各実施の形態に係る半導体装置では、たとえば、図1等に示すように、SOI(Silicon On Insulator)基板SUB(半導体基板)が使用される。SOI基板SUBでは、シリコン基板BSUB(半導体支持基板)の上に絶縁膜BOLを介在させてシリコン層SIL(半導体層)が形成されている。そのSOI基板SUBには、シリコン層SILおよび絶縁膜BOLが除去されたシリコン基板BSUBのバルク領域BURと、シリコン層SILおよび絶縁膜BOLが残されたSOI領域SIRとが規定されている。バルク領域BURおよびSOI領域SIRには、メモリトランジスタMTRを含む半導体素子が形成されている。
なお、半導体装置では、半導体素子として、nチャネル型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタとpチャネル型のMOSトランジスタとの双方が形成されているが、この明細書では、説明および図面を簡略化するために、nチャネル型のMOSトランジスタを例に挙げて説明する。
実施の形態1
ここでは、一つのメモリセルが一つのメモリトランジスタと一つの選択トランジスタとによって構成され、そのメモリセルがバルク領域に形成された半導体装置の一例について説明する。
図1に示すように、SOI基板SUBでは、バルク領域BURとSOI領域SIRとが規定されている。バルク領域BURでは、素子分離絶縁膜TISによって、メモリ領域BNRと高耐圧MOSトランジスタ領域BIRとが規定されている。SOI領域SIRでは、素子分離絶縁膜TISによって、低耐圧MOSトランジスタ領域SCRが規定されている。
メモリ領域BNRには、シリコン基板BSUBの表面から所定の深さにわたり、p型のウェル領域PWRが形成されている。ウェル領域PWRには、メモリトランジスタMTRと選択トランジスタSTRとが形成されている。メモリトランジスタMTRと選択トランジスタSTRとは、電気的に直列に接続されている。ウェル領域PWRの表面には、せり上げエピタキシャル層NEL、SEL(せり上げ部)が形成されている。
メモリトランジスタMTRは、電荷蓄積層を含むゲート絶縁膜NOX、ゲート電極NGE、LDD領域NLR(Lightly Doped Drain)および拡散層NDRを有する。ゲート絶縁膜NOXは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とを順次積層させた積層構造とされる。シリコン窒化膜が電荷蓄積層となる。ゲート電極NGEは、ウェル領域PWRの上にゲート絶縁膜NOXを介在させて形成されている。
せり上げエピタキシャル層NELは、ゲート絶縁膜NOXが配置されているウェル領域PWRの表面から、その表面よりも高い位置にわたり形成されている。LDD領域NLRは、ゲート電極NGEの側壁面の直下に位置するウェル領域PWRの部分から、せり上げエピタキシャル層NELの直下に位置するウェル領域PWRの部分に向かって形成されている。
拡散層NDRは、主としてせり上げエピタキシャル層NELに形成されている。拡散層NDRの不純物濃度(第2不純物濃度)は、LDD領域NLRの不純物濃度(第1不純物濃度)よりも高い。ゲート電極NGEの側壁面には、オフセットスペーサ膜OS1、OS2およびスペーサ膜PSFが積層されている。拡散層NDRの表面には、金属シリサイド膜MSFが形成されている。
選択トランジスタSTRは、ゲート絶縁膜SOX、ゲート電極SGE、LDD領域SLRおよび拡散層SDRを有する。ゲート電極SGEは、ウェル領域PWRの上にゲート絶縁膜SOXを介在させて形成されている。LDD領域SLRは、ゲート電極SGEの側壁面の直下に位置するウェル領域PWRの部分から、せり上げエピタキシャル層SELの直下に位置するウェル領域PWRの部分に向かって形成されている。
拡散層SDRは、主としてせり上げエピタキシャル層SELに形成されている。拡散層SDRの不純物濃度は、LDD領域SLRの不純物濃度よりも高い。ゲート電極SGEの側壁面には、オフセットスペーサ膜OS1、OS2およびスペーサ膜PSFが積層されている。拡散層SDRの表面には、金属シリサイド膜MSFが形成されている。
高耐圧MOSトランジスタ領域BIRには、シリコン基板BSUBの表面から所定の深さにわたり、P型のウェル領域PWRが形成されている。ウェル領域PWRには、高耐圧MOSトランジスタHTRが形成されている。高耐圧MOSトランジスタHTRは、たとえば、3.3Vの電圧によって駆動する。高耐圧MOSトランジスタHTRは、ゲート絶縁膜IOX、ゲート電極IGE、LDD領域ILRおよび拡散層IDRを有する。
ゲート電極IGEは、ウェル領域PWRの上にゲート絶縁膜IOXを介在させて形成されている。LDD領域ILRは、ゲート電極IGEの側壁面の直下に位置するウェル領域PWRの部分から、ゲート電極IGEとは距離を隔てられる方向に向かって形成されている。拡散層IDRは、スペーサ膜PSFの側壁面の直下に位置するウェル領域PWRの部分から、ゲート電極IGEとは距離を隔てられる方向に向かって形成されている。
拡散層IDRの不純物濃度は、LDD領域ILRの不純物濃度よりも高い。ゲート電極IGEの側壁面には、オフセットスペーサ膜OS1、OS2およびスペーサ膜PSFが積層されている。
低耐圧MOSトランジスタ領域SCRには、低耐圧MOSトランジスタLTRが形成されている。シリコン層SILの表面には、せり上げエピタキシャル層CELが形成されている。低耐圧MOSトランジスタLTRは、たとえば、1.3Vの電圧によって駆動する。低耐圧MOSトランジスタLTRは、ゲート絶縁膜COX、ゲート電極CGE、LDD領域CLRおよび拡散層CDRを有する。ゲート電極CGEは、シリコン層SILの上にゲート絶縁膜COXを介在させて形成されている。
LDD領域CLRは、ゲート電極CGEの側壁面の直下に位置するシリコン層SILの部分から、せり上げエピタキシャル層CELの直下に位置するシリコン層SILの部分に向かって形成されている。拡散層CDRは、主としてせり上げエピタキシャル層CELに形成されている。拡散層CDRの不純物濃度は、LDD領域CLRの不純物濃度よりも高い。ゲート電極CGEの側壁面には、オフセットスペーサ膜OS1、OS2およびスペーサ膜PSFが積層されている。拡散層CDRの表面には、金属シリサイド膜MSFが形成されている。
メモリトランジスタMTR、選択トランジスタSTR、高耐圧MOSトランジスタHTRおよび低耐圧MOSトランジスタLTR等を覆うように、層間絶縁膜ILFが形成されている。層間絶縁膜ILFを覆うように、絶縁膜ZOFが形成されている。絶縁膜ZOFに、配線WB、配線WS、配線WIおよび配線WCが形成されている。
配線WBは、プラグPLGを介して、メモリトランジスタMTRの一方の拡散層NDRと電気的に接続されている。配線WSは、プラグPLGを介して、選択トランジスタSTRの一方の拡散層SDRと電気的に接続されている。一方の配線WIは、プラグPLGを介して、高耐圧MOSトランジスタHTRの一方の拡散層IDRと電気的に接続されている。他方の配線WIは、プラグPLGを介して、高耐圧MOSトランジスタHTRの他方の拡散層IDRと電気的に接続されている。
一方の配線WCは、プラグPLGを介して、低耐圧MOSトランジスタLTRの一方の拡散層CDRと電気的に接続されている。他方の配線WCは、プラグPLGを介して、低耐圧MOSトランジスタLTRの他方の拡散層CDRと電気的に接続されている。配線WB、配線WS、配線WIおよび配線WCを覆うように、層間絶縁膜がさらに形成されて、その層間絶縁膜に、上層の配線(図示せず)が形成されている。実施の形態1に係る半導体装置は、上記のように構成される。
次に、上述した半導体装置の製造方法の一例について説明する。冒頭で述べたように、説明および図面の簡略化を図るために、nチャネル型のMOSトランジスタを形成する場合について説明するが、半導体装置では、pチャネル型のMOSトランジスタも形成される。
まず、SOI基板SUBが用意される。SOI基板SUBでは、シリコン基板BSUB上に絶縁膜BOLを介在させてシリコン層SILが形成されている(図2参照)。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、SOI領域SIRとなる領域を覆い、バルク領域となる領域を露出するフォトレジストパターンPR1が形成される(図2参照)。
次に、図2に示すように、フォトレジストパターンPR1をエッチングマスクとして、露出しているシリコン層SILを除去することにより、バルク領域BURとなる領域に位置する絶縁膜BOLが露出する。その後、フォトレジストパターンPR1が除去される。
次に、所定の写真製版処理、エッチング処理および成膜処理等を行うことにより、図3に示すように、素子分離絶縁膜TISが形成される。バルク領域BURとなる領域では、素子分離絶縁膜TISによって、メモリ領域BNRと高耐圧MOSトランジスタ領域BIR等とが規定される。SOI領域SIRでは、低耐圧MOSトランジスタ領域SCR等が規定される。
次に、図4に示すように、バルク領域BURとなる領域に位置する絶縁膜BOLが除去されて、バルク領域BURが規定される。次に、所定の写真製版処理およびイオン注入(たとえば、B)を行うことにより、バルク領域BURにp型のウェル領域PWRが形成される。
