JP6852206B2 - 磁気テープおよび磁気テープ装置 - Google Patents
磁気テープおよび磁気テープ装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6852206B2 JP6852206B2 JP2020040682A JP2020040682A JP6852206B2 JP 6852206 B2 JP6852206 B2 JP 6852206B2 JP 2020040682 A JP2020040682 A JP 2020040682A JP 2020040682 A JP2020040682 A JP 2020040682A JP 6852206 B2 JP6852206 B2 JP 6852206B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- magnetic
- group
- magnetic layer
- servo
- magnetic tape
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Magnetic Record Carriers (AREA)
- Moving Of The Head To Find And Align With The Track (AREA)
- Manufacturing Of Magnetic Record Carriers (AREA)
Description
まずサーボヘッドにより、磁性層に形成されているサーボパターンを読み取る(即ち、サーボ信号を再生する)。サーボパターンを読み取ることにより得られた値(詳細は後述する。)に応じて、磁気テープの幅方向における磁気ヘッドの位置をコントロールする。これにより、磁気信号(情報)の記録および/または再生のために磁気テープ装置内で磁気テープを走行させる際、磁気テープの位置が磁気ヘッドに対して幅方向に変動しても、磁気ヘッドがデータトラックに追従する精度を高めることができる。こうして、磁気テープに正確に情報を記録すること、および/または、磁気テープに記録されている情報を正確に再生すること、が可能となる。
非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気テープであって、
磁気テープ総厚は5.30μm以下であり、
磁性層はタイミングベースサーボパターンを有し、
磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRa(以下、「磁性層表面Ra」ともいう。)は、1.8nm以下であり、
上記強磁性粉末は強磁性六方晶フェライト粉末であり、磁性層は研磨剤を含み、かつ
走査透過型電子顕微鏡を用いて行われる断面観察によって求められる磁性層の表面に対する上記強磁性六方晶フェライト粉末の傾きcosθ(以下、単に「cosθ」ともいう。)は、0.85以上1.00以下である磁気テープ、
に関する。
AFM(Veeco社製Nanoscope4)により磁気テープの磁性層表面の面積40μm×40μmの領域を測定する。スキャン速度(探針移動速度)は40μm/秒、分解能は512pixel×512pixelとする。
本発明の一態様は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、磁気テープ総厚は5.30μm以下であり、磁性層はタイミングベースサーボパターンを有し、磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRa(磁性層表面Ra)は1.8nm以下であり、上記強磁性粉末は強磁性六方晶フェライト粉末であり、磁性層は研磨剤を含み、かつ走査透過型電子顕微鏡を用いて行われる断面観察によって求められる磁性層の表面に対する上記強磁性六方晶フェライト粉末の傾きcosθは0.85以上1.00以下である磁気テープに関する。
以下、上記磁気テープについて、更に詳細に説明する。以下の記載には、本発明者らの推察が含まれる。かかる推察によって本発明は限定されるものではない。また、以下では、図面に基づき例示的に説明することがある。ただし、例示される態様に本発明は限定されるものではない。
上記磁気テープの磁性層表面において測定される中心線平均表面粗さRa(磁性層表面Ra)は、1.8nm以下である。磁性層表面Raが1.8nm以下であり、かつ総厚が5.30μm以下である磁気テープは、何ら対策を施さなければ、タイミングベースサーボシステムにおいて、サーボ信号再生時に信号欠陥の発生頻度が増加してしまう。これに対し、磁性層に強磁性六方晶フェライト粉末および研磨剤を含み、かつcosθが0.85以上1.00以下である上記磁気テープは、磁性層表面Raが1.8nm以下であり、かつ総厚が5.30μm以下であるにもかかわらず、サーボ信号再生時に信号欠陥の発生を抑制することができる。この点に関する本発明者らの推察は、後述する。また、磁性層表面Raが1.8nm以下である上記磁気テープは、優れた電磁変換特性を示すことができる。電磁変換特性の更なる向上の観点からは、磁性層表面Raは、1.7nm以下であることが好ましく、1.6nm以下であることが更に好ましい。また、磁性層表面Raは、例えば1.2nm以上または1.3nm以上であることができる。ただし電磁変換特性向上の観点からは磁性層表面Raが低いほど好ましいため、上記例示した値を下回ってもよい。
上記磁気テープは、磁性層にタイミングベースサーボパターンを有する。タイミングベースサーボパターンとは、先に説明したサーボパターンである。例えば、磁気テープ装置の記録方式として広く用いられているリニア記録方式に適用される磁気テープには、通常、磁性層に、サーボパターンが形成された領域(「サーボバンド」と呼ばれる)が磁気テープの長手方向に沿って複数存在する。2本のサーボバンドに挟まれた領域は、データバンドと呼ばれる。磁気信号(情報)の記録はデータバンド上で行われ、各データバンドには複数のデータトラックが長手方向に沿って形成される。
これに対し本発明者らの鋭意検討の結果、サーボ信号再生時の信号欠陥の発生は、cosθを0.85以上1.00以下とすることにより抑制できることが、明らかとなった。この点に関する本発明者らの推察は、後述する。
上記磁気テープにおいて、走査透過型電子顕微鏡を用いて行われる断面観察によって求められる磁性層の表面に対する強磁性六方晶フェライト粉末の傾きcosθは、0.85以上1.00以下である。cosθは、より好ましくは0.89以上であり、更に好ましくは0.90以上であり、一層好ましくは0.92以上であり、より一層好ましくは0.95以上である。一方、cosθは、磁性層の表面に対して、後述のアスペクト比および長軸方向の長さを有する六方晶フェライト粒子がいずれも平行に存在している場合に最大値の1.00となる。本発明者らの検討によれば、cosθの値が大きくなるほど、タイミングベースサーボシステムにおいてサーボ信号再生時に信号欠陥の発生頻度が少なくなる傾向が見られた。即ち、総厚が5.30μm以下であり、かつ磁性層表面Raが1.8nm以下である磁気テープにおいて、タイミングベースサーボシステムにおけるサーボ信号再生時の信号欠陥の発生頻度をより低減する観点からは、cosθの値は大きいほど好ましい。したがって、上記磁気テープにおいて、cosθの上限は、1.00以下である。なおcosθは、例えば0.99以下であってもよい。ただし、上述の通り、cosθの値は大きいほど好ましい傾向があるため、cosθは0.99を超えてもよい。
cosθとは、走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope;以下、「STEM」とも記載する。)を用いて行われる断面観察によって求められる。本発明および本明細書におけるcosθとは、以下の方法により測定し算出される値とする。
(2)作製した断面観察用試料をSTEM観察し、STEM像を撮像する。STEM像は、同一の断面観察用試料において、撮像する範囲が重複しないように選択する点以外は無作為に選択した位置において撮像し、合計10画像得る。上記STEM像は、加速電圧300kVおよび撮像倍率450000倍で撮像されるSTEM−HAADF(High−Angle Annular Dark Field)像であり、1画像に、磁性層の厚み方向の全領域が含まれるように撮像する。なお磁性層の厚み方向の全領域とは、断面観察用試料において観察される磁性層表面から磁性層と隣接する層または非磁性支持体との界面までの領域である。上記の隣接する層とは、cosθを求める対象の磁気テープが磁性層と非磁性支持体との間に後述する非磁性層を有する場合には非磁性層である。一方、cosθを求める対象の磁気テープが非磁性支持体上に直接磁性層を有する場合には、上記界面とは磁性層と非磁性支持体との界面である。
(3)こうして得られた各STEM像において、磁性層表面を表す線分の両端を結ぶ直線を、基準線として定める。上記の線分の両端とは、例えば、STEM像を、断面観察用試料の磁性層側が画像の上方に位置し非磁性支持体側が下方に位置するように撮像した場合には、STEM像の画像(通常、形状は長方形または正方形)の左辺と上記線分との交点とSTEM像の右辺と上記線分との交点とを結ぶ直線である。
