以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
具体的には、本発明の一実施形態は、IL−8、b−IG−H3、MIF、KRAS/BRAF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上を含むc−Met阻害剤の効能予測及び/または効能検証のためのバイオマーカーを提供する。
他の実施形態は、IL−8、b−IG−H3、MIF、KRAS/BRAF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上を含むc−Met阻害剤の適用対象選別のためのバイオマーカーを提供する。
他の実施形態は、IL−8、b−IG−H3、MIF、KRAS/BRAF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質を含むc−Met阻害剤の効能予測及び/または効能検証用組成物及びキットを提供する。
他の実施形態は、IL−8、b−IG−H3、MIF、KRAS/BRAF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質を含むc−Met阻害剤の適用対象選別用組成物及びキットを提供する。
他の実施形態は、生物試料内のIL−8、b−IG−H3、MIF、KRAS/BRAF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の存在有無、水準、及び/または変異有無を測定する段階を含むc−Met阻害剤の効能予測及び/または効能検証方法またはc−Met阻害剤の効能予測及び/または効能検証のための情報を提供する方法を提供する。
他の実施形態は生物試料内のIL−8、b−IG−H3、MIF、KRAS/BRAF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の存在有無、水準、及び/または変異有無を測定する段階を含むc−Met阻害剤の適用対象の選別方法またはc−Met阻害剤の適用対象の選別のための情報を提供する方法を提供する。
他の実施形態は、前記選別されたc−Met阻害剤の適用対象にc−Met阻害剤を投与する段階を含む癌の予防及び/または治療方法を提供する。前記癌の予防及び/または治療方法は、前記投与段階以前に前記c−Met阻害剤の適用対象を選別する段階を追加的に含むことができる。
他の実施形態は、前記選別されたc−Met阻害剤の適用対象にc−Met阻害剤を投与する段階を含むc−Met抑制方法を提供する。前記c−Met抑制方法は、前記投与段階以前に前記c−Met阻害剤の適用対象を選別する段階を追加的に含むことができる。
本明細書で、c−Met阻害剤の効能は、c−Met阻害剤のc−Met関連病気、例えば癌の予防、改善、軽減、または治療効果を意味するものであって、癌の場合、癌細胞または癌組織の減少、癌細胞または癌組織の死滅、癌転移と関連した癌細胞の移動及び/または浸透の抑制などの効果を意味する。
本発明で、特定蛋白質の発現水準は、前記蛋白質を定量するか前記蛋白質をコードする遺伝子、例えばDNA、cDNA、またはmRNAを定量することによって測定でき、KRAS/BRAF変異の場合は遺伝子水準で測定できる。
IL−8(Interleukin 8)はケモカインの一種であって、免疫反応の重要な媒介体として作用する。IL−8は、好中球走化性因子(neutrophil chemotactic factor)とも知られており、好中球または他の顆粒性白血球の走化性を誘導してこれら細胞の炎症部位に移動させる役割と、炎症部位での食菌作用を誘導する役割を果たす。IL−8はまた、血管新生(angiogenesis)を促進し、腫瘍細胞の増殖及び転移に寄与する因子とも知られている。本発明の一実施形態ではIL−8の発現水準によってc−Met阻害剤に対する反応性が変わり、c−Met阻害剤処理有無または処理前後のIL−8の発現水準差が、前記c−Met阻害剤に対する反応性の有無によって変わることを明らかにした(実施例1参照)。より具体的には、生物試料のIL−8またはこれをコードする遺伝子の水準が高い場合、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者にc−Met阻害剤、例えば抗c−Met抗体を適用時、その効能がよく発揮されることを確認することができる。また、c−Met阻害剤、例えば抗c−Met抗体が効能をよく発揮する場合(薬物反応群)、前記c−Met阻害剤適用後のIL−8またはこれをコードする遺伝子の水準が、前記c−Met阻害剤適用前より減少することを確認することができる。
即ち、IL−8の発現水準を測定することによって、c−Met阻害剤の効能を予測してc−Met阻害剤を適用するのに適した対象を選別することができる。または、c−Met阻害剤処理の有無または処理前後によるIL−8の発現水準変化を測定することによって、c−Met阻害剤の効能を検定(確認)またはモニタリングし、c−Met阻害剤の継続的な適用有無を決定したり、c−Met阻害剤の投与容量、投与間隔、投与回数などの治療戦略を樹立したりするのに有用に用いることができる。これに基づいて、IL−8のc−Met阻害剤の効能予測及び/または効能検証マーカーとしての有用性を最初に提案する。
前記IL−8は、マウス、ラットなどのげっ歯類、ヒト、サルなどの霊長類などを含む哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などの脊椎動物に由来するものであってもよく、例えば、NP_000575.1、AAH13615.1、AAA59158.1、NP_001028137.1、AAA80141.2、およびAAA86711.1からなる群より選択されたものであってもよい。IL−8をコードする遺伝子(cDNA、またはmRNA)は、例えば、NM_000584.3、BC013615.1(41〜340位)、NC_000004、NG_029889、NC_018915.2、AC_000136、M28130.1、NM_001032965.1、S78555.1、およびU19849.1からなる群より選択されたものであってもよい。
一実施形態は、IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上を含むc−Met阻害剤の効能予測及び/または効能検証のためのバイオマーカーを提供する。
他の実施形態は、IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上を含むc−Met阻害剤の適用対象選別のためのバイオマーカーを提供する。
他の実施形態は、IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質を含むc−Met阻害剤の効能予測及び/または効能検証用組成物及びキットを提供する。
他の実施形態は、IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質を含むc−Met阻害剤の適用対象選別用組成物及びキットを提供する。
他の実施形態は、生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階を含む、c−Met阻害剤の効能予測及び/もしくは効能検証方法、c−Met阻害剤の効能予測及び/もしくは効能検証のための情報を提供する方法、またはc−Met阻害剤の効能予測及び/もしくは効能検証のために、生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する方法を提供する。他の実施形態は、生物試料内のIL−8及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階を含む、c−Met阻害剤の適用対象の選別方法、c−Met阻害剤の適用対象の選別のための情報を提供する方法、またはc−Met阻害剤の適用対象の選別のために生物試料内のIL−8及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する方法を提供する。
一実施形態では、生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階を含む、c−Met阻害剤の効能予測方法、c−Met阻害剤の効能予測のための情報を提供する方法、c−Met阻害剤の適用対象の選別方法、またはc−Met阻害剤の適用対象の選別のための情報を提供する方法が提供される。前記c−Met阻害剤の効能予測またはc−Met阻害剤の適用対象選別方法において、生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が高い場合、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者では前記c−Met阻害剤が効能を発揮すると判断(予測)するか、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者をc−Met阻害剤の適用対象と判断することができる。したがって、前記c−Met阻害剤の効能予測または効能予測のための情報を提供する方法は、前記生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が高い場合、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者では、前記c−Met阻害剤が効能を発揮すると判断(予測)する段階を、前記測定する段階以後に追加的に含むことができる。また、前記c−Met阻害剤の適用対象の選別方法またはc−Met阻害剤の適用対象の選別のための情報を提供する方法は、前記生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が高い場合、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者を前記c−Met阻害剤の適用対象と判断する段階を、前記測定する段階以後に追加的に含むことができる。
IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が高いというのは、例えば、適用しようとするc−Met阻害剤が効能を発揮しない患者から分離された生物試料(比較基準試料)と比較して、IL−8蛋白質量及び/またはこれをコードする遺伝子(DNA、cDNAまたはmRNA)の量が多い場合を意味するものであり得る。例えば、試験対象生物試料のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、適用しようとするc−Met阻害剤が効能を発揮しない比較基準生物試料と比較して、重量基準で1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、または5倍以上である場合、例えば1.5から100倍、2から100倍、3から100倍、4から100倍、または5から100倍である場合、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者では前記c−Met阻害剤が効能を発揮すると予測するか、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者を前記c−Met阻害剤の適用対象と判断することができる。前記c−Met阻害剤は、例えば、抗c−Met抗体であってもよい。前記c−Met阻害剤が効能を発揮しない生物試料は、例えば、抗c−Met抗体が効能を示さないLovo細胞株(CCL−229、ATCC)、HT−29細胞株(HTB−38、ATCC)などであり得るが、これらに制限されるものではない。したがって、前記c−Met阻害剤の効能予測(もしくは効能予測のための情報を提供する方法)、またはc−Met阻害剤の適用対象の選別方法(もしくはc−Met阻害剤の適用対象の選別のための情報を提供する方法)は、IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の比較基準試料中の水準を測定する段階を追加的に含むことができ、その具体的な測定方法は、試験対象試料中のIL−8及び/またはこれをコードする遺伝子水準の測定と同様な方法で遂行できる。
前記生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階は、(i)生物試料にIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質を処理(添加)して反応させる段階;ならびに(ii)前記得られた反応物を分析してIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上を定量する段階を含むことができる。一実施形態では、前記段階(i)以前に、生物試料を用意する段階を追加的に含むことができる。前記生物試料を用意する段階は、患者から生物試料を得る(分離する)段階または患者から分離された生物試料を入手する段階を含んでもよい。前記段階(i)で、前記相互作用する物質は、IL−8検出に使用するためのものであって、IL−8に特異的に結合する全ての低分子化合物(例えば、蛍光体、染料(dye)など)、蛋白質(抗体、アプタマーなど)、核酸(DNA、RNAなど)などからなる群より選択された1種以上であってもよい。より具体的には、例えば、前記相互作用する物質は、IL−8に特異的に結合する化合物、抗体(細胞内染色用抗体(Human CXCL8/IL−8 Phycoerythrin MAb; #IC208P; R&Dシステムズ社)など)、アプタマー、およびIL−8をコードする遺伝子の一部または全部に結合するポリヌクレオチド(例えば、プライマー(例えば、IL−8遺伝子のRT−PCRに用いられるプライマーセット(ACCESSION NO: BC013615.1; Forward primer: 5’−ATGACTTCCAAGCTGGCCGTGGCT−3’(配列番号113)およびReverse primer: 5’−TCTCAGCCCTCTTCAAAAACTTCT−3’(配列番号114))など)、プローブ、アプタマーなど)、化合物、またはこれらのうちの2種以上の組み合わせであってもよい。前記相互作用する物質は、蛍光物質、発色物質などの通常の標識物質で標識されるか、または標識されないものであってもよい。前記段階(i)は前記生物試料に前記相互作用する物質を処理(添加)して複合体を形成させる段階であってもよい。前記段階(ii)で、前記反応物は、段階(i)で得られたIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上、ならびにこれらと相互作用する物質が相互作用(結合)して生成された複合体(complex)であってもよく、前記定量する段階は、前記生成された複合体を定量するか、前記複合体に接合された標識物質を測定するか、または前記複合体を試料から分離した後、これからIL−8またはこれをコードする遺伝子を再び分離したIL−8またはこれをコードする遺伝子を定量する段階を含んでもよい。前記IL−8の定量段階は、蛋白質定量に使用される全ての通常の手段、例えば、免疫クロマトグラフィー、免疫組織化学法(immunohistochemistry)、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着分析(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA、例えば、Platinum ELISA Human IL−8/NAP−1 (#BMS204/3, eBioscience社)等)、放射線免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、酵素免疫分析(enzyme immunoassay:EIA)、蛍光免疫分析(Floresence immunoassay:FIA)、発光免疫分析(luminescence immunoassay:LIA)、ウエスタンブロッティング(Western blotting)、マイクロアレイ、表面プラズモン共鳴法(Surface Plasmon Resonance、SPR)、フローサイトメトリー(flow cytometry; 例えば、Cytometric Bead Array(CBA) assay(例えば、IL−8 flex set (#558277)、 human inflammatory cytokine kit (#551811)、以上、BDバイオサイエンス社製)、細胞内染色(Intra cellular staining、例えば、Human CXCL8/IL−8 Phycoerythrin MAb(#IC208P;R&Dシステムズ社)などのような抗体を使用)、Luminex assay(ルミネックス社)など)などによって遂行できるが、これらに制限されるわけではない。IL−8をコードする遺伝子の定量段階は、遺伝子(DNAまたはRNA)定量に使用される全ての通常の手段、例えば、PCR(例えば、qPCR、RT−PCR等)、mRNAマイクロアレイなどを用いて遂行できるが、これらに制限されるわけではない。
他の実施形態では、生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階を含む、c−Met阻害剤の効能検証(もしくは、確認もしくはモニタリング)方法、c−Met阻害剤の効能検証(もしくは、確認もしくはモニタリング)のための情報を提供する方法、またはc−Met阻害剤の効能検証(もしくは、確認もしくはモニタリング)のために生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する方法が提供される。前記c−Met阻害剤の効能検証方法またはc−Met阻害剤の効能検証のための情報を提供する方法において、前記c−Met阻害剤を処理する前に測定した患者から得られた生物試料(またはc−Met阻害剤無処理群生物試料)内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準と、前記c−Met阻害剤を処理した後に測定した患者から得られた生物試料(またはc−Met阻害剤処理群生物試料)内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準とを比較し、前記c−Met阻害剤を処理した後に患者から得られた生物試料(またはc−Met阻害剤処理群生物試料)内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤を処理する前(またはc−Met阻害剤無処理群)の水準より減少した場合、前記生物試料が由来する患者では前記c−Met阻害剤が効能を発揮すると判断することができる。したがって、前記c−Met阻害剤の効能検証方法またはc−Met阻害剤の効能検証のための情報を提供する方法は、前記c−Met阻害剤無処理群及び処理群の生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を比較する段階及び/または前記c−Met阻害剤処理群の生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が前記c−Met阻害剤無処理群より減少した場合、前記生物試料が由来する患者で前記c−Met阻害剤が効能を発揮すると判断する段階を、前記測定(比較)する段階以後に、追加的に含むことができる。前記c−Met阻害剤は、抗c−Met抗体であってもよい。前記c−Met阻害剤無処理群や処理群とは、それぞれ同一の生物試料全体に対してc−Met阻害剤を処理する前と処理した後の状態を意味するか、または、同一の生物試料を分量してc−Met阻害剤を処理しない群(例えば、ビヒクルのみ処理)とc−Met阻害剤を処理した群を意味し得る。本明細書で、別途の言及がない限り、c−Met阻害剤無処理群とc−Met阻害剤処理前の生物試料、c−Met阻害剤処理群とc−Met阻害剤処理後の生物試料は、それぞれ互いに同一な意味として使用されるものであり得る。
IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準は、IL−8蛋白質及び/またはこれをコードする遺伝子(DNA、cDNAまたはmRNA)を定量することによって測定できる。例えば、前記c−Met阻害剤処理群またはc−Met阻害剤処理後の生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、c−Met阻害剤無処理群またはc−Met阻害剤処理前の水準の、約0から約80重量%、約0から約70重量%、約0から約60重量%、約0から約50重量%、約0から約40重量%、約0から約30重量%、約0から約20重量%、または約0から約10重量%である場合、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準より減少したと判断することができる。前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤処理前の約0重量%というのは、IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上が前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料から検出されないこと(存在しないこと)を意味する。前記c−Met阻害剤無処理群(または処理前)と処理群(または処理後)の生物試料のIL−8及び/またはこれをコードする遺伝子水準は、同一の患者から得られた生物試料で互いに同様な方法で測定されたものであってもよい。
c−Met阻害剤の効能検証マーカーとしてIL−8及び/またはこれをコードする遺伝子を使用する場合、c−Met阻害剤投与後、比較的に短期間、例えば一週間以内、5日以内、3日以内、2日以内、または1日以内にIL−8及び/またはこれをコードする遺伝子を定量し、c−Met阻害剤投与前のIL−8及び/またはこれをコードする遺伝子の定量値と比較して、c−Met阻害剤の効能を確認することができる。したがって、c−Met阻害剤を使用する治療の初期段階にc−Met阻害剤の効能を確認することができるので、より効果的な治療戦略を樹立できるという利点がある。
