以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、本発明に係る駐車制御装置を、駐車制御システムに適用した場合を例にして説明する。駐車制御装置は、車載装置と情報の授受が可能な可搬の操作端末(スマートフォン、PDA:Personal Digital Assistantなどの機器)に適用してもよい。また、本発明に係る駐車制御方法は後述する駐車制御装置において使用できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る駐車制御装置100を有する駐車制御システム1000のブロック図である。本実施形態の駐車制御システム1000は、カメラ1a~1dと、測距装置2と、情報サーバ3と、操作端末5と、駐車制御装置100と、車両コントローラ70と、駆動システム40と、操舵角センサ50と、車速センサ60とを備える。本実施形態の駐車制御装置100は、操作端末5から入力された操作指令に基づいて、駐車スペースに車両を移動させる(駐車させる)動作を制御する。
操作端末5は、車両の外部に持ち出し可能な携帯型の入力機能及び通信機能を備えるコンピュータである。操作端末5は、駐車のための車両の運転(動作)を制御するための操作者Mの操作指令の入力を受け付ける。運転には駐車(入庫及び出庫)の操作を含む。操作者Mは、操作端末5を介して制御対象車両を駐車させるための操作指令を含む命令を入力する。操作指令は、駐車制御の実行・停止、目標駐車スペースの選択・変更、駐車経路の選択・変更、その他の駐車に必要な情報を含む。なお、操作者Mは、操作端末5を用いることなく、操作者Mのジェスチャなどにより操作指令を含む命令を、駐車制御装置100に認識させる(入力する)こともできる。
操作端末5は通信機を備え、駐車制御装置100、情報サーバ3と情報の授受が可能である。操作端末5は、通信ネットワークを介して、車外で入力された操作指令を駐車制御装置100へ送信し、操作指令を駐車制御装置100に入力させる。操作端末5は、固有の識別記号を含めた信号を用いて、駐車制御装置100と交信する。
操作端末5は、ディスプレイ53を備える。ディスプレイ53は、入力インターフェイス、各種情報を提示する。ディスプレイ53がタッチパネル型のディスプレイである場合には、操作指令を受け付ける機能を有する。
操作端末5は、本実施形態の駐車制御方法に用いられる操作指令の入力を受け付けるとともに、駐車制御装置100へ向けて操作指令を送出するアプリケーションがインストールされたスマートフォン、PDA:Personal Digital Assistantなどの携帯型の機器であってもよい。
情報サーバ3は、通信可能なネットワーク上に設けられた情報提供装置である。情報サーバは、通信装置31と、記憶装置32を備える。記憶装置32には、読み取り可能な地図情報33と、駐車場情報34と、障害物情報35とを備える。駐車制御装置100、操作端末5は、情報サーバ3の記憶装置32にアクセスして各情報を取得できる。
本実施形態の駐車制御装置100は、制御装置10と、入力装置20と、出力装置30とを備える。駐車制御装置100の各構成は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続される。入力装置20は、通信装置21を備える。通信装置21は、外部の操作端末5から送信された操作指令を受信し、入力装置20に入力する。外部の操作端末5に操作指令を入力する主体は人間(ユーザ、乗員、ドライバ、駐車施設の作業員)であってもよい。入力装置20は、受け付けた操作指令を制御装置10に送信する。出力装置30は、ディスプレイ31を含む。出力装置30は、駐車制御情報をドライバに伝える。本実施形態のディスプレイ31は、入力機能及び出力機能を備えるタッチパネル型のディスプレイである。ディスプレイ31が入力機能を備える場合には、ディスプレイ31が入力装置20として機能する。操作端末5から入力された操作指令に基づいて車両が制御されている場合であっても、乗員が入力装置20を介して緊急停止などの操作指令を入力できる。
