以下、図面を参照して、本発明の結束機の実施の形態としての鉄筋結束機の一例について説明する。
<本実施の形態の鉄筋結束機の構成例>
図1は、本実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た図、図2は、本実施の形態の鉄筋結束機の要部構成の一例を示す側面から見た図、図3は、本実施の形態の鉄筋結束機の要部構成の一例を示す正面から見た図である。
本実施の形態の鉄筋結束機1Aは、ワイヤWを結束物である鉄筋Sに向けて送り、鉄筋Sの周囲に沿ってカールさせた後、ワイヤWの一部を把持して捩じることで、鉄筋SをワイヤWで結束する。
鉄筋結束機1Aは、ワイヤWが収納される収納部であるマガジン2Aと、マガジン2AからのワイヤWを引き出して送るワイヤ送り部3Aを備える。
鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3Aで送られたワイヤWを鉄筋Sの周囲に沿ってカールさせるカールガイド5Aと、鉄筋Sに沿ってカールされたワイヤWを切断する切断部6Aと、切断後、ワイヤWの一部を把持して捩じる結束部7Aと、結束部7A及び切断部6Aを駆動する駆動部8Aとを備える。
鉄筋結束機1Aは、矢印Fで示す正方向にワイヤWを送る動作で、マガジン2AからのワイヤWをワイヤ送り部3Aに案内する第1のワイヤガイド4A1と、ワイヤ送り部3Aから送り出されたワイヤWを切断部6Aに案内する第2のワイヤガイド4A2を備える。
マガジン2Aは、ワイヤWが繰り出し可能に巻かれたリール20を回転、着脱可能に収納する。本実施の形態の鉄筋結束機1Aは、2本のワイヤWで鉄筋Sを結束できるようにするため、リール20には2本のワイヤWが繰り出し可能に巻かれている。ワイヤWは、塑性変形し得る金属線で構成されるが、金属線が樹脂で被覆されたワイヤ、あるいは撚り線のワイヤ等であってもよい。
図4は、ワイヤ送り部の要部構成の一例を示す図である。ワイヤ送り部3Aは、並列された2本のワイヤWを挟持して、回転動作で送る一対の送り部材を含み、一対の送り部材として、第1の送りギア(第1の送り部材)30Lと第2の送りギア(第2の送り部材)30Rを備える。
第1の送りギア30Lの外周には、全周にわたって駆動力を伝達する歯部31Lが形成される。歯部31Lは、本例では平歯車を構成する形状である。第1の送りギア30Lは、外周の全周に、円周方向に沿ってワイヤWが入る溝部32Lが形成される。溝部32Lは、本例では断面形状が略V字形状の凹部で構成される。
第2の送りギア30Rも第1の送りギア30Lと同様、外周に、駆動力を伝達するための歯部31Rと、ワイヤWが入る溝部32Rが形成される。歯部31Rは平歯車を構成する形状であり、溝部32Rは断面形状が略V字形状の凹部で構成される。
第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rは、ワイヤWの送り経路を挟んで対向するように設けられる。
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを装填し、さらに挟持できるようにするため、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが離れる方向及び近づく方向に移動可能に構成される。第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、図示しないバネ等の付勢部材で互いに近づく方向に押圧される。
ワイヤWを第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に装填するには、第1の送りギア30Lに対する第2の送りギア30Rの押圧を解除する。これにより、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは互いが離れる方向に移動可能となり、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを装填するための間隔が形成される。ワイヤWを挟持するには、ワイヤWを装填した後、第1の送りギア30Lに対して第2の送りギア30Rを近づく方向に移動させる。
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間にワイヤWを挟持した状態で、第1の送りギア30Lの歯部31Lと第2の送りギア30Rの歯部31Rが噛み合うように構成される。これにより、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間で回転による駆動力が伝達される。
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの一方、本例では第1の送りギア30Lを駆動するワイヤ送り駆動部の一例である送りモータ33と、送りモータ33の駆動力を第1の送りギア30Lに伝達する駆動力伝達機構34を備える。
