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JP6765177B2 - 多孔質金属部品の製造方法 - Google Patents

多孔質金属部品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多孔質金属部品の製造方法に関する。
周知のように、無数の内部空孔(連続気孔、連通孔)を有する多孔質の金属部品は、例えば、軸受(特にすべり軸受)、異物を捕捉しつつ流体を通過させるフィルタなどとして広く使用されている。多孔質金属部品は、主に、金属粉末を主成分とした原料粉末の圧粉体を得る成形工程と、圧粉体に高強度化処理を施す高強度化処理工程とを経ることで得られる。上記の高強度化処理としては、例えば、圧粉体を金属粉末の焼結温度以上で加熱することにより、金属粉末の粒子同士をネック結合させる焼結処理、あるいは、大気等の酸化性雰囲気中で圧粉体を加熱することによって金属粉末の粒子表面に酸化皮膜(酸化物皮膜)を形成し、この酸化皮膜を介して粒子同士を結合させる皮膜形成処理などが採用される。
上記の原料粉末は、通常、主成分粉末としての金属粉末と、この金属粉末に添加・混合された粉末状の固体潤滑剤(潤滑剤粉末)とを含む。このように、原料粉末に潤滑剤粉末を含めておけば、金属粉末と成形金型の間、および金属粉末の粒子相互間における潤滑性を担保し、圧粉体の成形性を高めることができる。但し、使用する潤滑剤粉末の粒径が大きくなるほど、原料粉末中における潤滑剤粉末の分散性が低下するため、所望の潤滑性を担保できなくなる可能性がある。そのため、潤滑剤粉末としては、金属粉末に比べて微細なもの、具体的には平均粒径20μm未満のものを使用するのが一般的である。
ところで、多孔質金属製のすべり軸受においては、内部空孔が潤滑油を保持するための保油部として機能し、また、多孔質金属製のフィルタにおいては、内部空孔が流体の流路として機能する。このため、多孔質金属部品は、高い空孔率(例えば、10vol%を超える空孔率)を有することが必要とされる場合もある。多孔質金属部品の空孔率を高めるための技術手段として、圧粉体を低密度に成形することが考えられるが、この場合、圧粉体が欠損等し易くなり、圧粉体の取り扱いに格別の配慮を要する他、多孔質金属部品に必要とされる強度を確保できない可能性が高まる。
そこで、高い空孔率および必要強度を兼ね備えた多孔質金属部品を得るため、例えば下記の特許文献1には、原料粉末の圧粉体を焼結することで焼結軸受を製造するにあたり、粒度325メッシュ以下の微細粉を30〜60%含有する銅粉末に対し、潤滑剤粉末としての金属石けんを3〜7%添加してなる原料粉末を用いることが開示されている。
特公昭57−45801号公報
しかしながら、特許文献1の技術手段は、使用可能な金属粉末の種類や組成が極めて限定的であるため、汎用性・実用性に欠けるという問題がある。
このような実情に鑑み、本発明の課題は、使用する金属粉末の種類や組成に制限を加えずとも、高い空孔率と必要強度を兼ね備えた多孔質金属部品を作製可能とすることにある。
本発明者らは、高精度の圧粉体、ひいては多孔質金属部品を作製する上で必要不可欠な潤滑剤粉末を、圧粉体の成形性を高めるための潤滑剤としてのみならず、造孔材(空孔形成材)として活用することを着想し、この着想に基づいて鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記の課題を解決するために創案された本発明は、10vol%を超える空孔率を有する多孔質金属部品を製造するための方法であって、金属粉末に潤滑剤粉末を添加してなる原料粉末の圧粉体を成形する成形工程と、加熱を伴う高強度化処理を圧粉体に施す高強度化処理工程と、を有し、潤滑剤粉末として、分解温度が高強度化処理の処理温度以下であると共に、平均粒径が20μm以上200μm未満のものを使用することを特徴とする。なお、ここでいう「空孔率」とは、空孔体積の総和を多孔質金属部品の体積で除した値の百分率をいう。
