JP7024342B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Description
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」と「メタクリル酸」の一方又は双方をさす。
また、自動車分野では、発色性、耐衝撃性、耐熱性に加え、成形品の大型化や高外観への要求から、流動性の向上が求められているが、流動性の向上についても未だ不十分である(特公平7-72243号公報)。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」と「メタクリル酸」の一方又は双方をさす。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
「明度(L*)」とは、JIS Z 8729において採用されているL*a*b*表色系における色彩値のうちの明度の値(L*)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と特定量のN-置換マレイミド単量体と特定量の芳香族ビニル単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られるものであり、それ自体、流動性、発色性、耐熱性、耐傷付き性にバランスよく優れるものである。
本発明に用いられる(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)メタクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2,4,6-トリブロモフェニルなどが挙げられ、これらの中でもメタクリル酸メチルが最も好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体は必要に応じて2種以上を併用することもできる。併用する場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体の全量に対して、メタクリル酸メチルを25質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましい。
本発明に用いられるN-置換マレイミド単量体としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、N-フェニルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミド等のN-置換アリールマレイミド類、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド等のN-置換アルキルマレイミド類、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換シクロアルキルマレイミド類などが挙げられる。これらのうち、耐熱性向上効果が高いN-フェニルマレイミドが好ましい。これらのN-置換マレイミド単量体についても、必要に応じて2種類以上を併用することができるが、併用する場合、N-置換マレイミド単量体の全量に対して、N-フェニルマレイミドを25質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましい。
本発明に用いられる芳香族ビニル単量体としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらの中でもスチレンおよびα-メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体についても、必要に応じて2種類以上を併用することもできる。併用する場合、芳香族ビニル単量体の全量に対して、スチレンおよび/またはα-メチルスチレンを25質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましい。
本発明で用いるビニル系単量体混合物(m1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、N-置換マレイミド単量体、および芳香族ビニル単量体以外に、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を必要に応じて含有していてもよい。共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類、アクリロニトリル等のシアン化ビニル類、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、ビニル系単量体混合物(m1)を重合することによって得られる。ビニル系単量体混合物(m1)の重合方法は特に限定されず、重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
重合開始剤は、ビニル系単量体混合物(m1)100質量部に対して0.15~0.7質量部用いることが好ましい。
連鎖移動剤は、ビニル系単量体混合物(m1)100質量部に対して0.3~1.2質量部用いることが好ましい。
本発明では、特に、懸濁重合法により(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を製造することが好ましく、その際に、重合開始剤として10時間半減期温度が40~60℃であるラジカル重合開始剤(D-1)と、10時間半減期温度が70~90℃であるラジカル重合開始剤(D-2)とを併用すると共に、連鎖移動剤としてアルキルメルカプタンとα-メチルスチレンダイマーを併用し、40~60℃で重合反応を開始し、1~20℃/hrの昇温速度で100~140℃まで連続的または段階的に昇温し、反応開始から5~12時間で重合反応を完結させるようにすることが、発色性、耐熱性により優れた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を製造する上で好ましい。
即ち、40~60℃という比較的低温で重合反応を開始することでN-置換マレイミド単量体をポリマー中に取り込まれやすくし、一方で重合終了温度を100~140℃と、ある程度高くすることで残存N-置換マレイミド単量体を少なくすることができる。また、急激な反応の進行は着色の原因と成ることから、α-メチルスチレンダイマーの添加と昇温速度を特定の範囲にすることで重合速度を抑制し、さらにアルキルメルカプタンの添加でポリマー重合の高粘度効果を抑制することで急激な反応による(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の着色を抑制することができる。また、懸濁重合における水中でのN-置換マレイミド単量体の加水分解を抑制するために、5~12時間という急激な反応が進行しない程度の時間で重合反応を完結させる。このような条件を採用することで、発色性、耐熱性に優れた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を製造することができる。