本実施形態の駐車制御装置100の制御装置10は、駐車制御プログラムが格納されたROM12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、本実施形態の駐車制御装置100として機能する動作回路としてのCPU11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM13とを備える、駐車制御用のコンピュータである。
本実施形態の駐車制御プログラムは、操作者Mの第1高さ位置を検出し、制御対象となる車両Vの第2高さ位置を検出し、第1高さ位置が第2高さ位置よりも第1所定値以上高い場合には、制御命令において予め設定された第1速度をそれよりも高い第2速度に変更し、駐車制御における速度が変更された制御命令に従って、車両Vの駐車制御を実行させるプログラムを含む。駐車制御プログラムは本実施形態の駐車制御装置100の制御装置10により実行される。
本実施形態の駐車制御装置100は、外部から操作指令を送り、車両Vの動きを制御して、車両Vを所定の駐車スペースに駐車させるリモートコントロールタイプのものである。乗員は車室外にいてもよいし、車室内にいてもよい。
本実施形態の駐車制御装置100は、操舵操作、アクセル・ブレーキ操作が自動的に行われる自動制御タイプであってもよい。駐車制御装置100は、操舵操作を自動で行い、アクセル・ブレーキ操作をドライバが行う半自動タイプであってもよい。
本実施形態の駐車制御プログラムでは、ユーザが目標駐車スペースを任意に選択してもよいし、駐車制御装置100又は駐車設備側が目標駐車スペースを自動的に設定してもよい。
本実施形態に係る駐車制御装置100の制御装置10は、操作者Mの第1高さ位置と車両Vの第2高さ位置の相対高度の検出処理、駐車経路の算出処理、速度を含む制御命令の算出処理、及び駐車制御処理を実行させる機能を備える。制御装置10は、さらに障害物検出処理を実行させ、障害物の位置を考慮して駐車経路を算出させる機能を備える。各処理を実現するためのソフトウェアと上述したハードウェアの協働により、上記各処理を実行する。
図2A~図2Dに基づいて、操作者Mの位置の検出する処理を説明する。制御装置10は、操作者Mの位置を取得する。操作者Mの位置は、車両Vの移動面における位置の情報及び高さ位置の情報を含む。操作者Mの位置は、車両Vに設けられたセンサからのセンサ信号に基づいて検出してもよいし、操作者Mが所持する操作端末5の位置を検出し、操作端末5の位置に基づいて操作者Mの位置を算出してもよい。操作端末5は、所定の位置に備え付けられていてもよいし、操作者Mが所持してもよい。操作端末5が所定の位置に備え付けられている場合には、操作端末5の配置位置に操作者Mが移動し、操作端末5を使用する。これらの場合は、操作端末5の位置を操作者Mの位置とすることができる。
図2Aに示すように、車両Vに設けられた複数の測距装置2の検出結果及び/又はカメラ1の撮像画像に基づいて操作者Mの位置を検出する。各カメラ1a~1dの撮像画像に基づいて操作者Mの位置を検出できる。測距装置2は、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波レーダーなどのレーダー装置又はソナーを用いることができる。複数の測距装置2及びその検出結果は識別可能であるので、検出結果に基づいて操作者Mの二次元位置及び/又は三次元位置を検出できる。カメラ1についても同様に、測距装置2は、カメラ1a~1dと同じ位置に設けてもよいし、異なる位置に設けてもよい。また、制御装置10は、カメラ1a~1dの撮像画像に基づいて、操作者Mのジェスチャを検出し、ジェスチャに対応づけられた操作指令を識別することもできる。
図2Bに示すように、車両Vの異なる位置に設けられたアンテナ211のそれぞれと操作端末5との通信電波に基づいて操作端末5又は操作端末5を所持する操作者Mの位置を検出してもよい。複数のアンテナ211が一の操作端末5と通信する場合には、各アンテナ211の受信電波の強度が異なる。各アンテナ211の受信電波の強度差に基づいて、操作端末5の位置を算出できる。各アンテナ211の受信電波の強度差から、操作端末5又は操作者Mの二次元位置及び/又は三次元位置を算出できる。
図2Cに示すように、車両Vの運転席DSに対して所定の位置(方向・距離:D1,D2)を操作者Mの操作位置又は操作端末5の配置位置として予め指定してもよい。例えば、操作者Mが、指定位置に車両Vを一時停止し、降車して所定位置に設けられた操作端末5を操作する場合には、車両Vに対する操作者M又は操作者Mが所持する操作端末5の初期位置を検出できる。
