<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)とを有する。以下で、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)について説明する。
・縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)
縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)は、複数の芳香環が縮合した縮合芳香環上にシアナト基を有するシアン酸たエステル化合物である。
そのような縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)としては、下記構造式(A1)、または下記構造式(A2)で表されるシアン酸エステル化合物から構成される。
但し、構造式(A1)、(A2)において、R1はそれぞれ独立してシアナト基以外の1価の置換基を示し、jは1〜3の整数を示し、kは0〜2j+4の整数を示し、lは0〜5の整数を示し、mは0〜2の整数を示し、nはそれぞれ独立して0〜6の整数を示している。
構造式(A1)において、jは縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物における芳香環の繰り返し単位数を示している。例えば、kが1の場合、構造式(A1)としてはナフタレン構造を示し、jが2の場合、アントラセン構造を示す。kは縮合した芳香環に置換したR1の合計数を示す。構造式(A2)において、mは繰り返し単位数を示している。例えば、mが0の場合、構造式(A2)としてはビナフタレン構造を示し、kが1の場合、ターナフタレン構造を示す。lとnは、それぞれ縮合した芳香環に置換したR1の合計数を示している。なお、構造式(A1)、(A2)において、シアナト基は、芳香環が縮合した縮合芳香環の任意の位置に配置されていることを示している。
R1は、上記のようにシアナト基以外の1価の置換基を示している。R1が示す置換基としては、水素原子、炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、水酸基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、水酸基、アリール基、若しくはアラルキル基に含まれる1以上の水素原子が、水酸基、ハロゲン原子の何れかで置換された構造の何れかを挙げることができる。
R1が、炭素原子数が1〜6の炭化水素基から構成される場合、R1としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などを挙げることができる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、へキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、1−メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、へキシニル基等が挙げられる。
R1が、炭素原子数1〜6のアルコキシ基から構成される場合、R1としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、セカンダリーブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ペンタノキシ基、1−メチルブトキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ基、1,1−ジメチルプロポキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、へキサノキシ基、1−メチルペンタノキシ基、2−メチルペンタノキシ基、3−メチルペンタノキシ基、4−メチルペンタノキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、シクロヘキサノキシ基等が挙げられる。
R1が、アリール基から構成される場合、R1としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
R1が、アラルキル基から構成される場合、R1としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、トリルメチル基、トリルエチル基、トリルプロピル基、キシリルメチル基、キシリルエチル基、キシリルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基等が挙げられる。
R1が、炭素原子数1〜6のアルキル基に含まれる1つ以上の水素原子が、水酸基、ハロゲン原子のいずれかで置換された置換基から構成される場合、R1としては、水酸基含有アルキル基、ハロゲン化アルキル基、水酸基含有アルケニル基、ハロゲン化アルケニル基、水酸基含有アルキニル基、ハロゲン化アルキニル基等が挙げられる。
水酸基含有アルキル基としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基等が挙げられる。水酸基含有アルケニル基としては、1−ヒドロキシ−2,3−プロペニル基、2−ヒドロキシ−4,5−ペンテニル基等が挙げられる。ハロゲン化アルケニル基としては、1−クロロ−3,4−ブテニル基、2−ブロモ−4,5−ヘキセニル基等が挙げられる。水酸基含有アルキニル基としては、2−ヒドロキシ−4,5−ペンチニル基、2−ヒドロキシ−3,4−ヘキシニル等が挙げられる。ハロゲン化アルキニル基としては、1−クロロ−3,4−ブチニル基、3−ブロモ−5,6−ヘキシニル基等が挙げられる。
R1が、炭素原子数1〜6のアルコキシ基に含まれる1つ以上の水素原子が、水酸基、ハロゲン原子のいずれかで置換された置換基から構成される場合、R1としては、水酸基含有アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基などが挙げられる。
水酸基含有アルコキシ基としては、ヒドロキシエチルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン化アルコキシ基としては、クロロプロピルオキシ基等が挙げられる。
R1が、アリール基に含まれる1つ以上の水素原子が、水酸基、ハロゲン原子のいずれかで置換された置換基から構成される場合、R1としては、水酸基含有アリール基、ハロゲン化アリール基が挙げられる。水酸基含有アリール基としては、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等が挙げられる。ハロゲン化アリール基としては、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロナフチル基、ブロモナフチル基、フルオロナフチル基等が挙げられる。
R1がハロゲン原子から構成される場合、R1としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記のほか、R1は、アルコキシ基含有アルキル基、アルコキシ基含有アリール基、不飽和炭化水素基含有アリール基であってもよい。アルコキシ基含有アルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、アリルオキシメチル基、アリルオキシプロピル基、プロパルギルオキシメチル基、プロパルギルオキシプロピル基などが挙げられる。アルコキシ基含有アリール基としては、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、プロパルギルオキシフェニル基等が挙げられる。不飽和炭化水素基含有アリール基としては、ビニルフェニル、アリルフェニル、エチニルフェニル、プロパルギルフェニル等が挙げられる。
上記の中でも、R1としては、水素原子、アルキル基、アラルキル基であることが好ましく、硬化物において優れた耐熱性を発現させることができる点から、R1としては水素原子から構成されることがさらに好ましい。
そのような構造式(A1)で表される縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)としては、例えば、1,2−ジシアナトナフタレン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,5−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,7−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,3−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン等のジシアナトナフタレン、1,2−ジヒドロキアントラセン、1,3−ジシアナトアントラセン、1,4−ジシアナトアントラセン、1,5−ジシアナトアントラセン、1,6−ジシアナトアントラセン、1,7−ジシアナトアントラセン、1,8−ジシアナトアントラセン、2,3−ジシアナトアントラセン、2,6−ジシアナトアントラセン、2,7−ジシアナトアントラセン9,10−ジシアナトアントラセン、1,9−ジシアナトアントラセン、1,10−ジシアナトアントラセン、2,9−ジシアナトアントラセン、2,10−ジシアナトアントラセン等のジシアナトアントラセンなどが挙げられる。
構造式(A2)で表される縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)としては、2,2’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,3’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,4’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,5’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,7’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,3’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,4’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,5’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,7’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,4’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、3,4’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、4,4’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、4,5’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、4,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、4,7’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、4,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,5’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、3,5’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、4,5’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、5,5’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、5,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、5,7’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、5,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、3,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、4,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、5,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、6,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