(第1実施形態)
以下に、本願の第1実施形態に係る画像投影システム(インタラクティブ投影システム)の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1、図2に示すように、本実施形態の画像投影システム100は、状態判定装置(物体検出装置の一例)30を有する画像投影装置(画像表示装置の一例)1と、画像管理装置2とを備えて構成される。本実施形態の画像投影システム100では、画像管理装置2から入力される画像信号に基づいて、画像投影装置1が所定の投影面3に対して画像投影を行う。
画像投影装置1は、その正面(前面)が投影面3に対向するように配置される。本実施形態では専用スクリーンの一面を投影面3としているが、ホワイトボードのボード面、壁面等を投影面3として利用することもできる。本実施形態では、投影面3の横方向(水平方向)をX方向、投影面3の縦方向(鉛直方向)をY方向、X方向及びY方向と直交する方向であって投影面3と画像投影装置1が対向する方向をZ方向とする。
画像投影装置1の操作者(ユーザ)は、入力操作部4として指を用いて、投影面3の近傍において指す動作を行う、ないしは投影面3にタッチ(接触)する動作を行うことで、投影面3に投射された投影画像に対して入力操作を行う。なお、入力操作部4が操作者の指に限定されることはなく、ペン、指し棒等を入力操作部4とすることもできる。画像投影装置1では、入力操作部4を状態検出の対象物体として、その位置、形状、動き等の状態検出(情報検出)を行い、状態検出結果に対応した画像操作処理を行うことで、インタラクティブな操作機能を実現する。
画像管理装置2は、複数の画像情報を保持しており、操作者の指示に基づいて投影対象画像の画像情報等を画像投影装置1に送信する。画像管理装置2としては、所定のプログラムがインストールされているパーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末等を用いることができる。
画像投影装置1と画像管理装置2とは、専用ケーブル、USB(Universal Serial Bus)ケーブルなどの汎用ケーブル5を介して、双方向に通信可能に接続されている。なお、画像管理装置2と画像投影装置1とは、既知の無線通信プロトコルに従った無線通信により、双方向に通信可能に接続することもできる。また、画像管理装置2がUSBメモリやSDカードなどの着脱可能な記録媒体のインタフェースを有している場合は、該記録媒体に格納されている画像を投影対象画像とすることができる。
本実施形態の画像投影装置1は、いわゆるインタラクティブなプロジェクタ装置であり、図2に示されるように、測距部10及び制御部20を有する状態判定装置30と、投射部40とを備えて構成される。これらは、筐体1a(図1参照)内に、一体に収納されているが、別体に構成することもできる。
投射部40は、画像の光学像を投影面3の所定の投影領域3aに投影表示する機能を有している。画像管理装置2から画像投影装置1に画像情報を入力することで、投射部40によって様々な画像を投影することができる。
投射部40は、図3に示すように、光源41、波長フィルター42、フライアイレンズ43、ダイクロイックミラー44R,44G,44B、全反射ミラー45、コリメータレンズ46R,46G,46B、空間光変調素子47R,47G,47B、ダイクロイックプリズム48、投射レンズ49を備えて構成される。投射部40は、投射制御部50に接続され、投射制御部50によって動作が制御される。投射制御部50は、画像投影装置1に設けられたCPU、RAM、ROM等を備えた情報処理装置で構成することができる。
ランプ光源等の光源41からの光は、波長フィルター42で赤外光(IR)や紫外光(UV)等の不要な光成分が除去された後、フライアイレンズ43に入射する。フライアイレンズ43を通過した光は、ダイクロイックミラー44R,44G,44Bに入射し、それぞれ、赤(R光)、緑(G光)、青(B光)の各色成分に分離される。各色成分に分離された光(R光、G光、B光)はコリメータレンズ46R,46G,46Bでそれぞれ平行光に変換された後、空間光変調素子47R,47G,47Bに入射する。
空間光変調素子47R,47G,47Bは、例えば、画像信号に応じて変調する透過型の液晶表示装置であり、透過した光が空間的に変調される。空間的に変調された各色成分の光(R光、G光、B光)は、ダイクロイックプリズム48で合成され、投射レンズ49により投射される。投射部40は、このような構成を有することで、画像の光学像を投影面3に投影表示する。
なお、投射部40の構成は上述の構成に限定されることはなく、空間変調素子としてDMD(Digital Micromirror Device)や反射型の液晶表示素子を用いることもできる。また、光源41も、ランプ光源に限定されることはなく、LED光源やLD源を用いることもできる。