一実施形態では、前記生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階は、(1)c−Met阻害剤の処理前患者から得られた(分離された)生物試料中(または患者から得られた(分離された)生物試料の一部であるc−Met阻害剤無処理生物学的試料中)の、IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階;ならびに(2)前記c−Met阻害剤処理後の前記患者から得られた(分離された)生物試料中(または前記患者から得られた(分離された)生物試料の他の部分であるc−Met阻害剤処理生物学的試料中)の、IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階を含んでもよい。前記段階(1)と段階(2)は、それぞれ(i)前記生物試料にIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質を処理(添加)して反応させる段階;ならびに(ii)前記得られた反応物を分析してIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上を定量する段階を含むことができる。前記段階(i)以前に、生物試料を用意する段階を追加的に含むことができる。前記生物試料を用意する段階は、患者から生物試料を得る(分離する)段階または患者から分離された生物試料を入手する段階を含んでもよい。前記段階(i)で、前記相互作用する物質は、IL−8検出に用いるためのものであって、IL−8に特異的に結合する全ての低分子化合物、蛋白質(抗体、アプタマーなど)、核酸(DNA、RNAなど)などからなる群より選択された1種以上であってもよい。例えば、前記相互作用する物質は、IL−8に特異的に結合する化合物、抗体、アプタマー、またはIL−8をコードする遺伝子の一部または全部に結合するポリヌクレオチド(例えば、プライマー、プローブ、アプタマーなど)、化合物、またはこれらのうちの2種以上の組み合わせであってもよい。前記相互作用する物質は、蛍光物質、発色物質などの標識物質で標識されるか若しくは標識されないものであってもよい。前記段階(i)は、前記生物試料に前記相互作用する物質を処理(添加)して複合体を形成させる段階であってもよい。前記段階(ii)で、前記反応物は、段階(i)で得られたIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上及びこれと相互作用する物質が相互作用(結合)して生成された複合体(complex)であってもよく、前記定量する段階は、前記生成された複合体を定量するか、前記複合体に接合された標識物質を測定するか、または前記複合体を試料から分離した後、これからIL−8またはこれをコードする遺伝子を再び分離したIL−8またはこれをコードする遺伝子を定量する段階を含んでもよい。
前記効能検証方法は、前記c−Met阻害剤の継続的な使用可否の判断及び/または前記c−Met阻害剤の適切な投与条件(例えば、投与量、投与間隔、投与回数など)の決定に活用できる。例えば、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準より減少した場合、前記c−Met阻害剤を継続して使用できると判断することができる。例えば、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準の、約0から約80重量%、約0から約70重量%、約0から約60重量%、約0から約50重量%、約0から約40重量%、約0から約30重量%、約0から約20重量%、または約0から約10重量%である場合、前記c−Met阻害剤を継続して使用できると判断することができる。また、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内の、IL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準より減少した場合、c−Met阻害剤の投与条件を前記c−Met阻害剤の適切な投与条件と判断することができる。例えば、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のIL−8及びこれをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準の、約0から約80重量%、約0から約70重量%、約0から約60重量%、約0から約50重量%、約0から約40重量%、約0から約30重量%、約0から約20重量%、または約0から約10重量%である場合、c−Met阻害剤の投与条件を前記c−Met阻害剤の適切な投与条件と判断することができる。前記投与条件は、投与容量、投与間隔、投与回数などからなる群より選択された1種以上出合ってもよい。
他の実施形態は、前記選別されたc−Met阻害剤の適用対象にc−Met阻害剤を投与する段階を含む、c−Met抑制方法を提供する。
他の実施形態は、前記選別されたc−Met阻害剤の適用対象に、c−Met阻害剤を投与する段階を含む、癌の予防及び/または治療方法を提供する。
前記c−Met抑制方法または癌の予防及び/または治療方法は、前記抗c−Met抗体適用対象を選別する段階を、前記投与段階以前に追加的に含むことができ、その具体的方法及び段階は前述の通りである。前記c−Met阻害剤は抗c−Met抗体であってもよい。
より具体的には、前記c−Met抑制方法または癌の予防及び/または治療方法は、c−Met阻害剤の適用対象を確認する段階;及び前記c−Met阻害剤の適用対象にc−Met阻害剤の薬学的有効量を投与する段階、を含むことができる。
他の実施形態では、前記c−Met抑制方法または癌の予防及び/または治療方法は、
生物試料内のIL−8及び/またはこれをコードする遺伝子の水準を測定してc−Met阻害剤の適用対象を選別する段階;ならびに、前記選別されたc−Met阻害剤の適用対象にc−Met阻害剤の薬学的有効量を投与する段階、を含むことができる。
この時、前記c−Met阻害剤の投与条件、例えば、投与量、投与間隔、及び/または投与回数は、前記c−Met阻害剤の効能検証方法で判断されたc−Met阻害剤の適切な投与条件であってもよい。
スニチニブ(sunitinib)、シスプラチン(cisplatin)、パクリタキセル(paclitaxel)などの抗癌剤は、IL−8水準が高い個体で抵抗性が誘発され、抗癌効果を発揮しない場合が多い。しかし、c−Met阻害剤、例えば、抗c−Met抗体、特に下記の特定抗c−Met抗体は、IL−8水準が高い個体にむしろ優れた抗癌効果を示すことができるので、より効果的な抗癌治療戦略を提示することができる。
bIG−H3は、TGFBI(Transforming growth factor beta−induced、形質転換成長因子β誘導性遺伝子蛋白質)とも呼ばれ、RGDモチーフを含む蛋白質であり、I型、II型、III型コラーゲンに結合する。RGDモチーフは、ECM(extar cellular matrix、細胞外基質)部分に多く分布する。bIG−H3は、a3b1インテグリンと結合して細胞接着(cell adhesion)、細胞移動(migration)に関与する。bIG−H3は可溶性蛋白質であり、腫瘍微小環境(tumor microenvironment)で癌転移、癌血管形成などに関与する。現在までc−Met蛋白質とbIG−H3との関係が報告されたことがない。
MIF(Macrophage migration inhibitory factor、マクロファージ遊走阻止因子)は、重要な免疫調節因子であり、炎症性サイトカインの一種類である。
本発明の一実施形態では、c−Met阻害剤無処理群と処理群、または処理前後のbIG−H3及び/もしくはMIFの発現水準差が、前記c−Met阻害剤に対する反応性の有無によって変わることを明らかにした(実施例2及び実施例3参照)。より具体的には、c−Met阻害剤、例えば抗c−Met抗体が効能をよく発揮する場合(薬物反応群)、前記c−Met阻害剤適用後のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤適用前の水準よりも減少することを確認することができる。
即ち、c−Met阻害剤処理有無または処理前後のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の発現水準を測定することによって、c−Met阻害剤の効能を検定(確認)またはモニタリングしてc−Met阻害剤の継続的な適用有無を決定するか、c−Met阻害剤の投与容量、投与間隔、投与回数などの治療戦略を樹立することに有用に使用できる。これに基づいて、bIG−H3及び/またはMIFのc−Met阻害剤の効能検証マーカーとしての有用性を最初に提案する。
前記bIG−H3は、マウス、ラットなどのげっ歯類、ヒト、サルなどの霊長類などを含む哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などの脊椎動物に由来するものであってもよく、例えば、ヒトbIG−H3(NP_000349.1、AAC24944.1、AAC08449.1、AAH00097.1など)、マウスbIG−H3(NP_033395.1、AAI29901.1、AAI29902.1など)、ラットbIG−H3(NP_446254.1など)、およびセブラフィッシュbIG−H3(NP_878282.1、など)からなる群より選択されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。bIG−H3をコードする遺伝子(cDNA、またはmRNA)は、例えば、NM_000358.2、NM_009369.4、NM_053802.1、およびNM_182862.1からなる群より選択されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
前記MIFは、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などの脊椎動物に由来するものであってもよく、例えば、ヒトMIF(NP_002406.1など)、サルMIF(例えば、NP_001028087.1など)、ヒツジMIF(例えば、NP_001072123.1)など)、げっ歯類MIF(例えば、マウスMIF(NP_034928.1など)、ラットMIF(NP_112313.1など)、NP_001266756.1、など)、ウシMIF(NP_001028780.1など)、ゼブラフィッシュMIF(NP_001036786.1など)、ブタMIF(NP_001070681.1など)、カエルMIF(NP_001083650.1、NP_001107147.1など)、および魚類MIF(例えば、NP_001118053.1、NP_001135019.1、NP_001027889.1)からなる群より選択されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。MIFをコードする遺伝子(cDNA、またはmRNA)は、例えば、NM_002415.1、NM_001032915.1、NM_001078655.1、NM_010798.2、NM_031051.1、NM_001279827.1、NM_001033608.1、NM_001043321.1、NM_001077213.2、NM_001090181.1、NM_001113675.1、NM_001124581.1、NM_001141547.1、およびNM_001032717.1からなる群より選択されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
一実施形態は、bIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上を含む、c−Met阻害剤の効能検証のためのバイオマーカーを提供する。
他の実施形態は、bIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質を含む、c−Met阻害剤の効能検証用組成物及びキットを提供する。
他の実施形態は、生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階を含む、c−Met阻害剤の効能検証(または確認またはモニタリング)方法、c−Met阻害剤の効能検証(もしくは、確認もしくはモニタリング)のための情報を提供する方法、またはc−Met阻害剤の効能検証(もしくは、確認もしくはモニタリング)のために生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する方法を提供する。
例えば、前記c−Met阻害剤の効能検証方法またはc−Met阻害剤の効能検証のための情報を提供する方法において、患者から得られた生物試料(またはc−Met阻害剤無処理群生物試料)内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の前記c−Met阻害剤を処理する前に測定された水準と、患者から得られた生物試料(またはc−Met阻害剤処理群生物試料)内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の前記c−Met阻害剤を処理した後に測定された水準とを比較し、前記c−Met阻害剤を処理した後に測定された患者から得られた生物試料(またはc−Met阻害剤処理群生物試料)内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤を処理する前(またはc−Met阻害剤無処理群)の水準より減少した場合、前記生物試料が由来する患者では前記c−Met阻害剤が効能を発揮すると判断することができる。したがって、前記c−Met阻害剤の効能検証方法またはc−Met阻害剤の効能検証のための情報を提供する方法は、前記測定(比較)する段階以後に、前記c−Met阻害剤無処理群と処理群、または処理前後の生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を比較する段階及び/または前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が前記c−Met阻害剤無処理群または処理前より減少した場合、前記生物試料が由来する患者で前記c−Met阻害剤が効能を発揮すると判断する段階を追加的に含むことができる。前記c−Met阻害剤は、抗c−Met抗体であってもよい。前記c−Met阻害剤無処理群と処理群の定義は前述の通りである。
bIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準は、bIG−H3、MIF、蛋白質及び/またはこれらをコードする遺伝子(DNA、cDNAまたはmRNA)を定量することによって測定することができる。例えば、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準の、約0から約80重量%、約0から約70重量%、約0から約60重量%、約0から約50重量%、約0から約40重量%、約0から約30重量%、約0から約20重量%、または約0から約10重量%である場合、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準より減少したと判断することができる。前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の約0重量%とは、bIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上が、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料から検出されないこと(存在しないこと)を意味する。前記c−Met阻害剤無処理群と処理群、または処理前後の生物試料のIL−8及び/もしくはこれらをコードする遺伝子水準は、同一の患者から得られた生物試料で互いに同様な方法で測定されたものであり得る。
c−Met阻害剤の効能検証マーカーとしてbIG−H3、MIF、及び/またはこれらをコードする遺伝子を使用する場合、c−Met阻害剤投与後比較的短期間、例えば、一箇月以内、2週間以内、一週間以内、5日以内、3日以内、2日以内、または1日以内にbIG−H3、MIF、及び/またはこれらをコードする遺伝子を定量し、c−Met阻害剤投与前と比較し、c−Met阻害剤の効能を確認することができる。したがって、c−Met阻害剤を使用する治療の初期段階にc−Met阻害剤の効能を確認することができるので、より効果的な治療戦略を樹立できるという利点がある。
一実施形態では、前記生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階は、(1)c−Met阻害剤の処理前に患者から得られた(分離された)生物試料中(または、患者から得られた(分離された)生物試料の一部であるc−Met阻害剤無処理試料中)のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階;ならびに(2)前記c−Met阻害剤処理後に前記患者から得られた(分離された)生物試料(または、患者から得られた(分離された)生物試料の他の部分であるc−Met阻害剤が処理された試料中)のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準を測定する段階を含んでもよい。前記段階(1)と段階(2)は、それぞれ(i)前記生物試料にbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質を処理(添加)して反応させる段階;ならびに(ii)前記得られた反応物を分析してbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上を定量する段階を含むことができる。前記段階(i)以前に、生物試料を用意する段階を追加的に含むことができる。前記生物試料を用意する段階は、患者から生物試料を得る(分離する)段階または患者から分離された生物試料を入手する段階を含んでもよい。前記段階(i)で、前記相互作用する物質は、bIG−H3またはMIFの検出に使用するためのものであって、bIG−H3またはMIFに特異的に結合する全ての低分子化合物(例えば、蛍光体、染料(dye)など)、蛋白質(抗体、アプタマーなど)、核酸(DNA、RNAなど)などからなる群より選択された1種以上であってもよい。例えば、bIG−H3またはMIFに特異的に結合する化合物、抗体、アプタマー、またはbIG−H3またはMIFをコードする遺伝子の一部または全部に結合するポリヌクレオチド(例えば、プライマー、プローブ、アプタマーなど)、化合物、またはこれらのうちの2種以上の組み合わせであってもよい。前記相互作用する物質は、蛍光物質、発色物質などの通常の標識物質で標識されるか、または標識されないものであってもよい。前記段階(i)は、前記生物試料に前記相互作用する物質を処理(添加)して複合体を形成させる段階であってもよい。前記段階(ii)における前記反応物は、段階(i)で得られたbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上及びこれらと相互作用する物質が相互作用(結合)して生成された複合体(complex)であってもよく、前記定量する段階は、前記生成された複合体を定量するか、前記複合体に接合された標識物質を測定するか、または前記複合体を試料から分離した後、これからbIG−H3、MIF、またはこれらをコードする遺伝子を再び分離したbIG−H3、MIF、またはこれらをコードする遺伝子を定量する段階を含んでもよい。前記bIG−H3およびMIFの定量段階は、蛋白質定量に使用される全ての通常の手段、例えば、免疫クロマトグラフィー、免疫組織化学法(immunohistochemistry)、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着分析(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、放射線免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、酵素免疫分析(enzyme immunoassay:EIA)、蛍光免疫分析(Floresence immunoassay:FIA)、発光免疫分析(luminescence immunoassay:LIA)、ウエスタンブロッティング(Western blotting)、マイクロアレイ、表面プラズモン共鳴法(Surface Plasmon Resonance、SPR)、フローサイトメトリー(flow cytometry; 例えば、Cytometric Bead Array(CBA) assay、 human inflammatory cytokine kit、 BDバイオサイエンス社製)、細胞内染色(Intra cellular staining)、Luminex assay(ルミネックス社)などによって遂行できるが、これらに制限されるわけではない。bIG−H3またはMIFをコードする遺伝子の定量段階は、遺伝子(DNAまたはRNA)定量に使用される全ての通常の手段、例えば、PCR(例えば、qPCR、RT−PCR等)、mRNAマイクロアレイなどを用いて遂行できるが、これらに制限されるわけではない。
前記効能検証方法は、前記c−Met阻害剤の継続的な使用可否判断及び/または前記c−Met阻害剤の適切な投与条件(例えば、投与量、投与間隔、投与回数など)の決定に活用することができる。例えば、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準より減少した場合、前記c−Met阻害剤を継続して使用できると判断することができる。例えば、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準の約0から約80重量%、約0から約70重量%、約0から約60重量%、約0から約50重量%、約0から約40重量%、約0から約30重量%、約0から約20重量%、または約0から約10重量%である場合、前記c−Met阻害剤を継続して使用できると判断することができる。また、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準より減少した場合、c−Met阻害剤の投与条件を前記c−Met阻害剤の適切な投与条件と判断することができる。例えば、前記c−Met阻害剤処理群または処理後の生物試料内のbIG−H3、MIF、及びこれらをコードする遺伝子からなる群より選択された1種以上の水準が、前記c−Met阻害剤無処理群または処理前の水準の、約0から約80重量%、約0から約70重量%、約0から約60重量%、約0から約50重量%、約0から約40重量%、約0から約30重量%、約0から約20重量%、または約0から約10重量%である場合のc−Met阻害剤の投与条件を前記c−Met阻害剤の適切な投与条件と判断することができる。前記投与条件は、投与容量、投与間隔、投与回数などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
他の実施形態では、c−Met阻害剤をc−Metの阻害を必要とする患者に投与する段階を含む、c−Met抑制方法が提供される。他の実施形態では、c−Met阻害剤を癌の予防及び/または治療を必要とする患者に投与する段階を含む、癌の予防及び/または治療方法が提供される。前記c−Met抑制方法または癌の予防及び/または治療方法において、前記c−Met阻害剤の投与は、前記c−Met阻害剤の効能検証方法で判断されたc−Met阻害剤の適切な投与条件、例えば、投与量、投与間隔、及び/または投与回数によって行なうことができる。
