以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
(実施の形態)
本実施の形態において、無線通信チャネルの切り替えの際の通信ロスを低減する基地局システム等について説明する。まず、より高い品質で無線通信可能なチャネルを動的に決定することができる無線基地局装置及び無線通信システムに関する技術について説明し、その後に、決定したチャネルに切り替える際の通信ロスを低減する技術について説明する。
<より高い品質のチャネルを決定する技術>
図1は、本実施の形態に係る基地局10を含む無線通信システム1の構成図である。
図1に示されるように、無線通信システム1は、基地局10と、通信端末20とを備える。無線通信システム1は、LAN30(Local Area Network)及びネットワーク40に接続されている。
基地局10は、通信端末20と無線通信を行う無線基地局装置である。基地局10は、無線インタフェースを備えており、無線通信可能エリアに存在する通信端末20との間で通信リンクを確立し、無線通信を行う。また、基地局10は、LAN30と接続されており、無線通信に用いられる通信フレーム(通信パケット)の宛先に応じて、当該通信フレームを当該宛先に向けて転送する。なお、無線通信は、例えば、IEEE802.11a、b、g、n規格などに適合する無線LANにより実現される。基地局10は、基地局システムの一例である。
基地局10は、2つの無線インタフェースW1及びW2を備えており、これらを適切に用いて、より高い品質で無線通信可能なチャネルを発見し、発見したチャネルで通信端末20との無線通信を行う。2つの無線インタフェースW1及びW2の使用方法などは、後で詳細に説明する。
通信端末20は、無線インタフェースを有する無線通信端末である。通信端末20は、基地局10が有する無線インタフェースW1又はW2のいずれかと通信リンクを確立し、無線通信を行う。通信端末20は、基地局10を介して、LAN30又はネットワーク40に接続された他の通信装置(不図示)と通信することができる。
LAN30は、基地局10及びネットワーク40に接続された通信ネットワーク(ローカルエリアネットワーク)である。LAN30は、例えば、IEEE802.3規格などに適合する有線LANにより実現される。
ネットワーク40は、LAN30に接続された外部の通信ネットワークである。ネットワークは、例えば、通信事業者内のアクセスネットワーク、又は、インターネットなどに相当する。
このように構成された無線通信システム1における基地局10のハードウェア構成及び機能構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る基地局10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、基地局10は、CPU101(Central Processing Unit)と、ROM102(Read Only Memory)と、メインメモリ103と、ストレージ104と、無線インタフェースW1及びW2とを備える。
CPU101は、ROM102又はストレージ104等に記憶された制御プログラムを実行するプロセッサである。
ROM102は、制御プログラム等を保持する読み出し専用記憶領域である。
メインメモリ103は、CPU101が制御プログラムを実行するときに使用するワークエリアとして用いられる揮発性の記憶領域である。
ストレージ104は、制御プログラム、及び、コンテンツなどを保持する不揮発性の記憶領域である。
無線インタフェースW1は、通信端末20との間で通信リンクを確立し、無線通信を行う無線通信インタフェースである。無線インタフェースW1は、例えば、IEEE802.11a、b、g、n規格等に適合する無線LANの通信インタフェースであり、無線通信信号の生成回路及びアンテナ等を有する。無線インタフェースW1は、後述するように、無線通信のための通信用インタフェース、又は、基地局10の周囲の電波状況を取得するための監視用インタフェースとして用いられる。無線インタフェースW1には、所定のSSID(Service Set Identifier)、及び、BSSID(Basic Service Set Identifier)が設定される。無線インタフェースに設定されるSSID及びBSSID等の情報を設定情報ともいう。
無線インタフェースW2は、無線インタフェースW1と同じハードウェア構成を有する無線通信インタフェースであり、無線インタフェースW1と同様の用途で用いられる。無線インタフェースW2は、無線インタフェースW1とは独立に動作する。無線インタフェースW2には、無線インタフェースW1と同一の設定情報(つまりSSID及びBSSID)が設定される。
なお、無線インタフェースW1のアンテナと無線インタフェースW2のアンテナとは、1つの基地局10の筺体に備えられ、例えば10cm程度の間隔をあけて配置される。
図3は、本実施の形態に係る基地局10の機能構成を示すブロック図である。
図3に示されるように、基地局10は、無線通信部111と、通信用インタフェース112と、状況取得部113と、監視用インタフェース114と、記憶部115と、決定部116と、制御部117とを備える。
無線通信部111は、通信端末20との無線通信を行う処理部である。具体的には、無線通信部111は、通信用インタフェース112により通信端末20と通信リンクを確立し、確立した通信リンクを通じて通信端末20との間で通信フレームの送受信を行う。通信用インタフェース112には、動的に、無線インタフェースW1及びW2のいずれか一方、又は、両方が用いられる。無線通信部111が無線インタフェースW1及びW2のどちらをどのタイミングで通信用インタフェース112として用いるかは、決定部116により決定される。無線通信部111は、CPU101、ROM102及びメインメモリ103等(以降、CPU101等ともいう)により実現される。
また、無線通信部111は、通信用インタフェース112が無線通信に使用しているチャネル(以降、「通信チャネル」ともいう)の通信状況を決定部116に提供する。上記通信状況とは、通信チャネルにおける無線通信の帯域占有率、及び、通信用インタフェース112により送受信(送信及び受信の少なくとも一方)されたフレーム数等を含む情報である。
また、通信端末20との無線通信に用いるチャネルの変更は、無線インタフェースW1及びW2のうち、無線通信部111が通信用インタフェース112として使用している一方の無線インタフェースから他方の無線インタフェースに、通信端末20が接続切り替えを行うことで実現される。ここで、上記一方の無線インタフェースのチャネルと、上記他方の無線インタフェースのチャネルとは、互いに異なる。後述するように、両方の無線インタフェースにかかる無線通信管理情報がチャネルを除いて同じとすれば、通信端末からは、チャネルのみを変更すると認識される。
