JP6688417B2 - はんだ接合方法 - Google Patents

Description

本発明は、Ｓｎ−Ｚｎ系はんだにおいて、Ｃｕ合金端子をＡｇ電極に接合する際の安定した強固な接合界面を得ることができる改良技術に係り、特にガラス表面に定着させたＡｇ電極にＣｕ合金端子部品を接合する接合用はんだに好適なはんだ合金、及びその接合物に関するものである。

近年、環境面への配慮からＰｂを含有しないはんだ合金が主流であり、その一種として、Ｓｎ−Ｚｎ系のはんだ合金が知られている。

ところで、はんだ合金の用途は、金属と金属を比較的低融点で接合するものであるが、特に接合する金属がはんだ合金には含まれない組成である場合には、接合する金属がはんだ付け作業中に溶融はんだに溶出するという、いわゆる食われ現象が生じる。接合対象がＣｕである場合は銅食われ、Ａｇである場合は銀食われが生じ、特に接合界面には溶出した金属とはんだ合金組成の一部とが金属間化合物を形成し、凝固に伴って固着する。はんだ付けにおいては、はんだ付け対象物から溶出した金属と、はんだ合金が含有する金属との間に金属間化合物が発生することは不可避なので、それ自体に問題はない。しかしながら、発生した金属間化合物が凝固する際の粒径が比較的大きい場合には、接合界面に経時的に劣化が進行する要因となる。即ち、複数種類の金属によって形成される金属間化合物においては、金属原子の拡散速度の違いによってカーケンダルボイドが出現し、これが外部応力やヒートサイクルなどの外的要因によって経時的にクラックに発展するおそれがあり、最終的には継手界面が破断する可能性がある。

金属間化合物の粒径が大きい場合には、特に金属原子の拡散速度の違いが大きく影響し、カーケンダルボイドが発生する確率が高くなると考えられる。従って、Ｓｎ−Ｚｎ系はんだを選択する場合であっても、接合物によって接合界面の金属間化合物の凝固粒径はできるだけ小さいことが好ましい。

特開２０００−１５４７８号公報 特開２０００−２８００６６号公報 特開２０１１−１５６５５８号公報 米国特許第６９３６２１９号明細書

特許文献１は、Ｓｎ−Ｚｎ系に対して少量の添加成分を含有する組成であって、添加成分としてＭｎが例示されている。そして、これらの組成によって、ソルダーペーストに調製した場合のＳｎ−Ｚｎはんだの安定性の向上や、接合後のはんだの経時変化を抑制するものであると記載されている。しかし、この公知技術は接合物の組成を特定しておらず、はんだ組成と接合物の組成間で金属間化合物が生じることを考慮していない。

特許文献２には、同様にＳｎ−Ｚｎを主成分として、マンガンが酸素と強く反応することに着目し、脱酸剤の一種としてＭｎを添加する技術が開示されている。そして、これによってガラス上の金属電極に対する高いはんだ接合特性を見出したことが記載されている。

特許文献３には０．０１〜１０重量％Ｚｎを、０．１重量％以下のＭｎと、残部がＳｎで構成されるはんだ合金が記載されている。また従来の電子部品とプリント基板のはんだ接合部の材質であるＣｕやＮｉ等の金属材質に加えて、ガラス上の金属電極に対する高いはんだ接合特性が開示されているが、この公知技術では、主にAlとのはんだ接合性を想定している。

特許文献４には、０．００１〜０．９重量％のＭｎを含有するＳｎ−Ｚｎ合金をはんだ合金として利用することが開示されている。この公知技術は、他の公知技術と同様にはんだ組成と接合物の組成間で生じる金属間化合物については、考慮していない。

本発明は、Ｓｎ−Ｚｎ系はんだ組成を用いて、Ａｇ接合物に継手を接合することを前提とし、はんだ組成中のＺｎと接合物から溶出するＡｇ間でＡｇＺｎという金属間化合物が発生し、接合界面の一部を構成することに着目し、この金属間化合物の粒径を凝固時に積極的に微小とすることによって、接合強度の高いＡｇ電極接合物を得るものである。