前記IL−8、bIG−H3、MIF及びこれらをコードする遺伝子の水準は、前記蛋白質または遺伝子と相互作用する物質を用いる通常の全ての蛋白質分析方法によって測定できる。前記IL−8、bIG−H3、MIF及びこれらをコードする遺伝子の水準は、前記蛋白質または遺伝子と相互作用する物質は、IL−8、bIG−H3、またはMIF蛋白質に特異的に結合する化合物、抗体、アプタマー、及びIL−8、bIG−H3、またはMIFをコードする遺伝子の全部または一部に結合するポリヌクレオチド(例えば、プライマー、プローブ、アプタマーなど)などからなる群より選択された1種以上であってもよい。例えば、前記IL−8、bIG−H3、及びMIF蛋白質の水準は、前記IL−8、bIG−H3、またはMIF蛋白質に特異的に結合する化合物、抗体、アプタマーなどを用いる通常の酵素反応、蛍光、発光及び/または放射線検出を通じて測定することができ、具体的には、免疫クロマトグラフィー(Immunochromatography)、免疫組織化学法(immunohistochemistry)、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着分析(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、放射線免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、酵素免疫分析(enzyme immunoassay:EIA)、蛍光免疫分析(Floresence immunoassay:FIA)、発光免疫分析(luminescence immunoassay:LIA)、ウエスタンブロッティング(Western blotting)、マイクロアレイ、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance、SPR)、フローサイトメトリー(flow cytometry; 例えば、Cytometric Bead Array(CBA) assay(BDバイオサイエンス社製)、細胞内染色(Intra cellular staining))、Luminex assay(ルミネックス社)などからなる群より選択された方法によって測定することができるが、これに制限されるものではない。また、前記IL−8、bIG−H3またはMIFをコードする遺伝子の水準は、通常の遺伝子分析方法を用いて測定することができ、例えば、前記遺伝子と混成化可能なプライマー、プローブ、またはアプタマーを使用する通常の遺伝子分析方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR;例えば、qPCR、RT−PCRなど)、FISH(fluorescent in situ hybridization)、マイクロアレイ法、などを用いて測定することができるが、これに制限されるものではない。一実施形態では、前記プライマーは、IL−8、bIG−H3またはMIFをコードする遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)の塩基配列において連続する5から20000bp、または5から1000bp、例えば、10から1500bp、10から1000bp、10から500bp、20から200bp、または50から200bpの遺伝子断片を検出できるものであって、前記遺伝子断片の3’−末端及び5’−末端それぞれの連続する5から2000bp、5から1500bp、5から1000bp、5から500bp、5から100bp、例えば、5から50bp、5から30bp、または10から25bp部位とハイブリダイズ可能な(例えば、相補的な)塩基配列を有するプライマー対であってもよい。前記遺伝子とハイブリダイズ可能なプローブまたはアプタマーは、IL−8、bIG−H3またはMIFをコードする遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)の塩基配列において連続する5から100bp、5から50bp、5から30bp、または5から25bpの遺伝子断片とハイブリダイズ可能な(例えば、相補的)塩基配列を有するものであってもよい。前記‘ハイブリダイズ可能’であるとは、前記遺伝子部位の塩基配列と80%以上、例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%の配列相補性を有することによって相補的結合が可能であるのを意味し得る。
一方、RAS−RAF経路は、代表的な細胞増殖シグナル経路であって、癌細胞の増殖に主要な経路である。このような理由で、RAS−RAF経路は抗癌剤開発の主要標的になってきた。したがって、RAS−RAF経路の変異はこれを標的とする薬物の効能に影響を与える重要な因子になり得る。しかし、現在までc−Met蛋白質とRAS−RAF変異との関係が報告されたことがない。
本発明の一実施形態では、RAS及び/またはRAF変異の有無によってc−Met阻害剤に対する反応性が変わることを確認した(実施例4参照)。より具体的には、生物試料のRAS及び/またはRAFの変異が観察される場合、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者では、c−Met阻害剤、例えば抗c−Met抗体を適用時、その効能が発揮されないことを確認することができる。
即ち、RAS及び/またはRAFの変異を検出することによって、c−Met阻害剤の効能を予測するか、c−Met阻害剤を適用するのに適した対象を選別することに有用に使用できる。これに基づいて、RAS−RAFのc−Met阻害剤の効能予測マーカーとしての有用性を最初に提案する。
RAS蛋白質は、GTPaseのスーパーファミリーに属する蛋白質であって、マウス、ラットなどのげっ歯類、ヒト、サルなどの霊長類などを含む哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などの脊椎動物に由来するKRAS、NRAS、HRASなどより選択されたものであってもよい。例えば、KRASはヒトKRAS(NP_004976.2、NP_203524.1など)、マウスKRAS(NP_067259.4など)、ゼブラフィッシュKRAS(NP_001003744.1など)、カエルKRAS(NP_001095209.1)、ウシKRAS(NP_001103471.1)、ニワトリKRAS(NP_001243091.1)、サルKRAS(NP_001248441.1)、NP_001028153.1、NP_113703.1、およびNP_001008034.1からなる群より選択されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。KRASをコードする遺伝子(cDNA、またはmRNA)は、例えばNM_004985.4、NM_033360.3、NM_021284.6、NM_001003744.1、NM_001101739.1、NM_001110001.1、NM_001256162.1、NM_001261512.2、NM_001032981.2、NM_031515.3、およびNM_001008033.1からなる群より選択されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
c−Met阻害剤の効能予測と関連するKRASの変異は、例えば、野生型KRAS(accession number:NM_004985)のコドン12GGT(NP_004976のアミノ酸配列の中、12番目位置するGlyに該当)及び/またはコドン13GGC(NP_004976のアミノ酸配列の中、13番目位置するGlyに該当)が下記の表1のように置換されたものであってもよいが、これらに制限されるものではない。
この他にも、NP_004976のアミノ酸配列の中、13番目に位置するアミノ酸であるGly、24番目に位置するアミノ酸であるIle、59番目に位置するアミノ酸であるAla、61番目に位置するアミノ酸であるGln、及び146番目に位置するアミノ酸であるAlaからなる群より選択された一つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されたもの、および/またはKRASをコードする遺伝子において上記のアミノ酸変異(置換)を誘導するように変異(置換)がされた核酸であってもよい。例えば、前記KRASの変異は、NP_004976のアミノ酸配列基準に、G12A、G12D、G12R、G12C、G12S、G12V、A146T、A59T、L23R、G13N、G13D、I24F、Q61L、Q61H、G13C、及びQ61K、ならびにKRASをコードする遺伝子において上記のアミノ酸変異(置換)を誘導するように変異(置換)がされた核酸からなる群より選択された一つ以上のアミノ酸変異を含むことができる。
RAFは、マウス、ラットなどのげっ歯類、ヒト、サルなどの霊長類などを含む哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などの脊椎動物に由来するBRAF、c−RAF、A−RAF、V−RAF、KSR1、KSR2などからなる群より選択されたものであってもよい。例えば、BRAFは、ヒトBRAF(NP_004324.2など)、マウスBRAF(NP_647455.3など)、カエルBRAF(NP_001083526.1など)、ゼブラフィッシュBRAF(NP_991307.2など)、ラットBRAF(NP_579817.1など)、およびニワトリKRAS(NP_990633.1など)からなる群より選択されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。BRAFをコードする遺伝子(cDNA、またはmRNA)は、例えばNM_004333.4、NM_139294.5、NM_001090057.1、NM_205744.3、NM_133283.1、およびNM_205302.1からなる群より選択されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
c−Met阻害剤の効能予測と関連するBRAFの変異は、例えば、野生型BRAF(accession number NP_004324)のアミノ酸配列(配列番号110)を基準に、596番目アミノ酸(G)、600番目アミノ酸(V)、601番目アミノ酸(K)、469番目アミノ酸(G)、466番目アミノ酸(G)、596番目アミノ酸、581番目アミノ酸(N)、597番目アミノ酸(L)、464番目アミノ酸(G)などからなる群より選択された一つ以上が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸変異であり得る。例えば、前記c−Met阻害剤の効能予測と関連するBRAFの変異は、次の変異のうちの一つ以上に該当するアミノ酸変異、BRAFをコードする遺伝子において下記のアミノ酸変異(置換)を誘導するように変異(置換)がされた核酸;またはこれらの組み合わせであり得る:G596R(596番目アミノ酸GがRに置換)、V600E、V600K、V600R、K601E、K601E、G469A、V600M、G469A、V600L、G466V、V600D、G469V、D594A、D594G、D594N、N581S、L597V、L597S、L597Q、K601N、G466V、G466E、G464V、G469Eなど。
一実施形態では、KRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上の変異の検出物質を含む、c−Met阻害剤の効能予測用組成物、またはキットが提供される。
他の実施形態では、KRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上の変異の検出物質を含む、c−Met阻害剤の適用対象選別用組成物、またはキットが提供される。
他の実施形態では、生物試料中のKRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上の変異有無を検出する段階を含む、c−Met阻害剤の効能予測方法、c−Met阻害剤の効能予測のための情報を提供する方法、c−Met阻害剤の適用対象の選別方法またはc−Met阻害剤の適用対象の選別のための情報を提供する方法が提供される。前記c−Met阻害剤の効能予測またはc−Met阻害剤の適用対象選別方法において、生物試料中のKRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上の変異が検出されない場合、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者では、前記c−Met阻害剤が効能を発揮すると判断(予測)するか、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者をc−Met阻害剤の適用対象と判断することができる。したがって、前記c−Met阻害剤の効能予測または効能予測のための情報を提供する方法は、前記生物試料内のKRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上の変異が検出されない場合、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者では前記c−Met阻害剤が効能を発揮すると判断(予測)する段階を、前記測定(検出)する段階以後に追加的に含むことができる。また、前記c−Met阻害剤の適用対象の選別方法またはc−Met阻害剤の適用対象の選別のための情報を提供する方法は、前記生物試料内のKRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上の変異が検出されない場合、前記生物試料または前記生物試料が由来する患者を前記c−Met阻害剤の適用対象と判断する段階を、前記測定(検出)する段階以後に追加的に含むことができる。
前記生物試料内のKRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上の変異有無を検出する段階は、(i)KRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上の変異を検出可能な物質で前記生物試料を処理(または、前記生物試料に添加)して反応させる段階;ならびに(ii)得られた反応物の存在の有無を検出し、KRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上の変異を検出する段階を含むことができる。前記段階(i)以前に、生物試料を用意する段階を追加的に含むことができる。前記生物試料を用意する段階は、患者から生物試料を得る(分離する)段階または患者から分離された生物試料を入手する段階を含んでもよい。前記段階(i)で、前記変異を検出可能な物質は、KRAS遺伝子及び/またはBRAF遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)の塩基配列において変異部位を含む連続する5から2000bp、5から1500bp、5から1000bp、5から500bp、5から100bp、5から50bp、5から30bp、または5から25bpの遺伝子断片と混成化可能な(例えば、相補的)塩基配列を含むプローブまたはアプタマー、KRAS遺伝子及び/またはBRAF遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)の塩基配列において変異部位を含む連続する5から2000bp、5から1000bp、例えば、10から1500bp、10から1000bp、10から500bp、20から200bp、または50から200bpの遺伝子断片の3’末端及び5’末端の連続する5から100bp、5から50bp、5から30bp、または5から25bpの部位にハイブリダイズ可能な(例えば、相補的な)塩基配列を有するプライマー対などからなる群より選択される1種以上であってもよく、これらは蛍光物質、発色物質などの標識物質で標識されるか、または標識されないものであってもよい。前記‘ハイブリダイズ可能’であるとは、前記遺伝子部位の塩基配列と80%以上、例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%の配列相補性を有することによって相補的結合が可能であることを意味し得る。前記段階(i)は、前記生物試料に前記変異を検出可能な物質を処理(添加)して複合体を形成させる段階であってもよい。
前記段階(ii)で、前記反応物は、段階(i)で得られたKRAS遺伝子及びBRAF遺伝子からなる群より選択された1種以上と、検出可能な物質とがハイブリダイズされて生成された複合体(complex)であってもよく、前記変異を検出する段階は、前記生成された複合体の存在有無を検出するか、前記複合体に接合された標識物質を検出するか、または前記複合体を試料から分離した後、これからKRAS遺伝子及び/もしくはBRAF遺伝子、若しくはそれらの断片を分離して塩基配列を分析する段階を含んでもよい。
一方、抗c−Met抗体のようなc−Met阻害剤を使用する治療の特性上、適用される癌細胞のc−Met発現量が一定水準以上であることが、前記c−Met阻害剤が効能を発揮できる前提になり得る。
したがって、前記c−Met阻害剤効能予測、患者選別、または効能検定のための組成物及び/またはキットは、IL−8、b−IG−H3、MIF、KRAS/BRAF、及びこれらの遺伝子からなる群より選択された1種以上と、相互作用する物質とに加えて、c−Met及びc−Met遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質を追加的に含むことができる。前記c−Met及びc−Met遺伝子からなる群より選択された1種以上と相互作用する物質は、c−Met及び/またはc−Met遺伝子と特異的に反応する(または特異的に結合する)低分子化合物、蛋白質、ペプチド、核酸(ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドなど)、などからなる群より選択された1種以上であってもよい。例えば、前記c−Met及び/またはc−Met遺伝子と相互作用する物質は、c−Metに特異的に結合する低分子化合物、抗体及びアプタマー、及びc−Met遺伝子の全部または一部(例えば、約5から約100bp、約5から50bp、約5から約30bp、または約5から約25bp)に結合する核酸(例えば、プライマー、プローブ、アプタマーなど)からなる群より選択された1種以上であってもよく、これらは、選択的に、通常の標識、例えば蛍光物質、発色物質などで標識されたものであってもよい。
また、前記c−Met阻害剤の効能予測方法(もしくは効能予測に情報を提供する方法)またはc−Met阻害剤の適用対象選別方法(もしくは対象選別に情報を提供する方法)は、患者から得られた生物試料のc−Met蛋白質水準またはこれをコードする遺伝子(例えば、全長DNA、cDNA、mRNAなど)の水準を測定する段階を追加的に含むことができる。その具体的な測定段階は、前述の通りである。例えば、通常のウエスタンブロッティング方法を用いる場合は、前記生物試料(例えば、癌細胞または癌組織)から得られた所定量(例えば、10μg)の全体細胞蛋白質をSDS_PAGEゲルにロードし、メンブレンに転写する。その後、抗c−Met抗体とメンブレンとを反応させた後、ECL(enhanced chemiluminescence)反応を通じて一定時間(例えば、30秒程度)暴露する。この際、バンド(band)が検出される場合は、c−Met阻害剤を使用する治療が効能を示すことができる前提要件が満たされたと判断することができる。他の実施形態では、癌組織を用いた組織切片(Tissue section)(FFPE(Formalin−fixed paraffin−embedded tissues、ホルマリン固定パラフィン包埋組織)など)用いた免疫組織化学染色(IHC、Immunohistochemistry)により判定した場合において、c−Met水準が+2以上のとき、c−Met阻害剤を使用する治療が効能を示すことができる前提要件が満たされたと言える。また他の実施形態では、マイクロアレイ(例えば、アフィメトリクスアレイ、Affymetrix array、Affymetrix GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 array; プライマーセット“203510_at”を使用)を使用し、製造者の説明書によってmRNA水準を測定した結果、生物試料内c−MetのmRNA水準が12,000以上、13,000以上または14,000以上である場合、c−Met阻害剤を使用する治療が効能を示すことができる前提要件が満たされたと判断できる。このようなc−Metの高発現特性を有する癌細胞は、主に肺癌、乳癌、脳癌、胃癌、肝癌、腎癌などの癌細胞であり得るが、他の種類の癌細胞でも患者個々人の特性によってc−Met発現量が高い場合もc−Met阻害剤を用いる治療対象に含まれる。
他の実施形態で、前記c−Met阻害剤の効能予測方法(もしくは効能予測に情報を提供する方法)またはc−Met阻害剤の適用対象選別方法(もしくは対象選別に情報を提供する方法)で使用された生物試料は、c−Met発現量が高い組織、細胞、または体液(血液、血清、小便、唾液など)であってもよい。例えば、アフィメトリクスアレイ(Affymetrix array、Affymetrix GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 array; プライマーセット“203510_at”を使用)を用いた測定結果、c−Met水準が12,000以上、13,000以上または14,000以上である組織、細胞、または体液(血液、血清、小便、唾液など)であってもよい。
他の実施形態では、前記選別されたc−Met阻害剤の適用対象にc−Met阻害剤を投与する段階を含む、c−Met抑制方法を提供する。
他の実施形態では、前記選別されたc−Met阻害剤の適用対象にc−Met阻害剤を投与する段階を含む、癌の予防及び/または治療方法を提供する。
前記c−Met抑制方法または癌の予防及び/または治療方法は、前記抗c−Met抗体適用対象を選別する段階を、前記投与段階以前に追加的に含むことができ、その具体的方法及び段階は前述の通りである。前記c−Met阻害剤は抗c−Met抗体であってもよい。
より具体的には、前記c−Met抑制方法または癌の予防及び/または治療方法は、c−Met阻害剤の適用対象を確認する段階;ならびに前記c−Met阻害剤の適用対象にc−Met阻害剤の薬学的有効量を投与する段階を含むことができる。
他の実施形態では、前記c−Met抑制方法または癌の予防及び/または治療方法は、生物試料のKRAS遺伝子及びBRAF遺伝子の変異有無を検出してc−Met阻害剤の適用対象を選別する段階;ならびに前記選別されたc−Met阻害剤の適用対象にc−Met阻害剤の薬学的有効量を投与する段階を含むことができる。
