以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
−油圧ショベル−
図1は本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの外観を表す側面図である。この図では、作業機の先端のアタッチメント23として、マテリアルハンドリング機の一種であるグラップルを装着した油圧ショベルを例として説明する。アタッチメント23には、このグラップルやリフティングマグネット(図2)等の対象物を把持するマテリアルハンドリング機の他、標準アタッチメントであるバケットを含む各種のアタッチメントが、用途に応じて選択的に用いられる。マテリアルハンドリング機を含め、バケット以外の多くのアタッチメントはバケットよりも動作範囲、換言すれば最大回動半径が大きい。マテリアルハンドリング機はオブジェクトハンドリング機とも称される。油圧ショベルの作業機に装着され得るアタッチメントの一例にとしては、特開2017−048574号公報等に開示されている。運転席に座ったオペレータから見て前側(図1中の左側)及び後側(同右側)を油圧ショベルの旋回体の前、後とする。
同図に示した油圧ショベルは、車体10及び作業機(フロント作業機)20を備えている。車体10は、走行体11及び旋回体12を備えている。
走行体11は、本実施形態では無限軌道履帯を有する左右のクローラ13を備えたクローラ式であり、左右の走行駆動装置18により左右のクローラ13をそれぞれ駆動することで走行する。走行駆動装置18は油圧モータと減速機からなる。
旋回体12は、走行体11上に旋回装置(不図示)を介して旋回可能に設けられている。旋回体12の前部(本実施形態では前部左側)には、オペレータが搭乗する運転室(キャブ)14が設けられている。旋回体12における運転室14の後側には、原動機41(図4)や油圧駆動装置等を収容した動力室15が、最後部には機体の前後方向のバランスを調整するカウンタウェイト16が搭載されている。原動機41はエンジン(内燃機関)又は電動機である。旋回体12を走行体11に対して連結する旋回装置には旋回モータ(不図示)が含まれており、旋回モータによって走行体11に対して旋回体12が駆動されて旋回する。本実施形態における旋回モータは油圧モータであるが、電動モータを用いることもあれば、油圧モータ及び電動モータの双方を用いることもある。なお、運転室14は旋回体12のベースフレームである旋回フレーム17にリンクを介して連結され、油圧シリンダ(不図示)によって高さや傾斜角度が変更可能な可動式のものである。可動式の運転室の構成等については特開2013−014914号公報等に詳しく記載されている。
作業機20は旋回体12の前部(本実施形態では運転室14の右側)に設けられている。この作業機20は、ブーム21、アーム22、アタッチメント23、ブームシリンダ24、アームシリンダ25、アタッチメントシリンダ26及びセンサ27〜29を備えた多関節型の作業装置である。
ブーム21は左右に延びるピン(不図示)によって旋回体12のフレームに連結されている。ブームシリンダ24はブーム21と旋回体12とを連結している。ブームシリンダ24の伸縮に伴って旋回体12に対してブーム21が上下に回動する。アーム22は左右に延びるピン(不図示)によってブーム21の先端に連結されている。アームシリンダ25はアーム22とブーム21とを連結している。アームシリンダ25は作業機20の左右両側の側面にそれぞれ設けられており(計2本設けられており)、作業機20の左右両側の側面においてブーム21及びアーム22の側面に対して両端がそれぞれ回動可能に連結されている。アームシリンダ25の伸縮に伴ってブーム21に対してアーム22が回動する。アタッチメント23は左右に延びるピン(不図示)によってアーム22の先端に連結されている。アタッチメントシリンダ26の基端はアーム22に、先端はリンクを介してアタッチメント23とアーム22に連結している。アタッチメントシリンダ26の伸縮に伴ってアーム22に対してアタッチメント23が回動する。ブームシリンダ24、アームシリンダ25及びアタッチメントシリンダ26は作業機20を駆動する油圧シリンダである。本願明細書では、ブームシリンダ24、アームシリンダ25、アタッチメントシリンダ26のうち複数を挙げる場合、油圧シリンダ24〜26といったように「油圧シリンダ」と総称する場合がある。
センサ27はブーム角度θAを検出して制御装置60(図4)に出力するブーム用のセンサ(ブームセンサ)であり、例えばブーム21の回動支点部に設けた角度センサである。ブーム角度θAとは、本実施形態では図1のように左右から見てブーム21及びアーム22の支持点P1,P2を通る線L1と鉛直線L0(走行体11の接地面に垂直な線)とがなす角であるとする。支持点P1は旋回体12に対するブーム21の回動支点、支持点P2はブーム21に対するアーム22の回動支点である。このブーム角度θAは、センサ27で直接検出されるように構成しても良いし、センサ27の検出信号から制御装置60で算出されるように構成しても良い。
