以下、添付図面を参照して、本願の開示する接合装置および接合システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.接合システムの構成>
まず、実施形態に係る接合システムの構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、実施形態にかかる接合システムの構成を示す模式平面図である。図2は、実施形態にかかる接合システムの構成を示す模式側面図である。図3は、第1基板および第2基板の模式側面図である。
なお、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、図1,2等を含む各図面では、説明に必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略する場合がある。
図1に示す本実施形態に係る接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合基板Tを形成する(図3参照)。
第1基板W1は、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、例えば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」、重合基板Tを「重合ウェハT」と記載する場合がある。また、以下では、図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1,C2,C3がそれぞれ載置される。例えば、カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウェハTを収容するカセットである。
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置板11に載置されたカセットC1〜C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送を行う。
なお、載置板11に載置されるカセットC1〜C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1,C2,C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数の処理ブロック、例えば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。例えば処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
第1処理ブロックG1には、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j,W2jを改質する。
なお、表面改質装置30では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスまたは窒素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオン又は窒素イオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、例えば純水によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。表面親水化装置40では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。
接合装置41は、親水化された上ウェハW1と下ウェハW2とを分子間力により接合する。かかる接合装置41の構成については、後述する。
第3処理ブロックG3には、図2に示すように、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのトランジション(TRS)装置50,51が下から順に2段に設けられる。
また、図1に示すように、第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、例えば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
また、図1に示すように、接合システム1は、制御装置70を備える。制御装置70は、接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置70は、例えばコンピュータであり、図示しない制御部および記憶部を備える。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、後述する制御を実現する。また、記憶部は、たとえば、RAM、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置70の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
<2.接合装置の構成>
次に、接合装置41の構成について図4および図5を参照して説明する。図4は、接合装置41の構成を示す模式平面図である。図5は、接合装置41の構成を示す模式側面図である。
図4に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器100を有する。処理容器100の搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口101が形成され、当該搬入出口101には開閉シャッタ102が設けられている。
処理容器100の内部は、内壁103によって、搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口101は、搬送領域T1における処理容器100の側面に形成される。また、内壁103にも、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口104が形成される。
搬送領域T1には、トランジション110、ウェハ搬送機構111、反転機構130および位置調節機構120が、例えば搬入出口101側からこの順番で並べて配置される。
