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JP6828875B2 - コンクリート保護方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート保護方法、特に、劣化した部分を含むコンクリートの保護方法に関する。
土木建築構造物用に広く用いられるコンクリートは、経年変化に伴い、中性化や塩害、酸など様々な原因によって、構造性能が低下することが知られている。このようなコンクリートに対し、コンクリートへの劣化因子の侵入を抑制、防止するために、防水材や保護材を用いるようなさまざまなコンクリートの耐久性改善方法が提案されている。
例えば、下水道処理施設や温泉施設等においては、硫酸劣化が問題となっている。そのため、新設に対しては、耐硫酸モルタル等の使用が進められており、既存のコンクリートに対しては、断面修復工法や樹脂による被覆工法を用いた補修が行われてきている。また、この様な過酷な環境においては、安価で施工性が容易であり短期間での補修施工が求められており、新たな補修技術の開発が重要となってきている。
一方、コンクリート構造物の補修工法の一つに表面含浸工法があり、施工の容易さと経済性から近年では利用が急増している。その一つとして、表面含浸材の一つであるケイ酸塩系表面含浸材を利用したケイ酸塩系表面含浸工法がある(例えば非特許文献1)。
また、特許文献1では、ケイ酸塩系表面含浸材とコンクリートとの反応を促進させる反応促進剤とケイ酸塩系表面含浸材とを用いてコンクリートを補強する方法が開示されている。
特許第5751499号公報
公益社団法人土木学会発行「コンクリートライブラリー137 ケイ酸塩系表面含浸工法の設計施工指針(案)」
しかしながら、耐硫酸モルタル等を使用する技術は十分に構築されているとは言えず、断面修復工法や樹脂による被覆工法では、数年で補修材が劣化するなど、十分な補修効果が発揮されていない。また、水ガラスのような従来のケイ酸塩系表面含浸材を塗布し、コンクリートを保護、補強、補修する方法においても、その効果は十分ではなく、改善の余地があった。
かかる状況下、本発明の目的は、コンクリートに優れた耐久性を付与できるコンクリートの保護方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 下記工程を有するコンクリート保護方法。
工程A:保護対象のコンクリートに、ケイ酸アルカリ金属塩を含有するケイ酸塩系表面含浸材を塗布し、前記コンクリートに、下地層を形成する工程
工程B:前記下地層の上に、リチウム化合物と、ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムとを含有するコンクリート保護材を塗布し、ガラス状の保護層を形成する工程
<2> 工程Bの後に、前記下地層の上に塗布した前記コンクリート保護材を加熱する工程B’を含む前記<1>に記載のコンクリート保護方法。
<3> 前記コンクリート保護材の粘度が、前記ケイ酸塩系表面含浸材の粘度より高い前記<1>又は<2>に記載のコンクリート保護方法。
<4> 前記コンクリート保護材の粘度が、8Pa・s以上14Pa・s以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載のコンクリート保護方法。
<5> 前記ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムの合計100モル部に対して、リチウム化合物の含有量が1モル部以上50モル部以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載のコンクリート保護方法。
<6> 前記リチウム化合物がケイ酸リチウムである前記<1>から<5>のいずれかに記載のコンクリート保護方法。
<7> 工程Aにおける前記ケイ酸アルカリ金属塩がケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムであり、前記ケイ酸塩系表面含浸材のpHが11以上である前記<1>から<6>のいずれかに記載のコンクリート保護方法。
<8> 保護対象のコンクリートが劣化した部分を含むコンクリートであって、工程Aの前に、劣化した部分を除去する工程A’を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載のコンクリート保護方法。
<9> 保護対象のコンクリートが、酸劣化した部分を含むコンクリートである前記<1>から<8>のいずれかに記載のコンクリート保護方法。
本発明によれば、コンクリートに優れた耐久性を付与できるコンクリートの保護方法を提供することができる。
実施例1−1、1−2及び比較例1−1、1−2の評価結果を示す、各試験体の外観の写真である。 実施例2−1及び比較例2−1、2−2の評価結果を示す、各試験体の写真である。 参考例1の乾燥固形分(1)の耐酸性評価の結果を示す写真である。 参考例1の乾燥固形分(1)及び乾燥固形分(2)の2週間硫酸浸漬後の重量変化率を表す図である。 参考例2のガラス状の保護層のビッカース硬さと加熱時間、加熱温度との関係を表す図である。
以下、本発明について説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
本発明は、下記工程を有するコンクリート保護方法(以下、「本発明のコンクリート保護方法」あるいは「本発明の保護方法」という場合がある)に関するものである。
