以下、本発明の実施の形態によるブレーキ制御システムを、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1において、車両のボディを構成する車体1の下側(路面側)には、4個の車輪、例えば左,右の前輪2(FL,FR)と左,右の後輪3(RL,RR)とが設けられている。これらの各前輪2および各後輪3には、それぞれの車輪(各前輪2、各後輪3)と共に回転する回転部材(非制動部材)としてのディスクロータ4が設けられている。各前輪2は、液圧式のディスクブレーキ5により各ディスクロータ4が挟持され、各後輪3は、液圧式のディスクブレーキ51により各ディスクロータ4が挟持される。これにより、車輪(各前輪2、各後輪3)毎に制動力が付与される。
車体1のフロントボード側には、制動操作子としてのブレーキペダル6が設けられている。ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者によって踏込み操作される。ブレーキペダル6には、ブレーキ操作量としてのペダルストロークを検出するストロークセンサ7が設けられている。
ブレーキペダル6の踏込み操作は、後述の電動倍力装置21を介して油圧源となるマスタシリンダ11に伝達される。電動倍力装置21は、ブレーキペダル6とマスタシリンダ11との間に設けられ、ブレーキペダル6の踏込み操作時に踏力を増力してマスタシリンダ11に伝える。このとき、電動倍力装置21は、その作動を制御するブースタ用コントローラ33(以下、ブースタ用ECU33という)を有している。ブースタ用ECU33は、電動倍力装置21を駆動制御することによって、マスタシリンダ11にブレーキ液圧(M/C液圧)を発生させる。
マスタシリンダ11に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管34A,34Bを介して後述の液圧供給装置42(以下、ESC42という)に送られる。このESC42は、マスタシリンダ11からの液圧を液圧回路43,43′を介して各ディスクブレーキ5,51に分配、供給する。これにより、前述のように車輪(各前輪2、各後輪3)毎に制動力が付与される。
ESC42は、各ディスクブレーキ5,51とマスタシリンダ11との間に配設されている。ESC42は、ブレーキペダル6の操作に応じなくとも各ディスクブレーキ5,51にブレーキ液を供給することで液圧を付与して、各ディスクブレーキ5,51内の液圧(W/C液圧)を高めるものである。このために、ESC42は、その作動を制御する液圧供給装置用コントローラ44(以下、ESC用ECU44という)を有している。ESC用ECU44は、ESC42を駆動制御することにより、液圧回路43,43′から各ディスクブレーキ5(L,R),51(L,R)に供給するブレーキ液圧を増圧、減圧または保持する制御を行う。これにより、例えば倍力制御、制動力分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御、トラクション制御、横滑り防止を含む車両安定化制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
この場合、マスタシリンダ11、電動倍力装置21およびESC42は、作動液供給ユニットを構成している。この作動液供給ユニットは、ブレーキペダル6の操作に応じて駆動される電動倍力装置21の電動アクチュエータ27によって、各ディスクブレーキ5,51へ作動液を供給すると共に、作動液の供給によって発生する液圧力をブレーキペダル6に伝達する。
電動駐車ブレーキ機構61(以下、PKB61という)は、例えば後輪3のディスクブレーキ51に設けられた電動機構を構成する。このPKB61は、停車保持操作子としての駐車ブレーキスイッチ66の操作に応じて、ディスクブレーキ5の制動状態と制動解除状態とを切り換える。このとき、PKB61は、その作動を制御する駐車ブレーキ用コントローラ65(以下、PKB用ECU65という)を有している。PKB用ECU65は、PKB61を駆動制御することにより、各ディスクブレーキ51がディスクロータ4を挟持する。これにより、後輪3に制動力が付与される。
ブースタ用ECU33、ESC用ECU44、PKB用ECU65は、後述の回生用ECU36を含めて、車両に搭載された車両データバス8に接続されている。この車両データバス8は、車両に搭載されたV−CANと呼ばれるシリアル通信部であり、車載向けの多重通信を行うものである。これにより、ECU33,36,44,65は、車両データバス8を介して、各種の信号や情報を相互に授受している。また、ブースタ用ECU33とESC用ECU44は、例えばL−CANと呼ばれる通信が可能な車載の信号線9によって相互に接続されている。
次に、ブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ11について、図2を参照して説明する。
ブレーキペダル6は、車両のブレーキ操作時に運転者によって矢示A方向に踏込み操作される。ストロークセンサ7は、ブレーキペダル6の踏込み操作量(ストローク量)または踏力を検出し、その検出信号を後述のECU33,36および車両データバス8等に出力する。ブレーキペダル6が踏込み操作されると、マスタシリンダ11には電動倍力装置21を介してブレーキ液圧が発生する。
マスタシリンダ11は、後述の電動倍力装置21と共にブレーキ制御装置を構成している。このマスタシリンダ11は、一側が開口端となり他側が底部となって閉塞された有底筒状のシリンダ本体12を有している。このシリンダ本体12には、後述のリザーバ17内に連通する第1,第2のサプライポート12A,12Bが設けられている。第1のサプライポート12Aは、後述するブースタピストン23(P-Piston)の摺動変位により第1の液圧室14Aに対して連通,遮断される。一方、第2のサプライポート12Bは、後述する第2のピストン13により第2の液圧室14Bに対して連通,遮断される。
シリンダ本体12は、その開口端側が電動倍力装置21のブースタハウジング22に複数の取付ボルト(図示せず)等を用いて着脱可能に固着されている。マスタシリンダ11は、シリンダ本体12と、第1のピストン(後述のブースタピストン23と入力ロッド24)および第2のピストン13と、第1の液圧室14Aと、第2の液圧室14Bと、第1の戻しばね15と、第2の戻しばね16とを含んで構成されている。
