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JP6488147B2 - 基質結合力調整剤及びこれを用いた分子センサ並びにその使用方法 - Google Patents

基質結合力調整剤及びこれを用いた分子センサ並びにその使用方法 Download PDF

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Description

本発明は、糖質その他の基質と当該基質に対して特異性を持つ分子センサとの結合力を調整する基質結合力調整剤に係り、特に、基質と分子センサとの結合力を変化させることを企図した基質結合力調整剤及びこれを用いた分子センサ並びにその使用方法に関する。
糖質(グルコース等)その他の基質を検出する分子センサは既に広く知られている(例えば特許文献1,2)。
特許文献1には、基質特異性を有する酵素などを固定化した分子識別部を、分子識別部による測定対象側の物理的または化学的な変化を感知して電気信号に変える検出手段に組み合わせたバイオセンサにおいて、検出手段に、被感知物を検出手段のセンサ感応部へ引き寄せる応答促進用の吸引機構を備えた態様が開示されている。
特許文献2には、所定の化学式からなる完全合成系のフェニルボロン酸化合物を結合させる検出デバイスを用いた態様のバイオセンサが開示されている。
特開平5−18931号公報(実施例,図1) 特開2012−26839号公報(発明を実施するための形態,図2)
T. D. James, K. R. A. S. Sandanayake, R. Iguchi, S. Shinkai, J. Am. Chem. Soc., 117, 8982-8987 (1995)
特許文献1の酵素反応を用いた方式では、タンパク変性によって糖類の検出性能が低下し、多くの場合長期保存が困難である。
これに対し、特許文献2では、タンパク質を含まない完全合成系のフェニルボロン酸化合物を用いているため、タンパク変性の問題を除去し、糖類の安定した検出性能を実現することが可能である。
一般に、糖尿病診断に当たり、ヒトの血糖値は正常なヒトから糖尿病のヒトまでを想定すると、数mg/dL〜数千mg/dLという広い濃度域を検出することが必要である。
ところが、特許文献2で示す方式のバイオセンサでは、ヒトの血糖濃度域よりも狭い範囲しか検出することができず、検体を希釈しなければ検出には向かない。
しかしながら、検体を希釈すると、最大で数百倍の希釈が必要となる場合もあり、希釈誤差が生じたり、血糖値によって希釈倍率の調整も必要になるため、希釈を伴わずに、広い血糖濃度域での検出を可能とするバイオセンサの開発が強く要望されている。また、その他の基質を検出する分子センサについても同様の要望がある。
このような要望に鑑み、本発明が解決しようとする技術的課題は、基質と分子センサとの間の結合力を変化させることを可能とする新規な基質結合力調整剤及びこれを用いた分子センサ並びにその使用方法を提供するものである。
請求項1に係る発明は、予め決められた基質に対して特異性のある因子を持つ分子センサが含まれる溶液に添加され、前記基質と前記分子センサとの結合力を調整する基質結合力調整剤であって、前記基質及び前記因子とは不活性であって、前記因子が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すると共に、前記因子の前記基質に対する会合定数(Ka/M−1)を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体として、以下の一般式(1)で表されるもののうち、アンモニウム基に炭素鎖が3以上のアルキル鎖をもつベタイン誘導体を含むことを特徴とする基質結合力調整剤である。
Figure 0006488147
ここで、R1からR3は均一であっても不均一であってもよく、炭素数が1以上12以下、好ましくは炭素数が2以上8以下、さらに好ましくは炭素数が3以上7以下のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基のいずれかであり、その総炭素数が3以上24以下、好ましくは総炭素数が6以上18以下、さらに好ましくは総炭素数が12以上15以下であり、また、R6は炭素数が1以上10以下、好ましくは炭素数が1以上10以下のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基のいずれかである。
請求項に係る発明は、予め決められた基質に対して特異性のある因子を持つ分子センサが含まれる溶液に添加され、前記基質と前記分子センサとの結合力を調整する基質結合力調整剤であって、前記基質及び前記因子とは不活性であって、前記因子が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すると共に、前記因子の前記基質に対する会合定数(Ka/M −1 )を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体として、テトラアルキルアンモニウム塩若しくは誘導体を含むことを特徴とする基質結合力調整剤である。