このとき、接続切り替えの前に上記他方の無線インタフェースを、より高い品質で無線通信可能なチャネルに設定しておくようにすれば、当該接続切り替えにより、そのチャネルで無線通信することができるようになる。
また、上記チャネルの変更は、無線通信部111が通信用インタフェース112として使用している一方の無線インタフェースの動作(例えば電波の送信)を停止させることで、通信端末20が自発的に他の無線インタフェースを探索することによって実現されてもよい。また、上記チャネルの変更は、無線通信部111がチャネル切り替えのための告知信号を通信端末20に対して送信し、通信端末20が上記告知信号を受信したことを契機として行ってもよい。上記告知信号は、例えば、IEEE802.11h規格により定められたCSA(Channel Switch Announcement)やIEEE802.11規格により定められたスペクトラムマネージメントアクションを含むフレームフォーマットであるAction FrameにCSAを含める(以後、Action Frame CSAとも呼ぶ)ことができる。特に、基地局10は、Action Frame CSAにより、通信端末20との間をユニキャスト通信で、変更先チャネルを告知することが好ましい。このようにすれば、ビーコンに含まれて送信されるCSA(IEEE802.11h規格により定められたCSA)と比べ、変更先チャネルが通信端末20に確実に通知され得る。
図3に戻って、通信用インタフェース112は、無線通信部111により用いられ、通信端末20との通信リンクを確立及び維持する無線インタフェースである。無線インタフェースW1及びW2のいずれか一方、又は、両方が、制御部117による制御に基づいて、動的に通信用インタフェース112として用いられる。
また、通信用インタフェース112は、基地局10に接続している複数の通信端末の無線接続に必要な管理情報(以後、無線通信管理情報とも呼ぶ)を記憶する。ここで、無線接続に必要な管理情報とは、認証や暗号に関する各通信端末の管理情報や基地局10と各通信端末のドライバ間で必要になる管理情報などである。無線通信管理情報をもとに、基地局10と通信端末20は互いの間で無線通信を行う。通信用インタフェース112は、無線インタフェースW1及びW2のいずれかとストレージ104の一部などにより実現される。
状況取得部113は、無線通信部111による無線通信中に、基地局10の周囲の電波状況を取得し、取得した電波状況を記憶部115に格納する処理部である。具体的には、状況取得部113は、監視用インタフェース114により、チャネルを変更しながら、無線通信に使用可能な各チャネルにおいて時間の経過とともに電波状況を複数回取得する。例えば、状況取得部113は、無線通信に使用可能なチャネルの1つにおいて電波状況を500msec間取得した後、無線通信に使用可能な別のチャネルにおいて同じように電波状況を取得する。これを無線通信に使用可能なすべてのチャネルにおいて行うことで、無線通信に使用可能な各チャネルの電波状況を取得する。また、状況取得部113は、上記の電波状況の取得を繰り返し行うことで、長時間(例えば、数時間、数日、又は、それ以上)にわたる、無線通信に使用可能なすべてのチャネルにおける電波状況を記憶部115に格納する。
状況取得部113が取得する電波状況は、例えば、チャネルごとの帯域占有率、フレームキャプチャログ、外来ノイズのノイズフロア値、又は、自身の通信を阻害し得る通信の検出などである。ここで、自身の通信を阻害し得る通信とは、例えば、遅延を招くノイズやIEEE802.11acなどの複数チャネルを束ねるような通信である。このような通信は、遅延を極力抑えることが求められるアプリケーション下で、無線通信システム1を運用させたい場合に弊害となる。監視用インタフェース114には、動的に、無線インタフェースW1及びW2のいずれか一方が用いられる。なお、状況取得部113が無線インタフェースW1及びW2のどちらをどのタイミングで監視用インタフェース114として用いるかについては、決定部116により決定され、その具体的タイミングは全く任意である。例えば、より良好な通信チャネルを見出したとき即時に切り替えてもよいし、現行の通信チャネルにおける通信状況がある閾値を下回って悪化したときに切り替えてもよい。あるいは、夜間など各端末との通信が途絶える時間帯に切替時刻を予約しておくことも考えられる。これにより、チャネル切り替えに伴う無線通信の断時間が与える影響を抑えることができるからである。状況取得部113は、CPU101等により実現される。
監視用インタフェース114は、状況取得部113により用いられ、基地局10の周囲の電波状況を取得する無線インタフェースである。無線インタフェースW1及びW2のいずれか一方が、制御部117による制御に基づいて、動的に監視用インタフェース114として用いられる。
記憶部115は、基地局10の周囲の電波状況が状況履歴121として格納される記憶装置である。状況履歴121は、状況取得部113が取得した電波状況が時系列データとして格納される履歴データであり、決定部116により読み出され利用される。記憶部115は、ストレージ104により実現される。
決定部116は、無線通信部111により取得された通信状況と、記憶部115に格納された電波状況(状況履歴121)とに基づいて、通信チャネルでの無線通信より高い品質の無線通信ができると推定されるチャネルである好適チャネルを決定する。具体的には、決定部116は、無線通信部111から通信チャネルの通信状況を取得する。また、決定部116は、記憶部115に格納された電波状況(状況履歴121)である、無線インタフェースW1及びW2が使用可能なチャネルそれぞれについての帯域占有率又は無線フレームのキャプチャログ(以降、「キャプチャログ」ともいう)を、記憶部115から読み出すことで取得する。そして、上記通信状況及び上記電波状況に基づいて、より高い品質の無線通信ができると推定されるチャネルである好適チャネルを決定する。具体的な決定方法については、後で詳しく説明する。
制御部117は、無線通信部111及び状況取得部113のそれぞれが使用する無線インタフェースを制御する処理部である。具体的には、制御部117は、決定部116が好適チャネルを決定した場合に、監視用インタフェース114を、上記好適チャネルでの無線通信を行う新たな通信用インタフェース112として動作させるように制御する。また、制御部117は、上記場合に、通信用インタフェース112として使用されていた無線インタフェースを、新たに監視用インタフェース114として動作させるように制御する。さらに、制御部117は、決定部116が好適チャネルを決定し、チャネル切り替えの時刻が到来した場合に、通信用インタフェース112に記憶された無線通信管理情報(通信用インタフェース112を通じて取得された)を監視用インタフェース114に複製し記憶させ、監視用インタフェースとしての機能を停止して通信用インタフェースとしての動作を開始する準備を始める。
