以下に、本発明に係る動力伝達装置の制御装置の一実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態で対象とする車両Veの一例を示すスケルトン図である。車両Veは、動力源であるエンジン1や動力伝達装置150などを備えている。エンジン1から出力された動力は、動力伝達装置150に設けられた、流体伝動装置であるトルクコンバータ2、入力軸3、前後進切替機構4、ベルト式の無段変速部5あるいはギヤ列6、出力軸7、カウンタギヤ機構8、デファレンシャルギヤ9、車軸10、を介して駆動輪11に伝達される。また、無段変速部5の下流側には、エンジン1を駆動輪11から切り離すためのクラッチとして第2クラッチC2が設けられている。第2クラッチC2を開放させることによって、無段変速部5と出力軸7との間がトルク伝達不能に遮断され、エンジン1に加え無段変速部5が駆動輪11から切り離される。
具体的には、トルクコンバータ2は、エンジン1に連結されたポンプインペラ2aと、ポンプインペラ2aに対向して配置されたタービンランナ2bと、ポンプインペラ2aとタービンランナ2bとの間に配置されたステータ2cとを備えている。トルクコンバータ2の内部は作動流体(オイル)で満たされている。ポンプインペラ2aはエンジン1のクランクシャフト1aと一体回転する。タービンランナ2bには、入力軸3が一体回転するように連結されている。トルクコンバータ2はロックアップクラッチを備え、その係合状態ではポンプインペラ2aとタービンランナ2bとが一体回転し、その開放状態ではエンジン1から出力された動力が作動流体を介してタービンランナ2bに伝達される。なお、ステータ2cは一方向クラッチを介してケースなどの固定部に保持されている。
また、ポンプインペラ2aには、ベルト機構などの伝動機構を介して、機械式オイルポンプ41が連結されている。機械式オイルポンプ41は、ポンプインペラ2aを介してクランクシャフト1aに連結されているため、エンジン1によって駆動される。なお、機械式オイルポンプ41とポンプインペラ2aとが一体回転するように構成されてもよい。
入力軸3は、前後進切替機構4に連結されている。前後進切替機構4は、エンジントルクを駆動輪11へ伝達する際、駆動輪11に作用するトルクの方向を前進方向と後進方向とに切り替える。前後進切替機構4は、差動機構からなり、図1に示す例ではダブルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されている。その前後進切替機構4は、サンギヤ4Sと、サンギヤ4Sに対して同心円上に配置されたリングギヤ4Rと、サンギヤ4Sに噛み合っている第1ピニオンギヤ4P1と、第1ピニオンギヤ4P1及びリングギヤ4Rに噛み合っている第2ピニオンギヤ4P2と、第1ピニオンギヤ4P1及び第2ピニオンギヤ4P2を自転可能かつ公転可能に保持しているキャリヤ4Cとを備えている。サンギヤ4Sには、ギヤ列6の駆動ギヤ61が一体回転するように連結されている。キャリヤ4Cには、入力軸3が一体回転するように連結されている。また、サンギヤ4Sとキャリヤ4Cとを選択的に一体回転させる第1クラッチC1が設けられている。第1クラッチC1を係合させることによって、前後進切替機構4全体が一体回転する。さらに、リングギヤ4Rを選択的に回転不能に固定するブレーキB1が設けられている。第1クラッチC1及びブレーキB1は、油圧式である。
例えば、第1クラッチC1を係合させ、かつブレーキB1を開放させると、サンギヤ4Sとキャリヤ4Cとが一体回転する。つまり、入力軸3と駆動ギヤ61とが一体回転する。また、第1クラッチC1を開放させ、かつブレーキB1を係合させると、サンギヤ4Sとキャリヤ4Cとが逆方向に回転する。つまり、入力軸3と駆動ギヤ61とは逆方向に回転する。
車両Veでは、無段変速部5と、有段変速部であるギヤ列6とが、並列に設けられている。入力軸3と出力軸7との間の動力伝達経路として、無段変速部5を介する動力伝達経路(以下「第1経路」という)と、ギヤ列6を介する動力伝達経路(以下「第2経路」という)とが、並列に形成されている。
