以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図1を参照して、実施形態に係る無段変速機の制御装置1(以下では「制御装置1」と記載)について説明する。図1は、実施形態に係る制御装置1の構成を示すブロック図である。
制御装置1について説明する前に、エンジン2と無段変速機3について説明する。まず、エンジン2について説明する。エンジン2は、どのような形式のものでもよいが、例えば、水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。エンジン2のクランク軸(出力軸)2aには、無段変速機3が接続されている。エンジン2は、エンジン・コントロールユニット(以下では「ECU(Engine Control Unit)」と記載)20によって制御される。
ECU20は、エンジン2を総合的に制御する制御装置である。ECU20は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムなどを記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、12Vバッテリによってその記憶内容が維持されるバックアップRAM、および、入出力I/Fなどを有して構成されている。
ECU20には、制御に必要な情報を取得するために、吸入空気量センサ21、クランク角センサ22などの各種センサが接続されている。吸入空気量センサ21は、エアクリーナ(図示省略)から吸入された空気の量を検出する。クランク角センサ22は、クランク軸2aの回転角を検出する。ECU20では、例えば、周知の推定方法により吸入空気量などを用いてエンジン2で発生するエンジントルク(無段変速機3に入力されるトルク)を算出(推定)する。また、ECU20では、例えば、クランク軸2aの回転角からエンジン回転数を算出する。ECU20では、これらの各種センサから取得した検出値や算出した各種値に基づいて、燃料噴射量や点火時期などを制御する。ECU20で取得した各種センサの検出値やECU20で算出したエンジントルク、エンジン回転数などの値は、CAN(Controller Area Network)60を介してトランスミッション・コントロールユニット(以下では「TCU(Transmission Control Unit)」と記載)10に送信される。
次に、無段変速機3について説明する。無段変速機3は、エンジン2からの動力を変換して出力する。無段変速機3は、トルクコンバータ30と、バリエータ31(特許請求の範囲に記載の変速機構に相当)と、前後進切替機構32と、を備えている。
トルクコンバータ30は、クラッチ機能とトルク増幅機能を有している。トルクコンバータ30は、主として、ポンプインペラ30aと、タービンライナ30bと、ステータ30cと、を備えている。ポンプインペラ30aには、エンジン2のクランク軸2aに接続され、エンジン2からの動力(トルク)が入力される。ポンプインペラ30aは、エンジン2からの動力に応じてオイルの流れを生み出す。タービンライナ30bは、ポンプインペラ30aに対向して配置されている。タービンライナ30bは、ポンプインペラ30aからオイルを介してエンジン2の動力が伝達され、その伝達された動力を受けて出力軸(後述するバリエータ31のプライマリ軸31a)を回転駆動する。ステータ30cは、ポンプインペラ30aとタービンライナ30bとの間に配置されている。ステータ30cは、タービンライナ30bからの排出流(戻り)を整流し、ポンプインペラ30aに還元することでトルク増幅作用を発生させる。
また、トルクコンバータ30は、入力側(クランク軸2a)と出力側(バリエータ31のプライマリ軸31a)とを直結状態にするロックアップクラッチ30dを備えている。トルクコンバータ30は、ロックアップクラッチ30dが解放されているとき(非ロックアップ時)にエンジン2の動力をトルク増幅して伝達し、ロックアップクラッチ30dが締結されているとき(ロックアップ時)にエンジン2の動力を直接伝達する。
