以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態に係る品質評価システムは、複数の工程を経て完成した良品(製品)についての、各工程でのセンサデータが良品となる値の範囲を算出して、第1評価モデルを作成する。さらに、第1評価モデルに基づいて、各工程での製品評価に使用する第2評価モデルを作成する。これにより、製品の完成前に、各工程において事前に製品を評価することができる。したがって、不良の発生原因となっている工程を早期に検知して対処することができ、生産効率を改善することができる。
以下の説明では、主に、検査段階と作業工程とが一対一で対応している場合を例に挙げて説明するが、これに限らず、検査工程と作業工程とが多対一、あるいは多対多で対応する場合にも本実施形態は適用可能である。作業工程では、例えば、切断、折り曲げ、溶接、穴開け、塗装等の機械的作業と、加硫、成型、蒸留、混合等の化学的作業と、乾燥、加熱、冷却等の物理的作業と、基板の筐体への実装、装置の制御盤への組み込み、基板または装置等へのケーブル接続等の組立作業と、半田付け、初期値の登録、補正、プログラムのインストール等の電気的作業のうち少なくともいずれか一つの作業が含まれる。
図1~図12を用いて第1実施例を説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されるものではない。当業者であれば、本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その構成を変更し得る。
図面等における各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするために記載されたものであり、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。したがって、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
以下では、段階評価機「11-1」「11-2」「11-N」のように、複数の同種構成について枝番を添えて表示する。特に区別しない場合は、段階評価機11のように添え字を省略する。
本実施例では、良品となった製品(生産品)に対して施された複数の工程処理に対して、良品となる値の範囲を計測することにより、完成品20が良品である場合の各センサ31の値の範囲を示す第1評価モデルを作成する。さらに、本実施例では、各工程21までに各センサ31で計測された複数のデータ軸を持つ次元に対して、写像データを工程毎に作成する。
本実施例では、工程毎に、その工程までに計測された複数の計測データ(センサデータとも呼ぶ)の組合せと第2評価モデルとを用いることにより、良品を生産するに必要な値の範囲内か否かを判定する。したがって、本実施例では、良品の完成品20に関して計測されたデータから、良品となるために各工程で必要とされるデータ範囲(第2評価モデルと許容範囲)を算出し、各工程21において製品を事前に評価することができる。
各工程21での事前評価には、後述のように、単独評価と組合せ評価とがある。単独評価は、対象の工程21に対応付けられたセンサ31のデータのみに基づく評価である。単独評価では、対象の工程に対応付けられたセンサ31のデータが所定の許容範囲に収まるか否かを判定する。組合せ評価は、対象の工程に至るまでの各工程に対応付けられた各センサ31のデータの組合せに基づく評価である。対象の工程までの各センサを所定のセンサと呼ぶことがある。組合せ評価では、所定のセンサのデータの組合せが第2評価モデル内に存在するか否か判定する。
本実施例では、各評価段階において計測されたデータを、それ以降の段階毎の評価機11およびモデル管理機10へ通知し、評価モデルの作成と計測データの評価とを実行する場合を説明する。
図1から図12を用いて、本実施例に係る品質評価システム1の構成と、品質評価システム1を構成する各コンポーネント10,11の動作とについて説明する。
図1は、品質評価システム1の構成を示す。品質評価システム1の対象とする生産ラインでは、材料4が複数の工程(第1工程21-1、第2工程21-2~第N工程21-N)を経て、完成品20が製作される。
各工程21には、センサ31がそれぞれ対応付けられている。すなわち、第1工程21-1には第1センサ31-1が、第2工程21-2には第2センサ31-2が、第N工程21-Nには第Nセンサ31-Nが、対応付けられている。完成品20の状態は、検査機30により最終検査される。
工程21-1にのみ対応するセンサは、センサ31-1である。工程21-2のみに対応するセンサは、センサ31-2である。工程21-Nにのみ対応するセンサは、センサ31-Nである。
これに対し、工程21-1までに対応するセンサは、センサ31-1だけである。工程21-1は最初の工程であり、それよりも前に工程は存在しないためである。工程21-2までに対応するセンサは、センサ31-1とセンサ31-2である。工程21-3(不図示)までに対応するセンサは、センサ31-1とセンサ31-2とセンサ31-3(不図示)である。工程21-Nまでに対応するセンサは、センサ31-1,31-2,...,31-Nである。
以下の説明において「工程まで」とは、最初の工程から対象の工程までの各工程(対象の工程を含む)の意味である。例えば、「第2工程21-2までの工程」とは、第1工程21-1と第2工程21-2とを意味する。
センサ31としては、例えば、温度センサ、圧力センサ、流量センサ、電流センサ、電圧センサ、周波数センサ、カラーセンサ、厚みセンサ、磁気センサ、導通センサ、画像処理センサ等がある。
品質評価システム1は、例えば、一つの評価モデル管理機10と、複数の段階評価機11とを備える。品質評価システム1は、一つの計算機から構成されてもよいし、複数の計算機を連携させることにより構成されてもよい。すなわち、評価モデル管理機10、各段階評価機11のそれぞれを別々の計算機から構成してもよいし、一つの計算機内に評価モデル管理機10の機能と各段階評価機11の機能とを設けてもよい。
各工程の作業者または品質評価システム1を使用するユーザとの間で情報を交換するユーザインターフェース装置(不図示)は、品質評価システム1の全部または一部を構成する計算機とは別体の装置として設けることができる。なお、ユーザインターフェース装置は、ユーザ等へ情報を提供するだけの装置であってもよい。
評価モデル管理機10は、「評価モデル管理機能」の例である。評価モデル管理機10は、各工程までの処理に対して、完成品20が良品となるために必要な工程処理が実行されたかを評価するためのモデルを管理する。詳細は後述するが、評価モデル管理機10は、第1評価モデルとしての基本評価モデルMBを作成する。さらに、評価モデル管理機10は、基本評価モデルMBから各段階評価機11で使用するモデルMS1,MS2,...,MSNを第2評価モデルとして作成する。以下、特に区別しない場合、評価モデルMSと略記する。評価モデルMSは、検査段階毎に(あるいは工程毎に)、段階評価機11において使用される。評価モデル管理機10は、基本評価モデルMBから作成される各段階毎評価モデルMSを、各段階評価機11へ送信して設定させる。
