以下、本発明を適用可能な基板処理装置の概要について説明する。以下において、基板とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、有機EL(Electroluminescence)表示用基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの各種基板をいう。以下では主として半導体基板の処理に用いられる基板処理システムを例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも本発明を適用可能である。
図1は本発明の一実施形態である基板処理装置の概略構成を示す図である。基板処理装置1は、半導体ウエハ等の円盤状の基板Wに対して処理液による洗浄やエッチング処理などの湿式処理を施す湿式処理装置である。湿式処理としては各種の公知技術を適用することができるが、特に基板上面に形成した液膜を凝固させこれを除去するプロセスを含む、本発明に係る基板処理に好適なものである。基板処理装置1は、チャンバ70内に設けられた基板保持部10、スプラッシュガード20および処理液吐出部30,40と、処理液供給ユニット50と、これらの各部を制御する制御ユニット80とを備えている。
基板保持部10は、基板表面を上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるものである。この基板保持部10は、スピンベース111と回転支軸112とが一体的に結合されたスピンチャック11を有している。スピンベース111は平面視において略円形形状を有しており、その中心部に、略鉛直方向に延びる中空状の回転支軸112が固定されている。回転支軸112はモータを含むチャック回転機構103の回転軸に連結されている。チャック回転機構103は円筒状のケーシング101内に収容され、回転支軸112はケーシング101により、鉛直方向の回転軸周りに回転自在に支持されている。
チャック回転機構103は、制御ユニット80のチャック駆動部87からの駆動により回転支軸112を回転軸周りに回転させる。これにより、回転支軸112の上端部に取り付けられたスピンベース111が鉛直軸周りに回転する。制御ユニット80は、チャック駆動部87を介してチャック回転機構103を制御して、スピンベース111の回転速度を調整することが可能である。
スピンベース111の周縁部付近には、基板Wの周端部を把持するための複数個のチャックピン114が立設されている。チャックピン114は、円形の基板Wを確実に保持するために3つ以上設けてあればよく(この例では6つ)、スピンベース111の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン114のそれぞれは、基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
スピンベース111に対して基板Wが受け渡しされる際には、複数のチャックピン114のそれぞれを解放状態とする一方、基板Wを回転させて所定の処理を行う際には、複数のチャックピン114のそれぞれを押圧状態とする。このように押圧状態とすることによって、チャックピン114は基板Wの周端部を把持してその基板Wをスピンベース111から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面を上方に向け、裏面を下方に向けた状態で支持される。なお、チャックピン114としては、上記に限定されず種々の公知の構成を用いることができる。
スピンチャック11に基板Wが保持された状態、より具体的にはスピンベース111に設けられたチャックピン114によって基板Wがその周縁部を保持された状態でチャック回転機構103が作動することで、基板Wは鉛直方向の回転軸AX周りに回転する。以下では、このようにして回転する基板Wの上面および下面にそれぞれ符号Wa、Wbを付す。
スピンチャック11により水平姿勢に支持される基板Wの下方に、冷媒吐出部12が設けられている。後述するように、冷媒吐出部12は、基板Wの上面Waに液膜が形成された基板Wの下面Wbに向けて液膜を構成する液体の凝固点よりも低温の冷媒を吐出し、液膜を凝固させる機能を有する。冷媒吐出部12は、基板Wより少し小さい円盤状の外形を有し、水平な上面を基板下面Wbと対向させて配置された対向部材121と、対向部材121の中心部に取り付けられて鉛直方向下向きに延びる供給管122とを備えている。供給管122は回転支軸112の中空部に挿通されているが、回転支軸112とは接続されていない。したがって、スピンチャック11が回転する際にも、冷媒吐出部12は回転しない。
供給管122は中空の管であり、その上端部が対向部材121の中心部で上向きに開口している。供給管122は後述する処理液供給ユニット50に接続されており、処理液供給ユニット50から出力される処理液のうちの冷媒を基板下面Wbに向けて吐出する。これにより基板下面Wbと対向部材121の上面との間のギャップ空間に冷媒が供給される。すなわち、供給管122の上端は、基板Wの下面側回転中心に向けて開口する吐出口を有するノズルとして機能する。そこで、以下において必要な場合には、この部分を「下面ノズル123」と称する。このように、冷媒吐出部12は吐出した冷媒を基板下面Wbに触れさせることで基板Wを冷却し、基板上面Waに担持される液膜を凝固させる。