上記構成によれば、高強度化処理の実施に伴って、圧粉体中に点在していた潤滑剤粉末が分解・除去されるため、圧粉体中の潤滑剤粉末が点在していた箇所に新たに空孔が形成される。ここで、潤滑剤粉末の平均粒径が20μm未満の場合には、高強度化処理の実施に伴う金属粉末の熱膨張等の影響により、多孔質金属部品の空孔率向上に有効に寄与し得るような径を有する空孔を確実に形成することができない。これに対し、平均粒径が20μm以上の潤滑剤粉末を選択使用すれば、上記態様で形成される空孔が金属粉末の熱膨張等の影響によって収縮等しても、多孔質金属部品の空孔率向上に有効に寄与する。但し、平均粒径が過度に大きい潤滑剤粉末(具体的には、平均粒径が200μm以上の潤滑剤粉末)を使用すると、潤滑剤粉末が本来的に発揮すべき潤滑機能を発揮できないばかりか、新たに形成される空孔も過度に大きい粗大空孔となり易いため多孔質金属部品の強度低下を招来する可能性がある。従って、分解温度が高強度化処理の処理温度以下であると共に、平均粒径が20μm以上200μm未満の潤滑剤粉末を選択的に使用すれば、使用する金属粉末の種類や組成に制限を加えずとも、高い空孔率と必要強度を兼ね備えた多孔質金属部品を得ることができる。
上記構成において、金属粉末に対する潤滑剤粉末の添加量は、0.3質量%以上3質量%未満とするのが好ましい。
成形工程と、高強度化処理工程との間には、圧粉体を高強度化処理の処理温度よりも低い温度で加熱する脱脂処理工程を設けても良く、この場合、潤滑剤粉末としては、分解温度が脱脂処理工程における圧粉体の加熱温度よりも低いものを使用するのが好ましい。このようにすれば、潤滑剤粉末に由来する残渣物が多孔質金属部品の内部に残存するのを効果的に防止することができるので、高品質の多孔質金属部品を得る上で有利となる。
加熱を伴う高硬度化処理としては、圧粉体を金属(金属粉末)の焼結温度以上で加熱する焼結処理を採用することができる。この場合、金属粉末の粒子同士がネック結合することによって高強度化した圧粉体(このような圧粉体は、一般的に「焼結体」と称される)を得ることができる。
また、加熱を伴う高強度化処理としては、金属粉末の粒子表面に酸化皮膜を形成する皮膜形成処理を採用することもできる。この場合、酸化皮膜を介して金属粉末の粒子同士が結合することによって高強度化した圧粉体を得ることができる。
以上より、本発明によれば、使用する金属粉末の種類や組成に制限を加えずとも、高い空孔率と必要強度を兼ね備えた多孔質金属部品を作製することが可能となる。
本発明に係る多孔質金属部品の製造方法を適用して製造されたすべり軸受の一例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る多孔質金属部品の製造方法を適用して製造されたすべり軸受の他例を模式的に示す断面図である。 (a)図は、本発明を適用して得られた多孔質金属部品の組織の拡大写真、(b)図は、本発明を適用せずに得られた多孔質金属部品の組織の拡大写真である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る多孔質金属部品の製造方法は、例えば、図1に示すように、内周に挿入した軸Sをラジアル方向に支持するためのすべり軸受1、より具体的には、無数の内部空孔2を有し、空孔率が10vol%を超えた多孔質金属製のすべり軸受1を製造する際に適用される。このすべり軸受1は、その多孔質組織(無数の内部空孔2)に潤滑油を含浸させた、いわゆる含油状態で使用される。従って、例えば、支持すべき軸Sが回転すると、これに伴って、すべり軸受1の内部空孔2に含浸させた潤滑油がすべり軸受1の内周面と軸Sの外周面との間の軸受隙間(ラジアル軸受隙間)に滲み出して油膜を形成し、この油膜を介して軸Sがラジアル方向に回転自在に支持される。
上記のすべり軸受1は、焼結金属の多孔質体からなる。すなわち、このすべり軸受1において、内部空孔2は、ネック結合した金属粉末の粒子3相互間に形成されている。このようなすべり軸受1は、例えば、成形工程、高強度化処理工程としての焼結工程、整形工程および含油工程を順に経て作製される。以下、上記の各工程について詳細に説明する。
