を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、設定されているデジタルテレコン倍率DTMに基づいて、テレコン比率(テレコンバータ比率)TRを、
TR=100/DTM
により算出する(ステップS141)。
次に、システム制御部48は、デジタルテレコン表示モードが、拡大ライブビュー表示モードに設定されているか、または制限枠表示モードに設定されているかを判定する(ステップS142)。
ここで、拡大ライブビュー表示モードに設定されていると判定された場合に、システム制御部48は、テレコン比率TRが実効焦点距離比率R以下であるか否かを判定する(ステップS143)。
そして、テレコン比率TRが実効焦点距離比率Rよりも大きいと判定した場合には、システム制御部48が、R/TRを新たな実効焦点距離比率Rとして設定する(ステップS144)。
一方、ステップS142において、制限枠表示モードに設定されていると判定された場合に、システム制御部48は、テレコン比率TRが実効焦点距離比率R以下であるか否かを判定する(ステップS145)。
そして、テレコン比率TRが実効焦点距離比率R以下であると判定した場合には、システム制御部48が、TRを新たな実効焦点距離比率Rとして設定する(ステップS146)。
ステップS144またはステップS146の処理を行うか、ステップS143においてテレコン比率TRが実効焦点距離比率R以下であると判定された場合、もしくはステップS145においてテレコン比率TRが実効焦点距離比率Rよりも大きいと判定された場合には、システム制御部48の制御に基づいて、表示部43が、実効焦点距離比率Rに基づきライブビューの画角制限枠を表示する(ステップS147)。
ただし、実効焦点距離の変化に起因する画角制限枠が実質的に表示されるのは、ステップS143またはステップS145においてテレコン比率TRが実効焦点距離比率Rよりも大きいと判定された場合である。そして、ステップS146を実行した場合に表示されるのは、テジタルテレコン倍率に応じた画像範囲を示す制限枠となる。一方、ステップS143においてテレコン比率TRが実効焦点距離比率R以下であると判定された場合には、拡大ライブビュー表示が行われるために、画角制限枠は表示されない。
このように深度合成画角範囲表示部(深度合成画角範囲ディスプレイ)である表示部43は、深度合成画像の画角範囲と、デジタルテレコンバータ倍率による画角範囲との内の、小さい方の画角範囲をライブビュー上に表示する。
ステップS147の処理を行ったら、この処理からリターンする。
図19は、図6のステップS13における深度合成撮影用静止画撮影の処理を示すフローチャートである。
この処理に入ると、システム制御部48の制御に基づいて連写中手ぶれ補正処理が行われる(ステップS151)。
そしてシステム制御部48が、深度合成撮影における近点および遠点が確定しているか否かを判定する(ステップS152)。
ここで近点と遠点との少なくとも一方が確定していないと判定された場合には、システム制御部48の制御に基づいて警告表示が行われる(ステップS153)。
一方、ステップS152において近点および遠点が確定していると判定された場合には、システム制御部48が、露出ディレー時間をセットする(ステップS154)。ここに、露出ディレー時間は、レリーズボタン44aを押下したときに撮像装置1のぶれが収まるのを待つ時間である。
そしてシステム制御部48は、露出ディレー時間が経過するのを待機する(ステップS155)。
露出ディレー時間が経過したら、システム制御部48の制御に基づいて、1コマ撮影処理が行われる(ステップS156)。
この1コマ撮影処理においては、フラッシュ発光の必要性の有無に応じてフラッシュ撮影または非フラッシュ撮影を行い、撮影により得られた画像データおよび画角制限範囲情報をメモリ33内のバッファ領域に格納する。なお、フラッシュの充電に必要なチャージ待ち時間は、自動深度合成撮影に係るメニュー設定で指定することができるようになっている。
ここで、もしハイレゾショットがオンに設定されている場合には、画素ずらしを行って、画素ずらしの1サイクルが終了するまでは、上述したフラッシュ撮影または非フラッシュ撮影を繰り返して行う。
こうして、ハイレゾショットがオフである場合には1コマの画像が取得されたら、またハイレゾショットがオンである場合には1サイクル分の複数コマの画像が取得されたら、この1コマ撮影を終了する。
そして、システム制御部48の制御に基づき、レンズ制御部26によりピント移動処理が行われる(ステップS157)。
また、システム制御部48の制御に基づき、連写中の各コマを撮影する合間にライブビュー画像を取得して表示する処理が行われる(ステップS158)。ただし、ライブビュー表示レートと連写速度とが同じか、もしくは連写速度の方が速い場合には、連写して取得した画像をライブビューに用いても構わない。
連写間ライブビュー表示においては、上述したようにピント位置(フォーカス位置)が移動するために、フォーカス位置に応じて実効焦点距離も変化し、ライブビュー画像の画角が変化する。この画角変化に対応するために、ライブビュー画像を取得したときの実効焦点距離に応じて、画角制限枠を拡大または縮小して表示する。さらに、連写中の手ぶれを考慮して、画角制限枠をシフトさせる。
