JP6952070B2 - 電線・ケーブルの製造方法 - Google Patents
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Description
また、電気、電子機器に使用される配線材は、連続使用の状態で80〜105℃、さらには125℃程度にまで昇温することがあり、これに対する耐熱性が要求される場合もある。このような場合、配線材に高耐熱性を付与することを目的として、被覆材料を架橋する方法が採られている。
シラン架橋法は、一般に、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有するシランカップリング剤をポリマーにグラフト反応させてシラングラフトポリマーを得た後に、シラノール縮合触媒の存在下で水分と接触させることにより架橋成形体を得る方法である。
このような方法において、高難燃化、高耐熱化し、また優れた強度や耐摩耗性、補強性を得るには、無機フィラーを多量に用いるのが効果的である。しかし、ポリオレフィン100質量部に対して100質量部を超える割合の無機フィラーを用いると、単軸押出機又は二軸押出機では均一に溶融混練しにくくなることがある。
したがって、多量の無機フィラーを用いる場合には、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサーなどの密閉型ミキサーを用いるのが一般的になっている。
そこで、バンバリーミキサー又はニーダーを用いてもシランカップリング剤の揮発を抑えてポリオレフィンとグラフト反応させる方法が提案されている。
また、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂にシランカップリング剤で表面処理した無機フィラー、シランカップリング剤、有機過酸化物、架橋触媒をニーダーにて十分に溶融混練した後に、単軸押出機にて成形する方法が提案されている。
また、特許文献1の方法では、シランカップリング剤の揮発を十分に抑えられないことがあった。
また、特許文献3では、所定量の無機フィラーに対して、所定量の後添加にてのシランカップリング剤を混合することで、樹脂に対してシラングラフトするまでの間、後添加のシランカップリング剤と無機フィラーとの強い結合を抑えつつ、シランカップリング剤の揮発を効果的に抑えられ、また、シランカップリング剤同士の重合副反応が抑えられることにより、無機フィラー混合時における樹脂へのシランカップリング剤のグラフト反応が効果的に行われることにより、耐熱性や外観の優れたシラン架橋成形体が得られる手法が提案されている。
本発明者らは、シランマスターバッチと触媒マスターバッチ等を溶融混合して得られる混合物中に、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂やエチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体と、金属水和物とが含まれるように構成し、前三者の総含有率や、金属水和物の量を特定の範囲になるように設定することで、製造された電線・ケーブルの外観が良好になり、耐熱性や高い強度、高い耐摩耗性が得られることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき、更に研究を重ね、本発明をなすに至った。
<1>ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、シランカップリング剤2〜15質量部と、無機フィラー20〜300質量部を含有し、アリル系架橋助剤を実質的に含まない樹脂組成物(A)と、シラノール縮合触媒樹脂組成物(B)との少なくとも2成分を溶融混合してなる混合物(C)を、導体及び/又は光ファイバの周りに成形する工程(α)と、成形物を水と接触させて架橋させる工程(β)と、を有する電線・ケーブルの製造方法において、
前記混合物(C)中の樹脂成分100質量%中、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体の総含有量が20〜60質量%であり、かつ、前記混合物(C)中の樹脂成分100質量部に対して、金属水和物の量が20〜300質量部であり、
前記混合物(C)の樹脂成分中に、前記樹脂組成物(A)由来ではない不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体から選ばれる1種以上の樹脂が含有されていることを特徴とする電線・ケーブルの製造方法。
<2>前記混合物(C)の樹脂成分100質量%中、前記1種以上の樹脂の含有量が15〜50質量%であることを特徴とする<1>に記載の電線・ケーブルの製造方法。
<3>前記混合物(C)の樹脂成分100質量%中、前記樹脂組成物(A)由来ではないマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が10〜50質量%含有されていることを特徴とする<1>又は<2>に記載の電線・ケーブルの製造方法。
<4>前記マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂のポリプロピレン樹脂が、ホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンであることを特徴とする<3>に記載の電線・ケーブルの製造方法。
<5>ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、シランカップリング剤2〜15質量部と、無機フィラー20〜300質量部を含有し、アリル系架橋助剤を実質的に含まない樹脂組成物(A)と、シラノール縮合触媒樹脂組成物(B)との少なくとも2成分を溶融混合してなる混合物(C)を、導体及び/又は光ファイバの周りに成形する工程(α)と、成形物を水と接触させて架橋させる工程(β)と、を有する電線・ケーブルの製造方法において、
