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JP6659019B2 - マイクロカプセル及びその製造方法 - Google Patents

マイクロカプセル及びその製造方法 Download PDF

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JP6659019B2 JP2015250576A JP2015250576A JP6659019B2 JP 6659019 B2 JP6659019 B2 JP 6659019B2 JP 2015250576 A JP2015250576 A JP 2015250576A JP 2015250576 A JP2015250576 A JP 2015250576A JP 6659019 B2 JP6659019 B2 JP 6659019B2
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Description

本発明は、マイクロカプセル、該マイクロカプセルを含むパーソナルケア製品及びマイクロカプセルの製造方法に関する。
従来、香料や薬効成分等をマイクロカプセルに封入し、製品中に配合することにより、その効果を持続させる試みがなされている。特に、繊維処理製品や化粧料、洗浄剤等は、衣類や身体に香りを付与することが重要な性能の一つであり、香りの持続性の高い製品が求められている。
例えば、特許文献1には、特に日焼け止め剤の活性成分を、生体組織から実質的に隔離しながら、日焼け止め剤の光吸収能力の恩恵を享受することを目的として、マイクロカプセル殻内に封入されたコア物質を有するマイクロカプセルであって、前記コア物質が、活性成分を含み、マイクロカプセル殻が、その前駆体のインサイチュ重合により得られる重合された前駆体からなる無機重合体からなり、マイクロカプセルの全重量に基づくコア物質の濃度が、95重量/重量%以上であるマイクロカプセルが開示されている。
特許文献2には、有効成分を安定化して適用できる治療用組成物又は化粧品組成物であって、コア−殻構造を有する複数のマイクロカプセルを含み、前記マイクロカプセルが約0.1〜100ミクロンの直径を有し、それぞれのコアが有効成分を含み、前記コアがマイクロカプセル殻内にカプセル化され、前記殻がゾル−ゲル法によって得られる無機ポリマーからなり、そして前記マイクロカプセル殻により、局所適用前の有効成分が保護され、そして有効成分が局所適用後に放出される組成物が開示されている。
特許文献3には、例えば、パーソナルケア製品のための香料の放出性の向上を目的として、ゾル−ゲル前駆体と活性物質(特に、精油)を混合して冷却し、次いで活性剤水溶液を冷却し、該活性剤水溶液にゾル−ゲル前駆体と精油との混合物を添加し、乳化させた後に、消泡剤を添加し、硬化させることにより、コアに活性物質を含むマイクロカプセル粒子を製造する方法が開示されている。
また、特許文献4には、シリカを構成成分として含む第一シェル及び第二シェルと、該第一シェルの内部に1種以上の有機化合物を含むコアとを有するマイクロカプセルの製造方法であって、界面活性剤を含む水相中に、1種以上の有機化合物とテトラアルコキシシランを含み、テトラアルコキシシランの量が、有機化合物に対して10質量%以上60質量%以下である有機相を乳化し、酸性条件下でゾル−ゲル反応を行い、コアと第一シェルとを有するカプセルを形成する工程(1)、及び、得られたカプセルを含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加し、工程(2)のゾル−ゲル反応の初期pHを、工程(1)のゾル−ゲル反応の初期pHより低く維持して、ゾル−ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するカプセルを形成する工程(2)を有する方法で得られるマイクロカプセルが、内包する香料等の有効成分である有機化合物を長期間保持することができることが開示されている。
特表2007−500590号公報 特表2003−534249号公報 米国特許出願公開第2010/0143422号明細書 特開2015−128762号公報
昨今の消費者ニーズの多様化から、繊維処理製品や化粧料、洗浄剤等において、洗っている際の感触が変化する等の嗅覚や肌感覚等に変化を与える技術が求められている。そこで、本発明が解決しようとする課題は、固体成分と液体成分を共に含有するマイクロカプセルを提供すること、また、嗅覚及び触覚等の複数の感覚に変化を与えるマイクロカプセルを提供することにある。
本発明は、以下のマイクロカプセル、パーソナルケア製品及びマイクロカプセルの製造方法に関する。
<1>シリカを構成成分として含むシェルと、該シェルの内部にポリマー微粒子及び1種以上の油溶性液体を含むコアとを有する、マイクロカプセル。
<2>上記<1>に記載のマイクロカプセルを含むパーソナルケア製品。
<3>上記<1>に記載のマイクロカプセルを製造する方法であって、下記工程(1)及び(2)を有する、マイクロカプセルの製造方法。
工程(1):界面活性剤を含む水相中に、1種以上の油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとラジカル重合開始剤と原料シリカとを含む有機相を混合して乳化した後、酸性条件下でゾル−ゲル反応を行ってシェルを形成し、前記の油溶性液体、モノマー及びラジカル重合開始剤を内包するカプセルを形成する工程
工程(2):工程(1)で得られたカプセルを含有する水分散体を加熱して、前記モノマーの重合反応を行い、シェルの内部にポリマー微粒子を形成する工程
本発明のマイクロカプセルは、固体成分と液体成分を共に含有し、嗅覚及び触覚等の複数の感覚に変化を与えることができる。例えば、本発明のマイクロカプセルをパーソナルケア製品又は化粧品に配合し、皮膚や繊維に適用した場合に、適用表面に軽く触れることでマイクロカプセルが崩壊し、内包されていた油溶性液体及びポリマー微粒子が放出される。油溶性液体として香料を用いた場合、適用表面に触れることで発香として感じることができる。また、ポリマー微粒子が適用表面の弾性や摩擦性を変化させ、表面の感触を変化させることができる。したがって、本発明のマイクロカプセル及びこれを含むパーソナルケア製品は、油溶性液体及びポリマー微粒子を同時に適用表面に届けることによって、複数の価値を提供することができる。
実施例1において得られたマイクロカプセルの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である(13.0倍)。 実施例1において得られたマイクロカプセルのSEM写真であり、シェルが破れた状態を示す(25.0倍)。 実施例1において得られたマイクロカプセルのSEM写真であり、シェルが破れた状態を示す(30.0倍)。 実施例2において得られたマイクロカプセルのSEM写真である(5.01倍)。 実施例2において得られたマイクロカプセルのSEM写真であり、シェルが破れた状態を示す(39.9倍)。 実施例2において得られたマイクロカプセルのSEM写真であり、シェルが破れた状態を示す(25.0倍)。 比較例1において得られたマイクロカプセルのSEM写真である(7.99倍)。
以下、本発明のマイクロカプセル及びその製造方法について詳細に説明する。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。また、(イソ又はtert−)及び(イソ)とは、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを意味する。
