以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施形態に係るスイッチ制御システムの構成を示している。図示のように、スイッチ制御システム10は、各電池パックB1〜Bnにそれぞれ設置された個別スイッチである個別リレー11−1〜11−nを介して相互に電気的に並列に接続してなる組電池12を有している。そして、各電池パックB1〜Bnは、複数の二次電池としての電池セル100を直列接続してなる電池モジュールとして構成されている。なお、電池パック(電池モジュール)を構成する電池セル(単電池)の数やその接続形態には限定されず、電池パックは例えば一つの電池セルで構成されていても良く、また、複数の電池セル100が互いに並列接続あるいは直並列、並直列に接続されていても良い。
さらに、スイッチ制御システム10は、各電池モジュールとしての各電池パックB1〜Bnの状態を監視し個別リレー11の開閉制御を行う制御手段としての統合BMS(Battery manager System)13と、統合BMS13から情報を受信して充放電制御を行う制御手段としてのPCS(Power Conditioning System)14と、PCS14の制御下で組電池12から放電電力を受ける外部負荷16と、PCS14の制御下で充電電流を組電池12に供給する充電電源18と、PCS14により開閉制御され組電池12と負荷16及び充電電源18との間の開閉状態を切り替える大元スイッチとしてのメインリレー20と、を有している。
電池セル100は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素充電池のような二次電池であり、特に本実施形態ではリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池は、例えば、リチウム−遷移金属複合酸化物からなる正極活物質を含む正極及びハードカーボン(難黒鉛化炭素材料)、黒鉛系炭素材料、及びリチウム−遷移金属複合酸化物等からなる負極活物質を含む負極を、セパレータを介して重畳して形成される。
電池パックB1〜Bnは、上述のように、それぞれ、電池セル100を1個あるいは2個以上電気的に接続して構成されている。なお、以下では説明簡略化のため、電池パックB1〜Bnを複数の電池セル100を直列接続して構成された電池集合体として説明する。また、組電池12を構成する各電池パックB1〜Bnは、全て同様の構成を有していることから、説明の簡略化のため、以下においては電池パックB1の構成についてのみ説明する。
本実施の形態において電池パックB1は、内部に上記個別リレー11−1を有しており、上記直列配置された電池セル100の他に、該直列配置された電池セル100に流れる電流値IB1を測定する電流検出手段としての電流センサ24−1と、直列配置された電池セル100の電圧値、すなわち電池パックB1の電圧値VB1を測定する電圧センサ25−1と、電池パックB1の劣化度D1(SOH)を検出する劣化度検出手段としてのSOHセンサ28−1と、全電池セル100のトータル充電率、すなわち電池パックB1の充電率CR1(SOC)を検出する充電率検出手段としてのSOCセンサ30−1と、電池パックB1の電池温度T1を検出する温度検出手段としての温度センサ31−1と、これら各検出値を把握して統合BMS13に情報を送信する個別BMS32−1と、を有している。
SOH(State Of Health)センサ28−1は、検出された電流値IB1、電圧値VB1、及び電池温度T1等に基づいて、予め図示しないメモリ等に格納された所定の劣化度特性図に基づいて劣化度D1を決定する。なお、例えば、所定時刻t1からt2の間における電流値I(t)を積分して電荷量Q(t)を算出すると共に所定時刻t1からt2における電圧値VB1の変化量を算出し、電圧値VB1の変化量/Q(t1)を予め計測しておいた新品時の電圧変化量/電荷量と比較して劣化度D1を算出しても良い。あるいは、所定時刻t1からt2における電流値IB1の変化量に対する電圧値VB1の変化量に基づいて電池パックB1の内部抵抗を算出し、算出した内部抵抗を電池温度T1に基づいて補正して電池パックB1の予め定められた基準温度における内部抵抗を求め、この内部抵抗と予め計測しておいた基準温度における新品時の内部抵抗とを比較して劣化度D1を求めても良い。これらの劣化度の算出は良く知られた公知の手法である。
SOC(State Of charge)センサ30−1は、PCS14による充電制御状態において、電圧センサ25−1で検出される電圧値VB1及び電流センサ24−1で検出される電流値IB1の積算値(積算電流)から公知の方法により充電率CR1を推定する。この充電率CR1の算出方法は公知であるので詳述しないが、例えば、充放電開始時の電池パックB1の開放電圧OCV1(Open Circuit Voltage)から、所定の電池容量−OCV曲線に基づいて電池パックB1の残容量を検出し、充電開始時からの充電電流の積算値に応じた残容量の変化量を充放開始時の残容量から加減算することにより算出することができる。なお、電池パックB1の開放電圧OCV1は、例えば、充電時における検出電圧値VB1からR×IB1を減算することで算出することができる。
温度センサ31−1は、電池パックB1の内部に設置され、複数の電池セル100の平均的な温度を電池温度T1として検出する。
個別BMS32−1は、電流センサ24−1により検出された電流値IB1、電圧センサ25−1により検出された電圧値VB1、SOHセンサ28−1により検出された劣化度D1、SOCセンサ30−1により検出された充電率CR1、及び温度センサ31により検出された電池温度T1を統合BMS13に送信する。
統合BMS13は、各電池パックB1〜Bnの個別BMS32から受信した電池パックB1〜Bnの状態に係る情報に基づいて、メインリレー20の開閉制御を行う。この開閉制御の詳細は後に説明する。また、PCS14は、外部負荷16への放電制御及び充電電源18からの充電制御を行う。
外部負荷16は、組電池12から供給される電力により稼動する電動モータ等の電動機器である。また、充電電源18は、組電池12への充電を行う例えば商用電源又は所定の分散型電源等である。
さらに、メインリレー20は、組電池12と外部負荷16又は充電電源18との開閉状態を切り替える大元スイッチとして機能する。
