以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明し、トンネルの掘削現場を例として説明する。なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている場合、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Y軸方向は鉛直上方を示し、Z軸方向はトンネルの堀削方向(水平方向)とは反対方向を向く装薬孔40の軸方向を示している。
●[第1の実施の形態]
第1の実施の形態は、非火薬破砕剤でなく爆薬を用いた例であり、切羽面41は被破砕個所に相当し、増ダイ36B(及び親ダイ36A)は爆薬に相当し、無線起爆雷管10(10A、10B、10Z)は無線着火具に相当し、電子回路120は無線着火具の電子回路に相当している。また、起爆操作機50は無線式着火操作機に相当し、起爆操作機側送信アンテナ60は着火操作機側送信アンテナに相当し、起爆操作機側受信アンテナ65は着火操作機側受信アンテナに相当している。また無線起爆雷管10の起爆側受信アンテナ11(11A、11B、11C)は着火具側受信アンテナに相当し、起爆側送信アンテナ18は着火具側送信アンテナに相当している。
●[無線破砕システム1の全体構成(図1)と、装薬孔40への親ダイ36Aと増ダイ36Bの装填状態(図2)]
図1に示すように、無線破砕システム1は、無線起爆雷管が取り付けられて切羽面41(被爆破個所)に削孔された装薬孔40に装填される親ダイ36Aと増ダイ36B(図2参照)と、起爆操作機50と、中継装置51と、起爆操作機側送信アンテナ60と、起爆操作機側受信アンテナ65と、にて構成されている。
起爆操作機50は、装薬孔40から離れた遠隔位置に配置されて、発破母線62と中継装置51と補助母線61を介して起爆操作機側送信アンテナ60に電流を供給して、起爆操作機側送信アンテナ60の周囲に磁界を発生させるとともに制御信号(制御信号の詳細については後述する)を重畳している。従って、起爆操作機50は、起爆操作機側送信アンテナ60を介して無線方式で、無線起爆雷管10の電子回路120の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと制御信号を、無線起爆雷管10に受け渡す。無線起爆雷管10は、起爆側受信アンテナ11(図10参照)を介して無線方式で、電子回路120の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと制御信号を受け取る。なお、駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け渡すために起爆操作機側送信アンテナ60に流れる電流の周波数、および制御信号の周波数である操作周波数は、例えば100[kHz]以上500[kHz]以下に設定されている。なお、操作周波数を500[kHz]より高くすると、トンネル内で定在波が発生しやすいので、あまり好ましくない。
また起爆操作機50は、無線起爆雷管10の起爆側送信アンテナ18(図2参照)からの無線の応答信号を、起爆操作機側受信アンテナ65と起爆操作機側受信アンテナ用ケーブル66と中継装置51と発破母線62を介して受信する。なお、無線起爆雷管10からの応答信号の周波数である応答周波数は、例えば100[MHz]以上1[GHz]以下に設定されている。なお、応答周波数を1[GHz]より高く設定すると、岩盤を透過しにくいので、あまり好ましくない。なお、応答周波数は500[kHz]以上であり、応答信号の出力は、電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと制御信号の出力と比較して非常に小さく、定在波は発生するが、起爆操作機側受信アンテナを最適に設置できるため問題ない。
中継装置51は、同調回路を有しており、起爆操作機50と起爆操作機側送信アンテナ60との間、及び起爆操作機50と起爆操作機側受信アンテナ65との間、に設けられている。中継装置51は、発破母線62を介して起爆操作機50に接続され、補助母線61を介して起爆操作機側送信アンテナ60に接続され、起爆操作機側受信アンテナ用ケーブル66を介して起爆操作機側受信アンテナ65に接続されている。中継装置51は、起爆操作機50から無線起爆雷管10に向けて、電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと制御信号を受け渡す場合、起爆操作機50からの電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを含む制御信号を、補助母線61を介して起爆操作機側送信アンテナ60に出力する。また中継装置51は、無線起爆雷管10から起爆操作機50に向けて送信された応答信号を受け取る場合、無線起爆雷管10からの応答信号を、起爆操作機側受信アンテナ65と起爆操作機側受信アンテナ用ケーブル66を介して受け取って、起爆操作機50へと受け渡す。
起爆操作機側送信アンテナ60は、切羽面41(装薬孔)の近傍であって切羽あるいは切羽の外周に張り巡らされ、切羽面41から例えば0[m]~1[m]程度の距離L1(第1所定距離に相当)だけ離れた位置に、洞床42、洞側壁43、洞天井44に沿ってループ状に張られている。中継装置51から切羽面41までの距離L3は、例えば50[m]程度である。また中継装置51から起爆操作機50までの距離L4は、例えば100[m]~300[m]程度である。なお、起爆操作機側送信アンテナ60と補助母線61は、爆破する毎に新たに張られる。
起爆操作機側受信アンテナ65は、例えばポール状のアンテナであり、切羽面41(被爆破個所)から距離L2(第2所定距離に相当)程度離れた位置に配置されている。例えば距離L2は、0[m]~100[m]に設定されている。無線起爆雷管10から受信する応答信号の応答周波数は100[MHz]以上1[GHz]以下であるので、起爆操作機側送信アンテナ60とは大きく形状が異なり、ループ状に大きく巻回する必要は無い。なお、起爆操作機側受信アンテナ65と起爆操作機側受信アンテナ用ケーブル66は、被爆破個所からの距離L2が、ある程度離れていれば、爆破する毎に交換されるものではない。
爆薬である親ダイ36Aと増ダイ36Bは、図2に示すように、装薬孔40に装填されて爆薬ユニット20を構成する。装薬孔40は、例えば径D1が5[cm]程度、深さD2が2[m]程度に削孔された孔であるが、この数値に限定されるものではない。そして図2に示すように装薬孔40内には、親ダイ36Aと増ダイ36Bが装填され、粘土等の封止物22にて蓋がされている。なお、親ダイ36Aは、この場合において、装薬孔40に装填される際の先頭となる爆薬であって無線起爆雷管10が取り付けられた爆薬である。また増ダイ36Bは、この場合において、親ダイ36Aに対して適宜増減される爆薬である。
無線起爆雷管10は、図2に示すように、略筒状の起爆側受信アンテナ11と、制御部12と、起爆部14と、起爆側送信アンテナ18と、にて構成され、例えば制御部12と起爆部14は、起爆側受信アンテナ11内に収容されている。また、略筒状の起爆側受信アンテナ11の内径は、爆薬の外径よりも大きく形成されている。そして爆薬は、起爆側受信アンテナ11に挿通されて起爆部14が差し込まれ、起爆側受信アンテナ11と一体化されて親ダイ36Aを形成し、装薬孔40に装填されている。また、起爆側受信アンテナ11の外径は、装薬孔40の内径以下である。なお、図12の例に示すように、起爆部14のみを起爆側受信アンテナ11内に収容し、制御部12を起爆側受信アンテナ11の外に配置してもよい。
また表示装置72は、作業者が無線起爆雷管10を識別可能な個体情報(例えば起爆遅延時間や識別番号)が表示されたものであり、ケーブル71を介して無線起爆雷管10に取り付けられている。そしてケーブル71の長さは、親ダイ36Aが装薬孔40に装填された際に、表示装置72が装薬孔40の外に達することが可能な長さに設定されている。従って図2に示すように、表示装置72は、親ダイ36Aが装薬孔40に装填された場合、装薬孔40の外に配置される。なお、ケーブル71と表示装置72は省略してもよい。また本実施の形態の説明では、無線起爆雷管10にケーブル71を介して表示装置72を取り付けた例を説明したが、表示装置72を無線起爆雷管10に直接取り付けてもよい。表示装置を無線起爆雷管に直接取り付けた場合、作業者は、装薬孔に装填した後に表示装置を確認することはできないが、装薬孔に装填する際に表示装置を確認しながら装填することができる。
なお、以降の説明にて、起爆操作機側アンテナ(起爆操作機側送信アンテナ、起爆操作機側受信アンテナ)と無線起爆雷管用アンテナ(起爆側受信アンテナ、起爆側送信アンテナ)の位置関係の影響によらず、より効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと制御信号を受け取ることができるとともに、応答信号の応答周波数の選定の自由度が高く、応答信号を効率良く送信することが可能であり、かつ、より小型化が可能な無線起爆雷管10の詳細について説明する。
●[起爆操作機側送信アンテナ60の周囲に発生する磁界の方向(図3~図5)]
図3は、図1から起爆操作機側送信アンテナ60のみを抽出した図である。図3において、起爆操作機側送信アンテナ60に実線の矢印の方向に電流が流れると、一点鎖線に示すような磁界が発生する。無線起爆雷管10の起爆側受信アンテナ11は、この磁界の方向を軸とした場合、当該軸の回りに導電線が巻回されている場合に、最も効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる。
なお図4は、図3をIV方向から見た図である。巻回された起爆操作機側送信アンテナ60に対して、ほぼ中央に相当する切羽面41の装薬孔の位置を装薬位置P2bにて示す。そして起爆操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの左上方の位置を装薬位置P1aにて示し、起爆操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの右上方の位置を装薬位置P1cにて示し、起爆操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの上方の位置を装薬位置P1bにて示す。また、起爆操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの左方の位置を装薬位置P2aにて示し、起爆操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの右方の位置を装薬位置P2cにて示す。また、起爆操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの左下方の位置を装薬位置P3aにて示し、起爆操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの右下方の位置を装薬位置P3cにて示し、起爆操作機側送信アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの下方の位置を装薬位置P3bにて示す。
図5は、図4に示す切羽面41の装薬位置P1a~P1c、装薬位置P2a~P2c、装薬位置P3a~P3cの各位置における、磁界(起爆操作機側送信アンテナ60の周囲に発生する磁界)の方向と大きさの例を示す図である。起爆操作機側送信アンテナ60のほぼ中央に相当する装薬位置P2bでは、磁界の成分はZ軸方向のみであるので、Z軸回りに導電線を巻回したアンテナ(図8の例ではZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z))で効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取ることができる。しかし、起爆操作機側送信アンテナ60の縁部の近傍では、Z軸方向の磁界の大きさが減少し、X軸方向の磁界やY軸方向の磁界の大きさが増大する。例えば装薬位置P3cでは、Z軸方向の磁界の大きさは装薬位置P2bよりも小さく、X軸方向の磁界とY軸方向の磁界の大きさがZ軸方向の磁界の大きさよりも大きい。また装薬位置P1bでは、Z軸方向の磁界の大きさは装薬位置P2bよりも小さく、Y軸方向の磁界の大きさがZ軸方向の磁界の大きさよりも大きい。従って、起爆操作機側送信アンテナ60の縁部の位置となる、装薬位置P1a~P1c、装薬位置P2a、装薬位置P2c、装薬位置P3a~P3cでは、Z軸回りに導電線を巻回したアンテナ(図8の例ではZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z))のみでは、効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取るとともに無線の制御信号を効率良く受信することができるとは限らない。そこで、以下に説明する起爆側受信アンテナ11とすることで、切羽面41におけるいずれの位置に削孔された装薬孔に配置(装填)された起爆側受信アンテナであっても、より効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる起爆側受信アンテナ11を実現する。
また、無線起爆雷管10の起爆側受信アンテナ11を、無線起爆雷管10から起爆操作機に向けて送信する応答信号の送信用のアンテナと兼用させた場合、応答周波数が100[MHz]未満であると、応答信号の到達距離が短く(例えば数[m]程度)、あまり好ましくない。また応答周波数が1[GHz]よりも高いと、岩盤に吸収されやすく、あまり好ましくない。応答周波数を100[MHz]以上1[GHz]以下とすれば、岩盤に吸収されにくく、適度な到達距離の応答信号とすることができる。しかし、100[kHz]以上500[kHz]以下の操作周波数の制御信号(電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを含む)を効率良く受け取ることができる起爆側受信アンテナ11を、100[MHz]以上1[GHz]以下の応答周波数の応答信号を効率良く送信できる起爆側送信アンテナと兼用させようとした場合、アンテナのサイズが大型化して、図1及び図2に示す装薬孔40内に装填できない可能性がある。
本願の発明者は、以下の(1)~(3)をすべて満足する無線起爆雷管を実現するために、起爆側受信アンテナ11と起爆側送信アンテナ18を別々のアンテナとして有する無線起爆雷管(図6、図7)を発明した。
(1)起爆操作機から、100[kHz]以上500[kHz]以下の操作周波数の制御信号(電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを含む)を効率良く受け取ることができる。
(2)起爆操作機に、100[MHz]以上1[GHz]以下の応答周波数の応答信号を効率良く送信できる。
(3)径が5[cm]程度、深さ(奥行き)が2[m]程度の装薬孔に装填することが可能なサイズである。
●[無線起爆雷管10の構造(図6~図12)]
