以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
実施形態に係るレーザ加工装置(レーザ光照射装置)では、加工対象物にレーザ光を集光することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成する。そこで、まず、改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される対象物である加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるための移動機構であるステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅、パルス波形等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の移動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
レーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成される。なお、ここでは、レーザ光Lを相対的に移動させるためにステージ111を移動させたが、集光用レンズ105を移動させてもよいし、或いはこれらの両方を移動させてもよい。
加工対象物1としては、半導体材料で形成された半導体基板や圧電材料で形成された圧電基板等を含む板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示されるように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示されるように、加工対象物1の内部に集光点(集光位置)Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4、図5及び図6に示されるように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。切断予定ライン5は、照射予定ラインに対応する。
集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、これらが組み合わされた3次元状であってもよいし、座標指定されたものであってもよい。切断予定ライン5は、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部、表面3又は裏面に形成されていればよい。改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面3、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。改質領域7を形成する際のレーザ光入射面は、加工対象物1の表面3に限定されるものではなく、加工対象物1の裏面であってもよい。
ちなみに、加工対象物1の内部に改質領域7を形成する場合には、レーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に、加工対象物1の内部に位置する集光点P近傍にて特に吸収される。これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。この場合、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一方、加工対象物1の表面3又は裏面に改質領域7を形成する場合には、レーザ光Lは、表面3又は裏面に位置する集光点P近傍にて特に吸収され、表面3又は裏面から溶融され除去されて、穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)。
改質領域7は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域7としては、例えば、溶融処理領域(一旦溶融後再固化した領域、溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくとも何れか一つを意味する)、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域7としては、加工対象物1の材料において改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある。加工対象物1の材料が単結晶シリコンである場合、改質領域7は、高転位密度領域ともいえる。
溶融処理領域、屈折率変化領域、改質領域7の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、及び、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域7と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック)を内包している場合がある。内包される亀裂は、改質領域7の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1は、結晶構造を有する結晶材料からなる基板を含む。例えば加工対象物1は、窒化ガリウム(GaN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、LiTaO3、及び、サファイア(Al2O3)の少なくとも何れかで形成された基板を含む。換言すると、加工対象物1は、例えば、窒化ガリウム基板、シリコン基板、SiC基板、LiTaO3基板、又はサファイア基板を含む。結晶材料は、異方性結晶及び等方性結晶の何れであってもよい。また、加工対象物1は、非結晶構造(非晶質構造)を有する非結晶材料からなる基板を含んでいてもよく、例えばガラス基板を含んでいてもよい。
実施形態では、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)を複数形成することにより、改質領域7を形成することができる。この場合、複数の改質スポットが集まることによって改質領域7となる。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ光照射:レーザショット)で形成される改質部分である。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物1の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することができる。また、実施形態では、切断予定ライン5に沿って、改質スポットを改質領域7として形成することができる。
[実施形態に係るレーザ加工装置]
次に、実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。以下の説明では、水平面内において互いに直交する方向をX軸方向及びY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とする。
[レーザ加工装置の全体構成]
図7に示されるように、レーザ加工装置200は、装置フレーム210と、第1移動機構220と、支持台230と、第2移動機構240と、を備えている。更に、レーザ加工装置200は、レーザ出力部300と、レーザ集光部400と、制御部500と、を備えている。
第1移動機構220は、装置フレーム210に取り付けられている。第1移動機構220は、第1レールユニット221と、第2レールユニット222と、可動ベース223と、を有している。第1レールユニット221は、装置フレーム210に取り付けられている。第1レールユニット221には、Y軸方向に沿って延在する一対のレール221a,221bが設けられている。第2レールユニット222は、Y軸方向に沿って移動可能となるように、第1レールユニット221の一対のレール221a,221bに取り付けられている。第2レールユニット222には、X軸方向に沿って延在する一対のレール222a,222bが設けられている。可動ベース223は、X軸方向に沿って移動可能となるように、第2レールユニット222の一対のレール222a,222bに取り付けられている。可動ベース223は、Z軸方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。