なお、各電池パックB1〜Bnには、内部SDSW(Service Disconnect Switch)が設けられており、作業時や緊急時においてこのSDSWを操作することによって回路を遮断し、安全に作業や緊急時に対応を行うことが可能となっている。
上記構成を有するスイッチ制御システム10では、通常稼動状態でPCS14が外部負荷16への放電制御及び充電電源18からの充電制御を行っているが、メンテナンス等の目的で充放電の停止要求が生じる場合がある。この場合には、メインリレー20を開放して組電池12と外部負荷16や充電電源18との接続を切断し、その後、組電池12を構成する各電池パックB1〜Bnの個別リレー11−1〜11−nを開放し、上記メンテナンス作業等を行うこととなる。
上記メンテナンス作業等を行う際に、メインリレー20を開放した後で個別リレー11−1〜11−nを開放する前の状態の段階において、各電池パックB1〜Bn間において電位差が生じており、この状態で個別リレー11−1〜11−nの開放を行うと循環電流が流れて個別リレー11−1〜11−nに負担を与える可能性がある。
したがって、メンテナンス作業等のための充放電の停止時には、メインリレー20を開放した後、各電池パックB1〜Bn間の電位差が無くなって循環電流が生じなくなった状態で個別リレー11−1〜11−nを開放するようにする必要がある。
ところが、本発明者らは、一度各電池パックB1〜Bn間の電位差が見かけ上なくなり循環電流が流れなくなるように見えても、上記パック間電位差復帰が生じて循環電流が再び流れる現象を確認している。以下では、このパック間電位差復帰が生じる理論について、充電停止後の組電池12の電池電圧の挙動に着目して説明する。なお、放電停止後についても同様である。
以下では説明の容易化のため、電池パックB1及び電池パックBnのみに対する充電を行う場合(すなわち、他の電池パックB2〜Bn−1の個別リレー11−2〜11−(n−1)は常に開放状態であると仮定した場合)について説明を行うが、他の電池パックを使用した場合も同様の理論が適用される。
図2には、組電池12の充電停止時における電池電圧の変化のグラフを示している。なお、図では、組電池12の全体の電池電圧(組電池12の正負極端子間電圧)Vcellを実線で示している。また、電池パックB1単体(すなわち、組電池12から電気的に切り離した状態)の充電停止後の電圧VB1の理論曲線を2点鎖線、電池パックBn単体の充電停止後の電圧VBnの理論曲線を一点鎖線で示しており、参考として充電時〜充電停止後の電流のグラフも示している。
この例では、はじめに充電電源18による定電流充電を行い、電池電圧Vcellが所定の閉路電圧CCV(Closed circuit voltage)に達すると定電流充電を停止する(時刻t0)。この充電の停止は、PCS14により所定の充電停止シーケンスにしたがい行われ、メインリレー20が開放(遮断)されることとなる。
したがって、組電池12が充電電源18から遮断された状態となるので、充電が停止された時刻t0以降においては、瞬間的に電流×内部抵抗分の電圧降下が生じて、その後、電池電圧Vcellは分極が解消されるに従い漸次低下する。
一方で、電池パックB1単体及び電池パックBn単体の充電停止後の電圧挙動について着目すると、理論的には、電池パックB1の電圧VB1及び電池パックBnの電圧VBn自体はそれぞれの固有の開放電圧OCV1及びOCVnに近づく。
しかしながら、実際の組電池12においては、電池パックB1と電池パックBnが個別リレー11−1と個別リレー11−nを介して接続されている場合には、メインリレー20が開放された後においてもこれらは一つの閉回路を形成する状態となるので、それぞれの電圧VB1及び電圧VBnが異なる開放電圧OCV1及びOCVnに定常的に収束せず、それらの中間の値である終止開放電圧OCV∞に収束することとなる。したがって、電池電圧Vcellも終止開放電圧OCV∞に収束する。
しかしながら、上述した電池パックB1と電池パックBnの間の固有の開放電圧の相違や分極解消速度の差により、電池パックB1及びBnの終止開放電圧OCV∞への漸近挙動には個体差があり、終止開放電圧OCV∞に収束する過程で電池パックB1及びBn間の電圧VB1及び電圧VBnにバラツキが生じる。
図3は、メインリレー20が開放された後における電池パックB1単体の電圧VB1と電池パックBn単体の電圧VBnの変化を模式的に表したグラフである。図示のように、電池パックB1の電圧VB1と電池パックBnの電圧VBnは、最終的には共通の終止開放電圧OCV∞に収束するものの、この収束に至るまでにはそれぞれの値が当該終止開放電圧OCV∞を挟んで振動するように変化する。すなわち、電池パックB1と電池パックBnは互いに充放電を繰り返しながら、電圧が終止開放電圧OCV∞に収束していく。したがって、これら電圧VB1及びVBnの値が等しくなる複数の時刻t1,t2,・・・tkが存在する。
この時刻t1,t2,・・・tkにおいては、電池パックB1と電池パックBnの間の電位差VBn−VB1がゼロであり、したがって、電流センサ24−1、24−nにより検出される電流値IB1、IBnの値は見かけ上ゼロである。
しかしながら、電圧VB1及び電圧VBnの値は終止開放電圧OCV∞に至るまでは振動しており、例えば電圧VB1及び電圧VBnが一旦等しくなる時刻t1やt2以降においても、これら電圧VB1及び電圧VBnが再び変化して、電位差VBn−VB1≠0となるパック間電位差復帰が生じることとなる。
図4Aは、電池パックB1の検出電流値IB1と電流パックBnの検出電流値IBnの変化を模式的に示すグラフである。本例では、電池パックB1の個別リレー11−1と電池パックBnの個別リレー11−nのみが閉塞状態となるから、組電池12の回路は、メインリレー20が開放された後においては、実質的に電池パックB1と電池パックBnのみから成る回路と等価になり、IBn=−IB1(|IBn|=|IB1|)の関係が成り立つ。
上記VB1=VBnとなる時刻t1では、|IBn|=|IB1|=0となる。すなわち、電池パックB1と電池パックBnの循環電流が流れない。しかしながら、時刻t1以降において、電位差VBn−VB1≠0となるパック間電位差復帰が生じ、必然的に、図に示すように検出電流値IB1、IBnの値もゼロではなくなり、循環電流が生じる。