バリエータ31は、変速比を無段階で変更する機能を有している。バリエータ31は、主として、プライマリ軸31aと、セカンダリ軸31bと、プライマリプーリ31cと、セカンダリプーリ31dと、チェーン31e(特許請求の範囲に記載の動力伝達部材に相当)と、を備えている。プライマリ軸31aは、トルクコンバータ30のタービンライナ30bに接続されている。バリエータ31には、トルクコンバータ30から出力された動力が入力される。セカンダリ軸31bは、前後進切替機構32に接続されている。バリエータ31は、前後進切替機構32に動力を出力する。
プライマリ軸31aには、プライマリプーリ31cが設けられている。プライマリプーリ31cは、固定プーリ31fと、可動プーリ31gとを有している。固定プーリ31fは、プライマリ軸31aに接合されている。可動プーリ31gは、固定プーリ31fに対向し、プライマリ軸31aの軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に装着されている。プライマリプーリ31cは、固定プーリ31fと可動プーリ31gとの間のコーン面間隔(すなわち、プーリ溝幅)を変更できるように構成されている。
セカンダリ軸31bは、プライマリ軸31aと平行に配設されている。セカンダリ軸31bには、セカンダリプーリ31dが設けられている。セカンダリプーリ31dは、固定プーリ31hと、可動プーリ31iとを有している。固定プーリ31hは、セカンダリ軸31bに接合されている。可動プーリ31iは、固定プーリ31hに対向し、セカンダリ軸31bの軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に装着されている。セカンダリプーリ31dは、固定プーリ31hと可動プーリ31iとの間のプーリ溝幅を変更できるように構成されている。
チェーン31eは、プライマリプーリ31cとセカンダリプーリ31dとの間に掛け渡され、巻装されている。チェーン31eは、プライマリプーリ31cとセカンダリプーリ31dとの間で動力(トルク)を伝達する。
バリエータ31では、プライマリプーリ31cとセカンダリプーリ31dの各プーリ溝幅を変化させて、各プーリ31c,31dに対するチェーン31eの巻き付け径の比率(プーリ比)を変化させることで変速比を無段階で変更する。なお、チェーン31eのプライマリプーリ31cに対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ31dに対する巻き付け径をRsとすると、変速比iは、i=Rs/Rpで表される。
プライマリプーリ31cの可動プーリ31gには、プライマリ駆動油室(油圧シリンダ室)31jが形成されている。セカンダリプーリ31dの可動プーリ31iには、セカンダリ駆動油室(油圧シリンダ室)31kが形成されている。プライマリ駆動油室31jには、プーリ比(変速比)を変化させるための変速圧が供給される。セカンダリ駆動油室31kには、チェーン31eの滑りを防止するためのクランプ圧が供給される。
前後進切替機構32は、駆動輪の正転と逆転(車両の前進と後進)とを切り替える機能を有している。前後進切替機構32は、バリエータ31のセカンダリプーリ31dとパーキングギヤ33との間に配設されている。前後進切替機構32は、主として、ダブルピニオン式の遊星歯車列32aと、前進クラッチ32bと、後進クラッチ(後進ブレーキ)32cと、を備えている。前後進切替機構32では、前進クラッチ32bと後進クラッチ32cとの各状態(締結/解放)が制御されることで、動力の伝達経路を切り替えることが可能に構成されている。前進クラッチ32bには油室が形成されており、この油室にはクラッチを締結させるためのクラッチ圧が供給される。後進クラッチ32cには油室が形成されており、この油室にはクラッチを締結させるためのクラッチ圧が供給される。