トランジション110は、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを一時的に載置する。トランジション110は、例えば2段に形成され、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのいずれか2つを同時に載置することができる。
ウェハ搬送機構111は、図4および図5に示すように、たとえば鉛直方向(Z軸方向)、水平方向(Y軸方向、X軸方向)および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。ウェハ搬送機構111は、搬送領域T1内、又は搬送領域T1と処理領域T2との間で上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送することが可能である。
位置調節機構120は、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。具体的には、位置調節機構120は、上ウェハW1および下ウェハW2を保持して回転させる図示しない保持部を備えた基台121と、上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出する検出部122と、を有する。位置調節機構120は、基台121に保持された上ウェハW1および下ウェハW2を回転させながら検出部122を用いて上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出することにより、ノッチ部の位置を調節する。これにより、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きが調節される。
反転機構130は、上ウェハW1の表裏面を反転させる。具体的には、反転機構130は、上ウェハW1を保持する保持アーム131を有する。保持アーム131は、水平方向(X軸方向)に延伸する。また保持アーム131には、上ウェハW1を保持する保持部材132が例えば4箇所に設けられている。
保持アーム131は、例えばモータなどを備えた駆動部133に支持される。保持アーム131は、かかる駆動部133によって水平軸周りに回動自在である。また、保持アーム131は、駆動部133を中心に回動自在であると共に、水平方向(X軸方向)に移動自在である。駆動部133の下方には、例えばモータなどを備えた他の駆動部(図示せず)が設けられる。この他の駆動部によって、駆動部133は、鉛直方向に延伸する支持柱134に沿って鉛直方向に移動できる。
このように、保持部材132に保持された上ウェハW1は、駆動部133によって水平軸周りに回動できると共に鉛直方向及び水平方向に移動することができる。また、保持部材132に保持された上ウェハW1は、駆動部133を中心に回動して、位置調節機構120と後述する上チャック140との間を移動することができる。
処理領域T2には、上ウェハW1の上面(非接合面W1n)を上方から吸着保持する上チャック140と、下ウェハW2を載置して下ウェハW2の下面(非接合面W2n)を下方から吸着保持する下チャック141とが設けられる。下チャック141は、上チャック140の下方に設けられ、上チャック140と対向配置可能に構成される。
図5に示すように、上チャック140は、上チャック140の上方に設けられた上チャック保持部150に保持される。上チャック保持部150は、処理容器100の天井面に設けられる。上チャック140は、上チャック保持部150を介して処理容器100に固定される。
上チャック保持部150には、下チャック141に保持された下ウェハW2の上面(接合面W2j)を撮像する上部撮像部151が設けられている。上部撮像部151には、例えばCCDカメラが用いられる。
下チャック141は、下チャック141の下方に設けられた第1の下チャック移動部160に支持される。第1の下チャック移動部160は、後述するように下チャック141を水平方向(X軸方向)に移動させる。また、第1の下チャック移動部160は、下チャック141を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸回りに回転可能に構成される。
第1の下チャック移動部160には、上チャック140に保持された上ウェハW1の下面(接合面W1j)を撮像する下部撮像部161が設けられている(図5参照)。下部撮像部161には、例えばCCDカメラが用いられる。
第1の下チャック移動部160は、第1の下チャック移動部160の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール162、162に取り付けられている。第1の下チャック移動部160は、レール162に沿って移動自在に構成されている。
一対のレール162、162は、第2の下チャック移動部163に配設されている。第2の下チャック移動部163は、当該第2の下チャック移動部163の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール164、164に取り付けられている。そして、第2の下チャック移動部163は、レール164に沿って水平方向(Y軸方向)に移動自在に構成される。なお、一対のレール164、164は、処理容器100の底面に設けられた載置台165上に配設されている。
次に、上チャック140および下チャック141の構成について図6を参照して説明する。図6は、上チャック140および下チャック141の構成を示す模式側断面図である。
図6に示すように、上チャック140は、上ウェハW1と同径もしくは上ウェハW1より大きい径を有する本体部170を有する。
本体部170は、上チャック保持部150の支持部材180によって支持される。支持部材180は、平面視において少なくとも本体部170を覆うように設けられ、本体部170に対して例えばネジ止めによって固定されている。支持部材180は、処理容器100の天井面に設けられた複数の支持柱181(図5参照)に支持される。
支持部材180および本体部170の中心部には、支持部材180および本体部170を鉛直方向に貫通する貫通孔176が形成される。貫通孔176の位置は、上チャック140に吸着保持される上ウェハW1の中心部に対応している。かかる貫通孔176には、ストライカー190の押圧ピン191が挿通される。