本明細書では、前記c−Met阻害剤の適用対象は、c−Met阻害剤を使用する治療法を適用するのに適した患者を意味するものであって、全ての哺乳類、例えば、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどのげっ歯類であってもよく、例えば、癌患者であってもよい。前記生物試料は、患者自身(例えば、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどのげっ歯類などを含む哺乳類)、または前記患者から分離されるもしくは人工的に培養された細胞、組織、体液(例えば、血液、血清、小便、唾液など)などであってもよく、例えば、血液または血清であってもよい。
本明細書において、「c−Met阻害剤」という用語は、c−Metの活性および/もしくは発現を阻害し、またはc−Metのリガンドを阻害することによりc−Metシグナル伝達を遮断することができる薬剤を意味する。一実施形態では、前記c−Met阻害剤は、抗c−Met抗体およびその抗原結合断片;ならびにクリゾチニブ(crizotinib;PF−02341066;3−((R)−1−2,6−ジクロロ−3−フルオロフェニル)エトキシ)−5−1−(ピペリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)ピリジン−2−アミン)、カボザンチニブ(cabozantinib;XL−184;N−(4−(6,7−ジメトキシキノリン−4−イルオキシ)フェニル)−N−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド)、フォレチニブ(foretinib;N−(3−フルオロ−4−(6−メトキシ−7−(3−モルホリノプロポキシ)キノリン−4−イルオキシ)フェニル)−N−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド)、PHA−665752((R,Z)−5−(2,6−ジクロロベンジルスルホニル)−3−((3,5−ジメチル−4−(2−(ピロリジン−1−イルメチル)ピロリジン−1−カルボニル)−1H−ピロール−2−イル)メチレン)インドリン−2−オン)、SU11274((Z)−N−(3−クロロフェニル)−3−((3,5−ジメチル−4−(1−メチルピペラジン−4−カルボニル)−1H−ピロール−2−イル)メチレン)−N−メチル−2−オキソインドリン−5−スルホンアミド)、SGX−523(6−(6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イルチオ)キノリン)、PF−04217903(2−(4−(3−(キノリン−6−イルメチル)−3H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピラジン−5−イル)−1H−ピラゾール−1−イル)エタノール)、EMD1214063(ベンゾニトリル、3−[1,6−ジヒドロ−1−[[3−[5−[(1−メチル−4−ピペリジニル)メトキシ]−2−ピリミジニル]フェニル]メチル]−6−オキソ−3−ピリダジニル])、ゴルバチニブ(Golvatinib;N−(2−フルオロ−4−((2−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ピペリジン−1−カルボキシアミド)ピリジン−4−イル)オキシ)フェニル)−N−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド)、INCB28060(2−フルオロ−N−メチル−4−(7−(キノリン−6−イルメチル)イミダゾ[1,2−b][1,2,4]トリアジン−2−イル)ベンズアミド)、MK−2461(N−(2R)−1,4−ジオキサン−2−イルメチル)−N−メチル−N’−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−5−オキソ−5H−ベンゾ[4,5]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−7−イル]スルファミド)、チバンチニブ(tivantinib;ARQ197;(3R,4R)−3−(5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,2,1−ij]キノリン−1−イル)−4−(1H−インドール−3−イル)ピロリジン−2,5−ジオン)、NVP−BVU972(6−[[6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル]メチル]キノリン)、AMG458({1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−N−[5−(7−メトキシキノリン−4−イルオキシ)ピリジン−2−イル]−5−メチル−3−オキソ−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド})、BMS794833(N−(4−((2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イル)オキシ)−3−フルオロフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド)、BMS777607(N−[4−[(2−アミノ−3−クロロピリジン−4−イル)オキシ]−3−フルオロフェニル]−4−エトキシ−1−(4−フルオロフェニル)−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド)、MGCD−265(N−(3−フルオロ−4−(2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)チエノ[3,2−b]ピリジン−7−イルオキシ)フェニルカルバモチオイル)−2−フェニルアセトアミド)、AMG−208(7−メトキシ−4−[(6−フェニル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)メトキシ]キノリン)、BMS−754807((2S)−1−[4−[(5−シクロプロピル−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]ピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−2−イル]−N−(6−フルオロ−3−ピリジニル)−2−メチル−2−ピロリジンカルボキサミド)、JNJ−38877605(6−[ジフルオロ[6−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル]メチル]キノリン)、およびこれらの薬学的に許容可能な塩などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
前記抗c−Met抗体は、c−Metを抗原に認識及び/またはc−Metに特異的に結合する全ての抗体またはそれらの抗原結合断片であってもよい。前記抗原結合断片は、抗c−Met抗体のscFv、(scFv)2、scFv−Fc、Fab、Fab’及びF(ab’)2からなる群より選択されるものであってもよい。例えば、前記抗c−Met抗体は、c−Metに特異的に結合して細胞内移動(internalization)及び分解(degradation)を誘導する全ての抗体またはそれらの抗原結合断片であってもよい。前記抗c−Met抗体は、c−Metの特定部位、例えば、SEMAドメイン内の特定部位をエピトープとして認識するものであってもよい。
本明細書では、別途の言及がない限り、抗c−Met抗体としては、完全な形態の抗c−Met抗体(例えば、IgG形態)だけでなく、前記抗体の抗原結合断片も使用される。
前記「c−Met蛋白質」は、肝細胞成長因子と結合する受容体チロシンキナーゼを意味する。前記c−Met蛋白質は、全ての種に由来するものであってもよく、例えば、ヒトc−Met(例えば、NP_000236.2)、サルc−Met(例えば、Macaca mulatta、NP_001162100)などのような霊長類由来のもの、またはマウスc−Met(例えば、NP_032617.2)、ラットc−Met(例えば、NP_113705.1)などのようなげっ歯類由来のものなどであってもよい。前記蛋白質は、例えば、GenBank Aceession Number NM_000245.2に提供されたヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチド、またはGenBank Aceession Number NM_000236に提供されたポリペプチド配列によってコードされた蛋白質、またはその細胞外ドメインを含む。受容体チロシンキナーゼc−Metは、例えば、癌発生、癌転移、癌細胞移動、癌細胞浸潤、血管新生などの様々な機序に関与する。
HGF(Hepatocyte growth factor)の受容体であるc−Metは、細胞外部位、膜透過部位、細胞内部位の三つの部分に区分され、細胞外部位は、α−サブユニットとβ−サブユニットとが二硫化ジスルフィド結合によって連結された形態であり、HGF結合ドメインであるSEMAドメイン、PSIドメイン(plexin−semaphorins−integrin homology domain)及びIPTドメイン(immunoglobulin−like fold shared by plexins and transcriptional factors domain)を含む。c−Met蛋白質のSEMAドメインは、配列番号79のアミノ酸配列を有するものであってもよく、c−Metの細胞外部位に存在するドメインであって、HGFが結合する部位に該当する。SEMAドメイン(配列番号79)中の特定部位、つまり、SEMAドメインの106番目から124番目までに該当する配列番号71で示されるアミノ酸配列を有する領域は、SEMAドメイン内のエピトープ中の第2番目と3番目のプロペラ領域間のループ(loop)領域に該当する。この領域は、抗c−Met抗体のエピトープとして作用することができる。
用語「エピトープ(epitope)」は、抗原決定部位(antigenic determinant)であって、抗体によって認知される抗原の一部分を意味すると解釈される。一実施形態によれば、前記エピトープは、c−Met蛋白質のSEMAドメイン(配列番号79)内の連続する5個以上のアミノ酸を含む部位、例えば、c−Met蛋白質のSEMAドメイン(配列番号79)内の106番目から124番目までに該当する配列番号71内に位置する連続する5個から19個のアミノ酸を含むものであってもよい。例えば、前記エピトープは、配列番号71のアミノ酸配列において配列番号73(EEPSQ)を含んで連続する5から19個のアミノ酸からなるものであってもよく、例えば、配列番号71、配列番号72、または配列番号73のアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。
前記配列番号72のアミノ酸配列を有するエピトープは、c−Met蛋白質のSEMAドメイン内の第2番目と3番目のプロペラ領域間のループ部位の中の最も外側に位置した部位に該当し、前記配列番号73のアミノ酸配列を有するエピトープは、一実施形態による抗体または抗原結合断片が最も特異的に結合する部位である。
したがって、抗c−Met抗体は、配列番号配列番号71のアミノ酸配列において、配列番号73(EEPSQ)を含む連続する5から19個のアミノ酸を含むエピトープに特異的に結合するものであってもよく、例えば、配列番号71、配列番号72、または配列番号73のアミノ酸配列を有するエピトープに、特異的に結合する抗体または抗原結合断片であってもよい。
一実施形態によれば、前記抗c−Met抗体は、下記(i)〜(iv)のいずれか1つを含むものであってもよい;
(i)下記CDR−H1〜CDR−H3からなる群より選択された一つ以上の重鎖相補性決定領域、または前記一つ以上の重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変部位; 配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR−H1、 配列番号5のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2のアミノ酸配列内の3番目から10番目までのアミノ酸を含む連続する8から19個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するCDR−H2、 及び配列番号6のアミノ酸配列、配列番号85のアミノ酸配列、または配列番号85のアミノ酸配列内の1番目から6番目までのアミノ酸を含む連続する6から13個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するCDR−H3
(ii)下記CDR−L1〜CDR−L3からなる群より選択された一つ以上の軽鎖相補性決定領域、もしくは前記一つ以上の軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変部位; 配列番号7のアミノ酸配列のアミノ酸配列を有するCDR−L1、 配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR−L2、 及び配列番号9のアミノ酸配列、配列番号15のアミノ酸配列、配列番号86のアミノ酸配列、または配列番号89のアミノ酸配列内の1番目から9番目までのアミノ酸を含む連続する9から17個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するCDR−L3
(iii)前記重鎖相補性決定領域及び軽鎖相補性決定領域の組み合わせ
(iv)前記重鎖可変部位及び軽鎖可変部位の組み合わせ。
前記配列番号4から配列番号9はそれぞれ、下記の一般式Iから一般式VIで示されるアミノ酸配列である:
前記一般式Iにおいて、Xaa1は存在しないかProまたはSerであり、Xaa2はGluまたはAspである。前記一般式IIにおいて、Xaa3はAsnまたはLysであり、Xaa4はAlaまたはValであり、Xaa5はAsnまたはThrである。前記一般式IIIにおいて、Xaa6はSerまたはThrである。前記一般式IVにおいて、Xaa7はHis、Arg、GlnまたはLysであり、Xaa8はSerまたはTrpであり、Xaa9はHisまたはGlnであり、Xaa10はLysまたはAsnである。前記一般式Vにおいて、Xaa11はAlaまたはGlyであり、Xaa12はThrまたはLysであり、Xaa13はSerまたはProである。前記一般式VIにおいて、Xaa14はGly、AlaまたはGlnであり、Xaa15はArg、His、Ser、Ala、GlyまたはLysであり、Xaa16はLeu、Tyr、PheまたはMetである。
一実施形態では、前記CDR−H1は、配列番号1、配列番号22、配列番号23及び配列番号24からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。前記CDR−H2は、配列番号2、配列番号25、及び配列番号26からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。前記CDR−H3は、配列番号3、配列番号27、配列番号28、及び配列番号85からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。
前記CDR−L1は、配列番号10、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、及び配列番号106からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。前記CDR−L2は、配列番号11、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。前記CDR−L3は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号37、配列番号86、及び配列番号89からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。
一実施形態では、前記抗体または抗原結合断片は、配列番号1、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−H1)、配列番号2、配列番号25、及び配列番号26からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−H2)、及び配列番号3、配列番号27、配列番号28、及び配列番号85からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−H3)を含む重鎖可変部位;ならびに配列番号10、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、及び配列番号106からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−L1)、配列番号11、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−L2)、及び配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号37、配列番号86、及び配列番号89からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−L3)を含む軽鎖可変部位を含むものであってもよい。
一実施形態によれば、抗c−Met抗体または抗原結合断片において、前記重鎖可変部位は、配列番号17、配列番号74、配列番号87、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、または配列番号94のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変部位は、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号75、配列番号88、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、または配列番号107のアミノ酸配列を含むものであってもよい。
他の実施形態では、前記抗c−Met抗体またはそれらの抗原結合断片は、オナルツズマブ(Onartuzumab;MetMab)、LY2875358(重鎖:配列番号111; 軽鎖:配列番号112)、リロツムマブ(Rilotumumab;AMG102)、またはそれらの抗原結合断片などであってもよい。
所望の抗原を被免疫動物に免疫させて産生する動物由来抗体は、一般に、治療目的でヒトに投与時、免疫拒絶反応が起こることがある。このような免疫拒絶反応を抑制するために、キメラ抗体(chimeric antibody)が開発された。キメラ抗体は、遺伝子工学的方法を用いて、抗−アイソタイプ(anti−isotype)反応の原因とされる動物由来抗体の不変部位をヒト抗体の不変部位に置換したものである。キメラ抗体は、動物由来抗体に比べて、抗−アイソタイプ反応において相当部分改善されたが、相変わらず動物由来アミノ酸が可変部位に存在していて、潜在的な抗−イディオタイプ(anti−idiotypic)反応に対する副作用を内包している。このような副作用を改善するために開発されたものがヒト化抗体(humanized antibody)である。これは、キメラ抗体の可変部位のうち、抗原の結合に重要な役割を果たすCDR部位をヒト抗体フレームワーク(framework)に移植して製作される。
ヒト化抗体を製作するためのCDRグラフト(grafting)技術において最も重要なのは、動物由来抗体のCDR部位を最もよく受け入れる最適化されたヒト抗体を選定することであり、このために、抗体データベースの活用、結晶構造の分析、分子モデリング技術などが活用される。しかし、最適化されたヒト抗体のフレームワークに動物由来抗体のCDR部位を移植しても、動物由来抗体のフレームワークに位置しながら、抗原結合に影響を与えるアミノ酸が存在する場合があるので、抗原結合力が保存されない場合が相当数存在することから、抗原結合力を復元するための追加的な抗体工学技術の適用は必須と言える。
一実施形態によれば、前記抗体は、マウス由来抗体、マウス−ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト由来抗体であってもよい。前記抗体は、生体から分離されたものであってもよい。
完全な抗体は、2個の全長軽鎖及び2個の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で連結されている。抗体の不変部位(Fc)は、重鎖不変部位(CH)と、軽鎖不変部位(CL)とに分けられ、重鎖不変部位は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、及びエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変部位は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。
用語「重鎖(heavy chain)」は、抗原に特異性を付与するために、十分な可変部位配列を有するアミノ酸配列を含む可変部位ドメインVH、3個の不変部位ドメインCH1、CH2及びCH3、ならびにヒンジ(hinge)を含む全長重鎖及びその断片を全て含む意味として解釈される。また、用語「軽鎖(light chain)」は抗原に特異性を付与するための十分な可変部位配列を有するアミノ酸配列を含む可変部位ドメインVL、及び不変部位ドメインCLを含む全長軽鎖及びその断片を全て含む意味として解釈される。
用語「CDR(complementarity determining region)」は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の高可変部位(hypervariable region)のアミノ酸配列(相補性決定領域)を意味する。重鎖及び軽鎖はそれぞれ、3個のCDRを含むことができる(CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、及びCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3)。前記CDRは、抗体が抗原またはエピトープに結合するにおいて主な接触残基を提供することができる。一方、本明細書において、用語「特異的に結合」または「特異的に認識」は、当業者に通常公知されている意味と同一なものであって、抗原及び抗体が特異的に相互作用して免疫学的反応を行なうことを意味する。
用語「抗原結合断片」は、免疫グロブリン全体構造に対するそれの断片で、抗原が結合可能な部分を含むポリペプチドの一部を意味する。一実施形態では、前記抗原結合断片は、scFv、(scFv)2、Fab、Fab’またはF(ab’)2であってもよいが、これに限定されない。前記抗原結合断片のうち、Fabは、軽鎖及び重鎖の可変部位と、軽鎖の不変部位、及び重鎖の1番目の不変部位(CH1)を有する構造で、1個の抗原結合部位を有する。