運転者によるシフトレバー50に対する操作でドライブレンジが選択された場合、前後進切替機構32では、後進クラッチ32cを解放してから前進クラッチ32bを締結することにより、セカンダリ軸31bの回転をそのまま伝達する。この場合、車両を前進走行させることが可能となる。一方、運転者によるシフトレバー50の操作でリバースレンジが選択された場合、前後進切替機構32では、前進クラッチ32bを解放してから後進クラッチ32cを締結することにより、遊星歯車列32aを作動させてセカンダリ軸31bの回転を逆転させて伝達する。この場合、車両を後進走行させることが可能となる。運転者によるシフトレバー50の操作でニュートラルレンジまたhパーキングレンジが選択された場合、前後進切替機構32では、前進クラッチ32bおよび後進クラッチ32cを解放することにより、セカンダリ軸31bと駆動輪側とを切り離し(動力の伝達が遮断され)、駆動輪側に動力を伝達しない。
パーキングギヤ33は、前後進切替機構32の出力側の動力伝達軸33aに嵌合されている。このパーキングギヤ33と噛み合うことができるように、パーキングポール34が揺動可能に設けられている。運転者によるシフトレバー50に対する操作でパーキングレンジが選択された場合、パーキングポール34が揺動されてパーキングギヤ33と噛み合い、パーキングギヤ33がロックされ、動力伝達軸33aが固定される。
上述したシフトレバー(セレクトレバー)50は、車両のフロア(センターコンソール)などに設けられている。シフトレバー50では、例えば、ドライブレンジ(Dレンジ)、マニュアルレンジ(Mレンジ)、パーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)を選択的に切り替えることができる。
上述したトルクコンバータ30、バリエータ31、および、前後進切替機構32には、バルブボディ40(特許請求の範囲に記載の油圧回路に相当)によって調圧された各油圧が供給される。バルブボディ40には、コントロールバルブ機構が組み込まれている。このコントロールバルブ機構は、例えば、複数のスプールバルブと当該スプールバルブを動かすソレノイドバルブを用いてバルブボディ40内に形成された油路を開閉することで、オイルポンプ(図示省略)から吐出された油圧(ライン圧)を調圧した各油圧を発生する。バルブボディ40は、TCU10による制御により、トルクコンバータ30に供給する油圧を調圧する。また、バルブボディ40は、TCU10による制御により、バリエータ31のプライマリ駆動油室31jに供給する変速圧を調圧するとともに、セカンダリ駆動油室31kに供給するクランプ圧を調圧する。また、バルブボディ40は、TCU10による制御により、前後進切替機構32の各クラッチ31b,31cを締結/解放するために、各クラッチ31b,31cの油室に供給する油圧を調圧する。
なお、トランミッション用のオイル(ATF(Automatic Transmission Fluid))は、トルクコンバータ30、バリエータ31、前後進切替機構32などの油圧制御用の作動油と潤滑用の潤滑油として用いられる。車両にはこのオイルとエンジン2の冷却水との間で熱交換を行う機構(図示省略)が設けられていてもよい。
それでは、制御装置1について説明する。制御装置1は、無段変速機3を総合的に制御する制御装置である。特に、制御装置1は、シフトレンジがパーキングレンジの場合(例えば、エンジン2の始動時)に、オイルの温度が低いときにトルクコンバータ30内でオイルを暖機する機能を有している。
制御装置1の各制御は、TCU10によって実施される。TCU10は、ECU20と同様に、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、バックアップRAM、および、入出力I/Fなどを有して構成されている。
TCU10には、制御に必要な情報を取得するために、プライマリプーリ回転数センサ11、セカンダリプーリ回転数センサ12、油温センサ13(特許請求の範囲に記載の油温検出手段に相当)、レンジスイッチ14などの各種センサが接続されている。また、TCU10は、CAN60を介して、ECU20からエンジン回転数、エンジントルクなどの各種情報を受信する。
プライマリプーリ回転数センサ11は、プライマリプーリ31c(プライマリ軸31a)の回転数を検出する。セカンダリプーリ回転数センサ12は、セカンダリプーリ31d(セカンダリ軸31b)の回転数を検出する。TCU10では、このセカンダリ軸31bの回転数から車速を算出する。油温センサ13は、オイルの温度を検出する。レンジスイッチ14は、シフトレバー50と連動して動くように接続され、シフトレバー50の選択位置を検出する。
