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JP6813258B2 - 化学療法の組み合わせ - Google Patents

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Description

本発明は、ペプチドまたはペプチド様分子に関し、特に、そのようなペプチドとさらなる薬剤との組合せ調製物に関し、また、それらの治療における使用、特に抗腫瘍剤としての使用に関する。
ヒトおよび動物の集団における癌の有病率および有病率の死亡率に対する関与は、腫瘍に対する効果的な新薬が継続的に必要であることを意味する。腫瘍の除去、またはその大きさの減少、または血液もしくはリンパ系内での循環癌細胞の数を減少させることは、痛みや不快感を軽減する、転移を予防する、手術介入を容易にする、寿命を延ばす、といった観点から有益である。
癌の特徴である遺伝子的なおよびエピジェネティックな変化は、免疫系が認識し、腫瘍細胞とその健全な同等物を区別するために使用できる抗原をもたらす。原則的に、これは、免疫系が腫瘍を制御するための強力な武器となることができることを意味する。しかし、現実には、免疫系は、通常、腫瘍細胞に対する強力な応答を提供しない。これは、操作して、癌との闘いにおける免疫系を利用することは大きな治療的な関心事である(Mellman et al. Nature 2011, vol. 480, 480-489)。
様々な試みが、腫瘍と戦うための免疫システムを支援するためになされている。初期のアプローチの1つは、免疫系の一般的な刺激に関し、例えば、細菌(生菌または死菌)を投与することで腫瘍に対して一般的な免疫応答を誘発するものである。これは、非特異的免疫と呼ばれている。
腫瘍特異的抗原を特異的に認識する免疫システムを支援することを目的とした最近のアプローチは、腫瘍特異的抗原を、典型的にはアジュバント(免疫応答を引き起こす、または増強することが知られている物質)と組み合せ、被験体へ投与することを含む。このアプローチは、コストと時間がかかる抗原のin vitroでの単離および/または合成を必要とする。多くの場合、全ての腫瘍特異的抗原が同定されておらず、例えば、乳癌において知られている抗原は、全腫瘍の20〜30%である。腫瘍特異的ワクチンの使用は、したがって、限られた成功しかしていない。
腫瘍を治療するための代替方法に対する強い必要性や、二次性腫瘍の増殖または形成を阻害するための代替方法に対する強い必要性が依然として存在する。
「癌ワクチン」は、腫瘍抗原に対する患者の免疫系を刺激して、腫瘍細胞を攻撃し改善された患者の転帰へつながるように設計された治療薬を表記するために使用される用語である。その名前にもかかわらず、癌ワクチンは、一般的に、既存の癌に対する免疫応答を生じる、または増強するのではなく、疾患を予防することを意図している。ここでも、感染源に対する従来のワクチンとは異なり、癌ワクチン、または腫瘍ワクチンは、腫瘍抗原の投与を必要としないことがあり、投与される製品は、腫瘍発生の結果として体内に既に存在する腫瘍抗原を利用し、既存の腫瘍関連抗原(TAA)に対する免疫応答を改変するために役立ち得る。
TAAに対する強力な免疫応答の欠如は、通常、要因の組み合わせによるものであると認識される。T細胞は、T細胞受容体(TCR)による抗原認識を介して開始される免疫応答において重要な役割を持っており、T細胞は、免疫のチェックポイントとして知られている共刺激と阻害シグナルの間のバランスを調整する(Pardoll, Nature 2012, vol. 12, 252-264)。阻害シグナルは免疫系を抑制する。これは自己寛容の維持に重要であり、免疫系が病原体感染に応答しているときに損傷から組織を保護するために重要である。しかしながら、免疫抑制は、腫瘍の発生に対する、身体による有用な応答となりうるものを減少させる。
このT細胞が媒介する免疫刺激および免疫抑制のバランスが、近年、「プッシュプル」アプローチとして知られている腫瘍免疫療法の原理の採用をもたらした。そのアプローチにおいては、強化刺激因子を促進すること(プッシュ)、および、阻害因子(プル)を低減すること(プル)を同時にするために併用療法が利用されている。有益な比喩表現としては、腫瘍免疫療法は、アクセルを押す(プッシュする)とともに、ブレーキを減少(プル)する併用療法である(Berzofsky et al. Semin Oncol. 2012 Jun; 39(3) 348-57)。
例えば、サイトカイン、(樹状細胞を刺激する)CpGといった他の刺激分子、OX40、CD28、CD27およびCD137を含む受容体に対するアゴニスト抗体を使用して、T細胞が関与する共刺激相互作用を直接向上させることができる。これらは、すべて癌免疫療法に対する「プッシュ」型のアプローチである。
相補的な「プル」療法は、抑制性の細胞または分子をブロックまたは枯渇させうるものであり、免疫チェックポイントとして知られているものに対するアンタゴニスト抗体の使用を含む。
免疫チェックポイントには、CTLA-4およびPD1、および免疫チェックポイントに対する当該技術分野で知られている抗体が含まれる。イピリムマブは、転移性メラノーマの治療のため、最初にFDAに承認されライセンスされた抗免疫チェックポイント抗体であった。イピリムマブは、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)をブロックする(Naidoo et al. British Journal of Cancer (2014) 111, 2214-2219)。サブ細胞毒性用量(sub-cytotoxic dose:コントロールに対して20%以下の死亡率を誘導できる値)で、免疫抑制を減らすことができる古典的な化学療法剤と見なされる他の薬剤が知られており、シクロホスファミドおよびドキソルビシンが含まれる。
本発明者らは、腫瘍細胞を溶解し、細胞膜を透過させることが知られているいくつかのペプチドが、ミトコンドリアやリソソーム等の小器官を攻撃するのに非常に効率的であり、それらの溶解を引き起こすことができることを確立した。これは、細胞膜の直接溶解を引き起こさない低濃度で達成することができる。低用量の投与でも、細胞膜の完全性の喪失が最終的に見られる。より高い用量では、これらの分子は細胞膜の溶解を引き起こすことができ、そして細胞小器官の膜の溶解を引き起こすことができる。
注目されるペプチドは、一般的にカチオン性抗菌性ペプチド(CAPS)として知られるペプチド群のサブセットである。これらは、正に帯電している両親媒性ペプチドであり、この種類のペプチドは多くの種で発見されており、自然免疫系の一部を形成している。CAPラクトフェリシン(LfcinB)は、25個のアミノ酸を有するペプチドであり、ミトコンドリアに対する効果を有することが示されている(Eliasen et al. Int. J. Cancer (2006) 119, 493-450)。驚くべきことに、(国際公開2010/060497に記載された種類の)9個のアミノ酸を有するペプチドであり、非常に小さいペプチドが、ミトコンドリアを標的とすることが見出された。LTX-315は予想外のものであった。なぜならば、この小さなペプチドは、(服用(exposure)の24時間後に最も効果を示す)LfcinBに比べ(服用(exposure)の30分後に細胞死を引き起こし)遥かに即効性であり、多くの細胞種に作用し、原形質膜に直接効果を及ぼすことが示唆されたためである。
このオルガネラ膜の破壊は、破壊場所からの物質の放出を引き起こす。この物質は、強力な免疫賦活機能を有しており、このような物質は、一般的にDAMPs(ダメージ関連分子パターン分子)として知られており、ATP、シトクロム-C、ミトコンドリアのCpGのDNA配列、ミトコンドリアのホルミルペプチド、(リソソーム由来の)カテプシン、および(核由来の)HMGB1が含まれる。オルガネラ(細胞小器官)の溶解は、さらなる腫瘍特異的抗原(TAAs)の放出をもたらし得る。
ミトコンドリアや他の細胞小器官の膜を破壊することを通じて、腫瘍に対する免疫応答を刺激するこの能力は、これらのペプチドが、腫瘍の進行に対する治療および保護するために設計された「プッシュ-プル」免疫療法との組合せにおいて、「プッシュ」剤として非常に適していることを意味する。
したがって、第一の態様において、本発明は以下を提供する:
以下の特性を有する化合物、好ましくはペプチドであって:
a)直鎖状配列で9個のアミノ酸からなり;
b)これらの9個のアミノ酸のうち、5個はカチオン性であり、4個は親油性のR基を有していて;
c)前記9個のアミノ酸のうち少なくとも1個は、非遺伝的にコードされたアミノ酸(遺伝的にコードされたアミノ酸の、例えば修飾された誘導体)であり;および任意に、
d)親油性およびカチオン性残基は、いずれかのタイプの残基が互いに2個以下で隣接するように配置され、;さらに、必要に応じて、
e)前記分子は、2対の隣接したカチオン性アミノ酸と、1対または2対の隣接した親油性残基を有し;
サブ細胞毒性用量で投与されたときに、免疫寛容を阻害する細胞毒性化学療法剤と、組合せて、逐次的に、または別々に投与することにより腫瘍の治療に使用されるものである。
本明細書で提案されている上記の併用療法は、特定の有利な実施形態では、相乗効果をもたらすことができる。
上記で定義された分子を含むアミノ酸を本明細書においては、便宜的に「本発明のペプチド化合物」と呼び、この表記は本明細書で開示されるペプチドおよびペプチド模倣物のすべてを含む。
上記カチオン性アミノ酸は、同一または異なっていてもよく、好ましくは、リジンまたはアルギニンであるが、ヒスチジンまたはpH7.0で正電荷を有する非遺伝的にコードされたアミノ酸であってもよい。非遺伝的にコードされた好適なカチオン性アミノ酸には、ホモリジン、オルニチン、ジアミノ酪酸、ジアミノピメリン酸、ジアミノプロピオン酸およびホモアルギニンといった、リジン、アルギニンおよびヒスチジンの類似体が含まれ、同様に、トリメチルリジンおよびトリメチルオルニチン、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸、4-アミノ-1-カルバミミドイルピペリジン-4-カルボン酸(4-amino-1-carbamimidoylpiperidine-4-carboxylic acid)および、4-グアニジノフェニルアラニン(4-guanidinophenylalanine)が含まれる。
非遺伝的にコードされたアミノ酸には、遺伝子にコードされた20種類の標準アミノ酸以外に、遺伝的にコードされたアミノ酸の修飾された誘導体、および天然に存在するアミノ酸が含まれる。本明細書においては、D型アミノ酸は、遺伝的にコードされた20種類のL型アミノ酸とは構造的にだけでなく立体特異的に異なり、厳密には非遺伝的にコードされているが、「非遺伝的にコードされたアミノ酸」と見なされない。本発明の分子は、そのアミノ酸の一部または全部がD型で存在していてもよいが、アミノ酸の全てがL型であることが好ましい。
親油性のアミノ酸(すなわち、親油性のR基を有するアミノ酸)は、同一または異なっていてもよく、その全ては、少なくとも7個、好ましくは、少なくとも8個又は9個、より好ましくは少なくとも10個の非水素原子をもつR基を有する。親油性のR基を有するアミノ酸は、親油性アミノ酸と呼ぶ。通常、親油性のR基は、縮合または接続(connect)されていてもよい少なくとも1個、好ましくは2個の環状基(cyclic group)を有する。
親油性のR基は、O、NまたはSのようなヘテロ原子を含んでいてもよいが、典型的には、ヘテロ原子を1個しか有しておらず、該ヘテロ原子は好ましくは窒素である。このR基は、好ましくは極性基を2個以下しか有さず、より好ましくは極性基を有しないか1個のみ有し、最も好ましくは極性基を有しない。
トリプトファンは好ましい親油性アミノ酸であり、上記分子は、最も好ましくは、1〜3個のトリプトファン残基を有し、より好ましくは2個または3個のトリプトファン残基を有し、最も好ましくは、1個のトリプトファン残基を有する。さらに、上記分子が含有していても良い遺伝的にコードされた親油性アミノ酸は、フェニルアラニンおよびチロシンである。
好ましくは、親油性のアミノ酸のうちの1個が、非遺伝的にコードされたアミノ酸である。最も好ましくは、上記分子が、3個の遺伝的にコードされた親油性のアミノ酸、5個の遺伝的にコードされたカチオン性アミノ酸、および1個の非遺伝的にコードされた親油性のアミノ酸からなる。
上記分子が非遺伝的にコードされた親油性アミノ酸(例えば、アミノ酸誘導体)を含む場合、そのアミノ酸のR基は、好ましくは35個以下の非水素原子を有し、より好ましくは30個以下の非水素原子を有し、最も好ましくは25個以下の非水素原子を有する。
好ましい非遺伝的にコードされたアミノ酸には以下のものが含まれる:
2-アミノ-3-(ビフェニル-4-イル)プロパン酸(ビフェニルアラニン)、
2-アミノ-3,3-ジフェニルプロパン酸(ジフェニルアラニン)、
2-アミノ-3-(アントラセン-9-イル)プロパン酸、
2-アミノ-3-(ナフタレン-2-イル)プロパン酸、
2-アミノ-3-(ナフタレン-1-イル)プロパン酸、
2-アミノ-3-[1,1':4',1"-テルフェニル-4-イル]-プロピオン酸、
2-アミノ-3-(2,5,7-トリ-tert-ブチル-1H-インド-ル-3-イル)プロパン酸、
2-アミノ-3-[1,1':3',1"-テルフェニル-4-イル]-プロピオン酸、
2-アミノ-3-[1,1':2',1"-テルフェニル-4-イル]-プロピオン酸、
2-アミノ-3-(4-ナフタレン-2-イル-フェニル)-プロピオン酸、
2-アミノ-3-(4'-ブチルビフェニル-4-イル)プロパン酸、
2-アミノ-3-[1,1':3',1"-テルフェニル-5'-イル]-プロピオン酸、および
2-アミノ-3-(4-(2,2-ジフェニルエチル)フェニル)プロパン酸。
好ましい実施形態では、本発明のペプチド化合物は、以下に示す式I〜Vのいずれかを有しており、ここで、Cは上記で定義した通りのカチオン性アミノ酸を表し、また、Lは上記で定義した通りの親油性アミノ酸を表す。上記アミノ酸は、共有結合で連結されており、本物の(模倣物ではない)ぺプチドが得られるペプチド結合によって連結されるか、または、ペプチド模倣物かペプチドを生じる他の結合によって連結されていることが好ましい。これらの分子の遊離のアミノ末端又はカルボキシ末端は修飾されていてもよい。カルボキシ末端は、負電荷を除去するように修飾されていることが好ましく、アミド化されていることが最も好ましく、このアミド基は置換されていてもよい。
CCLLCCLLC (I) (配列番号:1)
LCCLLCCLC (II) (配列番号:2)
CLLCCLLCC (III) (配列番号:3)
CCLLCLLCC (IV) (配列番号:4)
CLCCLLCCL (V) (配列番号:5)