マスタシリンダ11の第1のピストンは、後述のブースタピストン23と入力ロッド24とにより構成されている。シリンダ本体12内に形成される第1の液圧室14Aは、第2のピストン13とブースタピストン23(および入力ロッド24)との間に画成されている。第2の液圧室14Bは、シリンダ本体12の底部と第2のピストン13との間でシリンダ本体12内に画成されている。
第1の戻しばね15は、第1の液圧室14A内に位置してブースタピストン23と第2のピストン13との間に配設され、ブースタピストン23をシリンダ本体12の開口端側に向けて付勢している。第2の戻しばね16は、第2の液圧室14B内に位置してシリンダ本体12の底部と第2のピストン13との間に配設され、第2のピストン13を第1の液圧室14A側に向けて付勢している。
マスタシリンダ11のシリンダ本体12は、ブレーキペダル6の踏込み操作に応じてブースタピストン23と第2のピストン13とがシリンダ本体12の底部に向かって変位し、第1,第2のサプライポート12A,12Bを遮断したときに、第1,第2の液圧室14A,14B内のブレーキ液によりブレーキ液圧を発生させる。一方、ブレーキペダル6の操作を解除した場合には、ブースタピストン23と第2のピストン13とが第1,第2の戻しばね15,16によりシリンダ本体12の開口部に向かって矢示B方向に変位していくときに、リザーバ17からブレーキ液の補給を受けながら第1,第2の液圧室14A,14B内の液圧を解除していく。
マスタシリンダ11のシリンダ本体12には、作動液タンクとしてのリザーバ17が設けられ、このリザーバ17の内部にはブレーキ液が収容されている。リザーバ17は、シリンダ本体12内の液圧室14A,14Bにブレーキ液を給排するための容器である。即ち、第1のサプライポート12Aがブースタピストン23により第1の液圧室14Aに連通され、第2のサプライポート12Bが第2のピストン13により第2の液圧室14Bに連通している間は、これらの液圧室14A,14B内にリザーバ17内のブレーキ液が給排される。
一方、第1のサプライポート12Aがブースタピストン23により第1の液圧室14Aから遮断され、第2のサプライポート12Bが第2のピストン13により第2の液圧室14Bから遮断されたときには、これらの液圧室14A,14Bに対するリザーバ17内のブレーキ液の給排が断たれる。このため、マスタシリンダ11の第1,第2の液圧室14A,14B内には、ブレーキ操作に伴ってブレーキ液圧が発生し、このブレーキ液圧は、後述のシリンダ側液圧配管34A,34Bを介してESC42に送られる。
次に、電動倍力装置21の具体的な構成について、図2ないし図4を参照して説明する。
電動倍力装置21は、車両のブレーキペダル6とマスタシリンダ11との間に設けられている。電動倍力装置21は、ブレーキペダル6の操作力を増大させるブースタとして機能する。この電動倍力装置21は、ストロークセンサ7の出力に基づいて後述の電動アクチュエータ27を駆動制御することにより、マスタシリンダ11内に発生するブレーキ液圧を可変に制御するものである。この場合、電動倍力装置21は、マスタシリンダ11と共に、ブレーキ制御装置を構成している。
電動倍力装置21は、車体1のフロントボードである車室前壁(図示せず)に固定して設けられるブースタハウジング22と、ブースタハウジング22に移動可能に設けられ後述の入力ロッド24に対して相対移動可能なブースタピストン23と、ブースタピストン23をマスタシリンダ11の軸方向に進退移動させてブースタピストン23にブースタ推力を付与する後述の電動アクチュエータ27と、ブースタ用ECU33とを含んで構成されている。
ブースタピストン23は、マスタシリンダ11のシリンダ本体12内に開口端側から軸方向に摺動可能に挿嵌された筒状部材により構成されている。ブースタピストン23の内周側には、ブレーキペダル6の操作に従って直接的に押動され、マスタシリンダ11の軸方向(即ち、矢示A,B方向)に進退移動する入力部材としての入力ロッド24が摺動可能に挿嵌されている。入力ロッド24は、ブースタピストン23と一緒にマスタシリンダ11の第1のピストンを構成し、入力ロッド24の後側(一側)端部にはブレーキペダル6が連結されている。シリンダ本体12内は、第2のピストン13とブースタピストン23および入力ロッド24との間に第1の液圧室14Aが画成されている。
ブースタハウジング22は、後述の減速機構30等を内部に収容する筒状の減速機ケース22Aと、減速機ケース22Aとマスタシリンダ11のシリンダ本体12との間に設けられブースタピストン23を軸方向に摺動変位可能に支持した筒状の支持ケース22Bと、減速機ケース22Aを挟んで支持ケース22Bとは軸方向の反対側(軸方向一側)に配置され減速機ケース22Aの軸方向一側の開口を閉塞する段付筒状の蓋体22Cとにより構成されている。減速機ケース22Aの外周側には、後述の電動モータ28を固定的に支持するための支持板22Dが設けられている。
入力ロッド24は、蓋体22C側からブースタハウジング22内に挿入され、ブースタピストン23内を第1の液圧室14Aに向けて軸方向に延びている(図2参照)。ブースタピストン23と入力ロッド24との間には、一対の中立ばね25,26が介装されている。これらの中立ばね25,26は、ブースタピストン23と入力ロッド24とを両者の中立位置に向けて弾性的に付勢し、ブースタピストン23と入力ロッド24とが軸方向に相対変位すると、これを抑える方向で中立ばね25,26のばね力が作用する構成となっている。
入力ロッド24は、ブレーキペダル6の操作により第1の液圧室14A内をマスタシリンダ11の軸方向に進退移動する。この場合、入力ロッド24の先端側(軸方向他側)端面は、ブレーキ操作時に第1の液圧室14A内に発生する液圧をブレーキ反力として受圧し、入力ロッド24はこれをブレーキペダル6に伝達する。これにより、車両の運転者にはブレーキペダル6を介して適正な踏み応えが与えられ、良好なペダルフィーリング(ブレーキの効き)を得ることができる。この結果、ブレーキペダル6の操作感を向上することができ、ペダルフィーリング(踏み応え)を良好に保つことができる。
また、入力ロッド24は、ブースタピストン23に対して相対移動(所定量前進)したときに、ブースタピストン23に当接してブースタピストン23を前進させることができる構造となっている。この構造により、後述する電動アクチュエータ27やブースタ用ECU33が失陥した場合に、ブレーキペダル6への踏力によりブースタピストン23を前進させてマスタシリンダ11に液圧を発生させることが可能となっている。