続いて、遠点および近点の撮影が終了したか否か(つまり、深度合成撮影において取得すべき複数の静止画像が全て取得済みであるか否か)をシステム制御部48が判定する(ステップS159)。
ここで、遠点および近点の撮影が終了していないと判定された場合には、上述したステップS156へ戻って、次の静止画像を撮影する。
また、ステップS159において、遠点および近点の撮影が終了したと判定された場合には、システム制御部48の制御に基づき、レンズ制御部26が、深度合成撮影を開始した時点のフォーカス位置(基準点)にフォーカス位置を移動する(ステップS160)。
ステップS153またはステップS160の処理を行ったら、この処理からリターンする。
図20は、図19のステップS151における連写中手ぶれ補正処理を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、カメラ本体3に装着されている撮影レンズ2が、非手ぶれ補正レンズと、通常の手ぶれ補正レンズと、BLC手ぶれ補正レンズと、の何れであるかを判定する(ステップS171)。
ここにBLC手ぶれ補正レンズは、ボディ内手ぶれ補正とレンズ手ぶれ補正の協調動作が可能なレンズを指す。
ステップS171において、撮影レンズ2が、非手ぶれ補正レンズであると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づき、ボディIS(B-IS)の動作が行われる(ステップS172)。
また、ステップS171において、撮影レンズ2がBLC手ぶれ補正レンズであると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づき、BLC-IS(ボディ内手ぶれ補正とレンズ手ぶれ補正の協調)の動作が行われる(ステップS173)。
さらに、ステップS171において、撮影レンズ2が通常の手ぶれ補正レンズであると判定された場合には、システム制御部48が、ISスイッチ付きの撮影レンズ2であるか否かを判定する(ステップS174)。
ここで、ISスイッチなしの撮影レンズ2であると判定された場合には、システム制御部48が、レンズIS優先がオンになっているか否かを判定する(ステップS175)。
レンズIS優先がオフになっていると判定された場合には、ステップS172へ行ってボディIS(B-IS)の動作を行う。
ステップS174においてISスイッチ付きの撮影レンズ2であると判定された場合、またはステップS175においてレンズIS優先がオンになっていると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づき、ボディIS(B-IS)による強制回転ぶれ補正が行われ(ステップS176)、さらにボディIS(B-IS)による強制シフトぶれ補正が行われる(ステップS177)。
このようにレンズIS優先が設定されている場合に、レンズISでは補正することができないかまたは補正が不十分となる回転ぶれ補正およびシフトぶれ補正については、ボディISで強制的に行うようにしている。
マクロ領域で使用されることが多い深度合成撮影では、シフトぶれ補正は重要である。また、後段の合成処理を行う前に回転ぶれ補正を画像処理によって行うと、画質が低下し、特に直線部分の画質が低下する。さらに画像処理による回転ぶれ補正では、画質の低下だけでなく、画角が極度に狭くなってしまう。従って、回転ぶれは、できる限り撮影時に物理的および/または光学的に補正することが望ましい。このような理由からボディISによる強制的な回転ぶれ補正およびシフトぶれ補正を行っている。
次に、本露光手ぶれ補正が第1モードに設定されているか、または第2モードに設定されているかをシステム制御部48が判定する(ステップS178)。
ここで、第1モードに設定されていると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づき、レンズISが強制的に停止され(ステップS179)、ボディISによる強制手ぶれ補正が行われる(ステップS180)。
また、第2モードに設定されていると判定された場合には、ステップS179およびステップS180の処理は行わないために、レンズISによる手ぶれ補正が行われることになる。
従って、第1モードの場合に、撮影待機中はレンズIS、本露光中はボディISとなり、制御が簡素化される。さらに、撮影待機中に手ぶれ補正の可動範囲を使用するのはレンズISのみとなり、本露光中のボディISの手ぶれ補正の可動範囲をフルに確保することができ、手ぶれ補正の性能を高めることができる利点がある。
こうして、ステップS172、ステップS173、またはステップS180の処理を行うか、もしくはステップS178において第2モードに設定されていると判定された場合には、この処理からリターンする。
図21は、図19のステップS157におけるピント移動処理を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、基準点を遠点近傍(ここに遠点近傍は、遠点を含む)に移動した(図13のステップS92、ステップS93等参照)か否かを判定する(ステップS191)。
ここで、遠点近傍に移動したと判定された場合には、システム制御部48が、撮影時ピント移動方向フラグを1に変更する(ステップS192)。