TCU10は、バリエータ制御部10aと、ロックアップクラッチ制御部10b(特許請求の範囲に記載のロックアップクラッチ制御手段に相当)と、前後進クラッチ制御部10c(特許請求の範囲に記載の前後進クラッチ制御手段に相当)と、暖機制御部10d(特許請求の範囲に記載の暖機制御手段に相当)とを有している。TCU10は、ROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることで、これらの各部10a〜10dの処理が実現される。
バリエータ制御部10aは、変速マップに従い、車両の運転状態に応じて自動で変速比を無段階に変速する制御を行う。この制御では、例えば、所定の変速比となるようにプライマリ回転数の目標値を設定し、実際のプライマリ回転数(プライマリプーリ回転数センサ11で検出された回転数)がその目標値になるようにバルブボディ40を制御することで変速圧を発生させ、変速比を変化させる。変速マップは、TCU10内のROMに格納されている。また、バリエータ制御部10aは、エンジントルクなどに基づいてクランプ圧の目標値を設定し、この目標値になるようにバルブボディ40を制御することでクランプ圧を発生させ、クランプ圧(クランプ力)によってチェーン31eをクランプする制御を行う。このクランプ圧には、チェーン31eの滑りを防止して、バリエータ31への入力トルクをプライマリプーリ31cからセカンダリプーリ31dに確実に伝達するためにマージン分の油圧が上乗せされる。
ロックアップクラッチ制御部10bは、トルクコンバータ30のロックアップクラッチ30dを締結/解放するためにバルブボディ40を制御する。特に、ロックアップクラッチ制御部10bは、シフトレバー50で選択されているシフトレンジがパーキングレンジである場合、ロックアップクラッチ30dが解放されるようにバルブボディ40を制御する。
前後進クラッチ制御部10cは、前後進切替機構32の各クラッチ32b,32cを締結/解放するためにバルブボディ40を制御する。特に、前後進クラッチ制御部10cは、シフトレバー50で選択されているシフトレンジがパーキングレンジである場合、前進クラッチ32bが解放されるとともに後進クラッチ32cが解放されるようにバルブボディ40を制御する。
暖機制御部10dは、パーキングレンジの場合にオイルの温度が低いと、バリエータ31での回転が停止するまでクランプ圧を増圧するためにバルブボディ40を制御する。具体的には、暖機制御部10dは、シフトレバー50で選択されているシフトレンジがパーキングレンジであるか否かを判定する。パーキングレンジの場合、暖機制御部10dは、オイルの温度が暖機制御開始温度以下か否かを判定する。暖機制御開始温度は、オイルの温度が低く、暖機が必要な温度である。暖機制御開始温度は、適合で決められる。シフトレンジがパーキングレンジ以外の場合やオイルの温度が暖機制御開始温度より高い場合、TCU10では、クランプ圧に対する通常制御(上述したバリエータ制御部10aでの制御)を行う。
オイルの温度が暖機制御開始温度以下の場合、暖機制御部10dは、所定時間毎に、クランプ圧が所定圧増圧するようにバルブボディ40を制御する。所定圧は、適合で決められる。この増圧制御中、暖機制御部10dは、プライマリプーリ31cの回転数とセカンダリプーリ31dの回転数のうちの少なくとも一方の回転数を監視し、バリエータ31での回転が停止したか否かを判定する。暖機制御部10dは、バリエータ31が回転していると判定した場合にはクランプ圧の増圧制御を継続し、バリエータ31の回転が停止したと判定した場合にはクランプ圧の増圧制御を終了する。
バリエータ31での回転が停止すると、暖機制御部10dは、オイルの温度が暖機制御終了温度以上か否かを判定する。暖機制御終了温度は、オイルの温度が高くなり、暖機の必要がない温度である。暖機制御終了温度は、適合で決められる。オイルの温度が暖機制御終了温度より低い場合、TCU10では、バリエータ31での回転停止に必要なクランプ圧を維持するようにバルブボディ40を制御する。オイルの温度が暖機制御終了温度以上になった場合、TCU10では、クランプ圧に対する通常制御に戻る。