以上の考察からわかるように、電流値の絶対値|IB1|や|IBn|が実質的に0となる、すなわち所定の閾値αthより小さくなったことが一度検出されたとしても、実際には電池パックB1と電池パックBnの間の電位差は非定常状態であり、パック間電位差復帰が生じ得る。したがって、電流値の絶対値|IB1|や|IBn|が閾値αthより小さくなったからといって、個別リレー11−1及び個別リレー11−nを開放してしまうと、次回の個別リレー11−1及び個別リレー11−nの閉塞時に、パック間電位差復帰に起因する突入電流が流れ、これら個別リレー11−1及び個別リレー11−nに負担をかける恐れがある。
これを受けて、本発明者らは、以下に説明するように、上記検出電流値IB1,IBnに加えて、これら電流の微分値dIB1/dt及びdIBn/dtが所定値以下である場合に、電池パックB1と電池パックBnの間の電位差は定常状態となりパック間電位差復帰が生じないことを見出した。
図4Bには、電流微分値dIB1/dt及びdIBn/dtの変化を模式的に示す。図示のように、電流微分値dIB1/dt及びdIBn/dtは、電流値IB1及びIBnの時間変化が大きいほど高い値をとるので、その絶対値|dIB1/dt|及び|dIBn/dt|は電流変化が小さい区間においてはゼロに近い値をとる。
ここで、|IBn|=|IB1|=0(すなわち、|IBn|=|IB1|が所定閾値αth以下)となる時刻t1近傍では、電流値IB1及びIBnの時間変化が大きく、電流微分値の絶対値|dIB1/dt|及び|dIBn/dt|も所定閾値βthより大きい値となる。また、時刻t1からt2の間においては、電流微分値の絶対値|dIB1/dt|及び|dIBn/dt|も所定閾値βth以下となる区間が存在するが、当該区間では|IBn|=|IB1|が所定閾値αthよりも大きい。
これに対して、電圧VB1及び電圧VBnがともに終止開放電圧OCV∞に十分近づく時刻tk(定常状態)以降では、|IBn|=|IB1|が所定閾値αth以下であり且つ、電流微分値の絶対値|dIB1/dt|及び|dIBn/dt|も所定閾値βth以下の十分に低い値をとる。
したがって、このように電流値の絶対値|IB1|及び|IBn|に加えて電流微分値の絶対値|dIB1/dt|及び|dIBn/dt|を、個別リレー11−1及び個別リレー11−nを開放する制御パラメータとして用いることで、確実にパック間電位差復帰が生じ得ない定常状態で個別リレー11−1及び個別リレー11−nを開放することができる。
以下では、電流値IB1及びIBnに加えて、これらの微分値dIB1/dt及びdIBn/dtを制御パラメータとして用いた場合の充放電終了シーケンス及び充放電開始シーケンスの流れを説明する。
図5は、本実施の形態に係る充放電終了シーケンスの流れを示したフローチャートである。
ステップS101において、PCS14に充放電停止信号が入力される。この充放電停止信号は、各電池パックB1〜Bnの状態に応じてメンテナンスの要否を判定する所定のプログラムにしたがい、統合BMS13からPCS14に送信される。なお、例えば、手動で充放電停止を行うための図示しない操作スイッチを設け、当該操作スイッチへの操作でPCS14に充放電停止信号が入力されるような構成をとっても良い。
ステップS102において、PCS14が充放電を停止する。具体的には、PCS14は上記充放電停止信号を受けた後に、所定のシャットダウンシーケンスにしたがう処理を実行する。
ステップS103において、PCS14は、上記シャットダウンシーケンス処理の最後にメインリレー20を開放する。なお、緊急時にはステップS102における通常のシャットダウンシーケンスをスキップして、メインリレー20を強制的に開放する制御を行うようにしても良い。
ステップS104において、PCS14は、メインリレー20を開放した後、統合BMS13に充放電を停止したことを示す充放電停止済信号を統合BMS13に送信する。
ステップS105において、統合BMS13は充放電停止済信号を受信すると、個別BMS32を介して受信した、各電池パックB1〜Bnの電流センサ24−1〜24−nにより検出された電流値IB1、IB2、・・IBnを取得して、これら電流値から電流微分値dIB1/dt、dIB2/dt、・・・dIBn/dtを算出する。
特に、本実施の形態において統合BMS13は、各電池パックB1〜Bnの電流センサ24−1〜24−nにより検出された電流値IB1、IB2、・・IBnの各値の絶対値のうちの最大値(以下、|Imax|)を算出する。さらに、統合BMS13は、各電池パックB1〜Bnにおける電流微分値dIB1/dt、dIB2/dt、・・・dIBn/dtの各値の絶対値のうちの最大値(以下、|(dI/dt)max|)も算出する。
ステップS106において、電流絶対値の最大値|Imax|が所定の閾値αth以下であるかどうかが判定される。ここで、閾値αthは電池の特性及び想定される循環電流による影響等の種々の要素に基づいて、電流絶対値の最大値|Imax|が実質的に0とみなすことができる程度に十分に小さい値をとるように定められる。
そして、電流絶対値の最大値|Imax|が所定の閾値αthを越えていると判定されると、ステップS105に戻る。一方で、電流絶対値の最大値|Imax|が所定の閾値αth以下であると判定されるとステップS107に進む。
ステップS107において、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max|が所定の閾値βth以下であるかどうかが判定される。ここで、閾値βthは電池の特性及び想定される循環電流による影響等の種々の要素に基づいて、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max|が実質的に0とみなすことができる程度に十分に小さい値をとるように定められる。そして、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max|が所定の閾値βthを越えていると判定されると、ステップS105に戻る。一方で、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max|が所定の閾値βth以下であると判定されるとステップS108に進む。
ステップS108において、各電池パックB1〜Bnの個別リレー11−1〜11−nが開放される。すなわち、上記ステップS106及びステップS107において、各電池パックB1〜Bnにおける電流絶対値の最大値|Imax|及び電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max|がともに、それぞれ閾値αth及び閾値βth以下であることから、各電池パックB1〜Bnの電圧VB1・・・電圧VBnが既に十分に終止開放電圧OCV∞に近づいており、各電池パックB1〜Bn間における電位差がほぼゼロでありパック間電位差復帰も生じないと判断することができる。したがって、次回の充放電開始時に、各電池パックB1〜Bnの個別リレー1111−1〜11−nを閉じたときにおける突入電流の発生を防止することができる。