ペプチド模倣物は、典型的にはそのペプチドと同等の極性、三次元的大きさおよび機能性(生物活性)を維持していることにより特徴づけられるが、ペプチド結合は、しばしばより安定な結合によって置換される。「安定」とは、加水分解酵素による酵素分解に対してより耐性であることを意味する。一般的に、アミド結合に代わる結合(アミド結合代用物)は、アミド結合の特性(例えば構造、立体容積、静電特性、水素結合の可能性等)の多くを保持する。「"Drug Design and Development", Krogsgaard, Larsen, Liljefors and Madsen (Eds) 1996, Horwood Acad.」の第14章は、ペプチド模倣物の設計および合成のための技術の一般的な考察を提供する。
本発明のように、前記分子が、酵素の特定の活性部位よりも膜と反応する場合、親和性、活性、或いは基質機能の正確な模倣について記載された問題点のいくつかは関係がなく、ペプチド模倣物は、所定のペプチド構造または必要な官能基のモチーフに基づいて容易に調製することができる。好適なアミド結合代用物は、次のグループのものを含む:
N-アルキル (Schmidt, R. et al., Int. J. Peptide Protein Res., 1995, 46,47)、レトロ-インバースアミド(Chorev, M and Goodman, M., Acc. Chem. Res, 1993, 26, 266)、チオアミド(Sherman D.B. and Spatola, A.F. J. Am. Chem. Soc., 1990, 112, 433)、チオエステル、ホスホン酸、ケトメチレン(Hoffman, R.V. and Kim, H.O. J. Org. Chem., 1995, 60, 5107)、ヒドロキシ化メチレン、フルオロビニル (Allmendinger, T. et al., Tetrahydron Lett., 1990, 31, 7297)、ビニル,メチレンチオ(Sasaki, Y and Abe, J Chem. Pharm. Bull. 1997 45, 13),メチレンチオ(Spatola, A.F., Methods Neurosci, 1993, 13, 19)、アルカン(Lavielle, S. et. al., Int. J. Peptide Protein Res., 1993, 42, 270)、スルホンアミド(Luisi, G. et al. Tetrahedron Lett. 1993, 34, 2391)。
ペプチド模倣化合物は、サイズおよび機能で9個のカチオン性および親油性のアミノ酸とほぼ同等である9個の識別可能なサブユニット(sub-units(アミノ酸))を有していてもよい。本明細書において、用語「アミノ酸」は、便宜的にペプチド模倣化合物における同等のサブユニットを指すために使用されてもよい。さらに、ペプチド模倣物は、アミノ酸のR基に相当する基を有していてもよく、アミノ酸のR基およびN末端修飾基およびC末端修飾基の本明細書における説明は、ペプチド模倣化合物に準用される。
「薬剤設計と開発」[("Drug Design and Development"),Krogsgaard et al., 1996]で説明されているように、アミド結合の置換と同様、ペプチド模倣物は、ジ-またはトリ-ペプチド模倣物の構造による、より大きな構造部分の置換を含んでいてもよい。この場合、アゾール由来の模倣体などのペプチド結合を伴う模倣部分は、ジペプチドの代替品として使用することができる。しかしながら、上述したように、単にアミド結合が置換されたペプチド模倣物およびそのペプチド模倣物の骨格が、より好ましい。
好適なペプチド模倣物には、還元剤、例えばボランまたはリチウムアルミニウムハイドライドのような水素化物試薬により処理することにより、アミド結合がメチレンアミンに還元された、還元型ペプチドが含まれる。このような還元は、分子の全体的なカチオン性を増加させるついかの更なる利点を有する。
他のペプチド模倣物としては、例えば、アミド官能化(amide-functionalised)ポリグリシンの段階的合成によって形成されたペプトイド(peptoid)が挙げられる。完全メチル化されたペプチド等、いくつかのペプチド模倣物の骨格は、そのペプチド前駆体から容易に入手することができ、適切な方法はOstreshJ.M.らによりProc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91, 11138-11142)に記載されている。強塩基性条件がO-メチル化以上にN-メチル化に有利に働き、ペプチド結合およびN末端の窒素原子の一部又は全部のメチル化をもたらす。
好適なペプチド模倣物の骨格には、ポリエステル、ポリアミンおよびそれらの誘導体、並びに、置換されたアルカンおよび置換されたアルケンが含まれる。好適には、上記ペプチド模倣体のN末端およびC末端は、本明細書で説明するように修飾されてもよい。
αアミノ酸と同様にβアミノ酸およびγアミノ酸は、N置換されたグリシンのように、「アミノ酸」という用語の範囲内に含まれる。本発明のペプチド化合物は、βペプチドおよびデプシペプチドを含む。
上述したように、本発明のペプチド化合物には、少なくとも1個、好適には1個の非遺伝的にコードされたアミノ酸が組み込まれている。この残基を「L'」で表す場合、好ましい化合物は、下記式で表される:
CCL'LCCLLC (I') (配列番号: 6)
CCLLCCLL'C (I'') (配列番号: 7)
CCLL'CCLLC (I''') (配列番号: 8)
LCCLL'CCLC (II') (配列番号: 9)
特に好ましいのは、式Iおよび式IIの化合物(好適にはペプチド)であり、これらの中では式I"の化合物(好適にはペプチド)が特に好ましい。
table 1に示すように以下のペプチドが最も好ましい。
table 1において:
・標準的な一文字コードは、遺伝的にコードされたアミノ酸のために使用されている
・小文字はD型アミノ酸を表す
・Dipは、ジフェニルアラニンである
・Bipは、ビフェニルアラニンである
・Ornは、オルニチンである
・Dapは、2,3-ジアミノプロピオン酸である
・Dabは、2,4-ジアミノ酪酸である
・1-NALは、1-ナフチルアラニンである
・2-Nalは、2-ナフチルアラニンである
・Athは、2-アミノ-3-(アントラセン-9-イル)プロパン酸である
・Phe(4,4'Bip)は、2-アミノ-3-[1,1':4',1″-テルフェニル-4-イル]プロピオン酸である。
化合物LTX-315が最も好ましい。
本明細書に記載の分子の全ては、塩、エステルまたはアミドの形態であってもよい。
上記分子は、好ましくはペプチドであり、好ましくは修飾されたC末端を有するペプチドであり、特に好ましくは、アミド化されたC末端を有するペプチドである。アミド化されたペプチドは、それ自体が塩の形態であってもよく、酢酸塩の形態が好ましい。好適な生理学的に許容される塩は、当技術分野で周知されており、ここには無機酸または有機酸が含まれ、また酢酸塩および塩酸塩と同様にトリフルオロ酢酸塩が含まれる。
本明細書中に記載のペプチド化合物は、自然状態で両親媒性であり、その二次構造が、αヘリックスを形成しやすくてもしにくても、生理的条件で両親媒性分子となる。
本明細書で定義される併用療法は、腫瘍治療用であり、特に固形腫瘍用であり、したがって癌治療用である。
本発明のペプチド化合物は、腫瘍細胞の細胞小器官(例えばミトコンドリア、核またはリソソームの膜、特にミトコンドリア)の膜を不安定化および/または透過性にする。
「不安定化」とは、膜の薄化および水、イオンまたは代謝物等に対する膜透過性の増加を含むが、それらに限定されない、正常な脂質二層構造の撹乱を意味する。
「細胞毒性化学療法剤」は、最大耐用量(MTD)で、急速に分裂する細胞を死滅させるのに有効である薬剤であり、従って、抗癌治療について使用することができる。これらの薬剤は、典型的には、DNA合成を妨害するか、DNAの化学的損傷を生成することによって作用する。このような薬剤は、すべての患者に有効であることはないが、急速に分裂する癌細胞を殺す上記薬剤の能力ゆえに処方されている。「細胞毒性」および「化学療法」は、腫瘍学の分野でよく知られている用語である。この用語は、モノクローナル抗体等の、差別細胞毒性(discriminately cytotoxic)である薬剤(癌細胞を特異的に死滅させることができる薬剤)を含まない。
当業者は、当技術分野で使用される細胞毒性化学療法剤を認識しており、推定薬剤が細胞毒性化学療法における特性を有しているか否かを容易に決定することができる。当業者は、例えば、急速に分裂する細胞に対して、実施例1に記載のMTSアッセイ等の抗増殖アッセイ(anti-proliferative assay)を行ってもよい。さらに以下に説明するように、これらの薬剤は、その殺傷能力ゆえに、急速に分裂する腫瘍細胞を殺傷するためには使用されず、用いられる用量は「サブ細胞毒性量」と呼ばれ、これは細胞毒性を示す量よりも少量である。
いくつかの細胞毒性化学療法剤は、免疫寛容を阻害する(すなわち、免疫抑制のメカニズムを低減する)。Zhengら(Zheng et al (2015) Cell. Immunol., 294, pp 54-9)の文献に記載されているように、特定の免疫細胞、エフェクター分子およびシグナル伝達経路は、免疫寛容と呼ばれるプロセスで機能することができ、腫瘍増殖の阻害より、むしろ腫瘍増殖をもたらす。調節性T細胞(Treg)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)および腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、癌誘発性の免疫寛容でありうるものにおいて、重要な役割を有している。細胞毒性化学療法剤は、腫瘍細胞に対する免疫応答を引き起こす当該免疫寛容を破壊することが報告されている。免疫活性化を刺激することが示されている薬剤には、ドキソルビシン (Alizadeh et al. Cancer Res. (2014) 74(1); 104118)、パクリタキセル(paclitaxel) (Michels et al. J. Immunotoxicol. (2012) 9(3); 292300)、シクロホスファミド(Heylmann et al. PLOS one, (2013) Vol. 8, Issue 12, e83384)、ゲムシタビンおよび5-フルオロウラシルが含まれる。本発明の化学療法剤は、好ましくは、ここに記載されている1つであり、より好ましくは、シクロホスファミドまたはドキソルビシンである。
標準的な細胞毒性化学療法剤は、多くの望ましくない副作用を有する。しかしながら、いくつかの化学療法剤は、サブ細胞毒性濃度において、ほとんど毒性がなく、且つ、従来の化学療法における困難な副作用もほとんどなく、効果的に免疫活性化を容易にすることができることが報告されている(Heylmann, Alizadeh and Michels supra)。例えば、保護機能を有する増殖性の少ないリンパ球を温存させる一方で、増殖性の高い免疫抑制細胞を枯渇させることにより、これらの薬剤はサブ細胞毒性濃度において、薬剤が免疫寛容を減少させて抗癌免疫を増強することができる。調節性T細胞やMDSCのような免疫抑制細胞は、これらの薬剤の標的であり、サイトカインのように、それらは、細胞傷害性Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞が腫瘍細胞を殺すのを阻止するように機能する可能性がある。
例えば、in vivo(例;動物モデルまたは臨床試験)で薬剤を投与した後に、樹状細胞の成熟、T細胞補助受容体の発現の増加、および免疫抑制細胞の減少などの免疫寛容の変化についての観察をとおして、細胞毒性化学療法剤が免疫寛容を阻害するかどうかを当業者は容易に決定することができるであろう。このような観察は、例えば、単離された腫瘍組織に対しての免疫組織化学な手法または、腫瘍組織から単離された単一の細胞懸濁液に対してフローサイトメトリーにより行うことができる。阻害の程度は治療的に重要(significant)であり、適したコントロールと比較して、少なくとも10%または20%、好ましくは、少なくとも30%または40%、より好ましくは少なくとも50%または60%である。
化学療法剤の「サブ細胞毒性用量」とは、通常直接がん細胞を殺すために処方される投与量よりも少ない量であり、例えば標準的な化学療法のための最大耐量(MTD)未満である。臨床的に使用される細胞毒性化学療法剤に関して、これらの細胞毒性用量は、一般に当該技術分野で知られており、規制当局の承認で定められている。例えば、抗癌治療において使用されるシクロホスファミドの一般的な投与量は、2〜5日に分けて40〜50mg/kg体重であるが、これは、投与量の範囲の下限値で8mg/kg/日に相当する。したがって、ヒトにおけるシクロホスファミドの非細胞毒性用量は、8mg/kg体重/日未満であり、通常、6mg/kg体重/日未満、または4mg/kg体重/日未満である。
好ましいサブ細胞毒性用量は、典型的には直接的な抗癌治療に使用される投与量の、1%(例えば5%)から90%の間である。投与量は、例えば、標準的な細胞傷害性用量の、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満または10%未満であってもよい。サブ細胞毒性用量は、好ましくは5%から50%の間であり、より好ましくは、10%から40%の間である。適切なサブ細胞毒性用量は、しばしば「低用量」と単に称されることは当該技術分野、例えば本明細書において引用されている技術分野においてよく知られ、記述されている。
非細胞毒性用量は、それでも、急速に分裂する非癌性細胞への毒性を有し得るので、このような用量は、それでもやはり被験者において薬物有害反応(ADR)を引き起こしかねない。例えば、非細胞毒性用量は依然として患者における造血に悪影響を与える可能性がある。
一般的に臨床的に使用されていない細胞毒性化学療法剤の、サブ細胞毒性用量は、in vivoにおいて徐々に滴定用量を増やしながら、細胞毒性における影響について定期的な観察を行うことにより、決定することができる。
サブ細胞毒性用量は、1回で投与してもよいし、複数回に分けて投与してもよい。非細胞毒性用量は、例えば、3〜7日間、1日に1回又は2回投与し、3〜7日あけたのち、さらに投与工程を続けるといった具合に、ブロック単位で投与することができる。
好ましくは、サブ細胞毒性用量は、メトロノミック用量(メトロノミック投薬は通常抗血管形成を意図している)である。メトロノミック用量は、長期間(例えば、少なくとも2週間、3週間、4週間または6週間)、毎日、或いは1日おきに投与される、非細胞毒性用量である。
本発明は、腫瘍を治療(処理)する方法および腫瘍細胞を治療(処理)する方法を提供する。併用療法は、標的腫瘍細胞の全部または一部を殺傷するのに効果的であるか、または、標的の腫瘍細胞の増殖速度を無くす若しくは低下させるのに有効であるか、または、患者にあるその腫瘍の転移を阻害するのに有効であるか、若しくはそうでなければ該患者における腫瘍による有害な影響を軽減するのに有効でなければならない。臨床医または患者は、1つまたは複数のパラメータの改善、或いは、腫瘍に関連する症状の改善を認めるだろう。投与は、予防的なものであってもよく、これは、「治療(処理)」という用語に包含される。患者は、通常、ヒトの患者になるが、ペットや家畜動物などの非ヒト動物もまた治療(処理)することができる。