工程A:保護対象であるコンクリートに、ケイ酸アルカリ金属塩を含有するケイ酸塩系表面含浸材を塗布し、前記コンクリートに、下地層を形成する工程
工程B:前記下地層の上に、リチウム化合物とケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムとを含有するコンクリート保護材を塗布し、ガラス状の保護層を形成する工程
本発明は、コンクリート構造物のコンクリートに上記保護方法を施すことにより、保護対象となるコンクリートに優れた耐久性を付与することができ、頻繁に補修作業を行わずにコンクリートを使用できる。また、本発明のコンクリート保護方法は、湿潤状態でも工程Aを実施できるため、様々な用途のコンクリート構造物を保護できる。事前に保護対象となるコンクリート構造物を乾燥させる必要もなく、作業期間の短縮も可能である。また、本発明の保護方法において形成されるガラス状の保護層は無機系であるため、エポキシ樹脂などの有機系の保護層と比較して、劣化因子を遮断する能力が高く、また、安定性も高いため、保護層を形成する物質の分解物などによるコンクリートの劣化を抑制できる。また、工程A、工程Bにおいて使用される材料は、密着性に優れ、層形成過程の伸縮等によってひび割れ、劣化が起こりにくい。
さらに、本発明では、工程Aで、保護対象であるコンクリートに、ケイ酸アルカリ金属塩を含有するケイ酸塩系表面含浸材を塗布することで、ケイ酸塩系表面含浸材とコンクリートとの反応によりコンクリートを多孔質から緻密なコンクリートに改質し、強化された下地層を形成させやすい。このため、工程Bにおいて、強化された下地層の上に形成されたガラス状の保護層は、局所的な脆弱部などが少ない、より均一な層となりやすくなり、ひび割れやコンクリートからのはがれなどが起こりにくくなるため、本発明の保護方法では、コンクリートに対して保護効果が得られると推察される。
工程A及び工程Bは、それぞれ1回でもよく、それぞれ複数回行ってもよい。また、本発明のコンクリート保護方法では、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに、工程A、工程B以外の工程を行ってもよい。
以下、本発明のコンクリート保護方法の工程A及びBについてさらに詳細に説明する。
<工程A>
工程Aは、保護対象であるコンクリートに、ケイ酸アルカリ金属塩を含有するケイ酸塩系表面含浸材を塗布し、前記コンクリートに、下地層を形成する工程である。
ケイ酸アルカリ金属塩を含有するケイ酸塩系表面含浸材を塗布することで、ケイ酸塩系表面含浸材とコンクリートとの反応により、コンクリートを緻密化し、保護対象となるコンクリートの表面を強化しやすい。これに加えて、ケイ酸塩系表面含浸材とコンクリート中に存在する劣化因子とが反応することで、劣化因子を固定化し、拡散を抑制しやすい。特に、本発明の工程Aにおいて用いられるケイ酸塩系表面含浸材は、代表的な劣化因子である酸と、酸塩基反応により結晶を生成することで酸を固定化し、酸の拡散を抑制しやすく、既にコンクリート内部に浸入した硫酸等の劣化因子である酸を無害化することが可能である。生成した結晶は酸に対して高い耐久性を有するため、耐食効果の増強が期待できる。
また、コンクリート表面は、より緻密に改質された下地層が形成されるので、工程Bにおいてコンクリート保護材を塗布したときに、コンクリート保護材と、下地層を介したコンクリートとの接着性が強化され局所的な脆弱部などが少ない、より均一な層を形成させやすくなる。
なお、下地層は、コンクリート上あるいは内部に形成されるケイ酸アルカリ金属塩を含有する部分である。工程A施工後に、コンクリート表面付近等に、ケイ酸塩系表面含浸材によるC−S−Hゲル層があるかを評価することや、空隙量の測定、防水性試験、ひび割れ透水性試験、電子顕微鏡観察等の評価を行うことで、下地層の形成は評価することができる。
また、劣化因子は、コンクリートと反応してコンクリートを劣化(例えば、多孔質化)させる原因となるもので、例えば酸や塩化物イオン、二酸化炭素、水などを挙げることができる。
本発明の保護方法の保護対象となるコンクリートは、橋脚、梁、壁、床、天井、架台、堰堤、砂防ダム、トンネル、ビル等のコンクリート構造物のコンクリートであり、劣化した部分を含んでも、劣化した部分を含まなくてもよい。劣化した部分を含むコンクリートには、例えば、化学的浸食により劣化した部分を含むコンクリートが挙げられる。また、コンクリート構造物は、既設でも新設であってもよい。
コンクリートは、特に限定されず、普通コンクリート、舗装コンクリート、AEコンクリート、流動化コンクリート(流動化剤を用いて施工性をよくしたコンクリート)、気泡コンクリート(発泡剤を用いて多量の気泡を混入し、軽量としたコンクリート)、フライアッシュコンクリート(火力発電所における微粉石炭の燃焼によって生ずる良質な微粉灰を混入したコンクリート)、及び高炉セメントコンクリート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「コンクリート」とは、モルタルも含むものであり、「コンクリート構造物」は、モルタルを一部含む構造物も含まれる。
コンクリートが化学的浸食により劣化する場合、コンクリートは多孔質化されることがあるが、上述のように、工程Aで用いられるケイ酸塩系表面含浸材は、ケイ酸塩系表面含浸材とコンクリートとの反応によりコンクリートを多孔質から緻密にしやすい。そのため、化学的浸食により劣化した部分を含むコンクリートは、本発明の保護方法の好適な保護対象の一つである。