支持台230は、可動ベース223に取り付けられている。支持台230は、加工対象物1を支持する。加工対象物1は、例えば、シリコン等の半導体材料からなる基板の表面側に複数の機能素子(フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、又は回路として形成された回路素子等)がマトリックス状に形成されたものである。加工対象物1が支持台230に支持される際には、図8に示されるように、環状のフレーム11に張られたフィルム12上に、例えば加工対象物1の表面1a(複数の機能素子側の面)が貼付される。支持台230は、クランプによってフレーム11を保持すると共に真空チャックテーブルによってフィルム12を吸着することで、加工対象物1を支持する。支持台230上において、加工対象物1には、互いに平行な複数の切断予定ライン5a、及び互いに平行な複数の切断予定ライン5bが、隣り合う機能素子の間を通るように格子状に設定される。
図7に示されるように、支持台230は、第1移動機構220において第2レールユニット222が動作することで、Y軸方向に沿って移動させられる。また、支持台230は、第1移動機構220において可動ベース223が動作することで、X軸方向に沿って移動させられる。更に、支持台230は、第1移動機構220において可動ベース223が動作することで、Z軸方向に平行な軸線を中心線として回転させられる。このように、支持台230は、X軸方向及びY軸方向に沿って移動可能となり且つZ軸方向に平行な軸線を中心線として回転可能となるように、装置フレーム210に取り付けられている。
レーザ出力部300は、装置フレーム210に取り付けられている。レーザ集光部400は、第2移動機構240を介して装置フレーム210に取り付けられている。レーザ集光部400は、第2移動機構240が動作することで、Z軸方向に沿って移動させられる。このように、レーザ集光部400は、レーザ出力部300に対してZ軸方向に沿って移動可能となるように、装置フレーム210に取り付けられている。
制御部500は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等によって構成されている。制御部500は、レーザ加工装置200の各部の動作を制御する。
一例として、レーザ加工装置200では、次のように、各切断予定ライン5a,5b(図8参照)に沿って加工対象物1の内部に改質領域が形成される。
まず、加工対象物1の裏面1b(図8参照)がレーザ光入射面となるように、加工対象物1が支持台230に支持され、加工対象物1の各切断予定ライン5aがX軸方向に平行な方向に合わせられる。続いて、加工対象物1の内部において加工対象物1のレーザ光入射面から所定距離だけ離間した位置にレーザ光Lの集光点が位置するように、第2移動機構240によってレーザ集光部400が移動させられる。続いて、加工対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されつつ、各切断予定ライン5aに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる。これにより、各切断予定ライン5aに沿って加工対象物1の内部に改質領域が形成される。
各切断予定ライン5aに沿っての改質領域の形成が終了すると、第1移動機構220によって支持台230が回転させられ、加工対象物1の各切断予定ライン5bがX軸方向に平行な方向に合わせられる。続いて、加工対象物1の内部において加工対象物1のレーザ光入射面から所定距離だけ離間した位置にレーザ光Lの集光点が位置するように、第2移動機構240によってレーザ集光部400が移動させられる。続いて、加工対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されつつ、各切断予定ライン5bに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる。これにより、各切断予定ライン5bに沿って加工対象物1の内部に改質領域が形成される。
このように、レーザ加工装置200では、X軸方向に平行な方向が加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)とされている。なお、各切断予定ライン5aに沿ったレーザ光Lの集光点の相対的な移動、及び各切断予定ライン5bに沿ったレーザ光Lの集光点の相対的な移動は、第1移動機構220によって支持台230がX軸方向に沿って移動させられることで、実施される。また、各切断予定ライン5a間におけるレーザ光Lの集光点の相対的な移動、及び各切断予定ライン5b間におけるレーザ光Lの集光点の相対的な移動は、第1移動機構220によって支持台230がY軸方向に沿って移動させられることで、実施される。
図9に示されるように、レーザ出力部300は、取付ベース301と、カバー302と、複数のミラー303,304と、を有している。更に、レーザ出力部300は、レーザ発振器310と、シャッタ320と、λ/2波長板ユニット330と、偏光板ユニット340と、ビームエキスパンダ350と、ミラーユニット360と、を有している。
取付ベース301は、複数のミラー303,304、レーザ発振器310、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360を支持している。複数のミラー303,304、レーザ発振器310、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360は、取付ベース301の主面301aに取り付けられている。取付ベース301は、板状の部材であり、装置フレーム210(図7参照)に対して着脱可能である。レーザ出力部300は、取付ベース301を介して装置フレーム210に取り付けられている。つまり、レーザ出力部300は、装置フレーム210に対して着脱可能である。
カバー302は、取付ベース301の主面301a上において、複数のミラー303,304、レーザ発振器310、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360を覆っている。カバー302は、取付ベース301に対して着脱可能である。
レーザ発振器310は、直線偏光のレーザ光LをX軸方向に沿ってパルス発振する。レーザ発振器310から出射されるレーザ光Lの波長は、500〜550nm、1000〜1150nm又は1300〜1400nmのいずれかの波長帯に含まれる。500〜550nmの波長帯のレーザ光Lは、例えばサファイアからなる基板に対する内部吸収型レーザ加工に適している。1000〜1150nm及び1300〜1400nmの各波長帯のレーザ光Lは、例えばシリコンからなる基板に対する内部吸収型レーザ加工に適している。レーザ発振器310から出射されるレーザ光Lの偏光方向は、例えば、Y軸方向に平行な方向である。レーザ発振器310から出射されたレーザ光Lは、ミラー303によって反射され、Y軸方向に沿ってシャッタ320に入射する。
レーザ発振器310では、次のように、レーザ光Lの出力のON/OFFが切り替えられる。レーザ発振器310が固体レーザで構成されている場合、共振器内に設けられたQスイッチ(AOM(音響光学変調器)、EOM(電気光学変調器)等)のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。レーザ発振器310がファイバレーザで構成されている場合、シードレーザ、アンプ(励起用)レーザを構成する半導体レーザの出力のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。レーザ発振器310が外部変調素子を用いている場合、共振器外に設けられた外部変調素子(AOM、EOM等)のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。
シャッタ320は、機械式の機構によってレーザ光Lの光路を開閉する。レーザ出力部300からのレーザ光Lの出力のON/OFFの切り替えは、上述したように、レーザ発振器310でのレーザ光Lの出力のON/OFFの切り替えによって実施されるが、シャッタ320が設けられていることで、例えばレーザ出力部300からレーザ光Lが不意に出射されることが防止される。シャッタ320を通過したレーザ光Lは、ミラー304によって反射され、X軸方向に沿ってλ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340に順次入射する。
λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、レーザ光Lの出力(光強度)を調整する出力調整部として機能する。また、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、レーザ光Lの偏光方向を調整する偏光方向調整部として機能する。λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340を順次通過したレーザ光Lは、X軸方向に沿ってビームエキスパンダ350に入射する。