また、ラジカル重合開始剤として、10時間半減期温度が40~60℃又は70~90℃の範囲外にあるラジカル重合開始剤、例えば10時間半減期温度が40℃未満のラジカル重合開始剤や10時間半減期温度が60℃を超え70℃未満のラジカル重合開始剤や、10時間半減期温度が90℃を超えるラジカル重合開始剤を使用しないことが好ましい。
なお、ここで、反応を完結させる温度とは、通常重合反応の最高温度に該当する。
ただし、反応開始から反応温度を上げてゆき、最高温度で反応を完結するものに限定されず、最高温度に到達した後、当該最高温度から降温した温度で反応を終了してもよい。いずれの場合であっても、重合反応の最高温度は100~140℃、特に100~125℃の範囲となるようにすることが好ましい。
ビニル系単量体混合物(m1)の合計100質量%中のN-置換マレイミド単量体の含有量が9質量%未満で、芳香族ビニル単量体の含有量が7~39質量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が好ましくは52~92質量%である前述のビニル系単量体混合物(m1)を重合してなる本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、通常、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を構成する全単量体単位の合計100質量%中のN-置換マレイミド単量体単位の含有量が9質量%未満、好ましくは2質量%以上9質量%未満、より好ましくは3質量%以上9質量%で、芳香族ビニル単量体単位の含有量が7~39質量%、好ましくは8~30質量%、より好ましくは9~25質量%で、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が好ましくは52~92質量%、より好ましくは60~85質量%、さらに好ましくは65~80質量%のものとなる。
なお、ここで、「単位」とは、共重合体中に含まれる、重合前の化合物(モノマー)に由来する構造部分を意味し、例えば、「(メタ)アクリル酸エステル単量体単位」とは「(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来して(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中に含まれる構造部分」を意味する。通常、各重合体のモノマー単位の含有量は、当該重合体の製造に用いたモノマーの使用量に該当する。
なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、ゴム状重合体(B)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られるグラフト共重合体(C)とを含むことが好ましい。なお、このグラフト共重合体(C)は、後述のグラフト重合体(C1)であってもよい。
ゴム状重合体(B)としては、特に制限はなく、ジエン系ゴム状重合体、アクリル系ゴム状重合体、オレフィン系ゴム状重合体、シリコーン系ゴム状重合体等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
なお、ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
ビニル系単量体混合物(m2)は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、および他のビニル系単量体よりなる群から選ばれる1種または2種以上のビニル系単量体を含むものである。
グラフト共重合体(C)は、ゴム状重合体(B)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合することによって得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(C)として、体積平均粒子径が50nm以上240nm未満であるポリオルガノシロキサン(b-1)と、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(b-2)との複合ゴム状重合体(B1)の存在下に、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体とを含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られるグラフト重合体(C1)を含むものであってもよい。
以下に、このグラフト重合体(C1)について説明する。
複合ゴム状重合体(B1)を構成するポリオルガノシロキサン(b-1)としては特に制限されないが、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサン(ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサン)が好ましく、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位と、ジメチルシロキサン単位とを有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。この場合、ポリオルガノシロキサン(b-1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位の割合は0.3~3モル%が好ましい。ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の割合が上記範囲内であれば、ポリオルガノシロキサン(b-1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b-2)とが十分に複合化し、得られる成形品の表面においてポリオルガノシロキサン(b-1)がブリードアウトしにくくなる。よって、発色性、特に黒色着色時の得られる成形品の発色性がより良好となり、成形品の耐衝撃性もより向上する。
複合ゴム状重合体(B1)を構成する(メタ)アクリレート系重合体(b-2)は、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分を重合して得られるものである。この単量体成分には、アルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体(他の単量体)が含まれていてもよい。
複合ゴム状重合体(B1)は、ポリオルガノシロキサン(b-1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b-2)とが複合した複合ゴムである。
また、複合ゴム状重合体(B1)中の全粒子中に占める、粒子径が500nm超である粒子の割合は、1体積%未満が好ましく、0.1体積%未満がより好ましい。