図6は、組電池12の充放電開始シーケンスの流れを説明するフローチャートである。この充放電開始シーケンスは、上述の充放電が停止された状態で所定のメンテナンス等の作業が終了することにより、再び充放電状態に戻る際に行われる処理である。
ステップS201において、PCS14に充放電開始信号が入力される。この充放電開始信号は、各電池パックB1〜Bnの状態に応じてメンテナンス等の充放電を停止させる必要のある状態が終了したことが判定されると所定のプログラムにしたがい、統合BMS13からPCS14に送信される。なお、例えば、手動で充放電開始を行うための図示しない操作スイッチを設け、当該操作スイッチへの操作でPCS14に充放電開始信号が入力されるような構成をとっても良い。
ステップS202において、PCS14は、所定の診断プログラムに基づいて自己の機能が正常であるかどうかの診断を行う。
ステップS203において、PCS14が診断結果を正常ではないと判定すると、処理を終了する。なお、この場合、所定の報知手段によりPCS14が異常であることを報知するようにしても良い。一方で、PCS14が診断結果を正常であると判定するとステップS204に進む。
ステップS204において、PCS14は、統合BMS13に充放電開始診断信号を送信する。この充放電開始診断信号とは、充放電を開始するにあたり統合BMS13に異常が無いかどうかを自己診断させるように指令する信号である。
ステップS205において、統合BMS13は、上記充放電開始診断信号を受信すると、所定の診断プログラムに基づいて自己の機能が正常であるかどうかの診断を行う。
ステップS206において診断結果が正常ではないと判定すると、処理を終了する。なお、この場合、所定の報知手段により統合BMS13が異常であることを報知するようにしても良い。一方で、統合BMS13が診断結果を正常であると判定するとステップS207に進む。
ステップS207において、各電池パックB1〜Bnの個別BMS32−1〜32−nに充放電開始診断信号を送信する。この充放電開始診断信号とは、充放電を開始するにあたり個別BMS32−1〜32−nにおいて異常が無いかどうかを診断させるように指令する信号である。
ステップS208において、各個別BMS32−1〜32−nは、上記充放電開始診断信号を受信すると、所定の診断プログラムに基づいて自己の機能が正常であるかどうかの診断を行う。
ステップS209において、各個別BMS32−1〜32−nのうちの少なくとも一つが診断結果を正常ではないと判定すると、処理を終了する。なお、この場合、所定の報知手段により個別BMS32−1〜32−nに異常が発生していることを報知するようにしても良い。一方で、全ての個別BMS32−1〜32−nが診断結果を正常であると判定するとステップS210に進む。
ステップS210において、各個別BMS32−1〜32−nは、それぞれの個別リレー11−1〜11−nを閉塞する。
ステップS211において、各個別BMS32−1〜32−nは、個別リレー11−1〜11−nを閉塞したことを示す個別リレー閉塞完了信号を統合BMS13に送信する。
ステップS212において、統合BMS13は、全ての個別BMS32から個別リレー閉塞完了信号を受信すると、PCS14に充放電の準備が整ったことを示す充放電準備完了信号をPCS14に送信する。
ステップS213において、PCS14は充放電準備完了信号を受信すると、充放電制御を開始する。具体的には、メインリレー20を閉じて外部負荷16への放電又は充電電源18による充電処理を行う。
以上のように説明した本実施の形態に係るスイッチ制御システム10においては、下記の効果を得ることができる。
本実施の形態に係るスイッチ制御システム10は、図1に示すように、複数の電池セル100を直列接続してなる電池パックB1〜Bnを、各電池パックB1〜Bnに対応して設置された個別リレー11−1〜11−nを介して相互に並列に接続してなる組電池12のスイッチ制御システムである。
そして、スイッチ制御システム10は、各電池パックB1〜Bnに流れる電流(電流値I B1 、I B2 、・・I Bn )を検出する電流センサ24−1〜24−nと、電流センサ24−1〜24−nにより検出された電流の時間微分値dIB1/dt、dIB2/dt、・・・dIBn/dtを算出する個別BMS32−1〜32−nと、組電池12と外部負荷16又は充電電源18との開閉状態を切り替えるメインリレー20と、を有する。
さらに、統合BMS13は個別リレー11−1〜11−nの開閉制御を行い、PCS14がメインリレー20の開閉制御及び組電池12に対する充放電制御を行う。
PCS14は、各個別リレー11−1〜11−nを閉塞した状態で組電池12に対する充放電を行い、充放電を行った後にメインリレー20を開放し、各個別リレー11−1〜11−nが接続されている電池パックB1〜Bnで検出される電流値IB1、IB2、・・IBnの絶対値の最大の値|Imax|が所定閾値αth以下で、且つこの電流の時間微分値dIB1/dt、dIB2/dt、・・・dIBn/dtの絶対値のうちの最大の値|(dI/dt)max|が所定閾値βth以下である場合に、該個別リレー11−1〜11−nを開放する。
このように、電流値の絶対値の最大の値|Imax|が所定閾値αth以下になるという条件に加えて、電流値の時間微分値の絶対値の最大値|(dI/dt)max|が所定閾値βth以下という条件を満たすことで、個別リレー11−1〜11−nを開放するようにしていることで、パック間電位差復帰が生じ得ない定常状態を確実に検知して、この定常状態で、個別リレー11−1〜11−nを開放することができる。これにより、次回の充放電時における個別リレー11−1〜11−nの閉塞時にパック間電位差復帰が生じることを防ぎ、突入電流の発生を確実に防止することができる。特に、上記定常状態を確実に検知できるので、充放電の停止時における個別リレー11−1〜11−nの閉塞タイミングを必要以上に遅らせることを防止できる。