ビームエキスパンダ350は、レーザ光Lの径を調整しつつ、レーザ光Lをコリメート(平行化)する。ビームエキスパンダ350は、発散レンズ及びコリメートレンズを有し、コリメートレンズが光軸方向に沿って移動可能に構成されている(詳しくは、後述)。ビームエキスパンダ350を通過したレーザ光Lは、X軸方向に沿ってミラーユニット360に入射する。
ミラーユニット360は、支持ベース361と、複数のミラー362,363と、を有している。支持ベース361は、複数のミラー362,363を支持している。支持ベース361は、X軸方向及びY軸方向に沿って位置調整可能となるように、取付ベース301に取り付けられている。ミラー362は、ビームエキスパンダ350を通過したレーザ光LをY軸方向に反射する。ミラー362は、その反射面が例えばZ軸に平行な軸線回りに角度調整可能となるように、支持ベース361に取り付けられている。ミラー363は、ミラー362によって反射されたレーザ光LをZ軸方向に反射する。ミラー363は、その反射面が例えばX軸に平行な軸線回りに角度調整可能となり且つY軸方向に沿って位置調整可能となるように、支持ベース361に取り付けられている。ミラー363によって反射されたレーザ光Lは、支持ベース361に形成された開口361aを通過し、Z軸方向に沿ってレーザ集光部400(図7参照)に入射する。つまり、レーザ出力部300によるレーザ光Lの出射方向は、レーザ集光部400の移動方向に一致している。上述したように、各ミラー362,363は、反射面の角度を調整するための機構を有している。ミラーユニット360では、取付ベース301に対する支持ベース361の位置調整、支持ベース361に対するミラー363の位置調整、及び各ミラー362,363の反射面の角度調整が実施されることで、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸の位置及び角度がレーザ集光部400に対して合わされる。つまり、複数のミラー362,363は、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸を調整するための構成である。
図10に示されるように、レーザ集光部400は、筐体401を有している。筐体401は、Y軸方向を長手方向とする直方体状の形状を呈している。筐体401の一方の側面401eには、第2移動機構240が取り付けられている(図11及び図13参照)。筐体401には、ミラーユニット360の開口361aとZ軸方向において対向するように、円筒状の光入射部401aが設けられている。光入射部401aは、レーザ出力部300から出射されたレーザ光Lを筐体401内に入射させる。ミラーユニット360と光入射部401aとは、第2移動機構240によってレーザ集光部400がZ軸方向に沿って移動させられた際に互いに接触することがない距離だけ、互いに離間している。
図11及び図12に示されるように、レーザ集光部400は、ミラー402と、ダイクロイックミラー403と、を有している。更に、レーザ集光部400は、反射型空間光変調器410と、4fレンズユニット420と、集光レンズユニット430と、駆動機構440と、一対の測距センサ450と、を有している。
ミラー402は、光入射部401aとZ軸方向において対向するように、筐体401の底面401bに取り付けられている。ミラー402は、光入射部401aを介して筐体401内に入射したレーザ光LをXY平面に平行な方向に反射する。ミラー402には、レーザ出力部300のビームエキスパンダ350によって平行化されたレーザ光LがZ軸方向に沿って入射する。つまり、ミラー402には、レーザ光Lが平行光としてZ軸方向に沿って入射する。そのため、第2移動機構240によってレーザ集光部400がZ軸方向に沿って移動させられても、Z軸方向に沿ってミラー402に入射するレーザ光Lの状態は一定に維持される。ミラー402によって反射されたレーザ光Lは、反射型空間光変調器410に入射する。
反射型空間光変調器410は、反射面410aが筐体401内に臨んだ状態で、Y軸方向における筐体401の端部401cに取り付けられている。反射型空間光変調器410は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)であり、レーザ光Lを変調しつつ、レーザ光LをY軸方向に反射する。反射型空間光変調器410によって変調されると共に反射されたレーザ光Lは、Y軸方向に沿って4fレンズユニット420に入射する。ここで、XY平面に平行な平面内において、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lの光軸と、反射型空間光変調器410から出射されるレーザ光Lの光軸とがなす角度αは、鋭角(例えば、10〜60°)とされている。つまり、レーザ光Lは、反射型空間光変調器410においてXY平面に沿って鋭角に反射される。これは、レーザ光Lの入射角及び反射角を抑えて回折効率の低下を抑制し、反射型空間光変調器410の性能を十分に発揮させるためである。なお、反射型空間光変調器410では、例えば、液晶が用いられた光変調層の厚さが数μm〜数十μm程度と極めて薄いため、反射面410aは、光変調層の光入出射面と実質的に同じと捉えることができる。
4fレンズユニット420は、ホルダ421と、反射型空間光変調器410側のレンズ422と、集光レンズユニット430側のレンズ423と、スリット部材424と、を有している。ホルダ421は、一対のレンズ422,423及びスリット部材424を保持している。ホルダ421は、レーザ光Lの光軸に沿った方向における一対のレンズ422,423及びスリット部材424の互いの位置関係を一定に維持している。一対のレンズ422,423は、反射型空間光変調器410の反射面410aと集光レンズユニット430の入射瞳面(瞳面)430aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの像(反射型空間光変調器410において変調されたレーザ光Lの像)が、集光レンズユニット430の入射瞳面430aに転像(結像)される。スリット部材424には、スリット424aが形成されている。スリット424aは、レンズ422とレンズ423との間であって、レンズ422の焦点面付近に位置している。反射型空間光変調器410によって変調されると共に反射されたレーザ光Lのうち不要な部分は、スリット部材424によって遮断される。4fレンズユニット420を通過したレーザ光Lは、Y軸方向に沿ってダイクロイックミラー403に入射する。
ダイクロイックミラー403は、レーザ光Lの大部分(例えば、95〜99.5%)をZ軸方向に反射し、レーザ光Lの一部(例えば、0.5〜5%)をY軸方向に沿って透過させる。レーザ光Lの大部分は、ダイクロイックミラー403においてZX平面に沿って直角に反射される。ダイクロイックミラー403によって反射されたレーザ光Lは、Z軸方向に沿って集光レンズユニット430に入射する。
集光レンズユニット430は、Y軸方向における筐体401の端部401d(端部401cの反対側の端部)に、駆動機構440を介して取り付けられている。集光レンズユニット430は、対物レンズを構成する。集光レンズユニット430は、ホルダ431と、複数のレンズ432と、を有している。ホルダ431は、複数のレンズ432を保持している。複数のレンズ432は、支持台230に支持された加工対象物1(図7参照)に対してレーザ光Lを集光する。駆動機構440は、圧電素子の駆動力によって、集光レンズユニット430をZ軸方向に沿って移動させる。
一対の測距センサ450は、X軸方向において集光レンズユニット430の両側に位置するように、筐体401の端部401dに取り付けられている。各測距センサ450は、支持台230に支持された加工対象物1(図7参照)のレーザ光入射面に対して測距用の光(例えば、レーザ光)を出射し、当該レーザ光入射面によって反射された測距用の光を検出することで、加工対象物1のレーザ光入射面の変位データを取得する。なお、測距センサ450には、三角測距方式、レーザ共焦点方式、白色共焦点方式、分光干渉方式、非点収差方式等のセンサを利用することができる。
レーザ加工装置200では、上述したように、X軸方向に平行な方向が加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)とされている。そのため、各切断予定ライン5a,5bに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる際に、一対の測距センサ450のうち集光レンズユニット430に対して相対的に先行する測距センサ450が、各切断予定ライン5a,5bに沿った加工対象物1のレーザ光入射面の変位データを取得する。そして、加工対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されるように、駆動機構440が、測距センサ450によって取得された変位データに基づいて集光レンズユニット430をZ軸方向に沿って移動させる。