また、制御部117は、決定部116が好適チャネルとともに開始時刻を決定した場合には、この開始時刻に、新たな通信用インタフェース112の動作を開始させるように制御する。
次に、状況取得部113が取得する電波状況について、2つの具体例を示しながら説明する。第一の具体例は、チャネルごとの帯域占有率であり、第二の具体例は、キャプチャログである。
図4は、本実施の形態に係る状況取得部113が取得する電波状況の一例である帯域占有率の説明図である。図4の(a)、(b)及び(c)は、それぞれ異なる時刻における帯域占有率を、チャネルごとに示したグラフである。
例えば、図4の(a)に示されるグラフは、チャネル1の帯域占有率が約83%、チャネル2の帯域占有率が約61%、というように、チャネルの帯域占有率を示している。このグラフから、チャネル1及び8周辺のチャネルの帯域占有率が比較的高く、チャネル4及び11周辺のチャネルが比較的帯域占有率が低いと判断される。
図4の(b)及び(c)のそれぞれのグラフからも、上記と同様の考え方で、帯域占有率が比較的低いチャネル又は高いチャネルが判断される。
決定部116は、図4に示される帯域占有率を用いて、以下のように好適チャネルを決定する。例えば、所定時間内に時間間隔を隔てて3回取得された各チャネルの帯域占有率が、図4の(a)、(b)及び(c)であり、通信用インタフェース112の通信チャネルの帯域占有率が約30%であるとする。このとき、図4の(a)、(b)及び(c)から、決定部116は、帯域占有率が所定時間内において継続的に30%以下であるチャネルを判定する。判定の結果、決定部116は、帯域占有率が継続的に30%以下であるチャネルとしてチャネル11を選択し、好適チャネルをチャネル11と決定する。
図5は、本実施の形態に係る状況取得部113が取得する電波状況の一例であるキャプチャログの説明図である。
図5に示されるキャプチャログは、監視用インタフェース114が取得する複数の通信フレームに関する情報を示したものであり、複数の通信フレームのそれぞれについて、時刻501、送信元アドレス502、宛先アドレス503、通信チャネル504、及び、フレーム長505の各情報を含む。
時刻501は、監視用インタフェース114が当該通信フレームを取得した時刻を示す情報である。時刻501は、上記時刻を絶対的に示すものでもよいし、上記時刻を相対的に示すものであってもよい。時刻501は、例えば、キャプチャログ上の最も古い通信フレームの時刻を基準とし、基準とした最も古い通信フレームの時刻から当該通信フレームの受信時刻までの時間、つまり、基準とした時刻からの相対的な時刻とする。なお、時刻501が計測される際の時刻の最小単位は、1マイクロ秒〜1ミリ秒程度である。
送信元アドレス502は、当該通信フレームの送信元MACアドレスを示す情報である。図4において、「MAC(A1)」等は、基地局A1(不図示)のMACアドレスを意味し、また、「MAC(S1)」等は、通信端末S1(不図示)のMACアドレスを意味する。なお、MACアドレスは、一般に、12桁の16進数で、「11:22:33:aa:bb:cc」というように表現されるものである。
宛先アドレス503は、当該通信フレームの宛先MACアドレスを示す情報である。記載されている内容については、送信元アドレス502についてのものと同様である。
通信チャネル504は、当該通信フレームが取得されたチャネルを示す情報である。
フレーム長505は、当該通信フレームのフレーム長を示す情報である。
決定部116は、図5に示されるキャプチャログを解析することで、以下のように好適チャネルを決定する。
図6は、本実施の形態に係るキャプチャログの解析結果の一例の説明図である。
図6に示されるように、キャプチャログの解析結果には、各チャネルにおいて通信を行っている端末数601及び基地局数602、各チャネルで通信されている通信フレーム数603及び通信データ量604(単位は例えば[kbps])が含まれる。
端末数601及び基地局数602の算出方法を以下に説明する。以下の説明において、アドレスとは、MACアドレスを意味する。
キャプチャログに含まれる送信元アドレス502及び宛先アドレス503からは、当該アドレスが端末のアドレスであるか、又は、基地局のアドレスであるかはわからない。そこで、決定部116は、当該アドレスが端末又は基地局のアドレスであることを知るために、キャプチャログにおける複数の通信フレームにおいて、各通信フレームの送信元アドレス502と宛先アドレス503とをペアとして対応付けて保持し、この対応付けに基づいてアドレスが端末のものであるか基地局のものであるかを判断する。具体的には、決定部116は、ペアの一方に含まれる頻度が比較的高いアドレスを基地局のアドレスであると判定する。この方法は、基地局10がLAN30に接続されている他の通信装置と通信端末20との間でやりとりされる通信フレームを相互に転送するので、基地局のアドレスが上記ペアの一方に含まれる頻度が自ずと高くなることを利用した方法である。
なお、上記において、頻度が高いか否かを判定する際には、当該頻度と所定値とを比較した結果に基づいて判定してもよい。また、頻度の分布に基づいて基地局とその他の通信装置を区別できる適切な値を上記所定値として定めてもよい。
なお、基地局又は端末のアドレスとして予め定められたアドレスがある場合には、そのアドレスを用いて、アドレスが基地局のものであるか端末のものであるかを判断してもよい。
通信フレーム数603及び通信データ量604の算出方法を以下に説明する。
通信フレーム数603は、キャプチャログにおいて特定のチャネルから取得した通信フレームの数として得られる。また、通信データ量604は、キャプチャログから特定のチャネルから取得したフレームだけを抽出した上で、各フレームの送受信時刻(時刻501)と、フレーム長505とに基づいて、単位時間当たりの通信データ量を算出することで得られる。
決定部116は、端末数601、基地局数602、通信フレーム数603、又は、通信データ量604が所定値以下であるチャネルを混雑度が低いチャネルと判定する。そして、決定部116は、判定の結果として得られるチャネルを好適チャネルとして決定する。なお、好適チャネルを決定する際に、端末数601、基地局数602、通信フレーム数603及び通信データ量604から混雑度を総合的に評価して用いてもよいし、これらのうちの予め定められたいずれか1つ以上の解析結果を用いてもよい。また、上記で帯域占有率を用いて決定される好適チャネルが複数ある場合には、端末数601などを考慮して好適チャネルを絞り込むことも有効である。
以上のように構成された基地局10の動作について以下で説明する。
図7は、本実施の形態に係る基地局10の処理を示すフロー図である。
通信端末20が通信用インタフェース112としての無線インタフェースW1との間で通信リンクを確立している状態で、基地局10が以降の処理を行うことで、通信端末20が無線インタフェースW2との通信リンクを確立した状態になる。
