以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置およびその製造方法を説明する。以下では、フレキシブル基板を有するOLED表示装置を例示するが、本発明の実施形態は、有機EL表示装置に限られず、有機EL照明装置などの他の有機ELデバイスであってもよく、以下に例示する実施形態に限定されない。
まず、図1(a)および(b)を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置100の基本的な構成を説明する。図1(a)は、本発明の実施形態によるOLED表示装置100のアクティブ領域の模式的な部分断面図であり、図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。
OLED表示装置100は、複数の画素を有し、画素ごとに少なくとも1つの有機EL素子(OLED)を有している。ここでは、簡単のために、1つのOLEDに対応する構造について説明する。
図1(a)に示す様に、OLED表示装置100は、フレキシブル基板(以下、単に「基板」ということがある。)1と、基板1上に形成されたTFTを含む回路(「駆動回路」または「バックプレーン回路」ということがある。)2と、回路2上に形成された無機保護層2Paと、無機保護層2Pa上に形成された有機平坦化層2Pbと、有機平坦化層2Pb上に形成されたOLED3と、OLED3上に形成されたTFE構造10とを有している。OLED3は例えばトップエミッションタイプである。OLED3の最上部は、例えば、上部電極またはキャップ層(屈折率調整層)である。複数のOLED3が配列されている層をOLED層3ということがある。TFE構造10の上にはオプショナルな偏光板4が配置されている。なお、回路2とOLED層3とが一部の構成要素を共有してもよい。また、例えば、TFE構造10と偏光板4との間にタッチパネル機能を担う層が配置されてもよい。すなわち、OLED表示装置100は、オンセル型のタッチパネル付き表示装置に改変され得る。
基板1は、例えば厚さが15μmのポリイミドフィルムである。TFTを含む回路2の厚さは例えば4μmである。無機保護層2Paは、例えばSiNx層(500nm)/SiO2層(100nm)(上層/下層)である。無機保護層2Paは、この他、例えば、SiO2層/SiNx層/SiO2層という3層の構成でも良く、各層の厚さは、例えば200nm/300nm/100nmである。有機平坦化層2Pbは、例えば厚さが4μmの感光性アクリル樹脂層または感光性ポリイミド層である。OLED3の厚さは例えば1μmである。TFE構造10の厚さは例えば2.5μm以下である。
図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。OLED3の直上に第1無機バリア層(例えばSiNx層)12が形成されており、第1無機バリア層12の上に有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14が形成されており、有機バリア層14の上に第2無機バリア層(例えばSiNx層)16が形成されている。
例えば、第1無機バリア層12は例えば厚さが1.5μmのSiNx層であり、第2無機バリア層16は例えば厚さが800nmのSiNx層であり、有機バリア層14は例えば厚さが100nm未満のアクリル樹脂層である。第1無機バリア層12および第2無機バリア層16の厚さはそれぞれ独立に、200nm以上1500nm以下であり、有機バリア層14の厚さは50nm以上200nm未満である。TFE構造10の厚さは400nm以上3μm未満であることが好ましく、400nm以上2.5μm以下であることがさらに好ましい。
TFE構造10は、OLED表示装置100のアクティブ領域(図2中のアクティブ領域R1参照)を保護するように形成されており、少なくともアクティブ領域R1には、上述したように、OLED3に近い側から順に、第1無機バリア層12、有機バリア層14、および第2無機バリア層16を有している。なお、有機バリア層14は、アクティブ領域R1の全面を覆う膜として存在しているのではなく、開口部を有している。有機バリア層14の内、開口部を除く、実際に有機膜が存在する部分を「中実部」ということにする。有機バリア層14は、例えば、特許文献1または2に記載の方法、あるいは、後述する成膜装置200を用いて形成することができる。
また、「開口部」(「非中実部」ということもある。)は、中実部で包囲されている必要はなく、切欠きなどを含み、開口部においては、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している。以下において、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している部分を「無機バリア層接合部」という。
次に、図2および図3を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置100の構造および製造方法を説明する。
図2に本発明の実施形態によるOLED表示装置100の模式的な平面図を示す。また、図3(a)〜(c)および図4(a)〜(d)を参照して、OLED表示装置100の断面構造を説明する。図3(a)および(b)はOLED表示装置100の模式的な断面図であり、図3(a)は図2中の3A−3A'線に沿った断面図であり、図3(b)は図2中の3B−3B'線に沿った断面図である。図3(c)は各層の側面のテーパー角θを示す断面図である。図4(a)〜(d)はOLED表示装置100の模式的な断面図であり、図4(a)は図2中の4A−4A'線に沿った断面図であり、図4(b)は図2中の4B−4B'線に沿った断面図であり、図4(c)は図2中の4C−4C'線に沿った断面図であり、図4(d)は図2中の4D−4D'線に沿った断面図である。