なお、従来では自動車の窓ガラス、特に後部ガラスに定着されたＡｇ接合物に対して端子部品を接合するためには、錫鉛系のはんだや、錫インジウム系のはんだを用いていたが、錫鉛系のように鉛を含有するはんだは最近では極力使用しない方向である。また、錫インジウム系の場合にははんだ合金の融点が低く、経時的に合金組成が成長するため、信頼性を保証しにくい。さらに、機械的強度が低いこと、及びインジウムが高価であることなどが問題であった。

本発明は上記目的を達成するために、Ｚｎ２〜９重量％、Ｍｎ０．０００１〜０．１重量％、残部Ｓｎからなるはんだ合金で少なくとも表面層がＡｇである接合物を接合するはんだ合金を用いることとした。接合物の表面層に存在するＡｇは、はんだ付け中に食われによってはんだ中に溶け込み、はんだ組成に含まれるＺｎと化合してＡｇＺｎ金属間化合物を生成する。結果的に、ＡｇＺｎ金属間化合物は接合物とはんだの界面を構成し、Ａｇのこれ以上の溶出を抑制するバリア層としての機能を発揮する。なお、ＳｎとＺｎは、二元においてＳｎ９１重量％で共晶である。Ｚｎの含有量が１重量％では想定を超えた銀食われが発生するが、２重量％を含有させれば、期待する銀食われの抑制効果を最低限で確保することができる。これを考慮してＺｎの下限値を２重量％とした。一方、Ｚｎはあまり多量に含有させれば腐食が進むので、上限を９重量％とした。なお、ＳｎとＺｎの共晶点における融点が１９８．５℃であるが、本発明では工業上の見地からも共晶温度ほどの低融点である必要がないので、上限値の設定について共晶を重視したものではない。むしろ、本発明の趣旨として、銀食われを抑制することに着目した結果として、Ｚｎの上限値が共晶点である９重量％に設定された。

発明者らは、微量添加されるＭｎが接合界面に存在することは確認しなかったが、溶融はんだ中に拡散したＭｎがＡｇＺｎ金属間化合物の成長過程においてＡｇとＺｎの拡散速度の違いに何らかの影響を与え、凝固過程においてＡｇＺn金属間化合物の成長を抑え、結晶粒径が粗大化することを阻害する機能を有すると考え、合金中に微量添加した。そして、含有量については、ＭｎはＳｎとも、Ｚｎとも少なくともそれぞれ設定した配合量の範囲では共晶を構成しないが、０．０１重量％を超えると徐々に添加効果が低くなるので、その１０倍の含有量を上限とした。下限値については、Ｍｎが微量添加されていてもＡｇＺｎ金属間化合物の粒径を抑制する効果を発揮することが確認されているが、工業的に適正に含有させることができる範囲として、０．０００１重量％より低い量は技術的に困難であるため、これを下限値とした。

そして、上述した組成のはんだ合金を用いて接合物を得るのであるが、この場合、接合物の表面層からＡｇが析出し、はんだ合金中のＺｎと化合してＡｇＺｎ金属間化合物を形成する。ここで、Ｍｎを溶融はんだ中に適量拡散させることによって、ＡｇＺｎ金属間化合物の粒径が５μｍ以下である接合界面を得ることができるものである。