なお、本実施の形態において、電流値の絶対値の最大の値|Imax|の所定閾値αth及び電流値の時間微分値の絶対値の最大値|(dI/dt)max|の所定閾値βthの定め方について特に限定されていないが、例えば、上述のSOHセンサ28−1〜28−nにより検出される劣化度D1〜Dn、SOCセンサ30−1〜30−nにより検出される充電率CR1〜CRn、及び温度センサ31−1〜31−nにより検出される電池温度T1〜Tn等のパラメータの一つ又は2つ以上を考慮して上記所定閾値αth及び所定閾値βthの具体的な値を決定するようにしても良い。
また、本実施の形態では、SOHセンサ28−1〜28−n、SOCセンサ30−1〜30−n、及び温度センサ31−1〜31−nは必須の構成ではないので、これらを省いてシステム全体の構成の簡素化を図るようにしても良い。
さらに、本実施の形態では、各個別リレー11−1〜11−nを閉塞した状態で組電池12に対する充放電を行うことを想定しているが、各個別リレー11−1〜11−nの一部のみを用いて組電池12に対する充放電を行う場合にも同様に適用することができる。この場合、個別リレー11−1〜11−nのうち、閉塞された一部の特定の個別リレーについて、それら特定の個別リレーに対応する電池パックの中においてのみ検出電流値の絶対値の最大値|Imax|及び電流値の時間微分値の絶対値の最大値|(dI/dt)max|を定義して、上記充放電終了シーケンスを行うようにしても良い。
(第2の実施の形態)
以下、本発明に係る第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態に係るスイッチ制御システム10では、統合BMS13は、電流の検出値IB1、IB2、・・IBnが一度0になった後であっても、電池パックB1〜Bn間におけるパック間電位差復帰が生じるかどうかを予測判定するパック間電位差復帰予測判定手段(モジュール間電位差復帰予測判定手段)として機能する。
そして、パック間電位差復帰予測判定手段によりパック間電位差復帰が生じないと予測された場合には、個別リレー11−1〜11−nが閉塞されている全ての電池パックB1〜Bnに流れる電流値IB1、IB2、・・IBnの絶対値のうちの最大の値|Imax|が所定閾値αth以下となった際に、電流の時間微分値の絶対値の最大値|(dI/dt)max|が所定閾値βth以下となったかどうかにかかわらず、個別リレー11―1〜11−nを開放する。
すなわち、パック間電位差復帰が生じるかどうかを予め予測判定してパック間電位差復帰が生じる可能性が実質的無いか又は極めて低いと判定できる場合には、電流の時間微分値の絶対値の最大値|(dI/dt)max|が所定閾値βth以下であるかどうかを判断するまでも無く、個別リレー11−1〜11−nを開放する。これにより、システムにおける演算負担を軽減することができる。以下では、パック間電位差復帰が生じるかどうかを予測判定する具体例を説明する。
図7は、パック間電位差復帰が生じるかどうかを予測判定するプロセスを含む充放電終了シーケンスの流れを示したフローチャートである。なお、上記図5に基づき説明した第1の実施の形態に係る処理と同様の要素には、同一のステップ番号を付し、状況に応じてその説明を省略する。
先ず、充放電終了シーケンスが開始されると、上記ステップS101及びステップS102と同様の処理が行われ、ステップS1001に進む。
ステップS1001において、統合BMS13は、各電池パックB1〜Bnの電流センサ24−1〜24−nにより検出された電流値IB1(t−Δt)、IB2(t−Δt)、・・IBn(t−Δt)を取得する。ここで、時刻t−Δtとはメインリレー20が開放される所定時間前の時刻である。なお、取得された電流値IB1(t−Δt)、IB2(t−Δt)、・・IBn(t−Δt)は、統合BMS13の図示しない記憶手段に記憶される。
そして、ステップS1002において、統合BMS13は、電流値IB1(t−Δt)、IB2(t−Δt)、・・IBn(t−Δt)相互の差の最大値ΔImax(t−Δt)を算出して記憶手段に記憶させる。具体的に、ΔImax(t−Δt)とは、電流値の絶対値|IB1(t−Δt)|、|IB2(t−Δt)|、・・|IBn(t−Δt)|の中から選択される任意の2つについて、それらの相互差が最大となる値として定義される。このΔImax(t−Δt)は上記記憶手段に記憶される。
そして、ステップS103において、メインリレー20が開放され、ステップS104においてPCS14から統合BMS13に充放電停止済信号に送信される。
次に、ステップS1003において、統合BMS13は、各電池パックB1〜Bnの電流値IB1(t)、IB2(t)、・・IBn(t)を取得して、上記記憶手段に記憶する。この電流値IB1(t)、IB2(t)、・・IBn(t)は、メインリレー20の開放後の電流値である。
ここで、統合BMS13は、上記各電池パックB1〜Bnの電流値IB1(t)、IB2(t)、・・IBn(t)の各値の絶対値をとり、その最大値(以下、|Imax(t)|)を抽出し、上記記憶手段に記憶する。
ステップS1004において、電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αth以下であるかどうかが判定される。そして、電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αthを越えていると判定されると、ステップS1003に戻る。一方で、電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αth以下であると判定されるとステップS1005に進む。
ステップS1005においては、統合BMS13は、上記記憶手段に記憶されたΔImax(t−Δt)を読み出し、ΔImax(t−Δt)が所定閾値γthを超えているかどうかを判定する。ここで、ΔImax(t−Δt)が所定閾値γth以下ではないと判定されるとステップS1006に進む。
ステップS1006において、さらに、統合BMS13は、上記記憶手段から電流値IB1(t)、IB2(t)、・・IBn(t)を読み出し、電流微分値dIB1/dt(t)、dIB2/dt(t)、・・・dIBn/dt(t)を算出するとともに、これら値の絶対値のうちの最大値(以下、|(dI/dt)max|)を算出する。
ステップS1007において、算出された電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max(t)|が所定の閾値βth以下であるかどうかが判定される。そして、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max(t)|が所定の閾値βthを越えていると判定されると、ステップS1002に戻る。一方で、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max|が所定の閾値βth以下であると判定されるとステップS108に進み、以降の処理が行われる。
