以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、駆動源としてモータ1個、入力部2個、車輪部として全方向車輪1個を備える実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3の移動搬送装置について説明する。
<実施例1−1> 図1は、実施例1−1の移動搬送装置10の構成を概念的に示す説明図である。図1に示すように、移動搬送装置10は、本体(図1では不図示)に、回転を出力する駆動源である1個のモータ22と、第1及び第2の入力部12,14と、車輪部である1個の全方向車輪13aと、モータ22から第1及び第2の入力部12,14への回転の伝達を可能にする回転伝達部20とが設けられている。入力部12,14の個数は2であり、駆動源であるモータ22の個数の1よりも多い。モータ22は、移動搬送装置10の本体(図1では不図示)に保持され、本体に対する回転を出力する。モータ22以外の回転伝達部20、入力部12,14、全方向車輪13aは、本体に直接保持されても、モータ22の出力軸(図1では不図示)等を介して間接的に本体に保持されても構わない。
回転伝達部20は、モータ22と第2の入力部14とを、回転が解除可能に伝達されるように第1のクラッチ31を介して接続する第1の回転伝達経路21aと、モータ22と第2の入力部14とを、回転が解除可能に、かつ逆方向の回転に変換されて伝達されるように、直列に接続された第2のクラッチ32及び逆回転装置40を介して接続する第2の回転伝達経路21bと、モータ22と第1の入力部12とを、回転が常に伝達されるように接続する第3の回転伝達経路21cとを有している。第1及び第2のクラッチ31,32は、回転を伝達する連結状態と、回転を伝達しない連結解除状態とを切り替えることができる。逆回転装置40は、回転を逆方向の回転に変換して伝達する。なお、第2のクラッチ32及び逆回転装置40の順序を入れ替え、第2のクラッチ32が第2の入力部14側に配置され、逆回転装置40がモータ22側に配置されても構わない。
全方向車輪13aは、例えば、図22及び図24に示した従来例の全方向車輪と同様に構成され、全方向車輪13aの回転中心軸と同軸に第1及び第2の入力部12,14が結合されている。詳しくは後述するが、全方向車輪13aは、第1及び第2の入力部12,14のいずれか一方又は両方が回転すると、互いに異なる2方向のいずれか一方又は両方に駆動される。
本実施例の図1ならびに以後の実施例の同様の図では、床面に車輪が接するように載置された移動搬送装置を上から見た状態を示している。図1ならびに以後の実施例の同様の図においては、上方向が、移動搬送装置の前方向、右方向が移動搬送装置の右方向を示すとする。ただし、モータ22や、クラッチ31,32及び逆回転装置40を含む回転伝達部20の回転伝達経路21a〜21cは、図1では全方向車輪13aの前側や右側や左側に配置されているが、これらが全方向車輪13aに対して配置される方向は、図示したものに限らない。以後の実施例の同様の図でも同様である。
次に、移動搬送装置10の動作について説明する。モータ22が回転を出力する出力軸(以下では、「モータ22の出力軸」ともいう。)と、第1及び第2の入力部12,14の回転方向には、正方向と逆方向とがある。本実施例では角速度は正負の符号を持たないものとして扱う。以後の実施例でも同様である。
全方向車輪は、図22及び図24と同様に構成され、主車輪と副車輪とが回転する。第1及び第2の入力部12,14が、ともに正方向に同じ角速度で回転すると、全方向車輪13aの主車輪は正方向に回転し、副車輪は回転せず、これにより、全方向車輪13aは移動搬送装置10を前方向へ駆動するとする。第1及び第2の入力部12,14が、ともに逆方向に同じ角速度で回転すると、全方向車輪13aの主車輪は逆方向に回転し、全方向車輪13aの副車輪は回転せず、これにより、全方向車輪13aは移動搬送装置10を後方向へ駆動するとする。第1の入力部12が正方向に、第2の入力部14が逆方向に同じ角速度で回転すると、全方向車輪13aの副車輪は正方向に回転し、全方向車輪13aの主車輪は回転せず、これにより、全方向車輪13aは移動搬送装置10を右方向へ駆動するとする。第1の入力部12が逆方向に、第2の入力部14が正方向に同じ角速度で回転すると、全方向車輪13aの副車輪は逆方向に回転し、全方向車輪13aの主車輪は回転せず、これにより、全方向車輪13aは移動搬送装置10を左方向へ駆動するとする。
モータ22の出力軸が正方向に回転すると第1の入力部12が正方向に回転し、モータ22の出力軸が逆方向に回転すると第1の入力部12が逆方向に回転するとする。第1のクラッチ31が連結状態で第2のクラッチ32が連結解除状態の場合は、モータ22の出力軸が正方向に回転すると第2の入力部14が正方向に回転し、モータ22の出力軸が逆方向に回転すると第2の入力部14が逆方向に回転するとする。第1のクラッチ31が連結解除状態で第2のクラッチ32が連結状態の場合は、第2の回転伝達経路21bが逆回転装置40を含んでいるため、モータ22の出力軸が正方向に回転すると第2の入力部14が逆方向に回転し、モータ22の出力軸が逆方向に回転すると第2の入力部14が正方向に回転するとする。
本実施例や以後の実施例では、1個のモータ(本実施例ではモータ22)から回転が伝えられる各入力部(本実施例では入力部12,14)の角速度が同じである場合を取り上げるが、異なっていても構わない。以後の実施例では、複数のモータを用いる場合も取り上げるが、異なるモータから回転が伝えられる各入力部の角速度が同じであっても、異なっても構わない場合を取り上げる。例えば、第1及び第2のモータがある場合は、第1のモータから回転が伝えられる入力部の角速度と、第2のモータから回転が伝えられる入力部の角速度とは異なっても、同じでも構わない。
第1のクラッチ31が連結状態、かつ第2のクラッチ32が連結解除状態の場合は、モータ22の出力軸が正方向に回転すると、第1及び第2の入力部12,14がともに正方向に同じ角速度で回転するので、全方向車輪13aは移動搬送装置10を前方向へ駆動する。反対に、モータ22の出力軸が逆方向に回転すると、第1及び第2の入力部12,14がともに逆方向に同じ角速度で回転するので、全方向車輪13aは移動搬送装置10を後方向へ駆動する。
第1のクラッチ31が連結解除状態、かつ第2のクラッチ32が連結状態の場合は、モータ22の出力軸が正方向に回転すると、第1の入力部12が正方向に、第2の入力部14が逆方向に同じ角速度で回転するので、全方向車輪13aは移動搬送装置10を右方向へ駆動する。反対に、モータ22の出力軸が逆方向に回転すると、第1の入力部12が逆方向に、第2の入力部14が正方向に同じ角速度で回転するので、全方向車輪13aは移動搬送装置10を左方向へ駆動する。
このように第1及び第2のクラッチ31,32の状態を切替えることにより、全方向車輪13aは、1個のモータ22で移動搬送装置10を前後方向と左右方向に駆動し、移動させることができる。