図6は、起爆側受信アンテナ11の外部へと制御部12を突出させ、突出させた位置、且つ起爆側受信アンテナ11に接しない位置、に起爆側送信アンテナ18が設けられた無線起爆雷管10の外観の例(その1)を示す斜視図である。図7は、起爆側受信アンテナ11の外部に突出させた位置、且つ起爆側受信アンテナ11に接しない位置、に起爆側送信アンテナ18が設けられた無線起爆雷管10Zの外観の例(その2)を示す斜視図である。また図8は、図6に示す無線起爆雷管10の分解斜視図を示している。応答周波数を100[MHz]以上1[GHz]以下に設定した場合、起爆側送信アンテナ18は、例えば電子回路基板の平面上にプリントした数[cm]程度のアンテナにて実現することが可能である(図20参照)。従って、起爆側送信アンテナ18を、図6の例に示す位置に設けることや、図7の例に示す位置に設けることが可能であり、起爆側送信アンテナ18を無線起爆雷管と一体化することが容易である。図6の例では、起爆側送信アンテナ18は、制御部12と導電線にて接続、あるいは制御部12と一体化(図28参照)されている。また図7の例では、起爆側送信アンテナ18は、制御部12と導電線111にて接続されている。
無線起爆雷管10は、起爆側受信アンテナ11と、起爆側送信アンテナ18と、起爆側受信アンテナ11及び起爆側送信アンテナ18に接続されて起爆部14に点火する制御部12と、制御部12に接続された起爆部14と、にて構成されている。なお、制御部12には、電子回路120が収容されている(図11、図12参照)。また図9は、図8における起爆側受信アンテナ11を図8中のIX方向から見た図である。起爆側受信アンテナ11は、例えば図13に示すように、筒状のベース筒体114(例えば筒状のアクリル材)と、シート状の磁性体(例えばフェライト)を肉薄筒状となるようにベース筒体114の外周に巻回した筒状磁性体115と、筒状磁性体115の外周に設けた筒状コイル(Z軸用筒状コイル119)及びシート状コイル117(X軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Y)と、が同軸に配置されて構成されている。そして起爆側受信アンテナ11は、Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yの3つが、Z軸の方向に沿って並べられている。なお、起爆側受信アンテナ11の形状は、肉薄円筒状であることが好ましいが、肉薄の筒状であればよく、軸方向(Z軸方向)に直交する断面が、円、楕円、多角形等、どのような形状であってもよい。また起爆側受信アンテナ11と制御部12とは導電線111にて接続されている。
また図10は、図6に示す無線起爆雷管10の断面図を示している。制御部12には起爆部14が固定され、制御部12は起爆側受信アンテナ11の一方の開口部に固定されている。また制御部12の一部は、起爆側受信アンテナ11から外部に突出しており、当該突出した位置、且つ起爆側受信アンテナ11に接しない位置、に起爆側送信アンテナ18が設けられている。そして起爆側受信アンテナ11と制御部12との空隙には、爆薬が充填されることが好ましい。これにより、装薬孔の最も奥まで爆薬を配置できるので、破砕効果の向上を図ることができる。そして起爆部14は他方の開口部の側に延びるように固定され、他方の開口部から爆薬が挿通されると、挿通された爆薬の先端に起爆部14が差し込まれ、無線起爆雷管付親ダイ用爆薬が形成される。
また図11は、起爆側受信アンテナ11内に、制御部12と起爆部14とを収容させた、図10とは異なる構成の無線起爆雷管10Aの断面図の例を示している。図11に示す例では、起爆側受信アンテナ11と筒状磁性体115とベース筒体114とが同軸に配置されて筒状に形成されている。そして一方の開口部に、起爆部14が固定された制御部12が、例えば接着剤161にて固定されている。また制御部12は、制御ケース162と電子回路120(図27中に符号120で示す部分の電子回路)と緩衝材163等にて構成されている。また図11の例では、起爆側送信アンテナ18は電子回路120と一体化されている(図28参照)。なお、制御部12の一部は、起爆側受信アンテナ11から外部に突出しており、当該突出した位置、且つ起爆側受信アンテナ11に接しない位置、に起爆側送信アンテナ18が設けられている。そして起爆部14は他方の開口部の側に延びるように固定され、他方の開口部から爆薬が挿通されると、挿通された爆薬の先端に起爆部14が差し込まれ、無線起爆雷管付親ダイ用爆薬が形成される。また、比較的強度が高く電波を通し易い樹脂等の材質で制御ケース162を形成して適切な緩衝材163を用いることで、隣接する装薬孔に配置された爆薬が起爆する際に発生した衝撃波が、電子回路120へ伝わる前に制御ケース162と緩衝材163で減衰され、電子回路120が損傷しないようにすることもできる。
また図12は、起爆側受信アンテナ11内に起爆部14を収容させ、制御部12を起爆側受信アンテナ11の外に配置した、図10及び図11とは異なる構成の無線起爆雷管10Bの断面図の例を示している。図12に示す例では、起爆側受信アンテナ11と筒状磁性体115とベース筒体114とが同軸に配置されたものを、さらに筒状の保護ケース165内に収容している。また保護ケース165は、起爆部14及び爆薬から制御部12を隔離する隔離壁166を有している。制御部12は、隔離壁166を挟んで起爆部14と反対の側であって起爆側受信アンテナ11内ではなく起爆側受信アンテナ11の外に配置されている。なお、制御部12は、保護ケース165の一方の開口部に嵌め込まれて固定されていてもよいし、保護ケース165の一方の開口部に接着剤等にて固定されていてもよい。また制御部12は、制御ケース162と電子回路120と緩衝材163等にて構成されている点は、図11に示す例と同じである。また図12の例では、起爆側送信アンテナ18は電子回路120と一体化されている(図28参照)。なお、制御部12は、起爆側受信アンテナ11から外部に突出しており、当該突出した位置、且つ起爆側受信アンテナ11に接しない位置、に起爆側送信アンテナ18が設けられている。そして図11の例と同様に、起爆部14は他方の開口部の側に延びるように固定され、他方の開口部から爆薬が挿通されると、挿通された爆薬の先端に起爆部14が差し込まれ、無線起爆雷管付親ダイ用爆薬が形成される。また、制御ケース162を比較的強度が高く電波を通し易い樹脂等の材料で形成することで、隣接する装薬孔に配置された爆薬が起爆する際に発生した衝撃波が、電子回路120へ伝わる前に制御ケース162と緩衝材163で減衰され、電子回路120が損傷しないようにすることもできる。さらに、制御ケース162の一部を起爆側受信アンテナ11の外に配置することで、電子回路120のサイズをベース筒体114の内径以上のサイズとすることが可能となり、電子回路120のサイズの自由度が向上する。さらに、爆薬を挿通する領域が拡大し、破砕効果の向上を図ることができる。
●[起爆側受信アンテナ11と起爆側送信アンテナ18の構造(図13~図20)]
図13は、起爆側受信アンテナ11の分解斜視図を示している。起爆側受信アンテナ11は、無線方式で電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと制御信号を受け取るアンテナである。起爆側受信アンテナ11は、ベース筒体114と、筒状磁性体115と、X軸用シート状コイル117Xと、Z軸用筒状コイル119と、Y軸用シート状コイル117Yと、にて構成されている。なお、ベース筒体114を省略してもよい。
筒状磁性体115の材質は、磁性体の中でも比較的容易に磁極が消失したり反転したりする高透磁率の材料であって、例えば鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール、フェライト、アモルファス磁性合金、ナノクリスタル磁性合金、等が好ましく、本実施の形態では、フェライトを使用している。そして筒状磁性体115は、図13に示すように、シート状に形成されており、ベース筒体114の外周面に巻回されて肉薄筒状とされている。筒状磁性体115の巻回の端部は、図14に示すように、オーバーラップすることなく、隙間172がほぼゼロとなるように巻回されていることが、より好ましい。しかし、図13に示すように、筒状磁性体115の巻回の一方の端部が他方の端部と重なってオーバーラップ部171を有するように巻回されていても良いし、筒状磁性体115が二重、三重となるように巻回されていても良い。なお、図14に示す隙間172は、例えば1[mm]程度の微小隙間であれば許容範囲内であるが、隙間172が微小隙間よりも大きい隙間である場合は好ましくない。また筒状磁性体115の軸であるアンテナ軸J11は、図8及び図13に示すように、Z軸と平行であり、Z軸であるといえる。
そして図13に示すように、Z軸用筒状コイル119とX軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Yは、ベース筒体114と筒状磁性体115と同軸となるように取り付けられて、起爆側受信アンテナ11が形成される。この起爆側受信アンテナ11は、起爆側受信アンテナ11の軸であるアンテナ軸J11が、装薬孔40の軸方向(この場合、Z軸方向)と一致するように装薬孔に装填される。そして、図5におけるZ軸方向の成分の磁界に対しては、Z軸方向を導電線の巻回の軸とするZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z(図6、図7参照))にて効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる。また図5におけるX軸方向の成分の磁界に対しては、X軸方向を導電線の巻回の軸とするX軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体によるX軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ11X(図6、図7参照))にて効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる。また図5におけるY軸方向の成分の磁界に対しては、Y軸方向を導電線の巻回の軸とするY軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体によるY軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ11Y(図6、図7参照))にて効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる。なお、図13に示す例は、ベース筒体114と、筒状磁性体115と、Z軸用筒状コイル119と、X軸用シート状コイル117Xと、Y軸用シート状コイル117Yと、にて起爆側受信アンテナ11を構成した例を示しているが、ベース筒体114を省略してもよい。
起爆側受信アンテナ11は、図6及び図7に示すように、Z軸用受信アンテナ11Zと、X軸用受信アンテナ11Xと、Y軸用受信アンテナ11Yと、の3つのアンテナが、Z軸方向に沿って、重ならないようにいずれかの順序で並べられて形成されている。図6及び図7の例では、Z軸用受信アンテナ11Zは、Z軸用筒状コイル119と筒状磁性体115(第1磁性体に相当)によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ11Z)として構成されている。X軸用受信アンテナ11Xは、X軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体115(第2磁性体に相当)によるX軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ)として構成されている。Y軸用受信アンテナ11Yは、Y軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体115(第3磁性体に相当)によるY軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ)として構成されている。なお、第1磁性体、第2磁性体、第3磁性体は、別々に構成されていてもよいし、本実施の形態に示すように共通の磁性体として構成されていてもよい。
発明者による種々の実験の結果によれば、Z軸用筒状コイル119を中央に配置する(Z軸用筒状コイルを、X軸用シート状コイルとY軸用シート状コイルに挟まれる位置に配置する)ことが、より好ましい。例えば、図15の例では、左側にX軸用シート状コイル117X、中央にZ軸用筒状コイル119、右側にY軸用シート状コイル117Y、となる順序で並べられており、この並び方を(117X、119、117Y)と記載する。Z軸用筒状コイル119が中央に配置された並び方には、図15に示す(117X、119、117Y)の順序の並び方と、図15に示す状態からZ軸回りに90[°]回転させた(117Y、119、117X)の順序の並び方がある。なお、図16の例に示すようにZ軸用筒状コイル119を左端部に配置した(119、117X、117Y)の順序の並び方や、図示省略するが、(119、117Y、117X)、及びZ軸用筒状コイル119を右端部に配置した(117X、117Y、119)、(117Y、117X、119)の順序の並び方としてもよい。
なお、起爆側受信アンテナ11を、Z軸用筒状コイル119(筒状コイル)とX軸用シート状コイル117X(シート状コイル)とY軸用シート状コイル117Y(シート状コイル)の3つのコイルと筒状磁性体で構成することなく、筒状コイル、あるいはシート状コイル、の少なくとも1つのコイルと筒状磁性体で構成してもよい。その場合、図5に示す装薬位置P2cに対しては、図17の例に示すようにZ軸用筒状コイル119とX軸用シート状コイル117Xとベース筒体114と筒状磁性体115とで起爆側受信アンテナ11Cを構成してもよい(ただし、ベース筒体114は省略してもよい)。また、図5の例において、例えば装薬位置P2bに対しては、図18の例に示すようにZ軸用筒状コイル119とベース筒体114と筒状磁性体115とで起爆側受信アンテナ11Aを構成してもよい(ただし、ベース筒体114は省略してもよい)。また、図5に示す装薬位置P1bに対しては、図19の例に示すようにY軸用シート状コイル117Yとベース筒体114と筒状磁性体115とで起爆側受信アンテナ11Bを構成してもよい(ただし、ベース筒体114は省略してもよい)。つまり、装薬孔の位置に応じて、その位置で(最も)磁界の成分が大きい方向を軸とするアンテナを構成する。この場合、X軸、Y軸、Z軸に限らず、その位置における磁界の方向にアンテナの導電線の巻回の軸を一致させると、より好ましい。
なお、図18及び図19に示す例に対して、X軸用シート状コイル117Xとベース筒体114と筒状磁性体115とで起爆側受信アンテナを構成してもよい(ただし、ベース筒体114は省略してもよい)。また、図17に示す例に対して、Z軸用筒状コイル119とX軸用シート状コイル117Xを、Z軸用筒状コイル119とY軸用シート状コイル117Yに変更してもよいし、X軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Yに変更してもよい。このように、切羽面における装薬孔の位置毎に異なる起爆側受信アンテナを選定し、切羽面に削孔された各装薬孔にて、より効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を受信することができる起爆側受信アンテナを実現することができる。