次に、所定の写真製版処理およびイオン注入(たとえば、BF2)を行うことにより、メモリ領域BNRにおける選択トランジスタが形成される領域に、チャネル注入領域SCIが形成される。高耐圧MOSトランジスタ領域BIRに、チャネル注入領域ICIが形成される。チャネル注入領域SCIによって、選択トランジスタのしきい値電圧が調整される。チャネル注入領域ICIによって、高耐圧MOSトランジスタのしきい値電圧が調整される。
所定の写真製版処理およびイオン注入(たとえば、B)を行うことにより、SOI領域SIRでは、絶縁膜BOLの直下に位置するシリコン基板BSUBの部分に、グランドプレイン領域GPRが形成される。グランドプレイン領域GPRによって、低耐圧MOSトランジスタのしきい値電圧が調整される。
次に、熱酸化処理を行うことにより、シリコン層SILの表面およびシリコン基板BSUBの表面に、たとえば、膜厚7.5nm程度のシリコン酸化膜OXF1が形成される(図5参照)。シリコン酸化膜OXF1は、高耐圧MOSトランジスタのゲート絶縁膜となる。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、メモリ領域BNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域を露出し、他の領域を覆うフォトレジストパターンPR2が形成される(図5参照)。
次に、図5に示すように、フォトレジストパターンPR2をエッチングマスクとして、エッチング処理を行うことにより、メモリ領域BNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域に位置するシリコン酸化膜OXF1の部分が除去される。次に、フォトレジストパターンPR2を注入マスクとして、イオン注入(たとえば、As)を行うことにより、露出したシリコン基板BSUBにチャネル注入領域NCIが形成される。チャネル注入領域NCIによって、メモリトランジスタのしきい値電圧が調整される。その後、フォトレジストパターンPR2が除去される。
次に、図6に示すように、たとえば、熱酸化法およびCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、シリコン酸化膜OX1、シリコン窒化膜NIおよびシリコン酸化膜OX2を順次積層させたONO膜NXFが形成される。ONO膜NXFは、メモリトランジスタのゲート絶縁膜となる。ONO膜NXFのうち、シリコン窒化膜は電荷蓄積層となる。シリコン酸化膜OXF1は、ONO膜NXFの下層のシリコン酸化膜との合成になる。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、メモリ領域BNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域を覆い、他の領域を露出するフォトレジストパターンPR3が形成される(図7参照)。
次に、図7に示すように、フォトレジストパターンPR3をエッチングマスクとして、エッチング処理を行うことにより、メモリ領域BNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域以外の領域に位置するONO膜NXFの部分が除去される。その後、フォトレジストパターンPR3が除去される。
次に、所定の写真製版処理を行うことにより、バルク領域BURを覆い、SOI領域SIRを露出するフォトレジストパターンPR4が形成される(図8参照)。次に、図8に示すように、フォトレジストパターンPR4をエッチングマスクとしてエッチング処理を行うことにより、SOI領域SIRに位置するシリコン酸化膜OXF1の部分が除去される。その後、フォトレジストパターンPR4が除去される。
次に、図9に示すように、熱酸化処理を行うことにより、シリコン層SILの表面に、たとえば、膜厚1.5nm程度のシリコン酸化膜OXF2が形成される。シリコン酸化膜OXF2は、低耐圧MOSトランジスタのゲート絶縁膜となる。なお、この工程では、低耐圧MOSトランジスタのしきい値電圧を調整するために、熱酸化処理の後に、スパッタ法によって、ハフニウム等が併せて形成される。このため、ONO膜NXFの上層のシリコン酸化膜には、ハフニウム等が堆積する。また、シリコン酸化膜OXF1にも、ハフニウム等が堆積する。
次に、シリコン酸化膜OXF1、シリコン酸化膜OXF2およびONO膜NXF等を覆うように、たとえば、CVD法により、ポリシリコン膜(図示せず)が形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理を行ことにより、ゲート電極NGE、ゲート電極SGE、ゲート電極IGEおよびゲート電極CGEがパターニングされる(図10参照)。
次に、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGEを覆うように、たとえば、シリコン窒化膜(図示せず)が形成される。次に、そのシリコン窒化膜に異方性エッチングを行うことにより、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGEの側壁面のそれぞれに、オフセットスペーサ膜OS1が形成される(図10参照)。次に、露出しているシリコン酸化膜OXF1、OXF2等にエッチング処理が行われる。
これにより、図10に示すように、メモリ領域BNRでは、ウェル領域PWRの上にゲート絶縁膜SOXを介在させてゲート電極SGEが形成される。高耐圧MOSトランジスタ領域BIRでは、ウェル領域PWRの上にゲート絶縁膜IOXを介在させてゲート電極IGEが形成される。低耐圧MOSトランジスタ領域SCRでは、シリコン層SILの上にゲート絶縁膜COXを介在させてゲート電極CGEが形成される。なお、メモリ領域BNRでは、ONO膜NXFのうち、下層のシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが残された状態にある。
次に、図11に示すように、所定の写真製版処理を行うことにより、メモリ領域BNRを露出し、他の領域を覆うフォトレジストパターンPR5が形成される。次に、そのフォトレジストパターンPR5をエッチング膜として、露出しているONO膜NXFの部分が除去される。次に、フォトレジストパターンPR5等を注入マスクとして、n型の不純物を注入することにより、LDD領域NLRおよびLDD領域SLRが形成される。このとき、不純物の濃度(ドーズ量)は、〜1012/cm2程度のオーダとされる。その後、フォトレジストパターンPR5が除去される。
次に、図12に示すように、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGEの側壁面のそれぞれに、オフセットスペーサ膜OS2が形成される。さらに、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGEの側壁面のそれぞれに、スペーサ膜TSFが形成される。スペーサ膜TSFは、仮のスペーサ膜とされる。
次に、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGE等を覆うように、たとえば、シリコン窒化膜(図示せず)が形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理を行うことにより、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRに位置する部分を残して、他の領域に位置する部分が除去される。
次に、図13に示すように、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRがシリコン窒化膜INFによって覆われた状態で、750℃以上の温度条件のもとで水素アニール処理が行われる。これにより、ウェル領域PWRの表面およびシリコン層SILの表面に存在する微量の酸素が、水素との還元反応によって除去される。
次に、シリコンのエピタキシャル成長が行われる。図14に示すように、メモリ領域BNRでは、露出したウェル領域PWRの表面に、シリコンのせり上げエピタキシャル層NEL、SELが形成される。低耐圧MOSトランジスタ領域SCRでは、露出したシリコン層SILの表面に、シリコンのせり上げエピタキシャル層CELが形成される。
このとき、メモリ領域BNRのウェル領域PWRには、イオン注入によって、すでにLDD領域NLRおよびLDD領域SLRが形成されている。ここで、不純物の濃度(〜1012/cm2程度)が比較的低いため、イオン注入に伴うダメージは比較的小さい。しかも、ウェル領域PWRの表面およびシリコン層SILの表面に存在する酸素が除去されている。これにより、シリコンのせり上げエピタキシャル層NEL、SELは安定に成長する。なお、発明者らは、不純物の濃度が、高々〜1014/cm2程度の濃度であれば、シリコンのせり上げエピタキシャル層NEL、SELが安定に成長することを確認した。
次に、図15に示すように、シリコン窒化膜INFとスペーサ膜TSFとが除去される。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRおよび低耐圧MOSトランジスタ領域SCRを露出し、他の領域を覆うフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとしてn型の不純物を注入することにより、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRのウェル領域PWRにLDD領域ILRが形成される。低耐圧MOSトランジスタ領域SCRのシリコン層SILにLDD領域CLRが形成される。その後、フォトレジストパターンが除去される。