段階評価機11は、「段階毎評価機能」の例である。段階評価機11は、各工程までの工程処理が完成品20を良品にするための必要条件を満たしているかを判定する。すなわち、段階評価機11は、対象の工程で処理を受けている製品(仕掛品)が将来良品として完成する可能性があるかを、完成前に評価する。完成前の評価を、例えば、事前判定、事前検査等と言い換えることもできる。
段階評価機11による評価は、単独評価と組合せ評価とを含む。単独評価では、対象の工程21に対応付けられたセンサ31のみのデータに基づいて、良品となる可能性を有するか否かを判定する。段階評価機11は、対象の工程21に対応するセンサ31のデータが所定の許容範囲に収まっている場合に、良品として完成する可能性が高いと判定し、それ以外の場合に、不良品になる可能性があると判定する。
組合せ評価では、最初の工程21-1から対象の工程を含む各工程までに対応付けられているセンサ31からの各データに基づいて、対象の工程で処理を受けている製品(仕掛品)が将来良品として完成する可能性があるか否かを、完成前に評価する。ここでは、最初の工程21-1から対象の工程を含む各工程までに対応付けられたセンサを所定のセンサと呼ぶ。組合せ評価では、所定のセンサのデータが、対象の工程に対応する段階評価機11に設定された段階毎評価モデルMS内に存在するか否かを判定する。
各工程21での具体的処理の一例をあげて説明する。以下に述べる材料取得処理、加熱処理等は説明のための例示である。
第1センサ31-1は、最初の工程である第1工程21-1において実行された材料取得処理に対して、その量を計測し、計測した量を評価モデル管理機10へ通知する。第1センサ31-1は、段階評価機11-1が工程状態を評価する場合には、計測した量を、第1段階評価機11-1と、後段工程に対応する各段階評価機11-2~11-Nへそれぞれ通知する。
第2センサ31-2は、第2工程21-2において実行された材料4への加熱について、その温度状態を計測し、評価モデル管理機10へ通知する。第2センサ31-2は、段階評価機11-2が工程状態を評価する場合には、計測した温度値を、第2段階評価機11-2と、後段工程に対応する各段階評価機11-3(不図示)~11-Nへそれぞれ通知する。
最終段の第Nセンサ31-Nは、第N工程21-Nにおいて実行された、不要部の切断処理について、その切断後の長さを計測し、評価モデル管理機10通知する。第Nセンサ31-Nは、最終段の段階評価機11-Nが工程状態を評価する場合には、計測した長さ値を、第N段階評価機11-Nへ通知する。
検査機30は、最終工程である第N工程21-Nを終了した完成品20について、ひび割れ等の異常がないかをレーザー光線等を用いて検査し、良品であるか否かを評価し、評価結果を評価モデル管理機10へ通知する。
評価モデル管理機10は、各センサ31-1~31-Nからの計測データ(センサデータ)と、検査機30からの検査結果データとから、基本評価モデルMBを作成する。基本評価モデルMBは、良品の生産に必要とされる各工程までの所定のセンサによる計測値データの範囲を示すモデルである。
評価モデル管理機10は、基本評価モデルMBのデータから、各段階評価機11-1~11-Nで使用される評価モデルMSを作成する。段階毎評価モデルMSとは、対象の工程(対象の検査段階)までに実行された各工程21における処理が、良品生産に必要とされる処理の範囲内か否かを各段階評価機11が評価するための評価モデルである。評価モデルMSは、対象の工程まで用の評価モデル、対象の検査段階まで用の評価モデル、段階毎評価モデルと呼ぶことができる。評価モデル管理機10は、作成した評価モデルMSを各段階評価機11へ通知し、設定させる。
具体的には、評価モデル管理機10は、基本評価モデルMBから第N段階まで用評価モデルMSNを作成し、その評価モデルMSNを第N段階評価機11-Nへ通知する。さらに、評価モデル管理機10は、第N段階まで用評価モデルMSNから、第N-1段階まで用評価モデルを作成し、図示しない第N段階-1評価機へ通知する。同様に、評価モデル管理機10は、第3段階まで用評価モデルMS3(不図示)から、第2段階まで用評価モデルMS2を作成し、第2段階評価機11-2へ通知する。
さらに、評価モデル管理機10は、第2段階まで用評価モデルMS2から、第1段階まで用評価モデルMS1を作成し、第1段階評価機11-1へ通知する。各段階評価機11-1~11-Nは、各工程までにセンサ31により計測された値を用いて、良品生産に必要な工程処理が各工程で実行されたか否かを判定し、良品生産に必要な工程処理が実行されていないと判定すると、アラートを提示する。提示されたアラートは、例えば評価モデル管理機10に接続されたユーザインターフェース装置を介して画面に表示される。
このように、本実施例の品質評価システム1は、各工程の終了後に、それ以前に実行された工程処理を含めて、仕掛中の製品の状態を評価する。これにより、品質評価システム1は、各検査段階(各工程)までの処理の組合せによる不良の発生を検出できる。さらに、品質評価システム1は、検査機30による最終検査を待たずに、不良品の発生原因となっている工程を特定して、迅速な対応をユーザへ促すことができる。
図2は、評価モデルを作成するシーケンス図である。評価モデル管理機10は、基本評価モデルMBおよび段階毎評価モデルMSの作成に際して、各センサ31および検査機30からのデータを取得する。以下、ステップを「S」と略記する場合がある。
上記の例では、第1センサ31-1は、第1工程21-1で実行された材料取得処理に対して、その量を計測し、計測した値を評価モデル管理機10へ通知する(S11)。第2センサ31-2は、第2工程21-2において実行された材料への加熱に対して、その温度状態を計測し、計測した値を評価モデル管理機10へ通知する(S12)。第Nセンサ31-Nは、第N工程21-Nにおいて実行された、不要部の切断処理に対して、切断後の長さを計測し、計測した値を評価モデル管理機10へ通知する(S13)。
検査機30は、第N工程を終了した完成品20に対して、ひび割れ等の異常がないか検査することにより、完成品20が良品であるか否かを評価し、その評価結果を評価モデル管理機10へ通知する(S14)。
以降、上述したステップS11~ステップS14のステップが繰り返し実行され、所定数(例えば100件)の良品を生産するために必要な計測データ取得が完了するまで、継続される。