、6,7’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、6,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,7’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、3,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、4,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、5,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、6,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、7,6’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、7,7’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、7,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、3,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、4,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、5,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、6,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、7,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、8,8’−ジシアナト−1,1’−ビナフタレン、2,2’’,5’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,3’’,5’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,4’’,5’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,5’,5’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,5’,6’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,5’,7’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,5’,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,3’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,3’’,5’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,4’’,5’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,5’,5’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,5’,6’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,5’,7’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,5’,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,4’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,4’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,4’’,5’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,5’,5’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,5’,6’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,5’,7’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,5’,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,5’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,5’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,5’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,5’,5’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5,5’,5’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,5’,6’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,5’,7’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5,5’,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,6’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,6’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,6’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5,6’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5’,6,6’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5’,6,7’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5’,6,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,7’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,7’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,7’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5,7’’,8’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5’,6’’,7−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5’,7,7’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5’,7,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、2,8’,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、3,8’,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、4,8’,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5,8’,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5’,6’’,8−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5’,7’’,8−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレン、5’,8,8’’−トリシアナト−1,1’:4’,1’’−ターナフタレンなどを挙げることができる。
さらに、構造式(A1)、(A2)で表される縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)としては、下記構造式(A1−a)、(A2−a)で表されるシアン酸エステル化合物であることが、さらに好ましい。上記縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)を含む硬化性組成物は、成形時において優れた流動性を有する。
但し、構造式(A1−a)、(A2−a)において、R1はそれぞれ独立してシアナト基以外の1価の置換基を示し、kは0〜6の整数を示し、nはそれぞれ独立して0〜6の整数を示している。R1が示す具体的な置換基の種類は上述の通りである。
さらに、構造式(A1−a)、(A2−a)で表される縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)についても同様に、R1としては、水素原子、アルキル基、アラルキル基であることが好ましく、硬化物において優れた耐熱性を発現させることができることから、R1としては水素原子であることがより好ましい。すなわち、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)が上記構造式(A1−a)、(A2−a)で表される化合物である場合において、R1が水素原子である場合には、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物を含む硬化性組成物は、成形時の流動性に優れ、硬化物において優れた耐熱性を発現させることができるようになる。
・縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)の製造方法
上記で説明した縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)は、縮合多環芳香族のヒドロキシ化合物(a)と、ハロゲン化シアンとを反応させることにより、得ることができる。具体的には、上記反応において、縮合多環芳香族のヒドロキシ化合物(a)中のヒドロキシ基1モルに対し、ハロゲン化シアンを1.05モル〜1.5モルとなる割合で用いて反応させる。その後、反応液に適量の水を加えて生成塩を溶解し、水洗を繰り返して系内の生成塩を除去した後に、脱水や濾別でさらに精製して、有機溶媒を蒸留で除去することで縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)を得ることができる。
このようにして得られるシアン酸エステル(A)は、シアナト基当量が80g/eq〜250g/eqの範囲であることが好ましく、100g/eq〜200g/eqの範囲であることがさらに好ましい。得られるシアン酸エステル(A)のシアナト基当量が80g/eq〜250g/eqの範囲であると、得られる硬化物が優れた耐熱性、誘電特性、低熱膨張性を発現させることができるようになり、100g/eq〜200g/eqの範囲にあると、得られる硬化物が、さらに優れた耐熱性、誘電特性、低熱膨張性を発現させることができるようになる。
縮合多環芳香族のヒドロキシ化合物(a)としては、下記構造式(a1)、下記構造式(a2)で表される化合物が挙げられる。
ただし、構造式(a1)、(a2)において、R1はそれぞれ独立して水酸基以外の1価の置換基を示し、jは1〜3の整数を示し、kは0〜2j+4の整数を示し、lは0〜5の整数を示し、mは0〜2の整数を示し、nはそれぞれ独立して0〜6の整数を示している。なお、R1が示す置換基は、水素原子、炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、アリール基、若しくはアラルキル基に含まれる1以上の水素原子が、ハロゲン原子で置換された構造の何れかである。これらが示す具体的な構造については、上記の通りである。
構造式(a1)で示される縮合多環芳香族のヒドロキシ化合物(a)としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、1,2−ジヒドロキアントラセン、1,3−ジヒドロキシアントラセン、1,4−ジヒドロキシアントラセン、1,5−ジヒドロキシアントラセン、1,6−ジヒドロキシアントラセン、1,7−ジヒドロキシアントラセン、1,8−ジヒドロキシアントラセン、2,3−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、2,7−ジヒドロキシアントラセン9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,9−ジヒドロキシアントラセン、1,10−ジヒドロキシアントラセン、2,9−ジヒドロキシアントラセン、2,10−ジヒドロキシアントラセン等のジヒドロキシアントラセンなどが挙げられる。