また、本発明の保護方法で用いられるケイ酸塩系表面含浸材および後述するコンクリート保護材は、酸塩基反応により酸と結晶を生成することで、酸の拡散を抑制しやすい。また、後述するように工程Bで形成されるガラス状の保護層は酸に対して高い耐久性を有するので、本発明の保護方法では、酸劣化した部分を含むコンクリートを好適な保護対象の一つとして挙げることができる。本発明の保護方法を施すことによって、酸暴露雰囲気下などの過酷な環境においても長期の使用が可能である。
酸劣化を引き起こす劣化因子としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸や酢酸などの有機酸、動植物性油、不燃性ガス、炭酸ガス等が挙げられる。酸劣化した部分を含むコンクリートとしては、例えば、硫酸雰囲気下などの上記酸劣化を引き起こす劣化因子存在下で使用されたコンクリートを挙げることができる。
また、新設のコンクリート構造物のコンクリート、すなわち、劣化した部分を含まないコンクリートであっても、酸に曝露される雰囲気で使用される場合、本発明の保護方法を施すことで、高い耐久性が期待できる。
このような保護対象のコンクリートとして、具体的には、下水道処理施設や温泉施設等のコンクリート構造物などのコンクリートがある。
従来の樹脂による工法では、施工前にコンクリート構造物を乾燥させる必要があり、下水道処理施設や温泉処理施設などのコンクリート構造物は施工前の乾燥に時間を要した。本発明の保護方法では、湿潤条件下でも工程Aが実施可能なため、下水道処理施設や温泉処理施設などのコンクリート構造物であっても、作業期間の短縮が可能である。
保護対象のコンクリートが、劣化した部分を含むコンクリートである場合は、工程Aの前に、コンクリートの劣化した部分を除去する工程A’を行うことが好ましい。コンクリートの劣化した部分とは、例えば、酸による化学的浸食により多孔質化した部分などが挙げられる。
コンクリートの劣化部を除去する方法としては、ハンマーでコンクリートの劣化部を除去する方法(はつり)や、水を用いてコンクリートの劣化部を除去する方法があり、水を用いる方法が一般的であり、高圧洗浄による(ウォータージェットによる洗浄)等が挙げられる。
また、工程A’では、コンクリートの劣化部の除去範囲は、劣化の程度に応じて適宜決定できる。コンクリートの劣化部を完全に取り除いてもよいが、コンクリート表面の突起物や付着物を除去し、コンクリート表面をある程度平滑化できれば、劣化部分を完全に取り除く必要はなく、目的や施工性等を考慮して、劣化部の除去範囲は決定される。
なお、ケイ酸塩系表面含浸材を用いる工法は、一般にケイ酸塩系表塩含浸工法とよばれている。ケイ酸塩系表面含浸工法は、主に、中性化や塩害が進行したコンクリートの耐久性を向上させることを目的として実施される工法である。この工法は、コンクリートとケイ酸塩系表面含浸材が反応し、C−S−H結合を形成することを利用した工法であり、具体的には、ケイ酸塩系表面含浸剤をコンクリート表面から含浸させ、コンクリート表面の空隙を固化物あるいはコンクリート中のカルシウム成分(酸化カルシウム)と反応させ、いわゆるC-S-H(CaO・SiO2・H2O)結合したゲルにより充填することで、コンクリートの耐久性を向上させるものである。
(ケイ酸塩系表面含浸材)
ケイ酸塩系表面含浸材は、本発明のコンクリート保護方法の工程Aで用いられる、ケイ酸アルカリ金属塩を含有する液体組成物である。
ケイ酸塩系表面含浸材は、保護対象となるコンクリートによって、その組成が調整されるが、一般的には、ケイ酸塩系表面含浸材全体を100重量%としたときに、ケイ酸塩系表面含浸材中の乾燥固形分が10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは15重量%以上である。また、その上限はケイ酸塩系表面含浸材の施工性等を考慮して適宜調整されるが、50重量%以下であり、好ましくは35重量%以下である。なお、「乾燥固形分」とは、ケイ酸塩系表面含浸材より溶媒成分を除いたものであり、ケイ酸塩系表面含浸材を乾燥させ経時重量変化がほぼなくなったときの固形分量より求められる。
乾燥固形分の主成分は、ケイ酸アルカリ金属塩である。ケイ酸アルカリ金属塩としては、具体的には、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウムから選択される少なくとも1以上のケイ酸アルカリ金属塩を含有するケイ酸塩系表面含浸材が一般的に使用される。この中でも、ケイ酸アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩又はカリウム塩であることが好ましい。
ケイ酸塩系表面含浸材の粘度は、2.0〜7.0mPa・sであることが好ましく、3.0〜6.5mPa・sであることがより好ましい。このような数値範囲であると、ケイ酸塩系表面含浸材がコンクリートに含浸しやすく、コンクリートとの反応が起こりやすく、下地層がより緻密になる。
なお、粘度は、振動粘度計や回転粘度計などの方法で測定することができる。
ケイ酸塩系表面含浸材のpHは、アルカリ性であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、さらに好ましくは11以上である。ケイ酸塩系表面含浸材のpHがアルカリ性であると、ケイ酸塩系表面含浸材がゲル化しやすく、不揮発性物質の生成量が多く、かつ緻密な構造のゲルを形成しやすくなる。その結果、コンクリート表面の緻密性が高くなり、工程Bにおいて、ドライアウトを防ぐため、より均一なガラス状の保護層が形成しやすくなる。
特に、保護対象が酸劣化したコンクリートである場合、酸塩基反応により劣化因子である酸を固定化することがで、より高い保護効果が得られる。