本明細書において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組合せはより好ましい。
本発明のマイクロカプセルは、シリカを構成成分として含むシェルと、該シェルの内部にポリマー微粒子及び1種以上の油溶性液体を含むコアとを有する。
(シェル)
本発明のマイクロカプセルのシェルは、シリカを構成成分として含むものである。シリカは、アルコキシシラン等の加水分解によりシラノール化合物を生成する原料シリカから生成されることが好ましい。
原料シリカとしては、例えば、四塩化ケイ素、テトラアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、水ガラス及び金属ケイ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。中でも、テトラアルコキシシラン、アルキルアルコキシシランが好ましく、テトラアルコキシシランがより好ましい。
テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、より好ましくはテトラエトキシシランである。
アルキルアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン等が挙げられる。
これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの縮合物等も使用することができる。
シェルは、第一シェルと第二シェルとを有していてもよく、本発明のマイクロカプセルは、ポリマー微粒子及び1種以上の油溶性液体を含むコアを包接する第一シェルと、第一シェルを包接する第二シェルとを有していてもよい。さらに、本発明のマイクロカプセルは、第二シェルと接して有機高分子化合物からなる第三シェルを有してもよい。このような多層シェルであれば、香料等の有効成分である油溶性液体を長期間保持することができ、好ましい。
シェル(第一シェル)の厚みは、好ましくは5nm以上であり、そして、好ましくは20nm以下、より好ましくは15nm以下である。また、シェル(第一シェル)は、内包する油溶性液体の長期保持のために、可能な限り細孔を有しない緻密な層であることが好ましい。
第二シェルを有する場合、第二シェルの厚みは、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上であり、そして、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下である。第二シェルは、第一シェルとの界面に沿った方向のみならず厚み方向へもシリカが存在する高次構造を取る、メソポーラス構造になっていることが好ましい。
ここで、第二シェルにおける「メソポーラス構造」とは、構造内に存在する細孔(いわゆる、メソ孔)の径が、好ましくは2nmを超え、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは30nm以上であり、そして、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、更に好ましくは40nm以下の範囲にある構造をいう。
第二シェルがメソポーラス構造であることにより、マイクロカプセルは高い機械的強度を有する。
マイクロカプセルの第一及び第二シェルの平均厚み、並びに第一及び第二シェルの細孔径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。具体的には、透過型電子顕微鏡観察下で、第一シェル並びに第二シェルの厚み、第一シェル及び第二シェルの細孔径を写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから第一シェル及び第二シェルの厚み並びに細孔径の分布を求める。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万〜10万倍であるが、マイクロカプセルの大きさによって適宜調節される。ここで、透過型電子顕微鏡(TEM)として、例えば商品名「JEM−2100」(日本電子株式会社製)を用いることができる。
(コア)
本発明のマイクロカプセルのコアは、ポリマー微粒子及び1種以上の油溶性液体を含む。本発明のマイクロカプセルは、シェルの内部にポリマー微粒子を含有することで、シェルが破れてポリマー微粒子が放出したときに、ポリマー微粒子が適用表面の弾性や摩擦性を変化させて、感触を変化させることができる。
ポリマー微粒子を構成し得るモノマーは、油溶性であれば特に限定されないが、不飽和二重結合をもつモノマーが好ましい。不飽和二重結合をもつモノマーとしては、単官能性モノマーでもよく、多官能性モノマーでもよい。感触を発現させるポリマー微粒子の強度の点からは、ポリマー微粒子が油溶性液体に溶解しないことが好ましく、例えば多官能性モノマーを用いて高分子微粒子を架橋することが好ましい。
単官能性モノマーの好ましい例としては、アルコール化合物と(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。アルコール化合物の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
アルコール化合物と(メタ)アクリル酸とのエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はtert−)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。
上記以外の単官能性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシ基を有する不飽和化合物;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、適度な強度のポリマー微粒子を得る観点から、炭素数4以上18以下のアルコールとメタクリレートとのエステルが好ましく、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート及びヘキサデシルメタクリレートがより好ましい。
多官能性モノマーとしては、ジオール化合物と(メタ)アクリル酸とのジエステル、3価以上の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのジエステル、トリエステル、テトラエステル等が挙げられる。ジオール化合物及び3価以上の多価アルコールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは12以下である。
ジオール化合物と(メタ)アクリル酸とのジエステルの具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3価以上の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのジエステルの具体例としては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
トリエステルの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