次に、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGE等を覆うように、たとえば、シリコン酸化膜等(図示せず)が形成される。次に、そのシリコン酸化膜に異方性エッチング処理を行うことにより、図16に示すように、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGEの側壁面のそれぞれにスペーサ膜PSFが形成される。
次に、所定の写真製版処理を行うことにより、メモリ領域BNR、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRおよび低耐圧MOSトランジスタ領域SCRを露出し、他の領域を覆うフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとして、n型の不純物を注入することにより、図17に示すように、メモリ領域BNRでは、せり上げエピタキシャル層NELに拡散層NDRが形成され、せり上げエピタキシャル層SELに拡散層SDRが形成される。高耐圧MOSトランジスタ領域BIRでは、ウェル領域PWRに拡散層IDRが形成される。低耐圧MOSトランジスタ領域SCRでは、せり上げエピタキシャル層CELに拡散層CDRが形成される。その後、フォトレジストパターンが除去される。
次に、図18に示すように、たとえば、サリサイドプロセスにより、せり上げエピタキシャル層NEL、SEL、CEL(拡散層NDR、拡散層SDR、拡散層CDR)の表面およびウェル領域PWR(拡散層IDR)の表面等に、金属シリサイド膜MSFが形成される。
次に、図19に示すように、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGE等を覆うように、たとえば、シリコン酸化膜等の層間絶縁膜ILFが形成される。その層間絶縁膜ILFを貫通して、金属シリサイド膜MSFのそれぞれに達するプラグPLGが形成される。次に、層間絶縁膜ILFを覆うように絶縁膜ZOFが形成される。その絶縁膜ZOFに、たとえば、ダマシン法によって、配線WB、WS、WI、WCが形成される。その後、必要に応じて上層の配線(図示せず)を形成することにより、図1に示す半導体装置の主要部分が完成する。
次に、上述した半導体装置の動作について説明する。まず、メモリ領域BNRのメモリセルの回路図について説明する。半導体装置のメモリ領域BNRのメモリセルでは、メモリトランジスタMTRと選択トランジスタSTRとがマトリクス状に配置されている。ここでは、説明の簡略化のために、4つのメモリセルを例に挙げる。
図20に示すように、メモリゲート線MGおよび選択ゲート線CGと、ソース線SLおよびビット線BLとが、互いに交差するように配置されている。ソース線SLとビット線BLとの間に、メモリトランジスタMTRと選択トランジスタSTRとが電気的に直列に接続されている。メモリトランジスタMTRのゲート電極が、メモリゲート線MGに電気的に接続されている。選択トランジスタSTRのゲート電極が、選択ゲート線CGに電気的に接続されている。メモリトランジスタMTR11〜MTR22および選択トランジスタSTR11〜STR11等は、p型のウェル領域PWRに形成されている。
ソース線SL1とビット線BL1との間に、メモリトランジスタMTR11と選択トランジスタSTR11とが電気的に直列に接続されている。メモリトランジスタMTR11のゲート電極が、メモリゲート線MG1に電気的に接続されている。選択トランジスタSTR11のゲート電極が、選択ゲート線CG1に電気的に接続されている。
ソース線SL2とビット線BL2との間に、メモリトランジスタMTR12と選択トランジスタSTR12とが電気的に直列に接続されている。メモリトランジスタMTR12のゲート電極が、メモリゲート線MG1に電気的に接続されている。選択トランジスタSTR12のゲート電極が、選択ゲート線CG1に電気的に接続されている。
ソース線SL1とビット線BL1との間に、メモリトランジスタMTR21と選択トランジスタSTR21とが電気的に直列に接続されている。メモリトランジスタMTR21のゲート電極が、メモリゲート線MG2に電気的に接続されている。選択トランジスタSTR21のゲート電極が、選択ゲート線CG2に電気的に接続されている。
ソース線SL2とビット線BL2との間に、メモリトランジスタMTR22と選択トランジスタSTR22とが電気的に直列に接続されている。メモリトランジスタMTR22のゲート電極が、メモリゲート線MG2に電気的に接続されている。選択トランジスタSTR22のゲート電極が、選択ゲート線CG2に電気的に接続されている。
次に、図20に示す回路図に基づいて、メモリセルに対する情報の書き込み動作について説明する。図21に示すように、書き込みを行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11とする。このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に6.5V、選択ゲート線CG1に−3.5V、ソース線SL1に0V、ビット線BL1に−3.5V、ウェル領域PWRに−3.5Vが、それぞれ印加される。
これにより、メモリトランジスタMTR11のゲート電極NGEには正バイアスが印加されて、負バイアスが印加されているウェル領域PWRからゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層(シリコン窒化膜NI)に向かって電子が注入される。こうして、選択されたビットに対して、情報の書き込みが行われる。
一方、書き込みを行わない非選択ビットとして、たとえば、メモリトランジスタMTR22および選択トランジスタSTR22では、メモリゲート線MG2に−1.5V、選択ゲート線CG2に−3.5V、ソース線SL2に0V、ビット線BL2に1.5V、ウェル領域PWRに−3.5Vが、それぞれ印加される。これにより、メモリトランジスタMTR22のゲート電極NGEには負バイアスが印加されて、ゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層(シリコン窒化膜NI)への電子の注入は行われない。
ここで、この半導体装置のメモリトランジスタMTRでは、ビット線の電位が印加される拡散層NDRが、せり上げエピタキシャル層NELに形成されている。このため、LDD領域NLRの不純物濃度のプロファイルが、拡散層の不純物の影響を受けることが抑制される。これにより、LDD領域NLRの不純物濃度のプロファイルが急峻になった場合あるいは緩やかになった場合と比べて、非選択ビットにおいて、情報が誤って消去されることが抑制される。これについては、後で詳しく説明する。
次に、メモリセルに対する情報の消去動作について説明する。図22に示すように、消去を行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11と、メモリトランジスタMTR12および選択トランジスタSTR12とする。
このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に−3.5V、選択ゲート線CG1に3.3V、ウェル領域PWRに6.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL1、SL2およびビット線BL1、BL2を、ハイインピーダンス(Hi−Z)の状態にする。ハイインピーダンスの状態とは、フローティングの状態である。
これにより、メモリトランジスタMTR11、12のゲート電極NGEには負バイアスが印加されて、ゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層に蓄積されている電子が、正バイアスが印加されているウェル領域PWRに向かって引き抜かれる。こうして、選択されたビットに対して、情報の消去が行われる。
一方、消去を行わない非選択ビットとして、メモリトランジスタMTR21および選択トランジスタSTR21と、メモリトランジスタMTR22および選択トランジスタSTR22では、メモリゲート線MG2に6.5V、選択ゲート線CG2に3.3V、ウェル領域PWRに6.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL1、SL2およびビット線BL1、BL2を、ハイインピーダンスの状態にする。これにより、メモリトランジスタMTR21、22のゲート電極NGEの電位とウェル領域PWRの電位とが同電位となって、電子の引き抜きは行われない。
次に、メモリセルに対する情報の読み出し動作について説明する。図23に示すように、読み出しを行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11とする。このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に0V、選択ゲート線CG1に3.3V、ソース線SL1に0V、ビット線BL1に0V、ウェル領域PWRに0Vが、それぞれ印加される。