同様に、図2Dに示すように、車両Vに対する操作位置(操作者Mの立ち位置:Operation Position)を示す画像情報を操作端末5のディスプレイ53に表示する。この表示制御は、操作端末5側にインストールされたアプリケーションにより実行されてもよいし、制御装置10の指令に基づいて実行されてもよい。
車両Vの位置(高さ位置を含む)は、車両Vが備える位置検出装置の検出値に基づいて取得できる。位置検出装置は、GPS(global positioning system)などの衛星からの受信電波に基づいて電波受信装置(車両V,操作端末5)の位置を検出する。同様に、操作者Mの位置は、操作端末5が備える位置検出装置の検出値に基づいて取得できる。
操作者Mと車両Vとの高さ情報は、相対的な高さの差分、つまり相対高度の情報として取得してもよい。相対高度は、操作者Mの第1高さ位置-(マイナス)車両Vの第2高さ位置により求めることができる。先述した車両Vに搭載された測距装置2の受信電波に基づいて相対高度を算出できる。車両Vに搭載されたカメラ1の操作者Mの撮像画像に基づいて相対高度を算出できる。車両Vに搭載された通信装置51において受信する操作端末5の受信電波に基づいて相対高度を算出できる。
図3A,図3Bに基づいて障害物の検出処理について説明する。障害物は、駐車場の壁、柱などの構造物、車両周囲の設置物、歩行者、他車両等を含む。
図3Aに示すように、車両Vに設けられた複数の測距装置2の検出結果、カメラ1の撮像画像に基づいて障害物を検出する。測距装置2は、レーダー装置の受信信号に基づいて物体の存否、物体の位置、物体の大きさ、物体までの距離を検出する。各カメラ1a~1dの撮像画像に基づいて物体の存否、物体の位置、物体の大きさ、物体までの距離を検出する。なお、障害物の検出は、カメラ1a~1dによるモーションステレオの技術を用いて行ってもよい。この検出結果は、駐車スペースが空いているか否か(駐車中か否か)の判断に用いられる。
図3Bに示すように、情報サーバ3の記憶装置32から取得した駐車場情報34に基づいて、駐車場の壁、柱などの構造物を含む障害物を検出できる。駐車場情報は、各駐車場(パーキングロット)の配置、識別番号、駐車施設における通路、柱、壁、収納スペースなどの位置情報を含む。情報サーバ3は駐車場が管理するものであってもよい。
図4A及び図4Bに基づいてリモートコントロールにより車両Vを操作して駐車させる場面を検討する。図4A,4Bに示す図は、車両V1を後退させて駐車させる際に観察される状況を示す図である。車両V1が駐車操作の対象車両である。車両V1を駐車させるスペースの両脇には他車両V2及びV3がすでに駐車している。図4Aに示す図は、車両Vの位置よりも高い位置に存在する操作者Mの視点から観察した車両V1~V3を示す。図4Bに示す図は、車両V1の位置と同じ又はそれよりも低い位置に存在する操作者Mの視点から観察した車両V1~V3を示す。図4Aに示すように、高い位置から見た場合には、操作者Mは車両V1の奥の車両V2の存在を確認できる。しかし、図4Bに示すように、同等又は低い位置から見た場合には、操作者Mの視点からでは車両V1の車体により奥の車両V2が隠れてしまい、車両V2の存在を視認することができない。
このように、操作者Mの第1高さ位置が車両Vの第2高さ位置よりも高い場合には、第1高さ位置が第2高さ位置と同等又は第1高さ位置が第2高さ位置よりも低い場合よりも、操作者Mによる車両Vの周囲の様子の確認がしやすいといえる。なお、第1高さ位置と第2高さ位置との差が微小であれば、車両周囲の確認のしやすさはさほど変わらない。本実施形態では、操作者Mが車両周囲を確認しやすくなると考えられる第1高さ位置と第2高さ位置との差として第1所定値を定義する。第1高さ位置と第2高さ位置との差が第1所定値以上である場合には、操作者Mが車両周囲を確認しやすくなると判断する。
車両Vの高さ、操作者Mの身長、操作者Mの視力にも影響される要因であるが、実験によると、第1所定値が5cm~60cm、つまり、第1高さ位置と第2高さ位置との差が5cm~60cmであるときに、操作者Mが「車両周囲を確認しやすい」「車両の操作がしやすい」と感じる傾向がみられることが分かった。実験では、操作者Mが駐車面に対して高さ5cm~15cmの歩道の上で操作する場合、操作者Mが駐車面に対して高さ15cm~50cmの台、階段の上で操作する場合、駐車面が操作者Mの歩行面に対して5cm~15cm凹んでおり、操作者Mが歩行面の上で操作する場合において、操作者M(テスター)の全員から「車両周囲を確認しやすい」「車両の操作がしやすい」とする回答を得た。