Fab’は、重鎖CH1ドメインのC−末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点からFabと差がある。
F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を成しながら生成される。Fvは、重鎖可変部位及び軽鎖可変部位だけを有している最小の抗体片で、Fv断片を生成する組み換え技術は当業界に広く公知されている。
二重鎖Fv(two−chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変部位と軽鎖可変部位とが連結されており、単鎖Fv(single−chain Fv)は、一般に、ペプチドリンカーを通じて重鎖の可変部位と単鎖の可変部位とが共有結合で連結されるか、またはC−末端で直接連結されていて、二重鎖Fvと同様に、ダイマーのような構造を成すことができる。前記ペプチドリンカーは、1から100個または2から50個の任意のアミノ酸からなるポリペプチドであってもよく、その含まれているアミノ酸の種類は制限がない。
前記抗原結合断片は、蛋白質加水分解酵素を用いて得られ(例えば、全体抗体をパパインで制限切断すればFabが得られ、ペプシンで切断すればF(ab’)2断片が得られる)、遺伝子組み換え技術によって製作することができる。
用語「ヒンジ領域(hinge region)」は、抗体の重鎖に含まれている領域であって、CH1及びCH2領域の間に存在し、抗体内の抗原結合部位の柔軟性(flexibility)を提供する機能を果たす領域を意味する。
非ヒト動物由来抗体がキメラ化(chimerization)過程を経ると、非ヒト動物由来のIgG1ヒンジはヒトIgG1ヒンジに置換されるが、非ヒト動物由来のIgG1ヒンジはヒトIgG1ヒンジに比べてその長さが短く、二つの重鎖の間の二硫化結合(disulfide bond)が3個から2個に減少し、ヒンジの硬直性(rigidity)が互いに相異なる効果を示す。したがって、ヒンジ領域の変形(modification)はヒト化抗体の抗原結合効率性を増加させることができる。前記ヒンジ領域のアミノ酸配列を変形させるためのアミノ酸の欠失、付加または置換方法は当業者によく知られている。
ここで、本発明の一実施形態では、抗原結合効率性を増進させるために、前記抗c−Met抗体または抗原結合断片は一つ以上のアミノ酸が欠失、付加または置換されてアミノ酸配列が改変されたヒンジ領域を含むものであってもよい。例えば、前記抗体は、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、または配列番号104のアミノ酸配列を有するヒンジ領域、または配列番号105のアミノ酸配列を有するヒンジ領域(非変形ヒトヒンジ領域)を含むものであってもよい。より具体的には、前記ヒンジ領域は、配列番号100または配列番号101のアミノ酸配列を有するものであってもよい。
一実施形態において、抗c−Met抗体は、受託番号KCLRF−BP−00220のハイブリドーマ細胞から産生される、c−Met蛋白質の細胞外部位(extracellular region)に特異的に結合するモノクローナル抗体であってもよい(大韓民国公開特許第2011−0047698号公報参照;前記文献は本明細書に参照として含まれる)。前記の抗c−Met抗体は、大韓民国公開特許第2011−0047698号公報に定義された抗体を全て含むことができる。
前記抗c−Met抗体の前記定義されたCDR部位または軽鎖可変部位と重鎖可変部位を除いた部位、例えば、軽鎖不変部位と重鎖不変部位は、全てのサブタイプの免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、またはIgMなど)に由来したものであってもよい。
一実施形態によれば、前記抗c−Met抗体は、配列番号62のアミノ酸配列(このうち、1番目から17番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)、配列番号62の18番目から462番目までのアミノ酸配列、配列番号64のアミノ酸配列(このうち、1番目から17番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)、または配列番号64の18番目から461番目までのアミノ酸配列、配列番号66のアミノ酸配列(このうち、1番目から17番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)、及び配列番号66の18番目から460番目までのアミノ酸配列からなる群より選択されたアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに配列番号68のアミノ酸配列(このうち、1番目から20番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)、配列番号68の21番目から240番目までのアミノ酸配列、配列番号70のアミノ酸配列(このうち、1番目から20番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)、配列番号70の21番目から240番目までのアミノ酸配列、及び配列番号108のアミノ酸配列からなる群より選択されたアミノ酸配列を含む軽鎖を含むものであってもよい。
例えば、前記抗−c−Met抗体は、配列番号62のアミノ酸配列または配列番号62の18番目から462番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;配列番号64のアミノ酸配列または配列番号64の18番目から461番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66の18番目から460番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;配列番号62のアミノ酸配列または配列番号62の18番目から462番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号70のアミノ酸配列または配列番号70の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;配列番号64のアミノ酸配列または配列番号64の18番目から461番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号70のアミノ酸配列または配列番号70の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66の18番目から460番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号70または配列番号70の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;配列番号62のアミノ酸配列または配列番号62の18番目から462番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;配列番号64のアミノ酸配列または配列番号64の18番目から461番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;ならびに配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66の18番目から460番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体からなる群より選択されたものであってもよい。
一方、前記配列番号70のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、ヒトのカッパ不変部位からなる軽鎖であり、配列番号68のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、前記配列番号70のアミノ酸配列を有するポリペプチドにおいて36番(kabat numberingに従う、配列番号68内の62番目のアミノ酸の位置)のヒスチジン(His)がチロシン(Tyr)に置換された形態のポリペプチドである。前記置換によって、一実施形態による抗体の産生量が増加され得る。また、前記配列番号108のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、前記配列番号68のアミノ酸配列中の1番目から20番目までのシグナルペプチドを除いた21番目から240番目までのアミノ酸配列を有するポリペプチドにおいてkabat numberingによる27e位置(kabat numberingに従う、配列番号108内の32番目の位置;CDR−L1の内部)のセリン(Ser)がトリプトファン(Trp)に置換されたもので、前記置換によって、一実施形態による抗体の活性(例えば、c−Metに対する結合親和性、c−Metの分解活性、及びAktのリン酸化抑制活性など)がより増進できる。
一実施形態においては、前記抗c−Met抗体は、配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66の18番目から460番目までのアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体であってもよい。
前記c−Met阻害剤は、薬学的に許容可能な担体と共に適用(投与)できる。前記薬学的に許容可能な担体は、薬物の製剤化に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。前記c−Met阻害剤は、前記成分以外に、医薬組成物の製造に通常使用される希釈剤、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などからなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができる。
前記c−Met阻害剤は、経口または非経口で投与することができる。非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、または直腸内投与などで投与することができる。経口投与時、蛋白質またはペプチドは消化されるため、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護されるように剤形化されなければならない。また、前記c−Met阻害剤は、活性物質が標的細胞に移動可能な任意の装置によって投与されてもよい。
本明細書において、「薬学的有効量」は、薬物が薬学的に有意な効果を奏する量を意味する。1回投与のためのc−Met阻害剤の薬学的有効量は、製剤化方法、投与方式、患者の年令、体重、性別、病的状態、食物、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様に処方できる。例えば、1回投与のための前記c−Met阻害剤の薬学的有効量は、0.001から100mg/kg、または0.02から10mg/kgの範囲であってもよいが、これに制限されるものではない。前記1回投与のための薬学的有効量は、単位用量の形態で一つの製剤に製剤化されるか、適切に分量して製剤化されるか、多用量容器内に入れて製造されてもよい。
本発明で、c−Met阻害剤は、癌の予防及び/または治療に使用できる。前記癌は、c−Metの過発現及び/または(異常な)活性化に関連するものであってもよく、固形癌または血液癌であってもよい。例えば、前記癌は、これに制限されないが、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、皮膚癌、皮膚または眼球内黒色腫、直膓癌、肛門付近癌、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、慢性または急性白血病、リンパ球リンパ腫、肝細胞癌、胃腸癌、胃癌、すい臓癌、膠芽腫、頸部癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、頭頸部癌、脳癌、骨肉腫などからなる群より選択された1種以上であってもよい。前記癌はc−Met阻害剤(例えば、抗c−Met抗体)抵抗性癌であってもよい。前記癌は原発性癌または転移性癌であってもよい。
前記癌の予防及び/または治療効果は、癌細胞の成長を抑制する効果だけでなく、移動(migration)、浸潤(invasion)、転移(metastasis)などを抑制して、これによる癌の悪化を抑制する効果を含む。また、原発性癌だけでなく、転移性癌に対する効果を含む。
以下、本発明を実施例及び試験例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例及び試験例は、本発明を例示するためのもので、本発明を制限すると解釈されてはならない。
(参考例1:抗c−Met抗体の作製)
1.1.c−Metに対するマウス抗体‘AbF46’の産生
1.1.1.マウスの免疫化
ハイブリドーマ細胞株の開発に必要な免疫化されたマウスを得るために、5匹のマウスに、1匹当り100μgのヒトのc−Met/Fc融合蛋白質(R&D Systems社)と、同量の完全フロイントアジュバントを混合して、4〜6週齢のBALB/cマウス(日本SLC,Inc.)の腹腔内に注射した。2週後に、前記と同様の方法で、前記抗原として使用されたヒトのc−Met/Fc融合蛋白質を、前記注射した量の半分である50μgを、同量の不完全フロイントアジュバントと混合して、マウスの腹腔内に注射した。1週後、最後のブースティング(boosting)が行われ、3日後に、前記マウスの尾から採血して血清を得た。その後、血液を1/1000倍にPBSで希釈して、下記のELISA法でc−Metを認知する抗体の力価が増加することを確認した。前記結果で抗体の量が十分に得られるマウスを選別し、下記の細胞融合過程を行った。
1.1.2.細胞融合及びハイブリドーマの製造
細胞融合実験3日前に、50μgのヒトc−Met/Fc融合蛋白質と等量のPBSとの混合物を、BALB/cマウス(日本SLC,Inc.)の腹腔内に注射して免疫した。免疫化されたマウスを麻酔した後、体の左側に位置した脾臓を摘出した。摘出した脾臓をメッシュで粉砕して細胞を分離し、培養培地(DMEM、GIBCO、Invitrogen社)と混合して、脾臓細胞懸濁液を調製した。前記懸濁液を遠心分離して細胞層を回収した。前記得られた脾臓細胞1×108個と、骨髄腫細胞(Sp2/0)1×108個とを混合した後、遠心分離して細胞を沈殿させた。前記遠心分離された沈殿物を徐々に分散させ、培養培地(DMEM)に入っている45%(w/v)ポリエチレングリコール(PEG)(1ml)によって37℃で1分間処理した後、培養培地(DMEM)1mlを添加した。以後、培養培地(DMEM)10mlを10分間かけて添加し、37℃のウォーターバスで5分間放置した。その後、培養培地(DMEM)にて50mlに合わせて、再び遠心分離した。細胞沈殿物を選択培地(HAT培地)で1〜2×105/ml程度に再懸濁させ、96ウェル(well)プレートに0.1mlずつ分注した後、37℃の二酸化炭素培養器で培養して、ハイブリドーマ細胞群を作製した。
1.1.3.c−Met蛋白質に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞の選別
前記参考例1.1.2で製造されたハイブリドーマ細胞群のうち、c−Met蛋白質にのみ特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選別するために、ヒトのc−Met/Fc融合蛋白質とヒトのFc蛋白質を抗原として用いたELISA分析方法によってスクリーニングした。
マイクロタイタープレートに、ヒトのc−Met/Fc融合蛋白質を、1ウェル当りそれぞれ50μl(2μg/ml)ずつ加えてプレート表面に付着させ、反応しない抗原は洗浄して除去した。c−MetでないFcに結合される抗体を選別して除外させるために、ヒトのFc蛋白質を、前記と同様の方法でプレート表面に付着させた。
前記参考例1.1.2で得られたハイブリドーマ細胞の培養液を、前記用意されたそれぞれのウェルに50μlずつ加えて1時間反応させた後、リン酸緩衝溶液−ツイン20(TBST)溶液で十分に洗浄し、反応しない培養液を除去した。これに、ヤギ抗−マウスIgG−西洋ワサビペルオキシダーゼ(goat anti−mouse IgG−HRP)を加えて、1時間、室温で反応させた後、TBST溶液で十分に洗浄した。その次に、ペルオキシダーゼの基質溶液(OPD)を加えて反応させ、その反応の程度は、ELISAリーダー(ELISA Reader)で450nmにおける吸光度を測定して確認した。
前記のような反応程度の確認によって、ヒトのFcには結合せず、ヒトのc−Met蛋白質にのみ特異的に高い結合力を有する抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株を繰り返し選別した。繰り返し選別によって得られたハイブリドーマ細胞株を制限稀釈して、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株1個のクローンを最終的に得た。最終選別されたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、2009年10月6日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である、大韓民国、ソウル、鍾路区、蓮建洞所在の韓国細胞株研究財団に寄託し、受託番号KCLRF−BP−00220が付与された(韓国公開特許第2011−0047698号公報参照)。
1.1.4.モノクローナル抗体の産生及び精製
前記参考例1.1.3で得られたハイブリドーマ細胞を無血清培地で培養し、培養液からモノクローナル抗体を産生精製した。
まず、10%(v/v)FBSが含まれている培養培地(DMEM)50mlで培養された前記ハイブリドーマ細胞を遠心分離し、細胞沈殿物を20mlのPBSで2回以上洗浄し、FBSが除去された状態で、前記細胞沈殿物を培養培地(DMEM)50mlに再懸濁させた後、3日間、37℃の二酸化炭素培養器で培養した。
以後、遠心分離して、抗体を産生する細胞を除去し、抗体の分泌した培養液を分離して、4℃に保管するか、直ちに集めて、抗体の分離精製に使用した。親和性カラム(Protein G agarose column;Pharmacia社、USA)を装着したAKTA精製機器(GE Healthcare社)を用いて、前記用意された培養液50ml〜300mlから抗体を純粋精製した。その後、蛋白質凝集用フィルタ(Amicon)を用いてPBSで上層液を置換し、精製された抗体を保管し、後の実施例に使用した。
1.2.c−Metに対するキメラ抗体chAbF46の作製
一般に、マウス抗体は、治療目的でヒトに注入された時、免疫拒絶反応(immunogenicity)を示す可能性が高いため、これを解決するために、前記参考例1.1.で作製されたマウス抗体AbF46から、抗原の結合に関連する可変部位(variable region)を除いた不変部位(constant region)を、ヒトIgG1抗体の配列に置換するキメラ抗体chAbF46を作製した。
重鎖に該当するヌクレオチド配列は‘EcoRI−signal sequence−VH−NheI−CH−TGA−XhoI’(配列番号38)で、軽鎖に該当するヌクレオチド配列は‘EcoRI−signal sequence−VL−BsiWI−CL−TGA−XhoI’(配列番号39)から構成されるようにそれぞれデザインして遺伝子を合成した。以後、Invitrogen社のOptiCHOTM Antibody Express Kit(Cat no.12762−019)に含まれているpOptiVECTM−TOPO TA Cloning Kitに前記重鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(配列番号38)を、pcDNATM3.3−TOPO TA Cloning Kit(Cat no.8300−01)に前記軽鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(配列番号39)を、それぞれEcoRI(NEB社、R0101S)とXhoI(NEB社、R0146S)制限酵素を用いてクローニングすることにより、キメラ抗体の発現のため重鎖を含むベクター及び軽鎖を含むベクターをそれぞれ構築した。
前記構築されたベクターはそれぞれ、一過性発現はFreestyleTM MAX293Expression System(invitrogen社)を用いて行なわれ、Qiagen Maxiprep kit(Cat no.12662)を用いて回収された。使用された細胞株は293F細胞であり、FreeStyleTM293Expression Mediumを培地として用いて浮遊培養方式で培養された。一過性発現1日前に細胞を5×105cells/mlの濃度で用意した後、24時間経過後、細胞数が1×106cells/mlとなった時、一過性発現を行なった。FreestyleTM MAX reagent(invitrogen社)を用いたliposomal reagent法で形質導入(transfection)を行った。すなわち、15mlのチューブに重鎖DNA:軽鎖DNA=1:1の割合でDNAを用意してOptiProTM SFM(invtrogen社)2mlと混合し(A)、他の15mlのチューブにFreestyleTM MAX reagent100μlとOptiProTM SFM2mlを混合(B)した。その後、(A)と(B)とを混合して15分間インキュベートした後、1日前に用意した細胞に混合液を徐々に入れ混ぜた。形質導入完了後、37℃、湿度80%、8%CO2、130rpmの培養器で5日間培養した。
以後、10%(v/v)FBSが添加されたDMEM培地で、37℃、5%CO2の条件下で5時間培養した後、FBSが添加されていないDMEM培地で、48時間、37℃、5%CO2の条件下で培養した。
前記培養された細胞を遠心分離し、上清をそれぞれ100ml取って、AKTA Prime(GE healthcare社)を用いて精製した。AKTA PrimeにProtein Aカラム(GE healthcare社、17−0405−03)を設け、培養液を5ml/minの流速で流した後、IgG elution buffer(溶出バッファー)(Thermo Scientific社、21004)で溶出させた。得られた溶出物をPBSにバッファー交換し、最終的にキメラ抗体AbF46(以下、chAbF46と名づける)を精製した。
1.3.キメラ抗体chAbF46からヒト化抗体huAbF46の作製
1.3.1.重鎖のヒト化(Heavy chain humanization)