このとき、メモリトランジスタMTR11の電荷蓄積層に電子が注入されている場合には、メモリトランジスタMTR11のしきい値電圧が上がる。このため、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11を電流は流れない。一方、電荷蓄積層に電子が注入されていない場合には、しきい値電圧が下がり、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11を電流が流れる。こうして、選択ビットに対して、情報の読み取りが行われる。
一方、読み取りを行わない非選択ビットとして、メモリトランジスタMTR22および選択トランジスタSTR22では、メモリゲート線MG2に0V、選択ゲート線CG2に0V、ソース線SL2に0V、ビット線BL2に0V、ウェル領域PWRに0Vが、それぞれ印加される。このため、選択トランジスタSTR11にはチャネル領域が形成されず、情報の読み取りは行われない。
上述した半導体装置のメモリトランジスタMTRでは、ビット線の電位が印加される拡散層NDRが、せり上げエピタキシャル層NELに形成されていることで、LDD領域NLRの不純物濃度のプロファイルが、拡散層NDRの不純物の影響を受けることが抑制されて、書き込みディスターブが軽減される。このことについて、せり上げエピタキシャル層が形成されていない半導体装置と比較して説明する。なお、説明の便宜上、各部の参照符号は実施の形態1に係る半導体装置の符号と同じ符号を用いる。
LDD領域NLRの周辺の不純物濃度のプロファイルが急峻に変化している場合には、書き込み動作を行う際に、非選択ビットのメモリトランジスタMTRでは、ビット線BLによって印加される電位と、ウェル領域PWRに印加されている電位との電位差によって発生したホットホールが電荷蓄積層に注入されることがある。このとき、電荷蓄積層に電子が蓄積されている場合には、ホットホールが注入されることで、情報が誤って消去されることがある(書き込みディスターブ)。
一方、LDD領域NLRの周辺の不純物濃度のプロファイルが緩やかに変化している場合には、拡散層NDRからの空乏層の延びによって、チャネル領域の電位が浮くことがある。このため、非選択ビットのメモリトランジスタMTRでは、負バイアスに印加されているゲート電極の電位とチャネル領域の電位との電位差によって、電荷蓄積層に蓄積されている電子が、ウェル領域(チャネル領域)に引き抜かれてしまい、情報が消去されることがある(書き込みディスターブ)。
このため、図24に示すように、拡散層NDRがウェル領域PWRに形成された半導体装置では、LDD領域NLRとその周辺の不純物濃度のプロファイルを正確に管理することが求められる。しかしながら、拡散層NDRがウェル領域PWRに形成された場合には、拡散層NDRが形成された後に行われる一連の熱処理に伴って、図25に示すように、拡散層NDR中の不純物が拡散してしまう。このため、LDD領域NLRとその周辺の不純物濃度のプロファイルが所望のプロファイルからずれてしまい、非選択ビットにおいて書き込みディスターブが発生しやすくなる。
そこで、発明者らは、メモリトランジスタMTRのLDD領域NLRとその周辺の不純物が、拡散層NDRの不純物の影響を受けない構造として、ウェル領域PWRの表面にせり上げエピタキシャル層NELを形成し、そのせり上げエピタキシャル層NELに拡散層NDRを形成する構造を想到するに至った(図1参照)。
発明者らは、半導体装置の一連の開発において行った、MOSトランジスタ周辺の不純物濃度のプロファイルのシミュレーションによる結果を種々検討した。まず、図26に、比較例となる不純物濃度のプロファイルのシミュレーション結果の一例を示す。
シミュレーションの条件として、ゲート電極GELの高さHを100nm、ゲート長方向の長さLを100nmとした。LDD領域の注入条件を、条件(P、20keV、1.2×1012cm−2)とし、ゲート電極GELを注入マスクとして注入した。ソースドレイン領域の注入条件を、条件((As、20keV、4×1015cm−2)、(P、10keV、5×1014cm−2)とし、ゲート電極GELおよびサイドウォール絶縁膜SWFを注入マスクとして注入した。ハロ領域の注入条件を、条件(BF2、60keV、1.2×1013cm−2)とした。不純物濃度のプロファイルは、製造工程における一連の熱処理を行った後の状態を示す。
図26に示すように、一連の熱処理後では、ソース・ドレイン領域(拡散層に対応)中の不純物が、LDD領域に対応する領域にまで拡散し、LDD領域に対応する領域の不純物濃度が高くなっていることがわかる。すなわち、LDD領域がソース・ドレイン領域に隠れてしまう。
このシミュレーションによる不純物濃度のプロファイルの結果を、メモリトランジスタに当てはめると、書き込み動作を行う際に、非選択ビットにおいて書き込みディスターブを発生させることになると考えられる。
次に、図27に、せり上げエピタキシャル層を形成したMOSトランジスタ周辺の不純物濃度のプロファイルのシミュレーション結果の一例を示す。
シミュレーションの条件として、ゲート電極の高さHを100nm、ゲート長方向の長さLを65nmとした。LDD領域の注入条件を、条件(As、3.5keV、2×1015cm−2)とし、ゲート電極GELを注入マスクとして注入した。ソースドレイン領域の注入条件を、条件((As、10keV、2×1015cm−2)、(P、8keV、3×1015cm−2)とし、ゲート電極GELおよびサイドウォール絶縁膜SWFを注入マスクとして注入した。不純物濃度のプロファイルは、製造工程における一連の熱処理を行った後の状態を示す。
図27に示すように、一連の熱処理後では、ソース・ドレイン領域(拡散層に対応)中の不純物は、せり上げエピタキシャル層の部分にほぼ留まっており、LDD領域に対応する領域にまでは拡散せず、LDD領域としての不純物濃度のプロファイルが維持されていることがわかる(丸枠内参照)。
ここで、このシミュレーションでは、LDD領域の注入条件として、不純物(As)の濃度は、2×1015cm−2に設定されている。一方、メモリトランジスタのLDD領域の不純物濃度は、1012cm−2程度のオーダとされる。このため、シミュレーションによる結果と、実際のメモリトランジスタとでは、LDD領域の不純物濃度のオーダに違いがある。
しかしながら、発明者らは、このシミュレーションによる結果からは、LDD領域の不純物濃度を、1012cm−2程度のオーダに設定したとしても、ソース・ドレイン領域(拡散層に対応)中の不純物は、せり上げエピタキシャル層の部分に留まり、LDD領域の不純物濃度のプロファイルは維持されると考えた。
したがって、発明者らは、LDD領域NLRとその周辺の不純物濃度のプロファイルが維持されることで、書き込み動作を行う際に、非選択ビットにおいて書き込みディスターブ(誤消去)が発生するのを抑制することができると考えた。
次に、高温水素アニールによる効果について説明する。高温水素アニールを行うことで、高温水素アニールを行わない場合と比べて、メモリトランジスタのリテンション特性が向上することが知られている。
メモリトランジスタのゲート絶縁膜へ書き換えストレスを与えた後、書き込み状態と消去状態の保持特性を評価した結果を、図28に示す。横軸は時間であり、縦軸はしきい値電圧である。ゲート絶縁膜の電荷蓄積層に電子が注入されている状態では、しきい値電圧は相対的に高い。ゲート絶縁膜の電荷蓄積層に電子が注入されていない状態では、しきい値電圧は相対的に低い。
ゲート絶縁膜の電荷蓄積層に電子が注入されている状態では、時間の経過とともに、しきい値電圧が徐々に低くなることがわかる。一方、ゲート絶縁膜の電荷蓄積層に電子が注入されていない状態では、時間の経過とともに、しきい値電圧が徐々に高くなることがわかる。特に、この場合には、水素アニールを行った場合と、水素アニールを行っていない場合との差が大きい。水素アニールを行った場合には、水素アニールを行っていない場合と比べて、グラフの傾きが小さくなっており、保持特性が向上していることがわかる。
ゲート絶縁膜(ONO膜)へ書き換えストレスを与えることで、ONO膜の一番下に位置するシリコン酸化膜におけるウェル領域の側の部分には、界面準位(トラップ)が形成される。ONO膜の電荷蓄積層に注入された電子は、その界面準位を介して、ウェル領域へ逃げやすくなる。そこで、水素アニールを行うことで、界面準位に水素がトラップされて、電荷蓄積層に注入された電子が、ウェル領域へ逃げるのを抑制することができる。
次に、水素アニールによって、シリコン酸化膜における界面準位の数が減少することを示すグラフを、図29に示す。横軸はアニール条件であり、縦軸はチャージポンプ電流である。チャージポンプ電流とは、ゲート電極と基板との間に交流電圧を印加することによって、ゲート電極と基板との間に流れる電流であり、界面準位の数とチャージポンプ電流とは比例する。グラフに示されるように、水素アニールを行わない場合には、チャージポンプ電流は比較的高く、また、その値もばらついているのに対して、水素アニールを行うことで、チャージポンプ電流は低くなり、その値のばらつきも小さくなることがわかる。
このように、水素アニール処理は、メモリトランジスタMTRのリテンション特性の向上に寄与する。上述した半導体装置では、せり上げエピタキシャル層を形成することで、せり上げエピタキシャル層を形成する前に行われる水素アニール処理によって代用することができる。