ステップS101において、決定部116は、無線通信部111から通信チャネルの通信状況を取得する。
ステップS102において、決定部116は、記憶部115から、基地局10の周囲の電波状況として状況履歴121を取得する。
ステップS103において、決定部116は、ステップS101で取得した通信状況と、ステップS102で取得した電波状況とを用いて、好適チャネルを決定し、その好適チャネルへの切り替えの当否、および切り替えのタイミングを決定する。
ステップS104において、チャネル切り替えのタイミングが到来すると、切り替えに先立ち、制御部117は、通信用インタフェース112で使用中(記憶している)の無線通信管理情報を監視用インタフェース114に複製し記憶させる。前述のとおり、チャネル切り替えのタイミングは任意である。
ステップS105において、制御部117は、監視用インタフェース114として使用されている無線インタフェースW2を、無線通信部111が新たな通信用インタフェース112として使用できるように制御する。具体的には、無線インタフェースW2を通信用インタフェースとしてリセットして、ステップS103で決定された好適チャネルを設定し、さらにステップS104で監視用インタフェース114に記憶された通信用インタフェース112の無線通信管理情報を設定する。
ステップS106において、無線通信部111は、通信チャネルから好適チャネルへのチャネル切り替えのための告知信号として好適チャネルを含むAction Frame CSAを通信端末20にユニキャスト送信する。
ステップS107において、通信端末20が、無線インタフェースW1から無線インタフェースW2へ、通信リンクの接続切り替えを行う。接続切り替えは、ステップS106のAction Frame CSAによる好適チャネルの情報と無線インタフェースW2に記憶された無線通信管理情報によって、通信端末20が無線インタフェースW1との通信リンクを切断することなく、無線インタフェースW2との通信リンクを確立することで行われる。つまり、無線接続のために必要な通信端末20の無線通信管理情報を参照でき、実質チャネル変更を行うだけで、接続切り替え前の通信リンクを引き継げるのである。通常、接続切り替えは、一度、通信リンクが切断され、新たな通信リンクを確立する必要がある。また、通常のハンドオーバ技術(高速ハンドオーバ技術ではない従来のハンドオーバ技術)によれば、接続先の基地局の探索のためにチャネルをスキャンする時間(数秒程度、より具体的には、1〜3秒程度)に加え、通信端末20が無線インタフェースW2との通信リンクの接続に必要な認証等のための200msec程度の時間を要する。
ステップS108において、接続しているすべての通信端末が新たな通信チャネルに切り替えられたことを確認した後、無線インタフェースW2が無線インタフェースW1に対して切り替え完了を通知する。
ステップS109において、制御部117は、通信用インタフェース112として使用されている無線インタフェースW1を、状況取得部113が新たな監視用インタフェース114として使用するように制御する。すなわち、ステップS104からS109までの間、2つのモジュールは異なるチャネルで併存して通信用インタフェースとして動作していることとなる。
以上の一連の処理により、基地局10が高い品質で無線通信可能なチャネルを動的に決定し、決定されたチャネルにおいて基地局10と通信端末20とが通信リンクを切断することなく無線通信を行うことができる。
図8は、本実施の形態に係る無線通信システム1における接続切り替えの方法を示すシーケンス図である。図7で説明した処理については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
最初、通信端末20がどの無線インタフェースとも通信リンクを確立していない状態であり、基地局10は、通信用インタフェース112として無線インタフェースW1を使用しているとする。
通信端末20が基地局10(無線インタフェースW1)との通信リンクを確立する際には、まず、通信端末20によるチャネルのスキャンが行われる。チャネルのスキャンには、一般に、数秒程度、より具体的には、1〜3秒程度の時間を要する。また、チャネルのスキャン後に、通信端末20と無線インタフェースW1との間での認証(Authentication)、接続(Association)及び鍵情報の交換(4−way handshake)が行われる。これらのやりとりには、一般に、200msec程度の時間を要する。このやりとりの後に、通信端末20と基地局10との無線通信が可能となる。
この後、無線インタフェースは監視用インタフェースとして各チャネルの状況を監視した結果、好適チャネルが決定され(ステップ103)、好適チャネルに切り替える処理(ステップS104)を行うタイミングが到来すると、制御部117から通信端末20へ好適チャネルを含むAction FrameCSAが送信される(ステップS106)。通信端末20は、これを受信すると、チャネルを変更する(ステップS107)。
無線インタフェースW2が通信用インタフェース112として使用開始されると、通信端末20は、使用チャネルをActionFrameCSAに含まれた好適チャネルに切り替える。
通信端末20が無線インタフェースW2との通信リンクを確立した後、無線インタフェースW2から無線インタフェースW1に、切り替え完了が通知される。この通知に基づいて、状況取得部113は、新たに無線インタフェースW1を監視用インタフェース114として使用して基地局10の周囲の電波状況の取得を行う。
なお、新たに無線インタフェースW1を監視用インタフェース114として使用した場合、状況取得部113は、取得した電波状況の履歴を引続き状況履歴121に格納する。このようにすることで、状況履歴121上の履歴データの欠落期間を短くすることができる。
なお、基地局10が2つの無線インタフェースW1及びW2を1つの基地局10が搭載していることで、以下のような利点を有する。
第一に、チャネル切り替えの際に、無線インタフェースのアンテナの物理的な位置の変化が小さく、チャネル切り替えに伴う通信特性の変化が小さく抑えられるという利点がある。通常の使用状態において、基地局10と通信端末20とは、数メートル程度の距離を離して配置されることが多いと考えられる。無線インタフェースW1及びW2のアンテナの間隔が10cmである場合、通信端末20から見れば、チャネル切り替えによってアンテナが10cm程度移動するように見える。しかし、アンテナの移動距離10cmは、基地局10と通信端末20との距離と比較すれば、実質的な移動がないと見ることもできる。
第二に、2つの無線インタフェースを併用することで短時間で周囲の電波状況を取得することができる利点がある。基地局10を配置する際には、配置しようとする位置における電波状況を予め取得したい場合がある。その場合に、2つの無線インタフェースの両方を用いて、互いに異なるチャネルにおいて電波状況の取得をさせることにより、1つの無線インタフェースを用いる場合と比較して半分の時間で電波状況の取得を完了することができる。