標的の癌には、肉腫、リンパ腫、白血病、神経芽細胞腫および膠芽腫(例;脳由来のもの)、癌腫および腺癌(特に、乳房、結腸、腎臓、肝臓(例;肝細胞癌)、肺、卵巣、膵臓、前立腺および皮膚に由来するもの)およびメラノーマが含まれる。乳癌、頭頸部癌は好適な標的である。メラノーマ、肉腫およびリンパ腫は、治療に好適な腫瘍タイプである。治療する腫瘍は、通常、固形腫瘍であり、経皮注射でアクセス可能な転移性病変であってもよい。
ペプチドは、任意の都合のよい方法で合成することができる。一般的には、存在する反応性基(例えば、アミノ、チオールおよび/またはカルボキシル基)は、全合成の間、保護される。合成の最終段階は、したがって、本発明における保護された誘導体の脱保護がなされる。ペプチドの構築においては、C末端で開始する手順が好ましいが、原則としてC末端またはN末端のいずれかで開始することができる。
ペプチド合成の方法は、当該技術分野でよく知られており、本発明に関しては、固相支持体上で合成を行うことが特に好都合であるだろう。このような支持体は、当該技術分野で知られている。ペプチド合成に使用されるアミノ酸の保護基は、幅広い選択肢が知られている。
本発明の、ペプチド模倣化合物および他の生物活性分子を合成するための文献および技術は、本明細書に記載されており、当該技術分野において周知である。
ペプチド化合物(塩、エステルまたはアミドを含む)は純粋な化合物として投与することが可能であるが、それらを医薬製剤、すなわち、1種またそれ以上の薬学的に許容される希釈剤、媒体または賦形剤を組み込んでいる医薬製剤にすることが好ましい。
本発明に係る活性薬剤は、例えば、経口投与、局所投与、経鼻投与、非経口投与、静脈投与、腫瘍内投与、経直腸投与または局所投与(例えば、分離式肢灌流)に適した形態で提示される。特に明記しない限り、投与は、一般的には非経口経路によりなされ、好ましくは、皮下注射、筋肉内注射、嚢内注射、髄腔内注射、腹腔内注射、腫瘍内注射、経皮注射または静脈内注射によってなされる。ペプチド化合物に関しては、腫瘍内注射による投与が好ましい。特に好ましいのは、本発明のペプチド化合物を、1日1回、連続する数日、例えば、2、3、4、5、6または7日間、好ましくは2〜4日の腫瘍内注射であり、あるいは2、3、4、5、6または7日間の間隔をおいてもよい。
ペプチド化合物は、好ましくは、化学療法剤と共にまたは化学療法剤の投与後に投与される。好ましくは、ペプチド化合物の投与は複数回、好ましくは2〜4回、例えば3回行われることが好ましい。
本明細書で定義される活性のある化合物は、従来の薬理学的な投与形態、例えば、錠剤、コーティング錠、鼻腔用スプレー、溶液、エマルジョン、リポソーム、散剤、カプセル剤または除放性の形態として提供することができる。従来の薬学的な賦形剤は通常の製造方法と同様に、上述の形態で調製するために使用することができる。単純な方法が好ましい。
臓器に特異的な搬送システムを使用してもよい。
注射溶液は、例えば、p-ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤や、EDTAなどの安定剤の添加による従来の方法で製造することができる。次に、この溶液は注射用バイアル又はアンプルに充填される。
好ましい剤型は、上記分子が生理食塩水中に含まれる剤型である。そのような剤型は、好ましい投与方法、特に局所投与(すなわち、例えば注射による腫瘍内投与)での使用に適している。
特に明記しない限り、ペプチド分子を含む投薬の用量は、好ましくは0.1mg〜10mg、例えば、1〜5mgである。製剤はさらに、他の抗腫瘍ペプチドのような、他の細胞毒性剤を含むさらなる活性成分を含んでもよい。他の活性成分は、例えば、IFN-γ、TNF、CSFおよび増殖因子等の異なるタイプのサイトカイン、免疫調節剤、シスプラチンなどの化学療法剤、または抗体、または癌ワクチンを含んでいてもよい。
腫瘍治療用の医薬の製造における、上記で定義されたペプチド化合物の使用も、本発明により提供される。ここで、該ペプチド化合物はサブ細胞毒性用量において、上記で定義したように化学療法剤とともに投与される。
好ましくは、上記薬剤は、多剤耐性(MDR)腫瘍の治療のためのものである。
また、本発明によれば、以下の(i)および(ii)を含む医薬パックまたは医薬組成物が提供される:
(i)本明細書中に定義されるペプチド化合物;および
(ii)サブ細胞毒性用量の、本明細書に記載された化学療法剤。
医薬パックでは、成分を別々に投与するものとできる。医薬パックは、もちろん、投与に関する説明書を含むことができる。上記医薬パックおよび医薬組成物は、腫瘍の治療に使用するためのものである。
また、本発明に従って提供される腫瘍の治療(処理)方法は、本明細書によって定義されるペプチド化合物および本明細書に記載されているサブ細胞毒性用量における化学療法剤を、ともに、薬学的に有効な量、必要とする患者に投与する工程を含む。
上述したように、本発明のペプチド化合物は、ミトコンドリア膜を不安定化させ、DAMPsおよび抗原性物質の放出を引き起こすことができる。これは、癌細胞に対する免疫系の応答に対して強力な正の効果を有しうる。特定の癌治療においては、手術または他の直接介入ができない場合、免疫応答は、例えば未確認の二次性腫瘍の治療または、転移性腫瘍の形成を防止するために、最も重要である。様々な癌は、多かれ少なかれ免疫原性を有するため、いくつかのシナリオでは、がんに対する免疫応答を後押しすることが不可欠である。
したがって、さらなる態様において、本発明は、ミトコンドリア膜の不安定化において使用するための、本明細書で定義される通りのペプチド化合物を提供し、前記使用は、腫瘍の治療におけるものである。これは、免疫治療の用途または処置とみなすことができ、一般的に、前記腫瘍は悪性腫瘍(癌)である。併用療法に関する他の記載箇所での議論された好ましい特徴および実施形態は、上記態様に準用する。
さらなる態様において、本発明は、本発明のペプチド化合物および免疫治療剤を含む組成物、または本発明のペプチド化合物および免疫治療剤からなる組成物を提供する。さらなる態様において、本発明は、患者の腫瘍を治療する方法を提供し、該方法は、本発明のペプチド化合物の有効量の投与、および免疫療法剤の有効量との同時投与又は連続投与を含む。
別の観点では、腫瘍の治療に使用するための、本発明のペプチド化合物および免疫療法剤が提供される。
「免疫療法剤」とは、免疫応答を調節する薬剤を意味する。好ましくは、上記免疫療法剤は、例えば、(好ましくは選択的に)Treg細胞および/またはMDSCを抑制し、および/または、T細胞上に発現した抑制性受容体である細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を阻害することにより1つ以上の腫瘍抗原に対する免疫応答を増強するものである。本発明の全ての態様および実施形態では、上記免疫療法剤は、シクロホスファミド(CY)であることが好ましい。
当業者は、免疫療法剤の適切な用量を選択することができるであろう。
免疫療法剤、例えば化学療法剤は、本発明のペプチド化合物に先立って、或いは一緒に投与されるのが好ましく、本発明のペプチド化合物の最初の投与の前に投与されることが最も好ましい。好ましくは、免疫療法剤は、本発明のペプチド化合物の前に投与されることが好ましく、 例えば、本発明のペプチド化合物の投与の、少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、または10日前である。単回投与が好ましいが、複数回投与でもよく、この場合、例えば1日間隔、2日間隔、3日間隔、4日間隔、5日間隔、6日間隔、7日間隔、8日間隔、9日間隔、10日間隔であってよい。
「併用投与(co-administration)」は、同時または連続的な投与であってもよく、同一経路または異なる経路(経口投与および/または非経口投与)によってもよい。
さらに、組合せ製剤として、腫瘍の治療において、別々に、同時にまたは連続して使用するための、本発明のペプチド化合物および免疫療法剤を含有する製品が提供される。
本発明者らは、また、驚くべきことに、免疫療法剤と本発明のペプチド化合物とを組み合わせて腫瘍を処理すると、さらなる腫瘍に対する適応免疫を誘導できることを見出した。したがって、上記の方法、用途および製品(組成物)は、さらなる腫瘍に対する適応免疫の誘導にまで拡張することができる。このように、例えば、本発明は、患者における腫瘍の治療(処理)に使用し、前記患者における腫瘍の成長、発達または定着に対する適応免疫を誘導するための、本発明のペプチド化合物および免疫療法剤をも提供する。
したがって、さらなる態様において、患者における腫瘍増殖、発達または定着(establishment)に対する適応免疫を誘導する方法が提供され、前記方法は、本発明のペプチド化合物の有効量の投与、および、免疫療法剤の有効量の同時または連続的な投与を含む。
別の観点では、本発明は、腫瘍の成長、発達または定着に対する適応免疫を誘導するのに使用するための本発明のペプチド化合物および免疫療法剤を提供する。
別の観点では、腫瘍の成長、発達または定着に対するワクチンとして使用するための薬剤の製造における、本発明のペプチド化合物と免疫療法剤の使用が提供される。
したがって、腫瘍の成長、発達または定着に対する適応免疫の誘導において、別々に、同時にまたは連続して使用するための組み合せ製剤として、本発明のペプチド化合物および免疫療法剤を含有する製品が提供される。
また、本発明は、前記患者への本発明のペプチド化合物および免疫療法剤の有効量の投与を介して、腫瘍の成長、発達または定着に対して患者(対象)にワクチン接種する方法を提供する。
「ワクチン」と「ワクチン接種」への言及は、ともに予防効果の意味を含み、既存の腫瘍に対する直接的な治療に有益であるかもしれないが、本発明の当該側面において重要な動機は、将来的な腫瘍の成長または発達の予防または減少である。
本発明は、以下の実施例でさらに説明され、また、図面を参照して説明される。
図1は、ペプチドLTX-315を様々な濃度でテストするための一連の実験における赤血球細胞の死亡割合を示したグラフである。X軸はペプチド濃度(μg/mL)を示している。Y軸は、細胞死の割合(%)を示している。 図2は、マウスA20 Bリンパ腫細胞を再接種したマウスにおける腫瘍増殖について、1次研究からのコントロール動物の腫瘍増殖と比較したものを示す。ダイヤモンドは、1次研究からのコントロールを示す。黒四角は再接種したマウス群について示している。 図3は、最初にLTX-315で処理されたマウスに、A20 B細胞リンパ腫細胞を再接種したそれぞれのマウスにおける腫瘍増殖について示す。四角は、マウス1を示す。三角形(一番下が底)は、マウス2を示す。三角形(最上部が底)はマウス3を示す。ダイヤモンドは、マウス4を示す。 図4は、コントロール動物の腫瘍増殖と比較した、マウスCT26WT結腸癌細胞を再接種したマウスにおける腫瘍増殖を示す。ダイヤモンドは、1次研究(primary studies)からのコントロールを示す。黒四角は再接種したマウスを示す。 図5は、まずLTX-315で処理されて、CT26WT結腸癌細胞を再接種されたそれぞれのマウスにおける腫瘍増殖を示す。小さな四角は、マウス1を示す。小さな三角形(一番下が底)はマウス2を示す。小さな三角形(最上部が底)は、マウス3を示す。小さなダイヤモンドはマウス4を示す。円はマウス5を示す。大きな四角はマウス6を示す。大三角形(一番下が底)はマウス7を示す。大三角形(最上部が底)はマウス8を示す。大きなダイヤモンドはマウス9を示す。 図6は、LTX-315で処理した後に完全な腫瘍退縮を示したドナーマウス由来の脾細胞の移植を受けた放射線照射したマウス(グループ1)におけるA20 B細胞リンパ腫の成長またはナイーブドナーマウス由来の脾細胞の移植を受けたコントールマウス(グループ2)におけるA20 B細胞リンパ腫の成長を示す。四角は、グループ1(完全な退縮を示したドナー由来の脾臓細胞の移植を受けたマウス)を示す。ダイヤモンドは、グループ2(ナイーブドナー由来の脾細胞の移植を受けたマウス)を示す。 図7は、非処理のコントロール(グループ3)と比較した、固形腫瘍マウスA20に対する2つの異なる処理計画の抗がん効果を示す(グループ1および2)。反転黒三角(最上部が底)は、グループ1(処理)を示す。白抜きの四角形は、グループ2(処理+アジュバント)を示す。白抜きの三角形(一番下が底)はグループ3(コントロール)を示す。21日目での腫瘍の大きさ(mm2)の順序は、(降順に)グループ3、グループ1、およびグループ2であった。 LTX-315は、ヒトメラノーマ細胞の急速な細胞死を引き起こす。(a) 所定時間(5、15、30、45、60、90、120および180分)経過後における、ヒトメラノーマ細胞に対するLTX-315の細胞死滅動態(IC50)を示す。(b)様々な濃度のLTX-315で処理した後の、A375細胞の生存率を示す。実験は3回行い、結果はそれぞれの時点における平均値±標準偏差として示した。 LTX-315は、細胞へ内部移行し、ミトコンドリアの近くに蓄積する。1.5μMの蛍光標識したLTX-315で30分間処理したA375細胞を(標識されたミトコンドリアおよび核とともに)示す。ペプチドは、内部移行し、ミトコンドリアに近接して検出された。A:オーバーレイチャネル、B:クローズアップ、C:ミトコンドリア、D:ペプチド。 細胞への内部移行は、LTX-315のような溶解性の9塩基の化合物でのみ発生し、非溶解性の模倣ペプチドLTX-328では発生しない。A375細胞は、3μMのLTX-315またはLTX-328のペプチドで60分間処理した。LTX-315は、細胞質で検出されたが、LTX-328は内部移行されなかった。A:LTX-315で60分間のインキュベーションを行った細胞、B:LTX-328で60分インキュベーションを行った細胞。 LTX-315処置は、超微細構造変化を引き起こす。LTX-315で60分間処理したA375細胞のTEM像をコントロール細胞と比較して示す。AおよびD:未処理のコントロール細胞、BおよびE:3.5μMで処理した細胞、CおよびF:17μMで処理した細胞。倍率:A〜C:10000倍、D〜F:30000倍、スケールバーは5μmを示す。 LTX-315誘導細胞死における活性酸素(ROS)の発生。A375細胞を、異なる濃度のLTX-315で15分間処理した。ペプチド処理後、カルボキシ-H2DCFDA(carboxy-H2DCFDA)をサンプルに追加した後、蛍光プレートリーダーを用いて蛍光を分析した。実験は2連で行い、バーは蛍光の平均値±標準偏差を示す。 LTX-315で処理したヒトメラノーマ細胞は、上清中へシトクロム-Cを放出する。A375細胞をLTX-315で処理した後、所定時間経過した時点(5分、15分、45分)における上清中へのシトクロム-Cの放出は、ELISAアッセイによって測定された。 HMGB1はLTX-315処理後に上清中に放出される。A375ヒトメラノーマ細胞を35μMのLTX-315(上)で処理したもの(上)、または35μMのLTX-328で処理したもの(下)。そして、細胞溶解物(L)および上清(S)は、ウェスタンブロットで分析した。LTX-315で処理した細胞では、HMGB1について細胞溶解物(L)から細胞上清(S)への段階的な移行を示した。一方、培地のみで処理したコントロール細胞では、60分後でも移行を示さなかった。 LTX-315処理後の細胞外ATPレベル:A375細胞は、異なる濃度のLTX-315で異なる時間(5、15、30、45、60分)処理されるか、または、コントロール(対照)の条件下で維持された。そして、その上清は、ATPの分泌量についてルシフェラーゼ生物発光により分析された。1つの代表的な実験に関する定量的データ(平均値±標準偏差)が報告されている。 LTX-315は、ミトコンドリア膜を崩壊させる。LTX-315(10μg/mL)で60分間処理したヒトA547メラノーマ細胞のTEM像を、コントロール細胞と比較して示す。 マウスA20リンパ腫の腫瘍の成長に対する低用量の影響:(b)シクロホスファミド単独、(c)LTX-315単独、および、(d)2つの療法の組合せ(併用療法)。Balb/cマウスと同一遺伝子型の触知可能なリンパ腫に対して、メトロノミック療法的にシクロホスファミドまたは、溶媒(溶媒コントロール(a))の腹腔内注射を行い(4日目)、腫瘍曝露(tumor challenge)後の8日目、9日目、および10日目に1,0mg(20mg/mL)のLTX-315を、1日1回、腹腔内注射した。 腫瘍増殖におけるメトロノミック療法において、シクロホスファミド単独の療法、LTX-315単独の療法、およびこれら2つの療法を組み合せた療法(併用療法)について、コントロールと対比してログランク検定(マンテル・コックス検定) を用いて解析した生存曲線。結果は有意差を示した。(p<0.0001である)。