状態判定装置30では、測距部10から所定の視野内について、測距部10が取得した距離情報(デプスマップ)に基づいて、制御部20により対象物体の基準物体に対する状態を検出する。本実施形態では、対象物体である入力操作部4を入力状態検出対象物として、基準物体である投影面3に対する位置、形状、動き等に基づいて、入力操作の状態検出を行う。そのため、本実施形態の状態判定装置30は、入力操作検出装置でもある。
測距部10は、測定対象物体に向けた視野を有し、視野内の各部の3次元座標を測定する機能を有している。測定した3次元座標に基づいて、視野内のデプスマップを取得する。本実施形態では投影面3及び入力操作部4が、測距部10の測定対象物体となる。
測距方式としては、例えば、測定対象物体に基準パターンを投影し、撮影画像におけるパターン形状から三次元座標を得るパターン投影法に基づく方式、視点の異なる2枚以上の撮影画像の視差から測定対象物体の三次元座標を得るステレオ法に基づく方式、光の飛行時間から測定対象物体までの距離を測定するTime-of-Flight(TOF)法に基づく方式などを用いることができる。以下、図4A〜図4Cを用いて、各方式を用いた測距部10(測距部10A,10B,10C)の例を説明する。このような測距部10A,10B,10Cを用いることで、部品点数が少なく、低コストで三次元形状測定を行うことができる。
図4Aは、パターン投影法に基づく方式を用いた測距部10A(10)の一構成例を示した概略図である。図4Aに示す測距部10Aは、測定対象物体に基準となる所定のパターンを投影する投影部11と、パターンが投影された測定対象物体を撮像する撮像部12と、撮像された測定対象物体の撮影画像から三次元座標を計算する三次元座標計算部13とを備え、さらに、投影部11及び撮像部12に対して露光条件を設定する露光条件制御部14と、露光条件が記憶された露光条件記憶部15とを備えている。投影部11は、所定の視野範囲にパターンを投影し、投影部11と撮像部12は、所定の距離だけ離間している。なお、露光条件とは、撮像部12により撮像された撮影画像の輝度値が適切な値となるように設定する条件(パラメータ)のことである。具体的には、撮像部12が撮像動作を行う際のフレームレート、露光時間、露光する回数、撮像部12の感度、投影部11が投影するパターンの輝度等である。
露光条件記憶部15には、デプスマップ取得の過程で得られる輝度画像において、背景物体(基準物体の一例)の輝度がこの背景物体の測距に適した輝度値となるための第一の露光条件と、注目物体(対象物体の一例)の輝度がこの注目物体の測距に適した輝度値となるための第二の露光条件と、が予め記憶されている。露光条件制御部14は、露光条件記憶部15から第一の露光条件と、第二の露光条件と、を取得する。
また、背景物体や注目物体といった測定対象物体に適した第一、第二の露光条件の設定値が設定された設定値テーブルを露光条件記憶部15に記憶しておき、使用条件や使用目的に対応して適宜の設定値を使用する構成とすることもできる。なお、各露光条件が露光条件記憶部15からの取得に限定されることはなく、画像管理装置2や他のPC等を介してその都度、露光条件を設定するように構成することもできる。
投影部11は、例えば、光源と、パターンを形成するマスクが設けられた投影光学系等で構成することができる。光源として、近赤外光を発する光源を用いることが望ましいが、これに限定されることはない。撮像部12は、例えば、撮像光学系、CCDイメージセンサ、CMOS等の撮像素子で構成することができる。三次元座標計算部13、露光条件制御部14は、画像投影装置1に設けられたCPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ、その他を備えた情報処理装置で構成することができる。露光条件記憶部15は、情報処理装置のメモリ内に設けることができる。
上述のような構成の測距部10Aでは、露光条件制御部14により各露光条件の設定値が与えられ、各設定値に基づき投影部11が測定対象物体にパターンを投影し、撮像部12が撮影画像を撮像する。撮像画像に基づいて、三次元座標計算部13が三次元座標を計算し、測定対象物体の測距を行う。
図4Bは、ステレオ法に基づく方式を用いた測距部10B(10)の一構成例を示した概略図である。図4Bに示す測距部10Bは、測定対象物体を撮像する2台以上の撮像部12と、撮像された測定対象物体の2枚以上の撮影画像から三次元座標を計算する三次元座標計算部13とを備え、さらに、撮像部12に対して露光条件を設定する露光条件制御部14と、露光条件が記憶された露光条件記憶部15とを備えている。ここでは、複数の撮像部12はそれぞれ異なる視野を有しており、撮像される撮影画像はそれぞれ視点が異なる(視差を有する)ものとなっている。
図4Bにおける撮像部12、露光条件制御部14、露光条件記憶部15は、図4Aの測距部10Aにおける対応する構成と同様の構成とすることができる。