またケーシング101の周囲には、スピンチャック11に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスプラッシュガード20がスピンチャック11の回転軸に沿って昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード20は回転軸に対して略回転対称な形状を有しており、それぞれスピンチャック11と同心円状に配置されて基板Wから飛散する処理液を受け止める複数段の(この例では2段の)ガード21と、ガード21から流下する処理液を受け止める液受け部22とを備えている。そして、制御部80に設けられたガード昇降部86がガード21を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散する薬液やリンス液などの処理液を分別して回収することが可能となっている。
スプラッシュガード20の周囲には、エッチング液等の薬液、リンス液、溶剤、純水、DIW(脱イオン水)など各種の処理液を基板Wに供給するための液供給部が少なくとも1つ設けられる。この例では、図1に示すように、2組の処理液吐出部30,40が設けられている。処理液吐出部30は、制御部80のアーム駆動部83により駆動されて鉛直軸回りに回動可能に構成された回動軸31と、該回動軸31から水平方向に延設されたアーム32と、アーム32の先端に下向きに取り付けられたノズル33とを備えている。アーム駆動部83により回動軸31が回動駆動されることで、アーム32が鉛直軸回りに揺動し、これによりノズル33は、スプラッシュガード20よりも外側の退避位置(図1に実線で示す位置)と基板Wの回転中心の上方位置(図1に点線で示す位置)との間を移動する。ノズル33は、基板Wの上方に位置決めされた状態で、処理液供給ユニット50から供給される所定の処理液を吐出し、基板Wの表面に処理液を供給する。
同様に、処理液吐出部40は、アーム駆動部83により回動駆動される回動軸41と、これに連結されたアーム42と、アーム42の先端に設けられて処理液供給ユニット50から供給される処理液を吐出するノズル43とを備えている。なお、処理液吐出部の数はこれに限定されず、必要に応じて増減されてもよい。
スピンチャック11の回転により基板Wが所定の回転速度で回転した状態で、これらの処理液吐出部30,40がノズル33,43を順次基板Wの上方に位置させて処理液を基板Wに供給することにより、基板Wに対する湿式処理が実行される。処理の目的に応じて、各ノズル33,43からは互いに異なる処理液が吐出されてもよく、同じ処理液が吐出されてもよい。また、1つのノズルから2種類以上の処理液が吐出されてもよい。基板Wの回転中心付近に供給された処理液は、基板Wの回転に伴う遠心力により外側へ広がり、最終的には基板Wの周縁部から側方へ振り切られる。基板Wから飛散した処理液はスプラッシュガード20のガード21によって受け止められて液受け部22により回収される。
処理液供給ユニット50は、冷媒吐出部12、処理液吐出部30および処理液吐出部40に対し、処理プロセスの進行に応じて各種の処理液を供給する機能を有する。処理液供給ユニット50の具体的構成は処理の目的に応じて種々のものを取り得るが、ここではその一例として主に本発明に係る基板処理方法を実施するために必要な構成について説明する。
この場合、処理液供給ユニット50は、基板Wの上面Waに液膜を形成するための処理液を処理液吐出部30へ、液膜を凝固させるための冷媒を冷媒吐出部12へ、液膜が凝固してなる凝固膜を溶解させるための溶解液を処理液吐出部40へ、それぞれ供給する。具体的には、処理液供給ユニット50は、処理液を処理液吐出部30に供給する第1供給部51、冷媒吐出部12へ冷媒を供給する第2供給部52、および、融解液を処理液吐出部40に供給する第3供給部53を備えている。
第1供給部51は、基板Wに液膜を形成するための処理液を送出する処理液送出部511と、処理液送出部511と処理液吐出部30とを接続する配管512と、該配管512に介挿された制御バルブ513とを有する。処理液送出部511は、処理液を内部に貯留する機能を有していてもよく、また外部から供給される処理液を配管512に対し送出する機能のみを有していてもよい。制御バルブ513は、制御ユニット80に設けられたバルブ制御部84からの制御指令に応じて作動し、処理液送出部511から配管512を介して処理液吐出部30に供給される処理液の流量を調節する。