第1の送りギア30Lは、送りモータ33の回転動作が駆動力伝達機構34を介して伝達されて回転する。第2の送りギア30Rは、第1の送りギア30Lの回転動作が歯部31Lと歯部31Rとの噛み合いにより伝達され、第1の送りギア30Lに従動して回転する。
これにより、ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持したワイヤWを、ワイヤWの延在方向に沿って送る。2本のワイヤWを送る構成では、第1の送りギア30Lの溝部32Lと一方のワイヤW1との間に生じる摩擦力、及び第2の送りギア30Rの溝部32Rと他方のワイヤW2との間に生じる摩擦力により、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
ワイヤ送り部3Aは、送りモータ33の回転方向を切り替えることで、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの回転方向が切り替えられ、ワイヤWの送り方向が切り替えられる。
カールガイド5Aは、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWに巻き癖をつける第1ガイド50と、第1ガイド50から送り出されたワイヤWを結束部7Aに誘導する第2ガイド51を備える。
切断部6Aは、固定刃部60と、固定刃部60との協働でワイヤWを切断する可動刃部61と、駆動部8Aの駆動力を可動刃部61に伝達する伝達機構62とを備える。固定刃部60は、ワイヤWが通る開口60aを備え、開口60aにワイヤWを切断可能なエッジ部が設けてある。
可動刃部61は、固定刃部60を支点とした回転動作で、固定刃部60の開口60aを通るワイヤWを切断する。また、可動刃部61は、ワイヤWの端部の位置を、所定のワイヤ待機位置P1に合わせる位置出しを行うときに機能する。すわなち、ワイヤWの端部の位置出しを行うとき、可動刃部61を移動させてワイヤWの送り経路を閉じることで、ワイヤWの端部を可動刃部61に突き当てるようにしている。換言すれば、ワイヤWを切断するときの可動刃部61の位置を、可動刃部61でワイヤWの送り経路Lを閉じる閉位置とし、可動刃部61をワイヤWの送り経路Lから退避させた位置を、可動刃部61でワイヤWの送り経路Lを開く開位置とする。そして、閉位置に移動させた可動刃部61にワイヤWが突き当たるまでワイヤWを送ることで、ワイヤWをワイヤ待機位置P1に位置させる。このように、本例では、閉位置に移動した可動刃部61が、ワイヤ待機位置P1となる。
結束部7Aは、ワイヤWを把持する把持部70と、ワイヤWを把持した把持部70を回転させる作動部71を備える。把持部70は、作動部71の動作でワイヤWを把持して回転することで、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを捩じる。作動部71は、ワイヤWの端部を曲げる折り曲げ部71aを備え、把持部70でワイヤWを把持する動作と連動して、ワイヤWの端部を鉄筋S側へ曲げる。
駆動部8Aは、切断部6A及び結束部7Aを駆動する捩じりモータ80と、減速及びトルクの増幅を行う減速機81と、減速機81を介して捩じりモータ80に駆動されて回転する回転軸82とを備える。
駆動部8Aは、回転軸82の回転動作で、回転軸82の軸方向に沿って作動部71を移動させる。作動部71が回転軸82の軸方向に沿って移動することで、把持部70はワイヤWを把持する。駆動部8Aは、回転軸82の軸方向に沿って移動させた作動部71を、回転軸82の回転動作で回転させる。作動部71は、回転軸82が軸回りに回転することで、把持部70でワイヤWを捩じる。
駆動部8Aは、切断部6Aの伝達機構62に駆動力を伝達する移動部材83を備える。移動部材83は、回転軸82の回転動作で、回転軸82の軸方向に沿って移動する。伝達機構62は、回転軸82の軸方向に沿った移動部材83の動きを、可動刃部61の回転動作に変換する。
次に、ワイヤWの送りを案内するワイヤガイドについて説明する。図2に示すように、第1のワイヤガイド4A1はワイヤガイドの一例で、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対し、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの上流側に配置される。また、第2のワイヤガイド4A2は、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対し、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの下流側、より具体的には、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rと、切断部6Aとの間に配置される。