上述のような構成の測距部10Bでは、露光条件制御部14により各露光条件の設定値が与えられ、各設定値に基づき複数の撮像部12が測定対象物体の撮影画像を撮像する。複数の撮像画像の視差に基づいて、三次元座標計算部13が三次元座標を計算し、測定対象物体の測距を行う。
図4Cは、TOF法に基づく方式を用いた測距部10C(10)の一構成例を示した概略図である。図4Cに示す測距部10Cは、測定対象物体に照明光を照射する照明部16と、照明光が照射された測定対象物体からの反射光を受光する受光部17と、照明光と反射光の時間差から光の飛行時間を求め、測定対象物体までの距離を計算する三次元座標計算部13とを備え、さらに、照明部16及び受光部17に対して露光条件を設定する露光条件制御部14と、露光条件が記憶された露光条件記憶部15とを備えている。
照明部16は、例えば、光源、照射光学系等で構成することができる。光源は、近赤外光を発する光源が望ましいが、これに限定されることはない。受光部17は、例えば、撮像光学系、CCDイメージセンサ、CMOS等の撮像素子で構成することができる。図4Cの測距部10において、露光条件とは、受光部17より出力される出力信号における輝度値が適切な値となるように設定する条件(パラメータ)のことである。具体的には、受光部17が受光動作を行う際のフレームレート、受光時間、受光する回数、受光部17の感度、照明部16により照射される照明光の輝度等である。また、第一、第二の露光条件を画像管理装置2からその都度設定することもできる。
上述のような構成の測距部10Cでは、露光条件制御部14により各露光条件の設定値が与えられ、各設定値に基づき照明部16が測定対象物体に照明光を照射し、測定対象物体からの反射光を受光部17が受光する。照明光と反射光との位相差に基づいて、三次元座標計算部13が三次元座標を計算し、測定対象物体の測距を行う。
制御部20は、測距部10で取得した距離情報(デプスマップ)に基づいて、対象物体としての注目物体の状態を検出する。制御部20は、画像投影装置1に設けられたCPU、RAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ、その他を備えた情報処理装置で構成することができる。
次に、図2を用いて、制御部20の機能を説明する。図2に示すように、制御部20は、デプスマップ記憶部21、信頼性判定部22、デプスマップ生成部23、状態判定部24を備えて構成される。
デプスマップ記憶部21は、測距部10により取得したデプスマップを記憶する機能を有する。第1実施形態では、背景物体に適した第一の露光条件で測距部10が取得したデプスマップが第一のデプスマップ(第一の距離情報)としてデプスマップ記憶部21に記憶されている。また、注目物体に適した第二の露光条件で測距部10が取得した第二のデプスマップ(第二の距離情報)や閾値等の各種パラメータ等も記憶する。本実施形態では背景物体とは、図1に示したように画像投影が行われる投影面3であり、専用スクリーンが利用されている。また、注目物体とは、投影画像に対して入力操作を行う操作者の指からなる入力操作部4である。
信頼性判定部22は、測距部10で取得した第二のデプスマップにおける背景物体に関する値の信頼性を判定する機能を有する。例えば、測距部10による第二のデプスマップ取得の過程で得られる輝度画像の輝度値に基づき、背景物体に関する各画素の測距値データのデータ信頼度を判定する方法などが挙げられる。
デプスマップ生成部23は、注目物体に適した第二の露光条件で測距部10が取得した第二のデプスマップを、信頼性判定部22の判定結果に基づき補完する機能を有する。これは、状態判定部24において、信頼性が高いと判定された部位は、第二のデプスマップの値で状態判定を行い、信頼性が低いと判定された部位は、第一のデプスマップの値で状態判定を行わせるためである。すなわち、デプスマップ生成部23は、信頼性判定部22での判定結果においてデータ信頼度が低いと判定された部位を、デプスマップ記憶部21に格納された第一のデプスマップの測距値データで補完する。これにより、測距値データの信頼性が高い新たな状態判定用デプスマップが生成される。
状態判定部24は、デプスマップ生成部23で生成された第二のデプスマップや状態判定用デプスマップに基づき、背景物体に対する注目物体の状態判定を行う。具体的には、状態判定部24は、投影面3に対する入力操作部4の位置情報、形状情報、動き等について判定を行う。
例えば、入力操作部4と背景物体である投影面3の距離が、所定の閾値を下回った場合を入力操作部4が投影面3と接触状態であると定義する。この定義を基準として、投影領域3aへの操作の入力情報を検出する。更にこの入力情報を、画像情報を管理する画像管理装置2を通じて投射部40に反映させることで、入力情報を投影画像にインタラクティブに反映するインタラクティブ画像投射システムを実現することができる。
