(実施形態)
(1)概要
一実施形態のリハビリテーション支援システム100は、図1及び図2に示すように、脳波測定システム10と、刺激システム6と、を備える。
刺激システム6は、図3に示すように、対象者5の身体(前腕54)に装着される2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)を備える。また、刺激システム6は、図2に示すように、制御部41と、電流計測部42と、を備える。制御部41は、対象者5の脳波を表す脳波情報に基づいて2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間に電圧を印加して対象者5の身体(前腕54)に電気的な刺激を加えるように構成される。電流計測部42は、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間に流れる電流を計測するように構成される。
刺激システム6では、電流計測部42で、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間に流れる電流を計測している。通常の使用時には、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)は対象者5の身体(前腕54)に装着されるから、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間に流れる電流は、対象者5の身体(前腕54)を通る。そのため、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間に流れる電流を計測することによって、使用状態を把握できる。
使用状態は、刺激システム6が正常に使用されている状態(正常状態)と、刺激システム6が正常に使用されていない状態(異常状態)とに、大別される。正常状態は、例えば、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)が対象者5の身体(前腕54)の正しい位置に装着されている状態である。異常状態の例としては、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間に電流が流れない状態と、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間に過大な電流が流れる状態とが挙げられる。前者の状態は、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)が対象者5の身体(前腕54)に装着されていないか、対象者5の身体(前腕54)の誤った位置に装着されている場合に起こり得る。言い換えれば、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間の抵抗値が無限大であるような状態(オープン状態)である。後者の状態は、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)同士が電気的に接触している場合に起こり得る。言い換えれば、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間の抵抗値がゼロであるような状態(短絡状態)である。
(2)構成
以下、本実施形態に係るリハビリテーション支援システム100の構成について更に詳しく説明する。リハビリテーション支援システム100は、図1及び図2に示すように、脳波測定システム10と、刺激システム6と、を備えている。
(2.1)脳波測定システム
脳波測定システム10は、対象者5の脳波を測定するためのシステムであって、対象者5の頭部52の一部である測定箇所51に配置される電極部11にて採取される脳波を表す脳波情報を取得する(図4参照)。本開示でいう「脳波」(Electroencephalogram:EEG)とは、大脳の神経細胞(群)の発する電気信号(活動電位)を体外に導出し、記録した波形を意味する。本開示においては、特に断りが無い限り、大脳皮質の多数のニューロン群(神経網)の総括的な活動電位を対象として、これを体表に装着した電極部11を用いて記録する頭皮上脳波を「脳波」という。
脳波測定システム10は、図1及び図2に示すように、電極部11を有するヘッドセット1と、情報処理装置2と、を備えている。ヘッドセット1は、対象者5の頭部52の表面(頭皮)に電極部11を接触させた状態で、対象者5の頭部52に装着される。本開示では、電極部11は、頭部52の表面に塗布されたペースト(電極糊)上に載せられることで、頭部52の表面に接触する。このとき、電極部11は、毛髪をかき分けることにより、毛髪を介さずに頭部52の表面に接触する。もちろん、電極部11は、ペーストを塗布することなく、頭部52の表面に直接、接触してもよい。つまり、本開示では、「電極部11を頭部52の表面に接触させる」とは、電極部11を直接、頭部52の表面に接触させることの他、中間物を介して電極部11を間接的に頭部52の表面に接触させることも含む。中間物は、ペーストに限定されず、例えば導電性を有するゲルであってもよい。ヘッドセット1は、電極部11にて対象者5の脳の活動電位を測定することで対象者5の脳波を測定し、脳波を表す脳波情報を生成する。ヘッドセット1は、例えば、無線通信により、脳波情報を情報処理装置2に送信する。情報処理装置2は、ヘッドセット1から取得した脳波情報に対して、種々の処理を施したり、脳波情報を表示したりする。
本実施形態では、脳波測定システム10が、対象者5のリハビリテーションを支援するためのリハビリテーション支援システム100に用いられる場合について説明する。すなわち、リハビリテーション支援システム100は、本実施形態に係る脳波測定システム10を備えている。リハビリテーション支援システム100は、運動補助装置3と、制御装置4と、を更に備えている。運動補助装置3は、対象者5に機械的な刺激と電気的な刺激との少なくとも一方を加えて、対象者5の運動を補助する装置である。制御装置4は、脳波測定システム10にて取得された脳波情報に基づいて、運動補助装置3を制御する。本実施形態では、運動補助装置3と制御装置4とが、刺激システム6を構成している。