まず、図2を参照する。基板1上に形成されている回路2は、複数のTFT(不図示)と、それぞれが複数のTFT(不図示)のいずれかに接続された複数のゲートバスライン(不図示)および複数のソースバスライン(不図示)とを有している。回路2は、複数のOLED3を駆動するための公知の回路であってよい。複数のOLED3は、回路2が有する複数のTFTのいずれかに接続されている。OLED3も公知のOLEDであってよい。
回路2は、さらに、複数のOLED3が配置されているアクティブ領域(図2中の破線で囲まれた領域)R1の外側の周辺領域R2に配置された複数の端子34と、複数の端子34と複数のゲートバスラインまたは複数のソースバスラインのいずれかとを接続する複数の引出し配線32を有している。複数のTFT、複数のゲートバスライン、複数のソースバスライン、複数の引出し配線32および複数の端子34を含む回路2全体を駆動回路層2ということがある。また、駆動回路層2の内で、アクティブ領域R1内に形成されている部分を駆動回路層2Aと表記する。
なお、図2等において、駆動回路層2の構成要素として、引出し配線32および/または端子34だけを図示することがあるが、駆動回路層2は、引出し配線32および端子34を含む導電層だけでなく、さらなる1以上の導電層、1以上の絶縁層および1以上の半導体層を有している。駆動回路層2に含まれる導電層、絶縁層、半導体層の構成は、例えば、後に図9(a)および(b)に例示するTFTの構成によって変わり得る。また、基板1上に、駆動回路層2の下地膜として、絶縁膜(ベースコート)が形成されてもよい。
基板1の法線方向から見たとき、無機保護層2Paが形成された領域内に、有機平坦化層2Pbが形成されており、有機平坦化層2Pbが形成された領域内に、アクティブ領域R1(2A、3)が配置されている。薄膜封止構造10の外縁は、複数の引出し配線32と交差し、かつ、有機平坦化層2Pbの外縁と無機保護層2Paの外縁との間に存在する。したがって、有機平坦化層2Pbは、OLED層3とともに、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲さている(図3(b)および図4(b)参照)。無機保護層2Paは、少なくとも複数の端子34を露出するように形成される。一旦、端子34を覆うように無機保護膜を形成した後、フォトリソグラフィプロセスで、端子34を露出させる開口部を有する無機保護層2Paを形成してもよい。
無機保護層2Paは、駆動回路層2を保護する。有機平坦化層2Pbは、OLED層3が形成される下地の表面を平坦化する。有機平坦化層2Pbは、有機バリア層14と同様に、無機保護層2Paや無機バリア層12、16に比べて水蒸気バリア性が低い。したがって、図6〜図8に示す比較例のOLED表示装置100Cの有機平坦化層2Pbcのように、その一部が大気(周辺雰囲気)に晒されていると、そこから水分を吸収する。その結果、有機平坦化層2Pbcが大気中の水蒸気をアクティブ領域R1内へ導く経路となってしまう。上述した様に、実施形態によるOLED表示装置100においては、有機平坦化層2Pbは、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲さているので、有機平坦化層2Pbから水分がアクティブ領域R1内に導かれることが防止される。
有機平坦化層2Pbは、感光性を有する樹脂から形成されていることが好ましい。有機平坦化層2Pbは、種々の塗布法や印刷法を用いて形成される。また、感光性を有していると、フォトリソグラフィプロセスで、所定の領域にだけ有機平坦化層2Pbを容易に形成することができる。感光性樹脂は、ポジ型でもネガ型でもよい。感光性を有するアクリ樹脂やポリイミド樹脂を好適に用いることができる。もちろん、別途フォトレジストを用いれば、感光性を有しない樹脂を用いて有機平坦化層2Pbを形成することもできる。
有機平坦化層2Pb上に、OLED層3を形成する前に、有機平坦化層2Pbに含まれる水分を除去するために、加熱(ベーク)することが好ましい。加熱温度は、例えば200℃以上(例えば1時間以上)が好ましく、300℃以上(例えば15分以上)がさらに好ましい。雰囲気は減圧下が好ましいが、大気圧であってよい。また、露点温度が−50℃以下の乾燥空気または乾燥窒素の雰囲気が好ましい。この加熱(ベーク)工程において熱劣化が生じないように、耐熱性の高い樹脂材料が好ましく、例えば、ポリイミドが好ましい。
なお、有機平坦化層2Pbを形成した後、OLED層3を形成するまでに、製造途中の素子基板が一時的に保管または運搬されることがある。すなわち、駆動回路層2、無機保護層2Paおよび有機平坦化層2Pbを形成した素子基板を作製した後、OLED層3を形成するまでに、時間が空く(例えば、1日以上数日間にわたって保管する)、あるいは、別の工場に移動することがある。この間に、有機平坦化層2Pbの表面が汚染されること、もしくは、移動の際にダストが付着することを防止する方法として、例えば、有機平坦化層2Pbを覆う有機高分子膜を形成すればよい。有機高分子膜は、有機平坦化層2Pbの全面を覆う様に形成されることが好ましい。
有機高分子膜を形成する工程は、例えば、有機高分子の溶液を有機平坦化層2Pb上に付与する工程を包含する。有機高分子の溶液は、公知の塗布法(例えば、スピンコート法およびスロットコート法)を用いて行われる。なお、ドライフィルムを用いることもできるが、コスト等の観点からは、有機高分子の溶液を用いる方法が有利である。
有機高分子膜は、水溶性高分子から形成されていることが好ましい。有機高分子膜が水溶性高分子から形成されていると、水系溶媒で有機高分子膜を溶解させることによって、有機高分子膜を容易に除去することができる。水系溶媒は、素子基板の汚染を抑制することができるとともに、環境にも優しいので、処理コストを低くおさえることができる。