(4)上記STEM像において観察される六方晶フェライト粒子の中で、アスペクト比が.1.5〜6.0の範囲であり、かつ、長軸方向の長さが10nm以上である六方晶フェライト粒子(一次粒子)の長軸方向と上記基準線とがなす角度θを測定し、測定された角度θについて、cosθを、単位円に基づくcosθとして算出する。かかるcosθの算出を、各STEM像において、上記アスペクト比および長軸方向の長さを有する六方晶フェライト粒子の中から無作為に抽出した30個の粒子について行う。
(5)以上の測定および算出を、10画像それぞれにおいて行い、各画像の30個の六方晶フェライト粒子について、即ち10画像の合計で300個の六方晶フェライト粒子について求められたcosθの値を算術平均する。こうして求められる算術平均を、走査透過型電子顕微鏡を用いて行われる断面観察によって求められる磁性層表面に対する強磁性六方晶フェライト粉末の傾きcosθとする。
「長軸方向」とは、STEM像において観察される1個の六方晶フェライト粒子の像の中で、最も距離が離れている端部のうち、基準線との距離が近い方の端部から遠い方の端部を結んだときの方向を意味する。一方の端部と他方の端部を結んだ線分が基準線に対して平行である場合には、基準線と平行な方向が長軸方向となる。
「長軸方向の長さ」とは、STEM像において観察される1個の六方晶フェライト粒子の像の中で、最も距離が離れている端部を結んで作成される線分の長さを意味する。一方、「短軸方向の長さ」とは、上記粒子の像の外縁と上記長軸方向に対する垂線との2つの交点を結んだ線分の中で、最も長い線分の長さを意味する。
また、基準線と上記粒子の長軸方向の傾きとがなす角度θとは、長軸方向が基準線に対して平行な角度を0°とし、0°以上90°以下の範囲で定めるものとする。以下に、角度θについて、図面に基づき更に説明する。
研磨剤は、磁性層表面に、サーボヘッドに付着した異物(以下、「付着物」と記載する。)を除去する機能(以下、「磨耗性」と記載する。)をもたらすことができる。磁性層表面が磨耗性を発揮することにより、サーボヘッドが磁性層上を走行する際に磁性層表面の一部が削れること等により発生してサーボヘッドに付着した付着物を除去することができる。しかし、磁性層表面が磨耗性を十分に発揮することができないと、サーボヘッドに付着物が付着した状態でサーボヘッドが磁性層上を走行し、この付着物の影響によって信号欠陥が発生すると、本発明者らは推察している。この磁性層表面の磨耗性の低下は、磁性層の表面近傍に存在する研磨剤がサーボヘッドとの接触により磁性層内部に押し込まれることに起因して発生すると、本発明者らは考えている。
これに対し、磁性層の表面近傍に存在する研磨剤がサーボヘッドとの接触により磁性層内部に押し込まれることは、上記アスペクト比および上記長軸方向の長さを満たす六方晶フェライト粒子が研磨剤を下支えすることによって抑制することができると考えられる。これにより、磁性層表面の磨耗性の低下を抑制することができ、その結果、サーボ信号再生時にサーボヘッドに付着した付着物の影響によって信号欠陥が発生することを抑制できるのではないかと、本発明者らは推察している。ただし推察に過ぎない。
なお、磁性層における強磁性六方晶フェライト粉末の存在状態(配向状態)の指標としては、角型比が知られている。しかし、本発明者らの検討によれば、角型比の制御とサーボ信号再生時の信号欠陥の発生頻度との間には、良好な相関関係は見られなかった。角型比とは、飽和磁化に対する残留磁化の比を表す値であって、強磁性六方晶フェライト粉末に含まれる粒子の形状およびサイズに関わらず、全ての粒子を対象として測定される。これに対し、cosθとは、上記範囲のアスペクト比および長軸方向の長さを有する六方晶フェライト粒子を選択して測定される値である。このような違いによって、cosθによれば、サーボ信号再生時の信号欠陥の発生頻度との間に良好な相関関係が見られるのではないかと本発明者らは考えている。ただし以上は推察に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
上記磁気テープは、非磁性支持体上に、磁性層形成用組成物を塗布する工程を経て作製することができる。そして、cosθの調整方法としては、磁性層形成用組成物における強磁性六方晶フェライト粉末の分散状態を制御することが挙げられる。この点に関し本発明者らは、強磁性六方晶フェライト粉末の磁性層形成用組成物における分散性(以下、単に「強磁性六方晶フェライト粉末の分散性」または「分散性」とも記載する。)を高めるほど、この磁性層形成用組成物を用いて形成される磁性層において、上記範囲のアスペクト比および長軸方向の長さを有する六方晶フェライト粒子が、磁性層表面に対して、より平行に近い状態に配向し易くなると考えている。分散性を高めるための手段としては、以下の方法(1)および(2)のいずれか一方または両方が挙げられる。
(1)分散条件の調整
(2)分散剤の利用
また、分散性を高めるための手段としては、強磁性六方晶フェライト粉末と研磨剤を別分散させることも挙げられる。別分散とは、より詳しくは、強磁性六方晶フェライト粉末と、結合剤と、溶媒と、を含む磁性液(ただし、研磨剤を実質的に含まない)を、研磨剤および溶媒を含む研磨剤液と混合する工程を経て磁性層形成用組成物を調製する方法である。このように研磨剤と強磁性六方晶フェライト粉末とを別分散した後に混合することによって、磁性層形成用組成物における強磁性六方晶フェライト粉末の分散性を高めることができる。上記の「研磨剤を実質的に含まない」とは、上記磁性液の構成成分として添加しないことを意味するものであって、意図せず混入した不純物として微量の研磨剤が存在することは許容されるものとする。また、上記方法(1)および(2)のいずれか一方または両方を、上記の別分散と組み合わせることも好ましい。この場合、磁性液における強磁性六方晶フェライト粉末の分散状態を制御することにより、磁性液を研磨剤液と混合する工程を経て得られる磁性層形成用組成物における強磁性六方晶フェライト粉末の分散状態を制御することができる。
磁性層形成用組成物、好ましくは磁性液の分散処理は、公知の分散方法を用い、その分散条件を調整することにより行うことができる。分散処理における分散条件としては、例えば、分散機の種類、分散機に用いる分散メディアの種類、分散機内の滞留時間(以下、「分散滞留時間」とも言う。)等が挙げられる。
分散機としては、ボールミル、サンドミル、ホモミキサー等のせん断力を利用した各種公知の分散機を使用することができる。2つ以上の分散機を連結して2段階以上の分散処理を行ってもよく、異なる分散機を併用してもよい。分散機の先端周速は5〜20m/秒が好ましく、7〜15m/秒であることがより好ましい。
分散メディアとしては、セラミックビーズ、ガラスビーズ等が挙げられ、ジルコニアビーズが好ましい。二種以上のビーズを組み合わせて使用してもよい。分散メディアの粒径は、例えば0.03〜1mmであり、0.05〜0.5mmであることが好ましい。なお、上述のように分散機を連結して2段階以上の分散処理を行う場合は、各段階で異なる粒径の分散メディアを用いてもよい。段階を経るごとに、より小さな粒径の分散メディアを用いることが好ましい。分散メディアの充填率は、体積基準で、例えば30〜80%、好ましくは50〜80%とすることができる。
分散滞留時間は、分散機の先端周速および分散メディアの充填率等を考慮し適宜設定すればよく、例えば15〜45時間、好ましくは20〜40時間とすることができる。なお、上述のように分散機を連結して2段階以上の分散処理を行う場合は、各段階の分散滞留時間の合計が上記範囲となることが好ましい。このような分散処理を行うことで、強磁性六方晶フェライト粉末の分散性を高め、cosθを0.85以上1.00以下に調整することができる。
磁性層形成用組成物の調製時、好ましくは磁性液の調製時に分散剤を用いることによって、強磁性六方晶フェライト粉末の分散性を高めることもできる。ここで分散剤とは、この剤が存在しない状態と比べて、磁性層形成用組成物および/または磁性液における強磁性六方晶フェライト粉末の分散性を高めることができる成分をいう。磁性層形成用組成物および/または磁性液に含有させる分散剤の種類および量を変更することによっても、強磁性六方晶フェライト粉末の分散状態を制御することができる。上記分散剤としては、磁性層の耐久性を高める観点から、強磁性六方晶フェライト粉末を構成する六方晶フェライト粒子の凝集を防ぎ、かつ、磁性層に適度な可塑性を付与するものを用いることも好ましい。
一態様では、吸着部は、六方晶フェライト粒子表面への吸着点となる極性のある官能基(極性基)であることができる。具体例としては、カルボキシ基(−COOH)およびその塩(−COO-M+)、スルホン酸基(−SO3H)およびその塩(−SO3 -M+)、硫酸基(−OSO3H)およびその塩(−OSO3 -M+)、リン酸基(−P=O(OH)2)およびその塩(−P=O(O-M+)2)、アミノ基(−NR2)、−N+R3、エポキシ基、チオール基(−SH)、ならびにシアノ基(−CN)(ここで、M+はアルカリ金属イオン等のカチオン、Rは水素原子または炭化水素基を表す)等から選ばれる少なくとも1つの極性基を挙げることができる。なお、「カルボキシ(塩)基」とは、カルボキシ基およびその塩(カルボキシ塩)の一方または両方を意味するものとする。カルボキシ塩とは、上記の通り、カルボキシ基(−COOH)の塩の形態である。