図5A、図5Bに、状態判定部24での入力操作部4の状態判定の一例を具体的に示す。状態判定装置30では、測距部10での測距結果に基づいて、背景物体である投影面3の検出面Nを基準として、所定距離離れた位置に状態検出境界Mを設定している。また、入力操作部4である指の背面(手前側の面)を、測距部10による入力操作部4の検出面Lとしている。
図5Bに示すように、入力操作部4の検出面Lが、状態検出境界Mと投影面3の検出面Nの間の領域αに存在する場合、入力操作部4が投影面3近傍に存在すると判定することができる。一方、図5Aに示すように、入力操作部4の検出面Lが状態判定装置30から見て、状態検出境界Mより手前側(状態検出境界Mと状態判定装置30の間の領域β)に存在する場合、入力操作部4が投影面3近傍に存在しないと判定することができる。
このような状態判定の違いを入力操作の違いとして考える。例えば、図5Bのような状態を操作者が投影面3にタッチし、投影画像の操作を行おうとしていると判定し、投射部40での画像投影に反映させる。これにより、入力操作部4による入力操作情報を投影画像に反映することができる。
ここで、前述のように投影面3と入力操作部4のいずれかにおいて、反射率の違い等による測距の誤差が大きい条件でのデプスマップ取得を行うと、状態判定装置30での状態判定の判定ミスが生じ易い。しかしながら、本願に係る第1実施形態の状態判定装置30では、背景物体である投影面3に好適な第一の露光条件を用いて第一のデプスマップを取得し、注目物体である入力操作部4に好適な第二の露光条件を用いて第二のデプスマップを取得している。そして、第一のデプスマップで第二のデプスマップを補間した上で、入力操作部4の状態判定を行っている。したがって、状態判定を高精度に行うことができる。
以下、状態判定装置30で行われる状態判定処理(状態判定方法)の一例を、図6A、図6Bのフローチャートを参照しながら説明する。なお、状態判定処理は、デプスマップに基づいて、操作者の指等の入力操作部4を検出して、投影面3に対する位置、形状、動き等からその状態、すなわち入力操作部4からの入力操作情報を検出するものであるため、状態判定処理は、入力操作検出処理でもある。
状態判定処理は、画像投影システム100において、画像管理装置2から入力される画像信号に基づいて、画像投影装置1が所定の投影面3に対して画像投影を行っているときに、随時行われる。
画像投影装置1の電源オンや操作メニューの選択等によって状態判定処理の開始が指示されると、まず、制御部20において、背景物体である投影面3に対する第一のデプスマップが取得済みか否かを判定する(ステップS100)。デプスマップ記憶部21に第一のデプスマップが既に記憶されており、取得済み(Yes)である場合は、ステップS120に進み、取得済みでない(No)場合は、ステップS110に進む。
ステップS110〜S112は、入力操作部4が存在しない状態でのデプスマップ、すなわち背景物体である投影面3に対する第一のデプスマップを予め取得し記憶するステップである。いわゆる初期化処理であり、以降のリアルタイムでの注目物体(入力操作部4)の状態検出を行うための事前処理である。そのため、状態判定処理の開始が指示された直後に行われることが好ましく、測距部10の視野内に背景物体以外の物体が存在しない時間タイミングで処理されることが望ましい。なお、三次元情報を利用するため、背景物体の形状は、平面形状に限定されず、段差のある物体や湾曲した物体であっても適用可能である。
まず、ステップS110では、測距部10の露光条件制御部14が露光条件記憶部15等から背景物体に適した第一の露光条件を読み出し、測距部10の各部に設定する。背景物体として利用される物体は一般的に専用スクリーンやホワイトボードなどであり、本実施形態でも専用スクリーンの投影面3を背景物体としている。そのため、好適な露光条件を比較的予測し易い。そのため、本ステップで、露光条件記憶部15に予め記憶した(又はその都度設定した)好適な第一の露光条件を読み出して設定をすることで、背景物体に対して適した測距を実現することができる。
次に、ステップS111では、測距部10が、視野内に背景物体のみが存在する状態で、ステップS110で設定した第一の露光条件を用いてデプスマップを取得する。取得されたデプスマップは、第一のデプスマップとして、デプスマップ記憶部21に記憶する(ステップS112)。その後、ステップS120に進む。
以上のステップS110〜S112の処理は、状態判定装置30と投影面3の相対位置条件が変わらない場合は繰り返す必要がない。そのため、一回目の状態判定処理が終了した後に、再度状態判定処理が開始された場合は、ステップS110〜S112の処理をスキップして、ステップS120から処理を行えばよい。