センサ28はアーム角度θBを検出して制御装置60に出力するアーム用のセンサ(アームセンサ)であり、例えばアーム22の回動支点部に設けた角度センサである。アーム角度θBとは、本実施形態では左右から見てアーム22及びアタッチメント23の支持点P2,P3を通る線L2と上記の線L1とがなす角であるとする。支持点P3はアーム22に対するアタッチメント23の回動支点である。このアーム角度θBは、センサ28で直接検出されるように構成しても良いし、センサ28の検出信号から制御装置60で算出されるように構成しても良い。
センサ29はアタッチメント角度θCを検出して制御装置60に出力するアタッチメント用のセンサ(アタッチメントセンサ)であり、例えば図2に例示したように構成されている。図2ではアタッチメント23としてリフティングマグネットを装着した様子を表している。本実施形態のセンサ29は、アーム22の側面(本例では左側面)におけるアーム22の先端から離れた位置に設置されている。このセンサ29は、アタッチメントシリンダ26をアーム22及びアタッチメント23に連結するリンクに対して、レバー29a及びロッド29bを介して連結されており、リンクの角度をアタッチメント角度θCとして検出する。アタッチメント角度θCとは、本実施形態では左右から見てアタッチメント23の2つの支持点P3,P4を通る線L3と上記の線L2とがなす角であるとする。支持点P4はアタッチメント23とリンクの連結支点である。このアタッチメント角度θCは、センサ29で直接検出されるように構成しても良いし、センサ29の検出信号から制御装置60で算出されるように構成しても良い。符号29cを付した要素はセンサ29と制御装置60を接続する信号線(センサハーネス)であり、センサ29の検出信号は信号線29cを介して制御装置60に入力される。
−運転室−
図3は運転室14の内部を外観構造と共に表す側面図である。運転室14は旋回フレーム17(図1)の上部における前部に支持され、旋回フレーム17の旋回中心に対して左右方向の一方側(本例では左側)にオフセットしている。但し、運転室14の配置は機体の右側であっても構わない。運転室14は、運転席(図示省略)、レバー装置31〜33、コンソールボックス34、ゲートロックレバー(図示省略)、走行モードスイッチ35、アタッチメント選択スイッチ36(図4)等をボディ14aの内部に備えている。ボディ14aは運転席を包囲する運転室14の外郭であり、旋回フレーム17に固定されている。前述した通り本例の油圧ショベルは運転室14がリンクを介して昇降可能な構成であるため、厳密にはボディ14aはリンクに支持されたベッド上に固定されており、これらベッド及びリンクを介して旋回フレーム17に取り付けられている。運転室14を非可動式とした場合には、ボディ14aは旋回フレーム17に直接固定される。図1に示したように本実施形態ではボディ14aの左側壁にドアが設けられており、オペレータはドアを開閉して運転室14に対して乗降する。運転席はオペレータが座る座席であり、ボディ14a内の床板上に固定されている。床板もボディ14aと同様にベッド又は旋回フレーム17上に固定されている。
レバー装置31〜33(図4)はそれぞれ油圧シリンダ24〜26の動作を指示するものであるが、上記の旋回モータの動作を指示するレバー装置と合わせて、2本の操作レバーで操作する。つまりこれらレバー装置は見かけ上は運転席の左右に1つずつ設置された2つの十字操作式のレバー装置であり、2つのレバー装置が運転席の左側の1本の操作レバーを共用し、他の2つのレバー装置が運転席の右側の1本の操作レバーを共用する。操作レバーは前後左右に傾斜操作され、前後方向の操作で対応する油圧アクチュエータの動作を指示し、左右方向の操作で対応する別の油圧アクチュエータの動作を指示する。なお、運転室14の内部には、例えば運転席の前側に走行操作用のペダル付きレバー装置も左右に並べて配置されている。本実施形態では、レバー装置31は、ブーム用のコントロールバルブ45の動作を指示するブーム操作用のブームレバー装置である。レバー装置32は、アーム用のコントロールバルブ46の動作を指示するアーム操作用のアームレバー装置である。レバー装置33、アタッチメント用のコントロールバルブ47の動作を指示するアタッチメント操作用のアタッチメントレバー装置である。レバー装置31〜33の操作により対応するコントロールバルブ45〜47が作動し、油圧シリンダ24〜26が伸縮してブーム21、アーム22及びアタッチメント23が回動動作する。