無段変速部5は、入力軸3と一体回転するプライマリプーリ51と、セカンダリシャフト54と一体回転するセカンダリプーリ52と、プライマリプーリ51及びセカンダリプーリ52に形成されたV溝に巻き掛けられたベルト53とを備えている。入力軸3はプライマリシャフトとなる。プライマリプーリ51及びセカンダリプーリ52のV溝幅を変化させることによってベルト53の巻き掛け径が変化するので、無段変速部5の変速比γを連続的に変化させることができる。無段変速部5の変速比γは、最大変速比γmax(最Low)から最小変速比γmin(最High)の範囲内で連続的に変化する。
プライマリプーリ51は、入力軸3と一体化された固定プーリ51aと、入力軸3上で軸線方向に移動可能な可動プーリ51bと、可動プーリ51bに推力を付与するプライマリ油圧アクチュエータ51cとを備えている。固定プーリ51aのプーリ面と可動プーリ51bのプーリ面とが対向して、プライマリプーリ51のV溝を形成する。プライマリ油圧アクチュエータ51cは、可動プーリ51bの背面側に配置されている。プライマリ油圧アクチュエータ51cに供給される油圧(以下「プライマリ圧」という)Pinによって、可動プーリ51bを固定プーリ51a側へ移動させる推力(プライマリ推力)が発生する。プライマリ推力は、プライマリ圧Pinに受圧面積を乗じて得られる押付力である。
セカンダリプーリ52は、セカンダリシャフト54と一体化された固定プーリ52aと、セカンダリシャフト54上で軸線方向に移動可能な可動プーリ52bと、可動プーリ52bに推力を付与するセカンダリ油圧アクチュエータ52cとを備えている。固定プーリ52aのプーリ面と可動プーリ52bのプーリ面とが対向して、セカンダリプーリ52のV溝を形成する。セカンダリ油圧アクチュエータ52cは、可動プーリ52bの背面側に配置されている。セカンダリ油圧アクチュエータ52cに供給される油圧(以下「セカンダリ圧」という)Poutによって、可動プーリ52bを固定プーリ52a側へ移動させる推力(セカンダリ推力)が発生する。セカンダリ推力は、セカンダリ圧Poutに受圧面積を乗じて得られる押付力である。
第2クラッチC2は、セカンダリシャフト54と出力軸7との間に設けられており、出力軸7から無段変速部5を選択的に切り離すことができる。例えば、第2クラッチC2を係合させると、無段変速部5と出力軸7との間が動力伝達可能に接続され、セカンダリシャフト54と出力軸7とが一体回転する。第2クラッチC2を開放させると、セカンダリシャフト54と出力軸7との間がトルク伝達不能に遮断され、エンジン1及び無段変速部5が駆動輪11から切り離される。第2クラッチC2は油圧式である。油圧アクチュエータによって第2クラッチC2の係合要素同士が摩擦係合するように構成されている。
出力軸7には、出力ギヤ7aと従動ギヤ63とが一体回転するように取り付けられている。出力ギヤ7aは、減速機構であるカウンタギヤ機構8のカウンタドリブンギヤ8aと噛み合っている。カウンタギヤ機構8のカウンタドライブギヤ8bは、デファレンシャルギヤ9のリングギヤ9aと噛み合っている。デファレンシャルギヤ9には、左右の車軸10を介して左右の駆動輪11が連結されている。
ギヤ列6は、前後進切替機構4のサンギヤ4Sと一体回転する駆動ギヤ61と、カウンタギヤ機構62と、出力軸7と一体回転する従動ギヤ63とを含む。ギヤ列6は減速機構であって、ギヤ列6の変速比(ギヤ比)は、無段変速部5の最大変速比γmaxよりも大きい所定値に設定されている。ギヤ列6の変速比は固定変速比である。車両Veでは、発進時に、エンジン1からギヤ列6を介して駆動輪11にトルクを伝達させるように構成されている。ギヤ列6は発進ギヤとして機能する。