次に図20を用いて、起爆側送信アンテナ18の構造について説明する。起爆側送信アンテナ18は、応答周波数が100[MHz]以上1[GHz]以下に設定され、電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け渡す必要がなく、起爆操作機に応答信号を送信するだけでよい。従って、数[cm]程度のサイズでよく、磁性体も必要としない。図20に示すように、起爆側送信アンテナ18は、絶縁体のシートまたは板状部材であるベース部181と、ベース部181の表面にプリント等された導電体のアンテナ部182と、アンテナ部182と制御部とを接続する導電線111等にて構成されている。なお、図28の例に示すように、電子回路120と起爆側送信アンテナ18とを一体化する場合、電子回路基板上にアンテナ部182をプリントし、アンテナ部182を電子回路基板上の配線パターン153で電子回路120と接続すればよい。アンテナ部182と電子回路120とを接続する導電線111(図20参照)は、図28の例では配線パターン153に置き換えられている。なお図20の例では、アンテナ部182の形状を、開口部が対向する一対のコの字型とした例を示しているが、形状は特に限定しない。また図20は、ベース部181の表側の面と裏側の面とにアンテナ部182を設けた例を示しているが、表側または裏側の少なくとも一方にアンテナ部182を設けるようにしてもよい。
●[Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yの構造(図21~図26)]
以下の各コイルの説明では、筒状磁性体の軸をZ軸、Z軸に直交する軸をX軸、Z軸とX軸との双方に直交する軸をY軸、として説明する。図21にZ軸用筒状コイル119の外観の例を示す。Z軸用筒状コイル119は、Z軸の周囲に導電線111が巻回されて筒状に形成された筒状コイルである。なお図21では筒体112上に導電線111を巻回して筒状コイルを形成した例を示しているが、筒体112を設けずに導電線111を巻回して筒状コイルとしてもよい。また、図18の分解斜視図の状態から、Z軸用筒状コイル119(筒状コイルに相当)を、肉薄筒状とされた筒状磁性体115と同軸(この場合、Z軸と同軸)となるように筒状磁性体115の外周面に設けて全体を筒状に形成することで、起爆側受信アンテナ11A(Z軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ))を構成することができる。
図22にX軸用シート状コイル117Xの外観の例を示す。X軸用シート状コイル117Xは、図24に示すように、平行な仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111が巻回されて、仮想軸JNAとJNBのそれぞれに直交するシート状としたコイル116として形成された後、図22に示すように仮想軸JNAとJNBが同軸となるように筒状に形成されたシート状コイルである。X軸用シート状コイル117Xは、図22に示すように、仮想軸JNAとJNB(図24参照)が、同軸となるように湾曲され、同軸とされた仮想軸JNAとJNBがX軸に平行となるように配置されている。すなわち、X軸用シート状コイル117Xは、X軸の周囲に導電線111が巻回されたシート状コイルである。なお図24に示すようにシート113上に導電線111を巻回してシート状としたコイルを形成しても良いし、シート113を設けずに導電線111を巻回してシート状としたコイルとしてもよい。また、図19に示す分解斜視図においてY軸用シート状コイル117YをX軸用シート状コイル117Xに代えて、当該分解斜視図の状態から、筒状磁性体115の外周面に沿うように湾曲させたX軸用シート状コイル(シート状コイルに相当)を、肉薄筒状とされた筒状磁性体115の外周面に設けて全体を筒状に形成することで、起爆側受信アンテナ(X軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ))を構成することができる。このとき、X軸用シート状コイルは、筒状磁性体115の軸(Z軸)に直交する軸(この場合、X軸)の周囲に導電線が巻回されている。なお、仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111を巻回したシート状としたコイル116の例として、図25や図26のように導電線111を巻回してもよい。
図23にY軸用シート状コイル117Yの外観の例を示す。Y軸用シート状コイル117Yは、図24に示すように、平行な仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111が巻回されて、仮想軸JNAとJNBのそれぞれに直交するシート状としたコイル116として形成された後、図23に示すように仮想軸JNAとJNBが同軸となるように筒状に形成されたシート状コイルである。Y軸用シート状コイル117Yは、図23に示すように、仮想軸JNAとJNB(図24参照)が、同軸となるように湾曲され、同軸とされた仮想軸JNAとJNBがY軸に平行となるように配置されている。すなわち、Y軸用シート状コイル117Yは、Y軸の周囲に導電線111が巻回されたシート状コイルである。なお図24に示すようにシート113上に導電線111を巻回してシートとした状コイルを形成しても良いし、シート113を設けずに導電線111を巻回してシート状としたコイルとしてもよい。また、図19に示す分解斜視図において、当該分解斜視図の状態から、筒状磁性体115の外周面に沿うように湾曲させたY軸用シート状コイル(シート状コイルに相当)を、肉薄筒状とされた筒状磁性体115の外周面に設けて全体を筒状に形成することで、起爆側受信アンテナ(Y軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ))を構成することができる。このとき、Y軸用シート状コイルは、筒状磁性体115の軸(Z軸)に直交する軸(この場合、Y軸)の周囲に導電線が巻回されている。なお、仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111を巻回したシート状としたコイル116の例として、図25や図26のように導電線111を巻回してもよい。
従って、X軸用シート状コイル117Xを、Z軸回りに90[°]旋回させたものがY軸用シート状コイル117Yである。Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yのそれぞれは、筒状磁性体115の外周面に設けられている場合のほうが、筒状磁性体115の内周面に設けられている場合よりも、より効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと制御信号を受け取ることができる。また図22、図23等に示すように本実施の形態の説明では、X軸用シート状コイル117X及びY軸用シート状コイル117Yにおける導電線111の巻回を、矩形状に巻回した例を示しているが、巻回の形状は矩形状に限定されるものではなく、渦巻き状(らせん状)や種々の多角形状に巻回してもよい。また種々の形状が混在するように巻回してもよい。またZ軸用筒状コイル、X軸用シート状コイル、Y軸用シート状コイルは、作業者が手作業で導電線111を所定回数巻回して作成するようにしてもよい。
●[無線起爆雷管10の制御部12内及び起爆部14内の回路(図27)]
次に図27に示す回路ブロック図を用いて、無線起爆雷管10の制御部12内及び起爆部14内の回路(電子回路120及び起爆部14の回路)について説明する。図27は、図8に示す起爆側受信アンテナ11及び起爆側送信アンテナ18を含めた、制御部12内に収容された電子回路120、起爆部14の、それぞれの回路(ブロック図)を示している。
起爆側受信アンテナ11は、X軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体によるX軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ)と、Z軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ)と、Y軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体によるY軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ)と、にて構成されている。X軸用シート状コイル117Xは、可変コンデンサ等にて構成された同調回路121を介して3軸合成回路124に接続されている。同様に、Z軸用筒状コイル119は、可変コンデンサ等にて構成された同調回路122を介して3軸合成回路124に接続されている。同様に、Y軸用シート状コイル117Yは、可変コンデンサ等にて構成された同調回路123を介して3軸合成回路124に接続されている。このように、X軸用シート状コイル117X、Z軸用筒状コイル119、Y軸用シート状コイル117Y、のそれぞれは、導電線111が、同調回路121、122、123、のそれぞれに接続されている。そして、同調回路121、122、123、のそれぞれが、3軸合成回路124に接続されている。
起爆側送信アンテナ18は、導電体がプリント等されたアンテナ部182にて構成されている。そしてアンテナ部182は、配線パターン153(または導電線)にて送信回路134に接続されている。また、CPU131が応答信号を送信する場合、CPU131からの応答信号は、変調回路133及び送信回路134を経由して配線パターン153(または導電線)を介して起爆側送信アンテナ18から送信される。
電子回路120は、同調回路121、122、123、3軸合成回路124、CPU131、検波・復調回路125、レギュレータ128、変調回路133、送信回路134、ID記憶装置132、電子回路駆動用蓄電装置127、着火用スイッチ回路138、整流回路126等にて構成されている。なお、同調回路121、122、123、のそれぞれは、対応するX軸用シート状コイル117X、Z軸用筒状コイル119、Y軸用シート状コイル117Y、の共振周波数を調整するための可変コンデンサ等にて構成されている。
3軸合成回路124は、X軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナを構成するX軸用シート状コイル117X)、Y軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナを構成するY軸用シート状コイル117Y)及びZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナを構成するZ軸用筒状コイル119)から同調回路121、122、123を介して入力される電子回路の駆動用エネルギーや着火用エネルギーや制御信号を合成し、経路151及び経路152に出力する。なお、経路151は、受信した制御信号を取り込むルートであり、経路152は、受け取ったエネルギーを整流、蓄電、定電圧化するルートである。そして、経路151及び検波・復調回路125を介して受信された無線の制御信号は、CPU131に取り込まれ、経路152及びレギュレータ128(定電圧回路)を経由した電子回路の駆動用エネルギー(及び着火用エネルギー)は、CPU等の電子回路の電源として使用されるとともに電子回路駆動用蓄電装置127に蓄電される。
ID記憶装置132には、無線起爆雷管10に固有の識別情報が記憶されている。CPU131は、ID要求信号(制御信号)を受信すると、ID記憶装置132から読み出した識別情報を含む応答信号を送信する。なお、ここではID記憶装置132がCPU131とは別に構成されている例を示したが、これに限定されるものではなく、ID記憶装置132がCPU131に内蔵されていてもよい。
CPU131は、着火の指示に相当するコマンドを受信すると(あるいは、着火の指示に相当するコマンドを受信してから所定の着火遅延時間が経過したとき)、制御信号156にて、着火用スイッチ回路138を開状態から短絡状態へと制御して、電子回路駆動用蓄電装置127に蓄えたエネルギー(電子回路の駆動用エネルギー及び着火用エネルギー)を点火回路141に出力して起爆を実行する。また、CPU131は記憶手段を有しており、当該記憶手段には、無線着火具側プログラムが記憶されている。なお、応答信号送信手段131A、遅延時間書替実行手段131B、遅延着火実行手段131Cについては後述する。
起爆部14は、点火回路141、点火玉142、起爆薬143、添装薬144等を有している。点火回路141は、着火用スイッチ回路138が短絡されると、電子回路駆動用蓄電装置127から電力(着火用エネルギー)が供給されて点火玉142が着火される。そして点火玉142が点火されると、起爆薬143と添装薬144が点火され、起爆部14が点火される。そして起爆部14が点火されると、図2に示す親ダイ36Aが起爆される。
●[電子回路120と起爆側送信アンテナ18とを一体化した例(図28)]
上述したように、起爆側送信アンテナ18は、数[cm]程度の導電体のアンテナ部を、絶縁体にプリント等すればよいので、電子回路120を構成する電子回路基板上に、起爆側送信アンテナ18を形成することが可能である。従って、図28の例に示すように、絶縁体の板状(あるいはシート状)の電子回路基板129の一部に、アンテナ部182をプリント等することが可能である。このため、電子回路120と起爆側送信アンテナ18とを電子回路基板129上に一体化することが可能であり、小型化、組み付け容易性、をより向上させることができる。
●[本発明の効果等]
本実施の形態にて説明した無線破砕システム1では、操作周波数を100[kHz]以上500[kHz]以下とする。無線起爆雷管の起爆側受信アンテナ11(受信専用のアンテナ)は、効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取ることができるとともに効率良く無線の制御信号を受信することができるので、図1に示す起爆操作機側送信アンテナ60(送信専用のアンテナ)の巻き回数を、1回あるいは数回程度とすることができる。そして、当該操作周波数の電流を起爆操作機側送信アンテナ60に供給することで無線起爆雷管10の制御部12(電子回路120)に給電するとともに着火用エネルギーを蓄電させる。制御部12への給電及び蓄電のために起爆操作機側送信アンテナ60に供給する電力は、数10[W]~数100[W]程度の比較的小電力で行うことができる。さらに、前記電流に重畳された制御信号にて、無線起爆雷管の制御を行う。
また、起爆操作機側受信アンテナ65(受信専用のアンテナ)を設け、無線起爆雷管10から応答する信号の周波数を100[MHz]以上1[GHz]以下に設定している。これにより、無線起爆雷管の起爆側送信アンテナ18(送信専用のアンテナ)を、より小型にすることが可能であるとともに、より効率良く応答信号を送信可能であり、より長い応答信号の到達距離(例えば50[m]程度)を実現することができる。
また、本実施の形態にて説明した起爆側受信アンテナ11は、Z軸方向の磁界から効率よく電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと無線の制御信号とを受け取ることができるZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ)と、X軸方向の磁界から効率よく電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと無線の制御信号とを受け取ることができるX軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体によるX軸用シート状アンテナ(X軸用受信アンテナ)と、Y軸方向の磁界から効率よく電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと無線の制御信号とを受け取ることができるY軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体によるY軸用シート状アンテナ(Y軸用受信アンテナ)と、を有している。このため、図1に示す切羽面41におけるいずれの位置に削孔された装薬孔40であっても、より効率良く電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を受信することができる。また図2に示すように、筒状の起爆側受信アンテナ11内に爆薬を挿通することで、装薬孔内に、より多くの爆薬を装填することが可能になり、起爆効率を向上させることができる。