さらに、接合界面に存在するＡｇＺn金属間化合物の粒径を、好ましい５μｍ以下にするために、同じく上述した組成のはんだ合金を用いて２つの接合物の接合面双方に予めはんだめっきを施し、前記はんだめっき同士を接触させながらはんだめっきを加熱溶融して凝固させるという、いわゆる予備はんだを施す方法を用いた。予備はんだを施さない場合には、Ｃｕ合金端子、Ａｇ電極、および本発明のはんだ合金という３種類の組成が異なる材料を接合することになるが、これらを一度の手順で接合するには組成の適合性と、形状の適合性を同時に満足させる条件が必要になる。本発明における予備はんだでは、Ｃｕ合金端子にはんだ合金を、またＡｇ電極にはんだ合金を予め表面に付与しておくことになり、結果的にＣｕ合金端子をＡｇ電極に接合する場合には同一組成のはんだ合金同士を溶融接合することになり、より強固な接合物を得ることができる。さらに、予備はんだの時点ではＡｇ電極に対する予備はんだの接合温度はＣｕ合金端子に予備はんだを付与する温度よりも低い温度で可能であるから、Ａｇ電極とはんだ合金には過度の熱エネルギーが与えられることなく、ＡｇＺｎ金属間化合物の粒径の粗大化を防止することが期待できる。さらにまた、Ｃｕ合金端子と、Ａｇ電極のそれぞれに予備はんだを施すので、Ａｇ電極と予備はんだの界面にはＡｇＺｎ金属間化合物が生成され、Ｃｕ合金端子と予備はんだの界面にはＣｕＺｎ金属間化合物が生成されることになり、結果的に予備はんだの組成は母材であるＳｎリッチに移行することになる。つまり、双方の予備はんだの表面はＺｎが減少しているので、Ｓｎの融点により近い温度ではんだ付けを行うことが可能である。

さらに、予めはんだめっきを施した接合物の接合に際しては、加熱温度ははんだ合金が溶融する２３０℃以上であれば良く、溶融するはんだ合金の酸化等不具合がでない温度域、例えば３００℃以下であれば構わない。ただし、Ｚｎの含有量２〜９重量％と微量のＭｎが添加された本発明の三元合金は、２重量％Ｚｎの場合であっても最高融点が２３０℃程度であるので、これを確実に溶融させて安定した接合界面を得るためには、２０℃程度の過熱を必要とし、２５０℃の加熱温度は更に好ましい。しかし、上記の加熱温度は、厳格な意味での設定温度ではなく、あくまでも使用するはんだ合金の融点を考慮したものである。

本発明では、Ｓｎに対してＺｎを２〜９重量％含有させ、さらにＭｎ０．０００１〜０．１重量％を微量添加したはんだ合金を採用することによって、Ｍｎが溶融はんだ中に拡散され、接合対象物から溶出するＡｇとＺｎが金属間化合物を生成するに際して結晶粒径を５μｍ以下とすることができた。これによって、カーケンダルボイドの発生を抑制し、このカーケンダルボイドがクラックに発展することを防止することができた。従って、本発明のはんだ合金を用いた接合物は、接合物表面から過度のＡｇの溶出を防止することができると共に、接合信頼性の高い組成とすることができた。

さらに、本発明では、上記はんだ合金を用いて接合物を得るに際して、２つの接合物の接合面双方に予め同一組成のはんだめっきを施し、前記はんだめっき同士を接触させながらはんだめっきを加熱溶融して凝固させたはんだ接合物を製造することとしたので、接合界面中にボイドが発生することを効果的に抑制することができた。予備はんだをＣｕ合金端子、およびＡｇ電極にそれぞれ別に施すことになるので、それぞれに適切な温度条件などで予備はんだを定着させることができ、さらにそれぞれに生成される金属間化合物からなる接合界面によって、特にＡｇ食われを防止するので、金属の拡散速度に起因するカーケンダルボイドの発生を抑制することが可能となった。

本発明のはんだ合金をガラス基板上に設けられたＡｇ電極にはんだ付けし、接合物を構成した解析写真。 本発明組成の銀食われの良否を他の組成と比較したグラフ。 本発明組成を他の組成と共にヒートサイクル試験し、クラックの発生度合いを示したグラフ。 同、引張試験の結果を示すグラフ。 同、クリープ特性を示すグラフ。 接合物に対して予めはんだめっきを施す手順を、比較例を共に示した概略図。 予めはんだめっきを施した継手と、施さない継手のボイドの発生度合いを示す比較写真。