複合ゴム状重合体(B1)の製造方法は特に制限されないが、ポリオルガノシロキサン(b-1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b-2)を各々含む複数のラテックスをヘテロ凝集もしくは共肥大化する方法;ポリオルガノシロキサン(b-1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b-2)のいずれか一方を含むラテックス存在下で、他方の重合体を形成する単量体成分を重合させて複合化させる方法などが挙げられる。特に複合ゴム状重合体(B1)の体積平均粒子径を上述した範囲内となるように容易に調整できることから、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(b-1)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合させて共重合体ラテックスを得た後(ラジカル重合工程)、該共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる(肥大化工程)方法が好ましい。さらに、共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合する前に、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加することが好ましい。
以下、各工程について説明する。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
グラフト重合体(C1)の製造に用いるビニル系単量体混合物(m2)は、前述のグラフト共重合体(C)の製造に用いるビニル系単量体混合物(m2)と同様であり、好ましい単量体組成についても同様である。
グラフト共重合体(C1)は、複合ゴム状重合体(B1)の存在下に、ビニル系単量体混合物(m2)を重合することにより得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を含むものであり、樹脂成分として本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)のみを含むものであってもよく、本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と上記のグラフト共重合体(C)(前述の通り、グラフト共重合体(C)はグラフト重合体(C1)であってもよい。)を含むものであってもよい。或いは、本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、後述のその他の熱可塑性樹脂を含むものであってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と上記のグラフト共重合体(C)を含む場合、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の含有率は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)とグラフト共重合体(C)の合計を100質量%とした場合に、50~90質量%、特に50~80質量%、とりわけ60~70質量%であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の含有率が上記範囲内であると、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の流動性、発色性、耐熱性、耐傷付き性、耐衝撃性、耐面衝撃性が優れたものとなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)およびグラフト共重合体(C)以外の他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。他の熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA樹脂)、メタクリル酸メチル-N-シクロヘキシルマレイミド-N-フェニルマレイミド-スチレン共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂およびポリアミド樹脂(ナイロン)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の物性を損なわない範囲において、熱可塑性樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に、慣用の他の添加剤、例えば滑材、顔料、染料、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、耐熱剤(熱安定剤)、酸化劣化防止剤、耐候剤(紫外線吸収剤、光安定剤)、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、衝撃付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、流動調節剤、増感剤、増粘剤、沈降防止剤、ドリップ防止剤、消泡剤、カップリング剤、光拡散性微粒子、防錆剤、抗菌剤、防カビ剤、防汚剤、導電性高分子などを配合することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、公知の装置を使用した公知の方法で製造することができる。例えば、一般的な方法として溶融混合法があり、この方法で使用する装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等が挙げられる。混合には回分式、連続式のいずれを採用してもよい。また、各成分の混合順序などにも特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。その成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、流動性に優れ、発色性、耐熱性、耐傷付き性にも優れるため、車輌内外装部品、事務機器、家電、建材等、幅広い分野で好適に使用される。
以下において、「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は以下の通りである。
マイクロトラック(日機装社製「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒としてイオン交換水を用いて、水性分散体に分散しているゴム状重合体(B)又は複合ゴム状重合体(B1)の体積平均粒子径を測定した。
グラフト共重合体(C)又はグラフト重合体(C1)1gを80mLのアセトンに添加し、65~70℃ にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機社製「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式(1)によりグラフト率を算出した。なお、式(1)におけるYは、グラフト共重合体(C)又はグラフト重合体(C1)のアセトン不溶成分の質量(g)、XはYを求める際に使用したグラフト共重合体(C)又はグラフト重合体(C1)の全質量(g)、ゴム分率はグラフト共重合体(C)又はグラフト重合体(C1)の製造に用いたゴム状重合体(B)又は複合ゴム状重合体(B1)の水性分散体における固形分濃度である。