水溶性高分子としては、公知の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド(PAM)、ゼラチンおよびセルロース、ならびにこれらの誘導体を用いることができる。この中でも、ポリビニルアルコールを好適に用いることができる。
ここで、水系溶媒は、水、水と混和する有機溶媒、または、水と混和する有機溶媒と水との混合溶媒をいう。水と混和する有機溶媒としては、例えば、アルコールおよびケトンを挙げられる。溶媒の沸点は低い方が好ましいので、炭素数が少ないアルコール、例えば、メタノールおよびエタノールが好ましい。
ポリビニルアルコールを用いて、有機高分子膜を形成する場合、例えば、純水とメタノールとを6:4の質量比で混合した溶媒に対し、ポリビニルアルコールを3質量%溶解した溶液を用いることができる。
この後、100℃以下、例えば、80℃で30分間程度放置することによって、混合溶媒を揮発・除去する。有機高分子膜の表面が粘着性有しない程度に混合溶媒を揮発・除去することが好ましい。なお、室温で放置することによって混合溶媒を揮発・除去してもよい。
もちろん、有機溶媒に溶解する種々の有機高分子を用いて、有機高分子膜を形成することもできる。例えば、フォトレジストを用いることもできる。ただし、フォトレジスト膜を露光する必要はない。したがって、ポジ型およびネガ型のいずれであってよい。例えば、フォトレジスト溶液(例えば、東京応化株式会社製の製品名OFPR−800)を付与した後、プリベーク(溶剤の揮発除去:例えば約90℃以上約110℃以下の温度範囲で約5分〜約30分程度の加熱)を行うことによって、有機高分子膜を形成することができる。
有機高分子膜の厚さは、例えば1μm以上5μm以下であることが好ましい。有機高分子膜の厚さが、1μm未満であると、基板表面を十分に保護ないおそれがある。一方、有機高分子膜の厚さが5μmを超えると、有機高分子膜の内部応力による下地層への悪影響が懸念される、あるいは、有機高分子膜にクラックが発生し、保護機能が損なわれるという不都合が生じるおそれがある。
なお、有機高分子膜を用いて、一時的に有機平坦化膜を保護する方法は、ここで例示するOLED表示装置100の製造方法に好適に適用されるが、これに限られない。すなわち、OLED表示装置の製造方法が、基板上に駆動回路層を形成する工程と、駆動回路層上に無機保護層を形成する工程と、無機保護層上に有機平坦化層を形成する工程と、有機平坦化層を200℃以上の温度に加熱する工程と、加熱工程の後に、有機平坦化層上に、有機EL素子層を形成する工程とを包含し、有機平坦化層を形成した後、かつ有機平坦化層を加熱する工程の前に、有機平坦化層を覆う有機高分子膜を形成する工程と、有機高分子膜を除去する工程とをさらに包含すればよい。
次に、図3(a)〜(c)および図4(a)〜(d)を参照して、OLED表示装置100の断面構造をさらに詳細に説明する。
図3(a)、(b)および図4(a)、(b)に示す様に、TFE構造10は、OLED3上に形成された第1無機バリア層12と、第1無機バリア層12に接する有機バリア層14と、有機バリア層14に接する第2無機バリア層16とを有している。第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、例えば、SiNx層であり、マスクを用いたプラズマCVD法で、アクティブ領域R1を覆うように所定の領域だけに選択的に形成される。
有機バリア層14は、例えば、上記特許文献2または3に記載の方法に形成され得る。例えば、チャンバー内で、蒸気または霧状の有機材料(例えばアクリルモノマー)を、室温以下の温度に維持された素子基板上に供給し、素子基板上で凝縮させ、液状になった有機材料の毛細管現象または表面張力によって、第1無機バリア層12の凸部の側面と平坦部との境界部に偏在させる。その後、有機材料に例えば紫外線を照射することによって、凸部の周辺の境界部に有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14の中実部を形成する。この方法によって形成される有機バリア層14は、平坦部には中実部が実質的に存在しない。有機バリア層の形成方法に関して、特許文献2および3の開示内容を参考のために本明細書に援用する。
有機バリア層14はまた、成膜装置200を用いて形成する樹脂層の最初の厚さを調整する(例えば、100nm未満とする)、および/または、一旦形成した樹脂層をアッシング処理することによって、形成することもできる。アッシング処置は、後に詳述するように、例えば、N2O、O2およびO3の内の少なくとも1種のガスを用いたプラズマアッシングによって行われ得る。
図3(a)は、図2中の3A−3A'線に沿った断面図であり、パーティクルPを含む部分を示している。パーティクルPは、OLED表示装置の製造プロセス中に発生する微細なゴミで、例えば、ガラスの微細な破片、金属の粒子、有機物の粒子である。マスク蒸着法を用いると、特にパーティクルが発生しやすい。
図3(a)に示す様に、有機バリア層(中実部)14は、パーティクルPの周辺にのみ形成され得る。これは、第1無機バリア層12を形成した後に付与されたアクリルモノマーが、パーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面(テーパー角θが90°以上)の周辺に凝縮され、偏在するからである。第1無機バリア層12の平坦部上は、有機バリア層14の開口部(非中実部)となっている。