次に、実施例1−1の具体的な構造の一例を、図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、第1及び第2の入力部12,14が全方向車輪13aの右側にあり、全方向車輪13aの回転中心軸と同軸に結合されている。第1の入力部12は中空軸であり、第1の入力部12の内側に第2の入力部14が同軸に配置されている。全方向車輪13aの回転中心軸と、第1及び第2の入力部12,14とが同軸である場合を例にとりあげて説明するが、全方向車輪13aに結合される第1及び第2の入力部12,14の回転中心軸は交差しても、離れていても構わないし、互いに平行でも、互いに平行でなくても構わない。また、第1及び第2の入力部12,14が全方向車輪13aの片側(右側)にある場合を例に取り上げて説明するが、第1及び第2の入力部12,14が全方向車輪13aの両側(左側と右側)に別々に配置されても構わない。
モータ22の出力軸22xに、第1乃至第3の出力歯車22a,22b,22cが結合されている。第1の出力歯車22aは、第1の入力部12に固定された第1の入力歯車12aと噛み合う。第2の出力歯車22bは、第2の入力部14に第1のクラッチ31を介して固定された第2の入力歯車14aと噛み合う。第3の出力歯車22cは、逆回転装置である中間歯車40aと噛み合う。中間歯車40aは、第2の入力部14に第2のクラッチ32を介して固定された第3の入力歯車14bと噛み合う。歯車12a,14a,22a,22bの歯数は同じである。歯車14b,22cの歯数は同じである。
回転伝達部20が有する第1の回転伝達経路21aは、モータ22の出力軸22xと、第2の出力歯車22bと、第2の入力歯車14aと、第1のクラッチ31とによって構成されている。回転伝達部20が有する第2の回転伝達経路21bは、モータ22の出力軸22xと、第3の出力歯車22cと、中間歯車40aと、第3の入力歯車14bと、第2のクラッチ32とによって構成されている。回転伝達部20が有する第3の回転伝達経路21cは、モータ22の出力軸22xと、第1の出力歯車22aと、第1の入力歯車12aとによって構成されている。
次に、移動搬送装置10の動作について説明する。図2においてクラッチ31,32に付した斜線は、回転を伝達する連結状態を示している。
図2(a)に示すように、第1のクラッチ31が連結状態、第2のクラッチ32が連結解除状態のとき、モータ22の回転によって、第1及び第2の入力部12,14が同方向に同じ角速度で回転し、全方向車輪13aは主車輪のみが駆動され、矢印13xで示すように、前後方向に移動する。
図2(b)に示すように、第1のクラッチ31が連結解除状態、第2のクラッチ32が連結状態のとき、モータ22の回転によって、第1及び第2の入力部12,14が互いに逆方向に、かつ、同じ角速度で回転すると、全方向車輪13aは副車輪のみが駆動され、矢印13yで示すように左右方向に移動する。
<実施例1−2> 図3は、実施例1−2の移動搬送装置10aの構成を概念的に示す説明図である。図3に示すように、実施例1−2の移動搬送装置10aは、1個のモータ22と、1個の全方向車輪13aと、第1及び第2の入力部12,14と、回転伝達部20aと、回転禁止部28aと、本体11とを備える。実施例1−2の移動搬送装置10aは、図1に示した実施例1−1の移動搬送装置10に、第2の入力部14の回転を禁止する停止状態と第2の入力部14の回転を許容する停止解除状態とを選択可能にする回転禁止部28aが追加されている。回転禁止部28aは、第2の入力部14と、移動搬送装置10aの本体11とを、第3のクラッチ33を介して接続する。第3のクラッチ33が連結状態のとき、第2の入力部14は本体11に接続され、第2の入力部14の回転が禁止され、第2の入力部は回転不可となる。第3のクラッチ33が連結解除状態のとき、第2の入力部14の回転は許容される。
実施例1−2の移動搬送装置10aは、第3のクラッチ33が連結解除状態の場合、前述した実施例1−1の移動搬送装置10と同じ動作が可能である。
一方、第1及び第2のクラッチ31,32を連結解除状態とし、第3のクラッチ33を連結状態とすると、第2の入力部14は回転不可となる。この状態でモータ22を回転させると第1の入力部12だけが回転をするため、全方向車輪13aは主車輪と副車輪の両方が回転し、移動搬送装置10aを、前右方向あるいは後左方向となる斜め方向に駆動することができる。
したがって、第1乃至第3のクラッチ31,32,33の状態を切替えることにより、全方向車輪13aは1個のモータ22で移動搬送装置10aを前後方向と左右方向に駆動でき、かつ、前右方向あるいは後左方向となる斜め方向にも駆動することができる。
<実施例1−3> 図4は、実施例1−3の移動搬送装置10bの構成を概念的に示す説明図である。図4に示すように、実施例1−3の移動搬送装置10bは、1個のモータ22と、1個の全方向車輪13aと、第1及び第2の入力部12,14と、回転伝達部20bと、回転禁止部28a,28bと、本体11とを備える。実施例1−3の移動搬送装置10bは、実施例1−2の構成に、第1の入力部12とモータ22とを接続する第3の回転伝達経路21cに第4のクラッチ34が追加され、第1の入力部12の回転を禁止する停止状態と第1の入力部12の回転を許容する停止解除状態とを選択可能にする回転禁止部28bが追加されている。回転禁止部28bは、第1の入力部12と本体11とを第5のクラッチ35を介して接続する。第5のクラッチ35が連結状態のとき第1の入力部12は回転不可となり、第5のクラッチ35が連結解除状態のとき第1の入力部12の回転は許容される。
実施例1−3の移動搬送装置10bは、第4のクラッチ34が連結状態、かつ第5のクラッチ35が連結解除状態の場合には、実施例1−2の移動搬送装置10aと同じ動作が可能である。
一方、第4のクラッチ34が連結解除状態、かつ第5のクラッチ35が連結状態とすると、第1の入力部12は回転不可となる。この状態で、第1のクラッチ31と第2のクラッチ32のうち、いずれか一方を連結状態、かつ他方を連結解除状態にし、かつ第3のクラッチ33を連結解除状態にしてモータ22を回転させると、第2の入力部14だけが回転をする。そのため、全方向車輪13aは主車輪と副車輪の両方が回転し、移動搬送装置10bを、前左方向あるいは後右方向となる斜め方向に駆動することができる。
したがって、第1乃至第5のクラッチ31〜35の状態を切替えることにより、全方向車輪13aは1個のモータ22で移動搬送装置10bを前後方向と左右方向に駆動でき、かつ、前右方向あるいは後左方向あるいは前左方向あるいは後右方向となる斜め方向にも駆動することができる。
また、全てのクラッチ31〜35を連結解除状態にすると、第1の入力部12と第2の入力部14はともに回転自由となるため、全方向車輪13aは主車輪も副車輪も受動的に回転させることができる。
実施例1−3の移動搬送装置10bについて、第1〜第5のクラッチ31〜35の連結状態/連結解除状態と、モータ22の出力軸の回転方向と、第1及び第2の入力部12,14の回転との関係を、次の表1に示す。