第1供給部51から処理液吐出部30に供給される処理液は、基板Wに液膜を形成して凝固し、その後に融解除去されるものである。このような処理液として利用可能な物質は、常温において液体であり、常温より低いが比較的高い温度において凝固し、かつ基板Wの汚染物質となるような不純物を含まないものであることが望ましい。特に、凝固点が摂氏0度よりも高い物質であれば、下記のように冷媒として冷水を使用可能であり、特殊な冷媒や大掛かりな冷却装置を必要としないため、処理に要するエネルギーの節減およびコスト低減の効果が大きい。なお処理液としては複数物質の混合物であってもよい。上記のような要求を満たす物質としては、例えばTert-ブタノール水(凝固点:摂氏20度)、炭酸エチレン水(凝固点:摂氏20度)等を使用可能である。処理液として用いられる物質の凝固点が常温より低い温度であれば、これを液状に保つためにエネルギーを消費する必要がない。
第2供給部52は以下のような構成を有している。外部から常温の脱イオン水(De-ionized Water;DIW)を取り込む配管55から、配管521,522が分岐している。配管521は制御バルブ525を介して混合器527に接続されている。一方、配管522は冷却器523に接続されている。冷却器523は、常温のDIWを摂氏0度以上の所定温度(例えば摂氏2度)まで冷却し、低温DIWとして配管524へ出力する。配管524には制御バルブ526が介挿されている。
配管521を流通する常温DIWと配管524を流通する低温DIWとは、混合器527により混合され、混合された液体が配管528を介し冷媒として冷媒吐出部12に供給される。制御バルブ525,526の開閉は制御ユニット80のバルブ制御部84により制御されており、制御バルブ525,526がバルブ制御部84からの制御指令に応じた開度で作動することで、常温DIWと低温DIWとの混合比が調節される。これにより、摂氏0度付近から常温までの任意の温度かつ任意の流量のDIWを冷媒として利用することが可能である。冷却器523から出力される低温DIWの温度および常温DIWとの混合後の冷媒の温度については、制御ユニット80に設けられた温度管理部85により管理される。
第3供給部53では、配管55から分岐した配管531が加熱器532に接続されている。加熱器532は外部から供給される常温DIWを加熱して所定の温度(例えば摂氏50度)まで昇温する。加熱により生成された高温DIWは、処理液吐出部40に接続された配管533へ融解液として出力される。配管533には制御バルブ534が介挿されている。制御バルブ534は、制御ユニット80に設けられたバルブ制御部84からの制御指令に応じて作動し、加熱器532から配管533を介して処理液吐出部40に供給される融解液の流量を調節する。加熱器532から出力される高温DIWの温度は温度管理部85により管理されている。
上記の他、この基板処理装置1の制御ユニット80には、予め定められた処理プログラムを実行して各部の動作を制御するCPU81と、CPU81により実行される処理プログラムや処理中に生成されるデータ等を記憶保存するためのメモリ82と、処理の進行状況や異常の発生などを必要に応じてユーザーに報知するための表示部88とが設けられている。
次に、以上のように構成された基板処理装置1の動作について説明する。上記の基板処理装置1は各種の処理に適用可能であるが、ここでは基板Wに対し適宜の湿式処理を実行した後、基板Wの上面Waに処理液による液膜を形成しこれを凝固させるための処理について説明する。このような処理は、例えば、基板表面Waへの付着物を遊離させて凝固膜中に取り込み、凝固膜とともに除去する洗浄処理(相変化洗浄処理)に適用される。このような処理の原理は公知であるため、ここでは説明を省略する。
図2はこの実施形態の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。また、図3はこの動作における各部の状態を模式的に示す図である。以下に説明する基板処理装置1の動作は、CPU81がメモリ82に予め記憶された制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を実行させることにより実現される。最初に、装置に搬入された基板Wをワークとして適宜の湿式処理が行われる(ステップS101)。湿式処理としては多くの公知技術が知られており、本実施形態においてもそれらの処理を適用することができる。そこで、ここでは詳しい説明を省略する。また、チャンバ70内雰囲気は、後述する処理液L1の凝固点よりも高い温度に保たれているものとする。
湿式処理の終了後、チャック駆動部87からの駆動によってチャック回転機構103が作動することで、スピンチャック11が所定の液膜形成用速度で回転される。これにより湿式処理後の基板Wが液膜形成用速度で回転する(ステップS102)。そして、処理液吐出部30のノズル33が基板Wの回転中心の上方に位置決めされ、ノズル33から液膜形成用の処理液が吐出される(ステップS103)。図3(a)に示すように、ノズル33から吐出される処理液L1が回転する基板Wの中央部に供給されると、遠心力の作用により処理液L1は基板Wの外周部に向けて広がる。処理液L1の供給量および基板Wの回転速度が適宜に設定されることにより、基板Wの上面Waの全体を覆う液膜LFが形成される。基板Wの回転速度は、供給された処理液が振り切られないように比較的低く、例えば300rpm以下に設定される。なお基板Wの回転速度により液膜LFの厚さを制御することが可能である。