第1のワイヤガイド4A1及び第2のワイヤガイド4A2は、ワイヤWが通るガイド穴40Aを備える。ガイド穴40Aは、ワイヤWの径方向の位置を規制する形状を有する。2本のワイヤWを送る構成では、第1のワイヤガイド4A1及び第2のワイヤガイド4A2には、2本のワイヤWを並列させて通す形状のガイド穴40Aが形成される。
ガイド穴40Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間を通るワイヤWの送り経路L上に設けられる。第1のワイヤガイド4A1は、ガイド穴40Aを通るワイヤWを、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間の送り経路Lに誘導する。
正方向に送られるワイヤWの送り方向に対してガイド穴40Aの上流側にはワイヤ導入部が設けられる。ワイヤ導入部は、下流側に比べて開口面積を大きくした円錐形状または角錐形状等のテーパ状となっている。これにより、第1のワイヤガイド4A1及び第2のワイヤガイド4A2に対するワイヤWの導入が容易になる。
鉄筋結束機1Aは、一の方向に延伸し、結束部7Aや駆動部8Aを収容する本体部10Aと、本体部10Aから他の方向に延伸し、作業者により把持されるハンドル部11Aを備える。ハンドル部11Aは、一の方向においてカールガイド5A側(前側)にトリガ12Aを有する。トリガ12Aの操作によりトリガスイッチ13Aが押され、トリガスイッチ13Aの状態に応じて制御部14Aが送りモータ33と捩じりモータ80を制御する。また、ハンドル部11Aの下部にはバッテリ15Aが着脱可能に取り付けられる。
図5は、本実施の形態の鉄筋結束機の制御機能の一例を示すブロック図である。制御部14Aには、メインスイッチ16A、トリガスイッチ13A、送りモータ33及び捩じりモータ80が接続される。制御部14Aは、メインスイッチ16Aやトリガスイッチ13Aの状態に応じて送りモータ33や捩じりモータ80を制御する。また、制御部14Aは、送りモータ33や捩じりモータ80の回転数や回転量、または送りモータ33や捩じりモータ80に掛かる負荷を検知して、送りモータ33や捩じりモータ80を停止させる。
<本実施の形態の鉄筋結束機の動作例>
まず、各図を参照して、本実施の形態の鉄筋結束機1Aに手動でワイヤWを装填する動作について説明する。
ワイヤ送り部3Aの第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを装填する動作では、図示しない操作部材の操作で、第1の送りギア30Lに対する第2の送りギア30Rの押圧を解除する。これにより、第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離れる方向に移動可能となり、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを装填可能となる。
第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを装填する動作では、2本のワイヤWのうちの一方のワイヤW1が第1の送りギア30Lの溝部32Lを通るようにし、他方のワイヤW2が第2の送りギア30Rの溝部32Rを通るようする。そして図示しない操作部材の操作で、第1の送りギア30Lに対して第2の送りギア30Rを押圧することで、2本のワイヤWを第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで挟持する。
図4は、ワイヤが正常に装填された状態を示したものである。ワイヤが正常に装填された状態では、図示のとおり、第1の送りギア30Lの溝部32Lに2本のワイヤWのうちの一方のワイヤW1が通り、第2の送りギア30Rの溝部32Rに2本のワイヤWのうちの他方のワイヤW2が通り、この状態で第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に2本のワイヤWが挟持される。
2本のワイヤWが正常に装填された状態では、第1の送りギア30Lの溝部32Lに一方のワイヤW1が押圧され、第2の送りギア30Rの溝部32Rに他方のワイヤW2が押圧される。従って、送りモータ33により駆動されて第1の送りギア30Lが回転すると、第1の送りギア30Lと従動して第2の送りギア30Rが回転し、2本のワイヤWのそれぞれに、当該ワイヤWを送る力がかかるようになる(2本のワイヤWが送られる)。
図6は、ワイヤが正常に装填されていない状態を示す説明図である。図6の例では、2本のワイヤWのうちの他方のワイヤW2は第2の送りギア30Rの溝部32Rを通っているが、一方のワイヤW1は第1の送りギア30Lの溝部32Lから外れ、第1の送りギア30Lの歯部31Lと第2の送りギア30Rの歯部31Rとの間に位置している(挟まれている)。このため、図4に示す、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に正常にワイヤWが装填された場合と比較して、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間隔が広くなる。