電動倍力装置21の電動アクチュエータ27は、ブースタハウジング22の減速機ケース22Aに支持板22Dを介して設けられた電動モータ28と、電動モータ28の回転を減速して減速機ケース22A内の筒状回転体29に伝えるベルト等の減速機構30と、筒状回転体29の回転をブースタピストン23の軸方向変位(進退移動)に変換するボールネジ等の直動機構31とにより構成されている。
ここで、直動機構31は、筒状回転体29の内周側にボールねじを介して軸方向に移動可能に設けられた筒状の直動部材31Aを有し、この直動部材31Aは、ブースタハウジング22の蓋体22Cと筒状回転体29の内周側をブースタピストン23と一体になって軸方向に変位する。そして、ブースタピストン23が戻り位置まで後退したときには、直動部材31Aが蓋体22Cの閉塞端側に当接する(図2参照)。この閉塞端は、直動部材31Aを介してブースタピストン23の戻り位置を規制するストッパとして機能するものである。
ブースタピストン23と入力ロッド24は、それぞれの前端部(軸方向他側の端部)をマスタシリンダ11の第1の液圧室14Aに臨んで配置されている。そして、ブレーキペダル6から入力ロッド24に伝えられる踏力(推力)と電動アクチュエータ27からブースタピストン23に伝えられるブースタ推力とにより、マスタシリンダ11の液圧室14A,14B内にはブレーキ液圧が発生する。即ち、電動倍力装置21は、ブレーキペダル6による入力ロッド24の移動に応じて電動アクチュエータ27を作動させて、ブースタピストン23にブースタ推力を発生させてマスタシリンダ11内に液圧を発生させる。
具体的には、電動倍力装置21のブースタピストン23は、ストロークセンサ7の出力(即ち、図3中に示すペダルストロークの制動指令)に基づいて電動アクチュエータ27(電動モータ28)により進退移動され、マスタシリンダ11内にブレーキ液圧(M/C液圧)を発生させるポンプ機構を構成している。また、ブースタハウジング22の支持ケース22B内には、ブースタピストン23を制動解除方向(図2中の矢示B方向)に常時付勢する戻しばね32が設けられている。ブースタピストン23は、ブレーキ操作の解除(開放)時に電動モータ28が逆向きに回転されると共に、戻しばね32の付勢力により図2に示す初期位置まで矢示B方向に戻されるものである。
電動モータ28は、例えばDCブラシレスモータを用いて構成されている。この電動モータ28には、レゾルバと呼ばれる回転センサ28Aと、モータ電流を検出する電流センサ28B(図3参照)とが設けられている。回転センサ28Aは、電動モータ28のモータ回転位置を検出し、その検出信号をブースタ用ECU33に出力する。ブースタ用ECU33は、モータ回転位置の検出信号により、電動モータ28の回転位置をフィードバック制御する。また、回転センサ28Aは、検出した電動モータ28の回転位置に基づいて車体1に対するブースタピストン23の絶対変位を検出する回転検出手段としての機能を備えている。
さらに、回転センサ28Aはストロークセンサ7と共に、ブースタピストン23と入力ロッド24との相対変位を検出する変位検出手段を構成し、これらの検出信号は、ブースタ用ECU33に送出される。回転検出手段としては、レゾルバ等の回転センサ28Aに限らず、絶対変位(角度)を検出できる回転型のポテンショメータ等により構成してもよい。
なお、減速機構30は、ベルト等に限らず、例えば歯車減速機構等を用いて構成してもよい。また、回転運動を直線運動に変換する直動機構31は、例えばラック−ピニオン機構等で構成することもできる。さらに、減速機構30は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、筒状回転体29にモータ軸を一体に設け、電動モータのステータを筒状回転体29の周囲に配置して、電動モータによって直接に筒状回転体29を回転させる構成としてもよい。
ブースタ用ECU33は、マスタシリンダ制御装置として例えばマイクロコンピュータ等からなり、電動倍力装置21の電動アクチュエータ27を電気的に駆動制御するものである。図3に示すように、ブースタ用ECU33には、フラッシュメモリ、ROM,RAM等のメモリ33Aが設けられ、このメモリ33Aには、例えば電動モータ28の回転位置制御を行うための制御処理プログラム(図示せず)、後述する駐車ブレーキ動作中の制御処理プログラム(図5、図6参照)等が格納されている。
ブースタ用ECU33の入力側は、ブレーキペダル6の操作量または踏力を検出するストロークセンサ7と、電動モータ28の回転センサ28Aおよび電流センサ28Bと、車両データバス8と、信号線9等とに接続されている。
ブースタ用ECU33の出力側は、電動モータ28、車両データバス8および信号線9等に接続されている。そして、ブースタ用ECU33は、ストロークセンサ7や液圧センサ35からの検出信号に従って電動アクチュエータ27によりマスタシリンダ11内に発生させるブレーキ液圧を可変に制御すると共に、電動倍力装置21が正常に動作しているか否か等を判別する機能も有している。
マスタシリンダ11に発生した液圧は、例えば一対のシリンダ側液圧配管34A,34Bを介してESC42に送られる。このESC42は、マスタシリンダ11からの液圧を各車輪側のディスクブレーキ5(L,R),51(L,R)のホイールシリンダに分配して供給する。これにより、車両の各車輪(即ち、左,右の前輪2と左,右の後輪3毎)に制動力が付与される。
液圧センサ35はマスタシリンダ11のブレーキ液圧を検出する。この液圧センサ35は、例えばシリンダ側液圧配管34A内の液圧(即ち、マスタシリンダ11からシリンダ側液圧配管34Aを介してESC42に供給されるブレーキ液圧)を検出する。液圧センサ35は、例えばESC用ECU44に電気的に接続されると共に、液圧センサ35による検出信号は、ESC用ECU44から信号線9を介してブースタ用ECU33にも通信により送られる。
なお、液圧センサ35は、マスタシリンダ11のブレーキ液圧を検出することができればよく、例えばマスタシリンダ11のシリンダ本体12に直接取付けられるようにしてもよい。また、液圧センサ35は、その検出信号をESC用ECU44を介さずに、直接的にブースタ用ECU33に入力されるように構成してもよい。
図3に示すように、ブースタ用ECU33には、車両に搭載された車両データバス8を介して電力充電用の回生協調制御を行う回生用コントローラ36(以下、回生用ECU36という)が接続されている。回生用ECU36は、車両の減速時および制動時等に各車輪の回転による慣性力を利用して、回生用モータ37を駆動制御することにより運動エネルギを電力として回収するものである。回生用ECU36は、車両データバス8を介してブースタ用ECU33とESC用ECU44とに接続され、回生制動制御手段を構成している。