また、ケイ酸塩系表面含浸材には、ケイ酸アルカリ金属塩の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤、副成分を含んでもよい。
ケイ酸塩系表面含浸材の副成分としては、撥水性を付与するためのアルキルアルコキシシラン、ポリオルガノシロキサンや、充填率を向上させるためのコロイダルシリカ、塗膜養生強化のための酢酸ビニル類やアクリル共重合体等のポリマーエマルジョンが例示される。
また、ケイ酸塩系表面含浸材に、適宜添加される添加剤としては、含浸性を向上させるエタノール等の低級アルコールやドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の界面活性剤、ホウ素等の反応遅延剤、炭酸カリウム等の凍結抵抗剤、その他耐水性、耐酸性、耐摩耗性等の向上を目的に添加される機能付加剤等が例示される。
特に、工程Aの下地の強化を効率的にするためには、カルシウム成分を含有する反応促進剤を併用することが好ましい。カルシウム成分を含有する反応促進剤としては、例えば、特許第5751499号公報に記載されている反応促進剤を挙げることができる。反応促進剤は、工程Aのケイ酸塩系表面含浸材に適宜添加してもよいし、工程Aの前又は後に反応促進剤を塗布する工程を設けて、コンクリート上で混合してもよい。
また、一般的には、前記ケイ酸アルカリ金属塩、添加剤、副成分等は水に溶解又は分散するものから選択され、また、保護対象となるコンクリートは、自然環境中に暴露される土木建築物であることが多いため、ケイ酸塩系表面含浸材の溶媒としては、自然環境を汚染するリスクが少ない水を用いることが多い。
(塗布方法)
ケイ酸塩系表面含浸材の塗布方法はどのようなものでもよく、例えば、噴霧、ローラー塗り、刷毛塗り等の方法が挙げられる。ケイ酸塩系表面含浸材の塗布量は、それぞれの濃度や形態により変更され、コンクリート表面に所望のC−S−Hゲル層を得ることができれば問わない。
また、塗布後に、自然乾燥や加熱処理等の乾燥を行ってもよい。工程Aの後は乾燥工程を設けることが好ましく、工程Bを開始するまでの時間は、3時間以上であることが好ましく、6時間以上であることがより好ましく、特に好ましくは12時間以上である。
また、ケイ酸塩表面含浸材をコンクリート内部へ浸透させるために、工程Aの後に、散水処理といった工程を行なってもよい。
<工程B>
工程Bは、前記下地層の上に、リチウム化合物とケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムを含有するコンクリート保護材を塗布し、ガラス状の保護層を形成する工程であり、工程Aの後に行われる。また、工程Bは、工程Aの後に行いさえすればよく、工程Aと連続して行っても、工程Aと工程Bの間に別の工程(加熱処理や散水処理等)を含んでもよい。
本発明の特徴の一つは、工程Bにおいて、前記下地層の上に、リチウム化合物とケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムを含有するコンクリート保護材を塗布し、ガラス状の保護層を形成することである。本発明において、ガラス状の保護層は、リチウム化合物と、ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムを主成分として構成されるため、アルカリ性を示し、外部からの酸と、酸塩基反応により結晶を生成することで酸を効果的に、層内に補足しやすい。それに加え、生成した結晶は酸に対して高い耐久性を有するため、酸と反応することにより、保護層自身の耐久性が増強されやすい。
本発明では、コンクリート保護材を塗布し、コンクリートへの劣化因子の侵入を遮断する能力が高いガラス状の保護層を形成させることで、高い保護効果が得られやすい。
また、本発明では、コンクリート保護材と類似のケイ酸アルカリ金属塩を含有するケイ酸塩系表面含浸材を用いた下地層を形成してあるため、ガラス状の保護層は下地層と密着しやすい。
(コンクリート保護材)
本発明のコンクリート保護材は、工程Bで用いられ、リチウム化合物と、ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムとを含有する液状組成物であり、塗布後、自然乾燥や加熱処理等の乾燥により保護層を形成しコンクリートの劣化を抑制する材料である。
本発明の補修方法の工程Bで用いられるコンクリート保護材は、リチウム化合物を含有する。ガラス状の保護層を構成する主成分は、ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムであるが、コンクリート保護材に、ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムに加えて、リチウム化合物を含有させておくことで、工程Bで形成される保護層は、より緻密な厚い層を形成しやすく、耐久性を付与しやすい。
含有されるリチウム化合物は、1種類でもよいし、2種類以上の異なる化合物を含んでもよい。リチウム化合物としては、具体的には、ケイ酸リチウム、水酸化リチウム、亜硝酸リチウム等が挙げられ、ケイ酸リチウムであることが特に好ましい。ケイ酸リチウムとしては、メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムのいずれか又は混合物などが挙げられる。
また、コンクリート保護材中のリチウム化合物は、溶液中でケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムと反応してもよい。すなわち、リチウム化合物のリチウムイオンの一部が、ケイ酸ナトリウムのナトリウムイオン及び/又はケイ酸カリウムのカリウムイオンと一部を置換し、ケイ酸リチウムの状態をとってもよい。