やがて、第1センサ31-1による評価モデル管理機10への計測データの通知(S21)、第2センサ31-2による評価モデル管理機10への計測データの通知(S22)、第Nセンサ31-Nによる評価モデル管理機10への計測データの通知(S23)、および検査機30による評価モデル管理機10への検査結果の通知(S24)が行われると、評価モデル管理機10は、所定数の良品を生産するために必要な計測データを取得したことになる。
評価モデル管理機10は、各センサ31から受領した計測データと、検査機30から複数受領した検査結果データとから、良品の生産に必要とされる各工程までのセンサ31による計測値データの範囲を示す基本評価モデルMBを作成する(S25)。基本評価モデルMBは、例えば、マハラノビス距離を用いて作成してもよい。
図3は、評価モデル管理機10が各段階まで用評価モデルMSを作成して配布するシーケンス図である。評価モデル管理機10は、作成した基本評価モデルMBのデータから、各段階毎評価モデルMSを作成し、各段階評価機11-1~11-Nへ通知する。
評価モデル管理機10は、基本評価モデルMBのデータを、第N段階まで用評価モデルMSNとして設定する(S31)。さらに、評価モデル管理機10は、第N段階まで用評価モデルMSNのデータを、第N-1段階までの複数のセンサ31が計測するデータ種の次元へ写像することにより、第N-1段階まで用評価モデルを作成する(不図示)。
以下同様に、評価モデル管理機10は、第3段階まで用評価モデルMS3のデータを、第2段階までに計測される温度の次元と量の次元との2次元空間に対して写像することにより、第2段階まで用評価モデルMS2を作成する(S32)。モデルMS3は図中では省略している。
評価モデル管理機10は、第2段階まで用評価モデルMS2のデータを、第1段階までに計測される量の次元の1次元空間に対して写像することにより、第1段階まで用評価モデルMS1を作成する(S33)。
評価モデル管理機10は、第1段階まで用評価モデルMS1を作成すると、第N段階まで用評価モデルMSNのデータと第Nセンサの測定値の許容範囲データとを算出して、第N段階評価機11-Nへ通知する(S34)。第Nセンサの測定値の許容範囲データとは、N番目の工程に対応付けられたセンサ31-Nのデータが、仕掛中の製品が第N工程で期待される所定の品質を満たすことを示す範囲である。同様に、例えば、第2センサ31-2の測定値が第2センサ用の許容範囲に収まる場合、第2工程で仕掛中の製品は、第2工程で期待される品質を満たすと判定される。
評価モデル管理機10は、第2段階まで用評価モデルMS2のデータと第2センサ31-2の測定値の許容範囲データとを算出して、第2段階評価機11-2へ通知する(S35)。さらに、評価モデル管理機10は、第1段階まで用評価モデルMS1のデータを、第1段階評価機11-1へ通知する(S36)。
図4は、各工程(各段階)で行われる評価のシーケンス図である。本実施例では、各工程21において、仕掛中の製品の品質が管理される。図中では、構成の名称を簡略化して記載する場合がある。例えば、図4では、段階評価機を「評価」と略している。
第1センサ31-1は、計測した材料の量の値を、第1段階評価機11-1および後段工程の段階評価機である第2段階評価機11-2~第N段階評価機11-Nへそれぞれ通知する(S41~S43)。
最初の評価機である第1段階評価機11-1では、第1センサ31-1にて計測されたデータ(単独データ)のみについて評価される(S44)。対象の工程21に対応するセンサ31のみのデータ(単独データ)に基づいて行われる評価のことを、本明細書では「単独評価」と呼ぶ。第1段階評価機11-1は、第1センサ31-1のデータが、評価モデル管理機10から設定された第1許容範囲内に存在するか判定する(S44)。
ここで、第1許容範囲とは、第1センサ31-1の測定値の許容範囲データであり、仕掛中の製品が良品の完成品20になるために必要とされる値(所定の品質)を有することを示す。同様に、第N許容範囲とは、第N番目のセンサ31-Nの単独データを評価するために用いられる許容範囲データである。
第1段階評価機11-1は、第1センサ31-1のデータ第1許容範囲内に存在するか評価する(S44)。第1段階評価機11-1は、第1センサ31-1のデータが第1許容範囲から外れていると判定すると、アラートを出力することができる(S44)。アラートは、例えば、ディスプレイへの表示、警告音、警告メッセージの読み上げ、電子メールまたはチャット等への出力として、ユーザに与えられる。アラートを受けたユーザは、例えば生産ラインを一時停止させたり、問題の生じた工程を確認したりといった対策を実施することができる。
第2センサ31-1は、計測した温度値を、第2段階評価機11-2および後段工程の第N段階評価機11-Nまでの各評価機へ通知する(S45,S46)。第2段階評価機11-2は、単独評価(S47)と組合せ評価(S48)を実施する。
最初に第2段階評価機11-2は、単独評価を実行する。単独評価では、第2センサ31-2にて計測された単独データの値が、良品生産に必要な値の範囲内であるか否か、すなわち第2許容範囲内であるかが判定される(S47)。第2段階評価機11-2は、計測された単独データ(温度値データ)が第2許容範囲外であると判定すると、アラートを出力する(S47)。
第2段階評価機11-2は、単独データが第2許容範囲内に存在すると判定すると、組合せ評価を実行する。組合せ評価では、第1段階の工程21-1から第2段階の工程21-2を含む各工程に対応するセンサ31-1,31-2のデータの組合せが、第2評価モデルMS2内に存在するか判定する(S48)。上述の通り、対象の工程以前の各センサのデータを所定のセンサのデータと呼ぶ。第2段階評価機11-2は、所定のセンサ31-1,31-2のデータの組合せが第2評価モデルMS2の範囲外であると判定すると、アラートを出力する。
第Nセンサ31-Nは、計測した長さ値を、第N段階評価機11-Nへ通知する(S49)。第N段階評価機11-Nも、単独評価(S50)と組合せ評価(S51)とを実行する。
第N段階評価機11-Nは、第Nセンサ31-Nで計測した単独データの値が、第N許容範囲内であるか否かを評価する(S50)。第N段階評価機11-Nは、単独データ(温度値データ)が第N許容範囲外である場合、アラートを出力する(S50)。
第N段階評価機11-Nは、単独データが第N許容範囲内である場合、組合せ評価を実施する。第N段階評価機11-Nは、第1工程21-1から第N工21-Nを含む各工程のセンサ(所定のセンサ)のデータの組合せが第N評価モデルに含まれているか否かを判定する(S51)。第N段階評価機11-Nは、所定のセンサのデータの組合せが第N評価モデルの範囲外であると判定すると、アラートを出力する(S51)。
検査機30は、完成品20の状態をレーザー等を用いて計測し(S52)、計測データに基づいて、完成品20の状態を評価する(S53)。検査機30は、最終検査の結果として、完成品20が良品であるか否かを出力する(S53)。最終検査の結果は、図2で述べたように、評価モデル管理機10に通知される(図2のS14,S24)。