また、吸着部の一態様としては、ポリアルキレンイミン鎖を挙げることもできる。
なお、一般式Aで表される部分構造と吸着部により形成される結合の種類は、特に制限はない。かかる結合は、共有結合、配位結合およびイオン結合からなる群から選択されることが好ましく、同一分子内に異なる種類の結合を有していてもよい。上記吸着部を介して六方晶フェライト粒子に対して効率的に吸着することにより、一般式Aで表される部分構造によりもたらされる立体障害に基づく六方晶フェライト粒子の凝集抑制効果を更に高めることができると考えられる。
LAが表す二価の連結基としては、好ましくは後述する一般式1中のL、上記式2−A中のL1または式2−B中のL2で表される部分が挙げられる。
一般式1は、以下の通りである。
一般式1で表される化合物の重量平均分子量は、上述のように好ましくは1,000以上80,000以下であり、1,000以上20,000以下であることがより好ましい。一般式1で表される化合物の重量平均分子量は、20,000未満であることが更に好ましく、12,000以下であることが一層好ましく、10,000以下であることがより一層好ましい。また、一般式1で表される化合物の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上であり、より好ましくは2,000以上である。なお一般式1で表される化合物について後述の実施例に示す重量平均分子量は、GPCを用いて下記測定条件下で測定された値を標準ポリスチレン換算して求めた値である。また、二種以上の構造異性体の混合物について重量平均分子量とは、この混合物に含まれる二種以上の構造異性体の重量平均分子量をいうものとする。
GPC装置:HLC−8220(東ソー社製)
ガードカラム:TSKguardcolumn Super HZM−H
カラム:TSKgel Super HZ 2000、TSKgel Super HZ 4000、TSKgel Super HZ−M(東ソー社製、4.6mm(内径)×15.0cm、三種カラムを直列連結)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、安定剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)含有
溶離液流速:0.35mL/分
カラム温度:40℃
インレット温度:40℃
屈折率(RI;Refractive Index)測定温度:40℃
サンプル濃度:0.3質量%
サンプル注入量:10μL
以上説明した一般式1で表される化合物は、公知の方法で合成することができる。合成方法の一例としては、例えば、カルボン酸無水物と、下記一般式2で表される化合物とを開環付加反応等の反応に付す方法を挙げることができる。一般式2中、R、X、Lおよびmは、それぞれ一般式1と同義である。Aは、水素原子、アルカリ金属原子または四級アンモニウム塩基を表し、好ましくは水素原子である。
ポリアルキレンイミン誘導体は、下記式2−Aで表されるポリエステル鎖および下記式2−Bで表されるポリエステル鎖からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリエステル鎖と、数平均分子量が300〜3,000の範囲のポリアルキレンイミン鎖と、を含む化合物である。この化合物において、ポリアルキレンイミン鎖の占める割合は、好ましくは5.0質量%未満である。
ポリエステル鎖の構造
ポリアルキレンイミン誘導体は、後述するポリアルキレンイミン鎖とともに、下記式2−Aで表されるポリエステル鎖および下記式2−Bで表されるポリエステル鎖からなる群から選択される少なくとも1つのポリエステル鎖を含む。ポリエステル鎖は、一態様では、後述する式Aで表されるアルキレンイミン鎖と、式A中の*1において、式Aに含まれる窒素原子Nとカルボニル結合−(C=O)−により結合し、−N−(C=O)−を形成することができる。また、他の一態様では、後述する式Bで表されるアルキレンイミン鎖とポリエステル鎖とが、式B中の窒素カチオンN+とポリエステル鎖が有するアニオン性基により塩架橋基を形成することができる。塩架橋基としては、ポリエステル鎖に含まれる酸素アニオンO-と式B中のN+とにより形成されるものを挙げることができる。
R10で表されるアルキル基については、X1またはX2で表されるアルキル基について記載した通りである。R11で表されるアルキレン基の詳細については、X1またはX2で表されるアルキル基に関する上記の記載を、これらアルキレン基から水素原子を1つ取り去ったアルキレン基に読み替えて(例えば、メチル基はメチレン基に読み替えて)適用することができる。n1は2以上の整数であり、例えば10以下、好ましくは5以下の整数である。
ポリエステル鎖の数平均分子量は、強磁性六方晶フェライト粉末の分散性向上の観点からは、200以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましい。また、同様の観点から、ポリエステル鎖の数平均分子量は、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。先に記載した通り、ポリエステル鎖は、磁性層形成用組成物および/または磁性液中で立体障害をもたらし六方晶フェライト粒子の凝集を抑える作用を果たすことができると考えられる。上記の数平均分子量を有するポリエステル鎖は、かかる作用を良好に発揮することができると推察される。ポリエステル鎖の数平均分子量とは、ポリアルキレンイミン誘導体を加水分解して得られたポリエステルについて、GPCにより測定された値を、標準ポリスチレン換算して求められる値をいう。こうして求められる値は、ポリアルキレンイミン誘導体を合成するために用いたポリエステルについて、GPCにより測定された値を、標準ポリスチレン換算して求められる値と同様である。したがって、ポリアルキレンイミン誘導体を合成するために用いたポリエステルについて求めた数平均分子量を、ポリアルキレンイミン誘導体に含まれるポリエステル鎖の数平均分子量として採用することができる。ポリエステル鎖の数平均分子量の測定条件については、後述の具体例におけるポリエステルの数平均分子量の測定条件を参照できる。
数平均分子量
上記ポリアルキレンイミン誘導体に含まれるポリアルキレンイミン鎖の数平均分子量とは、ポリアルキレンイミン誘導体を加水分解して得られたポリアルキレンイミンについて、GPCにより測定された値を、標準ポリスチレン換算して求められる値をいう。こうして求められる値は、ポリアルキレンイミン誘導体を合成するために用いたポリアルキレンイミンについて、GPCにより測定された値を、標準ポリスチレン換算して求められる値と同様である。したがって、ポリアルキレンイミン誘導体を合成するために用いたポリアルキレンイミンについて求めた数平均分子量を、ポリアルキレンイミン誘導体に含まれるポリアルキレンイミン鎖の数平均分子量として採用することができる。ポリアルキレンイミン鎖の数平均分子量の測定条件については、後述の具体例を参照できる。なおポリアルキレンイミンとは、アルキレンイミンの開環重合により得ることができる重合体である。上記ポリアルキレンイミン誘導体において、重合体とは、同一構造の繰り返し単位を含む単独重合体(ホモポリマー)と二種以上の異なる構造の繰り返し単位を含む共重合体(コポリマー)とを包含する意味で用いるものとする。
また、ポリアルキレンイミン誘導体の加水分解は、エステルの加水分解法として通常用いられている各種方法により行うことができる。そのような方法の詳細については、例えば、「実験化学講座14 有機化合物の合成II−アルコール・アミン(第5版)」(日本化学会編、丸善出版、2005年8月発行)95〜98頁の加水分解法に関する記載、「実験化学講座16 有機化合物の合成IV−カルボン酸・アミノ酸・ペプチド(第5版)」(日本化学会編、丸善出版、2005年3月発行)10〜15頁の加水分解法に関する記載等を参照できる。
得られた加水分解物から、液体クロマトグラフィー等の公知の分離手段によりポリアルキレンイミンを分離し、数平均分子量を求めることができる。
先に記載した通り、ポリアルキレンイミン誘導体に含まれるポリアルキレンイミン鎖は、六方晶フェライト粒子表面への吸着部として機能し得ると本発明者らは考えている。ポリアルキレンイミン誘導体においてポリアルキレンイミン鎖の占める割合(以下、「ポリアルキレンイミン鎖比率」とも記載する。)は、強磁性六方晶フェライト粉末の分散性を高める観点から、好ましくは5.0質量%未満である。強磁性六方晶フェライト粉末の分散性向上の観点から、ポリアルキレンイミン鎖比率は4.9質量%以下であることがより好ましく、4.8質量%以下であることが更に好ましく、4.5質量%以下であることが一層好ましく、4.0質量%以下であることがより一層好ましく、3.0質量%以下であることが更に一層好ましい。また、強磁性六方晶フェライト粉末の分散性向上の観点からは、ポリアルキレンイミン鎖比率は0.2質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。