図4に示すように、ブースタ用ECU33は、M/C液圧変換処理部38、偏差演算部39、モータ回転位置変換処理部40およびモータ指令算出処理部41を含んで構成されている。ここで、M/C液圧変換処理部38は、車両運転者の踏込み操作によりストロークセンサ7からペダルストロークが入力されると、このときの操作量(ペダルストローク)に対応する目標液圧としての目標M/C液圧を求める。
M/C液圧変換処理部38から出力されたM/C液圧指令は、液圧センサ35で検出された実際のブレーキ液圧(M/C液圧)に対し、偏差演算部39によって減算され、両者の液圧偏差として算出される。この液圧偏差は、モータ回転位置変換処理部40へ入力される。モータ回転位置変換処理部40は、例えばメモリ33Aに格納されている変換係数に基づいて液圧偏差を位置偏差に変換する。この位置偏差は、ブースタピストン23の目標位置に対する実位置(回転センサ28Aで検出される電動モータ28のモータ回転位置)の偏差として求められる。
モータ回転位置変換処理部40で求められた位置偏差は、モータ指令算出処理部41に入力される。このモータ指令算出処理部41は、位置偏差、回転センサ28Aによるモータ回転位置、モータ回転速度および電流センサ28Bによるモータ電流からモータ駆動電流(モータ動作指令、即ちモータ出力指令)を算出する。このとき、モータ指令算出処理部41は、電動モータ28のモータ回転位置を回転センサ28A、電流センサ28Bからの検出信号によりフィードバック制御するものである。
モータ指令算出処理部41から出力されるモータ駆動電流は、電動倍力装置21の駆動源である電動アクチュエータ27の電動モータ28に供給電力として供給される。電動モータ28の回転駆動によりブースタピストン23がマスタシリンダ11の軸方向に変位すると、これに従ってマスタシリンダ11の液圧室14A,14B内にはブレーキ液圧(M/C液圧)が発生し、この液圧はESC42を介して各ディスクブレーキ5(L,R),51(L,R)に分配して供給され、車輪毎に制動力が発生する。
ESC42は、各ディスクブレーキ5,51とマスタシリンダ11との間に配設されている。ESC42は、マスタシリンダ11とディスクブレーキ5(R,L),51(R,L)とを接続して作動液を流通させる、第1液圧回路43と第2液圧回路43′との2系統の液圧回路を備えている。また、ESC42は、その作動を制御するESC用ECU44を有している。ESC用ECU44は、ESC42の駆動制御をすることにより、第1液圧回路43および第2液圧回路43′から各ディスクブレーキ5,51にブレーキ液を供給することで、各ディスクブレーキ5,51のブレーキ液圧を増圧、減圧または保持する制御を行う。これにより、例えば倍力制御、制動力分配制御、ブレーキアシスト制御、アンチロックブレーキ制御(ABS)、トラクション制御、横滑り防止を含む車両安定化制御、坂道発進補助制御等のブレーキ制御が実行される。
この場合、ESC用ECU44の入力側は、液圧センサ35、車両データバス8および信号線9等に接続されている。一方、ESC用ECU44の出力側は、ESC42内の各制御弁および電動モータ(いずれも図示せず)、車両データバス8および信号線9等に接続されている。
そして、ESC用ECU44は、ブースタ用ECU33と協働して作動液供給ユニット制御装置を構成し、ブレーキペダル6の操作を受けてディスクブレーキ5,51へ供給する作動液の液圧を設定し、ディスクブレーキ5,51の液圧が設定液圧となるように電動倍力装置21の電動アクチュエータ27を制御する。
勾配センサ45は、車体1に設けられ、車両が停止している路面の勾配を検出する(車両停車状態における路面の傾斜を検出する)傾斜検出手段として構成されている。この勾配センサ45は、傾斜センサや加速度センサ、ジャイロセンサ等により構成されている。勾配センサ45は、検出した車両下の路面の傾斜を、ESC用ECU44に向けて出力する。これにより、ESC用ECU44は、路面の傾斜に応じてESC42の作動を制御し、各車輪2,3に付与する制動力を調整することができる。
次に、ディスクブレーキ51およびディスクブレーキ51に設けられたPKB61の具体的な構成について、図2ないし図4を参照して説明する。
図3に示すように、PKB61が設けられるディスクブレーキ51は、シリンダユニットを構成している。このディスクブレーキ51は、ホイールシリンダを構成するキャリパ52およびホイールシリンダピストン53(以下、W/Cピストン53という)が配設されている。W/Cピストン53は、ディスクロータ4にブレーキパッド54を押圧する押圧部材を構成し、キャリパ52のシリンダ52Aの内周に摺動可能に設けられている。キャリパ52は、ブレーキペダル6の操作に基づくホイールシリンダに供給される液圧(M/C液圧)によりW/Cピストン53を進出させ、摩擦材(制動部材)としてのブレーキパッド54をディスクロータ4に押圧(推進)する。これにより、ディスクブレーキ51は、後輪3に制動力を付与する。
PKB61は、直動部材62、直動機構63および電動モータ64を備える。直動部材62は、直動機構63を介して電動モータ64に連結され、W/Cピストン53内に摺動可能に設けられる。直動機構63は、電動モータ64の回転を直動部材62の進退移動に変換する。これにより、直動部材62は、電動モータ64の回転駆動によってW/Cピストン53内で軸方向に前進または後退する。
駐車ブレーキのアプライ時には、電動モータ64の回転運動が直動部材62の並進運動へと変換されて直動部材62が前進し、W/Cピストン53を前進方向に押し出すことで、ディスクロータ4に一対のブレーキパッド54が押し付けられる。これにより、PKB61は、駐車ブレーキスイッチ66の操作に応じて、W/Cピストン53を電動モータ64によって移動させてW/Cピストン53を制動状態に保持する。一方、駐車ブレーキのリリース時には、電動モータ64の回転運動が直動部材62の並進運動へと変換されて直動部材62が後退し、直動部材62による押圧力を解除する。
PKB用ECU65は、例えばマイクロコンピュータ等からなっており、シリンダユニット制御装置を構成している。このPKB用ECU65は、駐車ブレーキスイッチ66の操作に応じてPKB61に電流を供給してディスクブレーキ51の作動を制御する。具体的には、PKB用ECU65は、PKB61の電動モータ64を電気的に駆動制御して、ディスクブレーキ51を作動させる。図3に示すように、PKB用ECU65は、メモリ(図示せず)に格納された制御プログラムに従って動作し、PKB61の駆動を制御する。