表1において、「クラッチ1」〜「クラッチ5」は第1〜第5のクラッチ31〜35であり、「モータ軸」はモータ22の出力軸であり、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14である。
実施例1−3の移動搬送装置10bは、モータ22と第2の入力部14とを、回転が解除可能に伝達されるように第1のクラッチ31を介して接続する第1の回転伝達経路21aと、モータ22と第2の入力部14とを、回転が解除可能に、かつ逆方向の回転に変換されて伝達されるように、直列に接続された第2のクラッチ32及び逆回転装置40を介して接続する第2の回転伝達経路21bとを有し、第2の入力部14の回転を禁止する停止状態と第2の入力部14の回転を許容する停止解除状態とを選択可能にする回転禁止部28aを有している。回転禁止部28aは、第2の入力部14と、移動搬送装置10bの本体11とを、第3のクラッチ33を介して接続する。これらの第1乃至第3のクラッチ31,32,33の連結状態/連結解除状態の組み合わせとモータ22の回転方向とによって、表1に示すように、第2の入力部14は、正方向回転、逆方向回転、回転不可、回転自由の4つの状態を切替えることができる。
一方、第4及び第5のクラッチ34,35の連結状態/連結解除状態の組み合わせとモータ22の回転方向とによって、第1の入力部12も正方向回転、逆方向回転、回転不可、回転自由の4つの状態を切替えることができる。
なお、実施例1−3の移動搬送装置10bには、モータ22と第1の入力部12とを、直列に接続されたクラッチ及び逆回転装置を介して接続する回転伝達経路がない。これは、モータ22が正方向回転と逆方向回転の両方向の回転が可能である場合を取り上げているため、第4のクラッチ34を締結すれば第1の入力部12を正方向にも逆方向にも回転させることができることから、必ずしもモータ22と第1の入力部12とを、直列に接続されたクラッチ及び逆回転装置を介して接続する回転伝達経路を必要としないためである。このように、両方向に回転可能なモータを用いる場合には、回転伝達経路を簡素化することが可能である。
次の表2に、第1及び第2の入力部12,14の状態を、正方向回転、逆方向回転、回転不可に切り替えることによって可能になる移動搬送装置10bの能動動作の例を示す。
表2において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14である。
第1及び第2の入力部12,14の状態の組み合わせを切り替えることで、移動搬送装置10bは、表2に示す能動動作が可能となる。また、第1及び第2の入力部12,14をともに回転自由とすると、全方向車輪13aを受動的に回転させることができる。
各入力部12,14を、正方向回転、逆方向回転、回転不可、回転自由の4つの状態を切替えることができるようにするためには、実施例1−3のように5個のクラッチ31〜35が必要となる。しかし、各入力部12,14で正方向回転、逆方向回転、回転不可、回転自由の4つの状態を切替えることが必要とされない場合もある。例えば、前後方向と左右方向の移動だけが必要な場合は、各入力部12,14には回転不可、回転自由の状態は必要とはされない。この場合は、クラッチは、前述の実施例1−1の構造のように、第1及び第2の回転伝達経路21a,21bだけに用いればよい。
次に、駆動源としてモータ1個、入力部3個、車輪部として全方向車輪1個とオムニ車輪1個、又は全方向車輪1個と普通車輪1個を備える実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3の移動搬送装置について説明する。入力部の個数は、モータの個数より多い。
<実施例2−1> 図5は、実施例2−1の移動搬送装置10cの構成を概念的に示す説明図である。図5に示すように、実施例2−1の移動搬送装置10cは、1個のモータ22と、1個の全方向車輪13aと、1個のオムニ車輪13bと、第1乃至第3の入力部12,14,16と、回転伝達部20cと、回転禁止部28a,28b,28cと、本体11とを備える。本実施例ならびに以後の実施例では理解を容易にするため、全ての車輪の直径(全方向車輪やオムニ車輪では主車輪の直径)を同じとする例を取り上げるが、必ずしもその必要はない。また、本実施例では、全方向車輪13aとオムニ車輪13bの回転中心軸が同軸になるように全方向車輪13aとオムニ車輪13bが配置されている例を取り上げる。
全方向車輪13aには全方向車輪13aの回転中心軸と同軸に第1及び第2の入力部12,14が結合され、オムニ車輪13bにはオムニ車輪13bの回転中心軸と同軸に第3の入力部16が結合されている。オムニ車輪13bは、第3の入力部16が回転すると1方向に駆動され、駆動される方向と交差する方向には移動自在である。本実施例や以後の実施例で取り上げるオムニ車輪は、オムニ車輪に結合された入力部が回転すると1方向に駆動され、駆動される方向と直交する方向には移動自在であるものを取り上げるが、必ずしもそれに限らない。第1及び第2の入力部12,14の回転の正方向、逆方向の定義は、実施例1−1の第1及び第2の入力部12,14と同じとする。第3の入力部16は、正方向に回転すると、オムニ車輪13bが移動搬送装置10cを前方向へ駆動するとする。
モータ22と第1及び第2の入力部12,14とを接続する第1乃至第3の回転伝達経路21a〜21cと回転禁止部28a,28bは、図4に示した実施例1−3と同じである。これにより、第1及び第2の入力部12,14は、第1乃至第5のクラッチ31〜35を用いて、正方向回転、逆方向回転、回転不可、回転自由の状態を切替えることができる。
オムニ車輪13bに結合された第3の入力部16に関して、回転伝達部20cは、モータ22と第3の入力部16とを、回転が解除可能に伝達されるように第6のクラッチ36を介して接続する第4の回転伝達経路21dと、モータ22と第3の入力部16とを、回転が解除可能に、かつ逆方向の回転に変換されて伝達されるように、直列に接続された第7のクラッチ37及び逆回転装置42を介して接続する第5の回転伝達経路21eとを有する。回転禁止部28cは、第3の入力部16と移動搬送装置10cの本体11とを、第8のクラッチ38を介して接続する。回転禁止部28cは、第3の入力部16の回転を禁止する停止状態と第3の入力部16の回転を許容する停止解除状態とを選択可能にする。これにより、第3の入力部16は、第6乃至第8のクラッチ36〜38を用いて、正方向回転、逆方向回転、回転不可、回転自由の状態を切替えることができる。
すなわち、第1乃至第8のクラッチ31〜38を用いることにより、各入力部12,14,16は、正方向回転、逆方向回転、回転不可、回転自由の状態を切替えることができる。
実施例2−1の移動搬送装置10cが可能な能動動作の例を、次の表3に示す。
表3において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14であり、「入力部3」は第3の入力部16である。
「超信地旋回」は2個の車輪の中点を回転中心とする旋回であり、「右超信地旋回」は右回りの超信地旋回を意味し、「左超信地旋回」は左回りの超信地旋回を意味する。「信地旋回」は一方の車輪の位置を回転中心とする旋回であり、「右信地旋回」は右回りの信地旋回を意味し、「左信地旋回」は左回りの信地旋回を意味する。「その他の旋回」は、超信地旋回、信地旋回以外の旋回を意味する。