実施例の要約を以下に示す:
実施例1- In vitroでの細胞毒性活性の試験において、37種類のヒト癌細胞株のパネルに対し5種類の試験した化合物の中で、LTX-315が最も強力である。
実施例2- In vitroでの細胞毒性活性の試験において、10種類のリンパ腫細胞株のパネルに対し5種類の試験した化合物の中で、LTX-315が最も強力である。
実施例3- LTX-315は、ヒト赤血球に対してEC50値1200μg/mL(833μM)より大きい平均EC50値を有する。
実施例4- マウスにおけるマウスA20 B細胞リンパ腫に対して異なる用量のLTX-315の効果についての調査で、LTX-315の抗腫瘍活性は、最適な用量を投与したグループ(グループ1)のマウス7匹のうち、3匹において完全な腫瘍応答をもたらした。
実施例5- 4つの異なるLTX-315の処理計画は、マウスCT26WT(多剤耐性)腫瘍に対して強い抗腫瘍効果を実証した。
実施例6- LTX-315は、様々な多剤耐性癌細胞株に対する広い活性スペクトルを有し、さらに、重要なことに、正常なヒト細胞に非常に弱い細胞毒性効果を有する。
実施例7- マウス固形腫瘍の初期処理後の完全な腫瘍退縮は、再接種後の同一腫瘍の増殖に対し、内因性の長期的な保護を生じる結果となった。
実施例8- LTX-315を用いた処理は、免疫応答を誘発することによって、特定の腫瘍に対する長期的な保護を与えることができる。
実施例9- LTX-315と溶解させたA20細胞とのカクテルの注射により、抗A20細胞免疫応答が誘導された。
実施例10- LTX-315による処理は、ヒトメラノーマ細胞におけるミトコンドリアの変形により免疫原性細胞死の特徴を誘導する。
実施例11- CYと組み合わせたLTX-315を用いた処理は、被験者(test subjects)の多くで完全かつ長期的な腫瘍退縮を引き起こした。
実施例1
In vitroにおける、37種類のヒト癌細胞株のパネルに対する5種類の試験化合物の細胞毒性活性試験
1.研究目的
37種類のヒト癌細胞株のパネルに対し50%増殖阻害を得る5種類の新規化合物の濃度(IC50)を決定すること。
2.材料と方法
2.1.試験物質
2.1.1.試験物質
・試験物質:LTX-302、LTX-313、LTX-315、LTX-320およびLTX-329(粉末形態で提供されたもの)(table 1参照)。
2.1.2.ポジティブコントロール
Oncodesign (Dijon, France)により提供されたSigma (Saint Quentin Fallavier, France)製のTriton X-100(登録商標)をポジティブコントロールとして使用した。
2.1.3.薬物の溶媒と保管条件
・化合物は、4℃で保存した。粉末は、最初に無血清培地(RPMI 1640, Lonza, Verviers, Belgium)に溶解し、適切な希釈状態とするために、さらに無血清培地を用いて希釈した。原液は保存せず、実験の日に新たに調製した。
・1%(最終濃度)のTriton X-100(登録商標)は、培地を用いて希釈することにより得た。
2.2.腫瘍細胞株および培養条件
2.2.1.腫瘍細胞株
癌細胞株および培地は、Oncodesignから購入し提供された。
2.2.2.培養条件
腫瘍細胞は、37℃、加湿雰囲気(5%CO2、95%空気)中で、接着した単層(adherent monolayers)または、懸濁物として増殖させた。培地は、2mMのL-グルタミン(Lonza, Belgium)を含み、10%ウシ胎児血清(FBS, Lonza)を添加したRPMI 1640であった。実験で使用するために、トリプシン-ヴェルセン(Lonza)で5分間処理することにより接着細胞を培養フラスコから剥離し、カルシウムまたはマグネシウムを含まないハンクス培地(Lonza)で希釈し、完全培地を添加することにより中和した。細胞は血球計数器で計数し、生存率を0.25%トリパンブルー排除試験法により評価した。
マイコプラズマ検出は、「MycoAlert(RTM)マイコプラズマ検出キット」(MycoAlert (RTM) Mycoplasma Detection Kit,Lonza)を用いて、メーカーの説明書に従って行った。試験された全ての細胞は、マイコプラズマ汚染について陰性であることが見出された。
3.実験計画および治療
3.1.細胞株の増幅およびプレ-ティング
接着成長した細胞株または懸濁液成長した細胞株を、それぞれ、10%のFBSを添加した、または添加していない薬剤フリー培地190μLで処理を行う前に、96ウェル平底マイクロタイタープレート(Nunc, Dutscher, Brumath, France)に播種し、37℃で24時間インキュベートした。
各細胞株についての移植密度を以下のtable 2に要約する。
3.2.IC50の決定
接着細胞株は、処理前に、200μlのFBSを含まない培地で1回洗浄した。腫瘍細胞は、400μMの最高用量として、1/4の希釈過程での10種類の濃度(4×10ー4〜4×1010Mの範囲)の化合物と4時間インキュベートした。1%(最終濃度)のTriton X-100(登録商標)をポジティブコントロールとするとともに、FBSを含まない培地をネガティブコントロールとした。これらの細胞(190μL)を、5%のCO2下、37℃で、試験物質を含有したFBSを含まない培地200μL(最終体積)中でインキュベートした。
3回の独立した実験を行い、各濃度について4連で試験した。また、コントロールの細胞は、溶媒のみで処置した。処理の終わりに、細胞毒性活性を、MTSアッセイによって評価した(3.3.参照)。
試験化合物の希釈は、細胞を含むプレートへの分注と同様に、Sciclone ALH 3000 liquid handling system(Caliper Life Sciences S.A.)を用いて行った。自動機器を使用することによって、試験される細胞がいずれであっても単一の濃度範囲で試験が行われた。当該範囲は、各細胞株に対して対応(adapt)しなかった。
3.3.MTSアッセイ
試験物質のin vitroにおける細胞毒性活性は、新規テトラゾリウム化合物(MTS、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)、およびPMS(フェナジンメトサルフェート)とよばれる電子カップリング試薬を使用したMTSアッセイ(BALTROP J.A. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 1991, 1:611-614)により示された。
MTTと同様に、MTSは、細胞によりホルマザン産物に生物還元される。このホルマザン産物は、MTTの場合と異なり、プロセシングされずに培養培地中に直接溶解可能なものである。
細胞処理の終了時に、MTS(20ml, 2mg/ml,Ref G1111,Batch 235897, Exp 03/2009, Promega, Charbonnieres, France)およびPMS(1mL, 0.92mg/ml, Ref P9625, Batch 065K0961, Sigma)をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS, Ref 17-513Q, Batch 6MB0152, Cambrex)中に混合し、孔径0.22μmのフィルターでろ過したばかりの溶液40μLを各ウェルに添加した。培養プレートは、37℃で2時間インキュベートした。各ウェルについての波長490 nmにおける吸光度(OD)を、VICTOR3TM 1420 multilabeled counter (Wallac, PerkinElmer, Courtaboeuf, France)を使用して測定した。
4.データの表示
4.1.IC50の決定
増殖の阻害濃度(IC)は次の通りに表された:
上記OD値は4回の実験における測定値の平均である。
IC50(50%阻害濃度):細胞増殖の50%阻害を得る薬物濃度
用量応答曲線は、XLFit 3(IDBS, United Kingdom)を用いてプロットした。IC50の決定値は、片対数曲線からXLfit3ソフトウェアを用いて計算した。それぞれのIC50決定値は、平均値および標準偏差と同様に生成した。
4.2.耐性指数(RI)
耐性指数は、以下の式を用いて計算した。
耐性指数は、各化合物に対する感受性細胞株および耐性細胞株の各対について計算された。
感受性細胞株および対応する耐性細胞株の両方のIC50値が同一の実験において算出された時、それぞれの耐性指数が算出される。また、耐性指数は、3回の独立した実験中に得られたIC50値の平均値の比からも算出された。
5.結果
5.1. LTX-302
試験したすべての37種のヒト腫瘍細胞株はLTX-302化合物に感受性であり、T-47D細胞株とHep G2細胞株についてのIC50値はそれぞれ4.83±0.96μM〜20.09±4.07μMの範囲であった。
37種の腫瘍細胞株において得られたLTX-302化合物のIC50値の平均値は12.05±4.27μMであり、その中央値は11.70μMであった。正常細胞株(HUV-EC-C)について得られたIC50の平均値は、腫瘍細胞株のいずれよりも高かった。
血液癌細胞株、および肺癌細胞株は、LTX-302化合物に対して最も高い感受性を持っていた(血液癌細胞株におけるIC50の中央値=7.96μM(N=7)、肺癌細胞株におけるIC50の中央値=9.02μM(n=3))。一方、肝癌細胞株がLTX-302化合物に対して最も耐性であった(IC50の中央値=17.84μM(n=2))。
HL-60/ADR細胞株のRI値、およびMCF-7/mdr細胞株のRI値(HL-60/ADR細胞株のRI値=1.31、およびMCF-7/mdr細胞株のRI値=1.23)によって示されるように、LTX-302化合物の活性は、ドキソルビシンに対する獲得抵抗性によってわずかに減少しているように見えた。逆に、LTX-302化合物の活性は、IGROV-1/ CDDP細胞株のRI値(0.33)が示すように、シスプラチンに対する獲得抵抗性によって増加しているように見えた。
5.2.LTX-313
試験した37種のヒト腫瘍細胞株の全ては、LTX-313化合物に感受性であり、それらのIC50値は、4.01±0.39μM(RPMI 8226細胞株)〜18.49±4.86μM(U-87 MG細胞株)の範囲であった。
37種の腫瘍細胞株について得られたLTX-313化合物のIC50の平均値は、9.60±3.73μMであり、その中央値は8.83μMであった。正常細胞株(HUV-EC-C)について得られたIC50の平均値は、腫瘍細胞株のいずれよりも高かった。
肝癌細胞株は、LTX-313化合物に最も耐性であったのに対し(IC50の中央値=13.71μM、n=2)、血液癌細胞株は、LTX-313化合物に対し、最も感受性があった(IC50の中央値=7.04μM、n=7)。
LTX-313化合物の活性は、CCRF-CEM/VLB細胞株のRI値(0.76)、HL-60/ADR細胞株のRI値(1.16)、およびMCF-7/mdr細胞株のRI値(1.24)によって示されるように、ドキソルビシンに対する獲得抵抗性によって変化していないようであった。逆に、LTX-313化合物の活性は、IGROV-1/CDDP細胞株についてのRI値(0.49)が示すように、シスプラチンに対する獲得抵抗性によって増加しているようであった。
5.3.LTX-315
試験した37種類のヒト腫瘍細胞株は、全て、LTX-315化合物に対して感受性であった。IC50値の範囲は、1.18±0.25μM(T-47D細胞株)〜7.16±150μM(SK-OV-3細胞株)であった。
37種類の腫瘍細胞株で得られたLTX-315化合物についてのIC50の平均値は、3.63±1.45μMであり、中央値は3.27μMであった。正常細胞株(HUV-EC-C)について得られたIC50平均値は、腫瘍細胞株のいずれよりも高かった。
乳癌細胞株、血液癌細胞株、および肺癌細胞株は、LTX-315化合物に対して特に感受性であった(乳癌細胞株におけるIC50の中央値=2.45μM(N=5)、血液癌細胞株におけるIC50の中央値=2.60μM(N=7)、肺癌細胞株におけるIC50の中央値=2.83μM(N=3))。一方、肝癌細胞株は、LTX-315化合物に対して最も耐性を示した(IC50の中央値=5.86μM(N=2))。
HL-60/ADR細胞株およびMCF-7/mdr細胞株のRI値(HL-60/ADR細胞株におけるRI値=1.45、およびMCF-7/mdr細胞株におけるRI値=1.12)によって示されるように、LTX-315化合物の活性は、ドキソルビシンに対する獲得抵抗性によってわずかに減少しているように見えた。逆に、IGROV-1/CDDP細胞株のRI値(0.50)が示すように、LTX-315化合物の活性は、シスプラチンに対する獲得抵抗性によって増加しているように見えた。
5.4.LTX-320
試験した37種類のヒト腫瘍細胞株は、全て、LTX-320化合物に対して感受性があった。そのIC50値の範囲は、3.46±0.22μM(T-47D細胞株)〜16.64±3.15μM(Hep G2細胞株)であった。