また、コンクリート保護材の粘度は、形成する保護層の膜厚や施工性等を考慮して、適宜決定されるが、8〜14Pa・sであることが好ましく、10〜12Pa・sであることがより好ましい。コンクリート保護材の粘度が8Pa・s未満の場合、1回の塗厚が薄いため、1回の塗布では十分な膜厚のガラス状の保護層を形成することが困難になる傾向があり、耐食性が低下し、膜厚を厚くする場合には、工程を何度も繰り返す必要が生じ、均一な膜を形成しにくい。コンクリート保護材の粘度が14Pa・sより大きい場合、コンクリート保護材を塗布時にだれが生じ、施工性が低下する傾向にある。
コンクリート保護材を上記粘度に調製するためには、目的の粘度になるように材料を混合するほかに、粘度の低いコンクリート保護材を調製後に濃縮する、あるいは、粘度の高いコンクリート保護材を調製後に溶媒にて希釈してもよい。
特に、工程Bのコンクリート保護材の粘度は、工程Aのケイ酸塩系表面含浸材の粘度より高い材料を用いることが好ましい。工程Bのコンクリート保護材の粘度が、工程Aのケイ酸塩系表面含浸材の粘度より高い場合、工程Bでの厚いガラス状の保護層を形成しやすくなり、耐腐食性が増強しやすい。
コンクリート保護材は、保護するコンクリートの使用目的によって、その組成が調整されるが、コンクリート保護材を100重量%としたときに、コンクリート保護材中の乾燥固形分が35重量%以上であることが好ましく、より好ましくは40重量%以上である。35未満の場合には、十分な耐久性を有する層が形成されない虞がある。また、その上限は、本発明の目的を損なわない範囲でコンクリート保護材の施工性等を考慮して適宜調整されるが、好ましくは65重量%以下である。なお、「乾燥固形分」とは、コンクリート保護材より溶媒成分を除いたものであり、コンクリート保護材を乾燥させ経時重量変化がほぼなくなったときの固形分量より求められる。
また、乾燥固形分中の主成分は、リチウム化合物とケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムである。
また、形成される層の耐久性をより向上させるためには、前記ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムの合計100モル部に対して、リチウム化合物の含有量が1モル部以上50モル部以下であることが好ましく、リチウム化合物の含有量が10モル部以上30モル部以下であることがより好ましい。
すなわち、本発明のコンクリート保護方法に好適な保護材の一つとして、リチウム化合物とケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムを含有し、コンクリート保護材の粘度が8〜14Pa・sであり、前記ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムの合計100モル部に対して、リチウム化合物の含有量が1モル部以上50モル部以下であるコンクリート保護材を挙げることができる。
このようなコンクリート保護材を用いることで、耐久性に優れたガラス状の保護層を厚膜で形成しやすく、保護効果をより向上させることができる。
また、コンクリート保護材には、リチウム化合物とケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムの他に、本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤、副成分を含んでもよい。
コンクリート保護材の副成分としては、撥水性を付与するためのアルキルアルコキシシラン、ポリオルガノシロキサンや、充填率を向上させるためのコロイダルシリカ、塗膜養生強化のための酢酸ビニル類やアクリル共重合体等のポリマーエマルジョンが例示される。
また、コンクリート保護材に、適宜添加される添加剤としては、含浸性を向上させるエタノール等の低級アルコールやドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の界面活性剤、ホウ素等の反応遅延剤、炭酸カリウム等の凍結抵抗剤、亜硝酸カルシウム等のカルシウム成分を含む反応促進剤、その他耐水性、耐酸性、耐摩耗性等の向上を目的に添加される機能付加剤等が例示される。
また、一般的には、前記リチウム化合物、ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウム、添加剤、副成分等は水に溶解又は分散するものから選択され、また、保護対象となるコンクリートは、自然環境中に暴露される土木建築物であることが多いため、コンクリート保護材の溶媒としては、自然環境を汚染するリスクが少ない水を用いることが多い。
(塗布方法)
コンクリート保護材の塗布方法はどのようなものでもよく、例えば、噴霧、ローラー塗り、刷毛塗り等の方法が挙げられる。コンクリート保護材の塗布量は、本発明の目的を損なわない範囲で、それぞれの濃度や形態に応じて適宜決定できる。また、形成されるガラス状の保護層が目的の厚さとなるように、塗布を複数回行ってもよい