テトラエステルの具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記以外の多官能性モノマーの具体例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ウレタンジアクリレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、トリビニルベンゼン等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ジオール化合物と(メタ)アクリル酸とのジエステルが好ましく、適度な強度のポリマー微粒子を得る観点から、炭素数2以上24以下のジオール化合物及び3価以上の多価アルコールとメタクリレートとのエステルがより好ましく、エチレングリコールジメタクリレート及び1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートが更に好ましい。
ポリマー微粒子を構成し得る単官能性モノマーと多官能性モノマーとの質量比(単官能性モノマー:多官能性モノマー)は、適度な強度のポリマー微粒子を得る観点から、好ましくは20:80〜0:100、より好ましくは40:60〜0:100、更に好ましくは50:50〜0:100である。
ポリマー微粒子は、ジオール化合物と(メタ)アクリル酸とのジエステルの重合体を含むことが好ましい。
ポリマー微粒子は、上記モノマーを重合させることで得ることができる。重合には、重合開始剤を使用することが好ましい。
重合開始剤は油溶性であれば特に限定されるものではなく、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系開始剤、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、過酸化オクタノイル、オルトクロロ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。好ましくは、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)である。また必要に応じて、連鎖移動剤等を用いることもできる。連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、モノマーの合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
ポリマー微粒子の体積平均粒径は、マイクロカプセルの使用時の感触の変化を与える観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、そして、好ましくは30μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは4μm以下である。
なお、本発明において、ポリマー微粒子の体積平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測定できる。
本発明において、マイクロカプセル内に内包されるポリマー微粒子の体積平均粒径は、油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとの比により任意に制御できる。油溶性液体及びポリマー微粒子の両方の機能を好適に発現させる観点から、油溶性液体及びモノマーの質量比(油溶性液体:モノマー)は、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10、更に好ましくは20:80〜80:20である。
(油溶性液体)
本発明のマイクロカプセルのコアは、1種以上の油溶性液体を含む。例えば当該油溶性液体として香料を用いた場合、本発明のマイクロカプセルは、シェルの内部に当該油溶性液体及びポリマー微粒子を含むコアを内包することで、シェルが破れたときに、香料が放出して発香すると共に、ポリマー微粒子が放出されて感触を変化させることができる。
油溶性液体は、好ましくは香料、香料前駆体、油剤、酸化防止剤、冷感剤、染料、色素、シリコーン、溶媒、及び油溶性ポリマーからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくは香料、香料前駆体、油剤、酸化防止剤、及び溶媒からなる群から選ばれる1種以上、更に好ましくは香料及び香料前駆体からなる群から選ばれる1種以上である。また、保湿剤等のスキンケア成分、化粧油、抗菌剤、防腐剤、抗酸化剤、殺虫成分及び防虫成分であってもよい。
香料前駆体としては、例えば水に反応して香料成分を放出する化合物等が挙げられる。具体的には、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有するケイ酸エステル化合物、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有する脂肪酸エステル化合物、香料アルデヒド又は香料ケトン由来のカルボニル成分とアルコール化合物の反応で得られるアセタール化合物もしくはヘミアセタール化合物、香料アルデヒド又は香料ケトン由来のカルボニル成分と1級アミン化合物との反応で得られるシッフベース化合物、香料アルデヒド又は香料ケトン由来のカルボニル成分とヒドラジン化合物との反応で得られるヘミアミナール化合物もしくはヒドラゾン化合物が挙げられる。
また、他の形態の香料前駆体としては、光に反応して香料成分を放出する化合物が挙げられる。例えば、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有する2−ニトロベンジルエーテル化合物、香料アルデヒドや香料ケトン由来のカルボニル成分を有するα−ケトエステル化合物、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有するクマリン酸エステル化合物が挙げられる。これらの香料前駆体は、例えばポリアクリル酸の一部のカルボキシ基と香料アルコールとの反応生成物等のポリマーとして用いてもよい。これらの中でも、香料アルコール由来のアルコキシ成分を有するケイ酸エステル化合物が好ましい。
前記油溶性液体のClogP値は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。油溶性液体のClogP値が2以上であることにより、後述する製造方法において得られるマイクロカプセル内への油溶性液体のカプセル化率(以下、「内包率」ともいう)が向上する。ここで、油溶性液体が、複数の香料を含む香料組成物である場合も上記同様であり、香料組成物のClogP値が2以上であることによって、マイクロカプセル内への香料組成物のカプセル化率(内包率)を向上させることができる。
ここで、ClogP値は、A. Leo in "Comprehensive Medicinal Chemistry", Vol.4, (C. Hansch, P.G. Sammes, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds.), p.295, Pergamon Press, 1990に記載の方法で計算した「計算logP(ClogP)」であり、プログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値である。複数の香料を含む香料組成物である場合、その香料組成物のCLogP値は、各香料のCLogP値に香料組成物中の体積比を乗じ、それらの和とすることで求めることができる。
また、前記油溶性液体の油水界面張力は、油溶性液体の保持性の観点から、25℃において、好ましくは7mN/m以上、より好ましくは10mN/m以上、更に好ましくは13mN/m以上である。油溶性液体の油水界面張力は、例えば、接触角計「DropMaster DM−501」(商品名、協和界面科学株式会社製)により測定することができる。