請求項に係る発明は、予め決められた基質に対して特異性のある因子を持つ分子センサが含まれる溶液に添加され、前記基質と前記分子センサとの結合力を調整する基質結合力調整剤であって、前記基質及び前記因子とは不活性であって、前記因子が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すると共に、前記因子の前記基質に対する会合定数(Ka/M −1 )を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体として、高分子の分子量が1000以上4000000以下のポリエチレングリコール若しくはその誘導体又は高分子の分子量が1000以上360000以下のポリビニルピロリドン若しくはその誘導体を含むことを特徴とする基質結合力調整剤である。
請求項に係る発明は、請求項1乃至のいずれかに係る基質結合力調整剤において、前記基質が糖質であることを特徴とする基質結合力調整剤である。
請求項に係る発明は、請求項に係る基質結合力調整剤において、前記基質が糖質としてのグルコースであるとき、前記分子センサの会合定数を3倍から100倍の比率で調整することを特徴とする基質結合力調整剤である。
請求項に係る発明は、予め決められた基質に対して特異性を持つ分子センサであって、前記基質に対して特異性のある因子と、前記基質と前記因子との結合力を調整する基質結合力調整剤と、を含み、前記基質結合力調整剤は、前記基質及び前記因子とは不活性であって、前記因子が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すると共に、前記因子の前記基質に対する会合定数(Ka/M−1)を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体として、請求項1乃至3のいずれかに係るものを含むことを特徴とする分子センサである。
請求項に係る発明は、請求項に係る分子センサにおいて、前記基質が糖質であることを特徴とする分子センサである。
請求項に係る発明は、請求項に係る分子センサを、基質を検出する試薬として使用するに際し、前記分子センサの因子及び基質結合力調整剤を試薬溶液中に共存させた後、当該試薬溶液中に検体を混入して平衡状態に至るように撹拌し、前記因子と前記検体中の基質との結合度合を算出することを特徴とする分子センサの使用方法である。
請求項1乃至に係る発明によれば、基質と分子センサとの結合力を変化させ、分子センサによる検出可能な基質濃度域を変化することができる。
請求項に係る発明によれば、基質としての糖質と分子センサとの結合力を変化させ、分子センサによる検出可能な糖質濃度域を変化することができる。
請求項に係る発明によれば、基質としての糖質であるグルコースと分子センサとの結合力を変化させ、分子センサによる検出可能なグルコース濃度域を変化することができる。
請求項に係る発明によれば、基質との結合力を変化させ、容易に基質の検出範囲を変化することが可能な分子センサを提供することができる。
請求項に係る発明によれば、基質としての糖質との結合力を変化させ、容易に糖質の検出範囲を変化することが可能な分子センサを提供することができる。
請求項に係る発明によれば、分子センサを基質検出用の試薬として使用するに際し、試薬溶液に基質結合力調整剤を添加するという簡単な操作で、基質と分子センサとの結合力を変化させ、基質の検出範囲を変化することができる。
(a)は本発明に係る基質結合力調整剤及びこれを用いた分子センサの実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す基質結合力調整剤の使用の有無による分子センサの出力を模式的に示す説明図である。 (a)は実施例1で用いられる分子センサを示す説明図、(b)は(a)に示す分子センサが糖質不在下では蛍光性を示さない動作原理を示す説明図、(c)は(a)に示す分子センサが糖質存在下で蛍光性を示す動作原理を示す説明図である。 実施例1で用いられる基質結合力調整剤の構造を示す説明図である。 実施例1において、基質結合力調整剤としてベタイン1〜5を0.5M含む溶液における分子センサの蛍光糖質滴定プロットを示すグラフ図である。 実施例1において、基質結合力調整剤として、TBAC、アセトアミド、DME、DMFを0.5M含む溶液における分子センサの蛍光糖質滴定プロットを示すグラフ図である。 実施例1において、基質結合力調整剤として、PEG600、PEG6000、PVPをモノマ濃度換算で0.5M含む溶液における分子センサの蛍光糖質滴定プロットを示すグラフ図である。 (a)は実施例1で用いられるベタイン型添加剤を添加しないときの分子センサの蛍光糖質滴定プロットを示すグラフ図、(b)は(a)におけるBenesi−Hildebrandtプロットを示すグラフ図である。 (a)は実施例1で用いられるベタイン型添加剤(本例ではベタイン4)を添加したときの分子センサの蛍光糖質滴定プロットを示すグラフ図、(b)は(a)におけるBenesi−Hildebrandtプロットを示すグラフ図である。 実施例2において、基質結合力調整剤として、ベタイン1を0〜0.75Mの濃度で含む溶液における分子センサの蛍光糖質滴定プロットを示すグラフ図である。 実施例2において、基質結合力調整剤として、ベタイン5を0〜0.75Mの濃度で含む溶液における分子センサの蛍光糖質滴定プロットを示すグラフ図である。 実施例4において、基質結合力調整剤非存在下、グルコースのみ、及び、夾雑物としてフルクトース、ガラクトースを夫々1.0×10−4Mずつ含む溶液中における分子センサのグルコース濃度に対する検量線をそれぞれ示す説明図である。 実施例4において、基質結合力調整剤としてベタイン4を0.25Mの濃度で、グルコースのみ、及び、夾雑物としてフルクトース、ガラクトースを夫々1.0×10−4Mずつ含む溶液中における分子センサのグルコース濃度に対する検量線をそれぞれ示す説明図である。