ステップS120〜S121は、測距部10によって注目物体である入力操作部4に適した第二の露光条件でデプスマップを取得するステップである。ところで、背景物体となる投影面3と注目物体となる入力操作部4は、測定光に対する反射率が異なることが一般的である。本実施形態のように、投影面3として専用スクリーンやホワイトボードを用いた場合、入力操作部4である操作者の指と比較して、専用スクリーンやホワイトボードは反射率が高い材料で構成されることが多い。
このように測定対象象物体において、測定光に対する反射率が異なる場合、測距部10が同じ露光条件をもってデプスマップ取得を行うとすると、それぞれの測定対象物体に対して好適な露光条件とならない。すなわち、反射率が高い物体に適した露光条件で反射率が低い物体を撮像すると、デプスマップ取得の過程で得られる輝度画像において、反射率が低い物体の輝度値は小さくなる。その結果、距離測定の誤差(測距誤差)が大きくなる。これにより、入力操作部4の状態検出の精度が低下する。
図7に、輝度値と測距誤差の関係をグラフで示した。この図7に示すように、輝度値が小さくなるほど、測距部10による測距誤差は大きくなる傾向を持つのが一般的である。このような特性も持つ測距部10において、測定光に対する反射率が異なる複数の測定対象物体に対して、同じ露光条件でデプスマップ取得を行うと、相対的に反射率の高い物体に対しては、輝度値が大きくなるため誤差の小さい高精度な測距を行える。しかし、反射率の低い物体に対しては誤差の大きい測距を行うことになる。すなわち、背景物体と注目物体の両者において両立して高精度な測距を行うことができない。
そこで、本願に係る第1実施形態では、反射率の違いを考慮して、測距部10において、背景物体に好適な第一の露光条件と、注目物体に好適な第二の露光条件とを使い分けることで、高精度な測距を可能としている。したがって、ステップS120では、露光条件制御部14は、第一の露光条件と異なる第二の露光条件を露光条件記憶部15等から読み出し、測距部10の各部に設定する。これにより注目物体に適した露光条件でデプスマップ取得を行うことができる。
本実施形態において注目物体として利用される入力操作部4は、例えば操作者の指や手である。人体を測距部10による測定対象物体とする場合は、好適な露光条件を比較的予測し易い。そのため、本ステップで、露光条件記憶部15に予め記憶した(又はその都度設定した)好適な第二の露光条件を読み出して設定をすることで、注目物体に対して適した測距を実現することができる。本実施形態では、背景物体となる専用スクリーンの投影面3が、入力操作部4となる操作者の指と比較して、反射率が高いとしている。それぞれに対して好適な露光条件とするために、入力操作部4の測距時の第二の露光条件は、投影面3の測距時の第一の露光条件に対して、投影部11が投影するパターンの輝度や照明部16により照射される照明光の輝度を高くする、撮像部12の感度や受光部17の感度を高くする等の設定を行っている。
次に、ステップS121では、測距部10によりステップS120で設定した第二の露光条件を用いて、視野内に注目物体が存在する状態のデプスマップを取得する。以降リアルタイムでの処理が求められるため、例えば30fps以上の所定のフレームレートでのデプスマップ取得が随時行われる。
ここで、インタラクティブな画像投影装置1の動作速度(検出速度)を考えた場合、背景物体のみが存在するときに視野内の距離情報を取得する初期化時には、比較的低いフレームレートでの動作が許容される。これに対して、注目物体の状態検出時、すなわち注目物体が存在する状態で視野内の距離情報を取得するときには、比較的高いフレームレートでの動作が求められる。このようなシステム動作速度の制約を考慮して、背景物体に適した第一の露光条件で視野内の距離情報を取得する際のフレームレートよりも、注目物体に適した第二の露光条件で視野内の距離情報を取得する際のフレームレートを高くすることが好ましい。ただし、フレームレートを高くすると、設定可能な露光時間が短くなるため、デプスマップ取得の過程で得られる輝度画像の輝度値を適切な値とし、高い測距精度を得るためには、投影部11が投影するパターンの輝度や照明部16により照射される照明光の輝度を高くする、撮像部12の感度や受光部17の感度を高くする等の設定を行う必要がある。そこで、状態検出時の第二の露光条件では、フレームレートを比較的高くし、これに対応して、投影部11が投影するパターンの輝度や照明部16により照射される照明光の輝度を高くする、撮像部12の感度や受光部17の感度を高くする等の設定を行うことで、注目物体に適した露光条件を保ちつつ、状態検出速度を向上させる。また、初期化時の第一の露光条件では、フレームレートを比較的低くし、これに対応して投影部11が投影するパターンの輝度や照明部16により照射される照明光の輝度を低くする、撮像部12の感度や受光部17の感度を低くする等の設定を行うことで、背景物体に適した露光条件を保ちつつ、ノイズを低減することができる。また、システム動作速度に余裕があるので、複数回の測距信号を平均化することで、高精度な測距値データを取得することができる。
