次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の導線成形装置1を示す概略構成図である。同図に示す導線成形装置1は、図2に示すようなコイルCの一端から延出されたバスバー部Bを成形するように構成されたものである。コイルCは、1本の矩形断面を有する平角線(導線)を例えば2列かつ複数段(例えば6−10段程度)にエッジワイズ方向に曲げながら巻回することにより形成された集中巻式の矩形コイル(カセットコイル)であり、例えば電気自動車やハイブリッド車両等に搭載される三相交流電動機に適用される。平角線は、導体の表面に例えばエナメル樹脂等からなる絶縁被膜を成膜して形成されたものである。コイルCは、略四角柱状の外形を呈しており、当該コイルCの他端からは、短尺のリード線部(端子部)Lが延出されている。また、バスバー部Bは、図示するように、リード線部Lに近接する方向に延在する。更に、バスバー部Bやリード線部Lでは、平角線の絶縁被膜が先端側の予め定められた範囲で剥離されている。
図2に示すように、コイルCのバスバー部Bは、エッジワイズ方向(第1曲げ方向:平角線の断面の短辺と略直交する方向)に曲げられた複数のエッジワイズ屈曲部(第1屈曲部)Be1およびBe4と、フラットワイズ方向(第2曲げ方向:平角線の断面の長辺と略直交する方向)に曲げられた複数のフラットワイズ屈曲部(第2屈曲部)Bf1およびBf2とを有する。本実施形態において、バスバー部BBの最も基端側(根元側)のエッジワイズ屈曲部Be1と、最も先端側のエッジワイズ屈曲部Be4とは、互いに逆向きに曲げられている。また、フラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2は、エッジワイズ屈曲部Be1とエッジワイズ屈曲部Be4との間に形成され、互いに逆向きに曲げられている。
導線成形装置1は、図1に示すように、コイルCのバスバー部Bに複数のフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を形成するための第1成形型10および第2成形型20と、バスバー部Bの遊端部にエッジワイズ屈曲部Be4を成形するための先端成形部30と、コイルCを保持するコイル保持部40と、駆動軸S1を有する第1駆動装置(第1駆動源)50と、駆動軸S2を有する第2駆動装置(第2駆動源)60と、第1および第2駆動装置50,60並びにコイル保持部40を制御する制御装置100とを含む。
図1に示すように、第1成形型10は、図中上側に型面を有する下型であり、当該第1成形型10の図中下面(型面とは反対側の面)には、第1駆動装置50の駆動軸S1の先端が固定される。第2成形型20は、図中下側に第1成形型10の型面を覆うことができる型面を有する上型であり、当該第2成形型20の図中上面(型面とは反対側の面)には、第2駆動装置60の駆動軸S2の先端が固定される。先端成形部30およびコイル保持部40は、それぞれ導線成形装置1の設置箇所に固定される。第1駆動装置50は、駆動軸S1が導線成形装置1の設置箇所の上下方向に延在する回転軸心RAと同軸に延在するように第1成形型10の図1おける下方に設置(固定)される。第2駆動装置60は、駆動軸S2が上記回転軸心RAと同軸に延在するように第2成形型20の図1おける上方に設置(固定)される。
第1成形型10は、図1および図3に示すように、第2成形型20に近い側の端部から反対側の端部に向けて延在する押圧面10pと、コイルCのバスバー部Bにフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を形成するための第1フラットワイズ成形面11と、第2成形型20から遠い側の端部に沿って延在するように形成された段部14とを含む。押圧面10pは、回転軸心RAを中心軸とした略扇形状の平面形状を有し、第2成形型20に近い側の端部から第1フラットワイズ成形面11側の端部に向かうにつれて表面形状が徐々に変化するように形成されている。