本発明のマイクロカプセルの体積平均粒径は、製品への配合性の観点、使用時の感触変化を与える観点及び油溶性液体の保持性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、そして、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
なお、本発明において、マイクロカプセルの体積平均粒径は、実施例に記載の方法で測定できる。例えば、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA−950」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定することができる。その場合、測定はフローセルを使用し、媒体は水、屈折率は1.40−0iに設定する。マイクロカプセルを含む分散液をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準で平均粒径を求める。
(マイクロカプセルの製造方法)
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有し、好ましくは下記工程(3)を更に有する。
工程(1):界面活性剤を含む水相中に、1種以上の油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとラジカル重合開始剤と原料シリカとを含む有機相を混合して乳化した後、酸性条件下でゾル−ゲル反応を行ってシェルを形成し、前記の油溶性液体、モノマー及びラジカル重合開始剤を内包するカプセルを形成する工程
工程(2):工程(1)で得られたカプセルを含有する水分散体を加熱して、前記モノマーの重合反応を行い、シェルの内部にポリマー微粒子を形成する工程
工程(3):工程(1)又は(2)で得られたカプセルを含む分散液に更に原料シリカを添加してゾル−ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するカプセルを形成する工程
ここで、工程(1)及び(3)における「ゾル−ゲル反応」は、原料シリカ(シリカ前駆体)を、酸性条件で加水分解及び重縮合することによって、アルコールを脱離させながら重合させて、第一シェル及び第二シェルのシリカを合成する反応である。「ゾル−ゲル反応」は、原料シリカとしてテトラエトキシシランを用いた場合、酸性条件下で、加水分解及び重縮合は、以下のとおりに進む。
上記の工程(1)及び(2)を有する方法により本発明のマイクロカプセルが形成されるメカニズムについては明らかにされていないが、次のように考えられる。
はじめに、1種以上の油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとラジカル重合開始剤と原料シリカ(シリカ前駆体)を油相成分とし、分散剤を含む水相成分と激しく撹拌することにより、水中油分散液を得る。シリカ前駆体は徐々に水相に分配され、水相に分配されたシリカ前駆体は適度なpH領域においてゾル−ゲル反応によりシリカゾルを形成する。これが油滴表面に吸着し、シリカを構成成分とするシェルが形成され、モノマー、ラジカル重合開始剤及び油溶性液体が内包されたマイクロカプセルが得られる(工程(1))。さらに、マイクロカプセルを含む分散液を加熱することで、シェル内においてモノマーの重合反応が起こり、ポリマーが形成される。このとき、ポリマーとシリカとの親和性が低いため、生成したポリマーはシェルに吸着することなく油溶性液体中で成長を続け、ポリマー微粒子が形成される(工程(2))。最終的に、シリカを構成成分として含むシェルの内部に、ポリマー微粒子及び1種以上の油溶性液体を含むコアを有するマイクロカプセルが形成されると考えられる。
ナノサイズ〜サブミクロンサイズのポリマー微粒子の合成は一般的に困難であり、該微粒子を油溶性液体と共に包含するマイクロカプセルを作製することは困難である。上記方法によれば、ポリマー微粒子の大きさは使用するモノマー量によって制御可能であり、簡便な手法によってナノサイズ〜サブミクロンサイズのポリマー粒子をコアとして内包するマイクロカプセルを製造することができる。
<工程(1)>
工程(1)は、マイクロカプセルのシェルを形成する工程である。まず、界面活性剤を含む水相中に、1種以上の油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとラジカル重合開始剤と原料シリカとを含む有機相を混合して乳化する。その後、酸性条件下でゾル−ゲル反応を行ってシェルを形成し、前記の油溶性液体、モノマー及びラジカル重合開始剤を内包するカプセルを形成する。
工程(1)で用いられる原料シリカについては上述のとおりである。
工程(1)における原料シリカの量は、ゾル−ゲル反応を促進する観点から、油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとの総量100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下である。原料シリカの添加量が10質量%以上60質量%以下であることで、十分に緻密なシェルの層を形成でき、更に過剰の原料シリカが有機化合物中に残存することもないものと考えられる。
工程(1)で用いられる油溶性液体、モノマー及びラジカル重合開始剤、並びにこれらの使用量については上述のとおりである。
工程(1)で用いられる界面活性剤は、好ましくは陽イオン性の界面活性剤である。
陽イオン性の界面活性剤としては、窒素系のカチオン性基を有する化合物、pH調整によりカチオン性を帯びることがある界面活性剤等が挙げられる。具体的にはアルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
アルキルアミン塩としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。特に好ましい陽イオン性の界面活性剤は、第4級アンモニウム塩である。
有機相と水相との混合比率は、生産性の観点及び安定な乳化液を得る観点から、得られる乳化液中の有機相の濃度として、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
乳化液の調製に使用される撹拌手段は特に限定されないが、強いせん断力を有するホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機等を使用することができる。また、ホモミキサー、「ディスパー」(商品名、プライミクス株式会社製)、「クレアミックス」(商品名、エムテクニック株式会社製)、「キャビトロン」(商品名、大平洋機工株式会社製)等を使用することもできる。
工程(1)において、界面活性剤を含む水相中に、原料シリカを含む有機相を乳化させて得られる乳化液の初期pH(すなわち、工程(1)のゾル−ゲル反応の初期pH)は、好ましくは3.5以上、より好ましくは3.7以上であり、そして、好ましくは4.3以下、より好ましくは3.9以下である。
pHの調整には酸性溶液又はアルカリ性溶液が用いられる。酸性溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等の有機酸;陽イオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液が挙げられる。これらの中でも、好ましくは塩酸又はクエン酸である。アルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、水酸化アンモニウム溶液等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは水酸化ナトリウム溶液又は炭酸水素ナトリウム溶液である。