以上記載したポリアルキレンイミン鎖の占める割合は、例えば、合成時に用いるポリアルキレンイミンとポリエステルとの混合比によって制御することができる。
ポリアルキレンイミン鎖とは、同一または異なるアルキレンイミン鎖の2つ以上を含む重合構造である。含まれるアルキレンイミン鎖としては、下記の式Aで表されるアルキレンイミン鎖、および式Bで表されるアルキレンイミン鎖を挙げることができる。下記式で表されるアルキレンイミン鎖の中で、式Aで表されるアルキレンイミン鎖は、ポリエステル鎖との結合位置を含み得るものである。また、式Bで表されるアルキレンイミン鎖は、ポリエステル鎖と上述したような塩架橋基により結合することができる。ポリアルキレンイミン誘導体は、このようなアルキレンイミン鎖を1つ以上含むことにより、ポリアルキレンイミン鎖に1つ以上のポリエステル鎖が結合した構造を有することができる。また、ポリアルキレンイミン鎖としては、直鎖構造のみからなるものであっても、分岐した三級アミン構造を有するものであってもよい。より一層の分散性向上の観点からは、ポリアルキレンイミン鎖に分岐構造を含むものが好ましい。分岐構造を含むものとしては、下記式A中の*1において隣接するアルキレンイミン鎖と結合するもの、および下記式B中の*2において隣接するアルキレンイミン鎖と結合するものを挙げることができる。
ポリアルキレンイミン誘導体の分子量は、上述の通り、重量平均分子量として、好ましくは1,000以上80,000以下である。ポリアルキレンイミン誘導体の重量平均分子量は、1,500以上であることがより好ましく、2,000以上であることが更に好ましく、3,000以上であることが一層好ましい。また、ポリアルキレンイミン誘導体の重量平均分子量は、60,000以下であることがより好ましく、40,000以下であることが更に好ましく、35,000以下であることが一層好ましく、34,000以下であることがより一層好ましい。ポリアルキレンイミン誘導体の重量平均分子量の測定条件については、後述の具体例を参照できる。
上記ポリアルキレンイミン誘導体としては、ポリエステル鎖とともに、数平均分子量が300〜3,000の範囲のポリアルキレンイミン鎖を上記割合で含むものであれば、合成方法は特に限定されるものではない。合成方法の好ましい一態様については、特開2015−28830号公報の段落0061〜0069を参照できる。
SP−003(ポリエチレンイミン(日本触媒社製) 数平均分子量300)
SP−006(ポリエチレンイミン(日本触媒社製) 数平均分子量600)
SP−012(ポリエチレンイミン(日本触媒社製) 数平均分子量1,200)
SP−018(ポリエチレンイミン(日本触媒社製) 数平均分子量1,800)
ポリエステル、ポリアルキレンイミン、およびポリアルキレンイミン誘導体の平均分子量の測定条件の具体例は、それぞれ以下の通りである。
測定器:HLC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel Super HZ 2000/TSKgel Super HZ 4000/TSKgel Super HZ−H(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:0.35mL/min、
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折(RI)検出器
測定器:HLC−8320GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel Super AWM−H(東ソー社製)3本
溶離液:N−メチル−2−ピロリドン(添加剤として10mmol/l臭化リチウム添加)
流速:0.35mL/min
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折(RI)検出器
上記分散剤の含有量は、強磁性六方晶フェライト粉末100.0質量部あたり0.5〜25.0質量部であることが好ましい。分散剤の含有量は、強磁性六方晶フェライト粉末100.0質量部あたり0.5質量部以上とすることが、強磁性六方晶フェライト粉末の分散性および磁性層の耐久性向上の観点から好ましく、1.0質量部以上とすることがより好ましく、5.0質量部以上とすることが更に好ましく、10.0質量部以上とすることが一層好ましい。一方、記録密度の向上のためには、磁性層における強磁性六方晶フェライト粉末の充填率を高くすることが好ましい。この点からは、相対的に強磁性六方晶フェライト粉末以外の成分の含有量は低くすることが好ましい。以上の観点から、上記分散剤の含有量は、強磁性六方晶フェライト粉末100.0質量部に対して25.0質量部以下とすることが好ましく、20.0質量部以下とすることがより好ましく、18.0質量部以下とすることが更に好ましく、15.0質量部以下とすることが一層好ましい。
(強磁性粉末)
磁性層には、強磁性粉末として、強磁性六方晶フェライト粉末が含まれる。強磁性六方晶フェライト粉末の粒子サイズの指標としては、活性化体積を用いることができる。「活性化体積」とは、磁化反転の単位である。本発明および本明細書に記載の活性化体積は、振動試料型磁束計を用いて保磁力Hc測定部の磁場スイープ速度3分と30分とで測定し、以下のHcと活性化体積Vとの関係式から求められる値である。
Hc=2Ku/Ms{1−[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2}
[上記式中、Ku:異方性定数、Ms:飽和磁化、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、V:活性化体積、A:スピン歳差周波数、t:磁界反転時間]
磁気テープには、近年の情報量の莫大な増大に伴い、記録密度を高めること(高密度記録化)が望まれている。高密度記録化を達成するための方法としては、磁性層に含まれる強磁性粉末の粒子サイズを小さくし、磁性層の強磁性粉末の充填率を高める方法が挙げられる。この点から、強磁性六方晶フェライト粉末の活性化体積は、2500nm3以下であることが好ましく、2300nm3以下であることがより好ましく、2000nm3以下であることが更に好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、活性化体積は、例えば800nm3以上であることが好ましく、1000nm3以上であることがより好ましく、1200nm3以上であることが更に好ましい。なおSTEM像において観察される全六方晶フェライト粒子の中で、上述のアスペクト比および長軸方向の長さを有する六方晶フェライト粒子の占める割合は、STEM像において観察される全六方晶フェライト粒子に対する粒子数基準の割合として、例えば50%以上であることができる。また、上記割合は、例えば95%以下であることができ、95%超であることもできる。その他の強磁性六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば、特開2011−225417号公報の段落0012〜0030、特開2011−216149号公報の段落0134〜0136、特開2012−204726号公報の段落0013〜0030を参照できる。
上記磁気テープは、磁性層に、強磁性六方晶フェライト粉末とともに結合剤を含む。結合剤とは、一種以上の樹脂である。結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から単独または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010−24113号公報の段落0028〜0031を参照できる。また、結合剤は、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化型樹脂であってもよい。放射線硬化型樹脂については、特開2011−48878号公報の段落0044〜0045を参照できる。
また、上記結合剤として使用可能な樹脂とともに硬化剤を使用することもできる。硬化剤とは、1分子中に少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の架橋性官能基を有する化合物である。なお硬化剤は、磁性層形成工程の中で硬化反応が進行することにより、少なくとも一部は、結合剤等の他の成分と反応(架橋)した状態で磁性層に含まれ得る。硬化剤としては、ポリイソシアネートが好適である。ポリイソシアネートの詳細については、特開2011−216149号公報の段落0124〜0125を参照できる。硬化剤は、結合剤100.0質量部に対して例えば0〜80.0質量部、磁性層等の各層の強度向上の観点からは好ましくは50.0〜80.0質量部の量で使用することができる。