ストライカー190は、支持部材180の上面に配置され、押圧ピン191と、アクチュエータ部192と、直動機構193とを備える。押圧ピン191は、鉛直方向に沿って延在する円柱状の部材であり、アクチュエータ部192によって支持される。
アクチュエータ部192は、たとえば電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気により一定方向(ここでは鉛直下方)に一定の圧力を発生させる。アクチュエータ部192は、電空レギュレータから供給される空気により、上ウェハW1の中心部と当接して当該上ウェハW1の中心部にかかる押圧荷重を制御することができる。また、アクチュエータ部192の先端部は、電空レギュレータからの空気によって、貫通孔176を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。
アクチュエータ部192は、直動機構193に支持される。直動機構193は、例えばモータを内蔵した駆動部によってアクチュエータ部192を鉛直方向に移動させる。
ストライカー190は、以上のように構成されており、直動機構193によってアクチュエータ部192の移動を制御し、アクチュエータ部192によって押圧ピン191による上ウェハW1の押圧荷重を制御する。
本体部170の下面には、上ウェハW1の裏面(図3に示す非接合面W1n)に接触する複数のピン170aが設けられている。
上チャック140は、これら複数のピン170aが設けられている領域のうちの一部の領域に、上ウェハW1を吸着する吸着領域を備える。本実施形態において、かかる吸着領域は、上ウェハW1の物性の異方性に応じて配置される。
ここで、上チャック140の吸着領域について図7〜図9を参照して説明する。図7および図8は、従来における接合領域の拡大の様子を示す図である。図9は、上チャック140の模式底面図である。
図7に示すように、上ウェハW1および下ウェハW2は、表面(接合面)と垂直な方向における結晶方向が[100]である単結晶シリコンウェハである。上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部Nは、上ウェハW1および下ウェハW2の[011]結晶方向の外縁に形成される。なお、上ウェハW1および下ウェハW2の直径は、たとえば300mmである。
上ウェハW1の中心部を押し下げて下ウェハW2の中心部に接触させると、上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部とが分子間力により接合されることによって両基板の中心部に接合領域Aが形成される。その後、接合領域Aが両基板の中心部から外周部に向かって拡大するボンディングウェーブが発生して、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j、W2j同士が全面で接合される。
ここで、本願発明者らは、上ウェハの外縁の全周を保持する保持部を用いて上ウェハを保持して上記の接合処理を行った場合に、接合領域Aが同心円状ではなく不均一に拡大することを発見した。
具体的には、図8に示すように、接合領域Aは、上ウェハW1の中心部から上ウェハW1の表面に対して平行な[0−11]結晶方向に向かう方向を基準とする90°周期の方向(図8に示す0°、90°、180°、270°の方向、以下「90°方向」と記載する)と比較し、上ウェハW1の中心部から上ウェハW1の表面に対して平行な[010]結晶方向に向かう方向を基準とする90°周期の方向(図8に示す45°、135°、225°、315°の方向、以下「45°方向」と記載する)に速く拡大する。この結果、当初円形状であった接合領域Aの形状は、拡大するにつれて45°方向を頂点とする四角形に近づいていくこととなる。
本願発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、その原因が、上ウェハW1および下ウェハW2のヤング率等の物性の異方性によるものであることを見出した。
たとえば、単結晶シリコンウェハのヤング率、ポアソン比、せん断弾性係数の値は、90°周期で変化する。具体的には、単結晶シリコンウェハのヤング率は、90°方向において最も高くなり、45°方向において最も低くなる。また、ポアソン比およびせん断弾性係数については、45°方向において最も高くなり、90°方向において最も低くなる。
このように、単結晶シリコンウェハはヤング率等の物性に異方性を有することから、上ウェハW1に加わるストレス・歪みの分布は、同心円状ではなく不均一な分布となる。そして、この不均一な分布が、接合領域Aを不均一に拡大させることにより、重合ウェハTの歪み(ディストーション)を悪化させていると考えられる。
そこで、本実施形態では、上ウェハW1の外周部の全周を保持するのではなく、上ウェハW1の外周部のうち、接合領域Aが最も速く拡大する45°方向の領域を上チャック140を用いて保持することとした。
具体的には、図9に示すように、上チャック140における本体部170の下面には、上ウェハW1を真空引きして吸着する複数の吸引部171〜175が設けられている。吸引部171〜175は、ピン170aと同じ高さを有し、上ウェハW1の裏面(非接合面W1n)に接触する。
第1吸引部171および第2吸引部172は、平面視において円弧形状の吸着領域を有しており、本体部170の外周部に対し、周方向に交互に並べて所定の間隔をあけて配置される。
第1吸引部171は、上ウェハW1における45°方向に合計4つ配置され、第2吸引部172は、上ウェハW1における90°方向に合計4つ配置される。具体的には、第1吸引部171は、円弧形状の吸着領域の中心部が上ウェハW1における45°方向と一致する位置に配置され、第2吸引部172は、円弧形状の吸着領域の中心部が上ウェハW1における90°方向と一致する位置に配置される。
4つの第1吸引部171は、第1吸引管171aを介して単一の第1真空ポンプ171bに接続される。また、4つの第2吸引部172は、第2吸引管172aを介して単一の第2真空ポンプ172bに接続される。第1真空ポンプ171bおよび第2真空ポンプ172bによる真空引きによって、第1吸引部171および第2吸引部172は、上ウェハW1を吸着する。なお、ここでは、理解を容易にするため、複数の第1吸引部171および第2吸引部172のうち、いずれか1つの第1吸引部171および第2吸引部172の配管構成のみを示している。