グラフト率(質量%)={(Y-X×ゴム分率)/X×ゴム分率}×100 …(1)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、テトラヒドロフラン(THF)に溶解して測定したものを標準ポリスチレン(PS)換算で示したものである。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により求めた。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を窒素雰囲気下、10℃/minで、35℃から250℃まで昇温した後、35℃まで冷却し、再度250℃まで昇温した場合に観測されるガラス転移温度を求めた。ガラス転移温度が高いほど、耐熱性に優れる。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性の観点から、前述の通り、110℃~130℃であることが好ましく、特に115℃~125℃であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)の組成分析は、Yanaco製元素分析装置MT-6を用いた元素分析結果(N量、O量)をもとに、N-フェニルマレイミド量、メタクリル酸メチル量を求め、残りをスチレン量として算出した。
以下の実施例および比較例において使用した原料は、以下の通りである。
メタクリル酸メチル:三菱レイヨン株式会社製、アクリエステル(登録商標)M
N-フェニルマレイミド:株式会社日本触媒製、イミレックス(登録商標)-P
スチレン:NSスチレンモノマー株式会社社製
t-ブチルパーオキシピバレート:日油株式会社製、パーブチルPV(10時間半減期温度:54.6℃)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート:日油株式会社製、パーブチルO(10時間半減期温度:72.1℃)
1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン:日油株式会社製、パーヘキサHC(10時間半減期温度:87.1℃)
t-ドデシルメルカプタン:アルケマ株式会社製
α-メチルスチレンダイマー:三井化学株式会社製
第三リン酸カルシウム:宇部マテリアルズ株式会社社製
アルケニルコハク酸カリウム:花王株式会社製、ラテムルDSK
<(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A-1)の製造>
メタクリル酸メチル76質量部、N-フェニルマレイミド8質量部、スチレン16質量部のビニル系単量体混合物100質量部に、パーブチルPV0.1質量部、パーブチルO0.05質量部、パーヘキサHC0.05質量部、t-ドデシルメルカプタン0.6質量部、α-メチルスチレンダイマー0.2質量部をあらかじめ混合し、純水200質量部に第三リン酸カルシウム0.5質量部、アルケニルコハク酸カリウム0.003質量部を添加し、撹拌機付の20リットル耐圧反応槽に仕込み、40℃から重合を開始させた。重合反応における昇温速度は5~10℃/hrで9時間反応を行い、120℃にて重合を終了後、冷却、洗浄、濾過、乾燥工程を経てビーズ状の重合体である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A-1)を得た。得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A-1)の性状を表1に示す。
表1に示す成分配合としたこと以外は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A-1)と同様に(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A-2)~(A-11)を製造した。得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A-2)~(A-11)の性状を表1に示す。
以下において、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A-1)~(A-11)はそれぞれ共重合体(A-1)~(A-11)と記載する。
<ゴム状重合体(B-1)の製造>
アルケニルコハク酸ジカリウム0.27部、イオン交換水175部、アクリル酸n-ブチル50部、メタクリル酸アリル0.16部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート0.08部、およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合物を反応器に投入した。反応器に窒素気流を通じることによって、反応器内を窒素置換し、60℃まで昇温した。内温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045部、ロンガリット0.24部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加して重合を開始させ、内温を75℃に上昇させた。さらにこの状態を1時間維持し、体積平均粒子径0.20μmのゴム状重合体(B-1)を得た。
撹拌機を備えた耐圧容器に脱イオン水150部、ブタジエンモノマー100部、硬化脂肪酸カリ石鹸3.0部、有機スルホン酸ソーダ0.3部、ターシャルドデシルメルカプタン0.2部、過硫酸カリウム0.3部、および水酸化カリウム0.14部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら温度を60℃に上げて重合を開始し、重合率65%のときに過硫酸カリウム0.1部を溶解した脱イオン水5部を上記耐圧容器に加えて重合温度を70℃に上げ、反応時間13時間、重合転化率95%で重合を完結し、体積平均粒子径80nm、固形分52.0%のラテックスを得た。このラテックスに、20%酢酸水溶液を酢酸として1.0部添加し肥大化操作を行って、体積平均粒子径0.20μmのゴム状重合体(B-2)を得た。
<グラフト共重合体(C-1)の製造>