上記磁気テープは、磁性層に研磨剤を含む。研磨剤とは、モース硬度8超の非磁性粉末を意味し、モース硬度9以上の非磁性粉末であることが好ましい。研磨剤は、無機物質の粉末(無機粉末)であっても有機物質の粉末(有機粉末)であってもよく、無機粉末であることが好ましい。研磨剤は、モース硬度8超の無機粉末であることがより好ましく、モース硬度9以上の無機粉末であることが更に好ましい。なおモース硬度の最大値は、ダイヤモンドの10である。具体的には、研磨剤としては、アルミナ(Al2O3)、炭化珪素、ボロンカーバイド(B4C)、TiC、酸化セリウム、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ダイヤモンド等の粉末を挙げることができ、中でもアルミナ粉末が好ましい。アルミナ粉末については、特開2013−229090号公報の段落0021も参照できる。また、研磨剤の粒子サイズの指標としては、比表面積を用いることができる。比表面積が大きいほど粒子サイズが小さいことを意味する。磁性層表面Raを小さくする観点からは、BET(Brunauer−Emmett−Teller)法によって測定された比表面積(以下、「BET比表面積」と記載する。)として、14m2/g以上の研磨剤を使用することが好ましい。また、分散性の観点からは、BET比表面積が40m2/g以下の研磨剤を用いることが好ましい。磁性層における研磨剤の含有量は、強磁性粉末100.0質量部に対して1.0〜20.0質量部であることが好ましい。
磁性層には、強磁性六方晶フェライト粉末、結合剤および研磨剤が含まれ、必要に応じて一種以上の添加剤が更に含まれていてもよい。添加剤としては、一例として、上述の分散剤および硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれ得る添加剤としては、非磁性フィラー、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、カーボンブラック等を挙げることができる。非磁性フィラーとは、非磁性粉末と同義である。非磁性フィラーとしては、磁性層表面に適度に突出する突起を形成する突起形成剤として機能することができる非磁性フィラー(以下、「突起形成剤」と記載する。)を挙げることができる。突起形成剤は、磁性層表面の摩擦特性制御に寄与し得る成分である。突起形成剤としては、一般に突起形成剤として使用される各種非磁性粉末を用いることができる。これらは、無機物質であっても有機物質であってもよい。一態様では、摩擦特性の均一化の観点からは、突起形成剤の粒度分布は、分布中に複数のピークを有する多分散ではなく、単一ピークを示す単分散であることが好ましい。単分散粒子の入手容易性の点からは、突起形成剤は無機物質の粉末(無機粉末)であることが好ましい。無機粉末としては、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末を挙げることができ、無機酸化物の粉末であることが好ましい。突起形成剤は、より好ましくはコロイド粒子であり、更に好ましくは無機酸化物コロイド粒子である。また、単分散粒子の入手容易性の観点からは、無機酸化物コロイド粒子を構成する無機酸化物は二酸化ケイ素(シリカ)であることが好ましい。無機酸化物コロイド粒子は、コロイダルシリカ(シリカコロイド粒子)であることがより好ましい。本発明および本明細書において、「コロイド粒子」とは、少なくとも、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエンもしくは酢酸エチル、または上記溶媒の二種以上を任意の混合比で含む混合溶媒の少なくとも1つの有機溶媒100mLあたり1g添加した際に、沈降せず分散しコロイド分散体をもたらすことのできる粒子をいうものとする。他の一態様では、突起形成剤は、カーボンブラックであることも好ましい。突起形成剤の平均粒子サイズは、例えば30〜300nmであり、好ましくは40〜200nmである。また、突起形成剤が、その機能をより良好に発揮することができるという観点から、磁性層における突起形成剤の含有量は、好ましくは強磁性粉末100.0質量部に対して、1.0〜4.0質量部であり、より好ましくは1.5〜3.5質量部である。
次に非磁性層について説明する。上記磁気テープは、非磁性支持体上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011−216149号公報の段落0146〜0150を参照できる。非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、特開2010−24113号公報の段落0040〜0041も参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50〜90質量%の範囲であり、より好ましくは60〜90質量%の範囲である。
上記磁気テープは、非磁性支持体の磁性層を有する側とは反対側に、非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有することもできる。バックコート層には、カーボンブラックおよび無機粉末のいずれか一方または両方が含有されていることが好ましい。バックコート層に含まれる結合剤および任意に含まれ得る各種添加剤については、磁性層および/または非磁性層の処方に関する公知技術を適用することができる。
次に、非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)について説明する。非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリアミドが好ましい。これらの支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等を行ってもよい。
上記磁気テープの総厚は、5.30μm以下である。総厚が薄いこと(薄型化)は、磁気テープカートリッジの1巻あたりの記録容量を高めるうえで好ましい。上記磁気テープの総厚は、例えば5.20μm以下、5.10μm以下、または5.00μm以下であってもよい。また、上記磁気テープの総厚は、例えば、磁気テープの取り扱いの容易性(ハンドリング性)等の観点からは、1.00μm以上であることが好ましく、2.00μm以上であることがより好ましく、3.00μm以上であることが更に好ましい。
非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.00〜4.50μmである。磁性層の厚みは、近年求められている高密度記録化の観点からは0.15μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましい。磁性層の厚みは、更に好ましくは0.01〜0.10μmの範囲である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。2層以上に分離する場合の磁性層の厚みとは、これらの層の合計厚みとする。
<<サーボパターンが形成される磁気テープの製造>>
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物は、先に説明した各種成分とともに、通常、溶媒を含む。溶媒としては、塗布型磁気テープを製造するために一般に使用される各種有機溶媒を用いることができる。各層を形成するための組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含む。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられるすべての原料は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。磁性層形成用組成物の調製においては、先に記載した通り、研磨剤と強磁性六方晶フェライト粉末とを別分散することが好ましい。磁気テープを製造するためには、公知の製造技術を用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつニーダを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報および特開平1−79274号公報に記載されている。また、各層形成用組成物を分散させるためには、分散メディアとして、ガラスビーズおよびその他の分散ビーズの一種以上を用いることができる。このような分散ビーズとしては、高比重の分散ビーズであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、およびスチールビーズが好適である。これら分散ビーズの粒径(ビーズ径)と充填率は最適化して用いることができる。分散機は公知のものを使用することができる。また、cosθが0.85以上1.00以下の磁気テープを得るための手段の1つとして、分散条件を強化すること(例えば分散時間の長時間化、分散に用いる分散ビーズの小径化および/または高充填化、分散剤の利用等)も好ましい。分散条件の強化に関する好ましい態様は、先に記載した通りである。その他の磁気テープの製造方法の詳細については、例えば特開2010−24113号公報の段落0051〜0057も参照できる。配向処理については、特開2010−24113号公報の段落0052を参照することができる。cosθが0.85以上1.00以下である磁気テープを得るための手段の1つとして、垂直配向処理を行うことが好ましい。