前記混合物(C)中の樹脂成分100質量%中、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体の総含有量が20〜60質量%であり、かつ、前記混合物(C)中の樹脂成分100質量部に対して、金属水和物の量が20〜300質量部であり、
前記混合物(C)の樹脂成分100質量%中、前記樹脂組成物(A)由来ではないマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が10〜50質量%含有されていることを特徴とする電線・ケーブルの製造方法。
<6>前記マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂のポリプロピレン樹脂が、ホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンであることを特徴とする<5>に記載の電線・ケーブルの製造方法。
なお、以下では電線・ケーブルの製造方法について説明するが、以下は、その製造方法により製造された電線・ケーブルの説明にもなっている。
すなわち、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、シランカップリング剤2〜15質量部と、無機フィラー20〜300質量部を含有し、アリル系架橋助剤を実質的に含まない樹脂組成物(A)と、シラノール縮合触媒樹脂組成物(B)との少なくとも2成分を溶融混合してなる混合物(C)を、導体及び/又は光ファイバの周りに成形する工程(α)と、成形物を水と接触させて架橋させる工程(β)とを含む。
そして、工程(α)では、上記の混合物(C)中の樹脂成分100質量%中、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体の総含有量が20〜60質量%であり、かつ、混合物(C)中の樹脂成分100質量部に対して、金属水和物の量が20〜300質量部であるように、樹脂組成物(A)とシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)との少なくとも2成分が混合される。
なお、導体や光ファイバは公知のものを使用することが可能であり、説明を省略する。
本発明の樹脂組成物(A)には、上記のように少なくともポリオレフィン系樹脂と有機過酸化物とシランカップリング剤と無機フィラーとが含有される。
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明のポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、アクリルゴム、スチレン系エラストマーなどを指す。
ポリプロピレン系樹脂として、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)や、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体などを使用することができる。
エチレン−プロピレンランダム共重合体はエチレン成分含量が1〜5質量%程度のものをいい、エチレン−プロピレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜15質量%程度のものをいう。
混合するポリプロピレンのメルトフローレート(以下MFRと記す。ASTM‐D‐1238、L条件、230℃)は、好ましくは0.1〜60g/10分、より好ましくは0.1〜25g/10分、さらに好ましくは0.3〜15g/10分のものが用いられる。
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体は、例えばエチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体として、具体的には、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、EPR(エチレンプロピレンゴム)、EBR(エチレン−1‐ブテンゴム)、及びメタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。この中でも、メタロセン触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は特に制限されないが、強度の点で、880kg/m3以上が好ましく、さらに好ましくは900kg/m3以上、さらに好ましくは910kg/m3以上である。この密度の上限は938kg/m3が好ましい。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体としては、MFR(ASTM D−1238)が0.5〜50g/10分のものが好ましい。
特にエチレン−α−オレフィン共重合体はシランマスターバッチである樹脂組成物(A)の樹脂成分に配合することが好ましい。配合量は上記の混合物(C)の樹脂成分100質量%中、10〜60質量%である。
本発明に用いるその他のエチレン系共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やエチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体などが挙げられる。
具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体ではエバフレックス(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)、レバプレン(商品名、バイエル社製)などが、エチレン−メタクリル酸共重合体ではニュクレル(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)などが、エチレン−アクリル酸エチル共重合体ではエバルロイ(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)などが挙げられる。
