以下、本発明に係る熱交換器及び空気調和機の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図中において、同一の機能及び作用を有する構成要素には同一符号を付し、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成要素の形状、大きさ及び配置などは、本発明の範囲内で適宜変更することができる。明細書中における各構成要素同士の位置関係(例えば、上下関係等)は、原則として、熱交換器及び空気調和機が使用可能な状態に設置されたときのものである。
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る熱交換器及び空気調和機について説明する。図1は、本実施の形態に係る空気調和機100の概略構成を示す冷媒回路図である。図1では、暖房運転時の冷媒の流れを白抜き矢印で示している。図2は、本実施の形態に係る空気調和機100の熱源側ユニット10の構成を模式的に示す透視斜視図である。本実施の形態に係る空気調和機100は、熱源側ユニット10と、熱源側ユニット10に接続された利用側ユニット20と、利用側ユニット20と並列に熱源側ユニット10に接続された利用側ユニット30と、を備えるマルチ型空気調和機である。熱源側ユニット10は戸外に設置され、利用側ユニット20、30は空調対象である室内に設置される。なお、本実施の形態では、熱源側ユニット10に2台の利用側ユニット20、30が接続されているが、利用側ユニット20、30の台数は限定されるものではない。
熱源側ユニット10は、圧縮機11、流路切替装置12、熱源側熱交換器13、14、アキュムレータ15及び送風機16を備えている。熱源側熱交換器13、14は、本発明に係る熱交換器の一例である。利用側ユニット20は、利用側熱交換器20a、絞り装置20b及び送風機(図示せず)を備えている。利用側ユニット30は、利用側ユニット20と同様に、利用側熱交換器30a、絞り装置30b及び送風機(図示せず)を備えている。圧縮機11、流路切替装置12、熱源側熱交換器13、14、アキュムレータ15、利用側熱交換器20a、30a及び絞り装置20b、30bは、冷房運転及び暖房運転のそれぞれに応じて冷媒が循環するように、冷媒配管によって接続されている。
圧縮機11は、吸引した低温低圧の冷媒を圧縮して高温高圧の状態にする流体機械である。圧縮機11としては、例えばスクロール型圧縮機、レシプロ型圧縮機、又はベーン型圧縮機などが用いられる。
流路切替装置12は、冷房運転及び暖房運転の間での運転モードの切替えに応じて、冷房用の流路と暖房用の流路とを切り替えるものである。流路切替装置12は、例えば四方弁で構成されている。流路切替装置12は、暖房運転が行われる際には、圧縮機11の吐出側と利用側熱交換器20a、30aとを接続するとともに、圧縮機11の吸引側と熱源側熱交換器13、14とを接続する。また、流路切替装置12は、冷房運転が行われる際には、圧縮機11の吐出側と熱源側熱交換器13、14とを接続するとともに、圧縮機11の吸引側と利用側熱交換器20a、30aと接続する。本実施の形態の流路切替装置12は四方弁で構成されているが、流路切替装置12は、例えば複数の二方弁などの組合せにより構成されていてもよい。
熱源側熱交換器13、14は、図2に示すように、熱源側ユニット10の筐体10a内の上部寄りの位置に配置されている。熱源側熱交換器13、14は、筐体10aの片側の側面及び背面に沿って、上面視でL字状に配置されている。熱源側熱交換器13、14のそれぞれは、互いに並列して上下方向に延伸した複数の扁平管と、複数の扁平管のうち互いに隣り合う2つの扁平管の間にそれぞれ設けられた複数のコルゲートフィンと、複数の扁平管のそれぞれ上端に接続されたヘッダ集合管1030と、複数の扁平管のそれぞれ下端に接続された液ヘッダ1010と、を有している。ヘッダ集合管1030のそれぞれは、冷媒配管を介して流路切替装置12に接続されている。液ヘッダ1010のそれぞれは、冷媒配管を介して利用側ユニット20及び利用側ユニット30に接続されている。熱源側熱交換器13、14の詳細な構成については後述する。
送風機16は、熱源側ユニット10の筐体10aの上部に設けられている。送風機16は、熱源側熱交換器13、14を通過した室外空気を吸引して上方に排出するように構成されている。これにより、熱源側熱交換器13、14のそれぞれでは、送風機16により供給される室外空気と、複数の扁平管を流通する冷媒と、の熱交換が行われる。以下、室外空気の流れのことを単に「気流」又は「風」という場合がある。