37種類の腫瘍細胞株で得られたLTX-320化合物についてのIC50の平均値は、7.58±2.79μMであり、中央値は6.92μMであった。正常細胞株(HUV-EC-C)について得られたIC50の平均値は、腫瘍細胞株のいずれよりも高かった。
血液癌細胞株、乳癌細胞株、腎臓癌細胞株および脳の癌細胞株は、LTX-320化合物に対して特に感受性であった(血液癌細胞株におけるIC50の中央値=6.04μM(N=7)、乳癌細胞株におけるIC50の中央値=6.60μM(N=5)、腎臓癌細胞株におけるIC50の中央値=6.60μM(N=2)、および脳癌細胞株におけるIC50の中央値=6.92μM(n=3))。一方、肝癌細胞株は、LTX-320化合物に対して最も耐性であった(IC50の中央値=11.46μM(N=2))。
HL-60/ADR細胞株、およびMCF-7/mdr細胞株のRI値(HL-60/ ADR細胞株のRI値=0.90,およびMCF-7/mdr細胞株のRI値=1.19)によって示されるように、LTX-320化合物の活性は、ドキソルビシンに対する獲得抵抗性によって変化していないように見えた。逆に、IGROV-1/ CDDP細胞株のRI値(0.49)が示すように、LTX-320化合物の活性は、シスプラチンに対する獲得抵抗性によって増加しているように見えた。
5.5. LTX-329
試験した37種のヒト腫瘍細胞株は、全て、LTX-329化合物に対して感受性であった。そのIC50値の範囲は、2.43±0.34μM(T-47D細胞株)〜16.90±1.18μM(U-87 MG細胞株)であった。
37腫瘍細胞株でLTX-329化合物について得られたIC50の平均値は、8.17±3.20μMであり、その中央値は7.89μMであった。また、正常細胞株(HUV-EC-C)について得られたIC50の平均値は、腫瘍細胞株のいずれよりも高かった。
乳癌細胞株および血液癌細胞株は、LTX-329化合物に対して最も感受性であった(乳癌細胞株におけるIC50の中央値=4.92μM(n=5),血液癌細胞株におけるIC50の中央値=5.26μM(N=7))。一方、卵巣癌細胞株は、LTX-329化合物に対して最も耐性であった(IC50の中央値=13.37μM(n=4))。
LTX-329化合物の活性は、CCRF-CEM/ VLB細胞株のRI値(0.76)、HL-60/ ADR細胞株のRI値(0.80)、およびMCF-7/mdr細胞株のRI値(1.07)によって示されるように、ドキソルビシンに対する獲得抵抗性によって変化していないようであった。逆に、LTX-329化合物の活性は、IGROV-1/CDDP細胞株についてのRI値(0.46)が示すように、シスプラチンに対する獲得抵抗性によって増加しているようであった。
5.6.総評
T-47D乳癌細胞株は、LTX化合物が試験された細胞株で最も感受性の高い細胞株である。
血液癌細胞株は、5つの試験化合物の全てに対して特に感受性の高い組織型(Histological type)であり、肝臓癌細胞株と卵巣癌細胞株は、特に耐性の高い細胞株に含まれる。
試験した5種類の化合物は、全て、IGROV-1/ CDDP細胞株(シスプラチン耐性)において、親のIGROV-1卵巣癌細胞株に比べて特に高い活性を示した。ドキソルビシン耐性は、LTX化合物の活性をわずかに低下させるように見えた。
LTX-315の化合物は、試験した5つの化合物のうち最も強力な化合物である。
6.結論
・試験したすべての5種類の化合物(すなわちLTX-302、LTX-313、LTX-315、LTX-320およびLTX-329)は、37種類のヒト癌細胞株に対して細胞溶解活性を示し、そのIC50は1〜10μM以下(in micromolar to ten micromolar range)の範囲であった。
・LTX-315化合物は、試験を行った37種類のヒト癌細胞株の全てにおいて、1μM〜5μMのIC 50値を有する最も強力な化合物である。
実施例2
10種類のリンパ腫細胞株のパネルに対する5種類の試験化合物のin vitro細胞毒性試験
1.研究目的
・10種類のリンパ腫細胞株のパネルに対して50%の増殖阻害(IC50)を得るための濃度(IC50)を5種類の新規な化合物について決定すること。
2.材料と方法
2.1.試験物質
2.1.1.試験物質
・試験物質:LTX-302、LTX-313、LTX-315、LTX-320およびLTX-329は粉末形態で提供される(table 1参照)。
2.1.2.ポジティブコントロール
・Oncodesign (Dijon, France)により提供されたSigma (Saint Quentin Fallavier, France)製のTriton X-100(登録商標)をポジティブコントロールとして使用した。
2.1.3. 薬物の溶媒および保存条件
・化合物は4℃で保存した。粉末は、最初に無血清培地(RPMI 1640, Lonza, Verviers, Belgium)の中に溶解し、適切な希釈状態とするために、さらに無血清培地を用いて希釈した。原液は保存せずに、実験の日に新たに調製した。
・1%(最終濃度)のTriton X-100(登録商標)は、培地を用いて希釈することにより得た。
2.2.腫瘍細胞株および培養条件
2.2.1.腫瘍細胞株
癌細胞株および培地は、Oncodesignから購入、提供された。
2.2.2.培養条件
腫瘍細胞は、加湿雰囲気(5%CO2、95%空気)中、37℃で懸濁物として増殖させた。各細胞株のための培地は、以下のtable 3に記載されている。実験用で使用するために、細胞は血球計測器で計数し、その生存率を0.25%トリパンブルー排除試験法により評価した。
マイコプラズマ検出は、MycoAlert(RTM)マイコプラズマ検出キット(MycoAlert (RTM) Mycoplasma Detection Kit,Lonza)を用いて、メーカーの説明書に従って行った。試験された全ての細胞は、マイコプラズマ汚染について陰性であることが見出された。
3.実験計画と処理
3.1.細胞株の増幅およびコロニー形成
腫瘍細胞を、平底96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc, Dutscher, Brumath, France)に播種し、薬剤およびFBSを含まない培地190μLによる処理の前に24時間37℃でインキュベートした。各細胞株についての移植密度を以下のtable 4にまとめる。
3.2. IC50の決定
腫瘍細胞は、最高用量400μMとして、1/4ずつ希釈する過程における10段階の濃度の化合物(4×10-4〜4×10-10M)のもとで4時間インキュベートされた。1%(最終濃度)Triton X-100(登録商標)をポジティブコントロールとして用いた。FBSを含まない培地をネガティブコントロールとして用いた。腫瘍細胞(190μL)は、試験化合物を含み、FBSを含まない培地(終容量200μL)中で5%のCO2下37℃の条件下でインキュベートされた。
3回の独立した実験が行われ、各濃度について4連で試験した。コントロールの細胞は、溶媒のみで処理した。処理の終わりには、細胞毒性活性をMTSアッセイによって評価した(下記3.3参照)。
試験化合物の希釈は細胞を含むプレートへの分注と同様に、Sciclone ALH3000 liquid handling system(Caliper Life Sciences S.A.)を用いて行った自動機器を使用することによって、試験される細胞がいずれであっても単一の濃度範囲で試験が行われた。当該範囲は、各細胞株に対して対応(adapt)しなかった。
3.3. MTSアッセイ
試験物質のin vitroにおける細胞毒性活性は、新規テトラゾリウム化合物(MTS、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)、およびPMS(フェナジンメトサルフェート)とよばれる電子カップリング試薬を使用したMTSアッセイ(BALTROP J.A. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 1991, 1:611-614)により示された。
MTTと同様に、MTSは、細胞によりホルマザン産物に生物還元される。このホルマザン産物は、MTTの場合と異なり、プロセシングされずに培地中に直接溶解可能なものである。
細胞処理の終了時に、MTS(20ml, 2mg/ml, Ref G1111,Batch 235897, Exp 03/2009, Promega, Charbonnieres, France)およびPMS(1mL, 0.92mg/ml, Ref P9625, Batch 065K0961, Sigma)をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS, Ref 17-513Q, Batch 6MB0152, Cambrex)中に混合し、孔径0.22μmのフィルターでろ過したばかりの溶液40μLを各ウェルに添加した。培養プレートは37℃で2時間インキュベートした。各ウェルについての490 nmにおける吸光度(OD)は、VICTOR3TM1420 multilabeled counter(Wallac, PerkinElmer, Courtaboeuf, France)を用いて測定した。
4.データの表示
4.1. IC50のデータは、実施例1と同様に測定した。
5.結果
5.1. LTX-302
試験したすべての10種のヒトリンパ腫細胞株はLTX-302化合物に感受性であり、IC50値は、5.30±2.02μM(U-937細胞株)〜12.54±3.52μM(Raji細胞株)の範囲であった。10種類の感受性細胞株について得られたLTX-302化合物についてのIC50平均値は、8.11±2.44μMであり、中央値は7.53μMであった。
5.2. LTX-313
試験したすべての10種のヒトリンパ腫細胞株はLTX-313化合物に感受性であり、IC50値は、3.21±2.81μM(Ramos細胞株)〜16.08±4.86μM(Raji細胞株)の範囲であった。
10種の腫瘍細胞株で得られたLTX-313化合物のIC50の平均値は7.05±3.91μMであり、中央値は5.89μMであった。
5.3. LTX-315
試験したすべての10種のヒトリンパ腫細胞株はLTX-315化合物に感受性であり、IC50値は、1.15±0.42μM(U-937細胞株)〜4.93±1.03μM(Raji細胞株)の範囲であった。
10種の感受性のある細胞株で得られたLTX-315化合物のIC50の平均値は3.01±1.36μMであり、中央値は2.93μMであった。
5.4. LTX-320
試験したすべての10種のヒトリンパ腫細胞株はLTX-320化合物に感受性であり、IC50値は、2.22±NAμM(Hs 445細胞株)〜11.26±3.42μM(Raji細胞株)の範囲であった。
10種の感受性のある細胞株で得られたLTX-320化合物のIC50の平均値は5.03±2.82μMであり、中央値は4.84μMであった。
5.5. LTX-329
試験したすべての10種のヒトリンパ腫細胞株はLTX-329化合物に感受性であり、IC50値は、2.46 ± NA μM(Hs 445細胞株)〜8.70 ± 1.70μM(Raji細胞株)の範囲であった。
10種の感受性のある細胞株で得られたLTX-329化合物のIC50の平均値は5.76±2.27μMであり、中央値は5.72μMであった。
5.6.総評
KARPAS-299およびRaji細胞株は、試験に用いられたLTX化合物のいずれに対しても最も耐性を有する細胞株である。
HS445細胞株、Ramos細胞株およびU-937細胞株は、試験に用いられたLTX化合物のいずれに対しても最も感受性の高い細胞株である。
LTX-315化合物は、試験した5種類の化合物の中で最も強力な化合物である。
6.結論
・試験したすべての5種類の化合物(すなわちLTX-302、LTX-313、LTX-315、LTX-320とLTX-329)は、10種類のヒトリンパ腫細胞株に対して細胞溶解活性を示し、そのIC50はマイクロモルレベルの濃度であった。
・LTX-315化合物は、試験を行った10種類のヒトリンパ腫細胞株の全てにおいて、1μM〜5μMのIC 50値を有する最も強力な化合物である。
実施例3
in vitroでの溶血活性
試験の根本方針
ヒト赤血球に対するペプチドLTX-315の溶血活性を測定した。
材料と方法
新たに採取したヒトの血液を、赤血球を分離するために1500rpmで10分間遠心分離した。1500rpm,10分間の遠心分離を利用して、赤血球(RBC)をPBS[150mMのNaClを含む35mMのリン酸緩衝液、pH7.4]で3回洗浄した後、PBSでヘマトクリット値(赤血球の体積比)を10%に調整した。
LTX-315の溶液は、このペプチドの終濃度範囲が1200μg/mL〜1μg/mLとなり、赤血球(RBC)の濃度が1%となるように添加された。得られた懸濁液を37℃で1時間撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション後、懸濁液を5分間4000rpmで遠心分離し、405nmにおける上清の吸光度によって、放出されたヘモグロビンを測定した。PBSを、ネガティブコントロールとして使用し、全く溶血を引き起こさないものとした。0.1%Triton(登録商標)を、ポジティブコントロールとして用い、完全溶血を引き起こすものとした。
試験物質:LTX-315
参照物質:PBS(ネガティブコントロール)およびTriton X-100(登録商標)(ポジティブコントロール)。
反応混合物の成分:LTX-315、10% Triton X-100(登録商標)、PBSおよび赤血球(ヘマトクリット値=10%)。
評価方法:
放出されたヘモグロビンを、405nmにおける上清の吸光度を測定することによりモニターし、溶血率(%)は、次式により算出した。
溶血率(%)=[(A405 LTX-315 - A40 5PBS)/(A405 0.1%TritonX -100 - A405 PBS)]×100
50%溶血(EC50)に対応するLTX-315の濃度は、用量反応曲線から決定した。
結果
5回の異なる実験における平均値を標準偏差とともに、以下に示す。このデータはまた図1にも示されている。図1は、LTX-315におけるEC50の平均値が1200μg/mL(833μM)以上であることを示している。
実施例4
マウスA20 B細胞リンパ腫に対する薬力学的効果
試験の根本方針
研究の目的は、マウスA20 B細胞リンパ腫における、様々な用量のLTX-315の効果を調べることであった。
材料と方法
投与は、滅菌生理食塩水に溶解したLTX-315の腫瘍内注射により行われた。
雌マウスの腹部に、50μLの用量で、500万個のマウスA20細胞(ATCC, LGC Promochem AB, Middlesex, England)を皮下接種した。
マウスを4グループに分けた(詳細については下記の表5参照)。腫瘍が目的の大きさ直径約5mm (最小面積20mm2)に達した時点で腫瘍内処理(治療)を開始した。