駆動ギヤ61は、カウンタギヤ機構62のカウンタドリブンギヤ62aと噛み合っている。カウンタギヤ機構62は、カウンタドリブンギヤ62aと、カウンタシャフト62bと、従動ギヤ63に噛み合っているカウンタドライブギヤ62cとを含む。カウンタシャフト62bには、カウンタドリブンギヤ62aが一体回転するように取り付けられている。カウンタシャフト62bは入力軸3及び出力軸7と平行に配置されている。カウンタドライブギヤ62cは、カウンタシャフト62bに対して相対回転可能に構成されている。また、カウンタシャフト62bとカウンタドライブギヤ62cとを選択的に一体回転させる噛合式の係合装置(以下、ドグクラッチという。)S1が設けられている。
ドグクラッチS1は、噛合式の一対の第1係合要素64a及び第2係合要素64bと、軸線方向に移動可能なスリーブ64cとを備えている。第1係合要素64aは、カウンタシャフト62bにスプライン嵌合されたハブである。第1係合要素64aとカウンタシャフト62bとは一体回転する。第2係合要素64bは、カウンタドライブギヤ62cと一体回転するように連結されている。つまり、第2係合要素64bはカウンタシャフト62bに対して相対回転する。スリーブ64cの内周面に形成されたスプライン歯が、第1係合要素64a及び第2係合要素64bの外周面に形成されたスプライン歯と噛み合うことによって、ドグクラッチS1は係合状態となる。ドグクラッチS1を係合させることによって、駆動ギヤ61と従動ギヤ63との間(第2経路)がトルク伝達可能に接続される。第2係合要素64bとスリーブ64cとの噛み合いが解除されることによって、ドグクラッチS1は開放状態となる。ドグクラッチS1を開放させることによって、駆動ギヤ61と従動ギヤ63との間(第2経路)はトルク伝達不能に遮断される。また、ドグクラッチS1は、油圧式であり、油圧アクチュエータによってスリーブ64cが軸線方向に移動する。さらに、ドグクラッチS1は、周知のシンクロメッシュ機構を含むように構成されている。
図2は、車両Veに設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。本実施形態に係る車両Veには、エンジン1や動力伝達装置150などを制御する電子制御装置(以下「ECU」という)100が備えられている。ECU100は、マイクロコンピュータを主体にして構成され、入力されたデータ及び予め記憶させられているデータを使用して演算を行い、その演算結果を指令信号として出力する。例えば、ECU100は、エンジン1に指令信号を出力して、燃料供給量や吸入空気量や燃料噴射や点火時期などを制御する。また、ECU100は、油圧制御回路200に油圧指令信号を出力して、無段変速部5の変速比の維持や、無段変速部5の変速動作や、第1クラッチC1などの各係合装置の動作を制御する。油圧制御回路200は、無段変速部5の各油圧アクチュエータ51c,52cや、各係合装置C1,C2,B1,S1の油圧アクチュエータに油圧を供給する。ECU100は、油圧制御回路200を制御することによって、動力伝達経路を第1経路と第2経路とに切り替える制御や、無段変速部5の変速比を維持する制御や、無段変速部5の変速制御や、各種の走行モードに切り替える制御などを実行する。
図2に示すように、ECU100には、各種センサ31〜36からの信号が入力される。エンジン回転数センサ31は、クランクシャフト1aの回転数(エンジン回転数)Neを検出する。入力軸回転数センサ32は、入力軸3の回転数(入力軸回転数)Ninを検出する。出力軸回転数センサ33は、出力軸7の回転数(出力軸回転数)Noutを検出する。車速センサ34は、車速Vを検出する。シフトポジションセンサ35は、図示しないシフトレバーのポジションを検出する。油圧センサ36は、セカンダリ油圧アクチュエータ52cに供給されるセカンダリ圧Poutを検出する。なお、ECU100には、アクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度センサや、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキストロークセンサからの信号が入力される(いずれも図示せず)。また、ECU100は、無段変速部5が回転中、入力軸回転数Ninを出力軸回転数Noutで割ることにより無段変速部5の変速比γ(=Nin/Nout)を算出できる。