ここに、撮影時ピント移動方向フラグは、ピント移動方向が、近点→遠点の方向である場合に「0」となり、遠点→近点の方向である場合に「1」となる。なお、ピント移動方向を途中で変えて撮影を行うと、フォーカスレンズの当て付き方向が変更されることに伴ってギャップやバックラッシが発生し、制御と実動作とにずれが生じてしまう。そこで、こうしたずれが生じないようにするために、ピント移動方向を一方向として撮影を行うようにしている。ただし、基準点の画像は、ユーザが実際にライブビューでフレーミングした画像であるために、正確な画角範囲を特定するべく深度合成撮影開始時にまず撮影しておくことが好ましい。
通常、ユーザの感覚として、深度合成撮影の開始点として近距離にピントをわせようとする。また、深度合成撮影時のピント移動方向は、近点→遠点である方が遠点→近点であるよりも違和感が小さい。さらに、ピント移動方向を遠点→近点とすると、特に1点タッチで遠点のみを指定する場合に、ピントの最至近限界に当たるかどうかを撮影前に確認することができず、最至近限界に当たって望みの結果が得られないことも考えられる。
このような点を考慮して、近点→遠点をピント移動方向の標準とし、特にユーザが基準点を遠点に移動した場合に、遠点→近点をピント移動方向に変更するようにしている。上述したように遠点は、深度合成撮影において、実効焦点距離が最も長くなる(つまり、画角が最も狭くなる)点である。従ってこの場合、深度合成撮影を開始するためにレリーズボタン44aを押下した時点でユーザが観察しているライブビュー画像は、上述したように、深度合成の結果得られる画像の画角と基本的に一致するために、深度合成に係る画角制限枠を表示する必要がなくなる。
ステップS192の処理を行うか、またはステップS191において遠点近傍に移動していないと判定された場合に、システム制御部48は、戻り枚数が0であるか否かを判定する(ステップS193)。ここに、戻り枚数は、基準点から遠点または近点へピント位置(フォーカス位置)を移動して取得する画像の枚数を示している。この戻り枚数は、メニューにより設定可能となっており、ここではメニューの設定値に基づいて判定を行う。
ステップS193において、戻り枚数が0でないと判定された場合に、システム制御部48は、ピント位置戻り処理が既に行われたか否かを判定する(ステップS194)。
ここで、ピント位置戻り処理がまだ行われていないと判定された場合には、システム制御部48の制御に基づいて、レンズ制御部26がピント位置戻り処理を行う(ステップS195)。
このピント位置戻り処理により、撮影時ピント移動方向フラグが1である場合には、ピント位置が、戻り枚数分だけ基準点から遠点に移動される。また、撮影時ピント移動方向フラグが0である場合には、ピント位置が、戻り枚数分だけ基準点から近点に移動される。なお、撮影待機時に基準点を移動した場合は、移動量に合わせてメニューで設定された戻り枚数を調整してから、このピント位置戻り処理を行う。
ステップS195の処理を行うか、ステップS193において戻り枚数が0であると判定されるか、またはステップS194において戻り処理が既に行われたと判定された場合には、システム制御部48が、撮影時ピント移動方向フラグをチェックする(ステップS196)。
ここで、撮影時ピント移動方向フラグが0であると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づいて、遠点側に所定量(フォーカスステップ分)だけピントが移動される(ステップS197)。この処理により、ピント位置は近点側から遠点側へ向かって次第に移動していく。
また、ステップS196において、撮影時ピント移動方向フラグが1であると判定された場合には、システム制御部48の制御に基づいて、近点側に所定量(フォーカスステップ分)だけピントが移動される(ステップS198)。この処理により、ピント位置は遠点側から近点側へ向かって次第に移動していく。
ステップS197またはステップS198の処理を行ったら、この処理からリターンする。
図22は、図6のステップS14における深度合成処理を示すフローチャートである。
この処理に入るとシステム制御部48は、メモリ33のバッファ領域から基準点の画像データを読み出す(ステップS201)。
その後、合成画角調整部(合成画角調整回路)として機能する画像処理部34は、深度合成撮影の本撮影を行う前にライブビュー上に表示した深度合成画像の画角範囲に基づいて、複数の撮像データの画角をそれぞれ調整する。
すなわち、まずシステム制御部48が、2ndレリーズスイッチがオンになったときに表示部43に表示されていたライブビュー画像の画角制限範囲Aを特定する(ステップS202)。
次に、システム制御部48の制御に基づき画像処理部34は、基準点の画像データから、画角制限範囲Aに対応する画像データ範囲を切り出して画像データBとする(ステップS203)。
さらに、システム制御部48の制御に基づき画像処理部34は、画像データBを拡大または縮小して、画素数を規格化する(ステップS204)。
そして、システム制御部48は、メモリ33のバッファ領域から次の画像データを読み出す(ステップS205)。