PKB用ECU65の入力側は、駐車ブレーキスイッチ66および車両データバス8等に接続されている。PKB用ECU65の出力側は、電動モータ64および車両データバス8等に接続されている。そして、PKB用ECU65は、駐車ブレーキスイッチ66からの信号を車両データバス8に出力すると共に、駐車ブレーキスイッチ66からの信号に従って電動モータ64を駆動し、ディスクブレーキ51を制動状態または制動解除状態に切り換える。
図4に示すように、PKB用ECU65は、モータ電流指令作成処理部67およびモータ指令算出処理部68を含んで構成されている。ここで、モータ電流指令作成処理部67は、駐車ブレーキスイッチ66からの入力(SW入力)であるアプライ指令とリリース指令とに応じて、電動モータ64を駆動するためのモータ電流指令を求める。モータ指令算出処理部68は、モータ電流指令作成処理部67からのモータ電流指令と電動モータ64に流れるモータ電流とに基づいて、モータ動作指令としての駆動電流を算出する。このとき、モータ指令算出処理部68は、例えばモータ電流指令とモータ電流との電流偏差に基づいて、駆動電流をフィードバック制御するものである。
モータ指令算出処理部68によって出力された駆動電流は、電動モータ64に入力される。これにより、アプライ時には、電動モータ64によって直動部材62を前進させて、W/Cピストン53に推力を発生させ、ブレーキパッド54をディスクロータ4に押付けて、制動力を発生させる。一方、リリース時には、電動モータ64によって直動部材62を後退させてW/Cピストン53の推力と制動力を解除する。
次に、駐車ブレーキ動作中の電動倍力装置21の制御処理について、図5および図6を参照して説明する。まず、図5を用いて、ブースタ用ECU33が、液圧維持制御のフラグのON/OFFを判定する処理について説明する。なお、図5の処理は、所定時間毎に(所定のサンプリング周波数で)繰り返し実行される。
図5の処理動作がスタートすると、ステップ1では、ブースタ用ECU33は、ブレーキペダル6の操作に基づくストロークセンサ7の出力に基づいて、車両で実現したい制動力としての目標液圧を算出する。即ち、ブースタ用ECU33のM/C液圧変換処理部38によって、ストロークセンサ7から入力されるペダルストロークに応じて、M/C液圧指令を算出する。
そして、ステップ2では、車両が停止中か否かを判定する。この判定は、例えば車輪速センサ(図示せず)の検出信号に基づいて行うことができる。即ち、車輪速度がゼロとなった場合、または車輪速度がゼロとなり一定時間経過した場合に、車両が停止中と判定する。ステップ2で「NO」と判定し、車両が停止中でない(走行中である)場合は、ステップ6に進み液圧維持制御フラグをOFFにする。一方、ステップ2で「YES」と判定し、車両が停止中である場合は、ステップ3に進む。
ステップ3では、車両が停止している路面の勾配Gが所定の閾値Gth以下か否かを判定する。この場合、ブースタ用ECU33は、車両データバス8を介してESC用ECU44から、勾配センサ45で検出した値を取得する。このとき、勾配Gの閾値Gthは、車両がずり下がる可能性がある値に設定されている。ステップ3で「NO」と判定し勾配Gが閾値Gthよりも大きい場合は、ステップ4に進む。一方、ステップ3で「YES」と判定し勾配Gが閾値Gthよりも小さい場合は、ステップ5に進む。
ステップ4では、勾配Gが閾値Gthよりも大きく車両が傾斜地に停止しているので、液圧維持制御フラグをONにする。これにより、ブースタ用ECU33は、電動倍力装置の液圧維持制御処理において、液圧維持制御フラグがONされたことを条件に、液圧維持制御を実行する(図7参照)。この場合、勾配Gの閾値Gthは、例えば、車両が停車した状態で車両にずり下がりが生じるか否かを基準に設定されている。このため、閾値Gthは、例えば、各車両の車重、各種の摩擦抵抗等に基づいて、車両の停止状態が保持可能な勾配の値に設定されている。
一方、ステップ5では、勾配Gが閾値Gthよりも小さく車両が平坦地に停止しているので、PKB動作中か否かを判定する。即ち、ブースタ用ECU33は、車両データバス8からブースタ用ECU33に入力される駐車ブレーキスイッチ66の信号に基づいて、PKB61が動作中(アプライ動作時)か否かを判定する。ステップ5で「NO」と判定したときには、PKB61の非動作時(停止時)であるから、ステップ4に移行して、液圧維持制御フラグをONにする。
一方、ステップ5で「YES」と判定したときには、PKB61の動作時であるから、ステップ6に移行する。ステップ6では、ブースタ用ECU33は、液圧維持制御フラグをOFFにする。これにより、ブースタ用ECU33は、車両が停車している路面の勾配G(傾斜値)が閾値Gth以下であるので、液圧維持制御を禁止する。即ち、ブースタ用ECU33は、電動倍力装置21の液圧維持制御処理において、液圧維持制御フラグがOFFにされている場合は、液圧維持制御は実行しない(図7参照)。
次に、図6を用いて、ブースタ用ECU33が、液圧維持制御を実行するか否かを判定する処理について説明する。なお、図6の処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
図6の処理動作がスタートすると、ステップ11では、ブースタ用ECU33は、上述したステップ1と同様に、ブレーキペダル6の操作によるストロークセンサ7の出力に基づいて、車両で実現したい制動力としての目標液圧を算出する。
そして、ステップ12では、上述したステップ5と同様に、PKB動作中か否かを判定する。ステップ12で「NO」と判定したときには、PKB61の非動作時(停止時)であるから、ステップ13に移行して、液圧維持制御をOFFにする。
一方、ステップ12で「YES」と判定したときには、PKB61の動作時であるから、ステップ14に移行する。
ステップ14では、ブースタ用ECU33は、液圧維持制御フラグ判定処理(図5参照)に基づいて、液圧維持制御フラグがONか否かを判定する。ステップ14で「NO」と判定し、液圧維持制御フラグがONでない場合(液圧維持制御フラグがOFFの場合)は、再度ステップ11にリターンする。
ステップ14で「YES」と判定し、液圧維持制御フラグがONである場合は、ステップ15に移行し、液圧維持制御を実行する。