第1成形型10の第1フラットワイズ成形面11は、押圧面10pに連続しており、バスバー部Bのフラットワイズ屈曲部Bf1の図2中下面に対応した第1曲面(凹曲面)と、バスバー部Bのフラットワイズ屈曲部Bf2の図2中下面に対応した第2曲面(凸曲面)とを含む。更に、第1フラットワイズ成形面11は、第1曲面の回転軸心RA側に、エッジワイズ屈曲部Be1とフラットワイズ屈曲部Bf1との間におけるバスバー部BBの図2中下面に対応した平坦面を含み、第1曲面と第2曲面との間に、フラットワイズ屈曲部Bf1とフラットワイズ屈曲部Bf2との間におけるバスバー部BBの図2中下面に対応した図1中上向きの平坦な傾斜面を含み、第2曲面の回転軸心RAとは反対側に、フラットワイズ屈曲部Bf2よりも先端側におけるバスバー部BBの図2中下面に対応した図1中下向きの平坦な傾斜面を含む。また、第1成形型10の段部14の第2成形型20側の側面は、第1成形型10の径方向に延在する平坦面である。
更に、第1成形型10の外周部には、図3に示すように、押圧面10p、第1フラットワイズ成形面11および段部14よりも下側(駆動軸S1側)に位置するように、ローラ移動制限部15が形成されている。ローラ移動制限部15は、回転軸心RAを中心として押圧面10pの外周を規定すると共に第1フラットワイズ成形面11の外周端(回転軸心RA側とは反対側の端部)と交わる円弧(図3における二点鎖線参照)よりも第1成形型10の径方向における外側に突出するように形成されている。また、本実施形態において、ローラ移動制限部15は、段部14の第2成形型20側の側面と直交する平坦な外周面15sを有する。
第2成形型20は、コイルCのバスバー部Bにフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を形成するための第2フラットワイズ成形面(図示省略)を型面として含む。第2成形型20の第2フラットワイズ成形面は、フラットワイズ屈曲部Bf1の図2中上面に対応した第1曲面(凸曲面)と、フラットワイズ屈曲部Bf2の図2中上面に対応した第2曲面(凹曲面)とを含む。更に、第2フラットワイズ成形面は、第1曲面の回転軸心RA側に、エッジワイズ屈曲部Be1とフラットワイズ屈曲部Bf1との間におけるバスバー部Bの図2中上面に対応した平坦面を含み、第1曲面と第2曲面との間に、フラットワイズ屈曲部Bf1とフラットワイズ屈曲部Bf2との間におけるバスバー部Bの図2中上面に対応した図1中上向きの平坦な傾斜面を含み、第2曲面の回転軸心RAとは反対側に、フラットワイズ屈曲部Bf2よりも先端側におけるバスバー部Bの図2中上面に対応した図1中下向きの平坦な傾斜面を含む。
また、第2成形型20の第1成形型10に近い側の端部には、それぞれ第2フラットワイズ成形面の対応する平坦面や曲面、傾斜面に連続する回転軸心RAを中心軸とした円錐面等を含む図示しないガイド面が形成されている。更に、第2成形型20の第1成形型10から遠い側の端部には、第2フラットワイズ成形面から図1中下方に突出すると共に当該第2フラットワイズ成形面に沿って延在する段部が形成されている。当該段部の第1成形型10側の側面は、第2成形型20の径方向に延在する平坦面である。
先端成形部30は、図1に示すように、導線成形装置1の設置箇所に固定される支持ブロック31と、当該支持ブロック31により回転自在に支持される曲げ治具としての成形ローラ(成形部材)35とを含む。支持ブロック31は、第1成形型10の初期位置(停止位置)よりも当該第1成形型10を第2成形型20に接近するように回転軸心RAの周りに回転させたときの回転方向における下流側に、成形ローラ35が第1成形型10側を向くように設置される。本実施形態において、成形ローラ35は、図1に示すように、ブラケット36により回転自在に支持されている。また、ブラケット36は、支持ブロック31により摺動自在に支持されており、当該ブラケット36と支持ブロック31との間には、成形ローラ35を支持ブロック31から離間する方向に付勢するスプリング(弾性体)SPが配置されている。本実施形態において、スプリングSPは、コイルスプリングである。ただし、スプリングSPは、板ばねや皿ばねであってもよい。また、スプリングSPの代わりに、ゴム材や樹脂等がブラケット36と支持ブロック31との間に設置されてもよい。