一方、第1所定値が大きければ大きいほど、第1高さ位置が高ければ高いほど車両周囲が確認しやくなるというわけではない。atan(高度差/距離)として求められる視野角度の観点から検討すると、車両Vまでの距離が10m、相対高度+50cmの場合の視野角度は約3度となる(atan(0.5m/10m)=約3度)。相対高度が10mとなると、相対高度により確認しやすくなるというメリットが得られないことがわかる。また、一般的に、距離が離れるほど車両Vを確認しにくくなる。車両Vの大きさ、操作者Mの視力にも影響される要因であるが、実験によると、相対高度が第2所定値以上となると、操作者Mが「車両周囲を確認しにくい」「車両の操作がしにくい」と感じることが実験により分かった。実験では、操作者Mが駐車面に対して高さ10mの陸橋、ベランダ、バルコニーの上で操作する場合において、操作者M(テスター)の全員から「車両周囲を確認しにくい」「車両の操作がしにくい」とする回答を得た。
本実施形態では、第1高さ位置と第2高さ位置の差が第1所定値以上であり、かつ第1所定値より大きい第2所定値未満である場合に、周囲の確認がしやすくなると判断し、車両Vの駐車処理における制御命令における速度を高く変更する。操作者Mと車両Vとの相対高度の範囲を限定することにより、車両周囲の確認がしやすい状態を抽出することができる。その結果、操作者Mにより車両周囲の確認がしやすい状態を確保しつつ、制御命令における速度を高く変更して駐車処理の時間を短縮することができる。
また、操作者Mと車両Vとの距離が離れている場合には、操作者Mは車両Vを視認しにくくなる。このため、制御装置10は、操作者Mと車両Vとの距離が所定距離未満の場合に、操作者Mが車両Vを確認しやすい状態であると判断し、第1速度を第2速度に変更する処理を行う。ここで操作者Mと車両Vとの距離とは、操作者Mと車両Vとの最短距離である。便宜的に操作者Mと車両Vとの水平距離を用いてもよい。操作者Mと車両Vとの距離の範囲を限定することにより、車両周囲の確認がしやすい状態を抽出できる。その結果、操作者Mにより車両周囲の確認がしやすい状態を確保しつつ、制御命令における速度を高く変更して駐車処理の時間を短縮することができる。
さらに、本実施形態の制御装置10は、車両周囲の障害物についても配慮する。制御装置10は、車両Vの周囲に存在する障害物を検出し、操作者Mと車両Vとの間に障害物が検出されていない(障害物の不存在が検出されたこと)を確認できた場合には、障害物によって駐車経路に死角が生じないことを確認できる。障害物の不存在は、操作者Mが車両Vを確認しやすい状態であると判断し、第1速度を第2速度に変更する処理を行う。操作者Mと車両Vとの間に障害物が存在しないことを確認し、状況を限定することにより、車両周囲の確認がしやすい場面を抽出できる。その結果、操作者Mにより車両周囲の確認がしやすい状態を確保しつつ、制御命令における速度を高く変更して駐車処理の時間を短縮することができる。
以下、図5に示すフローチャートに基づいて駐車制御の制御手順を説明する。
図5は、本実施形態に係る駐車制御システム1000が実行する駐車制御処理の制御手順を示すフローチャートである。駐車制御処理の開始のトリガは、特に限定されず、駐車制御装置100の起動スイッチが操作されたことをトリガとしてもよい。
本実施形態の駐車制御装置100は、車外から取得した操作指令に基づいて、車両Vを自動的に駐車スペースへ移動させる機能を備える。
ステップ101において、本実施形態に係る駐車制御装置100の制御装置10は、ステップ101において、車両周囲の情報を取得する。測距信号の取得、撮像画像の取得は択一的に実行してもよい。制御装置10は、車両Vの複数個所に取り付けられた測距装置2によって測距信号をそれぞれ取得する。制御装置10は、車両Vの複数個所に取り付けられたカメラ1a~1dによって撮像された撮像画像をそれぞれ取得する。特に限定されないが、車両Vのフロントグリル部にカメラ1aを配置し、リアバンパ近傍にカメラ1dを配置し、左右のドアミラーの下部にカメラ1b、1cを配置する。カメラ1a~1dとして、視野角の大きい広角レンズを備えたカメラを使用できる。カメラ1a~1dは、車両Vの周囲の駐車スペースの境界線及び駐車スペースの周囲に存在する物体を撮像する。カメラ1a~1dは、CCDカメラ、赤外線カメラ、その他の撮像装置である。