ここで、液圧維持制御とは、ブレーキペダル6の操作によりディスクブレーキ5,51へ液圧を付与している状態で、PKB用ECU65によってPKB61が作動するときに(ディスクブレーキ51が作動するときに)、ESC42とホイールシリンダ間の液圧回路43,43′内の液量を一定にして液圧が保持されるように電動アクチュエータ27を制御して、制動力を維持する制御(制動力維持制御)のことをいう。
具体的には、PKB61のアプライ動作時には、PKB61のアプライ動作によってW/Cピストン53の体積増加が生じ、これに伴ってマスタシリンダ11の液圧(M/C液圧)が減少する。このため、ブースタ用ECU33は、W/Cピストン53の体積増加分だけ、電動アクチュエータ27によりブースタピストン23を進めた状態で制御する。
これにより、PKB61の動作に基づくW/Cピストン53の体積変化の影響を、マスタシリンダ11の第1の液圧室14Aの体積変化によって相殺することができる。この結果、ブレーキペダル6の操作中にPKB61を動作させたときでも、マスタシリンダ11内の液圧(M/C液圧)を維持して、変動を抑制することができる。
本実施の形態によるブレーキ制御システムは、上述のような構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、車両の運転者がブレーキペダル6を踏込み操作すると、これにより入力ロッド24が矢示A方向に押込まれると共に、電動倍力装置21の電動アクチュエータ27がブースタ用ECU33により作動制御される。即ち、ブースタ用ECU33は、ストロークセンサ7からの検出信号により電動モータ28に起動指令を出力して電動モータ28を回転駆動し、その回転が減速機構30を介して筒状回転体29に伝えられると共に、筒状回転体29の回転は、直動機構31によりブースタピストン23の軸方向変位に変換される。
これにより、電動倍力装置21のブースタピストン23は、マスタシリンダ11のシリンダ本体12内に向けて入力ロッド24とほぼ一体的に前進し、ブレーキペダル6から入力ロッド24に付与される踏力(推力)と電動アクチュエータ27からブースタピストン23に付与されるブースタ推力とに応じたブレーキ液圧がマスタシリンダ11の第1,第2の液圧室14A,14B内に発生する。
また、ブースタ用ECU33は、液圧センサ35からの検出信号を信号線9から受取ることによりマスタシリンダ11に発生した液圧を監視し、電動倍力装置21の電動アクチュエータ27(電動モータ28の回転)をフィードバック制御する。これにより、マスタシリンダ11の第1,第2の液圧室14A,14B内に発生するブレーキ液圧を、ブレーキペダル6の踏込み操作量に基づいて可変に制御することができる。また、ブースタ用ECU33は、ストロークセンサ7と液圧センサ35との検出値に従って電動倍力装置21が正常に動作しているか否かを判別することができる。
一方、ブレーキペダル6に連結された入力ロッド24は、第1の液圧室14A内の圧力を受圧し、これをブレーキ反力としてブレーキペダル6へと伝える。この結果、車両の運転者には入力ロッド24を介して踏応えが与えられるようになり、これによって、ブレーキペダル6の操作感を向上でき、ペダルフィーリングを良好に保つことができる。
このとき、ESC42は、電動倍力装置21によりマスタシリンダ11(第1,第2の液圧室14A,14B)内に発生したブレーキ液圧を、シリンダ側液圧配管34A,34BからESC42内の液圧回路43,43′を介してディスクブレーキ5(L,R),51(L,R)へと可変に制御しつつ、車輪毎のホイールシリンダ圧として分配して供給する。これにより、車両の車輪(前輪2(FL,FR)および後輪3(RL,RR))毎にディスクブレーキ5(L,R),51(L,R)によって適正な制動力が付与される。
また、駐車ブレーキスイッチ66が駐車ブレーキのアプライ指令を出力すると、PKB61は、電動モータ64によって直動部材62を前進させる。これにより、W/Cピストン53に推力を発生させ、ブレーキパッド54をディスクロータ4に押付けて、駐車制動力を発生させる。
一方、駐車ブレーキスイッチ66が駐車ブレーキのリリース指令を出力すると、PKB61は、電動モータ64によって直動部材62を後退させてW/Cピストン53の推力と駐車制動力を解除する。
ここで、ブレーキペダル6の操作中にPKB61を動作させると、W/Cピストン53の体積が変化する。このため、液圧回路43,43′内の液圧が変化してM/C液圧が変化する傾向がある。これに対し、本実施の形態では、電動倍力装置21の駆動を制御して、W/Cピストン53の体積変化を相殺するように、マスタシリンダ11の第1の液圧室14Aの体積を変化させる。
このような本実施の形態による電動倍力装置21の制御処理について、図7を参照して説明する。なお、図7は、時刻t1において、ドライバがブレーキペダル6をランプ状に踏み込んだ後に、一定のペダルストロークで保持する状態を想定している。また、図7において、実線は、路面の勾配Gが閾値Gth以上である傾斜地に車両が停車して、ブースタ用ECU33が液圧維持制御処理を実行している場合を示している。一方、破線は、路面の勾配Gが閾値Gth以下である平坦地に車両が停車して、ブースタ用ECU33が液圧維持制御処理を禁止している場合を示している。
図7は、ブレーキペダル6を操作した状態でPKB61のアプライ動作を行った場合を示している。図7中の破線で示すように、時刻t2で車両が平坦地に停車している場合にPKB61のアプライ動作を行うと、W/Cピストン53の体積増加が生じる。このとき、平坦地では車両がずり下がる可能性が無いので、ブースタ用ECU33は液圧維持制御フラグをOFFにして、液圧維持制御を禁止する処理を行う。そして、ブースタ用ECU33は、液圧維持制御を禁止した時刻t2において、電動アクチュエータ27を用いて積極的にブースタピストン23を矢示B方向に戻して、マスタシリンダ11内の液圧を減少し始める。これにより、時刻t2でPKB61のアプライ動作によるW/Cピストン53の体積増加およびブースタピストン23の移動に伴って、W/C液圧およびM/C液圧が低下する。
この場合、ブースタ用ECU33は、PKB61のピストンストロークが増加するのに合わせて、ブースタピストン23を矢示B方向に戻す制御を行う。即ち、ブースタ用ECU33は、PKB61にて発生している制動力をPKB61にて消費している電流値から推定する。そして、ブースタ用ECU33は、電動倍力装置21にて発生している制動力とPKB61にて発生している制動力との合計が常に一定となるように、マスタシリンダ11の液圧を減少させる。なお、この場合、ブースタ用ECU33は、PKB61が制動力を発生させる作動時間に合わせて、マスタシリンダ11の液圧を減少させることによって、車両が停止する際の制動力を維持させる構成としてもよい。