アキュムレータ15は、冷媒の流れにおいて圧縮機11の吸引側に設けられている。アキュムレータ15は、流路切替装置12を介して流入した冷媒を貯留するとともに、ガス冷媒と液冷媒とを分離する。アキュムレータ15で分離されたガス冷媒は、圧縮機11によって吸引される。
絞り装置20bは、冷媒の流れにおいて、熱源側熱交換器13及び熱源側熱交換器14と利用側熱交換器20aとの間に設けられている。絞り装置30bは、冷媒の流れにおいて、熱源側熱交換器13及び熱源側熱交換器14と利用側熱交換器30aとの間に設けられている。絞り装置20b、30bとしては、例えば、冷媒の流量調整が可能なリニア電子膨張弁が用いられている。絞り装置20b、30bのそれぞれによって、冷媒の圧力及び温度が調整される。絞り装置20b、30bとしては、二位置動作によって冷媒の流れの有無を切り替える開閉弁を用いることもできる。
利用側熱交換器20a、30aのそれぞれは、内部を流通する冷媒と、不図示の送風機によって供給される室内空気と、の熱交換を行うように構成されている。
以上のように構成された空気調和機の暖房運転時の動作について、図1及び図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る空気調和機100において、ハイドロフルオロカーボン冷媒R410aが用いられた場合の冷凍サイクルのP−H線図である。図3の横軸は比エンタルピー[kJ/kg]を表しており、縦軸は圧力[MPa]を表している。図3においてAA、AB、AC及びADの各点を結ぶ略台形状の実線は、冷凍サイクルの動作状態を示している。高圧側に凸となっている太線の曲線は、冷媒の乾き度Xが0又は1となる点を結んだ飽和曲線である。飽和曲線よりも左側は、冷媒がガス状態となる領域であり、飽和曲線よりも右側は、冷媒が液状態となる領域である。飽和曲線の内側の9本の曲線は、冷媒の乾き度Xが等しい点を結んだ等乾き度線(X=0.1、0.2、・・・、0.9)である。
まず、アキュムレータ15で分離されたガス冷媒は、圧縮機11によって吸引されて圧縮され、高温高圧のガス冷媒となる(図3の点AB)。この高温高圧のガス冷媒は、圧縮機11から吐出され、流路切替装置12を通って利用側熱交換器20a、30aに流入する。暖房運転時には、利用側熱交換器20a、30aは凝縮器として機能する。利用側熱交換器20aに流入した高温高圧のガス冷媒は、利用側ユニット20の送風機により供給される室内空気との熱交換によって凝縮し、低温高圧の液冷媒となる(図3の点AC)。室内空気は、冷媒からの放熱によって加熱される。この低温高圧の液冷媒は、利用側熱交換器20aから流出し、絞り装置20bで減圧されて低温低圧の気液二相冷媒となり、利用側ユニット20から流出する(図3の点AD)。同様に、利用側熱交換器30aに流入した高温高圧のガス冷媒は、利用側ユニット30の送風機により供給される室内空気との熱交換によって凝縮し、低温高圧の液冷媒となる。この低温高圧の液冷媒は、利用側熱交換器30aから流出し、絞り装置30bで減圧されて低温低圧の気液二相冷媒となり、利用側ユニット30から流出する。図3に示す例では、利用側ユニット20、30から流出する冷媒の乾き度Xは、0.23程度である。
利用側ユニット20、30から流出した低温低圧の気液二相冷媒は、熱源側熱交換器13、14のそれぞれの液ヘッダ1010に流入する。液ヘッダ1010に流入した低温低圧の気液二相冷媒は、液ヘッダ1010から複数の扁平管に分配される。暖房運転時には、熱源側熱交換器13、14は蒸発器として機能する。複数の扁平管に流入した気液二相冷媒は、送風機16により供給される室外空気との熱交換によって蒸発し、低圧のガス冷媒となる(図3の点AA)。この低温低圧のガス冷媒は、ヘッダ集合管1030をそれぞれ介して熱源側熱交換器13、14のそれぞれから流出し、流路切替装置12を通ってアキュムレータ15に流入する。アキュムレータ15に流入した冷媒は、液冷媒とガス冷媒とに分離される。アキュムレータ15で分離されたガス冷媒は、圧縮機11によって吸引されて圧縮され、高温高圧のガス冷媒となる(図3の点AB)。暖房運転時には、以上の流れが連続的に繰り返される。これにより、冷媒が冷媒回路内を循環する。
次に、熱源側熱交換器13、14の詳細な構成について説明する。熱源側熱交換器13、14は概ね同様の構成を有しているため、ここでは熱源側熱交換器13を例に挙げて説明する。図4は、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13の構成を示す外観斜視図である。図5は、図4のV部付近を気流の上流側から見た構成を示す斜視図である。