反応器の内温を75℃に保ったまま、ゴム状重合体(B-1)50部(固形分として)に対して、ロンガリット0.15部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.65部、およびイオン交換水10部からなる水溶液を添加し、次いで、アクリロニトリル6.3部、スチレン18.7部、およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.11部からなる混合液を1時間にわたって滴下し、グラフト重合させた。滴下終了から5分後に、硫酸第一鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.15部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加し、次いで、アクリロニトリル6.3部、スチレン18.7部、t-ブチルヒドロペルオキシド0.19部、およびn-オクチルメルカプタン0.014部からなる混合液を1時間にわたって滴下しグラフト重合させた。滴下終了後、内温を75℃に10分間保持した後、冷却し、内温が60℃となった時点で、酸化防止剤(吉富製薬工業社製、アンテージW500)0.2部およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.2部をイオン交換水5部に溶解した水溶液を添加した。次いで、反応生成物の水性分散体を硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト共重合体(C-1)を得た。グラフト共重合体(C-1)のグラフト率は40%であった。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、ゴム状重合体(B-2)(固形分として50部)を入れ、不均化ロジン酸カリウム0.3部(固形分)、硫酸第一鉄七水塩0.01部、ピロリン酸ナトリウム0.2部、結晶ブドウ糖0.5部を仕込み、反応器内の内容物を撹拌しながら60℃まで昇温させた。スチレン39部、アクリルニトリル11部および、ターシャリードデシルメルカプタン0.4部とクメンハイドロパーオキサイド0.35部とを混合し、この混合液を2時間かけて連続的に滴下、供給してグラフト重合させた。その間、反応器内温を60℃に保つようにジャケット温度を制御した。滴下終了後70℃まで昇温させ、さらに1時間保ってグラフト重合反応を完結させた。冷却後、酸化防止剤(ジラウリルチオジプロピオネート)を添加し、グラフト共重合体(C-2)のラテックスを得た。得られたグラフト共重合体(C-2)のラテックスを、その1倍量の2.5%硫酸水溶液(80℃)中に撹拌下で投入し、さらに90℃で5分間保持して凝固させてグラフト共重合体(C-2)のスラリーを得た。そして、そのスラリーの水洗と脱水を2度繰り返した後、一晩70℃で静置し、乾燥して乳白色粉末のグラフト共重合体(C-2)を得た。グラフト共重合体(C-2)のグラフト率は41%であった。
<ポリオルガノシロキサン(b-1-1)の製造>
オクタメチルテトラシクロシロキサン96部、γ-メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部およびエチルオルソシリケート2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10部を溶解したイオン交換水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器および撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸2部、イオン交換水98部を注入し、2%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間にわたって滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。この反応液を室温で48時間放置した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、ポリオルガノシロキサン(b-1-1)のラテックスを得た。ポリオルガノシロキサン(b-1-1)ラテックスの一部を170℃で30分間乾燥して固形分濃度を求めたところ、17.3%であった。また、ラテックス中に分散しているポリオルガノシロキサン(b-1-1)の体積平均粒子径は30nmであった。
<グラフト重合体(C1-1)の製造>
上記の複合ゴム状重合体(B1-1)の製造に引き続き、反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル7.5部、スチレン22.5部およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合液を約1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部およびロンガリット0.25部をイオン交換水10部に溶解させた水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル5.0部、スチレン15.0部およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合液を約40分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、冷却して、グラフト共重合体(C1-1)のラテックスを得た。次いで、酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。その酢酸カルシウム水溶液中にグラフト共重合体(C1-1)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固させた。得られた凝固物を分離し、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(B-1)の乾燥粉末を得た。グラフト共重合体(C1-1)のグラフト率は40%であった。
表2に示すように、ポリオルガノシロキサン(b-1-1)とアクリル酸n-ブチルの質量比率およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムの添加量(部)を変更した以外は、グラフト共重合体(C1-1)と同様にして、グラフト共重合体(C1-2)~(C1-6)を得た。
ラテックスに分散している複合ゴム状重合体(B1)の体積平均粒子径、300~500nmの粒子割合とグラフト共重合体(C1-2)~(C1-6)のグラフト率を表2に示す。
(酸基含有共重合体ラテックスの製造)
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素気流下で仕込み、60℃に
昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n-ブチル85部、メタクリル酸15部、クメンヒドロパーオキサイド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃を維持した状態で熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が120nmである酸基含有共重合体ラテックス(X)を得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(b-1-1)のラテックスを固形分換算で4.0部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.48部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(b-2-2)を構成する単量体としてアクリル酸n-ブチル45.0部、アリルメタクリレート0.4部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート0.09部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.12部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴムを得た(ラジカル重合工程)。