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された分子センサの実施の形態の概要を示す説明図である。
同図において、分子センサ2は、予め決められた基質1に対して特異性を持つものであって、基質1に対して特異性のある因子3と、基質1と因子3との結合力を調整する基質結合力調整剤4と、を含み、基質結合力調整剤4は、基質1及び因子3とは不活性であって、因子3が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すると共に、因子3の基質1に対する会合定数(Ka/M−1)を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体を含むものである。
本実施の形態において、基質1には、主としては糖尿病診断等の糖質(グルコースなど)を想定するものであるが、これに限られるものではなく、イオン成分、うまみ成分、栄養素成分、環境成分、生理活性成分、疾患関連成分、香り成分等を広く含むものである。
また、分子センサ2は、所定の基質1に対して特異性のある因子3を少なくとも備えていることを要し、当該因子3は、図1(a)に示すように、所定の基質1に対して特異的に反応して結合物5に変化するため、この結合物5の出現度合を定量することによって、基質1の存在量を検出することが可能である。このとき、この結合物5の出現度合の定量方式については、分子センサ2の特性を考慮し、蛍光スペクトル、吸収スペクトル、化学発光スペクトル、円二色性スペクトル、電気化学的シグナル等の変化から定量することが可能である。
また、基質結合力調整剤4は、以下の要件を具備することを要する。
つまり、
(1)基質1及び因子3とは不活性であること、
(2)因子3が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すること、
(3)因子3の基質1に対する会合定数(Ka/M−1)を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体であること、
を要する。
(1)については、基質結合力調整剤4が基質1又は因子3に対し活性であると、基質結合力調整剤4が基質1と因子3との結合反応に影響してしまい、分子センサによる基質の検出量に誤差が含まれる点で好ましくない。
(2)については、基質結合力調整剤4が溶液に対して非溶解であると、溶液内に均一に分布し難い点で好ましくない。また、溶液に対する基質結合力調整剤4の濃度については分子センサ2の因子3の濃度や検出すべき基質1の量に応じて基質結合力調整剤4の基質1との結合力を調整するという作用を発揮する範囲であれば適宜選定して差し支えないが、基質結合力調整剤4の特性によっては濃度を高く設定し過ぎると、溶液の粘度が上昇し、分子センサ2の応答速度が低下する懸念がある。
更に、会合定数(Ka/M−1)は、所定の基質1、当該基質1に特異性のある因子3を持つ分子センサ2、並びに、基質1及び因子3の複合体である結合物5が溶液中で平衡状態にあるとき、夫々の濃度を〔A〕、〔B〕、〔AB〕とすると、以下の式(イ)が成立する。
Ka=〔AB〕/〔A〕・〔B〕 ……(イ)
このとき、基質結合力調整剤4を添加しない場合には、会合定数Kaは温度、pH、粘度等の溶液物性が変化しない限りは、分子センサ2と基質1との組み合わせによって一義的に決まる。
このような環境下において、溶液中に基質結合力調整剤4を添加すると、この基質結合力調整剤4が水溶液に溶解することで、間接的に基質1と因子3との結合力を変化させる作用を奏するものと推察される。
本実施の形態では、基質結合力調整剤4の添加の結果、会合定数Kaが基質結合力調整剤4を使用しない場合の値αとの比が変われば、基質1と因子3との結合力が変化することになるが、会合定数Kaの変化率が小さい場合には、基質結合力調整剤4による結合力の変化率も小さいことから、本例では、会合定数Kaとαとの比が3倍以上になることを目安として選定することにした。
今、基質結合力調整剤4を添加せずに、基質1と分子センサ2の因子3とが会合定数Ka=αで結合する比較の態様によれば、例えば図1(b)の一点鎖線Iに示すように、基質1と因子3との結合物5の量に相当する出力信号は、基質1の濃度に応じて変化する。このとき、結合物5の量に相当する出力信号のうち基質1の濃度に応じた変化が検出可能な範囲(例えば出力信号の検出下限値と検出上限値との範囲)は、図1(b)において例えばS’で示す領域である。
これに対し、本実施の形態にあっては、基質結合力調整剤4を添加することで、基質1と分子センサ2の因子3との会合定数Ka(3倍以上の比になると仮定する)が変化し、基質1と因子3との結合物5の生成量が抑制されることになり、例えば図1(b)の実線IIに示すように、基質1と因子3との結合物5の量に相当する出力信号は、基質1の濃度に応じて、図1(b)のSで示す領域にシフトする。