パーティクル(例えば直径が約1μm以上)Pが存在すると、第1無機バリア層12にクラック(欠陥)12cが形成されることがある。これは、パーティクルPの表面から成長するSiNx層12aと、OLED3の表面の平坦部分から成長するSiNx層12bとが衝突(インピンジ)するために生じたと考えられる。このようなクラック12cが存在すると、TFE構造10のバリア性が低下する。
OLED表示装置100のTFE構造10では、図3(a)に示す様に、有機バリア層14が、第1無機バリア層12のクラック12cを充填するように形成され、かつ、有機バリア層14の表面は、パーティクルP上の第1無機バリア層12aの表面と、OLED3の平坦部上の第1無機バリア層12bとの表面を連続的に滑らかに連結する。したがって、パーティクルP上の第1無機バリア層12および有機バリア層14上に形成される第2無機バリア層16に欠陥が形成されることなく、緻密な膜が形成される。このように、有機バリア層14によって、パーティクルPが存在しても、TFE構造10のバリア性を保持することができる。
次に、図3(b)および図4(a)〜(d)を参照して、引出し配線32および端子34上の断面構造を説明する。
図3(b)に示す様に、基板1上に、引出し配線32および端子34が一体的に形成されており、端子34を露出するように、引出し配線32上に無機保護層2Paが形成されている。無機保護層2Pa上には有機平坦化層2Pbが形成されており、有機平坦化層2Pb上には、OLED層3が形成されている。TFE構造10は、OLED層3および有機平坦化層2Pbを覆うように形成されており、OLED層3および有機平坦化層2Pbは、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲さている。なお、TFE構造10の第1無機バリア層12と第2無機バリア層16との間の有機バリア層(中実部)14は、パーティクルなどの凸部の周囲にのみ形成されるので、ここでは図示されていない。有機バリア層(中実部)14は、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している無機バリア層接合部によって包囲されている。
図4(a)に示すように、アクティブ領域R1に近い領域(図2中の4A−4A'線に沿った断面)においては、引出し配線32上には、無機保護層2Pa、有機平坦化層2PbおよびTFE構造10が形成されている。
図4(b)に示すように、図2中の4B−4B'線に沿った断面においては、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触しており、有機平坦化層2Pbは、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲さている(図2、図3(b)参照)。
図4(c)に示すように、端子34に近い領域においては、引出し配線32上には無機保護層2Paだけが形成されている。
図4(d)に示すように、端子34は、無機保護層2Paからも露出されており、外部の回路(例えば、FPC(Flexible printed circuits))との電気的な接続に用いられる。
図4(b)〜(d)に示した部分を含む領域は、有機平坦化層2Pbに覆われていないので、TFE構造10の有機バリア層14を形成する過程で、有機バリア層(中実部)が形成され得る。例えば、引出し配線32の線幅方向に平行な断面形状における側面が90°以上のテーパー角θを有していると、引出し配線32の側面に沿って有機バリア層が形成され得る。しかしながら、図4(b)〜(d)に示す様に、実施形態によるOLED表示装置100は、少なくとも、これらの領域において、引出し配線32および端子34の断面形状における側面のテーパー角θは90°未満とされており、光硬化性樹脂が偏在することが無い。したがって、引出し配線32および端子34の側面に沿って有機バリア層(中実部)が形成されることがない。
ここで、図3(c)を参照して、各層の側面のテーパー角θを説明する。図3(c)は各層の側面のテーパー角θを示す断面図であり、例えば、図4(b)に示す断面図に対応する。図3(c)に示す様に、引出し配線32の幅方向に平行な断面形状における側面のテーパー角θをθ(32)と表し、他の層の側面のテーパー角θも同様に、θ(構成要素の参照符号)で表すことにする。
そうすると、引出し配線32の上に形成される無機保護層2Pa、無機保護層2Paの上に形成されるTFE構造10の第1無機バリア層12および第2無機バリア層16の各テーパー角θは、θ(32)≧θ(2Pa)≧θ(12)≧θ(16)の関係を満足する。したがって、引出し配線32の側面のテーパー角θ(32)が90°未満であれば、無機保護層2Paの側面のテーパー角θ(2Pa)および第1無機バリア層12の側面のテーパー角θ(12)も90°未満となる。
側面のテーパー角θが90°以上であると、特許文献2または3に記載の有機バリア層の形成方法では、側面と平坦な表面との境界(90°以下の角を成す)に沿って、蒸気または霧状の有機材料(例えばアクリルモノマー)が凝縮し、有機バリア層(中実部)が形成されることになる。そうすると、例えば、引出し配線に沿って形成された有機バリア層(中実部)が大気中の水蒸気をアクティブ領域内へ導く経路となってしまう。
例えば、図5(a)の比較例のOLED表示装置100B1における図4(b)に対応する模式的な断面図に示すように、引出し配線32B1の側面テーパー角θ(32B1)および第1無機バリア層12B1の側面テーパー角θ(12B1)が90°以上であると、TFE構造10B1の第1無機バリア層12B1の側面に沿って、第1無機バリア層12B1と第2無機バリア層16B1との間に有機バリア層(中実部)14B1が形成される。なお、OLED表示装置100B1は、例えば、実施形態によるOLED表示装置100における無機保護層Paを省略し、かつ、引出し配線32の側面テーパー角θ(32)および第1無機バリア層12の側面テーパー角θ(12)を90°以上に改変したものであってよい。