その他のエチレン共重合体はシランマスターバッチである樹脂組成物(A)の樹脂成分に配合することが好ましい。配合量は上記の混合物(C)の樹脂成分100質量%中、0〜40質量%である。
本発明においては、その他のエチレン系共重合体の1つとしてアクリルゴムを使用することができる。
アクリルゴムは、単量体成分としてはアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルと各種官能基を有する単量体を少量共重合させて得られるゴム弾性体であり、共重合させる単量体としては、2−クロルエチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、アクリル酸、アクリロニトリル、ブタジエン等を適宜使用することができる。具体的には、Nipol AR(商品名、日本ゼオン社製)、JSR AR(商品名、JSR社製)等を使用することができる。
アクリルゴム成分はシランマスターバッチである樹脂組成物(A)の樹脂成分に配合することが好ましい。
本発明のスチレン系エラストマーは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック及びランダム構造を主体とする共重合体もしくはその水素添加物である。
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどがあり、1種又は2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。
また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどがあり、1種又は2種以上が選ばれ、中でもブタジエンが好ましい。
スチレン系エラストマーの配合量は上記の混合物(C)の樹脂成分100質量%中、0〜35質量%であり、好ましくは5〜25質量%である。
一般に、鉱物性オイルは、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
本発明の鉱物性オイルとしては、液状若しくは低分子量の合成軟化剤、又はパラフィン系及びナフテン系の鉱物油を用いることができる。
鉱物性オイルとして具体的には、ダイアナプロセスオイルPW90、PW380(商品名、シェル社製)等がある。
本発明において、鉱物性オイルは含有してもしなくてもよいが、含有させる場合には、含有量は樹脂組成物(A)の樹脂成分100質量%中0〜20質量%であり、好ましくは0〜10質量%である。
有機過酸化物としては、一般式:R1−OO−R2、R1−OO−C(=O)R3、R3C(=O)−OO(C=O)R4で表される化合物が好ましい。ここで、R1、R2、R3及びR4は各々独立にアルキル基、アリール基、アシル基を表す。このうち、本発明においては、R1、R2、R3及びR4がいずれもアルキル基であるか、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味し、示差走査熱量測定(DSC)法などの熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
これらの有機過酸化物は、樹脂組成物(A)中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.02〜0.6質量部含有していることが必要である。
シランカップリング剤として、不飽和基含有シランカップリング剤を用いることができる。
不飽和基含有シランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、シラン架橋法に用いられる不飽和基を有する不飽和基含有シランカップリング剤を使用することができる。このような不飽和基含有シランカップリング剤としては、例えば、下記一般式(1)で表される不飽和基含有シランカップリング剤を好適に用いることができる。
好ましい不飽和基含有シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどの末端にビニル基を有する不飽和基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する不飽和基含有シランカップリング剤などを挙げることができる。
不飽和基含有シランカップリング剤は、単独で用いられてもよく、溶剤で希釈された液で用いられてもよい。
これらのシランカップリング剤は、樹脂組成物(A)中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して2〜15質量部含有していることが必要であり、好ましくはその量は2.5〜6質量部であり、さらに好ましくは3を超えて6質量部である。
無機フィラーは、無処理のもの、種々の表面処理剤で表面処理されているもののどちらを使用しても良く、2種類以上使用しても良い。表面処理剤としては、脂肪酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン樹脂、シリカ、リン酸エステルなどが用いられる。
無機フィラーとしては、特に制限はなく、後述する金属水和物のほか、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウム、アルミナ、塩基性炭酸マグネシウム、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカなど)、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛などが挙げられる。
そのため、シランカップリング剤の揮発で架橋が少なくなって耐熱性が悪くなったり、揮発せずに残った有機過酸化物がポリオレフィン系樹脂同士を架橋させてしまい外観不良が生じたりすることを防止することができ、外観が良好で耐熱性に優れた電線・ケーブルを得ることが可能となる。