コイル保持部40は、図1に示すように、導線成形装置1の設置箇所に固定される支持台41と、支持台41により昇降自在に支持されるコイル載置テーブル42と、支持台41により昇降自在に支持されるコイル押さえプレート44とを含む。かかるコイル保持部40では、図示しないコイル搬送装置により搬送されてきたコイルCがコイル載置テーブル42上に載置されると、制御装置100により制御される図示しない駆動機構によりコイル載置テーブル42が下降させられると共にコイル押さえプレート44がコイルCに当接するように下降させられる。これにより、コイル保持部40によりコイルCをしっかりと保持(クランプ)することが可能となる。また、導線成形装置1によるコイルCの成形が完了すると、当該駆動機構によりコイル載置テーブル42が上昇させられると共にコイル押さえプレート44がコイルCから離間するように上昇させられる。これにより、コイル載置テーブル42上の成形後のコイルCを図示しない搬送装置に受け渡すことが可能となる。
更に、コイル保持部40は、バスバー部Bに最も基端側のエッジワイズ屈曲部Be1を成形するための基端成形部45(図7等参照)を含む。当該基端成形部45は、その側面が下降したコイル載置テーブル42上のコイルCのバスバー部Bの内側面(リード線部L側の側面)に当接するように支持台41に形成されている。また、基端成形部45の遊端部(第1成形型10側の端部)には、エッジワイズ屈曲部Be1に対応した曲面(円柱面状の曲面)であるエッジワイズ成形面が形成されている。
第1駆動装置50は、制御装置100により制御されて駆動軸S1に回転トルク(駆動力)を付与するモータM1を含むものである。これにより、第1駆動装置50のモータM1により駆動軸S1を回転駆動することで、第1成形型10を回転軸心RAの周りに正逆方向に回転(旋回)させることが可能となる。また、第2駆動装置60は、制御装置100により制御されて駆動軸S2に回転トルク(駆動力)を付与するモータM2を含むものである。これにより、第2駆動装置60のモータM2により駆動軸S2を回転駆動することで、第2成形型20を回転軸心RAの周りに正逆方向に回転(旋回)させることが可能となる。
導線成形装置1の制御装置100は、CPU,ROM,RAM等を有するコンピュータや第1および第2駆動装置50,60のモータM1,M2の駆動回路、コイル保持部40の駆動機構の制御回路等を含む。また、制御装置100は、第1駆動装置50に含まれてモータM1の回転軸または駆動軸S1の回転位置を検出する図示しない回転センサからの信号や、第2駆動装置60に含まれてモータM2の回転軸または駆動軸S2の回転位置を検出する図示しない回転センサからの信号等を入力する。
更に、制御装置100には、CPUや駆動回路といったハードウエアと予めインストールされた各種プログラムとの協働により、第1駆動装置50の制御部や第2駆動装置60の制御部、コイル保持部40の制御部等が機能ブロックとして構築される。第1駆動装置50の制御部は、駆動軸S1が所望の回転方向に所望の回転速度で回転するようにモータM1を制御(回転数制御)したり、駆動軸S1に所望の回転トルクが出力されるようにモータM1を制御(トルク制御)したりする。同様に、第2駆動装置60の制御部は、駆動軸S2が所望の回転方向に所望の回転速度で回転するようにモータM2を制御(回転数制御)したり、駆動軸S2に所望の回転トルクが出力されるようにモータM2を制御(トルク制御)したりする。また、コイル保持部40の制御部は、導線成形装置1によるバスバー部Bの成形の進行に応じて図示しない駆動機構を制御し、コイル載置テーブル42およびコイル押さえプレート44を昇降させる。
次に、上述の導線成形装置1を用いたコイルCのバスバー部Bの成形手順について説明する。
導線成形装置1を用いたバスバー部Bの成形開始に際して、制御装置100は、第1および第2成形型10,20をそれぞれ図1に示す初期位置まで移動させ、第1成形型10と第2成形型20とを互いに離間させる。また、制御装置100は、コイル載置テーブル42およびコイル押さえプレート44がそれぞれ図1に示す初期位置まで上昇するようにコイル保持部40の駆動機構を制御する。コイル巻線装置により巻回された未成形のバスバー部Bを含むコイルCは、図示しない搬送装置によりコイル保持部40まで搬送され、コイル載置テーブル42上に載置される。コイル載置テーブル42にコイルCが載置されると、制御装置100は、図4に示すように、コイル載置テーブル42が下降すると共にコイル押さえプレート44がコイルCに当接するようにコイル保持部40の駆動機構を制御する。これにより、コイル保持部40によりコイルCがしっかりと保持(クランプ)され、コイルCのバスバー部Bは、真っ直ぐに延在する。また、バスバー部Bの内側面(リード線部L側の側面)は、コイル保持部40の基端成形部45の側面に当接する。