これに対し、図7の実線で示すように、時刻t2で車両が傾斜地に停車している場合にPKB61のアプライ動作を行うと、ブースタ用ECU33は液圧維持制御処理を行う。即ち、傾斜地では車両がずり下がる可能性があるので、ブースタ用ECU33は、液圧維持制御フラグをONにする。そして、電動倍力装置21は、時刻t2から時刻t3までの間にPKB61のアプライ動作によるW/Cピストン53の体積増加に伴い、第1の液圧室14Aが縮小するようにブースタピストン23を動作させる。これにより、W/Cピストン53の体積増加を第1の液圧室14Aの体積減少によって補償し、M/C液圧減少の影響を相殺することができる。
その後、時刻t3でPKB用ECU65の作動が完了して、PKB61にて充分な制動力が得られた場合は、ブースタ用ECU33は、電動アクチュエータ27を用いて積極的にブースタピストン23を矢示B方向に戻して、マスタシリンダ11内の液圧を減少し始める。これにより、時刻t3で、ブースタピストン23の移動に伴って、W/C液圧およびM/C液圧が低下する。
かくして、第1の実施の形態では、ブースタ用ECU33は、車両が停車している路面の傾斜値が閾値以上である場合に、液圧維持制御を実行して、車両が停車している路面の傾斜値が閾値以下である場合に、液圧維持制御を禁止する構成としている。
具体的には、ブースタ用ECU33は、車両停車時の路面が傾斜地である場合は、液圧維持制御を実行する。この場合、ブースタ用ECU33は、ディスクブレーキ51にM/C液圧が付与されている状態で、PKB用ECU65によってPKB61が作動するときに、PKB61への電流値(PKB61の発生推力)に応じてESC42とホイールシリンダ間の液圧回路43,43′内の液量が保持されるように電動倍力装置21の電動アクチュエータ27を制御する。即ち、ブースタ用ECU33は、PKB61の動作に伴うW/Cピストン53の体積変化を相殺するように、ブースタピストン23を制御する。この結果、PKB61の作動中でも液圧維持制御によってW/C液圧が保持されるから、傾斜地における車両のずり下がりを防止することができる。
一方、ブースタ用ECU33は、車両停車時の路面が平坦地である場合は、PKB61が作動するときに、液圧維持制御を禁止する。この場合、ブースタ用ECU33は、ディスクブレーキ51にM/C液圧が付与されている状態で、PKB用ECU65によってPKB61が作動するときに、PKB61への電流値(PKB61の発生推力)に応じてブースタピストン23を矢示B方向に戻す制御を行う。即ち、ブースタ用ECU33は、電動倍力装置21の制動力とPKB61の制動力との合計が常に一定となるように、マスタシリンダ11の液圧を減少させている。
これにより、車両が平坦地に停車している場合は、所定の制動力を維持しながら液圧維持制御を禁止しているので、車両の停止状態を保持することができる。このとき、電動アクチュエータ27は、M/C液圧を加圧する方向に急作動することがないので、電動アクチュエータ27の作動音を抑制することができる。また、液圧維持制御を実行しないので、液圧維持制御における消費電力を抑制して電動倍力装置21の発熱を抑えることができる。
また、車両が傾斜地に停車している場合は、ブースタ用ECU33は、液圧維持制御においてPKB用ECU65の作動が完了したときに、マスタシリンダ11内の液圧を減少し始める構成としている。これにより、PKB61により充分な制動力が得られた後に、ブースタ用ECU33は、電動倍力装置21による制動力を低下させるので、車両がずり下がることを抑制しつつ、電動アクチュエータ27の消費電力を低減することができる。
一方、車両が平坦地に停車している場合は、ブースタ用ECU33は、PKB61が作動して液圧維持制御が禁止されたときに、マスタシリンダ11内の液圧を減少し始める構成としている。これにより、平坦地のように液圧維持制御が必要ない場合は、PKB61の作動に合わせてM/C液圧を低下させることができる。この結果、液圧維持制御を実行したときに比べて、電動アクチュエータ27の消費電力を抑制することができる。
なお、前記実施の形態では、ブースタ用ECU33は、平坦地において液圧維持制御を禁止した場合に、電動アクチュエータ27を用いて積極的にブースタピストン23を矢示B方向に戻して、マスタシリンダ11内の液圧を減少し始める構成とした(図7参照)。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ブースタ用ECUは、図8に示す変形例のような制御を行ってもよい。即ち、ブースタ用ECUは、平坦地において液圧維持制御を禁止した場合に、ブースタピストンを矢示B方向に戻さず現在位置に固定して、液圧維持制御を行わない構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、ブースタ用ECU33は、液圧維持制御においてPKB用ECU65の作動が完了したときに、または、液圧維持制御が禁止されたときに、電動アクチュエータ27を用いて積極的にブースタピストン23を戻して、マスタシリンダ11内の液圧を減少し始める構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばブースタ用ECUは、マスタシリンダ内の液圧を減少し始める場合は、電動倍力装置の電動モータを非通電状態として、戻しばねのばね力によりブースタピストンを後退させて、マスタシリンダ内の液圧を減少する構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、勾配センサ45は、車体1に設けられ、検出した車両下の路面の傾斜を、ESC用ECU44に向けて出力する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば車体に加速度センサを設けて、ブースタ用ECUは、加速度センサの検出値を用いて路面の勾配を推定する構成としてもよい。即ち、ブースタ用ECUは、車両で実現したい目標制動力(目標減速度)と実際に加速度センサで検出する値とを比較して、その差分に基づいて路面の勾配を推定する構成としてもよい。また、車両が停車している際に発生している制動力から路面の勾配を推定する構成としてもよい。