レーザ集光部400は、ビームスプリッタ461と、一対のレンズ462,463と、プロファイル取得用カメラ464と、を有している。ビームスプリッタ461は、ダイクロイックミラー403を透過したレーザ光Lを反射成分と透過成分とに分ける。ビームスプリッタ461によって反射されたレーザ光Lは、Z軸方向に沿って一対のレンズ462,463及びプロファイル取得用カメラ464に順次入射する。一対のレンズ462,463は、集光レンズユニット430の入射瞳面430aとプロファイル取得用カメラ464の撮像面とが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、集光レンズユニット430の入射瞳面430aでのレーザ光Lの像が、プロファイル取得用カメラ464の撮像面に転像(結像)される。上述したように、集光レンズユニット430の入射瞳面430aでのレーザ光Lの像は、反射型空間光変調器410において変調されたレーザ光Lの像である。したがって、レーザ加工装置200では、プロファイル取得用カメラ464による撮像結果を監視することで、反射型空間光変調器410の動作状態を把握することができる。
更に、レーザ集光部400は、ビームスプリッタ471と、レンズ472と、レーザ光Lのスポット位置(ポインティング)観察用の撮像装置であるスポット観察用カメラ473と、を有している。ビームスプリッタ471は、ビームスプリッタ461を透過したレーザ光Lを反射成分と透過成分とに分ける。ビームスプリッタ471によって反射されたレーザ光Lは、Z軸方向に沿ってレンズ472及びスポット観察用カメラ473に順次入射する。レンズ472は、入射したレーザ光Lをスポット観察用カメラ473の撮像面に向けて集光する。レーザ加工装置200では、プロファイル取得用カメラ464及びスポット観察用カメラ473のそれぞれによる撮像結果を監視しつつ、ミラーユニット360において、取付ベース301に対する支持ベース361の位置調整、支持ベース361に対するミラー363の位置調整、及び各ミラー362,363の反射面の角度調整を実施することで(図9及び図10参照)、集光レンズユニット430に入射するレーザ光Lの光軸のずれ(集光レンズユニット430に対するレーザ光の強度分布の位置ずれ、及び集光レンズユニット430に対するレーザ光Lの光軸の角度ずれ)を補正することができる。
複数のビームスプリッタ461,471は、筐体401の端部401dからY軸方向に沿って延在する筒体404内に配置されている。一対のレンズ462,463は、Z軸方向に沿って筒体404上に立設された筒体405内に配置されており、プロファイル取得用カメラ464は、筒体405の端部に配置されている。レンズ472は、Z軸方向に沿って筒体404上に立設された筒体406内に配置されており、スポット観察用カメラ473は、筒体406の端部に配置されている。筒体405と筒体406とは、Y軸方向において互いに並設されている。なお、ビームスプリッタ471を透過したレーザ光Lは、筒体404の端部に設けられたダンパ等に吸収されるようにしてもよいし、或いは、適宜の用途で利用されるようにしてもよい。
図12及び図13に示されるように、レーザ集光部400は、可視光源481と、複数のレンズ482と、レチクル483と、ミラー484と、ハーフミラー485と、ビームスプリッタ486と、レンズ487と、観察カメラ488と、を有している。可視光源481は、Z軸方向に沿って可視光Vを出射する。複数のレンズ482は、可視光源481から出射された可視光Vを平行化する。レチクル483は、可視光Vに目盛り線を付与する。ミラー484は、複数のレンズ482によって平行化された可視光VをX軸方向に反射する。ハーフミラー485は、ミラー484によって反射された可視光Vを反射成分と透過成分とに分ける。ハーフミラー485によって反射された可視光Vは、Z軸方向に沿ってビームスプリッタ486及びダイクロイックミラー403を順次透過し、集光レンズユニット430を介して、支持台230に支持された加工対象物1(図7参照)に照射される。
加工対象物1に照射された可視光Vは、加工対象物1のレーザ光入射面によって反射され、集光レンズユニット430を介してダイクロイックミラー403に入射し、Z軸方向に沿ってダイクロイックミラー403を透過する。ビームスプリッタ486は、ダイクロイックミラー403を透過した可視光Vを反射成分と透過成分とに分ける。ビームスプリッタ486を透過した可視光Vは、ハーフミラー485を透過し、Z軸方向に沿ってレンズ487及び観察カメラ488に順次入射する。レンズ487は、入射した可視光Vを観察カメラ488の撮像面上に集光する。レーザ加工装置200では、観察カメラ488による撮像結果を観察することで、加工対象物1の状態を把握することができる。
ミラー484、ハーフミラー485及びビームスプリッタ486は、筐体401の端部401d上に取り付けられたホルダ407内に配置されている。複数のレンズ482及びレチクル483は、Z軸方向に沿ってホルダ407上に立設された筒体408内に配置されており、可視光源481は、筒体408の端部に配置されている。レンズ487は、Z軸方向に沿ってホルダ407上に立設された筒体409内に配置されており、観察カメラ488は、筒体409の端部に配置されている。筒体408と筒体409とは、X軸方向において互いに並設されている。なお、X軸方向に沿ってハーフミラー485を透過した可視光V、及びビームスプリッタ486によってX軸方向に反射された可視光Vは、それぞれ、ホルダ407の壁部に設けられたダンパ等に吸収されるようにしてもよいし、或いは、適宜の用途で利用されるようにしてもよい。
レーザ加工装置200では、レーザ出力部300(特にレーザ発振器310)の交換が想定されている。これは、加工対象物1の仕様、加工条件等に応じて、加工に適したレーザ光Lの波長が異なるからである。そのため、出射するレーザ光Lの波長が互いに異なる複数のレーザ出力部300が用意される。ここでは、出射するレーザ光Lの波長が500〜550nmの波長帯に含まれるレーザ出力部300、出射するレーザ光Lの波長が1000〜1150nmの波長帯に含まれるレーザ出力部300、及び出射するレーザ光Lの波長が1300〜1400nmの波長帯に含まれるレーザ出力部300が用意される。
一方、レーザ加工装置200では、レーザ集光部400の交換が想定されていない。これは、レーザ集光部400がマルチ波長に対応している(互いに連続しない複数の波長帯に対応している)からである。具体的には、ミラー402、反射型空間光変調器410、4fレンズユニット420の一対のレンズ422,423、ダイクロイックミラー403、及び集光レンズユニット430のレンズ432等がマルチ波長に対応している。ここでは、レーザ集光部400は、500〜550nm、1000〜1150nm及び1300〜1400nmの波長帯に対応している。これは、レーザ集光部400の各構成に所定の誘電体多層膜をコーティングすること等、所望の光学性能が満足されるようにレーザ集光部400の各構成が設計されることで実現される。なお、レーザ出力部300において、λ/2波長板ユニット330はλ/2波長板を有しており、偏光板ユニット340は偏光板を有している。λ/2波長板及び偏光板は、波長依存性が高い光学素子である。そのため、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、波長帯ごとに異なる構成としてレーザ出力部300に設けられている。
[レーザ加工装置におけるレーザ光の光路及び偏光方向]
レーザ加工装置200では、支持台230に支持された加工対象物1に対して集光されるレーザ光Lの偏光方向は、図11に示されるように、X軸方向に平行な方向であり、加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)に一致している。ここで、反射型空間光変調器410では、レーザ光LがP偏光として反射される。これは、反射型空間光変調器410の光変調層に液晶が用いられている場合において、反射型空間光変調器410に対して入出射するレーザ光Lの光軸を含む平面に平行な面内で液晶分子が傾斜するように、当該液晶が配向されているときには、偏波面の回転が抑制された状態でレーザ光Lに位相変調が施されるからである(例えば、特許第3878758号公報参照)。一方、ダイクロイックミラー403では、レーザ光LがS偏光として反射される。これは、レーザ光LをP偏光として反射させるよりも、レーザ光LをS偏光として反射させたほうが、ダイクロイックミラー403をマルチ波長に対応させるための誘電体多層膜のコーティング数が減少する等、ダイクロイックミラー403の設計が容易となるからである。
