実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1について説明する。実施の形態1は、永久磁石埋込型の電動機において、ロータの磁石挿入孔内で永久磁石を位置決めし、且つ永久磁石の減磁を抑制することを目的としている。
図1は、本発明の実施の形態1の電動機100の構成を示す断面図である。この電動機100は、ロータ2に永久磁石40を埋め込んだ永久磁石埋込型電動機であり、例えばロータリー圧縮機300(図8参照)に用いられる。なお、図1は、ロータ2の回転軸に直交する面における断面図である。
図1に示すように、電動機100は、ステータ1と、ステータ1の内側に回転可能に設けられたロータ2とを備えている。ステータ1とロータ2との間には、例えば0.3〜1mmのエアギャップが形成されている。
ステータ1は、ステータコア10と、ステータコア10に巻回されたコイル15(図8)とを備えている。ステータコア10は、厚さ0.1〜0.7mm(ここでは0.35mm)の複数の電磁鋼板を回転軸方向に積層し、カシメにより締結したものである。
ステータコア10は、環状のヨーク部11と、ヨーク部11から径方向内側に突出する複数(ここでは9つ)のティース12とを有している。隣り合うティース12の間には、スロットが形成される。各ティース12は、径方向内側の先端に、幅(ステータコア10の周方向の寸法)の広い歯先部13を有している。
各ティース12には、ステータ巻線であるコイル15(図8)が巻回されている。コイル15は、マグネットワイヤを、絶縁体16(図8)を介してティース12に巻回すことによって形成される。また、コイル15は、3相(U相、V相およびW相)をY結線したものである。
なお、ステータコア10は、ティース12毎の複数(ここでは9つ)のブロックが薄肉部を介して連結された構成を有している。ステータコア10を帯状に展開した状態で、各ティース12に例えば直径1.0mmのマグネットワイヤ(コイル15)を例えば80ターン巻回し、その後、ステータコア10を環状に曲げて両端部を溶接する。なお、ステータコア10は、このように複数のブロックが連結された構成を有するものには限定されない。
次に、ロータ2の構成について説明する。ロータ2は、ロータコア20と、ロータコア20に取り付けられた永久磁石40とを有している。ロータコア20は、厚さ0.1〜0.7mm(ここでは0.35mm)の複数の電磁鋼板を回転軸方向に積層し、カシメにより締結したものである。ロータコア20は、ここでは2種類の電磁鋼板、すなわち第1の電磁鋼板201(図2〜図3)と第2の電磁鋼板202(図4〜図5)とを積層して構成されている。
図2は、第1の電磁鋼板201を平面視で示すロータ2の断面図である。ロータコア20は、円筒形状を有しており、その径方向中心にはシャフト孔21(中心孔)が形成されている。シャフト孔21には、ロータ2の回転軸となるシャフト(例えば図8に示したロータリー圧縮機300のシャフト315)が、焼嵌または圧入等によって固定されている。
以下では、ロータコア20の外周(円周)に沿った方向を、単に「周方向」と称する。また、ロータコア20の軸方向(回転軸の方向)を、単に「軸方向」と称する。また、ロータコア20の半径方向を、単に「径方向」と称する。
ロータコア20の外周面に沿って、永久磁石40が挿入される複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔22が形成されている。磁石挿入孔22は空隙であり、1磁極に1つの磁石挿入孔22が対応している。ここでは6つの磁石挿入孔22が設けられているため、ロータ2全体で6極となる。なお、極数は6極に限定されるものではなく、2極以上であればよい。また、隣り合う磁石挿入孔22の間は、極間となる。
1つの磁石挿入孔22内には、2つの永久磁石40が配置される。すなわち、1磁極について2つの永久磁石40が配置される。ここでは、上記の通りロータ2が6極であるため、合計12個の永久磁石40が配置される。
永久磁石40は、ロータコア20の軸方向に長い平板状の部材であり、ロータコア20の周方向に幅を有し、径方向に厚さを有している。永久磁石40の厚さは、例えば2mmである。永久磁石40は、例えば、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)およびボロン(B)を主成分とする希土類磁石で構成されているが、これについては後述する。
永久磁石40は、厚さ方向に着磁されている。また、1つの磁石挿入孔22内に配置された2つの永久磁石40は、互いに同一の磁極が径方向の同じ側を向くように着磁されている。例えば、ある磁石挿入孔22内に配置された2つの永久磁石40は、それぞれの径方向内側がN極となり、径方向外側がS極となるように着磁されている。
次に、ロータコア20の構成について説明する。図3は、第1の電磁鋼板201を平面視で示すロータコア20の断面図である。磁石挿入孔22は、ロータコア20の周方向に均等に配置されている。また、それぞれの磁石挿入孔22は、周方向の中央部が径方向内側に突出するV字形状を有している。
また、磁石挿入孔22は、周方向中央部(V字形状の頂点をなす部分)を挟んだ両側に、第1の部分22aと第2の部分22bとを有している。磁石挿入孔22の第1の部分22aおよび第2の部分22bは、それぞれ直線状に延在しており、それぞれ永久磁石40(図2)が挿入される。
すなわち、ロータ2の1磁極に2つの永久磁石40がV字状に配置されている。このように配置することで、1磁極に1つの永久磁石40を配置した場合と比較して、永久磁石の電気抵抗が増加し、面内渦電流損を低減することができる。その結果、電動機100の駆動時の損失を低減し、電動機100の効率を向上することができる。
磁石挿入孔22の周方向両側には、フラックスバリア24がそれぞれ形成されている。フラックスバリア24は、磁石挿入孔22に連続して形成された空隙である。フラックスバリア24は、隣り合う磁極間の漏れ磁束(すなわち、極間を通って流れる磁束)を抑制するためのものである。
ロータコア20の外周とフラックスバリア24との間の領域は、隣り合う磁極の永久磁石40の間で磁束が短絡しないように、磁路が狭くなるように形成されている。ここでは、ロータコア20の外周とフラックスバリア24との距離は、ロータコア20を構成する電磁鋼板の厚さと同じ(例えば0.35mm)に設定されている。
ロータコア20は、磁石挿入孔22の周方向の中央部(周方向中央部)に、突起である第1の磁石保持部31を有している。第1の磁石保持部31は、磁石挿入孔22内で隣り合う2つの永久磁石40(図2)の間に配置されている。