LTX-315の3段階の投与量、すなわち、注射1回あたり1mg(グループ1)、0.5mg(グループ2)、および0.25mg(グループ3)についてが調査された。全ての注射においての容量を50μLとした。 LTX-315は、無菌の0.9%NaCl水溶液中に溶解した。この溶媒は、コントロール(グループ4)とした。4つのグループは全て3回の注射を受けた。
試験期間中、定期的に腫瘍を測定し、動物を計量することによりマウスの観察を行った。
それらのマウスは、125mm2の最大腫瘍量に達するか、または、重篤な有害事象(すなわち、経過観察(follow-up)期間中に繰り返し行われる処置における創傷形成)が発生するまで経過観察され、その後、屠殺された。腫瘍サイズの測定にはキャリパーが使用され、体重検査および身体検査が健康管理として行なわれた。
動物:Harlan(Harlan, UK)から供給された特定の病原体を有しない、6〜8週齢の雌Balb/cマウス。
動物の飼育条件(conditioning):動物は、標準的な実験用固形飼料および水で飼育した。
平均体重、投与量、投与経路および処理計画は、以下のtable 5に示されている。
結果
様々な処理の抗腫瘍効果は、以下のtable 6において、平均腫瘍サイズとして示される。
異なる処理群の腫瘍反応(Tumour Response)の程度を以下のtable 7に要約する。
ディスカッション/結論
グループ3において、最も低用量(1回あたり0.25mg)のLTX-315投与を受けることで、弱い阻害効果が最初の数日の間、観察される。グループ1およびグループ2では、それぞれ1回あたり1.0mgまたは0.5mgのLTX-315の投与を受けることで、全ての動物が部分寛解または完全寛解を示した。最適量を投与されたグループのマウスのうち、7匹中3匹のマウスについて、抗腫瘍活性が腫瘍の完全寛解をもたらしたことがわかった(グループ1)。
概して、より強い壊死および創傷の形成は、他の2つのグループと比較してグループ1で観察された。創傷形成を除いて、有害事象または毒性作用は、他の動物の群のいずれにおいても認めらなかった。
1mgおよび0.5mgのLTX-315の両方が、試験の初期に強く、急速な抗腫瘍効果を示した。しかし、試験を進めるにつれて、グループ1よりもグループ2の動物において多くの再発がおきた。
実施例5
マウスにおける、マウスCT26WT結腸癌腫瘍に対するLTX-315の効果
材料および方法
投与は、滅菌生理食塩水(滅菌水中0.9% NaCl)中に溶解したLTX-315の腫瘍内注射によって行われた。
全40匹の雌マウスのそれぞれに、500万個のマウスCT26WT細胞(ATCC、LGC Promochem AB, Boras, Sweden)を、腹部表面上に50μLの容量で皮下接種した。上記マウスは、5グループ(各グループ8匹)に分けた。腫瘍が目的の大きさである20mm2に達したとき、腫瘍内注射による処理を開始した。
グループ1は1回だけ1日目に処置され、グループ2は1日目および2日目に処置され、グループ3は1日目と3日目に処置され、グループ4は1日目、2日目および3日目に処置された。日々の処置は、全て、50μLに(20mg/mL)で溶解した1.0mgのLTX-315を1回注射するものであった。グループ5は、LTX-315用の溶媒50μLで処置された(グループ5)。
試験期間中、定期的にデジタルキャリパーにより腫瘍を測定し、動物を計量することによってマウスの観察を行った。それらのマウスは、125mm2の最大腫瘍量に達するか、または、重篤な有害事象(すなわち、経過観察期間中に繰り返し行われる処理における創傷形成)が発生するまで経過観察され、その後、屠殺された。体重検査および身体検査が健康管理として行なわれた。
動物:Harlan (England, UK)から供給された特定の病原体を有しない、6〜8週齢の雌Balb/cマウス。
動物の飼育条件(conditioning):標準動物施設条件。
動物の平均体重、投与量、投与経路および処理計画は、以下のtable 8に示されている。
結果
様々な処置の抗腫瘍効果は、以下のtable 9における平均腫瘍サイズとして示される。
完全寛解はLTX-315で処置した全ての動物の大多数で観察された。異なる処理グループにおける腫瘍反応の程度を以下のtable 10に要約する。
ディスカッション/結論
腫瘍が目的の大きさである最低20mm2に達した時点で上記処置を開始し、腫瘍が125mm2の最大腫瘍量に達したとき。動物は屠殺された。
8匹のうち6匹のコントロール動物(グループ5)を屠殺した17日目を研究の最終日と決めた。LTX-315の処置計画は、すべて強力な抗CT26WT腫瘍効果をもたらした。
処置された32匹のうち27匹に完全寛解が観察され、のこりの4匹に部分寛解が観察された。唯一、1匹の動物(グループ3)は、上記処置に応答を示さなかった。示される結果は、すべての4つの処理群は非常に類似した全体的な腫瘍応答を有することを示している。このデータは、また、腫瘍の再発の程度が、グループ1、3および4よりもグループ2においてより高かったことを示している。加えて、グループ2においては、その経過観察期間の終了時に腫瘍がないことが観察された動物は殆どいなかった(図2)。
壊死および完全寛解は、全ての処置グループで観察された。グループ1では8匹の動物のうち4匹が完全寛解を示し、グループ2では8匹の動物のうち2匹が完全寛解を示し、グループ3では8匹の動物のうち5匹が完全寛解を示し、グループ4では8匹の動物のうち5匹が完全寛解を示した。この段階で腫瘍は完全壊死し、腫瘍の位置に瘡蓋(wound crust)が形成された。
腫瘍部位での壊死は、全ての処置グループに見られた。概して、グループ2、3および4の動物は、LTX-315の注射を1回のみ行ったグループ1の動物よりも多くの壊死、切り傷(wound)および瘡蓋(crust)の形成を示した。3回の注射を行ったグループ4の動物は、最も多くの壊死、創傷および瘡蓋の形成を示した。グループ1およびグループ4との間の壊死についての違いは非常に大きかったが、もっとも多くの回数の処理を受けた動物がより良い結果になると考えられた。局所的な壊死組織の形成,傷の形成以外の毒性または他の副作用は、動物の処理グループのいずれにおいても認められなかった。試験されたLTX-315の4つの処置計画は、全て、マウスCT26WT腫瘍に対する強力な抗腫瘍効果を実証した。壊死,傷および瘡蓋の形成量は、行われたLTX-315による処理の数に比例した。
実施例6
感受性癌細胞,多剤耐性癌細胞および正常ヒト細胞に対するLTX-315の活性
上記のデータは、種々の癌細胞株に対してはLTX-315が広範囲に活性を示すこと、および、正常なヒト細胞に対しては、有意に細胞毒性効果が非常に弱いことを表している。
実施例7
完全に腫瘍が退縮したマウスにおけるマウスA20 B細胞リンパ腫およびマウスCT26WTの結腸癌細胞の再投与
この試験では、LTX-315の処理後に完全な腫瘍退縮を以前に示した動物における腫瘍増殖の効果を調査しようとした。
方法:LTX-315(1mg)で事前処理された雌Balb-cマウス(n=4)、または、LTX-315(0.5mgまたは1mg)で前もって処理された雌Balb-cマウス(n=9)は、最初にLTX-315で処理した後6週の時点で、それぞれ、マウスA20 B細胞リンパ腫細胞またはマウスCT26WTの結腸癌細胞を(腹部領域の)皮下に500万個再接種され、腫瘍の成長が(細胞の)再接種後最大36日間観察された。
R315-03の研究において、コントロールマウスと比べ、LTX-315(1mg)で事前に処理した4匹のマウスの全てにおいて、腫瘍成長の有意な阻害(P<0.006)が確認された(図2)。一方、再発が1匹のマウスで確認され、3週間後、完全な腫瘍退縮が、他の3匹のマウスで観察された(図3)。
LTX-315(0.5mgまたは1mg)で事前に処理した9匹のマウスにおいてコントロールマウスと比べて腫瘍成長の有意な抑制(P<0.01)が確認された(図3)。図20にある18日目以降の突然の腫瘍サイズの減少は、大きい腫瘍を有する6匹の動物が死んだことにより説明される。7匹のマウスにおいて抑制が確認され、それらのうち2匹で完全な腫瘍退縮が確認された(図5)。
纏めると、これらのデータは、固形マウス腫瘍(マウスA20 B細胞リンパ腫またはCT26WT結腸癌)のLTX-315を用いた初期処理後の完全な腫瘍退縮が、再接種後の同腫瘍の増殖に対する内因性の長期的な保護作用の形につながったことを示唆している。腫瘍増殖の阻害は、CT26WT結腸腫瘍を有するマウスと比較してA20 B細胞リンパ腫腫瘍を有するマウスにおいてより顕著であった。
実施例8
マウスA20 B細胞リンパ腫モデルにおけるLTX-315の免疫学的効果。In vivoでの養子脾臓細胞移植の予備研究。
この研究は、研究R315-33で観察された、動物に腫瘍を再接種した後の、同腫瘍の増殖に対する長期的な保護作用が、LTX-315で処置されたドナー動物から採取した脾臓細胞を介して、ナイーブレシピエント(移植を受ける動物)に受動的に伝達されるかどうかを調べるために行われた。
10匹の雌Balb/cマウス(n=32)の各腹部表面上に皮下投与(SC)により、A20細胞を500万個/50μL接種した。腫瘍が20mm2に達した後、LTX-315(1mg)を50μLの容量で、毎日1回3日間、それらのマウスの腫瘍内に注射した。続いて、腫瘍のサイズ(mm2)および体重を測定し、腫瘍の再成長が観察された場合、LTX-315をさらに注射した。その後、完全な腫瘍退縮を示したマウスを屠殺し、脾細胞を移植するためのドナーとして使用した。ナイーブドナーマウスはコントロールとして使用した。
ドナーマウスから脾臓を摘出し、細胞を単離した。ナイーブレシピエントマウス(naive receiver mice)に放射線照射し、2つのグループに分けた。それぞれの細胞を新たに調製し、グループ1には処理したマウスから単離した脾細胞を、グループ2にはナイーブレシピエントマウスから単離した脾細胞を、尾静脈を介して(20×106細胞/100μLで)接種した。
その24時間後、レシピエントマウスの腹部表面に500万個のマウスA20 B細胞リンパ腫細胞を上述したように接種した。最大125mm2の腫瘍量に達するまで、または、重篤な有害事象(すなわち、腫瘍組織の壊死を形成する創傷)が生じるまで、腫瘍サイズおよび体重を測定し、その時点でマウスを屠殺した。
腫瘍増殖の抑制(inhibition)は、ナイーブドナー由来の脾細胞の移植を受けたコントロール動物と比較して、LTX-315処理の後に完全な腫瘍退縮を示した動物から単離した脾細胞の移植を受けた照射マウスで観察された(図6)。また、LTX-315処理マウス由来の脾細胞のレシピエントマウスにおける腫瘍の色と質感は異なっており、即時的な炎症反応が起きていることを示すことが分かった。
これらの所見に基づけば、上記データは、LTX-315で処理した後にA20-Bリンパ腫の完全な腫瘍退縮を示したマウス由来の脾細胞の移植を受けたマウスにおいて適応免疫応答に関する証拠となる。上記データは、LTX-315を用いた処理は、免疫応答を誘発することによって、特定の腫瘍に対する長期の保護を与えることを示唆している。
実施例9
この研究の目的は、10mg/mLのLTX-315により溶解したA20リンパ腫細胞を用いた予防接種の抗癌効果を調べることであった:
(i)予防接種単独;
(ii)予防接種および予防接種に先立って接種部位に20mg/mLのLTX-315を接種することとの併用。
全て、2つの異なった処置計画を使用した。
投与は、A20リンパ腫細胞を含む増殖培地中にLTX-315を溶解したものを皮下注射することによって行った。細胞およびLTX-315の「カクテル」は、癌細胞の完全な溶解を担保するために、注射前に30分間放置した。
グループ1の(「ワクチン」)マウスは、1000万個のマウスA20 細胞(ATCC、LGC Promochem AB,Boras, Sweden)および10mg/mLのLTX-315との「カクテル」(「A20溶解液」)50μLを腹部表面に皮下注射された。
グループ2(「ワクチン+アジュバント」)マウスは、グループ1の通りに処理したが、A20溶解液注入の5分前、予防接種部位に20mg/mLのLTX-315を25μL皮下投与した。
グループ3(「コントロール」)マウスは、処理を受けなかった。
処理から6週間後、全てのマウスは、腹部表面に500万個の生存したA20 B細胞リンパ腫細胞を50μLの容量で皮下接種された。そのマウスは、試験の間、定期的に腫瘍の大きさおよび動物の体重の測定を行うことよって観察された。130mm2の最大腫瘍量に達するまでマウスを経過観察し、その時点でマウスを屠殺した。
材料および方法
動物:Harlan Laboratories(England, UK; www.harlan.com)から供給された6〜8週齢の特定病原体フリーの雌Balb/cマウス。
動物の飼育条件:Tromso大学の標準的な動物施設条件
試験物質: LTX-315(ロット1013687)によって溶解させたマウスA20細胞、およびLTX-315(ロット1013687)のみ
試験物質の調製:10×106個のA20細胞を、10mg/mLのLTX-315/溶媒50μLに加えたもの(「A20溶解物」)。試験物質は、混合30分後に使用可能な状態であった。LTX-315のみのものは、NaClを0.9%含む滅菌水中に溶解した。
溶媒:RPMI-1640 w/2mM L-グルタミン、またはNaClを0.9%含む滅菌水
参照物質:なし
コントロールの処理:なし
評価法:計量・検査による腫瘍サイズ測定および健康管理
方法に関する追加データ:デジタルキャリパーは、腫瘍サイズ測定に使用した。計量と身体検査は健康管理に使用された。平均体重、投与量、投与経路および処理計画は、(下記)table 11に示されている通りである。
結果:
様々な処理の抗癌効果は、以下のtable 12に、平均腫瘍サイズとして示されており、また、該データのグラフ表示は図7に示されている。表12において、1日目は、ワクチン接種から6週間経過後の、生存A20細胞の接種日だった。
考察/結論:
生存A20B細胞リンパ腫細胞の接種は、処理(treatment)が行われた(1日目)の6週間後に行われた。腫瘍が130mm2の最大許容腫瘍量に達したとき、動物を屠殺した。
その結果、コントロール群と比較して、LTX-315/A20-溶解物の双方で処理したグループでは、腫瘍の成長がよりゆるやかであることが示された。生存期間の中央値は、グループ1では28日、グループ2では33日、コントロール群(グループ3)では25日であった。コントロール群(グループ3)に対する生存期間の中央値の増加は、グループ2では12%、グループ1では35%であった。
このデータは、未処理のコントロールグループと比較して、処理グループの生存期間が延びることを示している。第34日に、コントロール群の最後の動物を屠殺したときに、グループ1の動物の37.5%がまだ生存しており、グループ2の動物の50%がまだ生存していた。研究の終了は、第60日目とした。この時点で、処置された16匹の動物のうち、合計で3匹の動物で、当初に発生した腫瘍の完全な退縮がみられ、腫瘍がなくなっていた。研究の終了時点で、グループ1由来の動物の25%、グループ2由来の動物の12.5%に腫瘍がないことが観察された。