処理液L1が基板Wに所定時間供給され液膜LFが形成されると(ステップS104)、ノズル33は処理液の吐出を停止し、基板W側方の退避位置に移動する(ステップS105)。基板Wが液膜形成用速度またはそれ以下の回転速度である凝固用回転速度で回転を継続することにより(ステップS106)、図3(b)に示すように、基板Wの上面Waが所定厚さの液膜LFで覆われた状態が維持される。
続いて、処理液供給ユニット50の第2供給部52が冷媒吐出部12に向けて冷媒を送出する。これにより冷媒吐出部12の下面ノズル123から所定温度T1および所定流量F1の冷媒が吐出され、基板下面Wbの回転中心近傍に供給される(ステップS107)。この例において、冷媒は処理液Lの凝固点よりも低温に温度調節されたDIWである。冷媒として比熱の比較的大きな液体を使用することで、液膜LFを効率よく冷却することができる。このときの冷媒Fの温度T1、流量F1の設定については後で説明する。
図3(c)に示すように、基板下面Wbが冷媒Fに触れて基板Wが冷却されることで、基板上面Waに形成されている液膜LFが凝固して凝固膜SFに転換する。冷媒Fの供給が所定時間継続され(ステップS108)、液膜LFの全体が凝固膜SFに転換された後、下面ノズル123からの冷媒Fの吐出および基板Wの回転が停止される(ステップS109)。
次に、こうして形成された凝固膜SFの除去が行われる。すなわち、基板Wの回転速度が所定のリンス処理用回転速度に設定される(ステップS110)。基板Wは上面Waの全体が凝固膜SFによって覆われた状態となっているため、リンス処理用回転速度は凝固用回転速度よりも高速とすることができる。そして、処理液吐出部40のノズル43が基板Wの回転中心の上方に位置決めされ、ノズル43から融解液としての高温DIWが吐出される(ステップS111)。図3(d)に示すように、基板Wを覆う凝固膜SFに高温の融解液L2が供給されることで、凝固膜SFが融解し、最終的には基板Wの回転により融解液とともに基板Wから振り切られる。リンス処理用回転速度を比較的高速とすることで、凝固膜SF中の汚染物質が基板Wに再付着するのを抑制することができる。融解液の供給が所定時間継続された後(ステップS112)、ノズル43は融解液の吐出を停止し、所定の退避位置(図1に示す位置)へ移動する(ステップS113)。
続いて、スピン乾燥処理が実行される(ステップS114)。スピン乾燥処理は公知の技術であり、基板Wを高速で回転させることにより、基板Wの表面に残留する液体を振り切り基板表面を乾燥させる処理である。基板Wが乾燥した後、基板Wは基板処理装置1から外部へ搬出され(ステップS115)、当該基板処理装置1での処理は完了する。
次に、液膜LFを凝固させるために基板Wの下面Wbに供給される冷媒の温度管理について説明する。上記したように、この実施形態における基板処理では、巨視的には基板Wの上面(被処理面)Waに形成した液膜LFの全体を凝固させた後、凝固膜SFを除去するというプロセスを経ている。ここで、液膜が凝固する過程をより微視的に見たとき、以下のような現象が生じるように、ステップS107において吐出される冷媒の温度管理がなされている。
図4は凝固過程における液膜中の温度分布を例示する図である。液膜LFが凝固開始する前においては、図4(a)左に示すように、基板Wの上面Waを覆うように液膜LFが形成されている。このとき、被処理面つまり基板Wの上面WaにはパーティクルP1(図に白丸で示す)が付着しており、このパーティクルP1を除去することが処理の目的である。一方、液膜LF中には、液膜LFを構成する液体にもともと含まれる不純物等、微量の汚染物質P2(図に白四角形で示す)が含まれていることがある。処理後の基板WにはこのようなパーティクルP1や汚染物質P2が残留しないことが求められる。
基板下面Wbに温度T1の冷媒が供給開始された直後では、図4(a)右に示すように、基板下面Wbの温度が低下する一方、液膜LFの上面は周囲雰囲気の温度、すなわち室温RT程度の温度を保ったままである。このため、液膜LFの上面と基板下面Wbとの間には、鉛直方向において図示のような温度勾配が生じる。図において、符号mpは液膜LFを構成する物質の凝固点を表す。
なお、ここでは理解を容易にするために、基板W内および液膜LF内における温度勾配を近似的に線形としている。また一般的には、液膜LFよりも基板Wの方が熱伝導率が高い。このため、図に示すように、液膜LFの上面と基板下面Wbとの間における温度勾配は折れ線によって表すことができる。
冷媒の継続的な供給により、全体の温度が低下してゆく。図4(b)に示すように、液膜LFと接する基板Wの上面Waの温度が凝固点mpに達すると、液膜LFのうち基板Wの上面Waと接する下部から凝固が始まる。すなわち、図4(c)に示すように、液膜LFのうち基板上面Waに近くその温度が凝固点mpを下回る部分において、液膜LFを構成する液体が凝固し、薄い凝固膜SFが形成される。そして、さらに時間が経過するのにつれて、図4(d)に示すように、液膜LFと凝固膜SFとの境界が上向きに進行して凝固膜SFの厚みが次第に増加し、最終的には図4(e)に示すように、液膜の上面まで凝固点mp以下に冷却されて液膜全体が凝固する。