また、図5(b)の比較例のOLED表示装置100B2における図4(b)に対応する模式的な断面図に示すように、引出し配線32B2、無機保護層2PaB2および第1無機バリア層12B2の側面テーパー角θ(32B2)、θ(2PaB2)およびθ(12B1)が90°以上であると、TFE構造10B2の第1無機バリア層12B2の側面に沿って、第1無機バリア層12B2と第2無機バリア層16B2との間に有機バリア層(中実部)14B2が形成される。なお、OLED表示装置100B2は、例えば、実施形態によるOLED表示装置100における引出し配線32の側面テーパー角θ(32)および第1無機バリア層12の側面テーパー角θ(12)を90°以上に改変したものであってよい。
OLED表示装置100B2は、OLED表示装置100B1と異なり、無機保護層2PaB2を有しているので、第1無機バリア層12B2の側面テーパー角θ(12B2)は、OLED表示装置100B1の第1無機バリア層12B1の側面テーパー角θ(12B1)よりも小さくなりやすい。
図4(b)〜(d)に示した本発明の実施形態によるOLED表示装置100における引出し配線32、無機保護層2Paおよび第1無機バリア層12の側面のテーパー角θ(32)、θ(2Pa)およびθ(12)はいずれも90°未満であり、これらの側面に沿って有機バリア層14が形成されることが無い。したがって、アクティブ領域R1内に有機バリア層(中実部)14を介して大気中の水分が到達することが無く、優れた耐湿信頼性を有し得る。ここでは、テーパー角θ(32)、θ(2Pa)およびθ(12)がいずれも90°未満である例を示したが、これに限られず、少なくとも、有機バリア層14の直下の表面を構成する第1無機バリア層12の側面のテーパー角θ(12)が90°未満であれば、図4(b)に示した積層構造(無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触している部分(有機平坦化層2Pbが存在しない)、および第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している部分(有機バリア層14が存在しない)が形成されるので、アクティブ領域R1内に、有機平坦化層2Paまたは有機バリア層14を介して大気中の水分が侵入することを抑制・防止することができる。また、無機保護層2Paを有することによって、第1無機バリア層12のテーパー角θ(12)を低減することができるので、引出し配線32のテーパー角θ(32)を比較的大きくしても(例えば90°)、第1無機バリア層12のテーパー角θ(12)を90°未満にすることができる。すなわち、引出し配線32のテーパー角θ(32)を90°または90°に近づけることができるので、引出し配線32のL/Sを小さくすることができるという利点が得られる。
なお、側面のテーパー角θが70°以上90°未満の範囲では、側面に沿って有機バリア層(中実部)14が形成されることがある。もちろん、アッシング処理を行えば、傾斜した側面に沿って偏在した樹脂を除去することができるが、アッシング処理に要する時間が長くなる。例えば、平坦な表面上に形成された樹脂を除去した後も長時間のアッシング処理が必要になる。あるいは、パーティクルPの周辺に形成される有機バリア層(中実部)が過度にアッシング(除去)される結果、有機バリア層を形成した効果が十分に発揮されないという問題が発生することがある。これを抑制・防止するためには、第1無機バリア層12のテーパー角θ(12)を70°未満とすることが好ましく、60°未満とすることがさらに好ましい。
次に、図6から図8を参照して、比較例のOLED表示装置100Cの構造を説明する。図6は、OLED表示装置100Cの模式的な平面図を示す。図7(a)および(b)はOLED表示装置100Cの模式的な断面図であり、図7(a)は図6中の7A−7A'線に沿った断面図であり、図7(b)は図6中の7B−7B'線に沿った断面図である。図8(a)〜(c)はOLED表示装置100Cの模式的な断面図であり、図8(a)は図6中の8A−8A'線に沿った断面図であり、図8(b)は図6中の8B−8B'線に沿った断面図であり、図8(c)は図6中の8C−8C'線に沿った断面図である。
OLED表示装置100Cは、無機保護層2Paを有しない点、および有機平坦化層2Pbcが、TFE構造10に覆われていない領域まで延設されている点で、実施形態によるOLED表示装置100と異なる。なお、OLED表示装置100が有する構成要素と実質的に同じ構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
例えば、図6、図7(b)および図8(b)から明らかなように、有機平坦化層2Pbcの一部が大気(周辺雰囲気)に晒されている。そうすると、有機平坦化層2Pbcは、大気に晒されている部分から水分を吸収し、大気中の水蒸気をアクティブ領域R1内へ導く経路となってしまう。これに対し、実施形態によるOLED表示装置100は、図3(b)および図4(b)に示したように、有機平坦化層2Pbは、OLED層3とともに、無機保護層2Paと第1無機バリア層12とが直接接触した接合部によって包囲されている。したがって、比較例のOLED表示装置100Cが有する上記の問題を解決することができる。
次に、図9および図10を参照して、OLED表示装置100に用いられるTFTの例と、TFTを作製する際のゲートメタル層およびソースメタル層を用いて形成した引出し配線および端子の例を説明する。以下で説明する、TFT、引出し配線および端子の構造は、上述した実施形態のOLED表示装置100に用いることができる。