以下、本発明の好ましい実施形態を実施例に従って説明する。図１ａは、本発明のはんだ合金を用い、予備はんだを施したうえではんだ接合した状態の断面組織写真である。予備はんだの組成は、９１．８５３Ｓｎ−８．１４Ｚｎ−０．００７０Ｍｎ（重量％）であり、こて先設定温度を２５０℃ではんだ付けを行った。ここで、組成は下層から、Ｓｎ−Ｚｎ組成からなるはんだ層１、ＡｇＺｎ金属間化合物からなる接合界面層２、Ａｇからなる電極層３を示している。

図１に示した態様において、接合界面層２に出現するＡｇＺｎ金属間化合物の粒径の相違によって、強度に違いが見られるかどうかを確認した。強度の違いは、耐久試験を行った後に接合界面に発生したクラックの状態を視覚的に確認することによって行った。耐久試験は、ガラス板の上にＡｇ電極を焼き付けたテストピースと、Ｃｕ合金端子に相当するＣｕ合金母材にＳｎめっきを施したターミナルを接合し、ヒートサイクル試験を行った後に、接合部の断面組織観察を行い、クラックの発生の有無を調べた。その結果を表１に示す。

なお、テストピースは、８×８×３mm、Ａｇ層の厚さは２０μｍであり、ターミナルは４×７×０．４mmサイズの純銅の表面にＳｎめっきを施したものであり、予備はんだの量は体積で４．５×７．５×０．２mmを付加した。ヒートサイクルは、−３０℃で３０分維持し、＋８０℃に昇温して３０分維持するというサイクルを１０００回繰り返した。
試験の結果、ＡｇＺｎ金属間化合物の平均粒径が５μｍ以下の試料ではクラックを確認することができなかったのに対して、平均粒径２０μｍ、１０μｍの試料ではクラックを観察した。なお、この実験は、ボイドを界面内部に有する場合には、ヒートサイクルによってクラックに発展することを前提としている。

図２は、直径０．２５mm、長さ１０mmのＡｇ線を組成の異なる６種類のはんだ浴に半分まで浸漬し、一定時間ごとに残留長さを測定した結果をグラフとして示す。溶融はんだ温度は、３００℃である。実験では、本発明の範囲である試料９１Ｓｎ９Ｚｎは非常に良好な耐銀食われを示し、同様に９３Ｓｎ７Ｚｎ、および９２．９９Ｓｎ７Ｚｎ０．０１Ｍｎについても、良好な耐銀食われ性を示した。しかし、その他の試料では、約５０秒を経過すると約２mmが食われによって消失した。この事実から、Ｓｎを母材として、７〜９重量％のＺｎを含有するはんだ組成は、良好な耐銀食われ性を呈することを確認した。

図３のグラフは、７種類の組成からなる試験片を９０度〜−４０℃の範囲で９０サイクル繰り返したヒートサイクル試験の結果である。試験片は、幅５mm、長さ１０mm、厚さ０．６mmのはんだ箔を、幅５０mm、長さ１００mm、厚さ５mmのガラス面の銀電極（箔厚約１５μｍ）の表面にはんだ付けをした材料を用いた。その結果、９３Ｓｎ７Ｚｎと、これにＭｎを微量添加した９２．９９２Ｓｎ７Ｚｎ０．００８Ｍｎを比較すると、Ｍｎを添加した試料のほうがクラックの出現が少なく、同様に９５Ｓｎ５Ｚｎと、９４．９９７Ｓｎ５Ｚｎ０．００３Ｍｎを比較しても、Ｍｎを添加した試料のほうがクラックの出現が少ないことを確認した。これらの関係から、Ｓｎ−Ｚｎ組成のはんだにおいては、Ｍｎを添加した組成のはんだ合金を採用して接合物を得るほうがクラックの出現を減少させることができることが理解できる。なお、クラックの確認は、ヒートサイクル試験途中で試験片を取り出し、ガラス裏面からはんだ付け箇所を実体顕微鏡（１０倍）で観察し、ガラス表面に検出されたクラック本数を数えた。即ち、銀電極を含むガラスとはんだの熱膨張率の差に起因する発生応力を比較することによって、接合界面の強度の確認に代えた。