第1の磁石保持部31は、永久磁石40の厚さ方向において、永久磁石40の板面(平坦面)よりも、永久磁石40の内部側に突出するように形成されている。言い換えると、第1の磁石保持部31は、2つの永久磁石40の互いに対向する各端面に対して、当接可能に形成されている。
また、ロータコア20は、磁石挿入孔22の周方向の両端部(周方向端部)に、突起である第2の磁石保持部32をそれぞれ有している。第2の磁石保持部32は、磁石挿入孔22内で隣り合う2つの永久磁石40(図2)に対して、周方向の外側に配置されている。
第2の磁石保持部32は、永久磁石40の厚さ方向において、永久磁石40の板面(平坦面)よりも、永久磁石40の内部側に突出するように形成されている。言い換えると、それぞれの第2の磁石保持部32は、2つの永久磁石40の互いに離れた側の各端面に対して、当接可能に形成されている。
磁石挿入孔22の幅(永久磁石40の厚さ方向の寸法)は、永久磁石40をがたつかせずに保持することが可能な幅に設定されている。また、永久磁石40の厚さを2mmとすると、永久磁石40の厚さ方向における磁石保持部31,32の突出量は、例えば0.5mmに設定される。
磁石保持部31,32は、ロータコア20の一部として形成され、永久磁石40を磁石挿入孔22内で周方向に移動しないように位置決め(位置規制)する。電動機100の駆動時には、ステータ1のコイル15から発生した磁束と永久磁石40との作用により、永久磁石40を磁石挿入孔22内で移動させる方向に電磁力が発生する。磁石保持部31,32を設けることで、永久磁石40の移動を抑制し、また、永久磁石40の移動に伴う振動音の発生を抑制することができる。
永久磁石40を磁石挿入孔22内で位置決めする構成としては、他に、磁石挿入孔22の周方向中央部にブリッジ部を設けて磁石挿入孔22を2つに分断する構成がある。しかしながら、ブリッジ部は磁性材料で構成されるため、例えば、永久磁石40のN極から出た磁束が、ブリッジ部を通って同じ永久磁石40のS極に流れるといった磁束の短絡が生じる。このような磁束の短絡は、マグネットトルクの低下の原因となる。
これに対し、磁石挿入孔22内に複数の永久磁石40を配置し、突起状の磁石保持部31,32を設けた構成を採用することで、ブリッジ部を設けた場合のような磁束の短絡を抑制することができ、マグネットトルクの低下を抑制することができる。
ここでは、磁石挿入孔22の周方向中央部に設けた1つの第1の磁石保持部31によって、2つの永久磁石40の互いに対向する側を位置決めしている。しかしながら、磁石挿入孔22の周方向中央部に2つの第1の磁石保持部31を設け、それぞれが永久磁石40を位置決めするようにしてもよい。
磁石保持部31,32は、磁石挿入孔22の径方向内側に形成されている。すなわち、磁石保持部31,32の径方向外側には、空隙が形成される。磁石保持部31,32を磁石挿入孔22の径方向外側ではなく径方向内側に形成するのは、永久磁石40の減磁を抑制する効果を高めるためである。
ここで、永久磁石40の減磁について説明する。電動機100の駆動時には、ステータ1のコイル15で発生した磁束がロータコア20の永久磁石40の外周側を通ることによって磁気吸引力が発生し、ロータ2を回転させる回転トルクが生じる。
ステータ1のコイル15に流れる電流が大きい場合、または電流位相を変化させた場合には、コイル15で発生した磁束が永久磁石40の磁化を打ち消す方向に作用することがある。そして、コイル15に流れる電流値が閾値を超えると、永久磁石40の磁化が反転して元に戻らなくなる減磁という現象が生じる。
磁石挿入孔22の径方向外側に磁石保持部31,32を設けると、磁石保持部31,32は磁性材料で構成されているため、ロータコア20における磁石挿入孔22の径方向外側の領域と一体となって磁路を形成しやすい。この領域は、コイル15で発生した磁束が特に流れやすい領域であるため、磁石保持部31,32に隣接する永久磁石40の端部が減磁しやすい。
そのため、磁石保持部31,32は、磁石挿入孔22の径方向外側ではなく径方向内側に配置されている。このように配置すると、ロータコア20における磁石挿入孔22よりも径方向外側の領域と磁石保持部31,32との間に空隙(すなわち磁石挿入孔22の内部の空隙)が形成される。そのため、コイル15で発生した磁束が磁石保持部31,32に流れにくくなり、永久磁石40の減磁が生じにくくなる。
但し、磁石挿入孔22内は空隙であり、磁気抵抗が非常に大きい。磁石挿入孔22の中では、磁石保持部31,32が設けられた部分は、磁気抵抗が局所的に小さい部分となる。そのため、コイル15に流れる電流が大きくなると、コイル15で発生した磁束が磁石保持部31,32に流れる場合があり、磁石保持部31,32に隣接する永久磁石40の端部が減磁する可能性がある。
そこで、この実施の形態1では、ロータコア20を、2種類の電磁鋼板(第1の電磁鋼板201および第2の電磁鋼板202)を積層した構成としている。第1の電磁鋼板201は、図3に示したように、磁石挿入孔22の周方向中央部に第1の磁石保持部31を有し、さらに、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有している。
図4は、第2の電磁鋼板202を平面視で示すロータ2の断面図である。図5は、第2の電磁鋼板202を平面視で示すロータコア20の断面図である。
第2の電磁鋼板202は、第1の電磁鋼板201と同様、複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔22を有している。磁石挿入孔22は、周方向中央部が径方向内側に突出するV字形状を有しており、1つの磁石挿入孔22内には、2つの永久磁石40が配置されている。但し、第2の電磁鋼板202の磁石挿入孔22には、磁石保持部31,32が設けられていない。
図6は、ロータコア20の積層構造を示す図である。ロータコア20は、その回転軸の方向に、図6に示す上から順に、N1枚の第1の電磁鋼板201、N2枚の第2の電磁鋼板202、N3枚の第1の電磁鋼板201、N4枚の第2の電磁鋼板202、およびN5枚の第1の電磁鋼板201を積層したものである。すなわち、ロータコア20の回転軸方向(積層方向)の両端部および中央部に、第1の電磁鋼板201が配置されている。