上記磁気テープは、磁性層に、タイミングベースサーボパターンを有する。タイミングベースサーボパターンが形成された領域(サーボバンド)および2本のサーボバンドに挟まれた領域(データバンド)の配置例が、図1に示されている。タイミングベースサーボパターンの配置例は、図2に示されている。ただし、各図面に示す配置例は例示であって、磁気テープ装置(ドライブ)の方式に応じた配置でサーボパターン、サーボバンドおよびデータバンドを配置すればよい。また、タイミングベースサーボパターンの形状および配置については、例えば、米国特許第5689384号のFIG.4、FIG.5、FIG.6、FIG.9、FIG.17、FIG.20等に例示された配置例等の公知技術を何ら制限なく適用することができる。
本発明の一態様は、上記磁気テープと、磁気ヘッドと、サーボヘッドと、を含む磁気テープ装置に関する。
1.アルミナ分散物(研磨剤液)の調製
アルファ化率約65%、BET比表面積20m2/gのアルミナ粉末(住友化学社製HIT−80;モース硬度9)100.0部に対し、3.0部の2,3−ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)、極性基としてSO3Na基を有するポリエステルポリウレタン樹脂(東洋紡社製UR−4800(極性基量:80meq/kg))の32%溶液(溶媒はメチルエチルケトンとトルエンの混合溶媒)を31.3部、溶媒としてメチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1(質量比)の混合液570.0部を混合し、ジルコニアビーズ存在下で、ペイントシェーカーにより5時間分散させた。分散後、メッシュにより分散液とビーズとを分け、アルミナ分散物(研磨剤液)を得た。
(磁性液)
強磁性六方晶バリウムフェライト粉末(活性化体積:表4参照) 100.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂 14.0部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g)
分散剤 表4参照
シクロヘキサノン 150.0部
メチルエチルケトン 150.0部
(研磨剤液)
上記1.で調製したアルミナ分散物 6.0部
(シリカゾル(突起形成剤液))
コロイダルシリカ(平均粒子サイズ:100nm) 2.0部
メチルエチルケトン 1.4部
(その他成分)
ステアリン酸 2.0部
ブチルステアレート 6.0部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネート(登録商標))2.5部
(仕上げ添加溶媒)
シクロヘキサノン 200.0部
メチルエチルケトン 200.0部
非磁性無機粉末:α−酸化鉄 100.0部
平均粒子サイズ(平均長軸長):0.15μm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック 20.0部
平均粒子サイズ:20nm
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂 18.0部
(重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g)
ステアリン酸 1.0部
シクロヘキサノン 300.0部
メチルエチルケトン 300.0部
非磁性無機粉末:α−酸化鉄 80.0部
平均粒子サイズ(平均長軸長):0.15μm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック 20.0部
平均粒子サイズ20nm
塩化ビニル共重合体 13.0部
スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂 6.0部
フェニルホスホン酸 3.0部
メチルエチルケトン 155.0部
ステアリン酸 3.0部
ブチルステアレート 3.0部
ポリイソシアネート 5.0部
シクロヘキサノン 355.0部
(1)磁性層形成用組成物の調製
磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。
上記の磁性液成分をバッチ式縦型サンドミルにおいて分散メディアとしてビーズを用いてビーズ分散することにより、磁性液を調製した。具体的には、各段階(1段階目および2段階目、または1〜3段階目)のビーズ分散として、それぞれ表4に示すビーズ径を有するジルコニアビーズを用いて表4に示す分散滞留時間で分散処理を行った。ビーズ分散では、各段階終了後にそれぞれフィルター(平均孔径5μm)を用いて得られた分散液を濾過した。各段階のビーズ分散において、分散メディアの充填率は、50〜80体積%程度とした。
こうして得られた磁性液を、上記の研磨剤液、シリカゾル、その他成分および仕上げ添加溶媒と混合し、上記サンドミルを用いて5分間ビーズ分散した後、更にバッチ型超音波装置(20kHz、300W)で0.5分間超音波分散を行った。次いで、フィルター(平均孔径0.5μm)を用いて得られた混合液をろ過し、磁性層形成用組成物を調製した。
上記のビーズ分散時のサンドミルにおける先端周速は、7〜15m/秒の範囲とした。
(2)非磁性層形成用組成物の調製
非磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。
ステアリン酸、シクロヘキサンおよびメチルエチルケトンを除いた各成分を、バッチ式縦型サンドミルを用いてビーズ分散(分散メディア:ジルコニアビーズ(ビーズ径:0.1mm)、分散滞留時間:24時間)して分散液を得た。その後、得られた分散液に残りの成分を添加し、ディゾルバーで攪拌した。次いで、フィルター(平均孔径0.5μm)を用いて得られた分散液をろ過し、非磁性層形成用組成物を調製した。
(3)バックコート層形成用組成物の調製
バックコート層形成用組成物を、以下の方法により調製した。
ステアリン酸、ブチルステアレート、ポリイソシアネートおよびシクロヘキサノンを除いた各成分をオープンニーダにより混練および希釈した。その後、得られた混合液に対して横型ビーズミルにより、ビーズ径1mmのジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率80体積%およびローター先端周速10m/秒で、1パスあたりの滞留時間を2分とし、12パスの分散処理を行った。その後、得られた分散液に残りの成分を添加し、ディゾルバーで攪拌した。次いで、フィルター(平均孔径1μm)を用いて得られた分散液をろ過し、バックコート層形成用組成物を調製した。
表4に示す厚みのポリエチレンナフタレート製支持体の表面上に、乾燥後の厚みが表4に示す厚みとなるように上記5.(2)で調製した非磁性層形成用組成物を塗布および乾燥して非磁性層を形成した。次いで、非磁性層上に乾燥後の厚みが表4に示す厚みとなるように上記5.(1)で調製した磁性層形成用組成物を塗布した。表4に垂直配向処理「有」と記載した実施例および比較例については、塗布した磁性層形成用組成物が未乾状態にあるうちに、磁場強度0.3Tの磁場を塗布面に対し垂直方向に印加して垂直配向処理を行った後乾燥させ、磁性層を形成した。表4に垂直配向処理「無」と記載した比較例については上記垂直配向処理を行わずに塗布した磁性層形成用組成物を乾燥させ、磁性層を形成した。
その後、上記ポリエチレンナフタレート製支持体の非磁性層および磁性層を形成した面とは反対側の面に、乾燥後の厚みが表4に示す厚みとなるように上記5.(3)で調製したバックコート層形成用組成物を塗布および乾燥させて、積層体を得た。
その後、得られた積層体に対して、金属ロールのみから構成されるカレンダロールを用いて、カレンダ処理速度100m/分、線圧294kN/m(300kg/cm)、および表4に示すカレンダーロールの表面温度にて、表面平滑化処理(カレンダ処理)を行った。カレンダ処理条件を強化するほど(例えばカレンダロールの表面温度を高くするほど)、磁性層表面Raは小さくなる傾向がある。
その後、雰囲気温度70℃の環境下で36時間熱処理を行った。熱処理した積層体を、スリッターを用いて1/2インチ(0.0127メートル)幅に裁断し、磁気テープを作製した。
作製した磁気テープの磁性層を消磁した状態で、サーボ試験機に搭載されたサーボライトヘッドによって、LTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターンを磁性層に形成した。これにより、磁性層に、LTO Ultriumフォーマットにしたがう配置でデータバンド、サーボバンド、およびガイドバンドを有し、かつサーボバンド上にLTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターンを有する磁気テープを作製した。
こうして、実施例および比較例の各磁気テープを得た。なお上記サーボ試験機は、サーボライトヘッドおよびサーボヘッドを備えている。このサーボ試験機を後述する評価でも使用した。
磁気テープの厚み方向の断面を、イオンビームにより露出させた後、露出した断面において走査型電子顕微鏡によって断面観察を行う。断面観察において厚み方向の2箇所において求められた厚みの算術平均として、各種厚みを求めた。
表4に記載の分散剤1〜4は、以下の方法によって調製した。以下に合成反応に関して記載する温度は、反応液の液温である。