上記の中でも、最終的に得られる硬化物の難燃性が一層良好なものとなり、さらに該硬化物における誘電正接が低くなる点からジヒドロキシナフタレンが好ましく、ジヒドロキシナフタレンの中でも1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、又は2,7−ジヒドロキシナフタレンがさらに好ましく、その中でも2,7−ジヒドロキシナフタレンが特に好ましい。
構造式(a2)で示される縮合多環芳香族のヒドロキシ化合物(a)としては、例えば、[1,1’−ビナフタレン]−2,2’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−2,3’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−2,4’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−2,5’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−2,6’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−2,7’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−2,8’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−3,2’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−3,3’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−3,4’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−3,5’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−3,6’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−3,7’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−3,8’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−4,2’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−4,3’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−4,4’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−4,5’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−4,6’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−4,7’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−4,8’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−5,2’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−5,3’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−5,4’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−5,5’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−5,6’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−5,7’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−5,8’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−6,2’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−6,3’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−6,4’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−6,5’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−6,6’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−6,7’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−6,8’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−7,2’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−7,3’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−7,4’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−7,5’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−7,6’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−7,7’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−7,8’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−8,2’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−8,3’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−8,4’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−8,5’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−8,6’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−8,7’−ジオール、[1,1’−ビナフタレン]−8,8’−ジオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,2’’,5’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,3’’,5’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,4’’,5’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,5’,5’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,5’,6’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,5’,7’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,5’,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,3’’,5’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,4’’,5’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,5’,5’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,5’,6’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,5’,7’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,5’,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,4’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,4’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−4,4’’,5’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−4,5’,5’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−4,5’,6’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−4,5’,7’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−4,5’,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,5’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,5’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−4,5’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5,5’,6’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5,5’,7’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5,5’,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,6’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,6’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−4,6’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5,6’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5’,6,7’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5’,6,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,7’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,7’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−4,7’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5,7’’,8’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5’,7,7’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5’,7,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−2,8’,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−3,8’,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−4,8’,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5,8’,8’’−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5’,6’’,8−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5’,7’’,8−トリオール、[1,1’:4’,1’’-ターナフタレン]−5’,8,8’’−トリオールなどが挙げられる。