このリハビリテーション支援システム100は、例えば、脳卒中等の脳疾患又は事故等によって、身体の一部に運動麻痺又は運動機能の低下等が生じた人を対象者5として、運動療法によるリハビリテーションを支援する。このような対象者5においては、対象者5が自己の意思又は意図に基づいて行う運動である随意運動(voluntary movement)が、不能又はその機能の低下により満足にできないことがある。本開示でいう「運動療法」は、対象者5の身体のうち、このような随意運動の不能部位又は機能の低下が生じた部位(以下、「障害部位」という)を運動させることにより、障害部位について随意運動の機能の回復を図る方法を意味する。
本実施形態では、対象者5の左の手指53(左手指)のリハビリテーションに、リハビリテーション支援システム100が用いられる場合を例示する。つまり、この場合の対象者5においては左手指が障害部位である。ただし、この例に限らず、リハビリテーション支援システム100は、例えば、対象者5の右手指のリハビリテーションに用いられてもよい。
リハビリテーション支援システム100は、対象者5が左の手指53による随意運動を行う際に、対象者5の左手に装着された運動補助装置3にて、対象者5の左手に機械的な刺激と電気的な刺激との少なくとも一方を加えて、随意運動を補助する。これにより、例えば、理学療法士又は作業療法士等の医療スタッフが、対象者5の手指53を持って対象者5の随意運動を補助する場合と同様に、リハビリテーション支援システム100にて、随意運動の補助が可能になる。そのため、リハビリテーション支援システム100によれば、医療スタッフが補助する場合と同様に、対象者5が単独で随意運動を行う場合に比べて効果的な、運動療法によるリハビリテーションを実現可能となる。
ところで、上述のようなリハビリテーションを支援するためには、リハビリテーション支援システム100は、対象者5が随意運動を行おうとする場合に、運動補助装置3にて対象者5の随意運動を補助することが望ましい。リハビリテーション支援システム100は、脳波測定システム10にて測定された対象者5の脳波(脳波情報)に、運動補助装置3を連動させることにより、対象者5が随意運動を行おうとする場合に運動補助装置3での随意運動の補助を実現する。言い換えれば、リハビリテーション支援システム100は、脳活動(脳波)を利用して機械(運動補助装置3)を操作する、ブレイン・マシン・インタフェース(Brain-machine Interface:BMI)の技術を利用して、運動療法によるリハビリテーションを実現する。
対象者5が随意運動を行う際には(つまり、対象者5が随意運動を行う過程で)、脳波に特徴的な変化が生じ得る。つまり、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)した際には、随意運動の対象となる部位に対応する脳領域の活性化が起き得る。このような脳領域の例としては、体性感覚運動皮質が挙げられる。このような脳領域の活性化が起こるタイミングに合わせて、運動補助装置3にて対象者5の随意運動を補助すると、より効果的なリハビリテーションが期待できる。このような脳領域の活性化は、脳波の特徴的な変化として検出され得る。そのため、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の脳波にこの特徴的な変化が発生するタイミングに合わせて、運動補助装置3にて対象者5の随意運動の補助を実行する。このような脳波の特徴的な変化は、随意運動が実際に行われなくても、対象者5が随意運動を想起(image)した際(つまり運動企図中)に生じ得る。つまり、このような脳波の特徴的な変化は、随意運動が実際に行われなくても、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)したことによって対応する脳領域が活性化すれば、生じ得る。そのため、随意運動が不能な状態の対象者5についても、リハビリテーション支援システム100による随意運動の補助が可能である。
このような構成のリハビリテーション支援システム100によれば、医療スタッフの負担を軽減しながらも、対象者5においては、効果的な、運動療法によるリハビリテーションを実現可能となる。また、リハビリテーション支援システム100によれば、例えば、対象者5の随意運動の補助を行う医療スタッフの熟練度等の人的要因によって随意運動の補助のタイミングがばらつくことがなく、リハビリテーションの効果のばらつきが低減される。特に、リハビリテーション支援システム100では、脳波に特徴的な変化が生じたタイミング(つまり、脳領域が実際に活性化したタイミング)で、対象者5の随意運動を補助することができる。このように、リハビリテーション支援システム100では、脳活動のタイミングに合わせた訓練が可能となるから、正しい脳活動の学習及び定着への貢献が期待できる。特に、脳波に特徴的な変化が起きたかどうかは、対象者5及び医療スタッフだけでは判別が困難である。したがって、リハビリテーション支援システム100を用いることで、対象者5又は医療スタッフだけでは実現が難しい効果的なリハビリテーションが可能となる。
本実施形態では、対象者5がリハビリテーション支援システム100を利用する際に、理学療法士又は作業療法士等の医療スタッフが対象者5に付き添い、リハビリテーション支援システム100の操作等については医療スタッフが行うことと仮定する。ただし、リハビリテーション支援システム100を利用する対象者5に医療スタッフが付き添うことは必須ではなく、例えば、リハビリテーション支援システム100の操作等を対象者5、又は対象者5の家族等が行ってもよい。
ところで、本実施形態に係る脳波測定システム10は、上述したリハビリテーション支援システム100において、対象者5が随意運動を行う際に生じる(つまり、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に生じ得る)特徴的な変化を含む脳波を検出するために用いられる。詳しくは後述するが、脳波測定システム10は、事象関連脱同期(Event-Related Desynchronization:ERD)が生じることで脳波に生じる特定の周波数帯域の強度変化を、特徴的な変化として検出する。本開示でいう「事象関連脱同期」は、随意運動時(随意運動の想起時を含む)に運動野付近で測定される脳波において、特定の周波数帯域のパワーが減少する現象を意味する。本開示でいう、「随意運動時」は、対象者5が随意運動の企図(想起)をしてから随意運動が成功又は失敗するまでの過程を意味する。「事象関連脱同期」は、この随意運動時に、随意運動の企図(想起)をトリガとして、生じ得る。事象関連脱同期によりパワーが減少する周波数帯域は、主としてα波(一例として8Hz以上13Hz未満の周波数帯域)及びβ波(一例として13Hz以上30Hz未満の周波数帯域)である。