図5は、第3段階で使用する評価モデルを示す説明図である。本実施例では、工程と検査段階とが一対一で対応している。したがって、工程21が一つ進むにつれて、センサ31のデータ種類も一つ増加する。3つめの工程21-3では、その第3工程21-3で処理中の製品には、累計で3つのセンサ31-1,31-2,31-3が関与していることになる。各センサのデータを一つの軸と見立てると、3つのセンサが関与する第3工程21-3に対応する評価モデルMS3は、図5に示すように3つの次元を持つ。
本実施例では、例えば、x軸に示す第1センサ31-1にて材料4の量の値を計測し、続いてy軸に示す第2センサ31-2にて温度値を計測し、次にz軸に示す第3センサ31-3にて長さ値を計測する。
第3段階まで用評価モデルMS3は、所定数(例えば100個)の良品を生産した場合に計測された、量の値(x)、温度の値(y)、長さの値(z)の3次元データの範囲として表現することができる。例えば、第3段階まで用モデルMS3は、下記の式(1)のように表現することができる。
(x-3)^2 + (y-2)^2 + (z-4)^2 ≦1 ・・・ 式(1)
第3段階における単独評価では、第3段階の単独データであるz軸のデータが所定の許容範囲(値za~値zb)に収まる場合に、仕掛中の製品は第3段階で要求される所定の品質を有すると評価される。第3段階まで用評価モデルMS3を用いる組合せ評価では、x軸の第1センサ31-1のデータ値(x)と、y軸の第2センサ31-2のデータ値(y)と、さらに、z軸の第3センサ31-3のデータ値(z)とが、式(1)を満たす場合に、仕掛中の製品が良品として完成しうる品質を有すると評価される。他の段階についても同様である。
そして、第3工程に到達した製品が最終的に良品として完成するためには、少なくとも、第3段階までに計測された各センサ31-1,31-2,31-3で計測された値の組合せが、第3段階まで用評価モデルMS3の範囲内である必要がある。
図6は、第2段階で使用する評価モデルMS2を示す説明図である。第2段階(第2工程21-2)に到達した仕掛中の製品は、第1工程21-1の第1センサ31-1により、その量の値が計測されており、第2工程21-2の第2センサ31-2により、その温度の値が計測されている。
第2段階まで用評価モデルMS2は、所定数(例えば100)の良品を生産したときに、計測された量の値(x)と温度の値(y)との2次元データの範囲を示す。すなわち、第2段階評価機11-2の使用する評価モデルMS2は、第1センサ31-1のデータ軸であるx軸と、第2センサ31-2のデータ軸であるy軸とを備える2次元のデータ範囲として定義することができる。
評価モデルMS2は、例えば下記の式(2)のように表現することができる。第1センサ31-1の値として許容される領域、および第2センサ31-2の値として許容される領域は、上述の式(1)をxy平面へ写像(平行投影)した領域に該当する。
(x-3)^2 + (y-2)^2 ≦1 ・・・ 式(2)
第2段階での単独評価では、y軸の第2センサ31-2のデータが値yaから値ybの範囲内にある場合に、仕掛中の製品は第2段階で要求される所定の品質を有すると評価される。第2段階まで用評価モデルMS2を用いる組合せ評価では、x軸の第1センサ31-1のデータ値(x)、かつ、y軸の第2センサ31-2のデータ値(y)とが、式(2)を満たす場合に、仕掛中の製品が良品として完成しうる品質を有すると評価される。
図7は、第1段階で使用する評価モデルMS1を示す説明図である。第1段階(第1工程21-1)では、第1センサ31-1により、材料4の量の値が計測される。
第1段階まで用評価モデルMS1は、所定数(例えば100)の良品を生産したときに、計測された量の値の1次元データの範囲として定義することができる。例えば、第1段階まで用モデルMS1は、下記の式(3)のように表現することができる。第1センサ31-1の値として許容される領域は、式(2)をx軸へ写像(平行投影)した領域が該当する。
2≦x≦4 ・・・ 式(3)
第1段階まで用評価モデルMS1では、x軸の第1センサ31-1のデータが値xaから値xbの範囲内にある場合に、仕掛中の製品は第1段階で要求される所定の品質を有すると評価される。
図8は、評価モデルの管理を示すフローチャートである。図8に示す処理は、所定のタイミングで実行させることができる。所定のタイミングとしては、例えば、生産対象の製品が変更される場合、工場の始業時、工程の全部または一部を変更したり入れ替えたりした場合等がある。
評価モデル管理機10は、図21で後述する評価モデル管理プログラムP101を開始させると、所定数の良品を生産するために必要なセンサデータ(センサで計測されたデータ)が蓄積されたかを判定する(S101)。所定数の良品を生産するために必要なセンサデータを、「所定数の良品データ」と呼ぶ場合がある。
評価モデル管理機10は、所定数の良品データが蓄積されるまでステップS101を周期的に実行し、待機する(S101:NO)。評価モデル管理機10は、所定数の良品データが蓄積されたと判定すると(S101:YES)、各センサ31から取得された複数の計測データと、検査機30から取得された複数の検査結果データとに基づいて、良品の生産に必要とされる、各工程までの各センサのデータの範囲を示す基本評価モデルMBを作成する(S102)。
評価モデル管理機10は、完成品用の基本評価モデルMBのデータを、第N段階まで用評価モデルMSNとして設定する(S103)。
さらに、評価モデル管理機10は、第N段階まで用評価モデルデータMSNを、第N-1段階までの各センサが計測するデータ種の次元へ写像することにより、第N-1段階まで用評価モデルを作成する(S104)。
評価モデル管理機10は、各段階で使用される評価モデルを全て作成したか判定する(S105)。評価モデル管理機10は、未作成の評価モデルがある場合(S105:NO)、最新の評価モデルに対応する段階からさらに一つ前の段階で使用する評価モデルを作成する(S104)。
評価モデル管理機10は、ステップS104とステップS105とを繰り返し実行することにより、第N-1段階まで用評価モデルから第1段階まで用評価モデルMS1までをそれぞれ作成する。作成された各評価モデルのデータは、図21で後述する評価モデルデータD102としてメモリへ記憶される(S105)。
評価モデル管理機10は、第1段階まで用評価モデルを作成すると、各段階で使用される評価モデルのデータと、各段階のセンサ31で計測される単独データの良否を判定するための所定の許容範囲とを設定し(S106)、設定された評価モデルのデータおよび許容範囲のデータを各段階評価機11へそれぞれ通知する(S107)。第1段階評価機11-1では、第1センサ31-1のデータのみを用いるため、1次元の評価モデルMS1の範囲と、第1センサ31-1のデータが許容される範囲のデータとは一致する。したがって、第1段階評価機11-1には、第1段階まで用評価モデルMS1だけが評価モデル管理機10から通知される。評価モデル管理機10は、ステップS107が終了すると、本処理を終了させる。