これらの中でも最終的に得られる硬化性組成物における硬化物の難燃性が一層良好なものとなり、また、該硬化物の誘電正接も低くなって誘電特性が良好になる点から[1,1’−ビナフタレン]−2,2’−ジオールが特に好ましい。
ハロゲン化シアンとしては、塩化シアン、臭化シアン等が挙げられる。
なお、上記反応は、塩基性触媒の存在下を行うことが、反応性が良好となる点から好まし。ここで用いる塩基性触媒としては、トリエチルアミンやトリメチルアミン等の3級アミン類;水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;などの塩基性物質が挙げられる。
なお、上記反応は、有機溶媒存在下で行うことが好ましい。その際使用する有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒やメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、THFなどのエーテル系溶媒等が挙げられる。
・単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)
次に、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)について説明する。
単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)は、芳香環上にシアナト基を有する単環化合物が直接または連接基を介して複数結合された化合物である。
そのような単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)としては、下記構造式(B1)、または下記構造式(B2)で表されるシアン酸エステル化合物を挙げることができる。
ただし、構造式(B1)、(B2)において、Lは2価の連結基を示し、R2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、水酸基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、アリール基、若しくはアラルキル基に含まれる1以上の水素原子が、水酸基、ハロゲン原子の何れかで置換された構造の何れかを示し、pはそれぞれ独立して0〜4の整数を示す。
上記のように、Lは2価の連結基を示している。Lが示す2価の連結基としては、2価の炭化水素基、2価の炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が水酸基、アルコキシ基、若しくはハロゲン原子で置換された2価の基、2価のヘテロ原子、又はヘテロ原子を含む2価の原子団等が挙げられる。本発明でいう「2価の炭化水素基」とは、炭化水素基から2つの水素を取り除いた炭化水素のことで、「−R−(Rは炭化水素)」で表されるものを示す。また、「炭化水素」とは、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、またはこれらを組み合わせたものを示す。
Lが2価の炭化水素基を示す場合、Lとしては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基(アルキレン基及びアリーレン基を有する2価の基で、例えば「−R−Ar−R−(Rは脂肪族炭化水素、Arは芳香族炭化水素)」で表されるもの)などを挙げることができる。
かかる場合、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、プロピレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、ブチレン基、イソブチリデン基、ペンチレン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基、へキシレン基、ヘキシリデン基、イソヘキシリデン基等が挙げられる。アルケニレン基としては、ビニレン基、1−メチルビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、ペンテニレン基等が挙げられる。アルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基等が挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。アラルキレン基としては、「−R−Ar−R−(Rはアルキレン基、Arはアリーレン)」で表され、上記アルキレン基とアリーレン基を有する炭素数7〜20のアラルキレン基等が挙げられる。
Lが、2価の炭化水素基に含まれる1以上の水素原子が、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換された2価の基を示す場合、Lとしては、水酸基含有アルキレン基、アルコキシ基含有アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、水酸基含有アルケニレン基、アルコキシ基含有アルケニレン基、ハロゲン化アルケニレン基、水酸基含有アルキニレン基、アルコキシ基含有アルキニレン基、ハロゲン化アルキニレン基、水酸基含有シクロアルキレン基、アルコキシ基含有シクロアルキレン基、ハロゲン化シクロアルキレン基、水酸基含有アリーレン基、アルコキシ基含有アリーレン基、ハロゲン化アリーレン基、水酸基含有アラルキレン基、アルコキシ基含有アラルキレン基、ハロゲン化アラルキレン基が挙げられる。
水酸基含有アルキレン基としては、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシプロピレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有アルキレン基としては、メトキシメチレン基、メトキシエチレン基、メトキシプロピレン基、アリルオキシメチレン基、アリルオキシプロピレン基、プロパルギルオキシメチレン基、プロパルギルオキシプロピレン基などが挙げられる。ハロゲン化アルキレン基としては、クロロメチレン基、クロロエチレン基、クロロプロピレン基、ブロモメチレン基、ブロモエチレン基、ブロモプロピレン基、フルオロメチレン基、フルオロエチレン基、フルオロプロピレン基等が挙げられる。水酸基含有アルケニレン基としては、ヒドロキシブテニレン基、ヒドロキシペンテニレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有アルケニレン基としては、メトキシブテニレン基、エトキシヘキセニレン基等が挙げられる。ハロゲン化アルケニレン基としては、クロロプロペニレン基、ブロモペンテニレン基等が挙げられる。水酸基含有アルキニレン基としては、ヒドロキシペンチニレン基、ヒドロキシヘキシニレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有アルキニレン基としては、エトキシヘキシニレン基、メトキシへプチニレン基等が挙げられる。ハロゲン化アルキニレン基としては、クロロヘキシニレン基、フルオロオクチニレン基等が挙げられる。水酸基含有シクロアルキレン基としては、ヒドロキシシクロヘキサニレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有シクロアルキレン基としては、メトキシシクロペンタニレン基等が挙げられる。ハロゲン化シクロアルキレン基としては、ジクロロシクロペンタニレン基等が挙げられる。水酸基含有アリーレン基としては、ヒドロキシフェニレン基等が挙げられる。アルコキシ基含有アリーレン基としては、メトキシフェニレン基、エトキシフェニレン基、アリルオキシフェニレン基、プロパルギルオキシフェニレン基等が挙げられる。ハロゲン化アリーレン基としては、クロロフェニレン基、ブロモフェニレン基、フルオロフェニレン基、クロロナフチレン基、ブロモナフチレン基、フルオロナフチレン基等が挙げられる。上記のほか、Lとしては不飽和炭化水素基含有アリーレン基であってもよい。不飽和炭化水素基含有アリーレン基としては、ビニルフェニレン基、アリルフェニレン基、エチニルフェニレン基、プロパルギルフェニレン基等が挙げられる。
Lが2価のヘテロ原子、又はヘテロ原子を含む2価の原子団を示す場合、Lとしては、エーテル結合基(−O−基)、カルボニル基(−CO−基)、エステル基(−COO−基)、アミド基(−CONH−基)、イミノ基(−CCN−基)、アゾ基(−N=N−基)、スルフィド基(−S−基)、スルホニル基(―SO2―)などが挙げられる。
上記の中でも、2価の連結基Lとしては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基であることが好ましい。上記のような単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)が含まれる硬化性組成物から得られる硬化物は、優れた耐熱性を発現させることができる。
なお、R2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、水酸基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、アリール基、若しくはアラルキル基に含まれる1以上の水素原子が、水酸基、ハロゲン原子の何れかで置換された構造の何れを示すが、そのようなR2としては、R1で説明したものと同様のものを挙げることができる。
上記で説明した単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)として、具体的には、例えば、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールF型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールE型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールS型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールM型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールP型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールZ型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールAP型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールスルフィド型シアン酸エステル化合物、フェニレンエーテル型シアン酸エステル化合物、ビフェニル型シアン酸エステル化合物、テトラメチルビフェニル型シアン酸エステル化合物、ベンジル変性テトラメチルビフェニル型シアン酸エステル化合物、テトラメチルビスフェノールF型シアン酸エステル化合物、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールフルオレン型シアン酸エステル化合物などを挙げることができる。
さらに、具体的には、下記構造式(B1−1)〜(B1−20)で表される単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)が挙げられる。
上記構造式(B1−1)〜(B1−20)において、pは1〜4の整数を示し、R2が示す具体的な構造は、上記に示す通りである。
さらに、構造式(B1)、(B2)で表される単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)としては、下記構造式(B1−a)、(B2−a)で表されるシアン酸エステル化合物が、さらに好ましい。上記単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)を含む硬化性組成物は、得られる硬化物において優れた低熱膨張性を発現させることができる。
ただし、構造式(B1−a)、(B2−a)において、Lは2価の連結基、R2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1〜6の炭化水素基、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基、アリール基、若しくはアラルキル基に含まれる1以上の水素原子がハロゲン原子で置換された構造を示し、pは1〜4の整数を示している。L、R2が示す上記置換基の具体的な構造は、上記の通りである。
