以下に、本発明の実施形態に係る電波時計につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1から図5を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、電波時計に関する。図1は、実施形態に係る電波時計の裏面図、図2は、実施形態に係る電波時計の断面図、図3は、実施形態に係るケースの要部断面図、図4は、実施形態に係る導通部の配置を説明する図、図5は、実施形態に係る導通部の配置を説明する他の図である。なお、図4および図5では、ケースの内部の配置を説明するために、第二の構成部材の一部が省略されて図示されている。
図1に示すように、本実施形態に係る電波時計1は、パッチアンテナ10と、金属製のケース20とを有する。電波時計1は、衛星からの電波を受信する。電波時計1は、電波によって取得した情報に基づいて内部時刻を補正する機能を有する。本実施形態の電波時計1は、GPS(GLOBAL POSITIONING SYSTEM)衛星から出力されるGPS電波を受信する。なお、GPS電波は、GPS時刻情報を含む電波であり、例えば、1.5GHz帯(1575.42MHz)と、1.2GHz帯(1227.60MHz)との2種類が使用される。
ケース20は、第一の構成部材2、第二の構成部材3、および導通部4を有する。第一の構成部材2、第二の構成部材3、および導通部4は、導電性を有する金属で形成されている。第一の構成部材2および第二の構成部材3は、例えば、チタンやチタン合金、ステンレス鋼などにより形成される。本実施形態のケース20は、更に、図2に示すベゼル8を有する。
本実施形態の第一の構成部材2は、円筒状の胴部である。第一の構成部材2は、略円筒形状に形成されており、軸方向の両端が開放している。本明細書において、第一の構成部材2の中心軸線X1の方向を「軸方向」と称する。軸方向は、電波時計1の上下方向に対応する。また、中心軸線X1と直交する方向を「径方向」と称し、中心軸線X1を中心とする円周方向を「周方向」と称する。径方向において、中心軸線X1に近い側を「内側」と称し、中心軸線X1から遠い側を「外側」と称する。
本実施形態の第二の構成部材3は、裏蓋である。第二の構成部材3は、第一の構成部材2における軸方向の一端を閉塞する。図2に示すように、ベゼル8は、第一の構成部材2における軸方向の他端に配置されている。ベゼル8は、第一の構成部材2に対して相対回転可能に取り付けられていてもよい。
ベゼル8は、第一のリング部81および第二のリング部82を有する。第一のリング部81および第二のリング部82は、それぞれ環形状に形成されている。本実施形態の第一のリング部81は、非導電性の材料で形成されており、例えば、ガラス等の透明な材料で形成されている。第二のリング部82は、チタンやチタン合金、ステンレス鋼等の導電性を有する金属で形成されている。第二のリング部82は、第一のリング部81における前面側の外周部に取り付けられている。本実施形態のベゼル8は、二体物のベゼルと捉えてもよく、本体としての第一のリング部81に対して化粧リングとしての第二のリング部82が配置されたものと捉えることもできる。なお、ベゼル8と第二構成部材2とが一体物とされてもよい。ベゼル8は、金属で形成されても、樹脂やセラミック等の非導電性の材料で形成されてもよい。
ベゼル8は、風防5によって閉塞される。より具体的には、風防5は、第二のリング部82に対して内周側に嵌合している。風防5は、ガラス等の透明な材料で形成されている。第一の構成部材2の内部空間は、前面側から風防5によって閉塞され、背面側から第二の構成部材3によって閉塞される。第一の構成部材2の内部空間には、パッチアンテナ10に加えて、例えば、文字板、指針、輪列、モータ、電池、基板、ソーラーセル、液晶表示装置等の各種の部品が収容される。
本実施形態のケース20は、更に、第三のリング部83および第四のリング部84を有する。第三のリング部83および第四のリング部84は、それぞれ円環状の部材である。第三のリング部83は、第一の構成部材2の前面2bに配置されている。第四のリング部84は、第三のリング部83の前面側に配置されている。