この過程において、液体が凝固する際に偏析現象が起こることにより、図4(c)ないし図4(e)に示すように、基板上面Waおよび液膜LF中のパーティクルP1や汚染物質P2(以下、「汚染物質等」と総称する)が基板上面Waから排斥される。その結果、液膜LFの上部では汚染物質等の濃度が高まるが、凝固膜SF内からは汚染物質等が排除される。この現象を利用して、基板上面Waに付着したパーティクルP1を除去し、また液膜LF中に含まれる汚染物質P2が基板上面Waに付着するのを防止することが可能となる。
上記した偏析現象による汚染物質等の排斥を効果的に生じさせるためには、凝固をできるだけゆっくり進行させることが望ましい。この目的のために、本実施形態では、冷媒の温度T1を凝固点mpより僅かに低い温度とすることで冷媒の有する冷却能力を抑制し、急激な液膜LFの凝固が進行しないようにしている。このような冷媒の温度T1としては、例えば凝固点mpとの温度差が摂氏5度以内である温度とすることができる。ただし、基板Wの厚さや周囲温度、液膜LFの凝固点mp等の条件によって液膜中の温度分布は異なるため、冷媒温度T1の最適値については処理条件に応じて実験的に定められることが望ましい。
従来の相変化洗浄技術においては、液膜の凝固に要する時間を短くして処理の高速化を図るために、冷却能力の高い、つまり液膜の凝固点に対し十分に低温の冷媒を、当初より基板に供給するという手段が採られていた。この場合、液膜が短時間で凝固するため、汚染物質等を基板から遠ざけるのに十分な時間を確保することができていなかった。また例えば、液膜に低温のガスを触れさせて凝固させる技術もあるが、この場合にはどちらかと言えば液膜の上面側から凝固が進行するため、上記のような偏析による汚染物質等の排斥効果が得られない。これらの技術では、液膜を形成する液体に極めて高い純度が必要となり、処理液のコストが高くなりがちである。
これに対し、本実施形態では、液膜LFの凝固が基板上面Wa側からゆっくりと進行するため、液膜LF中に含まれる汚染物質等を排斥しながら凝固膜SFを形成することが可能である。このため、比較的純度の低い物質を液膜材料として使用することが可能となり、処理コストの低減を図ることができる。
図5は凝固の進行の様子を模式的に示す図である。図5(a)は理想的な進行状態を示している。同図に示されるように、液膜LFの凝固は基板上面Waに触れる下部において一様に開始され、上向きに徐々に進行して、最終的に液膜全体が凝固膜SFに転換することが望ましい。こうすることで、基板上面Waや液膜LF中の汚染物質等を凝固膜SFの上部に移動させ基板Wから遠ざけることができる。
しかしながら、実際には、基板下面Wbの中央部に供給された冷媒が基板Wの回転に伴ってその径方向に広がってゆく。そのため、図5(b)に示すように、液膜LFのうち中央部分の下部で最初に凝固が始まり、凝固膜SFは上向きおよび径方向外向きに広がってゆく。このような場合でも、凝固の進行速度が十分に低ければ、液膜LF内の各位置において微視的には下部から上部に向けて凝固が進行する。これを実現するために、冷媒の温度を液膜LFの凝固点mpより僅かに低い温度とすることが有効である。
冷媒が基板Wの径方向外側に広がってゆくのにつれて、周囲温度が冷媒の温度より高いこと、また冷媒の熱エネルギーが基板Wおよび液膜LFに移動して冷媒の温度が上昇すること等の理由から、冷媒の冷却能力は径方向外側に向かって次第に低下する。このため、凝固点mpとの温度差が小さい冷媒では基板Wの周縁部まで十分に冷却されず、液膜全体を凝固させることができない。
言い換えれば、冷媒の温度T1およびその流量F1は、当該温度の冷媒が当該流量で継続的に基板Wに供給されたとしても、液膜全体の凝固には至らないような値に選ばれる必要がある。このような冷媒を用いることで、液膜が一気に凝固してしまうことが回避され、凝固の進行を遅らせることができる。液膜全体を凝固させることができるような温度および流量での冷媒の供給は、液膜中央部分での急速な凝固を引き起こすため好ましくない。
基板Wに付着するパーティクルP1を除去するという目的のために、最終的には液膜全体を凝固させる必要がある。また、相変化洗浄処理においては、除去直前の凝固膜SFの最終到達温度が低いほどパーティクル除去効果が高くなることがわかっている。これらのことから、温度T1の冷媒を一定期間供給した後、冷媒の冷却能力を高めて基板Wをさらに冷却する必要がある。基板Wの最終到達温度を低下させるためには、冷媒の温度を低下させることが有効である。
そこで、この実施形態では、次に説明するように、温度T1の冷媒を所定流量で一定期間供給した後、冷媒の温度を段階的に低下させてゆき、最終的には、液膜LFの全体を凝固させることのできる温度まで冷媒の温度を低下させる。これにより、液膜LFの全体が凝固膜SFに転換し、また凝固膜SFの最終到達温度も十分に低くすることができる。