したがって、レーザ集光部400では、ミラー402から反射型空間光変調器410及び4fレンズユニット420を介してダイクロイックミラー403に至る光路が、XY平面に沿うように設定されており、ダイクロイックミラー403から集光レンズユニット430に至る光路が、Z軸方向に沿うように設定されている。
図9に示されるように、レーザ出力部300では、レーザ光Lの光路がX軸方向又はY軸方向に沿うように設定されている。具体的には、レーザ発振器310からミラー303に至る光路、並びに、ミラー304からλ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340及びビームエキスパンダ350を介してミラーユニット360に至る光路が、X軸方向に沿うように設定されており、ミラー303からシャッタ320を介してミラー304に至る光路、及び、ミラーユニット360においてミラー362からミラー363に至る光路が、Y軸方向に沿うように設定されている。
ここで、Z軸方向に沿ってレーザ出力部300からレーザ集光部400に進行したレーザ光Lは、図11に示されるように、ミラー402によってXY平面に平行な方向に反射され、反射型空間光変調器410に入射する。このとき、XY平面に平行な平面内において、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lの光軸と、反射型空間光変調器410から出射されるレーザ光Lの光軸とは、鋭角である角度αをなしている。一方、上述したように、レーザ出力部300では、レーザ光Lの光路がX軸方向又はY軸方向に沿うように設定されている。
したがって、レーザ出力部300において、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340を、レーザ光Lの出力を調整する出力調整部としてだけでなく、レーザ光Lの偏光方向を調整する偏光方向調整部としても機能させる必要がある。
[反射型空間光変調器]
図14に示されるように、反射型空間光変調器410は、シリコン基板213、駆動回路層914、複数の画素電極214、誘電体多層膜ミラー等の反射膜215、配向膜999a、液晶層(表示部)216、配向膜999b、透明導電膜217、及びガラス基板等の透明基板218がこの順に積層されることで構成されている。
透明基板218は、XY平面に沿った表面218aを有しており、この表面218aは、反射型空間光変調器410の反射面410aを構成している。透明基板218は、例えばガラス等の光透過性材料からなり、反射型空間光変調器410の表面218aから入射した所定波長のレーザ光Lを、反射型空間光変調器410の内部へ透過する。透明導電膜217は、透明基板218の裏面上に形成されており、レーザ光Lを透過する導電性材料(例えばITO)からなる。
複数の画素電極214は、透明導電膜217に沿ってシリコン基板213上にマトリックス状に配列されている。各画素電極214は、例えばアルミニウム等の金属材料からなり、これらの表面214aは、平坦且つ滑らかに加工されている。複数の画素電極214は、駆動回路層914に設けられたアクティブ・マトリクス回路によって駆動される。
アクティブ・マトリクス回路は、複数の画素電極214とシリコン基板213との間に設けられており、反射型空間光変調器410から出力しようとする光像に応じて各画素電極214への印加電圧を制御する。このようなアクティブ・マトリクス回路は、例えば図示しないX軸方向に並んだ各画素列の印加電圧を制御する第1ドライバ回路と、Y軸方向に並んだ各画素列の印加電圧を制御する第2ドライバ回路とを有しており、制御部5000における後述の空間光変調器制御部502(図16参照)によって双方のドライバ回路で指定された画素の画素電極214に所定電圧が印加されるように構成されている。
配向膜999a,999bは、液晶層216の両端面に配置されており、液晶分子群を一定方向に配列させる。配向膜999a,999bは、例えばポリイミド等の高分子材料からなり、液晶層216との接触面にラビング処理等が施されている。
液晶層216は、複数の画素電極214と透明導電膜217との間に配置されており、各画素電極214と透明導電膜217とにより形成される電界に応じてレーザ光Lを変調する。すなわち、駆動回路層914のアクティブ・マトリクス回路によって各画素電極214に電圧が印加されると、透明導電膜217と各画素電極214との間に電界が形成され、液晶層216に形成された電界の大きさに応じて液晶分子216aの配列方向が変化する。そして、レーザ光Lが透明基板218及び透明導電膜217を透過して液晶層216に入射すると、このレーザ光Lは、液晶層216を通過する間に液晶分子216aによって変調され、反射膜215において反射した後、再び液晶層216により変調されて、出射する。
このとき、後述の空間光変調器制御部502(図16参照)によって各画素電極214に印加される電圧が制御され、その電圧に応じて、液晶層216において透明導電膜217と各画素電極214とに挟まれた部分の屈折率が変化する(各画素に対応した位置の液晶層216の屈折率が変化する)。この屈折率の変化により、印加した電圧に応じて、レーザ光Lの位相を液晶層216の画素ごとに変化させることができる。つまり、ホログラムパターンに応じた位相変調を画素ごとに液晶層216によって付与することができる。換言すると、変調を付与するホログラムパターンとしての変調パターンを、反射型空間光変調器410の液晶層216に表示させることができる。変調パターンに入射し透過するレーザ光Lは、その波面が調整され、そのレーザ光Lを構成する各光線において進行方向に直交する所定方向の成分の位相にずれが生じる。したがって、反射型空間光変調器410に表示させる変調パターンを適宜設定することにより、レーザ光Lが変調(例えば、レーザ光Lの強度、振幅、位相、偏光等が変調)可能となる。
[4fレンズユニット]
上述したように、4fレンズユニット420の一対のレンズ422,423は、反射型空間光変調器410の反射面410aと集光レンズユニット430の入射瞳面430aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。具体的には、図15に示されるように、反射型空間光変調器410側のレンズ422の中心と反射型空間光変調器410の反射面410aとの間の光路の距離がレンズ422の第1焦点距離f1となり、集光レンズユニット430側のレンズ423の中心と集光レンズユニット430の入射瞳面430aとの間の光路の距離がレンズ423の第2焦点距離f2となり、レンズ422の中心とレンズ423の中心との間の光路の距離が第1焦点距離f1と第2焦点距離f2との和(すなわち、f1+f2)となっている。反射型空間光変調器410から集光レンズユニット430に至る光路のうち一対のレンズ422,423間の光路は、一直線である。
レーザ加工装置200では、反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径を大きくする観点から、両側テレセントリック光学系の倍率Mが、0.5<M<1(縮小系)を満たしている。反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径が大きいほど、高精細な位相パターンでレーザ光Lが変調される。反射型空間光変調器410から集光レンズユニット430に至るレーザ光Lの光路が長くなるのを抑制するという観点では、0.6≦M≦0.95であることがより好ましい。ここで、(両側テレセントリック光学系の倍率M)=(集光レンズユニット430の入射瞳面430aでの像の大きさ)/(反射型空間光変調器410の反射面410aでの物体の大きさ)である。レーザ加工装置200の場合、両側テレセントリック光学系の倍率M、レンズ422の第1焦点距離f1及びレンズ423の第2焦点距離f2が、M=f2/f1を満たしている。
なお、反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径を小さくする観点から、両側テレセントリック光学系の倍率Mが、1<M<2(拡大系)を満たしていてもよい。反射型空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径が小さいほど、ビームエキスパンダ350(図9参照)の倍率が小さくて済み、XY平面に平行な平面内において、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lの光軸と、反射型空間光変調器410から出射されるレーザ光Lの光軸とがなす角度α(図11参照)が小さくなる。反射型空間光変調器410から集光レンズユニット430に至るレーザ光Lの光路が長くなるのを抑制するという観点では、1.05≦M≦1.7であることがより好ましい。