表3に示すように、1個のモータ22を用いて、移動搬送装置10cの前後方向と左右方向の移動や、前右、前左、後右、後左の各斜め方向への移動、超信地旋回、信地旋回、その他の旋回が可能である。
<実施例2−2> 図6は、実施例2−2の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図6に示すように、実施例2−2の移動搬送装置は、1個のモータ(図6では不図示)と、第1乃至第3の入力部12,14,16と、1個の全方向車輪13aと、1個の普通車輪13cと、回転伝達部(図6では不図示)と、回転禁止部(図6では不図示)と、本体(図6では不図示)とを備える。
回転伝達部と回転禁止部は、前述した実施例2−1と同じ構成であり、各入力部12,14,16を、正方向回転、逆方向回転、回転不可、回転自由に切り替える。以後の実施例の一部でも、回転伝達部や回転禁止部、モータ、本体等の図示を省略する。
実施例2−1との違いは、第3の入力部16に結合されるのが、オムニ車輪13bではなく普通車輪13cである点のみであり、それ以外の構成は実施例2−1と同じである。普通車輪13cの回転中心軸と同軸に第3の入力部16が結合され、普通車輪13cの回転中心軸の位置は実施例2−1のオムニ車輪13bの回転中心軸の位置と同じ、すなわち全方向車輪13aの回転中心軸と同軸である。普通車輪13cは、第3の入力部16が回転すると1方向に駆動され、駆動される方向と交差する方向には移動不自在である。第1乃至第3の入力部12,14,16の回転の正方向、逆方向の定義は、実施例2−1と同じとする。
実施例2−2の移動搬送装置が可能な能動動作の例を、次の表4に示す。
表4において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14であり、「入力部3」は第3の入力部16である。
表4から分かるように、実施例2−2では、1個のモータで前後方向の移動や超信地旋回、信地旋回が可能である。
<実施例2−3> 図7は、実施例2−3の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図7に示すように、実施例2−3の移動搬送装置は、1個のモータ(図7では不図示)と、第1乃至第3の入力部12,14,16と、1個の全方向車輪13aと、1個の普通車輪13cと、回転伝達部(図7では不図示)と、回転禁止部(図7では不図示)と、本体(図7では不図示)とを備える。
実施例2−2との違いは、普通車輪13cの配置されている向きである。図7に示すように、第3の入力部16が同軸に結合される普通車輪13cの回転中心軸と、全方向車輪13aの回転中心軸とが垂直となるように配置されており、全方向車輪13aの回転中心軸の延長線上に、普通車輪13cがある。
第1及び第2の入力部12,14の回転の正方向、逆方向の定義は実施例2−1と同じとする。普通車輪13cに結合される第3の入力部16は、正方向に回転すると、移動搬送装置を右方向へ駆動し、逆方向に回転すると、移動搬送装置を左方向へ駆動するとする。
この実施例2−3の移動搬送装置が可能な能動動作の例を、次の表5に示す。
表5において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14であり、「入力部3」は第3の入力部16である。
表5から分かるように、実施例2−3では、1個のモータで左右方向への移動、信地旋回、その他の旋回が可能である。
次に、駆動源としてモータ1個、入力部4個、車輪部として全方向車輪2個を備える実施例3の移動搬送装置について説明する。入力部の個数は、モータの個数より多い。
<実施例3> 図8は、実施例3の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図8に示すように、実施例3の移動搬送装置は、1個のモータ(図8では不図示)と、4個の入力部12,14,16,18と、2個の全方向車輪13a,15aと、回転伝達部(図8では不図示)と、回転禁止部(図8では不図示)と、本体(図8では不図示)とを備える。回転伝達部は、例えば、モータを共通とし、第1及び第2の入力部12,14と、第3及び第4の入力部16,18とについて、前述した実施例1−3と同様の回転伝達経路を有する。回転禁止部は、例えば、第1及び第2の入力部12,14と、第3及び第4の入力部16,18とについて、前述した実施例1−3と同様のものを持つ。
本実施例では、2個の全方向車輪13a,15aが、それぞれの回転中心軸が同軸となるように配置されている例を取り上げる。
第1の全方向車輪13aに第1及び第2の入力部12,14が第1の全方向車輪13aの回転中心軸と同軸に結合され、第2の全方向車輪15aに第3及び第4の入力部16,18が第2の全方向車輪15aの回転中心軸と同軸に結合されている。各入力部12,14,16,18の回転の正方向、逆方向の定義は実施例1−1と同じとする。
この実施例3の移動搬送装置が可能な能動動作の例を、次の表6に示す。
表6において、「入力部1」〜「入力部4」は第1乃至第4の入力部12,14,16,18である。
表6から分かるように、実施例3は、1個のモータで前後方向と左右方向の移動や、前右、前左、後右、後左の各斜め方向への移動、超信地旋回、信地旋回が可能である。
次に、1個のモータと、2個の入力部と、全方向車輪以外の2個の車輪、すなわち、オムニ車輪や普通車輪を用い、全方向車輪は用いない参考実施例4−1乃至参考実施例4−4の移動搬送装置について説明する。入力部の個数は、モータの個数より多い。
以下の各実施例においては、入力部12,14,16は、オムニ車輪13b,15b,17b又は普通車輪13c,15cの回転中心軸と同軸に、オムニ車輪13b,15b,17b又は普通車輪13c,15cに結合されている場合について説明する。
<参考実施例4−1> 図9は、参考実施例4−1の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図9に示すように、参考実施例4−1の移動搬送装置は、1個のモータ(図9では不図示)と、2個のオムニ車輪13b,15bと、2個の入力部12,14と、回転伝達部(図9では不図示)と、回転禁止部(図9では不図示)と、本体(図9では不図示)とを備える。入力部12,14に関する回転伝達部や回転禁止部は、例えば前述した実施例1−3と同様に構成する。
本実施例では、オムニ車輪13b,15bには、オムニ車輪13b,15bの回転中心軸と同軸に入力部12,14が結合されている。オムニ車輪13b,15bは、それぞれの回転中心軸が同軸となるように配置されている。入力部12,14の回転の正方向、逆方向の定義は実施例2−1のオムニ車輪13bに結合されている入力部16と同じとする。
参考実施例4−1の移動搬送装置が可能な能動動作の例を、次の表7に示す。
表7において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14である。