このため、メモリトランジスタMTRのリテンション特性の向上のためにだけ水素アニールを別途行う場合と比べて、メモリトランジスタMTR以外の他の半導体素子等の不純物が影響を受けてしまい、半導体装置としての特性がずれてしまうのを防止することができる。なお、この水素アニール処理では、水素の代わりに重水素を使用してもよい。
実施の形態2
ここでは、一つのメモリセルが一つのメモリトランジスタと一つの選択トランジスタとによって構成され、そのメモリセルがSOI領域に形成された半導体装置の一例について説明する。
図30に示すように、SOI基板SUBでは、バルク領域BURとSOI領域SIRとが規定されている。バルク領域BURでは、素子分離絶縁膜TISによって、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRが規定されている。SOI領域SIRでは、素子分離絶縁膜TISによって、メモリ領域SNRと低耐圧MOSトランジスタ領域SCRとが規定されている。
メモリ領域SNRのシリコン層SILには、メモリトランジスタMTRと選択トランジスタSTRとが形成されている。メモリトランジスタMTRと選択トランジスタSTRとは、電気的に直列に接続されている。シリコン層SILの表面には、せり上げエピタキシャル層NEL、SEL(せり上げ部)が形成されている。
メモリトランジスタMTRは、電荷蓄積層を含むゲート絶縁膜NOX、ゲート電極NGE、LDD領域NLRおよび拡散層NDRを有する。ゲート絶縁膜NOXは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とシリコン酸化膜とを順次積層させた積層構造とされる。シリコン窒化膜が電荷蓄積層となる。ゲート電極NGEは、シリコン層SILの上にゲート絶縁膜NOXを介在させて形成されている。
せり上げエピタキシャル層NELは、ゲート絶縁膜NOXが配置されているシリコン層SILの表面から、その表面よりも高い位置にわたり形成されている。LDD領域NLRは、ゲート電極NGEの側壁面の直下に位置するシリコン層SILの部分から、せり上げエピタキシャル層NELの直下に位置するシリコン層SILの部分に向かって形成されている。拡散層NDRは、主としてせり上げエピタキシャル層NELに形成されている。拡散層NDRの不純物濃度(第2不純物濃度)は、LDD領域NLRの不純物濃度(第1不純物濃度)よりも高い。
選択トランジスタSTRは、ゲート絶縁膜SOX、ゲート電極SGE、LDD領域SLRおよび拡散層SDRを有する。ゲート電極SGEは、シリコン層SILの上にゲート絶縁膜SOXを介在させて形成されている。LDD領域SLRは、ゲート電極SGEの側壁面の直下に位置するシリコン層SILの部分から、せり上げエピタキシャル層SELの直下に位置するシリコン層SILの部分に向かって形成されている。
拡散層SDRは、主としてせり上げエピタキシャル層SELに形成されている。拡散層SDRの不純物濃度は、LDD領域SLRの不純物濃度よりも高い。なお、これ以外の構成については、図1に示す半導体装置の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
次に、上述した半導体装置の製造方法の一例について説明する。実施の形態1において述べたように、説明および図面の簡略化を図るために、nチャネル型のMOSトランジスタを形成する場合について説明するが、半導体装置では、pチャネル型のMOSトランジスタも形成される。
まず、SOI基板SUBが用意される。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、SOI領域SIRとなる領域を覆い、バルク領域となる領域を露出するフォトレジストパターンPR11が形成される(図31参照)。
次に、図31に示すように、フォトレジストパターンPR11をエッチングマスクとして、露出しているシリコン層SILを除去することにより、バルク領域BURとなる領域に位置する絶縁膜BOLが露出する。その後、フォトレジストパターンPR11が除去される。
次に、所定の写真製版処理、エッチング処理および成膜処理等を行うことにより、図32に示すように、素子分離絶縁膜TISが形成される。バルク領域BURとなる領域では、素子分離絶縁膜TISによって、高耐圧MOSトランジスタ領域BIR等が規定される。SOI領域SIRでは、メモリ領域SNRと低耐圧MOSトランジスタ領域SCRとが規定される。
次に、図33に示すように、バルク領域BURとなる領域に位置する絶縁膜BOLが除去されて、バルク領域BURが規定される。次に、所定の写真製版処理およびイオン注入(たとえば、B)を行うことにより、バルク領域BURにp型のウェル領域PWRが形成される。
次に、所定の写真製版処理およびイオン注入(たとえば、BF2)を行うことにより、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRに、チャネル注入領域ICIが形成される。また、所定の写真製版処理およびイオン注入(たとえば、B)を行うことにより、SOI領域SIRでは、絶縁膜BOLの直下に位置するシリコン基板BSUBの部分に、グランドプレイン領域GPRが形成される。
次に、熱酸化処理を行うことにより、シリコン層SILの表面およびシリコン基板BSUBの表面に、たとえば、膜厚7.5nm程度のシリコン酸化膜OXF1が形成される(図34参照)。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、メモリ領域SNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域を露出し、他の領域を覆うフォトレジストパターンPR12が形成される(図34参照)。
次に、図34に示すように、フォトレジストパターンPR12をエッチングマスクとして、エッチング処理を行うことにより、メモリ領域SNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域に位置するシリコン酸化膜OXF1の部分が除去される。その後、フォトレジストパターンPR12が除去される。
次に、図35に示すように、シリコン酸化膜OXF1等を覆うように、ONO膜NXFが形成される。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、メモリ領域SNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域を覆い、他の領域を露出するフォトレジストパターンPR13が形成される(図36参照)。
次に、図36に示すように、フォトレジストパターンPR13をエッチングマスクとして、エッチング処理を行うことにより、メモリ領域SNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域以外の領域に位置するONO膜NXFの部分が除去される。その後、フォトレジストパターンPR13が除去される。
次に、所定の写真製版処理を行うことにより、バルク領域BURと、メモリ領域SNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域とを覆い、他の領域を露出するフォトレジストパターンPR14が形成される(図37参照)。次に、図37に示すように、フォトレジストパターンPR14をエッチングマスクとしてエッチング処理を行うことにより、バルク領域BURおよびメモリ領域SNRにおけるメモリトランジスタが形成される領域以外の領域に位置するシリコン酸化膜OXF1の部分が除去される。その後、フォトレジストパターンPR14が除去される。
次に、図38に示すように、熱酸化処理を行うことにより、シリコン層SILの表面に、たとえば、膜厚1.5nm程度のシリコン酸化膜OXF2が形成される。次に、シリコン酸化膜OXF1、シリコン酸化膜OXF2およびONO膜NXF等を覆うように、ポリシリコン膜(図示せず)が形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理を行ことにより、ゲート電極NGE、ゲート電極SGE、ゲート電極IGEおよびゲート電極CGEがパターニングされる(図39参照)。
次に、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGEの側壁面のそれぞれに、オフセットスペーサ膜OS1が形成される(図39参照)。次に、露出しているシリコン酸化膜OXF1、OXF2等にエッチング処理が行われる。
これにより、図39に示すように、メモリ領域SNRでは、シリコン層SILの上にゲート絶縁膜SOXを介在させてゲート電極SGEが形成される。高耐圧MOSトランジスタ領域BIRでは、ウェル領域PWRの上にゲート絶縁膜IOXを介在させてゲート電極IGEが形成される。低耐圧MOSトランジスタ領域SCRでは、シリコン層SILの上にゲート絶縁膜COXを介在させてゲート電極CGEが形成される。なお、メモリ領域SNRでは、ONO膜NXFのうち、下層のシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが残された状態にある。