工程(1)における乳化液中の乳化滴の平均粒径は、所望の粒径のマイクロカプセルを得る観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.7μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、そして、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。なお、本発明において、乳化液中の乳化滴の平均粒径は、実施例に記載の方法で測定できる。
工程(1)における反応温度は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましく50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
工程(1)における反応時間は、反応系内が所定の反応温度になったときを反応開始と規定した場合、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは5時間以上であり、そして、好ましくは50時間以下、より好ましくは40時間以下、更に好ましくは30時間以下である。
<工程(2)>
工程(2)は、マイクロカプセルのシェルの内部にポリマー微粒子を形成する工程である。工程(1)で得られたカプセルを含有する水分散体を加熱して、前記モノマーの重合反応を行う。工程(1)で得られたカプセルの内部には、油溶性液体、モノマー及びラジカル重合開始剤が内包されている。加熱により重合開始剤が開裂してラジカルが発生し、モノマーの重合反応が起きる。重合により得られるポリマーはシェルに吸着することなく油溶性液体中で成長を続け、ポリマー微粒子が形成される。この結果、シリカを構成成分として含むシェルの内部に、ポリマー微粒子及び1種以上の油溶性液体を含むコアを有するマイクロカプセルが形成される。
重合温度は、ラジカル重合を効率よく行う観点から、好ましくは「重合開始剤の10時間半減期温度より5℃低い温度」以上、より好ましくは「重合開始剤の10時間半減期温度」以上であり、そして、好ましくは「重合開始剤の10時間半減期温度より30℃高い温度」以下、より好ましくは「重合開始剤の10時間半減期温度より25℃高い温度」以下、更に好ましくは「重合開始剤の10時間半減期温度より20℃高い温度」以下である。
なお、「重合開始剤の10時間半減期温度」とは、不活性ガスの存在下において、一定の温度で10時間熱分解反応を行った際に油溶性重合開始剤の濃度が反応前の濃度の半分になるときの温度である。例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の10時間半減期温度は51℃である。
また、重合温度は、生産性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
重合時間は、生産性の観点から、反応系内が所定の重合温度になったときを重合反応開始と規定した場合、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは5時間以上であり、そして、好ましくは50時間以下、より好ましくは30時間以下、更に好ましくは10時間以下である。
また、反応を効率的に終結させる観点から、重合反応後に反応系内の状態を維持して熟成反応を行うことも好ましい。熟成反応の反応温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下である。熟成反応の反応時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
<工程(3)>
工程(3)は、第二シェルを形成する工程であり、工程(3)を行うことにより、多重シェルを有するマイクロカプセルを得ることができる。工程(3)では、工程(1)又は(2)で得られたカプセルを含む分散液に更に原料シリカを添加してゾル−ゲル反応を行う。工程(3)は、工程(2)の後に行ってもよく、工程(2)の前に行ってもよい。
工程(3)で用いられる原料シリカは、工程(1)で用いられる原料シリカと同じものであることが好ましい。
工程(3)における原料シリカの量は、ゾル−ゲル反応を促進する観点から、油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとの総量100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
本発明のマイクロカプセルの製造方法では、原料シリカの総量は、内包される油溶性液体及びポリマー微粒子を長期間保持する観点から、油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとの総量100質量%に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
工程(3)のゾル−ゲル反応の初期pHは、工程(1)のゾル−ゲル反応の初期pHより低く維持されることが好ましく、工程(3)のゾル−ゲル反応の初期pHは、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.9以上であり、そして、好ましくは3.5未満、より好ましくは3.4以下、更に好ましくは3.3以下である。
工程(3)のゾル−ゲル反応の初期pHを、上述した工程(1)のゾル−ゲル反応の初期pHより低く維持して、原料シリカを滴下しながらゾル−ゲル反応を進行させることで、原料シリカの加水分解によって生じるシリカゾルの系内の濃度を適切に制御することができ、シリカゾルを第一シェル上に効率的に沈着させ、縮合させることができ、第二シェルは、第一シェルとの界面に沿った方向のみならず厚み方向へもシリカが存在する高次構造を取り、メソポーラス構造になると考えられる。
pHの調整には酸性溶液又はアルカリ性溶液が用いられる。使用できる酸性溶液又はアルカリ性溶液は、工程(1)について説明したものと同じである。
工程(3)では、第一シェルが形成されたマイクロカプセルを含有する水分散体(懸濁液)を好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましく50℃以下、更に好ましくは40℃以下の温度に調整し、さらに、懸濁液のpH(すなわち、工程(3)のゾル−ゲル反応の初期pH)を、酸性溶液又はアルカリ性溶液を用いて、2.5以上3.5未満に調整する。次いで、pH調整後の懸濁液に、原料シリカを添加、とりわけ所定時間かけて滴下し、原料シリカの全量を滴下した後、所定時間撹拌して、冷却する。
工程(3)における原料シリカの滴下時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは60分以上、更に好ましくは100分以上であり、そして、好ましくは1,000分以下、より好ましくは700分以下、更に好ましくは500分以下である。
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、工程(2)の後に工程(3)を行うことが好ましく、下記工程(2−1)を更に有することが好ましい。
工程(2−1):工程(3)の前に、工程(2)で得られたカプセルを含有する水分散体にカチオン性高分子化合物を添加する工程