上述したように、本実施形態では、脳波測定システム10は、ヘッドセット1と、情報処理装置2と、を備えている。
ヘッドセット1は、図4に示すように、対象者5の頭部52に装着される。ヘッドセット1は、電極部11を有している。電極部11は、対象者5の頭部52の一部である測定箇所51に配置される。具体的には、ヘッドセット1は、対象者5の頭部52の表面(頭皮)の一部に設定された測定箇所51に電極部11を接触させた状態で、電極部11にて対象者5の脳波を測定し、脳波を表す脳波情報を生成する。
情報処理装置2は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムを主構成とする。情報処理装置2は、例えば、無線通信により、ヘッドセット1からの脳波情報を受信し、脳波情報に対する種々の処理を実行する。本実施形態では、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)した際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波の検出は、情報処理装置2にて行われる。
対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)した際には、通常、身体の随意運動を行う部位に対応する運動野にて、特徴的な変化を含む脳波が発生する。そこで、脳波測定システム10は、リハビリテーションの対象である障害部位に対応する運動野付近から採取される脳波を測定対象とする。ここで、左手指に対応する運動野は右脳にあり、右手指に対応する運動野は左脳にある。そのため、本実施形態のように対象者5の左の手指53をリハビリテーションの対象とする場合には、対象者5の頭部52の右側に接触させた電極部11にて取得される脳波が、脳波測定システム10での測定対象となる。すなわち、電極部11は、図4に示すように、対象者5の頭部52の右側表面の一部からなる測定箇所51上に配置される。一例として、国際10−20法において電極記号「C4」で表される位置に電極部11が配置される。対象者5の右の手指をリハビリテーションの対象とする場合には、対象者5の頭部52の左側表面の一部からなる測定箇所、一例として、国際10−20法において電極記号「C3」で表される位置に電極部11が配置される。
脳波測定システム10は、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)した際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波を検出すると、運動補助装置3を制御するための制御信号を出力する。すなわち、リハビリテーション支援システム100では、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)した際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波を脳波測定システム10にて検出することをトリガにして、運動補助装置3を制御するための制御信号が発生する。これにより、リハビリテーション支援システム100では、対象者5の随意運動に合わせて、運動補助装置3にて対象者5の随意運動を補助することが可能である。
更に、脳波測定システム10について詳しく説明する。
脳波測定システム10は、図2に示すように、対象者5の頭部52に装着されるヘッドセット1と、パーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムを主構成とする情報処理装置2と、を備えている。
ヘッドセット1は、電極部11と、信号処理部12と、第1通信部13と、を有している。ヘッドセット1は、例えば、電池駆動式であって、信号処理部12及び第1通信部13等の動作用電力が電池から供給される。
電極部11は、対象者5の脳波(脳波信号)を採取するための電極であって、例えば、銀−塩化銀電極である。電極部11は金、銀、白金等でもよい。電極部11は、第1電極111と、第2電極112と、を有している。本実施形態では、図4に示すように、対象者5の頭部52の表面に設定された測定箇所51は、第1測定箇所511及び第2測定箇所512を含んでいる。第1電極111は、第1測定箇所511に対応する電極であって、第1測定箇所511上に配置される。第2電極112は、第2測定箇所512に対応する電極であって、第2測定箇所512上に配置される。具体的には、第1測定箇所511及び第2測定箇所512は、頭部52の正中中心部と右耳とを結ぶ線上に、正中中心部側(上側)から第1測定箇所511、第2測定箇所512の順に並んで配置されている。
また、本実施形態では、ヘッドセット1は、参照電極113と、アース電極114と、を更に備えている。参照電極113は、第1電極111及び第2電極112の各々で測定される脳波信号の基準電位を測定するための電極である。参照電極113は、頭部52における右耳又は左耳のいずれかの後方位置に配置される。具体的には、参照電極113は、頭部52において第1電極111及び第2電極112が配置されている側の耳の後方位置に配置される。本実施形態では、第1電極111及び第2電極112は、頭部52の右側表面に配置されているので、参照電極113は、右耳の後方位置に配置される。アース電極114は、頭部52における右耳又は左耳のうち参照電極113が配置されていない方の耳の後方位置に配置される。本実施形態では、参照電極113が右耳の後方位置に配置されるので、アース電極114は、左耳の後方位置に配置される。参照電極113及びアース電極114の各々は、ヘッドセット1の本体15に対して電線16(図4参照)にて電気的に接続されており、頭部52の表面(頭皮)に貼り付けられる。なお、参照電極113及びアース電極114を配置する位置は、上述したような耳の後方位置ではなく、耳たぶであってもよい。耳の後方位置及び耳たぶは、頭部において脳活動由来の生体電位の影響を受けにくい場所である。つまり、参照電極113及びアース電極114は、頭部において脳活動由来の生体電位の影響を受けにくい場所に配置されることが好ましい。
信号処理部12は、電極部11、参照電極113及びアース電極114に電気的に接続されており、電極部11から入力される脳波信号(電気信号)に対して信号処理を実行し、脳波情報を生成する。つまり、ヘッドセット1は、電極部11にて対象者5の脳の活動電位を測定することで対象者5の脳波を測定し、信号処理部12にて脳波を表す脳波情報を生成する。信号処理部12は、少なくとも脳波信号を増幅する増幅器、及びA/D変換するA/D変換器を含んでおり、増幅後のディジタル形式の脳波信号を、脳波情報として出力する。
第1通信部13は、情報処理装置2との通信機能を有している。第1通信部13は、少なくとも信号処理部12で生成された脳波情報を情報処理装置2に送信する。本実施形態では、第1通信部13は、情報処理装置2と双方向に通信可能である。第1通信部13の通信方式は、例えば、Bluetooth(登録商標)等に準拠した無線通信である。第1通信部13からは、随時、脳波情報が情報処理装置2に送信されている。
情報処理装置2は、プロセッサ21と、メモリ22と、を含むコンピュータシステムを主構成とする。情報処理装置2は、第2通信部23と、操作部24と、第3通信部25と、表示部26と、を更に有している。
第2通信部23は、ヘッドセット1(第1通信部13)との通信機能を有している。第2通信部23は、少なくとも脳波情報をヘッドセット1から受信する。本実施形態では、第2通信部23は、ヘッドセット1と双方向に通信可能である。第2通信部23は、例えば、一例として、200Hz程度のサンプリング周波数でサンプリングされた脳波情報を、ヘッドセット1から随時受信する。
第3通信部25は、制御装置4との通信機能を有している。第3通信部25は、少なくとも制御信号を制御装置4に送信する。第3通信部25の通信方式は、例えば、USB(Universal Serial Bus)に準拠した有線通信である。
本実施形態では、情報処理装置2は、タッチパネルディスプレイを搭載しており、タッチパネルディスプレイが操作部24及び表示部26として機能する。そのため、情報処理装置2は、表示部26に表示される各画面上でのボタン等のオブジェクトの操作(タップ、スワイプ、ドラッグ等)が操作部24で検出されることをもって、ボタン等のオブジェクトが操作されたことと判断する。つまり、操作部24及び表示部26は、各種の表示に加えて、対象者5又は医療スタッフからの操作入力を受け付けるユーザインタフェースとして機能する。ただし、操作部24は、タッチパネルディスプレイに限らず、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、又はメカニカルなスイッチ等であってもよい。
プロセッサ21は、取得部211、解析部212、及び検出部213の機能を有している。メモリ22に記録されているプログラムをプロセッサ21が実行することによって、取得部211、解析部212、及び検出部213の機能が実現される。
取得部211は、対象者5の頭部52の一部である測定箇所51に配置される電極部11にて採取される脳波を表す脳波情報を取得する。すなわち、取得部211は、ヘッドセット1の電極部11にて採取される脳波を表す脳波情報を、第2通信部23を介してヘッドセット1から取得する。ここで、取得部211は、第1電極111にて採取される脳波を表す第1脳波情報及び第2電極112にて採取される脳波を表す第2脳波情報をそれぞれ取得する。つまり、本実施形態では、電極部11が第1電極111及び第2電極112を含んでいるので、取得部211では、第1電極111で採取される脳波情報を第1脳波情報、第2電極112で採取される脳波情報を第2脳波情報として区別する。本実施形態では、取得部211はディジタル形式の脳波情報を取得し、取得した脳波情報をメモリ22に記憶する。このとき、メモリ22には、訓練時間の開始から終了までの間に脳波測定システム10で測定された脳波情報の時系列データが記憶される。
解析部212は、取得部211で取得された脳波情報の解析を行う。解析部212は、メモリ22に記憶されている脳波情報の周波数解析を行い、周波数帯域ごとの信号強度を示すスペクトルデータを生成する。具体的には、解析部212は、メモリ22に記憶されている脳波情報を所定時間分だけ読み出して、例えば、短時間フーリエ変換(short-time Fourier transform:STFT)等の周波数解析を行う。これにより、時間経過に伴って変化する脳波信号について、周波数帯域ごとのパワーが算出される。本開示でいう「パワー」は、周波数帯域ごとの強度(スペクトル強度)の積算値である。
検出部213は、解析部212で解析された周波数帯域ごとのパワーに基づいて、対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)した際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波を検出する。具体的には、検出部213は、特定の周波数帯域のパワーが安静範囲と運動範囲とのいずれにあるかによって、特徴的な変化を含む脳波の有無を判断する。本開示でいう「安静範囲」は、対象者5が、身体を安静状態とし、つまり随意運動を行おうとする企図(想起)を行わず、リラックスした状態を維持しているときの、対象者5の脳波の特定の周波数帯域のパワーがとり得る範囲を意味する。本開示でいう「運動範囲」は、対象者5が随意運動を行おうと企図した場合に脳波の特定の周波数帯域のパワーがとり得る範囲を意味する。つまり、検出部213は、特定の周波数帯域のパワーが安静範囲から運動範囲へ遷移したことをもって、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波が発生したと判断する。
情報処理装置2は、制御装置4に制御信号(第1の制御信号、第2の制御信号、及び第3の制御信号)を送信する機能を有している。例えば、情報処理装置2は、対象者5が随意運動を行おうと企図した場合に際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波が発生したと判断すると、制御装置4に第3の制御信号を送信する。また、情報処理装置2は、特徴的な変化を含む脳波が発生している状態が規定時間継続されると、第1の制御信号を制御装置4に送信する。また、情報処理装置2は、操作部24での操作に応じて、制御装置4に第1の制御信号又は第2の制御信号を送信する機能を有している。例えば、表示部26に表示された装具操作ボタンに「装具開」のテキストが表示されている場合に操作部24で装具操作ボタンが選択されると、情報処理装置2は、第1の制御信号を制御装置4に送信する。例えば、表示部26に表示された装具操作ボタンに「装具閉」のテキストが表示されている場合に操作部24で装具操作ボタンが選択されると、情報処理装置2は、第2の制御信号を制御装置4に送信する。
(2.2)刺激システム
刺激システム6は、図1及び図2に示すように、運動補助装置3と、制御装置4と、を備えている。
運動補助装置3は、対象者5に機械的な刺激と電気的な刺激との少なくとも一方を加えて、対象者5の運動を補助する装置である。本実施形態では、対象者5の左手指のリハビリテーションにリハビリテーション支援システム100が用いられるので、図1に示すように、運動補助装置3は、対象者5の左手に装着される。
本実施形態では、対象者5の左手指による把持動作及び伸展動作のリハビリテーションに、リハビリテーション支援システム100が用いられる場合を例示する。本開示でいう「把持動作」は、物をつかむ動作のことを意味する。また、本開示でいう「伸展動作」は、第1指(親指)を除く4本の手指53(第2指〜第5指)の伸展により、手を開く動作、つまり把持動作によりつかんでいる状態の「物」を放す動作のことを意味する。つまり、この対象者5においては左手指が障害部位であって、リハビリテーション支援システム100は、左手指による把持動作及び伸展動作という随意運動についてのリハビリテーションに用いられる。ただし、実際には、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の把持動作を直接的に補助するのではなく、対象者5の手指の伸展動作を補助することで、間接的に把持動作のリハビリテーションを行う。本開示でいう「伸展動作」は、第1指(親指)を除く4本の手指53(第2指〜第5指)の伸展により、手を開く動作、つまり把持動作によりつかんでいる状態の「物」を放す動作のことを意味する。
そのため、リハビリテーション支援システム100では、対象者5が随意運動として伸展動作を行う際に、対象者5の左手に装着された運動補助装置3が、対象者5の左の手指53に機械的な刺激と電気的な刺激との少なくとも一方を加えて、随意運動を補助する。具体的には、運動補助装置3は、図2に示すように、手指駆動装置(駆動装置)31と、電気刺激発生装置32と、を有している。
手指駆動装置31は、第1指(親指)を除く4本の手指53(第2指〜第5指)を保持し、これら4本の手指53に機械的な刺激(外力)を与えることによって、4本の手指53を動かす装置である。手指駆動装置31は、対象者5の左の前腕54に装着されるフレーム311と、対象者5の左の手指53を保持するホルダ312と、を備えている。ホルダ312は、フレーム311に対して回動可能である。手指駆動装置31は、更に、モータ又はソレノイド等の動力源313を含み、動力源313で発生した力を4本の手指53に伝えることによって、4本の手指53を動かす。具体的には、動力源313で発生した力によって、ホルダ312をフレーム311に対して回動させることで、4本の手指53を前腕54に対して動かす。手指駆動装置31では、保持した4本の手指53を、第1指から離れる向きに移動(つまり伸展動作)させる「開動作」と、第1指に近づく向きに移動(つまり把持動作)させる「閉動作」と、の2種類の動作が可能である。手指駆動装置31の開動作により対象者5の伸展動作が補助され、手指駆動装置31の閉動作により対象者5の把持動作が補助される。
電気刺激発生装置32は、対象者5の手指53を動かすための部位(本実施形態では、前腕54)に、電気的な刺激を与える装置である。ここで、対象者5の手指53を動かすための部位は、対象者5の手指53の筋肉と神経との少なくとも一方に対応する部位を含む。例えば、対象者5の手指53を動かすための部位は、対象者5の腕の一部である。電気刺激発生装置32は、対象者5の身体(前腕54)に装着される第1電極321及び第2電極322を備える。また、電気刺激発生装置32は、例えば、対象者5の前腕54に貼り付けられる一対のパッド3231,3232を含む。第1電極321及び第2電極322は、一対のパッド3231,3232に、それぞれ設けられている。一対のパッド3231,3232を対象者5の前腕54に貼り付けることで、第1電極321及び第2電極322が対象者5の前腕54に装着される。電気刺激発生装置32は、制御装置4により制御され、第1電極321及び第2電極322によって対象者5の身体(前腕54)に電気的な刺激(電流)を与えることによって、手指53を動かすための部位へ刺激を与える。
制御装置4は、脳波測定システム10にて取得された脳波情報に基づいて、運動補助装置3を制御する。本実施形態では、制御装置4は、脳波測定システム10の情報処理装置2、及び運動補助装置3に対して電気的に接続されている。制御装置4には、運動補助装置3及び制御装置4の動作用電力を供給するための電源ケーブルが接続されている。
制御装置4は、図2に示すように、制御部41と、電流計測部42と、表示部43と、を備えている。
制御部41は、運動補助装置3の手指駆動装置31を駆動するための駆動回路、及び電気刺激発生装置32を駆動するための発振回路を含んでいる。また、制御部41は、例えば、有線通信により、情報処理装置2から制御信号(第1の制御信号、第2の制御信号、及び第3の制御信号)を受信する。
制御部41は、対象者5の脳波を表す脳波情報に基づいて手指駆動装置(駆動装置)31を駆動して対象者5の身体(手指53)に機械的な刺激を加えるように構成される。具体的には、制御部41は、情報処理装置2から第1の制御信号を受信すると、駆動回路にて運動補助装置3の手指駆動装置31を駆動し、手指駆動装置31にて「開動作」が行われるように運動補助装置3を制御する。また、制御装置4は、情報処理装置2から第2の制御信号を受信すると、駆動回路にて運動補助装置3の手指駆動装置31を駆動し、手指駆動装置31にて「閉動作」が行われるように運動補助装置3を制御する。
また、制御部41は、対象者5の脳波を表す脳波情報に基づいて第1電極321及び第2電極322間に電圧を印加して対象者5の身体(前腕54)に電気的な刺激を加えるように構成される。具体的には、制御部41は、情報処理装置2から第3の制御信号を受信すると、発振回路にて運動補助装置3の電気刺激発生装置32を駆動し、対象者5の身体に電気的な刺激が与えられるように運動補助装置3を制御する。より詳細には、制御部41は、図5に示すように、交流の矩形波電圧を所定周期で第1電極321及び第2電極322間に印加する駆動処理を実行する。制御部41は、第1期間T1において、第1電極321が第2電極322より高電位となるように、第1電極321及び第2電極322間に一定の電圧を印加する。また、制御部41は、第1期間T1に続く第2期間T2おいて、第2電極322が第1電極321より高電位となるように、第1電極321及び第2電極322間に一定の電圧を印加する。このようにして、制御部41は、第1電極321及び第2電極322間に交流の矩形は電圧を印加する。なお、第1期間T1及び第2期間T2は、例えば、1msであり、所定周期(図5の時刻t1,t2間の時間、時刻t2,t3間の時間)は、10msである。また、第1期間T1の電圧と第2期間T2の電圧とは等しい。ただし、第1期間T1及び第2期間T2は異なっていてもよい。また、第1期間T1の電圧と第2期間T2の電圧とは異なっていてもよい。また、駆動処理で制御部41により第1電極321及び第2電極322間に印加される電圧は、必ずしも交流電圧である必要はないし、矩形波電圧である必要もなく、対象者5に所望の電気的な刺激を与えることができるように、適宜設定される。
電流計測部42は、第1電極321及び第2電極322間に流れる電流を計測するように構成される。本実施形態では、電流計測部42は、図5に示すように、第1期間T1及び第2期間T2のそれぞれの開始から始まる検出期間Tdにおいて、第1電極321及び第2電極322間に流れる電流を計測する。第1電極321及び第2電極322間に流れる電流は、第1期間T1及び第2期間T2で最大になり得る。そのため、このような検出期間Tdで第1電極321及び第2電極322間に流れる電流を計測することで、上述したオープン状態と短絡状態とを検出することが可能になる。検出期間Tdは、第1期間T1及び第2期間T2より短い。検出期間Tdは、例えば、100μsである。このような電流計測部42は、シャント抵抗器など従来周知の構成により実現できるから詳細な説明は省略する。
制御部41は、電流計測部42の計測値(つまり、電流計測部42で計測された第1電極321及び第2電極322間に流れる電流の値)に基づいて、第1電極321及び第2電極322間に印加する電圧を調整するように構成される。具体的には、制御部41は、電流計測部42の計測値が予め設定された下限値以下であれば、第1電極321及び第2電極322間に印加する電圧を低下させるように構成される。本実施形態では、制御部41は、電流計測部42の計測値が予め設定された下限値以下であれば、駆動処理を停止する。つまり、第1電極321及び第2電極322間に印加する電圧を0にする。また、制御部41は、電流計測部42の計測値が予め設定された上限値以上であれば、第1電極321及び第2電極322間に印加する電圧を低下させるように構成される。本実施形態では、電流計測部42の計測値が予め設定された上限値以上であれば、駆動処理を停止する。つまり、第1電極321及び第2電極322間に印加する電圧を0にする。ここで、下限値は、例えば、第1電極321及び第2電極322間の抵抗が無限大である場合の電流の値を考慮して選択される。また、上限値は、例えば、第1電極321及び第2電極322間の抵抗が0である場合の電流の値を考慮して選択される。また、下限値及び上限値は、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)が対象者5の身体(前腕54)の正しい位置に装着されている状態における電流の値と十分に区別可能であることが好ましい。
表示部43は、制御装置4の状態を表示するための装置である。表示部43は、例えば、発光ダイオード等の発光素子である。表示部43は、図1に示すように、制御装置4において視認可能な場所に配置される。表示部43は、制御部41によって制御される。本実施形態では、制御部41は、駆動処理を実行している間だけ、表示部43を点灯させる。なお、制御部41は、表示部43を点灯させるにあたっては、表示部43を連続的に点灯させてもよいし、断続的に点灯(つまり点滅)させてもよい。
次に、制御部41が第3の制御信号を受信した際の動作について図6のフローチャートを参照して説明する。なお、図6のフローチャートはあくまでも一例である。例えば、ステップS13とステップS14の順番は入れ替え可能である。
まず、第3の制御信号を受信すると、制御部41は、駆動処理を開始し(ステップS10)、表示部43を点灯させる(ステップS11)。これによって、図5に示すように、交流の矩形波電圧が所定周期で第1電極321及び第2電極322間に印加され、電気的な刺激が対象者5の身体(前腕54)に加えられる。そして、検出期間Tdにおいて、電流計測部42が、第1電極321及び第2電極322間に流れる電流を計測する(ステップS12)。制御部41は、電流計測部42の計測値が下限値以下かどうかを判定する(ステップS13)。電流計測部42の計測値が下限値以下でなければ(S13:No)、制御部41は、電流計測部42の計測値が上限値以上かどうかを判定する(ステップS14)。電流計測部42の計測値が上限値以上でなければ(S14:No)、制御部41は駆動処理を続行する。これによって、処理はステップS12へ戻る。一方、電流計測部42の計測値が下限値以下である(S13:Yes)か、電流計測部42の計測値が上限値以上であれば(S14:Yes)、制御部41は、駆動処理を停止し(ステップS15)、表示部43を消灯する(ステップS16)。例えば、図5では、時刻t3後の検出期間Tdにおいて、電流計測部42の計測値が下限値以下又は上限値以上と判断され、時刻t4において駆動処理が停止されている。
このように、制御部41は、脳波測定システム10から出力される制御信号に基づいて、運動補助装置3を制御することによって、脳波測定システム10にて取得された脳波情報に基づいて運動補助装置3を制御することが可能である。また、制御装置4は、制御装置4に備えられた操作スイッチの操作に応じて、手指駆動装置31にて「開動作」及び「閉動作」が行われるように運動補助装置3を制御することもできる。
(2.3)使用方法
次に、リハビリテーション支援システム100の使用方法について説明する。本実施形態では、対象者5が、ペグ101(図1参照)を左手指でつかんだ姿勢から、手指53の伸展動作によりペグ101を放す際の随意運動(伸展動作)を、リハビリテーション支援システム100にて補助する場合について説明する。
まず、準備過程として、対象者5は、ヘッドセット1を頭部52に装着し、運動補助装置3を左手に装着する。このとき、ヘッドセット1は、少なくとも電極部11を測定箇所51となる対象者5の頭部52の右側表面の一部に接触させるように、対象者5の頭部52に装着される。運動補助装置3は、少なくとも対象者5の左手の第1指(親指)を除く4本の手指53(第2指〜第5指)を保持し、かつパッドを対象者5の腕に貼り付けた状態で、対象者5に装着される。ヘッドセット1及び運動補助装置3は、リハビリテーション中にずれたり外れたりしないように適宜固定される。準備過程では、運動補助装置3の手指駆動装置31にて対象者5の4本の手指53が保持されることにより、対象者5については、ペグ101を左手指でつかんだ姿勢が維持される。ヘッドセット1及び運動補助装置3を対象者5に装着する作業は、対象者5自身が行ってもよいし、医療スタッフが行ってもよい。
準備が完了し、かつヘッドセット1と情報処理装置2とが通信可能な状態になると、ヘッドセット1にて生成された脳波情報が、情報処理装置2にて取得可能となる。つまり、脳波測定システム10は、情報処理装置2にて、対象者5の頭部52の一部である測定箇所51に配置される電極部11にて採取される脳波を表す脳波情報を取得することができる。詳しくは後述するが、情報処理装置2は、取得した脳波情報を時系列に沿ってメモリ22(図2参照)に記憶(蓄積)する。さらに、情報処理装置2は、例えば、記憶した脳波情報について時間周波数解析(Time Frequency Analysis)を行うことにより、脳波のパワースペクトルを生成する。脳波測定システム10は、情報処理装置2にて、パワースペクトルのデータを常時監視することにより、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に生じ得る特徴的な変化を含む脳波の検出が可能となる。
準備過程の完了後、リハビリテーション支援システム100は、対象者5のリハビリテーションを支援する訓練過程を開始する。訓練過程においては、訓練時間中に脳波測定システム10で測定される脳波に基づいて、対象者5のリハビリテーションが支援される。具体的には、訓練時間は安静期間と運動期間とに2分されており、対象者5は、安静期間及び運動期間の各々において、リハビリテーション支援システム100の指示に従ってリハビリテーションを実施する。本実施形態では一例として、訓練時間は「10秒間」であって、訓練時間を2等分した場合の前半の「5秒間」が安静期間、後半の「5秒間」が運動期間であると仮定する。
安静期間においては、対象者5は、身体を安静状態とし、つまり随意運動を行おうと企図(想起)せず、リラックスした状態を維持する。このとき、脳波測定システム10では、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に生じ得る事象関連脱同期による特徴的な変化を含む脳波は検出されない。
一方、運動期間においては、対象者5は、手指53の伸展動作、つまり随意運動を行おうと企図(想起)する。このとき、脳波測定システム10では、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に生じ得る事象関連脱同期による特徴的な変化を含む脳波が検出され得る。本実施形態では脳波の、特徴的な変化を、活性化レベルと閾値とを比較し、活性化レベルが閾値を超えるか否かによって検出する。本開示でいう「活性化レベル」は、特定の周波数帯域のパワー(パワースペクトル)の減少量を表す値である。事象関連脱同期が生じて特定の周波数帯域のパワーが減少することで、活性化レベルが閾値を超えるため、脳波測定システム10は、活性化レベルが閾値を超えることをもって、脳波の特徴的な変化を検出する。
脳波測定システム10では、このような特徴的な変化を含む脳波を検出することをトリガにして、運動補助装置3を制御するための制御信号が発生する。そのため、リハビリテーション支援システム100では、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に、随意運動の対象となる部位に対応する脳領域の活性化が実際に起きたタイミングに合わせて、運動補助装置3にて対象者5の随意運動を補助することが可能である。
(変形例)
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
例えば、制御部41は、電流計測部42の計測値が予め設定された下限値以下又は上限値以上である場合に、電極(321,322)間に印加する電圧を規定値まで低下させるように構成されていてもよい。規定値は0に近いほど好ましいが、駆動処理時の電圧(第1期間T1及び第2期間T2の電圧)より低ければ、オープン状態及び短絡状態等の意図しない使用状態による影響を低減できる。
制御部41は、必ずしも、電流計測部42の計測値に基づいて、2以上の電極(第1電極321及び第2電極322)間に印加する電圧を調整しなくてもよい。電流計測部42により計測値が得られれば、使用状態を把握するという目的は達成できる。例えば、制御部41は、電流計測部42の計測値に基づいて、表示部43を点灯・消灯することで、使用状態を通知してもよい。
電流計測部42の計測値が下限値以下か否か、及び電流計測部42の計測値が上限値以上か否かを判定する機能は、マイクロコントローラがプログラムを実行することにより実現されていてもよいし、ロジック回路を利用して実現されていてもよい。
刺激システム6は、2以上の電極を有していてもよい。例えば、刺激システム6は、3つの電極(第1、第2、及び第3の電極)を有していてもよい。制御部41が、第1及び第2電極間及び第1及び第3電極間に電圧を印加する場合、電流計測部42は、第1及び第2電極間に流れる電流、及び、第1及び第3電極に流れる電流を計測すればよい。これにより、使用状態を把握することが可能になる。また、刺激システム6では、一対のパッド3231,3232にそれぞれ電極が設けられていたが、1つのパッドに2以上の電極が設けられていてもよい。
脳波測定システム10は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における脳波測定システム10としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
また、例えば、情報処理装置2の複数の構成要素が、1つの筐体内に集約されていることは脳波測定システム10に必須の構成ではなく、情報処理装置2の複数の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。複数の構成要素が複数の筐体に分散して設けられている場合でも、例えば、インターネット等のネットワークを介して複数の構成要素が接続されることにより、協働して脳波測定システム10を実現することができる。さらに、脳波測定システム10の少なくとも一部の機能は、例えば、サーバ又はクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、例えば、ヘッドセット1及び情報処理装置2のように、複数の装置に分散されている機能が、脳波測定システム10の一部として、脳波測定システム10の他の構成要素と共に1つの筐体内に集約されていてもよい。
また、電極部11は、対象者5の頭部52の表面(頭皮)に接触する構成に限らず、例えば、脳の表面(脳表)に電極部11が接触するように電極部11が構成されてもよい。
また、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の手指のリハビリテーションに限らず、例えば、肩、肘、上腕、腰、下肢、又は上肢等、対象者5の身体の任意の部位のリハビリテーションに用いられてもよい。対象者5が随意運動を行おうと企図(想起)した際に生じ得る脳波の特徴的な変化の仕方は、リハビリテーションの対象部位及び運動内容等によって異なる場合がある。例えば、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に事象関連同期(Event-Related Synchronization:ERS)が生じる場合には、随意運動時に運動野付近で測定される脳波において、特定の周波数帯域のパワーが増加する。この場合、脳波測定システム10では、特定の周波数帯域のパワーが増加することをもって、脳波の特徴的な変化を検出する。
また、リハビリテーション支援システム100は、例えば、映像を表示することで、対象者5に視覚的な刺激を与える構成を備えていてもよい。この場合、リハビリテーション支援システム100は、例えば、対象者5が随意運動を行おうと企図した際に、随意運動の対象となる部位に対応する脳領域の活性化が実際に起きたタイミングに合わせて、障害部位が正常に動いているような映像を対象者5に見せる。このようにしても、リハビリテーション支援システム100は、対象者5の随意運動を補助することができる。
また、運動補助装置3と制御装置4とは別体に限らず、例えば、運動補助装置3と制御装置4とが1つの筐体内に収容され一体化されていてもよい。
また、ヘッドセット1と情報処理装置2との間の通信方式は、上記実施形態では無線通信であるが、この例に限らず、例えば、有線通信であってもよいし、中継器等を介した通信方式であってもよい。制御装置4と情報処理装置2との間の通信方式は、上記実施形態では有線通信であるが、この例に限らず、例えば、無線通信であってもよいし、中継器等を介した通信方式であってもよい。
また、ヘッドセット1は電池駆動式に限らず、信号処理部12及び第1通信部13等の動作用電力が、例えば、情報処理装置2から供給される構成であってもよい。
また、情報処理装置2は、専用のヘッドセット1から脳波情報を取得する構成に限らず、例えば、汎用の脳波計から脳波情報を取得するように構成されていてもよい。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る刺激システム(6)は、対象者(5)の身体(54)に装着される2以上の電極(321,322)と、制御部(41)と、電流計測部(42)と、を備える。前記制御部(41)は、前記対象者(5)の脳波を表す脳波情報に基づいて前記2以上の電極(321,322)間に電圧を印加して前記対象者(5)の身体(54)に電気的な刺激を加えるように構成される。前記電流計測部(42)は、前記2以上の電極(321,322)間に流れる電流を計測するように構成される。第1の態様によれば、使用状態を把握できる。
第2の態様の刺激システム(6)は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様では、前記制御部(41)は、前記電流計測部(42)の計測値に基づいて、前記2以上の電極(321,322)間に印加する電圧を調整するように構成される。第2の態様によれば、使用状態に応じた対処が可能になる。
第3の態様の刺激システム(6)は、第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様では、前記制御部(41)は、前記電流計測部(42)の計測値が予め設定された下限値以下であれば、前記2以上の電極(321,322)間に印加する電圧を低下させるように構成される。第3の態様によれば、2以上の電極(321,322)間に電流が流れない状態に対処できる。
第4の態様の刺激システム(6)は、第2又は第3の態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様では、前記制御部(41)は、前記電流計測部(42)の計測値が予め設定された上限値以上であれば、前記2以上の電極(321,322)間に印加する電圧を低下させるように構成される。第4の態様によれば、2以上の電極(321,322)間に過大な電流が流れる状態に対処できる。
第5の態様の刺激システム(6)は、第1〜第4の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第5の態様では、刺激システム(6)は、前記対象者(5)の身体(53)に機械的な刺激を加える駆動装置(31)を更に備える。前記制御部(41)は、前記対象者(5)の脳波を表す脳波情報に基づいて前記駆動装置(31)を駆動して前記対象者(5)の身体(53)に機械的な刺激を加えるように構成される。第5の態様によれば、電気的な刺激に加えて機械的な刺激を与えることが可能になる。
第6の態様のリハビリテーション支援システム(100)は、第1〜第5の態様のいずれか一つの刺激システム(6)と、前記脳波情報を取得する脳波測定システム(10)と、を備える。第6の態様によれば、使用状態を把握できる。
第2〜第5の態様に係る構成については、刺激システム(6)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。