なお、無機フィラーをシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)にも含有させてもよく、工程(α)で樹脂組成物(A)とシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)とを溶融混合する際に添加してもよい。
なお、本発明では、樹脂組成物(A)に添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、電線・ケーブルに求められる性能等に応じて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、充填剤、他の樹脂などが本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合されていてもよい。
シラノール縮合触媒樹脂組成物(B)がこれらの添加剤を含有していてもよい。
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などが挙げられる。
樹脂組成物(A)にアリル系架橋助剤を加えると、樹脂組成物(A)の調製中に有機過酸化物が架橋助剤の反応に使用され、樹脂組成物(A)の樹脂成分同士の架橋が生じてゲル化を生じ、電線・ケーブルの外観が低下するだけでなく、耐摩耗性も低下させる。
一方、本発明のシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)は、少なくともキャリア樹脂にシラノール縮合触媒を混合させて調製される。
触媒マスターバッチであるシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)に所望により添加されるキャリア樹脂としては、特に限定されないが、樹脂組成物の混合物(C)に含有される樹脂成分の一部を用いることもできる。
耐摩耗性、強度を向上させるために、特には限定しないが、樹脂組成物中に、後述する不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体から選ばれる1種以上の樹脂が含まれる樹脂成分を加えたほうがよい。なお、この点については後で詳しく説明する。
また、このキャリア樹脂には無機フィラーを加えてもよいし、加えなくてもよい。無機フィラーを加える場合、無機フィラーの量は、特には限定しないが、キャリア樹脂100質量部に対し、350質量部以下が好ましい。あまり無機フィラー量が多いとシラノール縮合触媒が分散しにくく、架橋が進行しにくくなるためである。一方、キャリア樹脂が多すぎると、相対的に樹脂組成物(A)の樹脂成分の量が減るため、成形体の架橋度が低下してしまい、適正な耐熱性が得られないおそれがある。
シラノール縮合触媒は、樹脂組成物(A)の樹脂成分にグラフト化された不飽和基含有シランカップリング剤を縮合反応により水分の存在下で結合させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、不飽和基含有シランカップリング剤を介して、樹脂組成物(A)の樹脂成分同士が架橋される。その結果、耐熱性に優れた電線・ケーブルが得られる。
シラノール縮合触媒の配合量は、混合物(C)の樹脂成分100質量部に対して、シラノール縮合触媒樹脂組成物(B)の樹脂成分中に、好ましくは0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.001〜0.1質量部である。
シラノール縮合触媒の混合量が上記の範囲内にあると、シランカップリング剤の縮合反応による架橋反応がほぼ均一に進みやすく、電線・ケーブルの耐熱性、外観及び物性が優れ、生産性も向上する。
前述したように、本発明の電線・ケーブルの製造方法では、樹脂組成物(A)とシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)との少なくとも2成分を溶融混合する工程(α)において、混合物(C)中の樹脂成分100質量%中、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体の総含有量が20〜60質量%であり、かつ、混合物(C)中の樹脂成分100質量部に対して、金属水和物の量が20〜300質量部であるように混合される。
本発明において、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体、不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂、不飽和カルボン酸変性ポリプロピレン樹脂、変性スチレン系エラストマー、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などを指す。
本発明における不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンとは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸が、ポリオレフィンにグラフトした樹脂のことである。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを挙げることができる。
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体とは、エチレン−α−オレフィン共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がエチレン−α−オレフィン共重合体にグラフトした樹脂のことである。
不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂、不飽和カルボン酸変性ポリプロピレン樹脂についても同様である。
不飽和カルボン酸としては、上記の場合に使用されたものと同様のものを使用することが可能である。
エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂としては、ポリエチレン(直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、プロピレンや他の少量のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体等、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、エチレンープロピレンージエン共重合ゴムやプロピレンとエチレン−α−オレフィン樹脂との共重合ゴムなどが挙げられる。
不飽和カルボン酸等により変性されたポリエチレンとしては、具体的には例えば、アドテックスL−6100M等(商品名、日本ポリエチレン社製)、アドマーXE070、NE070等(商品名、三井化学社製)、不飽和カルボン酸等により変性されたポリプロピレン樹脂としてはアドマーQE800、810(商品名、三井化学社製)などが市販されている。
また、不飽和カルボン酸変性されたポリプロピレン樹脂は混合物(C)の樹脂成分100質量%中、0〜50質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜40質量%が好ましい。
本発明において、変性スチレン系エラストマーとは、スチレン系共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がスチレン系共重合体にグラフトしたエラストマーのことである。
不飽和カルボン酸としては、上記の場合に使用されたものと同様のものを使用することが可能である。
スチレン系共重合体とは、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック及びランダム構造を主体とする共重合体及びその水素添加物である。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどが挙げられる。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどを挙げることができる。
不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーとしては、たとえば、クレイトン1901FG(JSR クレイトン社製)、タフテック(旭化成社製)等を挙げることができる。
不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーの含有量は混合物(C)の樹脂成分100質量%中、0〜25質量%が好ましく、好ましくは5〜20質量%である。
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がエチレン−酢酸ビニル共重合体にグラフトした樹脂のことである。
不飽和カルボン酸としては、上記の場合に使用されたものと同様のものを使用することが可能である。
エチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンに酢酸ビニルを共重合させたものである。
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、たとえば、アドマーVF600,VF500(いずれも商品名、三井化学社製)を挙げることができる。
また、不飽和カルボン酸変性されたエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂は混合物(C)の樹脂成分100質量%中、0〜20質量%が好ましい。
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸がエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体にグラフトした樹脂のことである。
不飽和カルボン酸としては、上記の場合に使用されたものと同様のものを使用することが可能である。
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、たとえば、モディパーA−5200、A−8200(いずれも商品名、日本油脂社製)を挙げることができる。
また、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は混合物(C)の樹脂成分100質量%中、0〜20質量%が好ましい。
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられ、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体は樹脂成分(C)中、0〜20質量%が好ましい。
この含有率により、優れた強度と耐磨耗性を両立することが可能となる。
本発明において用いられる金属水和物としては、特に限定はしないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ベーマイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する化合物を単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。
金属水和物は無処理のもの、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸などの脂肪酸で処理されているもの、シランカップリング剤で処理されているもの、リン酸エステルで処理されているもの、チタネートカップリング剤で処理されているもの等の使用が好ましいが、なかでも無処理品やシランカップリング剤で処理されているものや、少量の脂肪酸で処理されているものが好ましい。またこれらの金属水和物を適宜併用することができる。
このようなシランカップリング剤の中でも、末端にエポキシ基及び/又はビニル基、(メタ)アクロイル基、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましく、さらに末端にエポキシ基及び/又はビニル基、(メタ)アクロイル基を有するものが好ましい。これらは1種単独でも、2種以上併用して使用してもよい。