第3吸引部173および第4吸引部174は、平面視において円弧形状の吸着領域を有しており、第1吸引部171および第2吸引部172よりも本体部170の内周側において、周方向に交互に並べて所定の間隔をあけて配置される。
第3吸引部173は、第1吸引部171と同様、上ウェハW1における45°方向に合計4つ配置される。具体的には、第3吸引部173は、円弧形状の吸着領域の中心部が上ウェハW1における45°方向と一致する位置に配置される。また、第3吸引部173は、本体部170の中心と第1吸引部171の両端とを結ぶ2本の仮想線および第1吸引部171の外縁によって形成される扇形の領域内に配置される。
第4吸引部174は、第2吸引部172と同様、上ウェハW1における90°方向に合計4つ配置される。具体的には、第4吸引部174は、円弧形状の吸着領域の中心部が上ウェハW1における90°方向と一致する位置に配置される。また、第4吸引部174は、本体部170の中心と第2吸引部172の両端とを結ぶ2本の仮想線および第2吸引部172の外縁によって形成される扇形の領域内に配置される。
第1吸引部171および第2吸引部172の角度範囲θ1、すなわち、本体部170の中心と第1吸引部171(第2吸引部172)の両端とを結ぶ2本の仮想線の成す角度θ1は、38°以上であることが好ましい。θ1が38°未満だと、上ウェハW1を適切に保持することが困難となるためである。より好ましくは、θ1は、40°以上43°以下である。言い換えれば、第1吸引部171と第2吸引部172との間に形成される隙間(非吸着領域)の範囲が2°以上5°以下であることが、ボンディングウェーブの不均一さを効果的に緩和することができるという点で好ましい。
第3吸引部173および第4吸引部174の角度範囲θ2、すなわち、本体部170の中心と第3吸引部173(第4吸引部174)の両端とを結ぶ2本の仮想線の成す角度θ2は、第1吸引部171および第2吸引部172の角度範囲θ1よりも小さく設定される。たとえば、θ1が43°である場合に、θ2は41°に設定される。
4つの第3吸引部173は、第3吸引管173aを介して単一の第3真空ポンプ173bに接続される。また、4つの第4吸引部174は、第4吸引管174aを介して単一の第4真空ポンプ174bに接続される。第3真空ポンプ173bおよび第4真空ポンプ174bによる真空引きによって、第3吸引部173および第4吸引部174は、上ウェハW1を吸着する。なお、ここでは、理解を容易にするため、複数の第3吸引部173および第4吸引部174のうち、いずれか1つの第3吸引部173および第4吸引部174の配管構成のみを示している。
第5吸引部175は、第3吸引部173および第4吸引部174よりも本体部170の内周側に配置される。第5吸引部175は、平面視において円環状の吸着領域を有する。第5吸引部175は、第5吸引管175aを介して単一の第5真空ポンプ175bに接続される。第5真空ポンプ175bによる真空引きによって、第5吸引部175は、上ウェハW1を吸着する。
このように、上ウェハW1の中心部から上ウェハW1の表面に対して平行な[0−11]結晶方向に向かう方向を0°と規定したとき、複数の第1吸引部171および複数の第3吸引部173は45°の方向を基準に90°間隔で配置され、複数の第2吸引部172および複数の第4吸引部174は、0°の方向を基準に90°間隔で配置される。また、上チャック140は、第1〜第5吸引部171〜175ごとに、吸着力(吸着の有無を含む)や吸着タイミングを制御することができる。
次に、下チャック141の構成について図6、図10〜図12を参照して説明する。図10は、下チャック141の模式斜視図である。図11は、下チャック141の模式平面図である。図12は、凸部260の構成を示す模式斜視断面図である。
図6に示すように、下チャック141は、下ウェハW2と同径もしくは下ウェハW2より大きい径を有するパッド部200と、パッド部200の下部に設けられたベース部250とを有する。パッド部200の上面には、下ウェハW2の裏面(非接合面W2n)に接触する複数のピン200aが設けられている。
また、パッド部200の中心部には、パッド部200を鉛直方向に貫通する貫通孔200bが形成される。貫通孔200bの位置は、下チャック141に吸着保持される下ウェハW2の中心部に対応している。また、貫通孔200bの位置は、上チャック140に形成される貫通孔176の位置にも対応している。
貫通孔200bには、後述する凸部260の本体部261が挿通される。本体部261は、貫通孔200bからピン200aよりも高い位置まで突出し、下ウェハW2の中心部を他の部分よりも高い位置で支持する。本体部261は、ストライカー190の押圧ピン191と対向する位置に設けられる。
上述したように、上ウェハは、ストライカーによって反らされた状態で下ウェハと張り合わされる。このため、上ウェハにストレスがかかり、このストレスによって重合ウェハに歪みが生じることとなる。
近年では、下チャックの保持面全体を凸形状とし、下ウェハを反らせた状態で保持することで、重合ウェハに生じる歪みを低減する手法が提案されている。しかしながら、かかる従来技術では、ストライカーに起因する重合ウェハの中心部の局所的な歪みに対応することが困難であった。
そこで、本実施形態に係る接合装置41では、下チャック141のストライカー190と対向する位置に出っ張りを設けることとした。これにより、ストライカー190によって上ウェハW1の中心部に加わる局所的なストレスと同様のストレスを下ウェハW2に加えた状態で両ウェハW1,W2を貼り合わせることができるため、ストライカー190に起因する局所的な歪みを低減することができる。
凸部260の本体部261の上面の径は、ストライカー190の押圧ピン191の下面の径と同一である。したがって、上ウェハW1が押圧ピン191によって受ける局所的なストレスにより近いストレスを下ウェハW2に与えることができる。
図10に示すように、パッド部200は、第1リブ201と第2リブ202とを備える。第1リブ201および第2リブ202は、パッド部200の中心に対して内側から第1リブ201および第2リブ202の順に同心円状に配置され、ピン200aと同じ高さを有する。このうち第2リブ202は、パッド部200の外周部に配置され、下ウェハW2の外周部を支持する。