図16に示されるように、以上に説明したレーザ加工装置200においては、発散角確認装置600及び発散角調整装置700が搭載されている。以下、発散角確認装置600及び発散角調整装置700について説明する。
[発散角確認装置]
発散角確認装置600は、レーザ加工装置200においてレーザ光Lの発散角を確認するための装置である。発散角の確認とは、拡がり角の確認、平行度の確認、集束角の確認、及び、コリメート確認と同義である。発散角確認装置600は、レーザ加工装置200の一部を利用して構成されており、上記反射型空間光変調器410、上記レンズ472、上記スポット観察用カメラ473、上記制御部500、及び、モニタ510を備えている。
反射型空間光変調器410は、レンズ472に入射するレーザ光Lを変調する光学素子である。反射型空間光変調器410は、制御部500に接続されている。反射型空間光変調器410は、制御部500により液晶層216の表示が制御される。反射型空間光変調器410は、後述する光渦パターンを変調パターンとして液晶層216に表示させることで、レンズ472で複数の集光点に集光し且つ複数の集光点に集光する各集光光が光渦を有するように、レーザ光Lを変調して出射する。ここでの反射型空間光変調器410は、レンズ472で第1及び第2集光点に集光し且つ第1及び第2集光点に集光する第1及び第2集光光のそれぞれが光渦を有するように、レーザ光Lを変調して出射する。
レンズ472は、反射型空間光変調器410から出射されてダイクロイックミラー403を透過した一部のレーザ光Lを、スポット観察用カメラ473の撮像面上に集光する。光軸方向におけるレンズ472とスポット観察用カメラ473との間の距離は、レンズ472の焦点距離f(図20参照)に予め調整されている。
スポット観察用カメラ473は、複数の集光像を含む画像を撮像する。複数の集光像は、レンズ472で集光する複数の集光光の像(スポット像)である。複数の集光像は、レンズ472によるレーザ光Lの複数の集光点の像、及び、当該複数の集光点以外の像を含む。スポット観察用カメラ473は、制御部500に接続されている。スポット観察用カメラ473は、撮像した画像を制御部500に出力する。ここでの画像は、第1集光点の像である第1集光像と、第2集光点の像である第2集光像を含む。スポット観察用カメラ473としては、特に限定されず、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
制御部500には、機能的構成として、空間光変調器制御部502、カメラ制御部504及びモニタ制御部505が含まれている。空間光変調器制御部502は、反射型空間光変調器410の液晶層216に表示する位相パターンを制御する。図17に示されるように、空間光変調器制御部502は、液晶層216を制御し、光渦パターン9を液晶層216に表示させる。
光渦パターン9は、レンズ472で複数の集光点に集光され且つ複数の集光点に集光される各集光光が光渦を有するように、レーザ光Lを変調する変調パターンである。光渦とは、らせん波面の光波の総称である。光渦は、らせん状転位又は位相特異点としても称される。光渦は、光場ゼロ及び強度ゼロの点である。光渦パターン9は、方位角方向に0から2πのらせんの位相分布である光渦分布を、中心位置9aが互いに異なるように複数重ね合わせて成る変調パターンである。光渦パターン9では、レンズ472の入射瞳面に対応する円形の瞳面領域B内に、複数の光渦分布の各中心位置9aが存在する。光渦パターン9は、複数の光渦分布が液晶層216の横軸方向に並ぶように重ね合わされている。瞳面領域Bは、出射するレーザ光Lがレンズ472のアパーチャでカットされない領域である。
光渦パターン9は、下記数式(1)で表すことができる。Upupilは、光渦パターンの複素振幅分布である。(r,θ)は、液晶層216上の極座標であり、レンズ472の入射瞳面の極座標に対応する。Rは、レンズ472の入射瞳面の半径である。M
0=(N−1)/2であり、Nは、含まれる光渦分布の数である。kは、光渦分布の番号である。下付きのkが付されている場合、入射瞳面中心からk・d(kとdとの積)だけ中心位置が面内一軸方向にずれた光渦分布のものを意味する。dは、光渦分布の中心位置と瞳面領域B(図17参照)の中心との距離である。図示する光渦パターン9は、N=3、k≠0の場合(入射瞳面中心を中心位置とする光渦分布を含まない場合)のパターンであり、レンズ472で第1及び第2集光点に集光され且つ第1及び第2集光光が光渦を有するように、レーザ光Lを変調する。
但し、arg()は、位相を取得する演算子とする。
図16に示されるように、カメラ制御部504は、スポット観察用カメラ473の動作を制御する。また、カメラ制御部504は、スポット観察用カメラ473で撮像した画像を取得し、当該画像を出力する。モニタ制御部505は、モニタ510の動作を制御する。モニタ制御部505は、スポット観察用カメラ473で撮像されてカメラ制御部504から出力された画像を、モニタ510上に表示させる。モニタ510は、スポット観察用カメラ473で撮像された画像を出力する出力部として機能する。モニタ510としては、特に限定されず、種々の表示装置を採用できる。
[発散角調整装置]
発散角調整装置700は、レーザ加工装置200においてレーザ光Lの発散角を調整する。発散角の調整とは、拡がり角の調整、平行度の調整、集束角の調整、及び、コリメート調整と同義である。発散角調整装置700は、レーザ加工装置200の一部を利用して構成されており、上記反射型空間光変調器410と、上記レンズ472と、上記スポット観察用カメラ473と、上記ビームエキスパンダ350と、上記制御部500と、を備えている。
ビームエキスパンダ350は、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lの発散角を調整する発散角調整機構として機能する。ビームエキスパンダ350は、発散レンズ351及びコリメートレンズ352を有している。発散レンズ351及びコリメートレンズ352は、レーザ光Lの進行方向においてこの順で、レーザ光Lの光路に沿って互いに離間して配置されている。発散レンズ351は、入射するレーザ光Lを発散させ、レーザ光Lのビーム径を拡大する。発散レンズ351としては、例えば平凹レンズが用いられている。
コリメートレンズ352は、発散レンズ351を通過したレーザ光Lをコリメートする。コリメートレンズ352としては、例えば平凸レンズが用いられている。コリメートレンズ352は、光軸方向に沿って移動可能に構成されている。コリメートレンズ352は、不図示の駆動装置により光軸方向に移動される。駆動装置としては特に限定されず、公知の装置を用いることができる。
ビームエキスパンダ350は、制御部500に接続されている。ビームエキスパンダ350では、制御部500によりコリメートレンズ352が移動させられ、コリメートレンズ352の光軸方向における位置(発散レンズ351との間の距離)が変化される。これにより、ビームエキスパンダ350を通過するレーザ光Lの発散角が調整される。なお、コリメートレンズ352は、手動で光軸方向に可動するように構成されていてもよい。
制御部500には、機能的構成として、発散角制御部506が含まれている。発散角制御部506は、カメラ制御部504から出力された画像に基づき、レーザ光Lの発散角を制御する。発散角制御部506は、重心演算部506aと、ずれ角算出部(ずれ量算出部)506bと、ビームエキスパンダ制御部(調整機構制御部)506cと、を有している。
重心演算部506aは、画像に含まれる複数の集光像それぞれについて、重心演算を実行する。これにより、重心演算部506aは、複数の集光像の重心位置を、複数の集光像の位置としてそれぞれ算出する。
ずれ角算出部506bは、画像における複数の集光像の位置についての、基準位置に対する回転方向のずれ量であるずれ角(以下、単に「ずれ角」ともいう)を算出する。具体的には、ずれ角算出部506bは、第1及び第2集光像の位置を通る線分と基準方向との間の角度を、ずれ角として算出する。基準位置は、すれ角(ずれ量)の基準となる位置であって、ずれ角が0度(ずれ量が0)となる位置である。基準方向は、すれ角(ずれ量)の基準となる方向であって、ずれ角が0度(ずれ量が0)となる方向である。
ここでの基準位置は、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lが平行光(発散角が0度)のときにおける複数の集光像の位置である。ここでの基準方向は、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lが平行光のときにおける、第1及び第2集光像の位置を通る線分の方向である。基準位置及び基準方向は、予め設定されている。基準位置及び基準方向は、特に限定されない。