また、上記以外にも、予め脂肪酸やリン酸エステルなどで表面の一部が前処理された水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムに、さらにビニル基やエポキシ基等の官能基を末端に有するシランカップリング剤を用い表面処理を行った金属水和物なども用いることができる。
金属水和物をシランカップリング剤で処理する場合には、予めシランカップリング剤を金属水和物に対してブレンドして行うことが必要である。このときシランカップリング剤は、表面処理するに十分な量が適宜加えられるが、具体的には金属水和物に対し0.2〜2重量%が好ましい。シランカップリング剤は原液でもよいし、溶剤で希釈されたものを使用してもよい。
あるいは、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等や金属水和物を樹脂組成物(A)やシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)とは別に用意しておき(以下、第3成分という。)、樹脂組成物(A)とシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)とを溶融混合する際に(工程(α))、第3成分としての不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等や金属水和物を添加するように構成することも可能である。
その際、混合物(C)の樹脂成分100質量%中、上記の1種以上の樹脂の含有量が15〜50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%であることが好ましい。
マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を使用することで、無機フィラーに対するイオン結合が強くなり、しかも無機フィラーと剛直なポリプロピレン樹脂が一体化することから、優れた強度と耐磨耗性を得ることが可能となる。この点についても、後で詳しく説明する。
本発明の電線・ケーブルの製造方法において、樹脂組成物(A)(シランマスターバッチ)、シラノール縮合触媒樹脂組成物(B)はそれぞれ溶融混練りによって製造される。溶融混練りはバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、二軸押出機などが使用される。
混練り温度は樹脂成分の融点に依存ずるが、160〜250℃である。特に樹脂組成物(A)については有機過酸化物を分解させる必要があるため、少なくとも160℃以上、好ましくは180℃以上、さらに好ましくは190℃以上で混練りすることが好ましい。
そして、工程(α)で、得られた樹脂成分(A)及びシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)と必要に応じて第3成分とをブレンドして混合物(C)を得る。このブレンド方法は溶融ブレンドでもよいし、ドライブレンドでもよいが、ドライブレンドのほうが好ましい。この混合物(C)を押し出し機ホッパーに導入し、導体や光ファイバの周りに成形することで成形体を得る。
成形体の押し出し温度は樹脂成分の融点によるが、160〜250℃程度である。
シランカップリング剤同士の縮合は、常温で保管するだけで空気中の水分によって進行する。そのため、電線・ケーブルを水に積極的に接触される必要はないが、架橋をさらに加速させるために、水分と接触させる際に、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用することも可能である。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
そして、樹脂組成物(A)の製造前や製造時に、シランカップリング剤は、アルコキシ基で無機フィラーと強く結合する。この場合、例えば、シランカップリング剤のアルコキシ基と無機フィラー表面の水酸基等との間でイオン結合等の化学結合が形成されると考えられる。そして、シランカップリング剤のもう一方の末端に存在するビニル基等のエチレン性不飽和基でポリオレフィン系樹脂の未架橋部分と結合する。
このように、樹脂組成物(A)の製造前や製造時に、無機フィラーに対して強い結合で結びつくシランカップリング剤と弱い結合で結びつくシランカップリング剤とが形成される。
また、無機フィラーに対して強い結合を有しているシランカップリング剤も有機過酸化物の分解によって反応し、ポリオレフィン系樹脂と結合する。この反応によりポリオレフィン系樹脂−シランカップリング剤−無機フィラー間で結合が生じるため、得られる電線・ケーブルの強度や耐摩耗性の向上を図ることができる。
そのため、このようにポリオレフィン系樹脂同士が結合して架橋することで、得られる電線・ケーブルの耐熱性を向上させることが可能となるとともに、強度や耐摩耗性の向上を図ることができる。
これらのポリマーは金属水和物(あるいはその他の無機フィラー。以下同じ。)とイオン結合する。そのため、得られる電線・ケーブルの強度や耐摩耗性が著しく向上させることができる。すなわち、これらのポリマーが剛直な金属水和物と一体化することで、電線・ケーブルの強度や耐摩耗性が向上する。
すなわち、従来の電線・ケーブルでは、上記の3つの結合のうち、(I)の結合、あるいは良くても(I)と(II)の結合しか得られなかったが、本発明では、さらに上記のポリマーと金属水和物間の強いイオン結合((III)の結合)が得られるため、その分、電線・ケーブルが、従来の電線・ケーブルより高い強度や高い耐摩耗性を得ることが可能となると考えられる。
そして、シランカップリング剤がグラフトした変性部位は金属水和物とイオン結合することができないため、上記のように金属水和物との間でイオン結合を形成できるポリマーの量が少なくなる。そのため、これらのポリマーを一定量以上加えることが必要である。
本発明者らの研究では、混合物(C)中の樹脂成分100質量%中、これらのポリマーの総含有量が20質量%以上であることが必要であることが分かっている。