ゲートロックレバーは、寝かせた倒伏姿勢でオペレータの降車を妨げるように運転席の乗降側(本例では左側)に設置されたレバー状のゲートである。このゲートロックレバーを引き上げて運転席に対する乗降部を開放しなければ、オペレータは降車できないようになっている。ゲートロックレバーのポジションによってゲートロックバルブ(不図示)が作動し、乗降部が開放された状態ではレバー装置31〜33による油圧シリンダ24〜26の操作が不能になるように構成されている。
走行モードスイッチ35は、作業機20を走行姿勢に移行させる際に操作するスイッチであり、本実施形態では運転席に隣接するコンソールボックス34に設置した場合を例示している。走行モードスイッチ35が入り状態になると干渉防止制御機能(後述)が無効になり、走行姿勢演算機能(後述)が有効になる。反対に走行モードスイッチ35が切り状態になると干渉防止制御機能が有効になり、走行姿勢演算機能が無効になる。またアタッチメント選択スイッチ36は、装着したアタッチメント23の種類を選択し入力する操作装置であり、ダイヤル等の機械的なスイッチの他、タッチパネルに表示されたボタン類等、各種のスイッチが適用可能である。走行モードスイッチ35及びアタッチメント選択スイッチ36の信号は制御装置60(図4)に入力される。
−油圧駆動装置−
図4は図1に示した油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置の油圧回路と共に制御装置の機能ブロックを表す模式図である。説明済みのものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
まず図4を用いて油圧駆動装置について説明する。油圧駆動装置は、油圧シリンダ24〜26等を駆動する装置であって動力室15に収容されている。この油圧駆動装置は、油圧ポンプ42〜44、コントロールバルブ45〜47、パイロットポンプ48及びレバー装置31〜33等を含んでいる。
油圧ポンプ42〜44は油圧シリンダ24〜26等を駆動する作動油を吐出する可変容量型のポンプであり、原動機41により駆動される。油圧ポンプ42〜44から吐出された作動油は吐出配管42a〜44aを流れ、コントロールバルブ45〜47を経由してそれぞれ油圧シリンダ24〜26に供給される。油圧シリンダ24〜26からの各戻り油は、それぞれコントロールバルブ45〜47を介して戻り油配管49に流れ込んでタンクTに戻される。吐出配管42a〜44aには、この吐出配管42a〜44aの最高圧力を規制するリリーフ弁(不図示)が設けられている。図4では図示していないが、油圧アクチュエータを持つグラップル等のアタッチメントを作業機20に装着した場合には、アタッチメントに備わった油圧アクチュエータも同様の回路構成で駆動される。なお、本実施形態では油圧シリンダ24〜26に対してそれぞれ異なる油圧ポンプ42〜44から作動油が供給される例を示しているが、油圧シリンダ24〜26に対して2つ以下の油圧ポンプで作動油を供給する構成とすることもある。
コントロールバルブ45〜47は油圧ポンプ42〜44から対応するアクチュエータに供給される作動油の流れ(方向及び流量)を制御する油圧駆動式の流量制御弁であり、油圧駆動部に入力される油圧信号により駆動される。コントロールバルブ45はブームシリンダ24への作動油の流れを制御するブーム用コントロールバルブである。コントロールバルブ46はアームシリンダ25への作動油の流れを制御するアーム用コントロールバルブである。コントロールバルブ47はアタッチメントシリンダ26への作動油の流れを制御するアタッチメント用コントロールバルブである。旋回モータや走行モータ等の他のアクチュエータ用のコントロールバルブは図示省略してある。コントロールバルブ45〜47の油圧駆動部は対応する操作レバー装置に接続されている。コントロールバルブ45〜47は油圧駆動部に油圧信号が入力されると図中で右行(左切換位置側に移動)又は左行(右切換位置側に移動)し、油圧信号の入力が停止されるとバネの力で中立位置に復帰する構成である。コントロールバルブ45〜47の各中立位置は吐出配管42a〜44aを戻り油配管49に接続し、油圧シリンダ24〜26に対する作動油の給排を停止して、これら油圧シリンダ24〜26の伸縮動作を停止させる。例えばブームシリンダ用のコントロールバルブ45の左側の油圧駆動部に油圧信号が入力されると、図4においてコントロールバルブ45のスプールが油圧信号の大きさに応じた距離だけ右行する。これにより、油圧信号に応じた流量の作動油がブームシリンダ24のボトム側油室に供給され、油圧信号の大きさに応じた速度でブームシリンダ24が伸長しブーム21が上がる。