図6はこの実施形態における冷媒および各部の温度変化を示すプロファイルである。より具体的には、図6(a)は各部の位置の定義を示す図である。同図に示すように、基板Wの回転軸AXに近い位置における、基板下面Wbの一点を符号A1、基板上面Waの一点を符号A2、液膜LF上部の一点を符号A3によりそれぞれ表す。また、基板Wの回転軸AXから遠く基板Wの周縁部に近い位置における、基板下面Wbの一点を符号B1、基板上面Waの一点を符号B2、液膜LF上部の一点を符号B3によりそれぞれ表す。
図6(b)は冷媒吐出部12から吐出される冷媒Fの温度の時間変化を示すプロファイルである。同図に示すように、時刻t0において温度T1の冷媒Fが吐出され、この状態が一定期間継続される。時刻taにおいて冷媒Fの温度がより低いT2に変更される。さらに、冷媒Fの温度は時刻tbにおいて温度T3に、時刻tcにおいて温度T4に、段階的に低下される。すなわち、冷媒Fは、当初は液膜LFの凝固点mpより僅かに低い温度T1で基板下面Wbに供給された後、段階的に温度が下げられて最終的には温度T4で供給される。
第2供給部52において常温DIWと低温DIWとの混合比を変化させることにより、このような冷媒Fの種々の温度変化プロファイルを実現することができる。冷媒Fの最終的な温度T4は摂氏0度より少し高い温度である。この温度は、液膜LFの凝固点mpに対しては十分低く、液膜LF全体を凝固させた上でさらに冷却することのできる温度であり、かつ冷媒であるDIWが凍結せず液状を保つことのできる温度である。例えば冷却器523から出力される低温DIWがそのまま、つまり常温DIWと混合されずに冷媒吐出部12に供給されることにより、このような温度を実現することが可能である。処理プロセスにおいて摂氏0度より低い冷媒を必要としないため、冷媒として水、DIW等低コストのものを用いることが可能となる。
冷媒の流量は温度によらず一定とされてもよいが、温度低下とともに流量が増大するように構成されてもよい。前記したように、液膜LFが凝固膜SFに転換する過程では凝固がゆっくり進行するのが望ましいのに対し、完全に凝固した後には急冷されても問題がないからである。このようにして冷媒の冷却能力を高めてゆくことで、液膜全体を確実に凝固させ、しかもその到達温度を低くすることができる。
このときの各部の温度変化は以下の通りである。基板Wの回転軸AXに近い中央部分の各点A1,A2,A3の概略の温度変化が図6(c)に示される。冷媒Fが供給開始される時刻t0においては、各点A1,A2,A3の温度は概ね室温RTとなっている。冷媒吐出部12から冷媒Fの吐出が開始されると、各点の温度も次第に低下する。このうち吐出直後の冷媒Fに触れる基板下面Wbの点A1は、冷媒Fの温度変化とほぼ同じ温度変化を示し、直ちに凝固点mp以下まで冷却される。
基板上面Waの点A2では、温度変化に少しの時間遅れがあり、時刻t1において凝固点mpに達する。この時刻t1における鉛直方向の温度勾配を示すのが図4(b)である。時刻t1を超過すると、液膜LFのうち基板上面Waに接する部分が凝固点mp以下まで冷却されて凝固が始まる。例えば時刻t2に対応する温度勾配を示すのが図4(c)または図4(d)である。
液膜LFの上部の点A3における温度変化はさらに大きな時間遅れを生じ、時刻t3において凝固点mpに到達する。このときの温度勾配を示すのが図4(e)であり、液膜LFの上面までが凝固点mp以下に冷やされて凝固する。
一方、基板Wの周縁部に近い点B1,B2,B3における概略の温度変化は図6(d)に示される。冷媒Fの温度は基板Wの周縁部まで到達する過程で上昇しているため、その冷却能力は大きく低下している。このため、点B1,B2,B3における温度変化はより大きな時間遅れを示し、また到達温度も高い。冷媒Fの温度を段階的に低下させることで、基板Wの周縁部の各点B1,B2,B3の温度も次第に低下する。この場合も、液膜LFの温度は基板上面Waに接する側で最も低く、液膜上面で最も高くなるような温度勾配を有する。このため、基板上面Waに接する部分から液膜LFの凝固が始まり、冷媒温度の低下に伴って凝固膜SFの厚みが増加して最終的に上面まで凝固する。
この場合も、基板下面Wbの点B1の温度が凝固点mpに到達する時刻t4における温度勾配に対応するのが図4(b)、基板上面Waの点B2の温度が凝固点mpに到達する時刻t5における温度勾配に対応するのが図4(c)または図4(d)、液膜LF上面の点B3の温度が凝固点mpに到達する時刻t6における温度勾配に対応するのが図4(e)である。液膜の上面まで凝固した後は、冷媒のさらなる温度低下は凝固膜の到達温度を下げることに寄与する。
このように、基板W上に形成された液膜LFの各位置では、基板W側から順次冷却されることで、基板Wに接する部分から上方に向けて凝固が進行する。これにより、基板上面Waの各位置においては、液膜の凝固過程で汚染物質等が基板Wから引き離され、凝固膜SF中に取り込まれる。汚染物質等を取り込んだ凝固膜SFを融解液により除去することで、処理後の基板上面Waを汚染物質等の付着のない清浄な状態にすることができる。すなわち、上記処理は、基板上面Waを被処理面とする洗浄処理となっている。