これら第1リブ201および第2リブ202により、パッド部200の上面は、下ウェハW2の中心部を含む領域を吸着する内側吸着領域210と、下ウェハW2の外周部を含む領域を吸着する外側吸着領域220とに区画される。
外側吸着領域220は、平面状である。言い換えれば、外側吸着領域220は、下ウェハW2を複数のピン200aにより平坦に吸着する。一方、内側吸着領域210は、上述したように、ストライカー190と対向する部分が凸部260によって突出している。内側吸着領域210の凸部260以外の部分は平面状である。
また、パッド部200は、第1リブ201から第2リブ202に向かって放射状に延びる複数の第3リブ203を備える。これら複数の第3リブ203により、外側吸着領域220は、周方向に交互に並ぶ複数の分割領域230,240に区画される。
複数の分割領域230,240のうち、第1分割領域230は、下ウェハW2の中心部から外周部へ向かう方向のうち、上ウェハW1と下ウェハW2との接合領域A(図7参照)が最も速く拡大する第1の方向に配置される。また、複数の分割領域230,240のうち、第2分割領域240は、複数の第1分割領域230と周方向に並べて配置され、下ウェハW2の中心部から外周部へ向かう方向のうち、接合領域Aが第1の方向と比較して遅く拡大する第2の方向に配置される。
具体的には、下ウェハW2の中心部から下ウェハW2の表面に対して平行な[0−11]結晶方向に向かう方向を0°と規定したとき、複数の第1分割領域230は、45°の方向を基準に90°間隔で配置され、複数の第2分割領域240は、0°の方向を基準に90°間隔で配置される。すなわち、複数の第1分割領域230は、上チャック140の第1吸引部171と同様に45°方向に配置され、複数の第2分割領域240は、上チャック140の第2吸引部172と同様に90°方向に配置される。
さらに、パッド部200は、第4リブ204を備える。第4リブ204は、第1リブ201と第2リブ202との間に、第1リブ201および第2リブ202と同心円状に配置される。かかる第4リブ204により、第1分割領域230は、第1外側分割領域231と、第1内側分割領域232とに区画され、第2分割領域240は、第2外側分割領域241と、第2内側分割領域242とに区画される。第1外側分割領域231と第1内側分割領域232とは吸着面積が同一である。同様に、第2外側分割領域241と第2内側分割領域242とは吸着面積が同一である。
図11に示すように、パッド部200の内側吸着領域210に対応する領域には、複数の第1吸引口210aが形成される。複数の第1吸引口210aは、凸部260を取り囲むように円周状に並べて配置される。また、ベース部250には、複数の第1吸引口210aに連通する吸引空間250aが形成されており、吸引空間250aは、第1吸引管211aを介して第1真空ポンプ211bに接続される。このように、凸部260の周囲に複数の第1吸引口210aを配置することにより、下ウェハW2の中心部を周方向に対して均等に吸着することができる。
また、パッド部200の第1外側分割領域231、第1内側分割領域232、第2外側分割領域241および第2内側分割領域242に対応する各領域には、それぞれ第2吸引口230a、第3吸引口230b、第4吸引口240aおよび第5吸引口240bが形成される。第2吸引口230a、第3吸引口230b、第4吸引口240aおよび第5吸引口240bは、たとえば、第1外側分割領域231、第1内側分割領域232、第2外側分割領域241および第2内側分割領域242の中心部に設けられる。
第2吸引口230a、第3吸引口230b、第4吸引口240aおよび第5吸引口240bは、それぞれ、第2吸引管231a、第3吸引管232a、第4吸引管241aおよび第5吸引管242aを介して第2真空ポンプ231b、第3真空ポンプ232b、第4真空ポンプ241bおよび第5真空ポンプ242bに接続される。
このように、下チャック141は、内側吸着領域210、第1外側分割領域231、第1内側分割領域232、第2外側分割領域241および第2内側分割領域242ごとに、吸着力(吸着の有無を含む)や吸着タイミングを制御することができる。
なお、図11では、理解を容易にするため、複数の第1外側分割領域231、第1内側分割領域232、第2外側分割領域241および第2内側分割領域242のうち、いずれか1つの第1外側分割領域231、第1内側分割領域232、第2外側分割領域241および第2内側分割領域242の配管構成のみを示している。
図12に示すように、凸部260は、内側吸着領域210に対して着脱可能に設けられる。具体的には、凸部260は、鉛直方向に沿って延在する円柱状の本体部261と、本体部261の基端に設けられた本体部261よりも大径のフランジ部262とを有する。また、パッド部200の内側吸着領域210には、貫通孔200bと、内側吸着領域210の下面に設けられ、貫通孔200bと連通する凹部200cとが形成される。凸部260の本体部261は、内側吸着領域210の下面側から貫通孔200bに挿通されて内側吸着領域210の上面側に突出し、凸部260のフランジ部262は、内側吸着領域210の凹部200cにはまり込んで凹部200cに当接する。凸部260は、ねじ等の固定部材263により内側吸着領域210に固定される。
また、内側吸着領域210の凹部200cと凸部260のフランジ部262との間には、本体部261の内側吸着領域210からの突出量を調整するシム部材265が配置される。
このように、凸部260を内側吸着領域210に対して着脱可能とし、かつ、シム部材265により本体部261の突出量を調整可能とすることで、たとえば、ストライカー190による上ウェハW1の押し下げ量の変更等に応じて、凸部260による下ウェハW2の押し上げ量を容易に変更することができる。
<3.接合システムの具体的動作>
次に、接合システム1の具体的な動作について図13〜図20を参照して説明する。図13は、接合システム1が実行する処理の一部を示すフローチャートである。図14は、本実施形態に係る接合処理において使用される上チャック140の吸引部を示す図である。図15は、本実施形態に係る接合処理において使用される下チャック141の吸着領域を示す図である。図16〜図20は、接合処理の動作説明図である。なお、図13に示す各種の処理は、制御装置70による制御に基づいて実行される。