高精細の中小型用OLED表示装置には、移動度が高い、低温ポリシリコン(「LTPS」と略称する。)TFTまたは酸化物TFT(例えば、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、O(酸素)を含む4元系(In−Ga−Zn−O系)酸化物TFT)が好適に用いられる。LTPS−TFTおよびIn−Ga−Zn−O系TFTの構造および製造方法はよく知られているので、以下では簡単な説明に留める。
図9(a)は、LTPS−TFT2PTの模式的な断面図であり、TFT2PTはOLED表示装置100の回路2に含まれ得る。LTPS−TFT2PTは、トップゲート型のTFTである。
TFT2PTは、基板(例えばポリイミドフィルム)1上のベースコート2Pp上に形成されている。上記の説明では省略したが、基板1上には無機絶縁体で形成されたベースコートを形成することが好ましい。
TFT2PTは、ベースコート2Pp上に形成されたポリシリコン層2Pseと、ポリシリコン層2Pse上に形成されたゲート絶縁層2Pgiと、ゲート絶縁層2Pgi上に形成されたゲート電極2Pgと、ゲート電極2Pg上に形成された層間絶縁層2Piと、層間絶縁層2Pi上に形成されたソース電極2Pssおよびドレイン電極2Psdとを有している。ソース電極2Pssおよびドレイン電極2Psdは、層間絶縁層2Piおよびゲート絶縁層2Pgiに形成されたコンタクトホール内で、ポリシリコン層2Pseのソース領域およびドレイン領域にそれぞれ接続されている。
ゲート電極2Pgはゲートバスラインと同じゲートメタル層に含まれ、ソース電極2Pssおよびドレイン電極2Psdはソースバスラインと同じソースメタル層に含まれる。ゲートメタル層およびソースメタル層を用いて、引出し配線および端子が形成される(図10を参照して後述する)。
TFT2PTは、例えば、以下の様にして作製される。
基板1として、例えば、厚さが15μmのポリイミドフィルムを用意する。
ベースコート2Pp(SiO2膜:250nm/SiNx膜:50nm/SiO2膜:500nm(上層/中間層/下層))およびa−Si膜(40nm)をプラズマCVD法で成膜する。
a−Si膜の脱水素処理(例えば450℃、180分間アニール)を行う。
a−Si膜をエキシマレーザーアニール(ELA)法でポリシリコン化する。
フォトリソグラフィ工程でa−Si膜をパターニングすることによって活性層(半導体島)を形成する。
ゲート絶縁膜(SiO2膜:50nm)をプラズマCVD法で成膜する。
活性層のチャネル領域にドーピング(B+)を行う。
ゲートメタル(Mo:250nm)をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ドライエッチング工程を含む)でパターニングする(ゲート電極2Pgおよびゲートバスライン等を形成する)。
活性層のソース領域およびドレイン領域にドーピング(P+)を行う。
活性化アニール(例えば、450℃、45分間アニール)を行う。このようにしてポリシリコン層2Pseが得られる。
層間絶縁膜(例えば、SiO2膜:300nm/SiNx膜:300nm(上層/下層))をプラズマCVD法で成膜する。
ゲート絶縁膜および層間絶縁膜にコンタクトホールをドライエッチングで形成する。このように、層間絶縁層2Piおよびゲート絶縁層2Pgiが得られる。
ソースメタル(Ti膜:100nm/Al膜:300nm/Ti膜:30nm)をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ドライエッチング工程を含む)でパターニングする(ソース電極2Pss、ドレイン電極2Psdおよびソースバスライン等を形成する)。
この後、上述した無機保護層2Pa(図2および図3参照)を形成する。
図9(b)は、In−Ga−Zn−O系TFT2OTの模式的な断面図であり、TFT2OTはOLED表示装置100Aの回路2に含まれ得る。TFT2OTは、ボトムゲート型のTFTである。
TFT2OTは、基板(例えばポリイミドフィルム)1上のベースコート2Op上に形成されている。TFT2OTは、ベースコート2Op上に形成されたゲート電極2Ogと、ゲート電極2Og上に形成されたゲート絶縁層2Ogiと、ゲート絶縁層2Ogi上に形成された酸化物半導体層2Oseと、酸化物半導体層2Oseのソース領域上およびドレイン領域上にそれぞれ接続されたソース電極2Ossおよびドレイン電極2Osdとを有している。ソース電極2Ossおよびドレイン電極2Osdは、層間絶縁層2Oiに覆われている。
ゲート電極2Ogはゲートバスラインと同じゲートメタル層に含まれ、ソース電極2Ossおよびドレイン電極2Osdはソースバスラインと同じソースメタル層に含まれる。ゲートメタル層およびソースメタル層を用いて、引出し配線および端子が形成され、図10を参照して後述する構造を有し得る。
TFT2OTは、例えば、以下の様にして作製される。
基板1として、例えば、厚さが15μmのポリイミドフィルムを用意する。
ベースコート2Op(SiO2膜:250nm/SiNx膜:50nm/SiO2膜:500nm(上層/中間層/下層))をプラズマCVD法で成膜する。
ゲートメタル(Cu膜:300nm/Ti膜:30nm(上層/下層))をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ドライエッチング工程を含む)でパターニングする(ゲート電極2Ogおよびゲートバスライン等を形成する)。
ゲート絶縁膜(SiO2膜:30nm/SiNx膜:350nm(上層/下層))をプラズマCVD法で成膜する。
酸化物半導体膜(In−Ga−Zn−O系半導体膜:100nm)をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ウエットエッチング工程を含む)でパターニングすることによって、活性層(半導体島)を形成する。