パイロットポンプ48はコントロールバルブ45〜47等の制御弁を駆動する油圧信号の元圧を出力する固定容量型ポンプであり、油圧ポンプ42〜44と同じく原動機41により駆動される。原動機41とは別の動力源でパイロットポンプ48を駆動する構成とすることもできる。パイロットライン48aはパイロットポンプ48の吐出配管であり、分岐してレバー装置31〜33に接続している。このパイロットライン48aを介して、パイロットポンプ48から吐出された作動油がレバー装置31〜33の信号出力弁(減圧弁)に供給される。
レバー装置31〜33は、それぞれ対応するコントロールバルブ45〜47を駆動する油圧信号を操作に応じて生成し出力する油圧式のレバーレバー装置であり、前述した通り運転室14(図1)に備えられている。レバー装置31はブーム操作用、レバー装置32はアーム操作用、レバー装置33はアタッチメント操作用であり、その他に旋回操作用のレバー装置等もある。油圧ショベルの場合、前述した通り一般にレバー装置31〜33は十字操作式のレバー装置である。
ブーム操作用のレバー装置31は、ブーム上げ指令用の信号出力弁31a及びブーム下げ指令用の信号出力弁31bを備えている。信号出力弁31a,31bの入力ポートにはパイロットライン48aが接続している。ブーム上げ指令用の信号出力弁31aの出力ポートはブームシリンダ用のコントロールバルブ45の左側の油圧駆動部に接続している。ブーム下げ指令用の信号出力弁31bの出力ポートはコントロールバルブ45の右側の油圧駆動部に接続している。例えばレバー装置31をブーム上げ指令側に倒すと信号出力弁31aが操作量に応じた開度で開く。これによりパイロットポンプ48の吐出油が、信号出力弁31aで操作量に応じて減圧されてコントロールバルブ45の左側の油圧駆動部に対する油圧信号として出力される。
同様に、アーム操作用のレバー装置32は、アームクラウド指令用の信号出力弁32a及びアームダンプ指令用の信号出力弁32bを備えている。アタッチメント操作用のレバー装置33は、アタッチメントクラウド指令用の信号出力弁33a及びアタッチメントダンプ指令用の信号出力弁33bを備えている。信号出力弁32a,32b,33a,33bの入力ポートは、パイロットライン48aに接続している。レバー装置32,33の信号出力弁32b,33aの出力ポートはコントロールバルブ46,47の左側の油圧駆動部に接続している。レバー装置32,33の信号出力弁32a,33bの出力ポートはコントロールバルブ46,47の右側の油圧駆動部に接続している。レバー装置32,33の油圧信号の出力原理はブーム操作用のレバー装置31と同様である。
また、信号出力弁31a,31b,32a,32b,33a,33bの各油圧信号ライン31a1,31b1,32a1,32b1,33a1,33b1には、切換弁51a,51b,52a,52b,53a,53bがそれぞれ対応して設けられている。以降、切換弁51a,51b,52a,52b,53a,53bの6つ全てを指す場合には、「切換弁51a,51b…」と記載する。
切換弁51a,51bはブーム用のコントロールバルブ45の油圧駆動部へのパイロット圧の供給及び遮断を切り換えてブーム操作の有効無効を切り換えるブーム用の切換弁である。本実施形態では油圧信号ライン31a1,31b1を遮断可能なノーマルクローズ型の比例電磁減圧弁を切換弁51a,51bに用いている。制御装置60からの信号によりソレノイドが励磁された状態では切換弁51aは連通位置に切り換わり、信号出力弁31aとコントロールバルブ45の左側の油圧駆動部が接続し、レバー装置31によるブーム上げ操作が有効になる。制御装置60からの信号の出力が停止してソレノイドが消磁されると切換弁51aが遮断位置に切り換わり、信号出力弁31aとコントロールバルブ45の左側の油圧駆動部の接続が遮断され、レバー装置31によるブーム上げ操作が無効になる。同様にソレノイドが制御装置60からの信号により励磁された状態では切換弁51bは連通位置に切り換わり、信号出力弁31bとコントロールバルブ45の右側の油圧駆動部が接続し、レバー装置31によるブーム下げ操作が有効になる。制御装置60からの信号の出力が停止してソレノイドが消磁されると切換弁51bが遮断位置に切り換わり、信号出力弁31bとコントロールバルブ45の右側の油圧駆動部の接続が遮断され、レバー装置31によるブーム下げ操作が無効になる。