ステップ102において、制御装置10は、駐車可能な駐車スペースを検出する。制御装置10は、カメラ1a~1dの撮像画像に基づいて、駐車スペースの枠(領域)を検出する。制御装置10は、測距装置2の検出データ、撮像画像から抽出された検出データを用いて、空いている駐車スペースを検出する。制御装置10は、駐車スペースのうち、空車(他車両が駐車していない)であり、駐車を完了させるための経路が算出可能である駐車スペースを、駐車可能スペースとして検出する。
本実施形態において駐車経路が算出可能であるとは、障害物(駐車車両を含む)と干渉することなく、現在位置から目標駐車スペースに至る経路の軌跡を路面座標に描けることである。
ステップ103において、制御装置10は、駐車可能スペースを、操作端末5に送信し、そのディスプレイ53に表示し、車両Vを駐車させる目標駐車スペースの選択情報の入力を操作者Mに要求する。目標駐車スペースは、制御装置10、駐車施設側が自動的に選択してもよい。一の駐車スペースを特定する操作指令が操作端末5に入力された場合には、その駐車スペースを目標駐車スペースとして設定する。
本実施形態では、ステップ104において、乗員を降車させる。この後は、リモートコントロールにより目標駐車スペースに車両Vを移動させる。目標駐車スペースは、乗員が降車後に選択してもよい。
ステップ105において、制御装置10は、操作者Mと車両Vとの相対高度を取得する。相対高度は、操作者Mの第1高さ位置と車両Vの第2高さ位置との差である。制御装置10は、先述した手法により操作者Mの位置を検出する。操作者Mの位置は、高さ方向の第1高さ位置を含む。ステップ106において、制御装置10は、車両Vの高さ方向の第2高さ位置を取得する。制御装置10は、操作者Mの第1高さ位置と車両Vの第2高さ位置との差(第1高さ位置-第2高さ位置)を求めて、これを相対高度としてもよい。制御装置10は車載の測距装置2の検出結果に基づいて算出される操作者Mの第1高さ位置(車両Vに対する高さ)、車載のカメラ1の撮像画像に基づいて算出される操作者Mの第1高さ位置(車両Vに対する高さ)を、相対高度として取得してもよい。
ステップ106において、制御装置10は、先述した手法により障害物が存在する位置を検出する。
ステップ107において、制御装置10は、車両Vの停止位置から目標駐車スペースに至る駐車経路を算出する。駐車経路は、駐車スペースに移動するために必要な切り返し地点を含む。このとき、駐車経路は線として定義されるとともに、車幅に応じた車両Vの占有領域に応じた帯状の領域として定義される。車両Vの占有領域は、車幅と移動のために確保される余裕幅とを考慮して定義される。
ステップ108において、制御装置10は、駐車経路を移動する車両Vの制御命令を算出する。制御命令は、車両Vの操舵量、操舵速度、操舵加速度、シフトポジション、速度、加速度、及び減速度のうちの何れか一つ以上についての動作命令を含む。また、制御命令は、上記車両Vの動作命令の実行タイミング又は実行位置を含む。この制御命令が実行されると、車両Vは駐車経路を辿って目標駐車スペースへ移動する。本実施形態の制御装置10は、車両Vの外の操作者Mから取得した操作指令に基づき、算出された駐車経路に沿って車両Vを移動させる制御命令を実行する、いわゆるリモートコントロール型の駐車制御装置である。
本実施形態の制御装置10は、操作者Mの第1高さ位置と車両Vの第2高さ位置との相対高度に応じて、制御命令に含まれる速度を設定する。具体的に、制御装置10は、相対高度に基づいて、操作者Mの第1高さ位置が車両Vの第2高さ位置よりも第1所定値以上高いと判断された場合には、制御命令において予め設定された第1速度を、この第1速度よりも高い第2速度に変更する。つまり、操作者Mが車両Vよりも高い位置から車両V周囲を観察する状況は、操作者Mが車両Vを確認しやすい状況であると判断できるので、制御装置10に車両Vの移動速度を高めた制御命令の再計算をさせる。制御命令における速度を高くすることにより、車両Vの移動速度は総じて高くなる。これにより、操作者Mの車両操作のやりやすさ、車両Vの確認のしやすさを確保しつつ、駐車制御処理の開始から完了までの時間を短縮できる。