ソースメタル(Ti膜:100nm/Al膜:300nm/Ti膜:30nm(上層/中間層/下層))をスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィ工程(ドライエッチング工程を含む)でパターニングする(ソース電極2Oss、ドレイン電極2Osdおよびソースバスライン等を形成する)。
活性化アニール(例えば、300℃、120分間アニール)を行う。このようにして酸化物半導体層2Oseが得られる。
この後、保護膜として、層間絶縁層2Oi(例えば、SiNx膜:300nm/SiO2膜:300nm/(上層/下層))をプラズマCVD法で成膜する。この層間絶縁層2Oiは、上述した無機保護層2Pa(図2および図3参照)を兼ねることができる。もちろん、層間絶縁層2Oiの上に、さらに無機保護層2Paを形成してもよい。
次に、図10(a)〜(c)を参照して、実施形態による他のOLED表示装置の構造を説明する。このOLED表示装置の回路(バックプレーン)2は、図9(a)に示したTFT2PTまたは図9(b)に示したTFT2OTを有し、TFT2PTまたはTFT2OTを作製する際のゲートメタル層およびソースメタル層を用いて引出し配線32Aおよび端子34Aが形成されている。図10(a)〜(c)はそれぞれ図4(b)〜(d)に対応し、対応する構成要素の参照符号に「A」を付すことにする。また、図10中のベースコート2pは、図9(a)中のベースコート2Ppおよび図9(b)中のベースコート2Opに対応し、図10中のゲート絶縁層2giは、図9(a)中のゲート絶縁層2Pgiおよび図9(b)中のゲート絶縁層2Ogiに対応し、図10中の層間絶縁層2iは、図9(a)中の層間絶縁層2Piおよび図9(b)中の層間絶縁層2Oiにそれぞれ対応する。
図10(a)〜(c)に示す様に、ゲートメタル層2gおよびソースメタル層2sは、基板1上に形成されたベースコート2p上に形成されている。図3および図4では省略したが、基板1上には無機絶縁体で形成されたベースコート2pを形成することが好ましい。
図10(a)〜(c)に示すように、引出し配線32Aおよび端子34Aは、ゲートメタル層2gとソースメタル層2sとの積層体として形成されている。引出し配線32Aおよび端子34Aのゲートメタル層2gで形成された部分は、例えばゲートバスラインと同じ断面形状を有し、引出し配線32Aおよび端子34Aのソースメタル層2sで形成された部分は、例えばソースバスラインと同じ断面形状を有している。例えば、500ppiの5.7型の表示装置の場合、ゲートメタル層2gで形成された部分の線幅は例えば10μmであり、隣接間距離は16μm(L/S=10/16)あり、ソースメタル層2sで形成された部分の線幅は例えば16μmであり、隣接間距離は10μm(L/S=16/10)である。テーパー角θはいずれも90°未満であり、70°未満であることが好ましく、60°以下であることがさらに好ましい。なお、有機平坦化層Pbの下に形成される部分のテーパー角は90°以上であってもよい。
次に、図11(a)および(b)を参照して、有機バリア層の形成に用いられる成膜装置200およびそれを用いた成膜方法を説明する。図11(a)および(b)は、成膜装置200の構成を模式的に示す図であり、図11(a)は、蒸気または霧状の光硬化性樹脂を含むチャンバー内において、第1無機バリア層上で光硬化性樹脂を凝縮させる工程における成膜装置200の状態を示しており、図11(b)は、光硬化性樹脂が感光性をする光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させる工程における成膜装置200の状態を示している。
成膜装置200は、チャンバー210と、チャンバー210の内部を2個の空間に分割する隔壁234とを有している。チャンバー210の内部のうち隔壁234で仕切られた一方の空間には、ステージ212と、シャワープレート220とが配置されている。隔壁234で仕切られた他方の空間には、紫外線照射装置230が配置されている。チャンバー210は、その内部の空間を所定の圧力(真空度)および温度に制御される。ステージ212は、第1無機バリア層が形成されたOLED3を複数有する素子基板20を受容する上面を有し、上面を例えば−20℃まで冷却することができる。
シャワープレート220は、隔壁234との間に、間隙部224を形成するように配置されており、複数の貫通孔222を有している。間隙部224の鉛直方向サイズは、例えば100mm以上1000mm以下であり得る。間隙部224に供給されたアクリルモノマー(蒸気または霧状)は、シャワープレート220の複数の貫通孔222から、チャンバー210内のステージ212側の空間に供給される。必要に応じてアクリルモノマーは加熱される。蒸気または霧状のアクリルモノマー26pは、素子基板20の第1無機バリア層に付着または接触する。アクリルモノマー26は、容器202からチャンバー210内に所定の流量で供給される。容器202には、配管206を介してアクリルモノマー26が供給されるとともに、配管204から窒素ガスが供給される。容器202へのアクリルモノマーの流量は、マスフローコントローラ208によって制御される。シャワープレート220、容器202、配管204、206およびマスフローコントローラ208などによって原料供給装置が構成されている。
紫外線照射装置230は、紫外線光源とオプショナルな光学素子とを有している。紫外線光源は、例えば、紫外線ランプ(例えば、水銀ランプ(高圧、超高圧を含む)、水銀キセノンランプまたはメタルハライドランプ)であってもよい。光学素子は、例えば、反射鏡、プリズム、レンズ、および回折素子である。