次に、本実施の形態で用いられる基質結合力調整剤4の代表的態様としては例えば以下のものが挙げられる。
(a)以下の一般式(1)で表される化合物又はそれらの塩若しくは誘導体。
Figure 0006488147
ここで、R1からR3は均一であっても不均一であってもよく、炭素数が1以上12以下、好ましくは炭素数が2以上8以下、さらに好ましくは炭素数が3以上7以下のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基のいずれかであり、その総炭素数が3以上24以下、好ましくは総炭素数が6以上18以下、さらに好ましくは総炭素数が12以上15以下であり、また、R6は炭素数が1以上10以下、好ましくは炭素数が1以上10以下のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基のいずれかである。
(b)テトラアルキルアンモニウム塩若しくは誘導体。
ここで、アンモニウム基に導入されるアルキル基は均一であっても不均一であってもよく、炭素数が1以上11以下、好ましくは炭素数が2以上8以下、さらに好ましくは炭素数が3以上5以下であり、その総炭素数が4以上32以下、好ましくは8以上24以下、さらに好ましくは12以上20以下である。例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラペンチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムクロリド、テトラヘプチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラデシルアンモニウムクロリド、テトラウンデシルアンモニウムクロリド、ジブチルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、エチルトリプロピルアンモニウムクロリド、トリブチルメチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドなどがある。また、対アニオンはどのような構造であってもよく、上記クロライドの代わりに、フロオリド、ブロミド、ヨージド、ヒドロキシド、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、ヘキサフルオロフェスフェート、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオンなどを用いてもよい。
(c)ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン若しくはその誘導体又はポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ-N,N-ジメチルアクリルアミド若しくはその共重合体。
ここで、使用に適した高分子の分子量は、例えば、ポリエチレングリコールの場合、1000以上4000000以下、好ましくは1000以上20000以下、さらに好ましくは2000以上8000以下である。また、ポリビニルピロリドンの場合、1000以上360000以下、好ましくは1000以上1300000以下、さらに好ましくは2000以上80000以下である。いずれも高分子の水溶性によって変化しうる値であり、高分子の溶解性により適宜、調整、検討する必要がある。
また、本実施の形態に係る分子センサ2を、基質1を検出する試薬として使用するに際し、分子センサ2の因子3及び基質結合力調整剤4を試薬溶液中に共存させた後、当該試薬溶液中に検体を混入して平衡状態に至るように撹拌し、因子3と検体中の基質1との結合度合を算出するようにすればよい。
以下、添付図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。尚、以下の実施例は一例に過ぎず、分子センサの基質結合力調整剤の効果を実証するために提示するものであって、これに制限されるものではない。
◎実施例1
分子センサには、ターゲットとなる基質の種類に応じて様々なものが開発されているが、本実施例では糖質を検出する糖質センサを例に説明する。
本実施例に用いた糖質センサは、グルコースに対して特異性をもつ蛍光性分子センサである以下の一般式(2)に示す9,10−ビス[[N−メチル−N−(o−ボロノベンジル)アミノ]メチル]アントラセン(以下、糖質センサと表記する)を用いた。また、ターゲットとなる糖質には、グルコース、ガラクトース、フルクトースを用いた。
Figure 0006488147
この糖質センサは例えば非特許文献1(段落〔0003〕)に詳述されているが、図2を用いて簡単に動作原理を説明する。
この糖質センサは、図2(a)に示すように、2つのボロン酸が協同的に作用することで高いグルコース親和性を発現する分子センサである。本例では、糖質センサを利用するグルコースの蛍光センシングは、図2(b)(c)に示すPET(光誘起電子移動反応、Photo-induced Electron Transfer)の機構を利用している。糖質(本例ではグルコース)非存在下では、図2(b)に示すように、蛍光性のアントラセン分子に光照射された際、電子がHOMOからLUMOに励起されると同時に、隣接するアミンの非結合性軌道の電子がアントラセン分子のHOMOに電子移動するため、蛍光性を示さない。一方、糖質(本例ではグルコース)存在下では、図2(c)に示すように、糖質とボロン酸の錯体形成に伴い、ホウ素原子のルイス酸性が上昇し、その結果、B−N相互作用が強固になり、アミンの非結合性軌道が安定化する。それによって、アミンの非結合性軌道の電子移動による消光がなくなり、アントラセン分子の蛍光が復活する。