また、起爆側送信アンテナを、起爆側受信アンテナ11の外部に突出した位置、且つ起爆側受信アンテナに接しない位置に設け、無線起爆雷管と起爆側送信アンテナを一体化しているので、導電線にて接続した別体の起爆側送信アンテナを有する場合と比較して、装薬孔への装填が容易であるとともに、起爆側送信アンテナと無線起爆雷管とを接続する導電線の断線を適切に回避することができる。
●[起爆側送信アンテナ18からの送信を補う送信補助アンテナ19の追加(図29~図33)]
図2に示すように、無線起爆雷管10は、装薬孔40の最も奥に装填される。従って、無線起爆雷管10からの応答信号を送信する起爆側送信アンテナ18も、装薬孔40の奥深い位置となる。このため、装薬孔の周囲の岩盤の種類等によっては、起爆側送信アンテナ18からの送信信号が遮断されてしまい、送信信号を起爆操作機側受信アンテナ65に向けて効率良く送信できない可能性が考えられる。そこで、起爆側送信アンテナ18からの送信を補う送信補助アンテナ19を無線起爆雷管に追加することで、送信信号を起爆操作機側受信アンテナに効率良く送信できるようにする。
図29は、図12の断面図にて示す無線起爆雷管に、送信補助アンテナ19を追加した無線起爆雷管10Bの外観の例を示している。電子回路120と、起爆側受信アンテナ11と、起爆側送信アンテナ18と、起爆部14と、を有する無線起爆雷管は、筒状ケースである保護ケース165と制御ケース162に収容されて無線起爆雷管10Bを形成している。なお保護ケース165と制御ケース162の形状は、円筒状に限定されず、筒状であればよい。また制御ケース162のサイズは、起爆側送信アンテナ18を有する電子回路120を保護して収容できるサイズであり、アンテナ軸J11に直交する径は、図30に示すように装薬孔40内に装填可能な径に設定されている。また制御ケース162におけるアンテナ軸J11に沿う長さは、電子回路120を無駄なく収容可能な長さに設定されている。また保護ケース165のサイズは、起爆側受信アンテナ11と起爆部14を保護して収容できるサイズであり、アンテナ軸J11に直交する径は、起爆側受信アンテナ11を収容可能な径、かつ、図30に示すように親ダイ36Aの一部を収容可能な径、かつ、装薬孔40内に装填可能な径、に設定されている。また保護ケース165におけるアンテナ軸J11に沿う長さは、起爆側受信アンテナ11と起爆部14を無駄なく収容可能な長さ、かつ、図30に示すように親ダイ36Aの少なくとも一部を収容可能な長さに設定されている。なお制御ケース162の径(アンテナ軸J11に直交する径)と、保護ケース165の径(アンテナ軸J11に直交する径)は、一方の径のほうが他方の径よりも大きく設定されていてもよいし、同じであってもよい。また制御ケース162の長さ(アンテナ軸J11に沿う長さ)と、保護ケース165の長さ(アンテナ軸J11に沿う長さ)は、一方の長さのほうが他方の長さよりも長く設定されていてもよいし、同じであってもよい。そして所定長さ(図30に示す装薬孔40の長さに応じて設定された長さ)を有する送信補助アンテナ19が、起爆側送信アンテナ18に接続されることなく(起爆側送信アンテナ18と非接続とされて)無線起爆雷管10Bに取り付けられている。送信補助アンテナ19は、金属やカーボン等の導電体で形成された誘導部191と、金属やカーボン等の導電体で形成されたリード部192と、にて所定長さとされ、接合部193にて誘導部191とリード部192とが接合されている。なお「所定長さ」は、図30に示すように無線起爆雷管10Bを装薬孔40に装填した際、送信補助アンテナ19の他方端の側(保護ケースまたは制御ケースに取り付けられる側とは反対の側)が、装薬孔40の開口部45に到達することが可能な長さ以上の長さに設定されている。
誘導部191は、送信補助アンテナ19の一方端の側であって、起爆側送信アンテナ18に非接続とされて、保護ケース165や制御ケース162の一部における外側または内側の少なくとも一方に取り付けられている。誘導部191(送信補助アンテナ19)と起爆側送信アンテナ18とは非接続であるが、誘導部191から起爆側送信アンテナ18までの最短部の距離は、できるだけ短いことが好ましい。図29の例は、誘導部191が、保護ケース165の一部の外側に貼り付けられた例を示しており、アンテナ軸J11にほぼ平行となるように、保護ケース165の一端から他端まで、誘導部191が取り付けられた例を示している。この場合、誘導部191を、所定の厚さの銅箔やアルミニウム箔とすると、粘着テープ等にて容易に保護ケース165に貼り付けることができる。誘導部191は、起爆側送信アンテナ18から無線で送信された送信信号を、起爆側送信アンテナ18に対して非接触で受信し、受信した送信信号をリード部192に伝播する。なお図29は、誘導部191が保護ケース165の一端から他端までの長さに設定された例を示しているが、誘導部191におけるアンテナ軸J11に平行な軸方向の長さは、特に限定しない。また誘導部191におけるアンテナ軸J11まわりの周方向の幅は、起爆側受信アンテナ11を覆わないように、約10[mm]程度以下に設定されている。
リード部192は、送信補助アンテナ19の他方端の側であって、起爆側送信アンテナ18に非接続とされて、保護ケース165や制御ケース162から離れるように延ばされている。図29の例は、絶縁体で被覆された導電線を有するリード部192が、接合部193にてハンダ等にて誘導部191に接合されて、保護ケース165や制御ケース162から離れるように延ばされている例を示している。リード部192は、誘導部191から伝播された送信信号を、図30における装薬孔40の開口部45からの垂れ下がり部194から、起爆操作機側受信アンテナ65に向けて送信する。この場合、垂れ下がり部194が実質的な送信アンテナとなる。なお、図30中の垂れ下がり部194の垂れ下がり長さL19は、送信信号の波長の1/4以上の長さであることが好ましい。例えば、応答周波数が315[MHz]の場合、波長λ=3.00×108[m/s]/315[MHz]=約1[m]であるので、この場合、垂れ下がり長さL19を約25[cm]以上とすることが好ましい。
図30は、無線起爆雷管を用いた爆薬ユニットを装薬孔40に装填した状態を示す図2に対して、無線起爆雷管を図29に示す無線起爆雷管10Bとした場合の状態を示している。送信補助アンテナ19は、装薬孔40の開口部45から引き出され、垂れ下がり部194を有しており、垂れ下がり長さL19は、送信信号の波長の1/4以上とされていることが好ましい。また、図2中のケーブル71の代わりに送信補助アンテナ19を利用して表示装置72を取り付けることで、ケーブル71を省略することができる。爆薬を装填するステップでは、図30に示すように、無線起爆雷管10Bが取り付けられた爆薬である親ダイ36Aと、無線起爆雷管10Bが取り付けられていない爆薬である増ダイ36Bとを(すなわち爆薬ユニット20を)装薬孔40に装填するとともに、送信補助アンテナ19の他方端の側(リード部192の側)が装薬孔40の開口部45から垂れ下がるように装薬孔40に装填する。
図31~図33は、図29中における送信補助アンテナ19の誘導部191の取り付け個所を変更した例を示している。図31は、アンテナ軸J11にほぼ平行となるように、保護ケース165の一端から他端まで、及び制御ケース162の一端から他端まで、誘導部191が取り付けられた(貼り付けられた)例を示している。なお図31は、誘導部191が、保護ケース165の一端から他端まで、及び制御ケース162の一端から他端までの長さに設定された例を示しているが、誘導部191におけるアンテナ軸J11に平行な軸方向の長さは、特に限定しない。また誘導部191におけるアンテナ軸J11まわりの周方向の幅は、起爆側受信アンテナ11を覆わないように、約10[mm]程度以下に設定されている。
また図32は、アンテナ軸J11にほぼ平行となるように、制御ケース162の一端から他端まで、誘導部191が取り付けられた(貼り付けられた)例を示している。なお図32は、誘導部191が、制御ケース162の一端から他端までの長さに設定された例を示しているが、誘導部191におけるアンテナ軸J11に平行な軸方向の長さは、特に限定しない。また誘導部191におけるアンテナ軸J11まわりの周方向の幅は、特に限定しない。
また図33は、アンテナ軸J11を周回するように、制御ケース162の周囲に誘導部191が巻回されて取り付けられた例を示している。なお図33は、誘導部191が、制御ケース162の周囲に連続的に巻回された例を示しているが、誘導部191におけるアンテナ軸J11まわりの周方向の長さは、特に限定しない。また誘導部191におけるアンテナ軸J11に平行な軸方向の幅は、特に限定しない。
なお、誘導部191は、保護ケース165及び制御ケース162の一部において、外側または内側の少なくとも一方に取り付けられていればよい。例えば図29は、保護ケース165の一部における外側に誘導部191が取り付けられた例を示しているが、誘導部191が保護ケース165の内側に取り付けられていてもよいし、誘導部191の一部が保護ケースの内側で残りが保護ケースの外側に取り付けられていてもよい。また、誘導部191とリード部192とを1本の連続した導電線で形成してもよい(この場合は接合部193が省略される)。また、送信補助アンテナ19は起爆側送信アンテナ18に接続されていないので、装薬孔40に静電気や(周囲の高圧電線等からの)漏洩電流や(何らかの原因により地中を流れている)迷走電流があって、これらを送信補助アンテナ19が拾ってしまった場合であっても、起爆側送信アンテナ18を介して電子回路120に伝わることを防止できる。上記のように、誘導部191の例として種々の例が考えられるが、誘導部191の好ましい形態の例としては、図29の例に示す誘導部191において、直径が0.4[mm]程度の導線(銅線)を、保護ケース165の表面に接着剤等で貼り付けて形成した誘導部191が考えられる。
●[起爆操作機50(無線式着火操作機)の構成(図34)]
次に図34に示すブロック図を用いて、起爆操作機50の構成について説明する。起爆操作機50は、CPU501、入力装置502、記憶装置503、送信回路504、受信回路505、表示装置506、切替回路507等を有している。
入力装置502は、例えばキーボードやマウス等であり、作業者からの指示が入力される。また表示装置506は、例えば液晶モニタであり、起爆操作機50の動作状態や作業者からの指示が表示される。なお、表示装置506をタッチモニタとしてもよい。
記憶装置503には、無線式着火操作機側プログラムが記憶されている。CPU501は、記憶装置503から読み出した無線式着火操作機側プログラムを実行することで、後述する「起爆操作機50(無線式着火操作機)の処理」を実行する。なお、CPU501における制御信号送信手段501A、応答信号受信手段501B、着火具状態判定手段501C、遅延時間書替要求手段501D、着火送信許可手段501E、着火要求送信手段501Fの詳細については後述する。
送信回路504は、CPU501から入力された制御信号を、発破母線62、中継装置51、補助母線61を介して起爆操作機側送信アンテナ60から無線で送信する。受信回路505は、無線起爆雷管から無線で送信された応答信号が、起爆操作機側受信アンテナ65、起爆操作機側受信アンテナ用ケーブル66、中継装置51、発破母線62を介して入力され、入力された応答信号をCPU501に出力する。また切替回路507は、CPU501からの切替信号に基づいて、中継装置51内の送受信の経路を切り替える。
●[無線破砕工程(図35)]
次に図35のフローチャートを用いて、破砕現場における作業者の無線破砕工程の手順について説明する。図35の無線破砕工程に示すように、作業者は、装薬孔削孔工程K10、装填工程K20、着火操作機側送信アンテナ設置工程K30、着火操作機側受信アンテナ設置工程K40、無線式着火操作機設置工程K50、破砕工程K60の順に工程を進める。
装薬孔削孔工程K10では、作業者は、被破砕個所(例えば図1に示す切羽面41)に、複数の装薬孔を削孔する。被破砕個所における各装薬孔の位置や装薬孔の数は、被破砕個所の状態等に応じて適宜設定される。
装填工程K20では、作業者は、図2に示すように、削孔した各装薬孔に、無線起爆雷管10を取り付けた親ダイ36A、増ダイ36Bを装填し、装薬孔の外に表示装置72を引き出す。なお、各無線起爆雷管10には、各無線起爆雷管を識別可能なIDあるいはシリアル番号の少なくとも一方を含む着火具識別情報が記憶されているとともに、当該着火具識別情報が表示装置72に記載されている。作業者は、どの装薬孔に、どの着火具識別番号の無線起爆雷管を装填したか、あらかじめ控えておく。例えば図42に示す設定情報のように、各装薬孔の位置を示す装薬孔情報に、着火具識別情報を対応させて記憶させてもよい。なお、装薬孔情報に着火具識別情報を対応させて記憶する方法については、どのような方法で記憶しておいてもよい。
着火操作機側送信アンテナ設置工程K30では、作業者は、図1に示すように、被破砕個所から距離L1だけ離れた位置に、起爆操作機側送信アンテナ60をループ状に張る。そして起爆操作機側送信アンテナ60に、補助母線61、中継装置51、発破母線62を接続する。
着火操作機側受信アンテナ設置工程K40では、作業者は、図1に示すように、破砕個所から距離L2だけ離れた位置に、起爆操作機側受信アンテナ65を設置する。そして起爆操作機側受信アンテナ65と中継装置51とを起爆操作機側受信アンテナ用ケーブル66にて接続する。
無線式着火操作機設置工程K50では、作業者は、図1に示すように、破砕個所から充分離れた安全な場所に起爆操作機50を設置し、起爆操作機50に発破母線62を接続する。なお、作業者は、無線の、電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーと制御信号と応答信号を遮断する電磁シールド部材にて囲まれたシールド箱体を、予め用意しておく。シールド箱体の内面は、導電体が露出することなく絶縁体とされている。そして作業者は、破砕現場に持ち込んだが、装薬孔に装填されずに余った無線起爆雷管が存在する場合、これらの余っている無線起爆雷管を、起爆操作機50(無線式着火操作機)から輻射される電波を遮断することで、電子回路が起動することを防止し、シールド箱体内に安全に保管しておく。これにより、起爆操作機50(無線式着火操作機)からの輻射電波により、余剰の無線起爆雷管10(無線着火具)が起動することを防止し、破砕作業と余剰の無線起爆雷管10(無線着火具)の保管が同時に、かつ安全に可能となる。
破砕工程K60では、作業者は、起爆操作機50を操作して無線起爆雷管を着火させ、爆薬(親ダイ及び増ダイ)に着火させ、被破砕個所の破砕を実行する。このときの起爆操作機50の処理手順、及び無線起爆雷管10の処理手順の詳細について、以下に説明する。
●[起爆操作機50(無線式着火操作機)の処理手順(図36)]
次に図36に示すフローチャートを用いて、起爆操作機50(無線式着火操作機)の処理手順の例について説明する。起爆操作機50(無線式着火操作機)は、記憶装置503に記憶されている無線式着火操作機側プログラムを実行することで、図36に示すフローチャートの処理に基づいた無線破砕方法を実行する。起爆操作機50は、作業者から起動されると、図36に示すステップS10へと処理を進める。