続いて、制御装置100は、図5に示すように、第2成形型20のガイド面がコイルCのバスバー部Bの図中上面と対向する位置(第2成形型20の成形中の停止位置)まで当該第2成形型20を回転軸心RAの周りに図中反時計方向に回転させるように第2駆動装置60のモータM2を制御する。更に、制御装置100は、第1成形型10を第2成形型20に向けて回転軸心RAの周りに予め定められた角度θ1だけ図5中時計方向に回転させるように第1駆動装置50のモータM1を制御する。角度θ1は、例えば、第1成形型10が初期位置から当該角度θ1だけ回転した際に、第1成形型10の段部14の側面と第2成形型20の上記段部の側面との間隔がバスバー部Bの幅に概ね一致するように定められる。
第1成形型10を回転軸心RAの周りに回転させていくと、当該第1成形型10が第2成形型20に対して徐々に接近していき、コイル保持部40に保持されたコイルCのバスバー部Bは、第1成形型10の押圧面10pにより図5中上向きすなわちフラットワイズ方向に少しずつ押し上げられていく。また、第1成形型10の回転角度が大きくなっていくと、バスバー部Bは、第1成形型10の第1フラットワイズ成形面11と第2成形型20の第2フラットワイズ成形面とにより挟み込まれていく。これにより、第1成形型10が第2成形型20に対して回転軸心RAの周りに予め定められた角度θ1だけ回転した際には、図6に示すように、バスバー部Bにフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2が形成されることになる。また、第1成形型10が回転軸心RAの周りに角度θ1だけ回転した際、バスバー部Bの遊端部は、図6に示すように、第1成形型10と第2成形型20との隙間を介して外部に突出する。
導線成形装置1において、制御装置100は、第1成形型10の回転を開始させてから所定時間が経過するまで、駆動軸S1が予め定められた回転速度で回転するように第2駆動装置60のモータM2を制御(回転数制御)する。当該所定時間は、例えば、第1成形型10の回転を開始させてから第1成形型10の押圧面10pにより押圧されるバスバー部Bの一部が第1成形型10の第1フラットワイズ成形面11に当接するまでの時間として予め定められる。このようにバスバー部Bが第1成形型10の押圧面10pにより押圧される間にモータM1を回転数制御することで、バスバー部Bにフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を形成するのに要する時間を短縮化することが可能となる。
また、制御装置100は、第1成形型10の回転を開始させてから上記所定時間が経過すると、駆動軸S1に予め定められた回転トルクを出力するように第1駆動装置50のモータM1を制御(トルク制御)する。更に、このようなモータM1のトルク制御を開始させると、制御装置100は、第2成形型20を上記成形中の停止位置に停止させておくための回転トルクを駆動軸S2に出力するように第2駆動装置60のモータM2を制御する。このように、第1成形型10を第2成形型20に対して回転させながらバスバー部Bを成形する際に、第1駆動装置50から第1成形型10に回転トルク(駆動力)を付与すると共に第2駆動装置60から第2成形型20に回転トルク(駆動力)を付与することで、第1および第2成形型10,20によりバスバー部Bをしっかりと挟み込んでフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を精度よく形成することが可能となる。
第1成形型10の回転角度が角度θ1になると、制御装置100は、その時点で第1および第2駆動装置50のモータM1,M2からのトルクの出力すなわち第1成形型10の回転を一旦停止させた上で、第1および第2成形型10,20が一体となって回転軸心RAの周りに予め定められた角度θ2だけ図6中反時計方向に回転するように第1および第2駆動装置50,60のモータM1,M2を制御する。導線成形装置1において、第1および第2成形型10,20が一体に回転する方向は、第1成形型10の第2成形型20に対する回転方向と逆方向である。また、この際、制御装置100は、第1および第2成形型10,20を互いに同一の回転速度で回転軸心RAの周りに回転させるように第1および第2駆動装置50,60のモータM1,M2を制御する。