成形工程では、例えば、一軸加圧成形法で金属粉末を主成分とした原料粉末を圧縮することにより、すべり軸受1の基材となる円筒状の圧粉体を得る。このとき、成形金型、および原料粉末の少なくとも一方を加熱した状態で原料粉末を圧縮するようにしても良いし、成形金型として、特に粉末充填部(キャビティ)の内壁面が、潤滑性に富む硬質皮膜(例えば、DLC膜や、CrN、TiNなどの窒化膜)で被覆されたものを用いるようにしても良い。
なお、圧粉体は、一軸加圧成形法以外の手法で得ることも可能である。具体的には、多軸CNCプレスによる成形、射出成形(MIM)、あるいは冷間静水圧加圧法(CIP)などを利用して圧粉体を得るようにしても良い。
ここで、原料粉末としては、金属粉末を主成分とし、これに所定量の潤滑剤粉末を添加・混合したものが使用される。金属粉末としては、焼結可能なものであれば問題なく使用することができ、例えば、鉄、銅、アルミニウム等の群から選択される何れか一種の金属を主成分とする粉末を使用することができる。金属粉末は、一種のみを使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。また、使用する金属粉末の製法も特に問わない。すなわち、例えば、ガスアトマイズや水アトマイズ等のアトマイズ法により製造されるアトマイズ粉末、還元法により製造される還元粉末、電解法により製造される電解粉末、カルボニル法により製造されるカルボニル粉末などが使用できる。なお、金属粉末として鉄粉末を使用する場合には、多孔質状をなし、かつ表面に比較的大きな凹凸を有する還元鉄粉を使用するのが好ましい。すべり軸受1をはじめとする多孔質金属部品の空孔率(含油率)および強度向上を図る上で有利となるからである。
潤滑剤粉末としては、後述する高強度化処理工程(焼結工程)の処理温度で分解(熱分解)するもの、すなわち、分解温度が高強度化処理の処理温度以下のものを使用する。具体的には、例えば、ステアリン酸アルミニウムやステアリン酸亜鉛等の金属石けん、脂肪酸、高級アルコール、グリセリン、エステル、アミンおよびその誘導体、脂肪酸アミドなどのワックス、各種樹脂などが使用できる。上記の潤滑剤粉末は、一種のみを使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。但し、潤滑剤粉末としては、比較的大粒径のもの、具体的には平均粒径が20μm以上200μm未満のものを使用する。これは、潤滑剤粉末を、成形金型装置に対する原料粉末の充填、原料粉末の圧縮(圧粉体の成形)および圧粉体の離型という一連の圧粉体成形プロセスにおける潤滑性確保だけではなく、空孔形成材としても有効に活用するためである。また、金属粉末に対する潤滑剤粉末の添加量は、0.3質量%以上3質量%未満とする。
上記の圧縮工程で得られた圧粉体は、高強度化処理工程としての焼結工程において、加熱を伴う高強度化処理(ここでは焼結処理)が施される。焼結処理は、所定の雰囲気下に置かれた圧粉体を金属粉末の焼結温度以上(使用する金属粉末の種類や組成によって変わるが、一般的には800℃以上)で所定時間加熱することにより行われる。これにより、金属粉末の粒子同士がネック結合した焼結体が得られる。なお、焼結処理は、例えば、ヒータが設置された焼結ゾーンと、自然放熱を行う冷却ゾーンとが連続的に設けられた連続焼結炉を用いて実施することができる。
整形工程では、焼結体を完成品形状に仕上げるための整形加工が実施される。整形加工としては、例えば、相対的な昇降移動が可能に同軸配置されたダイ、コアおよび上下パンチを有するサイジング金型を用いて焼結体の内径面および外径面のそれぞれをコアの外径面およびダイの内径面に倣わせて変形させる、いわゆるサイジングを採用することができる。最後に、完成品形状に仕上げられた焼結体は含油工程において、内部空孔に潤滑油を含浸させる含油処理に供される。これにより、図1に示す、多孔質金属部品としてのすべり軸受1が完成する。
以上で説明したように、本実施形態では、焼結金属製のすべり軸受1を得るための原料粉末として、分解温度が圧粉体を高強度化するための高強度化処理の処理温度以下(ここでは焼結温度以下)であると共に、平均粒径が20μm以上200μm未満の潤滑剤粉末を含むものが使用される。