さらに、構造式(B1−a)で表される単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)について、2価の連結基Lは、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、アルキリデン基から構成されることが好ましく、得られる硬化物が優れた耐熱性を発現させることができることから、2価の連結基Lはメチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基から構成されることがより好ましい。
さらに、構造式(B1−a)、(B2−a)で表される単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)について、置換基R2としては、水素原子、アルキル基、アラルキル基であることが好ましく、硬化物において優れた耐熱性を発現する硬化性組成物が得られることから、水素原子から構成されることがさらに好ましい。すなわち、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)が上記構造式(B1−a)、(B2−a)で表される化合物である場合において、置換基R2が水素原子から構成される場合には、得られる硬化物が優れた耐熱性に加え、優れた低熱膨張性を発現させることができるようになる。
・単環芳香族シアン酸エステル(B)の製造方法
上記で説明した単環芳香族シアン酸エステル(B)は、単環芳香族のヒドロキシ化合物(b)と、ハロゲン化シアンとを反応させることにより得ることができる。具体的には、単環芳香族のヒドロキシ化合物(b)中のヒドロキシ基の1モルに対し、ハロゲン化シアンを1.05モル〜1.5モルとなる割合で用いて反応させる。その後、反応液に適量の水を加えて生成塩を溶解し、水洗を繰り返して系内の生成塩を除去した後に、脱水や濾別でさらに精製して、有機溶媒を蒸留で除去することで単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)を得ることができる。
このようにして得られる単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)は、シアナト基当量が80g/eq〜250g/eqの範囲であることが得られる硬化物において耐熱性、誘電特性に優れ、低熱膨張性に優れる点から好ましい。さらに好ましくは100g/eq〜200g/eqの範囲であることである。
単環芳香族のヒドロキシ化合物(b)としては、下記構造式(b1)、下記構造式(b2)で表される化合物が挙げられる。
ただし、構造式(b1)、(b2)において、R2は水酸基以外の1価の置換基を示し、pは0〜4の整数を示している。なお、R2が示す具体的な置換基は上記の通りである。
構造式(b1)で示される単環芳香族のヒドロキシ化合物(b)としては、例えば、2,2’−メチレンジフェノール、2−(3−ヒドロキシベンジル)フェノール、2−(4−ヒドロキシベンジル)フェノール、3,3’−メチレンジフェノール、3−(4−ヒドロキシベンジル)フェノール、4,4’−メチレンジフェノール、2,2’−(エタン−1,2−ジニル)ジフェノール、2−(3−ヒドロキシフェネチル)フェノール、2−(4−ヒドロキシフェネチル)フェノール、3,3’−(エタン−1,2−ジニル)ジフェノール、3−(4−ヒドロキシフェネチル)フェノール、4,4’−(エタン−1,2−ジニル)ジフェノール、などが挙げられる。
構造式(b2)で示される単環芳香族のヒドロキシ化合物(b)としては、例えば、[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジオール、[1,1’−ビフェニル]−2,3’−ジオール、[1,1’−ビフェニル]−2,4’−ジオール、[1,1’−ビフェニル]−3,3’−ジオール、[1,1’−ビフェニル]−3,4’−ジオール、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオールなどが挙げられる。
これらの中でも、硬化物の難燃性と誘電特性が一層良好となる硬化性組成物が得られることから、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオールが好ましい。
なお、本発明の硬化性組成物は、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)において、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)1質量部に対し、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)を0.1質量部〜5質量部の割合で含んでいることが好ましい。縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)が、上記の範囲で含まれていると、得られる硬化物において熱伝導率と、耐熱分解性が向上する。
なお、本発明の硬化性組成物として、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)を溶融混合し、プレポリマー化させたもの(縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)または芳香族シアン酸エステル化合物(B)が有するシアナト基の一部が3量化され、トリアジン環が生成したもの)を用いてもよい。かかる場合、シアナト基の3量化反応が過度に進行したものを用いると、上記硬化性組成物はゲル化して流動性を失ったものとなるため、硬化性組成物としては、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)または芳香族シアン酸エステル化合物(B)におけるシアナト基の反応割合が10%〜70%の範囲であるものを用いることが好ましい。さらに好ましくは20%〜60%の範囲であるものを用いることである。なお、上記シアナト基の反応割合は、赤外分光計(IR)におけるシアナト基(2270cm−1)、トリアジン環(1370cm−1)の吸収ピーク強度を、反応で変化しない芳香環由来の吸収ピーク(例えば1500cm−1)を基準にして算出することができる。
・ビスマレイミド(C)
さらに、本発明の硬化性組成物は、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)に加え、更にビスマレイミド(C)が配合されていてもよい。かかる場合、硬化性組成物において、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)1質量部に対し、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)が0.1質量部〜5質量部、ビスマレイミド(C)が0.1質量部〜5質量部の割合で含まれていることが好ましい。硬化性組成物において、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)と、ビスマレイミド(C)とが、上記の割合で含まれていると、得られる硬化物の耐熱性と耐熱分解性が向上する。
上記ビスマレイミドとは、1分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体的な例としては、4,4’―ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’―ジフェニルスルホンビスマレイミド、m―フェニレンビスマレイミド、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3、5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン等のビスマレイミド類が挙げられる。
これらの中でも特に硬化物の耐熱性が良好なものとなる点から、ビスマレイミド(C)としては、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3、5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタンが好ましい。
・エポキシ樹脂(D)
さらに、本発明の硬化性組成物は、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)に加え、エポキシ樹脂(D)を含んでいても良い。かかる場合、硬化性組成物において、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)1質量部に対し、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)が0.1質量部〜5質量部、エポキシ樹脂(D)が0.1質量部〜5質量部の割合で含まれていることが好ましい。硬化性組成物が、上記の割合で縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)と、エポキシ樹脂(D)とを含んでいると、得られる硬化物の機械強度が向上する。
さらに、本発明の硬化性組成物は、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)、ビスマレイミド(C)に加え、エポキシ樹脂(D)を含んでいてもよい。かかる場合、硬化性組成物において、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)1質量部に対し、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)を0.1質量部〜5質量部、ビスマレイミド(C)を0.1質量部〜5質量部、エポキシ樹脂(D)を0.1質量部〜5質量部の割合で含んでいることが好ましい。硬化性組成物が、上記の割合で縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)と、ビスマレイミド(C)と、エポキシ樹脂(D)とを含んでいると、得られる硬化物において耐熱分解性、機械強度が向上する。
ここで用いるエポキシ樹脂(D)は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル変性フェノール型エポキシ樹脂(フェノール骨格とビフェニル骨格がビスメチレン基で連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール型エポキシ樹脂(フェノール骨格とビフェニル骨格がビスメチレン基で連結された多価ナフトール化合物)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのなかでもフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂や、ナフタレン骨格を含有するナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂や、結晶性のビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂や、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック型エポキシ樹脂(ホルムアルデヒドでグリシジル基含有芳香環及びアルコキシ基含有芳香環が連結された化合物)、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等が耐熱性に優れる硬化物が得られる点から特に好ましい。
・硬化促進剤(E)
さらに、本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、硬化促進剤(E)を含んでいても良い。硬化促進剤(E)としては種々のものが使用できるが、例えば、フェノール類、アミン類、ルイス酸類、3級スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、エポキシ基含有化合物などが挙げられる。これらの中でも、硬化性組成物が縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)から構成される場合、ノニルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、銅、鉛、スズ、マンガン、ニッケル、鉄、亜鉛、コバルト等のカルボン酸塩、チタンテトラ-n-ブトキシドとそのポリマー、銅、ニッケル、コバルト等のペンタジオナート塩、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ(メチルフェニル)ボレート、オクチル酸亜鉛が好ましい。硬化促進剤が上記のように構成されると、硬化促進剤は、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)との相溶性が高くなり、硬化反応が円滑に進行する。さらに、これらの中でも硬化促進剤としては、テトラフェニルホスホニウムテトラ(メチルフェニル)ボレートが特に好ましい。硬化促進剤がテトラフェニルホスホニウムテトラ(メチルフェニル)ボレートから構成されると、さらに早く硬化反応が進行する。かかる場合、硬化促進剤(B)の使用量は、例えば、シアン酸エステル化合物(A)100質量部あたり0.001質量部〜1.00質量部であることが好ましい。