ステップS10にて起爆操作機50は、表示装置506に工程等を表示し、ステップS20へと処理を進める。例えば表示装置506には、図46に示すように、工程表示部506A、被破砕個所表示部506B、設定情報表示部506Cが表示される。例えば工程表示部506Aには、「無線着火具にエネルギーを供給」、「充電確認」、「遅延時間書替」、「着火待機」、「着火カウント開始」、「中断」の各工程が表示される。被破砕個所表示部506Bには、例えば図41に示す被破砕個所情報Z20が表示され、設定情報表示部506Cには、例えば図42に示す設定情報Z10が表示される。
[被破砕個所情報Z20(図41)と、設定情報Z10(図42)]
図41に示す被破砕個所情報Z20には、破砕現場の被破砕個所の概略全体と、各装薬孔の位置と、装薬孔を識別するための装薬孔識別情報と、被破砕個所の中央部から第1距離内となるエリアA1、第1距離から第2距離内となるエリアA2、第2距離から第3距離内となるエリアA3、第3距離から第4距離内となるエリアA4等が対応付けられている。設定情報表示部506Cには、例えば図42に示す設定情報Z10が表示される。図42に示す設定情報Z10には、装薬孔識別情報に、エリア(被破砕個所の中央部からの距離に応じたエリア)、着火遅延時間、着火具識別情報等が対応付けられている。なお、着火遅延時間は、被破砕個所の中央部から装薬孔までの距離が長くなるに従って長い時間となるように設定されている。つまり、エリアA1の着火遅延時間<エリアA2の着火遅延時間<エリアA3の着火遅延時間<エリアA4の着火遅延時間、となるように設定されている。
ステップS20にて起爆操作機50は、起爆操作機側送信アンテナ60を介して、無線起爆雷管10の電子回路120の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを無線で送信し、ステップS110へと処理を進める。なお、この駆動用エネルギーと着火用エネルギーは、破砕工程が終了するまで、あるいは中断(中断については後述する)されるまで、継続して送信される。例えば起爆操作機50は、表示装置に表示した図46に示す工程表示部506Aの「無線着火具にエネルギーを供給」が作業者から操作されると(押されると)、駆動用エネルギーと着火用エネルギーを無線で受け渡す。なお、駆動エネルギー、着火用エネルギー、及び後述する制御信号は、100[kHz]以上500[kHz]以下の操作周波数にて、起爆操作機50から送信され、例えば200[kHz]で送信される。
ステップS110にて起爆操作機50は、例えば表示装置に表示した図46に示す工程表示部506Aにおける「充電確認」と「中断」を点滅させる等して、「充電確認(指示)」または「中断(指示)」の入力を作業者に督促する表示を行い、ステップS115へと処理を進める。
ステップS115にて起爆操作機50は、「中断指示」が入力されたか否かを判定し、「中断指示」が入力された場合(Yes)はステップAに処理を進め、「中断指示」が入力されていない場合(No)はステップS120へと処理を進める。
ステップAに処理を進めた場合、起爆操作機50は、ステップS525に処理を進め、ステップS525にて、制御データに、グローバルIDと中断指示(中断コマンド)とダミーデータ(00)を格納し、ステップS530へと処理を進める。この場合、起爆操作機50は、制御データの「ID」にグローバルIDを格納し、「コマンド」に中断指示(中断コマンド)を格納し、「データ」にダミーデータ(00)を格納する。
[起爆操作機50から送信される制御データ(制御信号)(図38、図39)]
ここで、起爆操作機50から送信される制御データ(制御信号)について詳細を説明する。起爆操作機50から送信される制御データ(制御信号)のデータ構成の例は、図38に示すとおりである。制御データ(制御信号)は、例えば、4バイトのデータ群として構成され、1バイト目に「ID」、2バイト目に「コマンド」、3バイト目に「データ」、4バイト目に「チェックサム(CS)」が格納されている。
「ID」には、図39の例に示すように、個別IDとグローバルIDが存在し、特定の1個の無線起爆雷管を対象としたコマンドの送信をする場合は、「ID」に「個別ID(=着火具識別情報)」が格納されて送信される。特定の1個でなく、すべての無線起爆雷管を対象としたコマンドの送信をする場合は、「ID」に「グルーバルID」(グローバル情報に相当)が格納されて送信される。「コマンド」には、図39の例に示すように、「中断指示」、「充電確認指示」、「遅延時間書替指示」、「着火待機指示」、「着火カウント開始指示」等がある。また「データ」には、図39の例に示すように、「着火遅延時間」、またはダミーデータ(00)がある。
チェックサム(CS)は、いわゆる誤り検出符号の1つであり、この場合、「ID」、「コマンド」、「データ」に格納されているそれぞれの値を加算した値が格納される。制御データ(制御信号)を受信した無線起爆雷管10は、「ID」、「コマンド」、「データ」に格納されている値を加算した値と、「チェックサム」に格納されている値と、を比較して一致するか否かを確認することで、ノイズ等によってデータ値が変更されることなく正しいデータを受信した、と判断することができる。なお、チェックサムの代わりに、別の誤り検出符号を用いた方法(例えば、パリティやCRCを用いた方法)を用いてもよい。
ステップS530にて起爆操作機50は、制御データに格納されている「グローバルID」、「中断指示」、ダミーデータ(00)のそれぞれの値を加算してチェックサム(CS)を計算し、制御データ+CSにて構成した制御信号を、無線起爆雷管10に向けて送信し、処理を終了する。
ステップS120に処理進めた場合、起爆操作機50は、「充電確認指示」が入力されたか否かを判定し、「充電確認指示」が入力された場合(Yes)はステップS125に処理を進め、「充電確認指示」が入力されていない場合(No)はステップS110へと処理を戻す。
ステップS125に処理を進めた場合、起爆操作機50は、制御データに、グローバルIDと充電確認指示(充電確認コマンド)とダミーデータ(00)を格納し、ステップS130へと処理を進める。この場合、起爆操作機50は、制御データの「ID」にグローバルIDを格納し、「コマンド」に充電確認指示(充電確認コマンド)を格納し、「データ」にダミーデータ(00)を格納する。
ステップS130にて起爆操作機50は、制御データに格納されている「グローバルID」、「充電確認指示」、ダミーデータ(00)のそれぞれの値を加算してチェックサム(CS)を計算し、制御データ+CSにて構成した制御信号を、無線起爆雷管10に向けて送信し、ステップS135へと処理を進める。
ステップS135にて起爆操作機50は、「中断指示」が入力されたか否かを判定し、「中断指示」が入力された場合(Yes)はステップAに処理を進め、「中断指示」が入力されていない場合(No)はステップS140へと処理を進める。なお、ステップAの処理については上述したとおりであるので説明を省略する。
ステップS140に処理を進めた場合、起爆操作機50は、ステップS130の制御信号の送信を行ってから所定時間経過したか否かを判定し、所定時間経過している場合(Yes)はタイムアウトと判定してステップS160に処理を進め、所定時間経過していない場合(No)はステップS145へと処理を進める。
ステップS145に処理を進めた場合、起爆操作機50は、いずれかの無線起爆雷管10からの応答信号を受信したか否かを判定し、応答信号を受信した場合(Yes)はステップS150に処理を進め、応答信号を受信していない場合(No)はステップS135へと処理を戻す。
ステップS150に処理を進めた場合、起爆操作機50は、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応させて、当該応答信号に含まれている「動作状態」である充電状態を記憶して、ステップS155へと処理を進める。例えば、応答信号に含まれている充電状態には、図40に示すように、「充電完了」の場合と、「充電中」の場合がある。例えば、起爆操作機50は、応答信号に含まれている充電状態が「充電完了」の場合、設定情報において、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応する「(応答)充電状態」の欄に「完了」を記憶する(図43参照)。また、起爆操作機50は、応答信号に含まれている充電状態が「充電中」の場合、設定情報において、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応する「(応答)充電状態」の欄に「充電中」を記憶する(図43参照)。
[無線起爆雷管10から送信される応答データ(応答信号)(図38、図40)]
ここで、無線起爆雷管10から送信される応答データ(応答信号)について詳細を説明する。無線起爆雷管10から送信される応答データ(応答信号)のデータ構成の例は、図38に示すとおりである。応答データ(応答信号)は、例えば、4バイトのデータ群として構成され、1バイト目に「ID」、2バイト目に「動作状態」、3バイト目に「データ」、4バイト目に「チェックサム(CS)」が格納されている。
「ID」には、図40の例に示すように、自身IDが存在しており、無線起爆雷管は、自身が記憶している着火具識別情報を「ID」に格納して応答信号を送信する。また「動作状態」については、図40の例に示すように、「中断指示」に対する「動作状態」である「中断完了」と「中断異常」、「充電確認指示」に対する「動作状態」である「充電完了」と「充電中」、「遅延時間書替指示」に対する「動作状態」である「遅延書替完了」と「遅延書替失敗」、「着火待機指示」に対する「動作状態」である「着火待機OK」と「着火待機異常」、が有る。また「データ」には、図40の例に示すように、「着火遅延時間」、またはダミーデータ(00)がある。
チェックサム(CS)は、いわゆる誤り検出符号の1つであり、この場合、「ID」、「動作状態」、「データ」に格納されているそれぞれの値を加算した値が格納される。応答データ(応答信号)を受信した起爆操作機50は、「ID」、「動作状態」、「データ」に格納されている値を加算した値と、「チェックサム」に格納されている値と、を比較して一致するか否かを確認することで、ノイズ等によってデータ値が変更されることなく正しいデータを受信した、と判断することができる。なお、チェックサムの代わりに、別の誤り検出符号を用いた方法(例えば、パリティやCRCを用いた方法)を用いてもよい。
ステップS155にて起爆操作機50は、全無線起爆雷管10(全無線着火具)から応答信号を受信したか否かを判定し、全無線起爆雷管10から応答信号を受信した場合(Yes)はステップS160へと処理を進め、応答信号を受信していない無線起爆雷管10がある場合(No)はステップS135へと処理を戻す。例えば、起爆操作機50は、ステップS150にて「充電中」や「完了」を記憶した設定情報に基づいて、全無線起爆雷管10から応答信号を受信したか否か、容易に判定することができる。
ステップS160に処理を進めた場合、起爆操作機50は、全無線起爆雷管10の充電状態が、すべてOKであるか否かを判定し、すべての無線起爆雷管の充電状態がすべてOKの場合(Yes)はステップS210に処理を進め、1つでも充電状態がOKでない場合や応答信号を送信してこなかった無線起爆雷管がある場合(No)はステップBに処理を進める。例えば起爆操作機50は、図43に示す設定情報における「(応答)充電状態」の欄が、すべて「完了」である場合、すべての無線起爆雷管の充電状態がすべてOKであると判定してステップS210に処理を進め、そうでない場合はステップBに処理を進める。
ステップBに処理を進めた場合、起爆操作機50は、ステップS510に処理を進め、ステップS510にて、例えば表示装置に表示した図46に示す工程表示部506Aにおける「中断」を点滅させる等して、「中断指示」の入力を作業者に督促する表示を行い、ステップS515へと処理を進める。
ステップS515にて起爆操作機50は、「中断指示」が入力されたか否かを判定し、「中断指示」が入力された場合(Yes)はステップS525に処理を進め、「中断指示」が入力されていない場合(No)はステップS510へと処理を戻す。なお、ステップS525、S530の処理については、上述したとおりである。
ステップS210に処理を進めた場合、起爆操作機50は、例えば表示装置に表示した図46に示す工程表示部506Aにおける「遅延時間書替」と「中断」を点滅させる等して、「遅延時間書替(指示)」または「中断(指示)」の入力を作業者に督促する表示を行い、ステップS215へと処理を進める。
ステップS215にて起爆操作機50は、「中断指示」が入力されたか否かを判定し、「中断指示」が入力された場合(Yes)はステップAに処理を進め、「中断指示」が入力されていない場合(No)はステップS220へと処理を進める。なお、ステップAの処理については、上述したとおりである。
ステップS220に処理を進めた場合、起爆操作機50は、「遅延時間書替指示」が入力されたか否かを判定し、「遅延時間書替指示」が入力された場合(Yes)はステップS225に処理を進め、「遅延時間書替指示」が入力されていない場合(No)はステップS210へと処理を戻す。
ステップS225に処理を進めた場合、起爆操作機50は、制御データに、個別IDと遅延時間書替指示(遅延時間書替コマンド)と着火遅延時間を格納し、ステップS230へと処理を進める。この場合、起爆操作機50は、制御データの「コマンド」に遅延時間書替指示(遅延時間書替コマンド)を格納する。そして起爆操作機50は、図43に示す設定情報に基づいて、個別IDである着火具識別情報と、当該着火具識別情報に対応付けられている(設定)着火遅延時間とを抽出し、抽出した着火具識別情報を制御データの「ID」に格納し、抽出した着火遅延時間を制御データの「データ」に格納する。
ステップS230にて起爆操作機50は、制御データに格納されている「個別ID」、「遅延時間書替指示」、着火遅延時間のそれぞれの値を加算してチェックサム(CS)を計算し、制御データ+CSにて構成した制御信号を、無線起爆雷管10に向けて送信し、ステップS235へと処理を進める。
ステップS235にて起爆操作機50は、「中断指示」が入力されたか否かを判定し、「中断指示」が入力された場合(Yes)はステップAに処理を進め、「中断指示」が入力されていない場合(No)はステップS240へと処理を進める。なお、ステップAの処理については上述したとおりであるので説明を省略する。
ステップS240に処理を進めた場合、起爆操作機50は、ステップS230の制御信号の送信を行ってから所定時間経過したか否かを判定し、所定時間経過している場合(Yes)はタイムアウトと判定してステップS255に処理を進め、所定時間経過していない場合(No)はステップS245へと処理を進める。
ステップS245に処理を進めた場合、起爆操作機50は、無線起爆雷管10からの応答信号を受信したか否かを判定し、応答信号を受信した場合(Yes)はステップS250に処理を進め、応答信号を受信していない場合(No)はステップS235へと処理を戻す。