このようにすれば、焼結処理の実施に伴って、圧粉体中に点在していた潤滑剤粉末が分解・除去されるため、圧粉体中の潤滑剤粉末が点在していた箇所に新たに空孔が形成される。潤滑剤粉末の平均粒径が20μm未満の場合には、圧粉体を加熱・焼結するのに伴って金属粉末が熱膨張等するため、焼結金属の多孔質体からなるすべり軸受1の空孔率向上に有効に寄与し得るような径を有する空孔を確実に形成することができない。これに対し、平均粒径が20μm以上の潤滑剤粉末を選択使用すれば、上記態様で形成される空孔が金属粉末の熱膨張等の影響によって収縮等しても、すべり軸受1の空孔率向上に有効に寄与する。但し、平均粒径が過度に大きい潤滑剤粉末(具体的には、平均粒径が200μm以上の潤滑剤粉末)を使用すると、潤滑剤粉末が本来的に発揮すべき潤滑機能を発揮できないばかりか、新たに形成される空孔も過度に大きい粗大空孔となり易いためすべり軸受1の強度低下を招来する可能性がある。従って、分解温度が高強度化処理の処理温度以下であると共に、平均粒径が20μm以上200μm未満の潤滑剤粉末を選択的に使用すれば、使用する金属粉末の種類や組成に制限を加えずとも、10vol%を超える高い空孔率と必要強度とを兼ね備えた焼結金属製のすべり軸受1を得ることができる。
以上、本発明の実施形態に係る多孔質金属部品(焼結金属製のすべり軸受1)の製造方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるわけではない。すなわち、本発明は、例えば、図2に模式的に示すように、無数の内部空孔11を有し、内部空孔11が、主に酸化皮膜13を介して結合した金属粉末の粒子12相互間に画成されたすべり軸受10を得る際にも、好ましく適用することができる。
図2に示すすべり軸受10は、図1に示すすべり軸受1と同様に、10vol%を超える空孔率を有し、内部空孔に潤滑油を含浸させた状態で使用されるものである。このすべり軸受10は、主に、酸化皮膜を形成可能な金属粉末(例えば、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、クロム等のイオン化傾向の大きい金属の粉末、あるいは上記金属を含む合金粉末)を主成分とする原料粉末を用いて圧粉体を作製する点、および圧粉体に施すべき加熱を伴う高強度化処理として、酸化皮膜を形成する皮膜形成処理が採用される点を除き、図1に示すすべり軸受1と同様の手順を踏んで作製される。そのため、以下では、皮膜形成処理についてのみ詳細に説明する。
皮膜形成処理は、酸化雰囲気下(例えば、大気、酸素、あるいはこれらに窒素やアルゴンなどの不活性ガスを混合したガス雰囲気下)に置かれた圧粉体を350℃以上700℃以下で所定時間(圧粉体の大きさにもよるが、概ね5分以内)加熱する、というものである。これにより、圧粉体を構成する金属粒子の表面に酸化皮膜13が徐々に形成され、この酸化皮膜13が成長するのに伴って、隣接する金属粒子同士が酸化皮膜13を介して結合したすべり軸受10が得られる。なお、例えば、金属粉末として鉄粉末を採用した場合、酸化皮膜13は、主にFe34、Fe23、FeOの群から選択される2種類以上の混相となり、金属粉末として銅粉末を採用した場合、酸化皮膜13は、主にCu0、Cu2O、Cu2+1Oの群から選択される2種類以上の混相となるが、どのような相になるかは、皮膜形成処理の処理要件等によって異なる。また、酸化皮膜13の形成に際しては、圧粉体を構成する金属粉末を水蒸気と反応させるようにしても良い。このような処理は、水蒸気処理とも称される。
上記のように、酸化皮膜13を形成する処理は、その処理温度が、圧粉体を焼結する場合の処理温度よりも格段に低いので、処理後における圧粉体の寸法変化量を小さくすることができる。そのため、圧粉体を焼結した場合には、その後の実施が必要不可欠であったサイジング等の整形加工を省略することも可能となる。また、寸法変化量を小さくできれば、圧粉体を成形するための整形金型の設計処理温度が容易となる。さらに、処理温度が低ければ、処理時に必要なエネルギーも削減できるため、処理コストを低減できる。