次に、図40に示すように、所定の写真製版処理を行うことにより、メモリ領域BNRを露出し、他の領域を覆うフォトレジストパターンPR15が形成される。次に、そのフォトレジストパターンPR15をエッチング膜として、露出しているONO膜NXFの部分が除去される。その後、フォトレジストパターンPR15が除去される。次に、図41に示すように、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGEの側壁面のそれぞれに、オフセットスペーサ膜OS2が形成される。さらに、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGEの側壁面のそれぞれに、仮のスペーサ膜TSFが形成される。
次に、図42に示すように、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRを覆うように、シリコン窒化膜INFが形成される。次に、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRがシリコン窒化膜INFによって覆われた状態で、750℃以上の温度条件のもとで水素アニール処理が行われる。これにより、ウェル領域PWRの表面およびシリコン層SILの表面に存在する微量の酸素が、水素との還元反応によって除去される。
次に、シリコンのエピタキシャル成長が行われる。図43に示すように、メモリ領域SNRでは、露出したシリコン層SILの表面に、シリコンのせり上げエピタキシャル層NEL、SELが形成される。低耐圧MOSトランジスタ領域SCRでは、露出したシリコン層SILの表面に、シリコンのせり上げエピタキシャル層CELが形成される。
次に、図44に示すように、シリコン窒化膜INFとスペーサ膜TSFとが除去される。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、メモリ領域SNRを露出し、他の領域を覆うフォトレジストパターン(図示せず)。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとしてn型の不純物を注入することにより、シリコン層SILにメモリトランジスタのLDD領域NLRと選択トランジスタのLDD領域SLRとが形成される。その後、フォトレジストパターンが除去される。
次に、所定の写真製版処理を行うことにより、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRおよび低耐圧MOSトランジスタ領域SCRを露出し、他の領域を覆うフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとしてn型の不純物を注入することにより、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRのウェル領域PWRにLDD領域ILRが形成される。低耐圧MOSトランジスタ領域SCRのシリコン層SILにLDD領域CLRが形成される。その後、フォトレジストパターンが除去される。
次に、図45に示すように、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGEの側壁面のそれぞれにスペーサ膜PSFが形成される。次に、所定の写真製版処理を行うことにより、メモリ領域SNR、低耐圧MOSトランジスタ領域SCRおよび高耐圧MOSトランジスタ領域BIRを露出し、他の領域を覆うフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。
次に、そのフォトレジストパターンを注入マスクとして、n型の不純物を注入することにより、図46に示すように、メモリ領域SNRでは、せり上げエピタキシャル層NELに拡散層NDRが形成され、せり上げエピタキシャル層SELに拡散層SDRが形成される。低耐圧MOSトランジスタ領域SCRでは、せり上げエピタキシャル層CELに拡散層CDRが形成される。高耐圧MOSトランジスタ領域BIRでは、ウェル領域PWRに拡散層IDRが形成される。その後、フォトレジストパターンが除去される。
次に、図47に示すように、たとえば、サリサイドプロセスにより、せり上げエピタキシャル層NEL、SEL、CEL(拡散層NDR、拡散層SDR、拡散層CDR)の表面およびウェル領域PWR(拡散層IDR)の表面等に、金属シリサイド膜MSFが形成される。
次に、図48に示すように、ゲート電極NGE、SGE、IGE、CGE等を覆うように、層間絶縁膜ILFが形成される。その層間絶縁膜ILFを貫通して、金属シリサイド膜MSFのそれぞれに達するプラグPLGが形成される。次に、層間絶縁膜ILFを覆うように絶縁膜ZOFが形成される。その絶縁膜ZOFに、配線WB、WS、WI、WCが形成される。その後、必要に応じて上層の配線(図示せず)を形成することにより、図30に示す半導体装置の主要部分が完成する。
次に、上述した半導体装置の動作について説明する。まず、メモリ領域SNRのメモリセルの回路図について説明する。上述した半導体装置では、メモリ領域SNRは、SOI領域SIRのシリコン層SILに形成されている点で、メモリ領域BNRがバルク領域BURのウェル領域PWRに形成されている前述した半導体装置とは異なっている。
このため、図49に示すように、メモリ領域SNRのメモリセルの回路図では、ウェル領域PWRに対応する点線枠が示されていない点を除き、メモリトランジスタMTR、選択トランジスタSTR、メモリゲート線MG、選択ゲート線CG、ソース線SLおよびビット線BLの接続関係は、前述したメモリ領域BNRの回路図(図20参照)と同じである。
次に、図49に示す回路図に基づいて、メモリセルに対する情報の書き込み動作について説明する。図50に示すように、書き込みを行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11とする。このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に6.5V、選択ゲート線CG1に−3.5V、ソース線SL1に0V、ビット線BL1に−3.5Vが、それぞれ印加される。
これにより、メモリトランジスタMTR11のゲート電極NGEには正バイアスが印加されて、シリコン層SILからゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層(シリコン窒化膜NI)に向かって電子が注入される。こうして、選択されたビットに対して、情報の書き込みが行われる。
一方、書き込みを行わない非選択ビットとして、たとえば、メモリトランジスタMTR22および選択トランジスタSTR22では、メモリゲート線MG2に−1.5V、選択ゲート線CG2に−3.5V、ソース線SL2に0V、ビット線BL2に1.5Vが、それぞれ印加される。これにより、メモリトランジスタMTR22のゲート電極NGEには負バイアスが印加されて、ゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層(シリコン窒化膜NI)への電子の注入は行われない。
このとき、メモリトランジスタMTRでは、ビット線BLの電位が印加される拡散層NDRが、せり上げエピタキシャル層NELに形成されている。これにより、前述したように、LDD領域NLRの不純物濃度のプロファイルが、拡散層NDRの不純物の影響を受けることが抑制されて、情報が誤って消去される書き込みディスターブを抑制することができる。
次に、メモリセルに対する情報の消去動作について説明する。図51に示すように、消去を行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11と、メモリトランジスタMTR12および選択トランジスタSTR12とする。
このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に−3.5V、選択ゲート線CG1に3.3V、ソース線SL1、SL2に6.5V、ビット線BL1、BL2に6.5Vが、それぞれ印加される。これにより、メモリトランジスタMTR11のゲート電極NGEには負バイアスが印加されて、ゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層(シリコン窒化膜NI)に蓄積されている電子が、シリコン層SILへ向かって引き抜かれる。こうして、選択されたビットに対して、情報の消去が行われる。
一方、消去を行わない非選択ビットとして、メモリトランジスタMTR21および選択トランジスタSTR21と、メモリトランジスタMTR22および選択トランジスタSTR22では、メモリゲート線MG2に6.5V、選択ゲート線CG2に3.3V、ソース線SL1、SL2に6.5V、ビット線BL1、BL2に6.5Vが、それぞれ印加される。これにより、メモリトランジスタMTR11(ゲート電極)の電位とシリコン層SILの電位とが同電位となって、電子の引き抜きは行われない。
次に、メモリセルに対する情報の読み出し動作について説明する。図52に示すように、読み出しを行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11とする。このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に0V、選択ゲート線CG1に3.3V、ソース線SL1に0V、ビット線BL1に0.8Vが、それぞれ印加される。