図9は、第1段階での評価方法を示すフローチャートである。第1段階評価機11-1は、図22で後述する段階評価プログラムP111の一つである第1段階評価プログラムを開始させると、評価モデル管理機10から第1段階まで用評価モデルMS1を受信したか判定する(S111)。
第1段階評価機11-1は、評価モデルMS1を受信していないと判定すると(S111:NO)、評価モデル管理機10から評価モデルMS1を受信するまで待機する。
第1段階評価機11-1は、評価モデルMS1を受信したと判定すると(S111:YES)、第1センサ31-1からのセンサデータ(計測値のデータ)を受信したか判定する(S112)。第1段階評価機11-1は、第1センサ31-1のデータを受信するまで待機する(S112:NO)。
第1段階評価機11-1は、第1センサ31-1のデータを受信したと判定すると(S112:YES)、受信された第1センサ31-1のデータ(計測値)が、評価モデルMS1の範囲内であるか判定する(S113)。
第1段階評価機11-1は、第1センサ31-1で計測された値が、評価モデルMS1の範囲内であると判定すると(S113:YES)、ステップS112へ戻り、第1センサ31-1からの新たなデータを待つ。
第1段階評価機11-1は、第1センサ31-1で計測された値が、評価モデルMS1の範囲外であると判定すると(S113:NO)、第1センサ31-1のデータが評価モデルMS1の範囲外となったことを示すアラートを出力する(S114)。
このように、第1工程21-1は、最初の工程であり、それよりも前に他の工程は存在しないため、ステップ113による単独評価のみが実行される。第2工程から先の各工程(21-2~21-N)では、対象工程に至るまでの前工程でも製品が処理されるため、単独評価だけでなく組合せ評価も行われる。第2段階評価機11-2から第N段階評価機11-Nまでの各段階評価機11による評価処理は、使用する評価モデルおよび使用するセンサが異なるだけであり、基本的な動作は共通する。そこで、第N段階評価機11-Nを代表として説明する。
図10は、第N段階での評価方法を示すフローチャートである。第2段階以降の各段階評価機11では、図10に示すような評価処理が実行される。すなわち、図10に示す処理は、段階評価機11での評価処理であると考えることもできる。ただし、第1段階評価機11-1は、図10中の組合せ評価に関するステップは実行しない。
第N段階評価機11-Nは、段階評価プログラムP111の一つである第N段階評価プログラムを開始させると、第N段階まで用評価モデルMSNのデータと第Nセンサ31-Nの許容範囲のデータとを評価モデル管理機10から受信したかを判定する(S121)。第N段階評価機11-Nは、評価モデルMSNおよび許容範囲のデータを評価モデル管理機10から受信するまで待機する(S121:NO)。
第N段階評価機11-Nは、評価モデルMSNおよび許容範囲のデータを受信したと判定すると(S121:YES)、第Nセンサ31-Nからデータを受信したか判定する(S122)。第N段階評価機11-Nは、第Nセンサ31-Nからデータを受信していないと判定すると(S122:NO)、そのデータを受信するまで待機する。
第N段階評価機11-Nは、第Nセンサ31-Nからデータを受信したと判定すると(S122:YES)、第Nセンサ31-Nの単独データの値が、良品生産に必要な所定の品質を示す許容範囲内にあるかを判定する(S123)。
第N段階評価機11-Nは、第Nセンサ31-Nの単独データの値が、良品生産に必要な値の範囲外であると判定すると(S123:NO)、単独データが許容範囲外であることを示すアラートを出力する(S124)。
第N段階評価機11-Nは、第Nセンサ31-Nの単独データが、所定の許容範囲内にあると判定すると(S123:YES)、第Nセンサ31-Nまでに計測された各センサ31-1~31-Nのデータの組合せが、第N段階まで用評価モデルMSNの範囲内であるか判定する(S125)。第N段階評価機11-Nは、所定のセンサ31-1~31-Nのデータの組合せが評価モデルMSNの範囲内にあると判定すると(S125:YES)、ステップS122へ戻る。
一方、第N段階評価機11-Nは、所定のセンサ31-1~31-Nにより計測された各データの組合が、評価モデルMSNの範囲外あると判定すると(S125:NO)、アラートを出力する(S126)。ステップS126で出力されるアラートは、所定のセンサのデータの組合せが評価モデルMSNの範囲外となったことを示す。
図11は、各センサ31からのデータ(計測値)を管理するテーブルT1を示す。この管理テーブルT1は、評価モデルを作成する場合に使用される。ここでは、理解の容易のために、3つの工程21-1~21-3からなる生産ラインを例に挙げて説明する。以下の説明では、材料の識別子を用いることにより、テーブルの各行を識別する。
計測値管理テーブルT1は、例えば、材料4の識別子C11と、第1センサ31-1により計測されたデータC12と、第2センサ31-2により計測されたデータC13と、第3センサ31-3により計測されたデータC14と、検査機30により検査された評価結果のデータC15と、検査機30の検査により良品と判定された完成品20の識別子C16、とを備える。
第1行目(材料ID=MA1)は、第1センサ31-1のデータが値x1であり、第2センサ31-2のデータが値y1であり、第3センサ31-3のデータが値z1であり、最終検査の結果は良品(PASS)であり、完成品として識別子P1が付与されたことを示す。
同様に、第2行目(MA2)~第6行目(MA6)において、材料4に施された各工程処理に関して各センサ31-1~31-3が計測したデータの値と、検査機30による最終検査(最終評価)の結果と、良品の場合の完成品識別子とが管理される。
第7行目(MA7)は、第1センサ31-1のデータは値x7であり、第2センサ31-2のデータは値y7であり、第3センサ31-3のデータは値z7であり、検査機30の評価は不良品(FAIL)であり、完成品識別子は付与されていないことを示す。
第8行目(MA8)から最終行(MA103)についても、上記と同様である。最終行(MA103)では、完成品としての識別子P100が設定されている。識別子P100は、完成品20が所定数の一例としての100個製造されたことを示す。なお、図11の例では、完成品の識別子P100は、材料の識別子MA103に比べて3つ少ない。これは、3個の不良品が発生したことを意味する。
図12は、各センサ31のデータに対する、各段階評価機11および検査機30の評価を管理する計測値管理テーブルT2を示す。図12も図11と同様に、3つの工程からなる生産ラインを例に挙げて説明する。