ECU100は、走行制御部101と、切替制御部102とを備えている。走行制御部101は、車両Veを複数の走行モードに制御する。切替制御部102は、後述する油圧制御回路200に設けられた切替弁206を制御油圧によって切り替える際に無段変速部5の変速比が維持されるように制御する。
走行モードは、発進(ギヤ走行)と中速(ベルト走行)と高速(ベルト走行)との三つの走行モードが含まれる。発進時は、第1クラッチC1とドグクラッチS1とを係合させ、且つ、第2クラッチC2とブレーキB1とを開放させる。発進時の動力伝達経路は、ギヤ列6を介する第2経路に設定される。発進後に車速Vがある程度上昇した場合に、第1クラッチC1を開放させ、且つ、第2クラッチC2を係合させる掴み替え制御を行うことにより、走行モードが発進から中速に移行する。中速では、第2クラッチC2とドグクラッチS1を係合させ、且つ、第1クラッチC1とブレーキB1とを開放させる。中速時の動力伝達経路は、無段変速部5を介する第1経路に設定される。つまり、発進から中速への移行時、動力伝達経路が第2経路から第1経路に切り替わる。また、第1クラッチC1と第2クラッチC2との掴み替え制御は、伝達トルク容量を徐々に変化させるCtoC制御である。中速走行中に車速Vがさらに上昇すると、ドグクラッチS1を開放させて、走行モードが中速から高速に移行する。高速では、第2クラッチC2を係合させ、且つ、第1クラッチC1とブレーキB1とドグクラッチS1とを開放させる。中速から高速への移行時、経路切替が行われず、動力伝達経路は第1経路のままである。
後進時(R)は、ブレーキB1とドグクラッチS1とを係合させ、且つ、第1クラッチC1と第2クラッチC2とを開放させることにより、動力伝達経路がギヤ列6を介する第2経路に設定される。シフトポジションが「N」または「P」の場合、ドグクラッチS1を係合させ、且つ、第1クラッチC1と第2クラッチC2とブレーキB1とを開放させる。
図3は、油圧制御回路200の一例を模式的に示す油圧回路図である。油圧制御回路200は、油圧供給源として、エンジン1によって駆動する機械式オイルポンプ41を備えている。機械式オイルポンプ41は、オイルパンに貯留されているオイルを吸引して第1油路201に圧送する。エンジン回転数が高い場合には機械式オイルポンプ41の吐出量は増大し、エンジン回転数が低い場合には機械式オイルポンプ41の吐出量は減少する。
油圧制御回路200は、第1油路201の油圧を第1ライン圧PL1に調圧する第1調圧弁(プライマリレギュレータバルブ)211と、第1調圧弁211から排出されたオイルを第2ライン圧PL2に調圧する第2調圧弁(セカンダリレギュレータバルブ)212と、第1ライン圧PL1を元圧として所定のモジュレータ圧PMを調圧する第1減圧弁(モジュレータバルブ)213と、第1ライン圧PL1を元圧としてプライマリ圧Pinを調圧する第2減圧弁(変速比コントロールバルブ)214と、第1ライン圧PL1を元圧としてセカンダリ圧Poutを調圧する第3減圧弁(挟圧コントロールバルブ)215とを備える。この第3減圧弁215はセカンダリ圧Poutを出力するセカンダリ圧コントロールバルブである。なお、走行状態に応じた第1ライン圧PL1を発生させるように、図示しないリニアソレノイド(SLT)から出力される制御油圧(PSLT)に基づいて第1調圧弁211が制御される。また、第2調圧弁212によって第2ライン圧PL2に調圧されたオイルはトルクコンバータ2に供給される。その第2調圧弁212から排出されたオイルはギヤ同士の噛合い部などの潤滑系に供給される。