次に、ステップS122〜S123は、第二のデプスマップの信頼性を判定し、判定結果に応じて補完するステップである。ステップS122では、信頼性判定部22が、注目物体に適した第二の露光条件で取得した第二のデプスマップにおいて、信頼性の低い測距値データが存在するかの判定を、測距値データの各画素の輝度値に基づいて行う。
先に図7を用いて説明したように、輝度値が小さい領域では、いわゆるS/N比が低下する領域であり、測距誤差が大きくなる。一方、輝度値が必要以上に大きい領域は輝度の飽和が生じ易く、仮に輝度飽和が生じた場合、精度の低い測距値データを出力する可能性がある。これらの現象が生じる領域は測距値データの信頼性が低く、高精度な測距を実現する上では避けることが望ましい。
図8は、このような測距時の輝度値と測定値データのデータ信頼度の関係を示したグラフである。測距時の輝度値は、測距値データのデータ信頼度が所定値以上となるある所定範囲内に収まっていることが望ましい。図8の例では、輝度値がIa〜Ibの範囲にあるときに測距可能であると定義している。輝度値がIa〜Ib以外の範囲にあるときは、データ信頼度が低いと判定する。
このように、CCDイメージセンサ等の撮像素子の出力信号における輝度値に基づいて、信頼性判定部22がデータ信頼度を判定することで、追加の構成部品を必要とすることなく、簡易にデータ信頼度の判定を行うことができる。なお、測距値データのデータ信頼度の判定は、ここで示した手法に限定されることはない。例えば、出力された測距値データを用いて、周辺画素の測距値データとの一致度から判定することもできるし、測距範囲及び測定対象物体に応じて、予め定めた測距値範囲に含まれているか否かにより判定することもできる。
このステップS122で、第二のデプスマップに信頼性の低い測距値データが存在しない(No)と判定された場合、ステップS130の処理に進む。一方、信頼性の低い測距値データが存在する(Yes)と判定された場合、ステップS123の処理に進む。
ステップS123では、デプスマップ生成部23が、第二のデプスマップの信頼性の低い測距値データを第一のデプスマップの測距値データで補完し、新たに状態判定用デプスマップを生成する。図9を用いて、具体的な処理について説明する。ここでは、前述したように、投影面3の反射率が入力操作部4の反射率よりも高いため、入力操作部4の測距時の第二の露光条件は、投影面3の測距時の第一の露光条件に対して、投影部11が投影するパターンの輝度や照明部16により照射される照明光の輝度を高くする、撮像部12の感度や受光部17の感度を高くする等の設定を行っている。
図9に示す(1−1)は、第一の露光条件でデプスマップを取得する様子を示し、(1−2)は、そのときの測距部10の視野内の一部の輝度画像60aを示し、(1−3)は、第一のデプスマップ70aを示している。視野内には背景物体である投影面3のみが存在し、投影面3に好適な第一の露光条件で測距を行っている。そのため、輝度画像60a中の各画素の輝度値は一様に測距可能範囲Ia〜Ibの輝度値(測定可能領域61a)となっている。また、第一のデプスマップ70a中の各画素(領域71a)の測距値は、一様な測距値データが得られていることを示している。
図9に示す(2−1)は、第二の露光条件でデプスマップを取得する様子を示し、(2−2)は、そのときの視野内の一部の輝度画像60bを示し、(2−3)は、取得された第二のデプスマップ70bを示している。視野内には背景物体である投影面3と入力操作部4ある操作者の指が存在している。この場合、入力操作部4に好適な第二の露光条件で測距を行っているため、輝度画像60b中の入力操作部4に対応する部分の輝度値は測距可能範囲の輝度値(Ia〜Ib)となる(測定可能領域61b)。これに対して、投影面3に対応する部分の輝度値は飽和領域の輝度値(>Ib)となることがある(飽和領域61b’)。このような第二のデプスマップ70bでは、入力操作部4に対応する部分(領域71b;格子状の網掛け部分)は適切に測距ができているのに対し、投影面3に対応する部分(領域71b’;黒塗り部分)はデータ信頼度が低い測距値データとなる。
この第二のデプスマップ70bを用いて、状態判定を行うと、飽和領域71b’部分で状態判定の誤認識が生じ易い。例えば、投影面3が正しい測距値データとして出力されず、状態検出境界Mより手前の測距値データが出力された場合、その部分がタッチ部と判定される。そのため、操作者の意図しないタイミングやタッチ位置でのタッチ動作が認識されてしまう。
これに対し、本願に係る第1実施形態では、第二のデプスマップ70bのデータ信頼度が低い領域71b’の測定値データを、第一の露光条件で取得した第一のデプスマップ70aの測定値データで補完して補完領域71cとし、図9の(3)に示すような状態判定用デプスマップ70b’を生成する。このような処理を行うことで、背景物体と注目物体の両者のデプスマップを好適な露光条件で測定された値で生成することができ、認識精度の高い状態検出を実現することができる。