ロータコア20を構成する電磁鋼板の総数Aは、N1+N2+N3+N4+N5である。一方、ロータコア20を構成する電磁鋼板のうち、磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の間に第1の磁石保持部31を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Bは、N1+N3+N5である。また、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Cも、N1+N3+N5である。
すなわち、ロータコア20を構成する電磁鋼板の総数Aと、磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の間に第1の磁石保持部31を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Bと、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Cとは、A>B,A>Cの関係を満足する。
この実施の形態1では、ロータコア20の第1の電磁鋼板201に設けられた磁石保持部31,32によって、永久磁石40を磁石挿入孔22内で位置決めすることができる。また、ロータコア20の第2の電磁鋼板202には磁石保持部31,32が設けられていないため、ステータ1のコイル15に流れる電流が大きくなった場合であっても、磁石保持部31,32から永久磁石40に流れる磁束に起因する永久磁石40の減磁を抑制することができる。
このように、この実施の形態1では、ロータコア20を構成する電磁鋼板の総数Aと、第1の磁石保持部31を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Bと、第2の磁石保持部32を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Cとが、A>BおよびA>Cの関係を満足することにより、永久磁石40を磁石挿入孔22内で位置決めし、且つ永久磁石40の減磁を抑制することができる。
特に、ロータコア20の回転軸方向の少なくとも一端に第1の電磁鋼板201を配置することにより、永久磁石40を磁石挿入孔22に挿入する際に、磁石保持部31,32が永久磁石40のガイドとして機能する。そのため、永久磁石40の挿入作業が容易になる。
また、ロータコア20の回転軸方向の両端部および中央部に第1の電磁鋼板201を配置することにより、永久磁石40がその長手方向(ロータコア20の回転軸方向)に間隔をあけて第1の電磁鋼板201の磁石保持部31,32で保持される。そのため、磁石挿入孔22内における永久磁石40の傾きを効果的に抑制することができる。
なお、ロータコア20の積層構造は、図6に示した積層構造に限定されるものではない。例えば、図7に示すように、ロータコア20の回転軸方向の両端部に第1の電磁鋼板201を積層し、それ以外の部分には第2の電磁鋼板202を積層してもよい。このような積層構造であっても、永久磁石40を磁石挿入孔22内で位置決めし、且つ永久磁石40の減磁を抑制することができる。
次に、永久磁石40の構成について説明する。永久磁石40は、上記のとおり、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)およびボロン(B)を主成分とする希土類磁石で構成されており、ディスプロシウム(Dy)を含有しない。永久磁石40の20℃での残留磁束密度は1.27〜1.42Tであり、20℃での保磁力は1671〜1922kA/mである。
ネオジウム、鉄およびボロンを主成分とする希土類磁石は、温度が上昇すると保磁力が低下する性質を有しており、低下率は−0.5〜−0.6%/Kである。電動機100が圧縮機に用いられる場合、100〜150℃の高温雰囲気で使用される。この場合、電動機100は常温(20℃)よりも130℃程度高い温度で使用されることになるため、永久磁石40の保磁力の低下率を−0.5%/Kとすると、150℃では保磁力が65%低下することになる。そのため、一般には、永久磁石にディスプロシウムを添加して保磁力の向上を図っている。保磁力は、ディスプロシウムの含有量に比例して増加する。
圧縮機に想定される最大負荷がかかった場合に永久磁石の減磁が生じないようにするためには、1100〜1500A/m程度の保磁力が必要である。この保磁力を150℃の雰囲気温度下で確保するためには、常温(20℃)での保磁力を1800〜2300A/mに設計する必要がある。
ネオジウム、鉄およびボロンを主成分とする希土類磁石は、ディスプロシウムを添加していない状態では、常温での保磁力が1800A/m程度である。そのため、2300A/mの保磁力を得るためには、2重量%のディスプロシウムを添加する必要があった。一方、ディスプロシウムは価格が不安定であり、調達リスクを伴うことが知られている。
また、永久磁石にディスプロシウムを添加すると、残留磁束密度が低下する。残留磁束密度が低下すると、電動機のマグネットトルクが低下し、所望の出力を得るために必要な電流が増加する。すなわち、銅損が増加して電動機の効率が低下する。これらの理由から、ディスプロシウムの添加量の低減が求められている。
そこで、この実施の形態1で用いる永久磁石40は、ネオジウム、鉄およびボロンを主成分とする希土類磁石で構成され、ディスプロシウムを含有しない。このようにディスプロシウムを含有しない希土類磁石(ネオジウム、鉄およびボロンを主成分とするもの)は、20℃での残留磁束密度が1.27〜1.42Tであり、20℃での保磁力が1671〜1922kA/mである。
この実施の形態1では、ロータ2が上述した第1の電磁鋼板201と第2の電磁鋼板202とを積層した構造を有することで、永久磁石40の減磁を抑制している。そのため、ディスプロシウムを含有しない永久磁石40(20℃での残留磁束密度が1.27〜1.42Tであり、20℃での保磁力が1671〜1922kA/m)であっても、減磁を抑制することができる。加えて、ディスプロシウムの添加に起因する残留磁束密度の低下を回避できるため、同一トルクを得るために必要な電流値を低減することができる。その結果、銅損を低減し、電動機の効率を向上することができる。
次に、電動機100を用いたロータリー圧縮機300について説明する。図8は、ロータリー圧縮機300の構成を示す断面図である。ロータリー圧縮機300は、フレーム301と、フレーム301内に配設された圧縮機構310と、圧縮機構310を駆動する電動機100とを備えている。