これにより、第2の送りギア30Rの溝部32Rに入った他方のワイヤW2は、溝部32Lと溝部32Rの何れにも押圧されず、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30RでワイヤWを送るための力が十分に伝達されない。従って、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rを回転させても、一方のワイヤW1のみが送られ、他方のワイヤW2は送られない。
従って、ワイヤWが図6に示すように第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に正常に装填されていない状態で、ワイヤWの端部をワイヤ待機位置P1である可動刃部61に突き当てて位置合わせをしようとしても、一方のワイヤW1のみが送られ、一方のワイヤW1のみが可動刃部61に当たるため、ワイヤW1には過剰なトルクがかかる。このためワイヤW1は座屈してしまう。換言すれば、送りモータ33は、本来2本のワイヤWを送るのに必要なトルクでワイヤWを送ろうとするため、ワイヤW1が可動刃部61に当たった瞬間に送りモータ33を停止させるなどの対応をとらないと、ワイヤW1のみの耐力ではワイヤW1が座屈してしまう。そしてワイヤW1が座屈するとワイヤWを正常に送れなくなる。
次に、ワイヤWをワイヤ送り部3Aの正常でない位置に装填してしまった場合であっても、ワイヤWをワイヤ送り部3Aの正常の位置に戻す(装填し直す)ことが可能な制御動作の例について説明する。
図7は、ワイヤ装填後の初期動作の一例を示すフローチャート、図8A、図8B、図8C及び図8Dは、ワイヤ装填後の初期動作の一例を示す動作説明図である。
まず、ワイヤWを第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間の正常な位置に案内するため、ステップSA1〜SA6で、ワイヤWを正方向及び逆方向に送る動作を行う。
すなわち、制御部14Aは、所定のメインスイッチ16Aの操作、トリガスイッチ13Aの操作で、初期動作の開始を検知する。尚、初期動作の開始を所定のメインスイッチ16Aの操作後、初回のトリガスイッチ13Aの操作で検知するようにしても良い。制御部14Aは、初期動作の開始を検知すると、図8Aに示すように、矢印Fで示すワイヤWの正方向の送りに対し、ワイヤWの端部Weがワイヤ待機位置P1である切断部6Aの可動刃部61より上流側に位置する状態から、ステップSA1で、送りモータ33を所定量正方向に回転させる。送りモータ33を所定量正方向に回転させると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが正方向に回転し、図8Bに示すように、ワイヤWが正方向に送られる。
ここで、リール20に巻かれた2本以上のワイヤWは、まだ未使用の状態では、ワイヤを装填しやすくするなどの理由から、端部(先端部)Weまたは端部Weの近傍が結合部Wcで繋がった状態になっている。このため、図6に示すように、ワイヤWの装填が正常に行われておらず、他方のワイヤW2に駆動力が十分に伝達されない場合でも、2本のワイヤWとも正方向に送られる。しかし、2本のワイヤWとも送られたとしても、ワイヤWの端部が可動刃部61に当たった後、更にワイヤWを正方向に送る動作が継続されると、一方のワイヤW1には更にワイヤWを送ろうとする力がかかる。そして、ワイヤWは可動刃部61に当たっているため、これ以上ワイヤWの送りが行えず、1本のワイヤW1に力が集中してかかり、ワイヤW1が座屈する。
そこで、ステップSA1及びSA2でワイヤを正方向に送るようにした。ワイヤ送り経路を開にした状態でワイヤWを送ることで、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に当たって座屈することがなくなるとともに、ワイヤWを送っている間、ワイヤWは、第1のワイヤガイド4A1によって整列され、第1の送りギア30Lの溝部32Rと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間に案内される。このため、ワイヤWを送っている間、ワイヤWは第1のワイヤガイド4A1によって、次第に第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間の正常な位置に戻るようになる。