図3を参照して、第三のリング83および第四のリング部84について詳細に説明する。第三のリング83は、本体部83a、背面側突部83b、および前面側突部83cを有する。本体部83a、背面側突部83b、および前面側突部83cは一体に形成されている。本体部83aは、平板状の構成部である。背面側突部83bおよび前面側突部83cの形状は、筒形状である。背面側突部83bは、本体部83aにおける径方向の中央部から背面側に向けて突出している。
第一の構成部材2は、背面側突部83bと嵌合する凹部2eを有する。凹部2eは、第一の構成部材2の前面2bにおける径方向内側の端部に形成されている。第三のリング部83は、例えば、背面側突部83bの先端が第一の構成部材2に当接するように固定される。背面側突部83bの外周面と凹部2eとの間には、絶縁性のシール部材28が介在している。また、本体部83aの外周面83dと第一のリング部81との間には、絶縁性のシール部材27が介在している。シール部材27の断面形状は、略L字形状である。シール部材27の一部は、第一のリング部81と第一の構成部材2の前面2bとの間をシールしている。
前面側突部83cは、本体部83aにおける径方向外側の端部から前面側に向けて突出している。前面側突部83cは、ベゼル8の第一のリング部81によって前面側から覆われている。第四のリング部84は、前面側突部83cに対して径方向の内側に配置されている。第四のリング部84は、本体部83aの前面に固定されている。本体部83aは、第四のリング部84を保持する円環状の台座を有していてもよい。第四のリング部84は、本体部83aの内周端83aiよりも径方向の外側に位置している。第四のリング部84は、例えば、見返しリング(化粧リング)として機能する。第四のリング84の内周面84aは、背面側から前面側へ向かうに従って径方向の外側へ向かうように、軸方向に対して傾斜している。第四のリング部84の前面84bは、第三のリング部83の前面側突部83cよりも前面側に向けて突出している。第四のリング部84の外周面84cは、第一のリング部81と径方向において対向している。
第三のリング部83は、例えば、金属等の導電性材料、または樹脂、セラミックスなどの非導電性材料で形成されている。第三のリング部83が導電性材料で形成されている場合、第三のリング部83を第一の構成部材2の一部と考えることができる。
また、ベゼル8の第一のリング部81及び第二のリング部82と第三のリング部83とを一体形成したリング部材として構成してもよい。一体形成したリング部材は、金属で形成されても、樹脂やセラミック等の非導電性の材料で形成されてもよい。
第四のリング部84は、例えば、金属等の導電性部材、または導電性部材を含む部材である。第四のリング部84は、例えば、表面に導電性のメッキが施された部材であってもよい。第四のリング部84が導電性部材である場合や、導電性部材を含む部材であり、内周端83aiよりも径方向の外側に位置する場合に、第三のリング部83が金属または非導電性のセラミックスで形成されてもよい。この場合、導電性の第四のリング部84と第一の構成部材2との間に非導電性の第三のリング部83が介在する構成となる。第四のリング部84が内周端83aiよりも径方向の外側に位置する、つまり、第三のリング部83よりも径方向の内側に位置しない構成にすることにより、第三のリング部83が金属である場合は、パッチアンテナ10の近傍に配置される金属部材による受信感度への影響は第四のリング部84よりも第三のリング部83が支配的となり、第四のリング部84による影響は考慮しない程度に低減される。また、第三のリング部83がジルコニアや酸化チタンを含むセラミックス等の誘電体である場合は、第四のリング部84とパッチアンテナ10との間に誘電体である第三のリング部83が介在するため、波長短縮効果により、金属の受信感度に与える影響を低減することができる。このように、パッチアンテナ10の受信感度への影響を与えることなく、第四のリング部84によって装飾性を向上させることができる。