上述した増圧制御によるバリエータ31での回転を停止させるために必要なクランプ圧(クランプ力)は、エンジン回転数、エンジントルク、トルクコンバータ30の性能(例えば、容量係数)、オイルの粘度(オイルの温度)などに応じて変わる。例えば、エンジン回転数が高くなると、回転停止に必要なクランプ圧が高くなる。エンジントルクが大きくなると、回転停止に必要なクランプ圧が高くなる。トルクコンバータ30の容量係数が高いと、回転停止に必要なクランプ圧が高くなる。オイルの粘度が高くなると(オイルの温度が低くなると)、回転停止に必要なクランプ圧が高くなる。
図1を参照しつつ、図2のフローチャートに沿って制御装置1(特に、TCU10)での暖機制御の流れを説明する。図2は、実施形態に係る制御装置1の暖機制御の流れを示すフローチャートである。
TCU10は、レンジスイッチ14で検出されたシフトレンジがパーキングレンジか否かを判定する(S10)。このS10の判定にてパーキングレンジでないと判定された場合、TCU10は、暖機制御を終了し、クランプ圧に対する通常の制御を行う。
S10の判定にてパーキングレンジと判定された場合(例えば、エンジン2の始動時)、TCU10は、油温センサ13で検出されたオイルの温度が暖機開始温度以下か否かを判定する(S12)。
なお、パーキングレンジの場合、トルクコンバータ30では、ロックアップクラッチ30dが解放されている。したがって、トルクコンバータ30では、エンジン2から入力された動力(トルク)に応じてポンプインペラ30aが回転し、動力がオイルを介してタービンライナ30bに伝達されることでタービンライナ30bが回転している。バリエータ31では、トルクコンバータ31から入力された動力に応じてプライマリプーリ31cが回転し、動力がチェーン31eを介してセカンダリプーリ31dに伝達されることでセカンダリプーリ31dが回転している。前後進切替機構32では、前進クラッチ32aが解放されるとともに、後進クラッチ32bが解放されている。パーキングギヤ33は、パーキングポール34によってロックされている。
S12の判定にてオイルの温度が暖機開始温度よりも高いと判定された場合、TCU10は、暖機制御を終了し、クランプ圧に対する通常の制御を行う。一方、S12の判定にてオイルの温度が暖機開始温度以下と判定された場合、TCU10は、プライマリプーリ回転数センサ11で検出されたプライマリプーリ31cの回転数とセカンダリプーリ回転数センサ12で検出されたセカンダリプーリ31dの回転数の少なくとも一方の回転数を用いて、バリエータ31での回転が停止したか否かを判定する(S14)。このS14の判定は、バリエータ31での回転が停止したと判定されるまで所定時間毎に繰り返し行われる。
S14に判定にてバリエータ31での回転が停止していないと判定される毎に(バリエータ31の回転中)、TCU10は、クランプ圧を所定圧増加するためにバルブボディ40を制御する(S16)。この制御により、バルブボディ40では、前回のクランプ圧よりも所定圧増加したクランプ圧をセカンダリ駆動油室31kに供給する。この増圧制御により、クランプ圧が徐々に増大され、セカンダリプーリ31cによるチェーン31eに対するクランプ力(押し付け力)が徐々に増大され、チェーン31eに対する摩擦力が徐々に増大される。これによって、バリエータ31の回転数が徐々に低くなる。
S14の判定にてバリエータ31での回転が停止したと判定された場合、TCU10は、油温センサ14で検出されたオイルの温度が暖機終了温度以上か否かを判定する(S18)。S18の判定にてオイルの温度が暖機終了温度より低いと判定された場合、TCU10は、S14の判定に戻る。
このように通常制御時よりも大きなクランプ圧(クランプ力)を発生させることで、バリエータ31での回転が停止する。これによって、プライマリ軸31aの回転が停止するので、トルクコンバータ30のタービンライナ30bの回転も停止し、ストール状態となる。一方、トルクコンバータ30のポンプインペラ30aは、エンジン2の動力(トルク)が入力されているので、この動力に応じて回転している。