紫外線照射装置230は所定の位置に配置されたときに、所定の波長および強度を有する光をステージ212の上面に向けて出射する。隔壁234およびシャワープレート220は、紫外線の透過率が高い材料、例えば、石英で形成されていることが好ましい。
成膜装置200を用いて、有機バリア層14を、例えば以下の様にして形成することができる。ここでは、光硬化性樹脂としてアクリルモノマーを用いる例を説明する。
チャンバー210内に、アクリルモノマー26pを供給する。素子基板20は、ステージ212上で、例えば−15℃に冷却されている。アクリルモノマー26pは素子基板20の第1無機バリア層12上で凝縮される。このときの条件を制御することによって、第1無機バリア層12が有する凸部の周囲にだけ液状のアクリルモノマーを偏在させることができる。あるいは、第1無機バリア層12上で凝縮されたアクリモノマーが液膜を形成するように、条件を制御する。
液状の光硬化性樹脂の粘度および/または表面張力を調整することによって、液膜の厚さや第1無機バリア層12の凸部に接する部分の形状(凹形状)を制御することができる。例えば、粘度および表面張力は、温度に依存するので、素子基板の温度を調節することによって制御することができる。例えば、平坦部上に存在する中実部の大きさは、液膜の第1無機バリア層12Dの凸部に接する部分の形状(凹形状)および後で行うアッシング処理の条件によって制御され得る。
続いて、紫外線照射装置230Uを用いて、典型的には、素子基板20の上面の全体に紫外線232を照射することによって、第1無機バリア層12上のアクリルモノマーを硬化させる。紫外線光源としては、例えば、365nmにメインピークを持つ高圧水銀ランプを用い、紫外線強度として例えば、12mW/cm2で、約10秒照射する。
アクリル樹脂からなる有機バリア層14はこのようにして形成される。この有機バリア層14の形成工程のタクトタイムは例えば、約30秒未満であり、非常に量産性が高い。
液膜状の光硬化性樹脂を硬化した後、アッシング処理を経て、凸部の周囲にだけ有機バリア層14を形成してもよい。なお、偏在させた光硬化性樹脂を硬化することによって有機バリア層14を形成する際にも、アッシング処理を施してもよい。アッシング処理によって、有機バリア層14と第2無機バリア層16との接着性を向上させることができる。すなわち、アッシング処理は、一旦形成した有機バリア層の余分な部分を除去するためだけでなく、有機バリア層14の表面を改質する(親水化する)ために用いてもよい。
アッシングは、公知のプラズマアッシング装置、光励起アッシング装置、UVオゾンアッシング装置を用いて行い得る。例えば、N2O、O2およびO3の内の少なくとも1種のガスを用いたプラズマアッシング、または、これらにさらに紫外線照射とを組合せて行われ得る。第1無機バリア層12および第2無機バリア層16としてSiNx膜をCVD法で成膜する場合、原料ガスとして、N2Oを用いるので、N2Oをアッシングに用いると装置を簡略化できるという利点が得られる。
アッシングを行うと、有機バリア層14の表面が酸化され、親水性に改質される。また、有機バリア層14の表面がほぼ一様に削られるとともに、極めて微細な凹凸が形成され、表面積が増大する。アッシングを行ったときの表面積増大効果は、無機材料である第1無機バリア層12に対してよりも有機バリア層14の表面に対しての方が大きい。したがって、有機バリア層14の表面が親水性に改質されることと、表面積が増大することから、第2無機バリア層16との密着性が向上させられる。
この後、第2無機バリア層16を形成するためのCVDチャンバーに搬送し、例えば、第1無機バリア層12と同じ条件で、第2無機バリア層16を形成する。第2無機バリア層16は、第1無機バリア層12が形成された領域に形成されるので、有機バリア層14の非中実部には、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触する無機バリア層接合部が形成される。したがって、上述したように、有機バリア層を介して大気中の水蒸気がアクティブ領域内に到達することが抑制・防止される。
なお、第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、例えば、以下の様にして形成される。SiH4およびN2Oガスを用いたプラズマCVD法で、例えば、成膜対象の基板(OLED3)の温度を80℃以下に制御した状態で、400nm/minの成膜速度で、厚さ400nmの無機バリア層を形成することができる。この様にして得られる無機バリア層の屈折率は1.84で、400nmの可視光の透過率は90%(厚さ400nm)である。また、膜応力の絶対値は50MPaである。
なお、無機バリア層として、SiNx層の他、SiO2層、SiOxNy(x>y)層、SiNxOy(x>y)層、Al2O3層などを用いることもできる。光硬化性樹脂は、例えば、ビニル基含有モノマーを含む。その中でも、アクリルモノマーが好適に用いられる。アクリルモノマーには必要に応じて、光重合開始剤が混合され得る。公知の種々のアクリモノマーを用いることができる。複数のアクリルモノマーを混合してもよい。例えば、2官能モノマーと3官能以上の多官能モノマーを混合してもよい。また、オリゴマーを混合してもよい。光硬化性樹脂の硬化前の室温(例えば25℃)の粘度は、10Pa・sを超えないことが好ましく、1〜100mPa・sであることが特に好ましい。粘度が高いと、厚さが500nm以下の薄い液膜を形成することが難しいことがある。
上記では、フレキシブル基板を有するOLED表示装置およびその製造方法の実施形態を説明したが、本発明の実施形態は例示したものに限られず、柔軟性を有しない基板(例えばガラス基板)に形成された有機EL素子と、有機EL素子上に形成された薄膜封止構造とを有する有機ELデバイス(例えば、有機EL照明装置)に広く適用できる。