得られた複合ゴムの体積平均粒子径は100nmであった。
上記の反応器内部の液温が70℃に低下した後、5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として0.20部添加した。内温70℃で制御した後、酸基含有共重合体ラテックス(X)を固形分として0.30部添加し、30分撹拌、肥大化を行い、複合ゴム状重合体(B1-2)のラテックスを得た(肥大化工程)。
得られたラテックス状の複合ゴム状重合体(B1-2)の体積平均粒子径は165nmであった。また、複合ゴム状重合体(B1-2)の全粒子中に占める、粒子径が300~500nmである粒子の割合は10体積%であった。
複合ゴム状重合体(B1-2)のラテックスに、硫酸第一鉄七水塩0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.3部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.18部からなる混合液を80分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.05部、n-オクチルメルカプタン0.02部からなる混合物を20分にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度75℃の状態を30分保持した後、冷却し、複合ゴム状重合体(B1-2)の存在下に、アクリロニトリルとスチレンを重合させたグラフト共重合体(C1-7)のラテックスを得た。次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(C1-7)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(C1-7)を得た。
ポリオルガノシロキサン(b-1-1)、アルケニルコハク酸ジカリウム、およびアクリル酸n-ブチルの量と、肥大化工程で用いたピロリン酸ナトリウムの量、および酸基含有共重合体ラテックス(X)の量を表1に示すように変更した以外は、グラフト共重合体(C1-7)と同様にして、グラフト共重合体(C1-8)~(C1-12)を得た。
表3、表4に示す(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)100質量部にカーボンブラック0.8部を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押し出し機(池貝社製「PCM30」)を用いて240℃で溶融混練し、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)のペレットを得た。得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)ペレットについてメルトボリュームレートを以下の方法により評価した。また、得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)のペレットを射出成形した成形品について、発色性、耐熱性、耐傷付き性を以下の方法により評価した。
評価結果を表3、表4に示す。
表5、表6に示す配合処方(質量部)で各成分を混合し、さらにそこにカーボンブラック0.8部を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押し出し機(池貝社製「PCM30」)を用いて240℃で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットについてメルトボリュームレートとスパイラルフロー長さを以下の方法により評価した。また、得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを射出成形した成形品について、発色性、耐熱性、耐傷付き性、耐衝撃性、耐面衝撃性を以下の方法により評価した。
評価結果を表5、表6に示す。
(メルトボリュームレート(MVR)の測定)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)又は熱可塑性樹脂組成物のペレットについて、ISO 1133規格に従い、220℃または230℃の条件で測定した。MVRは流動性の目安となる。
熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(日本製鋼所製「J85AD-110H)によりシリンダー温度280℃、金型温度60℃の条件で、断面3.1mm×12.7mmの渦巻状金型に射出し、この金型内を熱可塑性樹脂組成物が流動する長さを測定した。流動する長さが長いほど、流動性が優れる。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)又は熱可塑性樹脂組成物のペレットを射出成形機(東芝機械社製「IS55FP-1.5A」)によりシリンダー温度200~270℃、金型温度60℃の条件で、縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品を成形し、シャルピー衝撃試験用成形品、荷重たわみ温度測定用成形品(成形品(Ma1))として用いた。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)又は熱可塑性樹脂組成物のペレットを射出成形機(株式会社日本製鋼所製「J-75EII-P」)によりシリンダー温度200~270℃、金型温度60℃の条件で、縦100mm、横100mm、厚さ3mmの成形品を成形し、発色性評価用成形品、耐傷付き性評価用成形品、落球衝撃強度測定用成形品(成形品(Ma2))として用いた。
成形品(Ma1)について、ISO試験法75規格に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ温度(HDT)(℃)を測定した。
成形品(Ma2)について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM-3500d」)を用いて明度L*を、SCE方式にて測定した。測定されたL*を「L*(ma)」とする。L*が低いほど黒色となり、発色性が良好である。
成形品(Ma1)について、ISO 179規格に従い、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