表7から分かるように、1個のモータで前後方向の移動と、超信地旋回、信地旋回が可能である。
<参考実施例4−2> 図10は、参考実施例4−2の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図10に示すように、参考実施例4−2の移動搬送装置は、1個のモータ(図10では不図示)と、1個のオムニ車輪13b及び1個の普通車輪13cと、2個の入力部12,14と、回転伝達部(図10では不図示)と、回転禁止部(図10では不図示)と、本体(図10では不図示)とを備える。入力部12,14に関する回転伝達部や回転禁止部は、例えば、前述した実施例1−3と同様に構成する。オムニ車輪13bにはオムニ車輪13bの回転中心軸と同軸に第1の入力部12が結合されている。普通車輪13cには普通車輪13cの回転中心軸と同軸に第2の入力部14が結合されている。オムニ車輪13bに結合された第1の入力部12や普通車輪13cに結合された第2の入力部14の回転の正方向、逆方向の定義は、実施例2−1のオムニ車輪13bに結合された入力部16と同じとする。
参考実施例4−2の移動搬送装置が可能な能動動作の例を、次の表8に示す。
表8において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14である。
表8から分かるように、1個のモータで前後方向の移動や、超信地旋回、信地旋回が可能である。
<参考実施例4−3> 図11は、参考実施例4−3の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図11に示すように、参考実施例4−3の移動搬送装置は、図10に示した参考実施例4−2の移動搬送装置と同様に、1個のモータ(図11では不図示)と、1個のオムニ車輪13b及び1個の普通車輪13cと、2個の入力部12,14と、回転伝達部(図11では不図示)と、回転禁止部(図11では不図示)と、本体(図11では不図示)とを備える。入力部12,14に関する回転伝達部や回転禁止部は、例えば、前述した実施例1−3と同様に構成する。
参考実施例4−2との違いは、普通車輪13cの配置されている向きである。図11に示すように、車輪13b,13cはそれぞれの回転中心軸が互いに垂直になるように配置され、オムニ車輪13bの回転中心軸の延長線上に、普通車輪13cが配置されている。オムニ車輪13bに結合される第1の入力部12の回転の正方向、逆方向の定義は、実施例2−1のオムニ車輪13bに結合される第3の入力部16と同じとする。普通車輪13cに結合される第2の入力部14の回転の正方向、逆方向の定義は、実施例2−3の普通車輪13cに結合される第3の入力部16と同じとする。
参考実施例4−3の移動搬送装置が可能な能動動作の例を、次の表9に示す。
表9において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14である。
表9から分かるように、1個のモータで左右への移動や、信地旋回、その他の旋回が可能である。
<参考実施例4−4> 図12は、参考実施例4−4の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図12に示すように、参考実施例4−4の移動搬送装置は、1個のモータ(図12では不図示)と、2個の普通車輪13c,15cと、2個の入力部12,14と、回転伝達部(図12では不図示)と、回転禁止部(図12では不図示)と、本体(図12では不図示)とを備える。入力部12,14に関する回転伝達部や回転禁止部は、例えば、前述した実施例1−3と同様に構成する。
図9に示した参考実施例4−1との違いは、オムニ車輪13b,15bではなく普通車輪13c,15cを用いている点だけであり、それ以外は同じである。
すなわち、普通車輪13c,15cには、普通車輪13c,15cの回転中心軸と同軸に入力部12,14が結合されている。普通車輪13c,15cは、それぞれの回転中心軸が同軸となるように配置されている。普通車輪13c,15cに結合された入力部12,14の回転の正方向、逆方向の定義は参考実施例4−1の第1及び第2の入力部12,14と同じとする。
参考実施例4−4の移動搬送装置が可能な能動動作の例を、次の表10に示す。
表10において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14である。
表10から分かるように、1個のモータで前後の移動や、超信地旋回、信地旋回が可能である。
次に、1個のモータと、3個の入力部と、全方向車輪以外の3個の車輪とを用いる参考実施例5−1乃至参考実施例5−3の移動搬送装置について説明する。入力部の個数は、モータの個数より多い。
<参考実施例5−1> 図13は、参考実施例5−1の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図13に示すように、参考実施例5−1の移動搬送装置は、1個のモータ(図13では不図示)と、3個のオムニ車輪13b,15b,17bと、3個の入力部12,14,16と、回転伝達部(図13では不図示)と、回転禁止部(図13では不図示)と、本体(図13では不図示)とを備える。入力部12,14,16に関する回転伝達部や回転禁止部は、例えば、前述した実施例2−1と同様に構成する。
第1及び第2のオムニ車輪13b,15bはそれぞれの回転中心軸が同軸となるように配置され、第3のオムニ車輪17bは、第3のオムニ車輪17bの回転中心軸が第1及び第2のオムニ車輪13b,15bの回転中心軸と垂直になるように、かつ、第1のオムニ車輪13bと第2のオムニ車輪15bの中点から、第1のオムニ車輪13bと第2のオムニ車輪15bの間の距離の半分だけ離れて配置されているとする。
オムニ車輪13b,15b,17bには、オムニ車輪13b,15b,17bの回転中心軸と同軸に、入力部12,14,16が結合されている。第1及び第2のオムニ車輪13b,15bに結合された第1及び第2の入力部12,14の回転の方向の定義は、実施例2−1のオムニ車輪13bに結合された第3の入力部16と同じとする。第3のオムニ車輪17bに結合された入力部16の回転の方向の定義は、参考実施例4−3の普通車輪13cに結合された第2の入力部14と同じとする。
参考実施例5−1の移動搬送装置が可能な能動動作の例を、次の表11に示す。
表11において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14であり、「入力部3」は第3の入力部16である。
表11から分かるように、1個のモータで前後方向と左右方向の移動や、前右、前左、後右、後左の斜め方向への移動、超信地旋回、その他の旋回が可能である。参考実施例5−1と参考実施例5−2の移動搬送装置の「超信地旋回」は2個の車輪13b,15bの中点を回転中心とする旋回であり、「右超信地旋回」は右回りの超信地旋回を意味し、「左超信地旋回」は左回りの超信地旋回を意味する。「信地旋回」は車輪13b,15bの一方の車輪の位置を回転中心とする旋回であり、「右信地旋回」は右回りの信地旋回を意味し、「左信地旋回」は左回りの信地旋回を意味する。「その他の旋回」は、超信地旋回、信地旋回以外の旋回を意味する。