計測値管理テーブルT2は、例えば、材料の識別子C21と、第1段階評価機11-1が保持する第1センサまでのデータ評価C22と、第2段階評価機11-2が保持する第2センサまでのデータ評価C23と、第3段階評価機11-3が保持する第3センサまでのデータ評価C24と、検査機30が保持する最終評価C25と、良品の場合の完成品識別子C26とを備える。以下、第1段階評価機による評価を第1評価、第2段階評価機による評価を第2評価、第3段階評価機による評価を第3評価、検査機による評価を最終評価と呼ぶことがある。
第1行目(材料識別子=MA101)の第1評価C22では、第1工程の処理の結果、第1センサのデータ値x101は、x軸の許容範囲(xa~xb)内にあり、良品(PASS)であると判定されていることが示されている(単独評価)。
第1行目(MA101)の第2評価C23では、第2工程の処理の結果、第2センサのデータ値y101は、y軸の許容範囲(ya~yb)内にあり、良品(PASS)であると判定されていることが示されている(単独評価)。さらに、第2評価では、値x101と値y101との組合せは、第2段階まで用評価モデルMS2の範囲内に存在しており、良品であると判定されていることが示されている(組合せ評価)。
同様に第1行目(MA101)の第3評価C24では、第3工程の処理の結果、第3センサのデータ値z101は、z軸の許容範囲(za~zb)内にあり、良品であると判定されていることが示されている(単独評価)。さらに、第3評価では、値x101と値y102と値z101との組合せは、第3段階まで用評価モデルMS3の範囲内に存在しており、良品であると判定されていることが示されている(組合せ評価)。
第1行目(MA101)の最終評価C25では、検査機による品質の最終評価も良品であることが示されている。その結果、第1行目の対象である製品には、完成品としての識別子P101が付与されている。
第2行目(MA102)の第1評価C22では、第1工程の処理の結果、第1センサのデータ値x102は、x軸の許容範囲(xa~xb)内にあり、良品であると判定されていることが示されている(単独評価)。
第2行目(MA102)の第2評価C23では、第2工程の処理の結果、第2センサのデータ値y102は、y軸の許容範囲(ya~yb)内にあり、良品であると判定されていることが示されている(単独評価)。さらに、第2評価では、値x102と値y102との組合せは、第2段階まで用評価モデルMS2の範囲内に存在しており、良品であると判定されていることが示されている(組合せ評価)。
第2行目(MA102)の第3評価C24では、第3工程の処理の結果、第3センサのデータ値z102は、z軸の許容範囲(za~zb)の外(FAIL)に存在すると判定されている。したがって、最終評価C25は、不良品(FAIL)となり、完成品としての識別子は付与されていない。
第3行目(MA103)の第1評価C22では、第1工程の処理の結果、第1センサのデータ値x103は、x軸の許容範囲(xa~xb)内にあり、良品であると判定されていることが示されている。
第3行目(MA103)の第2評価C23では、第2工程の処理の結果、第2センサのデータ値y103は、y軸の許容範囲(ya~yb)から外れていることが示されている(FAIL)。第2段階評価機での評価が不良品(FAIL)であるため、後段の第3工程は実施されていない。不良の可能性が高い仕掛中の製品に処理を加えても良品とはならないためである。第2工程の時点で不良品と評価されているため、最終評価C25も不良品となり、その不良品に完成品の識別子は与えられない。
第4行目(MA104)の第1評価C22では、第1センサのデータ値x104がx軸の許容範囲(xa~xb)の外にあることが示されている。したがって、後段の第2工程および第3工程は省略される。最終評価C25は不良品(FAIL)であり、完成品としての識別子は付与されない。
第5行目(MA105)の第1評価C22では、第1センサのデータ値x105がx軸の許容範囲にあると判定されている。
第5行目(MA105)の第2評価C23では、第2センサのデータ値y105もy軸の許容範囲にあると判定されている(単独評価)。値x105と値y105の組合せも、第2段階まで用評価モデルMS2内にあると判定されている(組合せ評価)。
第5行目(MA105)の第3評価C24では、第3センサのデータ値z105は、z軸の許容範囲に存在すると判定されている。しかし、値x105と値y105と値z105との組合せは、第3段階まで用評価モデルMS3の外部に存在すると判定され、仕掛中の製品は不良品の評価を受けている。したがって、最終評価C25も不良品となり、完成品の識別子は付与されない。
第6行目(MA106)の第1評価C22では、第1センサのデータ値x106は、x軸の許容範囲に存在すると判定されている。
第6行目(MA106)の第2評価C23では、第2センサのデータ値y106は、y軸の許容範囲に存在すると判定されている(単独評価)。しかし、値x106と値y106の組合せは、第2段階まで用評価モデルMS2の外部にあると判定され、仕掛中の製品は不良品であると評価されている(組合せ評価)。したがって、後段の第3工程は実施されない。最終評価C25は不良品となり、完成品の識別子は与えられない。
このように構成される本実施例によれば、全工程の終了後に最終評価を行うだけでなく、最終評価の蓄積から基本評価モデルMBを作成し、基本評価モデルMBから各段階での評価に使用する段階毎評価モデルMSを作成し、各段階では評価モデルMSを用いることにより仕掛中の製品を事前に評価する。
したがって、本実施例によれば、検査機30による最終評価を待たずに、それよりも前の工程で不良品の発生(あるいは不良品が発生する予兆)を早期に検出でき、速やかに対処することができる。この結果、本実施例によれば、不良の発生しやすい工程を早期に特定して改善したり、不良の発生しやすい工程を省略したりすることにより、製品の歩留まりを高めることができる。
さらに、本実施例では、第1工程(第1検査段階)の後の各工程(各検査段階)において、対象の工程(対象の検査段階)に対応するセンサのデータのみに基づく単独評価と、第1工程から対象の工程までに設けられた所定のセンサのデータに基づく組合せ評価とを実行する。これにより、対象の工程単独の評価と、対象の工程に至るまでの経歴が反映される評価との異なる複数の評価を行うことができ、検査精度を向上できる。
本実施例では、製品が良品であると判定される場合の各センサのデータの範囲を示す第1評価モデルと、第1評価モデルに基づく第2評価モデルとを作成し、検査段階毎に、当該検査段階までの所定のセンサのデータを第2評価モデルに基づいて評価することができる。また、所定数の良品が完成したときまでに蓄積された各センサのデータから基本評価モデルMBを作成するため、多品種の製品を切り替えながら生産する場合でも、効率的に品質を評価することができる。さらに、新たな製品にも速やかに対応することができ、生産効率を高めることができる。