このとき、メモリトランジスタMTR11の電荷蓄積層に電子が注入されている場合には、メモリトランジスタMTR11のしきい値電圧が上がる。このため、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11を電流は流れない。一方、電荷蓄積層に電子が注入されていない場合には、しきい値電圧が下がり、メモリトランジスタMTR11および選択トランジスタSTR11を電流が流れる。こうして、選択ビットに対して、情報の読み取りが行われる。
一方、読み取りを行わない非選択ビットとして、メモリトランジスタMTR22および選択トランジスタSTR22では、メモリゲート線MG2に0V、選択ゲート線CG2に0V、ソース線SL2に0V、ビット線BL2に0Vが、それぞれ印加される。このため、選択トランジスタSTR11にはチャネル領域が形成されず、情報の読み取りは行われない。
上述した半導体装置のメモリトランジスタMTRでは、ビット線の電位が印加される拡散層NDRが、せり上げエピタキシャル層NELに形成されている。これにより、前述したように、LDD領域NLRの不純物濃度のプロファイルが、拡散層NDRの不純物の影響を受けることが抑制されて、書き込みディスターブを軽減することができる。
また、前述したように、そのせり上げエピタキシャル層NEL等を形成する前に、高温水素アニールを行うことで、ゲート絶縁膜NOX(下層のシリコン酸化膜)の界面準位が減少して、メモリトランジスタMTRのリテンション特性を向上させることができる。
実施の形態3
実施の形態1、2では、一つのメモリセルが一つのメモリトランジスタと一つの選択トランジスタとによって構成される半導体装置について説明した。ここでは、一つのメモリセルが一つのメモリトランジスタによって構成され、そのメモリセルがバルク領域に形成された半導体装置について説明する。
図53に示すように、SOI基板SUBでは、バルク領域BURとSOI領域SIRとが規定されている。バルク領域BURでは、素子分離絶縁膜TISによって、メモリ領域BNRと高耐圧MOSトランジスタ領域BIRとが規定されている。SOI領域SIRでは、素子分離絶縁膜TISによって、低耐圧MOSトランジスタ領域SCRが規定されている。
メモリ領域BNRに形成されたp型のウェル領域PWRには、メモリトランジスタMTRが形成されている。ウェル領域PWRの表面には、せり上げエピタキシャル層NEL(せり上げ部)が形成されている。メモリトランジスタMTRは、電荷蓄積層を含むゲート絶縁膜NOX、ゲート電極NGE、LDD領域NLRおよび拡散層NDRを有する。
せり上げエピタキシャル層NELは、ゲート絶縁膜NOXが配置されているウェル領域PWRの表面から、その表面よりも高い位置にわたり形成されている。LDD領域NLRは、ゲート電極NGEの側壁面の直下に位置するウェル領域PWRの部分から、せり上げエピタキシャル層NELの直下に位置するウェル領域PWRの部分に向かって形成されている。
拡散層NDRは、主としてせり上げエピタキシャル層NELに形成されている。拡散層NDRの不純物濃度は、LDD領域NLRの不純物濃度よりも高い。なお、これ以外の構成については、図1に示す半導体装置の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
上述した半導体装置は、メモリ領域BNRには、メモリトランジスタMTRだけが形成されて、選択トランジスタが形成されない点を除いて、実施の形態1において説明した製造方法と同じ製造方法によって製造することができる。
次に、上述した半導体装置の動作について説明する。まず、メモリ領域BNRのメモリセルの回路図について説明する。半導体装置のメモリ領域BNRのメモリセルでは、メモリトランジスタMTRがマトリクス状に配置されている。ここでは、説明の簡略化のために、4つのメモリセルを例に挙げる。
図54に示すように、メモリゲート線MGと、ソース線SLおよびビット線BLとが、互いに交差するように配置されている。ソース線SLとビット線BLとの間に、メモリトランジスタMTRが電気的に接続されている。メモリトランジスタMTRのゲート電極が、メモリゲート線MGに電気的に接続されている。メモリトランジスタMTR11〜MTR22等は、p型のウェル領域PWRに形成されている。
ソース線SL1とビット線BL1との間に、メモリトランジスタMTR11が電気的に接続されている。メモリトランジスタMTR11のゲート電極が、メモリゲート線MG1に電気的に接続されている。ソース線SL2とビット線BL2との間に、メモリトランジスタMTR12が電気的に接続されている。メモリトランジスタMTR12のゲート電極が、メモリゲート線MG1に電気的に接続されている。
ソース線SL1とビット線BL1との間に、メモリトランジスタMTR21が電気的に接続されている。メモリトランジスタMTR21のゲート電極が、メモリゲート線MG2に電気的に接続されている。ソース線SL2とビット線BL2との間に、メモリトランジスタMTR22が電気的に接続されている。メモリトランジスタMTR22のゲート電極が、メモリゲート線MG2に電気的に接続されている。
次に、図54に示す回路図に基づいて、メモリセルに対する情報の書き込み動作について説明する。図55に示すように、書き込みを行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11とする。このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に6.5V、ビット線BL1に−3.5V、ウェル領域PWRに−3.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL1を、ハイインピーダンスの状態にする。
これにより、メモリトランジスタMTR11のゲート電極NGEには正バイアスが印加されて、負バイアスが印加されているウェル領域PWRからゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層(シリコン窒化膜NI)に向かって電子が注入される。こうして、選択されたビットに対して、情報の書き込みが行われる。
一方、書き込みを行わない非選択ビットとして、たとえば、メモリトランジスタMTR22では、メモリゲート線MG2に−1.5V、ビット線BL2に1.5V、ウェル領域PWRに−3.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL2を、ハイインピーダンスの状態にする。これにより、メモリトランジスタMTR22のゲート電極NGEには負バイアスが印加されて、ゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層(シリコン窒化膜NI)への電子の注入は行われない。
このとき、メモリトランジスタMTRでは、ビット線BLの電位が印加される拡散層NDRが、せり上げエピタキシャル層NELに形成されている。これにより、すでに説明したように、LDD領域NLRの不純物濃度のプロファイルが、拡散層NDRの不純物の影響を受けることが抑制されて、情報が誤って消去される書き込みディスターブを抑制することができる。
次に、メモリセルに対する情報の消去動作について説明する。図56に示すように、消去を行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11とメモリトランジスタMTR12とする。
このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に−3.5V、ウェル領域PWRに6.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL1、SL2を、ハイインピーダンスの状態にする。ビット線BL1、BL2を、ハイインピーダンスの状態にする。これにより、メモリトランジスタMTR11、12のゲート電極NGEには負バイアスが印加されて、ゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層に蓄積されている電子が、正バイアスが印加されているウェル領域PWRに向かって引き抜かれる。こうして、選択されたビットに対して、情報の消去が行われる。
一方、消去を行わない非選択ビットして、メモリトランジスタMTR21とメモリトランジスタMTR22とでは、メモリゲート線MG2に6.5V、ウェル領域PWRに6.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL1、SL2を、ハイインピーダンスの状態にする。ビット線BL1、BL2を、ハイインピーダンスの状態にする。これにより、メモリトランジスタMTR21、22のゲート電極NGEの電位とウェル領域PWRの電位とが同電位となって、電子の引き抜きは行われない。
次に、メモリセルに対する情報の読み出し動作について説明する。図57に示すように、読み出しを行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11とする。このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に0V、ソース線SL1に0V、ビット線BL1に0.8V、ウェル領域PWRに−2Vが、それぞれ印加される。