第2速度の設定の手法は特に限定されない。第1速度に所定値(正の値)を加算して第2速度を算出してもよいし、第1速度に所定値(1よりも大きい値)を乗じて第2速度を算出してもよい。予め、第2高さ位置に対する第1高さ位置の相対高度HTと第2速度MVとの関係を定義しておいてもよい。図6は、相対高度HTと第2速度MVとの関係の一例を示す図である。同図に示す関係によれば、相対高度HTが高くなるほど、第2速度MVも高くなる。
図7は、ステップ108のサブルーチンである。ステップ120において、制御装置10は、操作者Mの第1高さ位置が車両Vの第2高さ位置よりも第1所定値以上高いか否かを判断する。第2高さ位置に対する第1高さ位置の相対高度の値が負の値である場合、つまり、操作者Mが車両Vよりも低い位置にいる場合、又は第2高さ位置に対する第1高さ位置の相対高度の値が第1所定値未満である場合には、操作者Mは車両Vの周囲を確認しやすいとは言えないと判断しステップ125へ進み、予め規定値として設定された第1速度をそのまま制御命令に適用する。
他方、第2高さ位置に対する第1高さ位置の相対高度の値が正の値であり、かつ第1所定値以上である場合には、操作者Mは車両Vよりも高い位置に存在し、車両Vの周囲を確認しやすい状況であると判断できる。この場合は、ステップ121へ進む。また、ステップ120の条件を満たすときには、直接ステップ124へ進み、第1速度を、それよりも高い第2速度に変更してもよい。
ステップ121において、制御装置10は、操作者Mの第1高さ位置をさらに評価する。第2高さ位置に対する第1高さ位置の相対高度の値が正の値であり、かつ第2所定値未満であるか否かを判断する。第2所定値は、車両Vの周囲を確認しにくくなる高さとして定義される。人間の肉眼で車両Vの周囲を確認する場合、上述したように、高い位置から見下ろした方が、下から見上げるよりも周囲の状況は確認しやすい。しかし、高さが高いほど周囲の状況が確認しやすいというわけではなく、第2所定値以上高くなると操作者Mが相対的に高い位置にいることによる周囲が確認しやすいというメリットが得られなくなる。上述したように、操作者Mと車両Vとの水平距離(例えば10m)に相当する相対高度(距離)がある場合には、車両Vの周囲が確認しやすい状況であるとは言えない。このため、制御装置10は、ステップ125へ進み、予め規定値として設定された第1速度をそのまま制御命令に適用する。他方、第2高さ位置に対する第1高さ位置の相対高度の値が正の値であり、かつ第2所定値未満である場合にはステップ122に進む。ステップ121の条件を満たすときには、直接ステップ124へ進み、制御命令における第1速度を、それよりも高い第2速度に変更してもよい。
続くステップ122において、制御装置10は、操作者Mと車両Vとの距離を評価する。操作者Mと車両Vとの距離が所定距離未満である場合には、車両Vの周囲を確認しやすい状況であると判断できる。この場合は、ステップ123へ進む。ステップ122の条件を満たすときには、直接ステップ124へ進み、第1速度を、それよりも高い第2速度に変更してもよい。他方、操作者Mと車両Vとの距離が所定距離以上である場合には、車両Vの周囲が確認しやすい状況であるとは言えない。このため、制御装置10は、ステップ125へ進み、予め規定値として設定された第1速度をそのまま制御命令に適用する。
ステップ123において、制御装置10は、操作者Mと車両Vとの間に障害物が存在しないことを確認する。操作者Mと車両Vとの間に障害物が検出されていない場合には、障害物によって駐車経路に死角が生じることがなく、車両Vの周囲を確認しやすい状況であると判断できる。この場合は、ステップ124へ進む。他方、操作者Mと車両Vとの間に障害物が検出されて、存在することが確認された場合には、車両Vの周囲が確認しやすい状況であるとは言えない。このため、制御装置10は、ステップ125へ進み、予め規定値として設定された第1速度をそのまま制御命令に適用する。上記処理の下、速度を決定し、速度を含む制御命令を算出する。