図16~図22を用いて第3実施例を説明する。本実施例は、第1実施例の変形例であり、各段階での工程処理の品質を評価する評価モデルMSを随時更新する。
図16は、本実施例の品質評価システム1Bの構成図である。品質評価システム1Bは、第1実施例で述べた品質評価システム1と基本的な構成は同一であるが、その動作が異なる。そこで、品質評価システム1Bの動作について説明する。
第1実施例の品質評価システム1では、各段階評価機11において、各段階までの工程に対する処理品質を評価し、不良が発生した場合はアラートを出力した。これに対し、本実施例では、評価モデル管理機10が、各段階評価機11から品質評価の結果を受信し、アラートを集約して出力する。
さらに、第1実施例の品質評価システム1では、各工程までの評価を判定する運用段階において、評価モデル管理機10は、各センサ31および検査機30からデータを受信していなかった。これに対し、本実施例では、各工程までの評価を判定する運用段階においても、評価モデル管理機10は、各センサ31および検査機30からデータを受信するようになっている。
評価モデル管理機10は、所定数(例えば100件)の良品を生産する場合の、各センサ31で計測されたデータを取得すると、完成品用の基本評価モデルMBを作成し、その基本評価モデルMBから、良品生産に必要となる各段階までの評価モデルMSと当該段階におけるセンサ計測値の許容範囲とを作成する。
評価モデル管理機10は、作成した各段階までの評価モデルMSと当該段階のセンサ計測値の許容範囲とを、各段階評価機11へ通知する。各段階の評価機11は、受信した各段階までの評価モデルMSと当該段階のセンサ計測値の許容範囲とに基づいて、仕掛中の製品に対して実行された工程処理の品質を評価する。
図17は、評価モデルを作成するシーケンス図である。各工程において実行される処理に対する品質管理が開始されると、第1センサ31-1は、計測値を、第1段階評価機11-1および後段工程の各段階評価機11-2~11-Nと評価モデル管理機10とへそれぞれ通知する(S171~S174)。
第1段階評価機11-1は、第1センサ31-1にて計測した単独データの値が、良品生産に必要な許容範囲内であるか否かを評価する(S175)。第1段階評価機11-1は、ステップS175の評価結果を評価モデル管理機10へ通知する(S176)。評価モデル管理機10は、第1段階評価機11-1から受信した評価結果を、例えば、ユーザインターフェース装置の一つであるモニタ用ディスプレイ等に出力し、ユーザへ提示する(S177)。
第2センサ31-1は、計測値を、第2段階評価機11-2および後段工程の第N段階評価機11-Nまでの各評価機と評価モデル管理機10とにそれぞれ通知する(S178~S180)。
第2段階評価機11-2は、第2センサ31-2にて計測した単独データの値が、良品生産に必要な所定の許容範囲内であるか評価する(S181)。第2センサ31-2にて計測した単独データの値が所定の許容範囲内である場合、第2段階評価機11-2は、第1センサ31-1のデータと第2センサ31-2のデータとの組合せが評価モデルMS2の範囲内であるか否かを評価する(S182)。
第2段階評価機11-2は、ステップS181での評価結果とステップS182での評価結果とを、評価モデル管理機10へ通知する(S183)。評価モデル管理機10は、受信した評価結果をディスプレイ等に出力することにより、ユーザへ提示する(184)。
第Nセンサ31-Nは、計測値を第N段階評価機11-Nおよび評価モデル管理機10へ通知する(S185,S186)。第N段階評価機11-Nは、第Nセンサ31-Nにて計測された単独データの値が、良品生産に必要な所定の許容範囲内であるかを評価する(S187)。
第Nセンサ31-Nにて計測された単独データの値が所定の許容範囲内である場合、第1センサ31-1~第Nセンサ31-Nの各データの組合せが、第N段階まで用評価モデルMSNの範囲内であるか評価する(S188)。第N段階評価機11-Nは、ステップS187での評価結果とステップS188での評価結果とを評価モデル管理機10へ通知する(S189)。評価モデル管理機10は、受信した評価結果をディスプレイ等に出力することよりユーザへ提示する(S190)。
検査機30は、完成品の状態を計測する(S191)。検査機30は、計測したデータに基づき、完成品の状態を評価し、良品であるか否かを判定する(S192)。
検査機30は、ステップS192での評価結果を評価モデル管理機10へ通知する(S193)。評価モデル管理機10は、受信した評価結果をディスプレイ等を通じてユーザへ提供する(S194)。
評価モデル管理機10は、所定数(例えば100件)の良品の生産に際して計測された、各センサ31のデータを取得すると、完成品用基本評価モデルMBを作成し、その基本評価モデルから、良品生産に必要となる、各段階までの評価モデルMSと当該段階のセンサ計測値の許容範囲とを作成する。ま評価モデル管理機10は、作成した評価モデルMSおよび許容範囲を、各段階の評価機11へ通知する(S195)。
図18は、評価モデル管理機10での品質評価管理を示すフローチャートである。評価モデル管理機10は、品質評価プログラムP102(図21参照)を開始させた後、センサ31で計測されたデータを受信したかを判定する(S201)。評価モデル管理機10は、センサ31からデータを受信したと判定すると(S201:YES)、受信したデータをメモリ等に蓄積して保持し(S202)、ステップS203へ進む。
一方、評価モデル管理機10は、センサ31からデータを受信していないと判定すると(S201:NO)、ステップS202をスキップしてステップS203へ進む。
ステップS203では、評価モデル管理機10は、段階評価機11から評価を受信したかを判定する。評価モデル管理機10は、段階評価機11から評価を受信したと判定すると(S203:YES)、その評価結果をディスプレイに表示させることにより、ユーザへ提示する(S204)。その後、ステップS205へ進む。
評価モデル管理機10は、段階評価機11から評価を受信していないと判定すると(S203:NO)、ステップS204をスキップしてステップS205へ進む。
評価モデル管理機10は、検査機30から評価を受信したか判定する(S205)。評価モデル管理機10は、検査機30から評価を受信したと判定すると(S205:YES)、その評価結果をディスプレイに表示して、ユーザへ提供する(S206)。その後、ステップS207へ進む。
一方、評価モデル管理機10は、検査機30から評価を受信していないと判定すると(S205:NO)、ステップS206をスキップしてステップS207へ進む。
評価モデル管理機10は、良品の完成品が得られた場合の計測データ(良品用データ)が所定数蓄積されたかを判定する(S207)。