<チャネル切り替えの際の通信ロスを低減する技術>
次に、上記のように決定したチャネルに切り替える際の通信ロスを低減する技術について説明する。ここでは、基地局10が、無線インタフェースW1を通信用インタフェース112として用い、無線インタフェースW2を監視用インタフェース114として用いる状態から、無線インタフェースW1を監視用インタフェース114として用い、無線インタフェースW2を通信用インタフェース112として用いる状態へ移行する際の通信ロスを低減する技術を例として説明する。
なお、上記移行は、通信端末が、無線インタフェースW1と接続している状態から無線インタフェースW2と接続している状態に切り替わることに相当する。この切り替えは、例えば、通信端末が無線インタフェースW1との接続を切断し、その後に、無線インタフェースW2との接続を確立することによって実現可能であり、以降ではこの場合を例として説明する。ただし、上記切り替えは、これだけに限定されず、例えば、通信端末が無線インタフェースW1から無線インタフェースW2に、通信リンクの切断及び確立ステップを経ず、使用チャネルを切り替えることのみで接続切り替えを行うことも実現可能である。
図9は、本実施の形態に係る基地局10及び通信端末20の、チャネル切り替え機能に着目したブロック図である。
図9に示されるように、基地局10は、チャネル切り替えに関する機能ブロックとして、制御部117と、2つの無線インタフェースW1及びW2とを備える。
無線インタフェースW1及びW2は、それぞれ、端末リストを保有している。ここで、端末リストとは、当該無線インタフェースに接続している通信端末20と、当該通信端末20がフレームを受信できるか否かを示す受信可否情報とを示すリストである(図10参照)。無線インタフェースW1及びW2は、それぞれ、第一インタフェース及び第二インタフェースに相当する。
無線インタフェースW2は、キュー131と、キュー制御部132とを有する。
キュー131は、無線インタフェースW2により出力される通信端末20宛てのフレームを格納する出力キューである。キュー131には、通信端末20ごとに設けられ、当該通信端末20に対して送信すべきフレームが格納される。キュー131に格納されているフレームが出力されるか否かは、キュー制御部132により制御される。なお、キュー131は、例えば、無線インタフェースW2のモジュール内に存在するIEEE802.11規格準拠のパワーセーブキュー、言い換えればいわゆるファームウェアにより実現されるキューである。すなわち、無線インタフェースW2は、通信端末20がパワーセーブ状態にあると認識し、通信端末20からの通知フレーム(後述)を受信するまでは、フレームを送信せずキューに蓄積している状態である。また、キュー131は、CPU101が所定のプログラムを実行することでメインメモリ103の一部を利用して実現されるキュー、いわゆるソフトウェアにより実現されるキューであってもよい。
キュー制御部132は、キュー131からフレームを出力するか否かを制御する処理部である。キュー制御部132は、無線インタフェースW2の端末リストを参照して、通信端末20がフレームを受信可能である場合にキュー131からフレームを出力して通信端末20に送信する。通信端末20がフレームを受信不可能である場合には、キュー131からフレームを出力しない(言い換えれば、出力することを禁止する)ことで、フレームを蓄積する。
具体的には、キュー制御部132は、通信端末20が無線インタフェースW1との接続を切断する前に、通信端末20宛てのフレームの蓄積を開始する。これは、通信端末20が端末リストにフレーム受信不可の状態で登録されたことにより実行される。
そして、キュー制御部132は、無線インタフェースW1に接続していた通信端末20が、無線インタフェースW1との接続を切断し無線インタフェースW2に接続した場合に、キュー131に格納されているフレームを無線インタフェースW2から通信端末20に送信する。より具体的には、キュー制御部132は、通信端末20が無線インタフェースW2に接続した後に送信する通知フレームを受信したことを契機として、キュー131に格納されているフレームを送信する。これは、通信端末20が無線インタフェースW2に接続した後に送信する通知フレームを受信したことを契機として、無線インタフェースW2の端末リストにおける通信端末20の受信可否情報が、「不可」から「可」に変更されることにより実行される。このようにすることで、通信端末20がフレームを受信可能となった後のなるべく早いタイミングで、キュー131に格納されているフレームを通信端末20に受信させることができる。
なお、キュー131と、キュー制御部132とに相当する機能ブロックは、無線インタフェースW1も備えているが、説明を省略する。
制御部117は、無線インタフェースW1及びW2の設定情報及び端末リストを読み出し、及び、書き込みする。また、制御部117は、無線インタフェースW1及びW2の通信機能の開始及び終了を制御する。
具体的には、制御部117は、通信端末20が無線インタフェースW2に接続する前に、無線インタフェースW2の端末リストに通信端末20を登録する。このとき、制御部117は、通信端末20がフレームを受信不可能な状態として、端末リストに登録する。
また、制御部117は、通信端末20が無線インタフェースW1から無線インタフェースW2へ接続切り替えする前に無線インタフェースW2の通信機能を開始させ、接続切り替えが終了した後に無線インタフェースW1の通信機能を停止させる。
なお、通知フレームは、IEEE802.11規格準拠のパワーセーブビットが0であるフレームにより実現することができる。このフレームとして、パワーセーブビットが0であるNULLフレームを用いると通信データ量を抑えることができる利点がある。この場合、端末リストにおけるフレームの受信可又は不可を示す情報は、それぞれ、IEEE802.11規格準拠のアウェイク状態又はパワーセーブ状態を示す情報に相当する。
通信端末20は、チャネル切り替えに関する機能ブロックとして、通知部135と、無線インタフェースW3とを備える。
無線インタフェースW3は、基地局10の無線インタフェースW1又はW2との間で通信リンクを確立し、無線通信を行う無線通信インタフェースである。無線インタフェースW3は、受信したフレームが、過去に受信したフレームと同一である場合に、受信したフレームを破棄する処理を行う。無線インタフェースW3は、例えば、IEEE802.11a、b、g、n規格等に適合する無線LANの通信インタフェースであり、無線通信信号の生成回路及びアンテナ等を有する。無線インタフェースW3は、端末インタフェースに相当する。