本発明者らの研究では、混合物(C)中の樹脂成分100質量%中、これらのポリマーの総含有量が60質量%以下であれば電線・ケーブルの外観を損ねることがないことが分かっている。
そのため、不飽和カルボン酸変性ポリプロピレン樹脂を含有する樹脂組成物(A)(シランマスターバッチ)を用いても、ゲル化が生じないため使用可能であり、得られる電線・ケーブルの外観を維持しつつ、強度や耐摩耗性を向上させることができる。
(無水)マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を使用することで、金属水和物に対するイオン結合が強く、しかも金属水和物と剛直なポリプロピレン樹脂とが一体化することから、優れた強度と耐磨耗性を得ることが可能となる。
なお、表I、表IIにおいて、各実施例、参考例及び比較例における数値は特に断らない限り質量部を表す。また、各成分について空欄は対応する成分の配合量が0質量部であることを意味する。
また、表I、表IIでは、ポリオレフィン系樹脂が「PO系樹脂」、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂が「変性PO系樹脂」と略記されている。
なお、「(C)中の変性樹脂量」は、混合物(C)中の樹脂成分100質量%中の不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等の総含有量を表し、単位は質量%である。
(1)ポリオレフィン系樹脂(I):PB222A(商品名、ポリプロピレン系樹脂、サンアロマー社製)
(2)ポリオレフィン系樹脂(II):VB170A(商品名、ポリプロピレン系樹脂、サンアロマー社製)
(3)ポリオレフィン系樹脂(III):エボリュー2520P(商品名、エチレン−α−オレフィン共重合体、三井化学社製)
(4)ポリオレフィン系樹脂(IV):エボリュー0540P(商品名、エチレン−α−オレフィン共重合体、三井化学社製)
(5)ポリオレフィン系樹脂(V):セプトン4077(商品名、スチレン系エラストマー、クラレ社製)
(6)ポリオレフィン系樹脂(VI):NUC6520(商品名、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、NUC社製)
(7)鉱物性オイル:ダイアナプロセスオイルPW90(商品名、シェル社製)
(8)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(I):クレイトン1901FG(商品名、変性スチレン系エラストマー、JSR クレイトン社製)
(9)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(II):アドマーQE800(商品名、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、三井化学社製)
(10)不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂(III):アドテックスL6100M、マレイン酸変性ポリエチレン樹脂、日本ポリエチレン社製)
(11)エチレン−メタクリル酸共重合体:ニュクレルN1207C(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)
(12)金属水和物(I):キスマ5AL(商品名、ステアリン酸表面処理水酸化マグネシウム、協和化学工業社製)
(13)金属水和物(II):キスマ5L(商品名、シランカップリング剤表面処理水酸化マグネシウム、協和化学工業社製)
(14)金属水和物(III):アピラールAOH60(商品名、水酸化アルミニウム、ナバルテック社製)
(15)シランカップリング剤:KBM1003(商品名、ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)
(16)酸化防止剤:イルガノックス1010(商品名、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、BASF社製)
(17)有機過酸化物:パーヘキサ25B(商品名、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、分解温度179℃、日本油脂社製)
(18)ポリオレフィン系樹脂(VII):VS200A(商品名、ポリプロピレン樹脂(ホモポリマー)、サンアロマー社製)
(19)シラノール縮合触媒:アデカスタブOT−1(商品名、ジオクチルスズジラウレート、ADEKA社製)
(20)滑剤:ACポリエチレンNo.6(商品名、ポリエチレンワックス、ハネウェルジャパン社製)
まず、表I、表IIに記載の質量部の無機フィラーとシランカップリング剤と有機過酸化物を、東洋精機製10Lヘンシェルミキサーに投入し、室温で10分混合して混合物を得た。
そして、得られた混合物と、表I、表IIに示す混合量の樹脂組成物とを、日本ロール製2Lバンバリーミキサー内に投入し、そのミキサーで約12分混練り後、材料排出温度190℃〜210℃で排出して樹脂組成物(A)(シランマスターバッチ)を得た。
次いで、樹脂組成物(A)とシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)を表I、表IIの割合でドライブレンドして樹脂組成物の混合物(C)を得た。
そして、得られた電線・ケーブルを温度60℃湿度95%の雰囲気に24時間放置した(工程(β))。
<引っ張り強さ、伸び>
引っ張り強さ、伸び試験は、JIS C 3005に基づいて行った。引っ張り強さは15MPa以上を合格とした。18MPa以上が好ましい。
伸びは150%以上を合格とした。
加熱変形試験(単位:%)は、JIS C 3005に基づいて、測定温度140℃、荷重2.5Nで行った。加熱変形試験は40%以下を合格とした。
電線・ケーブルの耐摩耗性試験はJASO D 618に基づき荷重7Nで試験を行った。
耐磨耗性は150回以上を合格とした。300回以上が好ましい。