<参考実施例5−2> 図14は、参考実施例5−2の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図14に示すように、参考実施例5−2の移動搬送装置は、1個のモータ(図14では不図示)と、3個のオムニ車輪13b,15b,17bと、3個の入力部12,14,16と、回転伝達部(図14では不図示)と、回転禁止部(図14では不図示)と、本体(図14では不図示)とを備える。入力部12,14,16に関する回転伝達部や回転禁止部は、例えば、前述した実施例2−1と同様に構成する。
この実施例では、図14に示すように、第1及び第2のオムニ車輪13b,15bは、それぞれの回転中心軸が互いに垂直になるように配置され、第1のオムニ車輪13bの回転中心軸の延長線上に第2のオムニ車輪15bが配置されている。また、第1のオムニ車輪13bと第3のオムニ車輪17bは、それぞれの回転中心軸が互いに垂直になるように配置され、第3のオムニ車輪17bの回転中心軸の延長線上に第1のオムニ車輪13bが、第1のオムニ車輪13bと第2のオムニ車輪15bの間の距離と、第1のオムニ車輪13bと第3のオムニ車輪17bの間の距離とが同じになるように、配置されている。
オムニ車輪13b,15b,17bには、それぞれ、オムニ車輪13b,15b,17bの回転中心軸と同軸に入力部12,14,16が結合されている。第1のオムニ車輪13bに結合される第1の入力部12の回転の方向の定義は、実施例2−1の第3の入力部16と同じとする。第2及び第3のオムニ車輪15b,17bに結合されている第2及び第3の入力部14,16の回転の方向の定義は、参考実施例4−3の第2の入力部14と同じとする。
参考実施例5−2の移動搬送装置が可能な能動動作の例を、次の表12に示す。
表12において、「入力部1」は第1の入力部12であり、「入力部2」は第2の入力部14であり、「入力部3」は第3の入力部16である。
表12から分かるように、1個のモータで前後方向と左右方向の移動や、前右、前左、後右、後左の斜め方向への移動、信地旋回、その他の旋回が可能である。
<参考実施例5−3> 図15〜図17は、参考実施例5−3の移動搬送装置の構成を概念的に示す説明図である。図15〜図17に示すように、参考実施例5−3の移動搬送装置は、1個のモータ(図15〜図17では不図示)と、全方向車輪以外の3個の車輪13b,13c;15b,15c;17bと、3個の入力部12,14,16と、回転伝達部(図15〜図17では不図示)と、回転禁止部(図15〜図17では不図示)と、本体(図15〜図17では不図示)とを備える。入力部12,14,16に関する回転伝達部や回転禁止部は、例えば、前述した実施例2−1と同様に構成する。それぞれの車輪13b,13c;15b,15c;17bに結合された入力部12,14,16に対して、正方向回転、逆方向回転、回転不可、回転自由などを切替えることで、モータ1個で種々の能動的な動作が可能となる。
図15(a)に示す例では、3個のオムニ車輪13b,15b,17bの回転中心軸が1点で交わり、かつ、互いに等しい角度(120°)で交差するように、配置されている。この例では、前後方向、斜め方向の移動と旋回が可能である。
図15(b)に示す例では、第1及び第2のオムニ車輪13b,15bが同軸に配置されている。第3のオムニ車輪17bは、第3のオムニ車輪17bの回転中心軸が第1及び第2のオムニ車輪13b,15bの回転中心軸と平行になるように配置され、第3のオムニ車輪17bは、第1及び第2のオムニ車輪13b,15bの両方と等しい距離だけ離れて配置されている。この例では、前後方向の移動と旋回が可能である。
図15(c)に示す例では、第1及び第2のオムニ車輪13b,15bが同軸に配置されている。第3のオムニ車輪17bは、第3のオムニ車輪17bの回転中心軸が第1及び第2のオムニ車輪13b,15bの回転中心軸と垂直になるように、第1及び第2のオムニ車輪13b,15bの回転中心軸の延長線上に、第1及び第2のオムニ車輪13b,15bの両方と等しい距離だけ離れて配置されている。この例では、前後方向、左右方向、斜め方向の移動と旋回が可能である。
図16(a)に示す例では、図15(c)の第3のオムニ車輪17bが、普通車輪13cに代わっている。この例では、左右方向の移動と旋回が可能である。
図16(b)に示す例では、第1及び第2のオムニ車輪13b,15bが互いに平行に配置されている。第1及び第2のオムニ車輪13b,15bは、第1及び第2のオムニ車輪13b,15bの回転中心軸方向の位置が揃えられている。普通車輪13cは、普通車輪13cの回転中心軸が第1及び第2のオムニ車輪13b,15bの回転中心軸と垂直になるように、第1及び第2のオムニ車輪13b,15bの両方と等しい距離だけ離れて配置されている。この例では、前後方向の移動と旋回が可能である。
図17(a)に示す例では、図13の第1及び第2のオムニ車輪13b,15bが、普通車輪13c,15cに代わっている。この例では、前後方向の移動と旋回が可能である。
図17(b)に示す例では、図15(b)の第1及び第2のオムニ車輪13b,15bが、普通車輪13c,15cに代わっている。この例では、前後方向の移動と旋回が可能である。
次に、2個のモータと、3個又は4個の入力部と、1個の全方向車輪及び1個のオムニ車輪、又は2個の全方向車輪を用いる実施例6−1乃至実施例6−4の移動搬送装置について説明する。入力部の個数は、モータの個数より多い。
<実施例6−1> 図18は、実施例6−1の移動搬送装置10dの構成を概念的に示す説明図である。
前述のモータ1個を用いる場合に示した車輪配置のうち、入力部の個数が3以上となる車輪配置のいずれについても、モータを2個にする場合を考えることができる。
図18に示すように、実施例6−1は、実施例2−1の改造例であり、駆動源としてモータ2個を用いる。図18において入力部12,14,16より上側に示された構成は、図5に示した実施例2−1と同じである。実施例6−1は、実施例2−1の構成に、図18において入力部12,14,16より下側に示した構成が追加されている。すなわち、第2のモータ24と、クラッチ51,52,54,56,57及び逆回転装置44,46を含む回転伝達経路23a〜23eが追加されている。
回転伝達部20dは、第2のモータ24と第1及び第2の入力部12,14との間に、第1のモータ22と第1及び第2の入力部12,14との間の回転伝達経路21a,21b,21cと同じ構成の回転伝達経路23a,23b,23cが追加されている。このため、第1のモータ22によって実現していた第1及び第2の入力部12,14の回転と同じことは、第2のモータ24によっても可能である。
第2のモータ24と第3の入力部16との間には、第1のモータ22と第3の入力部16との間の回転伝達経路21d,21eと同じ構成の回転伝達経路23d,23eが追加されている。このため、第1のモータ22によって実現していた第3の入力部16の回転と同じことは、第2のモータ24によっても可能である。
つまり、各入力部12,14,16は、第1のモータ22による正方向回転、第1のモータ22による逆方向回転、第2のモータ24による正方向回転、第2のモータ24による逆方向回転、回転不可、回転自由の6つの状態を切替えることができるようになる。モータが1個のみであった場合と比較して、可能となる移動搬送装置10dの能動動作の種類が増える。
例えば、モータ1個のみを用いる実施例2−1では、前後移動しながら向きを変えることはできなかった。これに対し、本実施例では、例えばクラッチ31,34,56を連結状態にし、それ以外のクラッチを連結解除状態にすることにより、第1及び第2の入力部12,14は第1のモータ22が駆動し、第3の入力部16は第2のモータ24が駆動するようにできるので、全方向車輪13aの前後方向の移動速度とオムニ車輪13bの前後方向の移動速度とに差がある状態にして、前後移動しながら向きを変えることも可能となる。
前述のモータ1個を用いる場合に示した車輪配置のうち、入力部の個数が3以上となる車輪配置のいずれについても、同様に、モータ24を用いる回転伝達経路を追加することができ、それにより、可能となる移動搬送装置の能動動作の種類が増える場合がある。
実施例6−1では、モータ2個を有する場合について、多くの回転伝達経路を有する構造を示した。しかしながら、実際には、移動搬送装置に必要とされる動作を考慮し、必要となる回転伝達経路のみで構成すればよい。以下に説明する実施例6−2は、実施例6−1の構造の一部が省略されている。
<実施例6−2> 図19は、実施例6−2の移動搬送装置10eの構成を概念的に示す説明図である。
図19に示すように、実施例6−2の移動搬送装置10eは、駆動源である2個のモータ22,24と、3個の入力部12,14,16と、車輪部である全方向車輪13a及びオムニ車輪13bと、回転伝達部20eとを備える。車輪13a,13bの種類や、車輪13a,13b及び入力部12,14,16の配置や、モータ22,24及び入力部12,14,16の個数は実施例6−1と同じであるが、回転伝達部20eは、実施例6−1よりも簡単な構成である。また、実施例6−1は回転禁止部を備えているが、実施例6−2は備えていない。
回転伝達部20eは、全方向車輪13aに結合された入力部12,14とモータ22との間を接続し回転を伝達する回転伝達経路21a,21b,21cと、オムニ車輪13bに結合された入力部16と第2のモータ24とを接続し回転を伝達する回転伝達経路23aとを有している。すなわち、回転伝達部20eは、(i)第1のモータ22と第2の入力部14とを、回転が解除可能に伝達されるように第1のクラッチ31を介して接続する第1の回転伝達経路21aと、(ii)第1のモータ22と第2の入力部14とを、回転が解除可能に、かつ逆方向の回転に変換されて伝達されるように、直列に接続された第2のクラッチ32と逆回転装置40とを介して接続する第2の回転伝達経路21bと、(iii)第1のモータ22と第1の入力部12とを、回転が常に伝達されるように接続する第3の回転伝達経路21cと、(iv)第2のモータ24と第3の入力部16とを、回転が常に伝達されるように接続する第4の回転伝達経路23aとを有している。
別の見方をすると、実施例1−1の構成に、オムニ車輪13bと、オムニ車輪13bと同軸に結合された第3の入力部16と、第2のモータ24と、第2のモータ24と第3の入力部16とを常時接続し、第2のモータ24の回転を第3の入力部16に伝達する回転伝達経路23aとが追加されている。
全方向車輪13aは、実施例1−1と同様に、クラッチ31,32の切り替えにより前後方向と左右方向に駆動される。オムニ車輪13bは前後方向に駆動され、左右方向には移動自在である。
第1のクラッチ31が連結状態、第2のクラッチ32が連結解除状態のとき、第1のモータ22の回転によって、第1及び第2の入力部12,14が同方向に同じ角速度で回転し、全方向車輪13aは主車輪のみが駆動され、全方向車輪13aは前後方向に移動する。オムニ車輪13bは、第2のモータ24の回転によって、前後方向に移動する。
全方向車輪13aとオムニ車輪13bが前後方向に同じ速度で移動すると、移動搬送装置10eは、前後方向に移動する。全方向車輪13aの前後方向の移動速度とオムニ車輪13bの前後方向の移動速度とに差があると、移動搬送装置10eは旋回する。なお、第1のクラッチ31が連結状態のとき、全方向車輪13aは副車輪の回転が禁止された状態であるため、移動搬送装置10eが左右方向に移動することはない。
第1のクラッチ31が連結解除状態、第2のクラッチ32が連結状態のとき、第1のモータ22の回転によって、第1及び第2の入力部12,14は互いに逆方向に、かつ、同じ角速度で回転する。この場合、全方向車輪13aは副車輪のみが駆動され、全方向車輪13aは左右方向に移動する。
このとき、第2のモータ24の回転によって、第3の入力部16が回転すると、オムニ車輪13bは、前後方向に移動する。その結果、移動搬送装置10eは旋回する。
一方、第2のモータ24が停止していると、オムニ車輪13bは左右方向に移動自在であるため、第1のモータ22の回転による全方向車輪13aの副車輪の駆動のみによって、移動搬送装置10eは、左右方向に移動する。
以上のように、実施例6−2の移動搬送装置10eは、2個のモータ22,24を用いて、前後方向と左右方向の移動や、旋回が可能である。
<実施例6−3> 図20は、実施例6−3の移動搬送装置10fの構成を概念的に示す説明図である。
図20に示すように、実施例6−3の移動搬送装置10fは、駆動源である2個のモータ22,24と、3個の入力部12,14,16と、車輪部である全方向車輪13a及びオムニ車輪13bと、回転伝達部20fと、回転禁止部29と、本体11とを備える。車輪13a,13bの種類や、車輪13a,13b及び入力部12,14,16の配置や、モータ22,24及び入力部12,14,16の個数は実施例6−1と同じであるが、回転伝達部20fや回転禁止部は、実施例6−1よりも簡単な構成である。
すなわち、回転伝達部20fは、(i)第1のモータ22と第2の入力部14とを、回転が解除可能に伝達されるように第1のクラッチ31を介して接続する第1の回転伝達経路21aと、(ii)第2のモータ24と第2の入力部14とを、回転が解除可能に伝達されるように第2のクラッチ32を介して接続する第2の回転伝達経路23aと、(iii)第1のモータ22と第1の入力部12とを、回転が常に伝達されるように接続する第3の回転伝達経路21bと、(iv)第2のモータ24と第3の入力部16とを、回転が解除可能に伝達されるように第3のクラッチ33を介して接続する第4の回転伝達経路23bとを有する。回転禁止部29は、移動搬送装置10fの本体11と第3の入力部16とを第4のクラッチ34を介して接続し、第3の入力部16の回転を禁止する停止状態と第3の入力部16の回転を許容する停止解除状態とを選択可能にする。
次に、実施例6−3の移動搬送装置10fの動作について説明する。