液膜LFが凝固する過程で、基板Wの被処理面Waに付着していたパーティクルのみならず、液膜中に含まれている不純物等についても基板Wから引き離した状態で凝固膜中に取り込むことができるので、液膜を構成する物質に求められる純度のレベルを比較的低くすることが可能となる。これにより、液膜を形成する物質として利用可能な材料の自由度が高くなり、処理コストの低減を図ることが可能となる。
ここで、基板下面Wbに供給される冷媒の温度T1の好ましい範囲について説明する。前記したように、温度T1は定性的には、液膜LFの凝固をゆっくりと進行させるため、その凝固点mpに対し「僅かに」低い温度であることが好ましい。その好ましい具体的な温度範囲については、次のように考えることができる。
図7は冷媒の温度と径方向における液膜の温度分布との関係を示す図である。図7(a)に示すように、液膜LFの凝固点mpより僅かに低い温度T1の冷媒Fが、流量F1で十分に長い時間継続的に基板Wに供給されている定常状態を考える。定常状態は、冷媒Fにより供給される冷熱エネルギーと基板W、液膜LFおよび周囲雰囲気によって奪われる冷熱エネルギーとが平衡した状態であるということができる。記号F(T1,F1)は、温度T1、流量F1の冷媒Fを意味するものとする。
この場合、下面側で冷媒Fが直接供給される基板W中央部では、液膜LFは冷媒Fの温度T1に近い温度まで冷却されている。一方、基板Wの径方向外側に向かうにつれて液膜LFの温度は高くなり(ここでは線形の温度分布として示す)、周縁部では凝固点mpよりも高温となっている。つまり、一定温度T1、一定流量F1の冷媒F(T1,F1)は、たとえ長時間をかけたとしても、液膜全体を凝固させることができない。
このような冷媒Fの温度T1の上限値は液膜LFの凝固点mpである。一方、下限値については以下のように考えることができる。図7(b)に示すように、ある温度Taおよび流量F1の冷媒F(Ta,F1)を継続的に基板Wに供給した定常状態において、基板Wの周縁部で液膜LFの温度がちょうど凝固点mpになったとする。このことは、流量F1の冷媒Fにおいては、その温度がTaより低ければ液膜全体を凝固させることができる一方、温度がTaより高ければ周縁部の液膜を凝固させることができないということを意味する。この意味で、温度Taは、流量F1のときに液膜LF全体を凝固させることのできる冷媒Fの温度の最高値であるということができる。
したがって、第2供給部52および冷媒吐出部12がその構成上合理的に基板Wに供給可能な流量F1を考えたとき、基板W周縁部の液膜LFを凝固点mpまで冷却することのできる冷媒温度の最高値Taが、冷媒の温度T1の取り得る下限値であるといえる。なお、このように温度T1の下限値を考えることができるが、前記した通り、冷媒温度T1は凝固点mpに近い温度であることがより好ましい。本願発明者の知見では、凝固点mpと冷媒温度T1との温度差は摂氏5度またはそれ以下であるときに、特に良好な洗浄結果を得られることが確認されている。この程度の温度差であれば基板Wの中央部においても液膜LFの凝固がゆっくりと進行し、偏析現象による汚染物質等の排斥効果が期待できる。
凝固点mpと冷媒温度T1との温度差が小さいと凝固の進行が遅くなり、汚染物質等の排斥効果は高くなるが、液膜の冷却に要する時間は長くなる。求められる基板の清浄度および許容される処理時間に応じて、例えば予備実験の結果に基づき、温度T1を上記範囲で適宜設定すればよい。
一方で、冷媒F(T1,F1)の供給を継続しても液膜全体を凝固させることはできないから、順次その温度を低下させてゆくことが必要となる。液膜全体を凝固させるためには、最終的な冷媒Fの到達温度、つまり図6(a)に示す温度T4を、Taよりも低い温度とすればよい。こうすることで、基板Wの全面において汚染物質等の除去効果を得ることができる。そして、液膜全体の凝固後もさらに冷却し凝固膜の到達温度を下げるようにすれば、汚染物質等の除去効果をさらに高めることが可能である。この意味で、温度T2あるいは温度T3が温度Taと同程度になるようにしてもよい。こうすると温度T4は温度Taよりも十分に低い温度となる。
以上説明したように、本実施形態においては、基板Wが本発明の「基板」に相当しており、その上面Waが本発明の「被処理面」に相当する。また、上記実施形態の基板処理装置1では、第1供給部51および処理液吐出部30が一体として本発明の「液膜形成部」として機能している。また、第2供給部52および冷媒吐出部12が一体として本発明の「冷媒供給部」として機能している。また、第3供給部53および処理液吐出部40が一体として本発明の「除去液供給部」として機能している。
そして、チャンバ70および制御ユニット80がそれぞれ本発明の「処理チャンバ」および「制御部」として機能している。また、上記実施形態においては、温度T1、温度Ta、流量F1が、それぞれ本発明の「第1温度」、「第2温度」、「第1流量」に相当している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、冷媒Fの温度が段階的に低下するような温度変化プロファイルとなっているが、冷媒温度の変化態様はこれに限定されず、例えば以下のようであってもよい。