カチオン性高分子化合物を添加する工程(2−1)を有することで、カプセル表面のカチオン性を高め、次の工程(3)で加える原料シリカのカプセルへの吸着を促進させ、内包物の保持性を高めることができる。さらに、工程(2)で得られたカプセルが水分散体(懸濁液)中で凝集しやすい状況を緩和することができ、続く工程(3)において粗大粒子等の生成を抑制できる。
カチオン性高分子化合物としては、四級アンモニウム塩基含有高分子化合物の他、窒素系のカチオン基を有する高分子化合物、pH調整によりカチオン性を帯びることがある高分子化合物が挙げられる。
カチオン性高分子化合物のカチオン基当量は、カプセルの分散性の観点及び粗大粒子の生成を抑制する観点、並びにカプセルの内包物保持性を向上させる観点から、好ましくは1meq/g以上、より好ましくは3meq/g以上、更に好ましくは4.5meq/g以上であり、そして、好ましくは10meq/g以下、より好ましくは8meq/g以下である。カチオン性高分子化合物にアニオン基が含まれてもよいが、その場合、カチオン性高分子化合物に含まれるアニオン基当量は、好ましくは3.5meq/g以下、より好ましくは2meq/g以下、更に好ましくは1meq/g以下である。なお、本発明において、カチオン性高分子化合物のカチオン基当量は、モノマー組成に基づいた計算により算出したものを用いる。
カチオン性高分子化合物の具体例としては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド−co−アクリル酸−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及びその共重合物、ポリ(2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化ローカストビンガム等が挙げられる。これらの中でも、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及びその共重合物が好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、及びポリ(アクリルアミド−co−アクリル酸−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が更に好ましい。
カチオン性高分子化合物の添加量は、内包物の油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとの総量100質量%に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
上記方法により得られるマイクロカプセルは、水中に分散した状態で得られる。用途によってはこれをそのまま使用することもできるが、場合によっては、マイクロカプセルを分離して使用する。分離方法としては、ろ過、遠心分離等を採用することができる。
本発明のマイクロカプセルは、パーソナルケア製品に好ましく用いられる。パーソナルケア製品とは、化粧、スキンケア、ボディケア、ヘアケア、オーラルケア、フェイスケア等の目的で用いられる製品一般を意味する。
スキンケア製品の例としては、リップクリーム、ハンドクリーム、日焼け止めクリーム、制汗剤等が挙げられる。ボディケア製品の例としては、石鹸、ボディソープ、ハンドソープ等が挙げられる。ヘアケア製品の例としては、シャンプー、コンディショナー、ヘアスプレー、育毛剤等が挙げられる。オーラルケア製品の例としては、歯磨き粉、液体ハミガキ、洗口液等が挙げられる。フェイスケア製品の例としては、洗顔フォーム、メイク落とし、クレンジングオイル、シェービングフォーム等が挙げられる。
各種測定は、以下の方法により行った。
(1)体積平均粒径
マイクロカプセル及び乳化液中の乳化滴の体積平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA−950」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定にはフローセルを使用し、媒体として水、屈折率を1.40−0iに設定した。マイクロカプセルを含む分散液をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準で平均粒径を求めた。
(2)走査型電子顕微鏡(SEM)による観察
マイクロカプセル懸濁液0.05gを計りとり、イオン交換水で1000倍に希釈後、ステージ上で乾燥させた。ステージ上のマイクロカプセルにAu−Pd蒸着処理を行った後、電界放射型操作型電子顕微鏡「S−4000」(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)でマイクロカプセルの観察を行った。
<モデル香料A>
マイクロカプセルに内包する有機化合物として、表1に示す組成を有するモデル香料Aを使用した(体積平均ClogP:4.2、比重:0.96)。
ClogP値は、A. Leo in "Comprehensive Medicinal Chemistry", Vol.4, (C. Hansch, P.G. Sammes, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds.), p.295, Pergamon Press, 1990に記載の方法で計算した「計算logP(ClogP)」であり、プログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値である。モデル香料Aの体積平均ClogPは、各香料成分のClogP値にモデル香料A中における体積比を乗じ、それらの和として算出した。
実施例1
陽イオン性界面活性剤「コータミン60W」(花王株式会社製、セチルトリメチルアンモニウムクロライドの30質量%水溶液)1.74gをイオン交換水98.26gで希釈して水相溶液を調製した。
表1に示す組成のモデル香料A 20g、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)20g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、「V−65」)0.30g及びテトラエトキシシラン(関東化学株式会社製)10gを混合し、油相溶液を調製した。
水相溶液に油相溶液を添加し、回転数8,500rpmに設定したホモミキサーを用いて混合液を乳化した。この時の乳化滴の平均粒径は2.4μmであった。1N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを3.7に調整後、撹拌翼及び冷却器を備えたセパラブルフラスコに乳化液を移し、液温を30℃に保ちつつ、24時間撹拌してシェルの形成を行った(工程(1))。
次に、窒素雰囲気下、液温60℃で6時間加熱して、モノマーの重合を行いポリマー微粒子の形成を行った(工程(2))。
続いて、反応液に、カチオン性高分子化合物「マーコート100」(日本ルーブリゾール株式会社製、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド))の3質量%水溶液12.0gを加えた後、テトラエトキシシラン5.5gを330分かけて滴下した。滴下後、更に液温30℃で24時間撹拌を続けた後に冷却することにより、平均粒径3.6μmのマイクロカプセルを含む懸濁液を得た(工程(2−1)及び(3))。
得られたマイクロカプセルのSEM観察を行った。結果を図1〜3に示す。図2及び3は、マイクロカプセルのシェルが破れた状態を示す。図2及び3から明らかなように、マイクロカプセルはポリマー微粒子を内包していた。なお、図ではシェルが皺状として示されているが、これは、工程(2)で加熱したこと及びSEM観察の準備の際にステージ上で乾燥させたことによって、シェル内部の油溶性液体に含まれる揮発成分の一部揮発に伴い、シェルが収縮したことによるものと考えられる。