切換弁52a,52bはアーム用のコントロールバルブ46の油圧駆動部へのパイロット圧の供給及び遮断を切り換えてアーム操作の有効無効を切り換えるアーム用の切換弁である。本実施形態では油圧信号ライン32a1,32b1を遮断可能なノーマルクローズ型の比例電磁減圧弁を切換弁52a,52bに用いている。制御装置60からの信号によりソレノイドが励磁された状態では切換弁52aは連通位置に切り換わり、信号出力弁32aとコントロールバルブ46の右側の油圧駆動部が接続し、レバー装置32によるアームクラウド操作が有効になる。制御装置60からの信号の出力が停止してソレノイドが消磁されると切換弁52aが遮断位置に切り換わり、信号出力弁32aとコントロールバルブ46の右側の油圧駆動部の接続が遮断され、レバー装置32によるアームクラウド操作が無効になる。同様にソレノイドが制御装置60からの信号により励磁された状態では切換弁52bは連通位置に切り換わり、信号出力弁32bとコントロールバルブ46の左側の油圧駆動部が接続し、レバー装置32によるアームダンプ操作が有効になる。制御装置60からの信号の出力が停止してソレノイドが消磁されると切換弁52bが遮断位置に切り換わり、信号出力弁32bとコントロールバルブ46の左側の油圧駆動部の接続が遮断され、レバー装置32によるアームダンプ操作が無効になる。
切換弁53a,53bはアタッチメント用のコントロールバルブ47の油圧駆動部へのパイロット圧の供給及び遮断を切り換えてアタッチメント操作の有効無効を切り換えるアタッチメント用の切換弁である。本実施形態では油圧信号ライン33a1,33b1を遮断可能なノーマルクローズ型の比例電磁減圧弁を切換弁53a,53bに用いている。制御装置60からの信号によりソレノイドが励磁された状態では切換弁53aは連通位置に切り換わり、信号出力弁33aとコントロールバルブ47の左側の油圧駆動部が接続し、レバー装置33によるアタッチメントクラウド操作が有効になる。制御装置60からの信号の出力が停止してソレノイドが消磁されると切換弁53aが遮断位置に切り換わり、信号出力弁33aとコントロールバルブ47の左側の油圧駆動部の接続が遮断され、レバー装置33によるアタッチメントクラウド操作が無効になる。同様にソレノイドが制御装置60からの信号により励磁された状態では切換弁53bは連通位置に切り換わり、信号出力弁33bとコントロールバルブ47の右側の油圧駆動部が接続し、レバー装置33によるアタッチメントダンプ操作が有効になる。制御装置60からの信号の出力が停止してソレノイドが消磁されると切換弁53bが遮断位置に切り換わり、信号出力弁33bとコントロールバルブ47の右側の油圧駆動部の接続が遮断され、レバー装置33によるアタッチメントダンプ操作が無効になる。
−制御装置−
本実施形態の油圧ショベルには、切換弁51a,51b…を制御する制御装置60が備わっている。制御装置60の具体例はコンピュータであり、図3に示したように例えば運転室14内における運転席(不図示)の後側のスペースに設置することができる。この制御装置60には、図5に示したように、入力インターフェース60a、ROM(例えばEPROM)60b、RAM60c、CPU60d、タイマ60e、出力インターフェース60fが備わっている。入力インターフェースには、センサ27〜29、走行モードスイッチ35、アタッチメント選択スイッチ36等が接続されている。これらセンサ等からの入力信号がアナログ信号である場合は入力インターフェースにはAD変換機が備えられるが、デジタル信号である場合にはAD変換機能は必ずしも必要ない。出力インターフェースはDA変換機を備えており、切換弁51a,51b…の各ソレノイドに接続している。
また制御装置60の主要な機能を構成的に捉えると、制御装置60は、図4に示したように、座標演算部61、機能切換部62、記憶部63〜65、干渉防止制御部66、走行姿勢演算部67、流量演算部68、出力部69を備えている。座標演算部61、機能切換部62、干渉防止制御部66、走行姿勢演算部67、流量演算部68には、ハードウェアとしては例えばCPU60dが該当する。これらの機能が1つのCPUで実行される構成でも良いし、複数のCPUで分担する構成でも良い。各機能に対応するCPUが備わった構成でも良い。また記憶部63〜65にはROM60b又はRAM60cが、出力部69には出力インターフェース60fが、それぞれハードウェアとして該当する。記憶部63〜65が1つのメモリで兼ねられた構成、2つのメモリで分担された構成、記憶部63〜65にそれぞれ対応する3つのメモリが備わった構成のいずれも考えられる。また、例えばROM60bには、ブーム21やアーム22の寸法及び形状のデータの他、アタッチメントの種類毎の寸法や形状や最大回動半径等、運転室14の前側に設定した近接域A1(図6)の座標等の情報が記憶されている。
座標演算部61は、入力インターフェース60aを介して入力されたセンサ27〜29及びアタッチメント選択スイッチ36からの信号を基に、アタッチメント23の特定点(例えばアタッチメント23の支持点P3)の座標を演算する機能又は回路である。例えばROM60bに記憶されたブーム21及びアーム22の寸法のデータを読み込み、座標演算部61はセンサ27〜29からの信号を基にアタッチメント23の特定点の座標値を演算する。センサ27〜29から入力された検出値は、座標演算部61で演算した座標と共にメモリ(例えばRAM60c又はROM60b)に記憶される。