H1−heavy及びH3−heavy2種のデザインのために、まず、Ig Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を通じて、前記参考例1.2で精製されたマウス抗体AbF46のVH遺伝子と最も相同性が高いヒトの生殖腺(germline)遺伝子を分析した。その結果、VH3−71がアミノ酸レベルで83%の相同性を有することを確認し、マウス抗体AbF46のCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3をKabat numberingで定義し、マウス抗体AbF46のCDR部分がVH3−71のフレームワークに導入されるようにデザインした。この時、30番(S→T)、48番(V→L)、73番(D→N)、78番(T→L)のアミノ酸は、元々、マウスAbF46抗体のアミノ酸配列に逆変異させた。以後、H1は、追加的に83番(R→K)と84番(A→T)のアミノ酸に突然変異を与え、最終的にH1−heavy(配列番号40)とH3−heavy(配列番号41)を構築した。
H4−heavyのデザインのために、ヒト抗体のフレームワーク配列を調べた結果、AbF46抗体のマウスのフレームワーク配列と配列が非常に類似すると同時に、従来の最も安定的と知られているVH3サブタイプを用いて、Kabat numberingで定義されたマウス抗体AbF46のCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3を導入した。これにより、H4−heavy(配列番号42)を構築した。
1.3.2.軽鎖のヒト化(Light chain humanization)
H1−light(配列番号43)及びH2−light(配列番号44)の2種のデザインのために、Ig Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を通じて、マウス抗体AbF46のVL遺伝子と最も相同性が高いヒト生殖腺遺伝子を分析した。その結果、VK4−1がアミノ酸レベルで75%の相同性を有することを確認し、マウス抗体AbF46のCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3をKabat numberingで定義し、マウス抗体AbF46のCDR部分がVK4−1のフレームワークに導入されるようにデザインした。この時、H1−lightは、36番(Y→H)、46番(L→M)、49番(Y→I)の3個のアミノ酸を逆変異させ、H2−lightは、49番のアミノ酸(Y→I)1個のみを逆変異させて構築した。
H3−light(配列番号45)のデザインのために、Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を通じて、マウス抗体AbF46のVL遺伝子と最も相同性が高いヒト生殖腺遺伝子を分析した結果のうち、前記VK4−1のほか、VK2−40を選定した。マウス抗体AbF46VLとVK2−40は、アミノ酸レベルで61%の相同性を有することを確認し、マウス抗体AbF46のCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3をKabat numberingで定義し、マウス抗体AbF46のCDR部分がVK4−1のフレームワークに導入されるようにデザインした。この時、H3−lightは、36番(Y→H)、46番(L→M)、49番(Y→I)の3個のアミノ酸を逆変異させて構築した。
H4−light(配列番号46)のデザインのために、ヒト抗体のフレームワーク配列を調べた結果、従来の最も安定的と知られているVk1サブタイプを用いて、Kabat numberingで定義されたマウス抗体AbF46のCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3を導入した。この時、H4−lightは、36番(Y→H)、46番(L→M)、49番(Y→I)の3個のアミノ酸を追加的に逆変異させて構築した。
以後、Invitrogen社のOptiCHOTM Antibody Express Kit(Cat no.12762−019)に含まれているpOptiVECTM−TOPO TA Cloning Kitに前記重鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(H1−heavy;配列番号47、H3−heavy;配列番号48、H4−heavy;配列番号49)を、pcDNATM3.3−TOPO TA Cloning Kitに前記軽鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(H1−light;配列番号50、H2−light;配列番号51、H3−light;配列番号52、H4−light;配列番号53)を、それぞれEcoRI(NEB社、R0101S)とXhoI(NEB社、R0146S)制限酵素を用いて、クローニングすることにより、ヒト化抗体の発現のためのベクターを構築した。
前記構築されたベクターはそれぞれ、一過性発現はFreestyleTM MAX293Expression System(invitrogen社)を用いて行なわれ、Qiagen Maxiprep kit(Cat no.12662)を用いて回収された。使用された細胞株は293F細胞であり、FreeStyleTM293Expression Mediumを培地として用いて浮遊培養方式で培養された。一過性発現1日前の細胞を5×105cells/mlの濃度で用意した後、24時間経過後、細胞数が1×106cells/mlとなった時、一過性発現を行なった。FreestyleTM MAX reagent(invitrogen社)を用いたliposomal reagent法で形質導入を行いった。すなわち、15mlのチューブに重鎖DNA:軽鎖DNA=1:1の割合でDNAを用意してOptiProTM SFM(invtrogen社)2mlと混合し(A)、他の15mlのチューブにFreestyleTM MAX reagent100μlとOptiProTM SFM2mlを混合(B)した後、(A)と(B)とを混合して15分間インキュベートした後、1日前に用意した細胞に混合液を徐々に入れ混ぜた。形質導入完了後、37℃、湿度80%、8%CO2、130rpmの培養器で5日間培養した。
前記培養された細胞を遠心分離し、上清各100mlを取って、AKTA Prime(GE healthcare社)を用いて精製した。AKTA PrimeにProtein Aカラム(GE healthcare社、17−0405−03)を設け、培養液を5ml/minの流速で流した後、IgG elution buffer(溶出バッファー)(Thermo Scientific社、21004)で溶出した。これをPBSにバッファー交換し、最終的にヒト化抗体AbF46(以下、huAbF46と名づける)を精製した。一方、後の実施例で使用したヒト化抗体huAbF46の重鎖、軽鎖の組み合わせは、H4−heavy(配列番号42)及びH4−light(配列番号46)である。
1.4.huAbF46抗体のscFvライブラリーの作製
huAbF46抗体の重鎖可変部位及び軽鎖可変部位を用いてhuAbF46抗体のscFvを作製するための遺伝子をデザインした。それぞれの重鎖可変部位及び軽鎖可変部位を‘VH−リンカー−VL’の形態となるようにし、前記リンカーは‘GLGGLGGGGSGGGGSGGSSGVGS’(配列番号54)のアミノ酸配列を有するようにデザインした。このようにデザインされたhuAbF46抗体のscFvをコードするポリヌクレオチド(配列番号55)をバイオニア社に依頼して合成し、これを発現させるためのベクターを配列番号56に示した。
以後、前記ベクターから発現した結果物を分析し、c−Metに特異的な結合力を示すことを確認した。
1.5.親和性成熟(affinity maturation)のためのライブラリー遺伝子の作製
1.5.1.標的CDRの選定及びプライマーの作製
huAbF46抗体の親和性成熟(affinity maturation)のために6つの相補性決定領域(CDR)を、前記作製されたマウス抗体AbF46から‘Kabat numbering’によって定義した。それぞれのCDRは下記の表1の通りである。
抗体CDRのランダム配列導入のために、次のようにプライマーを作製した。従来のランダム配列導入方式は、突然変異を与えようとする部位に同一の割合の塩基(25%A、25%G、25%C、25%T)が導入されるようにNコドンが用いられる。本実施例では、huAbF46抗体のCDRにランダム塩基を導入するために、各CDRのアミノ酸をコードする3個の野生型ヌクレオチド中の1番目及び2番目のヌクレオチドの85%はそのまま保存し、残りの3個の塩基をそれぞれ5%ずつ導入する方式を採った。また、3番目のヌクレオチドは、同一に(33%G、33%C、33%T)が導入されるようにプライマーをデザインした。
1.5.2.huAbF46抗体のライブラリーの作製及びc−Metに対する結合力の確認
CDRのランダム配列の導入による抗体ライブラリー遺伝子の構築は、前記参考例1.5.1のような方法で作製されたプライマーを用いて行った。鋳型としてhuAbF46抗体のscFvを含むポリヌクレオチドを用いて、2個のPCR切片を作製し、これを重複拡張重合酵素連鎖反応(overlap extension PCR)方法により、所望のCDRのみそれぞれ突然変異したhuAbF46抗体のscFvライブラリー遺伝子を確保して作製された6つのCDRをそれぞれ標的とするライブラリーを構築した。
このように作製されたライブラリーは、野生型と各ライブラリーのc−Metに対する結合力を確認し、それぞれのライブラリーは、野生型に比べてc−Metに対する結合力が大部分低下する傾向を示したが、一部でc−Metに対する結合力が維持される突然変異を確認した。
1.6.作製されたライブラリーから親和性の改善された抗体の選別
前記構築されたライブラリーからc−Metに対するライブラリーの結合力を向上させた後、それぞれの個別クローンからscFvの遺伝子配列を分析した。確保された遺伝子配列はそれぞれ下記の表3の通りであり、これをIgG形態に変換した。下記のクローンのうち、L3−1、L3−2、L3−3、L3−5から産生された4種の抗体を選別して後続の実験を行った。
1.7.選別された抗体のIgGへの変換
選別された4種の抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドは‘EcoRI−signal sequence−VH−NheI−CH−XhoI’(配列番号38)の構造を有するように設計された。huAbF46抗体の重鎖の場合、親和性の成熟の際に抗体のアミノ酸が変更されなかったので、huAbF46抗体の重鎖をそのまま使用した。但し、ヒンジ領域は、ヒトIgG1のヒンジでないU6−HC7ヒンジ(配列番号57)に置換した。軽鎖は‘EcoRI−signal sequence−VL−BsiWI−CL−XhoI’の構造を有するように遺伝子が設計された。親和性の成熟後に選別された、前記4種の抗体の軽鎖可変部位を含んでコードするポリヌクレオチド(配列番号58から配列番号61)をバイオニア社に依頼して合成した。その後、Invitrogen社のOptiCHOTM Antibody Express Kit(Cat no.12762−019)に含まれているpOptiVECTM−TOPO TA Cloning Kitに前記重鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(配列番号38)を、pcDNATM3.3−TOPO TA Cloning Kit(Cat no.8300−01)に前記軽鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(L3−1由来のCDR−L3を含むDNA切片:配列番号58、L3−2由来のCDR−L3を含むDNA切片:配列番号59、L3−3由来のCDR−L3を含むDNA切片:配列番号60、L3−5由来のCDR−L3を含むDNA切片:配列番号61)を、それぞれEcoRI(NEB社、R0101S)とXhoI(NEB社、R0146S)制限酵素を用いて、クローニングすることにより、親和性の成熟した抗体の発現のためのベクターを構築した。
前記構築されたベクターはそれぞれ、一過性発現はFreestyleTM MAX293Expression System(invitrogen社)を用いて行なわれ、Qiagen Maxiprep kit(Cat no.12662)を用いて回収された。使用された細胞株は293F細胞であり、FreeStyleTM293Expression Mediumを培地として用いて浮遊培養方式で培養された。一過性発現1日前の細胞を5×105cells/mlの濃度で用意した後、24時間経過後、細胞数が1×106cells/mlとなった時、一過性発現を行なった。FreestyleTM MAX reagent(invitrogen社)を用いたliposomal reagent法で形質導入を行った。すなわち、15mlのチューブに重鎖DNA:軽鎖DNA=1:1の割合でDNAを用意し、OptiProTM SFM(invtrogen社)2mlと混合し(A)、他の15mlのチューブにFreestyleTM MAX reagent100μlとOptiProTM SFM2mlを混合(B)した後、(A)と(B)とを混合して15分間インキュベートした後、1日前に用意した細胞に混合液を徐々に入れ混ぜた。形質導入完了後、37℃、湿度80%、8%CO2、130rpmの培養器で5日間培養した。
前記培養された細胞を遠心分離して上清各100mlを取って、AKTA Prime(GE healthcare社)を用いて精製した。AKTA PrimeにProtein Aカラム(GE healthcare社、17−0405−03)を設け、培養液を5ml/minの流速で流した後、IgG elution buffer(溶出バッファー)(Thermo Scientific社、21004)で溶出した。これをPBSにバッファー交換し、最終的に親和性の成熟した4種の抗体(以下、huAbF46−H4−A1(L3−1由来)、huAbF46−H4−A2(L3−2由来)、huAbF46−H4−A3(L3−3由来)、及びhuAbF46−H4−A5(L3−5由来)と名づける)を精製した。
1.8.不変部位及び/またはヒンジ領域の置換されたhuAbF46−H4−A1の製造
前記参考例1.7で選別された4種の抗体のうち、c−Metとの結合親和性が最も高く、Aktのリン酸化及びc−Metの分解の程度が最も低いと測定されたhuAbF46−H4−A1を対象に、ヒンジ領域または不変部位及びヒンジ領域の置換された抗体を作製した。
huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、U6−HC7ヒンジ及びヒトのIgG1不変部位からなる重鎖、ならびにhuAbF46−H4−A1の軽鎖可変部位及びヒトのカッパ(kappa)不変部位からなる軽鎖、からなる抗体を、huAbF46−H4−A1(U6−HC7)と名づけた。huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、ヒトのIgG2ヒンジ及びヒトのIgG1不変部位からなる重鎖、ならびにhuAbF46−H4−A1の軽鎖可変部位及びヒトのカッパ不変部位からなる軽鎖、からなる抗体を、huAbF46−H4−A1(IgG2 hinge)と名づけた。huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、ヒトのIgG2ヒンジ及びヒトのIgG2不変部位からなる重鎖、ならびにhuAbF46−H4−A1の軽鎖可変部位及びヒトのカッパ不変部位からなる軽鎖、からなる抗体を、huAbF46−H4−A1(IgG2 Fc)と名づけた。また、一方、前記3種の抗体は、産生量増大のために、ヒトのカッパ不変部位からなる軽鎖の36番のヒスチジン(His)を全てチロシン(Tyr)に置換した。
前記3種の抗体を作製するために、huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、U6−HC7ヒンジ及びヒトのIgG1不変部位からなるポリペプチド(配列番号62)をコードするポリヌクレオチド(配列番号63)、huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、ヒトのIgG2ヒンジ及びヒトのIgG1不変部位からなるポリペプチド(配列番号64)をコードするポリヌクレオチド(配列番号65)、huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、ヒトのIgG2ヒンジ及びヒトのIgG2不変部位からなるポリペプチド(配列番号66)をコードするポリヌクレオチド(配列番号67)、36番のヒスチジンがチロシンに置換されたhuAbF46−H4−A1の軽鎖可変部位及びヒトのカッパ不変部位からなるポリペプチド(配列番号68)をコードするポリヌクレオチド(配列番号69)をバイオニア社に依頼して合成した。以後、Invitrogen社のOptiCHOTM Antibody Express Kit(Cat no.12762−019)に含まれているpOptiVECTM−TOPO TA Cloning Kitに前記重鎖に該当する塩基配列を有するDNA切片を、pcDNATM3.3−TOPO TA Cloning Kit(Cat no.8300−01)に前記軽鎖に該当する塩基配列を有するDNA切片を挿入して、前記抗体の発現のためのベクターを構築した。
前記構築されたベクターはそれぞれ、一過性発現はFreestyleTM MAX293Expression System(invitrogen)を用いて行なわれ、Qiagen Maxiprep kit(Cat no.12662)を用いて回収された。使用された細胞株は293F細胞であり、FreeStyleTM293Expression Mediumを培地として用いて浮遊培養方式で培養された。一過性発現1日前の細胞を5×105cells/mlの濃度で用意した後、24時間経過後、細胞数が1×106cells/mlとなった時、一過性発現を行なった。FreestyleTM MAX reagent(invitrogen社)を用いたliposomal reagent法で形質導入を行った。すなわち、15mlのチューブに重鎖DNA:軽鎖DNA=1:1の割合でDNAを用意してOptiProTM SFM(invtrogen社)2mlと混合し(A)、他の15mlのチューブにFreestyleTM MAX reagent100μlとOptiProTM SFM2mlを混合(B)した後、(A)と(B)とを混合して15分間インキュベートした後、1日前に用意した細胞に混合液を徐々に入れ混ぜた。形質導入完了後、37℃、湿度80%、8%CO2、130rpmの培養器で5日間培養した。
前記培養された細胞を遠心分離して上清各100mlを取って、AKTA Prime(GE healthcare社)を用いて精製した。AKTA PrimeにProtein Aカラム(GE healthcare社、17−0405−03)を設け、培養液を5ml/minの流速で流した後、IgG elution buffer(溶出バッファー)(Thermo Scientific社、21004)で溶出した。これをPBSにバッファー交換し、最終的に3種の抗体(huAbF46−H4−A1(U6−HC7)、huAbF46−H4−A1(IgG2 hinge)、huAbF46−H4−A1(IgG2 Fc))を精製した。このうち、本発明による抗c−Met抗体を代表してhuAbF46−H4−A1(IgG2 Fc)を選択して下記の実施例に使用し、便宜上、前記抗体をL3−1Y/IgG2と名づけた。
(実施例1:IL−8を用いた抗c−Met抗体効能予測及び効能検証)
1.1.癌細胞株移植マウスモデルでのIL−8を用いた抗c−Met抗体の効能予測及び効能検証試験
1.1.1.癌細胞株移植マウスモデルの製作
抗c−Met抗体の効能予測及び効能検証試験に使用するために、多様な癌細胞株(Lovo細胞株、HT−29細胞株、EBC−1細胞株、MKN45細胞株、またはHs746T細胞株)を移植した異種移植(xenograft)マウスモデルを製作した。
具体的には、ヒト大腸癌細胞株であるHT29(ATCC HTB−38、「HT−29」とも称する。)とLovo(ATCC CCL−229)細胞をBALB/Cヌード(nude)マウス(4〜5週齢、male;Shanghai SLAC Laboratory Animal Co.,Ltd.)に各5×106細胞ずつ皮下に(s.c)注入して異種移植マウスモデルを製作した。この時、マウスはグループ当り15匹ずつを使用した。また、ヒト胃癌細胞株であるHs746T(ATCC HTB−135)細胞及びMKN45(ATCC RCB1001)細胞とヒト非小細胞性肺癌細胞株であるEBC−1(ATCC JCRB0820)細胞を用いて前記と同様な方法で異種移植マウスモデルを製作した。
前記のように、Lovo移植マウスモデル、HT−29移植マウスモデル、EBC−1移植マウスモデル、Hs746T移植マウスモデル、及びMKN45移植マウスモデルを製作して下記の試験に使用した。
1.1.2.癌細胞株移植マウスモデルでのIL−8を用いた抗c−Met抗体の効能予測
前記参考例1で製作された抗c−Met抗体L3−1Y/IgG2を前記実施例1.1.1で製作されたLovo移植マウスモデル、HT−29移植マウスモデル、EBC−1移植マウスモデル、Hs746T移植マウスモデル及びMKN45移植マウスモデルに投与した後、腫瘍の大きさを測定して、L3−1Y/IgG2に対する反応群(responder;抗体の抗癌効果有り)と非反応群(non−responder;抗体の抗癌効果無し)を確認した。
具体的には、前記実施例1.1.1で製作したマウスモデルで、細胞株移植以後7〜10日以後からグループ別に抗c−Met抗体投与を始めた。それぞれの投与は7日間隔で4週間静脈注射し、腫瘍の大きさは一週間に二回ずつ確認して記録した。投与グループは対照群であるPBS投与群と抗c−Met抗体処理グループに分け、抗c−Met抗体はHT29とLovo細胞株モデルはグループ別に0.2、1、5、10mg/kgで処理し、EBC−1、MKN45、およびHs746T細胞株モデルはグループ別に0.03、0.1、0.3、1.0、3.0、10.0mg/kgで処理した。前記得られた結果を図1aから図1eに示した(1a:Lovo、1b:HT29、1c:EBC−1、1d:Hs746T、1e:MKN45)。図1aから図1eには代表的に対照群であるPBS投与群と抗c−Met抗体投与群のうちの代表的な投与群(HT29とLovoモデル及びMKN45モデルはそれぞれ抗体5mg/kg投与、EBC−1とHs746Tモデルはそれぞれ抗体3mg/kg投与)のみを示し、矢印で表示された部分は抗体処理時期または安楽死時期である。図1aから図1eで確認されるように、Lovo移植マウスモデルとHT−29移植マウスモデルではL3−1Y/IgG2が抗癌効果をほとんど示さない反面、EBC−1移植マウスモデル、Hs746T移植マウスモデルおよびMKN45移植マウスモデルでは明確な抗癌効果を示すことが分かる。したがって、Lovo移植マウスモデルおよびHT−29移植マウスモデルはL3−1Y/IgG2に対する非反応群に分類し、EBC−1移植マウスモデル、Hs746T移植マウスモデルおよびMKN45移植マウスモデルはL3−1Y/IgG2に対する反応群に分類することができる。