まず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、上ウェハW1の接合面W1jが改質される(ステップS101)。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置30において改質された上ウェハW1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される。また、当該純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される(ステップS102)。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された上ウェハW1は、トランジション110を介してウェハ搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、上ウェハW1の水平方向の向きが調節される(ステップS103)。
その後、位置調節機構120から反転機構130の保持アーム131に上ウェハW1が受け渡される。続いて搬送領域T1において、保持アーム131を反転させることにより、上ウェハW1の表裏面が反転される(ステップS104)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jが下方に向けられる。
その後、反転機構130の保持アーム131が回動して上チャック140の下方に移動する。そして、反転機構130から上チャック140に上ウェハW1が受け渡される。上ウェハW1は、ノッチ部Nを予め決められた方向、すなわち、第2吸引部172および第4吸引部174が設けられる方向に向けた状態で、上チャック140にその非接合面W1nが吸着保持される(ステップS105)。
ステップS105において、上チャック140は、第1〜第5吸引部171〜175のうち、45°方向に配置された第1吸引部171、第3吸引部173と、第5吸引部175とを用いて上ウェハW1を吸着保持する(図14参照)。
上ウェハW1に上述したステップS101〜S105の処理が行われている間、下ウェハW2の処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが改質される(ステップS106)。なお、ステップS106における下ウェハW2の接合面W2jの改質は、上述したステップS101と同様である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが親水化されるとともに当該接合面W2jが洗浄される(ステップS107)。なお、ステップS107における下ウェハW2の接合面W2jの親水化および洗浄は、上述したステップS102と同様である。
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された下ウェハW2は、トランジション110を介してウェハ搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、下ウェハW2の水平方向の向きが調節される(ステップS108)。
その後、下ウェハW2は、ウェハ搬送機構111によって下チャック141に搬送され、下チャック141に吸着保持される(ステップS109)。下ウェハW2は、ノッチ部Nを予め決められた方向、すなわち、上ウェハW1のノッチ部Nと同じ方向であって、第1外側分割領域231おおび第1内側分割領域232が設けられる方向に向けた状態で、下チャック141にその非接合面W2nが吸着保持される。
ステップS109において、下チャック141は、内側吸着領域210、第1外側分割領域231、第1内側分割領域232、第2外側分割領域241および第2内側分割領域242のうち、45°方向に配置された第1外側分割領域231および第1内側分割領域232と、内側吸着領域210とを用いて下ウェハW2を吸着保持する(図15参照)。
次に、上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS110)。
次に、上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調節を行う(ステップS111)。具体的には、第1の下チャック移動部160が下チャック141を鉛直上方に移動させることによって、下ウェハW2を上ウェハW1に接近させる。これにより、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間隔は所定の距離、たとえば50μm〜200μmに調整される(図16参照)。
次に、図17に示すように、第5吸引部175による上ウェハW1の吸着保持を解除した後(ステップS112)、図18に示すように、ストライカー190の押圧ピン191を下降させることによって、上ウェハW1の中心部を押し下げる(ステップS113)。このように、ストライカー190により上ウェハW1を押し下げる直前まで、第5吸引部175を用いて上ウェハW1の中心部を吸着保持しておくことで、上ウェハW1の中心部の自重たわみ(たとえば1μm程度)を抑えることができる。これにより、ステップS112において上ウェハW1と下ウェハW2との間隔をたとえば30μm未満の狭ギャップに設定した場合に、上チャック140と下チャック141の平行度調整の困難性が高まることを防止することができる。
ストライカー190による押し下げによって、上ウェハW1の中心部が下ウェハW2の中心部に接触し、上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部とが所定の力で押圧されると、押圧された上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部との間で接合が開始する。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS101,S106において改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS102,S107において親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。このようにして、接合領域A(図7参照)が形成される。