評価モデル管理機10は、所定数の良品用データがステップS202により蓄積されたと判定すると(S207:YES)、所定数の良品用データから基本評価モデルMBを作成する(S208)。さらに、評価モデル管理機10は、基本評価モデルMBから、各段階までの評価モデルMSを作成する(S208)。さらに、評価モデル管理機10は、各段階でのセンサ31による計測値の許容範囲を算出する(S208)。そして、評価モデル管理機10は、作成された各段階毎評価モデルMSと各センサの許容範囲とを、対応する各段階評価機11へ通知する(S208)。その後、ステップS201へ戻る。
一方、評価モデル管理機10は、所定数の良品用データが蓄積されていないと判定すると(S207:NO)、ステップS201へ戻る。
図19は、段階評価機での評価処理を示すフローチャートである。第1段階評価機では、単独評価のみ実施されるが、それ以降の各段階評価機11では、図19に示す処理が実行される。
図19に示す評価処理は、図10にて説明した評価処理の変形例に相当するため、図10の評価処理との相違を中心に述べる。図19に示すステップS211~S213,S215は、図10で述べたステップS121~S123,S125と同様であるため、説明を省略する。
段階評価機11は、その段階に対応するセンサ31の単独データが所定の許容範囲に入っていないと判定すると(S213:NO)、センサ31の計測したデータが許容値範囲外になったことを、評価モデル管理機10へ通知する(S214)。
段階評価機11は、センサ31までの所定の各センサで計測されたデータの組合せが、段階毎評価モデルMSの範囲に含まれていないと判定すると(S215:NO)、その旨を評価モデル管理機10へ通知する(S216)。
段階評価機11は、センサ31のデータが許容値範囲内となったことと、センサ31までの所定の各センサで計測されたデータの組合せが評価モデルMSの範囲内であることとを、評価モデル管理機10へ通知する(S217)。すなわち、段階評価機11は、単独評価が良品を示すことと、組合せ評価も良品を示すこととを評価モデル管理機10へ知らせる。
図20は、評価モデル管理機10のハードウェア構成を示す。評価モデル管理機10は、計算機を用いることにより実現することができる。
評価モデル管理機10は、例えば、プロセッサ部の例であるCPU101と、記憶部の例である主メモリ102およびストレージ103と、インタフェース部の例でありネットワークによりデータを送受信する入出力インタフェース104とを備え、これら各構成は、バス105を介して互いに接続される。
入出力インタフェース104には、記憶媒体106を接続することもできる。記憶媒体106には、図21で述べるコンピュータプログラム等をあらかじめ記憶させておくことができる。記憶媒体106に格納されたコンピュータプログラムを、計算機へインストールすることにより、その計算機を評価モデル管理機10として機能させてもよい。記憶媒体106に代えて、コンピュータプログラムを通信ネットワーク経由で計算機へインストールしてもよい。
評価モデル管理機10は、さらにユーザインターフェース装置(図中、UI装置)107に接続されてもよい。ユーザインターフェース装置107は、少なくとも情報出力装置を含む。ユーザインターフェース装置107は、情報入力装置を含んでもよい。
情報出力装置には、例えば、ディスプレイ、プリンタ、音声合成装置等がある。情報入力装置には、例えば、キーボード、タッチパネル、音声入力装置等がある。
CPU101は、評価モデル管理機10の各部を制御する。CPU101は、ストレージ103に格納されたコンピュータプログラムを主メモリ102へロードし、そのプログラムを実行することにより、評価モデル管理機10としての各種機能を実行する。
主メモリ102は、CPU101によって実行される評価モデル管理プログラムP101および品質評価管理プログラムP102と、これらプログラムP101,P102の実行に必要なワークデータ(評価モデル作成用計測値管理テーブルD101、評価モデルデータD102、計測データ評価用計測値管理テーブルD103)とを格納する。主メモリ102の記憶内容は図21で後述する。
ストレージ103には、例えば、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)などの大容量の記憶装置を用いることができる。なお、本実施例では、ストレージ103に、評価モデル管理プログラムP101および品質評価管理プログラムP102が事前に格納されている。
図21は、評価モデル管理機10の主メモリ102に保持されるプログラムおよびデータの例を示す説明図である。
主メモリ102には、第1フェーズとして、評価モデル管理プログラムP101がロードされて実行される。
評価モデル管理プログラムP101での処理作は、図8で述べた。評価モデル管理プログラムP101は、センサ等から受信したデータに基づいて、評価モデル作成用計測値管理データD101を作成し、そのデータD101から評価モデルデータD102を作成して保持する。評価モデル作成用計測値管理テーブルD101の具体例は、図11で述べた計測値管理テーブルT1が該当する。
主メモリ102には、第2フェーズとして、品質評価管理プログラムP102がロードされて、CPU101により実行される。品質評価管理プログラムP102の処理は、図18で述べた。品質評価管理プログラムP102は、センサ等から受信したデータおよび段階評価機からの評価データに基づいて、計測データ評価用計測値管理データD103を作成し、そのデータD103を基に評価モデルデータD102を作成更新する。
図12で説明した管理テーブルT2のデータが評価モデル管理機10で集約されて管理されることにより、計測データ評価用計測値管理テーブルD103が作成される。
図22は、段階評価機11の主メモリ112に保持されるデータの例を示す。各段階評価機11も、図20で述べたようなCPUおよび主メモリ等を有する計算機を用いて構成することができる。ここでは、主メモリ102に着目して説明する。
主メモリ102に段階評価プログラムP111がロードされ、段階評価機11のCPUによりプログラムP111が実行される。段階評価プログラムの処理は、図19で説明した通りである。段階評価プログラムP111は、センサ31にて計測されたデータを基に計測データD111を作成する。
主メモリ102には、各センサの許容範囲を示すデータと各段階の評価モデルMSとが評価モデル管理機10から受信されて記憶される。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、各段階評価機11での評価結果を評価モデル管理機10へ通知させる。本実施例の評価モデル管理機10は、各段階評価機11からの評価結果に基づいて、評価モデルMB,MSを更新し、各段階評価機11へ最新の評価モデルMSを配布できる。したがって、本実施例では、センサ31で計測したデータに変化が生じた場合でも、その変化に追従した評価モデルを作成し、段階評価機11での評価を随時改善することができる。