図1等に示すように、本実施形態の電波時計1では、裏蓋としての第二の構成部材3に先カン32が形成されている。本実施形態の第二の構成部材3は、蓋本体31および四つの先カン32を有する。蓋本体31は、略円盤形状に形成されている。蓋本体31は、第一の構成部材2における背面側の開口部を閉塞する。四つの先カン32のうち、二つの先カン32a,32bは、蓋本体31から12時の方向D12に向けて突出している。二つの先カン32a,32bは、互いの間に隙間を設けて配置されている。図1に示すように、二つの先カン32a,32bの間隔は、放射電極12の幅Wd1よりも広い。
四つの先カン32のうち、残りの二つの先カン32c,32dは、蓋本体31から6時の方向D6に向けて突出している。二つの先カン32c,32dは、互いの間に隙間を設けて配置されている。図1に示すように、二つの先カン32c,32dの間隔は、パッチアンテナ10の幅Wd1よりも広い。なお、本実施形態では、二つの先カン32a,32bの間隔と、二つの先カン32c,32dの間隔とが同じである。
図2に示すように、それぞれの先カン32には、ベルト孔33が形成されていてもよい。先カン32には、図示しないベルトが連結される。ベルトと先カン32とを連結する連結部材は、ベルト孔33に挿通される。
先カン32は、蓋本体31よりも前面側に向けて隆起している。より具体的には、先カン32は、基部34および対向部35を有する。基部34は、径方向において蓋本体31の延長線上に位置する部分であり、基部34から背面側に向けて使用者の腕の曲率に近くなるように若干隆起している。対向部35は、径方向において第一の構成部材2と対向する部分である。対向部35は、基部34から前面側に向けて隆起している。対向部35は、第一の構成部材2の外周面2aとの間に所定の距離を空けて外周面2aと対向している。本実施形態では、対向部35の内側面35aは、第一の構成部材2の外周面2aの形状に対応した凹状面である。
対向部35の外側面35bは、平行部35cおよび傾斜部35dを有する。傾斜部35dは、平行部35cよりも、外側面35bにおける前面側に形成されている。言い換えると、傾斜部35dは、隆起方向の先端側に形成されている。平行部35cは、中心軸線X1と平行または略平行な面である。平行部35cは、電波時計1のデザインに応じて、例えば、中心軸線X1を中心とする円弧形状に形成されてもよい。傾斜部35dは、中心軸線X1に対して傾斜した面である。傾斜部35dは、軸方向に沿って前面側へ向かうに従って中心軸線X1へ近づくように傾斜している。傾斜部35dにおいて、中心軸線X1への傾斜角度は前面側に向かうに従って段階的にまたは徐々に大きくなってもよい。
対向部35の先端35fは、第一の構成部材2から離間している。つまり、本実施形態では、第一の構成部材2の外周面2aと対向部35の内側面35aとの間は中空である。言い換えると、対向部35は、第一の構成部材2と接触しておらず、第一の構成部材2との間に絶縁層としての空気層21が設けられている。
図2に示すように、第一の構成部材2と第二の構成部材3とは導通部4によって接続されている。本実施形態の導通部4は、第一の構成部材2と第二の構成部材3とを締結する締結部材である。締結部材の一例として、雄ネジが用いられる。導通部4は、頭部41および軸部42を有する。頭部41の外径は、軸部42の外径よりも大きい。軸部42は、断面形状が円形の軸状または棒状の構成部である。軸部42の外周面には、螺旋状にねじ山が形成されている。第二の構成部材3には、軸部42が挿通される貫通孔36が形成されている。第一の構成部材2には、軸部42に対応するねじ穴22が形成されている。ねじ穴22は、第一の構成部材2の背面2cから前面側に向けて軸方向に沿って形成されている。導通部4は、貫通孔36に挿通されてねじ穴22に螺合することにより、第一の構成部材2と第二の構成部材3とを締結する。
図3に示すように、第一の構成部材2と第二の構成部材3とは、軸方向において離間している。より具体的には、第一の構成部材2と第二の構成部材3との間には、絶縁性のシール部材6が介在している。シール部材6は、ゴム等の弾性を有する材料によって形成されている。シール部材6は、典型的にはOリングである。シール部材6の形状は、環状であり、第一の構成部材2の背面2cと、第二の構成部材3の蓋本体31の前面31aとの間に挟み込まれる。本実施形態では、第一の構成部材2の背面2cに凹部2dが形成されている。凹部2dは、導通部4よりも径方向の内側に位置している。シール部材6は、凹部2dに配置される。