このとき、メモリトランジスタMTR11の電荷蓄積層に電子が注入されている場合には、メモリトランジスタMTR11のしきい値電圧が上がる。このため、メモリトランジスタMTR11を電流は流れない。一方、電荷蓄積層に電子が注入されていない場合には、しきい値電圧が下がり、メモリトランジスタMTR11を電流が流れる。こうして、選択ビットに対して、情報の読み取りが行われる。
一方、読み取りを行わない非選択ビットして、メモリトランジスタMTR22では、メモリゲート線MG2に−2V、ソース線SL2に0V、ビット線BL2に0V、ウェル領域PWRに−2Vが、それぞれ印加される。これにより、情報の読み取りは行われない。
上述した半導体装置のメモリトランジスタMTRでは、ビット線の電位が印加される拡散層NDRが、せり上げエピタキシャル層NELに形成されている。これにより、すでに説明したように、LDD領域NLRの不純物濃度のプロファイルが、拡散層NDRの不純物の影響を受けることが抑制されて、書き込みディスターブを軽減することができる。
また、すでに説明したように、そのせり上げエピタキシャル層NEL等を形成する前に、高温水素アニールを行うことで、ゲート絶縁膜NOX(下層のシリコン酸化膜)の界面準位が減少して、メモリトランジスタMTRのリテンション特性を向上させることができる。
実施の形態4
ここでは、一つのメモリセルが一つのメモリトランジスタによって構成され、そのメモリセルがSOI領域に形成された半導体装置について説明する。
図58に示すように、SOI基板SUBでは、バルク領域BURとSOI領域SIRとが規定されている。バルク領域BURでは、素子分離絶縁膜TISによって、高耐圧MOSトランジスタ領域BIRが規定されている。SOI領域SIRでは、素子分離絶縁膜TISによって、メモリ領域SNRと低耐圧MOSトランジスタ領域SCRとが規定されている。
メモリ領域SNRのシリコン層SILには、メモリトランジスタMTRが形成されている。シリコン層SILの表面には、せり上げエピタキシャル層NEL(せり上げ部)が形成されている。メモリトランジスタMTRは、電荷蓄積層を含むゲート絶縁膜NOX、ゲート電極NGE、LDD領域NLRおよび拡散層NDRを有する。
せり上げエピタキシャル層NELは、ゲート絶縁膜NOXが配置されているシリコン層SILの表面から、その表面よりも高い位置にわたり形成されている。LDD領域NLRは、ゲート電極NGEの側壁面の直下に位置するシリコン層SILの部分から、せり上げエピタキシャル層NELの直下に位置するシリコン層SILの部分に向かって形成されている。
拡散層NDRは、主としてせり上げエピタキシャル層NELに形成されている。拡散層NDRの不純物濃度(第2不純物濃度)は、LDD領域NLRの不純物濃度(第1不純物濃度)よりも高い。なお、これ以外の構成については、図30に示す半導体装置の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
上述した半導体装置は、メモリ領域SNRには、メモリトランジスタMTRだけが形成されて、選択トランジスタが形成されない点を除いて、実施の形態2において説明した製造方法と同じ製造方法によって製造することができる。
次に、上述した半導体装置の動作について説明する。まず、メモリ領域SNRのメモリセルの回路図について説明する。上述した半導体装置では、メモリ領域SNRは、SOI領域SIRのシリコン層SILに形成されている点で、メモリ領域BNRがバルク領域BURのウェル領域PWRに形成されている前述した半導体装置(図53参照)とは異なっている。
このため、図59に示すように、メモリ領域SNRのメモリセルの回路図では、ウェル領域PWRに対応する点線枠が示されていない点を除き、メモリトランジスタMTR、メモリゲート線MG、ソース線SLおよびビット線BLの接続関係は、前述したメモリ領域BNRの回路図(図54参照)と同じである。
次に、図59に示す回路図に基づいて、メモリセルに対する情報の書き込み動作について説明する。図60に示すように、書き込みを行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11とする。このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に6.5V、ビット線BL1に−3.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL1は、ハイインピーダンスの状態にする。
これにより、メモリトランジスタMTR11のゲート電極NGEには正バイアスが印加されて、シリコン層SILからゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層(シリコン窒化膜NI)に向かって電子が注入される。こうして、選択されたビットに対して、情報の書き込みが行われる。
一方、書き込みを行わない非選択ビットとして、たとえば、メモリトランジスタMTR22では、メモリゲート線MG2に−1.5V、ビット線BL2に1.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL2は、ハイインピーダンスの状態にする。これにより、メモリトランジスタMTR22のゲート電極NGEには負バイアスが印加されて、ゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層(シリコン窒化膜NI)への電子の注入は行われない。
このとき、メモリトランジスタMTRでは、ビット線BLの電位が印加される拡散層NDRが、せり上げエピタキシャル層NELに形成されている。これにより、すでに説明したように、LDD領域NLRの不純物濃度のプロファイルが、拡散層NDRの不純物の影響を受けることが抑制されて、情報が誤って消去される書き込みディスターブを抑制することができる。
次に、メモリセルに対する情報の消去動作について説明する。図61に示すように、消去を行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11とメモリトランジスタMTR12とする。このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に−3.5V、ビット線BL1、BL2に6.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL1、SL2を、ハイインピーダンスの状態にする。これにより、メモリトランジスタMTR11、12のゲート電極NGEには負バイアスが印加されて、ゲート絶縁膜NOXの電荷蓄積層に蓄積されている電子が、シリコン層SILに向かって引き抜かれる。こうして、選択されたビットに対して、情報の消去が行われる。
一方、消去を行わない非選択ビットとして、メモリトランジスタMTR21とメモリトランジスタMTR22とでは、メモリゲート線MG2に6.5V、ビット線BL1、BL2に6.5Vが、それぞれ印加される。また、ソース線SL1、SL2を、ハイインピーダンスの状態にする。これにより、メモリトランジスタMTR21、22のゲート電極NGEの電位とシリコン層SILの電位とが同電位となって、電子の引き抜きは行われない。
次に、メモリセルに対する情報の読み出し動作について説明する。図62に示すように、読み出しを行う選択ビットを、たとえば、メモリトランジスタMTR11とする。このとき、たとえば、メモリゲート線MG1に2V、ソース線SL1に0V、ビット線BL1に0.8Vが、それぞれ印加される。
このとき、メモリトランジスタMTR11の電荷蓄積層に電子が注入されている場合には、メモリトランジスタMTR11のしきい値電圧が上がる。このため、メモリトランジスタMTR11を電流は流れない。一方、電荷蓄積層に電子が注入されていない場合には、しきい値電圧が下がり、メモリトランジスタMTR11を電流が流れる。こうして、選択ビットに対して、情報の読み取りが行われる。
一方、読み取りを行わない非選択ビットして、メモリトランジスタMTR22では、メモリゲート線MG2に0V、ソース線SL2に0V、ビット線BL2に0Vが、それぞれ印加される。これにより、情報の読み取りは行われない。
上述した半導体装置のメモリトランジスタMTRでは、ビット線の電位が印加される拡散層NDRが、せり上げエピタキシャル層NELに形成されている。これにより、すでに説明したように、LDD領域NLRの不純物濃度のプロファイルが、拡散層NDRの不純物の影響を受けることが抑制されて、書き込みディスターブを軽減することができる。
また、すでに説明したように、そのせり上げエピタキシャル層NEL等を形成する前に、高温水素アニールを行うことで、ゲート絶縁膜NOX(下層のシリコン酸化膜)の界面準位が減少して、メモリトランジスタMTRのリテンション特性を向上させることができる。
なお、各実施の形態において説明した半導体装置については、必要に応じて種々組み合わせることが可能である。たとえば、実施の形態1において説明した半導体装置と、実施の形態2において説明した半導体装置とを組み合わせて、SOI領域SIRとバルク領域BURとの双方に、メモリトランジスタMTRを形成してもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。