図4及び図5に示すように、熱源側熱交換器13は、内部流体である冷媒を上下方向、例えば鉛直上下方向に流通させる縦流れ式の空気−冷媒熱交換器である。熱源側熱交換器13は、互いに並列して上下方向に延伸した複数の扁平管13a(伝熱管の一例)と、複数の扁平管13aのうち互いに隣り合う2つの扁平管13aの間にそれぞれ設けられた複数のコルゲートフィン13bと、複数の扁平管13aのそれぞれ上端に接続されたヘッダ集合管1030と、複数の扁平管13aのそれぞれ下端に接続された液ヘッダ1010(ヘッダの一例)と、を有している。冷媒と空気との熱交換が行われるコア部1040は、複数の扁平管13aと複数のコルゲートフィン13bとが交互に積層された構成を有している。ヘッダ集合管1030及び液ヘッダ1010は、それぞれの長手方向が水平となるように配置されている。
送風機16の駆動によって発生する気流は、図4中の矢印F1で示す方向に沿って熱源側熱交換器13のコア部1040に流入する。コア部1040を通過した後の気流は、図4中の矢印F2で示す上方向に向きを変えて、筐体10aから流出する。
複数の扁平管13aは、矢印F1で示す気流の流れ方向と直交するように左右方向に並列して配置されている。扁平管13aのそれぞれは、気流の流れ方向と扁平面13eとが平行になるように配置されている。隣り合う2つの扁平管13aにおいて互いに対向する扁平面13e同士の間隔は、例えば10mmである。扁平管13aとしては、複数の冷媒通路13fが並列して内部に形成された多穴管が用いられている。
コルゲートフィン13bは、例えば厚さ1mm未満の薄板が波状に折り曲げられた形状を有している。コルゲートフィン13bは、気流の流れ方向において、2つの扁平管13aに挟まれた本体部13gと、2つの扁平管13aの間から気流の上流側に突出した端部13kと、を有している。コルゲートフィン13bの本体部13gの折曲げ頂部は、2つの扁平管13aのいずれかの扁平面13eに接合されている。
コルゲートフィン13bの本体部13gにおける各斜面には、凝縮水を排水する排水穴13hと、排水穴13hよりも気流の上流側に設けられた第1ルーバー13iと、排水穴13hよりも気流の下流側に設けられた第2ルーバー13jと、が形成されている。
扁平管13a及びコルゲートフィン13bは、熱伝導性の高いアルミニウムを用いて形成されている。扁平管13aとコルゲートフィン13bとは、例えばノコロックろう付け法などの金属接合方法を用いて接合されている。なお、扁平管13a及びコルゲートフィン13bは、必ずしも同じ材質で形成されていなくてもよい。
次に、熱源側熱交換器13における液ヘッダ1010及びヘッダ集合管1030の構成について説明する。図6は、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13の構成を模式的に示す断面図である。図7は、図6のVII−VII断面を示す断面図である。図8は、図6のVIII−VIII断面を示す断面図である。図6〜図8に示すように、液ヘッダ1010は、一方向に長くかつ四角形状の断面を備えた四角筒状の形状を有している。液ヘッダ1010は、少なくとも、液ヘッダ1010の内部空間の上側に位置する第1内壁面1011と、当該内部空間の下側に位置する第2内壁面1012とを有している。第1内壁面1011には、複数の挿入孔1014が形成されている。複数の挿入孔1014には、複数の扁平管13aの下端部13a1がそれぞれ挿入されている。扁平管13aの延伸方向は、液ヘッダ1010の長手方向と直交している。第2内壁面1012は、液ヘッダ1010の内部空間を挟んで第1内壁面1011と対向している。
液ヘッダ1010の長手方向一端部(図6及び図7では右端部)には、直管状の第1流入管1001が接続されている。液ヘッダ1010の長手方向他端部(図6及び図7では左端部)には、直管状の第2流入管1002が接続されている。熱源側熱交換器13が蒸発器として機能する暖房運転時には、第1流入管1001及び第2流入管1002のそれぞれを介して、液ヘッダ1010内に気液二相冷媒が流入する。液ヘッダ1010内に流入した気液二相冷媒は、複数の扁平管13aに分配される。すなわち、液ヘッダ1010は、流体を複数の扁平管13aに分配する水平ヘッダ分配器として機能する。
第1流入管1001は、当該第1流入管1001の管軸1001a(図7参照)が液ヘッダ1010の長手方向と平行になるように設けられている。第1流入管1001の一部は、液ヘッダ1010の内部に挿入されている。第2流入管1002は、当該第2流入管1002の管軸1002aが液ヘッダ1010の長手方向と平行になるように設けられている。第2流入管1002の一部は、液ヘッダ1010の内部に挿入されている。第1流入管1001から液ヘッダ1010に冷媒が流入する方向と、第2流入管1002から液ヘッダ1010に冷媒が流入する方向とは、互いに逆向きになっている。