圧縮機構310は、シリンダ室312を有するシリンダ311と、電動機100によって回転するシャフト315と、シャフト315に固定されたローリングピストン314と、シリンダ室312内を吸入側と圧縮側に分けるベーン(図示せず)と、シャフト315が挿入されてシリンダ室312の軸方向端面を閉鎖する上部フレーム316および下部フレーム317とを有する。上部フレーム316および下部フレーム317には、上部吐出マフラ318および下部吐出マフラ319がそれぞれ装着されている。
フレーム301は、例えば厚さ3mmの鋼板を絞り加工して形成された円筒形状の容器である。フレーム301の底部には、圧縮機構310の各摺動部を潤滑する冷凍機油(図示せず)が貯留されている。シャフト315は、上部フレーム316および下部フレーム317によって回転可能に保持されている。
シリンダ311は、内部にシリンダ室312を備えている。ローリングピストン314は、シリンダ室312内で偏心回転する。シャフト315は偏心軸部を有しており、その偏心軸部にローリングピストン314が嵌合している。
電動機100のステータコア10は、焼き嵌めによりフレーム301の内側に取り付けられている。ステータコア10に巻回されたコイル15には、フレーム301に固定されたガラス端子305から電力が供給される。ロータ2のシャフト孔21(図1)には、シャフト315が固定されている。
フレーム301の外部には、冷媒ガスを貯蔵するアキュムレータ302が取り付けられている。フレーム301には吸入パイプ303が固定され、この吸入パイプ303を介してアキュムレータ302からシリンダ311に冷媒ガスが供給される。また、フレーム301の上部には、冷媒を外部に吐出する吐出パイプ307が設けられている。
冷媒としては、例えば、R410A、R407CまたはR22等を用いることができる。また、地球温暖化防止の観点からは、低GWP(地球温暖化係数)の冷媒を用いることが望ましい。低GWPの冷媒としては、例えば、以下の冷媒を用いることができる。
(1)まず、組成中に炭素の二重結合を有するハロゲン化炭化水素、例えばHFO(Hydro−Fluoro−Orefin)−1234yf(CF3CF=CH2)を用いることができる。HFO−1234yfのGWPは4である。
(2)また、組成中に炭素の二重結合を有する炭化水素、例えばR1270(プロピレン)を用いてもよい。R1270のGWPは3であり、HFO−1234yfより低いが、可燃性はHFO−1234yfより高い。
(3)また、組成中に炭素の二重結合を有するハロゲン化炭化水素または組成中に炭素の二重結合を有する炭化水素の少なくともいずれかを含む混合物、例えばHFO−1234yfとR32との混合物を用いてもよい。上述したHFO−1234yfは低圧冷媒のため圧損が大きくなる傾向があり、冷凍サイクル(特に蒸発器)の性能低下を招く可能性がある。そのため、HFO−1234yfよりも高圧冷媒であるR32またはR41との混合物を用いることが実用上は望ましい。
ロータリー圧縮機300の動作は、以下の通りである。アキュムレータ302から供給された冷媒ガスは、吸入パイプ303を通ってシリンダ311のシリンダ室312内に供給される。電動機100が駆動されてロータ2が回転すると、ロータ2と共にシャフト315が回転する。そして、シャフト315に嵌合するローリングピストン314がシリンダ室312内で偏心回転し、シリンダ室312内で冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出マフラ318,319を通り、さらに電動機100に設けられた風穴(図示せず)を通ってフレーム301内を上昇し、吐出パイプ307から吐出される。
次に、実施の形態1の冷凍空調装置400について説明する。図9は、実施の形態1の冷凍空調装置400の構成を示す図である。図9に示した冷凍空調装置400は、圧縮機401と、凝縮器402と、絞り装置(膨張弁)403と、蒸発器404とを備えている。圧縮機401、凝縮器402、絞り装置403および蒸発器404は、冷媒配管407によって連結されて冷凍サイクルを構成している。すなわち、圧縮機401、凝縮器402、絞り装置403および蒸発器404の順に、冷媒が循環する。
圧縮機401、凝縮器402および絞り装置403は、室外機410に設けられている。圧縮機401は、図8に示したロータリー圧縮機300で構成されている。室外機410には、凝縮器402に室外の空気を供給する室外側送風機405が設けられている。蒸発器404は、室内機420に設けられている。この室内機420には、蒸発器404に室内の空気を供給する室内側送風機406が設けられている。
冷凍空調装置400の動作は、次の通りである。圧縮機401は、吸入した冷媒を圧縮して送り出す。凝縮器402は、圧縮機401から流入した冷媒と室外の空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮して液化させて冷媒配管407に送り出す。室外側送風機405は、凝縮器402に室外の空気を供給する。絞り装置403は、開度を変化させることによって、冷媒配管407を流れる冷媒の圧力等を調整する。
蒸発器404は、絞り装置403により低圧状態にされた冷媒と室内の空気との熱交換を行い、冷媒に空気の熱を奪わせて蒸発(気化)させて、冷媒配管407に送り出す。室内側送風機406は、蒸発器404に室内の空気を供給する。これにより、蒸発器404で熱が奪われた冷風が、室内に供給される。
冷凍空調装置400の圧縮機401は高温雰囲気で使用され、また圧縮時に大きな負荷変動を生じる。高温では永久磁石40の保磁力が低下する傾向があり、また負荷変動によってコイル15に流れる電流の変動も大きくなる。実施の形態1の電動機100は、上記のように永久磁石40の減磁を抑制する構成を有しているため、このような冷凍空調装置400の圧縮機401での使用に適している。
以上説明したように、本発明の実施の形態1によれば、ロータコア20を構成する電磁鋼板の総数Aと、第1の磁石保持部31を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Bと、第2の磁石保持部32を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Cとが、A>BおよびA>Cを満足するように構成した。これにより、永久磁石40を磁石挿入孔22内で位置決めし、且つ、磁石保持部31,32を通る磁束に起因する永久磁石40の減磁を抑制することができる。また、このように永久磁石40の減磁を抑制することで、電動機100の性能低下を抑制し、安定的な駆動制御が可能になる。
また、磁石保持部31,32は、永久磁石40の厚さ方向において、永久磁石40の板面よりも永久磁石40の内部側に突出するように形成されている。そのため、永久磁石40を磁石挿入孔22内で効果的に位置決めすることができる。