なお、本実施形態では背景物体となる投影面3が、入力操作部4となる操作者の指と比較して、反射率が高い場合を説明した。しかしながら、本願がこれに限定されることはなく、投影面3の反射率が入力操作部4の反射率が低い場合でも、同様な考えの下にデプスマップ生成を行うことで、反射率が高い場合と同様の作用効果を得ることができる。状態判定用デプスマップ生成が終了したら、ステップS130に進む。
ステップS130では、補完された状態判定用デプスマップを利用して、図5A、図5Bを用いて説明したような手順で注目物体の背景物体に対する状態検出を行う。より具体的には、投影画像に対して入力操作を行う指の位置や動きを取得し、その入力操作に関する情報を状態判定部24で解析する。
以下、状態判定部24による注目物体の状態検出動作の一具体例を、図6Bのフローチャートを参照しながら説明する。まず、状態判定部24は、デプスマップ記憶部21から、背景物体に関する第一のデプスマップを取得する(ステップS131)。次に、状態判定部24は、入力操作部4(操作者の指)が視野内に存在している状態でリアルタイムに随時取得され、補完がされた状態検出用デプスマップと、第一のデプスマップとの差分を取る(ステップS132)。すなわち、測距部10の視野内に指がある場合とない場合のデプスマップの差分であるので、背景物体となる投影面3の距離情報(基準距離)は相殺され、背景物体を基準とした指部分の距離情報(対象距離)のみが算出される。これを差分デプスマップと呼ぶ。
状態判定部24は、差分デプスマップから指形状を、適宜の画像処理によって抽出し、入力操作を行う指先位置を推定する(ステップS133)。推定した指先位置の差分距離情報(投影面3を基準としたときの距離情報)を、差分デプスマップから求めることにより、指先位置が投影面3に接触しているか否かを判定する(ステップS134)。ここで差分した距離情報がゼロであれば指先位置は投影面3に接触していることになる。なお、測距部10の測距誤差や指の厚み等も考慮して、例えば差分距離情報が20mm以下であれば、接触しているとするなどの条件判定することが望ましい。また、これにより、投影面3に接触していなくとも、投影面3に近接していれば接触しているとみなすこともでき、実用的である。
指先が接触している(Yes)と判定されれば、所望の入力操作に関する情報を検出する(ステップS135)。入力操作としては、例えば、その指先位置に投影されている投影画像の指示に従い、アイコンをクリックする入力動作であったり、指先が接触しつつ移動している間は投影画像上に文字を書く入力動作であったりする。指先が接触していない(No)と判定されれば、ステップS135の処理をスキップする。以上により、注目物体の状態検出処理が終了し、図6Aのフローチャートの状態判定処理に戻り、ステップS140に進む。
ステップS140では、注目物体の状態検出で検出した入力操作情報を実行すべく、画像情報を管理する画像管理装置2に入力操作情報を伝達(指示)する。画像管理装置2が、この入力操作情報を投射部40に伝達することで、投影画像に入力操作情報が反映される。これにより、インタラクティブな操作機能を実現することができる。その後、ステップS150に進む。なお、ステップS130の注目物体の状態検出において、入力操作情報が検出されなかった場合は、ステップS140の処理は行われず、ステップS150に進む。
ステップS150で、インタラクティブ画像投影処理が終了か否かを判定し、終了の場合は(Yes)、状態判定処理を終了し、引き続きインタラクティブ処理が実行されている場合は(No)、ステップS121に戻り、入力操作部4の状態判定を続行する。
以上、第1実施形態では、状態判定装置30により、投影面3に適した第一の露光条件で測距部10が取得した第一のデプスマップと、入力操作部4に適した第二の露光条件で測距部10が取得した第二のデプスマップと、に基づいて、入力操作部4の投影面3に対する状態判定を高精度に行うことができる。よって、このような状態判定装置30を有する画像投影装置1を備えた画像投影システム100では、投影面3に投影された投影画像上での入力操作部4による入力操作の状態検出を高精度に行うことができ、投影画像への入力操作情報の反映を適切に行うことができる。これにより、優れたインタラクティブ操作機能を実現することができる。
(第2実施形態)