この種の糖質センサでは、pH4〜11という広範なpH領域でグルコースを定量することができる。しかし、糖質センサを使用する上で問題となるのは、検出範囲である。一般に、正常のヒトの血糖値は空腹時では80〜100mg/dl(約4.4〜5.5mM)、糖尿病のヒトでは、血糖値の最高値が200mg/dlを超えるとされている。
この糖質センサのグルコースの検出範囲は約1.8〜18.1mg/dlであるため、ヒトの血糖濃度域よりも低く、検体を希釈しなければ検出に向かない。しかし、検体を希釈では最大で数百倍の希釈が必要となる場合もあり、希釈誤差が生じたり、血糖値によって希釈倍率の調整も必要となる。そのため、この糖尿病診断に適した検出範囲に属する会合定数を有する糖質センサを複数種類、個別に開発することが不可欠となるが、会合定数を見越したボロン酸糖質センサの分子設計は困難を極める。
そこで、本実施例では、基質と糖質センサとの結合力を調整する基質結合力調整剤を使用することにした。
本実施例において、基質結合力調整剤としては、図3に示すように、ベタイン1〜5、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ポリエチレングリコール(PEG)(分子量600および6000)(以下、PEG600、PEG6000と表記する)、ポリビニルピロリドン(PVP)(分子量40000)を用いた。いずれの基質結合力調整剤も分子センサの因子となるボロン酸基とは不活性である。ボロン酸基はジオール類と可逆的にエステル結合を形成するため、そのような官能基をもつ分子は基質結合力調整剤とはならない。
<基質結合力調整剤の構造依存性の評価>
本例における糖質センサに対して効果の高い基質結合力調整剤を調べるために、以下の条件で糖質センサとグルコースとの結合実験を行った。
先ず、1.5mlのプラスチックチューブにリン酸緩衝溶液(pH7.5)、糖質センサ、基質結合力調整剤、グルコースをそれぞれ、最終濃度が0.05M、1.2×10−5M、0.5M(ポリマの場合はモノマユニット濃度として調整している)、1.0×10−6〜3.0×10−1Mになるように配合し、34%(体積分率)のメタノールを含む水溶液を調製した。調製したサンプル溶液を蛍光測定用の96穴マルチプレートに移し、30分間、25℃で遮光静置させた後、各サンプルの蛍光強度(励起波長379nm、蛍光波長425nm)を測定した。但し、PVPを基質結合力調整剤として利用した場合は、30分では平衡に達しなかったため、60分間、25℃で遮光静置させた後に測定を行った。
得られた蛍光強度をグルコース濃度に対してプロットし、蛍光糖質滴定プロットを作成した。また、比較のために、基質結合力調整剤を添加しない条件(コントロール)でも測定を行った。
本実験において、基質であるグルコースの糖質センサへの結合は425nmにおける蛍光強度の上昇として現れる。
そして、基質結合力調整剤の構造依存性の評価は、蛍光糖質滴定プロットから得られる糖質センサの検出範囲、会合定数Kaを用いて行った。
−蛍光糖質滴定プロットの作成−
本例では、蛍光糖質滴定プロットは、横軸にグルコース濃度を対数表示とし、縦軸を相対蛍光強度として作成した。
図4は基質結合力調整剤としてベタイン1〜5を0.5M含む溶液における糖質センサの蛍光糖質滴定プロットを示す。
また、図5は基質結合力調整剤として、TBAC、アセトアミド、DME、DMFを0.5M含む溶液における蛍光糖質滴定プロットを示す。
更に、図6は基質結合力調整剤として、PEG600、PEG6000、PVPをモノマ濃度換算で0.5M含む溶液における蛍光糖質滴定プロットを示す。
−糖質センサの検出範囲、会合定数−
糖質センサによるグルコースの検出範囲は、蛍光糖質滴定プロットの縦軸を蛍光強度変化量に変換し、下限値を0%、飽和値100%として、グルコース濃度を特定する検量線作成濃度域(蛍光強度変化量20〜80%)とした。
一方、糖質センサの会合定数Kaは、Benesi−Hildebrandtの式(ロ)を用いて算出した。
Figure 0006488147
但し、式(ロ)において、Δ:変化量 Δt:飽和時の変化量 Ka:会合定数 [G]t:全ゲスト濃度(本例では、ゲストはグルコース濃度を、以下に表記されるホストは糖質センサを示す)である。
この式は、[G]t>>[H]tが成り立つ時のみ用いることができる(G:ゲスト、H:ホスト)。
そして、横軸1/[G]t、縦軸1/ΔのBenesi−Hildebrandtプロットをとることによって、上記の式に基づいた近似直線を得ることができる。近似直線の傾きから、会合定数を算出した。
より具体的に示すと、例えば図7(a)に示すように、基質結合力調整剤を添加しない条件での糖質センサの蛍光糖質滴定プロットを作成し、これに基づいて、図7(b)に示すように、Benesi−Hildebrandtプロットをとり、会合定数Ka=3230M−1を算出した。