ステップS250に処理を進めた場合、起爆操作機50は、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応させて、当該応答信号に含まれている「動作状態」である遅延時間書替状態を記憶して、ステップS255へと処理を進める。例えば、応答信号に含まれている遅延時間書替状態には、図40に示すように、「遅延書替完了」の場合と、「遅延書替失敗」の場合がある。例えば、起爆操作機50は、応答信号に含まれている遅延時間書替状態が「遅延書替完了」の場合、設定情報において、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応する「(応答)遅延状態」の欄に「正常」を記憶する(図44参照)。また、起爆操作機50は、応答信号に含まれている遅延時間書替状態が「遅延書替失敗」の場合、設定情報において、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応する「(応答)遅延状態」の欄に「異常」を記憶する(図44参照)。また、起爆操作機50は、応答信号に含まれている着火遅延時間(無線起爆雷管の書替後の着火遅延時間)を、設定情報において、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応する「(応答)遅延時間」の欄に記憶する(図44参照)。
ステップS255にて起爆操作機50は、全無線起爆雷管10に、ステップS225、S230にて、遅延時間書替指示と着火遅延時間を含む制御データを送信したか否かを判定する。例えば起爆操作機50は、図44に示す設定情報Z10Bにおける最上段の着火具識別情報に対応する無線起爆雷管から、最下段の着火具識別情報に対応する無線起爆雷管まで、順番にステップS225~ステップS250の処理を行い、全無線起爆雷管に、遅延時間書替指示と着火遅延時間を含む制御データを送信した場合(Yes)はステップS260に進み、そうでない場合(No)はステップS225へと処理を戻し、設定情報における次の着火具識別情報を含む制御データを、当該着火具識別情報に対応する無線起爆雷管に向けて送信する。
ステップS260に処理を進めた場合、起爆操作機50は、全無線起爆雷管10の遅延時間書替状態が、すべてOKであるか否かを判定し、すべての無線起爆雷管の遅延時間書替状態がすべてOKの場合(Yes)はステップS310に処理を進め、1つでも遅延時間書替状態がOKでない場合や応答信号を送信してこなかった無線起爆雷管がある場合(No)はステップBに処理を進める。例えば起爆操作機50は、図44に示す設定情報における「(応答)遅延状態」の欄が、すべて「正常」である場合、かつ、予め記憶している「(設定)着火遅延時間」と、各無線起爆雷管から受信した応答信号に含まれていた「(応答)遅延時間」と、が一致した場合に、すべての無線起爆雷管の遅延時間書替状態がすべてOKであると判定してステップS310に処理を進め、そうでない場合はステップBに処理を進める。なお、ステップBの処理は上述したとおりであるので、説明を省略する。
ステップS310に処理を進めた場合、起爆操作機50は、例えば表示装置に表示した図46に示す工程表示部506Aにおける「着火待機」と「中断」を点滅させる等して、「着火待機(指示)」または「中断(指示)」の入力を作業者に督促する表示を行い、ステップS315へと処理を進める。
ステップS315にて起爆操作機50は、「中断指示」が入力されたか否かを判定し、「中断指示」が入力された場合(Yes)はステップAに処理を進め、「中断指示」が入力されていない場合(No)はステップS320へと処理を進める。なお、ステップAの処理については、上述したとおりである。
ステップS320に処理を進めた場合、起爆操作機50は、「着火待機指示」が入力されたか否かを判定し、「着火待機指示」が入力された場合(Yes)はステップS325に処理を進め、「着火待機指示」が入力されていない場合(No)はステップS310へと処理を戻す。
ステップS325に処理を進めた場合、起爆操作機50は、制御データに、個別IDと着火待機指示(着火待機コマンド)とダミーデータ(00)を格納し、ステップS330へと処理を進める。この場合、起爆操作機50は、制御データの「コマンド」に着火待機指示(着火待機コマンド)を格納する。そして起爆操作機50は、図44に示す設定情報に基づいて、個別IDである着火具識別情報を抽出し、抽出した着火具識別情報を制御データの「ID」に格納し、「データ」にダミーデータ(00)を格納する。
ステップS330にて起爆操作機50は、制御データに格納されている「個別ID」、「着火待機指示」、ダミーデータ(00)のそれぞれの値を加算してチェックサム(CS)を計算し、制御データ+CSにて構成した制御信号を、無線起爆雷管10に向けて送信し、ステップS335へと処理を進める。
ステップS335にて起爆操作機50は、「中断指示」が入力されたか否かを判定し、「中断指示」が入力された場合(Yes)はステップAに処理を進め、「中断指示」が入力されていない場合(No)はステップS340へと処理を進める。なお、ステップAの処理については上述したとおりであるので説明を省略する。
ステップS340に処理を進めた場合、起爆操作機50は、ステップS330の制御信号の送信を行ってから所定時間経過したか否かを判定し、所定時間経過している場合(Yes)はタイムアウトと判定してステップS355に処理を進め、所定時間経過していない場合(No)はステップS345へと処理を進める。
ステップS345に処理を進めた場合、起爆操作機50は、無線起爆雷管10からの応答信号を受信したか否かを判定し、応答信号を受信した場合(Yes)はステップS350に処理を進め、応答信号を受信していない場合(No)はステップS335へと処理を戻す。
ステップS350に処理を進めた場合、起爆操作機50は、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応させて、当該応答信号に含まれている「動作状態」である着火待機状態を記憶して、ステップS355へと処理を進める。例えば、応答信号に含まれている着火待機状態には、図40に示すように、「着火待機OK」の場合と、「着火待機異常」の場合がある。例えば、起爆操作機50は、応答信号に含まれている着火待機状態が「着火待機OK」の場合、設定情報において、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応する「(応答)待機状態」の欄に「正常」を記憶する(図45参照)。また、起爆操作機50は、応答信号に含まれている着火待機状態が「着火待機異常」の場合、設定情報において、応答信号に含まれているID(着火具識別情報)に対応する「(応答)待機状態」の欄に「異常」を記憶する(図45参照)。
ステップS355にて起爆操作機50は、全無線起爆雷管10に、ステップS325、S330にて、着火待機指示を含む制御データを送信したか否かを判定する。例えば起爆操作機50は、図45に示す設定情報Z10Cにおける最上段の着火具識別情報に対応する無線起爆雷管から、最下段の着火具識別情報に対応する無線起爆雷管まで、順番にステップS325~ステップS350の処理を行い、全無線起爆雷管に、着火待機指示を含む制御データを送信した場合(Yes)はステップS360に進み、そうでない場合(No)はステップS325へと処理を戻し、設定情報における次の着火具識別情報を含む制御データを、当該着火具識別情報に対応する無線起爆雷管に向けて送信する。
ステップS360に処理を進めた場合、起爆操作機50は、全無線起爆雷管10の着火待機状態が、すべてOKであるか否かを判定し、すべての無線起爆雷管の着火待機状態がすべてOKの場合(Yes)はステップS410に処理を進め、1つでも着火待機状態がOKでない場合や応答信号を送信してこなかった無線起爆雷管がある場合(No)はステップBに処理を進める。例えば起爆操作機50は、図45に示す設定情報における「(応答)待機状態」の欄が、すべて「正常」である場合に、すべての無線起爆雷管の着火待機状態がすべてOKであると判定してステップS410に処理を進め、そうでない場合はステップBに処理を進める。なお、ステップBの処理は上述したとおりであるので、説明を省略する。
ステップS410に処理を進めた場合、起爆操作機50は、例えば表示装置に表示した図46に示す工程表示部506Aにおける「着火カウント開始」と「中断」を点滅させる等して、「着火カウント開始(指示)」または「中断(指示)」の入力を作業者に督促する表示を行い、ステップS415へと処理を進める。
ステップS415にて起爆操作機50は、「中断指示」が入力されたか否かを判定し、「中断指示」が入力された場合(Yes)はステップAに処理を進め、「中断指示」が入力されていない場合(No)はステップS420へと処理を進める。なお、ステップAの処理については、上述したとおりである。
ステップS420に処理を進めた場合、起爆操作機50は、「着火カウント開始指示」が入力されたか否かを判定し、「着火カウント開始指示」が入力された場合(Yes)はステップS425に処理を進め、「着火カウント開始指示」が入力されていない場合(No)はステップS410へと処理を戻す。
ステップS425に処理を進めた場合、起爆操作機50は、制御データに、グローバルIDと着火カウント開始指示(着火カウント開始コマンドであり、着火指示または着火コマンドに相当)とダミーデータ(00)を格納し、ステップS430へと処理を進める。この場合、起爆操作機50は、制御データの「コマンド」に着火カウント開始指示(着火カウント開始コマンド)を格納する。そして起爆操作機50は、グローバルIDを制御データの「ID」に格納し、「データ」にダミーデータ(00)を格納する。
ステップS430にて起爆操作機50は、制御データに格納されている「グローバルID」、「着火カウント開始指示」、ダミーデータ(00)のそれぞれの値を加算してチェックサム(CS)を計算し、制御データ+CSにて構成した制御信号を、すべての無線起爆雷管10に向けて送信し、処理を終了する。
上記のステップS20、ステップS125、S130の処理は、起爆操作機50(無線式着火操作機)にて、それぞれの無線起爆雷管10(無線着火具)に向けて、駆動用エネルギー及び着火用エネルギーを受け渡すとともに、着火用エネルギーの充電状態の確認を要求する充電確認コマンド(充電確認指示)を含む制御信号を送信する、充電状態要求ステップに相当する。
また、上記のステップS150、S160の処理は、起爆操作機50(無線式着火操作機)にて、着火具識別情報と充電状態とを含むそれぞれの応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれている着火具識別情報と充電状態に基づいて、それぞれの無線起爆雷管(無線着火具)が所定条件の1つである充電状態を満足しているか否かを判定する、充電状態判定ステップに相当する。
また、上記のステップS225、S230の処理は、起爆操作機50(無線式着火操作機)にて、充電状態を満足していると判定した無線起爆雷管(無線着火具)に対応する着火具識別情報と、設定情報と、に基づいて、着火具識別情報に対応する着火遅延時間を抽出し、着火具識別情報と抽出した着火遅延時間と遅延時間書替コマンドとを含む制御信号を、それぞれの無線起爆雷管(無線着火具)に向けて送信する、遅延時間書替要求ステップに相当する。
また、上記のステップS250、S260の処理は、起爆操作機50(無線式着火操作機)にて、遅延時間書替応答ステップにて送信されたそれぞれの無線起爆雷管10(無線着火具)からの応答信号を受信し、受信した応答信号に含まれている着火具識別情報及び着火遅延時間に基づいて、それぞれの無線起爆雷管10(無線着火具)に記憶されている着火遅延時間を把握し、受信した応答信号に含まれている着火具識別情報及び着火遅延時間が、設定情報に対応付けられている着火具識別情報及び着火遅延時間と、一致するか否かを判定するとともに、設定情報に対応付けられているすべての着火具識別情報及び着火遅延時間が一致した場合に、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管10(無線着火具)が、所定条件の1つである遅延時間書替状態を満足していると判定する、遅延時間書替状態判定ステップに相当する。
また、上記のステップS360~S430の処理は、起爆操作機50(無線式着火操作機)にて、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管10(無線着火具)が所定条件を満足していると判定した場合は着火指示(着火カウント開始指示)の入力を許可し、着火指示の入力を許可している場合に着火指示(着火カウント開始指示)が入力されると、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管10(無線着火具)に向けて、着火コマンド(着火カウント開始コマンド)を含む制御信号を送信して、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管10(無線着火具)に、経過時間のカウントを開始させる、着火カウント開始ステップに相当する。
また、上記のステップS115、S135、S215、S235、S315、S335、S415、S515~S530は、起爆操作機50(無線式着火操作機)にて、中断指示が入力されると、無線起爆雷管10(無線着火具)に向けて、中断コマンドを含む制御信号を送信する、中断要求ステップに相当する。
また、上記のステップS20、S130、S230、S330、S430、S530の処理を実行させる無線式着火操作機側プログラムは、起爆操作機50(無線式着火操作機)を、それぞれの無線起爆雷管10(無線着火具)に向けて、駆動用エネルギー及び着火用エネルギーを受け渡すとともに無線起爆雷管10(無線着火具)への指示を示すコマンドを含む制御信号を送信する、制御信号送信手段501A(図34参照)として機能させる。
また、上記のステップS145、S245、S345の処理を実行させる無線式着火操作機側プログラムは、起爆操作機50(無線式着火操作機)を、コマンドを含む制御信号を受信したそれぞれの無線起爆雷管10(無線着火具)から、着火具識別情報とコマンドに対する無線起爆雷管10(無線着火具)の動作状態とを含む応答信号を受信する、応答信号受信手段501B(図34参照)として機能させる。
また、上記のステップS150、S160、S250、S260、S350、S360の処理を実行させる無線式着火操作機側プログラムは、起爆操作機50(無線式着火操作機)を、受信した応答信号に含まれている着火具識別情報と動作状態と、記憶している設定情報と、に基づいて、それぞれの無線起爆雷管10(無線着火具)が所定条件を満足しているか否かを判定する、着火具状態判定手段501C(図34参照)として機能させる。
また、上記のステップS225、S230の処理を実行させる無線式着火操作機側プログラムは、起爆操作機50(無線式着火操作機)を、設定情報に基づいて、着火具識別情報と、当該着火具識別情報に対応付けられている着火遅延時間とを抽出し、抽出した着火具識別情報と着火遅延時間と遅延時間書替コマンドとを含む制御信号を、それぞれの無線起爆雷管10(無線着火具)に向けて送信する、遅延時間書替要求手段501D(図34参照)として機能させる。
また、上記のステップS360~S420の処理を実行させる無線式着火操作機側プログラムは、起爆操作機50(無線式着火操作機)を、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管10(無線着火具)が所定条件を満足していると判定した場合に、着火コマンド(着火カウント開始コマンド)を含む制御信号の送信を許可する、着火送信許可手段501E(図34参照)として機能させる。