次に、本願の第2実施形態に係る状態判定装置を備えた電子黒板装置について、図10を参照しながら説明する。図10に示すように、第2実施形態に係る電子黒板装置200は、各種メニューやコマンド実行結果が表示される映写パネル201及び座標入力ユニットを収納したパネル部202と、コントローラ及びプロジェクタユニットを収納した収納部と、パネル部202及び収納部を所定の高さで支持するスタンドと、コンピュータ、スキャナ、プリンタ、ビデオプレイヤ等を収納した機器収納部203とからなる基本構成を備えている(特開2002−278700号公報参照)。このような基本構成に加えて、本願の第2実施形態に係る電子黒板装置200は、映写パネル201に表示される画像に対する操作者(ユーザ)の入力操作を検出するための状態判定装置30Aを備えている。この状態判定装置30Aは、機器収納部203等に格納されており、映写パネル201の画面(以下、「電子黒板画面」という)が投影面3となっている。この投影面3の下方より、入力操作部4としての操作者の指やペンを検出する。状態判定装置30Aとしては、例えば、前述の第1実施形態の状態判定装置30と同様の構成のものを用いることができる。
電子黒板装置200が、ジェスチャ認識に対応している場合、状態判定装置30Aによって入力操作部4の位置及び動きを認識することで、諸画像の拡大、縮小、ページ送りなどの動作を検出し、電子黒板画面への入力操作とする。また、電子黒板装置200が、電子黒板画面へのタッチ機能を搭載している場合、入力操作部4の挙動を状態判定装置30Aにて追跡し、入力操作部4が電子黒板画面と接触状態か非接触状態かを検出することで電子黒板画面への入力を検出する。更に上記入力情報を、画像を管理するコンピュータに出力することで、入力操作情報を電子黒板画面への出力画像に反映する。
第2実施例の電子黒板装置200でも、状態判定装置30が、背景物体である電子黒板画面に好適な第一の露光条件で取得した第一のデプスマップで、注目物体である入力操作部4に好適な第2の露光条件を用いて取得した第二のデプスマップを補完する。これにより、入力操作部4の入力操作を高精度に検出して、電子黒板装置200の優れたインタラクティブ操作機能を実現することができる。
(第3実施形態)
次に、本願の第3実施形態に係る状態判定装置を備えたデジタルサイネージ装置について、図11を参照しながら説明する。図11に示すように、本願の第3実施形態に係るデジタルサイネージ装置300は、広告画像等が表示されるディスプレイ301と、プロジェクタ本体302と、状態判定装置30Bとを備えて構成される。
本実施形態では、ディスプレイ301のガラス面が投影面3となる。画像は、投影面3の後方からプロジェクタ本体302によりリアプロジェクションされている。状態判定装置30Bは投影面3の前方であって下方に設置されており、ディスプレイ301の画面の下方より入力操作部4としての操作者の指等を検出する。状態判定装置30Bとしては、例えば、前述の第1実施形態の状態判定装置30と同様の構成のものを用いることができる。
デジタルサイネージ装置300が、ジェスチャ認識に対応している場合、状態判定装置30Bによって入力操作部4の位置及び動きを認識することで、諸画像の拡大、縮小、ページ送りなどの動作を検出し、画面への入力操作とする。また、デジタルサイネージ装置300が、画面へのタッチ機能を搭載している場合、入力操作部4の挙動を状態判定装置30Bにて追跡し、入力操作部4がガラス面と接触状態か非接触状態かを検出することで、デジタルサイネージ装置300への入力を検出する。更に上記入力情報を、画像を管理するコンピュータに出力することで、入力操作情報を画面への出力画像に反映する。
第3実施例のデジタルサイネージ装置300でも、状態判定装置30Bが、背景物体である投影面3に好適な第一の露光条件で取得した第一のデプスマップで、注目物体である入力操作部4に好適な第2の露光条件を用いて取得した第二のデプスマップを補完する。これにより、入力操作部4の入力操作を高精度に検出して、デジタルサイネージ装置300の優れたインタラクティブ操作機能を実現することができる。
なお、各実施形態では、物体検出装置として、注目物体の状態を判定する状態判定装置或いは、入力操作部による入力操作を検出する入力操作検出装置に適用した例を説明したが、物体検出装置がこれらに限定されることない。例えば、所定の撮像領域内の物体や、所定の監視領域内への侵入物体等を抽出する物体抽出装置にも適用することができる。また、状態判定装置や入力操作検出装置が上記各実施形態に限定されることもない。また、このような物体検出装置を備えた画像表示装置として、プロジェクタ装置、電子黒板装置、デジタルサイネージ装置に適用した例を説明したが、画像表示装置もこれらに限定されることはない。インタラクティブ機能を有する適宜の装置に適用することができる。
以上、本発明の物体検出装置及び物体検出装置を備えた画像表示装置を各実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。また、前記構成部材の数、位置、形状等は各実施形態に限定されることはなく、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。