このように第1および第2成形型10,20が一体に回転する際、バスバー部Bのコイル保持部40の基端成形部45により拘束された部分(基端)と、バスバー部Bの第1および第2成形型10,20(第1成形型10の段部14および第2成形型20の段部)により保持された(挟み込まれた)部分との間の部分が基端成形部45のエッジワイズ成形面に押し付けられてエッジワイズ方向に曲げられていく。これにより、第1および第2成形型10,20を回転軸心RAの周りに角度θ2だけ一体に回転させることで、図7に示すように、バスバー部Bに最も基端側のエッジワイズ屈曲部Be1を形成することができる。この際、第1および第2成形型10,20を互いに同一の回転速度で回転軸心RAの周りに回転させることで、第1および第2成形型10,20によりバスバー部Bをしっかりと挟み込んで最も基端側のエッジワイズ屈曲部Be1を精度よく形成することが可能となる。
また、第1および第2成形型10,20が一体に回転すると、第1および第2成形型10,20が一体に回転し始める位置すなわち第1成形型10の停止位置(第2成形型20の成形中の停止位置)よりも両者の回転方向における下流側で、第1および第2成形型10,20との隙間を介して外部に突出したバスバー部Bの遊端部の内側面(図6における右側の側面)が、図8(a)に示すように、先端成形部30の成形ローラ35に当接する。バスバー部Bの遊端部が成形ローラ35に当接すると、スプリングSPは、その変位に応じて成形ローラ35を第1および第2成形型10,20(第1成形型10の段部14および第2成形型20の段部)により保持されて回動するバスバー部Bの遊端部側に付勢し、成形ローラ35は、スプリングSPによりバスバー部Bに押し付けられると共に、第1および第2成形型10,20の回転に伴ってバスバー部Bの遊端部の内側面上を転動する。これにより、バスバー部Bの遊端部は、第1および第2成形型10,20と成形ローラ35との相対移動に伴って当該成形ローラ35により押圧され、第1および第2成形型10,20の回転方向とは逆向き、すなわち最も基端側のエッジワイズ屈曲部Be1とは逆向きにエッジワイズ方向に曲げられていく。
ここで、本実施形態の導線成形装置1では、第1成形型10の外周部にローラ移動制限部15が形成されており、成形ローラ35は、スプリングSPの変位に応じて当該スプリングSPから付与される付勢力が大きくなると、バスバー部Bの遊端部の内側面上を転動しつつ、図8(b)に示すように、第1成形型10のローラ移動制限部15の外周面15sに当接する。また、成形ローラ35は、スプリングSPから付与される付勢力に応じて、図8(c)に示すように、バスバー部Bの遊端部を押圧しつつ、ローラ移動制限部15の外周面15sを転動する。
このようにローラ移動制限部15の外周面15sが成形ローラ35に当接することで、第1および第2成形型10,20と成形ローラ35とが相対移動する際にスプリングSPの付勢力による当該成形ローラ35のバスバー部Bの遊端部側への移動が制限される。これにより、バスバー部Bを屈曲させるのに要求されるスプリングSPの剛性を充分に確保しても、成形ローラ35の可動範囲すなわちスプリングSPの伸縮幅を狭めて、当該スプリングSPの変位に応じて成形ローラ35からバスバー部Bに付与される押圧力が必要以上に高まるのを抑制することができる。
この結果、第1および第2成形型10,20を回転軸心RAの周りに角度θ2だけ一体に回転させることで、図7に示すように、バスバー部Bに最も先端側のエッジワイズ屈曲部Be4を精度よく形成することが可能となる。すなわち、スプリングSPにより付勢される成形ローラ35が過度にバスバー部Bの遊端部を押圧するのを抑制することができるので、エッジワイズ屈曲部Be4を曲げ過ぎたり、成形ローラ35により絶縁被膜が除去されている当該エッジワイズ屈曲部Be4の周辺を傷付けてしまったりするのを抑制することができる。更に、スプリングSPにより付勢される成形ローラ35を用いてバスバー部Bの遊端部にエッジワイズ屈曲部Be4を形成することで、当該エッジワイズ屈曲部Be4の成形にカム機構や専用の駆動装置を有する成形部を用いた場合に比べて、導線成形装置1の構造の複雑化を抑制して設備コストの増加を抑えることが可能となる。