実施例2
実施例1における油相溶液の調製において、モデル香料Aの使用量を32g、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートの使用量を8g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の使用量を0.24gにそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして油相溶液を調製した。得られた油相溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化し、pHを調整し、シェルの形成を行った(工程(1))。乳化滴の平均粒径は2.5μmであった。
次に、窒素雰囲気下、液温50℃で6時間加熱して、モノマーの重合を行いポリマー微粒子の形成を行った(工程(2))。
続いて、反応液に、テトラエトキシシラン6.1gを330分かけて滴下した。滴下後、更に液温30℃で24時間撹拌を続けた後に冷却することにより、平均粒径3.6μmのマイクロカプセルを含む懸濁液を得た(工程(3))。
得られたマイクロカプセルのSEM観察を行った。結果を図4〜6に示す。図5及び6は、マイクロカプセルのシェルが破れた状態を示す。図5及び6から明らかなように、マイクロカプセルはポリマー微粒子を内包していた。
実施例3
実施例2における油相溶液の調製において、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の使用量を0.16gに変更したこと以外は実施例2と同様にして油相溶液を調製した。得られた油相溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化し、pHを調整し、シェルの形成を行った(工程(1))。乳化滴の平均粒径は1.6μmであった。
次に、反応液に、カチオン性高分子化合物「マーコート100」(日本ルーブリゾール株式会社製、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド))の3質量%水溶液4.0gを加えた後、テトラエトキシシラン6.1gを330分かけて滴下した。滴下後、更に液温30℃で24時間撹拌を続けた(工程(2−1)及び(3))。
さらに、窒素雰囲気下、液温60℃で7時間加熱して、モノマーの重合を行いポリマー微粒子の形成を行い、平均粒径3.2μmのマイクロカプセルを含む懸濁液を得た(工程(2))。
得られたマイクロカプセルのSEM観察を行ったところ、マイクロカプセルはポリマー微粒子を内包していた。
実施例4
実施例2と同様にして、乳化し、pHを調整し、シェルの形成を行った(工程(1))。乳化滴の平均粒径は2.6μmであった。
次に、窒素雰囲気下、液温50℃で24時間加熱して、モノマーの重合を行いポリマー微粒子の形成を行い、平均粒径3.6μmのマイクロカプセルを含む懸濁液を得た(工程(2))。
得られたマイクロカプセルのSEM観察を行ったところ、マイクロカプセルはポリマー微粒子を内包していた。
実施例5
実施例2における油相溶液の調製において、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート8gを1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート4g及び2−エチルヘキシルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)4gに変更したこと以外は実施例2と同様にして油相溶液を調製した。得られた油相溶液を用いたこと及びpHを3.9に調整したこと以外は実施例1と同様にして、乳化し、シェルの形成を行った(工程(1))。乳化滴の平均粒径は2.6μmであった。
次に、窒素雰囲気下、液温60℃で6時間加熱して、モノマーの重合を行いポリマー微粒子の形成を行い、平均粒径3.6μmのマイクロカプセルを含む懸濁液を得た(工程(2))。
得られたマイクロカプセルのSEM観察を行ったところ、マイクロカプセルはポリマー微粒子を内包していた。
実施例6
実施例1における油相溶液の調製において、モデル香料A 20gをモデル香料A 30g及びヘキサデカン(和光純薬工業株式会社製)3.0gに変更し、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート20gをヘキサデシルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)3.7g及びエチレングリコールジメタクリレート(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)3.7gに変更し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の使用量を0.22g、テトラエトキシシランの使用量を14gにそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様にして油相溶液を調製した。得られた油相溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化し、pHを調整し、シェルの形成を行った(工程(1))。乳化滴の平均粒径は2.5μmであった。
次に、窒素雰囲気下、液温60℃で6時間加熱して、モノマーの重合を行いポリマー微粒子の形成を行い、平均粒径5.7μmのマイクロカプセルを含む懸濁液を得た(工程(2))。
得られたマイクロカプセルのSEM観察を行ったところ、マイクロカプセルはポリマー微粒子を内包していた。
比較例1
実施例1における油相溶液の調製において、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を使用せず、モデル香料Aの使用量を40gに変更したこと以外は実施例1と同様にして油相溶液を調製した。得られた油相溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、乳化し、pHを調整し、シェルの形成を行った(工程(1))。乳化滴の平均粒径は2.2μmであった。
次に、反応液に、カチオン性高分子化合物「マーコート100」(日本ルーブリゾール株式会社製、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド))の3質量%水溶液12.0gを加えた後、テトラエトキシシラン6.2gを330分かけて滴下した。滴下後、更に液温30℃で24時間撹拌を続けた後に冷却することにより、平均粒径3.1μmのマイクロカプセルを含む懸濁液を得た(工程(2−1)及び(3))。
得られたマイクロカプセルのSEM観察を行った。結果を図7に示す。図7によれば、シェルが破れたマイクロカプセルの中は空洞であった。なお、図ではシェル表面が平滑として示されているが、これは、マイクロカプセルの製造において加熱を行っていないため、シェル内に内包された香料が多く残存していることによるものと考えられる。
比較例2
実施例1における油相溶液の調製において、モデル香料A及びテトラエトキシシランを使用せず、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート20gを1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート0.024g及び2−エチルヘキシルメタクリレート12.0gに変更し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の使用量を0.36gに変更したこと以外は実施例1と同様にして油相溶液を調製した。