成形品(Ma2)について、JIS K5600に準拠し、750gの荷重で鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度が高いほど、耐傷付き性に優れる。
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)および熱可塑性樹脂組成物は、鉛筆硬度がH以上、特に2H以上であることが好ましい。
-30℃に温調した成形品(Ma2)について、落球衝撃強度を測定した。重さ500gの鋼球を10cmの高さから成形品(Ma2)の板面に落下させ、割れなければ10cm毎に落下高さを高くして割れや亀裂発生の有無を確認した。試料3枚中、割れや亀裂が2枚以上発生しなかった落下高さを落球衝撃高さとした。落球衝撃高さが高いほど耐面衝撃性に優れる。
表7~9に示す配合処方(質量部)で各成分を混合し、さらにそこにカーボンブラック0.8部を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製、「PCM30」)で200~260℃、93.325kPa真空にて溶融混練し、ペレタイザー(創研社製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットについてメルトボリュームレートを前述の方法で測定した。
また、得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを射出成形した成形品について、耐衝撃性、発色性、耐熱性、耐傷付き性を前述の方法で評価した。
評価結果を表7~9に示す。
なお、参考例1,2は、本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を用いているが、参考例1では、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)に配合したグラフト共重合体(C1-4)の体積平均粒径が小さ過ぎるために耐衝撃性が不足している。また、参考例2では、グラフト共重合体(C1-11)の体積平均粒径が大き過ぎるために発色性が劣る。
Claims (7)
- (メタ)アクリル酸エステル単量体とN-置換マレイミド単量体と芳香族ビニル単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)であって、該ビニル系単量体混合物(m1)の合計100質量%中のN-置換マレイミド単量体の含有量が1質量%以上、9質量%未満で、芳香族ビニル単量体の含有量が7~39質量%であるビニル系単量体混合物(m1)を重合してなる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、
ゴム状重合体(B)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られるグラフト共重合体(C)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記グラフト共重合体(C)は、
ゴム状重合体(B)20~80質量%の存在下に、ビニル系単量体混合物(m2)20~80質量%を重合してなり(ただし、ゴム状重合体(B)とビニル系単量体混合物(m2)との合計は100質量%)、
該ゴム状重合体(B)は、ジエン系ゴム状重合体、アクリル系ゴム状重合体、オレフィン系ゴム状重合体、およびシリコーン系ゴム状重合体から選ばれる1種又は2種以上であり、
該ビニル系単量体混合物(m2)は、ビニル系単量体混合物(m2)の合計100質量%中に芳香族ビニル単量体を65~82質量%、シアン化ビニル単量体を18~35質量%含み、
グラフト率が10~150%である、熱可塑性樹脂組成物。 - (メタ)アクリル酸エステル単量体とN-置換マレイミド単量体と芳香族ビニル単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)であって、該ビニル系単量体混合物(m1)の合計100質量%中のN-置換マレイミド単量体の含有量が1質量%以上、9質量%未満で、芳香族ビニル単量体の含有量が7~39質量%であるビニル系単量体混合物(m1)を重合してなる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と、
ゴム状重合体(B)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られるグラフト共重合体(C)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記グラフト共重合体(C)が、体積平均粒子径が50nm以上240nm未満であるポリオルガノシロキサン(b-1)と、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(b-2)との複合ゴム状重合体(B1)の存在下に、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体とを含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られるグラフト重合体(C1)である、熱可塑性樹脂組成物。 - 前記複合ゴム状重合体(B1)におけるポリオルガノシロキサン(b-1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b-2)の合計100質量%におけるポリオルガノシロキサン(b-1)の割合が1質量%以上25質量%未満である、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記グラフト重合体(C1)は、前記複合ゴム状重合体(B1)10~80質量%の存在下に、前記ビニル系単量体混合物(m2)20~90質量%を重合してなり(ただし、複合ゴム状重合体(B1)とビニル系単量体混合物(m2)との合計は100質量%)、
該ビニル系単量体混合物(m2)は、ビニル系単量体混合物(m2)の合計100質量%中に芳香族ビニル単量体を65~82質量%、シアン化ビニル単量体を18~35質量%含み、
グラフト率が35~60%である、請求項2又は3に記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 前記ビニル系単量体混合物(m1)の合計100質量%中の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が52~92質量%である、請求項1ないし4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)と前記グラフト共重合体(C)との合計100質量%中に、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を50~90質量%含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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