なお、硬化性組成物が、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)に加え、ビスマレイミド(C)やエポキシ樹脂(D)も含む場合には、得られる硬化物が優れた硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等を発現させることができるようになる点から、硬化促進剤としては、トリフェニルフォスフィン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)、ベンジルジメチルアミン、イミダゾ−ルを用いることが好ましい。
・硬化剤
さらに、本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、硬化剤を適宜含んでいても良い。ここで用いることのできる硬化剤としては、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの硬化剤を使用できる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(フェノール骨格とビフェニル骨格がビスメチレン基で連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)、ナフチレンエーテル樹脂等の多価フェノール化合物が挙げられる。
上記の中でも、得られる硬化物において、優れた難燃効果を発現させたい場合は、特に芳香族骨格を分子構造内に多く含む樹脂を用いることが好ましい。そのような樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、ナフチレンエーテル樹脂を挙げることができる。また、上記の中でも、得られる硬化物において、優れた誘電特性を発現させたい場合は、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂が好ましい。
上記した硬化剤を併用する場合、その使用量は、本発明が奏する効果が十分に発揮されることから、全硬化性組成物中、10質量%〜50質量%の範囲で含まれることが好ましい。
・熱硬化性樹脂
さらに、上記硬化性組成物には、熱硬化性樹脂を適宜含んでいても良い。熱硬化性樹脂としては、例えば、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、1分子中に1個のマレイミド基を有するモノマレイミド化合物、活性エステル樹脂、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、スチレンとマレイン酸無水物の共重合物などが挙げられる。上記した他の熱硬化性樹脂を併用する場合、その使用量は本発明の効果を阻害しなければ特に制限をうけないが、硬化性組成物100質量部中、1質量部〜50質量部の範囲であることが好ましい。
上記シアン酸エステル樹脂は、例えば、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアン酸エステル樹脂、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂、クレゾールノボラック型シアン酸エステル樹脂、トリフェニルメタン型シアン酸エステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアン酸エステル樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型シアン酸エステル樹脂、フェノールアラルキル型シアン酸エステル樹脂、ナフトールノボラック型シアン酸エステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型シアン酸エステル樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型シアン酸エステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアン酸エステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアン酸エステル樹脂、アントラセン型シアン酸エステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
これらのシアン酸エステル樹脂の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ポリヒドロキシナフタレン型シアン酸エステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル樹脂、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂、クレゾールノボラック型シアン酸エステル樹脂、ナフトールノボラック型シアン酸エステル樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型シアン酸エステル樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型シアン酸エステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアン酸エステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型シアン酸エステル樹脂が好ましい。
上記ベンゾオキサジン樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールFとホルマリンとアニリンの反応生成物(F−a型ベンゾオキサジン樹脂)やジアミノジフェニルメタンとホルマリンとフェノールの反応生成物(P−d型ベンゾオキサジン樹脂)、ビスフェノールAとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルエーテルとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジアミノジフェニルエーテルとホルマリンとフェノールの反応生成物、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂とホルマリンとアニリンの反応生成物、フェノールフタレインとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジフェニルスルフィドとホルマリンとアニリンの反応生成物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
1分子中に1個のマレイミド基を有するモノマレイミド化合物は、例えば、下記構造式(i)で表される各種の化合物等が挙げられる。
上記式(i)中、Rはシアナト基以外の1価の置換基であり、x及びyはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基の何れかを示している。
Rとしては、R1、R2で説明した置換基と同様の置換基を挙げることができるが、特に、ヒドロキシフェニル基、プロペニル基、プロピニル基、アリルフェニル基、プロパルギルフェニル基、アリルヒドロキシフェニル基、プロパルギルヒドロキシフェニル基であることが好ましい。上記のように、Rが構成されると、得られる硬化物において耐熱性が向上する。
活性エステル樹脂としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。上記の他の活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物又はそのハライドとヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物又はそのハライドと、フェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等、又はそのハライドが挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂等が挙げられる。活性エステル樹脂として、具体的にはジシクロペンタジエン−フェノール付加構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂等が好ましく、なかでもピール強度の向上に優れるという点で、ジシクロペンタジエン−フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。ジシクロペンタジエン−フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂として、より具体的には下記一般式(ii)で表される化合物が挙げられる。
式中、Rはフェニル基又はナフチル基であり、kは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05〜2.5を示す。
なお、硬化物の誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させるという観点から、Rはナフチル基が好ましく、kは0が好ましく、また、nは0.25〜1.5が好ましい。
・難燃剤
また、上記硬化性組成物は、難燃性を発揮させるために、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を適宜含んでいても良い。
上記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
上記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、上記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(1)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(2)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(3)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
上記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)、非ハロゲン系難燃剤、及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1質量部〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1質量部〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5質量部〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
また上記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
上記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
上記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(1)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(2)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(3)上記(2)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(4)上記(2)、(3)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
上記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
上記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)、非ハロゲン系難燃剤、及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05質量部〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1質量部〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
また上記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
上記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