また、磁石保持部31,32は、磁石挿入孔22において、ロータコア20の径方向内側に配置されている。そのため、ステータ1のコイル15で発生した磁束が磁石保持部31,32に流れにくくなり、磁石保持部31,32に流れる磁束に起因する永久磁石40の減磁を抑制することができる。
また、第1の磁石保持部31を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Bと、第2の磁石保持部32を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Cとが同じであるため、ロータコア20を構成する電磁鋼板を、第1の電磁鋼板201および第2の電磁鋼板202の2種類とすることができる。これにより、電磁鋼板をプレスする金型の種類を少なくし、製造コストを低減することができる。
また、ロータコア20の回転軸方向の少なくとも一端に、磁石保持部31,32を有する第1の電磁鋼板201が配置されている。そのため、永久磁石40を磁石挿入孔22に挿入する際に、磁石保持部31,32が永久磁石40のガイドとして機能し、永久磁石40の挿入作業が容易になる。
また、永久磁石40は、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)およびボロン(B)を主成分とする希土類磁石であり、20℃での残留磁束密度が1.27T〜1.42Tの範囲内にあり、20℃での保磁力が1671kA/m〜1922kA/mの範囲内にある。そのため、ディスプロシウムを不要にすることができ、ディスプロシウムの添加に起因する残留磁束密度の低下を回避できる。すなわち、同一トルクを得るために必要な電流値を低減し、銅損を低減して電動機の効率を向上することができる。
また、磁石挿入孔22は、周方向中央部が径方向内側に突出するV字形状を有し、2つの永久磁石40が配置されている。そのため、1磁極に2つの永久磁石40をV字に配置することができ、これにより永久磁石40内の面内渦電流損を低減し、電動機の効率を向上することができ、エネルギー消費量を低減することができる。
また、電動機100を用いたロータリー圧縮機300は、例えば冷凍空調装置400の圧縮機401として用いられる。この場合、電動機100は高温雰囲気で使用され、負荷変動も受けやすい。実施の形態1の電動機100は、上記のように永久磁石40の減磁を抑制する構成を有しているため、このような冷凍空調装置400の圧縮機401での使用に適している。
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2は、磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の相互間の漏れ磁束に起因する減磁を効果的に抑制することを目的とする。
実施の形態2のロータコア20は、実施の形態1で説明した第1の電磁鋼板201(図2〜図3)と第2の電磁鋼板202(図4〜図5)に加えて、第3の電磁鋼板203を用いる。図10は、実施の形態2の第3の電磁鋼板203を平面視で示すロータ2の断面図である。図11は、第3の電磁鋼板203を平面視で示すロータコア20の断面図である。
第3の電磁鋼板203は、第1の電磁鋼板201と同様、複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔22を有している。磁石挿入孔22は、周方向中央部が径方向内側に突出するV字形状を有しており、1つの磁石挿入孔22内には、2つの永久磁石40が配置されている。
但し、図11に示すように、第3の電磁鋼板203は、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有するが、周方向中央部に第1の磁石保持部31を有さない。言い換えると、磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の間に、第1の磁石保持部31が設けられていない。
磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の相互間では、漏れ磁束が発生しやすい。そのため、磁石挿入孔22の周方向端部よりも周方向中央部で永久磁石40の減磁が進みやすい。そこで、この実施の形態2では、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有し、周方向中央部の第1の磁石保持部31を有さない第3の電磁鋼板203を用いる。
図12は、実施の形態2におけるロータコア20の積層構造を示す図である。ロータコア20は、その回転軸の方向に、図12における上から順に、N1枚の第1の電磁鋼板201、N2枚の第2の電磁鋼板202、N3枚の第3の電磁鋼板203、N4枚の第2の電磁鋼板202、およびN5枚の第1の電磁鋼板201を積層したものである。すなわち、ロータコア20の回転軸の方向(積層方向)の両端部に第1の電磁鋼板201が配置され、中央部に第3の電磁鋼板203が配置されている。
ロータコア20を構成する電磁鋼板の総数Aは、N1+N2+N3+N4+N5である。一方、ロータコア20を構成する電磁鋼板のうち、磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の間に第1の磁石保持部31を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Bは、N1+N5である。また、ロータコア20を構成する電磁鋼板のうち、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201および第3の電磁鋼板203)の数Cは、N1+N3+N5である。
すなわち、ロータコア20を構成する電磁鋼板の総数Aと、磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の間に第1の磁石保持部31を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Bと、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201および第3の電磁鋼板203)の数Cとは、A>C>Bの関係を満足する。
この実施の形態2では、ロータコア20の第1の電磁鋼板201が、磁石挿入孔22の周方向中央部および周方向端部に磁石保持部31,32をそれぞれ有し、第3の電磁鋼板203が、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有するため、永久磁石40を磁石挿入孔22内で移動しないように位置決めすることができる。