図４のグラフは、６種類の組成からなる試験片を引張試験した結果を示す。試験方法は、電気炉、黒鉛坩堝中で液相温度＋１００℃で溶融させ、これを室温の鋳型に鋳込んで得た試験片を用いた。試験片は全長１７０mm、平行部長さ６０mm、幅１０mm、厚さ１０mmの大きさに調製し、室温で試験片の中心から２５mmずつ、即ち評点間距離５０mmで、引張強度１０mm／分の力で引っ張った。当該測定はＪＩＳに準拠したものである。結果として、本発明の範囲である９２．９９２Ｓｎ７Ｚｎ０．００８Ｍｎの試料が引っ張りに対して一番好適な耐性を示した。Ｍｎを添加していない９３Ｓｎ７Ｚｎに対しても大幅に良好な引張強度を示した。これは、微量のＭｎの添加によってはんだ組成物が微細化されたことに起因する。これらの事実から、Ｍｎを添加したはんだ合金を採用して接合物を得る場合であっても、接合界面付近におけるカーケンダルボイドの発生が抑制され、均一な組織構造とすることができると考えられる。

図５のグラフは、クリープ特性を示したもので、試験方法は図４と同様に調製した試験片に１００℃の温度雰囲気下で３０ｋｇの荷重を負荷したもので、４種類の試料についてそれぞれ２回ずつ試験を行った。評点間距離は、５０mmである。結果として、図４の引張試験結果と同様に、Ｍｎを添加した試験片が一番良好なクリープ特性を示した。

次に、図６はすでに説明した組成の予備はんだを行った場合について説明した概略図であり、１０はガラス板の表面に設けられたＡｇ電極、１１はＡｇ電極１０側の予備はんだで、はんだめっきを施したもの、１２はＣｕ合金端子、１３はＣｕ合金端子の接合面に設けられた予備はんだで、同様にはんだめっきを施している。１４ははんだ鏝である。工程としては、図６ａに示すように双方に施されたはんだめっきを接触させながら、はんだ鏝１４をＣｕ合金端子１２のはんだめっきの裏面側に当接させて２５０℃程度に加熱する。そうすると、双方のはんだめっきが溶融し、図６ｂに示すようにはんだの接合部１５が形成される。なお、図６ｂでは実際はＡｇ電極１０側と、Ｃｕ合金端子１２側の双方に接合界面が出現するが、図示していない。このようにすると、フラックスを必要としないので、フラックスが沸騰・蒸発する際に不可避的に発生するボイドを回避することができる。このようにして接合した継手を、予備はんだを付与せずに接合した継手と対比して図７に示す。図７ははんだ継手内部の状態を確認するためにＸ線を照射した透過写真であり、予備はんだを施した試料にはボイドの発生はほどんど見られなかったのに対して、予備はんだを施さなかった試料では全ての試料について複数個のボイドが見られた。

１ はんだ層
２ 接合界面層
３ Ａｇ電極層
１０ Ａｇ電極
１１・１３ はんだめっき
１２ Ｃｕ合金端子
１５ 接合部

Claims (2)

1. Ｚｎ２〜９重量％、Ｍｎ０．０００１〜０．１重量％、および残部Ｓｎからなるはんだ合金にてガラス板表面に設けられた少なくともＡｇ表面層である接合物のはんだ接合界面に予備はんだをめっきするとともに、Ｃｕ合金端子表面の接合面に予備はんだをめっきし、前記Ａｇ表面層の予備はんだと前記Ｃｕ合金端子表面の予備はんだのそれぞれを接触させて加熱溶融し、これによってＡｇ表面層に５μｍ以下の粒径のＡｇ−Ｚｎ金属間化合物を形成し、さらにはんだめっきが凝固するまで冷却したことを特徴とするはんだ接合方法。
2. 請求項１のはんだ接合方法において、加熱溶融の温度は２３０〜３００℃であるはんだ接合方法。

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