また、例えば図8(a)に示すように、基質結合力調整剤としてベタイン4(0.5M)を添加する条件での糖質センサの蛍光糖質滴定プロットを作成し、これに基づいて、図8(b)に示すように、Benesi−Hildebrandtプロットをとり、会合定数Ka=421M−1を算出した。
−評価結果−
基質結合力調整剤を添加しない条件、あるいは、各基質結合力調整剤を添加した条件において、糖質センサによるグルコースの検出範囲及び会合定数Kaの結果を表1に示す。
Figure 0006488147
表1では、結合力調整剤を0.5M含む溶液における糖質センサの糖質(グルコース)の検出範囲及び会合定数を示す。
表1によれば、糖質センサに導入された因子であるボロン酸基と結合しない基質結合力調整剤を加えると、糖質センサのグルコースに対する会合定数が変化し、それに伴ってグルコースの検出範囲が変化する。どのような基質結合力調整剤でも効果があるわけではなく、基質結合力調整剤の化学構造によってその効果には違いがあることがわかる。また、本例では、特に、ベタイン誘導体で大きな変化が誘起されている。ベタインの化学構造においてアンモニウム基に導入されるアルキル鎖を伸長すると、グルコースの検出範囲に与える影響が強くなる。特に、アルキル鎖が炭素数にして3以上、総炭素数にして9以上で顕著な効果が現れた。グルコースの検出範囲のシフトは、ベタイン構造に限らず、分子間の対イオン構造をもつテトラアルキルアンモニウム塩であるTBACでも同様の効果が生じる。
一方、低分子のアミド化合物やエーテル化合物であるアセトアミド、DMF、DMEでは効果は小さく、ポリマ化したものでは、分子量の低いPEG600ではあまり効果はなく、分子量の高いPEG6000、PVPでは顕著な効果が現れることが確認された。
尚、ポリマ化したPEG6000、PVPについては、添加量が多過ぎると、溶液の粘度が上昇し、糖質センサの応答速度が低下する懸念があるので、この点に留意することが必要である。
このように、本実施例では、糖質センサの検出範囲を大きく変化させるには、基質結合力調整剤として、アンモニウム基に炭素鎖が3以上(総炭素数9以上)、好ましくは4以上(総炭素数12以上)、さらに好ましくは5以上(総炭素数15以上)のアルキル鎖をもつベタイン誘導体(ベタイン3〜5)、あるいは、テトラアルキルアンモニウム塩、あるいは、PEG6000、PVPが効果的であることが確認された。
◎実施例2
<基質結合力調整剤の添加濃度依存性の評価>
実施例1においてアンモニウム基に炭素鎖が3以上(総炭素数9以上)、好ましくは4以上(総炭素数12以上)、さらに好ましくは5以上(総炭素数15以上)のアルキル鎖をもつベタイン誘導体(ベタイン3〜5)、テトラアルキルアンモニウム塩などが分子センサとしての糖質センサの基質結合性に強く影響を及ぼすことが検証された。
実施例2では、基質結合力調整剤の中から糖質センサの基質結合性に強く影響を及ぼしたベタイン5を用いて、基質結合力調整剤の添加濃度が糖質センサの基質結合性に及ぼす影響について検討した。実験では、比較のため、基質結合性の変化が小さかったベタイン1をコントロールとして用いた。
基質結合力調整剤の添加濃度と糖質センサのグルコース結合性の評価は、以下の条件で行った。
先ず、1.5mlのプラスチックチューブにリン酸緩衝溶液(pH7.5)、糖質センサ、基質結合力調整剤であるベタイン1又はベタイン5、グルコースをそれぞれ、0.05M、1.2×10−5M、0〜0.75M、1.0×10−6〜6.0×10−1Mになるように配合し、34%(体積分率)のメタノールを含む水溶液を調製した。調製したサンプル溶液を96穴マルチプレートに移し、30分間、25℃で遮光静置させてから、実施例1と同様に蛍光強度(励起波長379nm、蛍光波長425nm)を測定し、蛍光糖質滴定プロットを作成した。
実施例1と同様に、蛍光糖質滴定プロットから、横軸グルコース濃度を対数表示とし、縦軸を相対蛍光強度として作成した。
具体的には、基質結合力調整剤として、ベタイン1を0〜0.75Mの濃度で含む溶液における糖質センサの蛍光糖質滴定プロットを図9に示す。
また、基質結合力調整剤として、ベタイン5を0〜0.75Mの濃度で含む溶液における糖質センサの蛍光糖質滴定プロットを図10に示す。
そして、実施例1と同様に、蛍光糖質滴定プロットから糖質センサのグルコースに対する検出範囲、会合定数Kaを算出した。
結果を表2、3に示す。
Figure 0006488147
Figure 0006488147
表2は、実施例2において、基質結合力調整剤として、ベタイン1を0〜0.75Mの濃度で含む溶液における糖質センサの糖質(グルコース)の検出範囲及び会合定数を示す。また、表3は、実施例2において、基質結合力調整剤として、ベタイン5を0〜0.75Mの濃度で含む溶液における糖質センサの糖質(グルコース)の検出範囲及び会合定数を示す。
表2によれば、コントロールとして用いたベタイン1の濃度が上昇しても、検出範囲の変化はほとんど確認されなかった。一方、表3によれば、基質結合力調整剤としてのベタイン5の濃度が上昇すると、グルコースの検出範囲の上限が著しく高濃度域に変化した。
すなわち、本実施例では、基質結合力調整剤であるベタイン5を添加することで、検出範囲の上限を100倍近くにまで広げることが実証された。