一方、上記ステップS1005において、ΔImax(t−Δt)が所定閾値γth以下であると判定された場合には、ステップS108に進む。すなわち、これは、パック間電位差復帰が生じないと予測判定された場合である。この場合、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max(t)|を算出する処理を行うこと無く、個別リレー11−1〜11−nが開放される。
以上、説明した本実施の形態に係るスイッチ制御システム10によれば、電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αth以下であり且つ、メインリレー20の開放の所定時間前の各電池パックB1〜Bn間における電流値相互の差の最大値ΔImax(t−Δt)が所定閾値γth以下であれば、電流値の時間微分値の算出、及び時間微分値の閾値との大小比較を省略し、システムにおける演算負担の軽減を図っている。
特に、このようにメインリレー20の開放の所定時間前の各電池パックB1〜Bn間における電流値相互の差の最大値ΔImax(t−Δt)が非常に小さい場合には、各電池パックB1〜Bn間における素子としての性質にばらつきが少なく、各電池パックB1〜Bnの固有の開放電圧OCV1、OCV2、・・・OCVnの相互差も小さく、結果として固有の開放電圧OCV1、OCV2、・・・OCVnと終止開放電圧OCV∞との差も小さくなるものと考えられる。
したがって、必然的に、個別リレー11−1〜11−nの次回の閉塞時にこれらに負担をかけるほどのパック間電位差復帰が生じる可能性が低いので、この場合にはパック間電位差復帰を判定する電流値の時間微分値を用いた処理(ステップS1006及びステップS1007)を省略して、システムにおける演算負担を軽減し、その効率化を図ることができる。
さらに、以下では、パック間電位差復帰が生じるかどうかを予測判定するプロセスの第1の変形例、第2の変形例、又は第3の変形例を含む充放電終了シーケンスの流れについて説明する。
図8は、パック間電位差復帰が生じるかどうかを予測判定するプロセスの第1変形例を含む充放電終了シーケンスの流れを示したフローチャートである。なお、上記図5に基づき説明した第1の実施の形態に係る処理及び図7で説明した処理と同様の要素には、同一のステップ番号を付し、状況に応じてその説明を省略する。
先ず、充放電終了シーケンスが開始されると、上記ステップS101及びステップS102と同様の処理が行われ、ステップS1101に進む。
ステップS1101において、統合BMS13は、個別BMS32−1〜32−nから受信したSOHセンサ28−1〜28−nで検出された劣化度D1(t−Δt)、D2(t−Δt)、・・・Dn(t−Δt)を取得し、図示しない記憶手段に記憶させる。
そして、統合BMS13は、劣化度D1(t−Δt)、D2(t−Δt)、・・・Dn(t−Δt)相互の差の最大値ΔDmax(t−Δt)を算出して記憶手段に記憶させる。
そして、ステップS103において、メインリレー20が開放され、ステップS104においてPCS14から統合BMS13に充放電停止済信号に送信される。さらに、上述したステップS1003及びステップS1004の処理が行われる。ステップS1004において電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αth以下であると判定されると、本変形例特有の処理であるステップS1105に進む。
ステップS1105においては、統合BMS13は、上記記憶手段に記憶された劣化度の相互差の最大値ΔDmax(t−Δt)が所定閾値δthを超えているかどうかを判定する。ここで、劣化度の相互差の最大値ΔDmax(t−Δt)が所定閾値δthを越えていると判定されるとステップS1006に進む。すなわち、これは、パック間電位差復帰が生じると予測判定された場合である。そして、以降は上述したステップS1006以下の工程が行われる。
一方、上記ステップS1105において、劣化度の相互差の最大値ΔDmax(t−Δt)が所定閾値δth以下であると判定された場合には、ステップS108に進む。すなわち、これは、パック間電位差復帰が生じないと予測判定された場合である。この場合、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max(t)|を算出する処理を行うこと無く、個別リレー11−1〜11−nが開放される。
本変形例に係るスイッチ制御システム10によれば、電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αth以下であり且つ、メインリレー20の開放の所定時間前の各電池パックB1〜Bn間における劣化度の相互差の最大値ΔDmax(t−Δt)が所定閾値δth以下である場合、すなわち、メインリレー20の開放の所定時間前の劣化度の相互差の最大値ΔDmax(t−Δt)が非常に小さい場合には、各電池パックB1〜Bn間における素子の劣化状況にばらつきが少なく、それらの充電率や容量も比較的均一であると考えられる。
したがって、各電池パックB1〜Bn間の固有の開放電圧OCV1、OCV2、・・・OCVnの相互差も小さく、結果としてこれら固有の開放電圧OCV1、OCV2、・・・OCVnと終止開放電圧OCV∞との差も小さくなるものと考えられる。
したがって、必然的に、個別リレー11−1〜11−nの次回の閉塞時にこれらに負担をかけるほどのパック間電位差復帰が生じる可能性が低いので、この場合にはパック間電位差復帰を判定する電流値の時間微分値を用いた処理(ステップS1006及びステップS1007)を省略して、システムにおける演算負担を軽減し、その効率化を図ることができる。
図9は、パック間電位差復帰が生じるかどうかを予測判定するプロセスの第2変形例を含む充放電終了シーケンスの流れを示したフローチャートである。なお、上記図5に基づき説明した第1の実施の形態に係る処理、及び図7で説明した処理と同様の要素には、同一のステップ番号を付し、状況に応じてその説明を省略する。
先ず、充放電終了シーケンスが開始されると、上記ステップS101及びステップS102と同様の処理が行われ、ステップS1201に進む。