本実施形態に係る接合装置41では、下チャック141のストライカー190と対向する位置に凸部260が設けられている。このため、ストライカー190によって上ウェハW1の中心部に加わる局所的なストレスと同様のストレスを下ウェハW2に加えた状態で両ウェハW1,W2が貼り合わされることとなる。これにより、ストライカー190に起因する重合ウェハTの局所的な歪みを低減することができる。
その後、上ウェハW1と下ウェハW2との間では、上ウェハW1および下ウェハW2の中心部から外周部に向けて接合領域Aが拡大していくボンディングウェーブが発生する。
本実施形態に係る接合装置41では、第1〜第4吸引部171〜174が上ウェハW1の異方性に合わせて配置されており、このうち、接合領域Aが最も速く拡大する45°方向に配置した第1吸引部171および第3吸引部173を用いて上ウェハW1を吸着保持することとした。言い換えれば、接合領域Aが最も遅く拡大する90°方向においては上ウェハW1を吸着保持しないこととした。
これにより、上ウェハW1の外縁の全周を吸着保持する場合と比較して、上ウェハW1に加わるストレス・歪みの分布の不均一さを緩和することができる。この結果、ボンディングウェーブの不均一さが緩和されて、接合領域Aが同心円状に近い状態で拡大するようになる。これにより、本実施形態に係る接合装置41は、重合ウェハTの歪み(ディストーション)を低減することができる。
なお、本願発明者らは、上ウェハの外縁の全周を保持した場合と、90°方向のみを保持した場合と、45°方向のみを保持した場合の各々について、重合ウェハの応力分布および変位量の解析を行い、45°方向のみを保持した場合の重合ウェハの応力分布および変位量が最も均一であることを確認している。
また、本実施形態では、下チャック141についても、下ウェハW2の全面ではなく、上チャック140に合わせて45°方向のみを吸着保持することとした。すなわち、第1外側分割領域231、第1内側分割領域232、第2外側分割領域241および第2内側分割領域242のうち、45°方向に配置された第1外側分割領域231および第1内側分割領域232を用いて下ウェハW2を吸着保持することとした。
これにより、上ウェハW1と下ウェハW2のストレス状態を揃えることができるため、重合ウェハTの歪み(ディストーション)をさらに低減することができる。なお、下チャック141については、必ずしも45°方向のみの保持とすることを要さず、下ウェハW2の全面を吸着保持してもよい。
その後、図19に示すように、押圧ピン191によって上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部を押圧した状態で、第3吸引部173による上ウェハW1の吸着保持を解除する(ステップS114)。そして、その後、第1吸引部171による上ウェハW1の吸着保持を解除する(ステップS115)。これにより、図20に示すように、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2が接合される。
その後、押圧ピン191を上チャック140まで上昇させ、下チャック141による下ウェハW2の吸着保持を解除する。その後、重合ウェハTは、搬送装置61によってトランジション装置51に搬送され、その後、搬入出ステーション2の搬送装置22によってカセットC3に搬送される。こうして、一連の接合処理が終了する。
上述してきたように、本実施形態に係る接合装置41は、上チャック140(第1保持部の一例)と、下チャック141(第2保持部の一例)と、ストライカー190とを備える。上チャック140は、上ウェハW1(第1基板の一例)を上方から吸着保持する。下チャック141は、上チャック140の下方に配置され、下ウェハW2(第2基板の一例)を下方から吸着保持する。ストライカー190は、上ウェハW1の中心部を上方から押圧して下ウェハW2に接触させる。また、上チャック140は、上ウェハW1の外周部の一部の領域を吸着保持するものであって、上ウェハW1の中心部から外周部へ向かう方向のうち、上ウェハW1と下ウェハW2との接合領域Aが最も速く拡大する方向と交わる領域を吸着保持する。
これにより、ボンディングウェーブの不均一さが緩和されて接合領域Aが同心円状に近い形状で拡大するようになるため、重合ウェハTの歪みを低減することができる。
また、本実施形態に係る接合装置41は、上チャック140(第1保持部の一例)と、下チャック141(第2保持部の一例)と、ストライカー190とを備える。上チャック140は、上ウェハW1(第1基板の一例)を上方から吸着保持する。下チャック141(第2保持部の一例)は、上チャック140の下方に配置され、下ウェハW2を下方から吸着保持する。ストライカー190は、上ウェハW1の中心部を上方から押圧して下ウェハW2に接触させる。また、下チャック141は、下ウェハW2の中心部を含む領域を吸着する内側吸着領域210と、内側吸着領域210の外側において内側吸着領域210と同心円状に配置され、下ウェハW2の外周部を含む領域を吸着する外側吸着領域220とを備える。また、内側吸着領域210は、少なくともストライカー190と対向する部分が突出した形状を有し、外側吸着領域220は、平面状である。
したがって、本実施形態に係る接合装置41によれば、ストライカー190に起因する局所的な歪みを低減することができる。
<4.変形例>
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。図21は、変形例に係る上チャックの模式底面図である。また、図22は、変形例に係る下チャックの模式断面図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上述した実施形態では、接合処理において、上チャック140の第1吸引部171および第3吸引部173のみを用いて上ウェハW1の45°方向を吸着保持することとした。言い換えれば、上ウェハW1の90°方向を吸着保持する第2吸引部172および第4吸引部174を使用しないこととした。しかし、上ウェハW1の90°方向の領域に加わるストレスが45°方向の領域に加わるストレスと比較して相対的に少なくなる保持の仕方であれば、上ウェハW1の45°方向と90°方向の両方を吸着保持してもよい。