上述したように、ワイヤWを正方向に送る動作で、第1のワイヤガイド4A1によりワイヤWを第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間に案内するためには、第1のワイヤガイド4A1を通過したワイヤWが、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間を通過する位置まで送られる必要がある。
そこで、ワイヤWを正方向に送る動作では、ワイヤWの送り量を、第1のワイヤガイド4A1を通過したワイヤWが、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間を通過し、さらに、ワイヤ待機位置P1である可動刃部61を通過し、かつ、第1ガイド50から突出しない程度とする。ワイヤWの送り量は、送りモータ33の回転量で制御可能であり、正方向へのワイヤWの送り量が上述した量となるように、送りモータ33の回転量が設定される。
制御部14Aは、ステップSA2で、ワイヤWを正方向に規定量送る。ステップSA2において、上述したように、第1のワイヤガイド4A1でワイヤWをガイドさせるために必要な所定量、送りモータ33を正方向に回転させると、その後ステップSA3で、送りモータ33を停止させる。送りモータを停止させた後、ステップSA4で、送りモータ33を逆方向に所定量回転させる。送りモータ33を逆方向に所定量回転させると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが逆方向に回転し、図8Cに示すように、ワイヤWが矢印Rで示す逆方向に送られる。
ワイヤWが逆方向に送られる動作で、ワイヤWの端部Weが切断部6Aを非通過であると、次に可動刃部61を作動させる動作で、ワイヤWが切断されることになる。また、ワイヤWが逆方向に送られる動作で、ワイヤWの端部Weが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間を抜ける位置までワイヤWが逆方向に送られると、ワイヤWの送りが不可能になる。
一方、ワイヤWを正方向に送る動作での送り量と同量、ワイヤWを逆方向に送ると、ワイヤWの端部Weが切断部6Aを通過する位置までは送られるが、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間を抜ける位置までワイヤWが送られることはない。
そこで、ワイヤWを逆方向に送る動作では、ワイヤWの送り量を、第1のワイヤガイド4A1でワイヤWをガイドさせるために正方向にワイヤWを送る動作でのワイヤWの送り量と同等程度、すなわち、ワイヤWの端部Weが少なくともワイヤ待機位置P1である可動刃部61までとする。すなわち、ワイヤWを逆方向に送る場合、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間からは抜けない程度まで送るようにする。逆方向へのワイヤWの送り量が上述した量となるように、送りモータ33の回転量が設定される。
制御部14Aは、ステップSA5で、ワイヤWを逆方向に規定量送る。具体的には、ワイヤWを所定の位置まで戻すために必要な所定量、送りモータ33を逆方向に回転させる。ワイヤWを逆方向に規定量送ると、ステップSA6で、送りモータ33を停止させる。
ここで、ワイヤWが逆方向に送られる動作では、ワイヤWの送り方向に対し、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの上流側、すなわち、第1及び第2の送りギア30L、30Rと切断部6Aとの間にある第2のワイヤガイド4A2を通過し、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に案内される。
第2のワイヤガイド4A2のガイド穴40Aは、2本のワイヤWを整列させる形状で構成され、かつ、ワイヤWを逆方向に送る動作では、ワイヤWを第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間に案内する。これにより、ワイヤWを逆方向に送る動作で、2本のワイヤWが第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間に案内され、正常な位置で保持される。
また、上述したワイヤWを正方向に送る動作で、万一、2本のワイヤWが正常な位置に装填できなくても、次にワイヤWを逆方向に送る動作で、第2のワイヤガイド4A2により2本のワイヤWが正常な位置に装填される。
次に、ワイヤWの端部Weの位置をワイヤ待機位置に位置出しできるようにするため、ステップSA7〜SA9で、可動刃部61を作動させてワイヤWの送り経路を閉じる。
すなわち、制御部14Aは、ステップSA7で、捩じりモータ80を所定量正方向に回転させる。捩じりモータ80を所定量正方向に回転させると、ステップSA8で、可動刃部61は、固定刃部60を支点とした回転動作で閉位置に移動し、ワイヤWの送り経路を閉じる。可動刃部61を作動させるために必要な所定量、捩じりモータ80を正方向に回転させると、制御部14Aは、ステップSA9で、捩じりモータ80を停止させる。