ステップS1201において、統合BMS13は、個別BMS32−1〜32−nから受信した温度センサ31−1〜31−nで検出された電池温度T1(t−Δt)、T2(t−Δt)、・・・Tn(t−Δt)を取得し、図示しない記憶手段に記憶させる。
そして、統合BMS13は、電池温度T1(t−Δt)、T2(t−Δt)、・・・Tn(t−Δt)相互の差の最大値ΔTmax(t−Δt)を算出して記憶手段に記憶させる。
そして、ステップS103において、メインリレー20が開放され、ステップS104においてPCS14から統合BMS13に充放電停止済信号に送信される。さらに、上述したステップS1003及びステップS1004の処理が行われる。ステップS1004において電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αth以下であると判定されると、本変形例特有の処理であるステップS1205に進む。
ステップS1205においては、統合BMS13は、上記記憶手段に記憶された電池温度の相互差の最大値ΔTmax(t−Δt)が所定閾値εthを超えているかどうかを判定する。ここで、電池温度の相互差の最大値ΔTmax(t−Δt)が所定閾値εthを越えていると判定されるとステップS1006に進む。すなわち、これは、パック間電位差復帰が生じると予測判定された場合である。そして、以降は上述したステップS1006以下の工程が行われる。
一方、上記ステップS1205において、電池温度の相互差の最大値ΔTmax(t−Δt)が所定閾値εth以下であると判定された場合には、ステップS108に進む。すなわち、これは、パック間電位差復帰が生じないと予測判定された場合である。この場合、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max(t)|を算出する処理を行うこと無く、個別リレー11−1〜11−nが開放される。
本変形例に係るスイッチ制御システム10によれば、電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αth以下であり且つ、メインリレー20の開放の所定時間前の各電池パックB1〜Bn間における電池温度の相互差の最大値ΔTmax(t−Δt)が所定閾値εth以下である場合、すなわち、メインリレー20の開放の所定時間前の電池温度の相互差の最大値ΔTmax(t−Δt)が非常に小さい場合には、各電池パックB1〜Bn間における素子の状態にばらつきが少なく、それらの充電率や容量も比較的均一であると考えられる。
したがって、各電池パックB1〜Bn間の固有の開放電圧OCV1、OCV2、・・・OCVnの相互差も小さく、結果としてこれら固有の開放電圧OCV1、OCV2、・・・OCVnと終止開放電圧OCV∞との差も小さくなるものと考えられる。
したがって、必然的に、個別リレー11−1〜11−nの次回の閉塞時にこれらに負担をかけるほどのパック間電位差復帰が生じる可能性が低いので、この場合にはパック間電位差復帰を判定する電流値の時間微分値を用いた処理(ステップS1006及びステップS1007)を省略して、システムにおける演算負担を軽減し、その効率化を図ることができる。
図10は、パック間電位差復帰が生じるかどうかを予測判定するプロセスの第3変形例を含む充放電終了シーケンスの流れを示したフローチャートである。なお、上記図5に基づき説明した第1の実施の形態に係る処理、及び図7で説明した処理と同様の要素には、同一のステップ番号を付し、状況に応じてその説明を省略する。
先ず、充放電終了シーケンスが開始されると、上記ステップS101及びステップS102と同様の処理が行われ、ステップS1201に進む。
ステップS1301において、統合BMS13は、個別BMS32−1〜32−nから受信した温度センサ31−1〜31−nで検出されたSOCセンサ30−1〜30−nで検出された充電率CR1(t−Δt)、CR2(t−Δt)、・・・CRn(t−Δt)を取得し、図示しない記憶手段に記憶させる。
そして、統合BMS13は、充電率CR1(t−Δt)、CR2(t−Δt)、・・・CRn(t−Δt)相互の差の最大値ΔCRmax(t−Δt)を算出して記憶手段に記憶させる。
そして、ステップS103において、メインリレー20が開放され、ステップS104においてPCS14から統合BMS13に充放電停止済信号に送信される。さらに、上述したステップS1003及びステップS1004の処理が行われる。ステップS1004において電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αth以下であると判定されると、本変形例特有の処理であるステップS1305に進む。
ステップS1305においては、統合BMS13は、上記記憶手段に記憶された充電率の相互差の最大値ΔCRmax(t−Δt)が所定閾値ηthを超えているかどうかを判定する。ここで、充電率の相互差の最大値ΔCRmax(t−Δt)が所定閾値ηthを越えていると判定されるとステップS1006に進む。すなわち、これは、パック間電位差復帰が生じると予測判定された場合である。そして、以降は上述したステップS1006以下の工程が行われる。
一方、上記ステップS1305において、充電率の相互差の最大値ΔCRmax(t−Δt)が所定閾値ηth以下であると判定された場合には、ステップS108に進む。すなわち、これは、パック間電位差復帰が生じないと予測判定された場合である。この場合、電流微分絶対値の最大値|(dI/dt)max(t)|を算出する処理を行うこと無く、個別リレー11−1〜11−nが開放される。
本変形例に係るスイッチ制御システム10によれば、電流絶対値の最大値|Imax(t)|が所定の閾値αth以下であり且つ、メインリレー20の開放の所定時間前の各電池パックB1〜Bn間における充電率の相互差の最大値ΔCRmax(t−Δt)が所定閾値ηth以下である場合、すなわち、メインリレー20の開放の所定時間前の充電率の相互差の最大値ΔCRmax(t−Δt)が非常に小さい場合には、各電池パックB1〜Bn間における充電率のばらつきが少なくなる。
したがって、各電池パックB1〜Bn間の固有の開放電圧OCV1、OCV2、・・・OCVnの相互差も小さく、結果としてこれら固有の開放電圧OCV1、OCV2、・・・OCVnと終止開放電圧OCV∞との差も小さくなるものと考えられる。