また、本発明のガラス状の保護層を十分に形成するために、塗布後、加熱処理、乾燥等を行うことが好ましい。加熱処理を行うことで、コンクリート保護材の反応を促進することができ、特に、ガラス状の保護層の最表層は、より強固なものとなる。加熱温度、加熱時間は、保護層の膜厚やコンクリート保護材の施工性等を考慮して適宜決定されるが、加熱温度は60℃〜220℃が好ましく、160℃〜220℃がより好ましく、180℃〜220がさらに好ましい。加熱温度が60℃以上であれば、より強固なガラス状の保護層が形成されるため、耐久性が向上する。また、加熱温度が220℃より高くになると形成される保護層にひび割れが発生しやすくなる。加熱時間は5秒〜30秒であることが好ましく、10秒〜15秒であることがより好ましい。加熱時間が30秒以上であると形成される保護層にひび割れが発生しやすくなる。加熱方法としては、赤外線ヒーターや温風等を利用することができる。
(ガラス状の保護層)
本発明において、「ガラス状の保護層」とは、工程Aで形成する下地層の上に、上述したコンクリート保護材により形成される層のことであり、コンクリート内部に新たな劣化因子の侵入を抑制する役割を担う。なお、ガラス状の保護層は、下地のコンクリートを劣化させない範囲で、劣化因子が下地のコンクリートに侵入することを防ぐことができればよく、劣化因子がガラス状の保護層の内部に侵入しない場合と、ガラス状の保護層の内部で劣化因子が反応、固定化され、下地まで拡散させない場合の両方を含む。そのため、ガラス状の保護層の内部には、未反応の部分があってもよい。
また、コンクリート内部への劣化因子の侵入抑制の効果をさらに高めるためには、形成される「ガラス状の保護層」のビッカース硬さ(Hv)は、10以上であることが好ましい。
本発明のガラス状の保護層の膜厚は、保護対象のコンクリートの使用目的やコンクリート保護材の施工性等を考慮して、本発明の目的を損なわない範囲で適宜決定される。保護層としての効果を十分に発揮するためには、本発明のガラス状の保護層の膜厚は、0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上であることがより好ましい。本発明のガラス状の保護層の膜厚が、0.5mm未満の場合、保護層の十分な耐食性が得られにくい。また、本発明のガラス状の保護層の膜厚は、1.5mm以下であることが好ましく、1.2mm以下であることがより好ましい。本発明のガラス状の保護層の膜厚が、1.5mmより大きい場合、保護層内部の固化が不十分となり、耐久性の付与が不十分となる場合がある。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
使用した試薬は次の通りである。
「リチウム化合物」
・メタケイ酸リチウム(粉体、santa cruz biotechnology社製)(以下、「化合物(1)」とする。)
・水酸化リチウム水和物(粉体、和光純薬工業株式会社製)(以下、「化合物(2)」とする。)
「ケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムの混合液」
・ジルコン(fourshell社製、成分;ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)(以下、「組成物(1)」とする。)(pH11)
・エポキシ樹脂(日本シーカ株式会社製、エバーボンドEP−400)
・硫酸(和光純薬工業株式会社製)
・蒸留水
<実施例1−1>
本発明の保護方法を実施したモルタル試験体の耐硫酸性の評価
1)コンクリート保護材(1)の調製
リチウム化合物として、化合物(1)、ケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムの混合液として、組成物(1)を用い、リチウム化合物とケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムとを含有するコンクリート保護材を調整した。
まず、化合物(1)4.497gを60℃に加熱した組成物(1)500mLに溶解させ、混合液を得た。次に、この混合液を60℃設定の乾燥機に放置し、混合液の体積が、乾燥機に入れる前の混合液の体積に対して60%になるまで混合液から水分を蒸発させた。その後、水を蒸発させ濃縮した混合液を、撹拌して材料の均一性を図り、コンクリート保護材(1)を得た。コンクリート保護材(1)は、容器内に密閉して保管した。
コンクリート保護材(1)と組成物(1)と粘度8Pa・sの溶液とをそれぞれ別の容器にいれ、容器を傾けて粘度を比較したところ、コンクリート保護材(1)の粘度は、粘度8Pa・sの溶液より高く、組成物(1)の粘度は、粘度8Pa・sの溶液より低かった。また、コンクリート保護材(1)と粘度14Pa・sの溶液とをそれぞれ別の容器にいれ、容器を傾けて粘度を比較したところ、コンクリート保護材(1)の粘度は、粘度14Pa・sの溶液より低かった。
2)コンクリートの保護
φ5cm×10cmの円柱モルタル試験体を10%硫酸溶液に14日間浸漬させて、酸劣化モルタル試験体を得た。
工程A’−1:水を入れたビーカーに酸劣化モルタル試験体を加え、酸劣化モルタル試験体を振盪し、モルタル試験体(a’)を得た。
工程A−1:ケイ酸塩系表面含浸材として、組成物(1)を用いた。工程A’−1で得たモルタル試験体(a’)上に、組成物(1)を刷毛塗により0.004ml/cm2塗布し、20℃、湿度60%の環境下で30分乾燥させてモルタル試験体(a)を得た。
工程B−1:コンクリート保護材としてコンクリート保護材(1)を用いた。工程A’−1、工程A−1を施したモルタル試験体(a)の上に、コンクリート保護材(1)を刷毛塗により厚さ0.5mmとなるように塗布し、20℃、湿度60%の環境下で3日間乾燥させて、モルタル試験体上にガラス状の保護層を形成させたモルタル試験体を得た。このモルタル試験体を、モルタル試験体(b)とした。