ここで、上述したように、ワイヤWを正方向及び逆方向に送り、ワイヤWをワイヤ送り部3Aで正常な位置に案内する動作で、ワイヤWの端部Weは、少なくともワイヤ待機位置P1である可動刃部61の位置にあるので、可動刃部61を作動させても、ワイヤWが切断されることはない。
次に、ワイヤWの端部Weの位置をワイヤ待機位置に位置出しするため、ステップSA10〜SA12で、ワイヤWを正方向に送る。
すなわち、制御部14Aは、ステップSA10で、送りモータ33を正方向に回転させる。送りモータ33を正方向に回転させると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが正方向に回転し、ワイヤWが正方向に送られる。ワイヤWが正方向に送られると、図8Dに示すように、ワイヤWの端部Weがワイヤ待機位置P1である可動刃部61の位置に到達する。ワイヤWの端部Weが可動刃部61の位置に到達すると、可動刃部61でワイヤWの送り経路を閉じているので、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に当たる。
ワイヤWの端部Weが可動刃部61に到達したことを検知する手段の一例としては、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に当たると、ワイヤWを正方向に送ることができなくなり、送りモータ33の負荷が増加するので、この負荷を検知するという手段がある。制御部14Aは、ステップSA11で、送りモータ33の負荷を検知し、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に到達したと判断すると、ステップSA12で、送りモータ33を停止させる。なお、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に到達したことを、ワイヤWの位置を検知するセンサや送りモータ33の回転量等から判断しても良い。
ここで、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に当たった状態では、次に可動刃部61を作動させる際にワイヤWが負荷となる可能性がある。そこで、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に到達した後、所定の若干量、ワイヤWを逆方向に送る動作を行っても良い。
次に、ワイヤWの送り経路を開くため、ステップSA13〜SA15で、可動刃部61を作動させてワイヤWの送り経路を開く。
すなわち、制御部14Aは、ステップSA13で、捩じりモータ80を所定量逆方向に回転させる。捩じりモータ80を所定量逆方向に回転させることで、ステップSA14で、可動刃部61が退避してワイヤWの送り経路を開き、移動部材83が原点位置に復帰する。そして制御部14Aは、ステップSA15で、捩じりモータ80を停止させる。
上述したステップSA1〜SA6の動作で、2本のワイヤWが第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間の正常な位置に装填され、ステップSA7〜SA15の動作で、ワイヤWの端部Weの位置出しが行われる。
なお、従来は、図6に示すように、ワイヤWの装填が正常に行われていない状態でも、ワイヤWの端部Weの位置出しを行うため、ステップSA7〜SA15の動作を行っていた。このため、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に当たった後、更にワイヤWを正方向に送る動作が継続されると、一方のワイヤW1には、更にワイヤWを送ろうとする力がかかる。しかし、ワイヤWは端部Weが可動刃部61に当たっているため、これ以上ワイヤWの送りが行えず、1本のワイヤW1に力が集中してかかり、ワイヤW1が座屈することがあった。
これに対し、ステップSA1〜SA6の動作を行うことで、2本のワイヤWが第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間の正常な位置に装填されるようになるので、2本のワイヤWのそれぞれに、溝部32L、32Rを介して第1の送りギア30L及び第2の送りギア30RからワイヤWを送るための力が十分に伝達されるようになる。
これにより、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に当たった後、更にワイヤWを正方向に送る動作が継続されても、ワイヤWを送る力が2本のワイヤWに分散してかかり、ワイヤWにかかる力が1本のワイヤWに集中することに起因するワイヤWの座屈を抑制することができる。