このように、トルクコンバータ30では、ポンプインペラ30aが回転しているが、ポンプインペラ30aに対向するタービンライナ30bが停止しているので、ポンプインペラ30aとタービンライナ30bとの回転速度差が大きくなる。これにより、エンジン2からポンプインペラ30aに入力された動力(エネルギ)は、トルクコンバータ30内のオイルのせん断や衝突によって熱損失となり、熱エネルギに変換される。この熱エネルギは、トルクコンバータ30内でオイルに直接伝達され、オイルに吸収される。これにより、オイルは、迅速に昇温される。この昇温されたオイルは、無段変速機3の各部(バリエータ31、前後進切替機構32など)の潤滑に用いられる。オイルの温度が高くなると、オイルの粘度が低くなるので、この粘度が低くなったオイルが潤滑に用いられることで摩擦損失が低減する。なお、熱損失により発生する熱エネルギは、上述したエンジン回転数、トルクコンバータ30の性能、オイルの粘度(オイルの温度)などのパラメータに関連し、これらの各パラメータに応じて増減する。
このようにオイルが昇温されて、S18の判定にてオイルの温度が暖機終了温度以上と判定された場合、TCU10は、暖機制御を終了し、クランプ圧に対する通常の制御に戻る。この通常の制御により、クランプ圧が低減されることで、バリエータ31での回転が可能となる。
なお、この暖機制御によるバリエータ31での回転停止中も、パーキングギヤ33がパーキングポール34によってロックされているが、バリエータ31とパーキングギヤ33との間に配設される前後進切替機構32の前進クラッチ32bおよび後進クラッチ32cが解放状態であるので(バリエータ31がパーキングギヤ33に直結されていないので)、バリエータ31は機械的にロックされていない。そのため、例えば、エンジン2から大きなトルクがトルクコンバータ30に入力され、増圧されたクランプ圧でもバリエータ31の回転を停止できなくなった場合には、バリエータ31は、機械的にロックされていないので、その大きなトルクに応じて回転することが可能である。これにより、パーキングポール34などの部品に大きなトルクがかからず、部品が摩耗したりするようなことはない。
実施形態に係る制御装置1によれば、シフトレンジがパーキングレンジの場合に、トランスミッション用のオイルの温度が低いときにはクランプ圧を増大させてバリエータ31の回転を停止させることで、オイルの暖機を促進させることがきる。特に、極寒地における冷態始動時などにオイルの温度が非常に低くなっている場合でも、オイルの温度を迅速に昇温することができる。
これにより、オイルの温度が高くなることで、オイルの粘度が低くなる。この粘度が低くなったオイルが無段変速機3の各部の潤滑に用いられることで、摩擦損失が低減する。また、このオイルとエンジン2の冷却水との熱交換によってオイルを暖機する構成を有する車両の場合でも、極寒地における冷態始動時などに、オイルの温度が迅速に昇温されることで、冷却水の昇温が阻害されず、エンジン2での摩擦損失も低減する。これよって、車両の燃費を向上させることができる。
また、バリエータ31の回転によるオイルの掻き上げよって潤滑が行われる構成の場合、掻き上げられたオイルの一部は、トランスミッションケースの内壁に当たって流れ落ちる。このトランスミッションケースの内壁の温度が非常に低い場合(例えば、極寒地における冷態始動時)、オイルがトランスミッションケースの内壁に当たって流れ落ちる際に、オイルから熱が奪われ、オイルの温度が低下してしまう。しかしながら、実施形態に係る制御装置1によれば、冷態始動時などにバリエータ31の回転を停止させるので、バリエータ31の回転によるオイルの掻き上げも停止し、オイルを効率良く昇温することができる。
また、バリエータ31では、通常、パーキングレンジの場合もエンジン2から入力される動力に応じて回転している。バリエータ31では、回転中、各プーリ31c,31dとチェーン31eとの接触やチェーン31eの振動によって音(異音)を発生する。しかしながら、実施形態に係る制御装置1によれば、パーキングレンジの場合に、バリエータ31の回転を停止させている間、このバリエータ31での異音が発生しない。