また、ロータコア20の第2の電磁鋼板202が、磁石挿入孔22に磁石保持部31,32を有さないため、ステータ1のコイル15に流れる電流が大きくなった場合であっても、磁石保持部31,32から永久磁石40に流れる磁束に起因する永久磁石40の減磁を抑制することができる。
さらに、ロータコア20の第3の電磁鋼板203が、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有し、周方向中央部に第1の磁石保持部31を有さないため、磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の相互間の漏れ磁束による減磁を効果的に抑制することができる。
また、実施の形態1でも説明したように、ロータコア20の回転軸方向の少なくとも一端に第1の電磁鋼板201を設けることにより、永久磁石40を磁石挿入孔22に挿入する際に、磁石保持部31,32が永久磁石40のガイドとして機能し、永久磁石40の挿入作業が容易になる。
また、ロータコア20の回転軸方向の両端部に第1の電磁鋼板201を配置し、中央部に第3の電磁鋼板203を配置することにより、永久磁石40の傾きを抑制することができる。
なお、実施の形態2の電動機は、ロータコア20の構成を除き、実施の形態1で説明した電動機100と同様に構成されている。また、実施の形態2の電動機は、実施の形態1で説明したロータリー圧縮機300(図8)および冷凍空調装置400(図9)に用いることができる。
次に、実施の形態2の電動機および比較例の電動機のそれぞれについて、電流に対する減磁率の変化を測定した結果について説明する。
実施の形態2の電動機は、上述したように、第1の電磁鋼板201、第2の電磁鋼板202および第3の電磁鋼板203を図12に示すように積層してロータコア20を構成したものである。ロータコア20の回転軸方向の寸法は50mmとし、最上段および最下段の第1の電磁鋼板201の積層厚さはそれぞれ5mmとし、第3の電磁鋼板203の積層厚さは5mmとした。比較例の電動機は、ロータコア20を第1の電磁鋼板201の1種類のみで構成したものであり、それ以外は実施の形態2の電動機と同様である。
図13は、実施の形態2の電動機および比較例の電動機の減磁率の変化を示すグラフである。横軸はステータ1(図1)のコイル15に流した電流(A)であり、縦軸は減磁率(%)である。ここでは、ステータ1のコイル15に流す電流を0A〜15Aと変化させ、永久磁石40の減磁率を測定した。
一般に、永久磁石埋込型の電動機では、永久磁石の減磁率の合否基準は−3%である。図13のグラフから、実施の形態2の電動機では、減磁率が−3%に達する電流(3%減磁電流)が、比較例の電動機と比較して10%程度増加していることが分かる。すなわち、実施の形態2の電動機は、使用可能な電流の範囲が、比較例の電動機よりも広いことが分かる。
また、実施の形態2の電動機を比較例の電動機と同一の電流で駆動する場合には、より保磁力の低い永久磁石を使用することができる。すなわち、永久磁石の保磁力を向上するためのディスプロシウム等の添加量を低減し、または無くすることができる。そのため、製造コストを低減し、またディスプロシウムの添加に起因する残留磁束密度の低下を回避することで電動機の効率を向上することができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態2では、ロータコア20を構成する電磁鋼板の総数Aと、磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の間に第1の磁石保持部31を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201)の数Bと、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を有する電磁鋼板(第1の電磁鋼板201および第3の電磁鋼板203)の数Cとが、A>C>Bの関係を満足する。そのため、実施の形態1で説明した効果に加えて、磁石挿入孔22内で隣り合う永久磁石40の相互間の漏れ磁束による減磁を効果的に抑制することができる。
なお、上記の実施の形態1,2では、ロータコア20が、第1の電磁鋼板201および第2の電磁鋼板202(実施の形態2では、さらに第3の電磁鋼板203)を有する場合について説明したが、さらに別の電磁鋼板を有していてもよい。
図14は、実施の形態1,2の変形例の第4の電磁鋼板204を平面視で示すロータ2の断面図である。図15は、第4の電磁鋼板204を平面視で示すロータコア20の断面図である。
第4の電磁鋼板204は、第1の電磁鋼板201と同様、複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔22を有している。磁石挿入孔22は、周方向中央部が径方向内側に突出するV字形状を有しており、1つの磁石挿入孔22内には、2つの永久磁石40が配置されている。但し、第4の電磁鋼板204は、磁石挿入孔22の周方向中央部に第1の磁石保持部31を有するが、周方向端部に第2の磁石保持部32を有さない。
第4の電磁鋼板204は、磁石挿入孔22の周方向中央部に第1の磁石保持部31を有しているため、永久磁石40の減磁を抑制する効果は第3の電磁鋼板203(図10〜図11)よりも小さいが、磁石挿入孔22の周方向中央部で永久磁石40を位置決めする機能を有している。そのため、例えば、実施の形態2のロータコア20の回転軸方向の一部に第4の電磁鋼板204を用いれば、第1の磁石保持部31が永久磁石40のガイドとなるため、磁石挿入孔22への永久磁石40の挿入が容易になる。
図16は、他の変形例における第5の電磁鋼板205を平面視で示すロータ2の断面図である。図17は、第5の電磁鋼板205を平面視で示すロータコア20の断面図である。
第5の電磁鋼板205は、第1の電磁鋼板201と同様、複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔22を有している。磁石挿入孔22は、周方向中央部が径方向内側に突出するV字形状を有しており、1つの磁石挿入孔22内には、2つの永久磁石40が配置されている。