工程B’−1:モルタル試験体上にガラス状の保護層をより強固なものにするために、モルタル試験体(b)を、120℃、湿度30%の環境下で、1分間加熱処理した。このモルタル試験体を、試験体(1)として評価に用いた。また、得られた試験体(1)のガラス状の保護層を測定したところ、0.5mmであった。
3)評価
評価は、日本下水道事業団「下水道コンクリート構造物の腐食抑制技術及び防食技術マニュアル」(平成24年4月)に準拠して行った。まず、5%硫酸溶液に試験体(1)を半浸漬させ、経時的な劣化の様子を観察した。5%硫酸溶液に試験体(1)を半浸漬させて1日および5日経過した後の試験体(1)の写真を図1に示す。また、試験体(1)の5%硫酸溶液への半浸漬5日経過後の重量変化率及び浸漬部位の試験体直径の変化率を求めた結果を表1に示す。
<実施例1−2>
1)コンクリート保護材(2)の調製
リチウム化合物として、化合物(2)、ケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムの混合液として、組成物(1)を用い、リチウム化合物とケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムを含有するコンクリート保護材を調整した。
まず、化合物(2)4.196gを蒸留水100mLに常温で溶解させ、化合物(2)の水溶液を得た。次に、組成物(1)400mLに、化合物(2)の水溶液100mLを常温で撹拌、混合し、組成物(1)と化合物(2)の水溶液との混合液を得た。この混合液を60℃設定の乾燥機に放置し、混合液の体積が、乾燥機に入れる前の混合液の体積に対して60%になるまで混合液から水分を蒸発させた。さらに、水を蒸発させ濃縮した混合液を、撹拌して材料の均一性を図り、コンクリート保護材(2)を得た。コンクリート保護材(2)は、容器内に密閉して保管した。
コンクリート保護材(2)と粘度8Pa・sの溶液とをそれぞれ別の容器にいれ、容器を傾けて粘度を比較したところ、コンクリート保護材(2)の粘度は、粘度8Pa・sの溶液より高かった。また、コンクリート保護材(2)と粘度14Pa・sの溶液とをそれぞれ別の容器にいれ、容器を傾けて粘度を比較したところ、コンクリート保護材(2)の粘度は、粘度14Pa・sの溶液より低かった。
2)コンクリートの保護
工程B−1のコンクリート保護材としてコンクリート保護材(2)を用いた以外は実施例1−1と同様にして、試験体(2)を得た。また、試験体(2)のガラス状の保護層を測定したところ、0.5mmであった。
3)評価
実施例1−1と同様にして、評価を行った。5%硫酸溶液に試験体(2)を半浸漬させて1日および5日経過した後の試験体(2)の写真を図1に示す。また、試験体(2)の5%硫酸溶液への半浸漬5日経過後の重量変化率及び浸漬部位の試験体直径の変化率を求めた結果を表1に示す。
<比較例1−1>
実施例1−1の工程A’−1と同様の方法で、モルタル試験体(a’)を得た。これを試験体(3)として評価に用いた。
評価は、実施例1−1と同様に行った。5%硫酸溶液に試験体(3)を半浸漬させて1日および5日経過した後の試験体(3)の写真を図1に示す。また、試験体(3)の5%硫酸溶液への半浸漬5日経過後の重量変化率及び浸漬部位の試験体直径の変化率を求めた結果を表1に示す。
<比較例1−2>
実施例1−1の工程A’−1と同様の方法で、モルタル試験体(a’)を得た。
次に、モルタル試験体(a’)の上に、エポキシ樹脂を刷毛塗により塗布し、乾燥させ、モルタル試験体(a’)をエポキシ樹脂で被覆した試験体(4)を得た。
実施例1−1と同様にして、評価を行った。5%硫酸溶液に試験体(4)を半浸漬させて1日および5日経過した後の試験体(4)の写真を図1に示す。また、試験体(4)の5%硫酸溶液への半浸漬5日経過後の重量変化率及び浸漬部位の試験体直径の変化率を求めた結果を表1に示す。
比較例1−1、1−2では、5%硫酸溶液への浸漬によって試験体の直径の減少が観察されたのに対して、本発明の保護方法においてコンクリートを保護した実施例1−1及び実施例1−2の試験体は、試験体の直径の減少は観察されず、硫酸に浸漬後も高い耐久性を示しているといえる。ここで、実施例1−1及び実施例1−2の試験体は、5%硫酸溶液に半浸漬後5日目の試験体重量及び浸漬部位の試験体の直径が増加しているが、これは劣化因子である硫酸と、ガラス状の保護層が反応して硫酸塩を生成しているためである。
<実施例2−1>
1)保護対象のコンクリート(c)の作製
実環境下でのコンクリート保護材の適用性を検討するため、10cm×10cm×4cmのコンクリート(c)を作製した。
なお、コンクリートは普通ポルトランドセメントを用い、水セメント比50%とし、10cm×10cm×40cmの型枠で作製した。その後28日間の水中養生後にコンクリートカッターで4cmにカットし、10cm×10cm×4cmとした。
2)コンクリート(c)の保護
工程A−2:ケイ酸塩系表面含浸材として、組成物(1)を用い、コンクリート(c)上に、組成物(1)を刷毛塗により0.004ml/cm2塗布し、20℃、湿度60%の環境下で24時間乾燥させた。
工程B−2:コンクリート保護材として、実施例1−1で調製したコンクリート保護材(1)を用い、工程A−2を施したコンクリート(c)の上に、コンクリート保護材(1)を刷毛塗により厚さ0.5mmとなるように塗布し、20℃、湿度60%の環境下で7日間乾燥させて、コンクリート(c)上にガラス状の保護層を形成させた試験体(c1)を得た。
コンクリート(c)上のガラス状の保護層を測定したところ、0.5mmであった。
3)評価