例えば図18(a)に示されるように、画像Gが第1集光像10a及び第2集光像10bを含む本実施形態では、基準位置は、画像G上に設定されたカメラ座標系(すなわち、画像Gの横方向をXc方向、画像Gの縦方向をYc方向、及び、画像Gの奥行方向をZc方向とする直交座標系)のXc方向に並ぶ位置である。基準方向は、Xc方向である。
ビームエキスパンダ制御部506cは、ずれ角算出部506bで算出したずれ角が所定角となるように、ビームエキスパンダ350のコリメートレンズ352の位置を制御する。ここでのビームエキスパンダ制御部506cは、コリメートレンズ352を駆動する駆動装置を制御し、ずれ角算出部506bで算出したずれ角が0度となる位置へコリメートレンズ352を光軸方向に移動させる。
次に、発散角確認装置600及び発散角調整装置700によりレーザ光Lの発散角を確認及び調整する方法について、図19のフローチャートを参照しつつ説明する。以下においては、レーザ光Lを平行光へ調整する場合を説明する。
例えば作業者がレーザ加工装置200のレーザ発振器310(図9参照)を交換した後、空間光変調器制御部502により、反射型空間光変調器410の液晶層216に光渦パターン9を表示させる(ステップS1)。光渦パターン9を液晶層216に表示させた状態で、レーザ発振器310からレーザ光Lを出射する(ステップS2)。
レーザ発振器310から出射されたレーザ光Lは、図16に示されるように、ビームエキスパンダ350により拡径されてコリメートされ、反射型空間光変調器410の液晶層216に表示された光渦パターン9により変調される。そして、当該レーザ光Lの一部は、ダイクロイックミラー403を透過し、レンズ472でスポット観察用カメラ473の撮像面に向けて集光される。その結果、図18に示されるように、スポット観察用カメラ473により、第1集光像10a及び第2集光像10bを含む画像Gが撮像される(ステップS3)。モニタ制御部505により、スポット観察用カメラ473で撮像された画像Gをモニタ510に表示させる(ステップS4)。
ここで本実施形態において、レーザ光Lをレンズ472で複数の集光点に集光した際、各集光光が光渦を有していると、画像Gにおける複数の集光像10の位置は、当該レーザ光Lの発散角に応じて変化する傾向を有する。例えば図20(a)に示されるように、レンズ472に入射するレーザ光Lが平行光である場合、光軸方向において、レンズ472によるレーザ光Lの集光点がスポット観察用カメラ473の撮像面に位置する。この場合、図18(a)に示されるように、画像G上における第1及び第2集光像10a,10bの位置は、Xc方向に並ぶ基準位置に位置する。第1及び第2集光像10a,10b間を結ぶ線分LS1は、Xc方向に沿い、ずれ角は0度となる。
一方、例えば図20(b)に示されるように、レンズ472に入射するレーザ光Lが非平行光である場合、光軸方向において、レンズ472によるレーザ光Lの集光点がスポット観察用カメラ473の撮像面に対して光軸方向にずれる。レンズ472に入射するレーザ光Lが集束光の場合には、図18(b)に示されるように、画像G上における第1及び第2集光像10a,10bの位置は、Xc方向に並ぶ基準位置(図18(a)参照)に対して、全体としてZc方向を軸方向とした反時計回りに回転する。第1及び第2集光像10a,10b間を結ぶ線分LS2は、Xc方向に対して反時計回りにずれ、ずれ角が発生する。ずれ角は、集束角に応じて大きくなる。
レンズ472に入射するレーザ光Lが発散光の場合には、図18(c)に示されるように、画像G上における第1及び第2集光像10a,10bの位置は、Xc方向に並ぶ基準位置に対して、全体としてZc方向を軸方向とした時計回りに回転する。第1及び第2集光像10a,10b間を結ぶ線分LS3は、Xc方向に対して時計回りにずれ、ずれ角が発生する。ずれ角は、発散角に応じて大きくなる。
したがって、作業者は、モニタ510に表示された画像Gに含まれる第1及び第2集光像10a,10bの位置、線分Ls及びずれ角の少なくとも何れかに基づくことで、レーザ光Lの発散角を確認できる。すなわち、レーザ光Lの発散角の値ないしは程度、発散角が一定以上又は以下であるか否か、並びに、レーザ光Lが平行光であるか又は非平行光であるか(発散しているか否か)を確認できる。
続いて、重心演算部506aにより、画像Gに含まれる第1及び第2集光像10a,10bの重心演算を実行し、第1及び第2集光像10a,10bの重心位置を算出する(ステップS5)。ずれ角算出部506bにより、第1及び第2集光像10a,10bのずれ角を算出する(ステップS6)。具体的には、上記ステップS5で得た重心位置を第1及び第2集光像10a,10bの位置とし、これら第1及び第2集光像10a,10bの重心位置を通る線分LSがXc方向と成す角度を、ずれ角として算出する。
ここで本実施形態において、複数の集光像10のずれ角は、レーザ光Lの発散角に応じて変化する。第1及び第2集光像10a,10bのずれ角が0度であると、レーザ光Lは平行光(発散角=0)であり、第1及び第2集光像10a,10bのずれ角が0度以外であると、レーザ光Lは非平行光である。
そこで、上記ステップS6で算出したずれ角が0度の場合(ステップS7でYES)、レーザ光Lが平行光であるとして、そのまま処理を終了する。一方、上記ステップS6で算出したずれ角が0度以外の場合(ステップS7でNO)、ビームエキスパンダ制御部506cにより、ビームエキスパンダ350のコリメートレンズ352を光軸方向に沿って移動させ、コリメートレンズ352をずれ角が0度となる位置へ位置させる(ステップS8)。これにより、レーザ光Lが平行光となるように、レーザ光Lの発散角が調整されることとなる。なお、上記ステップS1〜S4は発散角確認方法を構成し、上記ステップS1〜S8は発散角調整方法を構成する。
以上、本実施形態の発散角確認装置600及び発散角確認方法によれば、レンズ472で複数の集光点に集光し且つ各集光光が光渦を有するようにレーザ光Lを変調し、各集光光の集光像10を含む画像Gを撮像し、この画像Gをモニタ510を介して出力する。画像Gに含まれる複数の集光像10の位置に基づくことで、上述した知見により、レーザ光Lの発散角を精度よく確認することが可能となる。複数の集光像10の位置についての回転方向のずれ量であるずれ角から、レーザ光Lの発散角を定性的に把握することができる。作業者毎の確認結果のばらつきを抑制することができる。その結果、レーザ加工装置200による適正なレーザ光照射ひいてはレーザ加工を実現することが可能となる。
本実施形態の発散角調整装置700及び発散角調整方法によれば、ビームエキスパンダ制御部506cにより、ずれ角が0度となるようにビームエキスパンダ350のコリメートレンズ352の位置を制御する。これにより、レーザ光Lが平行光となるようにレーザ光Lの発散角を精度よく調整できる。レーザ光Lの発散角を、ずれ角から定性的に調整することができる。作業者毎の調整のばらつきを抑制することができる。
本実施形態では、反射型空間光変調器410を有する光学系を備えるレーザ加工装置200に光渦パターン9を適用することにより、コリメート確認及びコリメート調整を簡易に実現することができる。コリメーションチェッカー等の別途の計測機器を必要とせず、作業の容易性及び利便性を向上することができる。さらに、レーザ加工装置200の小型化のために、レーザ光Lの光路上のスペース等が制限されることから、別途の計測機器を用いることは実現困難である。この点、別途の計測機器を必要しない本実施形態は、有効である。
本実施形態では、反射型空間光変調器410の液晶層216に光渦パターン9を表示させ、レーザ光Lを液晶層216に入射させ、当該レーザ光Lを光渦パターン9に応じて変調して液晶層216から出射する。光渦パターン9は、方位角方向に0から2πのらせんの位相分布である光渦分布を、中心位置9aが互いに異なるように複数重ね合わせて成るパターンである。この場合、反射型空間光変調器410を利用して、レンズ472で複数の集光点に集光し且つ各集光光が光渦を有するようにレーザ光Lを変調できる。
本実施形態では、複数の集光像10を含む画像Gをモニタ510に表示する。これにより、作業者は、画像Gをモニタ510により目視で確認できる。
本実施形態では、第1及び第2集光像10a,10bの位置を通る線分LSとXc方向との間の角度であるずれ角を、ずれ量として算出する。これにより、ずれ量の取得ひいてはレーザ光Lの発散角の精度よい調整を、具体的に実現できる。
本実施形態では、集光像10の重心演算を実行して、集光像10の重心位置を集光像10の位置として算出する。これにより、集光像10の位置を、重心演算により自動的に取得できる。