機能切換部62は、干渉防止制御部66と後述する停止指令部67a〜67c(本実施形態では走行姿勢演算部67)の機能を選択的に有効にする機能又は回路である。具体的には、入力インターフェース60aを介して走行モードスイッチ35からの入り信号が入力されると、機能切換部62は、干渉防止制御部66の機能を無効にすると共に走行姿勢演算部67の機能を有効にする。この場合、例えば、機能切換部62はセンサ27〜29やアタッチメント選択スイッチ36からの入力信号、座標演算部61の演算結果を干渉防止制御部66には出力せず、走行姿勢演算部67にのみ出力する。これにより干渉防止制御部66が機能せず、走行姿勢演算部67のみが機能する。また走行モードスイッチ35からの信号入力が停止すると、機能切換部62は、干渉防止制御部66の機能を有効にすると共に走行姿勢演算部67の機能を無効にする。この場合、例えば、機能切換部62はセンサ27〜29やアタッチメント選択スイッチ36からの入力信号、座標演算部61の演算結果を走行姿勢演算部67には出力せず、干渉防止制御部66にのみ出力する。これにより走行姿勢演算部67が機能せず、干渉防止制御部66のみが機能する。
記憶部63は、アタッチメントの種類毎に予め設定された作業機20の走行姿勢時(一例を図6に示す)のブーム21の設定角度θATを記憶した走行ブーム角度記憶部である。記憶部64は、アタッチメントの種類毎に予め設定された作業機20の走行姿勢時のアーム22の設定角度θBTを記憶した走行アーム角度記憶部である。記憶部65は、アタッチメントの種類毎に予め設定された作業機20の走行姿勢時のアタッチメント23の設定角度θCTを記憶した走行アタッチメント角度記憶部である。設定角度θAT,θBT,θCTはセンサ27〜29の検出値に対して設定された値であり、アタッチメント23の種類毎にそれぞれ用意されている。設定角度θAT,θBT,θCTはそれぞれ、異なるアタッチメントで値が共通する場合もあれば、アタッチメントの種類によって値が異なる場合もある。
干渉防止制御部66は、作業機20と運転室14との干渉を防止するために作業機20の動作を制限する機能又は回路である。この機能が有効な場合、干渉防止制御部66は、機能切換部62を介して座標演算部61から入力されるアタッチメント23の特定点を中心とするアタッチメント23の動作範囲A2(図6)を演算する。動作範囲A2はアタッチメント23の特定点の座標を中心とする球体状の空間であり、その半径はRAM60cから読み込まれたアタッチメント23の最大動作半径である。干渉防止制御部66は運転室14の近接域A1に動作範囲A2が干渉しているかを判定し、干渉しているようであれば切換弁51a,51b…を制御して干渉の程度に応じて作業機20の動作を減速又は停止させる指令を生成する。反対に運転室14の近接域A1に動作範囲A2が干渉していない場合、干渉防止制御部66は切換弁51a,51b…を最大開度にする指令を生成する。干渉防止制御については、例えば特開平7−109750号公報に記載されている。
走行姿勢演算部67は作業機20の走行姿勢を演算する機能又は回路であり、本実施形態では停止指令部67a〜67cを備えており、作業機20の走行姿勢への移行を支援する機能又は回路でもある。但し停止指令部67a〜67cは制御装置60に備わっていれば良く、必ずしも走行姿勢演算部67に備わっている必要はない。本実施形態では、アーム22を下方に延ばして(線L2をほぼ鉛直にして)アタッチメント23が地面から所定距離だけ浮いた姿勢を走行姿勢としている(図6)。前述した通り、走行姿勢時には、θA=θAT(又はθA≒θAT)、θB=θBT(又はθB≒θBT)、θC=θCT(又はθC≒θCT)となる。
停止指令部67aはブーム用の停止指令部であり、機能有効時、記憶部63に記憶された走行姿勢時のブーム21の設定角度θATとセンサ27で検出されたブーム角度θAを常時比較する。θATとθAの差分(|θAT−θA|)が設定値θAS以下である場合、停止指令部67aは切換弁51a,51bを遮断位置に切り換える指令を生成し、ブームシリンダ24の動作を停止させる。差分(|θAT−θA|)が設定値θASより大きい場合、停止指令部67aは切換弁51a,51bを最大開度にする。
停止指令部67bはアーム用の停止指令部であり、停止指令部67aと同様、機能有効時、記憶部64に記憶された走行姿勢時のアーム22の設定角度θBとセンサ28で検出されたアーム角度θBを常時比較する。θBTとθBの差分(|θBT−θB|)が設定値θBS以下である場合、停止指令部67bは切換弁52a,52bを遮断位置に切り換える指令を生成し、アームシリンダ25の動作を停止させる。差分(|θBT−θB|)が設定値θBSより大きい場合、停止指令部67bは切換弁52a,52bを最大開度にする。