通知部135は、無線インタフェースW3が基地局10の無線インタフェースW1との第一チャネルでの接続を切断し、チャネルを切り替えて、第一チャネルと異なる第二チャネルで基地局10の無線インタフェースW2と接続したことを契機として、無線インタフェースW3により通知フレームを送信する処理部である。通知部135が通知フレームを送信した後、この通知フレームを受信した無線インタフェースW2がキュー131に蓄積されていたフレームを送信し、送信されたフレームを無線インタフェースW3が受信する。このようにして、通信端末20が受信するフレームにおけるロスを低減することができる。
図10は、本実施の形態に係る基地局10の無線インタフェースW2の端末リストの例の説明図である。
端末リストは、通信端末20の識別情報と、当該通信端末20のフレームの受信可否を示す情報とを含む。図10に示される例では、通信端末S1が、フレームの受信が可能(可)である状態として登録されており、通信端末S2が、フレームの受信が不可能(不可)である状態として登録されている。
端末リストは、キュー制御部132により参照され、キュー制御部132が通信端末20宛てのキュー131からフレームを出力するか否か、言い換えれば、通信端末20にフレームを送信するか否か、を制御するために用いられる。
図11は、本実施の形態に係る基地局10のチャネル切り替え機能に着目したフロー図である。
図11における最初の時点(紙面上の最も上)では、基地局10は、無線インタフェースW1を通信用インタフェース112として用い、無線インタフェースW2を監視用インタフェース114として用いる状態である。また、通信端末20宛てのフレームは、無線インタフェースW1から送信され、無線インタフェースW2からは送信されない。
ステップS201において、制御部117は、無線インタフェースW2の通信機能を開始させる制御をする。具体的には、制御部117は、無線インタフェースW2をフレームの送信を行う状態に遷移させる。言い換えれば、制御部117は、無線インタフェースW2を通信用インタフェース112として用いるよう制御する。この時点から通信端末20宛てのフレームは、両方の無線インタフェースW1およびW2に転送される。無線インタフェースW1に転送されたフレームは現実に通信端末20に向けて送られるが、後述のように無線インタフェースW2に転送されたフレームは、キューに蓄積されることとなる。
ステップS202において、制御部117は、無線インタフェースW2から通信端末20宛てのフレームの送信を開始するよう制御する。この制御の後は、基地局10が通信端末20宛てのフレームを得た場合に、無線インタフェースW1及びW2のうち、端末リストに通信端末20が受信可能状態で登録されている無線インタフェースから通信端末20宛てのフレームが出力される状態になる。無線インタフェースW1及びW2それぞれの端末リストに通信端末20が受信可能状態で登録されていれば、無線インタフェースW1及びW2それぞれから通信端末20宛てのフレームが出力される。
ステップS203において、制御部117は、無線インタフェースW2の端末リストに、通信端末20を、フレームの受信ができない状態(パワーセーブ状態)であるとして登録する。
ステップS204において、キュー制御部132は、無線インタフェースW2が通信端末20宛てのフレームをキュー131に蓄積する(キュー131に格納し、出力しない)ことを開始するよう制御する。なお、ステップS203で通信端末20をパワーセーブ状態であるとして登録すれば、IEEE802.11規格準拠のパワーセーブ機能に基づいて、ステップS204におけるフレームの蓄積が開始されることになる。
ステップS205において、制御部117は、無線インタフェースW1から通信端末20宛てにCSAを送信する。
ステップS206において、無線インタフェースW1は、通信端末20との接続を切断する。これは、ステップS205で送信したCSAを受信した通信端末20が主導的に、無線インタフェースW1との間で、接続の切断のための制御フレーム(認証解除(Deauthentication)、及び、接続解除(Deassociation))をやりとりすることで行われる。
ステップS207において、無線インタフェースW2は、通信端末20との接続を確立する。これは、ステップS205で送信したCSAを受信した通信端末20が主導的に、無線インタフェースW2との間で、接続の確立のための制御フレーム(認証(Authentication)、及び、接続(Association))をやりとりすることで行われる。
ステップS208において、無線インタフェースW2は、通信端末20から通知フレームを受信したか否かを判定する。通知フレームを受信した場合(ステップS208でYes)にはステップS209に進み、そうでない場合(ステップS208でNo)には、再びステップS208を実行する。
ステップS209において、キュー制御部132は、キュー131に格納されているフレームをキュー131から出力して通信端末20に送信し、また、通信端末20宛てのフレームをキュー131に蓄積することを終了させるよう制御する。
ステップS210において、制御部117は、無線インタフェースW1の通信機能を停止させる制御をする。具体的には、制御部117は、無線インタフェースW1をフレームの送信をしない状態に遷移させる。言い換えれば、制御部117は、無線インタフェースW1を監視用インタフェース114として用いるよう制御する。
なお、ステップS202の処理は、ステップS206の処理の前までに行われればよく、例えば、ステップS203とステップS204との間、又は、ステップS204とステップS205との間に行われてもよい。
図12は、本実施の形態に係る通信端末20のチャネル切り替え機能に着目したフロー図である。
図12における最初の時点(紙面上の最も上)では、通信端末20の無線インタフェースW3が基地局10の無線インタフェースW1との接続を確立している状態である。
ステップS221において、無線インタフェースW3は、基地局10の無線インタフェースW1からCSAを受信したか否かを判定する。CSAを受信した場合(ステップS221でYes)には、ステップS221に進み、そうでない場合(ステップS221でNo)には、再びステップS221を実行する。
ステップS222において、無線インタフェースW3は、基地局10の無線インタフェースW1との接続を切断する。
ステップS223において、無線インタフェースW3は、ステップS201で受信したCSAに基づいて使用する無線通信チャネルを切り替える。具体的には、無線インタフェースW3は、使用する無線通信チャネルを、ステップS201で受信したCSAに含まれている切り替え先のチャネルに切り替える。
ステップS224において、無線インタフェースW3は、ステップS223において変更した変更後のチャネルにおいて、基地局10の無線インタフェースW2と接続する。
ステップS225において、通知部135は、ステップS224で無線インタフェースW3が、基地局10の無線インタフェースW2と接続したことを契機として、通知フレームを送信する。通知フレームは、IEEE802.11規格準拠のパワーセーブビットが0であるNULLフレームを用いることができる。