本実施形態では、ビームエキスパンダ350のコリメートレンズ352が光軸方向に沿って移動可能に構成されている。これにより、レーザ光Lの発散角の調整を、コリメートレンズ352を光軸方向に沿って移動させることにより実現できる。
図21は、変形例に係る光渦パターン9を示す。図21(a)に示される光渦パターン9は、光渦分布の中心点と瞳面領域B(図17参照)の中心との距離dを、0.4Rとした場合のパターンである。図21(b)に示される光渦パターン9は、距離dを0.6Rとした場合のパターンである。図21(c)に示される光渦パターン9は、距離dを0.9Rとした場合のパターンである。図21(d)に示される光渦パターン9は、距離dを1.2Rとした場合のパターンである。Rは、上述したとおり、レンズ472の入射瞳面の半径である。図21(a)〜図21(d)に示される光渦パターン9によっても、レンズ472で第1及び第2集光点に集光され且つ各集光光が光渦を有するようにレーザ光Lを変調でき、第1及び第2集光像10a,10bを含む画像Gをスポット観察用カメラ473で撮像できる。
図22は、レーザ光Lのビーム曲率半径とずれ角との関係を示すグラフである。図22では、距離dが異なる光渦パターン9を用いたときの各結果を示している。図22(a)はシミュレーション結果を示し、図22(b)は実測結果を示す。ビーム曲率半径は、その値が大きいほどレーザ光Lの発散角は小さく(コリメートの程度は高く)なる。
図22に示されるように、ずれ角が小さくなるほど、ビーム曲率半径は大きくなり、平行光に近づくことが確認できる。ずれ角を0度に近づけるように調整することで、レーザ光Lが平行光となるようにコリメート調整されることが確認できる。また、光渦パターン9は、その距離dが大きいほど、ずれ角が大きくなる変調パターンであることが確認できる。
なお、本実施形態において、液晶層216に表示する変調パターンは、図17及び図21に示される光渦パターン9に限定されず、その他の光渦パターンであってもよい。図23(a)は、変形例に係る光渦パターン9Aを示す図である。図23(b)は、図23(a)の光渦パターン9Aを液晶層216に表示させた場合において、スポット観察用カメラ473で撮像された画像Gを示す図である。図24(a)は、変形例に係る光渦パターン9Bを示す図である。図24(b)は、図24(a)の光渦パターン9Bを液晶層216に表示させた場合において、スポット観察用カメラ473で撮像された画像Gを示す図である。
図23(a)に示されるように、光渦パターン9Aでは、複数の光渦分布が液晶層216の縦軸方向に並ぶように重ね合わされている。この場合、レーザ光Lが平行光のときには、図23(b)に示されるように、画像Gにおいて、Yc方向に並ぶ第1及び第2集光像10a,10bが基準位置として表示され、基準方向はYc方向となる。ずれ角は、第1及び第2集光像10a,10bを通る線分のYc方向に対する角度となる。
図24(a)に示されるように、光渦パターン9Bでは、複数の光渦分布が液晶層216の横軸方向に並ぶように重ね合わされて成るパターンと、複数の光渦分布が液晶層216の縦軸方向に並ぶように重ね合わされて成るパターンと、が更に重ね合わされている。この場合、レーザ光Lが平行光のときには、図24(b)に示されるように、画像Gにおいて、Zc方向回りの周方向に沿って4つ並び且つ対角線がXc方向(Yc方向)に対して45度傾く第1〜第4集光像10a〜10dが、基準位置として表示される。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
上記実施形態のレーザ加工装置100,200は、アブレーション等、他のレーザ加工を実施する装置であってもよい。上記実施形態のレーザ加工装置100,200は、加工対象物1の内部にレーザ光Lを集光させるレーザ加工に用いられる装置に限定されず、加工対象物1の表面1a,3又は裏面1bにレーザ光Lを集光させるレーザ加工に用いられる装置であってもよい。更に、本発明が適用されるレーザ光照射装置は、レーザ加工装置100,200に限定されず、レーザ光Lを対象物に照射するものであれば、種々のレーザ光照射装置であってもよい。上記実施形態では、切断予定ライン5を照射予定ラインとしたが、照射予定ラインは切断予定ライン5に限定されず、照射されるレーザ光Lを沿わせるラインであればよい。
上記実施形態では、レーザ光Lを変調する光学素子として反射型空間光変調器410を用いたが、これに限定されない。レンズ472で複数の集光点に集光し且つ複数の集光点に集光する各集光光が光渦を有するようにレーザ光Lを変調する光学素子であれば、その他の種々の光学素子を用いてもよい。
例えば光学素子は、位相分布により変調させる光学素子、及び、強度変調により変調させる光学素子の何れであってもよい。上記数式(1)で表される位相分布により変調させる光学素子として、固定パターンのらせん状位相プレートを用いてもよいし、一対のシリンドリカルレンズを用いてもよいし、加圧したファイバを用いてもよい。強度変調により変調させる光学素子として、回折格子を用いてもよいし、ゾーンプレートを用いてもよい。
図25は、変形例に係る光学素子を説明する概略図である。例えば図25に示されるように、光学素子は、光渦の光波と平行光との干渉縞により形成された回折格子であるフォーク型回折格子801を、同一面に位置するように並べた2重スリットマスク800であってもよい。各フォーク型回折格子801を通過するレーザ光Lそれぞれは、らせん状の波面Spを有することになる。
上記実施形態では、発散角確認装置600及び発散角調整装置700の双方をレーザ加工装置200に搭載したが、発散角確認装置600及び発散角調整装置700の何れかのみ搭載してもよい。例えば図26(a)に示すように、発散角確認装置600のみ搭載する場合、レーザ加工装置200は発散角制御部506(図16参照)を含まなくてもよい。つまり、上記ステップS5〜S8を実行しなくてもよい。さらに、発散角確認装置600は、モニタ510及びモニタ制御部505を備えていなくてもよく、この場合、制御部500において取得した画像Gを他の装置や要素に出力する部分が、出力部を構成する。例えば図26(b)に示すように、発散角調整装置700のみ搭載する場合、レーザ加工装置200はモニタ510及びモニタ制御部505(図16参照)を含まなくてもよい。つまり、上記ステップS4を実行しなくてもよい。
上記実施形態は、光軸方向に沿って移動可能なコリメートレンズ352を有するビームエキスパンダ350を発散角調整機構として備えているが、発散角調整機構は特に限定されるものではない。例えば発散角調整機構は、一対のレンズ422,423のうち少なくとも何れかを光軸方向に沿って移動可能な4fレンズユニット420であってもよい。この場合、一対のレンズ422,423のうち少なくとも何れかの位置が、ずれ角が0度となるように調整される。発散角調整機構は、レーザ光の発散角を調整する公知の機構であってもよい。
上記実施形態では、反射型空間光変調器410に入射するレーザ光Lが平行光のときにおける複数の集光像10の位置を基準位置としたが、これに限定されず、レーザ光Lの発散角が所定発散角のときにおける複数の集光像10の位置を基準位置としてもよい。この場合、ずれ角が0度となるように発散角調整機構を制御することにより、レーザ光Lの発散角を所定発散角へ調整することができる。
上記実施形態では、ずれ角が0度となるように発散角調整機構を制御したが、これに限定されず、例えば図22に示される関係(データテーブル等)に基づいて、レーザ光Lの発散角を所望値へ調整すべく、ずれ角が所定角(所定量)となるように発散角調整機構を制御してもよい。所定角は、ずれ角算出部506bに予め設定されて記憶されていてもよい。
上記実施形態は、反射型空間光変調器410を備えたが、空間光変調器は反射型のものに限定されず、透過型の空間光変調器を備えていてもよい。上記実施形態では、ダイクロイックミラー403に代えて、レーザ光Lをプロファイル取得用カメラ464側と集光レンズユニット430側とに分岐するビームスプリッタを用いてもよい。上記実施形態では、ダイクロイックミラー403に代えて、レーザ光Lの光路をプロファイル取得用カメラ464側と集光レンズユニット430側とで切り替える機構を用いてもよい。
上記実施形態では、画像Gにおける複数の集光像10の位置についてのずれ量を、Zc方向回りの回転方向におけるずれ角としているが、これに限定されず、種々のずれ量であってもよい。例えばずれ量は、基準位置に対して離間する距離であってもよいし、Xc方向及びYc方向の各座標における基準位置に対する変位量であってもよい。同様に、ずれ量に関する所定量は、所定角に限定されず、種々の所定量であってもよい。例えばずれ量に関する所定量は、所定距離であってもよいし、所定変位量であってもよい。