未処理のコントロール群(グループ3)と比較して、処理したグループ(グループ1および2)間には、肉眼的に形態学的な違いがあった。2つの処理グループにおいて発生している腫瘍は、コントロールグループで観察された腫瘍と比べてより白く固いものであることが確認された。腫瘍のより遅い成長率と共に得られたこの知見は、LTX-315および溶解したA20細胞のカクテルを用いた予防接種により抗A20細胞の免疫応答が誘導されたことを示唆している。
したがって、LTX-315は、腫瘍細胞を溶解する用途および注射部位での正常細胞からの危険シグナルの放出を誘発するという、二重の用途を有しうる。
実施例10
本研究では、ヒトメラノーマ細胞に対するLTX-315の殺腫瘍効果を調べた。このペプチドは内在しており、ミトコンドリアに関与することで、最終的に溶解性細胞死をもたらす。LTX-315ペプチドは、腫瘍内注射における二段階の作用機序を介して固形腫瘍を治療するために設計された。一段階目は、腫瘍そのものの破壊であり、二段階目は、死にかけの腫瘍細胞からのダメージ関連分子パターン分子(DAMPs)の放出であり、DAMPsは、腫瘍の再発と転移に対するその後の免疫防御を誘導することができる。
材料および方法
試薬
LTX-315およびLTX-328(KAQ-DIP-QKQAW-NH2)は、それぞれBachem AG(Bubendorf, Switzerland)およびInnovagen(Lund, Sweden)に依頼して作製された。LTX-315パシフィックブルーとLTX-328パシフィックブルーは、依頼して、それぞれ、Innovagen (Lund, Sweden) 、Norud (Tromso, Norway)から購入した。
細胞培養
A375細胞株A375(ECACC,88113005)は、患者試料に由来するヒト悪性メラノーマであり、Public Health England(PHE Culture Collections、Porton Down, Salisbury,UK)から購入した。
細胞を、抗生物質を含まない、10%FBSおよび1%L-グルタミンを添加した高グルコース4.5%DMEM完全培地中で単層培養物として維持した。
細胞株は、37℃、加湿下5%CO2雰囲気中で増殖させ、マイコプラズマ検出キットである「MycoAlert」(Lonza)でマイコプラズマの存在を定期的に試験した。
In vitroでの細胞毒性、MTTアッセイ
LTX-315の細胞毒性効果を、比色MTT生存度アッセイを用いて、Eliassenら((2002), 22(5): pp2703-10)に記載される方法で調べた。A375細胞を、96ウェルプレートに1×105細胞/mLの濃度で0.1mL播種し、完全増殖培地中で一晩接着させた。その後、培地を除去し、細胞を無血清RPMI-1650培地で2回洗浄してから、無血清RPMI培地に2.5〜300μg/mLの濃度範囲で溶解させたLTX-315を加えて、5〜180分間インキュベートした。無血清RPMI培地で処理した細胞は、ネガティブコントロール細胞として使用し、1%Triton X-100を含む無血清培地で処理した細胞は、ポジティブコントロールとして使用した。最終的な結果は、3連のウェルを用いた3回の試験における平均値を用いて計算した。
共焦点顕微鏡検査
非標識細胞を用いた生細胞イメージング
25μg/mLのヒトフィブロネクチン(Sigma)でプレコートした「Nunc(登録商標) Lab-Tec(登録商標) 8-wells chambered covered glass」(Sigma)上に、完全培地を用いてA375細胞を10,000細胞/ウェルで播種し、一晩で接着させた。細胞を無血清のRPMI培地で2回洗浄し、RPMI培地に溶解させたペプチドで処理し、さらに、63X/1.2Wの対物レンズを使用し、Bright on a Leica TCS SP5共焦点顕微鏡を用いて観察した。この顕微鏡は、CO2と温度が制御されたインキュベーションチャンバーを備えていた。
固定された細胞、MitoTracker(登録商標)-
細胞は、生細胞イメージング用として播種され、ペプチド処理に先立って、MitoTracker(登録商標) CMH2XROS(Invitrogen)100nMで15分間処理された。細胞は、17μMのLTX-315で処理された。一方、ネガティブコントロールは無血清のRPMI培地のみで処理された。60分間のインキュベーション後、細胞をZeissの顕微鏡を用いて解析した。続いて、全ての共焦点イメージング実験が、少なくとも2回以上実施され、同様の結果を得た。
固定された細胞、蛍光標識されたペプチド
Subconfluential(細胞が培養皿の半分くらいに増えた状態)のA375細胞は、上述したように8,000細胞/ウェルで播種され、メーカーのプロトコルに従って、トランスフェクション試薬Lipofectamine LTX with PLUS (Invitrogen)を用いて、第2日目にトランスフェクション(形質移入)された。ミトコンドリアは、pDsRed2-Mitoを用いて標識し、核は、GFP-Histon2B plasmid(Imaging Platform, University of Tromso)を使用して標識した。トランスフェクションから1日後、細胞を無血清のRPMI培地で2回洗浄し、異なる濃度およびインキュベーション期間において、LTX-315パシフィックブルー(LTX-315 PB)またはLTX-328パシフィックブルーを用いて処理した。MTTアッセイによって決定されたように、LTX-315 PBは、非標識のLTX-315と同様の細胞毒性プロファイルを示した。コントロール細胞は、非標識LTX-315で処理されたものと、無血清のRPMI培地のみで処理されたものであった。インキュベーション後、細胞は、PBSに含まれる4%パラホルムアルデヒドで固定され、ウェルをProLong(登録商標)Gold Antifade Reagent(Invitrogen)で封入した。細胞はさらに693、1.2 Wの対物レンズを用いて、Leica TCS SP5共焦点顕微鏡を使用して解析した。
UVを488レーザーおよび561レーザーと共に用いることで、Pacific Blue(商標)、GFPおよびDSレッドを励起させ、以下の波長幅で蛍光チャンネルが順次検出された。
(減衰した)UV:420〜480nm、488レーザー:501〜550nmおよび561レーザー:576〜676nm。
TEM電子顕微鏡
A375細胞を6ウェルプレートへ1ウェル当たり1×105細胞で播種し、膜構造を最適化させるため、培地中で3日間増殖させた。また、培地は2日目に交換した。細胞は、無血清RPMI培地で2回洗浄した後、5、10および25μg/mLとなるように無血清RPMI培地に溶解したLTX-315で処理した。また、無血清RPMI培地をネガティブコントロールとして用いた。
次いで、細胞は、PBSで2回洗浄した後、ホルムアルデヒドを4%、およびグルタルアルデヒドを1%含むHepes緩衝液(pH7.8)を用いて4℃で24時間固定した。
脱水処理および後固定のプロトコルは、5%のタンニン酸緩衝液中でのインキュベーション、および1%オスミウムで還元したフェロシアン中でのインキュベーションを含んでいた。
超薄切片を作製し、酢酸ウラニル(5%)およびレイノルズクエン酸鉛を染色および対比のために使用した。サンプルは、JEOL JEM-1010透過型電子顕微鏡で検出し、画像はオリンパスモラダサイドマウントTEM CCDカメラ(Olympus soft imaging solutions, GmbH, Germany)で撮影した。
活性酸素種(Reactive Oxygen Species; ROS)の蛍光測定
DCFDA cellular reactive oxygen species detection assay kit(細胞活性酸素種の検出アッセイキット)は、アブカム(abcam(登録商標))から購入した。A375細胞は、96ウェルコスターブラッククリアボトムプレート(96-well Costar black clear bottom plate)に1ウェル当たり20000細胞で播種し、DCFDAアッセイの前に37℃で16時間インキュベートした。細胞は、1ウェルあたり100μLの予熱したPBSを用いて1回洗浄し、細胞培養インキュベーターの中で、キット付属の緩衝液に20μMで含まれるDCFDAと37℃で45分間インキュベートした。その後、1ウェルあたり100μLの緩衝液で再度洗浄した。次いで、上記細胞を、17μMの濃度で緩衝液に溶解したLTX-315ペプチド100μL/ウェルで30分間刺激した。刺激しなかった細胞は、ネガティブコントロールとして使用した。
蛍光強度は、FLUOstar Galaxy reader上で、485nmの励起波長および530nmの発光波長で測定した。
HMGB1(high mobility-group box-1)の放出
A375細胞を完全培地中、6ウェルプレートにおいて1ウェルあたり3×105個播種し、一晩接着させた。細胞は、35μMのLTX-315またはLTX-328で処理した後、37℃、5%CO2下で異なる時間(5、10、15、30、60分)インキュベートした。ネガティブコントロールは、無血清RPMI-1650であった。
上清(S)を回収し、1400×gで5分間遠心分離した。そして、(細胞を)PBSで2回洗浄後、4×サンプル緩衝液(Invitrogen、番号)、0.1 M DTT(Sigma、番号)および水を用いて溶解して、細胞溶解物(L)を回収した。上清は、アミコンウルトラ(Amicon Ultra)50K(分画分子量 5000)の遠心分離フィルター(Millipore,UFC505024)を用いて濃縮し、また、上記細胞溶解物を超音波処理した。上清および細胞溶解物の両方を煮沸し、10%のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離し、その後、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(Millipore)に電気的に転写した。上記PVDF膜を5%ミルクでブロッキングし、HMGB1抗体(ウサギポリクローナル、abcam、ab18256)とともにインキュベートした。このPVDF膜をTBSTで数回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした二次抗体(abcam,ab6721)とともにインキュベートした。TBSTで再度すすぎ、次いでWBルミノール試薬(Santa Cruz Biotechnology, Heidelberg, Germany)を使用して現像した。
シトクロム-Cの放出
HMGB1についての解析と同様にA375細胞を、播種し、35μMのLTX-315またはLTX-328で処理し、異なる時間(5分、15分、45分)インキュベートした。HMGB1についての解析と同様に上清を回収し、濃縮し、上清由来のサンプルを4.5 hour solid form Cytochrome C- Elisa kit(R&D Systems, USA, #DCTC0)を用いてメーカーの製品説明書に従って解析した。すぐ後に、50%に希釈したサンプルは、分析され、450nmに設定したマイクロプレートリーダーを用いてその吸光度が測定された。この測定値を、540nmにおける測定値から差し引いた。アッセイサンプルの各セットについて標準曲線を作成した。サンプルは4連で測定開始(RUN)され、上清中に放出されたシトクロム-Cは、未処理細胞の上清中のシトクロム-Cのレベル以上で現れた。
ATPの放出
LTX-315で処理したA375細胞の上清をEnliten(登録商標) ATP luciferase assay kit(Promega, USA)を用いて解析した。細胞は、ROSに関する解析の通りに播種され、1〜15分間の異なるインキュベーション時間において、LTX-315を用いたインキュベーション処理を2連行った。この実験を3回繰り返した。
ネガティブコントロールは、無血清培地に曝しただけの未処理のA375細胞であった。サンプルは、50倍希釈および100倍希釈され、メーカのプロトコルに従ってLuminoscan RT luminometerを用いて分析した。
統計分析
全てのデータは、少なくとも2連の実験を、少なくとも2回独立して行なったものでり、平均±標準偏差として表される。シトクロム-Cの放出とATPの放出についてのデータは、一元配置分散分析および多重比較検定を用いて比較を行い、P値<0.05となるときに統計的有意性を示すとみなした。
結果
メラノーマ細胞に対するLTX-315の細胞毒性効果
In vitroにおけるA735メラノーマ細胞に対するLTX-315の効果を調べるために、発明者らは、MTTによる細胞生存率アッセイによって、異なるインキュベーション時間におけるペプチド(LTX-315)に対するIC50値を決定した。IC50値は、インキュベーション開始から僅か5分後に30μM、90分後に14μMにまで推移した。さらに180分までインキュベーションをおこなったが、追加の効果は生じなかった(図8)。
LTX-315での処理は、迅速な細胞溶解を引き起こす
発明者らは、次にLTX-315で処理したA735メラノーマ細胞の細胞形態を評価しようと考えた。細胞をIC50値のLTX-315で処理し、明視野共焦点顕微鏡で調べた。処理された細胞は、細胞凝集に先立って、正常な上皮形態から細胞質の中身が溶出し細胞が全崩壊する急激な変化を示した(データは示さず)。これらの変化は、通常、細胞の大半において、IC50値における処理から15〜60分以内に発生した。
LTX-315は、内部移行しミトコンドリアを標的とする
ペプチドの内部移行および細胞内における動態を調べるため、LTX-315をパシフィックブルーで標識し、それぞれ3μM、1.5μMの濃度で細胞と共にインキュベートした。標識されたLTX-315は、迅速に細胞膜を通過し、1.5μMで、LTX-315ペプチドは、30分間のインキュベーション後にミトコンドリア周辺への蓄積が確認されたが、細胞核では検出されなかった(図9)。標識された、非溶解性である偽配列のペプチドLTX-328は、いずれの濃度およびインキュベーション時間であっても細胞内移行をしなかった(図10)。
LTX-315は、細胞内の超微細構造変化を誘導する
発明者らは、さらに、透過電子顕微鏡(TEM)によって、処理した細胞における超微細構造の変化を評価した。A375細胞に、培地中に直接溶解したLTX-315、または培地のみのいずれかで処理を行った。低濃度(3.5μM)のLTX-315ペプチドで処理した細胞の多くが、一部のミトコンドリアの形態が変化を示すのと同様に空胞化を示した(図11)。これらのミトコンドリアは電子密度が高くなく、また、クリステがより一層離れているか全く観察されない状態であり、ある程度の再組織化を示しているように見えた。これらのサンプル中のネクローシス細胞の数は5%未満であった。これらの低濃度では、細胞質の空胞化が観察された。これらのサンプルにおけるのもう一つの共通知見は、周辺的に配置された空胞であり、これらは、均質物質を含む単一膜に沿って並べられていた(図11(B))。