また、本実施例では、会合定数Kaについても、基質結合力調整剤としてのベタイン5を添加した態様(会合定数の比は最大85.0倍)では、ベタイン1を添加した態様(会合定数の比は2.0倍以下)に比べて十分に変化していることが理解される。
◎実施例3
<基質結合力調整剤の添加に伴う糖質センサの基質選択性の評価>
本例では、グルコース選択性を有する分子センサとしての糖質センサが基質結合力調整剤であるベタイン4の存在下、基質選択性に影響が及ぼされるかどうかを評価した。
基質としては、グルコースに加えて、血糖値測定において夾雑物として知られるフルクトース、ガラクトースの2種類の糖質を用いた。
糖質センサに対する基質選択性の評価は、以下の条件で行った。
先ず、1.5mのプラスチックチューブにリン酸緩衝溶液(pH7.5)、糖質センサ、基質結合力調整剤(ベタイン4)、糖質(グルコース、フルクトース、ガラクトースのいずれか)をそれぞれ、最終濃度が0.05M、1.2×10−5M、0M又は0.25M、1.0×10−6〜1.0Mになるように配合し、34%(体積分率)のメタノールを含む水溶液を調製した。調製した反応を96穴マルチプレートに移し、30分間、25℃で静置させてから、蛍光強度(励起波長379nm、蛍光波長425nm)を測定し、蛍光糖質滴定プロットを作成した。
そして、作成した蛍光糖質滴定プロットから糖質センサのグルコース、フルクトース、ガラクトースに対する会合定数Kaを算出した。尚、( )内の数値はグルコースに対するフルクトース、ガラクトースの会合定数比(選択性の指標)を示す。
結果を表4に示す。
Figure 0006488147
表4によれば、フルクトース、ガラクトースでもグルコースと同様にベタイン4の添加による会合定数の変化がみられた。これは、基質結合力調整剤が基質であるグルコースに限らず、分子センサに導入された因子(ボロン酸基)に結合することが可能なすべての糖質類に作用することを示すものである。
また、糖質センサのグルコース>フルクコース>ガラクコースの順で基質結合性が強くなる選択性は、ベタイン4の添加によって失われることがないことが確認できた。また、ベタイン4を0.25M添加する条件では、無添加の時より、糖質センサのグルコースに対する会合定数とフルクトース、ガラクトースに対する会合定数の比が大きくなっていることが分かった。無添加では、グルコースとフルクトースの会合定数の比は5.7倍であったが、ベタイン4を0.25M添加することによって9.2倍なり、ガラクトースでは、同じく比が21倍から32倍になっていることが確認できた。
このように、基質結合力調整剤であるベタイン4を添加すると、フルクトースやガラクトースでもグルコースと同様に会合定数の低下が確認された。また、会合定数比から見積もった基質選択性は、基質結合力調整剤の非存在下と比較して、存在下の方が基質選択性が高くなっていることを証明するものであった。すなわち、分子センサとしての糖質センサの検出範囲を拡大するだけでなく、基質選択性も向上することが理解される。
◎実施例4
<グルコース検量線に及ぼす夾雑物の影響の評価>
本例では、グルコース選択性を有する分子センサとしての糖質センサのグルコースに対する検量線を夾雑物としてフルクトース、ガラクトースを1.0×10−4Mずつ含む溶液と比較した。基質結合力調整剤を含んでも検量線に影響を及ぼさないことを確認するために、0.25Mのベタイン4の存在下、グルコースの検量線も作成した。
糖質センサに対する基質選択性の評価は、以下の条件で行った。
先ず、1.5mLのエッペンドルフチューブにリン酸緩衝溶液(pH7.5)、糖質センサ、基質結合力調整剤(ベタイン4)、糖質(グルコースのみ、及び、グルコースにフルクトース、ガラクトースを1.0×10−4Mずつ含む溶液)をそれぞれ、最終濃度が0.05M、1.2×10−5M、0Mもしくは0.25M、1.0×10−4〜3.0×10−3Mになるように配合し、34%(体積分率)のメタノールを含む水溶液を調製した。調製した反応を96穴マルチプレートに移し、30分間、25℃で静置させてから、蛍光強度(励起波長379nm、蛍光波長425nm)を測定し、グルコースの検量線を作成した。
基質結合力調整剤の非存在下、グルコースのみ、及び、夾雑物としてフルクトース、ガラクトースを夫々1.0×10−4Mずつ含む溶液中における糖質センサのグルコース濃度に対する検量線を図11にそれぞれ示す。
また、基質結合力調整剤としてベタイン4を0.25Mの濃度で含む溶液で、グルコースのみ、及び、夾雑物としてフルクトース、ガラクトースを夫々1.0×10−4Mずつ含む溶液中における糖質センサのグルコース濃度に対する検量線を図12にそれぞれ示す。
図11及び図12によれば、基質がグルコースのみと、グルコースと夾雑物(フルクトース、ガラクトース)入りの対数近似直線は略一致していることが理解される。つまり、ヒト体内のフルクトース、ガラクトースの濃度は、糖質センサによるグルコース検出に影響がないことが確認された。
以上の実施例1〜4から明らかなように、例えば基質結合力調整剤としてのベタイン型添加物であるベタイン3〜5は、分子センサとしての糖質センサの会合定数を変化させ、希釈操作を経ずに検出範囲を高濃度側にシフトさせることが確認された。
加えて、ベタイン3〜5の添加によって濃度依存的に基質選択性を上昇させることも理解される。これらの結果より、ベタイン3〜5の水和効果が、分子センサとしての糖質センサと基質との結合に何らかの影響を及ぼし、基質結合力に変化をもたらしていることが確認できた。