比較例9では、分散剤1〜4に代えて2,3−ジヒドロキシナフタレンを用いた。2,3−ジヒドロキシナフタレンは、特開2012−203955号公報において角型比の調整のための添加剤として用いられている化合物である。
<前駆体1の合成>
500mL三口フラスコに、ε−カプロラクトン197.2gおよび2−エチル−1−ヘキサノール15.0gを導入し、窒素を吹き込みながら、攪拌溶解した。モノブチル錫オキシド0.1gを加え、100℃に加熱した。8時間後、ガスクロマトグラフィーにて、原料が消失したことを確認後、室温まで冷却し、固体状の前駆体1(下記構造)を200g得た。
200mL三口フラスコに、得られた前駆体1を40.0g導入し、窒素を吹き込みながら、80℃で攪拌溶解した。meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物2.2gを加え、110℃に加熱した。5時間後、1H−NMRにて、前駆体1由来のピークが消失したことを確認後、室温まで冷却し、固体状の反応生成物1(以下の構造異性体の混合物)を38g得た。こうして得られた反応生成物1は、表1に示した化合物1とその構造異性体の混合物である。反応生成物1を、「分散剤1」と呼ぶ。
<分散剤2の合成>
ブタンテトラカルボン酸無水物2.2gを、ピロメリット酸二無水物2.4gに変更した点以外は分散剤1の合成と同様に合成を行い、固体状の反応生成物2(以下の構造異性体の混合物)を38g得た。こうして得られた反応生成物2は、表1に示した化合物2とその構造異性体の混合物である。反応生成物2を、「分散剤2」と呼ぶ。
<ポリエステル(i−1)の合成>
500mL三口フラスコに、カルボン酸としてn−オクタン酸(和光純薬社製)12.6g、ラクトンとしてε−カプロラクトン(ダイセル工業化学社製プラクセルM)100g、触媒としてモノブチルすずオキシド(和光純薬社製)(C4H9Sn(O)OH)2.2gを混合し、160℃で1時間加熱した。ε−カプロラクトン100gを5時間かけて滴下し更に2時間攪拌した。その後、室温まで冷却しポリエステル(i−1)を得た。
合成スキームを以下に示す。
ポリエチレンイミン(日本触媒社製SP−018、数平均分子量1800)5.0gおよび得られたポリエステル(i−1)100gを混合し、110℃で3時間加熱して、ポリエチレンイミン誘導体(J−1)を得た。ポリエチレンイミン誘導体(J−1)を、「分散剤3」と呼ぶ。
合成スキームを以下に示す。下記合成スキーム中、a、bおよびcはそれぞれ繰り返し単位の重合モル比を示し、0〜50であり、a+b+c=100である。l、m、n1およびn2はそれぞれ繰り返し単位の重合モル比を示し、lは10〜90、mは0〜80、n1およびn2は0〜70であり、かつl+m+n1+n2=100である。
<ポリエステル(i−2)の合成>
表3に示すカルボン酸の仕込み量を変更した点以外はポリエステル(i−1)の合成と同様にして、ポリエステル(i−2)を得た。
表2に示すポリエチレンイミンと、得られたポリエステル(i−2)とを用いた点以外は化合物J−1と同様に合成を行い、ポリエチレンイミン誘導体(J−2)を得た。ポリエチレンイミン誘導体(J−2)を、「分散剤4」と呼ぶ。
GPC装置:HLC−8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL−M(東ソー社製、7.8mm (内径)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
活性化体積の測定用試料として、磁性層形成用組成物の調製に用いた強磁性六方晶バリウムフェライト粉末と同じ粉末ロット内の粉末を使用した。測定は、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いてHc測定部の磁場スイープ速度3分と30分とで行い、先に記載した関係式から活性化体積を算出した。測定は23℃±1℃の環境で行った。算出された活性化体積を表4に示す。
実施例および比較例の各磁気テープから断面観察用試料を切り出し、この試料を用いて上述した方法でcosθを求めた。実施例および比較例の各磁気テープについて求められたcosθを表4に示す。なお、実施例および比較例の各磁気テープにおいて、STEM像で観察された全六方晶フェライト粒子に対して、cosθの測定対象とされる上述の範囲のアスペクト比および長軸方向の長さを有する六方晶フェライト粒子の占める割合は、粒子数基準で80〜95%程度であった。
以下の方法により、保護膜(カーボン膜と白金膜との積層膜)付試料を作製した。
cosθを求める対象の磁気テープから、磁気テープの幅方向10mm×長手方向10mmのサイズの試料を剃刀を用いて切り出した。試料について以下に記載する幅方向とは、切り出す前の磁気テープにおいて幅方向であった方向をいうものとする。長手方向についても同様である。
切り出した試料の磁性層表面に保護膜を形成して保護膜付試料を得た。保護膜の形成は、以下の方法により行った。
上記試料の磁性層表面に、真空蒸着によりカーボン膜(厚み80nm)を形成し、形成したカーボン膜表面にスパッタリングにより白金(Pt)膜(厚み30nm)を形成した。カーボン膜の真空蒸着および白金膜のスパッタリングは、それぞれ下記条件で行った。
<カーボン膜の真空蒸着条件>
蒸着源:カーボン(直径0.5mmのシャープペンシルの芯)
真空蒸着装置のチャンバー内真空度:2×10-3Pa以下
電流値:16A
<白金膜のスパッタリング条件>
ターゲット:Pt
スパッタリング装置のチャンバー内真空度:7Pa以下
電流値:15mA
上記(i)で作製した保護膜付試料から、ガリウムイオン(Ga+)ビームを用いるFIB加工によって薄膜状の試料を切り出した。切り出しは、以下の2回のFIB加工により行った。FIB加工における加速電圧は30kVとした。
1回目のFIB加工では、保護膜表面から深さ約5μmの領域までを含む保護膜付試料の長手方向の一方の端部(即ち保護膜付試料の幅方向の一方の側面を含む部分)を切り出した。切り出された試料には、保護膜から非磁性支持体の一部までが含まれる。
次いで、切り出された試料の切り出し面側(即ち、切り出しにより露出した試料断面側)にマイクロプローブを取り付け、2回目のFIB加工を行った。2回目のFIB加工では、切り出し面側とは逆の面(即ち、上記の幅方向の一方の側面)側にガリウムイオンビームを当てて試料の切り出しを行った。2回目のFIB加工における切り出し面を、STEM観察用のメッシュの端面に貼り合わせて試料を固定した。固定後、マイクロプローブを除去した。
更に、メッシュに固定された試料からマイクロプローブを除去した面に、上記と同様の加速電圧でガリウムイオンビームを当ててFIB加工を行い、メッシュに固定された試料を更に薄膜化した。
こうして作製されたメッシュに固定された断面観察用試料を走査透過型電子顕微鏡により観察して、先に記載した方法によりcosθを求めた。こうして求められたcosθを、表4に示す。
原子間力顕微鏡(AFM、Veeco社製Nanoscope4)を用い、測定面積40μm×40μmの範囲を測定し、磁気テープの磁性層表面において、中心線平均表面粗さRaを求めた。スキャン速度(探針移動速度)は40μm/秒、分解能は512pixel×512pixelとした。測定結果を表4に示す。
角型比を、作製した各磁気テープについて、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて磁場強度1194kA/m(15kOe)で測定した。測定結果を表4に示す。
上記タイミングベースサーボパターンが形成された磁気テープをサーボ試験機に取り付けた。このサーボ試験機において上記磁気テープを走行させ、走行している磁気テープの磁性層表面とMR素子を搭載したサーボヘッドとを接触させ摺動させることにより、上記サーボヘッドによってサーボパターンの読み取り(サーボ信号の再生)を行った。再生によって得られたサーボ信号の再生波形の中で、正常なバースト信号ではなく、かつノイズレベルの出力の平均値を100%として200%以上の出力を示している部分をサーマルアスペリティと判定して、サーマルアスペリティの発生回数をカウントした。カウントされたサーマルアスペリティの発生回数を、磁気テープ全長で除した値(回数/m)を、サーマルアスペリティ発生頻度とした。測定結果を表4に示す。
これに対し実施例1〜9の磁気テープは、総厚が5.30μm以下であり、かつ磁性層表面Raが1.8nm以下であるものの、比較例5〜9の磁気テープと比べてサーボ信号再生時に信号欠陥の発生頻度が大きく低減された。
また、表4に示す結果から、cosθとサーボ信号再生時の信号欠陥の発生頻度との間には、cosθが大きくなるほどサーボ信号再生時の信号欠陥の発生頻度が少なくなるという良好な相関関係があることが確認できる。これに対し、そのような相関関係は、表4に示すように、角型比(SQ)とサーボ信号再生時の信号欠陥の発生頻度との間には見られなかった。
Claims (7)
- 非磁性支持体上に強磁性粉末を含む磁性層を有する磁気テープであって、
前記非磁性支持体の厚みは、3.00μm以上4.50μm以下であり、
前記磁性層はタイミングベースサーボパターンを有し、