L3−1Y/IgG2に対する反応群と非反応群の血清内IL−8水準の差を確認するために、Lovo移植マウスモデル、HT−29移植マウスモデル、EBC−1移植マウスモデル、及びHs746T移植マウスモデルからL3−1Y/IgG2投与が行われない対照群マウス(PBS投与群;100μLの量で7日間隔で4週間投与)の血清内IL−8水準を測定してL3−1Y/IgG2に対する反応性との関連性を試験した。マウスモデルの全血を、BD vacutainer SSTTM tubeに回収した。全血の回収後、穏やかにチューブを5分間反転させて攪拌した後、30分間室温(約25℃)で凝血させた。その後、1500xgで10分間、冷却した遠心分離機により遠心分離することにより凝血塊を除去した。遠心上清を新しいチューブに移すことにより、血清サンプルを得た。
各モデルの対照群マウス血清は、BD Cytometric Bead Array Human Inflammatory cytokine kit(BDバイオサイエンス社製)を用いて実験を行った。すなわち、製造業者のガイドライン(manufacturer’s guideline)に従って、マウス血清を1/4(v/v)でアッセイダイリューエントバッファー(Assay diluent buffer)で希釈した後、ビオチン化(biotinylation)抗ヒトIL−8抗体がコーティングされているビーズ(beads)(BD Cytometric Bead Array(CBA) Human inflammatory cytokines kit、#551811、BD biosciences社製)に常温で1時間30分間反応させた。反応が終わった後、試料に前記BD Cytometric Bead Array(CBA)Human inflammatory cytokines kitに含まれている洗浄バッファー(wash buffer)1mLを添加した後、遠心分離し上清を除去した。残った試料を前記キットに含まれているストレプトアビジン(streptavidin)−PEと1時間30分間追加的に反応させた後、洗浄バッファー(wash buffer)1mL添加後に遠心分離(200g、5min)した後、上清を除去して未反応試料を除去した。その後、洗浄バッファー(wash buffer)200μLを添加しフローサイトメーター(BD FACS CantoII flow cytometer、BD Bioscience社製)を用いて分析した。分析が終わったデータは、FCAP array program(BD Biosciences社製)を用いて血清内IL−8濃度を計算し、希釈係数(dilution factor)をかけて血清内IL−8数値を定量化した。
前記得られた結果を図2に示した。図2で確認されるように、L3−1Y/IgG2に対する反応群は全てIL−8水準が500pg/mL以上である反面、L3−1Y/IgG2に対する非反応群は全てIL−8水準が約50−150pg/ml程度であって、L3−1Y/IgG2に対する反応群のIL−8水準が非反応群と比較して少なくとも3倍以上であった。したがって、IL−8水準が高い癌細胞の場合、L3−1Y/IgG2が効果をよく発揮すると予測できる。
1.1.3.癌細胞株移植マウスモデルでのIL−8を用いた抗c−Met抗体の効能検証
癌細胞株移植マウスモデルでの抗c−Met抗体処理によるIL−8水準変化を測定して前記抗c−Met抗体に対する反応性との関連性を試験した。
具体的には、前記実施例1.1.2の動物実験の結果として得られた血清試料のうち、抗c−Met抗体非投与群(PBS投与群;対照群)試料と、抗c−Met抗体投与群のうちの代表的な低濃度と高濃度処理群一つずつを比較するために、HT29とLovoモデル(抗c−Met抗体非反応群)では0.2mg/kgと5mg/kg投与群、EBC−1とHs746Tモデル(抗c−Met抗体反応群)では1mg/kgと3mg/kg投与群の血清試料を使用して抗c−Met抗体処理による抗癌効能程度とIL−8水準の変化との相関関係を調べた。血清試料内のIL−8水準の分析は前記1.1.2に説明された方法を参照して行った。
前記得られた結果を図3に示した。図3で確認されるように、L3−1Y/IgG2に対する非反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のIL−8発現水準がL3−1Y/IgG2無処理時(ビヒクル処理;PBS投与群)と比較して有意な差がないか、またはむしろ増加した。その反面、L3−1Y/IgG2に対する反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のIL−8発現水準がL3−1Y/IgG2無処理時と比較して顕著に減少するか、またはほとんど発現しなかった。これはL3−1Y/IgG2を処理した患者のIL−8発現水準を測定することによって、L3−1Y/IgG2に対する反応性、即ち、L3−1Y/IgG2の効能をモニタリングすることができることを意味する。
1.2.患者由来癌細胞移植マウスモデルでのIL−8を用いた抗c−Met抗体の効能予測及び効能検証試験
1.2.1.患者由来癌細胞移植マウスモデル製作
IL−8を用いた抗c−Met抗体の効能検証によって実際患者に適用時、信頼できる効能予測及び効能検定が可能か試験するために、患者由来癌細胞(肺癌細胞)が移植された異種移植マウスモデルを製作した。
具体的には、本実験は専門業者であるOncotest社(Oncotest GmbH、Freibrug Germany)に依頼して行なった。患者由来肺癌細胞(非小細胞性肺癌(NSCLC))であるLXFA297、526、623、983、1041、そして1647細胞を培養し、NMRIヌード(nude)マウス(4〜6週齢、雌;Harlan)の皮下に(s.c)注入して異種移植マウスモデルを製作した。この時、Oncotest SOP「Subcutaneous implantation」に従った方法を用いた。マウスはグループ当り10匹ずつを使用した。腫瘍移植後、グループ毎の平均的な腫瘍の大きさについての測定偏差を減らすため、製作したマウスモデルをランダムに分け、その後、薬物投与を行なった。患者由来胃癌細胞であるGXF214およびGXF251、ならびに患者由来腎臓癌細胞であるRXF488、RXF1114およびRXF1220を用いて、同様の試験を行った。
前記製作された患者由来癌細胞移植マウスモデルの抗c−Met抗体に対する反応性を試験するために、L3−1Y/IgG2処理による抗癌効果を試験した。
具体的には、抗体処理による抗癌効果をモニタリングするために、周期的にマウスに移植した腫瘍の大きさを測定した。下記の表は試験終了時期にそれぞれの抗体処理グループ(5mg/kg、iv)の腫瘍大きさを、ビヒクル処理グループ(対照群;PBS投与群)の腫瘍大きさで割った抗癌効能程度(腫瘍抑制程度(%inhibition)=100−(実験群の腫瘍大きさ/対照群の腫瘍大きさ×100))を求めて下記の表4及び表5に示した。
L3−1Y/IgG2処理時に30%以上腫瘍の大きさが減った場合、統計的有意性が示され、この場合にefficacy(効能)があると判断し、このような場合をresponder(反応群)に区分した。一方、L3−1Y/IgG2処理時の腫瘍の大きさの減少が30%未満の場合は、効能がない(no efficacy)と判断し、非反応群に区分した。
上記表4及び表5で確認されるように、製作された患者由来癌細胞移植マウスモデルのうちの肺癌細胞移植モデルであるLXFA526、LXFA623、LXFA1647と腎臓癌細胞移植モデルであるRXF1114がL3−1Y/IgG2に対する反応を示し(反応群)、残りのモデルは反応を示さなかった(非反応群)。
1.2.2.患者由来癌細胞移植マウスモデルでのIL−8を用いた抗c−Met抗体の効能予測
L3−1Y/IgG2に対する反応群と非反応群の血清内IL−8水準の差を確認するために、前記実施例1.2.1.で製作された移植マウスモデルからL3−1Y/IgG2投与前に採取された血清内のIL−8水準を測定してL3−1Y/IgG2に対する反応性との関連性を試験した。
具体的には、前記患者由来癌細胞移植マウスモデルから獲得したそれぞれの血清試料を試験群別に整理した。肺癌モデル6種、胃癌モデル2種、腎臓癌モデル3種の抗c−Met抗体非処理群である対照群(PBS投与群)の血清試料内IL−8水準を測定した。IL−8水準の測定方法は前記1.1.2に記述された方法と同一である。
前記得られた結果を図4に示した。図4で確認されるように、L3−1Y/IgG2に対する反応群は全てIL−8水準が約750pg/mL以上である反面、L3−1Y/IgG2に対する非反応群は全てIL−8水準が約500pg/mL未満であった。反応群の血清IL−8水準は、非反応群のそれと比較して少なくとも1.5倍以上であることが観察された。したがって、患者由来癌細胞移植マウスモデルでも、IL−8水準が高い癌細胞の場合、L3−1Y/IgG2が効果をよく発揮すると予測できる。
1.2.3.患者由来癌細胞移植マウスモデルでのIL−8を用いた抗c−Met抗体の効能検証
患者由来癌細胞移植マウスモデルでの抗c−Met抗体処理によるIL−8水準変化を測定して、前記抗c−Met抗体に対する反応性との関連性を試験した。
具体的には、前記患者由来癌細胞移植マウスモデルから獲得したそれぞれの血清試料を試験群別に整理して、肺癌モデル6種、胃癌モデル2種、腎臓癌モデル3種の対照群(PBS投与群)と抗c−Met抗体投与群(5mg/kg、iv)の血清試料内IL−8水準を測定し、抗体処理有無によるIL−8水準と抗癌効能との相関関係を測定した。IL−8水準の測定方法は前記1.1.2に記述された方法と同一である。
前記得られた結果を図5に示した。図5で確認されるように、L3−1Y/IgG2に対する非反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のIL−8発現水準が、L3−1Y/IgG2無処理時(ビヒクル(PBS)処理)と比較して有意な差がないか、またはむしろ増加した。その反面、L3−1Y/IgG2に対する反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のIL−8発現水準が、L3−1Y/IgG2無処理時と比較して顕著に減少するか、またはほとんど発現しなかった。これは、患者由来癌細胞移植モデルでもL3−1Y/IgG2に対する反応性とIL−8発現水準変化と関連性があることを示している。すなわち、L3−1Y/IgG2を処理した患者のIL−8発現水準を測定することによって、L3−1Y/IgG2に対する反応性、即ち、L3−1Y/IgG2の効能をモニタリングすることができることを意味する。
1.3.抗c−Met抗体処理後時間別IL−8水準変化測定
1.3.1.癌細胞株移植マウスモデル製作及びこれに対する抗c−Met抗体の抗癌活性試験
抗c−Met抗体の効能検証マーカーとしてのIL−8の反応性が腫瘍大きさの変化といかなる相関関係があるか確認するために、従来の抗癌効能を示した癌細胞株(EBC−1細胞株、Hs746T細胞株)を移植した異種移植マウスモデルを製作した。
本実験は、実施例1.1と異なり、腫瘍大きさの変化がほとんどない状態での反応性を調べるよう設定された。腫瘍移植以後に腫瘍の大きさを1000mm3程度に増殖させた後、抗体を濃度別に処理し、様々な時間帯別にグループ当り3匹ずつのマウスの血清と腫瘍組織を採取した。同時に、腫瘍の大きさも一定時間ごとに確認して抗癌効能も確認した。
具体的には、ヒト胃癌細胞株であるHs746T(ATCC HTB−135)細胞とヒト非小細胞性肺癌細胞株であるEBC−1(ATCC JCRB0820)細胞を移植した異種移植マウスモデルが使用された。培養したそれぞれの細胞をそれぞれ150匹のBalb.cヌード(nude)マウス(Shanghai SLAC Laboratory Animal Co.Ltd.)に5×106細胞ずつ皮下に(s.c)注入した。使用されたマウスは全て5〜6週の間の週齢の雄で、全てSPFcondition(条件)で飼育された。全て一定の所定のサイズまで腫瘍を増殖させるために、細胞が移植されたマウスは、移植から16〜20日間の期間が経過した以後にのみ、薬物(抗体)を処置した。腫瘍の大きさが1000mm3程度に育った以後、グループ当り30匹ずつランダムに、PBS処理グループ(Group1)、ならびに抗c−Met抗体処理グループ(Group2、3、及び4)に群分けした。抗c−Met抗体処理グループも、抗体投与濃度によって、1mg/kg処理群(Group2)、3mg/kg処理群(Group3)、及び10mg/kg処理群(Group4)に分けた。それぞれの実験群に対する抗体及びビヒクル投与は、最初投与日から一週間以後にもう一度投与する方法で総2回行なわれた。この時、それぞれの試料採取は、第1回目の投与以後1時間、1日(24時間)、2日(48時間)、3日(72時間)、7日(168時間)目に行なわれた。第2回目の投与以後1時間(169時間)、1日(192時間)、2日(216時間)、3日(240時間)、7日(336時間)目にも、試料採取がそれぞれ行われた。試料は、各時間帯別に3匹ずつのマウスを屠殺して血清と組織を採取した。さらに、それぞれの試料採取時に各マウスの腫瘍大きさを測定して抗体の抗癌効能程度も共に観察した(PharmaLegacy Laboratories Vivarium)。
前記得られた抗癌効能結果を図6(EBC−1移植モデル)及び図7(Hs746T移植モデル)に示した。
図6及び図7で確認されるように、EBC−1細胞株とHs746T細胞株の担癌動物(tumor bearing animal)を用いた実験でも抗c−Met抗体の抗癌効能が確認され、前記抗癌効能は濃度依存性を示したことが分かる。
1.3.2癌細胞株移植マウスモデルでのIL−8を用いた抗c−Met抗体の効能検証
前記実施例1.3.1で得られたEBC−1移植マウスモデル及びHs746T移植マウスモデルから採取した試料を用いて以下の実験を行なった。抗c−Met抗体の効能によるIL−8の反応性が腫瘍大きさによったものかを調べるためにEBC−1移植マウスモデルまたはHs746T移植マウスモデルの血清試料で抗c−Met抗体処理後時間帯別IL−8水準を測定して分析した。
より具体的には、前記それぞれの抗体処理群当り3匹ずつから各時間帯別(図8参照)に採取した血清100uLずつを混合して試料を用意した後、前記1.1.2で使用した同一な実験方法で血清内IL−8水準を確認して定量化した。
前記得られた結果を図8と図9に整理した。図中、「before dosing(投与前)」と「1 day(第1日目)」の間の「1」は、「1時間」を意味する。
図8と図9で確認できるように、IL−8水準は、抗c−Met抗体処理時に濃度依存的に減少する傾向を示しているだけでなく、高濃度処理群である10mg/kgでは処理後1時間にすでに減少したのを確認することができた。これは、IL−8の血清での減少が単純に腫瘍の大きさのみを反映する指標でなく、抗c−Met抗体の生体内反応性を反映する初期検証マーカーとして活用可能であることを示す。また、図6及び7で確認できるように、対照群(PBS投与群)で腫瘍の大きさが持続的に増加するのに反し、図8及び9のIL−8水準は増加しないことから分かるように、単純な腫瘍サイズの増減による変化ではないことを確認することができる。
1.4.抗c−Met抗体以外のc−Metの効能検証
IL−8水準変化が抗c−Met抗体以外のc−Metを標的とする薬物に対する反応性モニタリングにも有用に適用されるか確認した。
具体的には、抗c−Met抗体(L3−1Y/IgG2)に効能を示した代表的な細胞株であるEBC−1(ヒト肺癌細胞株;ATCC .JCRB0820)とHs746T(ヒト胃癌細胞株;ATCC HTB−135)を、そして効能を示さなかった代表的な細胞株としてLovo(ヒト大腸癌細胞株;ATCC CCL−229)及びHT29(ヒト大腸癌細胞株;ATCC HTB−38)を選択して培養した。このように選択した4種の細胞株を同一な細胞数(1×104細胞/well)で96ウェルプレートに接種した後、(10%FBS(gibco)を含有したRPMI培地(Gibco)にて37℃で24時間培養した(5%CO2条件で培養)。培養した細胞に代表的なc−Met阻害剤として知られているクリゾチニブ(Selleck chemical社)および、PHA665752((R、Z)−5−(2,6−ジクロロベンジルスルホニル)−3−((3,5−ジメチル−4−(2−(ピロリジン−1−イルメチル)ピロリジン−1−カルボニル)−1H−ピロール−2−イル)メチレン)インドリン−2−オン)、ならびに対照群としてコントロールIgG(purified human total IgG(cat#009−000−003、Jackson Immunoresearch社)およびL3−1Y/IgG2抗体(リファレンス)でそれぞれ処理した。前記薬物(または抗体)は、1000nMから0.01nMまで10倍階段希釈法(10−fold serial dilution)で希釈して処理し、薬物処理後、72時間後に各処理群の細胞培養液でIL−8水準をCytometric Bead Array(CBA) methodで分析を行なった(BD Cytometric Bead Array kitを使用;実施例1.1.2参照)。さらに、この時、c−Met阻害剤の抗癌効能を確認するために細胞増殖程度をCell−Titer Glo(CTG)アッセイ(プロメガ社製)を用いて分析を行なった。
前記得られた細胞増殖程度(72時間目のCTGアッセイ結果)を図20(抗c−Met抗体反応群)及び図21(抗c−Met抗体非反応群)に示した。図20に示されているように、各c−Met阻害剤(クリゾチニブ(Crizotinib)とPHA665752)に対する細胞反応性は抗c−Met抗体(L3−1Y/IgG2)と同様に観察された。すなわち、クリゾチニブ(Crizotinib)またはPHA665752にて処理すると、抗c−Met抗体(L3−1Y/IgG2)反応群であるEBC−1及びHs746T細胞株において、阻害剤濃度10nM以上で増殖が抑制されるのに対し、抗c−Met抗体の増殖抑制効能が観察されなかった非反応群Lovo及びHT29細胞株では、前記c−Met阻害剤に対する反応性も観察されなかった(図21参照)。
さらに、この時、各薬物に対する反応性が観察され始めた濃度である10nM濃度において、各処理群の培養液中のIL−8水準を分析(Cytometric Bead Array(CBA) method;BD Cytometric Bead Array kitを使用;実施例1.1.2参照)した結果を図22及び23に示した(培地(medium)のIL−8水準を100%としてこれに対する相対的比率で換算して示す)。図22及び23の結果に示されているように、細胞増殖抑制反応を示したEBC−1及びHs746T細胞株(反応群)ではIL−8水準が有意な程度に減少する反面、非反応群であるLovo及びHT−29細胞株では有意な程度のIL−8水準の減少傾向が観察されなかった。
このような結果は、細胞のc−Met発現を抑制させた時に観察されるIL−8水準の減少は抗c−Met抗体だけでなく、他のc−Met阻害剤の効能検証指標として用いることができることを示すと言える。
(実施例2:bIG−H3を用いた抗c−Met抗体効能検証)
2.1.抗c−Met抗体効能検証マーカーとしてのbIG−H3選択
119個の可溶性受容体(soluble receptor)を検出することができるantibody array membrane(human soluble receptor array kit non−hematopoietic panel, cat# ARY012、R&Dシステムズ社; 代替的には、human cytokine array kit(例えば、#ARY005、R&Dシステムズ社が使用され得る)を用いて、抗c−Met抗体が抗癌効能を示す癌細胞において抗c−Met抗体未処理群と処理群とで発現の差を示す蛋白質を、抗c−Met抗体の効能検証マーカーとして選定した。
先ず、U87MG細胞株(ATCC HTB−14)により前記実施例1.1.1.の方法で製作されたマウスモデルを用いて、抗c−Met抗体L3−1Y/IgG2処理(0.2mg/kg、5mg/kg、または10mg/kg)による腫瘍大きさ変化を測定して図10に示した。図10で確認されるように、抗c−Met抗体L3−1Y/IgG2は、U87MG移植マウスモデルで容量依存的に抗癌効能を示すのを確認することができる。
前記抗c−Met抗体反応性が確認されたU87MG細胞株において、抗c−Met抗体未処理群と処理群とで、蛋白質の発現の差を調査した。
このために、U87MG(ATCC HTB−14)を使用して前記実施例1.1.1.の方法で製作されたマウスから採取した血清を、antibody array membrane(R&Dシステムズ社、cat# ARY012)と共にインキュベートし、抗c−Met抗体に対する反応性を確認した。前記メンブレンに提供されたバッファー(buffer)と捕捉抗体(capture antibody)と共に、メンブレンとマウスの血清200μlとを4℃で一晩(overnight)インキュベートした。その後、ケミルミネッセンス(chemiluminescence)方法でメンブレンを現像した。L3−1Y/IgG2抗体は、10mg/kgの量で、細胞株移植以後7〜10日以後から7日間隔で4週間静脈注射して投与した。
得られた結果を図11に示した。メンブレンの角部と中間のドット(dot)はポジティブコントロールドット(positive control dot)であり、ボックスで表示したドットが有意な変化を示したドットであってbIG−H3を示す。図11に示したように、対照群(PBS処理群、control)と比較して、L3−1Y/IgG2処理時にbIG−H3蛋白質の水準が顕著に減少したのを確認することができる。これは、bIG−H3が抗c−Met抗体の効能検証マーカーとして使用できることを示唆する。
2.2.癌細胞株移植マウスモデルでのbIG−H3を用いた抗c−Met抗体の効能検証
2.2.1.癌細胞株移植マウスモデル製作
前記実施例1.1.1を参照して、抗c−Met抗体の効能検証試験に使用するために、多様な癌細胞株(抗c−Met抗体非反応癌細胞株:Lovo(ATCC CCL−229)、HT−29(ATCC HTB−38)、PC3(ATCC CRL−1435)、BxPC3(ATCC CRL−1687)、MDAMB231(ATCC HTB−26);抗c−Met抗体反応癌細胞株:Hs746T(ATCC HTB−135)、MKN45(ATCC RCB1001)、EBC−1(ATCC JCRB0820)、U87MG(ATCC HTB−14)、MHCC97H(ATCC NB100−122)をそれぞれ移植した異種移植マウスモデルを製作した。