但し、第5の電磁鋼板205は、磁石挿入孔22の周方向中央部に第1の磁石保持部31を設け、周方向端部に第2の磁石保持部32を設けていない領域と、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を設け、周方向中央部に第1の磁石保持部31を設けていない領域とを共に有している。ここでは、ロータコア20の周方向に、磁石挿入孔22の周方向中央部に第1の磁石保持部31を設けたものと、磁石挿入孔22の周方向端部に第2の磁石保持部32を設けたものとを交互に配置している。この第5の電磁鋼板205を、実施の形態1または2のロータコア20に加えてもよい。
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、直線状の磁石挿入孔25内に永久磁石40を有するロータ2Aにおいて、磁石挿入孔25内で永久磁石40を位置決めし、且つ永久磁石40の減磁を抑制することを目的とする。
実施の形態3のロータ2Aのロータコア20Aは、第1の電磁鋼板206(図18〜図19)と、第2の電磁鋼板207(図20〜図21)とを有して構成されている。図18は、第1の電磁鋼板206を平面視で示すロータ2Aの断面図である。図19は、第1の電磁鋼板206を平面視で示すロータコア20Aの断面図である。
第1の電磁鋼板206は、複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔25を有している。磁石挿入孔25は、実施の形態1のV字状の磁石挿入孔22と異なり、ロータコア20Aの外周に沿って直線状に延在している。1磁極には1つの磁石挿入孔25が対応している。磁石挿入孔25の延在方向は、磁極中心におけるロータコア20Aの径方向に直交する方向である。1つの磁石挿入孔25内には2つの永久磁石40が配置されている。
第1の電磁鋼板206は、磁石挿入孔25の周方向中央部に第1の磁石保持部31を有し、周方向端部に第2の磁石保持部32を有している。また、磁石挿入孔25の周方向両側には、フラックスバリア24がそれぞれ形成されている。磁石保持部31,32およびフラックスバリア24の構成は、実施の形態1で説明した通りである。
図20は、第2の電磁鋼板207を平面視で示すロータ2Aの断面図である。図21は、第2の電磁鋼板207を平面視で示すロータコア20Aの断面図である。
第2の電磁鋼板207は、第1の電磁鋼板206と同様、複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔25を有している。磁石挿入孔25は、直線状に延在しており、1つの磁石挿入孔25内には2つの永久磁石40が配置されている。但し、第2の電磁鋼板207の磁石挿入孔25には、磁石保持部31,32が設けられていない。
第1の電磁鋼板206および第2の電磁鋼板207は、実施の形態1で説明した第1の電磁鋼板201および第2の電磁鋼板202と同様に積層することができる。例えば、図6を参照して説明したように、第1の電磁鋼板206をロータコア20Aの回転軸方向の両端部および中央部(3段目)に積層し、第2の電磁鋼板207を2段目および4段目に積層することができる。
なお、第1の電磁鋼板206および第2の電磁鋼板207の積層構造は、図6を参照して説明した積層構造に限らず、例えば図7を参照して説明した積層構造であってもよい。また、実施の形態2で説明したように、磁石挿入孔25の周方向端部に第2の磁石保持部32を有し、周方向中央部に第1の磁石保持部31を有さない電磁鋼板をさらに加えてもよい。
ロータコア20Aの第1の電磁鋼板206は、磁石挿入孔25に磁石保持部31,32を有するため、磁石挿入孔25内で永久磁石40を位置決めすることができる。また、ロータコア20Aの第2の電磁鋼板207は、磁石挿入孔25に磁石保持部31,32を有さないため、磁石保持部31,32から永久磁石40に流れる磁束に起因する永久磁石40の減磁を抑制することができる。
なお、実施の形態3の電動機は、ロータコア20Aの構成を除き、実施の形態1で説明した電動機100と同様に構成されている。また、実施の形態3の電動機は、実施の形態1で説明したロータリー圧縮機300(図8)および冷凍空調装置400(図9)に用いることができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態3によれば、ロータコア20Aに直線状の磁石挿入孔25を設けた構成においても、永久磁石40を磁石挿入孔25内で位置決めし、且つ永久磁石40の減磁を抑制することができる。
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4は、1つの磁石挿入孔26内に3つの永久磁石40を配置するロータ2Bにおいて、磁石挿入孔26内で永久磁石40を位置決めし、且つ永久磁石40の減磁を抑制することを目的とする。
実施の形態4のロータ2Bのロータコア20Bは、第1の電磁鋼板208(図22〜図23)と、第2の電磁鋼板209(図24〜図25)とを有して構成されている。図22は、第1の電磁鋼板208を平面視で示すロータ2の断面図である。図23は、第1の電磁鋼板208を平面視で示すロータコア20Bの断面図である。
第1の電磁鋼板208は、複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔26を有している。1磁極に1つの磁石挿入孔26が対応している。磁石挿入孔26内には、それぞれ3つの永久磁石40が配置されている。すなわち、1磁極について3つの永久磁石40が配置されている。ここでは、上記の通りロータ2Bが6極であるため、合計18個の永久磁石40が配置されている。
磁石挿入孔26は、図23に示すように、ロータコア20Bの外周に沿って、第1の部分26a、第2の部分26bおよび第3の部分26cを有している。永久磁石40は、これら3つの部分26a,26b,26cのそれぞれに挿入される。
磁石挿入孔26の第1の部分26a、第2の部分26bおよび第3の部分26cのうち、周方向中央部に位置する第2の部分26bは、最も径方向内側に位置しており、周方向に直線状に延在している。第1の部分26aおよび第3の部分26cは、第2の部分26bの両端部からそれぞれ径方向外側に向けて延在している。第1の部分26aと第3の部分26cとの間隔は、ロータコア20Bの外周に近づくほど広がっている。このような磁石挿入孔26の形状は、バスタブ形状とも呼ばれる。
第1の電磁鋼板208は、磁石挿入孔26の周方向中央部に第1の磁石保持部31を有し、周方向端部に第2の磁石保持部32を有している。また、磁石挿入孔26の周方向両側には、フラックスバリア24がそれぞれ形成されている。磁石保持部31,32およびフラックスバリア24の構成は、実施の形態1で説明した通りである。