液ヘッダ1010の内部には、液ヘッダ1010の長手方向に沿って延伸した平板状の仕切壁1013が形成されている。液ヘッダ1010の内部は、仕切壁1013によって第1流路1021と第2流路1022とに不完全に仕切られている。第1流路1021は、第2流路1022よりも風上側に位置している。仕切壁1013の一方の面1013bは、第1流路1021に面している。仕切壁1013の他方の面1013cは、第2流路1022に面している。
仕切壁1013は、液ヘッダ1010の第2内壁面1012から第1内壁面1011に向かって突出して形成されている。仕切壁1013の突出方向の先端部1013aは、複数の扁平管13aのそれぞれの下端部13a1と、隙間を介して対向している。仕切壁1013の先端部1013aは、複数の扁平管13aのそれぞれの下端部13a1のうち、下端部13a1の長手方向(すなわち、扁平管13aの扁平方向)の中央部と対向している。ここで、扁平管13aの扁平方向とは、扁平管13aの延伸方向と垂直でかつ扁平面13eと平行な方向のことである。
扁平管13aの延伸方向が鉛直上下方向となるように熱源側熱交換器13が立てて置かれている場合、扁平管13aの下端部13a1の高さ位置H1は、仕切壁1013の先端部1013aの高さ位置H2と同じか又はそれより高くなっている。また、仕切壁1013の先端部1013aの高さ位置H2は、第1流入管1001及び第2流入管1002の上部の高さ位置H3(例えば、第1流入管1001及び第2流入管1002の内部流路の最上部の高さ位置)よりも高くなっている。
第1流入管1001及び第2流入管1002は、風の流れ方向において互いにずれて設けられている。第1流入管1001は、液ヘッダ1010のうち仕切壁1013よりも風上側、すなわち第1流路1021に接続されている。扁平管13aの延伸方向に沿って見たとき、第1流入管1001の管軸1001aは、液ヘッダ1010の長手方向に沿って第1流路1021上に延びている(図7参照)。これにより、第1流入管1001を介して液ヘッダ1010に流入した気液二相冷媒は、仕切壁1013の風上側の面1013bに沿って第1流路1021を流通する。
第2流入管1002は、液ヘッダ1010のうち仕切壁1013よりも風下側、すなわち第2流路1022に接続されている。第2流入管1002の管軸1002aは、液ヘッダ1010の長手方向に沿って第2流路1022上に延びている。これにより、第2流入管1002を介して液ヘッダ1010に流入した気液二相冷媒は、仕切壁1013の風下側の面1013cに沿って、第1流路1021の冷媒の流通方向とは逆向きに第2流路1022を流通する。
ヘッダ集合管1030は、一方向に長くかつ四角形状の断面を備えた四角筒状の形状を有している。液ヘッダ1010とは異なり、ヘッダ集合管1030の内部には仕切壁が形成されていない。ヘッダ集合管1030には、複数の扁平管13aの上端部13a2がそれぞれ挿入されている。ヘッダ集合管1030の長手方向一端部(図6では右端部)には、流出管1003が接続されている。暖房運転時のヘッダ集合管1030からは、扁平管13aで空気との熱交換により蒸発したガス冷媒が流出管1003を介して流出する。
次に、暖房運転時に液ヘッダ1010に流入した冷媒の状態について説明する。図9は、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13の液ヘッダ1010に流入した冷媒の状態を示す図である。図9では、第2流入管1002から第2流路1022に流入した気液二相冷媒のうちの液相冷媒の液面の例を実線で示しており、第1流入管1001から第1流路1021に流入した気液二相冷媒のうちの液相冷媒の液面の例を破線で示している。
図9に示すように、暖房運転時には、第1流入管1001及び第2流入管1002のそれぞれを介して液ヘッダ1010に気液二相冷媒が流入する。液ヘッダ1010に流入した気液二相冷媒は、複数の扁平管13aのそれぞれに分流し、空気との熱交換によって蒸発する。蒸発したガス冷媒は、複数の扁平管13aのそれぞれからヘッダ集合管1030に流入し、流出管1003を介して外部に流出する。
一般に、流入管は液ヘッダの長手方向一端部のみに接続されている。このため、流入管を介して液ヘッダに流入する気液二相冷媒の質量速度が大きいときには、ガス冷媒よりも密度の大きい液相冷媒は、慣性力によって液ヘッダの終端側に偏流する。一方、流入管を介して液ヘッダに流入する気液二相冷媒の質量速度が小さいときには、液相冷媒は液ヘッダの入口側に偏流する。したがって、液ヘッダの入口側に位置する扁平管に分配される液相冷媒の流量と、液ヘッダの終端側に位置する扁平管に分配される液相冷媒の流量とが不均一になりやすかった。これにより、熱交換器での熱交換効率の低下が生じやすかった。
図10は、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13において、扁平管13aの位置とその扁平管13aに分配される液相冷媒の流量との関係を概念的に示すグラフである。グラフの横軸は、液ヘッダ1010の長手方向における扁平管13aの接続位置を表している。この横軸において、左端は第2流入管1002の位置(図9では、液ヘッダ1010の長手方向左端部)を表しており、右端は第1流入管1001の位置(図9では、液ヘッダ1010の長手方向右端部)を表している。グラフの縦軸は、扁平管13aに分配される液相冷媒の流量(液分配流量)を表している。線FR1は、第1流入管1001から液ヘッダ1010に流入して各扁平管13aに分配される液相冷媒の流量の分布を表している。線FR2は、第2流入管1002から液ヘッダ1010に流入して各扁平管13aに分配される液相冷媒の流量の分布を表している。線FRtotalは、各扁平管13aに分配される液相冷媒の総流量の分布を表している。なお、第1流入管1001及び第2流入管1002から液ヘッダ1010に流入する気液二相冷媒の質量速度は、いずれも比較的大きいものとする。
図10の線FR1で示すように、第1流入管1001から液ヘッダ1010に流入して各扁平管13aに分配される液相冷媒の流量は、第1流入管1001から遠ざかり第1流路1021の終端に近づくほど多くなる。一方、線FR2で示すように、第2流入管1002から液ヘッダ1010に流入して各扁平管13aに分配される液相冷媒の流量は、第2流入管1002から遠ざかり第2流路1022の終端に近づくほど多くなる。線FR1で示す液相冷媒の流量の分布と線FR2で示す液相冷媒の流量の分布とは、液ヘッダ1010の長手方向において概ね対称となっている。このため、複数の扁平管13aのそれぞれに分配される液相冷媒の総流量は、線FRtotalで示すように、液ヘッダ1010の長手方向における各扁平管13aの位置に関わらずほぼ均等になる。
以上のように、本実施の形態では、液ヘッダ1010内に設けられた仕切壁1013により、第1流入管1001から流入した冷媒が流通する第1流路1021と、第2流入管1002から流入した冷媒が流通する第2流路1022と、が仕切られている。これにより、液ヘッダ1010内には、長手方向一端部側及び長手方向他端部側のそれぞれから互いに対向するように気液二相冷媒を流通させることができる。このため、冷媒回路の運転条件、すなわち液ヘッダ1010内に流入する冷媒の流量に依存せず、複数の扁平管13aに冷媒をより均等に分配することができる。したがって、熱源側熱交換器13の熱交換効率の向上、及び熱源側熱交換器13での冷媒の圧力損失の低減を実現できるため、空気調和機100全体の性能を向上させることができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13は、互いに並列して配置された複数の扁平管13aと、複数の扁平管13aのそれぞれの下端部13a1が挿入された液ヘッダ1010と、液ヘッダ1010の長手方向一端部に接続された第1流入管1001と、液ヘッダ1010の長手方向他端部に接続された第2流入管1002と、液ヘッダ1010の長手方向に沿って延伸し、液ヘッダ1010の内部を第1流路1021と第2流路1022とに仕切る仕切壁1013と、を備えている。液ヘッダ1010は、複数の扁平管13aのそれぞれの下端部13a1が挿入される複数の挿入孔1014が形成された第1内壁面1011と、第1内壁面1011と対向する第2内壁面1012と、を有している。仕切壁1013は、第2内壁面1012から第1内壁面1011に向かって突出して形成されている。仕切壁1013の突出方向の先端部1013aは、複数の扁平管13aのそれぞれの下端部13a1と対向している。第1流入管1001は、第1流路1021に接続されている。第2流入管1002は、第2流路1022に接続されている。ここで、熱源側熱交換器13は、熱交換器の一例である。扁平管13aは、伝熱管の一例である。下端部13a1は、伝熱管の端部の一例である。液ヘッダ1010は、ヘッダの一例である。
第1流入管1001から液ヘッダ1010内に流入した流体は、第1流路1021を一方向に流れながら、複数の扁平管13aに分配される。第2流入管1002から液ヘッダ1010内に流入した流体は、第2流路1022を上記一方向とは逆の方向に流れながら、複数の扁平管13aに分配される。したがって、この構成によれば、第1流路1021及び第2流路1022のそれぞれの長手方向で慣性力による流体の偏流が生じたとしても、複数の扁平管13aに流体をより均等に分配することができる。よって、熱源側熱交換器13の熱交換効率を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13において、複数の伝熱管のそれぞれは扁平管13aである。仕切壁1013の先端部1013aは、扁平管13aの下端部13a1における長手方向中央部と対向している。この構成によれば、第1流路1021及び第2流路1022のいずれからも複数の扁平管13aのそれぞれに流体を分配することができる。
また、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13において、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002を複数の扁平管13aの延伸方向に沿って見たとき、第1流入管1001の管軸1001aは、液ヘッダ1010の長手方向に沿って第1流路1021上に延伸している。第2流入管1002の管軸1002aは、液ヘッダ1010の長手方向に沿って第2流路1022上に延伸している。この構成によれば、第1流路1021及び第2流路1022のそれぞれを流れる流体の流量分布を、液ヘッダ1010の長手方向において概ね対称とすることができる。したがって、複数の扁平管13aに流体をより均等に分配することができる。
本実施の形態に係る空気調和機100は、上記の熱源側熱交換器13を備えるものである。この構成によれば、熱源側熱交換器13の熱交換効率を向上させることができるため、空気調和機100の性能を向上させることができる。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る熱交換器について説明する。図11は、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13と、当該熱源側熱交換器13の第1流入管1001及び第2流入管1002に接続される分岐構造1050と、の構成を模式的に示す図である。
図11に示すように、暖房運転時の冷媒の流れにおいて熱源側熱交換器13の上流側には、冷媒を分流させる分岐構造1050が設けられている。分岐構造1050は、冷媒管1053と、冷媒管1053から分岐部1054で分岐して第1流入管1001及び第2流入管1002にそれぞれ接続される冷媒管1051及び冷媒管1052と、を有している。熱源側熱交換器13が蒸発器として機能する暖房運転時において、冷媒管1053には、絞り装置20b、30bで減圧された気液二相冷媒が流入する。冷媒管1053に流入した気液二相冷媒は、分岐部1054で冷媒管1051及び冷媒管1052に分流する。冷媒管1051に分流した気液二相冷媒は、第1流入管1001から液ヘッダ1010の第1流路1021に流入する。冷媒管1052に分流した気液二相冷媒は、第2流入管1002から液ヘッダ1010の第2流路1022に流入する。分岐構造1050は、冷媒管1051、1052のそれぞれに分流する気液二相冷媒の質量流量及び乾き度が同程度になるように、水平方向で概ね対称な構造となるように設けられている。
本実施の形態によれば、第1流入管1001から第1流路1021に流入する気液二相冷媒の質量流量及び乾き度と、第2流入管1002から第2流路1022に流入する気液二相冷媒の質量流量及び乾き度と、をそれぞれ同程度にすることができる。したがって、複数の扁平管13aに気液二相冷媒をより均等に分配することができる。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る熱交換器について説明する。図12は、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13の液ヘッダ1010近傍の構成を模式的に示す断面図である。図13は、図12のXIII−XIII断面を示す断面図である。
図12及び図13に示すように、本実施の形態の仕切壁1013には、複数の孔1060が形成されている。複数の孔1060のそれぞれは、仕切壁1013の第1流路1021側の面1013bと、仕切壁1013の第2流路1022側の面1013cと、の間を仕切壁1013の厚み方向に貫通している。これにより、第1流路1021又は第2流路1022の一方を流通する冷媒の一部は、孔1060を介して第1流路1021又は第2流路1022の他方に流入することが可能になっている。複数の孔1060は、液ヘッダ1010の長手方向で互いに並列するように設けられている。孔1060の形状は円形に限られず、スリット状等の他の形状であってもよい。
本実施の形態によれば、第1流入管1001から流入する冷媒の流量と、第2流入管1002から流入する冷媒の流量とが異なっていても、第1流路1021及び第2流路1022のそれぞれでの液相冷媒の液面高さをより均一にすることができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13において、仕切壁1013には、当該仕切壁1013の第1流路1021側の面1013bと、当該仕切壁1013の第2流路1022側の面1013cと、の間を貫通した孔1060が形成されている。この構成によれば、孔1060を介して第1流路1021又は第2流路1022の一方から他方に流体を流通させることができる。これにより、第1流入管1001から流入する流体の流量と、第2流入管1002から流入する流体の流量とが異なっていても、第1流路1021及び第2流路1022のそれぞれでの流体の流量をより均一にすることができる。したがって、複数の扁平管13aに流体をより均等に分配することができる。
実施の形態4.
本発明の実施の形態4に係る熱交換器について説明する。図14は、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13の液ヘッダ1010近傍の構成を模式的に示す断面図である。図15は、図14のXV−XV断面を示す断面図である。
図14及び図15に示すように、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002は、いずれも円管状の形状を有している。第1流入管1001及び第2流入管1002のそれぞれの管軸は、液ヘッダ1010の管軸と平行になっている。液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002を液ヘッダ1010の長手方向(すなわち、液ヘッダ1010の管軸)に沿って見たとき、第1流入管1001及び第2流入管1002は、液ヘッダ1010の管壁よりも内周側に位置している(図15参照)。仕切壁1013の先端部1013aは、複数の扁平管13aのそれぞれの下端部13a1の長手方向中央部と、隙間を介して対向している。
本実施の形態では仕切壁1013に孔1060が形成されているが、孔1060は形成されていなくてもよい。また、液ヘッダ1010と仕切壁1013とは、押出成形によって一体的に形成されていてもよい。この場合、液ヘッダ1010及び仕切壁1013は、例えばアルミニウム等の材料で形成される。押出成形によって液ヘッダ1010と仕切壁1013とを一体的に形成することにより、熱源側熱交換器13の製造コストを削減することができる。
本実施の形態では、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002がいずれも円管状の形状を有している。これにより、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002をいずれも押出成形によって形成することができるため、熱源側熱交換器13の製造コストを低減できる。また、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002がいずれも円管状の形状を有しているため、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002のそれぞれの耐圧性能を向上させることができる。さらに、液ヘッダ1010が円管状の形状を有しているため、液ヘッダ1010の底面となる第2内壁面1012と、冷媒の流出先である扁平管13aの下端部13a1と、の距離を長くすることができる。これにより、液ヘッダ1010の下方(例えば、下端部13a1よりも下方)に冷媒の液面を形成することができる。したがって、ガス冷媒と液冷媒との界面に作用するせん断力により液滴が飛散しやすくなるため、冷媒が撹拌されやすくなる。
以上説明したように、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13において、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002は、いずれも円管状の形状を有している。液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002を液ヘッダ1010の長手方向に沿って見たとき、第1流入管1001及び第2流入管1002は、液ヘッダ1010の管壁よりも内周側に位置している。この構成によれば、冷媒の液面が液ヘッダ1010の下方に形成されるともに、ガスにより冷媒が均一に攪拌される。このため、実施の形態1〜3と比較して、液ヘッダ1010内の冷媒をより均一に流動させることができる。したがって、複数の扁平管13aに流体をより均等に分配することができる。
実施の形態5.