したがって、必然的に、個別リレー11−1〜11−nの次回の閉塞時にこれらに負担をかけるほどのパック間電位差復帰が生じる可能性が低いので、この場合にはパック間電位差復帰を判定する電流値の時間微分値を用いた処理(ステップS1006及びステップS1007)を省略して、システムにおける演算負担を軽減し、その効率化を図ることができる。
(第3の実施の形態)
以下、本発明に係る第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態では、充放電終了シーケンスにおいて、各電池パックB1〜Bnの異常診断を行い、異常判定がなされた場合、電流の絶対値の閾値αth及び電流微分値の絶対値の閾値βthの値を変動させる処理を行う。
図11は、第3実施形態に係る充放電終了シーケンスの流れを示したフローチャートである。なお、ステップS101〜ステップS104及びステップS105〜ステップS108については、上記図5に基づき説明した第1の実施の形態の場合と同様であるのでその説明を省略する。本実施の形態では、ステップS104以降において、特徴的な処理としてステップS2101〜ステップS2103が行われ、その後、ステップS105に進む。
ステップS2101において、統合BMS13により電池パックB1〜Bnの異常診断が行われる。具体的には、各電池パックB1〜Bnにおける個別BMS32−1〜32−nを介して受信した、電流値IB1、IB2、・・IBn、劣化度D1、D2、・・・Dn、電池温度T1、T2、・・・Tn、及び充電率CR1、CR2、・・・CRnに基づき、これらの値が通常の値と比較して所定値以上低いかどうか、或いは所定値以上高いかどうかの観点から異常の診断がなされる。なお、このような異常診断にかかる通常値と比較しうる所定値は、当業者が技術常識に照らして適宜選定し得るものであるので、その詳細な説明を省略する。
ステップS2102において、各電池パックB1〜Bnのいずれかに異常があるかどうかの判定がなされる。異常が無いと判定されるとステップS105に進み、上したステップS106〜ステップS108の処理がなされる。一方で、異常があると判定されるとステップS2103に進む。
ステップS2103においては、上述の電流値の絶対値の最大値|Imax|の閾値αth及び電流微分値の絶対値の最大値|(dI/dt)max|の閾値βthを、それぞれαth+Δα及びβth+Δβに書き換える。すなわち、これら閾値の値を大きくする。そして、ステップS105に進む。
本実施の形態によれば、各電池パックB1〜Bnのいずれかに異常が認められる場合に、
閾値αth及び閾値βthの値を大きくして電流値の絶対値の最大値|Imax|及び電流微分値の絶対値の最大値|(dI/dt)max|が閾値以下の値をとりやすい状態とする。これにより、電池パックB1〜Bnに異常が認められた場合には、個別リレー11〜1〜11nへの負担よりも異常状態の電池パックB1〜Bn相互に電流が流れる状態を防ぐことを優先して、個別リレー11〜1〜11−nを速やかに開放することができる。
なお、各電池パックB1〜Bnのいずれかに異常が認められる場合に、その異常の認められる電池パックBk(1≦k≦n)に対してのみ上記増加した閾値αth+Δα及び閾値βth+Δβを適用しても良い。例えば、異常の認められる電池パックBkの電流値の絶対値|IBk|が閾値αth+Δα以下で且つ電池パックBkの電流値の微分値の絶対値|(dI/dt)Bk|が閾値βth+Δβ以下となった場合に、該電池パックBkの個別リレー11−kを優先的に開放するようにしても良い。この場合、他の電池パックB1〜Bk−1、Bk+1〜Bnに対しては第1の実施の形態で説明した通常の閾値αth及び閾値βthを用いた充電終了シーケンスを行う。
これにより、異常の発生した電池パックBkを用いることを防止しつつも、他の異常の発生していない電池パックB1〜Bk−1、及びBk+1〜Bnは通常通り使用することができる。
なお、第3の実施の形態の充放電終了シーケンスでは、第1の実施の形態と同様の図5のステップS101〜ステップS104の処理を行い、第3の実施の形態特有のステップS2101〜ステップS2103の処理を行い、その後、第1の実施の形態と同様の図5のステップS105〜ステップS108の処理を行っている。
しかしながら、これに限られず、第2実施の形態及び/又はその変形例1〜3に係る処理と組み合わせて良い。例えば、第2の実施の形態における図7のステップS1001、ステップS1002、ステップS103、及びステップS104を実行し、第3の実施の形態特有の図11のステップS2101〜ステップS2103を経て、その後、図7のステップS1003以降の処理を行うようにしても良い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記第1〜第3の実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記各実施の形態では、電流値IB1、IB2、・・IBnの絶対値の最大値|Imax|及び電流微分値dIB1/dt、dIB2/dt、・・・dIBn/dtの絶対値の最大値|(dI/dt)max|を、全ての電池パックB1〜Bnの個別リレー11−1〜11nの開放を行うかどうかの指標として用いている。
しかしながら、例えば、電流値IB1、IB2、・・IBnの内の一部の電流値IBk、IBk+1、及びIBk+2(k=1〜n−2)の絶対値の最大値|Imax(k〜k+2)|、並びにそれらの電流微分値dIBk/dt、dIBk+1/dt、及びdIBk+2/dtの絶対値の最大値|(dI/dt)max(k〜k+2)|を定義して、これら一部の電池パックBk、Bk+1、及びBk+2の個別リレー11−k、11−k+1、及び11−k+2の単位で開閉制御を行っても良い。これにより、充放電終了シーケンスにおける制御対象の電池パック数が少なく制御単位が小さくなるので、より細やかな制御が可能となる。
また、第2実施の形態及びその変形例の充放電終了シーケンスにおいて、所定時間前の電流値の相互差の最大値ΔImax(t−Δt)、劣化度の相互差の最大値ΔDmax、電池温度の相互差の最大値ΔTmax、又は充電率の相互差の最大値ΔCRmaxが、それぞれの閾値以下であるかどうかを判定してパック間電位差復帰が起こるかどうかを予測判定している。すなわち、これらの値のいずれかをパック間電位差復帰の予測判定のためのパラメータとしている。
しかしながら、これらのうちのいずれか2つ以上を、パック間電位差復帰が起こるかどうかの予測判定のパラメータとして用いても良い。