図24は、実施の形態4の第2の電磁鋼板209を平面視で示すロータ2Bの断面図である。図25は、第2の電磁鋼板209を平面視で示すロータコア20Bの断面図である。
第2の電磁鋼板209は、第1の電磁鋼板208と同様、複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔26を有している。磁石挿入孔26は、バスタブ形状を有しており、1つの磁石挿入孔26内には3つの永久磁石40が配置されている。但し、図25に示すように、第2の電磁鋼板209の磁石挿入孔26には、磁石保持部31,32が設けられていない。
第1の電磁鋼板208および第2の電磁鋼板209は、実施の形態1で説明した第1の電磁鋼板201および第2の電磁鋼板202と同様に積層することができる。例えば、図6を参照して説明したように、第1の電磁鋼板208をロータコア20Bの回転軸方向の両端部および中央部(3段目)に積層し、第2の電磁鋼板209を2段目および4段目に積層することができる。
なお、第1の電磁鋼板208および第2の電磁鋼板209の積層構造は、図6を参照して説明した積層構造に限らず、例えば図7を参照して説明した積層構造であってもよい。また、実施の形態2で説明したように、磁石挿入孔26の周方向端部に第2の磁石保持部32を有し、磁石挿入孔26の周方向中央部に第1の磁石保持部31を有さない電磁鋼板をさらに加えてもよい。
ロータコア20Bの第1の電磁鋼板208は、磁石挿入孔26に磁石保持部31,32を有するため、磁石挿入孔26内で永久磁石40を位置決めすることができる。また、ロータコア20Bの第2の電磁鋼板209は、磁石挿入孔26に磁石保持部31,32を有さないため、磁石保持部31,32を通る磁束に起因する永久磁石40の減磁を抑制することができる。
なお、実施の形態4の電動機は、ロータコア20Bの構成を除き、実施の形態1で説明した電動機100と同様に構成されている。また、実施の形態4の電動機は、実施の形態1で説明したロータリー圧縮機300(図8)および冷凍空調装置400(図9)に用いることができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態4によれば、ロータコア20Bにバスタブ形状の磁石挿入孔26を設け、各磁石挿入孔26内に3つの永久磁石40を配置した構成においても、永久磁石40を磁石挿入孔26内で位置決めし、且つ永久磁石40の減磁を抑制することができる。
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態5は、ロータコア20の磁石挿入孔22の径方向内側に空隙28を設けることで、永久磁石40の減磁を抑制する効果をさらに高めることを目的とする。
実施の形態5のロータコア20は、実施の形態1で説明した第1の電磁鋼板201および第2の電磁鋼板202に、磁石挿入孔22の径方向内側の空隙28を加えたものである。図26は、実施の形態5の第1の電磁鋼板210を平面視で示すロータコア20の断面図である。図27は、第2の電磁鋼板211を平面視で示すロータコア20の断面図である。
実施の形態5の第1の電磁鋼板210は、上述した第1の電磁鋼板201(図2〜3)と同様に構成されているが、磁石挿入孔22の周方向中央部の第1の磁石保持部31の径方向内側に、空隙28を有している。
また、実施の形態5の第2の電磁鋼板211は、上述した第2の電磁鋼板202(図4〜5)と同様に構成されているが、磁石挿入孔22の周方向中央部の径方向内側に、空隙28を有している。
空隙28は、ロータコア20を回転軸方向に貫通するように設けられている。この空隙28は、第1の磁石保持部31の磁気抵抗を増加させることで、ステータ1のコイル15からの磁束が第1の磁石保持部31を通って流れにくくするものである。
このように空隙28を配置することで、第1の磁石保持部31から永久磁石40に流れる磁束に起因する永久磁石40の減磁を抑制することができる。また、空隙28は、例えばロータリー圧縮機300(図8)の冷媒を回転軸方向に通過させ、ロータコア20および永久磁石40を冷却する機能も有している。
空隙28は、できるだけ磁石挿入孔22に近い方が望ましい。空隙28が磁石挿入孔22に近いほど、第1の磁石保持部31の磁気抵抗が高くなるためである。ここでは、空隙28から磁石挿入孔22までの距離が、空隙28からシャフト孔21までの距離よりも短くなるようにしている。空隙28から磁石挿入孔22までの距離の最小値は、ロータコア20を構成する電磁鋼板の厚さ(例えば0.35mm)と同じであり、最大値は3mmである。
第1の電磁鋼板210および第2の電磁鋼板211の積層構造は、実施の形態1で図6または図7を参照して説明したとおりである。また、実施の形態2で説明した第3の電磁鋼板203に空隙28を加えたものを用いてもよい。
実施の形態5の電動機は、ロータコア20の構成を除き、実施の形態1で説明した電動機100と同様に構成されている。また、実施の形態5の電動機は、実施の形態1で説明したロータリー圧縮機300(図8)および冷凍空調装置400(図9)に用いることができる。
以上説明したように、本発明の実施の形態5によれば、磁石挿入孔22の周方向中央部の磁石保持部31の径方向内側に空隙28を設け、空隙28から磁石挿入孔22までの距離を、空隙28からシャフト孔21までの距離よりも短くすることにより、実施の形態1で説明した効果に加えて、第1の磁石保持部31の磁気抵抗を高くし、これにより永久磁石40の減磁を抑制する効果をさらに高めることができる。
なお、上記の実施の形態3および実施の形態4で説明したロータコア20に、実施の形態5で説明した空隙28を加えることも可能である。
以上、本発明の望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良または変形を行なうことができる。
例えば、上記の各実施形態では、ロータ2(2A,2B)が6つの磁石挿入孔22(25,26)を有していたが、磁石挿入孔の数はロータ2(2A,2B)の磁極数に合わせて適宜変更することができる。また、上記の各実施の形態では、1つの磁石挿入孔22(25,26)に配置する永久磁石40の数を2つまたは3つとしたが、4つ以上の永久磁石40を配置してもよい。
また、上記の各実施形態の電動機100を用いた圧縮機は、図8を参照して説明したロータリー圧縮機300に限定されるものではなく、他の種類の圧縮機であってもよい。また、電動機100を用いた冷凍空調装置は、図9を参照して説明した冷凍空調装置400に限定されるものではない。