また、上記のステップS420~S430の処理を実行させる無線式着火操作機側プログラムは、起爆操作機50(無線式着火操作機)を、着火コマンド(着火カウント開始コマンド)を含む制御信号の送信を許可している場合に着火指示(着火カウント開始指示)が入力されると、着火コマンド(着火カウント開始コマンド)を含む制御信号を、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管10(無線着火具)に向けて送信する、着火要求送信手段501F(図34参照)として機能させる。
●[無線起爆雷管10(無線着火具)の処理手順(図37)]
次に図37に示すフローチャートを用いて、装薬孔に装填されている各無線起爆雷管10(無線着火具)の処理手順の例について説明する。無線起爆雷管10(無線着火具)は、記憶手段に記憶されている無線着火具側プログラムを実行することで、図37に示すフローチャートの処理に基づいた無線破砕方法を実行する。装薬孔に装填されている各無線起爆雷管10は、電源を有していないので、起爆操作機50から駆動用エネルギーが供給されるまで動作していない。無線起爆雷管10は、起爆操作機50から無線で駆動用エネルギーが供給されると、図37に示すステップP10へと処理を進める。
ステップP10にて無線起爆雷管10は、起爆操作機50から供給される駆動用エネルギーを充電し、充電した駆動用エネルギーにて以下のステップP20以降の動作を行う。
ステップP20にて無線起爆雷管10は、起爆操作機50から供給される着火用エネルギーを充電しながらステップP30へと処理を進める。なお、電子回路120が、着火用エネルギーと駆動用エネルギーの充電を兼用した回路に充電する場合では、起爆操作機50から無線で供給されるエネルギーを、駆動用エネルギー及び着火用エネルギーとして充電する。
ステップP30にて無線起爆雷管10は、起爆操作機50から制御信号を受信したか否かを判定し、制御信号を受信した場合(Yes)はステップP40へと処理を進め、制御信号を受信していない場合(No)はステップP20へ処理を戻す。なお、受信した制御信号に含まれている「ID」と「コマンド」と「データ」を加算した値と、受信した制御信号に含めれている「チェックサム(CS)」の値とが一致しない場合は、受信した制御信号にノイズ等が含まれており正しい制御信号を受信できなかったと判断して、受信した制御信号を破棄してステップP20に処理を戻す。
ステップP40に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号に含まれているコマンドが「中断指示」であるか否かを判定し、「中断指示」である場合(Yes)はステップP60に進み、「中断指示」でない場合(No)はステップP110に処理を進める。
ステップP60に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、中断時の処理を実行してステップP70へと処理を進める。例えば無線起爆雷管10は、中断時の処理として、充電した着火用エネルギーを、着火に用いることなく安全に放電する。
ステップP70にて無線起爆雷管10は、応答データに、自身が記憶している着火具識別情報と中断状態とダミーデータ(00)を格納し、ステップP80へと処理を進める。この場合、無線起爆雷管10は、応答データの「ID」に自身が記憶している着火具識別情報を格納し、「動作状態」には図40に示す「中断完了」または「中断異常」を格納し、「データ」にダミーデータ(00)を格納する。例えば無線起爆雷管10は、ステップP60にて実行した中断時の処理を正常に実行できた場合は「状態」に「中断完了」を格納し、何らかの異常が発生して中断時の処理を正常に実行できなかった場合は「動作状態」に「中断異常」を格納する。
ステップP80にて無線起爆雷管10は、応答データに格納されている「着火具識別情報」、「中断状態」、ダミーデータ(00)のそれぞれの値を加算してチェックサム(CS)を計算し、応答データ+CSにて構成した応答信号を、起爆操作機50に向けて送信し、処理を終了する。なお、この場合、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管が応答信号を送信するので、これらの無線起爆雷管が同時に一斉に応答信号を無線で送信すると、混信が発生する可能性があるので好ましくない。そこで、各無線起爆雷管は、それぞれ独自に設定された応答時間(制御信号を受信してから応答信号を送信するまでの時間)が経過したときに、応答信号を送信する(時間差をつけて送信する)。例えば、各無線起爆雷管には、着火具識別情報に対応付けて、無線起爆雷管毎に異なる応答時間が設定されている。なお、応答信号は、100[MHz]以上1[GHz]以下の応答周波数にて、無線起爆雷管10から送信され、例えば315[MHz]または429[MHz]で送信される。
ステップP110に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号に含まれている「コマンド」が「充電確認指示」であるか否かを判定し、「充電確認指示」である場合(Yes)はステップP120に処理を進め、「充電確認指示」でない場合(No)はステップP210へ処理を進める。
ステップP120に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号に含まれている「ID」がグローバルIDであるか否かを判定し、グローバルIDである場合(Yes)はステップP160に処理を進め、グローバルIDでない場合(No)はステップP20へと処理を戻す。
ステップP160に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、自身の電子回路120に蓄えられている着火用エネルギーの充電状態を確認してステップP170へ処理を進める。
ステップP170にて無線起爆雷管10は、応答データに、自身が記憶している着火具識別情報と充電状態とダミーデータ(00)を格納し、ステップP180へと処理を進める。この場合、無線起爆雷管10は、応答データの「ID」に自身が記憶している着火具識別情報を格納し、「動作状態」には図40に示す「充電完了」または「充電中」を格納し、「データ」にダミーデータ(00)を格納する。例えば無線起爆雷管10は、ステップP160にて、着火用エネルギーが所定量まで充電されていることを確認した場合は「動作状態」に「充電完了」を格納し、所定量まで充電できていないと確認した場合は「動作状態」に「充電中」を格納する。
ステップP180にて無線起爆雷管10は、応答データに格納されている「着火具識別情報」、「充電状態」、ダミーデータ(00)のそれぞれの値を加算してチェックサム(CS)を計算し、応答データ+CSにて構成した応答信号を、起爆操作機50に向けて送信し、ステップP20へ処理を戻す。なお、この場合、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管が応答信号を送信するので、ステップP80と同様、各無線起爆雷管は、それぞれ独自に設定された応答時間(制御信号を受信してから応答信号を送信するまでの時間)が経過したときに、応答信号を送信する(時間差をつけて送信する)。例えば、各無線起爆雷管には、着火具識別情報に対応付けて、無線起爆雷管毎に異なる応答時間が設定されている。
ステップP210に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号に含まれている「コマンド」が「遅延時間書替指示」であるか否かを判定し、「遅延時間書替指示」である場合(Yes)はステップP220に処理を進め、「遅延時間書替指示」でない場合(No)はステップP310へ処理を進める。
ステップP220に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号に含まれている「ID」がグローバルIDでなく個別ID(着火具識別情報)であるか否かを判定し、グローバルIDでなく個別IDである場合(Yes)はステップP230に処理を進め、そうでない(グローバルIDである)場合(No)はステップP20へと処理を戻す。
ステップP230に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号の「ID」に格納されている着火具識別情報が、自身が記憶している着火具識別情報と一致するか否かを判定し、一致する場合(Yes)はステップP260に処理を進め、一致しない場合(No)はステップP20へ処理を戻す。
ステップP260に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、自身が記憶している着火遅延時間を、受信した制御信号に含まれている「着火遅延時間」に書き替えて記憶し、ステップP270へ処理を進める。
ステップP270にて無線起爆雷管10は、応答データに、自身が記憶している着火具識別情報と遅延状態と着火遅延時間を格納し、ステップP280へと処理を進める。この場合、無線起爆雷管10は、応答データの「ID」に自身が記憶している着火具識別情報を格納し、「動作状態」には図40に示す「遅延書替完了」または「遅延書替失敗」を格納し、「データ」には自身の記憶手段から読み出した着火遅延時間を格納する。例えば無線起爆雷管10は、ステップP260にて、着火遅延時間を書き替えた際、正常に書き替えを実行できた場合は「動作状態」に「遅延書替完了」を格納し、書替時に何らかの異常が発生した場合は「動作状態」に「遅延書替失敗」を格納する。
ステップP280にて無線起爆雷管10は、応答データに格納されている「着火具識別情報」、「遅延状態」、「着火遅延時間」のそれぞれの値を加算してチェックサム(CS)を計算し、応答データ+CSにて構成した応答信号を、起爆操作機50に向けて送信し、ステップP20へ処理を戻す。なお、この場合、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管が応答信号を送信するのでなく、着火具識別情報が一致した1つの無線起爆雷管のみが応答信号を送信するので、混信は発生しない。従って、応答信号を送信できる状態になった場合に、直ちに応答信号を送信する(時間差なしで送信する)。
ステップP310に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号に含まれている「コマンド」が「着火待機指示」であるか否かを判定し、「着火待機指示」である場合(Yes)はステップP320に処理を進め、「着火待機指示」でない場合(No)はステップP410へ処理を進める。
ステップP320に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号に含まれている「ID」がグローバルIDでなく個別ID(着火具識別情報)であるか否かを判定し、グローバルIDでなく個別IDである場合(Yes)はステップP330に処理を進め、そうでない(グローバルIDである)場合(No)はステップP20へと処理を戻す。
ステップP330に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号の「ID」に格納されている着火具識別情報が、自身が記憶している着火具識別情報と一致するか否かを判定し、一致する場合(Yes)はステップP360に処理を進め、一致しない場合(No)はステップP20へ処理を戻す。
ステップP360に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、着火待機時の処理を実行して、ステップP370へ処理を進める。なお、着火待機時の処理としての具体的な処理については説明を省略する。
ステップP370にて無線起爆雷管10は、応答データに、自身が記憶している着火具識別情報と待機状態とダミーデータ(00)を格納し、ステップP380へと処理を進める。この場合、無線起爆雷管10は、応答データの「ID」に自身が記憶している着火具識別情報を格納し、「動作状態」には図40に示す「着火待機OK」または「着火待機異常」を格納し、「データ」にダミーデータ(00)を格納する。例えば無線起爆雷管10は、ステップP360にて、着火待機時の処理を実行した際、正常に実行できた場合は「動作状態」に「着火待機OK」を格納し、何らかの異常が発生した場合は「動作状態」に「着火待機異常」を格納する。
ステップP380にて無線起爆雷管10は、応答データに格納されている「着火具識別情報」、「待機状態」、「ダミーデータ(00)」のそれぞれの値を加算してチェックサム(CS)を計算し、応答データ+CSにて構成した応答信号を、起爆操作機50に向けて送信し、ステップP20へ処理を戻す。なお、この場合、装薬孔に装填されているすべての無線起爆雷管が応答信号を送信するのでなく、着火具識別情報が一致した1つの無線起爆雷管のみが応答信号を送信するので、混信は発生しない。従って、応答信号を送信できる状態になった場合に、直ちに応答信号を送信する(時間差なしで送信する)。
ステップP410に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号に含まれている「コマンド」が「着火カウント開始指示」であるか否かを判定し、「着火カウント開始指示」である場合(Yes)はステップP420に処理を進め、「着火カウント開始指示」でない場合(No)はステップP20へ処理を戻す。
ステップP420に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、受信した制御信号に含まれている「ID」がグローバルIDであるか否かを判定し、グローバルIDである場合(Yes)はステップP460に処理を進め、グローバルIDでない場合(No)はステップP20へと処理を戻す。
ステップP460に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、今回の制御信号を受信してから(あるいはステップP460に達してから)の経過時間のカウントを行い、ステップP470へ処理を進める。
ステップP470にて無線起爆雷管10は、カウントしている経過時間が、記憶している着火遅延時間に達したか否かを判定し、経過時間が着火遅延時間に達した場合(Yes)はステップP480に処理を進め、経過時間が着火遅延時間に達していない場合(No)はステップP460へ処理を戻す。
ステップP480に処理を進めた場合、無線起爆雷管10は、充電した着火用エネルギーを用いて着火する。
上記のステップP160~P180の処理は、充電確認コマンド(充電確認指示)を含む制御信号を受信したそれぞれの無線起爆雷管(無線着火具)にて、着火具識別情報と、動作状態の1つである充電状態と、を含む応答信号を起爆操作機50(無線式着火操作機)に向けて送信する、充電状態応答ステップに相当する。
また、上記のステップP220~P280の処理は、着火具識別情報と着火遅延時間と遅延時間書替コマンド(遅延時間書替指示)とを含む制御信号を受信した無線起爆雷管10(無線着火具)にて、受信した制御信号に含まれている着火具識別情報と、自身が記憶している着火具識別情報とが一致した場合、受信した制御信号に含まれている着火遅延時間を記憶し、記憶した(書き替えた)着火遅延時間と自身の着火具識別情報とを含む応答信号を、起爆操作機50(無線式着火操作機)に向けて送信する、遅延時間書替応答ステップに相当する。
また、上記のステップP40~P80の処理は、無線起爆雷管10(無線着火具)にて、中断コマンドを含む制御信号を受信した際に自身を中断状態にする、中断実行ステップに相当する。
また、上記のステップP80、P180の処理は、それぞれの無線起爆雷管10(無線着火具)にて、制御信号を受信してから応答信号を送信するまでの時間である応答時間を、無線起爆雷管10(無線着火具)毎に異なる時間にする、混信回避ステップを有している。
また、上記のステップP60~P80、P160~P180、P260~P280、P360~P380の処理を実行させる無線着火具側プログラムは、無線起爆雷管10(無線着火具)を、起爆操作機50(無線式着火操作機)から、無線起爆雷管10(無線着火具)への指示を示すコマンドを含む制御信号を受信した場合に、着火具識別情報とコマンドに対する自身の動作状態とを含む応答信号を、起爆操作機50(無線式着火操作機)に向けて送信する、応答信号送信手段131A(図27参照)として機能させる。
また、上記のステップP210~P280処理を実行させる無線着火具側プログラムは、無線起爆雷管10(無線着火具)を、起爆操作機50(無線式着火操作機)から、着火具識別情報と着火遅延時間と遅延時間書替コマンドとを含む制御信号を受信した際、受信した制御信号に含まれている着火具識別情報と、自身が記憶している着火具識別情報とが一致した場合、記憶している着火遅延時間を、受信した制御信号に含まれている着火遅延時間に書き替える、遅延時間書替実行手段131B(図27参照)として機能させる。
また、上記のステップP410~P480処理を実行させる無線着火具側プログラムは、無線起爆雷管10(無線着火具)を、起爆操作機50(無線式着火操作機)から、着火コマンド(着火カウント開始コマンド)を含む制御信号を受信した場合に、当該制御信号を受信してからの経過時間のカウントを開始し、経過時間が、記憶している着火遅延時間に達した際に着火させる、遅延着火実行手段131C(図27参照)として機能させる。
●[第2の実施の形態(図47~図54)]
図1~図46に示す第1の実施の形態では、爆薬36(親ダイ36A、増ダイ36B)を有する爆薬ユニット20を用いた無線破砕システム1の例を説明した。図47~図54に示す第2の実施の形態では、薬筒202に非火薬破砕剤201が収容された非火薬ユニット320を用いた無線破砕システム205の例を説明する。
トンネルの掘削、建造物の解体等において、環境への負荷の軽減、熟練発破技術者の激減から、非火薬発破技術への期待が高まっている。このような非火薬発破技術への期待に対し、トンネルの掘削面、コンクリート建造物等の破砕対象物を、テルミット反応を応用して破砕する非火薬発破技術が種々実用化されている。この非火薬発破技術には、テルミット反応によって生じた高温・高圧の水蒸気膨張圧を用いたものがある。例えば、ガンサイザー(日本工機株式会社、登録商標)の名称で市販されているもの等があり、破砕対象物に対して比較的ゆっくりとエネルギーを加えるため、火薬よりも安全性が高いとされている。
図47は、図1に対して、非火薬ユニット320を用いた無線破砕システム205を、トンネルの掘削現場に適用した例を示している。図47に示す無線破砕システム205では、図1に示す起爆操作機50、発破母線62、中継装置51、補助母線61、起爆操作機側送信アンテナ60、起爆操作機側受信アンテナ用ケーブル66、起爆操作機側受信アンテナ65が、それぞれ無線式着火操作機250、母線262、中継装置251、補助母線261、着火操作機側送信アンテナ260、着火操作機側受信アンテナ用ケーブル266、着火操作機側受信アンテナ265に置き換えられているが、外観や機能等は、それぞれ同じであるので、これらについては説明を省略する。なお図47の例では、距離L1を0[m]にした例を示している。
図48及び図49に示すように、非火薬ユニット320は、一端側が閉塞された有底筒状に形成されるプラスチック製の薬筒202と、薬筒202内に収納された非火薬破砕剤201と、薬筒202の他端側に取り付けられて他端側を閉塞する無線着火具310と、を有している。そして無線着火具310は、着火具側受信アンテナ311、着火具側送信アンテナ318、着火部314、制御部12を有し、制御ケース162、保護ケース165に収容されている。なお、着火具側受信アンテナ311は起爆側受信アンテナ11と同様であり、着火具側送信アンテナ318は起爆側送信アンテナ18と同様であるので、これらの説明は省略する。また、送信補助アンテナ19についても同じであるので説明を省略する。
図48は、装薬孔40に1つの非火薬ユニット320を装填した例を示し、図49は、装薬孔40に複数の非火薬ユニット320を装填した場合の例を示している。非火薬ユニット320のそれぞれは、非火薬破砕剤201が収容された薬筒202と、無線着火具310と、を有している。そして装薬孔40に複数の非火薬ユニット320を装填する場合は、図49に示すように、装薬孔40内に、無線着火具310に、着火具側送信アンテナ318に接続されることなく送信補助アンテナ19が取り付けられた複数個(図49に示す例では、2個)の非火薬ユニット320を、それぞれの間に合成樹脂製のスペーサ25等を挟んで空隙を配して(またはスペーサ25を省略して所定の空隙を配して)直列に装填し、粘土等の封止物22にて蓋をするようにしてもよい。
また図50に、無線着火具310の構成を説明する回路ブロック図の例を示す。図27に示す第1の実施の形態の回路ブロック図に対して、電子回路120は同じであり、着火具側受信アンテナ311は起爆側受信アンテナ11と同じであり、着火具側送信アンテナ318は起爆側送信アンテナ18と同じである。図50に示す第2の実施の形態の回路ブロック図は、図27に示す第1の実施の形態の回路ブロック図に対して、着火部314が異なる。以下、相違点について主に説明する。
着火部314は、点火回路3141、電橋線3142、非火薬点火剤3143、非火薬着火剤3144等を有している。点火回路3141は、着火用スイッチ回路138が短絡されると、電子回路駆動用蓄電装置127から電力(着火用のエネルギー)が供給されて、電橋線3142に通電される。電橋線3142は、例えば、白金-イリジュウム線等で形成されて、非火薬点火剤3143内に配置されている。電橋線3142は、通電された電気エネルギーを熱エネルギーに変え、電橋線3142近傍の非火薬点火剤3143に発火させる。
そして、発火した非火薬点火剤3143から非火薬着火剤3144へと伝火して、非火薬着火剤3144が着火される。この結果、非火薬着火剤3144が着火されると、図48、図49に示す非火薬破砕剤201が着火され、テルミット反応によって高熱・高温(例えば、2000℃~3000℃程度)の水蒸気膨張圧を発生する。ここで、非火薬点火剤3143の組成物は、例えば、C6H3NO4Pb、KMnO4、B、BaCr04等で構成されている。非火薬着火剤3144の組成物は、例えば、Al、CuO、S、B等で構成されている。
そして、以上に説明した第2の実施の形態における無線式着火操作機250(起爆操作機50と同等)と、無線着火具310とを用いて、第1の実施の形態における図35~図46を用いて説明した無線破砕方法にて、被破砕個所を適切かつ安全に破砕することができる。つまり、無線式着火操作機250に、図36に示した処理を実行させる無線式着火操作機側プログラムを搭載させ、各無線着火具310に、図37に示した処理を実行させる無線着火具側プログラムを搭載させる。そして、第1の実施の形態にて説明した無線破砕方法にて、第1の実施の形態と同様の破砕を実行させることができる。
非火薬ユニット320は、上述したトンネルの切羽面の破砕以外にも、巨石の破砕や、コンクリート柱の切断(ビルのフロアの部分解体や橋の解体等)や、水中の巨石またはコンクリート構造物の破砕など、種々の破砕に使用することができる。例えば図51~図53は、ビル等の構造物の外壁に囲まれた空間内のコンクリート柱を破砕する例を示しており、図51は破砕前の状態の斜視図を示し、図52は図51においてAA方向から見た断面図を示し、図53は図51に対して破砕後の状態の斜視図を示している。
図51及び図52に示すように、構造物210は、床面242、側壁面243、天井面244を有し、2本のコンクリート柱220が床面242から天井面244まで立設されている例を示している。またコンクリート柱220内には、複数の鉄筋230が埋め込まれている。なお鉄筋230は縦横に複数埋め込まれているが、図51~図53では、縦方向に埋め込まれている2本のみを例として記載している。
図51に示すように、無線破砕システム205は、図47に示した無線破砕システム205と同様に、無線式着火操作機250、母線262、中継装置251、補助母線261、着火操作機側送信アンテナ260、着火操作機側受信アンテナ用ケーブル266、着火操作機側受信アンテナ265等を有している。例えば着火操作機側送信アンテナ260は、床面242、側壁面243、天井面244を利用して張られている。なお、無線破砕システム205の構成及び動作は、図47に示した無線破砕システム205と同様であるので説明を省略する。
またコンクリート柱220には、複数の装薬孔40が穿孔されている。図51の例では被破砕個所241における着火操作機側送信アンテナ260の側に24個、着火操作機側送信アンテナ260とは反対側に24個穿孔されている。そして各装薬孔40には、非火薬ユニット320が装填されている(図52参照)。尚、非火薬ユニット320の装填状態は、図48または図49と同様である。また、各装薬孔40内の鉄筋230は、装薬孔40を穿孔する際に、切断される。また、鉄筋が非火薬ユニット320の近傍に存在しても、着火操作機側送信アンテナ260から非火薬ユニット320へ、電子回路120の駆動用のエネルギーや着火用エネルギーや制御信号を、無線で適切に受け渡すことができる。
図53は、破砕直後の状態の例を示している。被破砕個所241のコンクリート部分は非火薬ユニット320によって破砕され、鉄筋230の一部は破砕されずに残る場合があるが、予め主となる鉄筋を装薬孔40の穿孔時に切断しておけば問題無い。
ここで、図54に示すように、着火操作機側送信アンテナ260は、全てのコンクリート柱220の天井面244側の端部を囲むように、天井面244にループ状に2周等の複数周張ってもよいし、1周だけ巻かれるように張ってもよい。そして、着火操作機側送信アンテナ260は、天井面244に沿って側壁面243よりも外側に引き出されて、補助母線261を介して中継装置251に接続されるようにしてもよい。
これにより、鉄筋が非火薬ユニット20の近傍に存在しても、着火操作機側送信アンテナ260から非火薬ユニット20へ、電子回路120の駆動用のエネルギーや着火用エネルギーや制御信号を、無線で適切に受け渡すことができる。また、各コンクリート柱220が破砕されても、着火操作機側送信アンテナ260及び補助母線261がコンクリート破片で埋まることを防止でき、再使用が可能となる。
以上に説明したように、第1の実施の形態の無線破砕システム1では、起爆操作機50(無線式着火操作機に相当)と無線起爆雷管10(無線着火具に相当)と爆薬を用い、第2の実施の形態の無線破砕システム205では、無線式着火操作機250と無線着火具310と非火薬破砕剤とを用いる。そして起爆操作機50と無線式着火操作機250には、どちらにも図36に示す処理を実行する無線式着火操作機側プログラムを搭載し、無線起爆雷管10と無線着火具310には、どちらにも図37に示す処理を実行する無線着火具側プログラムを搭載する。そして、第1の実施の形態の無線破砕システム1と第2の実施の形態の無線破砕システム205は、どちらも、第1の実施の形態にて説明した無線破砕方法の処理手順にて、より安全に破砕を行うことができる。つまり、第1の実施の形態及び第2の実施の形態にて、無線破砕システムにおいてより安全に破砕を行うことができる、無線式着火操作機、無線着火具、無線破砕方法、無線式着火操作機側プログラム、無線着火具側プログラム、及び、無線式着火操作機側プログラム及び無線着火具側プログラム、を提供することができる。
本発明の無線式着火操作機250(起爆操作機50)、無線着火具310(無線起爆雷管10、10A、10B、10Z)、無線着火具310、無線起爆方法、無線式着火操作機側プログラム、無線着火具側プログラムは、本実施の形態にて説明した外観、構造、構成、形状、方法、処理手順、プログラム等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また、X軸用シート状コイル117Xにおける導電線の巻回の軸(筒状磁性体の軸に直交する軸)は、Z軸用筒状コイル119における導電線の巻回の軸(筒状磁性体の軸)に直交している。また、Y軸用シート状コイル117Yにおける導電線の巻回の軸(筒状磁性体の軸に直交する軸)は、Z軸用筒状コイル119における導電線の巻回の軸(筒状磁性体の軸)に直交しており、X軸用シート状コイル117Xにおける導電線の巻回の軸に直交している。
本実施の形態の説明では、起爆側受信アンテナ11の磁性体として、シート状の筒状磁性体115を用い、起爆側受信アンテナ11のコイルとして、Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Y、を用いた例を説明した。しかし、起爆側受信アンテナ11の磁性体の形状は、どのような形状であってもよいし、起爆側受信アンテナ11の形状も、どのような形状であってもよい。つまり、Z軸用受信アンテナ11Zとしては、Z軸回りかつ第1磁生体の周囲に導電線が巻回されていれば、第1磁生体の形状も、導電線を巻回したコイルの形状も、どのような形状であってもよい。同様に、X軸用受信アンテナ11Xとしては、X軸回りかつ第2磁生体の周囲に導電線が巻回されていれば、第2磁生体の形状も、導電線を巻回したコイルの形状も、どのような形状であってもよい。同様に、Y軸用受信アンテナ11Yとしては、Y軸回りかつ第3磁生体の周囲に導電線が巻回されていれば、第3磁生体の形状も、導電線を巻回したコイルの形状も、どのような形状であってもよい。
起爆側送信アンテナ18の形状は、図20及び図28の例に示すアンテナ部182の形状に限定されるものではなく、種々の形状とすることができる。
また本実施の形態にて説明した無線起爆雷管10、10A、10B、10Z、無線破砕システム1、無線破砕方法、無線式着火操作機側プログラム、無線着火具側プログラムは、トンネルの掘削現場に限定されず、コンクリート建造物(破砕対象物の一例である。)の破砕現場等の種々の現場の破砕に適用することが可能である。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
本実施の形態にて説明した起爆側受信アンテナ11は、Z軸用筒状アンテナ(Z軸用受信アンテナ)のみをZ軸方向に沿って装薬孔に配置した従来のアンテナに対して、電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを、より「効率良く」受け取ることができるとともに、無線の制御信号を、より「効率良く」受信することができる。なお「効率良く」とは、従来のアンテナでは、例えば図4の例に示す装薬位置P1a、P1c、P3a、P3c等の起爆操作機側送信アンテナの縁部では、電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーとを充分に受け取れない場合や、無線の制御信号を受信できない場合が、稀に発生したが、本実施の形態の起爆側受信アンテナでは、発明者が何度も実験した結果、電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを充分に受け取れない場合や、無線の制御信号を受信できない場合が、一度も発生しなかった、という意味を含んでいる。つまり本実施の形態にて説明した起爆側受信アンテナ11にて「効率良く受け取ることができる」「効率良く受信できる」とは、上記の従来のアンテナと比較して、電子回路の駆動用エネルギーと着火用エネルギーを「より確実に受け取ることが可能」であり、無線の制御信号を「より確実に受信することができる」、という意味を含んでいる。