第1のクラッチ31が連結状態、第2のクラッチ32が連結解除状態、第3のクラッチ33が連結状態、第4のクラッチ34が連結解除状態のとき、第1のモータ22の回転によって、第1及び第2の入力部12,14が同方向に同じ角速度で回転すると、全方向車輪13aは主車輪のみが駆動され、全方向車輪13aは前後方向にのみ移動する。また、第2のモータ24の回転によって、オムニ車輪13bは、前後方向に移動する。車輪13a,13bの移動速度が同じであれば、移動搬送装置10fは前後方向に移動する。車輪13a,13bの移動速度に差があれば、移動搬送装置10fは旋回する。なお、全方向車輪13aは副車輪が回転できない状態であるため、移動搬送装置10fが左右方向に移動することはない。
第1のクラッチ31が連結解除状態、第2のクラッチ32が連結状態、第3のクラッチ33が連結解除状態、第4のクラッチ34が連結状態のとき、第1のモータ22の回転によって第1の入力部12が回転し、第2のモータ24の回転によって第2の入力部14が回転し、全方向車輪13aは主車輪と副車輪の両方あるいはいずれ一方が駆動され、全方向車輪13aは、前後方向、左右方向、斜め方向の移動が可能である。オムニ車輪13bは、第3のクラッチ33が連結解除状態、第4のクラッチ34が連結状態であるため、前後方向に移動は禁止され、左右方向の移動のみが可能となる。その結果、移動搬送装置10fは、全方向車輪13aの駆動に伴って、左右方向に移動し、あるいは旋回する。
以上のように、実施例6−3の移動搬送装置10fは、2個のモータ22,24を用いて、前後方向と左右方向の移動や、旋回が可能である。
<実施例6−4> 図21は、実施例6−4の移動搬送装置10gの構成を概念的に示す説明図である。
図21に示すように、実施例6−4の移動搬送装置10gは、2個のモータ22,24と、4個の入力部12,14,16,18と、車輪部である2個の全方向車輪13a,15aと、回転伝達部20gとを備える。
第1の全方向車輪13aは、第1の全方向車輪13aと同軸に第1及び第2の入力部12,14が結合されている。第2の全方向車輪15aは、第2の全方向車輪15aと同軸に第3及び第4の入力部16,18が結合されている。
回転伝達部20gは、(i)第1のモータ22と第2の入力部14とを、回転が解除可能に伝達されるように第1のクラッチ31を介して接続する第1の回転伝達経路21aと、(ii)第2のモータ24と第2の入力部14とを、回転が解除可能に伝達されるように第4のクラッチ34を介して接続する第2の回転伝達経路23aと、(iii)第1のモータ22と第1の入力部12とを、回転が常に伝達されるように接続する第3の回転伝達経路21cと、(iv)第1のモータ22と第3の入力部16とを、回転が解除可能に伝達されるように第2のクラッチ32を介して接続する第4の回転伝達経路21bと、(v)第2のモータ24と第3の入力部16とを、回転が解除可能に伝達されるように第3のクラッチ33を介して接続する第5の回転伝達経路23bと、(vi)第2のモータ24と第4の入力部18とを、回転が常に伝達されるように接続する第6の回転伝達経路23cとを有する。
次に、実施例6−4の移動搬送装置10gの動作について説明する。
第1のクラッチ31が連結状態、第2のクラッチ32が連結解除状態、第3のクラッチ33が連結状態、第4のクラッチ34が連結解除状態のとき、第1のモータ22の回転によって、第1及び第2の入力部12,14が同方向に同じ角速度で回転し、第1の全方向車輪13aは主車輪のみが駆動され、第1の全方向車輪13aは前後方向にのみ移動する。また、第2のモータ24の回転によって、第3及び第4の入力部16,18が同方向に同じ角速度で回転し、第2の全方向車輪15aは主車輪のみが駆動され、第2の全方向車輪15aは前後方向に移動する。移動搬送装置10gは、第1及び第2の全方向車輪13a,15aが移動する速度が同じであれば前後方向に移動し、第1及び第2の全方向車輪13a,15aが移動する速度に差があれば旋回する。なお、第1及び第2の全方向車輪13a,15aは副車輪が回転できない状態であるため、移動搬送装置10gが左右方向に移動することはない。
第1のクラッチ31が連結解除状態、第2のクラッチ32が連結状態、第3のクラッチ33が連結解除状態、第4のクラッチ34が連結状態のとき、第1のモータ22の回転によって、第1の入力部12と第3の入力部16とが同方向に同じ速度で回転し、第2のモータ24の回転によって第2の入力部14と第4の入力部18とが同方向に同じ速度で回転する。これによって、第1及び第2の全方向車輪13a,15aは、移動方向と移動速度が同じになるように駆動され、移動搬送装置10gは、前後方向、左右方向、斜め方向に移動する。
以上のように、実施例6−4の移動搬送装置10gは、2個のモータ22,24を用いて、前後方向と左右方向と斜め方向の移動や、旋回が可能である。
<まとめ> 以上に説明した移動搬送装置10,10a〜10gは、少ないモータの個数で様々な動作が可能である。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
例えば、全方向車輪は、従来例1、2と異なるタイプのものであってもよい。各車輪の直径は同じでも異なっても構わない。回転伝達経路には、回転方向を変える逆回転装置や、回転速度を変える減速機構・増速機構などが追加されても構わない。
各車輪の直径が異なる場合の車輪の配置は次のようにしてもよい。各実施例で「2つの車輪の回転中心軸が同軸になるように車輪を配置」した箇所は、「移動搬送装置を上から見ると、2つの車輪の回転中心軸が同軸になるように見えるように車輪を配置」すればよい。各実施例で「2つの車輪の回転中心軸が垂直になるように車輪を配置」した箇所は、「移動搬送装置を上から見ると、2つの車輪の回転中心軸が垂直になるように見えるように車輪を配置」すればよい。
全方向車輪、オムニ車輪、普通車輪は、全方向車輪、オムニ車輪、普通車輪の回転中心軸と入力部とが同軸にはならないように、入力部に結合されても構わない。
入力部の形状は軸状であっても軸状でなくてもよく、回転の中心となる軸(回転中心軸)を有するものであればよい。例えば、円盤状でもよい。
実施例で取り上げたオムニ車輪は、オムニ車輪に結合された入力部が回転すると1方向に駆動され、駆動される方向と直交する方向には移動自在であるものを取り上げたが、必ずしもその必要はない。オムニ車輪に結合された入力部が回転すると1方向に駆動され、駆動される方向と交差する方向、例えば、斜めに交差する方向に移動自在であるものでもよい。例えば、メカナムホイールと呼ばれる車輪でもよい。メカナムホイールは、主車輪の外周に副車輪を並べたものであり、主車輪の中心から見ると、副車輪の回転中心軸は主車輪の円周方向に対して斜め方向となっており、副車輪は回転自在である。
本発明の移動搬送装置に、回転自在な補助車輪を追加したり、駆動され前進・後進する車輪や、駆動され前後方向と左右方向と斜め方向の移動が可能な全方向車輪などを追加しても構わない。
本発明の移動搬送装置は、車輪が下方に突出して床面等に接する構成に限らず、上下を反転した構成で用いることもできる。例えば、上方に突出した車輪で被搬送物を下から支え、車輪の駆動によって被搬送物を所望の方向に移動させたり旋回させたりするように構成することも可能である。