停止指令部67cはアタッチメント用の停止指令部であり、停止指令部67aと同様、機能有効時、記憶部65に記憶された走行姿勢時のアタッチメント23の設定角度θCTとセンサ29で検出されたアタッチメント角度θCを常時比較する。θCTとθCの差分(|θCT−θC|)が設定値θCS以下である場合、停止指令部67cは切換弁53a,53bを遮断位置に切り換える指令を生成し、アタッチメントシリンダ26の動作を停止させる。差分(|θCT−θC|)が設定値θCSより大きい場合、停止指令部67cは切換弁53a,53bを最大開度にする。
なお、|θAT−θA|、|θBT−θB|、|θCT−θC|について設定した設定値θAS、θBS、θCSは、0(ゼロ)又は0より僅かに大きな値である。
流量演算部68は、干渉防止制御部66又は走行姿勢演算部67の指令を基にコントロールバルブ45〜47への油圧信号の流量、又は切換弁51a,51b…の開度を演算し、切換弁51a,51b…に対する信号の数値(指令値)を演算する機能又は回路である。出力部69は干渉防止制御部66又は走行姿勢演算部67からの指令を切換弁51a,51b…に出力するものである。流量演算部68で演算された指令値に応じたアナログ信号(電圧信号)が切換弁51a,51b…の各ソレノイドに出力され、切換弁51a,51b…が制御される。
−動作−
原動機41を始動させた後、レバー装置31〜33等を適宜操作することで、油圧シリンダ24〜26等の各アクチュエータが駆動され、作業機20や旋回体12、走行体11等が動作する。その際、ブーム上げ動作、アームクラウド動作、アタッチメントクラウド動作は、アタッチメント23を運転室14に近付ける方向の動作である。走行モードスイッチ35が切り状態の場合、上記の通りアタッチメント23の動作範囲A2が常時演算されている。アームクラウド動作等によってその動作範囲A2が運転室14の近接域A1に干渉すると、干渉防止制御部66が機能して切換弁51a,51b…が制御され、作業機20の動作が減速或いは停止される。この間、走行姿勢演算部67の機能は無効であるため、例えば作業中にブーム角度θAが設定角度θATに一致してもブーム21の動作が停止することはない。
走行モードスイッチ35が入り状態の場合、干渉防止制御部66の機能は無効になり、これに代わって走行姿勢演算部67の機能、具体的にはブーム動作、アーム動作、アタッチメント動作についての各停止指令部67a〜67cの機能が有効になる。
図7は制御装置60による走行モード時のブーム停止制御の手順を表すフローチャートである。図8は制御装置60による走行モード時のアーム停止制御の手順を表すフローチャートである。図9は制御装置60による走行モード時のアタッチメント停止制御の手順を表すフローチャートである。走行モードスイッチ35が入り状態の間、制御装置60は、これら図7〜図9に示した制御をそれぞれ独立的に並行して実行する。
制御装置60による走行モード時のブーム停止制御の手順を代表して説明する。制御装置60は、運転中(制御装置60に通電されている間)走行モードスイッチ35からの信号が入力されているかを判定する(ステップS11)。走行モードスイッチ35が切り状態で信号が入力されていない場合、制御装置60は機能切換部62により干渉防止制御部66の機能を有効にしたままステップS11の手順を繰り返す。走行作業の準備のために走行モードスイッチ35が入り操作されると、走行モードスイッチ35から信号が入力される。この信号が入力されている場合、制御装置60は機能切換部62により干渉防止制御部66の機能を停止して走行姿勢演算部67(ここでは停止指令部67a)の機能を有効にする(ステップS12)。
オペレータは、走行モードスイッチ35を入り状態にしたら、作業機20を走行姿勢に移行させるべく設定角度θATを目標にしてレバー装置31を操作してブーム21を動作させる。この間、制御装置60はセンサ27から入力されるブーム角度θAと設定角度θATの差分(|θA−θAT|)が設定値θAS以下であるかを停止指令部67aにより判定する(ステップS13)。停止指令部67aで|θA−θAT|>θASと判定された場合、制御装置60は手順をステップS11に戻す。ブーム角度θAが設定角度θATに近付くうちに、|θA−θAT|≦θASとなる。このことが停止指令部67aで判定された場合、制御装置60は停止指令部67aによりブーム動作を停止する旨の指令を生成し、流量演算部68、出力部69を介して切換弁51a,51bに全閉を指令する信号を出力する。本実施形態の切換弁51a,51bはノーマルクローズ型の電磁弁であるため、切換弁51a,51bに全閉を指令する信号を出力することは、切換弁51a,51bのソレノイドを消磁することを指す。切換弁51a,51bが閉じて油圧信号ライン31a,31b1が遮断されることにより、コントロールバルブ45が強制的に中立位置に戻され、ブームシリンダ24の動作が停止する。その後、走行モードスイッチ35が入り状態の間、ブーム21は設定角度θATで拘束される。