図5に戻り、ステップ108において、制御装置10は、算出した駐車経路の上を車両Vに移動させるための制御命令を生成する。制御命令に必要な車両Vの諸元情報は、予め制御装置10が記憶する。制御命令は、車両Vが駐車経路を走行する際における、タイミング又は位置に対応づけられた車両Vの目標速度(ゼロを含む)、減速度、操舵量、操舵速度、操舵加速度、シフトポジションその他の動作命令を含む。目標とする速度は、上限速度を含む。目標とする加減速度は、上限加速度、上限減速度を含む。目標とする操舵量、操舵速度、操舵加速度はそれらの上限値を含む。この駐車経路及び駐車経路に対応づけられた動作命令が車両Vによって実行されることにより、目標駐車スペースに車両Vを移動させる(駐車させる)ことができる。
図8は、制御命令の一例を示す図である。図8は、駐車経路の位置RTに目標速度TVが対応づけられた制御命令の一例を示す。駐車経路の各地点に車両Vが走行するときの目標速度TVが規定されている。駐車経路上の駐車制御処理の開始地点PS、切り返し地点PT、及び駐車制御処理の終了地点PEの各地点において目標速度はゼロとなる。図5に示す制御命令において、実線CR2は、第2上限速度MV2(>第1上限速度MV1)が適用された制御命令である。破線CR1は、予め設定された第1上限速度MV1(<第2上限速度MV2)が適用された制御命令である。第1上限速度、第2上限速度は目標速度の一態様である。同図に示すように、破線CR1で示す制御命令の目標速度TVは、実線CR2で示す制御命令の目標速度TVよりも低い。ちなみに、第1上限速度は、第1高さ位置と第2高さ位置との相対高度が第1所定値未満である(|第1高さ位置-第2高さ位置|<第1所定値)と判断された場合に適用される上限速度である。本実施形態では、この第1上限速度を標準的な上限速度として設定する。
ステップ109以降の処理を説明する。本実施形態の駐車制御装置100は、車両Vに搭乗することなく、外部から車両Vに目標駐車スペースの設定指令、駐車制御処理の開始指令、駐車中断・中止指令などを送信して駐車を行うリモートコントロールによる駐車制御処理を実行する。ステップ109において、制御装置10は、操作端末5のディスプレイ53に駐車経路を提示する。操作者Mが駐車経路を確認し、ステップ110において実行命令が入力された場合には、ステップ111に進む。操作端末5は操作者Mの実行命令を車両Vの駐車制御装置100へ送出する。車両Vの駐車制御装置100は、駐車制御を開始する。
ステップ113において、制御装置10は、相対高度(第1高さ位置と第2高さ位置の差)を周期的に算出する。車両Vの移動又は操作者Mの移動により相対高度は変化し、操作者Mの車両Vの確認のしやすさは変化する。制御装置10は、状況の変化に対応するために、相対高度を所定周期で算出する。ステップ114において、制御装置10は、相対高度に変化があるか否かを判断する。変化があれば、操作者Mが車両V及び駐車経路の確認のしやすさ、リモート操作のし易さにも変化があるので制御命令を再度算出する。新たに適切な制御命令が算出できた場合には、新たな駐車経路を採用する。ステップ115において、制御装置10は、ステップ108で算出した制御命令を更新する。ステップ114において相対高度に変化がなければ、新たな制御命令を算出する必要はないのでステップ116へ進む。
ステップ116において、制御装置10は、車両Vが切り返し地点に到達するまで、相対高度の変化を監視する。車両Vが切り返し地点に到達したら、ステップ117において、制御命令に含まれるシフトチェンジを実行する。その後、ステップ118において制御命令を継続的に実行することで駐車制御を完了させる。
本実施形態の駐車制御装置100は、車両Vが駐車経路に沿って移動するように、制御命令に従い、車両コントローラ70を介して駆動システム40の動作を制御する。駐車制御装置100は、計算された駐車経路に車両Vの走行軌跡が一致するように操舵装置が備える操舵角センサ50の出力値をフィードバックしながらEPSモータなどの車両Vの駆動システム40への指令信号を演算し、この指令信号を駆動システム40又は駆動システム40を制御する車両コントローラ70へ送出する。
本実施形態の駐車制御装置100は、駐車制御コントロールユニットを備える。駐車制御コントロールユニットは、AT/CVTコントロールユニットからのシフトレンジ情報、ABSコントロールユニットからの車輪速情報、舵角コントロールユニットからの舵角情報、ECMからのエンジン回転数情報等を取得する。駐車制御コントロールユニットは、これらに基づいて、EPSコントロールユニットへの自動操舵に関する指示情報、メータコントロールユニットへの警告等の指示情報等を演算し、出力する。制御装置10は、車両Vの操舵装置が備える操舵角センサ50、車速センサ60その他の車両Vが備えるセンサが取得した各情報を、車両コントローラ70を介して取得する。