水相溶液に油相溶液を添加し、回転数8,500rpmに設定したホモミキサーを用いて混合液を乳化した。この時の乳化滴の平均粒径は5.5μmであった。窒素雰囲気下、液温60℃で6時間加熱して、モノマーの重合を行い、平均粒径3.4μmのポリマーゲル微粒子の形成を行った(工程(2))。
上記懸濁液5gをモデル香料A 0.5gと室温で24時間混合し、モデル香料Aで膨潤したポリマーゲル微粒子を得た。
実施例及び比較例で得られたマイクロカプセルについて、摩擦時の発香スイッチ性及び皮膚感触を評価した。
マイクロカプセル懸濁液1gを計りとり、イオン交換水で10倍に希釈を行った。この希釈液1gを前腕上に塗布して乾燥させ、乾燥後の皮膚を摩擦した時の発香の変化及び皮膚感触の評価を行った。結果を表3に示す。
<評価基準>
(発香スイッチ性)
○:摩擦を与えると香りが強くなった。
×:摩擦を与えても香りの強度が変化しなかった。
(皮膚感触)
○:摩擦を与えるとさらさらした感触を与えた。
×:摩擦を与えても感触に変化がなかった。
実施例1〜6で得られた本発明のマイクロカプセルは、摩擦を与えると、シェルが破れて内包された香料が放出し、香りが強くなった。また、実施例1及び3で得られた本発明のマイクロカプセルについて皮膚感触の評価を行ったところ、シェルが破れて放出したポリマー微粒子が皮膚に擦れることで、乾燥後の皮膚がさらさらした感触になった。したがって、本発明のマイクロカプセルは、カプセルの崩壊によって嗅覚の変化を与えると共に触覚の変化を与えることができることがわかった。なお、実施例2及び4〜6で得られたマイクロカプセルについて皮膚感触の評価は行っていないが、これらのマイクロカプセルについてのSEM観察の結果が実施例1で得られたマイクロカプセルと同様であったことから、実施例2及び4〜6で得られたマイクロカプセルについても実施例1と同様の皮膚感触結果となると推察される。
これに対して、比較例1で得られたマイクロカプセルは、摩擦を与えると、シェルが破れて内包された香料が放出して香りが強くなったものの、ポリマー微粒子を含有しないため感触は特に変化しなかった。また、比較例2で得られたポリマーゲル微粒子は、カプセルを形成しておらず、単に香料で膨潤したものであるため、塗布乾燥後に摩擦を与えても香りの強度に変化がなく、感触も特に変化しなかった。
参考例
実施例1で得られた本発明のマイクロカプセル、比較例1で得られたマイクロカプセル、及び比較例2で得られたポリマーゲル微粒子について、香料の内包率を測定した。
マイクロカプセル懸濁液0.05gを計りとり、内部標準としてドデカンを10μg/mLの濃度で含むアセトニトリル10mLに分散させた。この分散液に超音波を10分照射し、メンブレンフィルター「DISMIC(登録商標)」(東洋濾紙株式会社製、型番:13JP020AN)に通液させた。通液後の溶液に含まれる香料の量を、ガスクロマトグラフィーを用いて測定し、分散液中に含まれる香料成分の量を測定した。
一方で、マイクロカプセル懸濁液0.05gを改めて計りとり、イオン交換水50gで希釈後、メンブレンフィルター「OMINIPORE(登録商標)」(MILLIPORE製、型番:JAWP04700)に通すことにより、メンブレンフィルター上にカプセルを回収した。さらに、メンブレンフィルター上で、イオン交換水10mL、次いでヘキサン10mLによりカプセルを洗浄後、該カプセルを、内部標準としてドデカンを10μg/mLの濃度で含むアセトニトリル10mLに浸漬後、この溶液に超音波を60分照射した。更にもう一度メンブレンフィルター「DISMIC(登録商標)」(東洋濾紙株式会社製、型番:13JP020AN)に通液させた。通液後の溶液に含まれる香料の量を、ガスクロマトグラフィーを用いて測定し、カプセル内に内包された香料成分の量として測定した。
上記で得られた分散液中に含まれる香料成分の量及びカプセルに内包されていた香料成分の量から以下の式にしたがって香料の内包率(%)を求めた。結果を表4に示す。
香料の内包率(%)=[カプセルに内包された香料成分の量]/[分散液中に含まれる香料成分の量]×100
比較例2で得られたポリマーゲル微粒子は、カプセルを形成していないため、成分によっては全く内包していなかった。比較例1で得られたマイクロカプセルは、マイクロカプセルの製造において加熱を行っていないため、シェル内に内包された香料が多く残存している。実施例1で得られた本発明のマイクロカプセルは、マイクロカプセルの製造において加熱を行っているため香料の内包率が比較例1で得られたマイクロカプセルよりも低い結果となっているが、すべての香料成分が充分に内包されていることがわかった。
本発明のマイクロカプセル及びこれを含むパーソナルケア製品は、油溶性液体及びポリマー微粒子を同時に適用表面に届けることによって、嗅覚及び触覚等の複数の感覚に変化を与えることができ、複数の価値を提供することができるものであり、香料等の有効成分を配合する各種製品に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. シリカを構成成分として含むシェルと、該シェルの内部にポリマー微粒子及び1種以上の油溶性液体を含むコアとを有し、
    該ポリマー微粒子が、油溶性でかつ不飽和二重結合をもつ単官能性モノマー及び多官能性モノマーから構成され、かつ該多官能性モノマーを用いて架橋されてなる、マイクロカプセル。
  2. 前記マイクロカプセルの体積平均粒径が0.5μm以上50μm以下である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
  3. 前記ポリマー微粒子が、ジオール化合物と(メタ)アクリル酸とのジエステルの重合体を含む、請求項1又は2に記載のマイクロカプセル。
  4. 前記油溶性液体が、香料、香料前駆体、油剤、酸化防止剤及び溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
  5. 前記シェルが第一シェルと第二シェルとを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロカプセルを含むパーソナルケア製品。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロカプセルを製造する方法であって、下記工程(1)及び(2)を有する、マイクロカプセルの製造方法。
    工程(1):界面活性剤を含む水相中に、1種以上の油溶性液体とポリマー微粒子を構成し得るモノマーとラジカル重合開始剤と原料シリカとを含む有機相を混合して乳化した後、酸性条件下でゾル−ゲル反応を行ってシェルを形成し、前記の油溶性液体、モノマー及びラジカル重合開始剤を内包するカプセルを形成する工程
    工程(2):工程(1)で得られたカプセルを含有する水分散体を加熱して、前記モノマーの重合反応を行い、シェルの内部にポリマー微粒子を形成する工程
  8. 下記工程(3)を更に有する、請求項7に記載のマイクロカプセルの製造方法。
    工程(3):工程(1)又は(2)で得られたカプセルを含む分散液に更に原料シリカを添加してゾル−ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するカプセルを形成する工程
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