加えて、システム制御部48の制御に基づき画像処理部34は、ステップS205において読み出した画像データから、上述した画像データBに対応する画像データ範囲を切り出して画像データCとする(ステップS206)。
続いて、システム制御部48の制御に基づき画像処理部34は、画像データCを拡大または縮小して、画素数を規格化する(ステップS207)。
こうして、画像処理部34は、合成画角調整部(合成画角調整回路)として機能して、複数の撮像データのそれぞれを撮像したときの実効焦点距離に基づいて、複数の撮像データの画角をそれぞれ調整する。
また、システム制御部48の制御に基づき画像処理部34は、規格化した画像データBのコントラスト値と、規格化した画像データCのコントラスト値と、をそれぞれ算出して比較し、画像データBのコントラスト値よりも高いコントラスト値である画像データCの画像領域により、対応する画像データBの画像領域を入れ替える(ステップS208)。なお、ここでは、ピントが合っている程度を示す値の代表としてコントラスト値を用いたが、これは1つの実施例に過ぎず、コントラスト値に限定されるものではない。他の実施例としては、例えば画像の高周波成分を検出して、検出した高周波成分をピントが合っている程度を示す値として使用してもよい。
このように、画像処理部34は、深度合成部(深度合成回路)として機能して、画角調整された複数の撮像データを深度合成して深度合成画像を生成する。
その後、システム制御部48は、メモリ33のバッファ領域に格納された深度合成撮影により得られた複数の画像データを全て読み出したか否かを判定する(ステップS209)。
ここで、まだ全ての画像データを読み出していないと判定された場合には、上述したステップS205へ行って次の画像データを読み出し、上述したような処理を行う。
一方、ステップS209において、全ての画像データを読み出したと判定された場合には、この処理からリターンする。
このような実施形態1によれば、撮影レンズ2の情報と、深度合成用フォーカス位置決定部(深度合成用フォーカス位置決定回路)として機能するシステム制御部48の出力内容と、撮影距離との内の少なくとも1つの変更に応じて、ライブビューを表示するときの実効焦点距離と、遠点のフォーカス位置にしたときの実効焦点距離とに基づき深度合成画像の画角範囲をライブビュー上に更新して表示するようにしたために、深度合成撮影で生成される深度合成画像の画角を、撮影を行う前に、可能な限り広くかつ一意的に確認することができる。
これにより、深度合成撮影前にライブビューで観察した画角と、生成された深度合成画像の画角とに、違和感を覚えるほどの差異が生じることがなくなり、画角の相違に起因する再撮影が不要となって、ユーザビリティーを向上することができる。
また、撮影レンズ2のフォーカス位置の移動可能範囲内における最大画角変動量を決定して、最大画角変動量に基づいた深度合成画像の画角範囲をライブビュー上に表示するようにしたために、画角制限枠の大きさが撮影レンズ2の種類に応じて固定されることになり、ユーザの設定条件に依存して変化することがないために、理解し易く使い易い利便性をユーザに与えることができる。
さらに、深度合成撮影の本撮影を待機する状態において、遠点のフォーカス位置付近にライブビューのフォーカス位置を設定するようにした場合には、深度合成撮影に係る画角制限枠の表示が不要になる利点がある。
そして、深度合成撮影が可能なレンズ群に対して、レンズ群に含まれる撮影レンズ2の最大画角変動量の内の、最も変動量が大きいレンズ群最大画角変動量を決定して、レンズ群に含まれる何れの撮影レンズ2に対してもレンズ群最大画角変動量に基づいた深度合成画像の画角範囲をライブビュー上に表示するようにした場合には、画角制限枠の大きさが撮影レンズ2の種類に依存して変化することがなく、ユーザの設定条件に依存して変化することもないために、さらに理解し易く使い易い利便性をユーザに与えることができる。
加えて、深度合成画像の画角範囲と、デジタルテレコンバータ倍率による画角範囲との内の、小さい方の画角範囲をライブビュー上に表示するようにしたために、複数の画角範囲が表示される場合の煩わしさを軽減することができる。
なお、上述した各部の処理は、ハードウェアとして構成された1つ以上のプロセッサが行うようにしてもよい。例えば、各部は、それぞれが電子回路として構成されたプロセッサであっても構わないし、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路で構成されたプロセッサにおける各回路部であってもよい。または、1つ以上のCPUで構成されるプロセッサが、記録媒体に記録された処理プログラムを読み込んで実行することにより、各部としての機能を実行するようにしても構わない。
また、上述では主として撮像装置について説明したが、撮像装置を上述したように制御する制御方法であってもよいし、コンピュータに撮像装置と同様の処理を行わせるための処理プログラム、該処理プログラムを記録するコンピュータにより読み取り可能な一時的でない記録媒体、等であっても構わない。
さらに、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明の態様を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。