以上で説明した各実施形態において、成形工程と高強度化処理工程との間には、圧粉体を高強度化処理の処理温度(焼結処理温度又は皮膜形成処理温度)よりも低い温度で加熱する脱脂処理工程を設けても良い。この場合、潤滑剤粉末としては、その分解温度が脱脂処理工程における圧粉体の加熱温度よりも低いものを使用するのが好ましい。このようにすれば、圧粉体に含まれる潤滑剤粉末は、実質的に、脱脂処理工程および高強度化処理工程の双方で除去されるため、潤滑剤粉末に由来する残渣物がすべり軸受1の内部に残存するのを効果的に防止することができる。そのため、高品質のすべり軸受1を得る上で有利となる。また、潤滑剤成分をより確実に除去し、残渣物を少なくするために、脱脂工程は不活性雰囲気、還元性雰囲気、真空雰囲気で実施しても良い。
また、以上で説明した本発明に係る多孔質金属部品の製造方法は、内部空孔に潤滑油を含浸させた状態で使用されるすべり軸受のみならず、例えば、内部空孔が流体の流路として活用されるフィルタを製造する際にも好ましく適用することができる。
本発明の有用性を確認するため、(1)潤滑剤粉末の粒径、(2)潤滑剤粉末の添加量、(3)圧粉体の密度、(4)圧粉体を高強度化するための方法、(5)金属粉末の組成、および(6)潤滑剤粉末の種類が、多孔質金属部品の空孔率に与える影響を調査・確認した。何れの確認試験においても、空孔率は、各試験体の内部空孔に含浸させた潤滑油量、すなわち含油率に基づいて評価した。含油率は、JIS Z 2501に準拠した方法で求めた。各試験体に対する含油処理は、いわゆる真空含浸法により行い、ここでは、各試験体を70℃の油圧作動油(昭和シェル石油社製のシェルテラスS2M68、ISO粘度VG68相当)中に1時間以上浸漬させた。以下、上記(1)−(6)の確認試験について詳細に説明する。
(1)第1の確認試験:潤滑剤粉末の粒径
はじめに、使用する潤滑剤粉末の粒径が、多孔質金属部品の空孔率(含油率)に与える影響を調査・確認した。この確認試験の実施に際して、4種類の試験体(実施例1−3および比較例1)を作製した。4種類の試験体は、原料粉末に含める潤滑剤粉末の平均粒径を相互に異ならせる以外は、同様の条件・手順で作製した。詳細は、以下のとおりである。
[原料粉末]
金属粉末としての還元鉄粉(平均粒径100μm)に対し、潤滑剤粉末としてのアミドワックス(分解温度200〜400℃)を0.5質量%添加したもの。
[試験体の作製手順]
SKD11製の成形金型を用いた一軸加圧成形法で上記の原料粉末を圧縮することにより、内径寸法6mm×外径寸法12mm×全長寸法5±0.2mmの円筒状圧粉体(密度:6.5g/cm)を得てから、この圧粉体に脱脂処理および焼結処理を施した。脱脂処理の処理条件は、雰囲気:不活性、加熱温度:500℃、加熱時間:0.5hrとし、焼結処理の処理条件は、雰囲気:不活性、加熱温度:1100℃、加熱時間:0.5hrとした。
この確認試験の試験結果を下記の表1に示す。なお、この試験では、含油率が10vol%を超えた場合を「○」、含油率が10vol%以下の場合を「×」で評価した。
表1からも明らかなように、平均粒径が20μm未満の潤滑剤粉末を用いた比較例1では、含油率が10vol%を下回った。これは、圧粉体を焼結するのに伴って金属粉末が熱膨張等することにより、潤滑剤粉末が分解・除去されるのに伴って形成された空孔が収縮したこと、また、金属粒子間の空隙が潰れたこと、などに起因すると考えられる。これに対し、平均粒径が20μm以上の潤滑剤粉末を用いた実施例1−3は、何れも、含油率が10vol%を十分に上回った。これは、潤滑剤粉末が分解・除去されるのに伴って形成される空孔が十分に大きかったため、金属粉末の熱膨張等によって上記の空孔が収縮等しても、上記の空孔が消失するような事態が回避されたためであると推察される。なお、参考までに、図3(a)に、実施例3の断面拡大写真を示し、図3(b)に、比較例1の断面拡大写真を示す。
(2)第2の確認試験:潤滑剤粉末の添加量
次に、金属粉末に対する潤滑剤粉末の添加量が、多孔質金属部品の含油率に与える影響を調査・確認するため、比較例2−3および実施例4−6に係る試験体を新たに作製した。すなわち、比較例2−3および実施例4−6に係る試験体は、還元鉄粉に対し、平均粒径が130μmの潤滑剤粉末(アミドワックス)を添加・混合した原料粉末を用いて作製した点で共通するが、還元鉄粉に対する潤滑剤粉末の添加量は相互に異なる。なお、新たに作製した各試験体の作製手順は、第1の確認試験で使用した各試験体の作製手順と同様である。
この確認試験の試験結果を下記の表2に示す。なお、この試験では、含油率が10vol%を超えた場合を「○」、含油率が10vol%以下の場合を「×」、含油率が10vol%を超えたものの、試験体を作製する過程(詳細には、圧粉体を焼結炉に搬送する段階)で圧粉体に部分的な欠損等が生じた場合を「△」で評価した。
表2からも明らかなように、潤滑剤粉末の添加量が0.3質量%を下回る場合(具体的には0.2質量%の場合:比較例2)、含油率が10vol%を下回り、潤滑剤粉末の添加量が3質量%の場合(比較例3)、含油率は10vol%を十分に上回るものの、圧粉体の搬送時に圧粉体に部分的な欠損等が生じたため、実用上好ましくない。従って、潤滑剤粉末の添加量は、0.3質量%以上3質量%未満とするのが好ましいことがわかる。
(3)第3の確認試験:圧粉体の密度
次に、圧粉体の密度が、多孔質金属部品の含油率に与える影響を調査・確認するため、比較例4−5および実施例7−8に係る試験体を新たに作製した。すなわち、比較例4−5および実施例7−8に係る試験体は、金属粉末としての還元鉄粉に対し、平均粒径が130μmの潤滑剤粉末を0.5質量%添加・混合した原料粉末を用いて成形した圧粉体を基材とする点で共通するが、圧粉体の密度は相互に異なる。なお、新たに作製した各試験体の作製手順は、第1の確認試験で使用した各試験体の作製手順と同様である。
この確認試験の試験結果を下記の表3に示す。なお、この試験で採用した各試験体の評価基準は、第2の確認試験と同様である。
表3からも明らかなように、圧粉体の密度が5.5g/cmの場合(比較例4)、含油率は10vol%を十分に上回るものの、圧粉体の搬送時に圧粉体に部分的な欠損等が生じたため、実用上好ましくない。また、圧粉体の密度が7.2g/cmの場合(比較例5)、含油率が10vol%を大幅に下回る。従って、特に純鉄系の多孔質金属部品を得る場合、圧粉体は、その密度が5.5g/cmを超え、かつ7.2g/cm未満となるように成形するのが好ましい。
(4)第4の確認試験:圧粉体を高強度化するための方法
次に、圧粉体を高強度化するための方法が、多孔質金属部品の含油率に与える影響を調査・確認するため、実施例9−10に係る試験体を新たに作製・準備した。すなわち、実施例9−10に係る試験体は、金属粉末(還元鉄粉)に対し、平均粒径が130μmの潤滑剤粉末を0.5質量%添加・混合した原料粉末を用いて成形した密度6.5g/cmの圧粉体を基材とする点で共通するが、圧粉体に施した高強度化処理の手法が相互に異なる。具体的に説明すると、実施例9に係る試験体は、高強度化処理として、圧粉体を大気中で500℃に加熱することにより、圧粉体を構成する鉄粒子の表面に鉄粒子同士を結合する酸化皮膜を形成する、という処理を採用して作製し、実施例10に係る試験体は、高強度化処理として、500℃に加熱された圧粉体を水蒸気と反応させることにより、圧粉体を構成する鉄粒子の表面に鉄粒子同士を結合する酸化皮膜を形成する、という処理(水蒸気処理)を採用して作製した。
この確認試験の試験結果を下記の表4に示す。なお、この試験で採用した各試験体の評価基準は、第1の確認試験と同様である。
表4からも明らかなように、実施例9−10(および実施例3)に係る試験体は、何れも含油率が10vol%を十分に超えた。従って、本発明は、圧粉体に施すべき加熱を伴う高強度化処理として、焼結処理のみならず、酸化皮膜の形成処理を採用する場合でも、好ましく適用し得ることがわかる。
(5)第5の確認試験:金属粉末の組成
次に、金属粉末の組成が、多孔質金属部品の含油率に与える影響を調査・確認するため、実施例11−12に係る試験体を新たに作製した。実施例11は、金属粉末を、鉄−銅系粉末(Fe−40%Cuの粉末であって、Feは還元鉄粉、Cuは還元銅粉)に置換した以外は、実施例3と同様の手順を踏んで作製し、実施例12は、金属粉末を、銅−錫系粉末(Cu−10%Snの粉末であって、Cuは還元銅粉、Snはアトマイズ錫粉)に置換した以外は、実施例3と同様の手順を踏んで作製した。
この確認試験の試験結果を下記の表5に示す。なお、この試験で採用した各試験体の評価基準は、第1の確認試験と同様である。
表5からも明らかなように、実施例11−12(および実施例3)に係る試験体は、何れも含油率が10vol%を十分に超えた。従って、本発明は、使用する金属粉末の材質や組成によらず、含油率(空孔率)が高められた多孔質金属部品を得る上で有用であることがわかる。
(6)第6の確認試験:潤滑剤粉末の種類
最後に、金属粉末に添加する潤滑剤粉末の種類が、多孔質金属部品の含油率に与える影響を調査・確認するため、実施例13−14に係る試験体を新たに作製した。すなわち、実施例13−14に係る試験体は、金属粉末としての還元鉄粉に対し、平均粒径が130μmの潤滑剤粉末を0.5質量%添加・混合した原料粉末を用いて成形した密度6.5g/cmの圧粉体を基材とする点で共通しているが、実施例13では、潤滑剤粉末として、金属石けん系のステアリン酸亜鉛(分解温度:200〜500℃)を採用し、実施例14では、潤滑剤粉末として、アミドワックスと上記のステアリン酸亜鉛とを1:1の重量比率で混合したものを採用した。
この確認試験の試験結果を下記の表6に示す。なお、この試験で採用した各試験体の評価基準は、第1の確認試験と同様である。
表6からも明らかなように、実施例13−14に係る試験体は、何れも、実施例3に係る試験体と同様に、含油率が10vol%を十分に超えた。従って、本発明は、分解温度が、加熱を伴う高強度化処理の処理温度(より好ましくは脱脂処理の処理温度)よりも低い潤滑剤粉末を使用すれば、その添加量が適切な範囲内である限りにおいて、使用する潤滑剤粉末の種類に関わらず含油率(空孔率)が十分に高められた多孔質金属部品を得る上で有用であることがわかる。
以上の確認試験結果から、本発明は、使用する金属粉末の種類や組成等に制限を加えずとも、高い空孔率と必要強度を兼ね備えた多孔質金属部品を作製することができる極めて有用なものであることがわかる。
1 すべり軸受(多孔質金属部品)
2 内部空孔
3 金属粉末の粒子
10 すべり軸受(多孔質金属部品)
11 内部空孔
12 金属粉末の粒子
13 酸化皮膜

Claims (4)

  1. 10vol%超、20vol%以下の空孔率を有する多孔質金属部品を製造するための方法であって、
    金属粉末に潤滑剤粉末を添加してなる原料粉末の圧粉体を成形する成形工程と、加熱を伴う高強度化処理を前記圧粉体に施す高強度化処理工程とを有し、
    前記潤滑剤粉末として、分解温度が前記高強度化処理の処理温度以下であると共に、平均粒径が130μm以上200μm未満のものを使用し、
    前記金属粉末に対する前記潤滑剤粉末の添加量を、0.3質量%以上3質量%未満としたことを特徴とする多孔質金属部品の製造方法。
  2. 前記成形工程と、前記高強度化処理工程との間に、前記圧粉体を前記高強度化処理の処理温度よりも低い温度で加熱する脱脂処理工程を有し、
    前記潤滑剤粉末として、分解温度が前記脱脂処理工程における前記圧粉体の加熱温度よりも低いものを使用する請求項に記載の多孔質金属部品の製造方法。
  3. 前記高硬度化処理が、前記金属粉末の粒子同士をネック結合させる焼結処理である請求項1又は2に記載の多孔質金属部品の製造方法。
  4. 前記高硬度化処理が、隣接する前記金属粉末の粒子同士を結合する酸化皮膜を前記金属粉末の粒子表面に形成する皮膜形成処理である請求項1又は2に記載の多孔質金属部品の製造方法。
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