細胞を60分間、高濃度(17μM)のLTX-315で処理した場合、処理した細胞の約40%は、原形質膜の完全性の損失したネクローシス様の形態を示した(図11(C)および図11(E))。まだ無傷の細胞は、微絨毛を有する正常な外観のものから、ミトコンドリアが明らかに影響を受けている丸形状の外観のものまで、大きな不均一性を示した。この高濃度においては、調査した細胞のわずか4%が空胞の形成を示し、また、クロマチン凝縮は、本試料においては試験したいずれのペプチド濃度においても見られなかった。
これらの結果は、LTX-315が腫瘍細胞を溶解させることで殺傷し、一方、低濃度では、空胞形成やミトコンドリアの形態変化等の細胞の超微細構造の変化を引き起こすことを示している。また、アポトーシスによる細胞死を示唆する有意な形態学的変化は観察されなかった。
別の実験において、ヒトA547細胞(卵巣メラノーマ細胞株)に10μg/mLのLTX-315を曝露した結果、ミトコンドリア膜の崩壊をもたらした(図16)。
LTX-315処理は、細胞外へのATP放出を引き起こす
DAMPsは、細胞が損傷している間、細胞内のソース(intracellular source)から放出される分子である。DAMPsは、抗原提示細胞(APC)上にあるパターン認識受容体(PRRs)への結合を介して、免疫応答を開始し継続させることができる。一般的に知られているDAMPsは、ATP、HMGB1、カルレティキュリン、シトクロム-C、ミトコンドリアDNAおよび活性酸素種(ROS)である。発明者らは、次に、LTX-315で処理した細胞からATPが上清に放出されるか否かを調べた。そこで、処理細胞および非処理細胞の上清を、ルシフェラーゼ検出アッセイを用いて分析した。図15に示すように、ATPは、LTX-315処理後早くも5分後には上清中に検出され、また上記放出は濃度依存的であった。
LTX-315処理は、上清へのシトクロム-Cの放出を誘導する
LTX-315で処理した細胞が、培地中にシトクロム-Cを放出するかどうかを評価するために、A375細胞を、35μMのLTX-315で異なる時間(5分、15分、45分)処理した。上清はその後ELISAアッセイを用いて分析した。35μMのLTX-315で処理された細胞は、未処理のコントロール細胞と比較して、上清中のシトクロム-C値は3倍以上であった。シトクロム-Cの増加は、それぞれ、処理後早くも5分後に検出され、また、ペプチド処理の15分〜45分後にもシトクロム-C値が増加した(図13)。
LTX-315処理は、細胞外へのHMGB1放出を引き起こす
HMGB1は、非ヒストン、クロマチン結合核タンパク質である。一旦ネクローシス細胞から受動的に放出されると、HMGB1は、いくつかの免疫賦活化効果において、樹状細胞の機能的成熟、サイトカイン刺激および走化性を誘発することができる。HMGB1は、通常、細胞核内にあり、健常細胞の細胞溶解物中にあるともされるが、培地(上清)中では見られない。発明者らは、LTX-315で処理した細胞からのHMGB1の放出を評価するために、細胞溶解物中の核画分(nuclear compartment)から細胞上清へ移行して遊離しているHMGB1を調べた。
LTX-315およびLTX-328で処理したA375メラノーマ細胞の細胞溶解物および細胞上清の両方を、ウェスタンブロットを用いて解析した。細胞は、35μMのLTX-315またはLTX-328で処理された。LTX-315で処理したメラノーマ細胞では、細胞溶解物から上清への段階的な移行が検出されたが、偽配列ペプチドLTX-328または無血清培地のみで処理した細胞では移行が検出されなかった(図14)。
LTX-315処理は、A375メラノーマ細胞において活性酸素種(ROS)の産生を引き起こす
LTX-315処理後の活性酸素の生成はCH2DCFDA蛍光アッセイにより測定した。相当量のROSがLTX-315とのインキュベーションの15分後に発生し、ROSの発生量は、(LTX-315の)濃度に依存的であった(図12)。
ディスカッション
パシフィックブルー蛍光分子で標識されたLTX-315は、A375メラノーマ細胞とインキュベーション後、数分以内に内在化して細胞質内に拡散した(図9)。低濃度においては、ペプチドがミトコンドリア周辺へ蓄積することが明らかであった一方で、高濃度では細胞質内でさらに拡散して細胞膜周辺に円形構造に蓄積された(図10)。ペプチドがミトコンドリア膜を攻撃した場合には、ミトコンドリアの膜電位の低下または完全な崩壊さえも予測される。膜電位依存ミトコンドリア染色剤のMitoTracker CMXh2ROSを用いた細胞の共焦点イメージングは、ペプチド処理後短時間におけるミトコンドリアシグナルの消失を示した(データは示さず)。このシグナルの消失は、ミトコンドリアとペプチド(LTX-315)との相互作用が、ミトコンドリアの最も重要な細胞機能に重要であるミトコンドリア膜電位の消失を引き起こすことを示している。変化したミトコンドリアの形態も、透過電子顕微鏡(TEM)によって確認された。
LTX-315で60分間処理した細胞は、未処理細胞と比較すると、クリステ組織が変化した、電子密度の殆ど無いミトコンドリアを有し、ミトコンドリア内で空胞も形成されていた(図11)。さらに、空胞形成は3.5μMのLTX-315で処理した細胞の約20%で明確に示された。ミトコンドリアが機能不全である場合には、遊離酸素ラジカル(ROS)が形成され得るところ、発明者らは、蛍光アッセイを用いて、ペプチド処理後の数分以内に活性酸素(ROS)が形成されることを示した(図12)。
本研究において、発明者らはLTX-315ペプチドを用いた処理は、処理後のA375メラノーマ細胞におけるROSレベルの上昇を引き起こすことを示している。ペプチド処理に続いてROSレベルがより高くなることに関する1つの説明としては、ペプチドが細胞に侵入してミトコンドリアを標的とすることで、機能不全となったミトコンドリアが、その後、活性酸素(ROS)を放出するということが考えられる。
ELISAアッセイを通じて、発明者らはペプチド(LTX-315)処理のわずか数分後、処理細胞の上清中におけるシトクロム-Cの放出を検出した(図13)。シトクロム-Cは、ミトコンドリア外膜が擾乱された場合に、ミトコンドリアの膜間スペースから細胞質中に放出されるミトコンドリアタンパク質であり、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1 (Apaf-1)と結合することにより、最終的にアポトーシスによる細胞死を導くアポトーシスカスケードの一部でもある。しかし、シトクロム-Cは、細胞外空間にある場合、炎症誘発性メディエーターとして作用することが報告されており、NF-κBを活性化し、サイトカインやケモカイン産生を誘導する。細胞区画から細胞外区画へのHMGB1の移行は、ウェスタンブロットを用いて検出した(図14)。
核タンパク質HMBG1は細胞外液中に放出されると、それは、DAMPとして機能して、PRRのTLRs受容体とRAGE受容体の両方に結合することができる。これらの活性化は、炎症性サイトカインの転写などの多くの炎症性応答をもたらしうる。発明者らはまた、(細胞を)ペプチドとインキュベーションした後の上清中に放出されたATPを検出した(図15)。ATPは、細胞外に呈示されて(presented)、樹状細胞上のpurinerg P2RX7受容体を活性化することによりDAMPとして機能する。
この受容体は、ATPと結合した後、カチオン性の小分子およびそれより大きい分子のために開く孔として機能するだけでなく、受容体の活性化は、また、炎症性サイトカインIL-1βのプロセシングおよび放出を引き起こす。
要約すれば、発明者らのデータは、原形質膜を直接攻撃するだけではなく、原形質膜の統合性を即時に損失させるためには低すぎる濃度のペプチドが細胞内移行した後に引き起こされる、重要な細胞内小器官の損傷の結果としても、LTX-315が癌細胞における溶解性細胞死を誘導することを示唆している。発明者らは、ペプチド処理が、このCytC、ATP、HMGB1およびROSといった、いくつかのDAMPsの放出を引き起こすことを示している。DAMPsは、いくつかの経路で、損傷を受けた細胞の細胞完全性に影響を与え得るだけでなく、いわゆる免疫原性の細胞死とも関係している。ATP、CytCおよびHMGB1等の強力な免疫刺激分子(DAMPS)とともに腫瘍特異的抗原が細胞外区画へ放出されることで、強い免疫反応を起こすことができる。
さらに、これらの因子は、樹状細胞および適応免疫系における他の補助細胞の成熟および活性化を引き起こす。
実施例11
イントロダクション
がんの成功した治療は、個別化医療(テーラーメイド医療)の範疇であり、免疫の関与および活性化を最大にするために様々な治療法を組み合わせる必要がある、という概念は広く受け入れられている。シクロホスファミド(CY)をより高用量で投与することは免疫抑制を引き起こし得る。しかしながら、CYは、(メトロミックな)低用量で、より具体的には骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)やTreg細胞を含む抑制性細胞サブセットの選択的抑制を介して、様々な抗原に対する免疫反応を促進することができる。CYは、HMGB1およびecto-CRT(アポトーシスに伴い細胞表面へ移行したカルレティキュリン)の放出を介して、樹状細胞の活性化も引き起こすことができ、これは炎症性サイトカインの産生およびT細胞の増殖という連鎖反応を引き起こす。2mgのCYを一回腹腔内注射することにより、24時間以内に膵臓細胞が減少していくことが示され、CYの投与後4日目には膵臓細胞の数は最低数に達した(50%減少)。CYの投与後、膵臓およびリンパ節においてCD4+T細胞およびCD8+ T細胞の相対数は上昇する一方で、CD19+T細胞およびTreg細胞の相対数は急激に減少した。
試験の根本方針
A20 リンパ腫モデルにおけるLTX-315およびCYのメトロノミック投与の併用における相乗効果の可能性についての研究を行う。
試験物質: LTX-315(ロット1013687、濃度補正係数 76.5 %、Lytix Biopharmaにより供給)、Sendoxan(センドキサン/シクロホスファミド一水和物)は病院薬局から購入した。
LTX-315の溶媒: 生理食塩水(滅菌水中0,9%NaCl)
Sendoxanの溶媒: 生理食塩水(滅菌水中0,9%NaCl)
コントロール溶媒: 生理食塩水(滅菌水中0,9%NaCl)
評価方法
動物:Charles River(England)から入手した、5〜8週齢の雌Balb/c野生型マウス。全てのマウスは現地およびヨーロッパにおける倫理委員会のガイドラインに従って病原体を有しない飼養施設におけるケージ内で飼育された。
腫瘍の植え付け:回収し、RPMI-1640で洗浄した腫瘍細胞を、Balb/cマウス腹部右側に皮下注射(i.d.)した。(マウス一匹あたり5×106個のA20細胞/50μl RPMI-1640)。マウスに触知可能な腫瘍(20〜30mm2)ができたら、生理食塩水に溶解したCY(2.0mg CY/500μl生理食塩水)を単回腹腔内投与した(4日目)。8日目に、LTX-315(1.0mg LTX-315/生理食塩水50μl)の脊髄内注射を単回行うことでペプチド処理を開始し、該注射は1日1回3日連続して行った。腫瘍の大きさは電気キャリパーを使用して計測し、楕円の面積は[(最大幅)×(最小幅/2)×π]として表した。腫瘍の垂直面積(perpendicular tumor dimension)が130 mm2に達するか、潰瘍化したときに動物は安楽死させた。
結果
A20メラノーマ細胞は、粘性で、腫瘍増殖パターンが不定形(viscous and undefined)であり、また、その潜在性転移能のせいで治療が困難なように思われていた。LTX-315は、腫瘍内注射後、動物群の一匹においては触知可能なA20の腫瘍の完全な退縮を、残りの動物については部分寛解を誘導した。
LTX-315とメトロノミック用量のCYとの組合せにおける相乗効果について調べるため、A20リンパ腫を有するBalb/c系統のマウスを、4日目にCY(2mg/500μL)を単回の腹腔内注射で処理を行ない、LTX-315(1mg/50μl)を3日連続で脊髄内注射を行った(図17および図18)。コントロール群は腹腔内注射および脊髄内注射ともに同様の処理を同量の溶媒を用いて行った。メトロノミックなCY処理が7〜10日の間において腫瘍の成長を抑制したため、腫瘍は、LTX-315およびメトロノミックにCYを与えられていた群に比べ、LTX-315単独で処理した群において、処理を始めた時よりも大きくなっており、このことは注目すべき事実である。
結論
メトロノミック用量のCYと組み合わせてLTX-315を与えられていた動物の大部分では完全かつ長く継続する腫瘍の退縮がみられ、さらに処理後4週間には腫瘍がなくなった。
上述の特定の実施形態のみに本発明を限定するものではない。また、多数の実施形態、修正および改良は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく当業者には容易に明らかである。

Claims (5)

  1. 配列番号23の配列を有する化合物を含む医薬製剤であって、
    前記化合物は、任意に、塩、エステル、またはアミドの形態であり、
    前記医薬製剤は、免疫寛容を抑制する細胞毒性をもつ化学療法剤と組合せて投与することにより、腫瘍の治療に使用されるもので、
    ここで、前記細胞毒性をもつ化学療法剤は、シクロホスファミドであり、サブ細胞毒性用量以下の量で投与されるものであり、前記化合物の最初の投与の前において投与される、医薬製剤。
  2. 前記細胞毒性をもつ化学療法剤は、通常、直接的な抗癌治療に使用される用量の5%〜50%の用量で投与される、請求項1に記載された医薬製剤。
  3. 前記細胞毒性をもつ化学療法剤は、メトロノミックな用量で投与される、請求項1または2に記載された医薬製剤。
  4. 求項1に記載された細胞毒性をもつ化学療法剤と併用投与されることを特徴とする、腫瘍治療のための医薬の製造における、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬製剤の使用であって、該細胞毒性を持つ化学療法剤はシクロホスファミドであり、該細胞毒性をもつ化学療法剤は請求項1〜3のいずれか1項に記載されている用量で、請求項1に記載の化合物の最初の投与の前において投与される、前記医薬製剤の使用。
  5. (i)請求項1〜3のいずれか1項に記載された医薬製剤;および(ii)請求項1〜3のいずれか1項に記載された用量で、請求項1に記載された細胞毒性を持つ化学療法剤を含む、腫瘍治療のための製品。
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