前記製作された癌細胞株移植マウスモデルのうち、Hs746T移植マウスモデル、MKN45移植マウスモデル、及びEBC−1移植マウスモデルが抗c−Met抗体に反応性を示すのが前記実施例1.1.2.で確認されている。
2.2.2.癌細胞株移植マウスモデルでのbIG−H3を用いた抗c−Met抗体の効能検証
前記実施例2.2.1で製作された癌細胞株移植マウスモデルでの抗c−Met抗体処理によるbIG−H3水準変化を測定して、前記抗c−Met抗体に対する反応性との関連性を試験した。
具体的には、各癌細胞移植マウスの血清をプーリング(pooling)した後、前記実施例1.1.2に記載された方法を参照して、ビヒクル(PBS)投与群(コントロール)とL3−1Y/IgG2処理群の、それぞれプーリング(pooling)された血清内のbIG−H3水準をbIG−H3 ELISA kit(R&Dシステムズ社)を用いて定量分析した。より具体的には、BD vacutainer SSTTM tubeにマウスモデルの全血を回収した。全血の回収後、穏やかにチューブを5分間反転させて攪拌した後、30分間室温(25℃)で凝血させた。その後、1000xgで15分間、遠心分離することにより、血清を得た。各ELISAアッセイについては、MIF(R&Dシステムズ社、DMF00B)およびIG−H3(R&Dシステムズ社、DY2935) ELISA kitを使用し、製造業者のプロトコルに従って行った。簡潔には、100μlのアッセイ希釈剤RD1−53を各ウェルに加えた。コートされたプレートに50μl/ウェルの量で血清サンプルを加え、室温(約25℃)で2時間インキュベートした。洗浄工程後、200μlの抗体接合体を各ウェルに加えて2時間インキュベートし、基質溶液を添加後さらに30分間インキュベートした。マイクロプレートリーダーを用い、波長450nmを計測した。
前記得られた結果を図12に示した。図12で確認されるように、L3−1Y/IgG2に対する非反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のbIG−H3発現水準がL3−1Y/IgG2無処理時(ビヒクル処理)と比較して有意な差がないか、またはむしろ増加した。その反面、L3−1Y/IgG2に対する反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のbIG−H3発現水準がL3−1Y/IgG2無処理時と比較して顕著に減少するか、またはほとんど発現しなかった。これは、L3−1Y/IgG2を処理した患者のbIG−H3発現水準を測定することによって、L3−1Y/IgG2に対する反応性、即ち、L3−1Y/IgG2の効能をモニタリングすることができることを意味する。
2.3.患者由来癌細胞移植マウスモデルでのbIG−H3を用いた抗c−Met抗体の効能検証
2.3.1.患者由来癌細胞移植マウスモデル製作
前記実施例1.2.1を参照して、患者由来肺癌細胞移植マウスモデルLXFA297、LXFA526、LXFA623、LXFA983、LXFA1041、及びLXFA1647を製作し、前記表4で確認されるように、このうちのLXFA526、LXFA623、及びLXFA1647は抗c−Met抗体反応群である。
2.3.2.患者由来癌細胞移植マウスモデルでのbIG−H3を用いた抗c−Met抗体の効能検証
患者由来癌細胞移植マウスモデルでの抗c−Met抗体処理によるbIG−H3水準変化を測定して、前記抗c−Met抗体に対する反応性との関連性を試験した。
具体的には、実施例2.2.2と同一な実験方法(実施例1.1.2に記載された方法参照)で、各群当りマウスの血清をプーリング(pooling)した後、ビヒクル(PBS)投与群(コントロール)とL3−1Y/IgG2処理群のプーリング(pooling)された血清内のbIG−H3水準をbIG−H3 ELISA kit(R&Dシステムズ社)を用いて定量分析した。
得られた結果を図13に示した。図13で確認されるように、L3−1Y/IgG2に対する非反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のbIG−H3発現水準がL3−1Y/IgG2無処理時(ビヒクル(PBS)処理)と比較して有意な差がないか、またはむしろ増加した。その反面、L3−1Y/IgG2に対する反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のbIG−H3発現がほとんど観察されなかった。これは、患者由来癌細胞移植モデルでもL3−1Y/IgG2に対する反応性とbIG−H3発現水準変化と関連性があることを示すこと。従って、L3−1Y/IgG2を処理した患者のbIG−H3発現水準を測定することによって、L3−1Y/IgG2に対する反応性、即ち、L3−1Y/IgG2の効能をモニタリングすることができることを意味する。
前記L3−1Y/IgG2処理群と非処理群動物モデルから分離された癌組織を粉砕し、溶解バッファー(lysis buffer)(Roche社)500μlで溶解させた後、遠心分離してcell soup(細胞溶解物)を回収して定量した。全体細胞蛋白質が1μgとなる量の細胞溶解物内を、bIG−H3キャプチャ用抗体がプリコート(pre−coating)されたbIG−H3 ELISA kit(R&Dシステムズ社)のプレートに積層した。前記キット内に含まれているHRPがconjugate(接合)されたdetection antibody(検出抗体)を使用し、O.D450で値を測定した。
前記結果を図14に示した。図14に示されているように、細胞溶解物においても、抗c−Met抗体に対する反応群のうちの抗体処理群の全体細胞蛋白質1μg当たりに含まれているbIG−H3の量が、抗体無処理群と比較して顕著に減少することを確認することができる。
(実施例3:MIFを用いた抗c−Met抗体効能検証)
3.1.抗c−Met抗体効能検証マーカーとしてのMIF選択
36個のサイトカイン(cytokine)を検出できるantibody array membrane(R&Dシステムズ社 ARY005)を使用して、抗c−Met抗体による抗癌効能が確認されたLXFA623マウスモデル(実施例1.2.1及び表4参照)を用いて、抗c−Met抗体未処理群と処理群とで発現の差を示す蛋白質を抗c−Met抗体の効能検証マーカーとして選定した。
より具体的には、LXFA623動物モデルにおいて、抗体無処理群(PBS投与群;対照群マウス)またはL3−1Y/IgG2抗体5mg/kgにより処理されたマウスから採取されたそれぞれ200μlの血清を、バッファー(buffer)と共に一晩インキュベートした。その後、キット中のdetection antibody mixを用いてケミルミネッセンス(chemi−luminesence)で発現するドットを測定した。前記試験はantibody array membrane(R&Dシステムズ社 ARY005)を用いて行なった。
前記得られた結果を図15に示した。図15に示されているように、対照群(PBS投与群、CONTROL)と比較して、L3−1Y/IgG2処理時にMIF蛋白質の水準が顕著に減少したことを確認することができる。これは、MIFが抗c−Met抗体の効能検証マーカーとして使用できることを示唆する。
3.2.癌細胞株移植マウスモデルでのMIFを用いた抗c−Met抗体の効能検証
前記実施例2.2.1を参照して、多様な癌細胞株(抗c−Met抗体非反応癌細胞株:Lovo(Accession No.CCL−229)、HT−29(Accession No.HTB−38)、PC3(Accession No.CRL−1435)、BxPC3(Accession No.CRL−1687)、MDA−MB231(Accession No.HTB−26);抗c−Met抗体反応癌細胞株:Hs746T(Accession No.HTB−135)、MKN45(Accession No.RCB1001)、EBC−1(Accession No.JCRB0820)、U87MG(Accession No.HTB−14)、MHCC97H(Accession No.NB100−122)を移植した異種移植マウスモデルを製作して本試験に使用した。
前記製作された癌細胞株移植マウスモデルでの抗c−Met抗体処理によるMIF水準変化を測定して、前記抗c−Met抗体に対する反応性との関連性を試験した。
具体的には、実施例1.1.2の方法を参照して、各異種移植の抗体未処理群(PBS投与群;コントロール)とL3−1Y/IgG2処理群の血清を、それぞれプーリング(pooling)した後、MIF ELISA kit(R&Dシステムズ社 DMF00B)を用いて前記血清内のMIF水準を定量した。実験方法は提供されたマニュアルに従った。
得られた結果を図16に示した。図16で確認されるように、L3−1Y/IgG2に対する非反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のMIF発現水準がL3−1Y/IgG2無処理時(PBS処理)と比較して有意な差がないか、またはむしろ増加した。その反面、L3−1Y/IgG2に対する反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のMIF発現水準が、L3−1Y/IgG2無処理時と比較して顕著に減少するか、またはほとんど発現しなかった。これは、L3−1Y/IgG2を処理した患者のMIF発現水準を測定することによって、L3−1Y/IgG2に対する反応性、即ち、L3−1Y/IgG2の効能をモニタリングすることができることを意味する。
3.3.患者由来癌細胞移植マウスモデルでのbIG−H3を用いた抗c−Met抗体の効能検証
前記実施例1.2.1を参照して、患者由来肺癌細胞移植マウスモデルLXFA297、LXFA526、LXFA623、LXFA983、LXFA1041、及びLXFA1647を製作し、前記表4で確認されるように、このうちのLXFA526、LXFA623、及びLXFA1647は抗c−Met抗体反応群である。
前記用意された患者由来癌細胞移植マウスモデルでの抗c−Met抗体処理によるMIF水準変化を測定して、前記抗c−Met抗体に対する反応性との関連性を試験した。
具体的には、前記実施例3.2で記述した方法を参照して、MIF ELISA kit(R&Dシステムズ社 DMF00B)を用いてMIF水準を定量した。
得られた結果を図17に示した。図17で確認されるように、L3−1Y/IgG2に対する非反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のMIF発現水準がL3−1Y/IgG2無処理時(ビヒクル処理)と比較して有意な差がないか、またはむしろ増加した。その反面、L3−1Y/IgG2に対する反応群では、L3−1Y/IgG2処理時のMIF発現が顕著に減少するか、または観察されなかった。これは、患者由来癌細胞移植モデルでも、L3−1Y/IgG2に対する反応性とMIF発現水準変化とに関連性があることを示す。従って、L3−1Y/IgG2を処理した患者のMIF発現水準を測定することによって、L3−1Y/IgG2に対する反応性、即ち、L3−1Y/IgG2の効能をモニタリングすることができることを意味する。
(実施例4:RAS−RAF突然変異を用いた抗c−Met抗体効能予測)
4.1.患者由来癌細胞移植マウスモデルでのRAS−RAF突然変異を用いた抗c−Met抗体の効能予測試験
4.1.1.患者由来癌細胞移植マウスモデル製作
抗c−Met抗体の効能予測に使用するために、患者由来癌細胞を移植した異種移植マウスモデルを製作した。
具体的には、雌のNMRIヌードマウス(Charles RiverまたはHarlanより入手、4〜6週齢)に癌患者から抽出した癌組織(LXFA/LXFL:Lung cancer、肺癌;GXF/GXA:Gastric cancer、胃癌;RXF:Renal cancer、腎臓癌;GXA:gastric cancer、胃癌;LXFL:lung large cell carcinoma、肺大細胞癌;OVXF:ovarian cancer、卵巣癌;PAXF:pancreatic cancer、すい臓癌;CXF:colon cancer、大腸癌)を皮下に(S.C)移植した。腫瘍が80から200mm3ほどに成長した段階で、ランダムに群当り10匹ずつに群分けした。PBSを静脈注射した群を対照群とし、L3−1Y/IgG2を5mg/kgの容量で注射した群を抗体投与群とした。抗体投与時期は、群分け後、0、7、14、21、28、及び35日目とした。腫瘍大きさが2000mm3となった時点で、マウスを屠殺して、以下の実験に使用した。
4.1.2.患者由来癌細胞移植マウスモデルのc−Met発現量測定
前記製作された患者由来癌細胞移植マウスモデルでのc−Met発現水準をウエスタンブロッティング方法で測定した。
具体的には、前記マウスモデルから分離された腫瘍組織を粉砕し、溶解バッファー(lysis buffer)(Roche社)500μlで溶解させた後、遠心分離して細胞溶解物を得た。全体細胞内蛋白質10μgに相当する量の細胞溶解物をロードし(SDS−PAGE)、メンブレン(Cell Signal社;抗体含む)に30秒間暴露させた。
得られた結果を図18に示した。図18中、c−Metバンドが観察されるモデルはL3−1Y/IgG2に対して反応群と言える。但し、LXFA2201はバンドが観察されるが、RAF変異を伴うので、L3−1Y/IgG2に対する反応性がない。
4.1.3.患者由来癌細胞移植マウスモデルのRAS−RAF突然変異存在有無及び抗c−Met抗体に対する反応性測定
前記製作された患者由来癌細胞移植マウスモデルでのK−RAS及びB−RAF突然変異の有無、ならびに抗c−Met抗体に対する反応性を調査した。
具体的には、癌細胞から抽出したDNAをSequenomTMシステム(シーケノム社)用いて、前記システムに提供されたプライマーを用いてPCR後、野生型(WILD)と変異型(MUTANT)とを区分した。変異が現れた部位は、K−RASの場合、G12V、G12C、Q61H、G12Cであり、B−RAFの場合、G596R、D594Aで主に見つけられた。
本試験は実施例1.2.1.過程を参照して行なった。
前記得られた結果を図19(LXFA2201及びLXFA2158モデルでの抗c−Met抗体効能の有無;残りのマウスモデルでの効能は表4及び表5参照)及び表6(各マウスモデルでのK−RAS及びB−RAF変異の有無)に示した。なお、c−Met水準は、アフィメトリクスアレイ(Affymetrix GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 array; プライマーセット“203510_at”を使用)を使用し、製造者の説明書によって各モデルの腫瘍組織におけるc−Met mRNA水準を測定した。
表6で確認されるように、K−RAS及びB−RAFのうちの一つ以上で変異が存在する場合、c−Met発現量が十分に多いとしても(例えば、LXFA2201参照)、抗c−Met抗体が効能を発揮しないことが分かる。これは、K−RAS及びB−RAFでの変異の有無を確認することによって、抗c−Met抗体の効能予測が可能であるのを示す。
4.2.癌細胞株でのRAS−RAF突然変異を用いた抗c−Met抗体の効能予測試験(in vitro)
4.2.1.癌細胞株の用意
NCI−H441(HTB−114)、NCI−H1993(CRL−5909)、NCI−H1373(CRL−5866)、A549(CCL−185)、HCC827(CRL−2868)、及びEBC−1(Accession No.JCRB0820)細胞株をそれぞれ1×104cell/ウェルの量で用意し、L3−1Y/IgG2抗体(1μg/ml)と72時間反応させた後、細胞増殖程度を測定して抗体無処理群(対照群)と比較した。
4.2.2.癌細胞株移植マウスモデルのRAS−RAF突然変異の存在の有無及び抗c−Met抗体に対する反応性測定
前記用意された癌細胞株でのK−RAS及びB−RAF突然変異の存在の有無及び抗c−Met抗体に対する反応性を調査した。
具体的には、前記用意された癌細胞から抽出したDNAを、SequenomTMシステム(シーケノム社)を用いて、前記システムに提供されたプライマーでPCR後、野生型と変異型とに区分した。変異が現れた部位は、K−RASの場合、G12V、G12C、およびG12Sであり、B−RAFの場合、G596R、D594Aで主に見つけられた。
得られた結果を表7に示した。
表7に示されているように、癌細胞株でも、K−RASとB−RAFが全て野生型(wild−type)である場合にのみ、抗c−Met抗体が効能を発揮することを確認することができる。
(実施例5:各マーカーの使用による予測正確度試験)
5.1.抗体効能試験(in vivo efficacy)
患者由来腫瘍組織(Non−small cell lung cancer:LSCLC、非小細胞肺癌)が皮下に(s.c)移植されたマウス異種移植モデル14種を、Oncotest社(ドイツ)に依頼して作製した。
前記14種の患者由来腫瘍移植マウスモデルに、L3−1Y/IgG2とPBS(empty vehicle;対照群))を投与し腫瘍組織の大きさを測定して前記抗体に対する反応性有無を測定した。
前記患者由来腫瘍移植マウスモデルの腫瘍大きさが100mm3以上に成長した時点から、L3−1Y/IgG2(コントロールの場合、PBSバッファー)を5mg/kgの量で1週に1回静脈投与(i.v)して、計6週間実験を行い、腫瘍大きさが2000mm3以上になった時点で実験を中断した。
腫瘍大きさ(mm3)は長径×短径×短径×1/2の式を用いて体積として計算した。効能群の判別は、ANOVA分析を通じてp値が0.05以下の仮説のみを棄却して行った。即ち、薬を投与した群で、投与しない群に比べて腫瘍の大きさの分布が変わらなかったという仮説をANOVAにより試験して、p値が0.05以下の群は効能群、超過する群を非効能群と判別した。
前記得られた選別されたサンプルのL3−1Y/IgG2処理に対する反応性の有無の解析結果を表8に示した:
5.2.抗体効能予測正確度試験
上記14個の患者由来腫瘍移植マウスモデルに対して以下の7つのテストを実施した。7つのテストそれぞれの予測正確度、予測感度、及び予測特異度を下記のように計算した:
また、7つのテストの結果を表9に示した。表9で記載された表示の定義は以下の通りである:
TP(true positive):抗体効能試験と該当テストで全て陽性(効能有り)と判断
TN(true negative):抗体効能試験と該当テストで全て陰性(効能無し)と判断
FP(false positive):抗体効能試験では陰性であるが、該当テストでは陽性と判断
FN(false negative):抗体効能試験では陽性であるが、該当テストでは陰性と判断。
5.2.1.c−Met IHC:Ventana(対照例)
前記5.1の実験を終えたマウスの腫瘍組織を摘出して、一部はFFPE(Formalin Fixed Paraffin Embedded、ホルマリン固定パラフィン包埋)ブロックを製作した。前記用意されたFFPEブロックはVentana MET IHC(immunohistochemistry、免疫組織化学)(sp44(Ventana社、Catalog Number790−4430)を使用、Genentech社のmetmabが臨床phaseIIIに用いた実験法;US2013089541 A1参照)を用いて製造業者で提供する標準プロトコル(standard protocol)に従って表面発現(surface expression)c−METを測定するのに使用した。
前記Ventana MET IHC方法によるIHCスコア(score)が2〜3であれば、効能群と判断することができる。
5.2.2.改変c−Met IHC(改変Ventana)
Ventana抗体(sp44)を5/6倍に希釈して使用したことを除いて、前記5.2.1のVentana MET IHC方法と同一な試験を行った。前記改変Ventana MET IHC方法によるIHCスコアが2〜3であれば、効能群と判断することができる。
5.2.3.IL−8を用いた効能予測
前記実施例1.1.2の試験方法によって各モデルのPBS処理群(対照群)の血清内IL−8水準を定量化した。血清内IL−8水準が500pg/ml以上である場合を陽性、500pg/ml未満である場合を陰性と判断した。
5.2.4.組み合わせI
前記実施例5.2.2(改変Ventana MET IHC方法による効能予測)、及び5.2.3(IL−8を用いた効能予測)で得られた結果を組み合わせて抗体効能を予測した。具体的には、実施例5.2.2の改変Ventana MET IHC方法によるIHCスコアが2〜3であり、実施例5.2.3の血清内IL−8水準が500pg/ml以上である場合を陽性と判断し、その以外の場合を陰性と判断した。
前記実施例5.2.1、5.2.2、5.2.3、及び5.2.4で得られた結果を下記の表9に示した。
5.2.5.RAS−RAF突然変異存在有無による効能予測
実施例4.1.3の方法によって前記14個の患者由来腫瘍移植マウスモデルに対してK−RAS及びB−RAF突然変異存在有無を調査して、K−RASとB−RAFが全て野生型である場合を陽性、K−RASとB−RAFのうちの一つ以上で突然変異が存在する場合を陰性と判断した。
5.2.6.組み合わせII
前記実施例5.2.3(IL−8を用いた効能予測)ならびに5.2.5(K−RAS及びB−RAF突然変異の存在の有無による効能予測)を組み合わせて、抗体効能を予測した。具体的には、実施例5.2.3の血清内IL−8水準が500pg/ml以上であり、K−RAS及びB−RAFが全て野生型である場合を陽性と判断し、その以外の場合は陰性と判断した。
5.2.7.組み合わせIII
前記実施例5.2.2(改変Ventana MET IHC方法による効能予測)、5.2.3(IL−8を用いた効能予測)ならびに5.2.5(K−RAS及びB−RAF突然変異の存在の有無による効能予測)を組み合わせて抗体効能を予測した。具体的には、実施例5.2.2の変形されたVentana MET IHC方法によるIHCスコアが2〜3であり、実施例5.2.3の血清内IL−8水準が500pg/ml以上であり、K−RAS及びB−RAFが全て野生型である場合を陽性と判断し、その以外の場合は陰性と判断した。
前記実施例5.2.5、5.2.6及び5.2.7で得られた結果を下記の表10に示した:
前記表9及び表10で確認されるように、改変c−MET IHC方法、IL−8マーカー及びKRAS−BRAF変異マーカーをそれぞれ単独で用いる場合、予測正確度(prediction accuracy)がそれぞれ64.29%、71.43%及び71.43%であって、全て対照群(28.57%)と比較して高い予測正確度を示した。改変c−Met IHC、IL−8マーカー及びKRAS−BRAF変異マーカーのうちの2つ以上を組み合わせた場合、より高い予測正確度を示し、特に、前記の三つの条件を全て用いる場合、100%の予測正確度を示した。