この場合、たとえば、上ウェハW1の90°方向の領域を45°方向の領域よりも弱い力で吸着保持してもよい。すなわち、上チャック140は、第1吸引部171および第3吸引部173を用いて上ウェハW1の45°方向の領域を第1の吸着力で保持し、第2吸引部172および第4吸引部174を用いて上ウェハW1の90°方向の領域を第1の吸着力よりも弱い第2の吸着力で保持することとしてもよい。吸着力の調整は、たとえば、各真空ポンプの前段に圧力調整器を設け、制御装置70がかかる圧力調整器を制御することにより実現可能である。
また、上チャック140は、第1〜第4吸引部171〜174を用いて上ウェハW1を吸着保持した状態でストライカー190を用いて上ウェハW1の中心部を押し下げた後、第3吸引部173による吸着を解除するタイミングよりも早いタイミングで、第4吸引部174による吸着を解除することとしてもよい。また、上チャック140は、第1吸引部171による吸着を解除するタイミングよりも早いタイミングで、第2吸引部172による吸着を解除することとしてもよい。
このように、上ウェハW1の45°方向に対応する第1吸引部171および第3吸引部173と、90°方向に対応する第2吸引部172および第4吸引部174の両方を上チャック140に設け、各々独立に制御可能に構成することで、45°方向および90°方向におけるボンディングウェーブの速度をより精密に調節することができる。したがって、45°方向に対応する第1吸引部171および第3吸引部173のみを用いる場合と比較して、重合ウェハTの歪みをより低減することができる。
なお、上述した実施形態では、第3吸引部173および第4吸引部174をそれぞれ独立に制御可能に構成したが、第3吸引部173および第4吸引部174は、必ずしも独立に制御可能に構成されることを要しない。すなわち、第3吸引部173および第4吸引部174は、単一の真空ポンプに接続されてもよい。
また、上述した実施形態では、上チャック140が第1〜第5吸引部171〜175を備えることとしたが、上チャック140は、少なくとも第1吸引部171を備えていればよく、他の吸引部172〜175は必ずしも備えることを要しない。
たとえば、図21に示すように、上チャック140Aは、第1吸引部171および第3吸引部173のみを備える構成であってもよい。すなわち、第2吸引部172、第4吸引部174および第5吸引部175を備えない構成であってもよい。また、上チャックは、第1吸引部171、第2吸引部172および第5吸引部175のみを備える構成であってもよいし、第1吸引部171および第2吸引部172のみを備える構成であってもよいし、第1吸引部171および第5吸引部175のみを備える構成であってもよい。
また、上述した実施形態では、上ウェハW1および下ウェハW2が、単結晶シリコンウェハである場合について説明したが、基板の種類は単結晶シリコンウェハに限定されない。すなわち、上チャックおよび下チャックの吸着領域の配置は、45°方向および90°方向に限定されず、保持する基板の物性の異方性に合わせた配置とすればよい。
また、上述した実施形態では、下チャック141が、着脱可能な凸部260を備える場合の例について説明したが、凸部260は必ずしも着脱可能であることを要しない。たとえば、凸部260は、パッド部200と一体的に形成された突起であってもよい。
また、内側吸着領域210は、上方に突出していない平坦な状態と、内側吸着領域210の中心部を頂点として上方に突出した凸状態との間で変形可能に構成されてもよい。
たとえば、図22に示すように、下チャック141Aは、内側吸着領域210Aと、外側吸着領域220Aとを備える。内側吸着領域210Aは、変形ステージ211と、固定リング212とを備える。変形ステージ211は、平面視において略円状を有するように、かつ、変形していない非変形状態においては下ウェハW2を保持する表面側が平板状となるように形成される。
変形ステージ211の周縁部は、略環状に形成された固定リング212によって、ベース部250Aに対し固定される。ベース部250Aは、第1の下チャック移動部160(図4参照)に対し固定される。
変形ステージ211は、凸変形が可能に設けられている。ここに言う「凸変形」とは、変形ステージ211の中央部が周縁部よりも高い位置へ変位するように変形することを指し、図22に示すように、変形ステージ211の周縁部から中央部にかけて膨らんで、変形ステージ211が略球面状の一部となる場合を含むものとする。
変形ステージ211を凸変形させる構造については限定されるものではなく、たとえばエア圧を利用するものであってもよいし、ピエゾアクチュエータ等を利用するものであってもよい。
たとえば、ピエゾアクチュエータを利用する場合、ベース部250Aの内部に複数のピエゾアクチュエータが設けられる。複数のピエゾアクチュエータは、たとえば、変形ステージ211の中心部に対応する位置に1つ、変形ステージ211の周縁部付近の同一円上の等間隔位置に複数それぞれ配置される。
各ピエゾアクチュエータは、可動部であるトップピースが鉛直上向きとなるように配置される。また、各ピエゾアクチュエータは、内部に積層されたピエゾ素子を有しており、それぞれに接続された図示略の電圧発生器からの電圧の変化に応じて各トップピースを昇降させる。変形ステージ211は、かかる各トップピースの動きに応じて変形する。
このように、ピエゾアクチュエータを用いることによって、変形ステージ211の変形構造を構成することができる。なお、入力されたエネルギーを鉛直方向への物理運動に変換可能なアクチュエータであれば、ピエゾアクチュエータに限定されないことは言うまでもない。
また、上述した実施形態では、下チャック141の第1分割領域230が、第1外側分割領域231および第1内側分割領域232に区分けされ、第2分割領域240が、第2外側分割領域241および第2内側分割領域242に区分けされることとした。しかし、第1分割領域230および第2分割領域240は、必ずしも区分けされることを要しない。また、上述した実施形態では、外側吸着領域220が、第1分割領域230および第2分割領域240に区分けされることとしたが、外側吸着領域220は、必ずしも区分けされることを要しない。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。