次に、各図を参照して、本実施の形態の鉄筋結束機1Aにより鉄筋Sを2本のワイヤWで結束する動作について説明する。
鉄筋結束機1Aは、上述した装填動作及び初期動作でワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持され、このワイヤWの端部Weがワイヤ待機位置P1に位置した状態となる。
鉄筋Sがカールガイド5Aの第1ガイド50と第2ガイド51の間に入れられ、トリガ12Aが操作されると、送りモータ33が正方向に回転し、送りモータ33に駆動されて第1の送りギア30Lが正方向に回転する。そして第1の送りギア30Lが回転すると、第1の送りギア30Lに従動して第2の送りギア30Rが正方向に回転する。これにより、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持された2本のワイヤWが正方向に送られる。
ワイヤWが正方向に送られると、ワイヤWはカールガイド5Aを通過することで、鉄筋Sの周囲に沿って巻き癖が付けられる。第1ガイド50で巻き癖が付けられたワイヤWは、第2ガイド51で把持部70に誘導される。そして、ワイヤWの端部が所定の位置まで送られると、送りモータ33の駆動が停止される。これにより、ワイヤWが鉄筋Sの周囲にループ状に巻かれる。
ワイヤWの送りを停止した後、捩じりモータ80を正方向に回転させることで、作動部71により把持部70を作動させ、ワイヤWの端部を把持する。把持部70でワイヤWを把持すると、捩じりモータ80の回転を一時停止し、送りモータ33を逆方向に回転させる。送りモータ33が逆方向に回転すると、第1の送りギア30Lが逆方向に回転すると共に、第1の送りギア30Lに従動して第2の送りギア30Rが逆方向に回転する。これにより、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持されたワイヤWが逆方向に送られる。ワイヤWを逆方向に送る動作で、ワイヤWは鉄筋Sに密着されるようにして巻き付けられる。
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けて、送りモータ33の逆方向への回転を停止した後、捩じりモータ80を正方向に回転させることで、移動部材83により伝達機構62を介して可動刃部61が作動し、ワイヤWを切断する。
ワイヤWを切断した後、捩じりモータ80の正方向の回転を継続することで、作動部71の折り曲げ部71aでワイヤWの端部を鉄筋S側に曲げ、更に捩じりモータ80の正方向の回転を継続することで、ワイヤWを把持している把持部70を作動部71と一体に回転させ、ワイヤWを捩じる。
ワイヤWを捩じった後、捩じりモータ80を逆方向に回転させることで、作動部71により把持部70が作動し、ワイヤWの把持が解除される。
<本実施の形態の鉄筋結束機の変形例>
図9A、図9B、図9C及び図9Dは、他の実施の形態における初期動作の一例を示す動作説明図である。上述した実施の形態では、可動刃部61で位置規制部を構成したが、この変形例では、位置規制部65を可動刃部61とは別に設けている。
位置規制部65は、ワイヤWの正方向に送りに対し、可動刃部61の上流側で、ワイヤ送り部3A及び第2のワイヤガイド4A2の下流側に設けられる。位置規制部65は、図5に示す制御部14Aの制御で、ワイヤWの送り経路を閉じる閉位置から、ワイヤWの送り経路を開く開位置に移動する。
図9A、図9B、図9C及び図9Dを参照して、初期動作について説明すると、図9Aに示すように、位置規制部65を開位置に移動させてワイヤWの送り経路を開き、送りモータ33を所定量正方向に回転させる。送りモータ33を所定量正方向に回転させると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが正方向に回転し、図9Bに示すように、ワイヤWが正方向に送られる。
ワイヤWが正方向に送られる動作では、ワイヤWの送り方向に対し、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの上流側にある第1のワイヤガイド4A1を通過し、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に案内される。
これにより、図6に示すように、ワイヤWの装填が正常に行われていない場合でも、ワイヤWを正方向に送る動作で、2本のワイヤWが第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間に案内され、図4に示すように、正常な位置に装填される。
制御部14Aは、送りモータ33を所定量正方向に回転させると、送りモータ33を停止させた後、送りモータ33を所定量逆方向に回転させる。送りモータ33を所定量逆方向に回転させると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが逆方向に回転し、図9Cに示すように、ワイヤWが矢印Rで示す逆方向に送られる。