図8は冷媒の温度変化プロファイルの変形例を示す図である。図8(a)に示す変形例では、液膜の凝固点mpより少し低い温度T1の冷媒が一定時間供給された後、冷媒の温度がゆっくりと単調に低下する温度変化プロファイルとなっている。本発明の技術思想では、液膜全体が凝固するまでは液膜を基板側からゆっくり冷却することが重要である。この目的が達成される限りにおいて、このように単調に低下する温度変化プロファイルであっても構わない。また上記実施形態では液膜全体が凝固した後も凝固膜をさらに冷却すべく冷媒の温度を追加的に低下させているが、単に液膜を凝固させるという目的においてはこの追加的な冷却は必須ではない。
また、図8(b)に占める変形例では、最初に液膜の凝固点mpよりも高い温度T0のDIWが冷媒吐出部12から吐出された後、冷媒温度がT1に低下するようなプロファイルとなっている。温度T0のDIWは液膜を凝固させる能力を有しておらず「冷媒」として機能するものではない。しかしながら、本実施形態の処理に先立つ湿式処理によって基板Wが冷やされている場合もあり得る。そこで、冷媒供給の前にこのように凝固点mpより高温の液体を基板Wに供給することで、冷媒供給直前の基板Wの温度を安定させて液膜LFを確実に液状に保っておくことが可能となる。これにより、上記した汚染物質等の排斥効果をより確実なものとすることができる。冷媒の温度がT1に変更された後の温度変化プロファイルについては、図8(b)に実線および点線で示すように、上記した種々のプロファイルを採用することが可能である。
また例えば、上記実施形態では、常温DIWと冷却器で冷却された低温DIWとの混合比によって冷媒の温度が調節されているが、これに限定されない。例えば、冷却器の冷却能力を調節して、冷却器から出力される低温DIWの温度自体を変化させるようにしてもよい。また例えば、常温DIWとの混合によらず、DIWを互いに異なる温度に冷却する複数の冷却器から選択的に必要な温度の冷媒が出力される構成であってもよい。
また例えば、上記実施形態では、低コストで調達、生成が可能な冷媒として水(DIW)を用いることが想定されており、冷媒の最終的な温度が摂氏0度以上とされている。しかしながら、凝固点が0度より低い物質が冷媒として用いられてもよく、この場合は当然に冷媒の最終到達温度は0度より低くても構わない。また、水を主体とする冷媒についてもDIWである必要は必ずしもなく、より純度の低い水、あるいは水に他の薬剤を添加したものであってもよい。
また例えば、上記実施形態では、凝固膜に対し凝固点よりも高温の融解液を供給して液膜の除去を行っている。しかしながら、これに限定されず、例えば凝固膜を溶解する溶解液を供給し、凝固膜を溶解させて基板上面Waから除去してもよい。この場合、基板処理装置は、溶解液を基板Wに供給するための溶解液供給部を本発明の「除去液供給部」として備えることとなる。なお、溶解液としては水(DIW)、SC1液(水酸化アンモニウムNH4OHと過酸化水素H2O2とを含む混合液)などの公知の洗浄液、IPA(イソプロピルアルコール)などのアルコール、およびHFE(ハイドロフルオロエーテル)などのフッ素系溶剤を用いることができる。
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る基板処理方法は、例えば、冷媒の温度を最終的に第2温度より低い温度まで低下させるように構成されてもよい。第2温度は第1流量で基板に供給されることで液膜全体を凝固させることのできる冷媒の最高温度である。したがって、冷媒の温度を最終的に第2温度より低温にまで低下させれば、液膜全体を確実に凝固させることが可能である。
また例えば、冷媒は水を主成分とする液体であってもよい。液膜が摂氏0度以上の凝固点を有する物質により形成される場合、これを冷却する冷媒として水を主成分とするものを用いることで、冷媒のコストを低減することができる。この場合、冷媒の最終到達温度が摂氏0度以上であってもよい。こうすることで、単体の水を冷媒として用いることができ、さらに処理コストを引き下げることができる。
また例えば、第1温度と凝固点との差が摂氏5度以内であってもよい。冷媒の温度と凝固点との差が大きいと液膜の急激な凝固が発生し、偏析による汚染物質等の排斥効果が損なわれてしまう。本願発明者の知見では、この温度差を摂氏5度以下とすることが有効である。
また、本発明に係る基板処理装置において、例えば、冷媒供給部は、常温の水を第2温度よりも低温に冷却する冷却器と、冷却器で冷却された水と常温の水とを混合し冷媒として出力する混合器とを有し、基板処理装置は、混合器を制御して出力される冷媒の温度を調節する制御部をさらに備えてもよい。このような構成によれば、水の混合比を変えることで種々の温度の冷媒を生成することが可能である。
この場合、制御部は、冷媒の温度を多段階に変更設定するものであってもよい。このような構成によれば、液膜中の各位置における凝固の進行をより適切に管理することが可能となる。