第1減圧弁213には、第3油路203を介して複数のリニアソレノイドSL1,SL2,SLG,SLP,SLSが接続されている。各リニアソレノイドSL1,SL2,SLG,SLP,SLSは、ECU100によってそれぞれ独立に励磁、非励磁や電流が制御され、ECU100から出力される油圧指令信号(指示圧)に応じて油圧を調圧する。
リニアソレノイドSL1は、モジュレータ圧PMを元圧にして第1クラッチ圧PC1を調圧し、第1クラッチC1に供給する。リニアソレノイドSL2は、モジュレータ圧PMを元圧にして第2クラッチ圧PC2を調圧し、第2クラッチC2に供給する。リニアソレノイドSLGは、モジュレータ圧PMまたはリバース圧PRを元圧にして供給油圧PSLGを調圧し、ドグクラッチS1とブレーキB1とに供給する。リニアソレノイドSLGには、モジュレータ圧PMが入力される入力ポートと、リバース圧PRが入力される入力ポートとが含まれる。図示しないシフトレバーの操作に基づいてECU100がリニアソレノイドSLGを制御することによって、供給油圧PSLGの元圧はモジュレータ圧PMまたはリバース圧PRに切り替わる。そして、リニアソレノイドSLGの出力ポートは切替弁206を介してドグクラッチS1とブレーキB1とに接続されている。
切替弁206は、S1−B1アプライコントロールバルブ(S1−B1ACV)であり、リニアソレノイドSLSから入力される制御油圧PSLSに応じて、供給油圧PSLGの供給先をドグクラッチS1とブレーキB1とに切り替えるように作動する。さらに、供給油圧PSLGが入力されるポートとは別のポートからモジュレータ圧PMが切替弁206に入力される。シフトレバーの操作に基づいてECU100が切替弁206を切替制御することにより、切替弁206を介してモジュレータ圧PMをドグクラッチS1に供給することもできる。
具体的には、シフトレバーが「D」ポジションの場合、モジュレータ圧PMを元圧にした供給油圧PSLGがドグクラッチS1に供給される。シフトレバーが「R」ポジションの場合、リバース圧PRを元圧にした供給油圧PSLGが切替弁206を介してブレーキB1に供給され、かつモジュレータ圧PMが切替弁206を介してドグクラッチS1に供給される。この「R」ポジションのときに所定値以上の制御油圧PSLSを出力すると、この制御油圧PSLSが入力される切替弁206をブレーキB1側からドグクラッチS1側に切り替えることができる。このように、切替弁206は供給油圧PSLGの供給先を切り替えるバルブとして機能する。なお、油圧制御回路200には、シフトレバーの操作に応じて機械的に作動するマニュアルバルブ(図示せず)が含まれる。シフトレバーが「R」ポジションの場合には、リバース圧PRが生じるので、マニュアルバルブを介してリバース圧PRがリニアソレノイドSLGに入力される。
リニアソレノイドSLPは、モジュレータ圧PMを元圧として制御油圧PSLPを調圧し、第2減圧弁214へ出力する。このリニアソレノイドSLPはプライマリ電磁弁である。リニアソレノイドSLSは、モジュレータ圧PMを元圧として制御油圧PSLSを調圧し、第3減圧弁215へ出力する。このリニアソレノイドSLSはセカンダリ電磁弁である。また、油圧制御回路200では、リニアソレノイドSLSから出力された制御油圧PSLSが切替弁206に入力される。
第2減圧弁214には、第4油路204を介してプライマリ油圧アクチュエータ51cが接続されている。第2減圧弁214と第4油路204とが無段変速部5の変速比制御回路を形成している。第2減圧弁214は無段変速部5の変速比γを制御するためのバルブである。第2減圧弁214はプライマリ油圧アクチュエータ51cへ供給する油量(油圧)を制御する。第2減圧弁214は、第1ライン圧PL1を元圧としてプライマリ圧Pinを調圧し、プライマリ油圧アクチュエータ51cに供給する。第2減圧弁214はリニアソレノイドSLPから入力される制御油圧PSLPに基づいてプライマリ圧Pinを調圧する。ECU100は、リニアソレノイドSLPに出力する油圧指令信号を制御することによってプライマリ圧Pinを調節する。プライマリ圧Pinが変化することによりプライマリプーリ51のV溝幅が変化する。ECU100はプライマリ圧Pinを制御することによって無段変速部5の変速比γを制御する。