制御部14Aは、ワイヤWを所定の位置まで戻すために必要な所定量、送りモータ33を逆方向に回転させると、送りモータ33を停止させる。
次に、制御部14Aは、位置規制部65を閉位置に移動させ、ワイヤWの送り経路を閉じ、送りモータ33を正方向に回転させる。送りモータ33を正方向に回転させると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが正方向に回転し、ワイヤWが正方向に送られる。ワイヤWが正方向に送られると、図9Dに示すように、ワイヤWの端部Weがワイヤ待機位置P1である位置規制部65の位置に到達する。ワイヤWの端部Weが位置規制部65の位置に到達すると、位置規制部65でワイヤWの送り経路を閉じているので、ワイヤWの端部Weが位置規制部65に当たる。
制御部14Aは、ワイヤWの端部Weが位置規制部65に到達したと判断すると、送りモータ33を停止させる。次に、制御部14Aは、位置規制部65を開位置に移動させ、ワイヤWの送り経路を開く。これにより、2本のワイヤWが第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間の正常な位置に装填され、かつ、ワイヤWの端部Weの位置が、ワイヤ待機位置P1に合わせられる。
図10は、本実施の形態の鉄筋結束機の制御機能の他の例を示すブロック図である。上述した可動刃部61または位置規制部65は、捩じりモータ80で駆動されることとしたが、この例では、位置規制部65が捩じりモータ80とは別のモータ85で駆動されるようにしている。
図11A、図11B、図11C及び図11Dは、他の実施の形態における初期動作の一例を示す動作説明図である。上述した実施の形態では、2本のワイヤWを送る構成で説明したが、1本のワイヤWを送る構成でも良い。
図11A、図11B、図11C及び図11Dを参照して、初期動作について説明すると、図11Aに示すように、可動刃部61を開位置に移動させてワイヤWの送り経路を開き、送りモータ33を所定量正方向に回転させる。なお、可動刃部61とは別に、位置規制部を備える構成としても良い。送りモータ33を所定量正方向に回転させると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが正方向に回転し、図11Bに示すように、ワイヤWが正方向に送られる。
ワイヤWが正方向に送られる動作では、ワイヤWの送り方向に対し、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの上流側にある第1のワイヤガイド4A1を通過し、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に案内される。
これにより、ワイヤWの装填が正常に行われていない場合でも、ワイヤWを正方向に送る動作で、1本のワイヤWが第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間に案内され、正常な位置に装填される。
制御部14Aは、送りモータ33を所定量正方向に回転させると、送りモータ33を停止させた後、送りモータ33を所定量逆方向に回転させる。送りモータ33を所定量逆方向に回転させると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが逆方向に回転し、図11Cに示すように、ワイヤWが矢印Rで示す逆方向に送られる。
制御部14Aは、ワイヤWを所定の位置まで戻すために必要な所定量、送りモータ33を逆方向に回転させると、送りモータ33を停止させる。
次に、制御部14Aは、可動刃部61を閉位置に移動させ、ワイヤWの送り経路を閉じ、送りモータ33を正方向に回転させる。送りモータ33を正方向に回転させると、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが正方向に回転し、ワイヤWが正方向に送られる。ワイヤWが正方向に送られると、図11Dに示すように、ワイヤWの端部Weがワイヤ待機位置P1である可動刃部61の位置に到達する。ワイヤWの端部Weが可動刃部61の位置に到達すると、可動刃部61でワイヤWの送り経路を閉じているので、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に当たる。
制御部14Aは、ワイヤWの端部Weが可動刃部61に到達したと判断すると、送りモータ33を停止させる。次に、制御部14Aは、可動刃部61を開位置に移動させ、ワイヤWの送り経路を開く。これにより、1本のワイヤWが第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間の正常な位置に装填され、かつ、ワイヤWの端部Weの位置が、ワイヤ待機位置P1に合わせられる。