本実施形態の駆動システム40は、駐車制御装置100から取得した制御指令信号に基づく駆動により、車両Vを現在位置から目標駐車スペースに移動(走行)させる。本実施形態の操舵装置は、車両Vの左右方向への移動を行う駆動機構である。駆動システム40に含まれるEPSモータは、駐車制御装置100から取得した制御指令信号に基づいて操舵装置のステアリングが備えるパワーステアリング機構を駆動して操舵量を制御し、車両Vを目標駐車スペースMoへ移動する際の操作を制御する。なお、駐車をさせるための車両Vの制御内容及び動作手法は特に限定されず、出願時において知られた手法を適宜に適用できる。
本実施形態における駐車制御装置100は、車両Vの位置と目標駐車スペースの位置とに基づいて算出された経路に沿って、車両Vを目標駐車スペースへ移動させる際に、アクセル・ブレーキが指定された制御車速(設定車速)に基づいて自動的に制御されるとともに、ステアリング装置の操作が車速に応じて自動で車両Vの動きを制御する。
本発明の実施形態の駐車制御方法は、以上のように駐車制御装置において使用されるので、以下の効果を奏する。本実施形態の駐車制御装置100は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
[1]本実施形態の駐車制御方法は、操作者Mの第1高さ位置が車両Vの第2高さ位置よりも第1所定値以上高い場合には、制御命令において予め設定された第1速度を、この第1速度よりも高い第2速度に変更する。つまり、操作者Mが車両Vよりも高い位置から車両V周囲を観察できる状況は、操作者Mが確認しやすい状況であると判断できるので、制御装置10に車両Vの移動速度を高めた制御命令の再計算をさせる。制御命令における速度を高くすることにより、車両Vの移動速度は総じて高くなる。これにより、操作者Mの車両Vを遠隔操作する場合の操作のしやすさ、車両の周囲の状況確認のしやすさを確保しつつ、駐車制御処理の開始から完了までの時間を短縮できる。
[2]本実施形態の駐車制御方法は、第1高さ位置と第2高さ位置の差が第1所定値以上であり、かつ第1所定値よりも大きい第2所定値未満である場合に、周囲の確認がしやすくなると判断し、車両Vの駐車処理における制御命令における速度を高く変更する。操作者Mと車両Vとの相対高度の範囲を限定することにより、車両周囲の確認がしやすい状態を抽出することができる。その結果、操作者Mにより車両周囲の確認がしやすい状態を確保しつつ、制御命令における速度を変更して駐車処理の時間を短縮することができる。
[3]本実施形態の駐車制御方法は、操作者Mと車両Vとの距離が離れている場合には、操作者Mは車両Vを視認しにくくなる。このため、制御装置10は、操作者Mと車両Vとの距離が所定距離未満の場合に、操作者Mが車両Vを確認しやすい状態であると判断し、第1速度を第2速度に変更する処理を行う。操作者Mと車両Vとの距離の範囲を限定することにより、車両周囲の確認がしやすい状態を抽出できる。その結果、操作者Mにより車両周囲の確認がしやすい状態を確保しつつ、制御命令における速度を変更して駐車処理の時間を短縮することができる。
[4]本実施形態の駐車制御方法は、車両Vの周囲に存在する障害物を検出し、操作者Mと車両Vとの間に障害物が検出されていない場合には、障害物によって駐車経路に死角が生じないことを確認できる。障害物の不存在は、操作者Mが車両Vを確認しやすい状態であると判断し、第1速度を第2速度に変更する処理を行う。操作者Mと車両Vとの間に障害物が存在しないことを確認し、状況を限定することにより、車両周囲の確認がしやすい場面を抽出できる。その結果、操作者Mにより車両周囲の確認がしやすい状態を確保しつつ、制御命令における速度を変更して駐車処理の時間を短縮することができる。
[5]本実施形態の駐車制御方法が実行される駐車制御装置100においても、上記1から17に記載した作用及び効果を奏する。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。