電線・ケーブルの押出外観特性として押出外観試験を行った。押出外観は、電線・ケーブルを製造する際に押出外観を観察した。50mm押出機にて線速10mの低速で作製した際に、製造開始後20分後に外観が良好だったものを「A」、外観がやや悪かったものを「B」、外観が著しく悪かったものを「C」とし、「B」以上を製品レベルとして合格とした。
樹脂組成物の混合物(C)中の不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等の総含有量が0〜15質量%の比較例1〜4では強度(引っ張り強さ)や耐摩耗性に劣る。
また、樹脂組成物の混合物(C)中に金属水和物が含まれていない比較例6や、逆に混合物(C)中に含まれる金属水和物が380質量部で多過ぎる比較例7では強度(伸び)や耐摩耗性に劣る。
さらに、樹脂組成物(A)に含有される有機過酸化物が0.001質量部しかない比較例5では、形成される架橋が少な過ぎるため強度(引っ張り強さ)や耐摩耗性のほか耐熱性(加熱変形)に劣る。
また、シランカップリング剤もシラノール縮合触媒も含まれていない比較例8では強度(伸び)に劣る。
これに対して、実施例1〜10はいずれも強度(引っ張り強さ、伸び)や耐摩耗性、耐熱性(加熱変形)がともに優れたものとなり、さらに外観も良好なものになる。
このように、樹脂組成物(A)(シランマスターバッチ)とシラノール縮合触媒樹脂組成物(B)(触媒マスターバッチ)との少なくとも2成分を溶融混合して混合物(C)を得る工程(α)で、混合物(C)中の樹脂成分100質量%中、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等の総含有量が20〜60質量%であり、かつ、混合物(C)中の樹脂成分100質量部に対して金属水和物の量が20〜300質量部であるように混合することで、外観が良好で、かつ、耐熱性、高い耐摩耗性、高い強度を有する電線・ケーブルを製造することが可能となる。
Claims (6)
- ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、シランカップリング剤2〜15質量部と、無機フィラー20〜300質量部を含有し、アリル系架橋助剤を実質的に含まない樹脂組成物(A)と、シラノール縮合触媒樹脂組成物(B)との少なくとも2成分を溶融混合してなる混合物(C)を、導体及び/又は光ファイバの周りに成形する工程(α)と、成形物を水と接触させて架橋させる工程(β)と、を有する電線・ケーブルの製造方法において、
前記混合物(C)中の樹脂成分100質量%中、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体の総含有量が20〜60質量%であり、かつ、前記混合物(C)中の樹脂成分100質量部に対して、金属水和物の量が20〜300質量部であり、
前記混合物(C)の樹脂成分中に、前記樹脂組成物(A)由来ではない不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体から選ばれる1種以上の樹脂が含有されていることを特徴とする電線・ケーブルの製造方法。 - 前記混合物(C)の樹脂成分100質量%中、前記1種以上の樹脂の含有量が15〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の電線・ケーブルの製造方法。
- 前記混合物(C)の樹脂成分100質量%中、前記樹脂組成物(A)由来ではないマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が10〜50質量%含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電線・ケーブルの製造方法。
- 前記マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂のポリプロピレン樹脂が、ホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンであることを特徴とする請求項3に記載の電線・ケーブルの製造方法。
- ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.02〜0.6質量部と、シランカップリング剤2〜15質量部と、無機フィラー20〜300質量部を含有し、アリル系架橋助剤を実質的に含まない樹脂組成物(A)と、シラノール縮合触媒樹脂組成物(B)との少なくとも2成分を溶融混合してなる混合物(C)を、導体及び/又は光ファイバの周りに成形する工程(α)と、成形物を水と接触させて架橋させる工程(β)と、を有する電線・ケーブルの製造方法において、
前記混合物(C)中の樹脂成分100質量%中、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アルキル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキル酸アルキル−(メタ)アルキル酸共重合体の総含有量が20〜60質量%であり、かつ、前記混合物(C)中の樹脂成分100質量部に対して、金属水和物の量が20〜300質量部であり、
前記混合物(C)の樹脂成分100質量%中、前記樹脂組成物(A)由来ではないマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が10〜50質量%含有されていることを特徴とする電線・ケーブルの製造方法。 - 前記マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂のポリプロピレン樹脂が、ホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンであることを特徴とする請求項5に記載の電線・ケーブルの製造方法。
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