また、第1および第2成形型10,20を互いに同一の回転速度で回転軸心RAの周りに回転させることで、第1および第2成形型10,20によりバスバー部Bをしっかりと挟み込んで最も先端側のエッジワイズ屈曲部Be4を精度よく形成することができる。なお、第1および第2成形型10,20を一体に回転させる角度θ2は、エッジワイズ屈曲部Be1,Be4の曲げ角度とバスバー部B(平角線)のスプリングバックを考慮して定められる。更に、第1成形型10におけるローラ移動制限部15の位置(突出量)は、スプリングSPの剛性やエッジワイズ屈曲部Be4の曲げ角度、バスバー部B(平角線)のスプリングバック等を考慮して定められる。
第1および第2成形型10,20の回転角度が角度θ2となってエッジワイズ屈曲部Be1,Be4の形成が完了すると、制御装置100は、第1および第2駆動装置50,60のモータM1,M2の回転すなわち第1および第2成形型10,20の回転を停止させる。更に、制御装置100は、第2成形型20が回転軸心RAの周りに回転して初期位置まで戻るように第2駆動装置60のモータM2を制御する。この際、制御装置100は、駆動軸S2が予め定められた回転速度で回転するように第2駆動装置60のモータM2を制御(回転数制御)する。図9に示すように、第2成形型20が初期位置に戻ると、制御装置100は、コイル載置テーブル42およびコイル押さえプレート44がそれぞれ図1に示す初期位置まで上昇するようにコイル保持部40の駆動機構を制御する。これにより、図10に示すように、コイル押さえプレート44がコイルCから離間すると共に、コイルCがコイル載置テーブル42と共に上昇する。そして、バスバー部Bの成形が完了したコイルCは、図示しない搬送装置へと受け渡される。その後、未成形のバスバー部Bを含むコイルCがコイル載置テーブル42上に載置されると、導線成形装置1により当該コイルCのバスバー部Bに対して複数の屈曲部Be1,Be4,Bf1およびBf2が形成されることになる。
以上説明したように、導線成形装置1によれば、設備コストの増加を抑制しつつ、コイルCのバスバー部Bにダメージを与えることなく当該バスバー部Bの遊端部にエッジワイズ屈曲部Be4を精度よく形成することが可能となる。そして、バスバー部Bを保持した第1および第2成形型10,20を回転軸心RAの周りに一体に回転させながら当該バスバー部Bを成形ローラ35に押し当てる導線成形装置1では、図8からわかるように、回転軸心RAの周りに回動するバスバー部Bの先端側ほど強く成形ローラ35に押し当てられることになるので、第1成形型10にローラ移動制限部15を形成することで、エッジワイズ屈曲部Be4の曲げ過ぎや、当該エッジワイズ屈曲部Be4の周辺の損傷を極めて良好に抑制することができる。
なお、導線成形装置1において、第1および第2成形型10,20が一体に回転する方向は、第1成形型10の第2成形型20に対する回転方向と逆方向であるが、第1および第2成形型10,20の一方に対する他方の回転方向と、第1および第2成形型10,20が一体に回転する方向とが同一に定められてもよい。また、導線成形装置1において、第1および第2成形型10,20は、フラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2に加えて少なくとも1つのエッジワイズ屈曲部を形成するように構成されてもよい。更に、第1および第2成形型10,20の構造によっては、第2成形型20にローラ移動制限部が形成されてもよい。また、第1および第2成形型10,20を回転軸心RAの周りに一体に回転させる際に、両者の回転方向における後側の一方に付与されるトルクが当該回転方向における前側の他方に付与されるトルク以上になるように第1および第2駆動装置50,60のモータM1,M2が制御されてもよい。更に、第1および第2成形型10,20を一体に回転させる代わりに、成形ローラ35を支持した支持ブロック31を回転軸心RAの周りに回転させてもよく、第1および第2成形型10,20と成形ローラ35(支持ブロック31)とを予め定められた軸線に沿って相対移動させてもよい。また、ローラ移動制限部15の外周面15sの形状は、対象となるバスバー部Bの遊端部の形状に合わせて任意に定めることができる。更に、成形ローラ35の代わりに、エッジワイズ成形面を有するブロック材やベルトといった可動部を含まない成形部材が用いられてもよい。
そして、ここまで本開示の発明を実施するための形態について説明したが、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。