本発明の実施の形態5に係る熱交換器及び空気調和機について説明する。図16は、本実施の形態に係る熱源側熱交換器13の液ヘッダ1010近傍の構成を模式的に示す断面図である。図17は、図16のXVII−XVII断面を示す断面図である。図18は、図16のXVIII−XVIII断面を示す断面図である。
図16〜図18に示すように、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002は、いずれも円管状の形状を有している。第1流入管1001の管径は、第2流入管1002の管径よりも大きくなっている。すなわち、第1流入管1001の流路断面積をA1とし、第2流入管1002の流路断面積をA2とすると、流路断面積A1は流路断面積A2よりも大きくなっている(A1>A2)。ここで、送風機16(図16〜図18では図示せず)により熱源側熱交換器13に供給される空気の流れにおいて、第1流入管1001及び第1流路1021は、第2流入管1002及び第2流路1022よりも風上側に配置されている。第1流入管1001の一部及び第2流入管1002の一部は、液ヘッダ1010の内部に挿入されている。第1流入管1001及び第2流入管1002のそれぞれの管軸は、液ヘッダ1010の管軸と平行になっている。液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002を液ヘッダ1010の長手方向(すなわち、液ヘッダ1010の管軸)に沿って見たとき、第1流入管1001及び第2流入管1002は、液ヘッダ1010の管壁よりも内周側に位置している(図18参照)。
本実施の形態では仕切壁1013に孔1060が形成されているが、孔1060は形成されていなくてもよい。また、液ヘッダ1010と仕切壁1013とは、押出成形によって一体的に形成されていてもよい。この場合、液ヘッダ1010及び仕切壁1013は、例えばアルミニウム等の材料で形成される。押出成形によって液ヘッダ1010と仕切壁1013とを一体的に形成することにより、熱源側熱交換器13の製造コストを低減できる。
本実施の形態の熱源側熱交換器13では、第1流入管1001の流路断面積が第2流入管1002の流路断面積よりも大きいため、第1流路1021には、第2流路1022よりも多くの冷媒が流れる。これにより、空気の流れに対して扁平管13aの前縁側に位置する冷媒通路13fには、扁平管13aの後縁側に位置する冷媒通路13fよりも多くの冷媒を流すことができる。扁平管13aの前縁側は後縁側よりも熱負荷が大きいため、扁平管13aの前縁側に位置する冷媒通路13fに多くの冷媒を流すことによって、熱源側熱交換器13の熱交換効率を向上させることができる。
また、本実施の形態では、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002がいずれも円管状の形状を有している。これにより、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002をいずれも押出成形によって形成することができるため、熱源側熱交換器13の製造コストを低減できる。また、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002がいずれも円管状の形状を有しているため、液ヘッダ1010、第1流入管1001及び第2流入管1002のそれぞれの耐圧性能を向上させることができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る空気調和機100は、熱源側熱交換器13に空気を供給する送風機16を備えている。第1流路1021は、第2流路1022よりも風上側に配置されている。第1流入管1001の流路断面積A1は、第2流入管1002の流路断面積A2よりも大きくなっている。この構成によれば、相対的に熱負荷が大きい扁平管13aの前縁側に、扁平管13aの後縁側よりも多くの冷媒を流すことができる。したがって、熱源側熱交換器13の熱交換効率を向上させることができるため、空気調和機100全体の性能を向上させることができる。
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、伝熱管として、扁平な断面形状を有する扁平管13aを例に挙げたが、伝熱管の断面形状及び挿入形状は扁平形状に限られない。また、上記実施の形態では、伝熱管として、複数の冷媒通路13fが形成された多穴管を例に挙げたが、多穴管以外の伝熱管を用いることもできる。
上記の各実施の形態は、互いに組み合わせて実施することが可能である。