第3減圧弁215には、第5油路205を介してセカンダリ油圧アクチュエータ52cが接続されている。第3減圧弁215と第5油路205とが無段変速部5の挟圧制御回路を形成する。第3減圧弁215はベルト挟圧を制御するバルブである。第3減圧弁215はセカンダリ油圧アクチュエータ52cへ供給する油量(油圧)を制御する。第3減圧弁215は、第1ライン圧PL1を元圧としてセカンダリ圧Poutを調圧し、セカンダリ油圧アクチュエータ52cに供給する。第3減圧弁215はリニアソレノイドSLSから入力される制御油圧PSLSに基づいてセカンダリ圧Poutを調圧する。ECU100は、リニアソレノイドSLSに出力する油圧指令信号を制御することによってセカンダリ圧Poutを調節する。セカンダリ圧Poutが変化することにより無段変速部5のベルト挟圧が変化する。ECU100はセカンダリ圧Poutを制御することによって無段変速部5の挟圧を制御する。
ベルト挟圧はプライマリプーリ51及びセカンダリプーリ52のV溝でベルト53を挟みつける力である。ベルト挟圧によって、回転中の無段変速部5でプライマリプーリ51及びセカンダリプーリ52とベルト53との間の摩擦力が生じ、プライマリプーリ51及びセカンダリプーリ52のV溝に巻きかけられた状態のベルト53に張力が生じる。必要なベルト挟圧が生じるように、ECU100はリニアソレノイドSLS及び第3減圧弁215によりセカンダリ圧Poutを調圧制御する。例えば、第3減圧弁215に入力される制御油圧PSLSが高くなると、第3減圧弁215はセカンダリ圧Poutを増大させるように作動する。この場合、ECU100は、リニアソレノイドSLSへ出力する油圧指令値を大きくし、ベルト挟圧を増大させることができる。
ここで、意図せぬ油圧異常や、摩擦材の経年などによる摩擦係数の低下によって、CtoC制御の変速時間が長くなることがある。その状態が長く続くと、摩擦材の発熱量が増加し、さらなる摩擦材のダメージに繋がりかねない。そのため、ある変速時間(タイマー)をもって、変速強制終了(クラッチ油圧上昇による強制係合)に移行する。その際、同様にベルト滑り保護のためベルト挟圧も上昇させるが、クラッチ圧とベルト挟圧との応答性の差によって、時としてクラッチトルク容量がベルトトルク容量を上回ってしまうことが懸念される。これは、例えば、クラッチ圧を制御しているリニアソレノイドが直接クラッチ圧を制御しているのに対して、ベルト挟圧はバルブを介しての制御になるため、同時の制御ではベルト挟圧が応答性として劣ってしまうためである。
図4は、ECU100が行うCtoC制御及びベルト挟圧上昇制御のタイミングチャートの一例を示したものである。本実施形態においてECU100は、図4に示すように、制御開始から第1目標値である第2クラッチ圧目標値まで第2クラッチC2のアクチュエータに供給する油圧(第2クラッチ圧)を漸増させて制御を完了するCtoC制御において、第1所定時間である第1タイマーT1を超えた場合、第2クラッチ圧目標値まで油圧(第2クラッチ圧)を急増させて制御を完了する。また、ECU100は、図4に示すように、制御開始から第2目標値であるベルト挟圧目標値までセカンダリ油圧アクチュエータ52cに供給する油圧(ベルト挟圧)を漸増させて制御を完了するベルト挟圧上昇制御において、第1タイマーT1よりも短い第2所定時間である第2タイマーT2を超えた場合、ベルト挟圧目標値まで油圧(ベルト挟圧)を急増させて制御を完了する。
このように、本実施形態においては、CtoC制御の強制変速完了制御を行うまでの第1タイマーT1より、ベルト挟圧上昇制御の強制挟圧上昇完了制御を行うまでの第2タイマーT2のほうが短いため、ベルト挟圧制御の応答性が劣る場合でも、ベルト挟圧制御が完了する前に、CtoC制御が完了することを防ぐことができ、ベルト滑りの発生を抑制することができる。