また、勾配センサで検出した値をブースタ用ECUに向けて出力する構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、ブースタ用ECU33が、液圧維持制御フラグ判定処理のステップ1および液圧維持制御判定処理のステップ11において、ペダルストロークに基づいて目標液圧を算出する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばミリ波レーダまたはステレオカメラ等の先行者検出手段から衝突回避等を目的に入力される目標減速度等に基づいて、目標液圧を算出する構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、ブースタ用ECU33は、PKB61のアプライ動作時に、液圧維持制御を行い、W/Cピストン53の体積変化を補償する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばブースタ用ECUは、PKBのリリース動作時とアプライ動作時との両方で、液圧維持制御を行い、W/Cピストンの体積変化を補償する構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、作動液供給ユニットは、電動倍力装置21とESC42の両方を備える構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば作動液供給ユニットからESC42を省く構成としてもよい。即ち、電動倍力装置21によってW/Cピストン53の体積変化を補償する場合には、ESC42を省いて、マスタシリンダ11の液圧室14A,14Bを直接的にディスクブレーキ5,51のホイールシリンダに接続してもよい。この場合、液圧回路は、例えばマスタシリンダ11とディスクブレーキ5,51のホイールシリンダとの間を接続するシリンダ側液圧配管34A,34B等によって構成される。
また、前記実施の形態では、左,右の後輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ付のディスクブレーキ51とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、左,右の前輪側ブレーキを電動駐車ブレーキ付のディスクブレーキにより構成してもよい。さらには、4輪全ての車輪のブレーキを電動駐車ブレーキ付のディスクブレーキにより構成してもよい。
また、前記実施の形態では、常用ブレーキとしての液圧機構と駐車ブレーキとしての電動機構との2つの機構に基づく押圧力が加わる、電動駐車ブレーキ付の液圧式ディスクブレーキ51を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、常用ブレーキとしての液圧機構と駐車ブレーキとしての電動機構との2つの機構に基づく押圧力がブレーキパッドに加わるブレーキ装置であれば、広く適用することができる。
例えば、ブレーキ装置は、ディスクとブレーキパッドとの摩擦係合に基づいて制動力が付与されるディスクブレーキ式のブレーキ装置に限らず、ドラムとブレーキシューとの摩擦係合に基づいて制動力が付与されるドラムブレーキ式のブレーキ装置として構成してもよい。また、例えばブレーキ装置の駐車ブレーキ機構に取付けたケーブルを電動機構で引っ張ることにより駐車ブレーキを作動させるブレーキ装置として構成してもよい。
さらに、制動操作子は、ブレーキペダル6に限らず、例えばブレーキレバーでもよい。また、停車保持操作子は、駐車ブレーキスイッチ66に限らず、例えばペダルやレバーによって構成してもよい。
次に、前記実施の形態に含まれる発明について記載する。本発明によれば、マスタシリンダ制御装置は、液圧維持制御においてシリンダユニット制御装置の作動が完了したとき、または、液圧維持制御が禁止されたときに、マスタシリンダ内の液圧を減少し始める構成としている。これにより、車両がずり下がることを抑制できるとともに、消費電力を抑制することができる。
以上説明した実施形態に基づくブレーキ制御装置およびブレーキ制御システムとして、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
ブレーキ制御装置の第1の態様としては、車両に設けられるブレーキペダルの操作により進退移動する入力部材と、前記入力部材に対して移動可能に配置されたピストンと、前記ピストンを進退移動させる電動アクチュエータと、前記ブレーキペダルによる前記入力部材の移動に応じて前記電動アクチュエータを作動させて前記ピストンに推力を発生させてマスタシリンダ内に液圧を発生させるマスタシリンダ制御装置と、を備えるブレーキ制御装置において、前記マスタシリンダ制御装置は、制動部材を被制動部材に押圧する押圧部材が配設されるシリンダユニットの作動を制御するシリンダユニット制御装置によって、該シリンダユニットが作動するときに、前記車両が停車している路面の傾斜値が所定の閾値よりも大きい場合、前記マスタシリンダ内の液圧を維持する液圧維持制御を行うようになっており、前記車両が停車している路面の傾斜値が前記閾値以下である場合に、前記液圧維持制御を禁止する。
第2の態様としては、第1の態様において、前記マスタシリンダ制御装置は、前記液圧維持制御において前記シリンダユニット制御装置の作動が完了したとき、または、前記液圧維持制御が禁止されたときに、前記マスタシリンダ内の液圧を減少し始める。
また、ブレーキ制御システムの態様としては、車両の車輪と共に回転する回転部材に摩擦材を押圧する押圧部材が配設されるシリンダユニットと、電動アクチュエータによって、前記シリンダユニットへ作動液を供給する作動液供給ユニットと、前記作動液供給ユニットと前記シリンダユニットとを接続し作動液を流通させる液圧回路と、前記シリンダユニットの前記押圧部材を電動モータにより移動させて前記押圧部材を制動状態に保持する電動機構と、前記電動機構に電流を供給して前記シリンダユニットを制御するシリンダユニット制御装置と、前記シリンダユニットの液圧が所定の液圧となるように前記電動アクチュエータを制御する作動液供給ユニット制御装置と、を有し、前記作動液供給ユニット制御装置は、前記シリンダユニットへ液圧を付与している状態で、前記シリンダユニット制御装置によって前記電動機構が作動するときで、車両停車状態における路面の傾斜を検出する傾斜検出手段による路面の傾斜値が所定閾値より大きいときに、前記液圧回路内の液量が一定となるように前記電動アクチュエータを制御して、制動力を維持する制動力維持制御を行うようになっており、前記傾斜検出手段による路面の傾斜値が閾値以下のときは、前記制動力維持制御を禁止する。