尚、ベタイン型添加剤(例えばベタイン3〜5)以外の基質結合力調整剤についても、ベタイン型添加剤と同様な作用を奏することが確認された。
また、ベタイン型添加剤(例えばベタイン3〜5)の糖尿病の糖質センサへの応用としては、検出範囲が糖尿病の基準値200mg/dlに近づいたこと、測定において夾雑物の影響を受けないことに関してみると測定技術として用いることは可能である。そして、溶媒条件、ベタイン型添加剤の種類を変えることによって、糖尿病の基準値を含む範囲を測定できるようになるものと期待される。
1…基質,2…分子センサ,3…因子,4…基質結合力調整剤,5…結合物

Claims (8)

  1. 予め決められた基質に対して特異性のある因子を持つ分子センサが含まれる溶液に添加され、前記基質と前記分子センサとの結合力を調整する基質結合力調整剤であって、
    前記基質及び前記因子とは不活性であって、前記因子が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すると共に、前記因子の前記基質に対する会合定数(Ka/M−1)を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体として、以下の一般式(1)で表されるもののうち、アンモニウム基に炭素鎖が3以上のアルキル鎖をもつベタイン誘導体を含むことを特徴とする基質結合力調整剤。
    Figure 0006488147
    ここで、R1からR3は均一であっても不均一であってもよく、炭素数が1以上12以下、好ましくは炭素数が2以上8以下、さらに好ましくは炭素数が3以上7以下のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基のいずれかであり、その総炭素数が3以上24以下、好ましくは総炭素数が6以上18以下、さらに好ましくは総炭素数が12以上15以下であり、また、R6は炭素数が1以上10以下、好ましくは炭素数が1以上10以下のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基のいずれかである。
  2. 予め決められた基質に対して特異性のある因子を持つ分子センサが含まれる溶液に添加され、前記基質と前記分子センサとの結合力を調整する基質結合力調整剤であって、
    前記基質及び前記因子とは不活性であって、前記因子が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すると共に、前記因子の前記基質に対する会合定数(Ka/M−1)を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体として、テトラアルキルアンモニウム塩若しくは誘導体を含むことを特徴とする基質結合力調整剤。
  3. 予め決められた基質に対して特異性のある因子を持つ分子センサが含まれる溶液に添加され、前記基質と前記分子センサとの結合力を調整する基質結合力調整剤であって、
    前記基質及び前記因子とは不活性であって、前記因子が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すると共に、前記因子の前記基質に対する会合定数(Ka/M−1)を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体として、高分子の分子量が1000以上4000000以下のポリエチレングリコール若しくはその誘導体又は高分子の分子量が1000以上360000以下のポリビニルピロリドン若しくはその誘導体を含むことを特徴とする基質結合力調整剤
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載の基質結合力調整剤において、
    前記基質が糖質であることを特徴とする基質結合力調整剤。
  5. 請求項に記載の基質結合力調整剤において、
    前記基質が糖質としてのグルコースであるとき、前記分子センサの会合定数を3倍から100倍の比率で調整することを特徴とする基質結合力調整剤。
  6. 予め決められた基質に対して特異性を持つ分子センサであって、
    前記基質に対して特異性のある因子と、
    前記基質と前記因子との結合力を調整する基質結合力調整剤と、を含み、
    前記基質結合力調整剤は、前記基質及び前記因子とは不活性であって、前記因子が含まれる溶液に所定の濃度で溶解すると共に、前記因子の前記基質に対する会合定数(Ka/M−1)を少なくとも3倍以上の比率で変化させる化合物又はそれらの塩若しくは誘導体として、請求項1乃至5のいずれかに記載のものを含むことを特徴とする分子センサ。
  7. 請求項に記載の分子センサにおいて、
    前記基質が糖質であることを特徴とする分子センサ。
  8. 請求項に記載の分子センサを、基質を検出する試薬として使用するに際し、前記分子センサの因子及び基質結合力調整剤を試薬溶液中に共存させた後、当該試薬溶液中に検体を混入して平衡状態に至るように撹拌し、前記因子と前記検体中の基質との結合度合を算出することを特徴とする分子センサの使用方法。
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