また、実施形態に係る制御装置1によれば、バリエータ31とパーキングギヤ33との間に配設される前後進切替機構32の各クラッチ32a,32bが解放されているので、バリエータ31が機械的にロックされていないので、シフトレンジがパーキングレンジである場合でも信頼性が低下しない。
また、実施形態に係る制御装置1によれば、バリエータ31での実際の回転状態を監視しながらクランプ圧を徐々に増圧していくので、バリエータ31での回転の停止に必要なクランプ圧を精度良く発生させることができる。
また、実施形態に係る制御装置1によれば、パーキングレンジの場合にはロックアップクラッチ30dが解放状態であるので、バリエータ31での回転停止で停止させられたタービンライナ30bとエンジン2から入力される動力に応じて回転するポンプインペラ30aとによって、トルクコンバータ30内でオイルを昇温することができる。
また、実施形態に係る制御装置1によれば、パーキングレンジの場合にオイルの温度が低いときには通常制御とは異なるクランク圧の増圧制御を行う制御方法の変更で実施できるので、既存のハードウエア構成に対して別途のハードウエアを追加する必要はなく、コストをかけずにオイルの暖機を行うことできる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態ではチェーン式のバリエータ31を備える無段変速機3に適用したが、ベルト式などの他の動力伝達部材によってプーリ間の動力を伝達するバリエータを備える無段変速機に適用することもできる。
上記実施形態ではバリエータ31での実際の回転状態を監視し、バリエータ31での回転が停止するまで所定圧ずつクランプ圧を増圧制御することで、バリエータ31での回転停止に必要なクランプ圧を発生させる構成としたが、バリエータ31での回転停止に必要な目標クランプ圧を設定し、この目標クランプ圧になるようにバルブボディ40を制御することで回転停止に必要なクランプ圧を発生させる構成としてもよい。このように構成した場合、バリエータ31での回転状態を監視することなく、バリエータ31での回転の停止に必要なクランプ圧を発生させることができる。
例えば、TCU10では、エンジン回転数、トルクコンバータ30の容量係数、オイルの粘度を示す指標値(例えば、オイルの温度)などのパラメータに基づいて目標クランプ圧を設定し、この設定した目標クランプ圧になるようにバルブボディ40を制御する。この各パラメータと目標クランプ圧との関係を示すマップを予め用意し、このマップをTCU10内のROMに格納しておき、マップを利用して目標クランプ圧を設定するようにすることが好ましい。パラメータとしてエンジン回転数を用いることで、暖機するときのエンジン2からトルクコンバータ30への入力状態に応じて目標クランプ圧を精度良く設定することができる。また、パラメータとしてトルクコンバータ30の容量係数を用いることで、トルクコンバータ30の容量係数に応じて目標クランプ圧を精度良く設定することができる。また、パラメータとしてオイルの粘度を示す指標値を用いることで、暖機するときのオイルの粘度に応じて目標クランプ圧を精度良く設定することができる。
具体的な手法としては、例えば、ECU20からエンジン回転数を取得し、このエンジン回転数(トルクコンバータ30の入力側の回転速度)とプライマリプーリ回転数センサ11で検出されたプライマリプーリ回転数(トルクコンバータ30の出力側の回転速度)との速度比からトルクコンバータ30の容量係数を求める。例えば、トルクコンバータ30の速度比と容量係数との関係を示すマップを用いて容量係数を求める。そして、この容量係数とエンジン回転数からエンジントルク(=容量係数×エンジン回転数2)を算出し、このエンジントルクに基づいて目標クランプ圧を求める。さらに、このエンジントルクに油温センサ13で検出されたオイルの温度を加味して目標クランプ圧を求めるようにしてもよい。
上記実施形態ではシフトレンジがパーキングレンジである場合に前後進切替機構32の各クラッチ32b,32cを解放すると共にバリエータ31での回転を停止させる構成としたが、例えば、シフトレンジがニュートラルレンジである場合にも、前後進切替機構32の各クラッチ32b,32cを解放すると共にバリエータ31での回転を停止させる構成としてもよい。