ステップS226において、無線インタフェースW3は、ステップS225で送信した通知フレームを基地局10の無線インタフェースW2が受信したことに応じて送信する、キュー131に格納されていたフレームを受信する。なお、ステップS225で上記NULLフレームを用いれば、IEEE802.11規格準拠のパワーセーブ機能に基づいて、ステップS226におけるフレームの受信が行われることになる。
以上の一連の動作により、通信端末20の無線インタフェースW3が、基地局10の無線インタフェースW1から無線インタフェースW2にハンドオーバをすることで、無線通信に使用するチャネルの切り替えの際の通信ロスが低減される。通信端末20が無線インタフェースW1との接続を切断してから無線インタフェースW2との接続を確立するまでに、基地局10から通信端末20に届けられるべきフレームがすべてキュー131に蓄積された場合、フレームロスをゼロにすることも可能であり、この場合、通信端末20がチャネル切り替えによって受ける影響は、フレームがキュー131に蓄積されていた時間(例えば10msec程度)のフレーム遅延が生ずることだけに抑えることができる。よって、即時性を要する通信にとっての有用性が高い。
(実施の形態の変形例)
本変形例において、無線通信チャネルの切り替えの際の通信ロスを低減する基地局システム等について、基地局システムが複数の基地局により構成される場合について説明する。
図13は、本変形例に係る基地局システム10A及び通信端末20の、チャネル切り替え機能に着目したブロック図である。
図13に示されるように、基地局システム10Aは、基地局10Bと基地局10Cとを備える。基地局10Bと基地局10Cとは、LAN30で接続されており、上記実施の形態における基地局10の機能を分散して備える。すなわち、基地局10Bが制御部117と無線インタフェースW1とを備え、基地局10Cが無線インタフェースW2を備える。制御部117による、無線インタフェースW2の設定情報及び端末リストの読み出し及び書込み、並びに、無線インタフェースW2の通信機能の開始及び終了が、LAN30を介して行われる点で上記実施の形態と異なる。
基地局システム10Aは、上記実施の形態における基地局10と同様の機能を有する。
基地局10Bと基地局10Cとは、近接して(例えば数cm程度の間隔を空けて)配置されてもよいし、概ね同一の領域をカバーできるのであれば数m〜数10m程度の距離を空けて配置されてもよい。
通信端末20は、上記実施の形態の通信端末20と同じものである。通信端末20は、上記実施の形態における場合と同じように、無線インタフェースW1に接続した状態から、無線インタフェースW2に接続した状態に切り替えることができる。
以上のように、本変形例の基地局システム10Aは、より高い品質で無線通信可能なチャネルを動的に決定することができ、また、決定したチャネルに切り替える際の通信ロスを低減することができる。
以上のように、本実施の形態及び変形例の基地局システムは、通信端末が第一インタフェースとの接続を切断してから第二インタフェースとの接続を確立するまでの間に通信端末に届けるべきフレームを、キューに格納する。そして、その後に通信端末が第二インタフェースに接続すると、キューに格納していたフレームを通信端末に送信する。よって、通信端末に届けるべきフレームがロスすることなく、通信端末に届けられる。このように、基地局システムは、無線通信チャネルの切り替えの際の通信ロスを低減する。
また、基地局システムは、通知フレームを受信することで、通信端末が第二インタフェースに接続したことを検出して、キューに格納していたフレームを通信端末に送信する。よって、基地局システムは、より容易に無線通信チャネルの切り替えの際の通信ロスを低減する。
また、基地局システムは、実際に通信端末が第二インタフェースに接続する前の時点で、第二インタフェースの端末リストに通信端末を登録する。これにより、実際に通信端末が第二インタフェースに接続した時点では、通信端末からの通知パケットを受信するだけでフレームを送信する状態をとることができるので、実際に通信端末が第二インタフェースに接続した後の処理をより簡易にすることができる。
また、基地局システムは、IEEE802.11規格準拠のパワーセーブ状態及びパワーセーブキューの仕組みを用いて、より具体的に無線通信チャネルの切り替えの際の通信ロスを低減することができる。
また、基地局システムは、IEEE802.11規格準拠のパワーセーブ状態及びパワーセーブキューの仕組みを用い、また、通知フレームのデータ量を抑制して、無線通信チャネルの切り替えの際の通信ロスを低減することができる。
また、基地局システムは、2つの無線インタフェースを備える1つの基地局を用いて、無線通信チャネルの切り替えの際の通信ロスを低減することができる。
また、1つの無線インタフェースを備える基地局を2つ用いて、無線通信チャネルの切り替えの際の通信ロスを低減することができる。
また、基地局システムは、1つの無線インタフェースで通信端末との無線通信を行いながら、この無線通信に使用していないもう1つの無線インタフェースを用いて周囲の電波状況を取得する。そして、取得した電波状況に基づいて好適チャネルが定められた場合には、基地局システムは、当該通信端末との無線通信を好適チャネルで行うようにチャネル切り替えを行うことができ、このチャネル切り替えの際の通信ロスを低減することができる。
なお、本発明は以下のようにも記載され得るが、以下の記載に限定されない。
(1)無線基地局装置であって、記憶部と、2つの無線インタフェースと、前記2つの無線インタフェースのいずれか一方である第一インタフェースを用いて、通信端末と一のチャネルで無線通信を行うとともに、前記一のチャネルの通信状況を取得する無線通信部と、前記無線通信部による無線通信中に、前記2つの無線インタフェースの他方である第二インタフェースを用いて、前記無線基地局装置の周囲の電波状況を取得し、取得した前記電波状況を前記記憶部に格納する状況取得部と、前記無線通信部により取得された前記通信状況と、前記記憶部に格納された前記電波状況とに基づいて、前記一のチャネルを用いた無線通信より高い品質の無線通信ができると推定される好適チャネルを決定する決定部と、前記無線通信部が前記第二インタフェースを用いて前記好適チャネルで前記通信端末と無線通信を行うように制御するとともに、前記無線通信部が前記第二インタフェースを用いた無線通信を行うように制御する場合に、さらに、前記状況取得部が、前記第一インタフェースを用いて電波状況を取得し、取得した前記電波状況を前記記憶部に格納するように制御する制御部とを備え、前記決定部は、前記好適チャネルを決定した場合に、さらに、前記第二インタフェースによる前記好適チャネルでの無線通信の開始時刻を決定し、前記制御部は、前記第二インタフェースによる前記好適チャネルでの無線通信を前記開始時刻に開始させる無線基地局装置。