前記磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRaは、1.8nm以下であり、
前記強磁性粉末は強磁性六方晶フェライト粉末であり、かつ
走査透過型電子顕微鏡を用いて行われる断面観察によって求められる前記磁性層の表面に対する前記強磁性六方晶フェライト粉末の傾きcosθは、0.85以上1.00以下である磁気テープ。 - 前記cosθが0.89以上1.00以下である、請求項1に記載の磁気テープ。
- 前記磁性層は、重量平均分子量が1,000以上80,000以下であるポリエステル鎖含有化合物を更に含む、請求項1または2に記載の磁気テープ。
- 前記強磁性六方晶フェライト粉末の活性化体積は、800nm3以上2500nm3以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気テープ。
- 前記磁性層の表面において測定される中心線平均表面粗さRaは、1.2nm以上1.8nm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気テープ。
- 前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気テープ。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気テープと、磁気ヘッドと、サーボヘッドと、を含む磁気テープ装置。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020040682A JP6852206B2 (ja) | 2020-03-10 | 2020-03-10 | 磁気テープおよび磁気テープ装置 |
JP2021038218A JP6910574B2 (ja) | 2020-03-10 | 2021-03-10 | 磁気テープおよび磁気テープ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020040682A JP6852206B2 (ja) | 2020-03-10 | 2020-03-10 | 磁気テープおよび磁気テープ装置 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019119912A Division JP6675513B2 (ja) | 2019-06-27 | 2019-06-27 | 磁気テープおよび磁気テープ装置 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021038218A Division JP6910574B2 (ja) | 2020-03-10 | 2021-03-10 | 磁気テープおよび磁気テープ装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020098662A JP2020098662A (ja) | 2020-06-25 |
JP6852206B2 true JP6852206B2 (ja) | 2021-03-31 |
Family
ID=71106558
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020040682A Active JP6852206B2 (ja) | 2020-03-10 | 2020-03-10 | 磁気テープおよび磁気テープ装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6852206B2 (ja) |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102027538B (zh) * | 2008-06-18 | 2013-01-02 | 国际商业机器公司 | 带驱动器中的伺服读取信号的字同步化 |
JP5770772B2 (ja) * | 2013-03-26 | 2015-08-26 | 富士フイルム株式会社 | 六方晶フェライト磁性粒子およびその製造方法、ならびに磁気記録用磁性粉および磁気記録媒体 |
JP6175422B2 (ja) * | 2014-09-29 | 2017-08-02 | 富士フイルム株式会社 | 磁気テープ |
JP6058607B2 (ja) * | 2014-09-30 | 2017-01-11 | 富士フイルム株式会社 | 磁気テープおよびその製造方法 |
JP6549528B2 (ja) * | 2016-06-23 | 2019-07-24 | 富士フイルム株式会社 | 磁気テープおよび磁気テープ装置 |
JP6675513B2 (ja) * | 2019-06-27 | 2020-04-01 | 富士フイルム株式会社 | 磁気テープおよび磁気テープ装置 |
-
2020
- 2020-03-10 JP JP2020040682A patent/JP6852206B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2020098662A (ja) | 2020-06-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6549528B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP6549529B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP6534637B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP6556107B2 (ja) | 磁気テープ | |
JP6534969B2 (ja) | 磁気テープ | |
JP6318108B2 (ja) | 磁気テープ | |
JP6649314B2 (ja) | 磁気テープ装置およびヘッドトラッキングサーボ方法 | |
JP6660336B2 (ja) | 磁気テープ装置およびヘッドトラッキングサーボ方法 | |
US10535367B2 (en) | Metal oxide particle dispersion for manufacturing particulate magnetic recording medium, method of manufacturing magnetic layer-forming composition of particulate magnetic recording medium and method of manufacturing particulate magnetic recording medium | |
JP2019021362A (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP2019008847A (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP2019021361A (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP2019021363A (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP2018037127A (ja) | 磁気テープ | |
JP2018170052A (ja) | 磁気テープ装置およびヘッドトラッキングサーボ方法 | |
JP2018170060A (ja) | 磁気テープ装置および磁気再生方法 | |
JP6675513B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP2016051492A (ja) | 磁気テープ | |
JP6910574B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP6852206B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP7097481B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 | |
JP7288122B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気テープ装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20200310 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20210120 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20210209 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20210310 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6852206 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |