JP6518064B2 - 摺動シール構造 - Google Patents

Description

本発明は、第１部材が第２部材に対して移動自在である２つの部材間の環状隙間を密封するためのものであり、例えば流体圧が作用する小ストロークで作動する摺動部分に適用することができる摺動シール及びシール構造に関する。

従来の摺動シールの一例として、リングパッキンがある（例えば特許文献１参照）。このリングパッキンは、ダイヤフラムに連動して変位する軸体を摺動自在に支持する筒体と、当該軸体との間の摺動抵抗を適切に管理するためのものであり、軸体の外周に装着されている。このリングパッキンは、その断面が長円形であり、さらに筒体の内面に対向する当該リングパッキンの外周面に周方向に沿って凹溝が形成されている。

そして、リングパッキンの全周にグリースを塗布してあり、特に凹溝の内部には、グリスを十分に付着させてある。これにより、ダイヤフラムの振動によりリングパッキンが振動的に摺動を繰り返しても、凹溝にグリスが残るので、摺動抵抗の急激な上昇を抑えることができる。

特開２００８−２５７４４０号公報

しかし、上記従来のリングパッキンでは、凹溝でグリスを保持することが可能であるが、リングパッキンの断面の寸法が小さい場合には、グリスの保持量が少なく、リングパッキンの長寿命を実現するために十分な量のグリスを保持することができない。

そして、このリングパッキンには、凹溝に付着するグリスがこの凹溝から流出することを防止するための機能を備えていないので、凹溝に塗布されたグリスが軸体の振動的な摺動の繰り返しによって、当該凹溝から流出してしまい、摺動抵抗の急激な上昇を抑えることができなくなる可能性がある。

本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、長寿命の摺動シール及びシール構造を提供することを目的としている。

本発明に係る摺動シールは、第１部材が第２部材に対して移動可能な２つの部材間の環状隙間を密封して、高圧側と低圧側を仕切るためのものであり、前記第２部材又は第１部材に設けられた環状の装着溝に配置される摺動シールにおいて、前記第１又は第２部材の摺動面に摺接する圧力流体用シールと、前記圧力流体用シールよりも高圧側に設けられ、前記圧力流体用シールとの間に潤滑剤収容空間を形成する潤滑剤保持ピースとを備えることを特徴とするものである。

本発明に係る摺動シールによると、第１及び第２部材間の環状隙間を圧力流体用シールによって密封することができる。そして、潤滑剤収容空間に潤滑剤を保持することができ、この潤滑剤は、第１部材が第２部材に対して移動するときに、圧力流体用シールと摺動面との間の摺動部分を潤滑することができる。よって、圧力流体用シールと摺動面との間の始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を小さくすることができるし、圧力流体用シールの摩耗を低減することができる。

そして、圧力流体用シールよりも高圧側に形成された潤滑剤収容空間に保持されている潤滑剤は、高圧側に密封されている圧力流体によって、圧力流体用シールと摺動面との間に供給される。これによって、この摺動部分を良好に潤滑することができる。

この発明に係る摺動シールにおいて、前記潤滑剤保持ピースは、潤滑剤貯留部を有するものとするとよい。

このようにすると、この潤滑剤貯留部に保持される潤滑剤の分だけ、潤滑剤収容空間に保持される潤滑剤の量を増加させることができる。よって、この潤滑剤の増加量分だけ、更に、圧力流体用シールの始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を長期間に亘って小さく抑えることができ、また、圧力流体用シールの耐摩耗性が向上してその寿命を延ばすことができる。

この発明に係る摺動シールにおいて、前記潤滑剤収容空間よりも高圧側に設けられ、前記摺動面に摺接する潤滑剤用シールを備えるものとするとよい。

このようにすると、潤滑剤用シールによって、潤滑剤収容空間に保持されている潤滑剤が高圧側に流出することを抑制できる。

この発明に係る摺動シールにおいて、前記摺動面と摺接する圧力流体用シールのリップの潰し量が、前記摺動面と摺接する潤滑剤用シールのリップの潰し量よりも大きいものとするとよい。

このようにすると、高圧の圧力流体に対するシール性を確保するという圧力流体用シールの役割と、潤滑剤の流出を防止するという潤滑剤用シールの役割を明確化することができ、摺動シール全体としての始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗が低減できる。

この発明に係る摺動シールにおいて、前記潤滑剤用シールは、前記潤滑剤保持ピースに設けられ、当該潤滑剤保持ピースは前記装着溝の高圧側に配置されているものとするとよい。

このようにすると、装着溝の高圧側を潤滑剤保持ピースと潤滑剤用シールとによって封止することができる。そして、潤滑剤用シールを潤滑剤保持ピースに設けることにより、この摺動シールの部品点数が少なくなり、摺動シールの第２又は第１部材に対する組立て作業の手間の軽減を図ることができる。

この発明に係る摺動シールにおいて、前記潤滑剤用シールは、前記潤滑剤保持ピースと別々に形成されているものとするとよい。

このようにすると、摺動面に摺接して摺動摩擦が生じる潤滑剤用シールは、摩擦抵抗が小さく耐摩耗性の高い材質で形成し、そして、摺動面と接触しない潤滑剤保持ピースは、潤滑剤用シールと異なる材質で形成することができる。よって、潤滑剤用シール及び潤滑剤保持ピースのそれぞれの材質の選択の幅を広げることができる。

この発明に係る摺動シールにおいて、前記潤滑剤用シールは、前記潤滑剤保持ピースと一体物として形成されているものとするとよい。

このようにすると、更に摺動シールの部品点数が少なくなり組立て作業の手間の軽減を図ることができる。

この発明に係る摺動シールにおいて、前記圧力流体用シールの低圧側の側面に隣接してバックアップリングを設けるとよい。

このようにすると、第１部材が第２部材に対して移動するときに、圧力流体用シールの摺動面側の先端部が、摺動面と第２部材又は第１部材との間の隙間に入り込んで噛み込むことを防止することができる。よって、それに起因する高圧側の密封度の低下を防止できる。

本発明に係るシール構造は、本発明に係る摺動シールを備えたシール構造であって、前記装着溝が設けられる前記第２又は第１部材に形成され、外部から潤滑剤を前記潤滑剤収容空間に供給するための供給路を更に備えることを特徴とするものである。

本発明に係るシール構造によると、本発明に係る摺動シールを備えており、この摺動シールは、上記と同様に作用する。そして、潤滑剤収容空間内の潤滑剤の量が減少したときに、外部から潤滑剤を供給路に通して潤滑剤収容空間に供給することができる。これによって、圧力流体用シールと摺動面との間の摺動部分に適切な量の潤滑剤が供給されている状態を長期間に亘って維持することができる。

この発明に係るシール構造において、前記潤滑剤貯留部は、前記摺動面に向かって開口する溝部であり、この溝部と前記供給路とが、前記潤滑剤保持ピースに形成された連通孔を介して互いに連通しているものとするとよい。

このように、潤滑剤貯留部としての溝部が摺動面に向かって開口しているので、この溝部内に保持されている潤滑剤が、この溝部の開口から流出して摺動面に供給され易くすることができ、圧力流体用シールと摺動面との間の潤滑を確実に行うことができる。そして、この潤滑剤貯留部には、供給路及び連通孔を介して潤滑剤が供給されるので、圧力流体用シールと摺動面との間の潤滑を途切れることなく確実に行うことができる。

この発明に係る摺動シール及びシール構造によると、潤滑剤収容空間を、圧力流体用シールとこれとは別に設けた潤滑剤保持ピースとの間に形成したので、潤滑剤を保持するための大きい空間を確保することができる。そして、潤滑剤用シールによって、潤滑剤が潤滑剤収容空間から高圧側に流出する量を低減することができ、潤滑剤が潤滑剤収容空間に長期間保持されるようにすることができる。従って、圧力流体用シールの始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を長期間に亘って小さく抑えることができ、また、圧力流体用シールの耐摩耗性が向上してその寿命を延ばすことができる。

図１は、この発明の第１実施形態に係る摺動シールを第２部材の装着溝に装着した状態を示す断面図である。 図２は、同発明の第２実施形態に係る摺動シールを第２部材の装着溝に装着した状態を示す一部省略断面図である。 図３は、同発明の第３実施形態に係るシール構造を示す一部省略断面図である。 図４は、同発明の第４実施形態に係る摺動シールを第２部材の装着溝に装着した状態を示す一部省略断面図である。 図５は、同発明の第５実施形態に係る摺動シールを第２部材の装着溝に装着した状態を示す一部省略断面図である。 図６は、同第１実施形態に係る摺動シールが適用される電磁式調圧弁の構成を示す断面図である。

以下、本発明に係る摺動シール及びシール構造の第１実施形態を、図６及び図１を参照して説明する。この摺動シール１１は、例えば図６に示すように電磁式調圧弁４０に使用することができるものである。

この電磁式調圧弁４０は、上流側圧力が高圧であっても例えば燃料電池スタックへの水素の流量（又は圧力）を高精度で制御することができ、且つ大気中への水素ガスの漏れを防止できるようにするものである。

この図６に示す電磁式調圧弁４０は、水素タンクに接続される一次ポート（高圧側流路１３ｃ）及び燃料電池スタックに接続される二次ポート４１を繋ぐ弁通路４２を有するハウジング（第２部材）４３と、ハウジング４３内に設けられ、弁通路４２を閉じる閉位置と弁通路４２を開く開位置との間で移動して弁通路４２の開度を制御する弁体（第１部材）１２と、弁体１２の外周に配置される高圧シール部材（摺動シール）１１及び低圧シール部材４４とを備え、弁体１２の一端側は、弁通路４２側に位置し、弁体１２の他端側は、ハウジング４３内に形成される圧力帰還室４５内に位置し、摺動シール１１及び低圧シール部材４４は、弁体１２の一端側から弁体１２の他端側に向ってこの順序で配置されており、摺動シール１１と低圧シール部材４４との間に形成された第１の空間４６と二次ポート４１とを繋ぐ均圧通路４７を更に備えているものである。

なお、図６に示す４８は、電磁比例ソレノイドである。この電磁比例ソレノイド４８は、弁体（第１部材１２）を開閉方向に移動させるためのものである。

つまり、この図６に示す摺動シール１１が使用されているシール構造４０は、図１に示すように、第１部材１２が第２部材４３に対して往復移動自在である２つの部材間の環状隙間１４を、摺動シール１１で密封することができるものである。また、密封対象流体圧が作用すると共に、小ストローク（例えば２ｍｍ以下のストローク）で作動する第１部材１２を備える機器１５に好適である。なお、密封対象流体（圧力流体）は、例えば気体であり、その圧力は、大気圧〜８７．５ＭＰａである。

そして、この図１に示す第１及び第２部材１２、１３を備えている機器１５は、例えば圧力調整弁である。摺動側の第１部材１２は、弁体であり、図１に表れている部分は、円柱状の弁本体部であり、弁体の一部を成している。固定側の第２部材１３は、弁体によって開閉される弁孔（図示せず）、これに連通して形成されている高圧側流路１３ｃ、及びこれに連通して形成されている円筒状の装着孔１６を備えるハウジングである。この装着孔１６に弁本体部（第１部材１２）が、図１に示す移動方向１７に摺動自在に装着されており、この装着孔１６を形成する内周面に円環状の装着溝１８が形成されている。この円環状の装着溝１８の断面形状は、矩形であり、この矩形断面の装着溝１８に摺動シール１１が装着されている。

なお、ハウジングである第２部材１３は、第１ハウジング部１３ａと第２ハウジング部１３ｂとを備えており、第１及び第２ハウジング部１３ａ、１３ｂを分割することによって、摺動シール１１を装着溝１８に対して着脱することができる。

ただし、この実施形態では、摺動シール１１を比較的短いストロークで作動する摺動部分の密封性確保に使用したが、これに代えて、比較的長いストロークで作動する摺動部分の密封性確保に使用することができる。そして、当該摺動シール１１は、上記大気圧〜８７．５ＭＰａ以外の圧力において使用される機器の摺動部分にも使用することができる。

更に、この実施形態では、摺動シール１１を圧力調整弁に使用したが、これ以外の例えばピストン用シールやロッドシール等を備える他の機器の密封性確保にも使用することができる。

摺動シール１１は、図１に示すように、圧力流体用シール（高圧用シール）１９、潤滑剤保持ピース２０、バックアップリング２１、及び潤滑剤用シール２２を備えており、それぞれが円環状に形成されている。そして、圧力流体用シール１９の低圧側の側面に隣接してバックアップリング２１が設けられ、このバックアップリング２１の低圧側の側面が装着溝１８の円環状の側壁面に当接している。そして、潤滑剤保持ピース２０は、圧力流体用シール１９よりも高圧側に設けられ、この潤滑剤保持ピース２０と圧力流体用シール１９との間には、潤滑剤収容空間２６が形成されている。潤滑剤用シール２２は、潤滑剤収容空間２６よりも高圧側に設けられ、潤滑剤保持ピース２０の内周面に固定して設けられている。

圧力流体用シール１９は、例えば材質が熱可塑性エラストマーであり、具体的には、ポリウレタン製である。熱可塑性エラストマーは、架橋ゴム材料と樹脂材料の中間的な弾性を有するもので、硬度にして、ＪＩＳＡ（デュロメータＡ）９０〜９６程度のものが好ましい。この実施形態では、ウレタン系（ＰＵ）のエラストマーを使用している。ただし、材質は、これに限定されるものではなく、スチレン系（ＳＢＣ）、オレフィン系（ＴＰＯ）、塩ビ系（ＴＰＶＣ）、エステル系（ＴＰＥＥ）、アミド系（ＴＰＡＥ）等種々の材料が適用可能である。また、ゴム弾性体製としてもよい。

圧力流体用シール１９は、その外周面が略短円筒形状に形成され、その内周部１９ａは、圧力流体用シール１９の中心線２３を含む断面形状が、略半円形に形成されている。この内周部１９ａは、第１部材１２の外周面である摺動面２４に摺動自在に摺接している。

潤滑剤保持ピース２０は、種々の材質で形成することができ、例えば合成樹脂製としてもよく、それに含まれるエンジニアリングプラスチック製（汎用エンジニアリングプラスチックのＰＡ、ＰＣなど、スーパーエンジニアリングプラスチックのＰＥＳ、ＰＥＥＫなど）としてもよい。また、金属製としてもよい。

そして、図１に示すように、潤滑剤保持ピース２０は、その略短円筒径の外周面が装着溝１８の底面１８ａに密着する状態で装着され、その高圧側に設けられたフランジ部は、高圧側流路１３ｃの内面に密着している。そして、この潤滑剤保持ピース２０の第２部材１３に対する固定方法は、例えばねじで第２部材１３に締結してもよいし、別部材で第２部材１３に押し付けて固定してもよい。また、それ以外の固定方法で固定してもよい。

また、潤滑剤保持ピース２０の内周面には、潤滑剤貯留部２０ａが円環状の溝部として形成され、この溝部としての潤滑剤貯留部２０ａは、潤滑剤収容空間２６及び第１部材１２の摺動面２４に向かって開口している。この潤滑剤貯留部２０ａの断面形状は、例えば矩形又は開口側に向かって開く台形である。

これら潤滑剤収容空間２６及び潤滑剤貯留部２０ａには、グリス等の潤滑剤２５が保持されている。この潤滑剤２５は、図１に示す圧力流体用シール１９の内周部１９ａと、この内周部１９ａに対して摺接して摺動する第１部材１２（弁本体部）の摺動面２４（外周面）との間を潤滑するためのものである。

潤滑剤用シール２２は、潤滑剤収容空間２６及び潤滑剤貯留部２０ａに保持されている潤滑剤２５が、潤滑剤保持ピース２０の内周面と、第１部材１２の摺動面２４との間の隙間１４を通って高圧側に流出しないように封止するためのものである。この潤滑剤用シール２２は、潤滑剤保持ピース２０の内周面に形成された溝内に固定して設けられ、第１部材１２の摺動面２４に摺動自在に摺接されている。この潤滑剤用シール２２は、例えばグリスの浸透性がよいフェルト状のスクレーパ等でもよいし、合成樹脂製、ゴム弾性体製としてもよい。

バックアップリング２１は、圧力流体用シール１９を図１に示す位置に保持するためのものであり、例えば合成樹脂製としてもよく、それに含まれるエンジニアリングプラスチック製（汎用エンジニアリングプラスチックのＰＡ、ＰＣなど、スーパーエンジニアリングプラスチックのＰＥＳ、ＰＥＥＫなど）としてもよい。この圧力流体用シール１９には、高圧側密封対象流体の高圧力によって大きい圧縮力が働くが、この圧縮力をバックアップリング２１が受け止めている。

次に、上記のように構成された摺動シール１１及びシール構造４０の作用を、図１を参照して説明する。この摺動シール１１は、第２部材１３（ハウジング）の装着孔１６の内周面に形成されている装着溝１８に装着され、この装着孔１６に対して第１部材１２（弁体の弁本体部）が図１の左右方向１７に移動できるようになっている。

そして、この摺動シール１１によると、圧力流体用シール１９の内周部１９ａが第１部材１２の摺動面２４に摺接し、かつ、圧力流体用シール１９の外周部が装着溝１８の底面１８ａに接することによって、第１部材１２の摺動面２４と、第２部材１３の装着孔１６を形成する円筒形内周面との間の環状隙間１４を密封することができる。

そして、この摺動シール１１によると、潤滑剤貯留部２０ａを含む潤滑剤収容空間２６に潤滑剤２５を保持することができ、この潤滑剤２５は、第１部材１２が第２部材１３に対して移動するときに、圧力流体用シール１９と摺動面２４との間の摺動部分を潤滑することができる。よって、圧力流体用シール１９と摺動面２４との間に働く第１部材１２の第２部材１３に対する始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を小さくすることができるし、圧力流体用シール１９の摩耗を低減することができる。

また、圧力流体用シール１９よりも高圧側に形成された潤滑剤収容空間２６に保持されている潤滑剤２５は、高圧側に密封されている圧力流体によって、圧力流体用シール１９と摺動面２４との間に供給される。これによって、この摺動部分を良好に潤滑することができる。そして、この潤滑剤用シール２２によって、潤滑剤貯留部２０ａを含む潤滑剤収容空間２６に保持されている潤滑剤２５が高圧側に流出することを抑制できる。

更に、図１に示す摺動シール１１及びシール構造４０によると、潤滑剤収容空間２６を、圧力流体用シール１９とこれとは別に設けた潤滑剤保持ピース２０との間に形成したので、潤滑剤２５を保持するための大きい空間を確保することができる。そして、潤滑剤用シール２２によって、潤滑剤２５が潤滑剤収容空間２６から高圧側に流出する量を低減することができ、潤滑剤２５が潤滑剤収容空間２６に長期間保持されるようにすることができる。従って、圧力流体用シール１９の始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を長期間に亘って小さく抑えることができ、また、圧力流体用シール１９の耐摩耗性が向上してその寿命を延ばすことができる。

そして、潤滑剤保持ピース２０には、潤滑剤貯留部２０a（溝部）が形成されているので、この潤滑剤貯留部２０aに保持される潤滑剤２５の分だけ、潤滑剤収容空間２６に保持される潤滑剤２５の量を増加させることができる。よって、この潤滑剤２５の増加量分だけ、更に、圧力流体用シール１９の始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を長期間に亘って小さく抑えることができ、また、圧力流体用シール１９の耐摩耗性が向上してその寿命を延ばすことができる。

そして、潤滑剤用シール２２を圧力流体用シール１９とは別に設けたので、この潤滑剤用シール２２が摺動面２４を摺接する力（例えば潤滑剤用シール２２のリップの潰し率）は、潤滑剤収容空間２６に保持されている潤滑剤２５が高圧側に流出することを抑制できる大きさに設定すればよく、圧力流体用シール１９が摺動面２４を摺接する力（例えば圧力流体用シール１９のリップの潰し率）よりも小さくすることができる。よって、潤滑剤用シール２２の始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を小さく抑えることができ、また、潤滑剤用シール２２の耐摩耗性が向上してその寿命を延ばすことができる。

また、圧力流体用シール１９及び潤滑剤用シール２２の始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を、潤滑剤２５の作用によって長期間に亘って小さく抑えることができるので、小さい摩擦抵抗であることが必要とされる用途にこの摺動シール１１及びシール構造４０を適用することができる。

更に、摺動シール１１全体で、始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を小さく抑えることができ、摺動シール１１の寿命を延ばすことができる。

そして、潤滑剤収容空間２６を第１又は第２部材１２又は１３自体に形成せずに、圧力流体用シール１９と潤滑剤保持ピース２０との間に形成すると共に、潤滑剤貯留部２０ａを潤滑剤保持ピース２０に形成したので、潤滑剤貯留部２０ａを含む潤滑剤収容空間２６の加工及び形成が容易であり、低コストで潤滑剤保持量を増大させることができる。

また、図１に示すように、潤滑剤用シール２２は、潤滑剤保持ピース２０に設けられ、当該潤滑剤保持ピース２０は装着溝１８の底面１８aに当接して配置されている。このようにすると、装着溝１８の高圧側に向かう開口を潤滑剤保持ピース２０と潤滑剤用シール２２とによって封止することができる。そして、潤滑剤用シール２２を潤滑剤保持ピース２０に設けることにより、この摺動シール１１の部品点数が少なくなり、摺動シール１１の第２部材１３に対する組立て作業の手間の軽減を図ることができる。

更に、潤滑剤用シール２２は、潤滑剤保持ピース２０と別々に形成されている。このようにすると、摺動面２４に摺接して摺動摩擦が生じる潤滑剤用シール２２は、摩擦抵抗が小さく耐摩耗性の高い材質で形成し、そして、摺動面２４と接触しない潤滑剤保持ピース２０は、潤滑剤用シール２２と異なる例えば合成樹脂製、金属製の材料で形成することができる。よって、潤滑剤用シール２２及び潤滑剤保持ピース２０のそれぞれの材質、形状、大きさの選択の幅を広げることができる。よって、この摺動シール１１の製造のコスト及び手間の低減を図ることができる。

そして、図１に示すように、圧力流体用シール１９の低圧側の側面に隣接してバックアップリング２１が設けられている。このバックアップリング２１は、高圧側の圧力に応じて必要な場合に使用することができるものである。

このバックアップリング２１によると、第１部材１２が第２部材１３に対して移動するときに、圧力流体用シール１９の摺動面２４側の内周部１９a（先端部）が、摺動面２４と第２部材１３の第１ハウジング部１３aとの間の隙間に入り込んで噛み込むことを防止することができる。よって、それに起因する圧力流体用シール１９の密封度の低下を防止できる。

なお、バックアップリング２１は、その内周面と摺動面２４との間の隙間に圧力流体用シール１９の内周部１９aが入り込んでも、この内周部１９aが損傷を受けないような材質で形成されている。

次に、本発明に係る摺動シールの第２実施形態を、図２を参照して説明する。この図２に示す第２実施形態の摺動シール２９と、図１に示す第１実施形態の摺動シール１１とが相違するところは、図１に示す第１実施形態では、潤滑剤用シール２２は、潤滑剤保持ピース２０と別々に形成したのに対して、図２に示す第２実施形態では、潤滑剤用シール２２は、潤滑剤保持ピース２０と一体物として形成したところである。この一体物として形成された潤滑剤用シール２２及び潤滑剤保持ピース２０は、例えば合成樹脂で形成されている。

これ以外は、図１に示す第１実施形態と同等の構成であり同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。

この第２実施形態の摺動シール２９によると、更に摺動シール２９の部品点数が少なくなり組立て作業の手間の軽減を図ることができる。

次に、本発明に係るシール構造の第３実施形態を、図３を参照して説明する。この図３に示す第３実施形態のシール構造３６と、図１に示す第１実施形態のシール構造４０とが相違するところは、図１に示す第１実施形態では、外部から潤滑剤２５を、潤滑剤貯留部２０ａを含む潤滑剤収容空間２６に供給するための供給路３７が設けられていないのに対して、図３に示す第３実施形態では、このような供給路３７が設けられているところである。

これ以外は、図１に示す第１実施形態のシール構造４０と同等の構成であり同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。

この供給路３７は、図３に示すように、外部から潤滑剤２５を強制的に、例えばグリスニップルを使用して潤滑剤貯留部２０ａを含む潤滑剤収容空間２６に供給することができる供給孔である。この供給路３７は、装着溝１８が設けられている第２部材１３の第１ハウジング部１３ａに形成され、この第１ハウジング部１３ａの外面と潤滑剤貯留部２０ａを含む潤滑剤収容空間２６とを互いに連通している。

また、図３に示すように、潤滑剤貯留部２０ａは、摺動面２４に向かって開口する溝部であり、この溝部と供給路３７とは、潤滑剤保持ピース２０に形成された連通孔２０ｂを介して互いに連通している。

そして、図３に示す供給路３７には、チェック弁２７が設けられている。このチェック弁２７は、潤滑剤収容空間２６内の潤滑剤２５及び高圧側の密封対象流体（高圧流体）がこの供給路３７を通って低圧側に流出することを防止するためのものである。

この第３実施形態のシール構造３６によると潤滑剤貯留部２０ａを含む潤滑剤収容空間２６内の潤滑剤２５の量が減少したときに、外部から潤滑剤２５を強制的に供給路３７及び連通孔２０ｂを通して潤滑剤貯留部２０ａを含む潤滑剤収容空間２６に供給することができる。これによって、圧力流体用シール１９と摺動面２４との間の摺動部分に適切な量の潤滑剤２５が供給されている状態を長期間に亘って維持することができる。

そして、図３に示すように、潤滑剤貯留部２０ａとしての溝部が摺動面２４に向かって開口しているので、この溝部内に保持されている潤滑剤２５が、この溝部の開口から流出して摺動面２４に供給され易くすることができ、圧力流体用シール１９と摺動面２４との間の潤滑を確実に行うことができる。そして、この潤滑剤貯留部２０ａを含む潤滑剤収容空間２６には、供給路３７及び連通孔２０ｂを介して潤滑剤２５が供給されるので、圧力流体用シールと摺動面との間の潤滑を途切れることなく確実に行うことができる。

次に、本発明に係る摺動シールの第４及び第５実施形態を、図４及び図５を参照して説明する。図４に示す第４実施形態の摺動シール３１と、図１に示す第１実施形態の摺動シール１１とが相違するところは、図１に示す第１実施形態では、バックアップリング２１が設けられているのに対して、図４に示す第４実施形態では、バックアップリング２１が設けられていないところである。これ以外の構成は、同一であり、それらの説明を省略する。

そして、図５に示す第５実施形態の摺動シール３２と、図１に示す第１実施形態の摺動シール１１とが相違するところは、圧力流体用シール３３と１９とが相違するところである。

つまり、図１に示す圧力流体用シール１９の断面形状は、その外周部が略矩形に形成され、その内周部１９ａは、略半円形に形成されている。そして、図５に示す圧力流体用シール３３は、断面形状が円形のＯリングである。これ以外の構成は、同一であり、それらの説明を省略する。

ただし、上記各実施形態の摺動シール及びシール構造では、往復運動する部分を密封する構成に適用する例を挙げたが、これ以外にも、摺動シール及びシール構造を、例えば回転運動する部分を密封する構成に適用することができるし、回転と往復の複合運動する部分を密封する構成に適用することもできる。

そして、上記各実施形態では、図１に示すように、潤滑剤保持ピース２０の内周面に潤滑剤貯留部２０ａを形成したが、潤滑剤貯留部２０ａをこれ以外の形状としてもよいし、潤滑剤貯留部２０ａを形成しなくてもよい。

更に、上記各実施形態では、例えば図１に示すように、摺動シール１１を、第２部材１３の装着孔１６の内周面に形成された装着溝１８に装着し、圧力流体用シール１９が第１部材１２の外周面である摺動面２４に摺動自在に摺接する構成としたが、これに代えて、図には示さないが、摺動シールを、第１部材の外周面に形成された装着溝に装着し、圧力流体用シールが第２部材の内周面である摺動面に摺動自在に摺接する構成としてもよい。

なお、圧力流体用シール１９、潤滑剤用シール２２の材質は各実施例に挙げたものに限定されない。また、潤滑剤用シール２２は潤滑剤２５の流出を抑制できるものであればよく、例えばＯリングでもよい。

そして、上記各実施形態では、バックアップリング２１を合成樹脂製、これに含まれるエンジニアリングプラスチック製としたが、これ以外の材質としてもよい。要は、高圧側密封対象流体の高圧力によって受ける圧縮力を保持することができる強度を有し、かつ、バックアップリング２１が変形することで摺動面２４との間の隙間に圧力流体用シール１９の内周部１９aが入り込まないようなものとすればよい。

以上のように、本発明に係る摺動シール及びシール構造は、小さい始動摩擦抵抗及び摺動摩擦抵抗を実現して、第１部材が第２部材に対してスムースに移動することができ、かつ、長寿命とすることができる優れた効果を有し、このような摺動シール及びシール構造に適用するのに適している。

１１、２９、３１、３２ 摺動シール
１２ 第１部材
１３、４３ 第２部材（ハウジング）
１３ａ 第１ハウジング部
１３ｂ 第２ハウジング部
１３ｃ 高圧側流路
１４ 隙間
１５ 機器
１６ 装着孔
１７ 移動方向
１８ 装着溝
１８ａ 底面
１９、３３ 圧力流体用シール（高圧用シール）
１９ａ 内周部
２０ 潤滑剤保持ピース
２０ａ 潤滑剤貯留部
２０ｂ 連通孔
２１ バックアップリング
２２ 潤滑剤用シール
２３ 中心線
２４ 摺動面
２５ 潤滑剤
２６ 潤滑剤収容空間
２７ チェック弁
３６、４０ シール構造
３７ 供給路

Claims (7)

1. 第１部材が第２部材に対して移動可能な２つの部材間の環状隙間を密封して、高圧側と低圧側を仕切るためのものであり、前記第２部材又は第１部材に設けられた環状の装着溝内の構造である摺動シール構造において、
   前記第１又は第２部材の摺動面に摺接する圧力流体用シールと、
   前記圧力流体用シールよりも高圧側に離して設けられ、前記圧力流体用シールとの間に潤滑剤を収容するための潤滑剤収容空間を形成する潤滑剤保持ピースと、
   前記潤滑剤収容空間よりも高圧側に設けられ、前記摺動面に摺接する潤滑剤用シールとを備え、
   前記潤滑剤用シールのリップの潰し率は、潤滑剤が高圧側に流出することを抑制できる大きさに設定するため、且つ、前記圧力流体用シールが摺動面を摺接する力よりも小さくするため、前記圧力流体用シールのリップの潰し率よりも小さく、
   前記潤滑剤保持ピースは、潤滑剤貯留部を有する、ことを特徴とする摺動シール構造。
2. 前記潤滑剤用シールは、前記潤滑剤保持ピースに設けられ、当該潤滑剤保持ピースは前記装着溝の高圧側に配置されていることを特徴とする請求項１に記載の摺動シール構造。
3. 前記潤滑剤用シールは、前記潤滑剤保持ピースと別々に形成されていることを特徴とする請求項２記載の摺動シール構造。
4. 前記潤滑剤用シールは、前記潤滑剤保持ピースと一体物として形成されていることを特徴とする請求項２記載の摺動シール構造。
5. 前記圧力流体用シールの低圧側の側面に隣接してバックアップリングを設けたことを特徴とする請求項１乃至４のいずれか１つに記載の摺動シール構造。
6. 前記装着溝が設けられる前記第２又は第１部材に形成され、外部から潤滑剤を前記潤滑剤収容空間に供給するための供給路を更に備えることを特徴とする請求項１乃至５のいずれか１つに記載の摺動シール構造。
7. 前記潤滑剤貯留部は、前記摺動面に向かって開口する溝部であり、この溝部と前記供給路とは、前記潤滑剤保持ピースに形成された連通孔を介して互いに連通していることを特徴とする請求項６記載の摺動シール構造。

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