(2)前記無線通信部が前記第二インタフェースを用いた無線通信を行うように制御する場合に、前記一のチャネルにかかる無線通信管理情報(使用チャネルを除く)が前記第二インタフェースに複製され、設定される(1)記載の無線基地局装置。
(3)前記無線通信部は、前記第二インタフェースを用いて前記好適チャネルでの無線通信を行う際には、前記好適チャネルによる無線通信の開始に先立ち、無線通信のチャネルを前記好適チャネルに切り替えることを告知するための告知信号が、無線通信している通信端末に対してユニキャスト送信される(1)または(2)に記載の無線基地局装置。
(4)前記状況取得部は、前記電波状況を取得する際には、チャネルを変更しながら、前記無線基地局装置が無線通信に使用可能な各チャネルにおいて時間の経過とともに前記電波状況を複数回取得し、前記決定部は、前記記憶部に格納された複数回取得された前記電波状況から得られる無線通信の帯域占有率が、前記通信状況から得られる無線通信の帯域占有率より小さいことが所定時間以上継続しているチャネルを、前記好適チャネルとして決定する(1)〜(3)のいずれかに記載の無線基地局装置。
(5)前記状況取得部は、前記電波状況を取得する際には、チャネルを変更しながら、前記無線基地局装置が無線通信に使用可能な各チャネルにおける周囲の無線通信フレームをキャプチャし、前記決定部は、前記記憶部に格納された複数回取得された前記無線フレームキャプチャのログから得られる無線通信の状況に基づいて、混雑度の低いチャネルを、前記好適チャネルとして決定する(1)〜(3)のいずれかに記載の無線基地局装置。
(6)前記決定部は、さらに、(a)前記無線通信部により取得された前記通信状況と、前記記憶部に格納された前記電波状況とに基づいて、前記一のチャネルを用いた無線通信より高い品質の無線通信ができると推定される候補チャネルを決定し、(b)前記候補チャネルが、レーダ波が存在し得る周波数帯域に含まれる場合には、前記候補チャネルにおいてレーダ波の存否を、前記状況取得部に監視させ、(c)前記候補チャネルにおいてレーダ波が検知されない場合に前記候補チャネルを好適チャネルとして決定する(1)〜(5)のいずれかに記載の無線基地局装置。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の無線基地局装置と、前記無線基地局装置の前記第一インタフェースを用いる前記無線通信部と前記一のチャネルでの無線通信を行い、前記無線通信部が前記第二インタフェースを用いるように制御された後には、前記第二インタフェースを用いる前記無線通信部と前記好適チャネルでの無線通信を行う前記通信端末とを備える無線通信システム。
(8)無線基地局装置の制御方法であって、前記無線基地局装置は、記憶部と、2つの無線インタフェースとを備え、前記制御方法は、前記2つの無線インタフェースのいずれか一方である第一インタフェースを用いて、通信端末と一のチャネルで無線通信を行うとともに、前記一のチャネルの通信状況を取得する無線通信ステップと、前記無線通信ステップでの無線通信中に、前記2つの無線インタフェースの他方である第二インタフェースを用いて、前記無線基地局装置の周囲の電波状況を取得し、取得した前記電波状況を前記記憶部に格納する状況取得ステップと、前記無線通信ステップで取得された前記通信状況と、前記記憶部に格納された前記電波状況とに基づいて、前記一のチャネルを用いた無線通信より高い品質の無線通信ができると推定される好適チャネルを決定する決定ステップと、前記第二インタフェースを用いて前記好適チャネルでの無線通信を行う際には、(a)前記好適チャネルによる無線通信の開始に先立ち、無線通信のチャネルを前記好適チャネルに切り替えることを告知するための告知信号を、無線通信している通信端末に対してユニキャスト送信し、(b)前記第一インタフェースが無線通信に用いる前記一のチャネルにかかる無線通信管理情報(使用チャネル情報を除く)を、前記第二インタフェースを用いた無線通信を行うために設定するステップと、前記無線通信ステップで前記第二インタフェースを用いて前記好適チャネルで前記通信端末と無線通信を行うように制御する制御ステップとを含む制御方法。
上記(1)によれば、無線基地局装置は、1つの無線インタフェースで通信端末との無線通信を行いながら、この無線通信に使用していないもう1つの無線インタフェースを用いて周囲の電波状況を取得する。そして、取得した電波状況に基づいて好適チャネルが定められた場合には、当該通信端末との無線通信を好適チャネルで行うようにチャネル切り替えを行うことができる。また、通信端末がチャネル切り替えを行う時には、無線通信を行っているチャネルで動作する無線インタフェースと、好適チャネルで動作する無線インタフェースとの両方が存在している状態であるので、チャネル切り替えに伴う無線通信の断時間を極力短くすることができる。よって、無線基地局装置は、より高い品質で無線通信可能なチャネルを動的に決定することができ、さらに無線通信の使用目的に応じて通信端末との無線通信が少ない時間帯などに、好適チャネルへのチャネル切り替えを行うことができる。これにより、チャネル切り替えに伴う無線通信の断時間が与える影響を抑えることができる。
上記(2)によれば、無線基地局装置は、2つのインタフェースにおける通信は、通信チャネルを除いて全く同一のパラメータを使用するので、無線端末との無線通信断時間を極小に抑えることができる。
上記(3)によれば、無線基地局装置は、チャネル変更の告知を確実に無線端末側に行うことができる。
上記(4)によれば、無線基地局装置は、無線通信に使用していない方の無線インタフェースにより、使用可能な各チャネルの電波状況を継続的に取得することができる。そして、無線基地局装置は、例えば数時間又は数日というように比較的長い時間をかけて取得された電波状況と、無線通信の通信状況とに基づいて、適切に好適チャネルを決定することができる。
上記(5)によれば、無線基地局装置は、無線通信に使用していない方の無線インタフェースにより、使用可能な各チャネルの電波状況を継続的に取得することができる。そして、無線基地局装置は、例えば数時間又は数日というように比較的長い時間をかけて取得された電波状況と、無線通信の通信状況とに基づいて、適切に好適チャネルを決定することができる。
上記(6)によれば、無線基地局装置は、気象レーダ波が存在し得る周波数帯域に含まれるチャネルを好適チャネルとして使用する際にも、2つの無線インタフェースを用いて適切に好適チャネルを決定し、チャネル切り替えに伴う無線通信の断時間を極力短くすることができる。
上記(7)によれば、無線通信システムは、上記の無線基地局装置と同様の効果を奏する。
上記(8)によれば、無線基地局装置は、上記の無線基地局装置と同様の効果を奏する。
以上、本発明の無線基地局装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。