制御装置60による走行モード時のアーム停止制御の手順、アタッチメント停止制御もブーム停止制御の手順と同様である。つまり、制御装置60は、走行モードスイッチ35からの信号が入力されているかを判定し(ステップS21,S31)、入力されている場合、停止指令部67b,67cの機能を有効にする(ステップS22,S32)。続いて制御装置60は|θB−θBT|≦θBSであるか、|θC−θCT|≦θCSであるかを、停止指令部67b,67cによりそれぞれ判定する(ステップS23,S33)。そして|θB−θBT|≦θBS、|θC−θCT|≦θCSとなった時点で、制御装置60は停止指令部67b,67cによりアーム動作、アタッチメント動作を停止する旨の指令をそれぞれ生成し、切換弁52a,52b,53a,53bを閉じる。こうして油圧信号ライン32a,32b1,33a1,33b1が遮断されることにより、コントロールバルブ46,47が中立位置に戻され、油圧シリンダ25,26の動作が停止する。その後、走行モードスイッチ35が入り状態の間、アーム22及びアタッチメント23は設定角度θBT,θCTで拘束される。
以上のように、走行姿勢を目標にしてレバー装置31〜33を適宜操作すると、ブーム21、アーム22、アタッチメント23のうち各設定角度θAT,θBT,θCTになったものから順次動作が停止する。レバー装置31〜33を操作してもブーム21、アーム22、アタッチメント23のいずれも動作しない状態となれば、作業機20の作業姿勢への移行が完了する。
−効果−
本実施形態の油圧ショベルでは、走行作業に先行して走行モードスイッチ35を入り状態とすることで、干渉防止制御の機能が停止して走行姿勢演算の機能が有効になる。これにより干渉防止制御が障害となることなく、アタッチメント23の種類に応じた走行姿勢に作業機20を移行させることができる。その際、オペレータは作業機20を構成するブーム21等の角度をモニタ等で確認しながら操作する必要はなく、作業機20を走行姿勢に近付けるイメージでレバー装置31〜33を適宜操作すれば良い。この操作の過程で、走行姿勢時の角度に一致したものからブーム21、アーム22及びアタッチメント23が順次停止するので、特にモニタ等を確認しながら操作しなくても作業機20を容易に走行姿勢に移行させることができる。従って、干渉防止制御を搭載しつつも、アタッチメント23の種類に応じて作業機20を正確な走行姿勢に円滑に移行させることができる。
−変形例−
上記実施形態では、ブーム角度θA、アーム角度θB、アタッチメント角度θCを検出するセンサとした角度センサを用いる場合を例に挙げて説明したが、例えば油圧シリンダ24〜26の各ストロークを検出するストロークセンサを用いることもできる。ストロークセンサの信号を基にブーム角度θAを検出することができ、これにより同様の効果を得ることができる。
アタッチメント選択スイッチ36を設け、アタッチメント選択スイッチ36の信号によってアタッチメント23の種類を制御装置60に認識させる構成を例に挙げて説明したが、これにも限られない。例えばアタッチメント23とアーム22の連結部に電子接点を設け、装着されたアタッチメント23の種類が自動的に制御装置60に認識されるような構成も考えられる。
また、作業機20が走行姿勢に移行完了した際に、その旨をモニタやブザー等で視覚的或いは聴覚的にオペレータに通知するような構成とすることも容易である。
レバー装置31〜33として油圧操作式のものを例示したが、電気レバー装置等の電気操作式のレバー装置を採用した油圧ショベルにも本発明は適用可能である。電気操作式のレバー装置を用いた油圧ショベルでは、一般にレバー装置から出力される電気信号に応じてコントローラから指令信号が出力され、これにより駆動される電磁弁で生成された油圧信号によりコントロールバルブが駆動されて作業機が動作する。この場合には、走行モードスイッチ35が入り状態の間、ブーム角度θA等が設定角度に一致した際に電磁弁を遮断位置に切り換えるようなプログラムを制御装置60の例えばROM60bに格納する。これにより電気操作式のレバー装置を採用した油圧ショベルにおいても、上記実施形態と同様の機能を実行することができる。
また、クローラ式の走行体を備えた油圧ショベルに本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、ホイール式の走行体を備えた油圧ショベルにも本発明は適用可能であり、同様の効果を得ることができる。