上記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)、非ハロゲン系難燃剤、及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05質量部〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また上記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
上記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
上記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
上記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
上記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
上記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
上記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
上記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
上記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)、非ハロゲン系難燃剤、及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05質量部〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5質量部〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
上記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
上記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)、非ハロゲン系難燃剤、及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.005質量部〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
・無機充填材
上記硬化性組成物には、必要に応じて無機質充填材を適宜含んでいても良い。上記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。上記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。上記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
・有機溶剤
さらに、本発明の硬化性組成物は、有機溶剤を適宜含んでいても良い。ここで使用し得る上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得る。
・配合剤
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を含んでいても良い。
・硬化物
本発明の硬化性組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。そのような硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。なお、硬化物を得る方法としては、一般的な硬化性組成物の硬化方法に準拠すればよいが、例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよいが、上記方法によって得られた組成物を、20℃〜300℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
<硬化性組成物の用途>
本発明の硬化性組成物の用途としては、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、樹脂注型材料、接着剤、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、導電ペースト、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、繊維強化複合材料、上記複合材料を硬化させてなる成形品等が挙げられる。これら各種用途のうち、プリント配線板材料、回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。なお、上記の中でも、硬化物が優れた耐熱性、誘電特性、低膨張率性を発現させることのできるといった特性を生かし、本発明の硬化性組成物は、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、フレキシルブル配線基板、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、多層プリント配線板、繊維強化複合材料、上記複合材料を硬化させてなる成形品に用いることが好ましい。以下に、本発明の硬化性組成物から、上記半導体封止材料などを製造する方法について説明する。
・半導体封止材料
上記硬化性組成物から半導体封止材料を得る方法としては、必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて、硬化性組成物、硬化促進剤、及び無機充填剤等の配合剤とを均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材を製造する場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などの高充填化、又は溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は硬化性組成物100質量部当たり、無機充填剤を30質量部〜95質量部の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
・半導体装置
上記硬化性組成物から半導体装置を得る方法としては、上記半導体封止材料を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50℃〜200℃で2時間〜10時間の間、加熱すればよい。
・プリプレグ
上記硬化性組成物からプリプレグを得る方法としては、有機溶剤を配合してワニス化した硬化性組成物を、補強基材(紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布など)に含浸したのち、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50℃〜170℃で加熱することによって、得る方法が挙げられる。この時用いる組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が、全体の20質量%〜60質量%となるように調製することが好ましい。
ここで用いる有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、下記のようにプリプレグからプリント回路基板をさらに製造する場合には、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤を用いることが好ましく、また、不揮発分が、全体の40質量%〜80質量%となる割合で用いることが好ましい。
・回路基板
上記硬化性組成物から回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1MPa〜10MPaの加圧下に170℃〜300℃で10分〜3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
・フレキシルブル配線基板
上記硬化性組成物からレキシルブル配線基板を得る方法としては、以下に示す3つの工程から製造する方法が挙げられる。
工程1:リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルム上に、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)と有機溶剤を配合した硬化性組成物からなる樹脂絶縁層を形成する工程。
工程2:加熱機を用いて60℃〜170℃で1分〜15分の間、樹脂絶縁層が形成された電気絶縁性フィルム加熱し、溶媒を電気絶縁性フィルムから揮発させて、樹脂絶縁層をB−ステージ化する工程。
工程3:加熱ロール等を用いて、樹脂絶縁層と金属箔を熱圧着(圧着圧力は20N/cm〜200N/cm、圧着温度は40℃〜200℃が好ましい)する工程。
なお、上記の3つの工程を経ることで、樹脂絶縁層と金属箔との間で十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全な接着性能が必要な場合は、さらに100℃〜200℃、1時間〜24時間の間、樹脂絶縁層を後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の樹脂絶縁層の厚みは、5μm〜100μmの範囲が好ましい。
・ビルドアップ基板
上記硬化性組成物からビルドアップ基板を得る方法としては、以下に示す3つの工程から製造する方法が挙げられる。
工程1:ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記硬化性組成物を、回路が形成された回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させ、回路基板上に硬化性組成物からなる樹脂絶縁層を形成する工程。
工程2:必要に応じて、回路基板に所定のスルーホール部等の穴あけと表面処理を行い、凹凸を形成したのち、銅などの金属をめっき処理する工程。
工程3:所望に応じて、上記操作を順次繰り返し、樹脂絶縁層と金属めっき導電層を交互にビルドアップして形成する工程。
なお、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で上記硬化性組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170℃〜250℃で加熱圧着することで、作製することも可能である。
・ビルドアップフィルム
上記硬化性組成物からビルドアップ基板を得る方法としては、支持フィルム上に上記硬化性組成物を塗布する方法を挙げることができる。
上記ビルドアップフィルムを製造する場合、支持フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板へのラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な場所に流動することが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、回路基板のスルホールの直径は通常0.1mm〜0.5mm、深さは通常0.1mm〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムは、具体的には、ワニス状の上記硬化性組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、上記ワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性組成物からなる樹脂絶縁層を支持フィルム上に形成することにより製造することができる。
形成される樹脂絶縁層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5μm〜70μmの範囲であるので、組成物層の厚さは10μm〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、本発明における樹脂絶縁層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
上記した支持フィルムと保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10μm〜150μmであり、好ましくは25μm〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1μm〜40μmとするのが好ましい。
支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
・多層プリント配線板
なお、上記のようして得られたフィルムを用いて多層プリント配線板を製造することもできる。そのような多層プリント配線板の製造方法は、例えば、樹脂絶縁層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、樹脂絶縁層を回路基板に直接、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃〜140℃、圧着圧力を好ましくは9.8×104Pa〜107.9×104Paとし、空気圧を26.7hPa以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