試験体(c1)を温度35℃、pH4.9〜5.9の廃液施設の大気中に5カ月間設置して、試験体(c1)の外観及び内部の観察を行った。結果を図2に示す。
<比較例2−1>
実施例2−1と同様の方法で、コンクリート(c)を作製し、温度35℃、pH4.9〜5.9の廃液施設の大気中に5カ月間設置して、コンクリート(c)の外観観察を行なった。結果を図2に示す。
<比較例2−2>
実施例2−1と同様の方法で、コンクリート(c)を作製した。
次に、コンクリート(c)上に、エポキシ樹脂を刷毛塗により塗布し、20℃、湿度60%の環境下で24時間乾燥させて、コンクリート(c)表面をエポキシ樹脂で被覆した試験体(c2)を得た。試験体(c2)を温度35℃、pH4.9〜5.9の廃液施設の大気中に5カ月間設置して、試験体(c2)の外観観察を行なった。結果を図2に示す。
図2に示すように、実施例2−1では、温度35℃、pH4.9〜5.9の廃液施設の大気中に5カ月間設置後の試験体(c1)の表面が白色化していたが、内部のコンクリートの外観は変化がないことが確認された。比較例2−1及び比較例2−2の場合は、コンクリートの表面に変色が確認された。
<参考例1>
コンクリート保護材の含有成分であるリチウム化合物として、化合物(1)を、ケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムの混合液として、組成物(1)を用いた。化合物(1)と組成物(1)とをモル比1:10で均一に混合した後、60℃の炉乾燥機で乾燥させ乾燥固化させた後、120℃で1時間炉乾燥させ、乾燥固形分(1)を得た。
また、比較として、組成物(1)を、60℃の炉乾燥機で乾燥させ乾燥固化させた後、120℃で1時間炉乾燥させ、乾燥固形分(2)を得た。
図3に示すように、乾燥固形分(1)は、硫酸水溶液(0.05mol/l)に2週間間浸漬しても溶解せず、強い耐酸性を示した。
さらに、乾燥固形分(1)と乾燥固形分(2)の硫酸水溶液(0.05mol/l)に2週間間浸漬後の重量変化率を求めた。図4に示すように、リチウム化合物を含有することで、硫酸水溶液に浸漬した場合の経時での重量変化が抑制できており、酸に対する耐久性が向上していることが示唆された。
<参考例2>
塩化ビニル板に、実施例1−1で調製したコンクリート保護材(1)のみを1mm厚で塗装し、温度20℃,湿度60%の環境下にて1週間静置し、ガラス状の保護層を形成した。形成したガラス状の保護層に160℃、200℃に設定した加熱板を10、20、30秒の所定の時間押し当て加熱処理した後に、各ガラス状の保護層の硬度をビッカース硬度計にて測定した。結果を図5に示す。
ガラス状の保護層は、加熱温度を上げるに従って、硬度が増加する結果を示した。また、加熱温度200℃における加熱時間の違いによるガラス状の保護層の硬度に大きな違いは確認されなかった。保護材の強度は、200℃の加熱を行うことで、20℃に比べて2.3倍程度大きくできる。
本発明の保護方法は、特に、これまで補修が難しかった下水道処理施設や温泉施設等で問題となっている硫酸劣化に対する優れた耐久性を付与することができる。本発明の保護方法は、既に、近年コンクリートの補修の分野で多く利用されている表面含浸材の技術を応用するものであり、本成果は高い波及効果が期待される。また、コンクリート表層にガラス状の保護層を形成させた場合には、強酸に対して非常に高い抵抗性が発揮されると推察できることから、長期的な耐久性を保持することが期待できる。

Claims (8)

  1. 護対象のコンクリートの表面に、ケイ酸アルカリ金属塩を含有するケイ酸塩系表面含浸材を塗布し、前記コンクリートの表面に、下地層を形成する工程Aと、
    記下地層の上に、リチウム化合物と、ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムとを含有するコンクリート保護材を塗布し、ガラス状の保護層を形成する工程Bと、
    前記工程Bの後に、前記下地層の上に塗布した前記コンクリート保護材を加熱する工程B’と、を有し、
    前記コンクリート保護材の粘度が、前記ケイ酸塩系表面含浸材の粘度より高いことを特徴とするコンクリート保護方法
  2. 前記工程B’の加熱温度は60℃〜220℃である請求項1に記載のコンクリート保護方法。
  3. 前記コンクリート保護材の粘度が、8Pa・s以上14Pa・s以下である請求項1又は2に記載のコンクリート保護方法。
  4. 前記ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムの合計100モル部に対して、リチウム化合物の含有量が1モル部以上50モル部以下である請求項1からのいずれか1項に記載のコンクリート保護方法。
  5. 前記リチウム化合物がケイ酸リチウムである請求項1からのいずれか1項に記載のコンクリート保護方法。
  6. 工程Aにおける前記ケイ酸アルカリ金属塩がケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウムであり、前記ケイ酸塩系表面含浸材のpHが11以上である請求項1からのいずれか1項に記載のコンクリート保護方法。
  7. 保護対象のコンクリートが劣化した部分を含むコンクリートであって、工程Aの前に、劣化した部分を除去する工程A’を含む請求項1からのいずれか1項に記載のコンクリート保護方法。
  8. 保護対象のコンクリートが、酸劣化した部分を含むコンクリートである請求項1からのいずれか1項に記載のコンクリート保護方法。
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