シール部材6は、第一の構成部材2および第二の構成部材3のそれぞれに密着し、ケース20の内部空間と外部空間とを水密に仕切る。導通部4によって第一の構成部材2と第二の構成部材3とが締結された状態において、第一の構成部材2と第二の構成部材3とは軸方向において離間している。第一の構成部材2の背面2cと、蓋本体31の前面31aとの間には、絶縁層としての空気層23が形成されている。このように、本実施形態の第一の構成部材2と第二の構成部材3との間には、空気層21,23が設けられており、第一の構成部材2と第二の構成部材3とは接触していない。言い換えると、第一の構成部材2と第二の構成部材3とは絶縁層を挟んで対向している。第一の構成部材2と第二の構成部材3とが離間し、両者の間に絶縁層が介在していることで、パッチアンテナ10に対する金属影響が極力低減されている。第一の構成部材2の背面2cおよび蓋本体31の前面31aの少なくとも一方に絶縁層が設けられていてもよい。
ここで、第一の構成部材2と第二の構成部材3とは、導通部4によって部分的に接続されている。導通部4は、第一の構成部材2と第二の構成部材3とを電気的に接続しており、静電気等が第一の構成部材2に帯電してしまうことを抑制する。
本実施形態の電波時計1では、パッチアンテナ10は、図1に示すように中心軸線X1に対して12時の方向D12に配置されている。パッチアンテナ10は、ケース20の内部に固定された基板7に配置される。この基板7には、パッチアンテナ10に加えて、受信回路、制御回路等が配置される。パッチアンテナ10は、基板に形成された配線を介して受信回路および制御回路と接続されている。
パッチアンテナ10は、誘電体11および放射電極12を有する。誘電体11は、例えば、非導電性のセラミック等である。誘電体11は、ジルコニアや酸化チタン等の誘電率が高い材料で構成されており、波長短縮効果を奏する。本実施形態の誘電体11の形状は、直方体である。
放射電極12は、金属等の導電性を有する材料によって形成された平板状の構成部である。本実施形態の放射電極12の形状は、矩形である。放射電極12の形状は、正方形であってもよい。放射電極12は、例えば、誘電体11の前面に配置される。放射電極12は、例えば、誘電体11の前面の略全体を覆うように配置される。放射電極12は、給電部13を介して受信回路と接続される。給電部13は、例えば、中心軸線X1と放射電極12の中心12cとを結ぶ線CL上に配置されている。
放射電極12は、中心軸線X1と放射電極12の中心12cとを結ぶ線CLに沿った方向に延在する一対の辺12a,12bを有する。図1に例示する一対の辺12a,12bは、12時の方向D12と平行または実質的に平行な方向に延在している。一対の辺12a,12bは、放射電極12における放射辺である。一対の辺12a,12bは、例えば、直線であるが、これには限定されない。一対の辺12a,12bの形状は、メアンダ形状であってもよい。メアンダ形状に形成される場合の一対の辺12a,12bは、全体として線CLに沿った方向に延在しており、かつ線CLと直交する方向に向かう凹凸を有する。以下の説明では、一対の辺12a,12bの一方を第一の辺12aと称し、他方を第二の辺12bと称する。
第三の辺12dは、放射電極12における径方向の外側に位置する辺である。第四の辺12eは、放射電極12における径方向の内側に位置する辺である。本実施形態においては、放射電極12の第三の辺12dは、誘電体11における径方向外側の側面11aに形成された給電部13と電磁結合により電気的に接続される。なお、パッチアンテナ10は、中心軸線X1と放射電極12の中心12cとを結ぶ線CL上に直接給電用の給電部が設けられた直接給電型のアンテナであってもよい。
図4を参照して、本実施形態の導通部4の配置について説明する。図4に示すように、本実施形態のケース20は、四つの導通部4を有する。導通部4は、放射電極12の一対の辺12a,12bの延長線12ax,12bx上からずれた位置に配置されている。なお、導通部4を延長線12ax,12bxからずらして配置する場合、少なくとも導通部4の中心軸線4xを延長線12ax,12bxからずらす。好ましくは、導通部4は、軸部42が延長線12ax,12bxと交差しないように配置される。導通部4は、頭部41が延長線12ax,12bxと交差しないように配置されてもよい。
第一の辺12aの延長線12axおよび第二の辺12bの延長線12bxは、それぞれ線CLと実質的に平行な線である。四つの導通部4は、延長線12ax,12bxよりも放射電極12とは反対側に位置している。以下の説明では、四つの先カン32を区別する場合に、第一の先カン32a、第二の先カン32b、第三の先カン32c、および第四の先カン32dと称する。また、四つの導通部4を区別する場合に、四つの先カン32a,32b,32c,32dに対応する導通部4を第一の導通部4a、第二の導通部4b、第三の導通部4c、および第四の導通部4dと称する。
第一の先カン32a、第三の先カン32c、第一の導通部4a、および第三の導通部4cは、延長線12axよりも放射電極12とは反対側に配置されている。第二の先カン32b、第四の先カン32d、第二の導通部4b、および第四の導通部4dは、延長線12bxよりも放射電極12とは反対側に配置されている。言い換えると、導通部4は、延長線12ax,12bxで挟まれる領域A1の外側に配置されている。導通部4が延長線12ax,12bxからずれた位置に配置されていることで、以下に説明するように放射電極12における感度の低下が抑制される。
放射電極12において、第一の辺12aおよび第二の辺12bは、放射辺として電波の受信に寄与する辺である。第三の辺12dは、ケース20の内周面に近接しているため、アンテナとしての寄与度は低い。なお、第四の辺12eは、例えば、第三の辺12dとの対称性を考慮して、アンテナとして寄与しないように励振される。
アンテナとして寄与する第一の辺12aおよび第二の辺12bの近傍、特にそれぞれの辺の両端部では、電界強度が高くなる。ここで、第一の構成部材2と第二の構成部材3との電流経路である導通部4はインピーダンスが高く、第一の構成部材2などに静電気等が発生した際には、この導通部4に電流が集中することになるため、導通部4やその近傍が高周波に対するノイズ発生源となるおそれがある。従って、第一の辺12aおよび第二の辺12bの延長線上や近傍に導通部4が配置されていると、ノイズ発生時にアンテナの電界強度に影響を及ぼして放射電極12の感度を低下させてしまうことになる。これに対して、本実施形態の電波時計1では、導通部4が一対の辺12a,12bの延長線12ax,12bxからずれた位置に配置されている。従って、放射電極12の感度低下が抑制される。
本実施形態の導通部4は、一対の辺12a,12bの延長線12ax,12bxよりも放射電極12とは反対側に配置される。従って、導通部4と放射電極12との間に十分な距離が確保されやすく、放射電極12の感度低下が抑制される。
また、本実施形態では、中心軸線X1と放射電極12の中心12cとを結ぶ線CLに関して、放射電極12の形状が対称となっている。これにより、パッチアンテナ10におけるバランスが向上する。例えば、第一の辺12aと第二の辺12bとの電磁気的な対称性が向上し、放射電極12の感度が向上する。
また、本実施形態では、図5を参照して説明するように、導通部4は第三の辺12dの延長線12dxおよび第四の辺12eの延長線12exよりも放射電極12とは反対側に配置されている。具体的には、第一の導通部4aおよび第二の導通部4bは、第三の辺12dの延長線12dxよりも放射電極12とは反対側に配置されている。第三の導通部4cおよび第四の導通部4dは、第四の辺12eの延長線12exよりも放射電極12とは反対側に配置されている。言い換えると、導通部4は、延長線12dx,12exで挟まれる領域A2の外側に配置されている。仮に、導通部4が領域A2に配置された場合、導通部4が第一の辺12aや第二の辺12bと対向することになる。この場合、導通部4に電流が集中した際のノイズが第一の辺12aや第二の辺12bの周囲の電界強度に影響を与えやすく、放射電極12の感度低下を招くことがある。これに対して、本実施形態では、導通部4が延長線12dx,12exよりも放射電極12とは反対側に配置されている。よって、放射電極12の感度低下が抑制される。
また、本実施形態の電波時計1では、隣接する導通部4同士の周方向に沿った間隔は、パッチアンテナ10による受信波長λの1/4以下の長さである。図4には、第一の導通部4aと第三の導通部4cとの間に間隔L1を示す矢印が示されている。間隔L1は、周方向に沿った長さであり、例えば、中心軸線X1を中心とする円弧長である。間隔L1は、例えば、第一の導通部4aの中心軸線と第三の導通部4cの中心軸線との間隔である。
導通部4が複数設けられている場合、隣接する導通部4の間は、スロットアンテナとして機能し得る。すなわち、隣接する二つの導通部4と、第一の構成部材2と、第二の構成部材3とにより、空気層23(図3参照)を囲む閉回路が形成され、スロットアンテナと同様に機能する。ここで、隣接する導通部4の間隔L1は、スロットアンテナの受信波長に対応する。導通部4同士の間隔L1を受信波長λの1/4以下とすることで、パッチアンテナ10の受信周波数帯とスロットアンテナの受信周波数帯とをずらし、パッチアンテナ10の受信感度低下を抑制することができる。なお、隣接する導通部4の間隔L1は、受信波長λの1/4未満とされてもよい。
本実施形態のケース20において、第二の構成部材3の先カン32と、第一の構成部材2との間は中空である。言い換えると、先カン32は第一の構成部材2から離間している。このように、先カン32と第一の構成部材2との間に不要な接点が設けられていないことで、放射電極12の感度低下が抑制される。
本実施形態の電波時計1では、複数の導通部4が線CLに関して線対称に配置されている。よって、パッチアンテナ10の対称性が導通部4によって乱されにくくなっている。例えば、第一の導通部4aと第二の導通部4bとは線CLに関して線対称の位置に配置されている。同様に、第三の導通部4cと第四の導通部4dとは線CLに関して線対称の位置に配置されている。これにより、第一の辺12aのアンテナ特性と第二の辺12bのアンテナ特性との対称性が維持されやすくなっている。よって、本実施形態の電波時計1は、放射電極12の感度低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、ベゼル8において、第一のリング部81が非導電性の材料で形成されている。第一のリング部81は、例えば、ガラスやセラミック等で形成される。審美性の観点から第二のリング部82が金属部材とされたとしても、第二のリング部82は、第一のリング部81によって第一構成部材2から電気的に遮断される。よって、パッチアンテナ10の受信感度低下が抑制される。
以上説明したように、本実施形態の電波時計1は、誘電体11および放射電極12を有するパッチアンテナ10と、パッチアンテナ10を収容する金属製のケース20と、を有する。放射電極12は、誘電体11の表面に配置された電極であり、例えば、板状の電極である。ケース20は、第一の構成部材2と、第二の構成部材3と、導通部4とを有する。第二の構成部材3は、絶縁層を挟んで第一の構成部材2と対向する部材である。絶縁層は、例えば空気層21,23であるが、これに代えて絶縁性の部材であってもよい。絶縁性の部材は、例えば、シール部材や接着部材、接着層であってもよい。導通部4は、第一の構成部材2の一部分と第二の構成部材3の一部分とを接続する。本実施形態では、導通部4による接続は、物理的かつ電気的な接続である。
放射電極12は、ケース20の中心である中心軸線X1と放射電極12の中心12cとを結ぶ線CLに沿った方向に延在する一対の辺12a,12bを有する。導通部4は、一対の辺12a,12bの延長線12ax,12bxからずれた位置に配置されている。導通部4が延長線12ax,12bxからずれた位置にあることで、放射電極12の感度低下が抑制される。
電波時計1において、パッチアンテナ10は、中心軸線X1に対して12時の方向に代えて、9時の方向や6時の方向に配置されてもよい。中心軸線X1に対して3時の方向には、リュウズ24や操作ボタン25(プッシュボタン)などが配置されることが多い。3時の方向と異なる方向にパッチアンテナ10が配置されることで、部材の適正配置が容易となる。
本実施形態の放射電極12の形状は、中心軸線X1と放射電極12の中心12cとを結ぶ線CLに関して対称である。これにより、パッチアンテナ10のバランスが向上する。例えば、第一の辺12aの特性と第二の辺12bの特性との対称性が向上する。
本実施形態の電波時計1において、第一の構成部材2は、円筒状の胴部である。第二の構成部材3は、第一の構成部材2における軸方向の一端を閉塞する裏蓋である。導通部4は、第一の構成部材2と第二の構成部材3とを締結する金属製の締結部材であり、かつ第一の構成部材2の周方向に沿って複数配置されている。隣接する導通部4同士の周方向に沿った間隔L1は、パッチアンテナ10による受信波長λの1/4以下の長さである。よって、隣接する導通部4によって形成されるスロットアンテナの受信周波数帯とパッチアンテナ10の受信周波数帯とがずれることで、パッチアンテナ10の受信感度低下が抑制される。
本実施形態の導通部4は、一対の辺12a,12bの延長線12ax,12bxよりも放射電極12とは反対側に配置されている。よって、導通部4と放射電極12との距離が十分に確保されやすくなり、パッチアンテナ10の受信感度低下が抑制される。
実施形態の放射電極12は、一対の辺12a,12bと交差する方向に延在する第三の辺12dおよび第四の辺12eを有する。導通部4は、第三の辺12dの延長線12dxおよび第四の辺12eの延長線12exよりも放射電極12とは反対側に配置されている。よって、導通部4の位置は、第一の辺12aの周囲(特に辺の両端)の電界強度や第二の辺12bの周囲(特に辺の両端)の電界強度に対して影響しにくい位置となる。その結果、パッチアンテナ10の受信感度低下が抑制される。
本実施形態の電波時計1において、第一の構成部材2は、円筒状の胴部である。第二の構成部材3は、第一の構成部材2における軸方向の一端を閉塞する裏蓋である。第二の構成部材3は、12時の方向D12および6時の方向D6のそれぞれに向けて突出する先カン32を有する。第一の構成部材2と第二の構成部材3とが導通部4によって接続された状態において、第一の構成部材2と先カン32とが離間している。これにより、第一の構成部材2と第二の構成部材3との間において、導通部4以外の不要な接点を発生させないことができる。よって、パッチアンテナ10の受信感度低下が抑制される。
本実施形態において、パッチアンテナ10は、中心軸線X1に対して12時の方向D12に配置されている。12時の方向D12に代えて、6時の方向D6にパッチアンテナ10が配置されてもよい。12時の方向D12や6時の方向D6に先カン32が配置されたとしても、先カン32が第一の構成部材2から離間していることで、先カン32がパッチアンテナ10の感度に影響を与えにくい。よって、パッチアンテナ10の感度低下を抑制しつつ、パッチアンテナ10を先カン32と同方向に配置することが可能となる。
[実施形態の変形例]
パッチアンテナ10の形状は、例示した形状には限定されない。例えば、パッチアンテナ10の形状は、長方形であってもよい。パッチアンテナ10の形状は、第一の辺12aの特性と第二の辺12bの特性との対称性を低下させない範囲で、様々な形状を採用可能である。
パッチアンテナ10の配置は、例示した配置には限定されない。例えば、パッチアンテナ10は、中心軸線X1に対して12時の方向D12と9時の方向との間の方向に配置されてもよく、中心軸線X1に対して9時の方向と6時の方向D6との間の方向に配置されてもよい。
第一の構成部材2および第二の構成部材3の形状等は、例示したものには限定されない。例えば、第一の構成部材2の形状は、円筒状に限らず、楕円筒状、角筒状、断面形状が多角形の筒状等であってもよい。先カン32は、第一の構成部材2に設けられてもよい。
導通部4は、一対の辺12a,12bの延長線12ax,12bxで挟まれる領域A1に配置されてもよい。例えば、導通部4が領域A1に配置されたとしても放射電極12の受信感度に与える影響が軽微である場合、このような配置が許容される。導通部4は、第三の辺12dの延長線12dxと第四の辺12eの延長線12exとの間の領域A2に配置されてもよい。例えば、導通部4が領域A2に配置されたとしても放射電極12の受信感度に与える影響が軽微である場合、このような配置が許容される。
パッチアンテナ10の受信対象は、GPS電波には限定されない。受信対象は、GPS衛星以外の衛星から出力される電波であってもよい。また、受信対象は、地上の基地局等から出力される電波であってもよい。
第二の構成部材は、上記実施形態の裏蓋には限定されない。図6に示すように、第二の構成部材(ベゼル9)は、第一の構成部材2に対して前面側に配置されてもよい。図6に示すベゼル9は、全体が導電性の金属で形成されている。ベゼル9は、円環状の部材であり、第一の構成部材2に対して前面側に配置されている。第一の構成部材2とベゼル9との間には、絶縁性のシール部材27が介在している。シール部材27は、典型的にはOリングである。間にシール部材27が介在していることで、第一の構成部材2とベゼル9とは軸方向において離間している。第一の構成部材2とベゼル9との間には、空気層26が形成されている。なお、第一の構成部材2の前面2bおよびベゼル9の背面9aの少なくとも一方には絶縁層が形成されていてもよい。
導通部40は、第一の構成部材2の一部とベゼル9の一部とを電気的に接続する。導通部40は、例えば、板バネ、ネジ、溶接部、半田等である。導通部40は、例えば、周方向に沿って分散された複数の箇所において第一の構成部材2とベゼル9とを接続している。導通部40の配置は、上記実施形態の導通部4と同様に設定される。例えば、導通部40は、放射電極12の一対の辺12a,12bの延長線12ax,12bxからずれた位置に配置される。導通部40は、延長線12ax,12bxよりも放射電極12とは反対側に配置されてもよい。導通部40は、延長線12dx,12exよりも放射電極12とは反対側に配置されてもよい。
化粧リングとしての第四のリング部84は、図7に示すように、ベゼル50に取り付けられてもよい。図7に示すベゼル50の形状は、上記実施形態の電波時計1において、第三のリング部83をベゼル8に一体化させた形状である。ベゼル50は、金属等の導電性材料で形成されている。ベゼル50は、円環状の本体51および背面側突部52を有する。
本体51は、第一保持部51aおよび第二保持部51bを有する。第一保持部51aおよび第二保持部51bは、本体51の前面側に形成されている。第一保持部51aは、風防5を保持する凹部である。第一保持部51aは、本体51の前面51cに対して背面側に向けて一段低く形成された段部である。第二保持部51bは、第一保持部51aに対して背面側に向けて一段低く形成された段部である。第二保持部51bは、第一保持部51aよりも径方向の内側に形成されている。第二保持部51bは、第四のリング部84を保持する凹部である。第四のリング部84は、本体51の内周端51iよりも径方向の外側に配置されている。
背面側突部52は、本体51から背面側に向けて突出している。背面側突部52の形状は、筒形状である。背面側突部52は、第一の構成部材2の凹部2eに挿入されている。背面側突部52の外周面52aと凹部2eとの間には、絶縁性のシール部材28が介在している。
背面側突部52の先端面52bと第一の構成部材2とは、軸方向において離間している。背面側突部52の先端面52bと第一の構成部材2とは、導通部60を介して電気的に接続されている。第一の構成部材2とベゼル50との電気的な接続箇所は、導通部60以外には設けられていない。導通部60は、例えば、板バネ、ネジ、溶接部、半田等である。導通部60は、例えば、周方向に沿って分散された複数の箇所において第一の構成部材2とベゼル50とを接続している。導通部60の配置は、上記実施形態の導通部4と同様に設定される。例えば、導通部60は、放射電極12の一対の辺12a,12bの延長線12ax,12bxからずれた位置に配置される。導通部60は、延長線12ax,12bxよりも放射電極12とは反対側に配置されてもよい。導通部60は、延長線12dx,12exよりも放射電極12とは反対側に配置されてもよい。
ケース20内に収容されるアンテナは、パッチアンテナ10には限定されない。収容されるアンテナは、誘電体11上に電極が形成された他のアンテナであってもよい。収容されるアンテナは、例えば、逆F型アンテナ、モノポールアンテナ、ダイポールアンテナ、環状アンテナ、チップアンテナ等であってもよい。上記実施形態および変形例の電波時計1は、これらのアンテナが収容される場合にも、パッチアンテナ10の場合と同様の効果を奏することができる。
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。