・繊維強化複合材料
上記硬化性組成物から繊維強化複合材料(上記硬化性組成物が強化繊維に含浸したシート状中間素材)を製造する方法としては、硬化性組成物を構成する各成分を均一に混合してワニスを調整し、次いでこれを強化繊維からなる強化基材に含浸した後、重合反応させることにより製造することができる。
かかる重合反応を行う際の硬化温度は、具体的には、50℃〜250℃の温度範囲であることが好ましく、特に、50℃〜100℃で硬化させ、タックフリー状の硬化物にした後、更に、120℃〜200℃の温度条件で処理することが好ましい。
ここで、強化繊維は、有撚糸、解撚糸、又は無撚糸などいずれでも良いが、解撚糸や無撚糸が、繊維強化プラスチック製部材の成形性と機械強度を両立することから、好ましい。さらに、強化繊維の形態は、繊維方向が一方向に引き揃えたものや、織物が使用できる。織物では、平織り、朱子織りなどから、使用する部位や用途に応じて自由に選択することができる。具体的には、機械強度や耐久性に優れることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。これらの中でもとりわけ成形品の強度が良好なものとなる点から炭素繊維が好ましく、かかる、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できる。中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られるポリアクリロニトリル系のものが好ましい。ここで、ワニスを強化繊維からなる強化基材に含浸して繊維強化複合材料とする際の強化繊維の使用量は、該繊維強化複合材料中の強化繊維の体積含有率が40%〜85%の範囲となる量であることが好ましい。
・成形品
本発明の硬化性組成物から成形品(組成物が強化繊維に含浸したシート状部材が硬化したもの)を得る方法としては、上記繊維強化複合材料を所定の寸法に裁断後、所定枚数を積層した積層物に熱と圧力を加えながら、硬化性組成物を硬化させる方法を用いることができる。
熱と圧力を加えながら、硬化性組成物を加熱硬化させる方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、および内圧成形法などがある。
例えば、板状の成形品を成形する方法としては、シート状の繊維強化複合材料を所定の寸法に裁断後、剛体ツール上に所定枚数、所定の繊維軸方向に積層する。次に、繊維強化複合材料を可撓性フィルムでシールし、剛体ツールと可撓性フィルムの間を真空ポンプにて吸引して脱気したのち、オートクレーブに設置し、加熱、加圧することで成形品を得ることができる。
ここで、剛体ツールの材質としては、スチールやアルミニウム等の金属、繊維強化プラスチック(FRP)、木材および石膏など既存の各種のものが用いられる。可撓性のフィルムの材料には、ナイロン、フッ素樹脂およびシリコーン樹脂等が用いられる。
成形品を成形する温度としては、通常80℃〜220℃の温度範囲で調整される。より好ましくは、50℃〜250℃の温度範囲であり、特に、50℃〜100℃で予備硬化させ、タックフリー状の硬化物にした後、更に、120℃〜200℃の温度条件で処理することが好ましい。かかる成形温度が低すぎると、十分な速硬化性が得られない場合があり、逆に高すぎると、熱歪みによる反りが発生しやすくなったりする場合がある。
また、成形品を成形する圧力としては、プリプレグの厚みや体積含有率などにより異なるが、通常9.8Pa〜980Paの圧力範囲で調整される。かかる成形圧力が低すぎると、繊維強化複合材料の内部まで十分に熱が伝わらず、局所的に未硬化となったり、反りが発生したりする場合がある。逆に高すぎると、樹脂が硬化する前に周囲に流れ出してしまい、成形品に未含浸部分が発生したり、目的とする体積含有率が得られなかったりする場合がある。
本発明の硬化性組成物から成形品を得る他の方法としては、金型に繊維骨材を敷き、ワニスを多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法、オス型・メス型のいずれかを使用し、強化繊維からなる基材にワニスを含浸させながら積み重ねて成形、圧力を成形物に作用させることのできるフレキシブルな型をかぶせ、気密シールしたものを真空(減圧)成型する真空バッグ法、あらかじめ強化繊維を含有するワニスをシート状にしたものを金型で圧縮成型するSMCプレス法、繊維を敷き詰めた合わせ型に上記ワニスを注入するRTM法などにより、強化繊維に上記ワニスを含浸させたプリプレグを製造し、これを大型のオートクレーブで焼き固める方法などが挙げられる。なお、上記で得られた成形品は、強化繊維と硬化性組成物の硬化物とを有する成形品であり、具体的には、成形品中の強化繊維の体積含有率は、40%〜85%の範囲であることが好ましく、強度の点から50%〜70%の範囲であることが特に好ましい。
・硬化物
上記硬化性組成物から硬化物を製造する方法としては、一般的な硬化性組成物の硬化方法に準拠することにより製造することができる。例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよい。
この様にして得られる硬化物は、上記した通り優れた耐熱性、誘電特性、低膨張率性、密着性に優れ、種々の電子材料に用いることができるものである。
従って、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)と、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)とを含有する硬化性組成物は、硬化物において優れた耐熱性、誘電特性、低膨張率性、密着性を発現させることができ、最先端の電子材料として使用できるものである。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、MSスペクトル、IRスペクトルは以下の条件にて測定した。
FD−MS:日本電子株式会社製「JMS−T100GC AccuTOF」を用いて測定した。
測定範囲:m/z=4.00〜2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:−10kV
記録間隔:0.07sec
IR:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Nicolet iS10」を用い、KBr法で測定した。
〔合成例1〕 縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)の合成
滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、臭化シアン106g(1.0モル)と2,7−ジヒドロキシナフタレン80.0g(0.5モル)を仕込みアセトン1000gに溶解させた後、−3℃に冷却した。次に、トリエチルアミン111g(1.1モル)を滴下ロートに仕込み、攪拌しながらフラスコ内温が10℃以上にならない様な速度で滴下した。滴下終了後、2時間10℃以下の温度下で攪拌し、生じた沈澱を濾過により除いた。その後、アセトンを除去、塩化メチレン1000gを加え、水洗することにより反応物を得た。次に、得られた反応物について、IRスペクトル測定とMSスペクトル測定を行った。その結果、得られたIRスペクトルにおいて2260cm−1(シアン酸エステル基)の吸収を観測できたが、水酸基由来の吸収は観測できなかった。また、得られたマススペクトルにおいてM+=210のピークを観測することができた。上記の結果より、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A−1)が合成できたことを確認した。
〔合成例2〕縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)の合成
合成例1の2,7−ジヒドロキシナフタレン80.0g(0.5モル)を1,6−ジヒドロキシナフタレン80.0g(0.5モル)に変更する以外は、合成例1と同様の操作で、反応物を得た。次に、得られた反応物について、IRスペクトル測定と、MSスペクトル測定を行った。その結果、得られたIRスペクトルにおいて2260cm−1(シアナト基)の吸収を観測できたが、水酸基由来の吸収は観測できなかった。また、得られたマススペクトルにおいてM+=210のピークを観測することができた。上記の結果より、反応物は、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A−2)であることを確認した。
〔実施例1〜比較例2〕硬化性組成物、硬化物の作成
次に、表1に示すように、縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)、単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)、ビスマレイミド(C)、エポキシ樹脂(D)、硬化促進剤(E)、水酸化アルミニウム(F)、溶融シリカ(G)とをそれぞれ調整して、実施例1〜比較例2の硬化性組成物を得た。表1に示された各記号については、以下の化合物又は樹脂を示す。
(1)縮合多環芳香族シアン酸エステル化合物(A)
A−1:合成例1で得たシアン酸エステル化合物
A−2:合成例2で得たシアン酸エステル化合物
(2)単環芳香族シアン酸エステル化合物(B)
B−1:2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン
東京化成工業株式会社製
B−2:1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン
Lonza社製 「LECy」
(3)ビスマレイミド(C)
C−1:4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド
大和化成工業株式会社製 「BMI−1000」
(4)エポキシ樹脂(D)
D−1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂
DIC株式会社製 「850−S」
D−2:ナフタレン型エポキシ樹脂
DIC株式会社製 「HP−6000」
(5)硬化促進剤(E)
E−1:ジメチルベンジルアミン
E−2:テトラフェニルホスホニウムテトラ(メチルフェニル)ボレート
北興化学工業株式会社製 「TPP−MK」
(6)水酸化アルミニウム(F)
F−1:水酸化アルミニウム
住友化学株式会社製 「CL303」
(7)溶融シリカ(G)
G−1:溶融シリカ
電気化学工業株式会社製 「FB3SDC」
次に、上記で得られた硬化性組成物について、プレス機を用いて200℃の温度で10分間成型したのち、200℃の温度で5時間、加熱して厚さ0.8mmの硬化物を得た。得られた硬化物について、ガラス転移温度、熱膨張性、誘電正接、耐熱分解性、熱伝導性の測定を行った。上記測定の測定方法を下記に示し、その結果を表1に示す。
<ガラス転移温度>
硬化物を厚さ0.8mm、幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、これを試験片1とした。この試験片1を粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、レクタンギュラーテンション法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度とした。
<熱膨張性>
硬化物を厚さ0.8mm、幅5mm、長さ5mmのサイズに切り出し、これを試験片2とした。この試験片2を熱機械分析装置(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製、TMA/SS 6100、昇温速度:3℃/分)を用いて40℃〜60℃の範囲の膨張率を測定した。
<誘電正接>
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片1の1GHzでの誘電正接を測定した。
<耐熱分解性>
示差熱−熱重量同時測定装置(メトラー・トレド社製「TGA/DSC1」)を用い、質量が6mgとなる大きさに切り出した試験片を150℃で15分間保持した後、窒素ガスフロー条件下、毎分5℃で昇温し、質量の5%が減少した時の温度を測定した。
<熱伝導性>
熱導率計(京都電子株式社製QTM−500)を用いて試験片1の熱伝導性を非定常熱線法により測定した。
<密着性>
密着性の測定は、JIS−C6481に準拠しピール強度を測定することにより行った。その結果を表1に示す。なお、密着性の測定に使用した硬化物は、実施例1〜比較例2で得られた硬化性組成物の下に18μmの銅箔(日鉱金属株式会社製 TCR箔)を置き、プレス機器を用いて200℃の温度で10分間成型した後、5時間の間200℃の温度をかけることにより得られた硬化物(厚さ:0.8mm)を用いた。